城ヶ崎美嘉「お姉ちゃんを目指して」

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51 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:03:52.32 ID:yDTGVauQ0

中々手強いね、この2人。
2人の攻略に集中するため、アタシは一旦、凛のなでなでをストップした。


美嘉「ごめんね、凛。一旦おしまい」

凛「あ……」

奈緒「すごい名残惜しそうな顔してる!?」

凛「し、してないよ!」

加蓮「凛がここまで骨抜きにされるなんて……」

凛「されてないからっ!」


凛が真っ赤な顔で反論してる。
凛、随分なでなでが気に入ったみたい。後でまた撫でてあげよう。


美嘉「加蓮、奈緒ちゃん、じゃあとりあえずアタシのことお姉ちゃんって呼んでみない?」

加蓮「呼ぶわけないでしょ」

奈緒「とりあえずの意味が分からないって」

52 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:04:29.32 ID:yDTGVauQ0

加蓮「だいたい私、今さら美嘉のこと姉だなんて思えないし」

美嘉「そう? アタシは加蓮のこと、今からでも妹って思えるんだけどな」


ゆっくりと、アタシは加蓮に近づいていく。


加蓮「な、なんでこっち来るの?」

美嘉「そ・れ・は……こうするためっ★」


そう言うと同時に、アタシは加蓮を後ろから思い切り抱きしめた。


加蓮「!? ち、ちょっと美嘉!?」

美嘉「おとなしくお姉ちゃんに抱きしめられちゃいな、加蓮♪」

加蓮「だ、だからお姉ちゃんとか思わないから!」


加蓮がアタシから逃れようと抵抗するも、そう簡単には離してあげない。

53 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:05:12.21 ID:yDTGVauQ0

加蓮「て、ていうか、レッスンの後だから汗臭いでしょ! お願いだから離れてってば!」

美嘉「えー? 全然汗臭くなんかないって」


試しに、加蓮の身体の匂いをくんくんと嗅いでみる。


加蓮「嗅がないでよ!?」

美嘉「……うん。良い匂いしかしないよ、加蓮」

加蓮「そ、そんなわけないでしょ!」

美嘉「確かに汗の匂いはするけど……これは加蓮が一生懸命レッスン頑張った証だもん。だから、とっても良い匂いだと思うよ」

加蓮「え……。な、なにそんなこと……」


? 急に加蓮が抵抗するのをやめたみたい。

どうして突然おとなしくなったんだろ……まあいいや。
じゃあ、せっかくだから―――


美嘉「よしよし、加蓮」

加蓮「ふぇ!?」


アタシは凛にしたように、加蓮の頭を優しく撫でた。

54 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:05:56.40 ID:yDTGVauQ0

妹が頑張ったんだから、ちゃんと労ってあげないとね。


美嘉「いつも加蓮がすごく頑張ってるの、アタシ知ってるよ。偉いね、加蓮」

加蓮「! や、やめ…………」

美嘉「アタシに撫でられるの、嫌?」

加蓮「い、嫌ってわけじゃ……ない、けど……」


加蓮は、アタシに撫でられている時の凛みたいに、俯きながら答えた。
まったく、似た者同士なんだから。


美嘉「良かった。じゃあもう少しこのまま撫でてるね」

加蓮「…………」


加蓮はそのまま、無言でアタシに撫でられ続ける。

55 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:06:27.43 ID:yDTGVauQ0

少し離れた所からは、奈緒ちゃんと凛がこっちを見ていた。


奈緒「か、加蓮が美嘉に身をゆだねてるぞ……」

凛「いいなぁ……」

奈緒「……なんて?」


凛が羨ましそうな目でこっちを見ていることに気付く。
うーん、そんな目で見られたらほっとけないよね。

仕方ない、加蓮のなでなではここまでにして、もう一度凛を―――


加蓮「……かも」

美嘉「ん?」


凛を撫でてあげようと思ったところで、加蓮が何かを呟いた。

56 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:08:36.04 ID:yDTGVauQ0

美嘉「加蓮、今なんて?」


アタシが訊ねると、加蓮は恥ずかしそうに顔を逸らしつつ……。



加蓮「……妹になるの、悪くないかも」



小さいけど、はっきりとした声で、そう呟いた。

その言葉に、アタシは思わず微笑む。
ふふっ……加蓮の耳、真っ赤になってる。


美嘉「そっか、悪くないか」

加蓮「うん……」

奈緒「加蓮がオチた!?」

凛「さすがお姉ちゃん……!」


奈緒ちゃんから驚愕の、凛からは羨望の眼差しを感じる。

57 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:09:53.05 ID:yDTGVauQ0

しばらくそのまま加蓮を撫で続けていると……加蓮が急にアタシの方を振り向く。


加蓮「ねぇ、お姉ちゃん」

美嘉「何?」

加蓮「早いとこ、うちのトラプリ三姉妹の最後の一人も、お姉ちゃんの妹にしようよ」


そう言うと、加蓮はいやらしく笑いながら、奈緒ちゃんに視線を向ける。


奈緒「え」

加蓮「ね、奈緒お姉ちゃん?」

奈緒「そ、そんな呼ばれ方したことないだろ!?」

凛「美嘉お姉ちゃんなら、すぐに奈緒お姉ちゃんも妹に出来るよ」

奈緒「凛まで!?」

美嘉「ふふっ、妹たちの期待には応えないとね」


アタシは抱きしめていた加蓮を離し、奈緒ちゃんに照準を合わせる。

58 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:10:21.65 ID:yDTGVauQ0

美嘉「奈緒ちゃん、覚悟はいい?」

奈緒「よくないっ! よ、よせ、美嘉! こ、こっち来るなぁっ!」

美嘉「え。……そ、そっか。奈緒ちゃんがそんなに嫌がるなら……何も……しないよ……」


アタシはその場で動きを止め、下を向いて俯く。
妹が嫌がることをするのは、お姉ちゃん失格だもんね……。


そんなアタシの態度を見ると、奈緒ちゃんは困惑した様子。


奈緒「あ……。……べ、別に嫌とかじゃない―――」



美嘉「凛、加蓮、言質取ったよ! 奈緒ちゃん抑えて!」

凛・加蓮『了解、お姉ちゃん!』



アタシが指示すると、凛と加蓮が即座に奈緒ちゃんを取り押さえる。

59 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:11:21.53 ID:yDTGVauQ0

奈緒「ちょ!? み、美嘉、あたしを騙したなっ!?」

美嘉「ごめんね、奈緒ちゃん。でも素直じゃない妹には、こうするのが一番かなって」

奈緒「あ、あたしは別に素直じゃなくないし、妹でもないっ!」

凛「すぐにそんなこと言えなくなるよ」

加蓮「お姉ちゃんにかかればね」

奈緒「こいつら完全に妹になってる!」

美嘉「さて、じゃあどうしてあげようかな〜?」


凛みたいになでなでか。それとも加蓮みたいに抱きしめちゃうか。
……あ、いいこと思いついた。あれにしよ★


アタシはそのいいことを実行するために、一歩、また一歩と奈緒ちゃんに近づいて行く。


奈緒「く、来るな……! あ、あたしは……あたしは絶対に、妹になんかならないんだからな―――っ!」

60 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:12:42.92 ID:yDTGVauQ0

 *


数分後。


美嘉「奈緒ちゃん、もうすぐ終わるからねー」

奈緒「な、なんで、こんな……うぅ」


そこには、アタシにゆったりと髪を梳かされる、しおらしい奈緒ちゃんの姿があった。


髪を梳かしながら、アタシは奈緒ちゃんに話しかける。


美嘉「奈緒ちゃんの髪、レッスンで少し乱れちゃってたもんね。ちゃんと綺麗に直さないと」

奈緒「べ、別に少しぐらい……どうせこの後またレッスンあるし……」

美嘉「また乱れたら、また直せばいいの。お姉ちゃんが何度でも梳かしてあげるから」

奈緒「だ、だから……あたしは妹になんか……」

美嘉「はい、これでおしまい」


アタシは、奈緒ちゃんの髪を梳かし終わる。

61 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:13:35.90 ID:yDTGVauQ0

