【艦これ】大井さんの女子力事情

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/11(火) 22:44:58.98 ID:tfQ5cg2u0
艦これです。地の文ありです。大井さんの女子力についてです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1491918298
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 22:46:48.57 ID:tfQ5cg2u0

大井さんが屈みこんで浜辺と睨めっこをしている。

数秒すると一歩踏み出してまた止まる。そして数秒間、また地面と睨めっこ。

私が大井さんを見つけてから彼此10分程度。朝の日課であるランニングの最中にとうとう発見してしまった。

とうとう、って言うとなんだか大井さんが不思議な事をしているのが噂になっているって思われそうだけど、残念ながらその通り。大井さんは噂になっている。

当の本人はこれっぽっちも気にしてないみたいだけど。

朝礼前よりもっと前。起床時刻前30分前くらいに浜辺に行くと大井さんがああやって海を眺めるわけでもなく、地面をじーっと見つめているって噂。

その噂について、同室者である北上さんはこう語った。

北上「提督。ここんとこ大井っちが朝早いからなんとかして」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 22:49:20.08 ID:tfQ5cg2u0

どうも北上さんは大井さんの心配はご無用らしい。普段中々お目にかかれない真面目な顔と口調でこう言われたのだから。

それで私は気になってもう一人に尋ねた。姉にあたる球磨さんだ。

球磨「別に気にすることないクマー。たまには一人になりたい時もあるクマー」

どうも姉妹関係にある二人はさほど気にしていない様子。

この二人が言うのなら本当にその通りなのかもしれない。

だけど、何も睡眠主義者と放任主義者だけの意見だけじゃない。こんな話も回ってくる。

あれは病んでるっぽい。振られてそうだね。なに、特ダネですか。私と同類なのね、今夜酒の席に招待するわ。ふふ、恋せよ乙女、ですね。

子犬と文学少女の悪魔コンビは話が拗れる新しい噂を広めて、それに喜んで飛びつくあのゴシップ大好きな新聞艦娘。

ゆるさんぞ、私が夜中に隠れてぼっち酒を楽しんでいたのを撒き散らしやがったせいで、失恋に敏感な艦娘が傷の舐め合いの様に酒の席を勧めてきたことを。

それはそれで楽しいのだけれど、酒のあてに簡単な和食を作りながら、昔の色恋話をにこにこしながら話される機会が増えた。

そんな話をするもんだから連れは泣きじゃくるし、宥める私だって面倒だ。

まぁ何はともあれ、監督者として見逃すわけにはいかない。

同じ乙女の端くれ、この私にだって失恋の話一つくらいだって解決してみせるわ。

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 22:50:59.81 ID:tfQ5cg2u0

提督「ぉ、大井さん!?何やってるの?」

少し緊張していた私は声が上ずる。

大井「......なんですか。今ちょっと忙しいんですけど」

そう言うと大井さんはまた地面を見つめ始めた。

素の大井さんが見え隠れしている。どうやら朝早いためそこまで気遣いが行き届いてないみたい。

諦めず私もすかさず屈みこんで大井さんの顔を覗き込む。

提督「大井さーん。おーい、さーん。....今の大井さんとおーいを掛けたの気がついた?」

大井「うざ....」

見向きもせず一言ぽつりと呟いた。

私はこっちの大井さんが好きなのに、どうにも本性を現してくれないから毎日悲しんでいる。

だから今のは効いた。最高よ。だったら追撃戦ね。

提督「まぁ、ね。大井さんの気持ちもわかるよ。恋愛っていうのは面倒だし、喜んで話されるのも面倒だよね....。それに噂にだってなるし。でもさ、諦めちゃダメだよ。大井さんの気持ちはそんなのだったの!?さぁ立ち上がって!あの太陽に向かって吠えろ!北上さあああああん!」

私は立ち上がり太陽に向かって大きく叫んだ。ありったけの恋愛成就の気持ちを込めて。かしこみ、かしこみ。

大井「あぁもうほんっと!鬱陶しい!それになんか失恋したみたいに言うのやめてくれませんか!?」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 22:53:20.88 ID:tfQ5cg2u0

提督「ありゃ違うの。ならなんなのさ、我が鎮守府が誇る女子力マイスターの大井さん。あろう事かそんな大井さんが地面に誘われるなんてよっぽどのことじゃないの?」

大井「らちがあかないですねもう....。見つかった事が運の尽きだったことにします。まったく、これですよこれ」

そう言って立ち上がり、大井さんは握り締めた拳を私に突き出して指を解きはじめた。指の間から微かに見え隠れする水色や緑色や茶色。たしかこれは。

提督「シーガラス?」

大井「惜しいですねシーグラスです」

大井さんは一つ摘むと私に差し出す。受け取る様に手のひらを向けるとそのシーグラスを落とした。

提督「ふーん綺麗だね」

私は人差し指と親指で摘むと、裏や表なんてないのだけれどひっくり返したりしてみる。

10円玉より小さい湾曲した薄い緑色のガラス。別名海の宝石って言われてるシーガラス。シーグラスだけど、宝石っていうのはつるつるとして光沢を綺麗と表現するのに対して、これはどうもその一例には当てはまらない。

表面は細かいおうとつが刻み込まれ、磨りガラスに近く全体的に丸みを帯びている。それでも綺麗だと思ってしまうのはなぜだろうか。

提督「いやーしかし鎮守府の浜辺にも落ちてたなんて知らなかったわ」

大井「知らなかったというより、探す気すらなかったの間違いですよね?地面をじっくりと見つめる艦娘や人なんてこれっぽっちもいないんですから。砂浜がある、海がある。それで満足なんでしょう?少し探す気があるならいくらでも落ちてるんですからね」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 22:55:37.50 ID:tfQ5cg2u0

