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男「余命1年?」女「……」
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24 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/18(木) 23:31:53.50 ID:Mb2ft/yRO
男「別に、何もしないよ。それに……」
女「な……なんですか、そんなにジロジロ見て。ナースコールしますよ?」
男「待って待って、違うから。だから、あれだよ。君は、女としてはみれない」
女「……どうして、ですか」
男「だって、5歳も離れてるし。俺の好みは年上なの。ロリコンじゃないんだ、分かった?」
その時だ。
25 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/18(木) 23:32:21.84 ID:Mb2ft/yRO
一瞬、彼女の表情が凍ったように見えた……のだが、気のせいだったみたいだ。
すぐに、さっきの嫌そうな表情が復活した。
女「うえー……なおさらキモチワルイです。それを、女の子の前で言うんですか」
男「どうしろってんだよ……」
それからも、何度か嫌そうな顔をされたのだが。
渋々了解したみたいだった。
26 :
◆PChhdNeYjM
[sage saga]:2017/05/18(木) 23:38:35.28 ID:Mb2ft/yRO
今日はここで切り上げます。次回は公園でのシーンからです。
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/05/19(金) 02:37:27.46 ID:nhGapL3j0
詐欺師の医者が逮捕されて生きつけの松屋病院閉店する
28 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 09:33:46.55 ID:7dDTkbidO
男「……暑い」
男(ちびっ子達……元気そうに走り回ってんな)
男(無邪気な子供達を、日曜日の昼間に、たった一人で公園のベンチに腰掛けて見つめている私服姿の冴えない独身男性)
男(……平日じゃないのが、唯一の救いだ)
男(早く来ねえかな……さっきから母親達の視線が痛い)
29 :
◆PChhdNeYjM
[sage saga]:2017/05/19(金) 09:34:16.86 ID:7dDTkbidO
女「お待たせしました」
男(え、マジか……私服じゃん、今風のファッションなのかな)
女「……って、何ですか、その酷い顔」
男「ああ……待ってたよ。酷い顔?」
女「はい、すごく酷い顔です。まるで、この世の全てを恨んでいるかのように」
男(一体どんな顔だよ。想像もつかないわ)
女さんは俺から少し離れた位置に腰かけた。
30 :
◆PChhdNeYjM
[sage saga]:2017/05/19(金) 09:35:07.11 ID:7dDTkbidO
男「えーっと……お久しぶりです?」
女「昨日会ったばかりですよ」
男(いつも病院服しか着ていなかったから、気が付かなかったけど)
男「スタイル……いいな……」
女「……は?」
男(やっべ、声に出てた)
男「いや、何でもない」
彼女は両手で自分の身体を抱きかかえ、俺から離れるように、すぐさまベンチの一番端へ腰を滑らせた。
女「いやいやいや、誤魔化せないですから。何ですか、誘ってるんですか? 警察呼びますよ?」
男「ちょっとちょっと、本当にそんなんじゃないって!」
31 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 09:35:39.63 ID:7dDTkbidO
女「……それで、何でしたっけ。コミュニケーションの練習?」
男「そうそう、コミュニケーションね。とりあえず……世間話でもしようか」
男(世間話っつってもな……何を話せばいいのやら。言い出しっぺは俺なんだけど)
女「……元気そうですよね。あの子達」
男「ああ……羨ましいの?」
女「……少し、思います」
男(まただ……この表情。何もかも、どうでもいいと思っているような)
男「思いっきり走ったこと、ある?」
女「いえ……小学校の時、マラソンで倒れてから……一度も」
男「……なら、思いっきり走ろうか」
女「……はい?」
32 :
◆PChhdNeYjM
[sage saga]:2017/05/19(金) 09:36:19.95 ID:7dDTkbidO
男「だあー! 強すぎだろ! 君、本当に初心者?」
女「車の免許なら持ってますよ。マニュアルです」
男「なるほど……俺、5年以上ペーパードライバーだからなあ……」
女「見苦しい言い訳はやめてください。男さんが言ったんじゃないですか、ゲーセンでレースゲームしようって」
男「いや、確かに言ったけども」
女「フフッ、こんなに気持ちよく走ったの、久しぶりです」
男(ゲームだけどね。しかもただのカーレース)
男「じゃあ、次は何やる?」
女「え? これ、もう一度やりません?」
男「マジか……分かった、やろう」
女「さっき負けたの男さんですから、今回は男さんが払ってくださいね」
男「その約束生きてたのね……」
男(野口さんが消えていく……なんだろう、この財布の寂寥感)
33 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 09:37:52.61 ID:7dDTkbidO
男(あー、すっかり夜になっちまった)
男(あのゲーセン、案外いいな。女さんの家から近いし。また行くかもな)
男「大丈夫? 親御さんに心配されたりしない? 家まで送って行くけど、挨拶とかしとく?」
女「あー、別に大丈夫ですよ……多分、まだ帰って来てないんで」
男「帰って……ない?」
男(確か……優しいお父さんがいるって聞いたような……)
