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敏恵「今度こそ、ストライクウィッチーズ!」
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188 :
>>1
[sage]:2017/08/18(金) 21:50:06.49 ID:ethE49LG0
>>187
自慰というか惰性でやり始めたせいで前回みたいに終わり方まで組み立ってないので……書けば書くほど蛇足を生やしている気がしてならなんのです
ですが確かにここまで読んで頂いてブツ切るのも酷いのでなんとか次話までやってみます。
今暫くお待ちくださいm(_ _)m
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/18(金) 21:57:38.42 ID:vCpGK6HWo
困ったら小ネタとかでもいいんだよ
文章好きだからやめないでほしい
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/18(金) 22:00:20.23 ID:ethE49LG0
(;×;)
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/18(金) 22:13:28.68 ID:kJ7xEvb2O
頑張れ、キャラとしていい子だし真面目にやってくれてるなと思う
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/22(火) 23:39:13.47 ID:LrOpK2i90
ウィッチとして復帰をしたものの、航空任務参加を許可されない工藤敏恵は夜間ネウロイ討伐への無断出撃を強行した。
国境付近で暗躍するネウロイのもとへ逸早く辿り着く敏恵だが、かつての様な実力を発揮できず、万事休すに陥る。
すんでの所でハイデマリーの魔法シールドに助けられるが、追い詰められていた敏恵はその光景を過去と重ねて錯乱してしまうのであった――――
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/22(火) 23:42:07.56 ID:LrOpK2i90
【第四話 傷の錘】
敏恵「いやだっ!! マリ、まりぃぃいッ!!!」
ハイデマリー「工藤さん!! どうしたんですか工藤さん!?」
敏恵「ぁあっ……あぁぁ…ッ……〜〜」シュルル
ハイデマリー「!?」
敏恵「〜…」フラッ
ハイデマリー「わっ!! あ、あの…!?」ダキッ
敏恵「…・・ 」
ハイデマリー「えっ…? ぇ、工藤さん??」
敏恵「 」
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/22(火) 23:46:58.50 ID:LrOpK2i90
――ブゥゥウンッ
エイラ「2人ともナニやってんだよ? 危ないじゃないか」
サーニャ「…! 工藤大尉!?」
エイラ「――ちょ!? 大尉やられちゃったのか!?」
ハイデマリー「い、いえ! 攻撃は私が防いだんですけど、突然気を失って…!」オロオロ
エイラ「ハァ?? な、ナンで…?」
ハイデマリー「わた、私にもわかりません!!」
サーニャ「ハイデマリーさん、落ち着いて…」
敏恵「 」
ハイデマリー「っ…工藤さん! しっかりしてください、工藤さん!?」
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/22(火) 23:52:09.56 ID:LrOpK2i90
ネウロイ「……〜」ギラッ
エイラ「――!」キュピン
エイラ「危ね!!」バッ
ビィィイイーーーーッ
パァァアンッ
エイラ「クッ……久々シールド張ったけど、アイツのビーム重いな…!」
サーニャ「――! 不味いわエイラ、対岸〈むこう〉側のネウロイもこっちに来はじめてる」フィィィン
エイラ「ゥ…、例の地上型か!? もうナン体か飛べるようにしてあったのか!」
サーニャ「そうだと思う。残りの群も沿岸際から狙われるとここも危ないかもしれない」
エイラ「どうする指揮官! 今のウチ先にアイツをやっつけるか!?」
ネウロイ「……」ゴゥン ゴゥン
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/22(火) 23:57:17.47 ID:LrOpK2i90
ハイデマリー「…て、撤退します」
エイラ「え、ナンだって!? 放置すンのか!?」ガーン
サーニャ「エイラ、従いましょう? 大尉を抱えてハイデマリー少佐も戦えないわ」
エイラ「イヤでも…今ならワタシとサーニャで倒せるだろ?」
サーニャ「エイラ!」
エイラ「!? さ、サーニャ…?」タジ
サーニャ(ハイデマリーさんは工藤大尉が心配なの。仲間の救助を優先しなきゃ)フルフル
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/23(水) 01:23:28.67 ID:3GO0Y1rR0
エイラ「……わ、ワカッタ。じゃあ撤退だな」
ハイデマリー「すみません、ユーティライネン中尉…」
エイラ「気にすンなって、それより早く大尉を連れて逃げよう。その後どうするかは中佐達に任せればイイさ!」
ハイデマリー「はい。……ではすみませんが、工藤さんをお願いします」グイ
エイラ「エ? ぁ、ウン。いいけど…」ヨイセ ヨイセ
ハイデマリー「…殿は私が、あの飛行型を牽制します。ユーティライネン中尉は工藤さんを連れて安全圏まで離脱してください!」キリ
エイラ「お、オウ…」
ハイデマリー「サーニャさん、私の砲撃を合図に対岸一帯にフリーガーハマーを! その後はユーティライネン中尉に付いて警戒護衛をお願いします!」グ…ジャギン
サーニャ「了解」
ハイデマリー「では、いきますッ!!」
ドォオオンッ――――
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/23(水) 01:27:56.11 ID:3GO0Y1rR0
――――
――
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/23(水) 01:30:29.52 ID:3GO0Y1rR0
―翌日―
サン・トロン基地
ミーナ「……」
美緒「ふむ…」
ハイデマリー「も、申し訳ありませんでした。全部私の責任です…」
シャーリー「あー…いやまあ気にしないでさ? 大した事じゃないって、ですよね中佐?」
バルクホルン「責任云々についての話で無責任な擁護をするな、シャーリー」ジト
シャーリー「ぐっ! ……そりゃ悪かったね」プイ
ミーナ「……。両大尉は退室していいわ」
シャーリー「ん?」
バルクホルン「なに? どうしてだミーナ?」
ミーナ「いいから、喧嘩は外でやりなさい」ジロ
バルクホルン「!?」
シャーリー(…やばい。なんか中佐、マジで機嫌悪い?)ギクリ
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/23(水) 01:33:42.81 ID:3GO0Y1rR0
美緒「……お前達ちょっと来い」スタスタ
ミーナ「坂本少佐!」
美緒「解っている中佐。直ぐ戻る」
バルクホルン「…?」
美緒「出ろ、2人とも」グイ
シャーリー「あ、あの〜…??」ヨロヨロ
ガチャ
バタン
ハイデマリー「……」
ミーナ「…ごめんなさいね」
ハイデマリー「!」
ミーナ「貴方に苦労を強いてしまって。…まさか工藤大尉がそんな無茶をするなんて」
ハイデマリー「ミーナ中佐?」
ミーナ「美緒の危惧した通りだわ…」ボソ
ハイデマリー「ぇ…?」
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/23(水) 21:03:52.11 ID:3GO0Y1rR0
――ガチャ
美緒「……」パタム
ミーナ「…2人には何て言ったの?」
美緒「うむ。工藤の名誉の為、まだ全ては聞かせられんとな」スタスタ
ミーナ「ありがとう少佐。でも反って意味深ね、それだと」
美緒「怒気で誤魔化そうとしたお前が言うな。少し余裕を持て」
ミーナ「……ごめんなさい」
美緒「フッ…いや、個人的に私もまだ役立てる分には構わんがな?」
ハイデマリー(坂本少佐?)チラ
美緒(お前も、あまり気に病むな。察してやってくれ)クイ
ハイデマリー(…! はい)コク
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/23(水) 21:07:02.89 ID:3GO0Y1rR0
ミーナ「えぇと、それでハイデマリーさん? 小園大佐が貴方に伝えた話というのは…」
ハイデマリー「あ、はい。その……“工藤さんのPTSDが再発しているかもしれない”と」
美緒「なに、心傷障害だと?」
ハイデマリー「…原因になった出来事については聞いてませんが、工藤さんは元々ネウロイに対して強い恐怖心があったと思います」
。
○
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
敏恵『あたしはネウロイなんかと戦えない!! 怖くて、本当に怖くて嫌だったのにッ…!』
敏恵『――こんな所もう離れて、家に帰りたい…』
小園『工藤には暗示をかけていた。あいつの抱えたトラウマを取り除き、戦える動機を与えてやった』
小園『ああしてやらねば――…奴が抱える恐怖体験を取っ払ってやる術が最善だったんだ』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○
。
ハイデマリー「……小園大佐がマインドコントロールによって、その恐怖心を強制的に抑えていたそうです」
美緒「それは、流石に初耳だ…」
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/23(水) 21:14:03.94 ID:3GO0Y1rR0
