森久保乃々「これだけは無理なんですけどぉ!!」

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1 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2017/05/22(月) 22:53:27.94 ID:kn3gGM8E0

初投稿だっちゃ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1495461207
2 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2017/05/22(月) 22:55:18.93 ID:kn3gGM8E0

ザーザーザーと、ゴロゴロゴロと。外はとっても酷い天気です。もりくぼは雷が苦手なのでこんな天気は嫌いです。

「ひっ!!」

ぴかっと外が光ります。また一つ雷が落ちました。少しの間を置いて、ゴロゴロと。響くような音が私の居る机の下までうるさく届きます。

「今の近かったね。」

「来るんじゃなかった…休みだったのに…こんな天気なら、部屋から出ない方が良かった…。」

「…じゃあなんで乃々ちゃん、こんな天気なのに事務所に来たの?」

「プ、プロデューサーさんだけには言えません…。」

「さっきからそう言ってるけど…いい加減何で来たのか、理由を教えてくれないかな?」

「無理です!これだけは無理です!むりくぼです!」

「なら、無理強いはしないけどさぁ…寮の人は心配するだろうし、そっちにはちゃんと理由を話すんだよ?」

「…わかりました。」

今日、私がここに来た理由ですか?プロデューサーさんには絶対に言えませんよ…。だって…。

この、私のノートを、誰にも見られないように回収したんですから!

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/22(月) 22:56:19.82 ID:kn3gGM8E0

私は絵本が好きです。プロデューサーさんにスカウトされるまでは、私は絵本作家になりたかったんです。正直、まだ絵本作家という夢をまだ諦めてません。

で、このノートには私の考えた絵本の下書きが書きためてあって…。絶対に、絶対に他の人には見せられません。

恥ずかしいとか、じゃなくて。本当に、本当に、見せるわけにはいけないんです。特に、プロデューサーさんには。

「どんどん雨風がひどくなってるな…乃々ちゃん、もうちょっと待っててね、あとちょっとだから。」

「は、はい…。」

 昨日、うついうっかり机の下にノートを忘れてしまったせいで、こんな天気にもかかわらず取りに来る羽目になっちゃいました。誰も居ないと思ったらプロデューサーさんがいて、仕方ないから素早く定位置に入り、ノートをガードするようにしました。

 そして、帰ろうとしても…。

「プロデューサーさん、まだですか?」

「あとちょっと。」

来るときは電車だったんですけど、今は悪天候のせいで止まっちゃってて。帰りはプロデューサーさんが車で送ってくれることになったんですけど…。

「…まだですか?」

「あとちょっと。」

さっきからずっとこう。同じ質問を同じ言葉で返されてしまいます。

「ごめんね、キリがいいところまで待ってて。」

さっきからずっと、机の上でタイピング音と、クリック音が止まらず鳴り続けています。

「…だいたい、プロデューサーさんは働き過ぎなんですよ…今日だって、プロデューサーさん以外、誰も来てないじゃないですか。」

『働き過ぎ』、常々私はそう思っています。私が知る限り、プロデューサーさんが休んだ日なんて、これまでに片手で足りるほど。いつ倒れないか、私は心配です。

「プロデューサーさんは…いつも真面目に仕事してるし…たまには休んだ方がいいと、もりくぼはそう思います。」

「ははは…心配してくれてありがとう。でも、要領が悪い僕みたいなのはこういうときでも頑張らないといけないんだ。それに、次の乃々ちゃんの仕事のために少しでも自分の他の仕事を片付けておきたいしね。」

「うぐぅ…。」

そう言われると返す言葉がありません。仕方なく私はノートを胸に抱え、黙りました。

 プロデューサーさんは今、自分を卑下するようなことを言ってました。でも、私は知ってるんですよ、他のプロデューサーさんやちひろさんが「あいつは真面目だ」とか、「いつも頑張ってる」って褒めてること。

だから、もうちょっと自信を持ってもいいと思うんですけど…。前まで仕事を辞めたがってた私が言うのも、あれですけど。

私は膝を抱えたまま、雨と風と、そしてプロデューサーさんのタイピング音に耳を傾けることにしました。

4 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2017/05/22(月) 22:57:57.09 ID:kn3gGM8E0


・・
・・・
・・

「…終わったぁ〜!」

 ようやく片づいた。これで乃々ちゃんを寮まで送ることが出来る。長いこと待たせちゃって悪かったな。今度、何かお詫びをしないと。

「乃々ちゃん、待たせてごめん、帰―。」

 机の下に居る乃々ちゃんに声をかけ、のぞき込む。そこで、初めて気がついた。

「…寝ちゃってる?」

そういえば、途中から雷にも全く反応しなくなってたな。やるべき事に夢中で気がつかなかった。

「…うぅん…むにゃ…。」

乃々ちゃんは、とても気持ちよさそうに寝ている。起こすには忍びない。

「起こさないように連れて行こう。」

 双葉さんところのプロデューサーは、双葉さんが寝てしまったとき、抱っこして彼女を運んでいる。実際、何度かその姿も見たことある。僕も彼にならおう。仕事はともかく、体力と筋力に自信はある。