女「ウチ、父子家庭なんです。父はいつも、遅くまで仕事……なんて言ってるけど。多分、遊んでるんだと思います」
男「え、だって……優しいお父さんだって」
女「それ、誰から聞いたんです? 別に、ウチはそんなんじゃないですよ。
お父さんは、私の事なんてどうだっていいんですよ。もうすぐ……いなくなるんですから」
男「それ……は……」
34 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 09:38:20.12 ID:7dDTkbidO
男(すっかり忘れていた。いや……考えないようにしていた)
男(彼女は……もうすぐ……)
女「……フフッ、そんな顔しないでください。今更、何とも思ってませんから。それに……」
男「え……どうしたの?」
男(なんか、近い、近いよ! ジト目可愛いし……なんかいい匂いするし)
女「……いーえ。何でもありません。じゃあ、また明日」
男「あ、ああ。また明日……」
男(行ってしまった……何だったんだ、一体)
35 :
◆PChhdNeYjM
[sage saga]:2017/05/19(金) 09:49:40.87 ID:ZGQSyYBoO
とりあえずここまで
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/05/19(金) 14:54:19.73 ID:BbcYX/6HO
おもしろい
37 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:02:21.63 ID:ZGQSyYBoO
今日は平日。女さんと直接会って話すのは、難しいと思っていたんだが。
女「どうも、よろしくお願いします」
男「あ、うん。よろしくね」
男(まさか、直接編集部まで来てくれるとは)
女「それで、原稿持ってきたんですけど……」
男「え、もう?」
男(以前から感じていたことだが……いくら何でも、執筆のスピードが速すぎる)
編集長「驚きの才能だな」
男「編集長……そうですね。類希な程に速筆ですよ、彼女」
女「……どうも」コクッ
編集長「毎週、1作ずつ書くことができるなんて。君は将来有望だね」
男(将来……ね)
38 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:03:11.57 ID:ZGQSyYBoO
女「ありがとうございます。ですが、出版できるレベルに達していないのなら……」
編集長「ん、そうだね。男、あとは任せたぞ」
男「あ、はい。了解です」
女「……その」
男「ああ、編集長には言ってない」
女「やはり、そうでしたか」
男「……ごめんね。気を悪くしたのなら謝るよ」
女「いえ、気にしないでください。大学時代から慣れているので」
39 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:05:17.54 ID:ZGQSyYBoO
男「今も、大学に通ってるんだよね?」
女「いえ……先日、余命宣告されてすぐに中退しました」
男「えっ……そうなんだ」
男(確かに、人としてその選択は正しいことなんだろうけど。
こっちとしては、大学生活で得られるものだってあると思うし、辞めないで欲しかったな)
男(……いや何考えてんだよ。
彼女の人生だぞ。彼女の好きにして何が悪いんだよ。
残りの人生を、自分自身のために過ごす為に中退したんだ。
素晴らしいじゃないか。美しいじゃないか。
そもそも、正しい選択なんて存在しないんだから)
40 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:06:05.32 ID:ZGQSyYBoO
女「……男さん?」
男「うん? どうしたの?」
女「大丈夫ですか? 少し、怖い顔してました」
男「え、そうかな? ……何でもないよ。それで、原稿見せてもらえる?」
女「ええ、どうぞ」
男(うわ……普通に1冊分の分量だぞ、これ)
男「うん、ありがとう。読んでもいいかな?」
女「え……今ですか?」
男「うん。ダメかい?」
女「……いえ、ダメではありませんが」
男「では、拝見させて頂きます」
41 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:07:31.95 ID:ZGQSyYBoO
男(……これ、まさか)
男「ね、ねえ……これ」
女「……////」
男(め……メッチャ赤くなってる)
男(これ、もろ俺達のことじゃん)
男(最初の十数ページで分かる。
病院で入院していた主人公を、とある男性が訪れる所から始まって。
そこから、2人が約束を交わすのだ)
『必ず夢を叶えよう。2人で、一緒に』
男(いける……か? いや、いけるだろ)
42 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:08:51.71 ID:ZGQSyYBoO
男「これ……通るよ。多分、いや絶対」
女「ほっ、ホントですか!?」
男「わっ、ビックリした」
男(彼女、こんな表情もするんだな)
女「この原稿は、絶対に通したいって……そう思ってたので。そう言ってもらえて、嬉しいです」
男「編集長に通してからだから、俺だけじゃ確定とは言えないんだけど。
これは面白いよ、通せる。自信を持ってそう言えるよ」
女「……良かったあ」
男(うわっ、メッチャ笑顔。……可愛いな)
男(残りのページも読んでしまおう)
男「お茶ならいくらでも出せるから。ゆっくりしていって」
女「はい……ありがとうございます」
43 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:09:38.72 ID:ZGQSyYBoO
男(全部読み終わったけど、これは……)
男(ちょっと、マズイかも……しれない)
44 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:10:33.93 ID:ZGQSyYBoO