奈緒「や、やっと終わった……」

美嘉「奈緒ちゃんの髪ってもふもふしてるから、梳かすのすごい気持ちよかったよ★」

奈緒「! き、ききき気持ちいいとか、そそそそういうの言うなばかぁっ!」

美嘉「えー? でもホントに気持ち良かったんだけどなー」

奈緒「だ、だからからかうのやめろぉ!」


アタシと奈緒ちゃんがそんなやりとりをしていると―――



加蓮「ねぇ、お姉ちゃん。奈緒はお姉ちゃんの妹にはなりたくないみたいだし、もう構わなくていいんじゃない?」

凛「加蓮の言うとおりだよ。妹じゃない奈緒よりも、妹の私たちを構うべきだと思うな」



突然、加蓮と凛が奈緒ちゃんに対して冷たい言葉を言い放った。


奈緒「……え」

62 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:14:14.98 ID:yDTGVauQ0

そして、2人の言葉に……その言葉の意味に気付き、アタシは頷く素振りをする。


美嘉「言われてみれば……確かにそうかもね。じゃあこれからは加蓮と凛だけを構うことにしよっか」

奈緒「え」

加蓮「やったぁ!」

凛「お姉ちゃん、私の髪も後で梳かしてもらっていい?」

美嘉「もちろんいいよ★ 可愛い妹の頼みだもん」

加蓮「え、ずるい。私にもしてよ、お姉ちゃん」

美嘉「はいはい、加蓮は凛の後ね」

凛「早い者勝ちだよ、加蓮」

加蓮「ちぇっ、先に言っとけばよかった」


アタシと加蓮と凛は、3人で仲睦まじく談笑を続ける。
奈緒ちゃんの存在を気にも留めずに。


奈緒「な、なあ……」


気にも留めないので、奈緒ちゃんがアタシたちにかける声も聞こえない。
アタシたちは談笑を続ける。

63 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:14:56.75 ID:yDTGVauQ0

奈緒「あ、あの……えっと……」


気にも留めないので、奈緒ちゃんがおろおろしているのにも気付かない。
談笑を続ける。


奈緒「……………」


気にも留めないので、奈緒ちゃんが何も言葉を発せなくなるのにも…………もうそろそろいいかな?


アタシは加蓮と凛に目配せをする。
そして、それに2人はこくりと小さく頷いた。


奈緒ちゃんを気に留めないとか、そんなことアタシたちがするわけがない。
ホントは3人とも、気付かれないようにずっとチラチラと奈緒ちゃんの様子を窺っていたのだ。


正直、妹をほったらかしにするのはお姉ちゃんとして心が痛んだけど…………これも作戦。
そして、いよいよそれも仕上げの時。

64 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:16:13.90 ID:yDTGVauQ0

美嘉「さて、じゃあアタシはもうそろそろ行くね。レッスン終わった頃にまた来るから」

凛「うん、待ってる」

加蓮「帰りに3人でポテト食べに行こうよ」

美嘉「いいね、そうしよっか」


アタシは凛と加蓮と約束をし、レッスン室のドアへと歩いて行った。
そしてドアノブに手をかけてから、もう一度凛たちの方を振り向く。


美嘉「じゃ、後でね」

凛「ばいばい、お姉ちゃん」

加蓮「約束だからねー」

美嘉「分かってるって」


アタシはそのまま凛と加蓮に手を振り、レッスン室を出ていこ―――



奈緒「ま、待って!」



―――出ていこうとしたところで、奈緒ちゃんが突然叫んだ。

65 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:17:08.94 ID:yDTGVauQ0

アタシは立ち止まり、奈緒ちゃんに体を向ける。


美嘉「奈緒ちゃん? どうしたの?」

奈緒「あ、あたしも…………うとに……」


奈緒ちゃんは、小さな声で何かをボソボソと呟く。

でも、何を言っているのかが(予想はついていたけど)よく聞こえなかった。


美嘉「うーん? ごめん奈緒ちゃん、小さくてよく聞こえないや。もっと大きな声で言ってくれる?」

奈緒「だ、だから……」



奈緒「あ、あたしも……妹に、してくれ……!」


66 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:18:31.97 ID:yDTGVauQ0

……作戦成功。
アタシと凛と加蓮は、ニヤリと笑みを浮かべた。

しかしアタシはすぐに表情を戻すと、意外そうな顔つきで奈緒ちゃんに訊ねる。


美嘉「え、奈緒ちゃんもアタシの妹になりたいの?」

奈緒「……う、うん、なりたい」


奈緒ちゃんは恥ずかしそうに目を伏せて、真っ赤な顔で頷いた。


美嘉「そっか。いいよ、もちろん」

奈緒「ほ、ホントか!?」

美嘉「で・も……それはアタシのことを、お姉ちゃんって呼んでくれたらの話ね?」

奈緒「え゛」

加蓮「妹なんだから、そう呼ぶのは当然でしょ?」

凛「お姉ちゃんをお姉ちゃんと呼べない者に、妹の資格はないよ」


加蓮と凛が援護射撃をしてくれる。

67 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:19:36.76 ID:yDTGVauQ0

奈緒「う、うぅぅ……」

美嘉「さあ奈緒ちゃん、どう? お姉ちゃんって呼んで―――」



奈緒「い、妹にしてっ……! お、おね……お姉、ちゃあんっ」



アタシの言葉を遮る形で、奈緒ちゃんが必死に声を絞り出した。


……ようやくお姉ちゃんって呼んでくれた。

アタシは笑顔で、奈緒ちゃんの元に近づいて行き―――


美嘉「ふふっ、よく言えました♪」


奈緒ちゃんの頭を、ふんわりと撫でた。


奈緒「ひゃう!?」

68 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:20:12.36 ID:yDTGVauQ0

美嘉「奈緒ちゃん、これがお姉ちゃんのなでなでだよ。気持ちいい?」

奈緒「き、気持ちよくなんか……」

凛「気持ちよくないなら、もうやめていいんじゃない?」


いつの間にかアタシたちの近くまで来ていた凛が、そう言い放った。

凛だけでなく、加蓮も傍まで来ている。


加蓮「奈緒、なでなでされたくないんだもんね?」

奈緒「そ、そんなこと言ってないだろっ!」

加蓮「じゃあ、そのままなでなでされてたいの?」

奈緒「え。い、いや、それは、あの、えっと……」

凛「はっきり言いなよ、奈緒」

奈緒「…………こ、このままが……いい」

69 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:21:09.10 ID:yDTGVauQ0

本心を告げた奈緒ちゃんに、アタシはもう一度同じ質問をする。


美嘉「なでなで、気持ちいい?」

奈緒「き、気持ち……いい……」

凛「最初からそう言えばいいのに」

加蓮「ほんっと、素直じゃないんだから」

奈緒「う、うるさいっ!」

美嘉「……ふふっ」


凛たち3人のやりとりに、思わずアタシの顔が綻ぶ。


奈緒「な、なんで笑うんだよ、美嘉!」

美嘉「美嘉? 奈緒ちゃん、そうじゃないでしょ?」

奈緒「あ、あぅ……その…………お、お姉ちゃん」

70 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:21:58.90 ID:yDTGVauQ0

美嘉「よろしい。別に笑ったわけじゃないよ、奈緒ちゃん。可愛い妹がまた一人出来て、嬉しかっただけ」

奈緒「か、かわっ!?」

加蓮「だってさ。可愛い妹の奈ー緒っ♪」

凛「良かったね、可愛い妹の奈緒」

奈緒「お、お前らいい加減にしろぉ!」

美嘉「まあまあ。落ち着いて、奈緒ちゃん」


なでなでなでなで。


奈緒「ふぇ……う、うん……」

加蓮「……からかわれて怒った奈緒を一瞬でおとなしくさせるなんて」

凛「……さすがお姉ちゃんだね」


それにしても奈緒ちゃんの髪、ホントふわふわしてるなぁ……すっごく良い撫で心地。
もちろん加蓮と凛も……妹はみんな、すっごく良い撫で心地なんだけどね。



まあ、それは置いといて……加蓮、奈緒ちゃん、そして―――トライアドプリムス、妹攻略完了★

71 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/15(月) 20:23:44.07 ID:yDTGVauQ0
次は中学生組にしようと思ってましたが、めでたく未央が全体2位Pa1位ということで、次はポジパにしようと思います
ホントなら楓さん出したいんですが、話の都合上当分出せないので

