敏恵「今度こそ、ストライクウィッチーズ!」

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47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 09:56:31.02 ID:1UnU6ySn0
 
小園「……。チッ…」カチャリ

小園「はぁ…、小園だ」


小園「――! あ、御無沙汰してます北郷さん…!!」ギク


小園「…いえっ、今のはべつに! 何事もありませんから」

小園「それよりも、どうしたのですか突然?」



小園「……? ええ、はい。…………――」



小園「――……えっ!! そ、それは本当なのですかっ!?」ガタッ

 
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 19:02:25.55 ID:1UnU6ySn0
 

―その数日後―


鎌倉 明石

宮藤診療所


芳子「さて、終わったよ。お腹の傷跡を見せてごらん?」

敏恵「……zz」

芳子「ん?」

敏恵「〜むん……zz…」スヤスヤ


芳子「こら」ズボ

敏恵「でょ゛…!?」ビクッ


芳子「どうだい? 目が醒めるツボだよ」

敏恵「〜〜゛!? にゃ…にゃにをっ…??」ピクピク

芳子「明るいうちから惰眠は禁止」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 19:10:23.34 ID:1UnU6ySn0
 
敏恵「んぐ、痛つぅ……。だって芳子さんの治癒魔法、眠くなるくらい気持ちいいんですもん…」サスサス

芳子「我慢をし。規則正しい生活習慣が必要だってもう何度も言っている筈だよ?」

敏恵「分かってるんですけど……ほら、あたしナイトウィッチで5年間ずっと真逆の生活してたから…」

芳子「なら12年は普通の生活だったろ? 自分を甘やかすんじゃないの。ほら身体を起こして、お腹見せてごらんな?」

敏恵「ふぁ〜〜い。んしょ…」ノソリ

芳子「はい捲る」

敏恵「うい」グイー


芳子「……んー…」

敏恵「芳子さん、この跡ってやっぱり残っちゃいます?」

芳子「そうだねぇ……、だけどもよく塞いでる。施術した療師は優秀だよ」

敏恵「ぅぅ…でも変な色だし、ちょっと恥ずかしいなぁこれ」

芳子「まだ新しいからねぇ、毒でも出ない限りは大丈夫」

敏恵「ちょ…!? 怖いこと言わないでくださいよぉ!」ガーン
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 20:57:41.80 ID:1UnU6ySn0
 
芳子「まあ、万が一おかしく感じる事があれば隠さずに言うんだよ?」ス

敏恵「……え、なに?? まさか本当に何か害あるの…?」

芳子「万が一だよ。念の為」ポワワァ

敏恵「んぁふ!? くすぐったい…! //」モジ


芳子「――…はい、いいよ。後は寝る前ね」シュルル

敏恵「はい、ありがとうございまーす」

芳子「ふぅ……やれやれ、私も歳だね。腕が重くなっちゃって」

敏恵「あ、芳子さん! じゃああたしが揉んであげます!」

芳子「いいよべつに。今日も魔法使う訓練するんだろう?」

敏恵「壕行くのめんどくさいから今はいいや、暗くなってから庭でやる! だから芳子さんも一緒にのんびりしましょうよ? お肩も叩きますから」ハシ

芳子「……仕方ないねぇ。それじゃあ、午後の患者さんが来るまでお願いしようか」

敏恵「んふふ〜♪ とか言って本当は嬉しいんでしょ? また芳佳ちゃんがいなくて寂しいくせに〜」クイクイ

芳子「生意気を言うねぇ? 女は待つことに強くなくちゃあ、やっていけないよ」

敏恵「お、おぉ…! 含蓄ありそうな台詞……なんかかっこいい!」




清佳「――お母さん、ちょっと…」トタタ

敏恵「ぁ、清佳さん」

芳子「どうしたんだい?」

清佳「それが……今、海軍の小園さんがお見えになって…」

敏恵「えっ、園さんが??」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 21:07:01.78 ID:1UnU6ySn0
 
――――
――



芳子「……」

清佳「……」

小園「……」


敏恵(な、なんだろう? なんか真面目な雰囲気が凄いんだけど…? お茶にすら手を伸ばせない…)モヤ



小園「突然お訪ねした不躾をお詫び致します。秋本療師、宮藤夫人」

芳子「……。顔を上げてください、小園大佐」

小園「…はい」スス
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 21:22:10.57 ID:1UnU6ySn0
 
芳子「こうして貴方に直接お会いするのは、そこの敏恵ちゃんを治療する話をお持ちになった時以来ですか」

敏恵(芳子さんの表情も厳しい、何故?)

小園「はい。無理な要望を聞き入れて頂いた件については、感謝しております」

芳子「…恐らく、今度もそういうご要件で来られたんじゃありませんか?」

小園「…………そうです」

芳子「……」

敏恵「??」

芳子「遥々兵庫からご足労してこられた方を無下にお返しする訳にもいきません。…率直に、お聞かせください」

小園「情け痛み入ります。では率直に――」


小園「…工藤を欧州へ戻すため、引き取りに参りました」


敏恵「!」

清佳「それは…」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 21:30:24.55 ID:1UnU6ySn0
 
芳子「申し訳ありませんが無理です。その子の念動魔法の疑似投薬障害は完全に消えた訳じゃありません、今止めてしまったら元に戻ってしまいます」

小園「その旨については北郷中佐より私も診断結果を伝え聞いております」

芳子「でしたら、どうかご理解ください。治療を台無しにすることを療師として認めるなど、到底できる筈もありません」

小園「勿論承知しています。故にひとつ、こちらからの提案を含めたうえで復帰の可否をお伺いしたい」

芳子「?」

清佳「提案…?」

小園「はい。…工藤大尉へ参加要請のあった“第三次501部隊”の構成員には、宮藤芳佳少尉がおります」

芳子「!」

清佳「そんな…!? まさか!」

敏恵「え、なんで芳佳ちゃんが? ていうかあたしが501って、本当に??」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 21:46:16.01 ID:1UnU6ySn0
 
小園「娘さんはヘルウェティア連邦へご留学に向かう道中で突発的なネウロイ侵攻に巻き込まれましたが、その過程で魔法力を取り戻しそのまま復帰しています。じきにこちらへの知らせもある事でしょう」

清佳「あの子ったら、また戦争に…!?」

敏恵(清佳さん…)

芳子「……そうですか。あの子の魔法力が」

小園「ええ。ですから此処に居ずともお孫さんが付いている事で、工藤の復帰もどうにか可能ではありませんか?」

敏恵(お、おお? なるほど!)


芳子「……」

小園「如何でしょう? 私も此奴に無謀を強いるのなら絶対に行かせません。故に正直な答えを頂きたい」

芳子「……。敏恵ちゃん?」

敏恵「! んぁ、はい!」

芳子「小園大佐がこう仰ってくれているけど、どうする?」

清佳「ちょっとお母さん…!」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 21:52:08.77 ID:1UnU6ySn0
 
敏恵「ぁ、あたしは――」

芳子「……」ジ


敏恵「ぅ…」チラ

小園「工藤、お前が聞かれてるんだ。ちゃんと答えろ」コク


敏恵「っ……ごめんなさい芳子さん、清佳さん。あたし行きたい!」

芳子「……」

清佳「ど、どうして? その身体でまた戦争になんて行ったらご両親は心配するよ…? 折角帰って来たのに、まだ顔も合わせていないんでしょ?」

敏恵「はい。でもあたし…自分以外の何かの為になるのがウィッチだって、それがようやく解ったばかりなんです!」

小園「……」

敏恵「それを気付かせてくれた友達が向こうにいて、それでなんていうか……今度こそあたしも本当の、その子達と同じウィッチに成りたいんです!」キリ
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 21:55:49.56 ID:1UnU6ySn0
 
芳子「そうかい、分かった」ハァ

清佳「ぉ、お母さん…!」

小園「! では、つまり?」

芳子「いくつか注意もありすが、どうにかなることには、なりますよ」

小園「…ご協力有難うございます」ペコ


敏恵「――! ということは、まさかあたし…?」

小園「ん、再出発だ。欧州へ行くぞ」

敏恵「〜〜! や、やったぁー!!」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 21:59:31.78 ID:1UnU6ySn0
 
―その翌日―


横須賀軍港


敏恵「これで3度目かぁ。横須賀から出発するのは最初の時以来だ」

敏恵「…“コテイべぇかりぃ”のシベリアとお別れするのは残念だけど、ベルギガのワッフルにまた会えるし、上々だよね! あむっ、〜〜」モグモグ


小園「喉元過ぎればと言うのか……昨日大層な決意を語った締まり顔はどこへ行った?」スタスタ

敏恵「ふぉ? ぞのひゃん!」

小園「それ全部食うなよ? 後で私も味見する」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 22:01:52.37 ID:1UnU6ySn0
 
