【ヤンデレCD】ヤンデレロンパ〜希望のヤンデレと絶望の兄〜2スレ目

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559 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 12:36:21.06 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ ナギサ
「ところで、お兄ちゃん、その格好は――」

ノノハラ レイ
「後でゆっくり説明するよ。後でね」



 制止にかかる渚を振り切って扉を開けるとそこには慧梨主さんがいた。



サクラノミヤ エリス
「海神水音さん?! しかも、こっ、ここねさんとのコラボ衣装?!
 ――じゃ、ないですね。澪さんですか。顔がそっくりだから危うく騙されるところでした」

ノノハラ レイ
「一瞬で見破るとかガチのファンかな? ちなみにどこで見分けたのかな?」

サクラノミヤ エリス
「水音さんはもっと威厳と言うか……、カリスマがある方なので。色々な本から引用して自分なりの哲学も通してきますし。
 それに比べると澪さんは、その、何と言うか、チャランポランじゃないですか」

ノノハラ レイ
「……キミ、結構辛辣な毒吐くね。亜梨主さんがいないとそんな感じなのかな?」

サクラノミヤ エリス
「お姉さまは関係ないでしょう。水音さんのコスプレの指南なら是非プロデュースしたいところですが」

コウモト アヤセ
「髪型変えただけでそういうのは全然関係ないから。……それで、何かめぼしいものは見つかった?」

サクラノミヤ アリス
「そうですか。てっきりそっちの方向に目覚めたものかと。……特にこれと言って発見はありませんね。映画観賞会のゴミがそのまま残っているぐらいで」

ノノハラ レイ
「……確かに、飲みさしの紙コップやらポップコーンの包み紙やらでゴミ箱がいっぱいだね。
 うわ、よく見たら床に食べかすみたいなのも落ちてるじゃん」

サクラノミヤ エリス
「あの時は基本的に部屋が真っ暗でしたから……、多少の見落としがあっても仕方ないのでは?」

ノノハラ レイ
「だね。……ん、変だな」

コウモト アヤセ
「どうかしたの?」

ノノハラ レイ
「いや、紙コップさ、他の誰かと混ざらないよう自分の名前書くってなったじゃん」

コウモト アヤセ
「そう言われてみれば確かにそうだった気がするけど、それが何なの?」

ノノハラ レイ
「紙コップ、12個しかない。二人分足りないんだよ。公と増田クンのがここにないんだ」

コウモト アヤセ
「普通に持ち帰ったとかじゃないの? 事件とあまり関係なさそうだけど」

ノノハラ レイ
「……いや、案外こういうのが大事だったりするんだよね」

サクラノミヤ エリス
「そうあからさまに言われると、逆に無関係に思えてきますね」

ノノハラ レイ
「……泣いていい?」


コウモト アヤセ
「今までの自分の言動を思い出しなさい」

コトダマGET!
食べかす:映画上映会の時の食べかすが床に落ちていた。
消えた紙コップ:主人公と増田勇の紙コップが無くなっていた。
560 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 22:14:32.96 ID:/sP8o8Be0


ノノハラ レイ
「うん。これ以上は証拠になりそうなものもなさそうだし、撤収しようかな」


コウモト アヤセ
「随分あっさり引き下がるのね。まあ、いいけど」


サクラノミヤ エリス
「水音さんのコスプレを今度してもらっても――」


ノノハラ レイ
「はい次々ー」


コウモト アヤセ
「あまり澪で遊ばないでね。じゃあわたし達は多目的ホールに行くから」


サクラノミヤ エリス
「それは残念です。心変わりしたらいつでも待ってますから」



 ちょっと寒くなった背筋を無視して、多目的ホールへ向かった。



561 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 22:17:04.47 ID:/sP8o8Be0


ナナ
「そーれ」


ノノ
「えーい」


ノノハラ レイ
「予想はしてた」


コウモト アヤセ
「この捜査時間って割と命がかかってるんだけど……、解ってないのかな?」


ノノハラ レイ
「多分解っててもなお、だと思う」



 体育館でボール遊びをする子供。
 普通なら何の変哲もない絵面だけど、殺人事件が起きた後だってシチュエーションで、それなりに分別のある双子だと一転恐怖を煽るものだ。
 そうだな、『シャイニング』や『エクソシスト』の雰囲気に近い。