なお、ポジパを書くにあたって茜の学年が調べてみても不明瞭なため、このssでは高2ということにしておきます
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/15(月) 21:09:17.88 ID:G1vvtxapO

いい、いいぞ…
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/15(月) 21:29:37.92 ID:B4c1zY/5O
マーベラス
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/15(月) 22:33:49.41 ID:UI5kjB3DO
妹になったからには「お姉さま」と呼ぶべきじゃないのか

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/15(月) 23:31:28.62 ID:DIQqKg7no
カリスマは茜ちんの全力タックルを受けて果たして生きていられるか・・・乙
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/22(月) 13:11:32.88 ID:wHN5yQ8W0
楓さんも攻略対象ってことはあいさんとか木場さんも攻略対象なんだよな……期待乙
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 22:14:52.26 ID:v3jPScmZo
>>50
妹が最大13人増える作品があるんですよ奈緒ちゃん
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 23:47:28.09 ID:P8I0EmGGO
>>77
13人のアニメの方は認めないぞ、兄くんとして
79 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:32:24.53 ID:VOWqHzI60

お昼時のカフェテラスにて。
アタシは一人で、あの子たちを待っていた。


未央「あ、美嘉ね―――じゃなかった。お姉ちゃーん!」


やっと来たね。

椅子から立ち上がり、声の聞こえた方を向く。
すると、未央が駆け足で近づいてきて、その勢いのままアタシに抱きついてきた。


美嘉「おっと……もう未央ったら。びっくりするでしょ?」

未央「えへへー、ごめんお姉ちゃん」


あまり悪びれる様子もなく、謝ってくる未央。
まったくもう……可愛いから許すけど。

80 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:33:12.94 ID:VOWqHzI60

美嘉「それと未央。別に呼び方は美嘉ねーのままでもいいよ?」


未央が言い直したのに気付いて、アタシはそう伝えた。

未央が呼ぶ美嘉ねーの『ねー』は姉の『ねー』だから。
つまり未央は妹になる前から、アタシを姉みたいに慕ってくれてたんだよね。

そう考えると、美嘉ねーっていう呼び方の方が嬉しいかも。


未央「いいの? じゃあそうするね、美嘉ねー。この呼び方するの私だけだから、特別な感じして嬉しいし」


どうやら、未央も同じようなことを考えてくれてたみたい。
やっぱり姉妹だけあるね。


茜「未央ちゃん、本当に美嘉ちゃんの妹になったんですね!!」

美嘉「わ!?」


突然の大声に尋常でなく驚くアタシ。

81 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:34:10.05 ID:VOWqHzI60

そして横を見ると、そこには茜ちゃんと藍子ちゃんが。


美嘉「茜ちゃん、藍子ちゃん」

藍子「遅くなっちゃってごめんなさい、美嘉ちゃん」

美嘉「大丈夫、アタシも今来たとこだよ★ それに、アタシが誘ったんだしさ」


そう。今日アタシは、藍子ちゃんたちにお昼のお誘いをした。
目的はもちろん……藍子ちゃんと茜ちゃんを妹にするため!

82 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:34:52.37 ID:VOWqHzI60

 *


あの後、アタシたちはそれぞれお昼ご飯を注文した。

今は料理が来るまで、4人で楽しくお喋り中。


美嘉「未央はアタシの妹になったこと、2人に話してたんだね」

未央「未央『は』って?」

美嘉「凛は加蓮たちに、妹になったことを必死に隠そうとしてたからさ」

未央「あははっ、しぶりんは照れ屋さんだなぁ」


凛と違って、未央はそんなことしないか。
別に口止めもしてないし、隠すことでもないよね。

83 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:35:45.93 ID:VOWqHzI60

それに……この方が話を運びやすいかもだし。

さっそくアタシは、2人に妹になってほしいと伝えようと―――


藍子「あ、そういえば私たち、美嘉ちゃんにお願いがあるんでした」

美嘉「え?」


―――したところで、藍子ちゃんがそんなことを。


茜「そうでした! 美嘉ちゃん、折り入ってお願いがあります!!」



藍子「私たちも美嘉ちゃんの」

茜「妹にしてください!!」


84 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:37:05.07 ID:VOWqHzI60

美嘉「えぇえええええええええっ!?」


藍子ちゃんたちの方から!?


未央「私の話を聞いたら、2人も美嘉ねーの妹になりたくなったんだって」


話を運びやすいどころか勝手に運ばれてた!
あまりに急展開過ぎて、アタシは動揺を隠せない。


茜「駄目、でしょうか?」

藍子「やっぱり、迷惑ですよね……」


はっ!? 2人が悲しそうな顔してる!

……何してるの、アタシ。
こんなんじゃ、お姉ちゃん失格でしょ!

85 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:37:58.50 ID:VOWqHzI60

アタシは落ち着くため、一度深く息を吐く。

そして、2人の不安を払拭するために柔らかく微笑み、自分の気持ちを正直に伝えた。


美嘉「迷惑なんかじゃないよ、藍子ちゃん。それに茜ちゃんも。2人みたいな可愛い妹なら、いくらでも大歓迎★」


その言葉に、藍子ちゃんと茜ちゃんの表情がぱぁっと明るくなる。


茜「では私たち、美嘉ちゃんの妹になっていいんですね!!」

藍子「ありがとうございます、美嘉ちゃん」

美嘉「あ、2人とも―――」

未央「茜ちん、あーちゃん。もうその呼び方は違うんじゃない?」


さすが我が妹、未央。
アタシの言おうと思ったことを先に言ってくれた。

86 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:38:42.80 ID:VOWqHzI60

藍子「呼び方?」

茜「え、何かおかしかったですか!?」

未央「だからさ、ごにょごにょ……」


未央が2人に耳打ちする。


茜「……なるほど! そういうことですか!!」

藍子「うふふっ、分かりました」


内緒話が終わると、茜ちゃんと藍子ちゃんはアタシの方へ向き直った。
そして―――


藍子・茜『せーのっ』



藍子・茜『お姉ちゃん♪(お姉ちゃん!!)』



2人揃っての、お姉ちゃんコール。

……どうしよう。
料理が来る前に、2人の可愛さでお腹いっぱいになっちゃった。

87 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:39:20.01 ID:VOWqHzI60

 *


藍子「お姉ちゃん。私、してほしいことがあるんです」

美嘉「してほしいこと?」


みんなでご飯を食べ終えた後、藍子ちゃんがアタシにそんなお願いをしてきた(ちなみにアタシ、普通に料理食べられた。妹は別腹だったみたい)。


藍子「私のことを、なでなでしてもらえませんか?」

美嘉「なでなでね。もちろんいいよ★ 妹をなでなでするのは、お姉ちゃんの義務だから」

茜「藍子ちゃん、お姉ちゃんのなでなでの話を未央ちゃんから聞いて、ずっとなでなでしてもらいたがってたんですよ!!」

88 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:39:50.66 ID:VOWqHzI60

美嘉「え、未央、アンタどんな話したの?」

未央「美嘉ねーのなでなでの感想を、ありのままに伝えただけだよ?」

藍子「未央ちゃん、『お姉ちゃんのなでなでは世界を狙えるほどだよ』って絶賛していたんです」


盛りに盛ってる!


