他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
城ヶ崎美嘉「お姉ちゃんを目指して」
Check
Tweet
31 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/12(金) 20:41:34.90 ID:73LFRd7l0
こんなもの? アタシの妹ハーレムにかける思いは、こんなものだったの?
ううん、アタシの思いはこんなものじゃないはず……なんだけど。
アタシ、既にみりあちゃんのことを2人目の妹みたいに思ってたところあるから、改めて言うの滅茶苦茶照れる!
みりあ「美嘉ちゃん、顔赤いよ? もしかして熱あるの?」
美嘉「だ、だいじょぶだいじょぶ★ 熱なんてないよ」
みりあ「本当? でもやっぱり心配だから……」
そう言うとみりあちゃんは向かいの席から立ちあがり、アタシに近づいて来て―――自分のおでこをアタシのおでこにくっつけた。
美嘉「み、みりあちゃん?」
その行動に、アタシは若干戸惑う。
32 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/12(金) 20:42:28.67 ID:73LFRd7l0
少しの間そうしていると、すぐにみりあちゃんはおでこを離した。
みりあ「うん、ホントに熱ないみたい」
美嘉「もう……だから、そう言ったでしょ?」
みりあ「あははっ、そうだよね」
笑ってそう言い、みりあちゃんはアタシから離れた。
そして元の席に戻ると、みりあちゃんはアタシを真っ直ぐに見つめ―――慈愛を感じさせる笑みで、告げた。
みりあ「でも、美嘉ちゃんがなんともなくて良かったよ♪」
美嘉「!」
その言葉と笑みに、アタシの心が強く揺さぶられた。
33 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/12(金) 20:43:17.24 ID:73LFRd7l0
みりあちゃんがアタシのことを心配してくれたのが嬉しい。……そういう気持ちも、もちろんあるんだけど。
なんだろう、この全身を駆け巡る敗北感は。
今の、普通お姉ちゃんがやることじゃない?……え、アタシ、妹?
みりあちゃんにとって、妹みたいな認識だったりするの?
ていうかアタシ、もしかしてお姉ちゃんらしさでみりあちゃんに負けているんじゃ……?
じゃ、じゃあ妹になんて……なってくれるはずなくない?
34 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/12(金) 20:44:34.96 ID:73LFRd7l0
みりあ「み、美嘉ちゃん? 今度は顔青くなったよ? やっぱり具合悪いんじゃない?」
美嘉「だ、だいじょぶだいじょぶ。ほら、冷たいパフェ食べて体温下がっただけ」
無理矢理な理屈で誤魔化しながらも、アタシの心は打ちひしがれていた。
突きつけられたのは、完全なる敗北。
今のアタシじゃ、みりあちゃんを妹には……出来ない。
……みりあちゃん、妹攻略失敗。
35 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/12(金) 20:46:02.17 ID:73LFRd7l0
みりあちゃんの攻略に失敗した後、また奏と唯にカフェテラスに集まってもらった。
アタシは若干涙目になりながらも、事の顛末を2人に伝える。
美嘉「……無理。みりあちゃん、強敵すぎる。今のアタシじゃ、逆に妹にされる……」
奏「随分弱気になったわね」
未央たちを妹に出来たことで天狗になっていたアタシの鼻が、完膚なきまでにへし折られた。
アタシはすっかり自信喪失。
美嘉「所詮アタシには無理だったのかな……妹ハーレムなんて」
遠い目で、そんなことを呟く。もう、誰も妹に出来る気がしない。
唯「しっかりしなよ、美嘉ちゃん!」
唯はそう告げると同時に、『ぱぁんっ』とアタシの頬をはたいた。
36 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/12(金) 20:47:16.36 ID:73LFRd7l0
突然の痛みに、アタシは目を見開いて唯を見つめる。
美嘉「ゆ、唯……?」
唯「たった一人、たった一回、妹に出来なかったからって諦めるの? 美嘉ちゃんの妹愛は、その程度のものだったの?」
美嘉「!」
唯の言葉がアタシの胸に、深く深く突き刺さる。
奏「私は、諦めるならその方がいいと思うんだけど」
奏が何か言っていたが、耳には入らなかった。
唯「みりあちゃんに姉として負けたんなら、もっと姉として成長しよーよ! みりあちゃんを妹に出来るくらいに☆」
美嘉「姉として、成長……」
唯の言葉を受けて、アタシの目に光が戻る。
37 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/12(金) 20:48:13.90 ID:73LFRd7l0
美嘉「……そうだよね。まだ終わりじゃないんだ」
アタシは椅子から立ち上がって、2人に宣言する。
美嘉「アタシ、もっとお姉ちゃんを磨く! 成長して、成長して、みりあちゃんを越えるお姉ちゃんになって! 絶対にみりあちゃんを妹にしてみせる!」
それがアタシの決意!
美嘉お姉ちゃん、ここに完全復活★
唯「やっといつもの美嘉ちゃんに戻ったね☆」
美嘉「ありがと、唯!」
奏「唯、余計なことを……」
美嘉「奏も、話聞いてくれてありがと★」
奏「……どういたしまして」
よーしっ、目指すはNo.1お姉ちゃん!
待っててね、未来の可愛い妹たち!
38 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/12(金) 20:50:13.14 ID:73LFRd7l0
実質、ここまでがプロローグになります
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/12(金) 21:06:38.38 ID:j4qXx3czo
プロローグ長え!?
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/12(金) 21:46:19.60 ID:vdriw/L0o
外堀を埋めずにいきなり最強の妹にいくとは・・・
これはカリスマですわ
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/12(金) 21:57:08.05 ID:7pIxIf3DO
プロローグかよ!?
あと、そこは「妹になりなさい」であるべきじゃないのか
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 01:51:48.56 ID:usBhZXUaO
レベル上げないでラスボス挑んだやつや
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 02:21:30.68 ID:DkFFMR450
つまり負けイベントだった
年下全員攻略が終わったら20代にも手を出しますよね?
期待して良いんですよね?
