伊吹翼「太陽の彼女」

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/26(金) 00:43:43.30 ID:CTHKjdCD0


オーディションに合格して、初めて事務所に集められた時のことだった。初顔合わせということで一人一人自己紹介をさせられていく――もちろん、37人もの人間を一目で覚えるのは難しいので、他のアイドルへ、というよりも、プロデューサーさんや社長へのアピールとしての役割も半分程度あるのだと安易に考えられた。
だから他の合格者も私もしっかりと、アピールできるように色々考えてきていたのだ。

『姫は徳川まつりと言うのです。わんだほーなアイドルを目指してるので、よろしくなのです!』
『瑞希、真壁瑞希と申します。よろしくお願いします。口下手なのでここで一つマジックを…………せいっ』

と、中々印象的な紹介を短い時間に収めるアイドルが多かった。オーディションに受かっただけのことはあって、そして全員が自分の魅力を活かそうとしていた。
だから、

「え、え? っと。他に何言えばいいですか? あっ、特技? 特技は……うーん? 何かな」

彼女のそのアピールは目立っていた。もちろん、悪目立ちという方向で。
初めて事務所に集められたという時点で今日何をするのかなんてことは予測がつきそうであり、ならば対策するのが普通なのに彼女はそれをしていないようだった。

「あっ、でも! 頑張ることは誰にも負けません! よろしくお願いします! ……あれ、これさっき言ったような」

そう言い残して彼女はそそくさと次の人へバトンタッチしてしまった。
今まで自己紹介してきた娘たちが皆、しっかりとアピールを決めていたから彼女の姿は、特別悪目立ちしていた。

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