藍子「きっと、とっても気持ちいいんだろうなぁ……うふふっ、楽しみ♪」


期待のされ方ハンパない!

89 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:40:26.78 ID:VOWqHzI60

ど、どうしよ。
さすがにここまでの期待には応えられそうに…………いや、そうじゃないでしょ、アタシ。

妹の期待に応えるのが、お姉ちゃんの務めなんだから。


美嘉「……やるしかない」


妹たちに聞こえないように、呟く。

アタシは座っていた椅子の位置をずらし、藍子ちゃんの横に座った。


美嘉「それじゃ藍子ちゃん、なでるね」

藍子「よろしくお願いします、お姉ちゃん♪」


藍子ちゃんがアタシに微笑む。この笑顔は裏切れない。

90 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:41:01.39 ID:VOWqHzI60

……ならもう、これしかない。



なでなでを新たな高みへと昇華させる!



覚悟を決めたアタシは、左手をゆっくりと藍子ちゃんの頭に伸ばす。


藍子「あ……」


まずは、いつも通りに撫でる。愛情を込めて、優しく、緩やかに。


藍子「これが……ふふっ」


藍子ちゃんが嬉しそうな表情になった。
とりあえず、お気に召してくれたみたい。

91 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:41:39.13 ID:VOWqHzI60

問題はここから。

撫でる速度を変える? それとも強さ?

いや、それは駄目。
練習もなしにいきなりそんなことしたら、上手く加減できなくて、むしろ不快にさせちゃうかも。

なら、どうすれば…………ん?


そこでアタシは、はたと気付く。

アタシの左手は藍子ちゃんの頭を撫でているけど―――



アタシの右手、空いてるじゃん。



瞬間、アタシの脳裏にある考えが閃いた。

この右手を使って―――いやでも、上手くいくかな……。
猫や犬ならともかく、人間にはあんまり意味が―――え、ええい、もうやるっきゃないでしょ!

藍子ちゃんの期待に応えなきゃ!

92 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:42:29.17 ID:VOWqHzI60

アタシは胸の内の不安を悟られぬよう注意しつつ、藍子ちゃんに声をかける。


美嘉「藍子ちゃん」

藍子「なんですか、お姉ちゃん」

美嘉「ちょっとだけ、上向いてくれる?」

藍子「こう、でしょうか?」


藍子ちゃんがアタシに言われた通り、少しだけ顔を上げてくれる。


美嘉「うん、オッケー★」


そうして、アタシは左手で藍子ちゃんの頭を撫でたまま―――右手を、藍子ちゃんの喉元へ伸ばした。


藍子「ふぇっ!?」

美嘉「大丈夫だから。そのまま、ね?」

藍子「は、はい……」


アタシは優しく微笑みかけて、藍子ちゃんの緊張を和らげる。

そして、右手の指でやんわりと、藍子ちゃんの喉元を撫でていく。
苦しくならないよう、慎重に、ふんわりと。

93 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:43:10.08 ID:VOWqHzI60

そうしていると……藍子ちゃんが、気持ちよさそうに目を細めた。


藍子「ふぁ……」


お、おお? 若干不安だったけど……いけそう!


未央「ずるい、あーちゃん! 私もそんなのされたことないのに!」

藍子「はぅ〜……♪」

茜「未央ちゃん! 藍子ちゃん、聞こえてない感じですよ!!」

未央「まさか!? 両手で撫でられることで、気持ちよさも2倍に!?」


未央がおかしな考察をしているけど、放っておく。

今、藍子ちゃんから気を抜くわけにはいかない。
アタシは精神を集中して、藍子ちゃんを撫で続ける。

94 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:43:46.53 ID:VOWqHzI60

美嘉「藍子ちゃん、喉苦しくない?」


なでなで。


藍子「だいじょぉぶですぅ……」


なでなで。


美嘉「それなら良かった★」


なでなでなでなで。


藍子「ふぁい……すごく、良いですぅ……」


なでなでなでなで。

95 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:44:36.81 ID:VOWqHzI60

未央「会話が微妙に噛みあってないような……ん?」


なでなでなでなでなでなで。


未央「あっ!? ねえ、ちょっと美嘉ねー!」

美嘉「ふふふっ」

藍子「うふふっ」


なでなでなでなでなでなで。


未央「き、聞こえてないし……お願い、茜ちん!」

茜「お姉ちゃん、聞こえてますかーっ!?」

美嘉「わっ!?」


突然の大声に集中が途切れ、アタシは藍子ちゃんのなでなでを中断。

96 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:45:22.31 ID:VOWqHzI60

美嘉「な、何?」

未央「美嘉ねー、いつまであーちゃんなでなでしてるの! もう10分はやってるよ!?」

美嘉「え、そんなになでなでしてた?」


未央に言われて、時計を見てみる。
……ホントだ。いつのまにか時間が経ってる。

もうすぐ昼休みも終わる時間じゃん。


藍子「全然気付きませんでした」

未央「まったく、2人ともゆるふわしすぎだよ」

茜「とはいえ、私たちも10分経つまでゆるふわしてましたが!」

未央「……。……うん、それはいいんじゃないかな。と、とにかく美嘉ねー、私もなでなでしてよー!」

97 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:45:48.28 ID:VOWqHzI60

美嘉「うーん……悪いけど、未央はまた今度ね」

未央「どうして!?」

美嘉「まだなでなでしてない茜ちゃんが先でしょ? それで多分、昼休み終わっちゃうだろうし」

未央「う〜、そういうことなら仕方ないかー」

茜「お姉ちゃん! 私、なでなでもしてほしいですけど、他にやりたいことがあります!」

美嘉「やりたいこと?」

茜「さっき未央ちゃんがしていたみたいに、お姉ちゃんに抱きついてみたいです!!」

98 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:46:16.32 ID:VOWqHzI60

美嘉「なるほど、茜ちゃんはそっちね。いいよ、お姉ちゃんが優しく受け止めてあげる★」


アタシは椅子から立ち上がり、腕を広げる。
これで受け止め体勢はバッチリ。

茜ちゃんも既に立ち上がって、準備万端の様子。


美嘉「茜ちゃん、いつでもどうぞ」

茜「では……お姉ちゃーんっ!!」


アタシの胸に、茜ちゃんが助走をつけて勢いよく飛び込んでくる。
それを笑顔で受け止めようと―――


美嘉「ふふっ、茜ちゃんは元気いっぱ―――かはっ!?」


―――茜ちゃんに抱きつかれた瞬間、身体に尋常じゃない衝撃が襲いかかった。

99 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:46:48.92 ID:VOWqHzI60

意識が持っていかれそうになるも、お姉ちゃんの意地でどうにか留める。

後ろに吹っ飛びそうになるも、お姉ちゃんのプライドでどうにか踏みとどまる。

『めきめきぃっ』と肋骨がきしむも、お姉ちゃんの底力でどうにか耐える。


……あははっ、しまったなー。



茜ちゃんのパワーのこと、全然考えてなかった★


100 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:48:10.31 ID:VOWqHzI60

茜「? お姉ちゃん、どうしました?」


茜ちゃんがきょとんとした顔でアタシを見上げてくる。
それにアタシは、脂汗をかきつつも必死に笑顔を作って答えた。


美嘉「ど、どうも、してないよ。……ふ、ふふっ、茜ちゃんは、元気いっぱいだね★」


左手を茜ちゃんの頭に伸ばし、そのまま撫でる。
お姉ちゃんとして、これだけはやらないと……。

でもさすがに、右手で喉元を撫でる気力は出ない。
ごめんね、茜ちゃん。今日はこれだけで勘弁して。


茜「な、なんでしょう!? 胸の辺りがポカポカしてきました!!」

未央「それが美嘉ね―のなでなでだよ、茜ちん」

藍子「なんだか幸せな気持ちになりますよね」

茜「はい、熱いです! ファイヤー!!」


茜ちゃんたちが微笑ましい会話をしている。

101 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/25(木) 20:49:34.31 ID:VOWqHzI60

この子たちに、アタシが満身創痍であることを気付かれちゃ駄目。
お姉ちゃんとして、妹を傷つけるわけにはいかない。

昼休みが終わるまであと少し。
それまでなんとしても耐え抜くんだ、アタシ!