乙
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 07:05:24.51 ID:B4TWELMl0
美嘉は高3で、確か奏は高2だから
一応奏も美嘉の妹リストに入ってることになるのかね
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 07:17:42.98 ID:+pUNdKh7O
乙
凛を手懐けられるなら幸先はいいはず
みりあちゃんはちょっと順番を間違えただけだこれからこれから
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/14(日) 11:40:19.79 ID:a9vaPfXFO
長いプロローグだつたなw
47 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 19:59:33.97 ID:yDTGVauQ0
美嘉「お疲れー★ 3人とも、頑張ってる?」
休憩時間を見計らって、アタシはレッスン室へとやって来た。
ここでさっきまでレッスンをしていたのは―――トラプリの三人。
加蓮「美嘉?」
奈緒「レッスン室来るなんて、どうしたんだ?」
美嘉「凛たちに差し入れ持ってきたんだ」
凛「差し入れ?」
本当は加蓮と奈緒ちゃんを妹にするために来たんだけどね。
だけどレッスンで疲れている妹たち(未来の妹も含めて)の所に、手ぶらでなんて来れないから。
加蓮「? 珍しいことするね」
奈緒「なんか怪しいな……何か企んでないか?」
……奈緒ちゃん鋭い。
まあ確かに企んではいるけれど、この差し入れとは関係ないし。
美嘉「奈緒ちゃん、人の厚意は素直に受け取りなって。はい、どうぞ」
アタシはそれぞれに差し入れのドリンクを渡していく。
48 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:00:25.07 ID:yDTGVauQ0
奈緒「……それもそっか。わざわざありがとな、美嘉」
加蓮「ありがとね、美嘉」
凛「ありがとう、お姉ちゃん」
奈緒・加蓮『……お姉ちゃん?』
凛が発したお姉ちゃんというワードに、耳ざとく加蓮と奈緒ちゃんが食いついた。
凛「しまっ!?」
慌てて凛が口を塞ぐも、時すでに遅し。
アタシは、自然にお姉ちゃんって呼んでくれて嬉しかったけど……加蓮と奈緒ちゃんは、面白いおもちゃでも見つけたかのような目になっていた。
奈緒「なぁ、凛。今、美嘉のことお姉ちゃんって言わなかったか?」
凛「い、言ってないよ。聞き間違いじゃないかな」
加蓮「ふーん? でも私もお姉ちゃんって聞こえたんだけど」
凛「……呼び間違えたみたい。ほら、たまに先生のこと、間違えてお母さんって呼んじゃうことあるでしょ? あれあれ」
加蓮「凛、姉なんていないのに?」
奈緒「いない姉のことをどう呼び間違えるんだ?」
凛「くっ……そ、それは……」
加蓮と奈緒ちゃんがニヤニヤしながら、苦しい言い訳を重ねる凛を追い詰めていく。
49 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:02:05.89 ID:yDTGVauQ0
ここはお姉ちゃんとして、助け船を出さないとね。
アタシは凛を傍らに抱き寄せつつ、2人に告げた。
美嘉「加蓮、奈緒ちゃん。凛はアタシの妹になったの★」
凛「美嘉!?」
加蓮「妹!?」
奈緒「義妹!?」
凛たちが三者三様に驚いている。でもなんか、奈緒ちゃんの妹の発音が微妙に違ったような……気のせいかな。
ま、今はそれよりも。
美嘉「凛、さっきみたいにお姉ちゃんって呼んでくれないの?」
凛「そ、それは、だって加蓮と奈緒がいるし……」
美嘉「関係ないよ。もう凛はアタシの妹なんだから」
妹になった時のように、アタシは優しく凛の頭を撫でる。
凛「あ、あぅ……う、うん、お姉ちゃん」
撫でられる凛は、また俯いている。これ、自分の表情を隠そうとしてるのかな?
50 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:03:04.32 ID:yDTGVauQ0
奈緒「り、凛が美嘉にされるがままだ……」
加蓮「え、どういうこと? 妹って何?」
美嘉「そのままの意味。凛だけじゃなくて、もう卯月と未央もアタシの妹だよ」
加蓮「さらに分からなくなったんだけど!?」
奈緒「どう家族構成が変わればそんなに義妹が……? アニメでもそこまでは増えないだろ……」
加蓮が混乱、奈緒ちゃんが謎の発言をしている。
そんな2人に、いよいよアタシは本題を切り出す。
美嘉「それでさ……2人もアタシの妹にならない?」
加蓮「妹になるって何!?」
奈緒「なるわけないだろ!」
むむ、そうすんなりとは行かないか。
美嘉「妹になってくれたら、いくらでもなでなでしたげるよ?」
加蓮「いや、そんなのに釣られるわけないでしょ」
美嘉「なでなでには結構自信あるのに……」
51 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:03:52.32 ID:yDTGVauQ0
中々手強いね、この2人。
2人の攻略に集中するため、アタシは一旦、凛のなでなでをストップした。
美嘉「ごめんね、凛。一旦おしまい」
凛「あ……」
奈緒「すごい名残惜しそうな顔してる!?」
凛「し、してないよ!」
加蓮「凛がここまで骨抜きにされるなんて……」
凛「されてないからっ!」
凛が真っ赤な顔で反論してる。
凛、随分なでなでが気に入ったみたい。後でまた撫でてあげよう。
美嘉「加蓮、奈緒ちゃん、じゃあとりあえずアタシのことお姉ちゃんって呼んでみない?」
加蓮「呼ぶわけないでしょ」
奈緒「とりあえずの意味が分からないって」
52 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:04:29.32 ID:yDTGVauQ0
加蓮「だいたい私、今さら美嘉のこと姉だなんて思えないし」
美嘉「そう? アタシは加蓮のこと、今からでも妹って思えるんだけどな」
ゆっくりと、アタシは加蓮に近づいていく。
加蓮「な、なんでこっち来るの?」
美嘉「そ・れ・は……こうするためっ★」
そう言うと同時に、アタシは加蓮を後ろから思い切り抱きしめた。
加蓮「!? ち、ちょっと美嘉!?」
美嘉「おとなしくお姉ちゃんに抱きしめられちゃいな、加蓮♪」
加蓮「だ、だからお姉ちゃんとか思わないから!」
加蓮がアタシから逃れようと抵抗するも、そう簡単には離してあげない。
53 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:05:12.21 ID:yDTGVauQ0
加蓮「て、ていうか、レッスンの後だから汗臭いでしょ! お願いだから離れてってば!」
美嘉「えー? 全然汗臭くなんかないって」
試しに、加蓮の身体の匂いをくんくんと嗅いでみる。
加蓮「嗅がないでよ!?」
美嘉「……うん。良い匂いしかしないよ、加蓮」
加蓮「そ、そんなわけないでしょ!」
美嘉「確かに汗の匂いはするけど……これは加蓮が一生懸命レッスン頑張った証だもん。だから、とっても良い匂いだと思うよ」
加蓮「え……。な、なにそんなこと……」
? 急に加蓮が抵抗するのをやめたみたい。
どうして突然おとなしくなったんだろ……まあいいや。
じゃあ、せっかくだから―――
美嘉「よしよし、加蓮」
加蓮「ふぇ!?」
アタシは凛にしたように、加蓮の頭を優しく撫でた。
54 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:05:56.40 ID:yDTGVauQ0