ミーナ「誰かさんが教示した薬物強化兵士〈よこしまな〉プロジェクトの転用ね…。マインドコントロールと言うより厳密には暗示と洗脳だった筈よ」
美緒「詳しいな中佐?」
ミーナ「…前にハイデマリーさんから相談された時に、ちょっとね?」
ミーナ「昔当時の“新薬強壮剤”試験で偶発した魔導麻薬症のウィッチ、そのリスクをどうにか利用しようと考案された手段よ。そもそもの段階で当然破綻した計画みたいだけど」
ハイデマリー「……」
ミーナ(あの元帥直下のホルテン中佐なら、その辺り知らなくなかったでしょうし…)
美緒「そんな話があったとはな」
ミーナ「ただ、工藤大尉が“夜の女王”になってしまったのは不幸な偶然でしょうね」
ミーナ「あの頃は軍用メタンフェタミンに対する危機意識もまだ薄かったし、…きっと大佐も状況に迫られて投与した結果だったんだと思うわ」
美緒「…成る程。その状況とやらに陥った一時で心的外傷を負ったのか」
美緒(流石にそこまでの事情は聞かされていない。大佐は私を快く思ってないから無理ないが――)チラ
ハイデマリー「……」
美緒(“そっち”の解決は彼女に託した、という訳か)
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/23(水) 21:18:17.49 ID:3GO0Y1rR0
ミーナ「施した処置の善悪は別にして、大佐は工藤大尉が暗示から脱却したことでまたトラウマに晒される影響を危惧していたんだわ」
ハイデマリー「で、ですがそれは既に克服した筈なんです! 魔導麻薬症の副作用も治癒魔法で抑えられているのに、どうしてあんな事に…!?」
ミーナ「…いいえ、残念だけど多分克服はできてない。だから過剰防衛に走ったんだわ」
ハイデマリー「!? 過剰、防衛…?」
ミーナ「一口にPTSDと言っても、それによって引き起こされる行動は“逃げる”だけじゃないのよ」
美緒「まあ、そうらしいな。根幹症状として不安、回避、そして追体験であるというのは聞いた事あるが」
ミーナ「ええ、だけどあらゆるケースにおいてそこから先は様々――」
ミーナ「…彼女には実績と経験、つまり自信が有り得たから、トラウマに対して“積極的な”回避症状が出たのね」
ハイデマリー「そ、そんな違います!? そういうのではなくて……工藤さんは自分で打ち勝って、それで戦う意思を決めたんです!」
美緒「……」
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/23(水) 21:24:09.47 ID:3GO0Y1rR0
ミーナ「ハイデマリーさんがそう言うならそれも真実かもしれないわね。でもその使命感のいくらかはPTSDによる脅迫よ」
ミーナ「ネウロイの討伐に固執して勝手に出撃したのもそう。…貴方も昨夜現場で何か感じたんじゃない? 恐らく普通ではなかったでしょうから」
ハイデマリー「ぅ…! そ、それは――」タジ
ミーナ「……」
ハイデマリー「――…………。はぃ」
ミーナ「はぁ…、参ったわね」ガク
ハイデマリー「……」ショボン
美緒「よせ中佐、我々が呼んだんだぞ?」
ハイデマリー「! 坂本少佐…」
美緒「私が名を挙げ、お前が決めた。今の工藤をどう扱ってやるかは我々の責任だ」
ミーナ「……ええ。だから困ってるの」ハァ
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/23(水) 21:34:46.90 ID:3GO0Y1rR0
美緒「ふむ…。よし分かった、中佐は少し休め」
ミーナ「え? ちょっと――」
美緒「工藤大尉は私が様子を見てみる。報告するまで気にするな」スタスタ
美緒「取り敢えずこの場はもういい、少佐。出よう」ポン
ハイデマリー「…? あ、あの」オド
美緒「心配するな。行くぞ」
ハイデマリー「は、はい…」テクテク
ミーナ「……」
美緒「いいな中佐? 我々に任せて一息つけろ」ピシ
ハイデマリー「…失礼、します」ペコ
ガチャ
パタム…――
ミーナ「……。はぁ…もぅ」ギシ
ミーナ(私、そんなに余裕なくしてるかしら…?)
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/23(水) 21:40:35.26 ID:3GO0Y1rR0
廊下
――パタム
美緒「…さて。私はこれから工藤と話そうと思うんだが、シュナウファー少佐はどうする?」
ハイデマリー「ぁ…、……えっと…」
美緒「ん、いや無理に答える必要はない。すまないな」
ハイデマリー「……」
美緒「お前も少なからず参ってるんだろう? 一先ず落ち着き、頭を整理してから動いてみるといい」
ハイデマリー「すみません…」
美緒「中佐の様子については大目に見てやってくれ。あいつも色々まあ、背負っているんだ」
ハイデマリー「…はい、それは十分理解しています。責任ある御立場ですし、きっと私なんかよりも苦心されている筈です」
美緒「……。優しいな、少佐は」
ハイデマリー「ぃ、ぃぇ。そんな…」
美緒「――だが、優しさだけでは足りない時もある」
ハイデマリー「ぇ?」
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/23(水) 21:45:27.75 ID:3GO0Y1rR0
美緒「ついさっき私がミーナにしたように、厳しく切る事も必要だ。優しく在るのなら尚更な?」
ハイデマリー「……ですが、それは…」シュン
美緒「フッ、どうした“友”なのだろう? 勇気を持て」ス
ハイデマリー「! 坂本少佐…」
美緒「お前のやり方でいい、友を信じて打つかってみろ!」バシィ
ハイデマリー「ぁぅ!?」ビクッ
美緒「はっはっはっ! 私も工藤〈あいつ〉をきっちり扱いて来る、残りは頼むぞ少佐!」スタスタ
ハイデマリー「……。…………」サスサス
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/23(水) 21:46:51.54 ID:3GO0Y1rR0
また少し空きます(・×・)
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/23(水) 22:07:41.02 ID:R4CXR+D0o
おつかれさまです
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/26(土) 17:19:16.35 ID:cWq8stjT0
敏恵&ハイデマリー部屋
美緒「おい工藤、いるか?」ガチャコ
敏恵「……」
美緒「とっくに起床だ、目を覚ませ」テクテク
敏恵「……。嫌だ…」モゴ
美緒「起きているな? 布団から出ろ、ちょっと来い」
敏恵「…ご飯は後でいいです」モゴゴ
美緒「いいから速く出ろ」
敏恵「っ〜〜…あたしは、ナイトウィッチなんですぅ〜… #」モゾモゾ
美緒「……」
敏恵「こんなんじゃ……こんな筈じゃなかったのに〜〜ッ…! ##」モゾモゾモゾ
美緒(鬱ぎ込んだ訳ではなく悔しさか。シュナウファーの言う通り決意は確かなようだ、これなら望みも有るか?)
敏恵「〜……」
美緒「……」
敏恵「…………やっぱりお腹空いた」モゴモゴ
美緒(謎の図太さは有るな…)
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/26(土) 17:25:53.83 ID:cWq8stjT0
美緒「食事は後だ。どの道もう片付いてるだろう」
敏恵「……。なにそれ、酷すぎる…」バサ
美緒「自業自得だ馬鹿者。昨日の続きを話すからついて来い、外へ出るぞ」
敏恵「えぇ……〜寝癖直してからじゃダメですか?」ムクリ
美緒「顔を洗って水でも飲め」
敏恵「ぅ〜…」
基地 野外
敏恵「……」ホケー
美緒「ほれ、少しはシャキッとしろ」ペチペチッ
敏恵「ぃぷっ! ちょ…ほっぺ叩かないでくださいよぉ!?」
美緒「呆けてる場合か、お前に差し迫ってる問題なんだぞ?」
敏恵「む、んぅ…」サスサス
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/26(土) 19:26:43.94 ID:cWq8stjT0
美緒「昨夜起きた件は私も聞いた。お前が何をしでかしたかも含めてな?」
敏恵「!? ゃあの、それはそのっ…!」アタフタ
美緒「…まあそこに関しては、今はいい」
敏恵「――…え、いいの?」
美緒「後で別の奴に叱ってもらえ。それより私の話は戦術の、お前の歪〈いびつ〉についてだ」
敏恵「昨日の? ……確か“あたしがあたしに追いつかないといけない”ってやつ?」
美緒「そうだ。今のお前は三位〈さんみ〉の均衡が著しく崩れている。その所為で存在する二人の己にお前は振り回されてるんだ」
敏恵「は? …??」ポケ
美緒「本来ならばそれは“理想と現実”という形で現れたりする。私も新米の頃は経験したし、教官を務めた折にもよく見た」
美緒「つまり身体も技術も付いて行かないんだ。みな理想は有れどもそれらの研鑚にはどうしたって時間が要るからな?」
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/26(土) 19:32:09.02 ID:cWq8stjT0
敏恵「……えぇっと、結局坂本さん、やっぱりあたしは実力不足って言いたいんですか?」ポリポリ
美緒「いいや違う。お前の練度は昨日の試験と、なによりお前が自負する通り実績がその確かさを裏付けているだろう」
美緒「――にも拘わらず、その実力が発揮できないのは身体や技術以外に重要なもう一つ……精神面の遅れが原因だ」ビシ
敏恵「!! せ、精神ん…!?」ガビーン
美緒「そうだ」
敏恵「……もっと根性出せってぇー…ことですか??」
美緒「そんな事なら一々説明しなくとも、この竹刀でお前の尻を引っ叩けばいいだけなんだがな?」ス
敏恵「――ひ!?」ビク
敏恵「いやだっ!」トタタッ
美緒「…。だから“違う”という意味だ、戻って来い」