 幸い、今日は風が強いからか、乃々ちゃんは珍しくスカートじゃない。これならだっこ出来るな。

「よい…しょっと!」

「うぅ…えへへぇ…。」

起こさないように、慎重に慎重に乃々ちゃんの体をだっこする。軽い。これなら落とすことなく駐車所まで連れて行けそうだ。持ち上げると、心なしか、乃々ちゃんの顔が綻んだ気がする。いい夢でもみてるのかもしれない。

乃々ちゃんを起こさないように扉を閉めると、屋内だというのに冷たい風が吹いていた。

見ると、窓を一つ閉め忘れていたせいで、廊下に水たまりが出来ていた。乃々ちゃんを送った後、拭いておかないとな。そう思いながら長い廊下を、乃々ちゃんを抱え歩いた。

5 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2017/05/22(月) 22:58:32.11 ID:kn3gGM8E0

・・
・・・
・・

 ふわふわと、なぜだかいい気分。森の中で、ハンモックにゆらゆらと揺られるような。眠りに入る直前の、夢と現実がごっちゃになった、私の好きな時間。

「んぅ…すぅ…。」

 どこからか、匂いがします。心地いいような、安心するような、ずっとかいでおきたいような。

「えへへぇ…んにゃ?」

 そこで、目を覚ましてしまいます。外は相変わらず雨音がうるさい。そして、何故かひんやりとした風が私の体をなでます。

「あ、起きちゃった?ごめんね。」

 目の前には、プロデューサーさんの顔があって。体は、プロデューサーさんに抱きかかえられていて。いわゆる、お姫様だっこなるものを私はされていました。

「…………………!!?!??!?!???!????!!」

プロデューサーさんと目が合ってしまいました。顔は、今までで一番近い。

「ふぎゃ!」

動揺して、少し暴れちゃって、ドシンと、お尻から落ちてしまいます

「乃々ちゃん!?大丈夫!?」

 プロデューサーさんも目の前で、ぶつけて痛いお尻をさすります。でも、尻もちをついてしまったことよりも。知らない間にお姫様だっこをされていたなんて、恥ずかしすぎます。

 いや、嬉しくないわけじゃないんですよ?でも、私的には、もうちょっとムードとか…いやいや、何を思っちゃってるんですか私は。

「も、もう大丈夫です!もりくぼは一人で帰ります!もりくぼは一人で歩けます!!」

 そう言いながら、恥ずかしさとプロデューサーさんから逃げるように私は走り出しました。

「そこ!!水たまり!」

「ほぇ?」

 プロデューサーさんの忠告を聞き終えることなく、私は足を滑らせ、水たまりの中にダイブしてしまいました。

6 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2017/05/22(月) 22:59:18.36 ID:kn3gGM8E0

―――
――

「…うぅ。」

「…ごめんね。」

「いや、プロデューサーさんが、悪いわけじゃ...。」

「でも、勝手に抱っこしちゃったし…それに、服も。」

 あの後。私は水たまりに見事にダイブしてしまい、びしょびしょに。今はレッスン用のジャージを着て、プロデューサーさんの車に揺られています。

「今度からは、ちゃんと起こすようにするよ。」

 申し訳なさそうにプロデューサーさんは謝ります。

「あ、いえ…その…。」

 普段から、杏さんが担当のプロデューサーさんに抱えられているのをよく目にします。それを少しだけ羨ましいと…思っちゃったり。だから抱っこしてもらったことが嬉しくて、ドキドキして、眠っちゃたことが少し残念で。

 あんなにプロデューサーさんと密着したのは、今までになくて、思い返すとすこし口の端が上がってしまいます。

 でも私には、『お姫様抱っこで構いません』なんて言う勇気も、度胸もなく。私のつぶやきは、窓に当たる雨がかき消しました。

7 : ◆U.8lOt6xMsuG :2017/05/22(月) 23:00:43.29 ID:kn3gGM8E0

「それじゃ乃々ちゃん、また明日。」

「はい…ありがとうございました。」

 車のドアを急いで閉め、雨に濡れないように、でもまた転ばないように小走りで寮の扉まで向かいます。プロデューサーさんが近くに車を停めてくれたとは言え、距離は少しありました。

 濡れないように、なるべく濡れないように、でも急ぎすぎないように気をつけて。そして、寮に入り、一息ついたところで思い出してしまいました。

「…ノートぉ………。」

 忘れ物を、忘れてきてしまったということに。

8 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2017/05/22(月) 23:02:02.29 ID:kn3gGM8E0

今日はここまで。

初投稿で勝手が分かりませんが、まあまあ前作のまとめをどうぞ→http://twpf.jp/vol__vol
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/22(月) 23:03:39.30 ID:GMpNnqcFo
>>1にとっての初投稿の定義が知りたい
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/23(火) 00:07:57.38 ID:F5dEP1zA0
初投稿とは……ウゴゴゴゴ
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/23(火) 00:10:58.40 ID:0FzA0pOUo
渋とかにはまだ投稿してませんよ、てこと?
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/23(火) 01:09:49.34 ID:ciHIMoie0
そういうネタだと解釈していたが
ガチ目に返されててワロタ
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/23(火) 01:42:54.12 ID:yM2uL0ER0
SS投稿と恋はいつでも初舞台っていうし
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/23(火) 20:28:07.37 ID:X73sHm5Mo
流石に夢芝居は知らん人多いやろ
15 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2017/05/23(火) 20:36:24.74 ID:fgfGQ0zl0
再開します。

すいません、初投稿ってのは軽いネタです。本当は初投稿じゃないです。
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