敏恵「〜ングッ、芳子さん達と何話してたんですか?」

小園「向こうへ着くまでの注意やお前の容体に関する事項諸々だ」

敏恵「容体…。容体かぁ…」

小園「ここ数日は魔法を使うようになったそうだな?」

敏恵「はい、芳子さんにも許可貰えたんで。もう魔法使っても勝手に麻薬出てないっぽいですよ?」

小園「いや、それは秋本氏の療法による抑制が効いているからだ。完治したわけではない」

敏恵「はあ…? でも“渇き”も全然ないし」

小園「あの地域は環境も良いそうだからな。穏やかで精神も落ち着く……確かに身体の事を思えばあそこに居続けるのが最もだろう。私も本当はお前を労わりたい」

敏恵「……」

小園「しかしお前が望むのなら今度こそ私は尊重する。…約束だ、もう謀るものか」

敏恵「…うん。ありがとう園さん」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 22:08:39.84 ID:1UnU6ySn0
 
小園「――という訳でこれから長くておよそ一月半、お前は一切魔法禁止だ。いいな?」

敏恵「ん?? えっ、どうしてそうなるの…?」ポケ

小園「言っただろ、お前の好調は一時的なものだ。治療を受けられない移動中はかなり危ない」

敏恵「……ま、また渇いてきちゃうってこと…?」

小園「これまで抑えてきた効果も期待できるが、現状で一月半は流石に厳しいそうだ。後々禁断症状が現れ万が一にでも無意識に“魔導投薬〈マギードース〉”を行えば復帰は即取り消す」

敏恵「!? ぁやそッ、そんなこと言ったって…っ!!」アセ


小園「だから、私も航行をなるだけ急がせる。…お前はこれでも使って忍んでくれ」ゴソ

敏恵「…! ぞ、園さんこれ!?」

小園「フッ、懐かしいだろ? 大陸領土にいた頃、落ち着かん時に吸わせていたやつと同じ銘柄だ」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 22:14:05.93 ID:1UnU6ySn0
 
敏恵「……。これ嫌ですよ」ジト

小園「まあ、そう言わないでくれ。私も面白がって勧めている気など――」

敏恵「どうせならマヤ産のシガリロがいい! 紙巻になってる葉巻みたいなやつ、アレの方が美味しかった!」

小園「…………そういう意味か。いやそれより、お前向こうでも吸ったのか?」

敏恵「え!? ぇぇ、まぁ…一回だけ」ギク

小園「そうか。…まあいい」

敏恵「本当に一回だけですからね!? 止むに止まれぬというかっ、付き合いというか、慰めてもらった時で…!!」

小園「分かった分かった。取り敢えずそれは直ぐ仕舞っておけ、療師先生がこっちに来る。良い顔はされんぞ?」

敏恵「!? おとと…!」ササッ
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 22:19:01.48 ID:1UnU6ySn0
 
芳子「敏恵ちゃん」テクテク

清佳「……」

敏恵「は、はい!? ゃべつに、なんでもないですよ〜!?」キョド

小園(阿呆が…)


芳子「欧州へ着いたらこれを、あの子に渡しておくれ」ス

敏恵「ぇ? あ、はい」カサ

小園「不躾かと思いますが、それは…?」

清佳「娘が工藤さんの治療を行う際に必要な言及を書き留めてあります」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 22:20:54.88 ID:1UnU6ySn0
 
芳子「敏恵ちゃんは大尉だけど、患者としては芳佳の言うことをちゃんと聞きなさい?」ポン

敏恵「…はい! 了解先生!」ビシ

芳子「いいかい? 自分だけでどうにか出来るなんて、決して考えないことだよ?」

敏恵「うん、わかってますって。色々ありがとうございます、芳子さん!」

清佳「工藤さん。娘に何かあった時はどうか、力になってあげてください」

敏恵「はい、そりゃもう勿論! 清佳さん達には本当に優しくしてもらって沢山恩がありますから、無事に帰れるよう絶対あたしが護ります!!」

小園「(いやお前は彼女の世話になる方だぞ…)……では、そろそろ出港しますので」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/14(日) 22:26:55.17 ID:1UnU6ySn0
 
――



敏恵「…あぁ、見えなくなっちゃった」

小園「……。これでもう後には引けないぞ、工藤」

敏恵「ん? まあ、そうですね」

小園「本当にいいんだな?」

敏恵「…今更何言ってるんですか。今回はあたしが決めた事ですよ?」

小園「フッ、そうか…。そうだな」クル


スタスタスタ…――




敏恵「……さて。目指すはまたサン・トロン基地、今度は501部隊か…」フゥー


敏恵(マリの隊はどこに行ったんだろ…? 偶然、どこかで会えたりするかな?)

敏恵「…もしそうなったら嬉しいけど、まあ流石に無いね?」ハハ


――――


――



 
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 22:29:59.21 ID:1UnU6ySn0
 
==============

―現在―


敏恵「――うわぁ〜〜!! まさかいきなり会えるなんて!? すっごい!!」ニギ

ハイデマリー「ぁ……えっ…??」オロロ

敏恵「ここ501の基地になったって聞いたからさ!? マリがまだいるなんて思ってなかったよ! もう本当にびっくり!」ブンブン



バルクホルン「…なんだ?? ハイデマリー少佐の知り合いだったのか?」

ミーナ「ええ。少し前まで彼女の夜間飛行隊に援戦派遣されていたのよ」

美緒「ほう? そこまでは知らなかったが、縁があるのかもしれんな」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/21(日) 14:21:32.33 ID:xAGmCAD+0
 

小園「――失礼諸君? 工藤敏恵の監督官、扶桑皇国海軍の小園だ」


ミーナ「はじめまして小園大佐。第501統合戦闘航空団司令官、ミーナ・ヴィルケ中佐です」ス

小園「……。ん、出迎え感謝する」ニギ

ミーナ「こちらは当部隊戦闘隊長のバルクホルン大尉と――」

小園「坂本美緒、か」

美緒「直接お会いするのは初めてですね、大佐殿」

小園「他人行儀は止めろ。我々は皇国海軍同士、互いに“軍神の後輩”だろう? 坂本よ」

美緒「承知しました、小園さん。宜しくお願いします」ス

小園「……ああ」プイ

美緒「?」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/21(日) 14:31:53.19 ID:xAGmCAD+0
 
小園「ヴィルケ中佐。工藤の招請には本人も望む所なので応じさせてもらったが、その為の諸条件は解しているだろうな?」

ミーナ「ええ、問題ありません」

小園「…君には、私からあれを預かる責任を十二分に認識して欲しいんだが」

ミーナ「工藤大尉の状態についてはよく理解してるつもりです、大佐。既に宮藤少尉ともよく打ち合わせていますし」


バルクホルン「?? …少佐、いったい何の話だ?」ヒソ

美緒「後で内々に詳しい話もあるだろうが、工藤大尉の固有魔法や魔導麻薬症に関する事情だ」ヒソヒソ

バルクホルン「“魔導麻薬症”? なんだそれは…?」

美緒「すまんが一から説明すると長くなる。今は割愛させてくれ」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/21(日) 14:36:04.52 ID:xAGmCAD+0
 
小園「“つもり”では困るんだが、…仕方ない。くれぐれも宜しく頼みますよ」

ミーナ「はい。最善を努めます」

小園「……しかし、それにしても――」チラ

ミーナ「?」

小園「まさか彼女まで集めているとは恐れ入った。うちの工藤も入れて夜間戦術班でも組むつもりか?」

ミーナ「それはどうでしょう? 戦略に関わる事項は軍機に触れかねないので」ウフフ

小園(はぐらかすとは、まさか図星か?)

美緒「うむ……しかし元々戦友であるなら、確かに効果的編成が組めるかもしれん。互い仲も良い様子だしな!」

バルクホルン「いや、あまりそうは見えない…。ハイデマリー少佐の方は困惑しているぞ?」

ミーナ(あ、あらあら…。もしかして少し意地悪だったかしら?)




敏恵「ねえねえ、なんでここにいたの!? あっ、まさかマリも501のメンバーに呼ばれたとか!?」

ハイデマリー「く、工藤……さっ…??」
 
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/21(日) 14:38:22.60 ID:xAGmCAD+0
 
敏恵「…? う、うん。見ての通りあたしだけど――……マリ?」フイフイ

ハイデマリー「…〜〜」ヨロ

敏恵「わっ!! ちょ!?」


ハイデマリー「〜ぅ……」ペタン

敏恵「え、えぇ!?? どうしたのいきなり? 貧血!?」

ハイデマリー「っ…」サッ

敏恵「!?」


――タタッ


バルクホルン「どうしたハイデマリー少佐!?」

美緒「おい大丈夫か? …む、泣いている?」グイ

小園「……到着早々お前は――っ…くそ、何をしでかしたんだまったく! 勘弁しろ… #」チッ

敏恵「ぬぇっ!? ち、違う!! ちょっと話し掛けただけで、あたしはべつに何も…!?」アタフタ

ミーナ「あの、ちょっと待って! 多分誤解が起きてるから、全員落ち着きましょう?」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/21(日) 14:48:15.98 ID:xAGmCAD+0
 