妹が頑張ったんだから、ちゃんと労ってあげないとね。
美嘉「いつも加蓮がすごく頑張ってるの、アタシ知ってるよ。偉いね、加蓮」
加蓮「! や、やめ…………」
美嘉「アタシに撫でられるの、嫌?」
加蓮「い、嫌ってわけじゃ……ない、けど……」
加蓮は、アタシに撫でられている時の凛みたいに、俯きながら答えた。
まったく、似た者同士なんだから。
美嘉「良かった。じゃあもう少しこのまま撫でてるね」
加蓮「…………」
加蓮はそのまま、無言でアタシに撫でられ続ける。
55 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:06:27.43 ID:yDTGVauQ0
少し離れた所からは、奈緒ちゃんと凛がこっちを見ていた。
奈緒「か、加蓮が美嘉に身をゆだねてるぞ……」
凛「いいなぁ……」
奈緒「……なんて?」
凛が羨ましそうな目でこっちを見ていることに気付く。
うーん、そんな目で見られたらほっとけないよね。
仕方ない、加蓮のなでなではここまでにして、もう一度凛を―――
加蓮「……かも」
美嘉「ん?」
凛を撫でてあげようと思ったところで、加蓮が何かを呟いた。
56 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:08:36.04 ID:yDTGVauQ0
美嘉「加蓮、今なんて?」
アタシが訊ねると、加蓮は恥ずかしそうに顔を逸らしつつ……。
加蓮「……妹になるの、悪くないかも」
小さいけど、はっきりとした声で、そう呟いた。
その言葉に、アタシは思わず微笑む。
ふふっ……加蓮の耳、真っ赤になってる。
美嘉「そっか、悪くないか」
加蓮「うん……」
奈緒「加蓮がオチた!?」
凛「さすがお姉ちゃん……!」
奈緒ちゃんから驚愕の、凛からは羨望の眼差しを感じる。
57 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:09:53.05 ID:yDTGVauQ0
しばらくそのまま加蓮を撫で続けていると……加蓮が急にアタシの方を振り向く。
加蓮「ねぇ、お姉ちゃん」
美嘉「何?」
加蓮「早いとこ、うちのトラプリ三姉妹の最後の一人も、お姉ちゃんの妹にしようよ」
そう言うと、加蓮はいやらしく笑いながら、奈緒ちゃんに視線を向ける。
奈緒「え」
加蓮「ね、奈緒お姉ちゃん?」
奈緒「そ、そんな呼ばれ方したことないだろ!?」
凛「美嘉お姉ちゃんなら、すぐに奈緒お姉ちゃんも妹に出来るよ」
奈緒「凛まで!?」
美嘉「ふふっ、妹たちの期待には応えないとね」
アタシは抱きしめていた加蓮を離し、奈緒ちゃんに照準を合わせる。
58 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:10:21.65 ID:yDTGVauQ0
美嘉「奈緒ちゃん、覚悟はいい?」
奈緒「よくないっ! よ、よせ、美嘉! こ、こっち来るなぁっ!」
美嘉「え。……そ、そっか。奈緒ちゃんがそんなに嫌がるなら……何も……しないよ……」
アタシはその場で動きを止め、下を向いて俯く。
妹が嫌がることをするのは、お姉ちゃん失格だもんね……。
そんなアタシの態度を見ると、奈緒ちゃんは困惑した様子。
奈緒「あ……。……べ、別に嫌とかじゃない―――」
美嘉「凛、加蓮、言質取ったよ! 奈緒ちゃん抑えて!」
凛・加蓮『了解、お姉ちゃん!』
アタシが指示すると、凛と加蓮が即座に奈緒ちゃんを取り押さえる。
59 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:11:21.53 ID:yDTGVauQ0
奈緒「ちょ!? み、美嘉、あたしを騙したなっ!?」
美嘉「ごめんね、奈緒ちゃん。でも素直じゃない妹には、こうするのが一番かなって」
奈緒「あ、あたしは別に素直じゃなくないし、妹でもないっ!」
凛「すぐにそんなこと言えなくなるよ」
加蓮「お姉ちゃんにかかればね」
奈緒「こいつら完全に妹になってる!」
美嘉「さて、じゃあどうしてあげようかな〜?」
凛みたいになでなでか。それとも加蓮みたいに抱きしめちゃうか。
……あ、いいこと思いついた。あれにしよ★
アタシはそのいいことを実行するために、一歩、また一歩と奈緒ちゃんに近づいて行く。
奈緒「く、来るな……! あ、あたしは……あたしは絶対に、妹になんかならないんだからな―――っ!」
60 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:12:42.92 ID:yDTGVauQ0
*
数分後。
美嘉「奈緒ちゃん、もうすぐ終わるからねー」
奈緒「な、なんで、こんな……うぅ」
そこには、アタシにゆったりと髪を梳かされる、しおらしい奈緒ちゃんの姿があった。
髪を梳かしながら、アタシは奈緒ちゃんに話しかける。
美嘉「奈緒ちゃんの髪、レッスンで少し乱れちゃってたもんね。ちゃんと綺麗に直さないと」
奈緒「べ、別に少しぐらい……どうせこの後またレッスンあるし……」
美嘉「また乱れたら、また直せばいいの。お姉ちゃんが何度でも梳かしてあげるから」
奈緒「だ、だから……あたしは妹になんか……」
美嘉「はい、これでおしまい」
アタシは、奈緒ちゃんの髪を梳かし終わる。
61 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:13:35.90 ID:yDTGVauQ0
奈緒「や、やっと終わった……」
美嘉「奈緒ちゃんの髪ってもふもふしてるから、梳かすのすごい気持ちよかったよ★」
奈緒「! き、ききき気持ちいいとか、そそそそういうの言うなばかぁっ!」
美嘉「えー? でもホントに気持ち良かったんだけどなー」
奈緒「だ、だからからかうのやめろぉ!」
アタシと奈緒ちゃんがそんなやりとりをしていると―――
加蓮「ねぇ、お姉ちゃん。奈緒はお姉ちゃんの妹にはなりたくないみたいだし、もう構わなくていいんじゃない?」
凛「加蓮の言うとおりだよ。妹じゃない奈緒よりも、妹の私たちを構うべきだと思うな」
突然、加蓮と凛が奈緒ちゃんに対して冷たい言葉を言い放った。
奈緒「……え」
62 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:14:14.98 ID:yDTGVauQ0
そして、2人の言葉に……その言葉の意味に気付き、アタシは頷く素振りをする。
美嘉「言われてみれば……確かにそうかもね。じゃあこれからは加蓮と凛だけを構うことにしよっか」
奈緒「え」
加蓮「やったぁ!」
凛「お姉ちゃん、私の髪も後で梳かしてもらっていい?」
美嘉「もちろんいいよ★ 可愛い妹の頼みだもん」
加蓮「え、ずるい。私にもしてよ、お姉ちゃん」
美嘉「はいはい、加蓮は凛の後ね」
凛「早い者勝ちだよ、加蓮」
加蓮「ちぇっ、先に言っとけばよかった」
アタシと加蓮と凛は、3人で仲睦まじく談笑を続ける。
奈緒ちゃんの存在を気にも留めずに。
奈緒「な、なあ……」
気にも留めないので、奈緒ちゃんがアタシたちにかける声も聞こえない。
アタシたちは談笑を続ける。
63 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:14:56.75 ID:yDTGVauQ0
奈緒「あ、あの……えっと……」
気にも留めないので、奈緒ちゃんがおろおろしているのにも気付かない。
談笑を続ける。
奈緒「……………」
気にも留めないので、奈緒ちゃんが何も言葉を発せなくなるのにも…………もうそろそろいいかな?
