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('A`)はベルリンの雨に打たれるようです
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136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/14(日) 12:44:25.43 ID:lupL9AmA0
おつおつ
トリガーハッピーに続いて極限状態に適した人材がw
それにしても指揮官先頭で戦果も稼いでる英雄なのに、ツン以上に自己評価が低いよな…野郎にもてはやされるのはごめんだろうけどw
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/14(日) 14:20:29.42 ID:lupL9AmA0
>>135
結局いつ・どこから・何を目的として、侵略者がどうやって仕掛けてくるか…ってのを人類側には未然に防げないからねえ
人類側も「いつも万全の状況で応戦できる」状態でなら互角以上に戦えても、無防備な所を完全な不意打ち・態勢の整わない状況で被害拡大…なんて事を繰り返せば深海側も成果があるわけだし
それに前回でも対応できなかった司令部に、前線を見捨てられて壊滅・戦力の消失により人類側の敗勢なんて局面すらあった訳だし(ドクの機転でギリギリ
結局「精強な軍隊」を持っていても「指揮する側」が無能だと持て余すどころか被害を増やすし、「有能な指揮官」が辣腕を振るっても「現場で動く側」が答えきれないと最良の結果にはならないし
そういう意味でも今の状況が奇跡的な上で、それでも後手に回ってる人類が絶望的でもある無理ゲーというw
138 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/14(日) 17:36:02.52 ID:uN3uvxTa0
“彼女”は、人間達に戦艦ル級という呼び名が付けられている種族の一人であった。
無論、そのことを彼女は知らない。そもそも彼女たちは個体はおろか種族を識別するような名前を持たず、また特に持つ必要も無かった。
彼女たちに“個人”が存在しないわけではない。だが彼女たちは、『全の意志』に全てを委ねることによってこの海の世に存在する全ての同胞達と解り合うことができた。そのため、“個”と“全”を区別する為のあらゆる事象を必要としなかったのである。
一応、『個の意志』を通して語ることで、特定の個体同士“のみ”での精神共有も可能ではあったが、そのような行為は彼女からすれば極めて非効率だった。
彼女が人間を殺すにあたっても、彼女自身には何の動機もない。
ただ、『全なる意志』が陸に上がる人間の廃滅を望んでいるためその意志に従事しているに過ぎない。そして、彼女自身はそうでなくても『全なる意志』は人間への強い憎悪を抱いていたため、自然彼女も人間を憎悪し、その抹殺を徹底する。
『全なる意志』がそれを望むのなら、彼女もまたそれを望み実行することが自然かつ効率的だからだ。
139 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/14(日) 17:38:13.50 ID:uN3uvxTa0
一方で、『全の意志』から離れた“彼女個人”の見解を述べるなら、彼女は人間に対して何の感情も抱いてはいない。
“彼女”にとって、そして彼女以外の全ての同胞にとって、『全の意志』が人間と呼び抹殺対象に選んだ種族は脆弱に過ぎた。下級個体以外にとって人間の武器は彼女たちの脅威とはなり得ず、今は同様に抹殺対象にカウントされている【艦娘】が出現するまで彼女たちは人類に対して圧倒的に優勢だった。
彼女たちが艦娘ではなく人類の兵器と戦うときの心境は、言うなれば虫けらを見たときの人間とよく似ている。
害にはならないが、見ていても不快だ。だから、叩きつぶす。それだけの話。
『…………』
────だから、人間が操る鉄の砲車が瓦礫を蹴散らして眼前に現れたときも。
ξ#゚听)ξ「Feuer!!」
、、、、、、
その時点では。
彼女は単に、“全の意志”に基づく不快感と憎悪を露わにしただけだった。
140 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/14(日) 17:39:12.99 ID:uN3uvxTa0
現状報告2
ベルリンにおける彼我の戦力展開状況
オレンジ太線:深海棲艦による増援部隊包囲陣
青線:在ベルリンドイツ残存戦力による防衛線
青矢印:ドクオ、ツンらの大まかな進撃路。北側がドクオ、南側がツン
赤矢印:深海棲艦側の攻撃方向
141 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/14(日) 17:43:17.40 ID:uN3uvxTa0
放たれた砲弾は、寸分違わぬ狙いでその“人影”に直撃する。105mm滑空砲によるAPFSDS(対装甲貫通弾)なんて普通の生身の人間が食らえば生々しい断裂音と共に飛散してしまう代物だが、響いてきたのは分厚い金属の板にぶち当たったような、生々しさとはほど遠い高い音。
そいつの周囲に張り巡らされた、戦艦丸ごと1隻とほぼ同級の耐久力を持つと言われる不可視の障壁に砲弾がはじき飛ばされる。
ξ゚听)ξ「………流石に固いわね、カルシウム取り過ぎじゃない?」
ゆっくりと此方を振り向く戦艦ル級に向けて、私は苦笑いと共にそう呟いて見せた。
長く滑らかだが、化学繊維のような不自然な光沢を放つ黒髪。顔立ちも人間基準で見て普通に“美人”といって差し支えないけれど、ピクリとも動きやしない口元やヒト型のこいつらに共通した蝋のように白い肌のせいで作り物のマネキンにしか見えない。
此方をじっと見つめる青い眼も、まるでガラス玉のように無機質で不気味だ。
ただしそのあまり人間性が感じられない雰囲気故に、身体にぴったりとフィットして線を浮き立たせた黒い服はかえって妙な艶めかしさを感じさせる。
_,
ξ゚听)ξ
………おい待て何だあの胸の膨らみ。あれ私より明らかにあるんだけど。どれだけ低く見積もってもDはかたいぞ。
おい化け物がしていいパイオツじゃないぞふざけるなその肉塊私に寄越せ。
ξ;;)ξ「フゥグッ!!!」
《隊長!?》
『!?』
25歳にしてAカップブラな自身の境遇に、思わず涙が吹き出る。
なんとなくだけど、ル級が少しだけ戸惑った気がした。
142 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/14(日) 17:45:13.32 ID:uN3uvxTa0
ξ#;;)ξ「うぉおおお世界中の巨乳死ねぇえええええ!!!第二射ァあああ!!!」
『ッ!!』
八つ当たりの絶叫。レオパルト1の主砲が火を噴く。弾種は引き続きAPFSDS。
弾丸は再び障壁に弾かれ、まるで上から踏みつぶしたアルミ缶のようにぺしゃんこに潰れて地面に落下する。
大きなダメージを負った様子はないけれど、その攻撃で我に返ったように此方をにらみつけながら両腕の艤装を向けてくる。
ξ;゚听)ξ「全速後退!!」
《Jawohl!!》
水平射撃された砲弾が、斜め後ろに下がって射線を空けた私たちの眼前をすさまじい勢いで飛び過ぎる。
2、3キロほど彼方で、巨大な火柱が立ち上った。
143 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/14(日) 17:56:08.81 ID:uN3uvxTa0
ξ#゚听)ξ「Feuer!!」
まさに「戦艦」の名にふさわしい圧倒的な攻撃力だが、ビビれば死ぬのは私たちだ。即座に砲塔を旋回させ、三発目を叩き込む。
ル級はこれを直立不動で平然と受けながら、再び艤装の狙いを定めてきた。
ξ;゚听)ξ「っ!!」
咄嗟に、機銃の引き金を引いて奴の顔面付近に弾幕を集中。戦車砲で貫けないものに7.62mm弾なんて撃ち込んだところで、当然ダメージなんて蚊に刺されたほども与えられないだろう。
『……!?』
だけど、障壁にぶち当たった弾幕は無数の火花を散らす。顔の周りに集中した射撃と激しくまき散らされる弾着の火花に視界を奪われたル級が、機銃掃射を避けるために艤装で射線を塞ぎにかかった。
ξ#゚听)ξ「前進!併せて砲撃!!」
《了解っと!
Feuer!!》
操縦手がアクセルを踏み込み、エンジンを唸らせながら私たちはル級に肉薄。20メートルもない至近距離から砲弾を叩き込む。
『────ッ!!』
ξ゚听)ξ凸「はっ、ようやくちょっといい顔したわね!」
ダメージ自体は大したことなくても、流石に超近距離から叩き込まれた戦車砲弾による衝撃は完全に殺しきれなかったらしい。
後ろに少しだけ仰け反ったル級は、態勢を立て直すと機銃座の私を睨んでくる。私は中指を突き立ててそれに応じた。
とはいえ、今姿勢を崩したのはあくまで着弾の衝撃によるもの。断じて効果的な損害を与えたわけではないだろうし、実際奴の動きには微塵もダメージは感じられない。
だけど、砲撃によるダメージは“極めて小さい”ものではあっても“皆無”じゃない。
APFSDSの貫通可能な装甲厚は、700mm。単純なスペック上の貫通能力だけで言えば、かの名高きバトルシップ・ヤマトの砲盾すら撃ち抜ける。
そう、実際にやろうとすればどれだけ気の遠くなるような時間がかかるとしても、私たちが“アンタ達を沈める力は持っている”。何発か攻撃受けて、あんたもその辺りは理解したでしょ?
流石に、カスダメとはいえ損害与えてくる相手がすぐ傍にいるのに悠長に援軍なんて相手にしてる場合じゃないわよね?
144 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/14(日) 17:58:41.68 ID:uN3uvxTa0
.
────さぁ。
『……………!!!』
《ル級、再び此方に照準!!》
ξ#゚听)ξ「発砲しつつ回避運動!
Feuer!!」
“艦娘”ばっかり気にかけてないで、たまには“人間”の方も見なさいな!!
145 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/14(日) 18:16:59.83 ID:uN3uvxTa0
(`∠´)「…………この報告は、間違いのないものか?」
「……………。あくまで、脅しの可能性はあります、100%とは言えません。
しかしながら、実際に政府談話も発表されている以上“可能性が極めて高い”と見るべき事象なのは確かです」
(`∠´)「…………」
「あの国が過激とはいえ、いくら何でもこんな馬鹿げた真似をするなんてあり得るか……!?
流石に信じられん、デマに決まっている!国際社会からも袋だたきに遭うぞ!絶対に、あり得ない!!」
(`∠´)「………あり得ないと言うことは、あり得ない」
「大佐……?」
(`∠´)「戦時において、“常識”、“秩序”、“良心”などという言葉は全て無意味だ。
そもそも考えて見たまえ、君たちは六年前のあの日まで、“海の底から現れた正体不明の化け物”と戦うことを一度でも想定したか?それこそ、六年前の君たちはそんなことを言われれば鼻で笑って肩を竦めたはずだ。
“常識的に考えてあり得ない”と」
「………」
(`∠´)「現在通信が繋がっている、国内外の全ての軍組織・政府組織に連絡を取れ。アメリカへのリーク許可は事後承諾で構わん、事は一刻を争う」
「はっ!内容は如何します!?」
(`∠´)「当然、一言一句違えずアメリカからの情報をそのまま、だ」
「『ロシア政府が、非公式にアメリカ合衆国へ以下の内容を通達した。
36時間以内に欧州における深海棲艦の制圧が為されない場合、ロシア軍は国家安全保障的観点からルール地方への戦略核兵器の使用を独断で実行する』とな」
146 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/14(日) 18:17:38.65 ID:uN3uvxTa0
投下完了。次はまた本日深夜〜明日未明予定です
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/14(日) 19:15:47.97 ID:RnDpdW75o
乙
ただでさえ無理ゲーなのにタイムリミットまで増えるとは……
148 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/15(月) 02:37:40.22 ID:LXRvfH1A0
2011年10月、ソロモンアイランズ領ガダルカナル島近海で、オーストラリア海軍によって深海棲艦の【ヒト型】が初めて確認される。太平洋上で奴等と人類の本格的な「戦争」が始まってから、おおよそ二ヶ月が経過していた。
記録に残っている限りでは、彼らが遭遇したのは今日重巡リ級と呼ばれる存在2隻。何故文頭のような注釈が着くのかというと、報告到達から17分後に遭遇部隊は全艦船が通信途絶となり、交戦した敵艦隊の全容が判明しなかったためだ。
この重巡リ級の出現を皮切りに世界中の海洋で【ヒト型】が確認されるようになり、私たち人類は日本、アメリカ、イギリス、ロシアの4ヶ国を除いて一時的に世界規模で制海権を喪失した。全保有艦艇の95%が撃沈されたオーストラリア、空母遼寧を失った中国を筆頭に、文字通り海軍が「全滅」した国も決して少なくない。
《回避成功!車体運動に未だ支障なし!!》
ξ;゚听)ξ「とにかく砲撃は当て続けて! Feuer!!」
《Jawohl!! Feuer!!》
何故、これほどヒト型が人類を一方的に駆逐できたのか?
理由は当然幾つもある。単なる“潜水”だけなら戦艦や空母でも可能で、海とあればどこにでも出現することができる神出鬼没性。
イージス艦の薄い装甲など容易く粉砕する火力。
時として私たちの裏をかくこともある高い知力。
人間程度しかない大きさ故と、未だに正体が解析できていない特殊な電磁波の影響が相まってミサイルによるロックオンが不可能という技術的な事情。
主立ったものを数え上げていくだけでもこれだけのものが上げられる。
『ッ、ッッ!!』
《よし、直撃弾!!射線がぶれてます、ル級砲撃動作解除!!》
ξ#゚听)ξ「続けて撃て!! Feuer!!」
だけど、これらを備えた上でヒト型の最も厄介な点を述べるとすれば。
『…………』
《………ル級未だ健在》
ξ;゚听)ξ「……ほんっと、いやになるくらいタフねあんたたちって」
間違いなくそれは、戦艦と同等の【耐久力】だ。
149 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/15(月) 02:40:36.30 ID:LXRvfH1A0
非ヒト型が脅威じゃないとは言わないけれど、あいつらの場合【軽巡洋艦並み】、【駆逐艦並み】なのはあくまで火力と表皮硬度の話だ。第二次大戦当時の軽巡洋艦の装甲なんて、はっきりいって近現代からすれば陸上兵器にとっても紙のように薄く脆い。加えて、頭部或いはそれに準ずる機関を破壊すると絶命するという点は人間と全く変わらない。
そのため、状況によっては戦闘車両どころか歩兵の携行火器でも容易く撃破できてしまう。eliteやflagshipになれば流石に歩兵で太刀打ちするのは厳しくなってくるが、それでも第3世代戦車が2、3両もいれば用兵次第では完封できる。
ξ;゚听)ξ「装填手、残弾は!?」
《まだ全然余裕ですけど、流石にこのまま破壊できるほどの弾数かは判断つかないです!》
ξ;゚听)ξ「大丈夫、私たちの目的は果たせてるわ!キツいけどもうちょい頑張って!!」
《了解っす!これが終わったらご褒美に抱いtξ゚听)ξ「お前を砲弾として撃ち出してやろうか?」
ただし、【ヒト型】の場合大きく事情が変わる。彼女たちは、周囲に張り巡らされた防護障壁それ自体が“戦艦の船体”の役割を果たしている。
『……!!!』
《くぅっ、涼しい顔で跳ね返しやがって!!》
ξ;゚听)ξ「とはいえ気は引けてる!