――――
――



ハイデマリー「……はぁ…」

敏恵「もう話しかけても平気?」

ハイデマリー「あ! ぇ…そのっ…」オド

敏恵「…いいよ? 落ち着くまで待ってる」


ハイデマリー「す、すみません…ぁの…。まだきちんと把握できなくて――」モジ

ハイデマリー「……本当に、工藤さんがまた目の前にいることが…」

敏恵「えー? なんでさ?」クス

ハイデマリー「それは…。……だって工藤さんはいつだって、何でも突然でしたから」

敏恵「……」

ハイデマリー「っ…あんな別れ方をして。無事だって知らせも聞きましたけど、でもっ……あんな手紙も出しまけど! 心配しないでいるのは、無理です…」

敏恵「…そうだね、ごめん。そう言われちゃうと確かに、あたしまた自分勝手にマリを困らせちゃったな」

ハイデマリー「ぁいえ、そういう意味では… //」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/21(日) 14:50:48.67 ID:xAGmCAD+0
>>69訂正

出しまけど → 出しましたけど
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/21(日) 15:00:38.60 ID:xAGmCAD+0
 
敏恵「――でもさ! あたしも手紙の返事出したじゃん? ちゃんと近況書いてあったよね?」

ハイデマリー「えっ」

敏恵「……? あれ、読んだでしょ?」

ハイデマリー「いえ…? 届いてませんが」

敏恵「へ? 本当に!?」

ハイデマリー「は、はい…」

敏恵「?? えぇ…、まさか検閲で止まったのかな? 普通の事しか書いてないのに」

ハイデマリー「……」


敏恵「ん〜なんでだろ? やっぱりまだ筆記体の英字汚かったかなぁ、練習したんだけど…?」モヤモヤ

ハイデマリー「工藤さん」

敏恵「ん? あ、ごめん。なに?」

ハイデマリー「お身体はもう、大丈夫なんですか?」

敏恵「…うん、平気だよ。魔導麻薬症の方はまだ治療中だけど、あのネウロイにやられた所はもうバッチリ」

ハイデマリー「そうですか。よかった…」

敏恵「ついでに盲腸も取っちゃった! 穴空いてたし、虫垂炎の心配もなくて一石二鳥だよ!」ドヤャ!

ハイデマリー「…ふふ //」クス

敏恵「ぁ! えへへ…、やった。久しぶりにマリの笑顔」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/21(日) 16:04:08.83 ID:xAGmCAD+0
 
小園「――再開の挨拶は済んだか、ご両仁?」スタスタ

ミーナ「邪魔しちゃって悪いけど、取り敢えずこっちの用事に先ず付き合って貰えるかしら?」

敏恵「あ、すみません。えっと…?」

ミーナ「貴方を徴集した“ストライクウィッチーズ”隊長、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐よ」ス

敏恵「はい、どうも。…よろしくお願いしますヴィルケ中佐」ニギ

ミーナ「ミーナで構わないわ。ようこそ工藤大尉」

美緒「…私の自己紹介はいらんな、工藤?」

敏恵「えーっと、もっさ――…坂本さんは確か戦闘隊長」

美緒「もう違う。後任はこいつだ」クイ

バルクホルン「カールスラント空軍大尉、ゲルトルート・バルクホルンだ。ここは一部風紀が緩いが、決して甘くはないぞ?」ズイ

敏恵「はあ…? はい、よろしくお願いします」ペコ


バルクホルン「……」ジー

敏恵「?」ポケ


バルクホルン「はぁ、服部軍曹とは違ったか(なんとなく“あいつら側”っぽい雰囲気だ)」ガク

敏恵「??」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 21:46:40.99 ID:wRUVS/d70
 
ミーナ「それじゃあ、補充員も揃った所で少しミーティングをしましょう。トゥルーデ? 悪いけど…」

バルクホルン「全員徴収だな、了解」

美緒「手伝うぞバルクホルン。放送設備は今点検中の筈だ」

ミーナ「工藤さんも他のウィッチーズに紹介するから、荷物は持ったまま付いてきて?」

敏恵「分かりました。行こ、マリ」

ハイデマリー「はい」

小園「…待てシュナウファー」

ハイデマリー「!」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 22:04:53.72 ID:wRUVS/d70
 
小園「君には話がある。少し残れ」

ハイデマリー「……」

敏恵「なにを園さん? マリも行かなきゃいけなん――」

ミーナ「いいのよ工藤さん」サッ

敏恵「じゃぅ…?」

ミーナ「ハイデマリーさん。先に済めば貴方も作戦室に来て頂戴?」

ハイデマリー「は、はい」

小園「ヴィルケ中佐、私はこの後月光の整備指導と再調整をする。整備士達を借りるぞ?」

ミーナ「許可します、機材搬入は案内に従って下さい。…さあ、それじゃあ行くわよ?」

敏恵「…はぁい。園さーん! 変なこと言わないで下さいよー?」



小園「阿呆、さっさと行け!」

ハイデマリー(小園大佐…この人とは通信で口論をして以来で、気まずい)モヤ
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 22:15:56.36 ID:wRUVS/d70
 
小園「…さて大尉――いや、もう少佐だったな。失礼」

ハイデマリー「ぁ、いえ」

小園「……」

ハイデマリー「それであの、お話というのは…?」

小園「工藤について頼みたい事がある」

ハイデマリー「!」

小園「と…いうかだな、あいつの為に君には話しておく。注意して聞いてくれ」

ハイデマリー「いったい何を…?」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 22:26:52.15 ID:wRUVS/d70
 
小園「……現状、工藤の魔導麻薬症は秋本もとい宮藤一家の治癒魔法によってその異常を抑制している」

ハイデマリー「“宮藤”…? では宮藤少尉も? 工藤さんはまだ治療中と仰っていましたが、まさか宮藤少尉がいるから――」

小園「黙って聞け」

ハイデマリー「っ! す、すみません…」オド


小園「…だがいかに強力な魔法とて記憶や心までは癒せない。故にあいつの精神は無防備だ、私の“呪縛”も今はもう無いんでな」

ハイデマリー「……」

小園「今度こそあいつは己の意思で戦いに来た、そこは心配いらん。…但しそれ故に、どうにも危うい」

ハイデマリー「“危うい”…?」

小園「そうだ。やはりかつてのPTSDが装いを変え、垣間見えているような気がしてならない」

ハイデマリー「!?」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 22:42:50.78 ID:wRUVS/d70
 
小園「今の工藤がネウロイと相対し実戦を繰り返すことは、恐らくあいつ自身の覚悟を超えた困難になるだろう。…私が抱くその懸念を、君にも共有させておく」

ハイデマリー「待って下さい。では、大佐は工藤さんを止めないのですか?」

小園「…! チッ…此の期に及んで今更、私があいつの希望に口を挟めるわけないだろ」

ハイデマリー「ですが、貴方も本当は――」

小園「おい! いつかの再現は勘弁てくれ、お前とまた言い争う気はない。無駄だ」

ハイデマリー「ぅ…」タジ


小園「…とにかく、此処でのあいつを宜しく頼む」

ハイデマリー「は、はい…。ですが何故私に?」

小園「……。経験上、腐れた縁というやつは馬鹿に出来んのだ」プイ

ハイデマリー「?」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 22:54:19.18 ID:wRUVS/d70
 
小園「私は“お前達”を好きにはなれんが、君が工藤にとって心置ける存在ならば仕方ない。何よりの助けになる」

ハイデマリー「ぃぇ、そんなことは――」

小園「有るぞ。そして君はあいつを想いやれる奴だ、少なくとも私よりは余程」

ハイデマリー「……」

小園「…………この際に白状してしまうが、今となっては君に感謝もしてる」

ハイデマリー「!」

小園「先の遣欧であいつの力になってくれた事、…礼を言う」

ハイデマリー「……私だけではありませんよ? 隊の仲間全員が工藤さんを支えたんです。なによりそれは、工藤さんが私達を支えてくれたからです」

小園「フッ、まったく…。10代そこらの小娘が言う台詞ではないな?」チラ

ハイデマリー「ぇ? ぁ、すみません…」

小園「まあ、あの阿呆にも君くらいが調度いいのかもしれない。とにかく頼んだぞ? 話は以上だ」

ハイデマリー「……」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 23:07:26.90 ID:wRUVS/d70
 

作戦室


ハイデマリー「……」ガチャ

ハイデマリー(工藤さん、挨拶中だ…)ソロリ ソロリ



敏恵「――こく海軍大尉の工藤敏恵です、精一杯に励みますのでよろしくお願いします」ペコリ

ミーナ「はい、ありがとう。…工藤大尉はナイトウィッチとして単独戦果を上げてきた他に、欧州撤退の殿も経験している実力者です。服部さんに加えて彼女も新たにウィッチーズの一員になるから、全員仲良くしてあげてね?」


ルッキーニ「おぉー! シャーリー、アレみて!?」

シャーリー「ん? あー…確かに、リーネ以来の逸材だなありゃ。後で確かめるか?」

ルッキーニ「もっちろーん!」

バルクホルン「おい、うるさいぞお前達」

ペリーヌ「ここへ来て扶桑のウィッチが一気に増えましたわね…」

エイラ「まあイイんじゃないか? サーニャの負担が減るし、夜間任務できるヤツは歓迎だ」


敏恵(なんだろう…なんか、思ってたより和やか雰囲気で嬉しい! 案外恐い所かと覚悟してたけど)ホッ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 23:13:46.68 ID:wRUVS/d70
 
ミーナ「因みに、工藤大尉には諸事情による母国療養を中断して来てもらっています。勿論彼女の戦線復帰はしっかり検討されたうえでの判断だけど、念の為航空任務への参加はもう少し後になるわ」

敏恵「ぇ…?」

ミーナ「司令本部から新たな作戦指示を待つ間、服部軍曹は工藤大尉と共に引き続き“待機”。坂本少佐がいてくれる間はその監督下に置きます」

静夏「了解であります!」キビッ

敏恵(あ、あれあれ? どういうこと…??)