アタシは加蓮と凛に目配せをする。
そして、それに2人はこくりと小さく頷いた。
奈緒ちゃんを気に留めないとか、そんなことアタシたちがするわけがない。
ホントは3人とも、気付かれないようにずっとチラチラと奈緒ちゃんの様子を窺っていたのだ。
正直、妹をほったらかしにするのはお姉ちゃんとして心が痛んだけど…………これも作戦。
そして、いよいよそれも仕上げの時。
64 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:16:13.90 ID:yDTGVauQ0
美嘉「さて、じゃあアタシはもうそろそろ行くね。レッスン終わった頃にまた来るから」
凛「うん、待ってる」
加蓮「帰りに3人でポテト食べに行こうよ」
美嘉「いいね、そうしよっか」
アタシは凛と加蓮と約束をし、レッスン室のドアへと歩いて行った。
そしてドアノブに手をかけてから、もう一度凛たちの方を振り向く。
美嘉「じゃ、後でね」
凛「ばいばい、お姉ちゃん」
加蓮「約束だからねー」
美嘉「分かってるって」
アタシはそのまま凛と加蓮に手を振り、レッスン室を出ていこ―――
奈緒「ま、待って!」
―――出ていこうとしたところで、奈緒ちゃんが突然叫んだ。
65 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:17:08.94 ID:yDTGVauQ0
アタシは立ち止まり、奈緒ちゃんに体を向ける。
美嘉「奈緒ちゃん? どうしたの?」
奈緒「あ、あたしも…………うとに……」
奈緒ちゃんは、小さな声で何かをボソボソと呟く。
でも、何を言っているのかが(予想はついていたけど)よく聞こえなかった。
美嘉「うーん? ごめん奈緒ちゃん、小さくてよく聞こえないや。もっと大きな声で言ってくれる?」
奈緒「だ、だから……」
奈緒「あ、あたしも……妹に、してくれ……!」
66 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:18:31.97 ID:yDTGVauQ0
……作戦成功。
アタシと凛と加蓮は、ニヤリと笑みを浮かべた。
しかしアタシはすぐに表情を戻すと、意外そうな顔つきで奈緒ちゃんに訊ねる。
美嘉「え、奈緒ちゃんもアタシの妹になりたいの?」
奈緒「……う、うん、なりたい」
奈緒ちゃんは恥ずかしそうに目を伏せて、真っ赤な顔で頷いた。
美嘉「そっか。いいよ、もちろん」
奈緒「ほ、ホントか!?」
美嘉「で・も……それはアタシのことを、お姉ちゃんって呼んでくれたらの話ね?」
奈緒「え゛」
加蓮「妹なんだから、そう呼ぶのは当然でしょ?」
凛「お姉ちゃんをお姉ちゃんと呼べない者に、妹の資格はないよ」
加蓮と凛が援護射撃をしてくれる。
67 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:19:36.76 ID:yDTGVauQ0
奈緒「う、うぅぅ……」
美嘉「さあ奈緒ちゃん、どう? お姉ちゃんって呼んで―――」
奈緒「い、妹にしてっ……! お、おね……お姉、ちゃあんっ」
アタシの言葉を遮る形で、奈緒ちゃんが必死に声を絞り出した。
……ようやくお姉ちゃんって呼んでくれた。
アタシは笑顔で、奈緒ちゃんの元に近づいて行き―――
美嘉「ふふっ、よく言えました♪」
奈緒ちゃんの頭を、ふんわりと撫でた。
奈緒「ひゃう!?」
68 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:20:12.36 ID:yDTGVauQ0
美嘉「奈緒ちゃん、これがお姉ちゃんのなでなでだよ。気持ちいい?」
奈緒「き、気持ちよくなんか……」
凛「気持ちよくないなら、もうやめていいんじゃない?」
いつの間にかアタシたちの近くまで来ていた凛が、そう言い放った。
凛だけでなく、加蓮も傍まで来ている。
加蓮「奈緒、なでなでされたくないんだもんね?」
奈緒「そ、そんなこと言ってないだろっ!」
加蓮「じゃあ、そのままなでなでされてたいの?」
奈緒「え。い、いや、それは、あの、えっと……」
凛「はっきり言いなよ、奈緒」
奈緒「…………こ、このままが……いい」
69 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:21:09.10 ID:yDTGVauQ0
本心を告げた奈緒ちゃんに、アタシはもう一度同じ質問をする。
美嘉「なでなで、気持ちいい?」
奈緒「き、気持ち……いい……」
凛「最初からそう言えばいいのに」
加蓮「ほんっと、素直じゃないんだから」
奈緒「う、うるさいっ!」
美嘉「……ふふっ」
凛たち3人のやりとりに、思わずアタシの顔が綻ぶ。
奈緒「な、なんで笑うんだよ、美嘉!」
美嘉「美嘉? 奈緒ちゃん、そうじゃないでしょ?」
奈緒「あ、あぅ……その…………お、お姉ちゃん」
70 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:21:58.90 ID:yDTGVauQ0
美嘉「よろしい。別に笑ったわけじゃないよ、奈緒ちゃん。可愛い妹がまた一人出来て、嬉しかっただけ」
奈緒「か、かわっ!?」
加蓮「だってさ。可愛い妹の奈ー緒っ♪」
凛「良かったね、可愛い妹の奈緒」
奈緒「お、お前らいい加減にしろぉ!」
美嘉「まあまあ。落ち着いて、奈緒ちゃん」
なでなでなでなで。
奈緒「ふぇ……う、うん……」
加蓮「……からかわれて怒った奈緒を一瞬でおとなしくさせるなんて」
凛「……さすがお姉ちゃんだね」
それにしても奈緒ちゃんの髪、ホントふわふわしてるなぁ……すっごく良い撫で心地。
もちろん加蓮と凛も……妹はみんな、すっごく良い撫で心地なんだけどね。
まあ、それは置いといて……加蓮、奈緒ちゃん、そして―――トライアドプリムス、妹攻略完了★
71 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/15(月) 20:23:44.07 ID:yDTGVauQ0
次は中学生組にしようと思ってましたが、めでたく未央が全体2位Pa1位ということで、次はポジパにしようと思います
ホントなら楓さん出したいんですが、話の都合上当分出せないので
なお、ポジパを書くにあたって茜の学年が調べてみても不明瞭なため、このssでは高2ということにしておきます
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/15(月) 21:09:17.88 ID:G1vvtxapO
乙
いい、いいぞ…
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/05/15(月) 21:29:37.92 ID:B4c1zY/5O
マーベラス
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/15(月) 22:33:49.41 ID:UI5kjB3DO
妹になったからには「お姉さま」と呼ぶべきじゃないのか
乙
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/15(月) 23:31:28.62 ID:DIQqKg7no
カリスマは茜ちんの全力タックルを受けて果たして生きていられるか・・・乙
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/22(月) 13:11:32.88 ID:wHN5yQ8W0
楓さんも攻略対象ってことはあいさんとか木場さんも攻略対象なんだよな……期待乙
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/24(水) 22:14:52.26 ID:v3jPScmZo
>>50
妹が最大13人増える作品があるんですよ奈緒ちゃん
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/24(水) 23:47:28.09 ID:P8I0EmGGO
>>77
13人のアニメの方は認めないぞ、兄くんとして
79 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:32:24.53 ID:VOWqHzI60
お昼時のカフェテラスにて。
アタシは一人で、あの子たちを待っていた。
未央「あ、美嘉ね―――じゃなかった。お姉ちゃーん!」
やっと来たね。
椅子から立ち上がり、声の聞こえた方を向く。
すると、未央が駆け足で近づいてきて、その勢いのままアタシに抱きついてきた。
美嘉「おっと……もう未央ったら。びっくりするでしょ?」
未央「えへへー、ごめんお姉ちゃん」
あまり悪びれる様子もなく、謝ってくる未央。
まったくもう……可愛いから許すけど。
80 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:33:12.94 ID:VOWqHzI60
美嘉「それと未央。別に呼び方は美嘉ねーのままでもいいよ?」
未央が言い直したのに気付いて、アタシはそう伝えた。
未央が呼ぶ美嘉ねーの『ねー』は姉の『ねー』だから。
つまり未央は妹になる前から、アタシを姉みたいに慕ってくれてたんだよね。
そう考えると、美嘉ねーっていう呼び方の方が嬉しいかも。
未央「いいの? じゃあそうするね、美嘉ねー。この呼び方するの私だけだから、特別な感じして嬉しいし」
どうやら、未央も同じようなことを考えてくれてたみたい。
やっぱり姉妹だけあるね。
茜「未央ちゃん、本当に美嘉ちゃんの妹になったんですね!!」
美嘉「わ!?」
突然の大声に尋常でなく驚くアタシ。
81 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:34:10.05 ID:VOWqHzI60
そして横を見ると、そこには茜ちゃんと藍子ちゃんが。
美嘉「茜ちゃん、藍子ちゃん」
藍子「遅くなっちゃってごめんなさい、美嘉ちゃん」
美嘉「大丈夫、アタシも今来たとこだよ★ それに、アタシが誘ったんだしさ」
そう。今日アタシは、藍子ちゃんたちにお昼のお誘いをした。
目的はもちろん……藍子ちゃんと茜ちゃんを妹にするため!