まあ、それはともかくとして……藍子ちゃん、茜ちゃん、そして―――ポジティブパッション、妹攻略完了★





……決めた。

身体、鍛えよう。

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/26(金) 01:15:54.24 ID:o9n67yfAo
おつおつ
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/26(金) 01:20:43.37 ID:juldC4UrO

お姉ちゃんパワーすげえ
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/26(金) 17:48:55.55 ID:0vuFvxo7o

姉プライドが半端ないな
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/27(土) 00:25:32.89 ID:fplWnc9Lo
更新来てたのか
お姉ちゃんって凄いんだな・・・
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 12:06:48.99 ID:/vq5eB9X0
やっぱすげえよミカは
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 19:08:00.45 ID:YTwHvI0k0
気になって年齢調べてみたけどミカと卯月と歌鈴とウサミンって同い年だったんだな
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/30(火) 01:57:38.51 ID:+Ih4N30f0
次はピンチェかな
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 12:58:34.03 ID:Vf1blE+k0
まだかなかなかなかなかなかな子
110 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:10:00.66 ID:m+2Lak1/0
今回、試しに一人称の視点を変えてみます
主役交代じゃないです
111 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:10:41.65 ID:m+2Lak1/0

私、乙倉悠貴は今、軽い眩暈を伴うほどに困惑しています。


仕事帰り、私がいつも通りに事務所の扉を開けたら―――



幸子「さあ! もっと言ってくれてもいいですよ、お姉ちゃん!」

美嘉「幸子ちゃんはホントにカワイイね★ 可愛い〜、可愛い〜♪」



―――慈愛に満ちた表情の美嘉さんが、幸子さんの頭を撫でていたんです。

仲良く、ソファに並んで座って。

112 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:11:25.97 ID:m+2Lak1/0

幸子「ふふーん♪ まあ、ボクがカワイイというのは当たり前ですけどね!」

美嘉「ふふっ。でも何度言ったって足りないくらい、幸子ちゃんは可愛いし」

幸子「その通りです! ボクのカワイさを表すには、これくらいの言葉じゃ全然足りませんね!」

美嘉「うん、だからもっともっと可愛いって言うね。可愛い可愛いっ♪」

幸子「うふふふっ! さすがお姉ちゃん、ボクのカワイさを完璧に理解してますね!」


幸子さんがとってもご満悦そうです。

すると、美嘉さんの隣―――幸子さんの座っている側の反対から、不服そうな声が上がりました。


みく「お姉ちゃん、幸子チャンばっかり構わないでよー!」

美嘉「ごめんね、みくちゃん。そんなつもりなかったんだけど」


声の主は、みくさん。

美嘉さんは今、幸子さんとみくさんに挟まれる形でソファに座っているんです。
113 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:11:58.78 ID:m+2Lak1/0

……あ、よく見るとみくさん、眼鏡をかけています。
そしてテーブルには、一枚のプリントと筆記用具が。どうやら勉強モードみたいです。


みく「ほら、ここ! この問題が分からなくて」

美嘉「どれどれ?……なるほど、三角関数か。これはね、こう考えるの―――」

みく「―――そっか。それでこうなって………………解けたにゃ!」

美嘉「解き方が分かれば簡単でしょ?」

みく「うん!」

美嘉「また分からない問題があったら、いつでも訊いていいよ★ 答えは駄目だけど、解き方ならいくらでも教えてあげるから」

みく「それで十分にゃ。ありがと、お姉ちゃん」

幸子「お姉ちゃん、ボクを忘れないでください!」

美嘉「もう、忘れてないってば」


美嘉さんにお礼を告げて、みくさんは再びプリントに向かいました。
そして美嘉さんは再び、幸子さんになでなでを。
114 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:12:50.00 ID:m+2Lak1/0

悠貴「こ、これは……どういう……?」


その3人のやりとりに、私の困惑はとどまる所を知りません。


普段以上に仲睦まじい様子なのもそうですが……さっきからなぜ2人とも、美嘉さんのことをお姉ちゃんと呼ぶのでしょうか?

美嘉さんの妹は、莉嘉さんだけですよね?

私が知らなかっただけで、実は莉嘉さんを入れて4人姉妹だったとか―――い、いやいや、さすがにそれはないでしょうし。

う、うーん……ならどうして……?

……いや、こうして考え込んでも仕方ありません。
私はごくりとつばを飲み込み、意を決して、美嘉さんに話しかけます。


悠貴「あの、美嘉さんっ」

美嘉「あ、悠貴ちゃん、戻って来てたんだ。おかえり★」

悠貴「はい、ただいま戻りましたっ!……じゃなくてですねっ! これ、どういう状況なんでしょうかっ?」

美嘉「どういう状況って……見ての通り、妹たちを愛でてるだけだよ?」

悠貴「妹っ!?」


困惑が混乱に変わりました。
ちょっと美嘉さんが何を言ってるのか分かりません。

なんですか妹って。
115 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:13:33.30 ID:m+2Lak1/0

私はさらに詳しく訊ねようと―――


悠貴「み、美嘉さん、妹っていったい―――」


《ガチャ―――》

卯月「ただいま戻りましたっ」


訊ねようとしたタイミングで、卯月さんが事務所に入ってきました。

美嘉さんの意識はそちらに向いてしまいます。


美嘉「おかえり、卯月」

卯月「ただいま、お姉ちゃん♪」

悠貴「卯月さんもっ!?」


卯月さんまで当然のように、美嘉さんをお姉ちゃんと呼びました。

もう訳が分かりません。意味不明です。
私、世にも奇妙な物語に巻き込まれたんでしょうか。

頭の中がぐるぐるします。
それどころか頭まで痛くなってきました。

116 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:14:17.74 ID:m+2Lak1/0


悠貴「美嘉さん美嘉さんっ」


私は今度こそ詳しい事情を訊こうと、美嘉さんに呼びかけます。


美嘉「どうしたの、悠貴ちゃん。……ん? 今気付いたけど悠貴ちゃん、なんだか顔赤くない?」

悠貴「私の顔色なんて今はどうでもいいですよっ」

美嘉「いやいや、よくないよ」


そう言うと美嘉さんはソファから立ち上がり、私の元へ近づいてきました。


美嘉「ちょっと、おでこ触るね」

悠貴「えっ、あ、はい……」


戸惑う私に構わず、美嘉さんは私のおでこに手を当てました。
そして、もう片方の手は自分の額に。


美嘉「……やっぱり熱い。悠貴ちゃん、熱あるんじゃない?」

悠貴「熱、ですか?」


そういえば今朝、微熱があったような……。
身体がだるくて……たまに咳も……。それにさっきの眩暈と頭痛……。

…………んん?
117 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:15:09.98 ID:m+2Lak1/0