提督「痛いとこつかないでよ大井さん.....」

大井「まぁそのおかげでこうして探せるのですけどね」

んっ。と言って大井さんは手のひらを突き出した。

返せ、ということなんだろう。私はもう一度眺める様にしてから大井さんにこれを返した。

提督「大井さんが言うにはそこら辺に落ちてるんだよね」

大井「ええ」

私はジャージの袖をめくり肩を回した。そして地面に屈みこんで。

提督「私も探すわ!ちょっと面白そうだしね」

すぐに飽きそうですね、と大井さんの一言。そして私のすぐ右隣に屈みこむ。

私は波打ち際寄りに真っ直ぐ前進を始め、食い入る様にして地面を見やる。

ふと、こうやって砂浜や風景の一角を真剣に見つめるのはいつ以来だろうと思った。

大井さんがさっき言っていた、砂浜がある、海がある。それで満足なんでしょう、っていう言葉が深く心にも突き刺さる。

こうやってやっていると面白いもんだ。見飽きたこの鎮守府の砂浜。流木や人口漂流物でそれなりに汚れたこの砂浜をいつも汚いと思っていた。

そりゃ眼に映るゴミは私は拾って捨てるようはしてるけど、いくら綺麗にしたと思ってもやはり汚いものは汚い。

でもこの砂浜は汚い風景、だという先入観が私に蔓延っていたのだと今思い知った。

なぜならこうして画角を狭めてみると、名前も知らない貝殻や、ペットボトルのキャップ、砂つぶの一つ一つに妙な新鮮味を感じ、私は今この砂浜の風景を綺麗だと思っているのだからだ。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 22:59:32.44 ID:tfQ5cg2u0

それらを人差し指で払いのけ目的の物、シーグラスを探す。そういえば。

提督「大井さんはなんでこんな事してるの?」

大井「なんでって、綺麗な物があったら集めるに決まってますよ」

大井さんも私と同じように砂浜を払いのけている。

提督「集めて終わりなの?」

大井「男の子じゃないんですから終わりじゃないですよ。集めてアクセサリーにするんです」

あっ、ほらありましたよ。と大井さんが言った。

提督「どれどれ」

またもや緑色のガラス片。さっきと違うのは歪な形をした二等辺三角形に近い形をしている事。

提督「なんだか緑ばっかだねぇ」

大井「そんなもんですよ」

大井さんは見せたシーグラスをポケットに入れると黙々と探し始めた。忍耐、か。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:05:20.68 ID:tfQ5cg2u0

大井「.....私がこの砂浜でシーグラスを探し始めてから大体2ヶ月くらいたちますけど、水色や緑色がほとんどですよ。多分元を辿れば昔のサイダー瓶なんでしょうけどね」

ああ、だからあんなに薄いのか。私はそう思った。大井さんが見せてくれた物はどれもこれも割れてしまいそうなほど薄い物ばかりだったから、少し気になっていた。

提督「青とか赤とかないのかな」

大井「不確かな割合とか私信用してないんでわかりませんけど、その青とか赤とか見つかる確率は1%も満たないそうですよ。でもそんな事知るよりも、こうやって目の前にある物で一喜一憂したほうがよっぽど堅実的、だと思いますね」

ほらまたあった。

提督「.....なんだか大井さんばっかり見つかってない?」

大井「それはそうですよ。提督が探してる直線はあんまり無さそうですからね」

そう言うと私を小馬鹿にするようににやけた。

提督「もーなんでさ!大井さん!」

大井「提督ならすぐに答えが導き出せますよ」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/11(火) 23:11:12.67 ID:tfQ5cg2u0

私は立ち上がり、周囲を見渡す。波打ち際を探している私の直線上には、あまりゴミが無いことに気がついた。

それに対して大井さんの探す波打ち際から一メートル程離れた直線上には打ち上げられた小石や貝殻が沢山あった。

大井「気がつきました?」

提督「.....大井さん場所交代しない?」

大井「イヤですよ。どうしてもって言うなら私の後ろを探したらどうですか?」

にやにやと未だ私を見つめる大井さん。

けれど大井さんの思惑とは裏腹に、私はまたと無い好機に胸が踊った。

視界を少しあげれば合法的に大井さんのお尻が。下には取り残したシーグラスが。なんてことだ。天は私に二物を与えたもうた。

提督「はい!喜んで!!」

大井「..... やっぱいいです。交代しましょうか」

立ち上がった大井さんは私を奥へと追いやろうと腰で私を2回押した。体勢を崩しそうだったから仕方なく私は移動する。

大井「ほら探してください提督」

提督「はいはーい.....」

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10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/11(火) 23:12:32.44 ID:tfQ5cg2u0
今日は終了です。一応提督さんは女性です。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:21:53.66 ID:NIcCMxF5o
大井のお尻が好きな女提督さんですか
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:32:19.53 ID:In+WU5Wh0
この大井さんは女子力練度99ですね間違い無い…
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [[sage]]:2017/04/11(火) 23:36:49.68 ID:t1d1mIrm0
立て乙
ガンバレー(sageれてなかったらスマソ ※レスするのに慣れてないんです)
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:37:21.65 ID:dyCV1tkeO
乙です。
女子力かぁ……。
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