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/26(土) 19:36:19.28 ID:cWq8stjT0
――
―
美緒「…昨日やった模擬戦を憶えているか? 工藤」
敏恵「あ、はい。一応」←戻って来た
美緒「あの時お前は調子が出せないと言ったが、それは無理もない事だ」
敏恵「?」
美緒「お前の言う本調子の姿とは誰だ? 海軍の鎌鼬――…いや、夜の女王としてネウロイを討ち周っていたお前か?」
敏恵「えっ」
美緒「ならばその頃と比べ、今のお前が何を変えたか分かるか? …それが歪を生む根元になったものだ」
敏恵「……? ………〜」モヤモヤ
敏恵「――!! あっ、えぇ…!?」ハッ
美緒「分かったか?」
敏恵「まさか…、魔導麻薬症〈マギードジング〉!?」
美緒「うむ。そうだ」
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/26(土) 19:47:06.16 ID:cWq8stjT0
敏恵「で、でもちょっと待って!? 確かにそのっ…アレのおかげで強くなってたみたいですけど――」ズイ
敏恵「だけどあたし、具合悪くなるからって魔法を抑えて戦ったりもしてたけど、こんなの一度もッ…!?」
美緒「私もお前の患っている奇病について詳しい訳ではないが、恐らく自分の意志で止めるのは無理だったのだろう」ドウドウ
美緒「起伏はあれど基本的にお前は魔導麻薬の影響を受け続けていた筈だ。常に魔法力を行使する戦闘ともなれば、その時の集中力諸々はおよそ尋常ではないな」
敏恵「っ…!」
美緒「…とはいえ身を亡ぼす疾患だ、“今の”お前の方が間違いなく正しい。そこは勘違いするな?」
敏恵「わ、分かってますよ。大丈夫です」
美緒「そうか、ならいいが……こうして歪が出たという事は、今の治療で完全抑制は出来ているんだろう。良かったな?」
敏恵「え? まぁ、はい。…でもあたし、どうすればいいんですか?」
美緒「うむ。まさにそれが本題だ、よく聞け」スタスタ
敏恵「……」
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/26(土) 19:52:38.36 ID:cWq8stjT0
美緒「いいか? あらゆる所作を極める為には相応の身体能力と技術、そして精神の力が不可欠だ」ザッ
敏恵「…! ぇ!?」
美緒「動くな? …シッッ!!」ブンッ
ビュッッッ――
――ピタ…
敏恵「いッ!!?」
美緒「心と技と体、この三位によって揺るぎのない完成度が保てる」スス
敏恵「……〜あぁ、危な…?!?」ヨロ~ ドテッ
美緒「はっはっはっ! いや驚かせてすまんな? だが万が一にもミスはない」
敏恵「〜〜ッ!?(眉間て人中〈きゅうしょ〉だよね…? 全然笑えないから!!)」ガーン
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/26(土) 19:58:13.10 ID:cWq8stjT0
美緒「この芸自体に意味はないが…解るか工藤? 要は今のが、かつてのお前だ」
敏恵「…? えっとつまり、その心技体がなんか…ばっちりだったってこと??」ノソノソ
美緒「ああ。但し外道ではあったがな」
美緒「本来ならば経験と共に培うべき心の強さ、それをお前は自身の麻薬効果で代用していたんだろう。…そしてその欺瞞を取り払った結果が今だ」ビッ
敏恵「……」
美緒「頭の中にはかつて熟していたイメージが有れど、まるで上手くいかない。だから焦り、力む――」
美緒「そうしてお前の考える本調子から益々遠ざかり、終いには有り得んような失敗。…昨夜も大凡こんな感じだったろう?」
敏恵(すご…、本当にお見通しなの?? なんかちょっと怖い…)
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/26(土) 20:06:30.18 ID:cWq8stjT0
美緒「どうだ、違うか?」
敏恵「えぇ、まあ。…そうです」グヌ
美緒「ふむ…そうか。やはりな」
美緒(難儀な奴だ。PTSDの件も相まって激烈なストレスだったろう、気絶で身を守れたのは幸いだな)ジー
敏恵「っ……坂本さん! 今のあたしにできることを教えてください!!」
美緒(しかしこうしてなお正気を支えるのは工藤の意志だ。何かは知らんが、こいつ自身の戦う決意は本物か。…これは小園さんやシュナウファーを信じるべきだぞミーナ?)
敏恵「何かあるんでしょっ!? だってここに呼ばれたんだから!!」ズイッ
美緒「その通りだが落ち着け。これから話す」
敏恵「さっきもそう言った! 回りくどいっ!! 園さんはもっと短いのに!!」
美緒「昨日はそれで反発しただろ。大佐は“工藤はよく口答えする”と仰っていたぞ?」
敏恵「そ、それは! 〜んだって園さん、理由とか聞かないと説明してくれないんだもん…」
美緒「だから順序立てて説明しているだろ?」
敏恵「……そ、そっか。ごめんなさい」
美緒(小園さんの言う通り、不思議と愛嬌はあれど軍属向きではないな? 滅茶苦茶な奴だ)フッ
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/26(土) 20:14:57.37 ID:cWq8stjT0
美緒「…まあはっきり言ってお前の置かれている状況は非常に特殊で厄介だが、それ故に救いも有る。安心しろ」
敏恵「! 本当に!?」
美緒「ああ。よくあるジレンマと違い、お前の歪は精神面の遅れが主だ。つまり三位のうち技と体の練度はかつてのお前に程近い」
敏恵「ぉ? おぉ…??」
美緒「所謂“身体は記憶している”ということだ。だからこそ今の状況に陥っている、解るな?」
敏恵「ほー……つまり?」モヤ
美緒「……。はぁ、やれやれ」
敏恵「あ、もっさん! 阿保って言わないでくださいよ!?」
美緒「…要するに、お前の考える“実力”は八割がた発揮できる。そういうことだ」
敏恵「!! ……えっ、でも八割だけ!?」
美緒「集中力や判断力、思い切る決定力等は運動神経や技量の向上にも影響する。そもそもに魔導麻薬の作用でお前は動体視力や反射神経すらも底上げしていたそうだな?」
敏恵「えぇっと…難しい話は憶えてないですけど、多分…?」
美緒「正確無比の砲撃や、正面のビームを紙一重で躱しながらの肉薄という妙技はもう流石に厳しいだろう。特に後者の難易度は尋常でないから止めておけ。私の経験則だが、半端なうちは危険なだけだ」
敏恵「ぅ…、そうですか。魔法力の流し込みは決め手にしてたんだけどなぁ…」ニギニギ
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/26(土) 20:23:51.94 ID:cWq8stjT0
美緒「戦い方――…というよりお前は考え方を変えてみろ、工藤」
敏恵「へ?」
美緒「今のお前が熟せる戦術と己の在り方を正しく理解すれば、本当の実力もまた正しく発揮できる」ポン
美緒「――そしてその為に私はお前を指導するんだ」
敏恵「!」
美緒「いいな、もう愚図るなよ?」
敏恵「…はいっ、よく分かりました!」グッ
美緒「うむ、よし。……これで残る問題はあと一つか」
敏恵「――えっ、まだ何かあるんですか!?」ガーン
美緒「残念だが有る。しかし私の役はお前の訓練指導だ、それは後で教えてやろう」
敏恵「な、なに!? 気になる!」
美緒「…さて訓練だ! 昼過ぎまでに形にするぞ、気合入れろ?」
敏恵「待ってもっさん!? 気になるってば!」
美緒「時間無いぞ! ハンガーへ駆け足!!」ビシッ
敏恵「いや聞いて!?」
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/26(土) 20:25:24.02 ID:cWq8stjT0
今日はここまで φ(・×・)
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/26(土) 21:29:24.54 ID:cZsxiCWSo
乙なんだナ
あと今日は坂本さんの誕生日
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/29(火) 21:48:44.15 ID:GzALDD4D0
芳佳&静夏の部屋
リーネ「そんなに大変な事情が…」
芳佳「でも良かったじゃないですか! ちゃんと復帰できるって事ですよね?」ポワァァ
敏恵「うん、まぁそうだけ――んぁ…!」ヘニャリ
敏恵「ぃ芳佳ちゃん? なんかちょっと、魔法力重くなってきた…//」
芳佳「えっ、あれ? …少し長くやり過ぎちゃったかも」シュルル
敏恵「ぁふっ… //」
芳佳「ご、ごめんなさい敏恵さん!? また時間空けてからやりますから、先にお腹の傷跡を診ていいですか?」
敏恵「〜ぅん。でも今のは今ので気持ちよかったかも…」ヨッコラショ
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/29(火) 21:55:45.89 ID:GzALDD4D0
リーネ「……あの、ところで工藤大尉?」
敏恵「んー?」クイー
リーネ「私も今のお話を聞いちゃって、大丈夫なんですか…? 偶々ここに居ただけなのに…」
敏恵「えぇ? あー…うん、べつにいいよ。隠して居辛くなったら嫌だし」ハイ オナカ
リーネ「……」
芳佳「――えっとそれで、訓練の方は上手くいったんですか?」ポワワァ
敏恵「うん。改めて“カン”は掴めそうだし、調子は出てきたかなぁ」
芳佳「そうですか、よかったですね!」
敏恵「……。ん…」
リーネ「?」
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/29(火) 22:01:36.39 ID:GzALDD4D0
芳佳「どうかしましたか?」
敏恵「あ、いや。…ネウロイの前でも同じように出来るのかなって」
芳佳「ぇ?」
リーネ(…!)