ナナ
「あら、お兄ちゃん。どうしたのそのお洋服?」


ノノ
「お兄ちゃんはお姉ちゃんだったの?」


ノノハラ レイ
「あまり気にしないで。できれば放っておいて」


コウモト アヤセ
「えーっと、そうそう。二人は何か見つけたの?」


ナナ
「何も見つからなかったからこうして遊んでるの」


ノノ
「お兄ちゃんが壊したバスケットのゴールもそのままになってるし」


ノノハラ レイ
「……本当にそのままだね。塗装に塗装を重ねても、肝心の中身が錆びでボロボロだ」


コウモト アヤセ
「それで壊れちゃったのね。……増田君のダンクシュートがそれだけ強烈だったって言うのもあるけど」


ノノハラ レイ
「モノクマの想定以上だったってわけね。だから見逃されたんだろうけど」



コトダマGET!
壊れたゴールポスト:老朽化していたのを騙し騙し使用していたが、増田勇のダンクシュートを何度も受けたせいで破損してしまった。



562 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 22:29:27.80 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「掃除用具……、これかな」


コウモト アヤセ
「モップにバケツに箒に塵取りに粘着クリーナーに漂白剤消臭剤……、掃除に必要なものは一通り揃ってるわね」


ノノハラ レイ
「ついさっき使ったばかりって感じのも結構あるね」


コウモト アヤセ
「ユーミアさんが掃除してたって事じゃないの?」


ノノハラ レイ
「……その割には、舞台袖とか結構埃が目立つね」


コウモト アヤセ
「そんな姑みたいな真似しないの。……いったん離れて合流するまで大体一時間半ぐらいだからそんな隅々までは気が回らなかったんじゃない?」



コトダマGET!
掃除用具:掃除に必要なものが揃っている。使用したばかりの物もある。
多目的ホール:一通り掃除されているようだが舞台袖などは手付かずだった。


563 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 22:36:47.99 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「もうここは粗方調べ終わったかな」


コウモト アヤセ
「じゃあ一階に行きましょっか」


ナナ
「もう行っちゃうの?」


ノノ
「ここで遊ばない?」


ノノハラ レイ
「後でね」


コウモト アヤセ
「……二人はもうしばらくそこで遊んでてね」


ナナ/ノノ
「「はーい」」



 場違いな明るい返事を返した双子を背中に、多目的ホールを後にし一階へ向かった。



564 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 23:05:04.45 ID:/sP8o8Be0



サクラノミヤ アリス
「あら。疑わしい二人がお揃いで何の用?」


ノノハラ レイ
「出会い頭に辛辣な言葉をどうも」


コウモト アヤセ
「まあ、そう言われればそうよね。第一死体発見者だもんね。それは疑われるわよね」


サクラノミヤ アリス
「その隣にいるのが怪しい恰好をしているとなれば、疑うなって方が無理でしょ?
 どうせ、そんな恰好をしている理由を聞いても答えてくれないでしょうけど。それが余計怪しいっていうのにね」


ノノハラ レイ
「手厳しいなあ。で、何か収穫はあったかい?」


サクラノミヤ アリス
「特に何も? ……と言いたいところだけど、一応モノクマから情報は得られたわ」


コウモト アヤセ
「どんな? っていうか、どういった経緯でそんな情報を?」


サクラノミヤ アリス
「このゲームコーナーの雀卓、ちょっと前まで使ってましたって感じだったからね。
 こう思ったの、誰か夜遅くまでやってたんじゃないかって。
 で、モノクマからさりげなく聞いたらこう答えが返ってきたわよ。
 『この別館は本館とは電力は別だから、夜時間の間でも電気が通ってる』ってね」


コウモト アヤセ
「……誰がいたのかは?」


サクラノミヤ アリス
「あの性悪パンダモドキが教えてくれると思ってるの?」


ノノハラ レイ
「ですよねー。で、キミはこう考えたわけだ。実は夜時間の間に誰かがここにいたんじゃないかって」


サクラノミヤ アリス
「そ。でもまぁ、それが誰なのかはすぐに検討がつきそうだけど?」


ノノハラ レイ
「それじゃキミに聞くけど、ゴンドラリフトはどう説明するのさ」


サクラノミヤ アリス
「稼働時間、ね。考えれば案外簡単に説明付くでしょ。あたしの推理が正しければ、クロの正体も自ずと解るわよ」


コウモト アヤセ
「……澪はクロじゃないわ。少なくともわたしはそう信じてる。そしてわたしも犯人じゃない」



別館の電気:別館は夜時間も電気が通っている。



565 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 23:11:35.13 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「ゲームコーナーにも目ぼしいものはなさそうだし、そろそろユーミアさんの検死も終わってそうだし。
 行ってみようか。――大丈夫?」