編集長「うーむ……」
男「……どうでしょうか」
編集長「面白い……が」
男(……冷や汗が、鬱陶しい)
編集長「……難しいな」
男「やはり……そうですか」
編集長「出版できないわけじゃない。寧ろ……売れるだろうな」
男「では……!」
45 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:11:23.89 ID:ZGQSyYBoO
編集長「ただ……読者がこれを読んだ時、どう思うだろう」
男「……それは」
男(もしかすると、出版は難しいかもしれない。
最後まで読んだ時、俺はそう感じた)
男(彼女の書いた、この作品は)
男(とんでもない、救いようのないバッドエンドなのだ)
編集長「これが、彼女の持ち味なのだとしたら……」
男(ヤバイ、メチャクチャ睨まれてる)
編集長「男、お前……何か隠してないか?」
男(うわ……やっぱバレてる)
46 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:12:14.63 ID:ZGQSyYBoO
男(小説ってのは、良くも悪くも、作家本人の人生観を反映してしまう)
男(出そうと思って出るものでもないし、かといって意図的に隠せるものでもない)
男(つまり……読む人が読めば、分かってしまうのだ)
男(その作家が……どんな人間なのか)
男「……申し訳……ありません」
男(元々、隠しきれるわけが無かったのだ)
47 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:13:07.55 ID:ZGQSyYBoO
編集長「……なるほど、事情は分かった。ならば、この内容も納得できる」
男「やはり……出版は難しいと」
編集長「できないわけではない」
男「っ! 本当ですか!?」
編集長「ただ、な」
男「……?」
編集長「彼女がこれを、本当に作品として売りに出したいのか。そのつもりで書いたのか。
……それが知りたい」
48 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 16:15:08.00 ID:ZGQSyYBoO
男「それは、一体どういう……」
編集長「俺が今言ったことを、そのまま彼女に聞いてみてくれ。
多分……それで、彼女の本心が聞けるさ」
男「……分かりました」
49 :
◆PChhdNeYjM
[sage saga]:2017/05/19(金) 16:15:45.55 ID:ZGQSyYBoO
続きは夜書く予定
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/19(金) 21:40:29.57 ID:fAFHiRAFO
色々パクって繋ぎ合わせただけじゃね?
51 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:03:54.12 ID:wLksGJ8QO
男「ふー……」
男(早めに仕事切り上げて、編集長のいう通り女さんから話を聞こうと思ったけど……)
男(6時過ぎてんのに、まだ公園にちびっ子が数人残ってやがる)
男(……げっ、こっちきやがった)
ちびっ子A「ねーねー、おじさん」
男「おっ、おじ……何かな、ボク?」
男(いかんいかん、こんな子供にイライラしてたらみっともないぞ)
52 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:04:41.53 ID:wLksGJ8QO
ちびっ子A「おじさんは、ニートなの?」
男「……何だって?」
ちびっ子B「ぼくのママが言ってたの。幼稚園の日に、公園のベンチに座っている男の人はニートだから、話しかけちゃだめだよって」
男(小さい子に何教えてんだ母親……!)
男(つーか、思いっきり話しかけてんじゃねえかよ!)
男「ボ、ボク? おじさんはね、ニートじゃないんだよ」
53 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:05:21.03 ID:wLksGJ8QO
ちびっ子A「なら、おじさんは誰? 暇なの?」
ちびっ子B「ぼくのママがね。暇そうにしてる男の人はロクデナシだから、話しかけちゃだめだよって言ってたの」
男(おかあさああああん! あんまり変な事教えないでえええええ!)
男「あ、あのなあ……」
女「フフッ……何してるんですか、男さん?」
男「や……やっと来てくれた」
ちびっ子A「お姉さん、だあれ?」
男(女さんはお姉さんなのかよ。俺、一応まだ25だぞ?)
54 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:05:52.55 ID:wLksGJ8QO
女「私はねー……えっと、そういえばもう学生じゃなかった」
男「こっ、この人を待ってたんだよ、おじさん。だからここにいたの。彼女は、おじさんの知り合いだよ!」
ちびっ子A「しりあいー?」
男(あー、まだ分かんねえか。幼稚園児だもんな)
55 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:06:24.60 ID:wLksGJ8QO
ちびっ子B「おじさんとお姉さんは、ふーふなの?」
男「ブッ――」
男(その可能性を考えてなかった!)
ちびっ子B「あのね、ボクの……むぐっ」
男「うんわかったわかった、それ以上言わなくていいぞー」
女「男さん、口を押えちゃ可哀そうですよ」
男「え、ああ……ごめんな」
ちびっ子B「んーん、楽しかった」
男「そうかよ……」
56 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:07:45.84 ID:wLksGJ8QO
ちびっ子A「あのね、ボクのおともだちのお母さんがね。
男の人と女の人が一緒にいたら、その二人はふーふだから、話しかけちゃダメなんだって言ってたの」
男(そっちかーい!)