82 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:34:52.37 ID:VOWqHzI60
*
あの後、アタシたちはそれぞれお昼ご飯を注文した。
今は料理が来るまで、4人で楽しくお喋り中。
美嘉「未央はアタシの妹になったこと、2人に話してたんだね」
未央「未央『は』って?」
美嘉「凛は加蓮たちに、妹になったことを必死に隠そうとしてたからさ」
未央「あははっ、しぶりんは照れ屋さんだなぁ」
凛と違って、未央はそんなことしないか。
別に口止めもしてないし、隠すことでもないよね。
83 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:35:45.93 ID:VOWqHzI60
それに……この方が話を運びやすいかもだし。
さっそくアタシは、2人に妹になってほしいと伝えようと―――
藍子「あ、そういえば私たち、美嘉ちゃんにお願いがあるんでした」
美嘉「え?」
―――したところで、藍子ちゃんがそんなことを。
茜「そうでした! 美嘉ちゃん、折り入ってお願いがあります!!」
藍子「私たちも美嘉ちゃんの」
茜「妹にしてください!!」
84 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:37:05.07 ID:VOWqHzI60
美嘉「えぇえええええええええっ!?」
藍子ちゃんたちの方から!?
未央「私の話を聞いたら、2人も美嘉ねーの妹になりたくなったんだって」
話を運びやすいどころか勝手に運ばれてた!
あまりに急展開過ぎて、アタシは動揺を隠せない。
茜「駄目、でしょうか?」
藍子「やっぱり、迷惑ですよね……」
はっ!? 2人が悲しそうな顔してる!
……何してるの、アタシ。
こんなんじゃ、お姉ちゃん失格でしょ!
85 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:37:58.50 ID:VOWqHzI60
アタシは落ち着くため、一度深く息を吐く。
そして、2人の不安を払拭するために柔らかく微笑み、自分の気持ちを正直に伝えた。
美嘉「迷惑なんかじゃないよ、藍子ちゃん。それに茜ちゃんも。2人みたいな可愛い妹なら、いくらでも大歓迎★」
その言葉に、藍子ちゃんと茜ちゃんの表情がぱぁっと明るくなる。
茜「では私たち、美嘉ちゃんの妹になっていいんですね!!」
藍子「ありがとうございます、美嘉ちゃん」
美嘉「あ、2人とも―――」
未央「茜ちん、あーちゃん。もうその呼び方は違うんじゃない?」
さすが我が妹、未央。
アタシの言おうと思ったことを先に言ってくれた。
86 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:38:42.80 ID:VOWqHzI60
藍子「呼び方?」
茜「え、何かおかしかったですか!?」
未央「だからさ、ごにょごにょ……」
未央が2人に耳打ちする。
茜「……なるほど! そういうことですか!!」
藍子「うふふっ、分かりました」
内緒話が終わると、茜ちゃんと藍子ちゃんはアタシの方へ向き直った。
そして―――
藍子・茜『せーのっ』
藍子・茜『お姉ちゃん♪(お姉ちゃん!!)』
2人揃っての、お姉ちゃんコール。
……どうしよう。
料理が来る前に、2人の可愛さでお腹いっぱいになっちゃった。
87 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:39:20.01 ID:VOWqHzI60
*
藍子「お姉ちゃん。私、してほしいことがあるんです」
美嘉「してほしいこと?」
みんなでご飯を食べ終えた後、藍子ちゃんがアタシにそんなお願いをしてきた(ちなみにアタシ、普通に料理食べられた。妹は別腹だったみたい)。
藍子「私のことを、なでなでしてもらえませんか?」
美嘉「なでなでね。もちろんいいよ★ 妹をなでなでするのは、お姉ちゃんの義務だから」
茜「藍子ちゃん、お姉ちゃんのなでなでの話を未央ちゃんから聞いて、ずっとなでなでしてもらいたがってたんですよ!!」
88 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:39:50.66 ID:VOWqHzI60
美嘉「え、未央、アンタどんな話したの?」
未央「美嘉ねーのなでなでの感想を、ありのままに伝えただけだよ?」
藍子「未央ちゃん、『お姉ちゃんのなでなでは世界を狙えるほどだよ』って絶賛していたんです」
盛りに盛ってる!
藍子「きっと、とっても気持ちいいんだろうなぁ……うふふっ、楽しみ♪」
期待のされ方ハンパない!
89 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:40:26.78 ID:VOWqHzI60
ど、どうしよ。
さすがにここまでの期待には応えられそうに…………いや、そうじゃないでしょ、アタシ。
妹の期待に応えるのが、お姉ちゃんの務めなんだから。
美嘉「……やるしかない」
妹たちに聞こえないように、呟く。
アタシは座っていた椅子の位置をずらし、藍子ちゃんの横に座った。
美嘉「それじゃ藍子ちゃん、なでるね」
藍子「よろしくお願いします、お姉ちゃん♪」
藍子ちゃんがアタシに微笑む。この笑顔は裏切れない。
90 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:41:01.39 ID:VOWqHzI60
……ならもう、これしかない。
なでなでを新たな高みへと昇華させる!
覚悟を決めたアタシは、左手をゆっくりと藍子ちゃんの頭に伸ばす。
藍子「あ……」
まずは、いつも通りに撫でる。愛情を込めて、優しく、緩やかに。
藍子「これが……ふふっ」
藍子ちゃんが嬉しそうな表情になった。
とりあえず、お気に召してくれたみたい。
91 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:41:39.13 ID:VOWqHzI60
問題はここから。
撫でる速度を変える? それとも強さ?
いや、それは駄目。
練習もなしにいきなりそんなことしたら、上手く加減できなくて、むしろ不快にさせちゃうかも。
なら、どうすれば…………ん?
そこでアタシは、はたと気付く。
アタシの左手は藍子ちゃんの頭を撫でているけど―――
アタシの右手、空いてるじゃん。
瞬間、アタシの脳裏にある考えが閃いた。
この右手を使って―――いやでも、上手くいくかな……。
猫や犬ならともかく、人間にはあんまり意味が―――え、ええい、もうやるっきゃないでしょ!
藍子ちゃんの期待に応えなきゃ!
92 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:42:29.17 ID:VOWqHzI60
アタシは胸の内の不安を悟られぬよう注意しつつ、藍子ちゃんに声をかける。
美嘉「藍子ちゃん」
藍子「なんですか、お姉ちゃん」
美嘉「ちょっとだけ、上向いてくれる?」
藍子「こう、でしょうか?」
藍子ちゃんがアタシに言われた通り、少しだけ顔を上げてくれる。
美嘉「うん、オッケー★」
そうして、アタシは左手で藍子ちゃんの頭を撫でたまま―――右手を、藍子ちゃんの喉元へ伸ばした。
藍子「ふぇっ!?」
美嘉「大丈夫だから。そのまま、ね?」
藍子「は、はい……」
アタシは優しく微笑みかけて、藍子ちゃんの緊張を和らげる。
そして、右手の指でやんわりと、藍子ちゃんの喉元を撫でていく。
苦しくならないよう、慎重に、ふんわりと。
93 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:43:10.08 ID:VOWqHzI60
そうしていると……藍子ちゃんが、気持ちよさそうに目を細めた。
藍子「ふぁ……」
お、おお? 若干不安だったけど……いけそう!