コウモト アヤセ
「うん。わたしはもう平気だから、心配しないで。女湯に行きましょ?」


ノノハラ レイ
「無理はしないでね」


コウモト アヤセ
「それわたしのセリフ」


サクラノミヤ アリス
「下らないラブコメなんてやってないでさっさと言ったら?」



 刺々しいセリフを後に、女湯の更衣室へ向かった。



566 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 23:26:07.68 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「とりあえずまずは脱衣所から調べてみようか。何か証拠があるかもしれないし」


コウモト アヤセ
「証拠って言ったって……、わたしが着替えたときには何も……」


ノノハラ レイ
「それは動揺してたからでしょ。冷静になった今なら、何かわかるものがあるかもしれないじゃない」


コウモト アヤセ
「そう、かな」


ノノハラ レイ
「そうだよ。……行きと帰りの時とで何か違ってるところとか、ある?」


コウモト アヤセ
「うーん……。特にこれと言って変わったところなんて見当たらないし……。
 わたしは澪みたいな記憶力は持ってないからなんとも……」


ノノハラ レイ
「そんなに気に病まなくたっていいよ。……このゴミ箱とかはどう?」


コウモト アヤセ
「……うん、少なくともこんなカバンは入ってなかった筈はずよ。それは断言できる。
 それによく見たらこれ、巴ちゃんのカバンだわ」


ノノハラ レイ
「調べてみる価値は十分にありそうな証拠品だね」



コトダマGET!
脱衣所のゴミ箱:朝倉巴のカバンが捨てられていた。



567 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 23:42:37.71 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「さーて中身はなんじゃろな」


コウモト アヤセ
「女の子のカバンの中身を漁らないの――と言いたいところだけど、これも捜査のため、よね」


ノノハラ レイ
「……最近の女子のカバンの中には紙コップやら空のペットボトルやら、一目でゴミとわかる物を入れるのがトレンドなのかな?」


コウモト アヤセ
「そんなトレンドがあると思う? ……この紙コップ、増田君のね。『マスタ』って書いてあるし」


ノノハラ レイ
「ひょっとしたらこの空のペットボトルも増田クンのかもね。後は……、この小瓶と、何かの機械と、……鞘、かな?」


コウモト アヤセ
「この形の鞘って……、つまりそういう事、なの?」


ノノハラ レイ
「だろうね。小瓶の中身は……、うわぁ、これ爪だわぁ」


コウモト アヤセ
「巴ちゃん、自分の爪を集めて溜める趣味でも――いえ、これ巴ちゃんの爪じゃないわね」


ノノハラ レイ
「わかるんだ?」


コウモト アヤセ
「ええ、だって女の子の爪って感じじゃないじゃない。切り口も雑だし、厚いし。
 多分男子のかな」


ノノハラ レイ
「……大きさ的に考えて増田クンのだったりしてね。後で聞いてみようか」



コトダマGET!
紙コップ:朝倉巴のカバンの中に入っていた増田勇の紙コップ。
鞘:何らかの剣の鞘。形が独特。
小瓶:誰かの爪が詰まっている。



568 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 23:59:58.46 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「さて、残るは怪しさ極まりない機械だけど、イヤホンがあるし、ちょっと電源点けて聞いてみようかな」


コウモト アヤセ
「危なくない?」


ノノハラ レイ
「物は試しってヤツだよ、さぁてなにが聞こえてくるのかな? ――へぇ」


コウモト アヤセ
「何よ、そんな風に悪巧みしてるみたいに笑っちゃって」


ノノハラ レイ
「これ、盗聴器だ」


コウモト アヤセ
「え?」


ノノハラ レイ
「しかも増田クンの身体の何処かに送信機つけられてる」


コウモト アヤセ
「……噓、じゃ、ないわね。じゃあ、その、巴ちゃんは――」


ノノハラ レイ
「所謂ストーカーってヤツだ。増田クンはその被害者ってところかな」


コウモト アヤセ
「こんなところで巴ちゃんの知らない一面が暴かれちゃうなんて、ね」


ノノハラ レイ
「人なんてそんなもんだよ。誰にだって知られたくない後ろ暗い顔を持ってるのさ」


コウモト アヤセ
「澪が言うと真実味が増すわね」


ノノハラ レイ
「綾瀬はボクを褒めたいのか貶したいのかどっちなんだい?」


コウモト アヤセ
「わたしはありのままの澪のことを言ってるだけだから」



コトダマGET!
盗聴器:朝倉巴は増田勇を盗聴していた。


569 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/26(土) 20:43:32.84 ID:OMA2HHiu0