女「夫婦……////」
男「あはっ……あははは」
男(もうどうにでもなれ……)
57 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:26:39.60 ID:wLksGJ8QO
男(マセガキの戯言に過ぎない……とは分かっているが、予想外にでかい爆弾だったな)
男「あのー……さっきのは、あんまり気にしないでね?」
女「え? ああ、あの子供達の話ですよね。気にしてませんから、安心してください」
男「そう、なら良かった。……それで、本題なんだけど」
女「は、はい……その、どうでしたか?」
男「結論を言えば、通ったよ」
女「ほ……本当ですか? ……やったあ! 嬉しいです!」
男(おいおい、ガッツポーズなんかしちゃってまあ……)
58 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:27:11.43 ID:wLksGJ8QO
男「でも……編集長から、どうしても君に聞いておきたいことがあるって、言伝を預かってきた」
女「言伝……ですか」
男「君は、あの原稿を……本当に作品として売るつもりで書いたのか」
女「……」
男(編集長は、そう聞けば彼女の本心が分かると言っていたけど……未だにそれがどういう意味なのかわからない)
女「そう……ですか」
男「編集長の言い方だと、どうやら後は、君が了承するだけで出版できるみたいなんだ」
男(普通なら、了承するに決まってる)
男(だって、自分の書いた原稿が、本として世の中に出るんだぞ。そんなに嬉しい話があるか?)
男(こんなの、断るわけが……)
59 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:27:38.11 ID:wLksGJ8QO
女「……ごめんなさい」
男「……え?」
女「この話……無かったことにしてください」
60 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:37:01.52 ID:wLksGJ8QO
男「なんで……どうして!?」
女「ごめんなさい……ごめんなさい」
男「いや、謝って欲しいんじゃない! どうして、こんな旨い話を断るんだ!?」
女「それは……」
男「まさか……売りに出すつもりで書いたんじゃないって、そういうことなの?」
女「……」
男(無言……肯定なのかよ)
61 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:37:38.34 ID:wLksGJ8QO
男「どうして? だって、夢だったじゃん! 二人で協力して、君の本を出版しようって。君も、そう望んでたんじゃ……」
女「確かに……私の本をみんなに読んでもらえたら、それほど嬉しいことはないです」
男「だったら……!」
女「……でも」
男(女さん、顔……酷い顔だ。今にも泣きそうな)
男(でも……綺麗な顔だ)
62 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:38:04.68 ID:wLksGJ8QO
女「この本は、あなたに……男さんに読んでもらうために書いたんです」
男「え……だって、この原稿は絶対に通したいって……そう言ってたじゃないか」
女「そうです。この原稿が通れば、男さんに、面白いって認められたことになりますから!」
男「認められるって……確かに、面白かったけどさ……」
男(分からない……分かんねえよ。何を言ってるんだ)
男「つまり……あの原稿は、売りに出したくないって……そういうこと?」
女「……はい」
63 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 22:45:08.47 ID:wLksGJ8QO
男「……分かった。そう……編集長に伝えておくよ」
女「あの……」
男「……なに?」
女「また……書きますから。だから……えっと」
男「……はあ。分かってるよ。また、取りに来るさ」
女「……! ありがとうございます!」
男(メッチャ嬉しそうな顔。これで……良かったのかな、本当に)
64 :
◆PChhdNeYjM
[sage saga]:2017/05/19(金) 22:46:14.66 ID:wLksGJ8QO
とりあえずここまで。パクッてつなぎ合わせたってのは否定できない。
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/19(金) 22:56:14.48 ID:+aWnIZ77o
面白いならいんだよ、こまけえこたあ(松田鏡二
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/05/19(金) 23:39:22.03 ID:BbcYX/6HO
おもしろいから問題ない
67 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 23:57:00.07 ID:wLksGJ8QO
男(一度は、払拭しかけていた彼女の第一印象だったけど)
男(これで、また振り出しだ)
男(彼女は……この世に自分の生きた証を残したいと、本気で思っているのだろうか)
男(本当に……この世に未練なんて、ないのだろうか)
68 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 23:57:38.02 ID:wLksGJ8QO
男(本当に……この世に未練なんて、ないのだろうか)
編集長「なるほど……大体予想通りだ」
男「どうして……彼女は、出版を断ったんでしょう。私には……まるで理解できません」
編集長「なるほど。まあ、お前の言う事も分かる。どっちが正しいかと言われれば、世間一般ではお前だろうな」
男「だって、そんなの当たり前ですよ。自分の書いた本を、たくさんの人に読んでもらえるんです。
自分の書いた本を、たくさんの人の手に取ってもらえるんです。そんなに嬉しい事が……他にありますか?」
69 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 23:58:04.20 ID:wLksGJ8QO
編集長「男は、小説の応募経験があるんだったな」
男「……? はい、そうです。どれも、選考落ちでしたけど」
編集長「それなら……彼女の感情が、お前に理解できないのも仕方のないことだ」
男「女さんの……感情……」
編集長「男。作家が……人が、物書きをしたいと思う時は、一体どんな時だと思う?」
男「物書きを……? そんなの、本を出したい時に決まってるじゃないですか。誰かに読んでもらいたいからです」
編集長「まあ、そうだな。それもある。だが……その根本にあるものは、一体何だと思う?」
70 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 23:58:36.15 ID:wLksGJ8QO
男「根本に……あるもの?」
男(人が文章を書く時なんて……自分を表現したいだとか、それで食っていくためだとか、そんな時じゃないのか?)