ミーナ「それでリーネさんとペリーヌさんは昼間の哨戒任務に復帰。…宮藤さんも戦闘出撃は許可するけど、打ち合わせた通り“衛生担当”を重視して頂戴ね?」

芳佳「はい、分かりました!」

ペリーヌ「返事はよろしいですけど、いざという時はまた無茶をしそうですわね?」ボソ

リーネ「ぺ、ペリーヌさん…(確かに否定できないけども…)」

ミーナ「はい、それじゃあこれで連絡はおしまい。解散」ニコ
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 23:34:31.19 ID:wRUVS/d70
 
――



敏恵「……」

敏恵(えーっと、取り敢えずどうしよう? 荷物を置きに――…あ、でも部屋割りわかんないや??)モヤモヤ


「うにゃ!」

――ムンズッ


敏恵「わっ!! な、なに!?」ドキッ

ルッキーニ「うじゅあー! おっきぃー♪」ワシワシ

シャーリー「どうだルッキーニ?」スタスタ

ルッキーニ「すごいよコレ!? シャーリーと同じくらいのおっぱい!」

シャーリー「おお、マジで? いや〜まいったなぁ」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 23:46:21.76 ID:wRUVS/d70
 
ルッキーニ「ん〜〜……でもやっぱり、シャーリーのが一番かな」モミモミ

シャーリー「あはは、そりゃどーも」

敏恵「…あのー、もしもし? これって挨拶か何かなのかな? //」モゾ

ルッキーニ「そだよ!」

敏恵「へ、へえ…? 初めて知ったけど、これは恥ずかしい…。どこの国のだろ?」

シャーリー「いや違うっつうか、こいつ特有の挨拶みたいなもんなんだ。大目に見てやってくれ」

敏恵「え? はあ、なるほど…?(タヴィアさんと似たような事か)」


シャーリー「あたしはシャーロット・イェーガー、リベリオン陸軍大尉だ。シャーリーでいいよ?」ス

敏恵「あ、うん。よろしくシャーリー」ニギ

ルッキーニ「あたしはフランチェスカ・ルッキーニ、ロマーニャ空軍少尉だよ!」

敏恵「はは…、凄い元気だね? よろしくルッキーニちゃん」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 23:59:36.70 ID:wRUVS/d70
 
芳佳「敏恵さーん!」ステテ

敏恵「芳佳ちゃん、暫くぶり。お医者さん留学は辞めちゃったの?」

芳佳「あ、えっと、それはうやむやというか……延期です!」

シャーリー「行く前から休学なんてワルだよなー宮藤?」アハハ

ルッキーニ「サボタ〜ジュ!」

芳佳「あはは…。それより、まさかこんな形でまた会うとは思いませんでしたよ! ミーナ中佐から話は聞いてますけど、本当に大丈夫なんですか?」

敏恵「んまぁ、一応は。…復活した芳佳ちゃん頼みになっちゃうから、迷惑かけるけどごめんね?」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/04(日) 00:08:33.42 ID:p9oHqiHT0
 
芳佳「はい、それは平気ですけど。お婆ちゃんと同じ事が出来るかは…」

敏恵「ん、それは多分大丈夫! えぇと――」ゴソゴソ


敏恵「…これ、芳子さん達から預かったよ」ハイ

芳佳「手紙…? ありがとうございます!」

敏恵「清佳さん結構心配してたから、電報でも直ぐ宛てた方がいいかも」

シャーリー「…なんだなんだ? 2人は結構知った仲なのか?」

敏恵「え? うん、ここに来る前は芳佳ちゃん家の診療所でお世話になってたから。一緒に薪拾いした仲だよ♪」ブイ
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/04(日) 00:12:54.37 ID:p9oHqiHT0
 
ルッキーニ「としえ病気だったの?」

敏恵「んー、ちょっとした怪我とかね? もう治ってるけど」

芳佳「……」


――スタスタ


エイラ「やっぱあの後でナンかあったのか?」

敏恵「?」

サーニャ「…あの、こんにちは。サーニャ・リトヴャクです」スタスタ

敏恵「さーにゃりとびゃくさん? ……あっ!! 前にマリ達が交信した時の、あのリトヴャク中尉!?」

サーニャ「はい。その、はじめまして」ペコ

敏恵(わぉ…、確かにブロマイドとかで見たことあるかも! あたし本当に有名人の巣窟に来たんだなぁ)
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/04(日) 00:26:42.56 ID:p9oHqiHT0
 
エイラ「やっぱアノ時の大尉か、名前も同じだったしなー」

敏恵「?? ということは、貴方が…?」

エイラ「サーニャの僚機、エイラ・イルマタル・ユーティライネンだ!」ドヤッ


敏恵「たしか芳佳ちゃんともっさんのこと“間が抜けてる”って言ってた…」

芳佳「!?」

シャーリー「へぇー?」ニヤ

エイラ「ッ゛!? つ、つまんないコト憶えてんな……アレは流れっていうか、冗談みたいなモンじゃないか」ギク

サーニャ「エイラ…」ジト

芳佳「エイラさん! 私間抜けなんかじゃありませんってば!?」

シャーリー「少佐にばれたらヤバいなエイラ?」ニヤニヤ

ルッキーニ「悪口よくない」

エイラ「ムァア、違う!! その話はもういいだろー!? //」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/04(日) 00:44:07.31 ID:p9oHqiHT0
まだ観ている人いたらすみません。正直書きあぐねてます
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 11:14:23.66 ID:fOfHWhfXO
見てるぞ頑張れ
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 20:28:37.94 ID:xBzgk1qwo
読んでるぞ
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 15:58:43.33 ID:c9N9YcUr0
 
エイラ「〜…そんなことより、あの日の後にこの基地でナニかあったのか? 隊のウィッチが一気にいなくなって、オマエも扶桑に戻っちゃったんだろ?」

敏恵「あー、まあね。結局ウィトゲンシュタインさんの言ってた人達が来てさ、厄介なネウロイの撃墜任務を受けて――」ポリポリ

敏恵「それであたしは負傷して送還されちゃったんだ。その後で他の皆も離れた事情は詳しくないけどね?」

エイラ「ほーん…。よく分かンないけど大変だったってコトか」

敏恵「そんな感じ」ウンウン

シャーリー「どんな感じだっての」

サーニャ「……」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 15:58:56.63 ID:Quv+X38Eo
来たな!まってたぞ!
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/10(土) 16:04:48.81 ID:c9N9YcUr0
 
エイラ「マ、とりあえずよろしくなー。ハイデマリー少佐やオマエはこの辺詳しいと思うからアテにさせてもらうぞ?」

敏恵「うん。ワッフルとか美味しいお店は任せて!」

ルッキーニ「やたー♪ いこいこー!」

エイラ「イヤそういうコトじゃないんだけど、…まあソッチも興味あるな(サーニャと2人で行きたい…)」

シャーリー「あはは、そういや工藤大尉はここにいたんだもんな? じゃあ基地の案内はいらないか」

敏恵「まあね。…あ、でも部屋割り知らない! というか結構人多いけど、宿舎とか今どうなってるの?」

シャーリー「2人ずつで相部屋だけど?」

敏恵「ぅ…やっぱりか。とほほ」ガク

エイラ「贅沢言うなよなー」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/10(土) 16:17:04.05 ID:c9N9YcUr0
 

敏恵&???の部屋


敏恵「ん〜、懐かしいなぁ」ドサ

敏恵(ここは確か……前は誰のだったかな? あたしが居た部屋と殆ど変わらないや)ウロウロ


敏恵「…はは、タンスも同じ! この足がほっそいやつで――」ガコ


敏恵「!」



敏恵「わぉ、これは…――」ゴソ


敏恵「真っ白……おズボンかな?」ピラリ

敏恵(やっぱりズボン、…私と相部屋する人のか。これは失敬)
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/10(土) 16:31:14.55 ID:c9N9YcUr0
 
敏恵「……。でも待って? この洒落っ気控えめな純白ズボン、見覚えあるような…?」ミョイーン ミョイーーン


――ガチャコ


ハイデマリー「…?」


敏恵「!?」バッ

ハイデマリー「あ、工藤さん」

敏恵(お、おぅふ…。そっか、マリのだったか…!)