―――




 思えば、巴は俺にとっての何だったんだろうか。
 バイト先で俺が座っていた椅子に頬擦りしたり、脱ぎ捨てたユニフォームに顔をうずめていたり、といった意味不明な行動を除けば、俺によく懐く可愛らしい女の子。
 そうだと思っていた。
 あの日。俺が車に轢かれかけたあの日までは。俺の代わりに、俺を庇って、巴が撥ね飛ばされた、あの日までは。
 あの瞬間、俺の心は彼女に惹かれたのだろう。吊り橋効果と言われてしまえばそれまでかも知れないが、俺が巴に惚れる決定打になったのは間違いない。
 前世や運命を信じるか、とかつて巴が聞いてきたことがあった。
 当時の俺は否定しようとして答えに詰まったが、正直に言えば、今は信じている。と、思う。
 運命論や前世の記憶で人の恋が決まってしまうなんて味気ないと思っていたが、俺が巴に助けられたのは多分、そうなる運命だったんじゃないか、と。
 それなら、そこから先の俺の心もまた、前世からの運命なんじゃないかって、そう思えた。



マスタ イサム
「……だけど、こんな風にされるようなことはしてないだろ」


ノノハラ レイ
「そうかな? ヒトって言うのは何処から恨みを買うか分からないものなんだぜ?
 殺意なんてのは思いもよらぬところから芽生えてくるものなのさ」


マスタ イサム
「――今、お前に対する殺意が芽生えそうだよ」



 俺はこいつを殴って黙らせるべきなんじゃないかと一瞬思い、ギリギリ踏みとどまった。こいつの捜査能力は一応、信用している。
 巴をこんな風にした犯人を突き止めるためにはこいつの力が必要だ。一時の感情でそれを不意にしてはいけない。
 だから俺は努めて冷静に振る舞う。ほんの少し、激情が漏れそうだが。



―――



570 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/26(土) 21:42:48.48 ID:OMA2HHiu0



コウモト アヤセ
「その、ごめんね、澪が変なこと言って。ほら、謝って」

ノノハラ レイ
「はいはいすいませんでした、っと。で、検死の進捗は?」

ユーミア
「……芳しくありませんね。どの傷も似たようなもので、どれが致命傷なのかは判断できかねます」

ノノハラ レイ
「死亡時刻の方は割り出せそう? ほら、モノクマファイルには載ってなかったからさ」

ユーミア
「見ての通り、傷の所為で死斑も解らなくなってしまっていますし、死後硬直も全身の骨を砕かれているせいで判断は難しいですよ。
 頭部は無事だったので顎の硬直から死後三時間以上は経過しているとみて間違いはないようですが」

ノノハラ レイ
「胃の内容物の消化具合とかは?」

ユーミア
「……見ての通り、空っぽでして。それが元からなのか、滅多刺しにされた後シャワーの水で洗い流されたのかの判別も付かないのが現状です」

ノノハラ レイ
「そっかぁ。でもさ、一目瞭然でわかることが一つあるよね?
 少なくとも刺し傷は死後につけられたもので、死後八時間以上は経過してるんじゃないの?」

ユーミア
「何故そう言い切れるのです?」

ノノハラ レイ
「だってさ、服に血がどこにも滲んでないじゃん。
 仮に殺した後何かの痕跡をごまかすために刺し傷を作ったとしても、体の中で血が完全に凝固してない限り死後の傷でも出血はあるはずで、そうなれば服に血が着くのは自明の理だよね?」