編集長「……分からないか。それなら、答え合わせだ」
編集長「人が物書きをする理由はな……誰かに、自分を認めて欲しいからだよ」
男「誰かに……認めて欲しいから?」
編集長「そうだ。世の中に自分の存在を認知されたい。もっと有名になりたい。自分の文章力を評価してほしい」
男「それが……根底にあるってことですか」
71 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 23:59:10.65 ID:wLksGJ8QO
編集長「男もそうだろう。小説を投稿した時、そんな風に思ったことは無かったか?」
男「それは……」
男(小説を書かなくなってから、随分時間が経っている。
あの時の自分が、一体何を考えていたのか。はっきりと思い出すことはできない)
男(ただ……少なからず、そんな気持ちがあったのだろう)
男(小説を投稿する理由は、作家になりたいから。たったそれだけでいい)
72 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/19(金) 23:59:49.30 ID:wLksGJ8QO
男「でも……だったら、なおさら彼女が断る理由なんて」
編集長「女さんは、他に何か言ってなかったか?」
男「他に……?」
女『この本は、あなたに……男さんに読んでもらうために書いたんです』
男「確かに……言ってました。あの原稿は……」
編集長「なら、それが彼女の本心だ。彼女は、そのために書いたのさ。
ただ……その対象が、今回は少し狭かった。ただそれだけの事だ」
男(本当に……俺のために?)
男(ただそれだけのために……あの原稿を?)
73 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 00:00:26.94 ID:yXRXWGwnO
男(原稿……もう一回読んでみようかな)
男(……主人公が、ある男性と約束を交わす)
男(いつか、必ず二人で海を見に行こう)
男(足の動かない主人公は男性に連れられて、ようやく彼と海へ行ける算段が付いた)
男(だが……急激に薄れていく、主人公の意識)
男(聞こえるのは、もう彼の声だけで……)
男(主人公は車椅子に乗せられ、初めての海へ辿り着くが……既に、全身が動かない。目も見えない。
あるのは、彼の声と、触れられた肌の感触だけ)
74 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 00:01:19.68 ID:yXRXWGwnO
男(そうして……初めての海で、主人公は息絶える)
男(やがて、天国に辿り着いた主人公は)
男(自分を追って天国までやってきた彼と、永遠の愛を誓うのだった……)
男「……ホント、これ以上ないくらいのバッドエンドだ……おもしろいけど」
男(女さんは……これを、俺のためだけに書いたのだろうか)
男「彼女が、俺に伝えたかった事……」
75 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 00:03:36.09 ID:yXRXWGwnO
男(まさか……もし自分が死んだら、追いかけてきて欲しいとか?)
男「ハハッ、まさかな」
男(そんなわけ……ないよな?)
男(……なんだか、無性に怖くなってきたんだが)
男「……直接、聞いてみるか」
76 :
◆PChhdNeYjM
[sage saga]:2017/05/20(土) 00:05:44.45 ID:yXRXWGwnO
そろそろ眠気に負けそうなので、ここまで。なるはやで更新します。
>>65
>>66
ありがとうございます。ご期待に沿えるよう頑張らせていただきます。
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 00:29:18.33 ID:0GCJFpxCo
天国で結ばれるならbad endではないと思う
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/05/20(土) 14:29:43.95 ID:yXh01y5sO
ゆっくりでいいからちゃんと完結して欲しい
79 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 22:39:37.57 ID:l8gu9FaAO
男(この公園で彼女を待つの、何だか慣れてきたな……)
女「お待たせ……しました」
男「ああ。大丈夫、そんなに待ってないよ」
女「それで……お話っていうのは?」
男「うん。ちょっと……この間の作品のことで、聞きたいことがあって」
80 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 22:40:29.22 ID:l8gu9FaAO
女「……!」
男(うわ……明らかに動揺してる)
男「その……俺に読んでもらうためって、結局どういう意味なのかな……って」
女「……本当に、分かりませんか?」
男「ああ、ごめん。俺には……」
81 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 22:41:17.12 ID:l8gu9FaAO
女「あの……あの小説はっ……私の……」
男「……?」
男(女さん……いつになく必死だ)
女「私のっ……想いの全てです」
男「想い……女さんの?」
女「はい……分かって、いただけましたか?」
82 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 22:41:56.84 ID:l8gu9FaAO
男「……えっと」
男(想いって……どういう事だよ)
女「で……ですから……////」
男(顔なんか真っ赤にしちゃって……真剣なのは伝わるんだけど)
男「えっと……つまり……」
女「っ……はい……」
83 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 22:42:26.64 ID:l8gu9FaAO
男(よく思い出せ……あの小説の内容を)
男(主人公は、何を求めていたのか)
男「つまり……君は」
男「君は……海に行きたいのかい?」
女「…………はい?」
84 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 22:49:37.94 ID:l8gu9FaAO
男「いやー、それなら早く言ってくれれば良かったのに。取材ならいつだって付き合うよ」
女「あの……どうして、そういう結論になるんです?」
男「え? 違うの?」
女「……ハア。男さん……失礼ですが、経験はお持ちですか?」
男「経験って……なんの?」
女「察しが悪すぎます。恋愛経験ですよ、恋愛!」
男(おおう……顔が近い! いい匂い!)