敏恵「――ぁ、あはは! なんてちょっとか弱いふりしてみたけど、どう? 乙女過ぎた?」ケロ
芳佳「…? よく分かりませんけど、前向きな方が敏恵さんらいですよ」ポワァァ
敏恵「はは…。……まぁ、そうだね」
リーネ(工藤大尉…)
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/29(火) 22:08:49.75 ID:GzALDD4D0
芳佳「ん〜…なんだろ、また急に腫れてる?(もう癒合してるけど、ばい菌が触れて炎症したのかな?)」シュルル
芳佳「――ちょっと、医務室から消毒薬とか借りてきます」スク
敏恵「ぇ? ぁぁ、うん」
芳佳「すぐ戻りますから、ちょっと待っててください」トテテ
ガチャ―― パタム
敏恵「…? あれ、今芳佳ちゃん何て言ってた??」ポケ
リーネ「……」
敏恵「まいいか。……ふぅ」クテ
。
○
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
敏恵『トラウマって…!』
美緒『何があったかは無理に話さなくていい。それをお前の心が錘としてしまっている』
敏恵『……そっか。あの時の、菊さんのこと…』
美緒『もう自分でも解っていると思うが、ネウロイを意識したお前は到底平静を保てていない。まして実物と対峙した結果が昨夜の様だ』
敏恵『っ…』
美緒『致し方無いうえ過酷だと私も思う。だがそれでもお前が志を遂げたいのならこの訓練だけでなく、“それ”を越えろ』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○
。
敏恵「……」
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/29(火) 23:19:32.81 ID:GzALDD4D0
リーネ「あの…?」オズ
敏恵「! ぁごめん、今何か言った?」
リーネ「は、はぃ。……私なんかが、余計なことかもしれませんけど――」
リーネ「その……きっと大丈夫ですっ!」ムン
敏恵「…?」
リーネ「私も実戦で上手く出来なくて、ずっと独りで悩んでいました。でも芳佳ちゃんのおかげで乗り越えられたんです」
リーネ「なので、その…誰かと一緒だからできることもあると思うので、諦めない方がいいです!」クワッ
敏恵「!?」ビク
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/08/29(火) 23:26:31.55 ID:GzALDD4D0
リーネ「――ぁ…す、すみません! 生意気なこと言って…」オド
敏恵「ぁや……ううん、励ましてくれたんだよね? ありがとう」
リーネ「ぃぇ、そんな…」
敏恵「へへ、リネットさん優しい。あたし元気になっちゃった!」
リーネ「そ、そうですか// それは…良かったです、大尉」ペコ
敏恵「あっ! もうそんな遠慮しなくていいから!? 階級なんて関係なく普通に呼んで?」
リーネ「ぇ? はい。…それじゃあ、私も“リーネ”で大丈夫ですから」
敏恵「おぉ、本当に!?」
リーネ「はい」
敏恵「わーお、やった! リーネと友達になった!」
リーネ「あはは…」
芳佳「ごめんなさぁい、お待たせしま――」ガチャコ
芳佳「…!(なんか敏恵さん盛り上がってる、リーネちゃんと仲良くなったのかな?)」
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/29(火) 23:35:23.58 ID:GzALDD4D0
リーネちゃんをちょい出しつつ今日はここまで(・×・)
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 19:00:01.93 ID:3Y39Dbw50
敏恵&ハイデマリー部屋
ハイデマリー「〜…、ん…」ノソリ
ハイデマリー(…結局、眠ってしまった)スチャ
ハイデマリー「――! ぇ、もうこんな時間…?」
ハイデマリー「……」
ハイデマリー(こんな寝てる場合じゃないのに、私…)モヤ
ハイデマリー「……。ヴァルトラウト中佐が来たあの時は“皆さん”がいてくれた」
ハイデマリー(だけどもう、今回は私独りで工藤さんを…――)
。
○
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
エステル『偶にはガツンと言ってやれば良いんですよ』
〜〜
美緒『優しさだけでは足りない時もある。頼むぞ』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○
。
ハイデマリー「…どうすれば――」
『〜…はぁ、さてと』
ハイデマリー「!」ピク
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 19:05:02.36 ID:3Y39Dbw50
『マリ、まだ寝てるかな?』
ハイデマリー「ぁ…! ぅ…ぇと――」アタフタ
ガチャコ
敏恵「お?」ソロリ ソロリ
ハイデマリー「……」
敏恵「これは…?」
ハイデマリー(わ、私はいったい何をしてるんだろう!? こんな逃げる真似ばかりして…!)
敏恵「……。んー…」ジー
ハイデマリー「っ… //」
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 19:09:02.10 ID:3Y39Dbw50
敏恵「……」ツンツン
ハイデマリー「ッ! //」ビクッ
敏恵「…?」ホッペプニ~
ハイデマリー「ッ…、っ… //」モゾ
敏恵「ふむふむ…。やっぱり」
ハイデマリー「……」
敏恵「マリ、普通に起きてるよね?」
ハイデマリー「……はぃ」モゴ
敏恵「そのぉ、なんか、気まずいのは解るんだけどさ? …メガネ掛けたままだし、それだと直ぐバレるよ?」
ハイデマリー「ぅ… ///」
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 19:19:24.05 ID:3Y39Dbw50
――
―
ハイデマリー「……」
敏恵「――マリ♪ 着替えなくていいの?」トサ
ハイデマリー「……」
敏恵「あー…じゃあ、お腹空かない? 何かつまみに行こっか!」
ハイデマリー「……」
敏恵「えっと…まぁ、もし面倒臭いならあたしが此処に持って来よ――」
ハイデマリー「……」
敏恵「――……。ん、んん……(ダメか、やっぱ昨日のこと気にしてる…)」ムグ
ハイデマリー「…工藤さん」チラリ
敏恵「! ぅ、うん。…なに?」
ハイデマリー「私は、工藤さんのことがちゃんと知りたいです」
敏恵「ぇ?」
ハイデマリー「……教えてくれますか? 私に」ジ
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 19:23:34.43 ID:3Y39Dbw50
敏恵「ぁ…う、うん。勿論いいよ?」
ハイデマリー「なら聞かせてください。5年前のカールスラントで何があったんですか?」
敏恵「!」
ハイデマリー「何が貴方を、傷つけてしまったんですか?」
敏恵「……そ、その話かぁ…」
ハイデマリー「……。すみませんでした、やっぱり――」
敏恵「あ! ぃいいって、大丈夫だから!? ちゃんと教える!」オロオロ
ハイデマリー「……」
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 19:30:31.57 ID:3Y39Dbw50
敏恵「はぁ……あれだよね? 何で昨日みたいになっちゃったかマリも聞いたんでしょ?」
ハイデマリー「はい。中佐達から伺いました」
敏恵「そっか。…いやぁ参っちゃうね、今更トラウマで戦えないなんてさ」
ハイデマリー「工藤さん…」
敏恵「…………。初めてネウロイに襲われた時、庇ってくれた先輩が死んだんだ」
ハイデマリー「!?」
敏恵「あたしの目の前でね、眩しい筋が遮った瞬間その中で――」
敏恵「何て言うのかな……影みたいな、塵みたいな姿が確かに見えた。…気がしたの」
ハイデマリー「……」
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 19:33:48.95 ID:3Y39Dbw50
敏恵「まるで何も無かったみたいに消えちゃってさ。全然意味が解らなくて、信じたくなかったんだけど――」
敏恵「…菊さんは死んだ、消し飛んだんだって園さんに怒鳴られて。もう無理だった」
ハイデマリー「それは…っ、残酷ですね…」
敏恵「べつに園さんは悪くないよ。とにかくネウロイをどうにかしなくちゃいけなかったし、隊長だったんだから」
ハイデマリー「そうかもしれませんが、でも…」
敏恵「…菊井さんは園さんの親友なの。本当はあたしなんかよりずっとショックだったと思う」
ハイデマリー「!」
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 19:42:11.39 ID:3Y39Dbw50
敏恵「そんなに一緒じゃなかったけど、あたしも菊さん好きだった。明るい人で優しくて、ネウロイが来たあの時も、怯えるあたしを園さんと励ましてくれてた」
敏恵「っ……あの時、先にあたし達を庇ったから! だからあたしは…!!」ギリ
ハイデマリー「…負い目を、感じているんですね?」
ア
敏恵「――……。うん、多分それもある…。でも何よりもう嫌だった」
敏恵「友達とか、あたしの側にいて欲しい人があんな風に……いなくなるなんて」ジワ
ハイデマリー(工藤さん…。だからリーパーの時も、それで貴方は昨夜――)
ニギ…
ハイデマリー「!」
敏恵「〜ッ、ごめんねマリ…。あたし…っ……今度は自分でなんとかしたかったのッ…!」ポロポロ
ハイデマリー「……」
敏恵「だって出来ると思ったからッ……〜っ…そうじゃないと、あたし…〜ぇぐ……〜ッ」
ハイデマリー「…解りますよ工藤さん、どうか安心してください」