悠貴「も、もしかして私、風邪引いてますっ?」

美嘉「いや、アタシに聞かれても。自分の身体なんだから、どうなのかは自分が一番―――」

悠貴「けほっ、こほっ!」


美嘉さんの声を遮る形で、咳が出ました。


悠貴「す、すみませんっ」

美嘉「悠貴ちゃん、間違いなく風邪引いてるよ!」

卯月「え、悠貴ちゃん風邪ですか!?」

幸子「た、大変です! 急いで救急車を……119番って何番でしたっけ!?」

みく「落ち着くにゃ幸子チャン! 109番に決まってるでしょ!」

卯月「みくちゃんも落ち着いて! 109じゃなくて009だよ!」

美嘉「それも違うし、そもそも風邪で救急車は大げさすぎ! 呼ばなくていいの! 3人とも、深呼吸でもして落ち着く!」


美嘉さんの放ったその台詞に、慌てふためいていた卯月さんたちが多少冷静さを取り戻しました。

その様子を確認すると、美嘉さんは私の方を振り向きます。

118 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:15:51.60 ID:m+2Lak1/0

美嘉「とにかく、早く女子寮に帰った方がいいよ。アタシが付き添うね」

悠貴「あ、いえ一人で―――」

美嘉「悠貴ちゃん、ふらついてる」

悠貴「えっ?」


言われて気付きます。

私の視界が、ぐらついていることに。


美嘉「そんな状態で、一人でなんて帰せないからさ。悠貴ちゃん、ね?」


私の目をまっすぐに見つめてくる、美嘉さん。

本気で心配してくれているのが、その表情から伝わってきて。


悠貴「すみません……。お願いして、いいですか?」


気が付いたら、そう言葉を発していました。

119 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:16:38.07 ID:m+2Lak1/0

 *


あれから女子寮の自室に帰ってきて……私は今、ベッドに横たわっています。

でも、部屋には私だけじゃなく―――


美嘉「悠貴ちゃん。スポーツドリンクを枕もとに置いておくから、こまめに飲んでね」

悠貴「あ、ありがとうございますっ」

美嘉「……さてと。薬飲んで、マスクつけて、ドリンクもOK。あとは……」


ベッドの横で、美嘉さんが呟いています。

120 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:18:10.14 ID:m+2Lak1/0

私は顔をそちらに向け、おずおずと話しかけました。


悠貴「あの、美嘉さん」

美嘉「ん? どうかした?」

悠貴「やっぱり看病なんていいですよ。移ったら大変ですし……」

美嘉「そんなこと気にしなくていいから、悠貴ちゃんは安静にしてて。風邪、早く治したいでしょ?」

悠貴「それは……はい」

美嘉「なら、誰かに看病してもらうのが一番★ そうすれば、風邪なんてすぐに治っちゃうって!」


明るい調子で笑う美嘉さん。

それに何も返せずにいると―――


美嘉「あ、そうだ」


その言葉とともに、美嘉さんが何かを思いついたような表情に。

121 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:18:38.66 ID:m+2Lak1/0

美嘉「悠貴ちゃん、氷枕って部屋にある?」

悠貴「いえ、無かったと思います」

美嘉「そっか。じゃあ、寮の誰かが持ってるかもしれないから、ちょっと聞いてくるね。すぐ戻るから、安心して待ってて」


そう告げて、美嘉さんは部屋から出て行きました。

122 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:19:25.22 ID:m+2Lak1/0


……どうして、こんなことになったのか。

私に付き添ってきてくれた美嘉さんは、部屋に到着すると、このまま私の看病をすると言い出したんです。


しかも、泊まり込みで。


当然、私は断りました。
そこまで美嘉さんに迷惑をかけるわけにはいきません。

しかし、美嘉さんの意思は揺らぐことなく……結局、看病してもらうことに。


悠貴「でも……正直、嬉しいかも」


美嘉さんには、ああ言ったものの……本当の気持ちは、それで。
心の底では、誰かに看病してもらいたくて。


悠貴「……まだかな」


思わず口から出た、その呟きに。

美嘉さんが戻ってくるのを待ちわびていることに、気付きました。

123 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:20:49.79 ID:m+2Lak1/0

 *


美嘉「悠貴ちゃん、晩ご飯出来たよ」


夕飯時。
美嘉さんが一つのお茶椀を持って、台所から出てきました。


美嘉「やっぱり、風邪引いた時はおかゆだよね。でも、ただのおかゆじゃ味気ないし、何よりそんなに美味しくない……。てなわけで、特製たまご粥を作ってみましたーっ★」

悠貴「わぁっ……!」


目の前に出されたお茶椀に、私は目を輝かせました。

ご飯に絡みつく、とろとろの卵。上に細かく刻まれたネギが少々かかっていて。
鼻孔をくすぐるかぐわしい香りには、食欲がそそられます。

124 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:21:17.43 ID:m+2Lak1/0

悠貴「美味しそうっ!」

美嘉「でしょ? これ食べれば、風邪なんてどっかに吹っ飛んでくから」


そう告げ、美嘉さんは手に持ったスプーンでおかゆをすくい、冷ますために『ふー、ふー』と、息を吹きかけます。

……? それ、私のご飯じゃなかったんですか?

と、思っていると―――


美嘉「はい、悠貴ちゃん。あーん」


その台詞とともに、私の顔の前にスプーンの先が向けられました。


悠貴「……えっ!? い、いやいや、自分で食べられますよっ!」

美嘉「もう、遠慮しないでいいから」

悠貴「遠慮とかじゃなくてですねっ!?」


すっごく恥ずかしいです、それっ!

125 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:22:02.70 ID:m+2Lak1/0

美嘉「あのね、悠貴ちゃん。風邪を引いてる時は、思う存分甘えていいって決まってるの。だからほら、口開けて。はい、あーん」

悠貴「うぇぇ……? あ、あーん……」


おそるおそる口を開けると、スプーンが口の中に。

あ……とろりとした卵がご飯と組み合わさって……なんていい舌触り。
おかゆがこんなに美味しいなんて……!