85 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 22:50:36.91 ID:l8gu9FaAO
男「えっと……その……」
女「なんなんですか、はっきりしてください!」
男「……くそっ、無いよ。不本意だけど……彼女いない歴が、そのまま年齢だ」
女「……でしょうね。そうだと思いましたよ……はあ」
男(何か、メッチャ呆れられてるぞ。俺、何かしたか? 全く身に覚えがないんだが)
男「その……何か気に障るようなことしちゃったかな?」
女「別に、何もされてません。ほんっとうに、言葉通り何もされてません」
男(……なんでそんなに不機嫌?)
86 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 22:53:39.76 ID:l8gu9FaAO
女「男さん」
男「はっ、はい何でしょう」
女「さっきの言葉、本当ですか?」
男「えっと……さっきの?」
女「しゅ・ざ・い!」
男「あ……ああ、海の話? 本当だよ、どこにだって連れていくさ。君の手伝いができるのなら」
女「……言質、取りました」
87 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 22:56:24.06 ID:l8gu9FaAO
男(ヤバい……何だか、メッチャ嫌な予感が……)
女「私を、旅行に連れて行ってください」
男「……へ? 旅行?」
女「はい。旅行です」
男「旅行って……ああ、日帰りでってことね」
女「……何言ってるんですか? 泊まりに決まってるじゃないですか」
男(ちょっと待ってちょっと待って女さん)
88 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 23:02:30.08 ID:l8gu9FaAO
男「泊まりって、ま、まさか……俺と!?」
女「たった今、そう言ったじゃないですか。ちなみに、断るのは許しません。さっき言いましたよね、取材ならいつでも付き合ってくれると」
男「う……うん。言った、よ」
男(女さん、いつになく強気だ。ホント、今日はどうしちゃったんだろう)
女「なら決まりです。取材ということで、海に旅行に行きましょう。それを新しい原稿のネタにします」
89 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/20(土) 23:03:03.79 ID:l8gu9FaAO
男「えっと……ほ、本当に俺とでいいの? もっと、違う誰かの方が……」
女「また信用を失いたいんですか?」
男「はいっ! 今すぐ予約させていただきます!」
男(くっそ……こんなんで担当外されたら立場がねえ。付き合うしかないのか……)
男(まあ……嫌では、ないけれど)
90 :
◆PChhdNeYjM
[sage saga]:2017/05/20(土) 23:10:24.97 ID:l8gu9FaAO
短くて申し訳ないがここまで。次回は旅行から帰るところまで書きたいと思ってます。
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 23:45:21.25 ID:yymrrvl9O
ニヤニヤしてる
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/05/21(日) 09:39:20.10 ID:jgvY1MlAO
なんか栞を思い出すわ〜
93 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:15:57.00 ID:4bLB48VvO
男(……遂にこの日がやってきてしまった)
女「お待たせしました、男さん。いつもすみません、待たせてしまって」
男(なんか、やたら荷物多いな……女の旅行ってこんな感じなわけ?)
男「いやいや、約束の時間には全然遅れてないよ。それじゃ、行こうか」
女「え……あ、はい」
男「……どうしたの? この間の強気な君はどこに行っちゃったわけ?」
94 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:16:36.05 ID:4bLB48VvO
女「だって……本当に連れて行ってくれるなんて、思ってなかったので」
男(何だよ……連れて行かないルートもあったのかよ)
男「いや、もう飛行機もホテルも取ってるし」
女「……! ありがとう……ございます」
男(ったく……可愛い顔してんな、ホント)
男「……それじゃ、行こうか」
95 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:18:50.86 ID:4bLB48VvO
男(さて……機内に乗り込んだんだけど)
女「フンフーン♪」
男(声量は小さいけど、真隣だから……さっきから気になって仕方がない)
男「やけに上機嫌だね。鼻歌なんか歌っちゃって」
女「あ、そう見えます? だって、海なんて私、初めてなんですよ」
女「しかも、南の島だなんて! 興奮しない方がおかしいです!」
96 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:19:40.13 ID:4bLB48VvO
男「そっか、じゃあ俺もおかしくないね」
女「……え?」
男「俺も、ちょっと楽しみなんだ。南の島なんて、修学旅行でも行ったことが無かったから」
女「……それなら、私とお揃いですね。私は、当時は丁度入院と重なってしまって、行けなかったんです」
男「うわ……それは残念だったね」
97 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:20:09.65 ID:4bLB48VvO
女「その分、楽しんじゃいますから!」
男「……そっか」
男(楽しめれば……いいんだけど。多分、女さんは泳ぐのも無理だろうし)
男(海を見て終わりとか、そんな悲しいことにならなければいいんだけど)
98 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:20:59.26 ID:4bLB48VvO
男(……何か、時間が経つのが妙に早い気がする。実家に帰る新幹線だと、3時間ですらクソみたいに疲れるのに)
男(気圧だって下がってるのに、妙に目が冴えて……眠れない)
女「……」ポテッ
男(うおっ!)