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 19:50:14.09 ID:3Y39Dbw50
敏恵「ぅ…ぅうっ……」エグエグ
ハイデマリー「工藤さんの本音をやっと聞くことができました。…だから――」
ハイデマリー「今度こそ私も、貴方の力になりますから」
敏恵「〜ぇうッ、……まりぃ…」
ハイデマリー「さあ、涙を拭って。よく聞いてください」
敏恵「っ…、……ぅ…ぅん。うん…」グシ
ハイデマリー「……。っ… //」
敏恵「…?」グス
ハイデマリー「工藤さん」スス
ヒシ…
敏恵「!」
ハイデマリー「貴方は、その……。わ、我儘です」ギュ
敏恵「ぇ…!?」
ハイデマリー「とても親切なのに、自分勝手で…。どうして周りを置いて行ってしまうんですか?」
敏恵「ま、マリ…」
240 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 19:57:12.58 ID:3Y39Dbw50
ハイデマリー「私も工藤さんと戦います。私が貴方の側にいるんです」
ハイデマリー「――…だから少しくらい、我慢もしてください」
敏恵「……」
ハイデマリー「……」ヒシシ
敏恵「…………ん、分かった。ごめんねマリ」
ハイデマリー「約束です。もう絶対、“独り”にならないで…。一緒に乗り越えましょう」
敏恵「うん…」
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 20:09:35.90 ID:SKALhD1N0
ハイデマリー「――…いきなり驚かせてすみませんでした」スス
敏恵「へへ…ぃゃ、こんなに温かく叱られたのは初めてだし… //」
ハイデマリー「工藤さんは厳しくされるの嫌なんですよね? 私も強く言うのは苦手ですから」
敏恵「ぁはは、その通り……。でも今回の上官命令には文句言えないね」ポリポリ
ハイデマリー「…! 違いますよ工藤さん?」
敏恵「え?」
ハイデマリー「“軍とかウィッチとかそういうの関係なく、女友達として”…ですよ?」
敏恵「…? あっ!」
ハイデマリー「憶えていますか?」
敏恵「……えっへへ、参っちゃうなぁ。あたしの台詞 //」
ハイデマリー「いいえ、“私達の”です。独り占めしない約束ですよ?」ニコ
敏恵「でゅ…!? な、なにもぉ〜! 急に遠慮なくなっちゃってマリってば〜!」
ハイデマリー「ふふ」クス
242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/18(月) 20:14:11.66 ID:SKALhD1N0
敏恵「むむむ、楽しそうにしちゃってぇ…。〜そりゃ!」フニュ
ハイデマリー「ふゃ! ひょ……く、くどぅひゃ…!? ///」
敏恵「笑顔がまだ硬いよ? ほぐしてあげる、それそれ!」ムニムニ
ハイデマリー「ぁぅ…す、すみまぇんでしっ……ゃめてく… ///」
敏恵「お〜何ですか〜? よく聞こえませんよぉ?」ウリウリ
廊下 部屋前
エイラ(な、なにイチャついてンだよアイツら…)フィィン ←未来予知で覗き見
サーニャ「工藤大尉はどうエイラ? 入っても平気そう?」
エイラ「……」チラ
サーニャ「?」
エイラ(サーニャ…)ジー
サーニャ「??」
エイラ「ぐっ…!(ぅ羨ましくナイ、羨ましくなンかナイぞ!! #)」ミシミシミシ
サーニャ「ぁ、エイラ!? ドアノブが…」
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/20(水) 19:22:53.58 ID:sMLj56xJo
お、来てた!
毎回クオリティ高い作品乙です
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/22(金) 09:40:06.58 ID:JfFvlenl0
[ざっくり!解説メモ]
未来予知の応用
エイラ・ユーティライネンの固有魔法“未来予知”はその直後の行動によって予知した未来を避ける事が出来る。
>>242
で中尉が行った覗き行為はこれの応用で、以下の仕組みで“ドアを開けた後”の景色を透視した。
ドアを開けようとする → 未来予知 → ドアを開けない(未来回避)
菊井
敏恵が初遣欧で配属された航空戦隊で知り合ったウィッチ、当時19歳で故人。
小園里葉とは腐れ縁で訓練生時代からの仲。同い年にも拘らず多感な時期にあった彼女の女房役を務めた。
扶桑がネウロイ侵略から逃れてなお戦う道を選ぶ小園に付き添い欧州へ行くが、カールスラント撤退戦下にネウロイのビームを諸に浴びて消滅、死亡した。
遺体は残らなかったが、母国実家のある兵庫加西郡某所の家墓にて先祖と一緒に供養されている(家系長男ではないが遺族の意向にて)。
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/22(金) 09:42:33.76 ID:JfFvlenl0
執務室
ミーナ「――待ちなさい。それ本気で言ってるの?」
敏恵「勿論です! この辺には偶にやって来るけど、昨日の“でか輪っか”もやっぱり普通のネウロイじゃない」
敏恵「カールスラントや大陸扶桑でもそうでしたけど、ああいうの放っておくと絶対ろくな事になりません! さっさと倒した方がいいです」
ミーナ「ええ、その点については私も同意見よ。残念ながら日中の哨戒に捕まらなかった以上、今夜改めて夜間討伐任務を組むわ」
ミーナ「…だけど工藤大尉? 貴方がそれに参加したいと言うのはちょっと、どうかしらね?」
バルクホルン「……」チラ
シャーリー(うん。流石にあたし等は何も言えない)フイフイ
美緒(ふむ…)
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/22(金) 10:02:34.32 ID:JfFvlenl0
ミーナ「大尉は自分が昨晩何をしたか理解してる?」
敏恵「ばっちりしてます!」
ミーナ「……。なのに直ぐまた同じ“危険”を犯したい、そういう認識でいい?」ジト
ハイデマリー「ミーナ中佐、あの――」オズ
敏恵「自分で言うよマリ、大丈夫だから」スッ
ハイデマリー「工藤さん…」
ミーナ「……」
敏恵「仰りたいことは本当に解ってます、隊長さん。だから今度こそあたしも役に立って、それで責任を取ります!」
ミーナ「…それは貴方が決められる事じゃないわ」
敏恵「はい、だからお願いします! やらせてくださいっ!!」バッ
シャーリー(おーおー…。なんかメチャクチャだけどガッツあるなぁ)
バルクホルン(少佐といい宮藤といい、扶桑海軍は何というか……まさか服部も実はこうなのか?)モヤ
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/22(金) 10:11:52.52 ID:JfFvlenl0
ミーナ「…今度は徒な逸りじゃないというのは解ったわ。でも現実貴方にはもう少し、時間が必要な気がするけど?」
敏恵「そうかもしれません。だけどここで逃げたら……昨日の後悔を晴らさないとあたし、変われない気がする!!」
ミーナ「それは自分の為ってことよね?」
敏恵「っ…! そ、そうです。あたしと、あたしの大事な人の為――」チラ
ハイデマリー「!」
敏恵「それからこの隊の一員として認められる為に。…隊長さんだってそれが望みでしょ?」
シャーリー(中佐相手に開き直ったなぁ…)
バルクホルン(しかし繕うよりはよっぽど信頼できる。後はミーナがどう判断するか)
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/22(金) 10:19:34.42 ID:JfFvlenl0
ミーナ「……。坂本少佐、意見を聞かせて」
美緒「そうだな、戦術面での問題は少ない。元々の練度に申し分は無いので今朝からの訓練だけでも十分出来る様にはした」
美緒「後は本人の“心”次第だが、こればかりはやってみない事には分からんな?」チラ
ミーナ「…つまり?」
美緒「いずれ出撃す気なら、今やろうと同じ事だ。準備が万全だろうと結局は最初に壁を越えねばならん」
美緒「つまり挑戦を躊躇う限り工藤は“肥やし”のままだぞ、中佐?」ニッ
ミーナ「……」
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/22(金) 10:26:50.92 ID:JfFvlenl0
敏恵「…? ぇ、ちょっと待ってもっさん? 今あたしのことウンチに例え――」オズ
ミーナ「工藤大尉」
敏恵「――! ぁ、はっ、はい!? すみません!」シャキッ
ミーナ「私は何よりこの隊の命を預かる身として、間違った判断を下す訳にはいかない」
敏恵「……」
ミーナ「責任どうこうを気にする必要は無いわ。但し今夜、貴方にやれるのね?」ジィ
敏恵「それはー…まあ、まだ無理そうですけど」ポリポリ
ミーナ「――ぇ!? …??」
敏恵「でもマリと、みんなと一緒なら絶対できますから! やりますっ!」グッ
ミーナ「……」
敏恵「ね? マリ」チラ
ハイデマリー「はい、そうですね」コク
ハイデマリー「…ミーナ中佐、坂本少佐。工藤大尉はもう大丈夫です。私達で乗り越えますから」
美緒(ふむ、これは…。正直どうかと思っていたが小園さんの目論見は当たったか?)
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/22(金) 10:33:35.97 ID:JfFvlenl0
ミーナ「…なるほど、分かったわ。いいでしょう」
敏恵「!」
ミーナ「夜間チームにライン沿岸国境に潜伏する特異型ネウロイへの攻撃を命じます」
ミーナ「ハイデマリー少佐は今夜2300時にリトヴャク中尉以下“3名”全員を率いて出撃しなさい。作戦および現場指揮は任せるわ」
ハイデマリー「…はい! 了解しました」
敏恵「お、おぉー!! 有難うございますミーナさん! やっぱりいい人だったんだ!?」ヤター!