ハイデマリー「…荷解きでしたら手伝いますよ? 私も出戻りの荷物整理がありますので」

敏恵「や、あのこれは何というか…。ごめん、不可抗力なの!」

ハイデマリー「?」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/10(土) 16:35:37.62 ID:c9N9YcUr0
 
――



敏恵「それにしてもマリと相部屋だなんて、これまた凄い偶然だね?(ズボン漁ったことは内緒にしておこう…)」

ハイデマリー「そうでもないですよ。私も工藤さんもナイトウィッチですから、共通の居住環境で括られるのは合理的です」

敏恵「…そっか。エイラもサーニャさんと同じ部屋だとか言ってたし」

ハイデマリー「はい。ユーティライネン中尉は厳密に専従員ではないそうですけど、501ではずっとリトヴャク中尉と夜間任務に従事されていますから」

敏恵「へぇ、なるほど。…やっぱりお熱なのかな?」

ハイデマリー「“お熱”、ですか?」

敏恵「うん。なんかルーツィアさんにくっ付いて行く時のエステルちゃんに似てる感じしない? あの2人も相部屋だったし」

ハイデマリー「…ふふ、そうかもしれませんね?」クス
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/10(土) 16:41:26.59 ID:c9N9YcUr0
 
敏恵「ん、よし…と! 取り敢えず整理は出来たかな。こっちの棚、本当に全部使ってもいいの?」

ハイデマリー「はい、私の物は十分しまえていますから」

敏恵「分かった、ありがと! んー、それじゃあ後は…――」キョロキョロ


敏恵「――? ああ、寝床が無いじゃん。布団用意しなきゃ」

ハイデマリー「! ぁ、それは…」

敏恵「ねえマリ? 敷布団って――…いや待った、ここって土足だよ。床に布団なんて敷けなくない…?」モヤモヤ

ハイデマリー「…工藤さん。それなんですけど、実は二段ベッドの供給がまだ足りていないそうなんです」

敏恵「? あ、そうなの??」

ハイデマリー「はい。それについて先程ミーナ中佐にお伺いしたんですけど、何かの事情で施設改修予算がひっ迫しているからと…」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/10(土) 16:56:30.94 ID:c9N9YcUr0
 
敏恵「えぇ…? そんなに変わった風に感じないけどなぁ?」

ハイデマリー「そ、そうですね。私も今日戻ったばかりですが、正直今の所はあまり…」

敏恵「501って意外と貧乏なのかな?」

ハイデマリー「それはないと思いますけど…。ミーナ中佐の政治手腕なら限られた予算内でも適切に運用できる筈です」

敏恵「……でも実際に今寝床が1人分間に合ってない、と」

ハイデマリー「ぅ…! は、はい。信じられませんが」


敏恵「まあ、無いものは仕方ないか。大人の事情はどうにもできないし、現実を見るとしよう」

ハイデマリー「ですがどうしましょうか、工藤さん?」

敏恵「それはもう、ひとつしかないよ? あたしもマリも立ったまま寝る程器用なわけないし――」スタスタ

ハイデマリー「…?」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/10(土) 17:19:54.40 ID:c9N9YcUr0
 
敏恵「ちょっとベッド〈そこ〉、横になってみてくれない?」

ハイデマリー「ぇ? あ、はい」



ハイデマリー「……こう、ですか?」

敏恵「うん、もう少し端に寄れる?」チョイチョイ

ハイデマリー「? …この位ですか?」ヨジ

敏恵「そうそういい感じ! …よし、それじゃあたしも――」

ハイデマリー「!?」


敏恵「いしょ…っと! どう、やっぱり狭いかな?」

ハイデマリー「ぁ、あの!? これはつまり… //」

敏恵「ん? うん。無理矢理だけどこんな感じで、一緒に使うしかないよね?」

ハイデマリー「……」

敏恵「……。やっぱり嫌だ?」

ハイデマリー「………… //」

敏恵「マリ? ねえ、聞いてる?」



――――かくして工藤敏恵と彼女を加えた501部隊、その新たな幕が開くのであった。
 
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/10(土) 17:22:06.64 ID:c9N9YcUr0
 

第三話:不一致 に続く

 
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 00:47:55.87 ID:m9kRQVtwo
とつです
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/13(火) 19:24:34.77 ID:DnRGhLZn0
 
【幕間小譚 〜阿吽の安寧〜】


―ある日の早朝―


敏恵&ハイデマリー部屋



ハイデマリー「……」パタン



ハイデマリー「……」ソロソロリ


敏恵「zz…」スヤスヤ

ハイデマリー「……」

敏恵「むん…〜……zz」

ハイデマリー(あと2時間…)チラ
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/13(火) 19:26:58.91 ID:DnRGhLZn0
 
――――

――





敏恵「zz…」

ハイデマリー(あと1時間)
 
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/13(火) 19:51:44.22 ID:DnRGhLZn0
 
――




敏恵「んん……たまごゃき…〜zz…」ムニャムニャ

ハイデマリー(…10分前。そろそろ――)ス


ハイデマリー「工藤さん、朝です」ポンポン

敏恵「んみゃぅ……むぁだ食べててもぃいんじゃ…?」

ハイデマリー「ぃぇ、あの…。それは夢ですから、起きましょう工藤さん」ユサユサ

敏恵「〜〜……、ん〜…?」ノソリ

ハイデマリー「おはようございます」

敏恵「…………。ん……おはよぅ…」ボヤァ
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/13(火) 21:38:53.59 ID:DnRGhLZn0
 
ハイデマリー「そろそろ、7時ですよ?」

敏恵「ん、ん〜〜…っと! はぁー、起きなきゃ」

ハイデマリー「お水は要りますか?」

敏恵「あ、うん。有難うマリ、布団直したら飲むから置いといて?」ノソノソ

ハイデマリー「…工藤さん、気遣いをしなくても私は平気ですから」

敏恵「え、駄目だよ。だってあたしの後で寝るんじゃ、シーツくらい代えないと嫌でしょ?」

ハイデマリー「! いえ、その…」

敏恵「ちょっと待ってね? さっと直して着替えたらすぐ出て行くから」イソイソ

ハイデマリー「……」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/13(火) 22:44:03.60 ID:DnRGhLZn0
 

―その夜―


ベルギガ上空


サーニャ「――じゃあ、工藤大尉の起床時間を待ってから寝ているんですか?」ブゥゥン

ハイデマリー「はい。多段ベッドもそのうちに来ると思いますので、工藤さんが昼型で待機中の間はどうにか…」

サーニャ「…眠くなりませんか?」

ハイデマリー「ぃぇそのっ…2人で使う訳にもいきませんし、大分早目に起こしてしまうというのも――」

サーニャ「……」

ハイデマリー「私が邪魔に入ってしまうのは工藤さんも、やっぱり窮屈でしょうし… //」フィンフィン

サーニャ「それは…、どうなんだろう?」ボソ

ハイデマリー「ぇ?」

サーニャ「ぁ、ごめんなさい…! 今のはちょっと、独り言のつもりだったんですけど――」アセ

サーニャ「…でも、私も基地に戻って眠いまま偶にエイラのベッドに入ってしまう時があるんです。それで迷惑かけてるって前に謝ったら――」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

エイラ「いやホントに気にすンなって?」

サーニャ「でもエイラ寝てるのに、私が入って来たら邪魔でしょ?」

エイラ「!! ッ……違うンだサーニャ」ショボン…

サーニャ「ぇ?」

エイラ「サーニャが優しいのは解ってるけど、そ…そんな風に思わないでくれよォ…」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



サーニャ「――という感じで、反って悲しませてしまった事があります」

ハイデマリー「……」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/14(水) 17:56:49.49 ID:zoz7/C/Y0
 
サーニャ「だから私は、なんというか……信じるようにしています」

ハイデマリー「信じる、ですか…?」

サーニャ「エイラや仲間の皆さんがしてくれるのと同じ様に、私も家族みたいに想っていいんだと。その関係というか……そういう答え方を教わった気がします」

ハイデマリー「!」

サーニャ「…優しくされるのは、きっと我慢させてしまう事だと思っていました。でも、そうじゃない場合も有るみたいすよ?」

ハイデマリー「……」

サーニャ「ぁ…す、すみません。なんだか偉そうな事言って私…」

ハイデマリー「!? いぃえ、そんな事ありません! …とても参考になりました、有難うございます」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/14(水) 18:14:31.01 ID:zoz7/C/Y0
 

敏恵&ハイデマリー部屋


ハイデマリー「……」

敏恵「zz…」スヤスヤ


ハイデマリー(前から工藤さんには力をもらってばかりで、せめて私も返せる様に振る舞うつもりだった)

ハイデマリー(こんな事でも、こうする方が工藤さんだって助かる筈だと思ってたけど…)ジー

敏恵「〜……zz」モゾ

ハイデマリー(何も言わないのに、昨日もその前も、端に寄ったまま寝てる…)



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『――マリはもうちょっと我儘になって平気だよ。あたしはほら…その、友達じゃん!』


『――きっと我慢させてしまう事だと思っていましたけど、そうじゃない場合も有るみたいすよ?』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ハイデマリー「……。ん…分かりました」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/14(水) 18:26:17.01 ID:zoz7/C/Y0
 