次は奴の左から回り込んで!とにかく照準を合わせさせないよう小刻みに動け!!」
《Jawohl!!》
要は、今私たちがやっていることは「ミズーリ級の船体に、何の計画性もなくただひたすら戦車砲を撃ち込んでいる」のと変わらない。
《……今ので丁度10発目です》
ξ;゚听)ξ「今のところ全弾命中ね。流石世界に誇るドイツ戦車道だわ」
『………』
こっちを睨み付けるル級の様子からは、私たちへのいらだちは垣間見えてもダメージなんてこれっぽっちも感じられない。流石に少しうんざりする。
《あちらさんからすりゃようやくちょっと腕の辺りに痒みが走ったくらいですかね》
ξ゚听)ξ「デコピンくらいは効いてると思いたいわね」
理論上は、装甲を貫通している以上撃沈が可能だ。少なくともレオパルト1の搭載可能弾数60発では必要量の何千分の一にも満たないだろうけれど。
私はル級の動きを注視しつつ、無線機を手に取る。
150 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/15(月) 02:42:45.61 ID:LXRvfH1A0
ξ゚听)ξ「レオパルト一号車より各車、応答せよ。損害、それから誘因状況を報告しなさい」
《此方二号車、タ級eliteと交戦中!敵火砲苛烈なれど、未だ誘引は継続できています!》
《六号車より一号車、ル級と交戦中。奴さんだいぶ怒ってますが、もうしばらく便所のハエの如く顔周りを飛び回ってやる所存です》
《七号車、ル級flagshipの足止めに成功中!お姉様、この戦果のご褒美に私たちwξ゚听)ξ「あ?」いえなんでもないです》
喜ばしくも驚くべきことに、全車両健在。ばかばかしい軽口を挟んで来る奴もいたけれど、それだけ彼女たちがこの一撃食らえば跡形もなく吹き飛ばされる“命がけのちょっかい”をリラックスして遂行している証左だ。
……この娘らがイベントに引っ張り出された練度不足の新兵っておかしくない?ドイツ軍の戦車道って変態と化け物育成するためにやられてんの?
今や、南街区への砲撃はほとんど止まっている。白兵戦力として投入されているであろう非ヒト型との戦闘音はそこかしこで続いているが、私はそれらの音が少しずつ近づいていることに気づいた。
ξ゚听)ξ「────全速後退!!」
ぴくりとル級の腕が反応したのを見て取り、指示を出す。力強くアスファルトを踏みしめながらレオパルト1が下がり、目の前を鉄の塊が突風を残して通過。
右手の古びたビルに砲弾が突き刺さり、一瞬で瓦礫の山になる。
よし、敵の動きもよく見えてる。
まだ、やれる。
ξ#゚听)ξ「Panzer vor!!」
奴等に一泡吹かせてやるまで、あと少しだ。
151 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/15(月) 02:46:08.01 ID:LXRvfH1A0
レオパルト1のエンジンが唸り、車体が雨を切り裂いてル級へと突っ込んでいく。
『─────!!!?』
それまである程度の距離をとって回避運動を繰り返しながら攻撃していた私たちの、予想外の動きにル級の眼が見開かれた。
慌てて艤装を構えるけど、その動作は酷く緩慢で私たちからすればスローモーションと変わらない。
ξ#゚听)ξ「Feuer!!」
『!! ………ッ!?』
外す方が難しい肉薄射撃。砲弾は今まで通りル級の全身を覆う“不可視の戦艦”に激突して拉げたが。その後奴からの応射はない。
、、、 、、、、
距離が、近すぎる。
『〜〜〜!!』
私たちと奴との距離は、今や3メートルもない。幾ら戦艦並みの耐久力があっても、“戦艦の砲撃並みの爆発”が至近距離で起きればただではすまなくなる。
こいつの圧倒的な火力は、この場にあっては寧ろ足枷だ。
ξ゚听)ξ「どうも、ごめんあそばせ」
『…………!』
勿論、ここまで近づいたところで私たちにできることもない。私たちでも接射は流石にダメージを避け得ないし、向こうの自爆と違ってダメージの比率が明らかに割に合わない。体当たりにしても、あの障壁強度を考えれば此方が壊れる確率の方が高い。
だけど、挨拶とプレゼントぐらいはくれてやれる。
152 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/15(月) 02:50:35.48 ID:LXRvfH1A0
ξ゚听)ξ「これ、“お近づきの印”に持って行きなさい!」
飛び下がって距離をとろうとしたル級の足下に、フラッシュバンを投げつけながら私自身は機銃座の中に伏せた。
『!!!!?!?!!!?』
炸裂する閃光、耳をつんざく破裂音。さっきの機銃掃射による目つぶしと同じで、砲弾は防げても強い光は防げない。ル級が声にならない悲鳴を上げて、眼を押さえてのたうち回る。
ξ#゚听)ξ「Feuer Feuer Feuer!!」
即座に機銃の引き金を引きつつ、叫ぶ。レオパルト1が全速力で下がり距離をとりつつ、叫んだ数だけル級に向けて砲弾を放った。
一発目。ル級の身体が防壁越しに伝わる着弾の衝撃で仰け反る。
二発目。踏ん張りきれず、ル級は姿勢を崩して濡れた路面に足を滑らせる。
三発目。とうとう堪えきれず、ル級はばしゃりと水飛沫を立てて仰向けに地面に転がった。
ξ゚听)ξ「私たち、教科書に載るんじゃない?“世界で初めてル級を転ばせた戦車乗りたち”って」
《そいつぁ光栄ですね》
少なくとも、将来自分の子供に聞かせる寝物語としてはなかなかのネタだ。
そこまで、世界が滅びずにあってくれればの話だけど。
153 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/15(月) 03:11:21.24 ID:LXRvfH1A0
『─────────っっっっっ!!!!!』
《おぉ、激おこ》
ξ゚听)ξ「やべーわねあれ。完全に私らのこと縊り殺したい気持ちでいっぱいの目つきだわ」
転倒させたとは言っても、踏ん張りが利かない状態のところを突っ転ばせただけで何のダメージにもなりはしない。フラッシュバンの衝撃から立ち上がったル級は、すぐに起き上がって此方を見据える。
きっと彼女は、最早主力部隊への砲撃なんて眼中にない。海のように蒼い眼は怒りに燃えていて、両手の艤装はワナワナと小刻みに震えている。唇は心底悔しそうに噛みしめられ、もしや怒りのあまり泣き出す寸前の子供みたいな表情だ。
あのリ級以外にも、これだけ感情を露わにする深海棲艦がいるのかと少し意外に思う。
ξ゚听)ξ(ま、気持ちは解るるけどね)
私たちが眼前に立ち塞がった当初の、そして戦闘中のル級の表情を思い出す。
こいつ単体の思想なのか深海棲艦全てがそうなのかは知らないけれど、こいつら私たち人間をとるに足らない存在として見下していた。だけど、その“取るに足らない存在”に作戦を邪魔され、やかましく騒ぎ立てられ、挙げ句恥をかかされた。
きっと、腸が煮えくりかえってこめかみの辺りが熱くなって、とにかく私たちに無惨な死を与えたくて仕方ないはずだ。
ξ゚听)ξ(でもね、一つ教えて上げるわ。
こう手口ってね、あたしら人間の常套手段なのよ)
今のあんたの脳は、私たちをむごたらしく殺すことしか考えてない。
今のあんたの眼は、私たちしか見据えていない。
今のあんたの殺意は、私たちにしか向けられていない。
だから、あんたは。
「───プリンツ、僕が突っ込むから援護して!!」
「うん、任せて!………Feuer!!」
『………!!?』
一番の天敵が、すぐ傍まで来ている事に気づけない。
154 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/15(月) 03:12:21.11 ID:LXRvfH1A0
投下完了。
明日は更新一回の可能性が高いです。
完成していれば19:00頃に
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/15(月) 10:48:14.29 ID:wIu5Q5/A0
おつおつ
ツン姉様の名声がやばいなw
実際に「ル級を翻弄する動画」なんてのが、世界に対して発信されれば文字通り伝説になるだろうし
…あと戦車組の士気の高さと対応力は、自分達にとって絶望的な状況下に「憧れの存在」が突如として馳せ参じ、窮地を見事に覆して尚も先頭に立って先導してくれるからじゃw
156 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/16(火) 00:16:10.47 ID:9hQehj8k0
私たちとル級が交戦する区画に飛び込んできた、二つの人影。後続している金髪の少女が、背負っていた艤装を駆動させ4門の砲を一時にル級めがけて放つ。姿勢が安定しきらないうちに放ったこともあってか、命中は一発にとどまる。
だが、一発でも戦車の滑空砲とは威力が段違いだ。“軍艦”による一撃を背後から浴び、ル級の姿勢が再び崩れた。
「食らえっ!!」
『ウッ……』
再び地面に転びかけながら、右手の艤装を杖代わりにしてなんとか堪えるル級。その横を全速力で駆け抜けながら、先行した銀髪の少n……少女が右手の連装砲を構えて追撃を加える。
『グゥッ……』
先ほどの金髪の子による一撃よりも、爆発は遙かに小さい。それでもダメージはあったらしく、ル級の表情が怒り以外の感情────苦痛によって歪んだ。
『ア゛ア゛ッ!!!』
「っと!」
崩れた体勢で主砲を放つことはかなわず、やむなく機銃掃射での反撃。銀髪の少女は横っ飛びで射線を躱し、そのまま路上で一回転。素早く身体を起こして、ル級の前方へと回り込む。
『…! ……ッ!!』
一瞬で、それも艦娘に挟撃の形を作られたル級が、初めて本気で動揺していた。
「そっちの戦車、在ベルリンドイツ軍の!?」
ξ゚听)ξ「ええ、私はフランス人だけどね!」
「そうですか、間に合って良かった!!」
ボーイッシュな服装の銀髪の少女は、そう言って微笑みつつベレー帽を被り直す。
ちらりと、帽子に書かれた「Z1」の文字が見えた。
「ドイツ連邦海軍所属の艦娘、駆逐艦【Z1?Leberecht?Maa?】です!!
レヒフェルト空軍基地より、第1波増援軍として派遣されました!!以後、貴軍との連携戦闘に移ります!!」
ξ゚听)ξ「………っ!援軍感謝するわ、支援は任せて!!」
思わずこみ上げてきた熱い何かをなんとか堪えて、私はレーベレヒトからの言葉にそう答える。
作戦の直前、ドクが言っていた意味が少しだけ解った。
微笑みと共にかけられた言葉は、神の啓示よりもよっぽど優しくて。
『Feuer?!!』
圧倒的な力を持つ化け物に立ち向かう姿は、神様よりよっぽど頼もしい。
157 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/16(火) 00:18:54.50 ID:9hQehj8k0
_
(#゚∀゚)「Los, Los !!」
(#゚д゚ )「Allemann Feuerschutz !!」
レーベレヒトともう一人──私の記憶が正しければPrinz Eugen──に続いて小銃や対戦車砲を構えた。ドイツ兵の一団が区画に雪崩れ込んできた。さっきのレーベの言葉通りなら、彼らはさっきまで包囲下にあった増援部隊の一部だろう。
何人かは見覚えがある。異常に眼力の強い指揮官の人に、眉毛が突然変異した(頭が)軽そうな男性、それと実際に言葉を交わしたティーマス=ワーカー軍曹。
ポルトガルの地で、ドクの同僚や上官だった人たちだ。
( <●><●>)「私たちの武器はヒト型に対してまるで役に立たないことは解っています。
弾幕を防壁の艤装部分と顔面部分に集中、奴の動き、視界を制限せよ」
(#><)「グレネードは足下に!!震動と爆光は少なからず奴の牽制に繋がるはずなんです!!」
「「「Jawohl !!」」」
艦娘の影に隠れがちだけど、ドイツ陸軍の前線部隊は私達フランス軍と並んで深海棲艦との交戦経験が最も豊富だ。そのため彼らは、戦車や艦娘と連携して深海棲艦と戦うことに慣れている。
『ア゛ア゛、ゥア゛!?』
所詮は歩兵の携行火器、ほとんどはル級からすればレオパルト1よりも更に無力な存在だ。
だけど、迅速な部隊展開とその後に敷かれる猛烈な妨害射撃はル級一隻を縫い止めるには十分すぎる。
(#゚д゚ )「レーベ、プリンツ!!」
「了解、任せて中尉!!」
「確実に仕留めます!!