マスタ イサム
「つまりあれか? 殺してしばらくたった後さらに痛めつけたって言うのか?」

ノノハラ レイ
「考えようによってはそうなるね。よっぽどの怨恨か、あるいはそうしなければならない理由があったか……、いずれにせよ、相当な執念の賜物だよ、これは」

ユーミア
「……引き続きユーミアは死因を調べておきます。これ以上ここにいては、いつマスターの怒りを買うか分かりませんよ?」

ノノハラ レイ
「じゃ、最後に一つだけ、増田クンに聞きたいことが」

マスタ イサム
「……何だ。言ってみろ」

ノノハラ レイ
「昨日言ってた忘れ物、結局どうなったの?」

マスタ イサム
「体操服の事なら、男子更衣室に置きっぱなしにしておいたって言ったろ。どのみち回収されるから問題ないって」

コウモト アヤセ
「そのことなんだけど――」

ノノハラ レイ
「いや、確認したかっただけだよ。邪魔して悪かったね。新しい発見があったら学級裁判で発言してもらおうか」

ユーミア
「……ええ、もとよりそのつもりです」

ノノハラ レイ
「じゃ、この辺で失礼させてもらうよ。じゃあね」

コウモト アヤセ
「ちょっと、澪!」



コトダマGET!
朝倉巴の胃:内容物が空で消化具合も確認できない。
朝倉巴の服:傷だらけではあるが血は滲んでいない。



571 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/11(日) 16:09:35.93 ID:hNL8E9zC0




コウモト アヤセ
「どうしたのよ急に飛び出したりして。それに事情だって――」


ノノハラ レイ
「説明したら増田クンどうなるか分からないじゃん。平静保ってるようでちょっとしたことでキレそうな状態だったし。
 それとも、被害者である朝倉巴が実は自分をストーキングしていただなんて衝撃的な事実を本人に伝えたら何が起こるか、予想できる?」


コウモト アヤセ
「それは、ショックを受けるとは思う、けど……」


ノノハラ レイ
「でしょ? それに時間も惜しいし。聞くべきことは聞けたから十分なんだよ。そう言う訳だから、ここで調べられることはもう粗方調べ終わったってことで。
 本館へ向かおうか」



 強引にゴンドラ乗り場へ向かった。




572 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/11(日) 16:11:46.39 ID:hNL8E9zC0



ノノハラ レイ
「……あれ、何か変じゃない?」


コウモト アヤセ
「どうかしたの?」


ノノハラ レイ
「スキー用具、二人分無くなってる。ついでに勝手口も開けっ放しでそこから足跡が二人分外に出てる」


コウモト アヤセ
「そもそもあったの? スキー用具なんて」


ノノハラ レイ
「十六人分、このロッカーにね。開けないと何が入ってるか分からないけど、ここが解放されてからかなり時間も経ってるし、気付く人は気付いたはずだよ。
 まぁ、見るからにスキーリゾートっぽいからね、ここ。そりゃあるよねって話になるわけで。
 ――しかし、これも開けっ放しで出て行ったとなると、これをやった人は相当焦っていたのかな」


コウモト アヤセ
「わたしが来た時にはそんなあとどこにもなかったけど?」


ノノハラ レイ
「本当かい?」


コウモト アヤセ
「流石にここまで様変わりしてれば着いた時すぐ気付くわよ。断言するわ。わたしが来た時にはスキー用具入れのロッカーも、そこの勝手口も開いていなかった」


ノノハラ レイ
「……それ、しばらくはボク等の胸の内に秘めておいてくれる? 今後の重要な証拠になるかもだから」


コウモト アヤセ
「それは構わないけど……、どう証拠になるの?」


ノノハラ レイ
「犯人の尻尾を捕まえられるかもしれない。詳しく説明すると綾瀬の態度からバレるかもしれないから言わないけど」


コウモト アヤセ
「……悪かったわね、演技が下手で」


ノノハラ レイ
「そう拗ねないでよ。二人の内一人は見当がついてる。もう一人も多分そうなんでしょ。此の二人には特にバレて欲しくないんだ」


コウモト アヤセ
「誰なの?」


ノノハラ レイ
「一人は犯人、もう一人はそれを検証する為に体を張った――主人公クンだよ」



コトダマGET!
ゴンドラ乗り場の勝手口:開けっ放しになっており、二人分の足跡が外にのびていた。
スキー用具入れ:ゴンドラ乗り場にはスキー用具が入っているロッカーがあり、誰でも利用可能だった。
河本綾瀬の証言:6時10分に着いたとき、勝手口の扉もスキー用具のロッカーも開いていなかった。



573 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/11(日) 16:38:38.64 ID:hNL8E9zC0