私は味を堪能しつつ、もぐもぐとよく噛んで、ごっくんと飲み込みました。


美嘉「美味しい?」

悠貴「とってもっ!」

美嘉「良かった★ じゃ、どんどん食べさせてあげるね」

悠貴「はいっ♪」


美嘉さんの差し出すおかゆを、パクパクと口にしていく私。

いつの間にやら、美嘉さんから食べさせてもらうことへの羞恥心が消えていました。

126 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:22:43.71 ID:m+2Lak1/0

 *


まさかこんなにも早く、さっきの『あーん』より恥ずかしい思いをすることになるとは。


美嘉「悠貴ちゃん、タオル熱くない? 大丈夫?」

悠貴「だ、大丈夫です……」


―――美嘉さんに、身体を拭いてもらうことになるなんて。


ベッドの上で、上半身裸になっている私。

背中には、蒸した温かいタオルの感触が行き来しています。

127 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:23:43.40 ID:m+2Lak1/0

悠貴「うぅ、美嘉さぁんっ……! 確かに大浴場まで行くのは辛くて無理ですけど、だからってこれは恥ずかしすぎますよぉっ……!」

美嘉「あれ? 悠貴ちゃん、そこまで恥ずかしがり屋さんだったっけ?」

悠貴「これは誰でも恥ずかしいと思いますっ!」

美嘉「あははっ、そりゃそっか★ でもこうして身体を拭くだけでも、大分すっきりするからね〜」

悠貴「それはそうかもですけど……」

美嘉「よし、これで背中はおしまい★ 次は腕だね。はい、伸ばしてー」

悠貴「こ、こうですかっ?」


言われるがまま、腕をまっすぐ伸ばします。

128 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:24:13.26 ID:m+2Lak1/0

美嘉「うん、そんな感じ」


すると美嘉さんは丁寧に、だけどテキパキとした動作で拭いてくれます。
美嘉さんが言っていた通り、拭かれた所はすっきりして気持ちがいいです。

そして、両腕を拭き終わって。残るは……。


美嘉「さて、あとは前だけど……」

悠貴「そ、それは自分でやりますっ!」

美嘉「えー? せっかくだから、このままアタシが拭いてあげ―――」

悠貴「なくて結構ですからっ!」


さすがにこれだけは譲れませんっ。


美嘉「冗談冗談★ はい、どうぞ」


美嘉さんが私にタオルを渡してくれます。
良かった……。またこのまま押し切られてしまうのかと思いました。

129 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:24:41.52 ID:m+2Lak1/0

 *


美嘉「それじゃ、電気消すね」

悠貴「お願いします」


電気が消え、部屋には窓から差し込む月明かりだけが残りました。
もう、就寝の時間です。

電気のスイッチを押した後、美嘉さんは床に敷いた布団の中へ。


悠貴「あ、そういえば……美嘉さん、寝る前に訊きたいことがあるんです」

美嘉「なに?」


私はベッドの端までもぞもぞと動いて、美嘉さんの顔が見える位置に。
美嘉さんもこっちに顔を向けてくれます。

130 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:25:40.10 ID:m+2Lak1/0

悠貴「どうして事務所で幸子さんたちは、美嘉さんのことを『お姉ちゃん』と呼んでいたんですか?」

美嘉「ああ、それは幸子ちゃんたちがアタシの妹になったからだよ」


……。……風邪で頭が上手く回っていないせいか、美嘉さんの言葉の意味がよく分かりません。


悠貴「すみません、よく意味が分からないので、もっと詳しく話してもらっていいですか?」

美嘉「ん、いいけど……うーん、どう話したものかな……」


そして、美嘉さんは私に話してくれました。

最近、美嘉さんは事務所のみんなを次々に妹にしているそうです。
さらには、これからもどんどん妹を増やしていくつもりだとか。

……詳しく聞いても、よく理解できませんでした。

131 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:26:31.19 ID:m+2Lak1/0

悠貴「あの、そんなことをしなくても、みんな美嘉さんのこと、お姉さんのように慕っていると思いますよ? その……私もそうですし」

美嘉「ふふっ、ありがと。でも……んー……『お姉さん』と『お姉ちゃん』って、似てるようで少し違う気がするんだよね」

悠貴「? 同じじゃないんですか?」

美嘉「『お姉さん』だと、ちょっと他人行儀な気がするっていうかさ。『お姉ちゃん』の方が親密な感じしない?」


なんとなく、分かるような、分からないような……。


悠貴「それは、美嘉さんが莉嘉さんにそう呼ばれているからじゃないんですか?」

美嘉「……あっ、そうかも。その発想無かったよね」

悠貴「無かったんですかっ!?」

美嘉「そっか。じゃあアタシ、莉嘉と同じくらいみんなと仲良くなりたいって思ってるんだ。なるほどねー……自分の気持ち、再認識した」


美嘉さんがうんうんと頷いています。

132 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:27:26.53 ID:m+2Lak1/0

美嘉「悠貴ちゃん。色々話したけど、つまりはそういうことみたい。アタシみんなと、本当の姉妹みたいな関係になりたいんだ。『お姉さんのように』慕ってもらえるのは、当然嬉しいけど。『ように』が無くなれば、もっと嬉しいから」

悠貴「本当の姉妹、ですか」

美嘉「うん。だからもちろん―――」


そこで言葉を切り、美嘉さんは上半身だけ布団から起き上がりました。

その体勢のまま、ベッドに横向きに寝転がっている私の目の前まで、近寄ってきて。
目と鼻の先。お互いの息がかかるほどの距離まで、私に顔を近づけます。


そして柔和な笑みを浮かばせながら、美嘉さんは告げました。



美嘉「悠貴ちゃんとも、そんな姉妹になりたいな」



それはとても優しく、安心する声色。

133 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:28:19.82 ID:m+2Lak1/0

悠貴「あ……えっと、その……」


私はなぜか上手く、言葉を返せません。

それにどうしてか、顔が熱くなってきました。
きっと、まだ熱が下がっていないから。


ホントは……照れてるだけだったり、するんですけど。
熱のせいということに、しておきます。

そんな私の目の前で、美嘉さんが小さく笑いました。


悠貴「ど、どうして笑ったんですかっ?」

美嘉「ううん、なんとなく。さて、お喋りはこれくらいにして、そろそろ寝よっか」

悠貴「そ、そうですねっ」


美嘉さんが私から離れて、自分の布団に戻ります。

134 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:29:00.27 ID:m+2Lak1/0

美嘉「あ、それと寮のみんなも悠貴ちゃんのこと心配してたよ」

悠貴「みんなが?」

美嘉「だから、ぐっすり寝て風邪を治して、早く元気な姿見せてあげないとね★」

悠貴「……はいっ」

美嘉「それじゃ……おやすみ、悠貴ちゃん」


おやすみなさい、美嘉さん。
そう返そうとしたけれど、言葉を紡ぐ直前に、私は逡巡します。

135 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:30:01.13 ID:m+2Lak1/0

今日、私をずっと看病してくれた美嘉さん。

私のために、こうして寝るときまで一緒に居てくれる。
そのおかげで今も、不安な気持ちにはならなくて。


今まで一緒に過ごした時間を、一つ一つ思い浮かべる。
これから一緒に過ごしていきたい時間も、想像して。


そして、たった今したばかりの、美嘉さんとの会話。
私の胸には、温かい想いが生まれていて。


だから……返す言葉に、相応しいのは―――



悠貴「おやすみなさい、お姉ちゃんっ」



自然と、私はそう口にしていました。

136 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/06/12(月) 00:31:23.47 ID:m+2Lak1/0

美嘉「!」


私の言葉に、美嘉さん―――お姉ちゃんは一瞬驚いたような表情に。
でも、すぐにそれは柔らかい表情へと。


美嘉「……うん、おやすみ」

悠貴「……おやすみっ」


お姉ちゃんと笑みをかわしてから、私は仰向けに体勢を変え、目をつぶる。
耳に入ってくるのは、私とお姉ちゃんの小さな呼吸音だけ。

なんだか、穏やかな気持ち。
風邪をひいているのに、今日はぐっすり眠れそう。


お姉ちゃんがあんなに親身に看病してくれたんだから。
きっと明日にはもう、風邪なんて治ってる。そんな気がする。

だから、『ありがとう』は、明日にとっておこう。


それで元気になったら……お姉ちゃんを、ランニングに誘ってみようかなっ。

137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/13(火) 00:25:06.49 ID:jmmDpLFT0
乙。いやー妹が順調に増えて行っているようで何より。
楓さんやみじゅきも期待しています。マジで。


あとなんか時間進んでね?
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/13(火) 00:25:48.17 ID:jmmDpLFT0
やっぱり
5分近くタイムトラベルするのは珍しいな
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/15(木) 19:28:20.34 ID:+zak9EAbo
幸子とみくにゃんはちょろいから割愛か・・・
幻滅しました前川さんのファンになります
140 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/07/08(土) 15:43:23.99 ID:uasWD+er0
少し時間がさかのぼります。
141 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/07/08(土) 15:44:30.80 ID:uasWD+er0

 ***


アタシは事務所の廊下を歩きながら、これからのことについて思案を巡らせていた。

妹は順調に増えてきてる。でもアタシの目標(妹ハーレム)には、まだまだほど遠いのだ。


美嘉「もっともっと、たくさん可愛い妹が欲しい……!」

幸子「呼びましたか?」

美嘉「わぁ!?」


ふいに、どこからともなく幸子ちゃんが現れた。

142 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/07/08(土) 15:45:31.95 ID:uasWD+er0

美嘉「さ、幸子ちゃん?」

幸子「カワイイと聞こえたので、てっきりカワイイボクのことかと。カワイイ違いでした?」

美嘉「あー……ううん、ある意味合ってる。凄いね、幸子ちゃんのカワイイセンサー★」

幸子「なんだ、やっぱりボクのことだったんですね。美嘉さん、ボクに何か用ですか?」


思いがけず、新たな妹を増やすチャンスが訪れた。よーし、この機は逃さないっ。


美嘉「実はね、幸子ちゃんにアタシの妹になってほしくて」

幸子「ふむふむ…………ふむ?」


幸子ちゃんが頭に疑問符を浮かべている。シンプルにこちらの意思を伝えたはずなのに、どうしたのだろう?