未央「ずるい、あーちゃん! 私もそんなのされたことないのに!」
藍子「はぅ〜……♪」
茜「未央ちゃん! 藍子ちゃん、聞こえてない感じですよ!!」
未央「まさか!? 両手で撫でられることで、気持ちよさも2倍に!?」
未央がおかしな考察をしているけど、放っておく。
今、藍子ちゃんから気を抜くわけにはいかない。
アタシは精神を集中して、藍子ちゃんを撫で続ける。
94 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:43:46.53 ID:VOWqHzI60
美嘉「藍子ちゃん、喉苦しくない?」
なでなで。
藍子「だいじょぉぶですぅ……」
なでなで。
美嘉「それなら良かった★」
なでなでなでなで。
藍子「ふぁい……すごく、良いですぅ……」
なでなでなでなで。
95 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:44:36.81 ID:VOWqHzI60
未央「会話が微妙に噛みあってないような……ん?」
なでなでなでなでなでなで。
未央「あっ!? ねえ、ちょっと美嘉ねー!」
美嘉「ふふふっ」
藍子「うふふっ」
なでなでなでなでなでなで。
未央「き、聞こえてないし……お願い、茜ちん!」
茜「お姉ちゃん、聞こえてますかーっ!?」
美嘉「わっ!?」
突然の大声に集中が途切れ、アタシは藍子ちゃんのなでなでを中断。
96 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:45:22.31 ID:VOWqHzI60
美嘉「な、何?」
未央「美嘉ねー、いつまであーちゃんなでなでしてるの! もう10分はやってるよ!?」
美嘉「え、そんなになでなでしてた?」
未央に言われて、時計を見てみる。
……ホントだ。いつのまにか時間が経ってる。
もうすぐ昼休みも終わる時間じゃん。
藍子「全然気付きませんでした」
未央「まったく、2人ともゆるふわしすぎだよ」
茜「とはいえ、私たちも10分経つまでゆるふわしてましたが!」
未央「……。……うん、それはいいんじゃないかな。と、とにかく美嘉ねー、私もなでなでしてよー!」
97 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:45:48.28 ID:VOWqHzI60
美嘉「うーん……悪いけど、未央はまた今度ね」
未央「どうして!?」
美嘉「まだなでなでしてない茜ちゃんが先でしょ? それで多分、昼休み終わっちゃうだろうし」
未央「う〜、そういうことなら仕方ないかー」
茜「お姉ちゃん! 私、なでなでもしてほしいですけど、他にやりたいことがあります!」
美嘉「やりたいこと?」
茜「さっき未央ちゃんがしていたみたいに、お姉ちゃんに抱きついてみたいです!!」
98 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:46:16.32 ID:VOWqHzI60
美嘉「なるほど、茜ちゃんはそっちね。いいよ、お姉ちゃんが優しく受け止めてあげる★」
アタシは椅子から立ち上がり、腕を広げる。
これで受け止め体勢はバッチリ。
茜ちゃんも既に立ち上がって、準備万端の様子。
美嘉「茜ちゃん、いつでもどうぞ」
茜「では……お姉ちゃーんっ!!」
アタシの胸に、茜ちゃんが助走をつけて勢いよく飛び込んでくる。
それを笑顔で受け止めようと―――
美嘉「ふふっ、茜ちゃんは元気いっぱ―――かはっ!?」
―――茜ちゃんに抱きつかれた瞬間、身体に尋常じゃない衝撃が襲いかかった。
99 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:46:48.92 ID:VOWqHzI60
意識が持っていかれそうになるも、お姉ちゃんの意地でどうにか留める。
後ろに吹っ飛びそうになるも、お姉ちゃんのプライドでどうにか踏みとどまる。
『めきめきぃっ』と肋骨がきしむも、お姉ちゃんの底力でどうにか耐える。
……あははっ、しまったなー。
茜ちゃんのパワーのこと、全然考えてなかった★
100 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:48:10.31 ID:VOWqHzI60
茜「? お姉ちゃん、どうしました?」
茜ちゃんがきょとんとした顔でアタシを見上げてくる。
それにアタシは、脂汗をかきつつも必死に笑顔を作って答えた。
美嘉「ど、どうも、してないよ。……ふ、ふふっ、茜ちゃんは、元気いっぱいだね★」
左手を茜ちゃんの頭に伸ばし、そのまま撫でる。
お姉ちゃんとして、これだけはやらないと……。
でもさすがに、右手で喉元を撫でる気力は出ない。
ごめんね、茜ちゃん。今日はこれだけで勘弁して。
茜「な、なんでしょう!? 胸の辺りがポカポカしてきました!!」
未央「それが美嘉ね―のなでなでだよ、茜ちん」
藍子「なんだか幸せな気持ちになりますよね」
茜「はい、熱いです! ファイヤー!!」
茜ちゃんたちが微笑ましい会話をしている。
101 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/05/25(木) 20:49:34.31 ID:VOWqHzI60
この子たちに、アタシが満身創痍であることを気付かれちゃ駄目。
お姉ちゃんとして、妹を傷つけるわけにはいかない。
昼休みが終わるまであと少し。
それまでなんとしても耐え抜くんだ、アタシ!