Feuer !!」
ξ#゚听)ξ「私達も撃って!!たとえ微かでもダメージに成るのなら撃たない理由はないわ!!」
《Ja!! Feuer!!》
『ウア゛ア゛、ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!?』
そこに更に、レーベレヒト、プリンツ、そして私達の砲撃が加わる。とはいえ、幾ら艦娘といっても駆逐艦と重巡洋艦。魚雷という必殺兵器が使える水上ならともかく、陸戦となれば流石にル級を轟沈させることはできない。
だけど、包囲され、身動きが取れず、反撃もままならず、ただ攻撃を受け続けるだけという現状では。
『ウ、ア゛、ア゛……ッ!!』
一気に死ねないというのは寧ろ、拷問と変わらない。
158 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/16(火) 00:21:25.30 ID:9hQehj8k0
『ギぃッ!?』
鈍い金属音。
全方位から降り注ぐ砲火の中で、ル級が突然今までとは毛並みの違う呻き声を上げた。
《………砲撃が奴の艤装に当たった!!》
ル級が構える右腕の艤装、その中ほどから小さな黒煙が上がっている。それは今まさに、レーベレヒトの砲弾が防壁を貫いて“直撃”した箇所だった。
防壁の出力が弱まって、攻撃を防ぎきれなくなっている。
つまりは。
「───ル級、中破状態に移行!!」
(#゚д゚ )「ここで仕留めろ、絶対にだ!!」
プリンツの報告を受けて、ミルナ中尉が叫ぶ。レーベや他の兵士達も応えたようだけれど、全ての声は更に激しくなった砲声・銃声・爆音に飲み込まれて聞こえなくなる。
ベルリン市全てに響き渡るような、轟音の嵐。
《よし、追い詰めてるぞ!!》
《弾はまだある!いっそトドメはあたしらでいただいちまえ!!》
ξ゚听)ξ「………?」
誰もが、ル級を「陸で」追い詰めていることに興奮している。一号車の搭乗員達も勝利を疑う素振りはなく、誰もがル級撃沈の瞬間を一秒でも早く迎えるために動き続ける。
ξ;゚听)ξ「─────全速後退!!」
《ひゃっ!?》
だから、私が“それ”に気づけたのは偶然以外の何物でもない。
『『────ォオオオオオオオオッ!!!』』
私の叫び声に驚いた操縦手が、車両を慌ててバックさせる。
直後、目の前の道路が盛り上がりアスファルトを突き破って私の目の前に巨大な何かが屹立した。
159 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/16(火) 00:36:32.69 ID:9hQehj8k0
「……っ!? なっ!?」
_
(;゚∀゚)「冗談だろ……!?“下から”だと!?」
『アアアアアアアッ!!!』
『オォオオオォォッ!!!』
映画【トレマーズ】の看板モンスター、グラボイズを思わせる演出で姿を現したのは、駆逐イ級、そしてハ級の二隻。
全く予想していなかった、「下から」の攻撃に私達全員の対処が遅れる。
『ゴォアッ!!』
「わっ!?」
(;<●><●>)「通常種なら十分対応は可能です!!パンツァーファウスト!!」
ξ;゚听)ξ「砲塔旋回、目標正面イ級!!」
《り、了解!! Feuer?!!》
イ級の方が地面から這い出し、その足でレーベを踏みつぶしにかかる。私とティーマスが迎撃に移ったけれど、目標を急激に変えたため射線が定まらず攻撃は全て見当違いの方向に飛翔する。
そしてレーベも回避運動をとってしまったことで、包囲網の一角に巨大な隙が生まれてしまった。
『───ッ!!!』
「きゃあっ!?」
(;゚д゚?)「Hinlegen!」
全方位射撃の圧力による拘束から解放されたル級は、プリンツとミルナ中尉達に向けて機銃を掃射。彼女たちが怯んだ瞬間、よろめく身体を無理やり踏ん張って包囲網から離脱を計る。
「に、逃がさなi『ウォオオオオオオオッ!!!』あぁもう!!」
ξ;゚听)ξ「砲手、ル級を狙える!?」
《無理です!あいつイ級達に射線を塞がせて……!》
ξ;゚听)ξ「Merde!!」
反撃に使われたのが機銃で、しかも足取りはまさに重傷者のそれだ。
おそらく奴の艤装はほとんど機能を停止していて、耐久面でも最早“大破”に突入している可能性が高い。下手をすれば、駆逐艦のレーベレヒトはおろかレオパルト1でトドメをさせる可能性すら0じゃない。
だけど、艦娘二人はイ級達に進路を封じられ、私達の射線も通らない。迅速な排除を行おうにも、流石に地下からの強襲に対してミルナ中尉達の混乱が収拾しきっていない。
ξ;゚听)ξ(っ、せめて、せめてル級の方の動きだけでも封じないと!このままじゃ、あいつに逃げられ────)
「────攻撃隊、出撃! Vorw?rts!」
160 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/16(火) 01:06:05.08 ID:9hQehj8k0
低く、思わず背筋を伸ばしてしまうような、厳格な女の人の号令が聞こえた。
ξ;゚听)ξ「!?」
私達の頭上を、ミニチュアサイズの“航空機”が駆け抜けていく。
時代遅れのプロペラ式で、更に言えばBf109改───ナチス・ドイツ軍の【メッサー・シュミット】に酷似しているそれらが、手前のイ級に向けて一斉に機銃掃射を叩き込む。
「───ハイン、撃って!!」
『ヴァアッ、オアアッ!?』
『ガァッ!?』
苦悶の声を上げて仰け反るイ級の横っ面に、今度は砲弾が直撃する。
正確に、完璧に眼を射抜かれたイ級は更に声高に断末魔を上げて、ハ級を巻き込み転倒した。
『─────!?』
ξ;゚听)ξ「………!
レーベレヒト!!」
「解ってる、逃がすもんか!! Feuer!!」
一気に開ける視界、射線。イ級の妨害から解放されたレーベレヒトは、乱れた衣服を直すことすらせず街路に躍り出る。
遠ざかりつつ驚愕に眼を見開いているル級に向けて、彼女は艤装の引き金を引いた。
『ウァッ───!』
ル級は、最後の一瞬まで生を諦めてはいなかった。
彼女は此方に向かって身を翻すと、左手の艤装を盾のように構えつつ反撃を試みる。
『──────ア』
障壁を。
艤装を。
胸を。
レーベレヒトの放った弾丸が、貫く。
ル級は、ぎこちない動きで下を向く。
彼女は、一瞬自分の身体に空いた穴を見つめると、
『………ア、ァ────』
そのまま、糸が切れた操り人形のように。
雨に濡れながら、アスファルトの上に膝から崩れ落ちた。
その様子を見届けて、レーベレヒトはなおも艤装を構えつつ鋭い息を口から吐く。
「…………ル級、轟沈を確認しました!」
161 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/16(火) 01:28:36.04 ID:9hQehj8k0
《ル級、撃沈………っ!!!》
《っしゃああああ!!!あたしらも!!艦娘もいたとはいえあたしら陸軍も深海棲艦のヒト型と互角に戦えたんだ!!》
ξ;゚听)ξ「喜んでる場合じゃないでしょ!!次は……イ級と……」
『ォオオオオオオオオ………』
ズシャッというしめった音で、私の言葉は遮られそのままかき消えた。目の前には全身をくまなく蜂の巣にされて息絶えたロ級とイ級の屍が転がっている。
上空を、20機あまりの小さなメッサー・シュミットが自らの勝利を顕示するように飛び回っていた。
「それにしてもエミ、お見事な指揮だったわね!どう、貴女このまま陸軍に入隊して私達のカメラードにならない?!」
「冗っ談じゃないわよ、一般人を戦争に巻き込むつもり?
それに、私は本当に口を出しただけよ。褒めるなら撃ったハインを褒めて頂戴」
「……お前、作戦行動中に勧誘行為って、何を考えてるんだ?」
「堅いこと言わないでよグラーフ!貴女だってエミの実力は道中で見たでしょ!?」
後ろから、女性同士がやり取りをする声を乗せてキャタピラーの走行音が近づいてくる。唖然としていた私は我に返って振り返り………また、ぽかんと大口を開けて思考を止める羽目になった。
ξ;゚听)ξ「ケーニッヒ・ティーガー………?」
第二次世界大戦時に最強を謳われた、伝説の戦車が止まっている。
162 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/16(火) 01:53:29.79 ID:9hQehj8k0
「…………そこの車長、大丈夫か?どうも意識が混濁しているようだが」
ξ;゚听)ξそ「───へ!?あ、いえ!!」
次々と発生した事態に脳の処理が追いつかなくなっていた私の肩を、ティーガーに搭乗していた(正確には上に乗っていた)女性がポンッと叩く。
半分私に分けてくれてもバチは当たらねえんじゃねえかって思えるぐらいデカい胸と、白く透き通った、陶磁器のような肌が眼に飛び込んできて少しどぎまぎした。
それほど整ったスタイルなのに、彼女の服装は露出がほぼない。白いコートを肩からかけ、その下には黒のラインが入った軍服をビシッと着込んでいる。
………ただ、その服のサイズはなぜだか異様にぴっちりしており、艶めかしいボディラインははっきりと浮き出ている。背中や腕に艤装を付けているから、彼女もおそらく艦娘だろう。
因みにもう一人───ティーガーの上で何故か腰に手を当てて仁王立ちになっている女性は、灰色を基調とした軍服を着ているものの此方は肩がばっちり露出している。ついでに服の方はこれまたしっかりボディラインを協調するサイズに調整されていて、丈は短く素材は光沢を放つタイプと…………まぁ、言ってしまうなら艤装がないと「保護された痴女かな?」と首をかしげたくなる過激な服装だ。
今更ながら、何故艦娘達の多くはこうも扇情的な服装が多いのだろうか。
アレか、やっぱり極東のHENTAI大国日本発祥の技術だからこうなるのか。
ξ゚听)ξ「…………」
「………あら!」
思わず見つめてしまっていると、眼が合った。何故か、満面の笑みでふんぞり返っている。
「ふっ、ニホンで魅力に磨きをかけた結果、同じ“れでぃ”をも虜にしてしまうようになったのね。流石よね、私」
ξ゚听)ξ「何いってだお前」
163 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/16(火) 02:40:44.96 ID:9hQehj8k0
「…………」
なんか残念な感じの艦娘()の足下で、ティーガーのキューポラから顔を出している車長と思わしき少女はどうやら生身の人間のようだ。
赤みがかったツインテールの髪に、ブラウンのぱっちりとした瞳。頬はうっすらとピンク色が入り、顔立ちは東洋の血が入っているのか少し幼く感じる。少し聞こえてきたやりとりを推察するに、エミというのが彼女の名前なのだろう。
女の子───エミは、仏頂面で戦車の上に頬杖を突き、黒煙が上がり続けるベルリン市街地を眺めていた。
この間に、しっかりとした方の艦娘────ドイツ連邦海軍空母、グラーフ・ツェッペリンは戦車を降りてミルナ中尉と握手を交わしている。
「よくこれだけの部隊が生き残ってくれていた。
マース、オイゲン、お前達も頑張ったな」
「あ、いえ。違うんですグラーフさん」
「私とレーベは、南に展開している残存部隊から派遣された増援なの。他に、レーベは後二隻、マックスも四隻来てるわ」
(?゚д゚?)「ドイツ全域で言えば、北部全土は事実上失陥したと言っても過言ではない。今、ドイツで組織的な抵抗が展開し得ている軍は南方と、それからベルリン市のシュプレー河以東だ」
ミルナ中尉はそう言って、グラーフさんとティーガーの上の艦娘()───相変わらずふんぞり返ったままのBismarck?zweiを交互に見た。
(?゚д゚?)「寧ろ、お前達こそよくここに来られたな。
ヴィルヘルム=スハーフェンですら通信途絶している状況下だ、奴等も戦艦と空母は徹底的に潰すと踏んでいたが」
「私とあのビスマルクは、大西洋警備の任に着いていたからな。かえってこの襲撃をうけることを回避できた。
我々はアメリカ第六艦隊と合流。極秘裏に海兵隊に同行する形でベルリン近郊に空挺降下し、作戦行動中に彼女たちを保護した」
グラーフさんはそう言って、ティーガーを親指で差す。
「戦車道展のイベントの関係で此方に来ていたところ、深海棲艦の襲撃をうけてホテルの地下に避難していたそうだ。全容は把握できていないが、ベルリンの西部や北部には彼女たち同様取り残された市民がまだ相当数いるぞ」
164 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/16(火) 02:43:08.58 ID:9hQehj8k0
非常に中途半端な位置で申し訳ありませんがここで一度切ります。
次回投稿は本日夜頃予定
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/16(火) 03:12:12.92 ID:tB3yUN4zo
乙
艦娘と合流できたし多少は無理ゲー度が下がったかな?
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/16(火) 09:26:41.78 ID:ZbMh5klaO
うおぉ、リトルアーミーか!!
あっちぃなおい
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/16(火) 12:55:09.53 ID:PYLnwiVA0
おつおつ
慮外の援軍に撃破とかなりでかいな
…それと目の前にいる残念な方が、先の戦線の英雄で命の恩人だって知ったらどうなるやらw
168 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/16(火) 16:17:57.36 ID:9hQehj8k0
ξ゚听)ξ「───了解。えぇ、こっちも貴女たちと同じ状況よ。心配しないでいいわ。
あと抱かねえよぶち殺すぞ」
ミルナ中尉とグラーフさんが情報を共有している合間に、私は私で他の区画のレオパルト1と通信を繋げて戦況を確認する。
概ねのやりとりを終えて無線を一度切り、地図を広げ彼我の確認し得る現状を書き入れていく。
ξ;゚听)ξ「……ドン引きするぐらい完璧に作戦がハマってるわね」
深海棲艦側の致命的なミスは、ベルリン市東側───即ち私達が展開していた区域からの増援を防ぐために配置した深海棲艦をことごとく【非ヒト型】にしてしまった点にある。
勿論、私達の残戦力からすればたとえ駆逐や軽巡でも脅威だったことに変わりは無い。高所観測班の報告で判明していた隻数は20隻を越えていて、私達の保有する機甲戦力よりも数が多かった。レオパルト1は主砲の貫通能力こそ高いけれどレオパルト2に比べて砲口径が小さく、短時間で撃沈するには火力が足りない。
一応プーマ戦闘車のLRミサイルならば、弱点を正確に狙えればflagshipすら2、3発で沈められる。だが、こちらは残弾8発という数量的な制約がつきまとい、やはり封鎖艦隊を無傷で突破することは難しくなる。
向こうがそこまで此方の戦力事情を把握しての展開だったかは定かではないけれど、私達にとっては非ヒト型でも十分すぎる「壁」になっていた。
169 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/16(火) 16:18:52.47 ID:9hQehj8k0
(=゚ω゚)ノ『じゃ、この壁を動かせばいいよぅ』
('A`)『ですね』
私は、作戦会議の時のドクとイヨウ中佐の様子を思い出す。
本当に、淡々と、何でも無いことのように。
彼らは敵の配置を見るなりこう言ってのけた。
('A`)『非ヒト型は、たとえflagshipであっても奴等の“知識階級”に比べて動きも思考も動物的です。単に釣るだけなら簡単極まりない』
(=゚ω゚)ノ『“壁”がこっちに釣られて動き出したら、その後ろから一気に機甲部隊を突入させればいいよぅ。レオパルトの走行速度は65km、奴等の陸上徒歩速度とは比べものにならないスピードだよう。
そして、主砲の貫通能力を考えれば、主力艦隊の増援部隊への手出しを止めるには十分な役者だよぅ』
('A`)『逆に非ヒト型は、eliteまでならパンツァーファウスト3と迫撃砲でも理論上はダメージを与えられます。
エノクで肉薄し攻撃をかけて何隻かに損傷を与えれば、“攻撃能力有り”と見なしてヒト型も陽動部隊の撃破を優先する可能性が高まるはずです』
(=゚ω゚)ノ『“壁”が移動を開始したら、プーマと警官隊並びに歩兵隊を市街地要所に迅速に展開。増援部隊と機甲部隊の合流まで深海棲艦の出戻りを防がせるよぅ。
ヒト型と交戦開始後のレオパルト1については………こんな言い方無責任かも知れないけれど、“各位の奮闘に期待する”としか言えないよぅ』
('A`)『そうですね、後は』
('∀`)『増援部隊が手練れ揃いであることを祈りましょう』
(=゚ω゚)ノ『笑顔キモっ』
('A`)
ξ;゚听)ξ(……ひっでぇ)
最後のやりとりは、ドクの名誉のために忘れてあげることにする。
170 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/16(火) 16:20:05.13 ID:9hQehj8k0
未明の投下時にここまで上げる予定だったものを取り急ぎ。
続きは深夜になります。
171 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/17(水) 00:39:58.68 ID:uhwHcgm70
地図に一通りの情報をまとめ終えると、今度は作戦経過を報告するためイヨウ中佐に無線を繋げる。
………自分で書き出しておいてなんだけど、これが「実際に上がった戦果」というのはちょっと信じられない。
ξ゚听)ξ「レオパルト一号車よりCP、経過報告です。
ミルナ中尉指揮下の増援部隊との合流並びに敵主力艦隊の撃退を完了。また、アメリカ軍の支援を受けて市内に突入していたBismarck zwei, Graf Zeppelin、それから彼女たちが保護していた民間人とも接触しました」
(=゚ω゚)ノ《ご苦労様だよぅ。〜〜〜〜》
応答したイヨウ中佐は、会話に入る前に一瞬だけ無線の向こう側で誰かとやりとりをする。
英語だったところを見ると、グラーフさんとビスマルクが同行していたアメリカ海兵隊が指揮所に到着したようだ。
(=゚ω゚)ノ《グラーフとビスマルクのことは此方でも聞いているよぅ。………欧州全体の状況はともかく、戦艦と空母の参加は僕たちにとっては僥倖だよぅ。
それと、マントイフェル少尉達の陽動機動部隊も無事全車帰還したよぅ》
ξ゚听)ξ「……そう、ですか」
………いや、いや。ホッとなんかしてないわよ?全然これっぽっちもしてないわよ?