……あ、そっか。アタシとしたことが、言葉が足りなかったみたい。

143 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/07/08(土) 15:46:44.63 ID:uasWD+er0

幸子「あの……美嘉さん、よく意味が分からな―――」



美嘉「カワイイ幸子ちゃんに、アタシの妹になってほしいの!」



幸子「少し分かってきましたが、まだイマイチですね! もっと何かボクに伝えるべきことがあるんじゃないですか?」


少し乗り気になってくれたみたいだけど、まだ駄目か……なら3倍で!


美嘉「カワイイカワイイ幸子ちゃん! アタシのカワイイ妹になって!」

幸子「仕方ないですね〜、そこまで言うならこのカワイイカワイイボクがカワイイ妹になってあげます!」

美嘉「幸子ちゃん!」

幸子「お姉ちゃん!」


がしっと、熱い抱擁を交わし合うアタシと幸子ちゃん。今ここに、新たな姉妹の絆が誕生したのだ。

144 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/07/08(土) 15:47:53.13 ID:uasWD+er0



みく「……2人とも、こんな廊下で何してるの?」



唐突にかけられた声に振り向くと、いつの間に来ていたのか、そこにはなぜかジト目になっているみくちゃんがいた。


美嘉「みくちゃん。何って、見ての通り姉妹でスキンシップをね★」


もう十分に抱きしめたので、アタシは幸子ちゃんから離れる。


みく「あ、なーんだ姉妹のスキンシップか―――って、にゃんでやねん!」


本場関西のノリツッコミを惜しみなく披露するみくちゃん。


みく「姉妹って何!? 美嘉チャンの妹は莉嘉チャンでしょ? いつから幸子チャンが美嘉チャンの妹になったのにゃ!」

幸子「1分くらい前からですね」

みく「出来たてほやほやだね!? え、ホントにどういう―――あ、そういえば未央チャンが、美嘉チャンが妹を増やして回ってるとか意味不明なこと言ってたけど……もしかしてそれと関係あるの?」


未央ったら、藍子ちゃんたちだけじゃなく事務所のみんなに触れ回ってるんだ。

145 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/07/08(土) 15:50:08.47 ID:uasWD+er0

美嘉「そーだよ、みくちゃん。さすがアタシの妹、察しがいいね★」

みく「みく、美嘉チャンの妹になった覚えないんだけど!?」

美嘉「だったら今からなろ! 美嘉お姉ちゃんはいつだって、可愛い妹ウェルカムなんだから★」

みく「いやそっちがウェルカムでもこっちはノーサンキューにゃ!」

幸子「サンキュー……ありがとうですか! みくさんもお姉ちゃんの妹になりたかったんですね!」

みく「都合よく聞き間違えないで!? 頭に『ノー』って付いたら、『いいえ結構です』って意味にゃ!」

美嘉「ノーサンキューをノーサンキュー★ ユー、アタシのシスターになっちゃいなYO!」


日本語と英語を織り交ぜた国際的口説き文句を吐きつつ、アタシはみくちゃんを後ろから抱きしめる。


みく「うにゃ!?」

美嘉「ふっふっふ……これでもう逃げられないよ、みくちゃん」


わざとらしく悪者っぽい台詞を告げ、わざとらしい邪悪な笑みを浮かべるアタシ。

気分はまるで、ちょっぴり意地悪なお姉ちゃんだ。

146 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/07/08(土) 15:51:35.48 ID:uasWD+er0

みく「な、何する気? たとえ何をされようとも、みくは自分を曲げないよ! 妹になんてならないにゃ!」

美嘉「くっくっく……アタシにアレをコレされた後でも、その台詞が吐けるかな?」

みく「アレをコレするって何をどうするの!?」

美嘉「ソ・レ・を〜……こうするってことだよ★」


アタシはみくちゃんの耳元で囁きながら、みくちゃんのソレに手を伸ばし優しく触れる。


みく「っ!」


すると、みくちゃんの体がビクンッと震えた。


美嘉「ん〜? みくちゃん、どうしたのかな?」

みく「ど、どうもしてないにゃ!」

美嘉「ふぅ〜ん……」


触れた指で、みくちゃんのソレをすーっと撫でる。


みく「ひにゃっ!?」

美嘉「どうしたのかな〜?」

みく「や、やぁ……そこ、はっ……」

美嘉「ここがいいの?」

みく「ちがっ……そこ、やめ……っ」

147 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/07/08(土) 15:52:17.36 ID:uasWD+er0

艶めかしい声を漏らすみくちゃんの懇願に耳を傾けず、アタシは指を這わせ続ける。


美嘉「ふふっ、我慢しないで? 気持ちよくなっていいんだよ、みくちゃん」

みく「も、もう……駄目っ、みく……みく……っ! ……にゃっ、ぁぁああああんっ!」


我慢が限界に達したのか、ついにみくちゃんは大きく声を上げた。

アタシは触れていた指先を離す。ついでに抱きしめていた身体も離してあげた。


美嘉「気持ち良かった?」

みく「ぁ……ぅ……」


みくちゃんはアタシの問いに答えはしなかったけど、気持ち良かったかどうかなんて、火を見るよりも明らか。みくちゃんの全身から力が抜けているのが分かる。

みくちゃん、そんなに気持ち良かったんだ……アタシの喉元なでなで。

148 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/07/08(土) 15:53:51.73 ID:uasWD+er0

幸子「さっきからお姉ちゃんとみくさん、台詞だけ聞いてるとえっちぃですね……」

美嘉「? 幸子ちゃん、何か言った?」

幸子「いえ、なんでもないです!」

美嘉「そう?」


アタシはもう一度、みくちゃんのソレ(首元)を撫でる。


みく「ふにゃぁぁぁあああ……美嘉チャン、やめてったらぁ……」


とろけたような表情でそんなこと言われてもね。


美嘉「美嘉チャンじゃなくて、お姉ちゃんだよ〜」

みく「お姉ちゃ〜ん、や〜め〜て〜よ〜」

美嘉「や〜め〜な〜い〜★」


なんだか、ホントにネコちゃんあやしてるみたいで楽しいんだもん。ご〜ろごろごろ〜。

149 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/07/08(土) 15:55:05.72 ID:uasWD+er0

幸子「というか、いつまでもこんな廊下にいないで、事務所に行きましょうよ」

美嘉「あ、それもそっか」


幸子ちゃんに言われ、アタシはみくちゃんの首元から指を離す。


みく「ようやく終わった……」

美嘉「みくちゃん、続きは事務所でね」

みく「や、やらなくていいにゃ! ていうかみく、宿題やらなきゃいけないし!」

美嘉「宿題? わざわざ事務所でやるの?」

みく「……難しそうだから、事務所なら分からないとこ誰かに聞けるかなって思って」

美嘉「なるほどね。それなら、お姉ちゃんが手伝ってあげる★」

みく「え、いいの?」

美嘉「アタシはみくちゃんのお姉ちゃんだからね」

みく「ありがとにゃ、お姉ちゃん!」

150 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/07/08(土) 15:55:53.54 ID:uasWD+er0

美嘉「幸子ちゃんのも見てあげよっか?」

幸子「いえ、ボクは宿題持ってきてないですから。なので代わりに、カワイイボクを褒めちぎってくれてもいいですよ!」


それは何の代わりになるのだろうか。

まあ、カワイイ妹がそうしてほしいのなら、いくらでも褒めちぎるけど。


美嘉「オッケー★ じゃ、行こ、2人とも」


そして、アタシは新しく出来た妹2人を連れて、事務所へと向かったのだった。



幸子ちゃん、みくちゃん、妹攻略完了★

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