男(女さんの頭が……俺の肩に……!)
男「お……女さーん?」
男(……眠ってらっしゃる)
99 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:21:26.01 ID:4bLB48VvO
男(あーもう……仕方ないな)
女「スー……スー……」
男(何だか、こうして眠ってると……普通の女の子みたいだ)
男(いや、そりゃあ普通の女の子なんだけど)
男(あと1年後には……なんて、全然思えないくらい生き生きとしてて)
男(きめ細やかな肌や、艶やかな黒髪、長いまつ毛……潤った桜色の唇)
男(……ちょっと、信じられないな)
100 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:21:52.39 ID:4bLB48VvO
女「……男……さん」
男「っ!」
男(寝言か……あざといんだよ、全く)
男(うっかり……好きになるところだった)
101 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:22:20.26 ID:4bLB48VvO
女「男さん……」
男「ん? 何かな?」
女「あの起こし方は……ちょっと有り得ないです」
男「人に寄りかかって寝る方が悪い」
男(空港に到着して、俺からも少し呼びかけたけど……いつまで経っても女さんは起きなかったものだから)
男(彼女の頬を引っ張って、無理やり起こしてやった)
102 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:22:48.42 ID:4bLB48VvO
女「……ちょっと酷くないですか? 普通に起こせないんですか?」ムッスー
男(そしたら、この通り不機嫌になってしまったけど)
男「悪かったって、機嫌直してよ……ほら、見てみな」
女「えー……あ」
男(やっぱり、凄いよな)
男(言葉を失う時って、多分……こういうのを見た時なんだろう)
103 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:23:18.14 ID:4bLB48VvO
女「これが……海」
男「俺も、こんなに綺麗な海は初めて見た」
男(もうゴールデンウィークもとっくに過ぎたってのに、たくさんの人が泳いでる)
男(それだけ、人気のある観光地ってことか)
104 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:23:45.42 ID:4bLB48VvO
女「……いいなあ」
男「泳ぎたい?」
女「頷いたら、泳がせてくれるんですか?」
男「……無理、だね」
男(女さんにとっては、こんな光景も……蛇の生殺しでしかないんだよな)
男「ごめんね……全然、そこまで考えて……」
105 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:24:16.59 ID:4bLB48VvO
女「……ホテル」
男「え?」
女「どこにあるんですか、ホテル。早く荷物下ろしたいです」
男「あ……ああ、そうだね。この近くにあるんだ。海がとても綺麗に見渡せる場所だよ」
女「そうなんですか!? 楽しみです……えへへ」
男(良かった……元気が戻ったみたいだ)
106 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:24:48.32 ID:4bLB48VvO
女「すごーい!」
男「うわー……絶景だね」
男(窓から入る風が気持ちいい)
男「写真とは、全然違うな」
男(流石に、高いだけある)
男(俺がいつも泊まるような相場と、3倍は違うからね……)
女「ホント凄い……今日は、男さんにビックリさせられっぱなしですね」
107 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:25:18.24 ID:4bLB48VvO
男「さっきから凄い凄いって……いつもの表現力はどこに置いてきたんだよ?」
女「えー、だって違くないですか? 文章力があれば話すこともできるだなんて、編集者らしからぬ単純思考ですよ?」
男「そういうもんなのか……」
女「もー、しっかりしてくださいよ、男さん」
男(風が……女さんの髪がたなびいて……まるで映画のワンシーンみたいな)
男(いや……そんなのよりも、ずっと美しい)
108 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:26:42.50 ID:4bLB48VvO
女「……男さん? どうしたんですか、ボーッとして」
男「えっ……いや、何でもないよ、うん」
男(だから、あざといんだって……)
男(手すりに上半身を預けて、顔傾げてこっち見つめてくるなんて)
男(俺じゃなかったら、今絶対ヤバかったぞ)
109 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:27:30.32 ID:4bLB48VvO
女「変な人ですねー。まあ……予約した部屋を見た時から、おかしいって思ってましたけど」
男「え……何かおかしいかな?」
女「普通……こういう時って、2部屋取りません?」
男「あ…………ああっ!」
男(やっちまった……!)