仮にホッとしていたにしろ、それは戦友が無事だった事への安堵だから!!
ξ;*゚听)ξ「って!誰への言い訳だオラァああああああっ!!!!」
「!?」
(=;゚ω゚)ノ《えっ、何が?》
戦車の屋根をがつんとぶん殴りながら一人叫ぶ。隣で赤髪の子が驚いて此方を向き、無線越しにイヨウ中佐の困惑した声が聞こえてきた。
ξ;*゚听)ξ「何でもありません中佐!!何でもありません!!続けて戦果報告に移ります!!」
(=;゚ω゚)ノ《アッハイ》
(;゚д゚ )「……」
「……」
ξ;*゚听)ξ「こっち見んなぁああああ!!!」
(;゚д゚ )ゝ「Ja!!」
「や、Jawohl!!」
「全く、大声出しちゃダメじゃない。いつでもどこでも落ち着いてなきゃれでぃ失格よ?」
うるせーソードフィッシュぶつけるぞ!!
172 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/17(水) 00:41:13.41 ID:uhwHcgm70
ξ;*゚听)ξ「せ、戦果報告!!交戦した敵主力艦隊は11隻、ヒト型8に非ヒト型3!非ヒト型3体は、2カ所でそれぞれ地下から出現!それで───」
ξ゚听)ξ「────敵に与えた損害としては、非ヒト型3体とル級通常型1体の撃沈。タ級通常型、ル級通常型とeliteが各1大破、タ級elite2隻、中破。ル級flagship、タ級flagship改、損害極めて軽微も形勢不利と見たか離脱」
「……Ich erschrecke」
顔に差していた血の気が少しずつ引き、うわずり早口だった口調が読み上げるにつれて自然と落ち着いていく。グラーフさんが私の報告を聞きながら、眼を丸くしてぽつりと呟いた。
そりゃ、確かに私はついさっきまでこの作戦に参加していた内の一人だ。
現に深海棲艦達は空からも陸からも兵を退き、こうして私達がほとんど無防備に休息をとっている状況下でも一向に再攻撃をかけてこない。立て直しが必要な大損害を与えたことも間違いないだろう。
それでも、読み上げている私自身が、こんな戦果信じられない。
ξ;゚听)ξ「彼我損害まとめ。深海棲艦側、撃沈4隻、戦闘力喪失3隻、戦闘力大きく低下2隻、健在2隻。
……当方損害、先見増援部隊の一部に死傷者。艦娘は全隻健在。また、レオパルト8両、プーマ6両、エノク軽装甲車22両、投入人員3048名に損害無し。
以上です」
非現実的な数字の羅列だった。もし私が全く無関係の第三者としてこの数字を聞いたなら、きっとそいつを鼻で笑って嘘か虚構と断じたに違いない。
それほどに一方的で、英雄的な数字だ。
だけど、この結果をもたらす采配を振るったはずの当人が返してきた反応は
(=゚ω゚)ノ《報告、ご苦労だよぅ》
その一言だけだった。
173 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/17(水) 00:46:49.69 ID:uhwHcgm70
(=゚ω゚)ノ《喜ばしい結果なのは確かだけれど、深海棲艦の思考や狙い、特性、何よりマントイフェル少尉やデレ中尉をはじめ皆の力量を考えれば全て当然の帰結なんだよぅ。
君たちや増援軍への感謝こそあれ、いちいち感情を出すほどのことじゃないよぅ》
此方の驚きを察したのか、イヨウ中佐は淡々とした口調で付け加える。
……え、なんでこの人新兵と旧式戦車率いてのイベント警備担当なんて閑職に飛ばされてるの?軍の上の人たちってバカしか成れないようになってるの?
(=゚ω゚)ノ《深海棲艦は一時的に退却しただけで、彼我の物量差やドイツ北部全体の戦況を考えればベルリンの制圧を諦めるなんてあり得ないよぅ。……ま、制圧したがってる理由までは解らないけれど。
デレ中尉、避難民の人数、並びに構成を報告してくれよぅ》
ξ;゚听)ξ「了解!……あー、ねぇ、貴女?」
「………私?」
赤髪の女の子は、何が面白いのか厚い雲に覆われて水滴を降らせるばかりの空をぼうっと見上げていたが、私に声をかけられて此方を険のある目つきで睨んできた。
一瞬鼻白みかけるが、すぐに彼女が一般人であることを思い出す。それも、制服を着ている点や戦車道展のイベントに参加していたことから考えておそらく学生。深海棲艦の襲撃なんて事態が起きて……多分、彼女の周りでも、目の前でもたくさんの人が死んだ。ショックを受けて人に対する態度がつっけんどんになったとしても不思議じゃない。寧ろ、その程度で済んでいるなら彼女の精神はとても強い。
そういえば、と私は彼女が着ている服が初見ではないことを思い出す。TBLへのプロ選手も多数輩出しているドイツ屈指の名門学園艦の制服だ。国際交流でフランスの戦車道チームと何度か対戦していた学園艦なので、制服も番組を通じて何度か目にしていた。
「ねぇ、なんなの?」
ξ;゚听)ξ「あ、ごめんなさい。えーと、エミ?でいいのかしら?」
「……えぇ。エミ=ナカスガ、教育グレードは11。戦車道履修者として学園艦【ジークフリート】への乗艦が許可されているわ。年齢は今年で17歳。
…………“一応”、ドイツ国民よ」
174 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/17(水) 00:48:32.19 ID:uhwHcgm70
《おいおい、“一応”を強調しすぎだろ……オレはエミと同じドイツ人で、しかも同じ戦車に乗れて嬉しいぜ?》
「………ハインは黙ってて!!」
車内から聞こえた呆れたような声に対して、戦車の座席を蹴飛ばす音が響き声の主が小さな悲鳴を上げた。
エミの頬は、さっきよりももうちょっと紅くなっている。……何かしら、この胸にわき上がる親近感は。
「っ、それで!ここにいる民間人は私含めて今ケーニッヒ・ティーガーに搭乗している六人だけ。他のジークフリート生や同じホテルにいた人たちは………その、解らないわ」
ξ゚听)ξ「ああいや、無理もないから気にしないで。寧ろ、幾ら戦車があるとはいえあんな化け物達が跋扈して破壊されまくってる市街地を学生六人で────六人?」
おかしい。ケーニッヒ・ティーガーの搭乗員数は五人の筈だ。いや、勿論ジークフリート生で決まった戦車搭乗のメンバーが固まって逃げられるとは限らない。一人余分だったり足りなかったりしても何一つ不思議ではないけれど……
「あぁ、最初は私達五人だけだったけれど、ホテルの地下駐車場からこの戦車で瓦礫を吹っ飛ばして脱出した時に道路で気絶している人がいたから拾ったのよ。
それで────ちょっとっ!?」
突然、エミの隣でケーニッヒティーガーのもう一つの車上ハッチが開く。
中から、長く黒い髪を持った長身の女性が顔を出した。
「あんた何出てきてるのよ!」
「そうは言うが外の様子が見えないし、車内だとくぐもって君の声もろくに聞こえないんだ。少しは気を遣ってくれてもいいだろう。いい加減不安も限界だし………」
/ ゚、。 /「むっ。なんだこの状況は」
175 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/17(水) 00:50:04.71 ID:uhwHcgm70
「あら、貴女がエミが助けた人?綺麗な髪ね!私もれでぃとして貴女みたいな髪質がほしいわ!」
/ ゚、。 /「髪についてはよく言われるな。
しかし君は……ビスマルクで間違いないのか?どうにも私が過去に会ったビスマルク達と君は似ても似つかないんだが」
ξ゚听)ξ
_
( ゚∀゚)
「……あの人、確か」
「ふっ、当たり前じゃないの!!ヤーパンで新たな力を受け、数あるビスマルクの中でも最強の力を手に入れたBismarck zweiよ!!
流石よね、私!!」
( ><)
( <●><●>)
「お、お姉様!Bismarckお姉様!!お願いです、お願いですから少しお静かに!!」
/ ゚、。 /「なるほど、じゃあ君が今のドイツで一番強いBismarckなのか」
「その通り!!私こそが1人前のれでぃ!もっと褒めても構わないわよ!!頭が高い、控えおろう!!このハーケンクロイツが眼に入らぬかぁ!!」
「はぁ……どうでもいいけど、人の頭の上で騒がないで貰える?」
( ゚д゚ )「……」
「………ビス」
「えっ、なぁにグラーフ?
というか、皆静かね。どうしたの?」
「……頭が高いのは、お前だ」
ξ゚听)ξ「…………あー、CP?」
(=゚ω゚)ノ《どうしたよぅ?いやに確認に時間がかかって────》
ξ゚听)ξ「おたくの首相拾ったわよ」
(=゚ω゚)ノ《…………》
_,
(=゚ω゚)ノ《は?》
176 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/17(水) 01:17:04.00 ID:uhwHcgm70
報告抜けてました、本日分ここまでです。
次回更新は少し幅がありますが17:00-22:00の間で行うと思います
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/17(水) 02:13:35.25 ID:Nz66MSJA0
乙です ビス子は堂々たる れでぃ() だわー
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/17(水) 06:59:43.33 ID:/M1S6T2J0
乙
ドイツ首相逃げ遅れw
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/17(水) 08:41:54.50 ID:xo1CrDtyo
乙
今の御時世ハーケンクロイツはまずいっすよビス子さん。アイゼンクロイツでしょ
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/17(水) 10:33:48.13 ID:LHpRNPaA0
おつおつ
まさかの最前線から最終防衛ラインにw
181 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/18(木) 00:55:01.81 ID:qcFlP+vx0
、、、、、
(’e’)「……何だこれは?」
セント=ジョーンズ合衆国海軍中将の困惑した声が、CICの中に響き渡る。彼のそんな声も、そしてこれほど漠然とした質問内容も、どちらも彼の部下達が今まで聞いたことがないものだった。
セントは、率直に言って優秀な軍人だ。アナポリス海軍学校を経由せず、グレナダ侵攻に始まり多くの戦場で合衆国に貢献してきた叩き上げの将軍である。
戦場に長らく身を置き深海棲艦との交戦経験も豊富な彼は、いかなる苦境、いかなる事態にも常に冷静さを保てる胆力と敵の思考を分析し的確な作戦を立案する明晰な頭脳を併せ持っていた。彼はこの戦争が始まってからも──それこそ深海棲艦という化け物が現れた直後でさえ、一度も取り乱す素振りを見せず常に黙々と任務に従事し続けてきた。
だが今のセントは、明らかに戸惑い、驚愕している。
彼は第六艦隊旗艦【マウント・ホイットニー】に送信されてきた航空写真を、ドイツ・ルール地方のある一角を映した写真を机の上に置き、額に手を置いて眺めている。
やがて彼は写真から視線を上げ、もう一度彼らしからぬ要領を得ない問いかけを口にした。
(’e’)「いったい、これは何だ?」
182 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 00:56:40.17 ID:qcFlP+vx0
まるで、カーペットの上にひっくり返したインク壺の染みのような青黒く巨大な円。
深く暗い海の底を思わせる色合いのその“染み”は、ドイツ領ルール地方の一角に今現在広がっているものだ。
「つい先ほど、USEUCOM空軍司令部より共有があった画像です。
消息を絶つ直前、同地で任務にあたっていた空中管制機から送信がありました」
セントと十数年のつきあいになる海軍中佐が、硬い表情で捕捉する。彼からしても、このような事態は全くの未経験であり冷静に処理することに苦労していた。
「直径は、凡そ8キロから9キロ程度になると思われます。小さな街なら、まるごと一つすっぽりと覆えるほどの大きさです。
“染み”それ自体の成分や形状に関しては詳細全く不明。気体なのか、液体なのか、人工物なのか、自然物なのか、或いは単に地面が着色しているだけなのか、何も解らない状態です」
(’e’)「………衛星写真でより詳しい状況は確認できないのか?」
「この大規模侵攻の前後から、該当地域の周辺は映像の乱れが酷く衛星情報の収集は極めて困難になっています。
現段階では、Angel-Ringから送付されてきたこの情報が最新のものです」
(’e’)「グローバルホークによる偵察は?」
「二機を投入しましたがどちらも該当区域の遙か手前で撃墜されています。USEUCOMではプレデター編隊による威力偵察を行いましたが、此方も詳細確認はならず全滅しました」
(’e’)「……」
その報告自体には、セントは落胆のため息をついただけで特に強い反応は示さない。
無人航空機では、様々な面で有人の戦闘機に劣る。加えて相手はF-15のストライクパッケージ(戦爆連合)を殲滅した相手だ。
あわよくばの成功を期待していなかったと言えば嘘になるが、ただ機体を無駄に摩耗するだけだろうとは概ね予想していた。
寧ろ、問題は。
(’e’;)「……航空管制機による支援付きの第4世代戦闘機と真っ向勝負して、一方的に殲滅し得る航空戦力の存在だと?」
183 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 01:00:18.38 ID:qcFlP+vx0
セントは、在欧アメリカ軍の司令部から送られてきている二枚目の写真に目をやる。それはAngel-Ringが撮影した画像の一部を拡大したもので、大地を覆う巨大な黒い染みの中に、少しだけ色合いの違う「何か」が混じっていた。
(’e’)「………鳥、か?」
青みがかった黒の中に、更に小さな漆黒の点が幾つかあった。丸みを帯び、鈍い光沢を放つその点は分かりやすいように白い線で縁取られている。
そして縁取りの形は、セントが言うとおり翼を広げ飛翔する猛禽類を思わせた。
「USEUCOM上層部では、その飛行物体による襲撃で攻撃隊は全滅したと見ているようです」
(’e’)「まあそうなるな。こいつは完全な新型だ」
Helmとも、Ballとも明らかに一致しない形状。加えて、ある程度の高度からとられたはずの映像で既に視認可能な大きさなら翼を含めた全幅は少なく見積もっても8メートルから10メートルになる。
そして、サイズ的に戦闘機からの視認・ロックオンは十分に可能だ。にもかかわらず、攻撃隊は極めて短時間で殲滅された。
考えられる可能性は三つ。
攻撃隊が思わぬ奇襲に動揺して対応できなかったか、この“染み”の影響で計器や兵装に異常が発生しまともな迎撃行動が取れなかったか。
或いは、ただ単に性能面で圧倒され手も足も出なかったか。
(’e’)「…………深海棲艦の進化、か」
(’e’;)
口に出してみて、セントは自身の言葉に背筋を冷やす。
確かに、深海棲艦のこの“進化”は必要事項ではあったかも知れない。艦娘の出現により「陸上活動ができる戦艦・空母」としてのアドバンテージが薄まり、従来の艦載機はポルトガルで人類側の陸上戦力に多数が撃墜された。太平洋においては、艦娘との連携によるものとはいえほぼ無力だったはずの人間の航空戦力が空対空戦闘において深海棲艦側を圧倒した。