ノノハラ レイ
「さて、じゃボク等も本館へ行ってみようか。さ、リフトに乗って?」


コウモト アヤセ
「えぇ。……この間の時間がちょっともったいないわね」


ノノハラ レイ
「なら、ボクの話に付き合ってよ。ここまで得られた情報を、整理してみようと思うんだ」



 ゴンドラリフトに揺られながら、推理を進めることにした。



ノノハラ レイ
「やっぱり変だよ、この事件は。特にあの死体。どうしてあそこまでやらなければならなかったのかが重要なんだ」


コウモト アヤセ
「それは、確かに。澪の見立て通りなら、一度殺した後しばらく時間をおいてから死体を痛めつけたってことになるんだもんね?」


ノノハラ レイ
「うん。でさ、朝倉さんの身体には、首や胴体、手足も含めて157箇所も刺し傷があるのはモノクマファイルの通りなんだけどさ。それの分布がおかしいんだよね」


コウモト アヤセ
「どういうこと?」


ノノハラ レイ
「傷が全体に散らばってるのってさ、冷静に考えると変じゃない?
 いくら朝倉さんが小柄だからって、首の下から足の先まで1メートルぐらいはあるんだよ?
 つまり、滅多刺ししている最中に、わざわざ少しずつ移動しなきゃいけないわけじゃない。
 おまけに腹部も背部も刺し傷があるから、一回以上は体をひっくり返しているんだ。いくら怨恨があったって、流石に変でしょ?」


コウモト アヤセ
「それは確かにそうだけど……、一体何のために?」


ノノハラ レイ
「何がしかの意図があったのは確かだと思うよ。普通に考えたらここまでやる必要はない。
 なら、普通じゃない理由があると考えるべきだ」


コウモト アヤセ
「わざわざ全身を刺していった理由……、例えば、犯人に繋がるような痕跡か何かを隠すため、とか?」


ノノハラ レイ
「かもね。痕跡を隠すための工作を隠すために全体に細工した、なんてよくある手だし。
 うん、良い線行ってると思うよ。全身に剣を突き立てて、おまけに関節やら骨やらをバキバキに折るなんて。指なんか辛うじて原形を留めてるってぐらいになってるし。
 オーバーキルにも程がある。普通に殺す分には全く必要ないぐらい重傷負わせる理由は一体何なのか?
 証拠隠滅の為だとすれば、犯人が隠したかったものを考えなくちゃいけない。その先に見える真相が真実なんだ」


コウモト アヤセ
「秘密は秘密と知られた時点で秘密じゃなくなる。そういう事ね?」


ノノハラ レイ
「隠されたものはその存在が知られた時点でいずれ暴かれる。そういう運命なのさ」



574 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/11(日) 23:28:22.59 ID:hNL8E9zC0



ノノハラ レイ
「……時に綾瀬さんや、こっちに来るとき外の景色は見たかい?」


コウモト アヤセ
「なんでそんな急に老け込むのよ。ユーミアさんとは特に話すこともなかったから眺めてはいたけど……、それが?」


ノノハラ レイ
「足元に広がる雪面は見たかい?」


コウモト アヤセ
「んー、見てない、かな。どっちかというと空をぼんやり見てたから」


ノノハラ レイ
「そうかいそうかい。……いやね、シュプールが二人分あるから、それがいつ造られたものなのかと思ったのさ」


コウモト アヤセ
「シュプールって?」


ノノハラ レイ
「スキーで滑った後に出来る轍だよ。ほら、二人分あるでしょ? 蛇行してるのと真っ直ぐのとがさ」


コウモト アヤセ
「あ、本当だ。……これって、誰かがスキーで滑ったって事?」


ノノハラ レイ
「多分ね。一つは犯人が、もう一つは公がつけたものとボクは踏んでいる」


コウモト アヤセ
「どうしてわかるの?」


ノノハラ レイ
「後で直接公に聞いてみればすぐわかることだけど……、多分公がゴンドラに乗って別館へ向かったときはシュプールが一人分あったと思うんだよね。
 それとゴンドラ乗り場の変わりようを見て公は犯人がスキーを使って別館から本館へ移動したと考えたんじゃないかな。判断材料としてはちょっと弱いけど」