男(旅行なんて、大学の友人と行って以来だから……そこまで頭が回らなかった!)
110 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:28:10.71 ID:4bLB48VvO
男「ごっ……ゴメン! でっ……でも、ほら、ベッド2つだし!」
女「そういう問題ですか?」
男「い、今からでも変えられるかなあ!? きっと、頼み込めば変更してもらえるんじゃ……」
女「男さん」
男「ひっ、ひゃいっ!」
男(やべ! 変な声でた!)
111 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:28:39.71 ID:4bLB48VvO
女「……構いませんよ、私」
男「……え?」
女「どうせこんな大きいホテルだと、当日変更は難しいでしょうし……それに」
男(そ、そんな見つめんなよ……今、恥ずかしさで顔真っ赤になってんだからさ……)
女「……きっと、男さんは何もしないじゃないですか」
112 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:29:06.35 ID:4bLB48VvO
男「え……と……」
男「否定は……できない」
女「フフ……だと思いました」
男(……なんで、そんな顔すんだよ)
男(そんな寂しそうな顔……君には似合わないよ)
113 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:30:28.40 ID:4bLB48VvO
男「……あの、さ」
女「はい?」
男「……海、見に行こうよ。泳がなくたって、きっと楽しいよ。……ほら、海だけじゃなくて、この近くにも色々店とかあるし!」
女「……そう……ですね。はい……行きたいです!」
男(良かった……いつもの笑顔だ)
114 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 17:33:41.19 ID:4bLB48VvO
女「……男さん」
男「ん? どうしたの?」
女「……私……男さんの、そういう……ところが……」
男(女さん……顔が)
男(耳まで、真っ赤に染まってる)
男「女……さん?」
女「っ……なんでも、ないです。ほらっ、早く行きましょう! 私、お腹空いちゃいました」
男「う、うん……それじゃ、行こうか」
男(何だったんだろう……まあ、気にしなくていいか)
115 :
◆PChhdNeYjM
[sage saga]:2017/05/21(日) 17:37:34.62 ID:4bLB48VvO
続きは夜書きます
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/21(日) 18:01:04.15 ID:tRthmvTNo
おつ
待ってる
117 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 22:32:18.84 ID:hFj05+0SO
女「男さん! このタコライス、すっごく美味しいです!」
男「うん、俺も驚いた」
女「なんでも地元の方々に、キンタコの愛称で親しまれている店らしいです!」
男「へえー、キンタコねえ」
女「お持ち帰りもできるらしいです! 男さん、お願いしますね!」
男「え、まって。まだ食べるの?」
女「だって美味しいんですもん。食べなくちゃ勿体ないです!」
男「そうかー勿体ないか―、それなら仕方ないね」
118 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 22:32:49.06 ID:hFj05+0SO
女「男さんっ、ここのステーキ、美味しいらしいです!」
男「まってまって、さっき食べたばっかじゃん。それに、このパックのタコライス……」
女「是非入りましょう! 是非!」
男(そんなに目を輝かされたら……)
男「……仕方ないなあ」
男(断れないじゃん……)
119 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 22:33:15.99 ID:hFj05+0SO
女「ふー、美味しかったですねえ」
男「……うん、そうだね」
男(もう……大分苦しいんだけど)
女「あっ! ここ、この間テレビで特集されてた天ぷら屋さんですよ!」
男「え……へ、へえー、そうなんだ……」
男(まさか……いや、まさかな)
120 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 22:33:54.38 ID:hFj05+0SO
女「流石に……入れないですね」
男「はは、そうだよねー。流石にお腹いっぱ……」
女「こんなに食べてばかりだと、男さんのお財布が心配です」
男「よっしゃ上等だあ! 食えるもんなら食ってみろよ!」
女「え! いいんですか! それなら、喜んで!」
121 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 22:34:28.58 ID:hFj05+0SO
男「うっぷ、もう……食えね……」
女「男さん男さん、持ち帰りのタコライス食べましょう!」
男(マジで、ブラックホールみたいな食べっぷりだな……)
女「ふー……綺麗ですね」
男「……うん。まさか、こんなに綺麗な海を見ながらご飯を食べられるなんて。夢みたいだよ」
男(今食べてるのは、女さんだけだけど)
122 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 22:35:04.70 ID:hFj05+0SO
女「……もう皆さん、いなくなっちゃいましたね」
男「あー、だってもう7時だし。まだちょっと明るいけど、みんなご飯食べに行ってるんじゃないかな?」
女「そう……ですよね。なら……」
男「女……さん?」
男「な……なにしてるの?」
女「何って……決まってるじゃないですか」
123 :
◆PChhdNeYjM
[saga]:2017/05/21(日) 22:35:30.60 ID:hFj05+0SO
男「ちょ……! こんな所で脱ぐなよ!」
女「え、だって、誰もいませんよ」
男「俺俺! 俺がいるから!」
女「大丈夫ですよ、だって……」
男(ああ! 最後の一枚が……)
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