――



ハイデマリー「……」←着替えた


敏恵「zz…」

ハイデマリー(では、失礼します)ソーット


ハイデマリー「ん、と…」モゾゾ

敏恵「〜にゃむ……まだたべるぅ…zz」

ハイデマリー「クス…。おやすみなさい、工藤さん」










―数時間後―


美緒「数日目でもう遅刻とは大した度胸だな、私の訓練はそんなにも緩いか…?」ニヤリ

敏恵「えっとそのー……ごめんなさい。むしろその逆というか、起きられなくて…」

美緒「弁解不要!! 2人で走ってこい、今日は倍だ!」バシィッ

静夏「えっ!? 自分もですか!??」ガーン

敏恵(あぁ……マリに頼りきってたから、完全に寝坊してしまった…)


【阿吽の安寧、終】
109 :>>1 [sage]:2017/06/15(木) 00:49:05.10 ID:MlP4zSL20
また用語メモを付けるか少し悩む… φ(-×-;)
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/15(木) 19:06:53.64 ID:cX2Q+S9hO
つけれるならつけてほしいかも
111 :3話書き溜め中…… [sage]:2017/06/16(金) 01:41:43.12 ID:5UpRP5XC0
>>110
そうですよね。
独自の解釈や語彙もありますし、そもそも公式資料群の中にも齟齬があるので、どの設定を引用しているかを示す意味でも必要かもしれません。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/29(木) 21:18:05.53 ID:Fj6xjE5Do
つづきまだー
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 03:09:41.20 ID:UJAmlFUS0
 
[ざっくり!工藤敏恵メモ]

 其の一:概要なぐり書


扶桑皇国海軍のナイトウィッチ。かつての戦果は欧州で「Herrin der Nacht(夜の女王)」、母国海軍で「鎌鼬」の噂を生んだ。

小園里葉当時中佐が特設した「夜間航空審査部独立派遣飛行隊」唯一の現役ウィッチとして原隊所属。大陸東端の扶桑領にて約5年間の夜間単独専従を経験。


愛機は夜間戦闘脚“月光”シリーズ。試造型から縁があり、小園の元でテストウィッチ役も兼ねて履き続けている。

固有魔法は暗所視限定で発動する通称“超夜間視力”。赤外線波長を捉える独自感覚によって明確な夜間視やネウロイのコアを判別することができるが、明るい環境下では無理。


数か月前までカールスラント空軍への援戦武官としてハイデマリーの指揮する夜間飛行部隊に参加していた(前作:月影の構え太刀)。

もうすぐ18歳のわがままボディ。お水とお米が大好き!



……などなど、他にもありますが是非>>1記載の前スレやwiki等を読んでください。長いけど是非に!
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 03:41:27.23 ID:UJAmlFUS0
 
 其の二:ハイデマリーとの関係


サン・トロン基地で共に幾カ月を過ごした仲。

敏恵から誘い友達宣言。“マリ”とあだ名して呼び、敏恵にとって欧州で一番の友人となっている。

ナイトウィッチとして特段内向的だったハイデマリーにとっても、ただ同年代の友として寄り添われ苦楽を打ち明け合えた相手として、敏恵を大事に思っている(前作参照)。
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 03:45:44.43 ID:UJAmlFUS0
 

母国で療養を行っていた扶桑海軍の工藤敏恵は、第三次“ストライクウィッチーズ”に新参するため再びベルギガ領サン・トロン基地へと渡ってきた。


かつてを共に過ごした友人ハイデマリー・W・シュナウファー少佐との再会も叶い、ウィッチとしての再出発に発揮揚々と意気込む敏恵。

しかし、それは今の彼女にとって想像以上に困難な道となるのであった――――
 
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 03:54:54.50 ID:UJAmlFUS0
 
【第三話 不一致】


サン・トロン基地

ハンガー


『北東襲来のネウロイ群殲滅が確認されました、スクランブル解除。出撃したウィッチの帰投に備えて整備班は――』


敏恵「…うそぉ、もう倒しちゃったの!? 全部??」

小園「実績ある連中だからな、それぐらいやるだろ」カチャカチャ

敏恵「でも中型3機もいたんでしょ? こっちもえーっと…4人くらいしか出撃てないのに!」

小園「……」カチャカチャ

敏恵「というか速過ぎない?? あの辺まで普通に飛んでも今着けばいいくらいだし!」

小園「っ… #」イラ


敏恵「あ、でも向こうも近づいて来てたんだよね? いやそれにしたって凄い、3機も――」

小園「ええい燥ぐな阿呆!!」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 04:07:34.83 ID:UJAmlFUS0
 
敏恵「ちょ、何怒ってるんですか園さん?」

小園「…怒ってなどいない。お前だって大陸ネウロイの1機や2機など、朝飯前に討ってきただろうが。大袈裟に感心するな」

敏恵「でも欧州〈こっち〉の飛行型は結構強いんですよ? ライン川越えて偶に変なのも来るし」

小園「だからどうした、お前も負けていない。…ほらいいぞ、さっさとエンジン回してみろ」

敏恵「(“負け”って園さん…)…ん、じゃいきまーす」フィィン


ゴォォオォオ――


小園「もう少し回転上がるか? 無理はするな」

敏恵「あいあい」フィィィン


小園「ふむ…。よし止めろ」


――オォォ…
 
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 04:14:49.23 ID:UJAmlFUS0
 
小園「問題ないな。月光改の最適化は完了だ」

敏恵「なんか変わったんですかこれ?」

小園「以前にホルテン姉妹がこのストライカーを弄ったのだろう? 悔しいが有益な個所は残して改修してやった」カチャカチャ

敏恵「へぇ…? そういえば確かに、お尻にはビリッとこない」

小園「魔法力の増幅比は調整してある。まったく、安全制御まで除外してフルマッピングするなど正気ではない。お前をユニット諸共壊す気だったのか?」バチムッ

敏恵「あの人かなり危ないですもん、姉の方。あたし苦手です」

小園「…あれが得意な奴などいない。気に病むだけ損だ」ヨッコラセ


小園「――よし、もう脱いでいいぞ?」

敏恵「ん〜…、もうちょっと早く済んでればあたしも出撃れたのにー」

小園「阿呆、誰が許可した。さっさと降りろ」

敏恵「……はぁい」シュルル
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 04:27:48.64 ID:UJAmlFUS0
 
敏恵「もう、本当納得いかないですよ? 人の事呼んでおいて“待機”なんて!」トタッ

小園「…ここへ着いてまだ宮藤芳佳の治癒を受け始めた矢先だ。少なくとも今日の所ならば流石に私も止めるぞ?」

敏恵「違いますよ! だってなんか、哨戒にも行けないで、今更新米の子と訓練受けろって言うんですよ!?」

小園「気持ちは解るが急くな、いたち。連中も本番までには必ずお前を使う筈だ。…早々にこの地の哨戒など出来た所で、大した変わりもないぞ?」

敏恵「そんなことっ…!? 誰かの為に戦えるなら警邏だからとか関係ない!!」ズイ

小園「……」


敏恵「だってあたし、その為に来たのに! 今度こそ本当のウィッチにならなくちゃ!?」

小園「はぁ……分かった落ち着け。確かにそうだな、すまなかった」ポン

敏恵「んむぅ…」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 04:35:31.00 ID:UJAmlFUS0
 
小園「なら私からもお前の希望はよく言い伝えておく。だがそのうえで定められた事には従え、いいな?」

敏恵「……」ムスー

小園「おい腐るな、私の目を見ろ。真面目な話だ――」ペチペチ


小園「ここの奴らは決して馬鹿でも無能でもない。ちゃんと意味がある、信じろ」ジ

敏恵「……」

小園「私はお前の我儘を聞いてやれるが、しかし軍組織とは本来こういうものだ。…私や、あの菊井だってその中で折り合いをつけていたんだぞ?」

敏恵(! 菊さん…)ザワ

小園「お前もウィッチとして自立するんだろう? であれば、解るな?」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 04:51:20.46 ID:UJAmlFUS0
 
敏恵「……はぁい」

小園「ん、よしよし。賢明だ」カイグリ

敏恵「ちょ…園さん! あたしもう子供じゃないんですけど?」

小園「フッ、まあそう言うな。ちゃんと聞き分けの駄賃もやる」ゴソ

敏恵「む! だから――」


小園「ほら、受け取れ」ス

敏恵「!」


敏恵「…これって??」

小園「お前の太刀だ。一応は回収されていて私が預かっていた」

敏恵「え、これ……まさか“飯綱権現”!?」

小園「ああ。打ち直しても最早脇差だがな」

敏恵「うわぁ〜! なにこれ可愛い!!」マジマジ
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 04:58:15.56 ID:UJAmlFUS0
 
小園「立派に拵えてあるから今度は部屋にでも飾っておくといい。恩賜の宝刀を二度もネウロイに食わせたとなればいよいよ恥晒しだ」

敏恵「あ、まさか御上様にバレてる…?」ギク

小園「口外できる訳ないだろ、預けた人間にも言っていない。…鍛冶師と刀工には銘を読まれているだろうが」

敏恵「ぅ……飯綱巫女の祟りがあるかも」

小園「阿呆。そんなもの迷信だ」

敏恵(だ、大丈夫かな?)ゴクリ


小園「まあ綺麗に拵えてやったんだ、巫女の使い魔とやらも精々安らかだろう」フッ

敏恵「ごめんなさい御飯綱様、後で“ポンポンするやつ”沢山やってあげますから…」ナデナデ

小園「やめろ阿呆」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 05:04:08.63 ID:UJAmlFUS0
 