だが、どちらも発生した時期としてはようやく一ヶ月経つか経たないかだ。
もし、深海棲艦が人類側の新戦術に対応してこの兵器を造り出してきたのだとしたら───あまりにも、早すぎる。
生物学的な、「進化」としてみても。
技術的な、「進歩」としてみても。
184 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/18(木) 01:04:27.46 ID:qcFlP+vx0
(’e’;)(………この件について考えるのは後だ。今は作戦に集中しよう)
首を振って迷宮に陥りかけた思考をCICまで戻す。
絶対に考察が必要な事項ではある。だが、それは今この瞬間ではない。
自分に与えられた任務は、深海棲艦に関する科学考証ではない。ドイツ・フランスを中心とした北欧の奪還と、ロシア連邦による核発射の阻止だ。
(’e’)「ドイツ北部、沿岸部強襲部隊の状況は?」
「流石に一方的勝利にはほど遠いですが、現状優勢です。各攻撃地点、アイオワやサラトガの支援もあり順調に強襲部隊が取りついています」
「ベルリン市強襲突入のために派遣した海兵隊並びにBismarck、Graf Zeppelinは何れも無事同市郊外に降下したと護衛の航空隊から報告がありました。
ベルリン市は通信が妨害されているため報告は受けられませんが、時間的には市内の残存戦力や南部からのドイツ軍増援部隊と合流している頃かと」
(’e’)「そうか……各ドイツ軍鎮守府との連絡も密に取れ。応答のある場所は優先的に救援する」
スクリーン上に映し出された、北欧における指揮下部隊の攻勢状況を見て少しだけ肩の力を抜いた。
深海棲艦の反撃は苛烈だが、広域の大規模攻勢は戦力を大きく分散させてしまったらしく報告に上がる敵兵力はどこも決して大きくない。ルール地方の制空戦失敗は衝撃的な知らせだったものの、全体として戦況を見直せば僅かずつだが挽回の目は見えつつある。
(’e’)(“ヒト型”の数が多いのは厄介だが、このまま行けばノルデン方面を中心に橋頭堡の確保は十分できる。
後は主力陸戦隊の上陸と空軍と連携した浸透作戦を行えば、ルール地方にも地続きで侵攻が可能か)
南方のベル=ラインフェルト大佐率いるドイツ軍とは連絡を取り合っているし、西ではフランス軍もなんとか体勢を立て直し防衛ラインを形成することに成功したらしい。ルクセンブルク、ベルギー、デンマークなど未だ危機的な地域が多いのも事実だが、これらに攻撃している深海棲艦は数的にも編成的にも枝葉の群体だ。
ドイツ・フランスの中核的な敵拠点を抑えれば、すぐに立ち枯れになる。なんとかオランダ軍に踏ん張って貰うしかない。
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/18(木) 01:06:08.60 ID:ZZUBJVoto
ヌ改の持ってた腐れ黒艦載機か
186 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 01:09:52.92 ID:qcFlP+vx0
(’e’)(逆にノルデン、フランス、ベルリンさえ立て直せれば、南部のドイツ軍・イタリア軍と併せて四方からルール地方を逆包囲できる。
大方艤装工場を潰しつつ拠点にすることで内陸浸透を狙ったんだろうが、これなら………)
気がついたら、セントの視線は再び「染み」の写真に戻っていた。
「…………しかし、ルールの“これ”は本当になんなんだろうな、いったい」
「まぁ順当に行けば深海棲艦の前線基地だろうさ。さもなきゃ“巣”か」
部下達も写真を見ながら口々に意見を言い合っているが、最早それらはセントの耳に入らない。
(゜e゜;)
セントの脳内で、猛然と形作られていく仮説があった。
そうだ。何故基地と決めつけていた?奴らの知能は決して低くない。内陸浸透をしても、海中からの戦力補充を続けなければいつか物量で浸透軍は押しつぶされる。そして日本や自分たち米軍の存在がある以上、沿岸部から続く兵站線の維持などどう考えても不可能だ。
だが、仮定する。
もし深海棲艦による今回のヨーロッパ襲撃が、「ルール地方の制圧」こそが本命であり他の全てが欧州全体の動きを封じるための陽動だとしたら?
もし、生産拠点の「破壊」ではなく「確保」が目的だとしたら?
もし、深海棲艦が自然増殖やオカルト的な発生ではなく、“艦娘と類似した過程で生産される”存在だとしたら?
もし、今までの深海棲艦が「海底での製造」という、様々な制約が課せられる状況下であの物量を生み出していたとしたら?
もし、深海棲艦と艦娘の製造工程が似通っていて────その上で、奴らの方が精錬された技術力を擁していたとしたら?
(゜e゜;)「………工場だ」
「………は?」
(゜e゜;)「合衆国政府に、ノーフォークに至急連絡を取れ!!こんな兵力では到底足りない、ヨーロッパとアメリカの全兵力を動員して至急ルール地方を封鎖しないと間に合わん!!」
「ち、中将?何を……」
「よ、揚陸攻撃地点各所より緊急連絡!!」
「内陸部より膨大な数のヒト型、非ヒト型深海棲艦、並びに艦載機が襲来!!戦線維持が困難、救援を請うとのことです!!」
187 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/18(木) 01:17:59.52 ID:qcFlP+vx0
https://m.youtube.com/watch?v=STE_ugj7s2M
188 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/18(木) 01:24:27.75 ID:qcFlP+vx0
《Mayday Mayday Mayday!! Hotel-06 down!!》
《αビーチよりCIC、凄まじい砲撃を受けている!!沿岸部にル級が少なくとも10隻以上、非ヒト型は最早数え切れない!!全滅を待つだけだ、応援を寄越すかさもなきゃ退却を許可してくれ!!》
《サラトガ-05より旗艦【マウント・ホイットニー】、敵艦載機の数が多すぎます!!当方の投入可能機数の10倍、20倍……とにかく、レーダーが真っ赤よ!お願い、援護を!!》
《Eagle-01より【マウント・ホイットニー】、敵の数は膨大だ。奴らは地を埋め尽くしている。
爆撃が、意味を成さない。
あぁ……ダメだ……》
《CTF-60より【マウント・ホイットニー】、アイオワ-03が敵の砲撃により轟沈した。
I repeat, Iowa-03 down》
《CTF-61より旗艦、戦力の40%を損失しなお敵勢力は増加!最早継戦不可能、沿岸部を離脱する!!》
《USEUCOMより緊急連絡、フランス東部にも凄まじい数の深海棲艦が出現、一斉に西進を開始!!攻勢範囲が広すぎてフランス軍、ヨーロッパアメリカ空軍共に対応しきれません!!》
《CICよりCTF-62, 応答せよ!!CTF-62, 応答を………Oh my god………》
189 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 01:36:00.39 ID:qcFlP+vx0
《France 24 より、全ての国民の皆様に緊急連絡をお知らせします。必ず、ご覧になって下さい。
政府は先ほど、東部防衛線の全面崩壊を正式発表、パリ以東全域の完全放棄を決定致しました。
皆様、可能な限り西へ、西へ逃げて下さい。西へ、逃げて下さい》
《これはヘンローの様子です、見えますでしょうか!!地平線を深海棲艦が埋め尽くしています!!何百という数の深海棲艦が、オランダ領内に侵入してきます!!
ヘンローの空は、敵の艦載機が飛び回っています!!もう、我々は助からないでしょう、皆様!さようなら、さようなら、さようなら!!》
《ルクセンブルク全土との通信が途絶した状態ですが、間もなくベルギーも同じ状況となるでしょう。
我々RTBFは、最後の瞬間まで深海棲艦による人類蹂躙の様をお届けし、一人でも多くの方にあの化け物達の恐ろしさをお伝えさせていただきます》
《スペイン政府は先ほど、東部に展開している全陸軍をフランスに派遣、共同防衛ラインの構築を決定し越境を開始しました。
また、スペイン全土の空港や港では国外への脱出を求める人々が殺到、多くの地域で暴動が発生し、陸軍と警官隊が鎮圧にあたっていますが効果は見られません》
《ここリスボン・ウンベルト・デルガード空港は大変なパニックになっています!!政府は全便の緊急欠航を通達していますが市民は一刻も早い避難を求めて空港に殺到、暴徒化した民間人が陸軍や警官隊と……あ、今陸軍が発砲しました!!》
190 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 01:49:30.42 ID:qcFlP+vx0
《欧州脱出を求める避難民の大移動、そして暴動や略奪の波はチェコ、スロバキア、ポーランド、果てはこのイタリアにまで広がっています。イタリア国内では「艦娘の存在が深海棲艦を呼び寄せる」という情報がSNSで拡散、一部鎮守府を暴徒が襲撃し、海軍陸戦隊が発砲したとの情報も入っています》
《スイス政府は先ほど、特別国家戒厳令を布告。スイス国軍の他、全予備役に武装を命令、全戦力を持ってドイツ国境に展開しました》
《イギリス政府では、ヨーロッパにて発生した避難民の受け入れを自国民を除いて完全に拒否する意向を発表。空港、海港を軍と警察が封鎖しました。
また、既に避難受け入れをしていた一部国の学園艦をアメリカに「人道的観点から」避難させる動きも出ています》
《トルコ軍は全軍をイスタンブールに集結。また、イラク、イラン、シリア、エジプト各国もトルコ軍との連携を強化する旨を表明。国境線に陸軍を動員し有事に備える模様です》
《ロシア政府は先ほど、ヨーロッパにおける戦況の悪化に伴い事態解決のために戦略核を国連の審査を経ず強行する旨を正式に国内外に通達しました。
現刻より20時間後、深海棲艦の中心的な活動地点であるドイツ西部、フランス東部に大規模な核兵器投射を行うとのことです》
191 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/18(木) 02:09:56.32 ID:qcFlP+vx0
(?´∀`)《────えー、現在発生する欧州動乱に関して、在欧邦人の保護、欧州周辺国における、在邦人の安全の確保、並びに、人類全体における利益という点から見て、ロシア連邦による核弾頭の発射は我が日本国としては認められないものであります。
また、今時の状況は人類それ自体の危急存亡に直結する深刻な事態であり、深海棲艦に対する有効な攻撃能力を有する日本、並びに日本国内の鎮守府が対応することは、寧ろ国際貢献的な観点から、そして人類融和の観点から当然のことと言わざるを得ません。
よって、我が日本国は友好国たるポルトガルからの要請に応える意味合いでも、欧州救援艦隊の派遣は他国の同意や懸念を得ることを待たず、速やかに行うべきであると判断致しました。
現在既に、第1波として第一防空機動艦隊をインド洋まで派遣しており、ここから陸路を以て中東、そして欧州へと艦娘並びに陸海空各自衛隊特別外征統合部隊を展開。
欧州の混乱の収拾に、全力を尽くさせていただく所存であります》
192 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 02:11:34.27 ID:qcFlP+vx0
今回分投下完了。
次回投下はまたお昼にでもできれば。
※このジャパンはフィクションです。実際の日本国の外交力、胆力、精神力と大きく異なる場合があります
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/18(木) 02:49:26.04 ID:ZZUBJVoto
乙
……え?これまじでどうするの?
しかし海中というハンデを背負ってなおあの生産力という発想はなかったな……(陸上型深海泊地から目をそらしつつ)
194 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/18(木) 18:24:07.67 ID:qcFlP+vx0
(//‰ ゚)「アメリカ海兵隊、第二海兵師団所属のサイ=ヨーク=ヴォーグルソンだ。階級は大尉。
以後、貴軍との連携行動に移る」
('A`)「ドイツ連邦陸軍所属、ドク=マントイフェル少尉です」
司令部テントの前に立っていた筋肉モリモリマッチョマンの変態が、名乗りと共に差し出してきた手を握り返す。中肉中背の、軍人としてはひ弱な体格の俺は190cmはかたいその巨体を自然と見上げる形になった。
某州知事を思わせる精悍な顔つきの右半分は火傷の跡で覆われ、黒い眼帯を身につけている。手は銃ダコと盛り上がった傷でごつごつした凹凸があり、まるで拳大の岩を握っているかのような感触だ。
(//‰ ゚)「……おいおい、まるでターミネーターに出くわしたみたいな表情はやめてくれ」
いかにも前線で戦い続けてきた男という風貌に少し気圧されていると、サイ大尉はフッと相好を崩した。
体格に見合った威圧感のある顔立ちは、笑うと存外愛嬌がある。
(//‰ ゚)「まぁ、このデカい図体にブルドックのクソを捏ね上げたみたいな不細工なツラだ、少しひくのも無理ないがな」
('A`)「大尉殿、失礼ながらその自虐は俺に刺さります」
(//‰ ゚)「お前さんこそ自虐が過ぎるな。実際なかなか男前だぜ。あ、でも笑顔キモそうだな」
その指摘いらねーだろこれだからヤンキー野郎は。
(//‰ ゚)「あぁ、それと俺は敬語が聞くのも使うのも苦手でな。部下にも言ってるんだが、“大尉(キャプテン)”さえ付けてくれるなら後は砕けた口調で構わない」
('A`)「しかし」
(//‰ ゚)「あー、国は違えど一応階級は俺の方が上と言うことで職権乱用だ。上官“希望”により、敬語をやめてくれ。
あくまでも希望なので聞き入れなくてもいいぞ」
('A`)「……そのやり方は卑怯じゃないか?大尉」
(//‰ ゚)「軍人にとって“卑怯”は褒め言葉さ少尉」
サイ大尉はそう言って、笑いながら俺の背中を叩く。
(//‰ ゚)「もっとも、“キャプテン”は譲れないがな。ジャック・スパロウが大好きなんだ」
('A`)「キャプテン違いじゃねーか」
船長に成りたいんなら海軍に行けよ。
195 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 18:28:55.74 ID:qcFlP+vx0
('A`)「にしても、あんたもドイツ語が上手いな」
(//‰?゚)「母親が戦車道の関係者でね、11歳から3年間役員としての仕事の関係で親に着いてこっちに来ていた。
友達も多かった、俺にとってドイツは第二の故郷だ」
サイ大尉は、ふと視線を目の前の西から延びてくる人の列に向けた。
「急ぐな、急ぐな!今深海棲艦の攻撃は来ていない!ここから先は軍と警察の防衛ラインだ!既に艦娘も来ているし南から友軍の増援も到着しつつある!」
「俺たちはアメリカ海兵隊だ、外国も友邦ドイツを見捨ててない!今はとにかく東に逃げろ!まだ深海棲艦の手も及んでいない!