ミーナ「……」
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/22(金) 10:40:14.70 ID:JfFvlenl0
美緒「フッ、いや落ち着け中佐? ああいう奴だが決して悪気はないんだ」ポン
ミーナ「…はぁ、はいはい。べつに何も言ってないでしょ?」ガク
バルクホルン「――しかし本当に平気なのか少佐? 私から見ても、昨日の模擬戦では結構危な気だったが…?」テクテク
美緒「ん? ああ、もうあの時点からは見違えてまともだぞ。今やればお前の演習にもなるかもしれないなバルクホルン?」
バルクホルン「ほう、ハンデ無しでか? それは言い過ぎじゃないか少佐?」
美緒「はっはっはっ! まあ、そのうち試してみろ」
シャーリー「ヘーイ! よかったな工藤?」ポンッ
敏恵「んへへ、ありがとシャーリー」
シャーリー「でも気を付けなよ? 2人が来る前に話してたんだけど、今のところ周辺基地からもネウロイが来たって情報はまだ無いらしいんだ」
敏恵「へ?」
ハイデマリー「…そうですか。だとするとやはり向こうは…」
シャーリー「ええ。待ち構えてそうですね」
敏恵「んん? どうして解るの??」
252 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/09/22(金) 10:45:04.84 ID:JfFvlenl0
シャーリー「え? あー、だって昨晩も敵は空飛ぶ“脚つき”を作ってたんだろ?」
敏恵「うん。作ってたっていうか、地上型を飛べるようにしてた感じだけどね」
シャーリー「そいつらがまだこっちに侵攻して来ないんだよ」
敏恵「ほうほう? …??」チラ
ハイデマリー「あのネウロイ達によると疑われる最近の襲撃パターンでは、今日の日中にも表れておかしくない筈なんです」コク
敏恵「ん、んー…それが来てない。ということは…?」チラ
シャーリー「まあだから、つまり迎撃態勢とられたかもしれないってこと。向こうもまたあたし達がちょっかい出しに来るつもりで“待たれてた”ら厄介かも」
敏恵「!? なにそれ不味いじゃん!」ガーン
シャーリー「うん。だから気を付けた方がいいよって」
敏恵「えぇ……。ねえ、シャーリーも一緒に出撃ない?」
シャーリー「いや、あたし夜間はちょっとなぁ…。一応スクランブル鳴ってもすぐ行けるように寝とくよ」
敏恵「あ、うん…。なんかごめん」
ハイデマリー「――…ですがあまり憶測ばかりで悲観するのも危険です。先ずはミーナ中佐に情報を確認してからブリーフィングをしましょう」
253 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/02(木) 19:39:02.01 ID:PBhM9KlT0
―22:40―
格納庫
敏恵「――ん、よし!」ピッ
ハイデマリー「工藤さん、その服…!」
敏恵「へへ、そうだよ。夜空四隊の時と同じ特製一種服! もうボロいけど、やっぱこれの方が気持ち入るや」
ハイデマリー「……工藤さんのシンボルですもんね?」
敏恵「うん。これを着てた“夜の女王”は負け無しだったから、あたしもね」
ハイデマリー(工藤さん…)
整備兵「――大尉殿、出撃準備完了しました!」タタッ
敏恵「ぉ、速い。高さ調整もしたんですか?」
254 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/02(木) 19:46:54.82 ID:PBhM9KlT0
整備兵「固定解放時に沈む分ですよね? 援戦武官でいらした頃から自分がみてますから、完璧ですよ」
敏恵「んー、やっぱりマリの隊員さんは優秀! 昨日は嘘ついてごめんなさい」ペコ
整備兵「いえ、また御任せ頂き光栄ですよ。隊長(※ハイデマリー)の担当は整備士長班が譲りませんし、バルシュミーデ少尉達もいなくて暫く手持ち無沙汰でしたから」
ハイデマリー「…小園大佐のご指示もあって“月光”の整備には私の隊員を中心にした専属チームを組んでいます」
敏恵「へぇ…! ぇなに、じゃあ武器整備とかも?」
整備兵「大尉の扶桑製機銃だけこっち〈欧州〉用にイニシャライズされてませんから。持ち回りでやるより効率いいです(それに貴女よく投棄するし、壊すし…)」
敏恵「ふーん? そっかぁ」
整備兵「えぇと、それでですね大尉殿? 隊長の御指示通り五式機銃の弾薬は魔導炸榴弾を装填しましたが、支給数が少なく予備弾帯もありませんので注意して下さい」
敏恵「うん分かった。 じゃあいつもの徹甲弾も持って行こう、十八試三号は?」
整備兵「……昼間のうちに回収済みですが、案の定銃身がイッてました」
敏恵「のっ!? おぅ…」ギク
整備兵「残念ながら“また”一時返還でしょう」
敏恵「でゅぁあ不味い、園さんに怒られる…っ!!」
ハイデマリー「し、仕方ありませんよ工藤さん?」
整備兵(いや、投棄を止めればいいだけでは…)モヤ
255 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/02(木) 19:57:18.36 ID:PBhM9KlT0
敏恵「……まぁでも、とりあえずいいか。もう独りでやっつける訳じゃないし、五式の一門だけでも…」
ハイデマリー「そうですよ工藤さん?」スス
整備兵「!」
ハイデマリー「作戦通りで大丈夫ですから」サス
敏恵「…うん、だね。先ずはそこから頑張るよ」
ハイデマリー「はい。私が付いていますから、頑張りましょう」ニコ
敏恵「ん…!」ニッ
整備兵「……」マジマジ
整備兵(なんだろうか、何か凄く役得をした気がする!)
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/02(木) 20:04:44.62 ID:PBhM9KlT0
ベルギガ東端 某空域
エイラ「ホントに大丈夫なのかー? あんな自爆しといて、昨日の今日でさ」ブゥゥン
サーニャ「エイラ、その話はもうブリーフィングで…」
エイラ「まーそうだけどさぁ、扶桑のウィッチってなんか頑固だし。無理してるンじゃないか? 止めとくなら今のウチだぞ?」
ハイデマリー「……」
敏恵「大丈夫! 多少の無理は承知済みだから」
エイラ「イヤそういう意味じゃなくてナ…」
敏恵「それにもう分は弁えてるし、マリの作戦もあるから上手くいくよ。というかいかせる!」
エイラ「……ンー、じゃあ今夜だけは付き合ってヤルけど、気を付けろよ大尉?」
敏恵「了解りょーかい♪ ありがとうエイラ」
サーニャ「――! 敵の群れを捉えた、けどやっぱり……ハイデマリー少佐」フィン
ハイデマリー「…そうですね。皆さん一度停まって下さい」
エイラ「ン、了解」
257 :
>>1
[saga sage]:2017/11/02(木) 20:14:10.54 ID:PBhM9KlT0
更新していますが書き溜めている訳ではないので、あしからず
258 :
>>1
[saga sage]:2017/11/03(金) 13:21:16.91 ID:bvWmYT4K0
と言いつつ書き溜め始めたのでまた後日に更新を予定します(・×・)
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/03(金) 13:24:45.58 ID:BWBUJIRQo
オー来てた!
久しぶりに読めてよかったいつもありがと!
260 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/03(金) 13:52:21.44 ID:bvWmYT4K0
>>259
ありがとうございます
正直もう誰も見てなくても
>>300
前くらいまで書くつもりだったので頑張ります
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/07(火) 12:21:37.08 ID:nCFbU3ovO
来てたか、工藤さんを上手く使いこなしててすごいと思う
262 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/09(木) 20:34:59.06 ID:34aYX2co0
敏恵「なになに、どうかしたのマリ?」~フワ
ハイデマリー「……昨日より数が多いです」フィン フィン
サーニャ「展開してるみたいですが、動きはありませんね?」
ハイデマリー「やっぱり待ち構えられています」
敏恵「あー…、シャーリー達が言ってた通りかぁ」
エイラ「ナンだよ、やっかいそうだな」
ハイデマリー「いえ大丈夫です。それでもこちらの想定内である限り問題ありません」
敏恵(おぉ…頼もしさというか、凄い自信。マリも半年前とは見違えたよね)
ハイデマリー「サーニャさんとユーティライネン両中尉、それに工藤さん。…私が経験した中でも抜出る夜間戦力です。必ずやり遂げます」
サーニャ「……」
エイラ「オ、オゥそっか。ウン…(なんかすげー意気込んでるけどどうしたんだ…?)」
敏恵(あでも、もしかしてあたしの為に気負ってる? …なんだ、そういう所は相変わらずじゃん)フゥ
263 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/09(木) 20:43:53.62 ID:34aYX2co0
敏恵「あ〜マリ? 今の台詞、元サントロンの皆が聞いたらショックかもよ?」
ハイデマリー「ぇ…? あっ、いえ!? そういうつもりで言ったつもりは無くて…!」アセ
敏恵「あはは、なんちゃって! 茶々入れてごめん」
ハイデマリー「く、工藤さん。こんな時に…」
敏恵「まあまあ、そう熱くなり過ぎずにさ? どうせこれから緊張するんだし」ゴソソ
敏恵「ん…」パク
ハイデマリー「…!? ぇ、工藤さん??」
敏恵「〜〜…? む、点かない。ルーツィアさんこんな上空でどうやって――」カシュカシュカシュ
エイラ「オイ大尉、ココでそんなモノ…」
サーニャ(たばこ…?)