まあ、それはともかくとして……藍子ちゃん、茜ちゃん、そして―――ポジティブパッション、妹攻略完了★
……決めた。
身体、鍛えよう。
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/26(金) 01:15:54.24 ID:o9n67yfAo
おつおつ
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/26(金) 01:20:43.37 ID:juldC4UrO
乙
お姉ちゃんパワーすげえ
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/26(金) 17:48:55.55 ID:0vuFvxo7o
乙
姉プライドが半端ないな
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/27(土) 00:25:32.89 ID:fplWnc9Lo
更新来てたのか
お姉ちゃんって凄いんだな・・・
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/29(月) 12:06:48.99 ID:/vq5eB9X0
やっぱすげえよミカは
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/29(月) 19:08:00.45 ID:YTwHvI0k0
気になって年齢調べてみたけどミカと卯月と歌鈴とウサミンって同い年だったんだな
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/30(火) 01:57:38.51 ID:+Ih4N30f0
次はピンチェかな
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/11(日) 12:58:34.03 ID:Vf1blE+k0
まだかなかなかなかなかなかな子
110 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:10:00.66 ID:m+2Lak1/0
今回、試しに一人称の視点を変えてみます
主役交代じゃないです
111 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:10:41.65 ID:m+2Lak1/0
私、乙倉悠貴は今、軽い眩暈を伴うほどに困惑しています。
仕事帰り、私がいつも通りに事務所の扉を開けたら―――
幸子「さあ! もっと言ってくれてもいいですよ、お姉ちゃん!」
美嘉「幸子ちゃんはホントにカワイイね★ 可愛い〜、可愛い〜♪」
―――慈愛に満ちた表情の美嘉さんが、幸子さんの頭を撫でていたんです。
仲良く、ソファに並んで座って。
112 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:11:25.97 ID:m+2Lak1/0
幸子「ふふーん♪ まあ、ボクがカワイイというのは当たり前ですけどね!」
美嘉「ふふっ。でも何度言ったって足りないくらい、幸子ちゃんは可愛いし」
幸子「その通りです! ボクのカワイさを表すには、これくらいの言葉じゃ全然足りませんね!」
美嘉「うん、だからもっともっと可愛いって言うね。可愛い可愛いっ♪」
幸子「うふふふっ! さすがお姉ちゃん、ボクのカワイさを完璧に理解してますね!」
幸子さんがとってもご満悦そうです。
すると、美嘉さんの隣―――幸子さんの座っている側の反対から、不服そうな声が上がりました。
みく「お姉ちゃん、幸子チャンばっかり構わないでよー!」
美嘉「ごめんね、みくちゃん。そんなつもりなかったんだけど」
声の主は、みくさん。
美嘉さんは今、幸子さんとみくさんに挟まれる形でソファに座っているんです。
113 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:11:58.78 ID:m+2Lak1/0
……あ、よく見るとみくさん、眼鏡をかけています。
そしてテーブルには、一枚のプリントと筆記用具が。どうやら勉強モードみたいです。
みく「ほら、ここ! この問題が分からなくて」
美嘉「どれどれ?……なるほど、三角関数か。これはね、こう考えるの―――」
みく「―――そっか。それでこうなって………………解けたにゃ!」
美嘉「解き方が分かれば簡単でしょ?」
みく「うん!」
美嘉「また分からない問題があったら、いつでも訊いていいよ★ 答えは駄目だけど、解き方ならいくらでも教えてあげるから」
みく「それで十分にゃ。ありがと、お姉ちゃん」
幸子「お姉ちゃん、ボクを忘れないでください!」
美嘉「もう、忘れてないってば」
美嘉さんにお礼を告げて、みくさんは再びプリントに向かいました。
そして美嘉さんは再び、幸子さんになでなでを。
114 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:12:50.00 ID:m+2Lak1/0
悠貴「こ、これは……どういう……?」
その3人のやりとりに、私の困惑はとどまる所を知りません。
普段以上に仲睦まじい様子なのもそうですが……さっきからなぜ2人とも、美嘉さんのことをお姉ちゃんと呼ぶのでしょうか?
美嘉さんの妹は、莉嘉さんだけですよね?
私が知らなかっただけで、実は莉嘉さんを入れて4人姉妹だったとか―――い、いやいや、さすがにそれはないでしょうし。
う、うーん……ならどうして……?
……いや、こうして考え込んでも仕方ありません。
私はごくりとつばを飲み込み、意を決して、美嘉さんに話しかけます。
悠貴「あの、美嘉さんっ」
美嘉「あ、悠貴ちゃん、戻って来てたんだ。おかえり★」
悠貴「はい、ただいま戻りましたっ!……じゃなくてですねっ! これ、どういう状況なんでしょうかっ?」
美嘉「どういう状況って……見ての通り、妹たちを愛でてるだけだよ?」
悠貴「妹っ!?」
困惑が混乱に変わりました。
ちょっと美嘉さんが何を言ってるのか分かりません。
なんですか妹って。
115 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:13:33.30 ID:m+2Lak1/0
私はさらに詳しく訊ねようと―――
悠貴「み、美嘉さん、妹っていったい―――」
《ガチャ―――》
卯月「ただいま戻りましたっ」
訊ねようとしたタイミングで、卯月さんが事務所に入ってきました。
美嘉さんの意識はそちらに向いてしまいます。
美嘉「おかえり、卯月」
卯月「ただいま、お姉ちゃん♪」
悠貴「卯月さんもっ!?」
卯月さんまで当然のように、美嘉さんをお姉ちゃんと呼びました。
もう訳が分かりません。意味不明です。
私、世にも奇妙な物語に巻き込まれたんでしょうか。
頭の中がぐるぐるします。
それどころか頭まで痛くなってきました。
116 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:14:17.74 ID:m+2Lak1/0
悠貴「美嘉さん美嘉さんっ」
私は今度こそ詳しい事情を訊こうと、美嘉さんに呼びかけます。
美嘉「どうしたの、悠貴ちゃん。……ん? 今気付いたけど悠貴ちゃん、なんだか顔赤くない?」
悠貴「私の顔色なんて今はどうでもいいですよっ」
美嘉「いやいや、よくないよ」
そう言うと美嘉さんはソファから立ち上がり、私の元へ近づいてきました。
美嘉「ちょっと、おでこ触るね」
悠貴「えっ、あ、はい……」
戸惑う私に構わず、美嘉さんは私のおでこに手を当てました。
そして、もう片方の手は自分の額に。
美嘉「……やっぱり熱い。悠貴ちゃん、熱あるんじゃない?」
悠貴「熱、ですか?」
そういえば今朝、微熱があったような……。
身体がだるくて……たまに咳も……。それにさっきの眩暈と頭痛……。
…………んん?
117 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:15:09.98 ID:m+2Lak1/0
悠貴「も、もしかして私、風邪引いてますっ?」
美嘉「いや、アタシに聞かれても。自分の身体なんだから、どうなのかは自分が一番―――」
悠貴「けほっ、こほっ!」
美嘉さんの声を遮る形で、咳が出ました。
悠貴「す、すみませんっ」
美嘉「悠貴ちゃん、間違いなく風邪引いてるよ!」
卯月「え、悠貴ちゃん風邪ですか!?」
幸子「た、大変です! 急いで救急車を……119番って何番でしたっけ!?」
みく「落ち着くにゃ幸子チャン! 109番に決まってるでしょ!」
卯月「みくちゃんも落ち着いて! 109じゃなくて009だよ!」
美嘉「それも違うし、そもそも風邪で救急車は大げさすぎ! 呼ばなくていいの! 3人とも、深呼吸でもして落ち着く!」
美嘉さんの放ったその台詞に、慌てふためいていた卯月さんたちが多少冷静さを取り戻しました。
その様子を確認すると、美嘉さんは私の方を振り向きます。
118 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:15:51.60 ID:m+2Lak1/0
美嘉「とにかく、早く女子寮に帰った方がいいよ。アタシが付き添うね」
悠貴「あ、いえ一人で―――」
美嘉「悠貴ちゃん、ふらついてる」