10km先にはドイツ警察と消防の生き残りが避難誘導の非常線も引いてる!車両による避難民移送も開始された!」
主力艦隊に大きな損害を受けた深海棲艦は、此方が艦娘戦力───それも、空母・戦艦を含む10隻と合流したこともあってか現在活動を沈静化している。
空爆も収まり逃げる隙ができた中で、西側で逃げ遅れていた人々が再び此方へ向かって避難を再開していた。ドイツ軍とベルリン市警に加えて、サイ大尉指揮下の海兵隊も避難誘導を手伝ってくれている。
西側からの避難者の中には生き残っていた陸軍や警察の残存部隊の姿もあり、彼らの中でまだ戦闘可能なものは戦力として各区画に再配置された。
「怪我人、病人、それから子供と老人はこっちに!向こうに移送用の車両が用意してある!」
「あくまで身体が弱っている者だけだ、健常者は悪いがこのまま東に歩いてくれ!さっきも言ったとおり10km先でも移送は行われている、慌てなくていい!」
東部や中央で乗り捨てられていた車両や破壊を免れた警察車両、それから輸送トラックなどを挑発して避難民の一部を移送するよう手配したこともあり、先ほどまでより民間人の避難は格段に順調にいっている。艦娘到着の噂が流れたことや実際にアメリカ軍が展開している事への安堵もあってか、避難民同士での諍いや特に懸念されていた車両移送の権利を奪い合うような事態も発生していない。
('A`)「………」
ただ、彼らの表情は一様に暗く、重く。
何よりも、今日ベルリンに詰めかけていたであろう人数からすると、その数はひどく少なかった。
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/18(木) 18:29:26.94 ID:k8/86iyKO
>>178
連邦大統領「それよりさあ、誰か一人忘れてない?」
197 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 18:29:51.35 ID:qcFlP+vx0
明らかに車両移送の対象者なのに、兵士の誘導に気づかず虚空を見つめ虚ろな顔つきでふらふらと歩いて行く老人がいる。
警官に抱え上げられてトラックに乗せられながら、姿がない父と母を呼び泣き叫ぶ少女がいる。
かける言葉が見当たらず途方に暮れる海兵隊の隊員に縋り付き、どうしてもっと早く来てくれなかったのかと、怒りも悲しみもない淡々とした口調で問いかけ続ける中年の男がいる。
黒焦げの、かつて赤ん坊“だった”物体を胸に抱き、俯く夫の横で延々と子守唄を歌い続ける母親がいる。
それらの光景は、俺たちが「救った」人々よりも、「救えなかった」人々がどれほど多いかを突きつける。
('A`)「………」
作戦の成功によって胸の内に芽生えていた微かな高揚は、消えていた。
無論、出来うる限りの最善を尽くしたという自負はある。作戦成功に伴う南側の主力艦隊打撃がなければ、今ここに逃げてきている人々すら命を落としていたかも知れないのだと解ってはいる。
それでも、無い物ねだりだと解っていても。
例えば自分が艦娘のように単騎で深海棲艦と戦える力を持っていたとしたら、より多くの命を救えたのは事実だ。
(//‰ ゚)「奴らは、あの腐った深海魚共は俺の二つ目の故郷を灰にした。二つ目の祖国の友人達を殺した。その報いは必ず受けさせる」
俺の横で、サイ大尉のそんな呟きが聞こえてくる。巨大な掌は満身の力で握りしめられ、食い込む爪のせいで僅かに血がにじんでいた。
(//‰ ゚)「そろそろ行こうぜドク。奴らをぶちのめすための作戦会議だ」
198 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 18:35:15.72 ID:qcFlP+vx0
(=゚ω゚)ノ「…………何度も言っているように、首相。その申し出は到底受け入れられませんよぅ」
サイ大尉と共に司令テントまで戻ると、既にツンや彼女が合流したミルナ中尉、大尉以外の米軍指揮官も集合していた。彼らに取り囲まれる形で、テントの中央には机を挟んでイヨウ中佐と───我が国の首相様、ダイオード=リーンウッドが向かい合っている。
彼女は、東欧で不穏な動きを見せることが多かったロシア連邦の対応を話し合うためにフランスへ向かう予定があった。深海棲艦による襲撃開始の折は丁度空港に向かう車の中にあり、難を免れたのだという。
中佐の口調は首相を前にしてもいつも通りだが、言葉の端々に幾らかの困惑と「険」が籠もっていた。
(=゚ω゚)ノ「ベルリン市の状況は確かに“今この瞬間は”沈静化していますが、深海棲艦の在ベルリン戦力は未だ強大です。我が方にも南方からの援軍やBismarckとGraf Zeppelin、アメリカ海兵隊が合流して幾らかその差は縮まりましたが、数的にも質的にも依然劣勢であることは変わりないのですよぅ。
はっきり申し上げまして、一分後、一秒後に敵の大規模攻勢が再開されても何の不思議もありませんよぅ」
/ ゚、。 /「しかしだね中佐、現在は戦時であり、戦時においては軍法上ドイツ軍の最高司令官は首相である私だ。最高司令官なら前線から離れるのはいかがなものか」
(=゚ω゚)ノ「最高司令官だからこそ後方に下がるんだよバカかお前鼻フックかますぞゴルァ」
/ ゚、。 /「あれ……私……首相……」
………仮にも国家首脳に吐いていい言動かどうかはノーコメントとして、イヨウ中佐の言葉は全面的な正論だ。
文民統制とやらの原則のために確かに多くの国が最高司令官に首相や大統領を添えているらしいが、結局のところ「民主主義」を守るための形式的な存在に過ぎない。
彼らは政治家であって軍人ではない、作戦指揮や用兵は当然専門外。はっきり言って、前線・現場に出しゃばられても邪魔になる。
199 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 18:37:59.36 ID:qcFlP+vx0
(=゚ω゚)ノ「我々ドイツ国民にとって、首相だけでも生き延びて下さっていたのは奇跡に近い幸運なのですよぅ。
貴女に課せられた義務は現場で兵士達と命運を共にすることじゃない、崩壊した国を立て直し、惨事から生き延びた国民を導くことですよぅ。
この場は我々に任せて、一刻も早く避難して下さいよぅ」
/ ゚、。 /「………幸運、か」
イヨウ中佐の言葉に、首相は苦笑いを浮かべて俯く。
虚ろな、何も見ていない、外の避難者達と同じ瞳をしていた。
/ ゚、。 /「確かに、私は幸運だな。他の多くの者達の不幸と引き替えに、私は生き延びた」
ダイオード首相は、虚ろな眼を司令テントの出入り口に向ける。外から聞こえてくる、何千という避難民たちの足音に被せるように、彼女は言葉を吐き出す。
/ ゚、。 /「共に国政に携わっていた議員達も、私の周りを固めていたSP達も、皆死んだ。国民の命も、数え切れぬほど失われた。大統領閣下も安否不明だ。
海の底の化け物共に私達は国土を蹂躙され、今なおドイツ国民はその多くが危機にさらされている」
声の語尾が震え、彼女の視線がイヨウ中佐へと戻る。虚ろだった眼には、やりきれぬ怒りが込められていた。
/#゚、。 /「この上更にベルリン市民を、国民を見捨て、私に逃げろと!?無能で無力な私の代わりに奴らと戦う君たちを置いて、私に逃げろと言うのか!?」
(=゚ω゚)ノ「それが、首相の義務ですよぅ」
首相の視線を真っ向から受け止めながら、イヨウ中佐は言い放つ。
机の向こう側に身を乗り出し、負けず劣らずの怒りと決意を込めた視線を、首相にぶつける。
(=゚ω゚)ノ「そして我々軍人の義務は、“貴女たち”国民を、ドイツを、人類を害する敵に立ち向かうことです。
貴女の気持ちは解るが、ここは我々の仕事場だ」
/ ゚、。 /「………」
(=゚ω゚)ノ「首相」
イヨウ中佐は、椅子から立ち上がると首相に向けて陸軍式の敬礼を贈る。
(=゚ω゚)ゝ「ドイツを、ドイツ国民を、お願いします」
200 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 18:44:32.63 ID:qcFlP+vx0
( ゚д゚ )「現在、ラインフェルト大佐指揮下の南部ドイツ軍はマンハイム・ニュルンベルクを絶対防衛ラインとした戦力展開を行っている。以北には俺たちの他、ドレスデンに混成一個旅団、さらにチェコ共和国軍からの増援部隊が展開しているはずだ」
ダイオード首相を車両移送のために送り出した後、俺たちはすぐに作戦会議に移る。
まずドイツ全域の状況を整理するため、南部から駆けつけたミルナ中尉、アメリカ軍として新たな情報を保持しているサイ大尉らがドイツ全土を記した地図を机の上に広げた。
( ゚д゚ )「それと、マンハイムを起点にフランクフルト方面にはイッシ=ストーシュル少佐指揮下の機甲部隊が攻勢に出ている。
とはいえ、あくまで陽動であって深海棲艦の撃滅は目的としていない。
……それと、フランス、ルクセンブルク、ベルギーは情報が入ってくる限りでは酷い有様だ。奴らにいいようにやられている」
(//‰ ゚)「一つ捕捉すると、西ヨーロッパへの深海棲艦の攻撃拠点はルール地方だ。奴らはこの地点を橋頭堡に、フランス方面を中心に大規模な攻勢を展開している」
サイ大尉は胸ポケットからボールペンを取り出し、地図上でルール地方の辺りをぐりぐりと塗りつぶした。
更に、オランダへと伸びる矢印を一本付け足す。
(//‰ ゚)「オランダの複数都市にも爆撃が行われたらしい。イタリア、ドイツと切り離されたことでコマンダン・テスト以外にまともな対深海棲艦戦力を持たない西ヨーロッパは防衛線すらまともに引けていない。デンマークも深海棲艦の攻撃により沈黙している。
暴動の拡大もとどまるところを知らない。このままいけばヨーロッパ全土が無政府状態に陥る時も近い。
あぁ、あと」
続けられたサイ大尉の言葉に、テントの中は静まり返った。
(//‰ ゚)「ミルナ中尉はもう聞いているかも知れんが、ロシア連邦は36時間以内にヨーロッパの混乱が治まらない場合戦略核の投射を非公式に示唆している。
それもこれは、あくまで“俺が聞いた時点で”の発表内容だ。もし正式発表を行っていたとすれば、あの気が短い大国は時間を繰り上げて発射するかも知れないな」
201 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/18(木) 18:48:54.18 ID:qcFlP+vx0
現状報告3
ドイツ、フランス等西ヨーロッパ諸国における人類側の展開状況
赤線:人類側の防衛線
赤矢印:人類側の戦力展開
黒丸:ルール地方
黒矢印:深海棲艦側の攻勢展開
202 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/18(木) 18:50:26.86 ID:qcFlP+vx0
深夜続き投下予定。
この話に関してはここから最終章という感じです。今少し、お付き合いいただければ幸いです
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/18(木) 19:09:35.90 ID:q25gopxyo
トキ
深海棲艦は普通に核とか「待っていたぜェ!!この瞬間をよぉ!!」
って言いながら自分のエネルギーに変えられそうだな
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/18(木) 19:45:42.43 ID:vQ2BFUfA0
おつおつ
イヨウ本当によく言ったよ…部下の命も守るべき国民の命も背負って立つとはいえ、最終的に託せる相手・政府が無いことにはどうしようも無いから…
それにしても欧州半壊(組織的抵抗や対応の有無)と、緊急事態において「人類側の共闘」も重要な要素なのに、初手で手酷く切り捨てる存在はなあ…
深海側の計略と物量に抗えないのと、人類側の要因含めて、決着がついても欧州全体での大改革必至だよなあ…
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sagesaga]:2017/05/18(木) 21:31:12.16 ID:MUnYjnIA0
乙。
>>196
知らん。運があれば生きてるだろ?連邦大統領様?(嘲笑
206 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage]:2017/05/19(金) 01:05:23.63 ID:nRlmcOTF0
体調的な問題から深夜更新を延期致します。お待たせして申し訳ありません
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/19(金) 01:12:50.05 ID:zqojlzEPO
構わんからまずは体調良くしてな
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/19(金) 01:32:46.80 ID:ZoSVj3QBo
構わん、ゆっくり休め
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/19(金) 02:03:08.06 ID:kjQXiE9A0
十分すぎる更新ペースなのだから無理せずにw
210 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/20(土) 11:07:44.78 ID:otGQSIH90
ξ;゚听)ξ「核………」
「そんな………」
サイ大尉の言葉に、ツンを初め何人かの士官が信じられないといった面持ちで呻き声を上げる。
_
(#゚∀゚)「……っざけやがって」
(;-д- )「………」
そしてそれは、ミルナ中尉やジョルジュにも共通した表情だった。
('A`)「………中尉、一応聞きますがこの知らせは」
(;゚д- )「今初めて知った。知っていればラインフェルト大佐が黙っているはずがない。
おそらく俺たちがベルリン市に突入した後に入った情報だな」
_
(#゚∀゚)「あのクソッタレのアル中国家め!したり顔の国家元首様共々脳みその代わりにウォッカでも詰め込んでるんじゃねえだろうな!?