敏恵「〜……。ふぃ〜〜…」
264 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/09(木) 20:47:08.18 ID:34aYX2co0
ハイデマリー「あ、あの工藤さん!? それは…??」
敏恵「えへへ、あたしも実は吸っちゃう人だったんだ。まあ“あの魔法”なしでどうしても不安を抑える奥の手みたいな感じ?」
ハイデマリー「……」
敏恵「ふぅ〜…。ごめんね、こういうのに頼ってるあたしが偉そうなこと言って」
敏恵「でもさ、なるべく落ち着いて行こうよ。“あたし”みたいに失敗したら嫌じゃん?」
ハイデマリー「工藤さん…」
敏恵「〜〜、ぷぃー〜…!」クシャシャ
敏恵「――さてと!」ペィッ
エイラ(あ、コイツ今…)
サーニャ(ポイ捨てした)ジー
敏恵「…それじゃ、行こっか」
265 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/09(木) 20:50:30.59 ID:34aYX2co0
――――
――
―
ネウロイ「……」ゴゥンゴゥン
ハイデマリー「確認できますか工藤さん?」ブゥゥン
敏恵「…うん、群れの一番奥手に隠れてる。急所〈コア〉まではっきり視えるよ」
エイラ「ホントに分かるんだな、大尉」ホエー
サーニャ「……夜じゃないと無理なんですよね?」
敏恵「まあね。明るいとそうみたい」
エイラ「便利だけど変な固有魔法だなー?」
ハイデマリー「…では作戦通り、中尉達は目標以外への陽動と殲滅をお願いします。敵が乱れた隙に特異型は私達が」
エイラ「了解。サーニャ、正面から横へ抜けてくから援護頼む」ブゥゥン
サーニャ「うん」ブゥゥン
266 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/09(木) 21:12:00.23 ID:34aYX2co0
敏恵「……。エイラ達大丈夫かな、あんな大群…」
ハイデマリー「大丈夫です、お二人の能力なら十分過ぎるでしょう。恐らくその気なら彼女達だけでもこの場を攻略可能な程だと思います」
敏恵「そんなになんだ、そっか…。でも、ならそうすればいいって事じゃないんだよね?」
ハイデマリー「はい。私達の為に、“この先”の為に最初のひとつを始めましょう」
敏恵「……大事な一つ目かな?」
ハイデマリー「ええ」
敏恵「今のあたしに出来る、かな…?」
ハイデマリー「その為に来たんですから」
敏恵「……」
ハイデマリー「…怖くても平気です、工藤さん」
敏恵「!」ギク
267 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/09(木) 21:23:55.52 ID:34aYX2co0
ハイデマリー「私がいます。貴方と出会えて励まされた私が、ここにいますよ」
敏恵「……。マリ…」
ハイデマリー「――…フフ」クス
敏恵(…!?)
ハイデマリー「少し、お腹が空きましたね?」
敏恵「えっ??」
ハイデマリー「今度こそ無事に帰って、一緒に食事しましょうか」
敏恵「…! ぁ…はは、それいいね」
ハイデマリー「はい。とても良いです」ニコ
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/09(木) 21:30:15.01 ID:34aYX2co0
――ガザザッ
エイラ『見えてるか大尉達? 一応、引きつけは上手くいってるぞー?』
サーニャ『ハイデマリー少佐、こちらは問題ないです。目標の撃墜お願いします』
ハイデマリー「! …中尉達の陽動が上手くいきました」
敏恵「みたいだね。今なら本丸は直接狙えそう」ガジョン
ハイデマリー「始めましょう、工藤さん」
敏恵「ぅ、うん…!」
269 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/09(木) 21:49:26.89 ID:34aYX2co0
ハイデマリー「――…逃げながら私も昨晩経験しましたが、あのネウロイ自体の戦力は高くありません。これだけ離れていればビームの精度はかなり悪いです」
敏恵「……うん」
ハイデマリー「逆に工藤さんの装備と実力なら十分中てられる筈です」
敏恵「コア、ぶち抜くんだよね…?」
ハイデマリー「大丈夫です。危険な反撃には備えていますから、落ち着いて狙って下さい」
ハイデマリー「工藤さんは絶対に私が守ります。怖い事なんてないです」
敏恵「ぅ…! ま、マリ…?」オロロ
ハイデマリー「分かってますよ。私も決して、やられませんから」
敏恵「ん、ん…。そうだよね、うん…」
ハイデマリー「…こちらハイデマリーです。今から目標撃墜を開始します」ス
敏恵「……」ドキドキ
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/09(木) 21:59:01.45 ID:34aYX2co0
ネウロイ「〜〜、ー…」ゴゥンゴゥン
敏恵「っ…」フィィン
敏恵(いくぞこの…! おっかないけど、あたしは絶対乗り越えるんだ!!)ガチ゛ン
ドガァアンッッ――
ネウロイ「…?」ゴッッ
ネウロイ「!??」バァンッ
敏恵「ぅ…装甲硬いじゃん!? コアなんて全然…!」
ハイデマリー(射程が伸び過ぎて炸裂弾の食い込みが浅い!? でも外装にはちゃんと効いてる――)
ハイデマリー「良いですよ工藤さん! そのままコアを狙い続けてください!」
敏恵「ぐっ、確かに中てられたのは大進歩だけど――」
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/09(木) 22:01:22.43 ID:34aYX2co0
ネウロイ「…! 〜〜〜〜!!」ギラッッ
ビビィィーーーーッッ
敏恵「ッ…!!」ビクッ
ハイデマリー「大丈夫です! 向こうは当て推量なので数を撃ってるだけですから、怯たら駄目です!!」パァァア
敏恵「づぅぅ……解ってる、解ってるよ…。でも早く終われぇぇ…!」ドフッ ドフ
ネウロイ「ッッ、ー〜ーー!!」バゴォン ゴガァァ
敏恵「っ…! 〜〜っ!!」ドフドフドフドフ
ネウロイ「!!?!? ッ…ッッ…!!」ボガゴガ ドゴァァッッ
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/09(木) 22:11:59.27 ID:34aYX2co0
ハイデマリー(照準が荒れて火力がばらけてる!? 工藤さん!)チラ
敏恵「ふぅ……はぁっ…、はっ…!」ドキドキドキ
ハイデマリー(昨日と比較すれば勿論見違えてるけど、それでもまだ――)
ハイデマリー(…私も攻撃に参加するべき? でも万が一で今の工藤さんに身を守る余裕なんて――)モヤモヤモヤ
敏恵「はぁ……ふっ…。ま、まりぃい…ッ!!」
ハイデマリー「!?」
敏恵「〜ぅあ、あたしのことも信じてぇーっ!!!」
ハイデマリー「――!」
敏恵「あぁ…、あと少しだけッ! お願い!!」ゼェハァ
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/09(木) 22:16:09.73 ID:34aYX2co0
ハイデマリー「っ……すみません工藤さん! 守備は任せてください!」バッ
敏恵「〜はふっ……ふぅ…!(落ち着けあたし。落ち着けば出来るんだから、落ち着けあたし!!)」ザワザワ
敏恵(コア〈あそこ〉に中てれば勝つんだ、もうすぐじゃん! あと一回ちゃんと撃てばあたしが勝つから――)
敏恵(――…死なない! もう誰も死なない!!)
。
○
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『ゃ、…死に……死にたくないっ…!! 死にたくないぃぃいぃっ!!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○
。
敏恵(頭では解ってるのに、あの感じがへばりついて来るっ…!)ゾワゾワゾワ
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/09(木) 22:22:28.68 ID:34aYX2co0
敏恵(し、心臓も脳ミソもなくなりそう…っ!! それに引き金が、固い!?)