悠貴「えっ?」
言われて気付きます。
私の視界が、ぐらついていることに。
美嘉「そんな状態で、一人でなんて帰せないからさ。悠貴ちゃん、ね?」
私の目をまっすぐに見つめてくる、美嘉さん。
本気で心配してくれているのが、その表情から伝わってきて。
悠貴「すみません……。お願いして、いいですか?」
気が付いたら、そう言葉を発していました。
119 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:16:38.07 ID:m+2Lak1/0
*
あれから女子寮の自室に帰ってきて……私は今、ベッドに横たわっています。
でも、部屋には私だけじゃなく―――
美嘉「悠貴ちゃん。スポーツドリンクを枕もとに置いておくから、こまめに飲んでね」
悠貴「あ、ありがとうございますっ」
美嘉「……さてと。薬飲んで、マスクつけて、ドリンクもOK。あとは……」
ベッドの横で、美嘉さんが呟いています。
120 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:18:10.14 ID:m+2Lak1/0
私は顔をそちらに向け、おずおずと話しかけました。
悠貴「あの、美嘉さん」
美嘉「ん? どうかした?」
悠貴「やっぱり看病なんていいですよ。移ったら大変ですし……」
美嘉「そんなこと気にしなくていいから、悠貴ちゃんは安静にしてて。風邪、早く治したいでしょ?」
悠貴「それは……はい」
美嘉「なら、誰かに看病してもらうのが一番★ そうすれば、風邪なんてすぐに治っちゃうって!」
明るい調子で笑う美嘉さん。
それに何も返せずにいると―――
美嘉「あ、そうだ」
その言葉とともに、美嘉さんが何かを思いついたような表情に。
121 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:18:38.66 ID:m+2Lak1/0
美嘉「悠貴ちゃん、氷枕って部屋にある?」
悠貴「いえ、無かったと思います」
美嘉「そっか。じゃあ、寮の誰かが持ってるかもしれないから、ちょっと聞いてくるね。すぐ戻るから、安心して待ってて」
そう告げて、美嘉さんは部屋から出て行きました。
122 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:19:25.22 ID:m+2Lak1/0
……どうして、こんなことになったのか。
私に付き添ってきてくれた美嘉さんは、部屋に到着すると、このまま私の看病をすると言い出したんです。
しかも、泊まり込みで。
当然、私は断りました。
そこまで美嘉さんに迷惑をかけるわけにはいきません。
しかし、美嘉さんの意思は揺らぐことなく……結局、看病してもらうことに。
悠貴「でも……正直、嬉しいかも」
美嘉さんには、ああ言ったものの……本当の気持ちは、それで。
心の底では、誰かに看病してもらいたくて。
悠貴「……まだかな」
思わず口から出た、その呟きに。
美嘉さんが戻ってくるのを待ちわびていることに、気付きました。
123 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:20:49.79 ID:m+2Lak1/0
*
美嘉「悠貴ちゃん、晩ご飯出来たよ」
夕飯時。
美嘉さんが一つのお茶椀を持って、台所から出てきました。
美嘉「やっぱり、風邪引いた時はおかゆだよね。でも、ただのおかゆじゃ味気ないし、何よりそんなに美味しくない……。てなわけで、特製たまご粥を作ってみましたーっ★」
悠貴「わぁっ……!」
目の前に出されたお茶椀に、私は目を輝かせました。
ご飯に絡みつく、とろとろの卵。上に細かく刻まれたネギが少々かかっていて。
鼻孔をくすぐるかぐわしい香りには、食欲がそそられます。
124 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:21:17.43 ID:m+2Lak1/0
悠貴「美味しそうっ!」
美嘉「でしょ? これ食べれば、風邪なんてどっかに吹っ飛んでくから」
そう告げ、美嘉さんは手に持ったスプーンでおかゆをすくい、冷ますために『ふー、ふー』と、息を吹きかけます。
……? それ、私のご飯じゃなかったんですか?
と、思っていると―――
美嘉「はい、悠貴ちゃん。あーん」
その台詞とともに、私の顔の前にスプーンの先が向けられました。
悠貴「……えっ!? い、いやいや、自分で食べられますよっ!」
美嘉「もう、遠慮しないでいいから」
悠貴「遠慮とかじゃなくてですねっ!?」
すっごく恥ずかしいです、それっ!
125 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:22:02.70 ID:m+2Lak1/0
美嘉「あのね、悠貴ちゃん。風邪を引いてる時は、思う存分甘えていいって決まってるの。だからほら、口開けて。はい、あーん」
悠貴「うぇぇ……? あ、あーん……」
おそるおそる口を開けると、スプーンが口の中に。
あ……とろりとした卵がご飯と組み合わさって……なんていい舌触り。
おかゆがこんなに美味しいなんて……!
私は味を堪能しつつ、もぐもぐとよく噛んで、ごっくんと飲み込みました。
美嘉「美味しい?」
悠貴「とってもっ!」
美嘉「良かった★ じゃ、どんどん食べさせてあげるね」
悠貴「はいっ♪」
美嘉さんの差し出すおかゆを、パクパクと口にしていく私。
いつの間にやら、美嘉さんから食べさせてもらうことへの羞恥心が消えていました。
126 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:22:43.71 ID:m+2Lak1/0
*
まさかこんなにも早く、さっきの『あーん』より恥ずかしい思いをすることになるとは。
美嘉「悠貴ちゃん、タオル熱くない? 大丈夫?」
悠貴「だ、大丈夫です……」
―――美嘉さんに、身体を拭いてもらうことになるなんて。
ベッドの上で、上半身裸になっている私。
背中には、蒸した温かいタオルの感触が行き来しています。
127 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:23:43.40 ID:m+2Lak1/0
悠貴「うぅ、美嘉さぁんっ……! 確かに大浴場まで行くのは辛くて無理ですけど、だからってこれは恥ずかしすぎますよぉっ……!」
美嘉「あれ? 悠貴ちゃん、そこまで恥ずかしがり屋さんだったっけ?」
悠貴「これは誰でも恥ずかしいと思いますっ!」
美嘉「あははっ、そりゃそっか★ でもこうして身体を拭くだけでも、大分すっきりするからね〜」
悠貴「それはそうかもですけど……」
美嘉「よし、これで背中はおしまい★ 次は腕だね。はい、伸ばしてー」
悠貴「こ、こうですかっ?」
言われるがまま、腕をまっすぐ伸ばします。
128 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:24:13.26 ID:m+2Lak1/0
美嘉「うん、そんな感じ」
すると美嘉さんは丁寧に、だけどテキパキとした動作で拭いてくれます。
美嘉さんが言っていた通り、拭かれた所はすっきりして気持ちがいいです。
そして、両腕を拭き終わって。残るは……。
美嘉「さて、あとは前だけど……」
悠貴「そ、それは自分でやりますっ!」
美嘉「えー? せっかくだから、このままアタシが拭いてあげ―――」
悠貴「なくて結構ですからっ!」
さすがにこれだけは譲れませんっ。
美嘉「冗談冗談★ はい、どうぞ」
美嘉さんが私にタオルを渡してくれます。
良かった……。またこのまま押し切られてしまうのかと思いました。
129 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:24:41.52 ID:m+2Lak1/0
*
美嘉「それじゃ、電気消すね」
悠貴「お願いします」
電気が消え、部屋には窓から差し込む月明かりだけが残りました。
もう、就寝の時間です。
電気のスイッチを押した後、美嘉さんは床に敷いた布団の中へ。
悠貴「あ、そういえば……美嘉さん、寝る前に訊きたいことがあるんです」
美嘉「なに?」
私はベッドの端までもぞもぞと動いて、美嘉さんの顔が見える位置に。
美嘉さんもこっちに顔を向けてくれます。
130 :
◆mqlRkew9nI/5
[saga]:2017/06/12(月) 00:25:40.10 ID:m+2Lak1/0
悠貴「どうして事務所で幸子さんたちは、美嘉さんのことを『お姉ちゃん』と呼んでいたんですか?」
美嘉「ああ、それは幸子ちゃんたちがアタシの妹になったからだよ」
……。……風邪で頭が上手く回っていないせいか、美嘉さんの言葉の意味がよく分かりません。
悠貴「すみません、よく意味が分からないので、もっと詳しく話してもらっていいですか?」
美嘉「ん、いいけど……うーん、どう話したものかな……」
そして、美嘉さんは私に話してくれました。
最近、美嘉さんは事務所のみんなを次々に妹にしているそうです。
さらには、これからもどんどん妹を増やしていくつもりだとか。
……詳しく聞いても、よく理解できませんでした。
103.87 KB
Speed:0
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)