他所の国だからって好き勝手やりやがる!!」
ジョルジュはやり場のない怒りを拳に込め、机に叩きつける。置かれていたボールペンや定規が撥ね、カタリと音を立てた。
_
(#゚∀゚)「深海棲艦との戦争中に人間同士で争ってる場合かよ!!本気で何考えてやがんだあいつら!!」
(=゚ω゚)ノ「欧州の失陥は艦娘戦力に乏しいロシアにとって死活問題に直結するよぅ、先日アメリカや日本と防共協定を結んだ矢先にこれほど思い切った動きを見せているのは、それだけ彼らにとってこの“危機”が深刻である証拠だよぅ。
僕は、彼らの立場も理解するよぅ。国際協調も必要だけれど、“ロシア”という広大な土地に住まう国民を守るためには時に独善的とも取れる判断に走りざるを得ないこともあるよぅ」
_
(;゚∀゚)「……っ」
イヨウ中佐は、淡々とそう述べながら一心に地図を見つめ続ける。咎めるでも同情するでもない、平坦な声にかえってジョルジュは気圧されているようだった。
(=゚ω゚)ノ「“国家間に真の友人はいない”───シャルル=ド=ゴールの言葉だよぅ。
ロシアとドイツは別に友人じゃない、ただの“共通の敵を持つ国家同士”だよぅ。正式には同盟すら結んでいないんだよぅ。
その共通の敵が、自分たちの国のすぐ傍で圧倒的な内地浸透能力を手に入れつつあるという現状で、“ただの他国”に配慮しろってのが無理な話だよぅ」
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 11:21:56.22 ID:cFWM0aJR0
イヨウ中佐、政治家としても優秀そうだな
212 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga sage]:2017/05/20(土) 11:22:59.91 ID:otGQSIH90
_
(;゚∀゚)「───、ですが」
(=゚ω゚)ノ「ジョルジュ=オッペル陸軍少尉、お前はいつから国際政治の評論家になった?」
イヨウ中佐は突然顔を上げ、尋ねる。
独特の語尾もなく、少しドスの利いた、はっきりとした口調での「詰問」。さっき首相を説得していたときよりも更に険しい目つきで、加えて言えば頬も僅かに紅潮させて中佐はジョルジュを睨み付けていた。
俺はこの数時間で初めて、明確に「怒り」を露わにした中佐を目にした。
(=#゚ω゚)ノ「少尉、貴様の政治思想なんてどうだっていい。貴様がどこまでわめき散らしても、祖国に訪れる危機もロシア政府の決定も覆らない。
変わらない現実を嘆くのではなく、祖国と国民を守るために全ての力を注げ!それが貴様に、今課せられた仕事だ!!」
_
( ゚∀゚)「…………」
一瞬の沈黙の後、ジョルジュはさっと背筋を伸ばして中佐に向かって敬礼した。
_
( ゚∀゚)「Jawohl!!」
ジョルジュに限らず、中佐の檄に誰もが目の色を変えて地図に向き合い、各自が必死に頭を回転させる。
(;'A`)「………!」
本当はこの会議をしている時間さえ惜しいが、状況を見極めず闇雲に動いても事態は間違いなく悪化に繋がるだろう。逸る気持ちを抑えて、俺もまた身を乗り出してどこかに活路はないかと隅から隅まで地図を凝視する。
決定されたのは、あくまでも“36時間後の”核兵器の投射だ。サイ大尉が言うとおり繰り上げの可能性も否めない以上安心するわけにもいかないが、逆に言えば流石にロシアも国際的な批判を“完全無視”と決め込めるほど戦力に余裕はない。
特に、アメリカと日本がロシアの核兵器使用に沈黙しているとは思えない。
アイオワが実装されるまでは艦娘抜きで深海棲艦の攻撃をほぼ完全に退けてきた超大国と、二万隻越えとも言われる艦娘戦力を保有する【東洋の盾】との関係が決裂すれば、現段階では駆逐艦ヴェールヌイしか所持していないロシアは国防計画に致命的な傷を負うことになる。
加えて言えば肝心のヴェールヌイさえ、日本の駆逐艦響が改造されたものを一部転用して貰っている身の上だ。日本との関係が断絶すれば、今後ロシアは艦娘の補充も整備も遙かに劣る自国の技術で行わなければならない。
つまり、ロシアは核兵器を“即座に”使うことはあり得ない。アメリカへの非公式通知が大尉達が突入する前に布告されたものとなれば、まだ2時間も経過していない。国際社会に“我慢”としてアピールするには、流石に間がなさ過ぎる。
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 11:27:43.22 ID:siFc81yY0
誤爆にワロタ
214 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga sage]:2017/05/20(土) 11:27:55.04 ID:otGQSIH90
(;'A`)(……とはいえ、日本とアメリカだってヨーロッパが橋頭堡として完全に掌握されるのを防ぎたいのも同じなはずだ)
アメリカ軍が実際にドイツでの作戦を実行していることを考えても、ヨーロッパ全体の状況は良くない。現在の戦況によっては、アメリカは寧ろ積極的に核を投射したいとすら思っているかも知れない。
ロシアがわざわざ“汚れ役”を買って出てくれるのだ。「ロシア連邦の独断」という名目でいよいよとなれば核発射が黙認される可能性は低くない。
ロシア側の「言い訳」と、アメリカ側の「メンツ」が折り合う丁度良い時間は────
( ゚д゚ )「……20時間、ってところだな」
俺と同じ結論に至ったらしいミルナ中尉が、ぽつりと呟く。
ξ;゚听)ξ「核兵器の発射時刻ですか?それならさっきサイ大尉が36時間後って……」
( ゚д゚ )「ヨーロッパの状況は地図上に記されている時点からおそらく更に悪化している、少なくとも好転はあり得ない。
通信が繋がらずベルリン市外の状況は未だに確認できないが、逆に言えばそんな状態が今なお続いていることが形勢不利の証左だ。ロシアが国際社会に“最大限の我慢”をアピールしつつ核発射の時間を切り上げるとして、おそらく20時間が妥当なラインだ」
「そう言えば、僕たち以降南からの増援が全く来てないね」
ミルナ中尉の分隊に加わってベルリンに派遣されてきたレーベレヒト=マースも口を開いた。幼いのは外観だけで、ツンと交戦していたル級にトドメを刺したという武勲艦はかなり肝が据わっているらしい。
彼……ゲフン、彼女は指揮所の張り詰めた空気の中でも臆することなく声を張った。
「僕は陸軍のことをよく知らないけれど、あのラインフェルトっていう大佐がとても優秀な人であることはなんとなく解りました。
あの大佐なら、僕らの増援によって好転したであろうベルリンの状況を見逃すとは思えないです」
「更なる援軍でたたみ掛けるべきタイミングに、ドレスデンからさえ兵を動かさない……いや、動かせないということか」
グラーフの人差し指が、苛立たしげに机を叩く。
「おそらく、我々が聞いた時点よりもフランス方面の情勢が悪化していると見た方がいいな。ルール地方の敵勢力が相当増強されたか?」
(=゚ω゚)ノ「───“増強”というより、“生産”の方が近いよぅ」
215 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga sage]:2017/05/20(土) 11:36:12.33 ID:otGQSIH90
「………生産?深海棲艦が何を造っているっていうの?」
(=゚ω゚)ノ「言うまでもない、“深海棲艦”に決まっているよぅ」
首をかしげて尋ねるビスマルクに答えながら、イヨウ中佐は黒く塗りつぶされたルール地方を指し示した。
(=゚ω゚)ノ「そもそも、深海棲艦が“ただの前線拠点”として使うにはルール地方は遠すぎるよぅ。この襲撃が始まった直後から電撃的に内地に兵力を送り込んでいたと仮定しても、サイ大尉達アメリカ軍が到達するまでに集結できる兵力はたかが知れてるよぅ。
ましてや、北も完全に抵抗が止んでいたわけじゃない。統率が取れていないとはいえ艦娘やドイツ軍の抵抗を受けてそれほどの戦力を南下させる余裕があったとは思えないよぅ」
中佐の指が、ノルデンの辺りとルール地方を行き来する。紙の地図上ではほんの2cmに過ぎないその“間”に、現実は200kmの距離が横たわる。
確かに、深海棲艦が他の地域へ大規模攻勢もかけられるような兵力を逐次投入できる距離ではない。
(=゚ω゚)ノ「深海棲艦の今回の目的は、おそらく最初からこのルール地方───更に言うならここにあった国営艤装工場。他の場所への攻撃は、ここから人類側の注意を背けるための陽動攻撃だよぅ」
(//‰ ゚;)「相当強固な拠点になっているとは思うが、流石に生産拠点というのは突拍子もなさ過ぎませんか?それに、生産拠点だったとしても奴らの自己増殖速度が常軌を逸している。前段階の拠点化速度も尋常じゃない」
(=゚ω゚)ノ「深海なんていう過酷な環境下にあって、物量面では常に人類を圧倒し続けている化け物共だよぅ?
“生ける軍艦”の製造技術は、間違いなく奴らに分がある」
サイ大尉の反論を、中佐は一蹴する。
(=゚ω゚)ノ「ルール地方は今や深海棲艦の一大製造拠点として機能していると見て間違いないよぅ。断言するけど今後、フランス方面並びにドイツ南部の戦況が好転することはない。
北沿岸のアメリカ軍に関しても、既に損害を受けて退却している可能性が高いよぅ」
ξ;゚听)ξ「……じゃあ、もう36時間以内の事態解決はおろか私達完全な孤立無援じゃないの。挽回のしようなんて」
(=゚ω゚)ノ「あるよぅ」
バサリと、二枚目の地図が───ベルリン市街地の地図が机の上に広げられる。
216 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/20(土) 11:46:56.34 ID:otGQSIH90
undefined
217 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga sage]:2017/05/20(土) 11:50:12.28 ID:otGQSIH90
(=゚ω゚)ノ「物量面で我々が圧倒されているにしろ、向こうが損害を全く恐れないというわけではないよぅ。深海棲艦側にとっても、流石にelite以上の戦艦・空母や【姫・鬼】といった等級の損失は絶対に避けたいはずだよぅ。
現に、敵は未だに戦力再編と他地域からの戦力補充のために活動を停止している。
このベルリン市に来ている姫級────西側で確認された、“軽巡棲姫”の安全を確保するために奴らの増援が到着するまでは、今の防衛的な展開は続くよぅ」
中佐の掌がミッテ区に置かれ、そのまま左側へと滑る。
(=゚ω゚)ノ「同時に姫を割くということは、ベルリン攻撃は陽動ではあっても本気度は低くない。“重要攻勢地点で姫級が沈んだ”、この事実を深海棲艦に突きつけることが出来れば、ルール地方を含めたドイツ全域の深海棲艦の動きを確実に鈍化させられる。
同時にベルリンを解放することが出来れば、市外と通信を取ることで残存戦力と連携して北部全体での反撃にも繋がるよぅ」
拳を握りしめ、中佐は勢いよくそれを再びミッテ区の位置に叩きつけた。
その細身のどこにそんな力があったのか、机がミシリと少しいやな音を立てる。
(=#゚ω゚)ノ「戦力的劣勢は否めないどころの話じゃない。奴らはあくまで大事を取ったに過ぎず、未だ僕らは吹けば飛ぶような圧倒的劣勢だ!
だけどだからこそ、僕らはこれより総攻撃に出る!!どれほど微かでも、この好機にすがる!!
ヨーロッパ全土の劣勢を覆すには姫級を短時間で撃沈するという大戦果を上げるほかない!!」
喉の奥から、身体の底から、絞り出すような叫び声。
それはこの策が、中佐の全力をかけて練られたものであるという証。
(=#゚ω゚)ノ「作戦の最終目標はただ一つ、軽巡棲姫の撃滅とベルリンの奪還だ!各位、持てる力の全てを駆使し課せられた使命を遂行せよ!!」
「「「……Jawohl!!」」」
(=゚ω゚)ノ「……ヴォーグルソン大尉、申し訳ないけれど君の部隊にもデレ中尉同様有無を言わさず作戦に参加して貰うよぅ。今の僕らにとって、“最強の国”の兵士200人は必要不可欠な戦力だよぅ」
(//‰ ゚)「言われるまでもないことです、中佐」
中佐の言葉に、サイ大尉は少し芝居がかった笑みを浮かべ胸板を叩いてみせた。
(//‰ ゚)「アメリカ海兵隊に、退却はありません」
218 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/20(土) 12:27:26.09 ID:otGQSIH90
「────Attention!!」
雨の中に佇む、「世界最強の部隊」の名に相応しい鍛え抜かれた体躯を持つ200人。彼らは副官の号令に従い、一斉に彼らの指揮官────サイ=ヨーク=ヴォーグルソンの方を向く。
(//‰ ゚)「────俺たちはこれより、在ベルリンドイツ軍の指揮下に入りこの街の奪還作戦に参加する!!」
何の前置きもない、いきなりの宣言。だが、誰も動揺は見せない。それは彼らの隊長の「いつもの姿」だからだ。
(//‰ ゚)「先に言っておく、俺たちの勝算は薄い!なぜなら敵は手強く、多く、そして賢い!!
俺たちの側には10人の艦娘が着いているが、奴らはその何倍か見当もつかん!!戦艦はただの一隻だ!!
俺たちは彼女らの盾となり、囮となり、そして死ぬために作戦に赴く!!
それも祖国の地じゃない!遠く離れたヨーロッパの、俺たちには縁もゆかりもない場所で、言葉を交わしたことすらない人々のために俺たちは死ぬ!!」
飾りもごまかしもない、厳しい任務の宣告。だが、誰も恐怖は見せない。それは彼らの部隊の「いつもの任務」だからだ。
(//‰ ゚)「だが、俺たちはアメリカ海兵隊だ!!
俺たちの任務は、“敵”を殺すことだ!!そして今、この街にいる深海棲艦の奴らは、間違いなく俺たちの敵だ!!」
サイは、真っ直ぐにベルリンの西側を指さす。
黒煙が濛々と上がる街並みを指し示しながら、彼の眼は怒りに燃えていた。
(//‰ ゚)「奴らに殺されたのは、顔も、名前も知らない人々だ!だが、同時に、生きていたとしたらどこかで俺たちのかけがえのない友になったかも知れない人々だ!」
(//‰ ゚)「任務に疲れた俺たちと、どこかの街角で美味いビールを酌み交わしていたかも知れない人々だ!!」
(//‰ ゚)「軍を退役した俺たちと、ポップコーンをかじりながらTBLの試合を見ていたかも知れない人々だ!!」
(//‰ ゚)「今日この日がなければ、明日も明後日も、1年後も10年後も、どこかで誰かと笑い合っていた人々だ!!」
(//‰ ゚)「あの化け物達が奪ったのは!顔も名前も知らぬ人々の、だが間違いなく存在した命だ!!」
理性も理論も無い、感情的な叫び。だが、誰も怒りの表情を隠さない。
全員が、サイと同じ気持ちだからだ。
219 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/20(土) 12:41:11.69 ID:otGQSIH90
(//‰ ゚)「俺はお前らに、合衆国への忠誠なんてくだらんものは求めん!!人類への貢献なんて吐き気を催すものは求めん!!
だが思い出せ!!俺たちはなんだ!!」
「「「We are United States Marine Corps!!」」」
(//‰ ゚)「アメリカ海兵隊は!?」
「「「Retreat “No”!!」」」
(//‰ ゚)「海兵隊の心得は!?」
「「「Once a Marine, Always a Marine!!」」」
(//‰ ゚)「俺たちの任務は!!?」
「「「Kill the enemy!!」」」
(#//‰ ゚)「Ok, Let's Go guys!!」
「「「Sir yes Sir!!」」」
220 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/20(土) 12:42:57.22 ID:otGQSIH90
復活更新ここまで。ご心配おかけしました、体調無事回復しました。
あと誤爆本当に申し訳ありませんでした……
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 13:07:21.70 ID:siFc81yY0
乙
復活おめ
誰でも何回かやるからキニスンナ
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 13:57:33.96 ID:cFWM0aJR0
やだ、海兵隊かっこいいww
穴掘られてもいいわ
この話にはこんイベ新艦のガン子は出ない感じなのかね
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 14:16:03.73 ID:Yl56C72xo
乙
イヨウはいい指揮官だな
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 21:32:42.31 ID:Uz+74rcMo
乙!
やだ……かっこいい
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/21(日) 02:07:38.33 ID:dDGal2BA0
おつです!