ネウロイ「ッ…〜〜」ゴゴォォ
敏恵「ぎぐぐ…#(違う!! 武器じゃない!)」ギリ
敏恵「っ……あたしの指〈こころ〉が、ちょっと重いだけなんだ!! あと一撃くらいぃ!!!##」クワッ
ハイデマリー「…!?」ドキッ
敏恵(――撃ってしまえ! 乗り越えろ!! 証明するんだっ!!)ググ…
敏恵「〜〜〜〜っ! ぶ…、ぶぁかやろぉおーーっ!!!」ガヂッッ
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/09(木) 22:24:00.23 ID:34aYX2co0
ド ォ オ ウ ン ッ ッ ――
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/10(金) 16:45:57.84 ID:dO3qo6d/0
ネウロイ「fジhv…!?」バァアンッッ
ネウロイ「――……、…〜」ギラリ
277 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/10(金) 16:50:03.41 ID:dO3qo6d/0
敏恵「ぅ、うぅぅ…!?」
敏恵(あ、中ったのに。コアが出ただけ…足りなぃ…)ガクガク
敏恵「……ご、ごめんマリぃいい!!! あたしもうっ、いゅ、指がっ…!!」
ジャギンッ
敏恵「!」
ハイデマリー「心配ないです工藤さん――」ズン
ハイデマリー「…私が、今この時だけは絶対、外しません!」グ…
――…
ビィィイィイイーーーーッッ
ハイデマリー「!?」
敏恵「――!! あっ…ぁあ゛ッ゛!!」バッ
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/10(金) 16:55:17.76 ID:dO3qo6d/0
パァアァッッン
ハイデマリー「――!? 工藤さん!」
敏恵「〜っ…だ、大丈夫!! 今度こそ、あたしたちっ…」パァァ
ハイデマリー「…! はいっ、今夜は一緒に」ジャギ
ハイデマリー「――無事で帰りましょう」グ
ドォオンッッ
ネウロイ「!!!」バギィィイン
ネウロイ「〜ッ … ・ ・ 」
ネウロイ「 」
バァァァンッッ
バラバララ…
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/10(金) 17:01:13.26 ID:dO3qo6d/0
ハイデマリー「……。こちらハイデマリーと工藤大尉です、優先目標は撃破しました」ス
――ガザザ
エイラ『ンー、丁度見てたぞ〜! な、サーニャ?』
サーニャ『…こちらも国境内の異形飛行型は殲滅完了しました。カールスラント領沿岸の地上型は撤退しています』
エイラ『越境するワケにいかないし、追わなくてもイイんだろ?』
ハイデマリー「はい、作戦終了です。有り難うございました」
ハイデマリー「ふぅ……。終わりましたね?」チラ
敏恵「……」
ハイデマリー「工藤さん」
敏恵「うん…。そう、だよね…」
ハイデマリー「……」
敏恵「…あぁ〜〜」フヨフヨ
ハイデマリー「!」
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/10(金) 17:18:29.20 ID:dO3qo6d/0
〜トサッ
敏恵「しんどかった…」
ハイデマリー「……お疲れ様です」サス
敏恵「ん…。でも悔しぃ、本当はあたしでやっつけられた」
ハイデマリー「ですがその後に私を守ってくれました。貴方が勝ったんですよ」
敏恵「……」
ハイデマリー「工藤さんは負けてなんていません。…そうでないと、瞬間あんなこと出来ませんから」
敏恵「…もし、引き金どころか」ボソ
ハイデマリー「ぇ?」
敏恵「瞬きひとつ動けなかったとしても、飛び出したんだと思う。…五年前〈あのとき〉もそうやってあたしの命が守られて」
ハイデマリー「……」
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/10(金) 17:25:54.10 ID:dO3qo6d/0
敏恵「…菊さんは死んじゃったけどあたしは、生きてる」ヒシ
敏恵「今あたしが守れた人は“いつか”みたいに、“誰か”みたいに悲しくないんだね…」
ハイデマリー「……そうですよ。瀕死の工藤さんなんてもう本当に嫌なんですから」
敏恵(そっか…。あたしはこうしたかったんだ、そんなウィッチだから――)
敏恵「ねえ、マリ?」
ハイデマリー「はい」
敏恵「…あたしってこんな身体だし、正直まだ心も全部軽くはならないけどさ」
敏恵「――それでもここから目指してみるよ。もう一度、女王さま」
ハイデマリー「…!」
敏恵「だからさ、手伝って欲しいんだ。独りじゃ挫けるかも」
ハイデマリー「…ええ、そうですね。分かりました」ポンポン
敏恵「へへ… //」
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/10(金) 17:34:43.02 ID:dO3qo6d/0
――――
――
―
283 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/10(金) 17:37:33.25 ID:dO3qo6d/0
―数日後―
サン・トロン基地 野外
敏恵「――それぇい!」グイー
\ デデーンッ! /
/ ̄ ̄∨ ̄ ̄\
/ ∧ \
| / \ |
| / \ |
ヽ/| 祝 | \ノ
| | ・
-。 |あ 工|・ `
|ん 藤| 。
・ `|ど 敏|・ `
|五 恵|
|○ 復| `
。 |一 帰|
|参 | 。
、|加 |
|_ _|
敏恵「さあ皆さん、どんどん召し上がれ! あたしの大気解放祝いに工藤家自家製米おにぎり大盤振る舞いですよぉー!」
芳佳「具別でこっちに並べてますから、自由に取ってくださーい」
美緒「…分かったぞ服部、恐らくこう。左手だ」
静夏「な、なるほど。よし…」
リーネ「あれ、服部さん? まさかここにあったお塩全部使ったんですか…?」
284 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/10(金) 17:43:36.93 ID:dO3qo6d/0
ルッキーニ「ん〜♪ トンノ〈ツナ〉おいしー!」モムモム
エーリカ「サーニャンどれにする?」
サーニャ「えっと…」
ペリーヌ「それにしてもまた凄い沢山ありますわね?」
エイラ「マー最近は涼しくなってきたし、余っても明日くらいまでは持つんだろ」パク
エイラ「――!? ブェエッッ!! な、なんだこれカライ!!?」
静夏「えっ? あ、多分それは私が握った…」
リーネ(やっぱり…)
わいわい
バルクホルン「……いくらなんでも駄目だろ、これは」
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/10(金) 17:50:23.50 ID:dO3qo6d/0
シャーリー「まあまあ、いいじゃん。なかなか美味いよ?」
バルクホルン「いやそういう問題じゃなく、浮かれ過ぎだ。ここは軍事基地であって我々はピクニックをしに来た訳じゃないんだぞ?」
シャーリー「なーんだよ今更それ言う? 工藤もしっかりメンバー入りしたんだし、やれるうちに浮かれとくのは寧ろOKだって」
シャーリー「――なあ少佐?」チラ
ハイデマリー「はい」コク
バルクホルン「ぐっ、まさかハイデマリー少佐までこいつに同調するとは…」
ミーナ「うふふ、けど一応理屈は通るわよトゥルーデ?」
バルクホルン「…しかしいいのかミーナ? 今回ばかりはもっと緊張感を」
ミーナ「解ってる。“川を越え始めたら”こういう事する余裕も無くなってしまうわ」
ミーナ「だから今のうちに力を抜くべきよね? 特に貴方や私なんかは、少し張りつめ過ぎるのかもしれないわ」
バルクホルン「……」
ハイデマリー(ミーナ中佐…?)
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/10(金) 17:56:22.96 ID:dO3qo6d/0
シャーリー「そういうこと! だからあたし等もはやく行こう、飯無くなっちゃうぞ?」グイ
バルクホルン「だ、おい!? 引っ張るな! お前は既に食べてるだろうが」
シャーリー「一個で足りる訳ないだろ? あとジュースも欲しいし」
バルクホルン「わ、分かったから責っ付くな!」
ハイデマリー(バルクホルン大尉とイェーガー大尉ってなんだか……不思議な関係性?)
ミーナ「…なんとか収まりついて本当良かった」
ハイデマリー「――ぇ?」チラ
ミーナ「工藤大尉のこと。貴方のおかげもあって間に合ったわ、有難う少佐?」
ハイデマリー「あ、はい」コク
ミーナ「!? …ふふ」
ハイデマリー「?」
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/11/10(金) 18:03:29.57 ID:dO3qo6d/0
ミーナ「貴方、また少し変わった」
ハイデマリー「そ、そう…ですか?」
ミーナ「ええ、良いと思うわ」
ハイデマリー「??」
ミーナ「…一方だけじゃなくて、あの子もまたハイデマリーさんを強くするのかしら?」
美緒「むぅ…何故だ、何を間違えた? 結局まん丸になってしまった」
シャーリー「ライスボールって言うくらいだから、丸い方が正解じゃないんですか?」
敏恵「坂本さん、それも三位のなんとかですよ。心技体のどれか駄目なんじゃないですか?」
美緒「そうか。技術は宮藤の手解きを受けたんだが…」
敏恵「じゃあ体力は間違いなくあるから、多分心構えが足りてないんですよ! もっと白米への気持ちを込めて!」
美緒「気持ち様か、つまり気合いだな? ……せぇいッッ!!」グジャッ
敏恵「えっ、ちょ…ぁあああもっさん!!? 貴重なご飯がぁーっ!!」
シャーリー「あははは! いやいや少佐?」
バルクホルン「見ていられないな。少佐、変わってくれ」
美緒「待て、今ので分かった。一度丸くなった後に三辺をこう……ふんッッ!」グチャァ
敏恵「わーーやめて!! 丸くていいから、ご飯潰さないでぇー!?」
シャーリー「あっははは!」
ミーナ「……。但しあのままそっくり影響されても困るけど(というか美緒も何やってるのよ…)」
ハイデマリー「私には無理ですよ中佐? ああいう所は工藤さんの魅力ですから」
ミーナ「そ、そう?」
ハイデマリー「はい。…皆さん、楽しそうです」クス
――――ここから時を間もなくして統合軍はカールスラント領奪還の火蓋を切る。
“夜の女王”は前線を退くまでの残りをその空で戦い、歴史に知れぬ戦果を再び積み上げることとなるが
それは新たな彼女、“工藤敏恵”の物語である
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