小園「……さて、ここでの役は終えた。私ほもう発つぞ」

敏恵「へ? なんで、園さん居てくれないんですか?」ポカン

小園「ああ、それはもう私の領分ではない。次の予定もあるんでな」

敏恵「えぇ〜〜!? 冷たいっ!」

小園「ふん、甘ったれが。さっさと自立しろ」クル

敏恵「むぅ〜…」

小園「……。気張れ工藤」

敏恵「!」


小園「お前ならやれる。…やってみせろ」スタスタ



敏恵「……はいっ! あたし頑張りますからー!! ありがとう園さーん!」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 06:13:59.08 ID:UJAmlFUS0
 
[ざっくり!解説メモ]


 扶桑刀“飯綱権現”

5年前のカールスラント撤退戦下の働きによって敏恵に与えられた恩賜の刀。中世前期の戦巫女“飯綱使い”由来の一振りらしい。
拵もせず独自で補強した白鞘のまま愛用していたが、特異型某ネウロイとの決戦で切っ先の半分は“取り砕かれ”てしまった。(前作参照)

小園の伝手によって残った刀身を小太刀(と短刀の間くらい)として打ち直し、ついに拵も施された!


 刀にポンポンするやつ

打粉〈うちこ〉をかける作業のこと。手入れ手順のひとつ
下拭いを行った後に白くて丸いあれでポンポンしてから上拭い――……詳しくは割愛するのでググろう!

ただ、間違っても徒に“ポンポン”をすればそれで良い訳ではない。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 06:27:05.39 ID:UJAmlFUS0
 
滑走路


小園「……坂本か」スタスタ


美緒「御疲れ様です」ペコ

小園「…ふん、私の去り際にお前とはな?」ジロ

美緒「中佐は別件で見送り出来ませんので、私が引き受けました」

小園「そんな物を頼んだ覚えはない」プイ

美緒「!」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 06:37:18.82 ID:UJAmlFUS0
 
小園「…察しているか知らんが、私意あって私はお前が特段に好かない。勝手無礼は承知しているからさっさと出て行く」

美緒「……」

小園「ではな」スタスタ




美緒「――…舞鶴にいた頃」

小園「…?」ピタ


美緒「北郷先生から聞いた事を憶えています。かつて共に飛び、我々後続にも倣って欲しいと仰っていた、扶桑ウィッチの話です」

小園「!」

美緒「私は先生が語ったその者を、今でも尊敬しております」


小園「……」


美緒「……」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 06:47:41.00 ID:UJAmlFUS0
 
小園「…お前は船でも漕いでいたのか?」

美緒「は?」

小園「1人ではない、2人だ。そのウィッチを語るには外せない相棒がいるのだよ、阿呆め」

美緒「し、失礼しました…」

小園「ふん、だがしかしそんな世辞はどうでもいいさ。どう語った所でお前の言う“其奴”はもはや敬える人間でもない」

美緒「……」

小園「…………。工藤の面倒を見るなら、宜しく頼む」ボソ

美緒「はい」



小園「――…ぃゃ、やはり心配だな」クル

美緒「?」

小園「本当はお前にまで頼りたくなどないんだが……一応、必要十分な情報は与えておくか」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 19:43:09.11 ID:+gjqq0mjO
お疲れ様
メモあると分かりやすくていいねやっぱり
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:17:34.17 ID:UJAmlFUS0
 
[ざっくり!人物メモ]


 小園里葉

海軍大佐の元ウィッチ、25歳。工藤の新米時代からの上司
扶桑初の夜間戦闘脚“月光”シリーズの開発を推進、監督する人物。

現役最盛期の頃は使命感と自信に溢れる優秀なウィッチであったが、舞鶴在籍時に慕っていた北郷章香に左遷されたという誤解とその後扶桑海事変での北郷部隊の活躍によって、激しい挫折を感じると伴に歪んだ向上心を持ってしまう。
皮肉にも同じ階級まで上り詰めた後で北郷との誤解は解けたが、その成果の為に工藤敏恵を“魔導麻薬症”に貶める結果となった。(前作:幕間余話)

尊敬する先輩と関係修復はしているものの、世間で脚光を浴びたり天才・スーパーエースなどと呼称されるウィッチには嫉妬混じりの嫌悪感を示すもよう。
敏恵はそれを「園さんの英雄〈ヒーロー〉コンプレックス」と呼ぶが、超怒られるので本人には絶対言わない。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:26:19.60 ID:UJAmlFUS0
 

芳佳&静夏の部屋


芳佳「わぁ、綺麗な色ですね!」ポワァァ

敏恵「んっふふ〜♪ そうでしょ?」

静夏「合口拵ですね? とても凝ったつくりで青漆〈せいしつ:緑色〉塗りが凄く素敵です」

敏恵「そうそう! 竹筒みたいで可愛いでしょ?」

芳佳「あ、私知ってます。“たけみつ”って言うんですよね?」

静夏「…いえ、それは全然違います(鈍らを模した拵なんて縁起悪過ぎる…)」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:34:09.69 ID:UJAmlFUS0
 
敏恵「えへへ、月光履いたあたしは差し詰め“かぐや姫”ってことかな? 園さん珍しく良いセンスじゃ〜ん」ニヤニヤ

静夏(“園さん”? )ピク



静夏(ぞの……? 月光…――)モヤモヤモヤ



静夏「――…!! まさか、海軍の小園里葉大佐ですか!?」ガガーン

敏恵「ふぃ!? な、何が…?」ビク

静夏「そ、それ…つい先ほど頂いた物だと仰っていましたが、小園大佐に!?」

敏恵「? うん、そうだけど」

芳佳「静夏ちゃん? その小園さんって人がどうかしたの?」ポァァ

静夏「どうかしたって、“救国世代”の大物ですよ!?」

芳佳「??」

静夏「扶桑海事変の本当北方防衛では凄くすごい活躍をして、この欧州でも恩賜の実績を残されている! そして扶桑初の夜間戦闘脚開発を推進し、実現した方ですよ!? 知らないんですか!?」アセアセ

芳佳「ぅ、うん。ごめんなさい」

敏恵「はは、それ園さんが聞いたら喜びそう(欧州のは殆どあたしだけど)」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:39:00.69 ID:UJAmlFUS0
>>131誤字訂正

本当北方防衛 → 本島北方防衛
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:44:52.25 ID:UJAmlFUS0
 
静夏「こうしてはいられません! 父上の名を汚さぬよう、私も海軍ウィッチの端くれとして、恐れ多いですが御挨拶申し上げないと!」スクッ

敏恵「あ、でも園さんもう行っちゃったよー?」

静夏「な…!?」ズコ

芳佳「扶桑に戻ったんですか?」ポワァァ

敏恵「と思うけどー……わかんない。なんか用事があるみたいなこと言ってたかな」


静夏「――…ん、コホン! 仕方がありません。御挨拶はまた次にします //」イソイソ

敏恵「あたしから何か言っておこうか?」

静夏「い、いえそれは…。機会が有れば自分でやりますので」

敏恵「遠慮しなくてもいんだけどなぁ」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:47:20.26 ID:UJAmlFUS0
 
静夏「…それよりも工藤大尉、そろそろ向かわなくては坂本少佐の訓練に遅れそうです」

敏恵「ありゃ、もうそんななの! …芳佳ちゃん?」チラ

芳佳「ぁはい、そうですね。今日の治癒魔法はこのくらいで十分だと思います」シュルル

敏恵「ありがとね。んし…っとぉ!」ノソリ

芳佳「お腹の傷跡の方はまた夜に診ますね?」

敏恵「うん、よろしく! じゃあ行きたくないけど、行こうか服部ちゃん?」

静夏「了解であります」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 05:17:41.19 ID:EDldUG2a0
 
[ざっくり!解説メモ]


 救国世代のウィッチ

扶桑海事変が起きた1937〜38年に最盛期を迎えたウィッチのこと。
当時の二十歳から下は十五歳、と結構に幅が広くてあやふやである。

実際には“軍神”北郷章香や“扶桑海の巴御前”こと穴拭智子など戦時を代表したヒーロー達を基準に、いつしか世間の女子学生達が括って呼んでいるだけのこと。
一応、該当するウィッチとして江藤敏子、黒江綾香、加藤武子、加東圭子など。
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 05:23:55.77 ID:EDldUG2a0
 
基地野外


美緒「さて、今日は工藤が新たに加わったという事でお前達の練度を測った訳だが――」

敏恵「……(まさか落水試験までさせられるとは…)」ビッショリ

美緒「先ず服部、満点はやれんが概ね良く出来ていたぞ? 任務参加へ移る前段階としてこれからは演習を詰めていく」

静夏「はいっ! 有難うございます!」キビッ

敏恵(おぉ服部ちゃん……もっさんに褒められてる! 海兵校の選良生って本当だったんだ)