元々国家や軍隊によって保たれ、多くの国民が享受してきた平穏があるのだから、国に尽くし誰かのために命を賭ける存在は立派であり尊敬されて然るべきだし
平時においては好き勝手に貶めようとする連中が居ても、最後の最後に国民のために立ち向かうだけの研鑽を積んできたのだから覚悟のそれが違うしね…
それこそ自衛隊だって実戦こそないけど、国民のために流してきた汗と救ってきた全ての物を考えてみたら、不当に貶め続けるマスゴミや左翼連中がどんだけ異常か
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/21(日) 09:02:38.75 ID:xm+bhM/S0
乙です
>225 いいこと言うね
自衛隊のいい所はその銃剣で殺した人間は零ですくった人間は数多くって所だと思う
世界の何処をさがしてもそのような軍隊はない(公式には軍隊と言えないのはスルーしてね)
227 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/21(日) 14:16:54.99 ID:Ffb9jAHh0
「ねえ、貴女は何のために戦っているの?」
「…………へ?」
避難民の警護役として駆逐艦の子たちと一緒に配置についていた私に、その問いは唐突に投げかけられた。
私の目の前には女の子が二人、東へ流れていく人混みから一歩外れた位置で立っている。
一人は見覚えがある。確かビスマルクお姉様と一緒に戦車に乗っていた子だ。お姉様はエミと呼んでいたかな?
エミは赤みがかった二の腕辺りまで伸びる髪をツインテールにまとめ、勝ち気そうなブラウン色の眼を僅かに細めて私を見つめてくる。顔立ちは少し幼い感じがして、なんとなく以前出会った日本の駆逐艦娘たちと似通った雰囲気がある。もしかしたら東洋人の血が混じっているのかも知れない。
从;゚∀从
隣に立っているもう一人の子は、髪型が真っ先に眼を引いた。美しい金色の髪を左側だけ極端に伸ばして、顔の半分を覆い隠している。肌は健康的に日に焼けていて、少しボーイッシュな印象だ。
そして……何というか、うん。首から下の“凹凸”がとてつもない。
多分、エミの発育だって彼女たちの世代にしてはいい方だと思う。ただ、彼女が隣に並んでしまうとまるで大人と子供のよう。
二人とも、世事に疎い私でも名前を知っている戦車道の強豪学園艦の制服に身を包んでいる。おそらく学友なのだろう。
228 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/21(日) 14:19:39.35 ID:Ffb9jAHh0
「……貴女、艦娘のPrinz Eugenでしょう?」
「……ふぇっ!?あ、う、うん!!」
質問の意味を理解しかねてワケも無く二人を観察していた私に、エミはもう一度問いかけてきた。ビスマルクお姉様やデレ中尉にも向けられていた、少し険のある声音。じぃっと此方を見つめてくる一対の瞳に気圧されて、艦娘ともあろうものがたじろいでしまう。
「ええっと、さっき戦車に乗っていた子だよね?あー、もう間もなく私達の方で反撃作戦が始まるし、できれば早く避難して欲しいんだけれど……」
从;゚∀从「あーーっ!そうっすよね!!いや、本当に連れが任務中にご迷惑をおかけします!」
おそるおそる切り出した私の言葉に、被せるようにして金髪の子が応じる。彼女は申し訳なさそうに私の方に目配せしながら、エミの袖を引っ張った。
从;゚∀从「ほらエミ、とっとと逃げるぞ。それに仕事の邪魔しちゃまずいって」
「だったらハインだけ逃げて。私はこの質問が終わったら後から行くわ。ここは私を残して先に行きなさい」
从;゚∀从「ものすげぇテンプレな死亡フラグ屹立やめろよ……お前たまにとてつもなくベタだな……」
「うっ、うるっさい!!」
金髪───ハインと呼ばれた子の手をエミはふりほどく。そう力のこもった動きではなかったけれど、ハインは諦めたようにため息をついて一歩下がる。
「質問の答えを聞いたらすぐに避難するわ、それにどうしても答えたくないならそれで構わない。でも、もし答えられるのなら教えて。
貴女は何のために戦っているの?」
「………その前に一つ言わせてね。私ね、ベタにはベタの良さがあr痛ぁっ!?」
「今そのフォローはいらんわ別に!」
頭をひっぱたかれた。うー……指摘された辺りから顔が真っ赤だったから少し気を遣ったのに……
::从* ∀从::「ゴッ、グフッ、ヒーッヒーッヒーッ」
因みに横ではハインが腹抱えてメッチャ笑ってた。あ、エミが肘入れた。
痛そう。
229 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/21(日) 14:21:22.97 ID:Ffb9jAHh0
「そっれっでっ、どうなのよ!?答えてくれるの?!くれないの!?」
「…………うん」
別に、答えても支障は無い。それで納得して素直に退くのなら、私は今すぐにでも彼女に求める答えを与えるべきだろう。
だけど私は、Prinz Eugen-09は、“答えられない”。
艦娘としてそう定められているから、私は今深海棲艦に立ち向かっている。目の前でドイツに住む人たちを死なせたくないという思いも抱いてはいる。
でもそれらは、私が“自分がどんな存在なのか”を考えないようにするための気休めだ。私は“艦娘”だから戦うんだと言い聞かせていれば、余計なことを考えずにすむからという逃避だ。
だとしたら、艦娘としての使命の下に戦っているわけでも人間としての矜持の下に戦っているわけでもない私は、結局のところ「何」になるのだろうか?
「………ちょっと、プリンツ?貴女大丈夫?」
「ふぇあっ!?」
ぐるぐるとまとまらない思考の波に呑まれた私の肩を、誰かが叩く。
ふり向くと、ビスマルクお姉様が立っていた。
「お、お姉様!?何でここに!?」
「貴女を呼びに来たのよ。ゲリッケから作戦配置につくよう指示があったわ。具合が悪いように見えたけど、そんな大声が出るなら大丈夫ね……あら、エミにハインじゃない」
お姉様はエミ達の姿を見て、少し目を丸くする。いつもニコニコしているこのお姉様にしては珍しく、少し眉間に皺を寄せる。
「貴女たち、こんなところにいないで早く避難しなさい。せっかく私とグラーフが守った命なんだもの、大切にして貰わなきゃ困るわ」
从;゚∀从「悪りい、オレはさんざん逃げるように言ってんだけどフロイラインが頑固でさ。エミ、いい加減にしようぜ」
「あんた人にテンプレだの何だの言っといて自分は思いっきり死語使ったわね……解ってるけど、本当にあと少しだけ待って。
───あのさ、ビス」
「ん、何かしら?」
おいちょっと待てビスって何だ愛称呼びってなんだ私のお姉様といつの間にこんな親しくなりやがったこの小娘おい待てゴルァ!!
「ビスは、何のために戦っているの?」
230 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/21(日) 14:36:57.16 ID:Ffb9jAHh0
エミの問いかけに、ビスマルクお姉様は心底不思議そうに眼をパチクリさせた。可愛い。
「私が戦う理由って………そんなもの、貴女たちドイツ国民を、そして世界中の人間を深海棲艦から守るために決まっているわ。それ以上の理由なんて」
「でも、それを望んでいない人間も大勢いる」
お姉様の言葉を遮り、エミは少し強くなった口調で問い詰める。
「私とハインは、勿論ビスにもグラーフさんにも感謝してる。二人が、艦娘の皆がいてくれて良かったって思ってる。私の家族や周りの人たちも、皆貴女たち艦娘に感謝していた。
でも、貴女が守りたいと言ったドイツ人の中には、貴女たちのことを亡霊とか悪魔とか、兵器とか呼んで蔑んでいる奴も大勢いるわ」
視界の端、エミの後ろで、流れていく人混みの何割かがびくりと気まずげに身を震わせたように見える。
从;゚∀从「おい、エミ!!」
「………すっごく酷い質問をしてるって解ってる、ごめんなさい。だけど、知りたいのよ。認められず、蔑まれて、疎まれて、終わりは見えなくて、それでもなんで貴女は戦うの?なんで戦えるの?」
从;-∀从「………」
「お願い、時間が無いだろうけど───少しでいいの、教えて頂戴」
………エミは「酷いこと」と言ったけれど、彼女の指摘は完全な事実だ。
私やビスマルクお姉様や、世界中の艦娘達が「戦う船」として経験した、人類同士による大きな戦争。80年近く前に起きたその戦争から、私達は人の姿を得て蘇った。
深海棲艦という、強大な力を持つ敵から人々を守るために戦う日々。だけど、私たちに守られることを、私たちが「艦娘」として蘇ったことをよく思わない人々がいる。
平和と人道を叫び、「あの人」の名の下にハーケンクロイツを掲げていた時期のドイツを忌むべき時代だと論じるその人達。彼らは私やビスマルクお姉様、或いは日本の艦娘達を「第三帝国の亡者」と呼んで、出て行け、もう一度鉄屑に戻れと罵る。
その声は数が多いわけじゃない。けれど、決して少なくも小さくもない。
そして、日頃はその叫びに眉を顰めているような人々でも、実際に私達と出会うとその視線は淀んでそっぽを向く。
231 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/21(日) 14:52:39.24 ID:Ffb9jAHh0
守ってくれるのは解っている。だけど、貴女は「恐ろしい兵器」だから。
深海棲艦と戦ってくれて感謝している。だけど、貴女は「忌まわしい記憶」だから。
いろいろな人たちが私達に向ける「感謝」は、多くの不純物が混じって粘ついて。
当然の反応と解っていても、私は胸に纏わり付いてくるような“不純な感謝”にますます迷いを深くする。
自分に向けられたモノでは無い問いに、それでも自然と私は俯いてしまった。
(……………でも、なんでそれを、今このタイミングで聞きたいんだろう?)
私にはなんだか、エミはその問いかけをエミ自身にも向けているような気がした。
「ええ、そうね。確かに私たちの事を嫌ったり、疎んだり、一刻も早く消えて欲しいって思っている人はいるわ。
それも何人、何十人なんてレベルじゃない、きっと何百万人。世界中に目を向けたら何億人かもね」
下を向いた私と違って、ビスマルクお姉様はエミの問いから、視線から逃げなかった。お姉様は微笑みながら、エミを真っ直ぐに見返す。
「自分が世界中から無条件に感謝されるヒーローだとは思ってないわよ最初から。でもね、それは私が戦いをやめる理由にはならないわ」
「……それは、なんで?」
「彼らもドイツ人で、人間で、艦娘である私が守らなきゃ行けない存在だからよ」
232 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/21(日) 15:18:40.11 ID:Ffb9jAHh0
お姉様は、エミの後ろ────東へと逃れていく人々の姿に目を向ける。
「かつて私達が海の上に掲げて戦ったハーケンクロイツは、今のドイツにとっては思い出したくない記憶だと知ったときは、流石に私もショックだったわ。快く思わない人に罵詈雑言を受けて、傷ついたことだってある。……でもね、エミ。それは当然のことなのよ」
お姉様は優しい笑顔で、エミの肩を叩く。いつもと少し違う、諭すような口調で語りかける。
「人間は全員が違う考えを持っている。私達が船だった80年前だって、正義の旗印だった鍵十字を嫌い罵倒していた人たちはいたんだもの。たとえ私が完璧超人のヒーローだったとしても、きっと世界のどこかで私をよく思わない人はいるはずよ。
私がzweiへの改修を受けた日本では、あの国の軍人達は私なんかより遙かに酷い罵倒を受けていたわ。勿論浴びせてた人間はごく一部だけどね。
でもそれは、その人たちが生きているからこそ抱く感情なの。
私達艦娘は、そしてドイツ軍は、世界中のカメラードは、彼らが生きて、私達を罵倒する権利も守るために戦うのよ」
お姉様はエミの眼を真っ直ぐに見つめ、決意に満ちた声で告げる。
「それに、たとえ戴く旗が変わっても、ここはドイツ人が住まう地よ。
たとえ時代や意見が違っても、貴女たちは“あの人達”が80年前に守ろうとした国の国民よ。
だから私は、誰に認められるとか認められないとか関係ないわ。
私がBismarck zweiである限り、絶対にこの国を、この世界を、貴女たちを守ってみせる。
“あの時”できなかったことを、今度こそやり遂げたいの」
233 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/21(日) 15:38:05.24 ID:Ffb9jAHh0
「………」
从 ゚∀从「………エミ、流石に本当にもう時間が無い。行くぞ」
「う、うん………ビス、その、仕事の邪魔してゴメン」
「あら、1人前のレディたる私は気にしないわよ。寧ろ、作戦開始前にリラックスできたわ」
あっけらんかんとした口調でそういって、お姉様はひらひらと手を振る。エミはハインに手を引かれ、私達に一度頭を下げると避難民の列に戻っていった。
私は日本の駆逐艦娘がやっていた、“お辞儀”という挨拶を思い出す。やはり、エミには日本人の血筋も流れているのかも知れない。
もしかしたら、そのせいで彼女も学園艦や生活の中で何かの形で差別を受けたのかも知れない。それが、あの唐突な私やお姉様への問いに繋がったのだろうか。
「………さ、ホントに時間も圧してきたわ。いきましょうプリンツ」
エミ達が人ごみに呑まれて見えなくなると、お姉様はそう言って私の背を叩く。
─────帽子を目深く被り、艤装を展開して西の空を睨むお姉様の眼光は、先程までと一転して凜々しく、鋭い。
「さぁ、80年前のリベンジよ」
234 :
◆vVnRDWXUNzh3
[saga]:2017/05/21(日) 16:05:05.14 ID:Ffb9jAHh0
《遅れてごめんなさい、Bismarck zwei、配置についたわ》
《Prinz Eugen-09、同じく!》
《なあにギリギリだが予定時刻には間に合ってるさ。俺たちニューヨーク・ヤンキースはいつでもプレイボールに対応可能だ》
《お生憎だなサイ大尉、ドイツ人はクリケットは嗜むが野球はあまりやらないんだ。迫撃砲隊、全砲稼働準備完了!》
《Graf ZeppelinよりCP並びに前線各隊に通達、全機の整備・発艦準備を完了した》
《コンツィ中尉、各分隊整列完了しました!》
《よし、CP、此方ノイケルン区。敵制圧区域への突入態勢を取りました》
《西街区から逃げ延びてきたレオパルトとプーマはどうした?》
《プーマは三両中二両を前線に新たに配置、一両は後衛に予備戦力として配置したわ。レオパルト1は私の指揮下に組み込んである》
《OK. 前線指揮車よりCP、全区画戦闘態勢ヨシ。繰り返す、全区画戦闘態勢ヨシ》
《CPより指揮車、了承したよぅ。────作戦を開始せよ》
「了解。
指揮車より、全部隊に通達」
(#'A`)「───────Angriff!!」
《《《《Jawohl!!》》》》
235 :
◆vVnRDWXUNzh3
[sage saga]:2017/05/21(日) 16:06:40.16 ID:Ffb9jAHh0
今更新ここまで。続きは夜辺りで。
ようやくKriegのお時間です
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