美緒「…そして、工藤」チラ

敏恵「――! へぃ!?」ギクッ


美緒「お前も申し分ない。体力面にやや不安は残るが、基礎を含めた必要技能は高い水準で習得済みだな」

敏恵「(ぉ…? おおっ!!)ぇ、えっへへ〜、どうもー //」

静夏(流石、小園大佐の子飼いと噂だった“海軍の鎌鼬”…!)チラ
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 05:35:45.86 ID:EDldUG2a0
 
美緒「…少し魔法力を使ったが麻薬症〈ちょうし〉はどうだ? 飛べそうか?」

敏恵「はい! すこぶるオッケー、異常ないです!」ブイ

美緒「そうか」

敏恵(ふふん♪ これならあたしも直ぐ任務に出撃られるね! とりあえず夜間哨戒かな?)ワクワク

美緒「……。よし、では今日の残りは2人で模擬演習だ。明日からも後半は実践的な訓練を中心にやっていくぞ?」

敏恵「えっ」

静夏「了解!」

美緒「ではハンガーへ移る、駆け足!!」

静夏「はい!!」ダッ


敏恵「…? ちょ……??」

美緒「どうした大尉、後輩に遅れるな。さあ走れ」

敏恵「いやあのっ…ま、待ってくださいもっさん!?」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 05:48:36.80 ID:EDldUG2a0
 
美緒「何だ? やはり飛ぶのは無理か?」

敏恵「そんな事ないですし!! あたし訓練なんか必要ないですよッ!?」ズイ

美緒「……」

敏恵「さっきの試験でもう分かったんでしょ!? 素人じゃないんだし、501のウィッチとして働けますってば!」

美緒「…本当にそうか?」

敏恵「は!? な、なん…??」


美緒「お前を実戦に出して、本当に平気なんだな? 工藤大尉」

敏恵「ッ…!! ば、馬鹿にしてます? これでもあたし5年間単機で戦ってたし、最近はこの辺のネウロイも倒しましたけど…? #」

美緒「知っている」

敏恵「それじゃあなんで?? まさか部下の訓練相手させる為に呼んだんですか!?」

美緒「勿論違う。落ち着け」

敏恵「だったら坂本さんこそ落ち着いて考えてくださいよ!? あたしはウィッチとして、今度こそ、守るためにここへ来てるんです!! #」クワ


美緒「……」

敏恵「っ〜〜!」グヌヌー


美緒「…はぁ。よし分かった、そこまで言うなら示してみろ」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/01(土) 22:23:18.65 ID:EDldUG2a0
 

ハンガー



――ガション


敏恵「へへ、久々の飛行だ!」フィィン ピョコ


静夏(あれが夜間特化型戦闘脚、月光…)チラ チラ

美緒「準備は良いかお前達?」

敏恵「この機銃って13ミリですよね? あたしの九十九式と十八試三号は?」

美緒「模擬弾すら無い物を使えるか。塗料弾丸の用意があるのはその模擬戦銃だけだ」

敏恵「そっか…了解。じゃあこれ、もう一丁使っちゃおう」ハシ

静夏「えっ! 片手で扱うつもりですか!?」

敏恵「? うん、あたし放出〈シールド〉の魔法制御は下手だけど循環〈こういうの〉は得意なんだよね」ジャッ

敏恵「身体強くしたり、反動制御なら負けないよー? 昼間でだってナイトウィッチのお姉さんは強いんだから!」ニヘヘ

静夏「は、はあ…?」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 22:34:04.84 ID:EDldUG2a0
 
敏恵「…で、坂本さーん! 服部ちゃん倒したら認めてくれるんですよね?」

静夏「!? えぇっ……わ、私と工藤大尉で一騎打ちですか!?」ガビンッ

美緒「違う、そんな訳ない。服部はお前の味方だ」

敏恵「…? 味方って、じゃあ誰と模擬戦するの??」

美緒「待っていろ、お前を測るに相応しい相手がもう直ぐ来る」


――スタスタスタ


バルクホルン「すまない、待たせたか少佐?」

敏恵「…!」

静夏「!!?」


美緒「いや平気だ。急に呼んですまないな」

バルクホルン「私は構わないがミーナはぼやいていたぞ? また勝手に何か始めるのか、と」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 22:43:54.00 ID:EDldUG2a0
 
美緒「わっはっはっ! 施設予算を使い込んだ件ですっかり信用を失ってしまったな」

バルクホルン「…いや少佐、私も笑い事ではないと思う。大浴場は確かに有難いが――」

美緒「まあそれについては後で聞く。こちらの準備は出来ているからお前もストライカーを履いてくれ」

バルクホルン「ああ、まあ……そうだな(誤魔化された?)」


敏恵「あのー、もっさん? まさかあたしの相手は…」

美緒「うむ、そいつだ。手強いぞ?」

バルクホルン「ハイデマリー少佐から実力は聞いている。よろしく工藤大尉」トタ

敏恵「おぉー…501の戦闘隊長さんと模擬戦…!」

静夏(む、無茶だっ!! あのハルトマン中尉に次ぐ世界トップエースの一人ですよ!?)ゴクリ
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 22:56:51.09 ID:EDldUG2a0
 
バルクホルン「さてと…。ハルトマン以外とやるのは久々だな」フィィィン ピョコ


バルクホルン「――…ん? 私の機銃が一つ足りないようだが」

美緒「ああ、それはさっき“隣の奴”に取られたぞ?」

バルクホルン「なに?」チラ

敏恵「え?? …あ! これ戦闘隊長さんの分だったんですか!? 横にあったからつい…!」アタフタ

バルクホルン「……なるほどそうか。ナイトウィッチは重火力が好ましいからな、お前も両手持ちをするのか?」

敏恵「えぇと、まあ…はい。でもこれ返します、ごめんなさい」

美緒「いやそいつはくれてやれバルクホルン。ハンデも必要だ」

敏恵(…っ! は??)カチン

バルクホルン「いいだろう、私は構わない」

敏恵(な、なにくそぉ〜!? こうなったら絶対に勝ってやるっ!!)

美緒「よし、では始めるぞ? 両陣営出撃!」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 23:02:23.64 ID:EDldUG2a0
 
――――
――




基地上空



――ブゥゥウンッ


敏恵「くっ…!! いまいち上手くいかない、もうずっと攻めてるのに…!」ダダダッ

静夏「工藤大尉、やはりバルクホルン隊長はわざと追われているのでは? 逃げに徹しられては普通に追い込むのは難しいかと思います!」゙

敏恵「違う! そんなのじゃなくてっ……出来る筈なの! あたしに任せて!!」

静夏「す、すみません…」






バルクホルン「――……少佐の言った通りだな。“ちぐはぐ”というか、確かに酷い」ブゥゥン

バルクホルン(だが実際それでも油断できない腕だ。…いったい“夜の女王”とやらはどれだけ高いレベルだったのか――)


美緒『大尉、聞こえるか?』ガザ


バルクホルン「…! ああ、聞こえてる。この調子なら向こうの弾切れまでやれるがどうする?」

美緒『いやもう十分だ。終わらせていい』

バルクホルン「そうか。……了解した」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 23:12:26.49 ID:EDldUG2a0
 
――



静夏「――…進言します工藤大尉!! 二手になりましょう!」ブゥゥン

敏恵「えっ!? や、でも服部ちゃんは…!」

静夏「大尉達の戦いに私如きが出しゃばる気はありません! しかし囮くらいはやらせてください、出来ます!」

敏恵「……わ、分かった。気を遣わせてごめん!」

静夏「とんでもありません! 自分がこのまま追いますから、大尉は――」


敏恵「――…!? 服部ちゃん、マニューバッ!!」クワッ


静夏「ぇ? …えっ、戦闘隊長が消えた!?」




ダダダダンッ



静夏「!?」ベシャシャ

敏恵「服部ちゃ――」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『あかんっっ! 皆逃げぇ!!』

『菊井ぃいーーッ!!!』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



敏恵「――っ゛…!!」ゾクッ
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 23:24:12.89 ID:EDldUG2a0
 
静夏「な…?? これは!」



――ビュゥウォン


バルクホルン「すまないな軍曹」ブゥゥン


静夏「ぅ、後ろに!? そんな…! まさかマニューバ機動をしながら、狙い撃つなんて!?」

美緒『服部軍曹被弾確認。速やかに戻れ』ガザザ

静夏「っ……申し訳ありません大尉。離脱します…」ブゥゥン

敏恵「服部ちゃん…!」


バルクホルン「さて。そろそろこちらも攻めるぞ工藤大尉、覚悟はいいか?」


敏恵「くぅっ…! な、なにくそぉー!!」


――――
――
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 23:27:42.53 ID:EDldUG2a0
 

ハンガー


敏恵「…………」ベッチョリ

静夏「ぁ、あの工藤大尉…」


バルクホルン「――用事は済んだことだし、私はもう戻るぞ少佐」トタ

美緒「ああ、助かった。せっかくだから所見でも話してくれるか?」

バルクホルン「…いや、私から言うことは何もない」スタスタ


敏恵「……」
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