コウモト アヤセ
「ひょっとして、主人君が試したいことってそれの事なの?」


ノノハラ レイ
「ボクはそう読んでいる。ま、聞けばわかることだよ。――そう言ってる間にそろそろ着きそうだ」



 本館に到着した。



575 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/11(日) 23:44:17.34 ID:hNL8E9zC0



ノノハラ レイ
「さぁて、まずは焼却炉から調べてみようかな。望み薄だけど」


コウモト アヤセ
「もう手遅れだってこと?」


ノノハラ レイ
「多分ね。今度はしっかり焼却炉を起動させて証拠隠滅してるんじゃないかなぁ」


コウモト アヤセ
「そう思ってるなら、行く意味ないんじゃない?」


ノノハラ レイ
「いいや? 仮に使われていたとしても、犯人が焼却炉を使って処分した証拠品はなんなのか、それを推測する余地はあるはずだよ」



 焼却炉に向かった。



ウメゾノ ミノル
「……ゴメン。まさかとは思ってたんだけど、やっぱり先にやられちゃってたよ」



 ですよね。やっぱり起動してましたか。焼却炉。



576 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 00:02:38.45 ID:nMvSO+or0


ノノハラ レイ
「此処に来た時にはもう?」


ウメゾノ ミノル
「うん。いや、前回同様に行くかと思って一縷の望みを託してみたんだけど、御覧の有様だよ」


コウモト アヤセ
「……犯人が焼却炉を使ってでも処分したかった証拠があったってことは確かみたいね」


ノノハラ レイ
「だね。で、他に何かあるかい? 今朝も朝練はやったんだろ? その時はどうだったのさ」


ウメゾノ ミノル
「朝の……6時15分ごろには何もなかったってことは証言できるよ。軽く朝練してた時中には目ぼしいものなんて無くて、空っぽだった。
 まぁ、20分には部屋に戻ったからその後に誰かが作動させたってことになるんだろうけど」


コウモト アヤセ
「どうして今日に限ってそんな早い時間に?」


ウメゾノ ミノル
「……ちょっと調子が悪かったんだよ。で、二度寝して朝食って時にアナウンスが。
 でもしょうがないじゃないか、事件が起きてるだなんて思ってなかったんだから。
 それに、死体発見アナウンスが流れたときはあのパニックの中で悠長にここの様子を見に行くなんてできそうになかったし」


ノノハラ レイ
「まぁ、事件を事前に予想できるのは関係者か犯人ぐらいだろうしねぇ。しょうがないでしょ」



コトダマGET!
梅園穫の証言:6時15分から20分の間は焼却炉の中は空で、その後に何者かが焼却炉を起動させた。



577 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 00:26:38.29 ID:nMvSO+or0



ウメゾノ ミノル
「やっぱさ、本当の犯行現場はこっちなんじゃないかなぁ」


ノノハラ レイ
「というと?」


ウメゾノ ミノル
「購買やガチャで死体を運ぶのに手頃なカバンは手に入るからさ、大荷物を背負ってゴンドラに乗るところさえ見られなければ現場は別館ってことになるじゃない。
 それなら、死亡時刻に本館に居たってアリバイを作っておけばゴンドラリフトの稼働時間の関係上別館で起きた事件には関係がないってことになるし」


コウモト アヤセ
「そう言われてみれば確かに……。でもそれってかなりリスキーよね?」


ノノハラ レイ
「しれっと言ってるけど、その大荷物を背負ってゴンドラに乗り降りしてるとこ見られたら終わりだからね。
 そんな目立つ行為誰の目にも入れないなんてちょっと現実的じゃなくない?」


ウメゾノ ミノル
「いやいや、だからこそだって。現に焼却炉で犯人は証拠を燃やしてるんだぜ? この中には絶対その時使ったカバンかなにかが入ってたんだよ!」


コウモト アヤセ
「そこまで熱弁しなくったって……」


ノノハラ レイ
「いずれにせよ、殺害現場も学級裁判で明らかになるでしょ。梅園クンは引き続きここらを捜査する予定?」


ウメゾノ ミノル
「まあね。ギリギリまで粘って焼却炉の停止を待とうと思うんだ。金属片があったらほぼ間違いなくそこにカバンがあったことの証明になるだろうし」


ノノハラ レイ
「じゃ、ボク等は本館の方を調べに行くよ。いいよね、綾瀬?」


コウモト アヤセ
「ええ」


ウメゾノ ミノル
「仲のいいことで」



 本館へ向かった。



578 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 01:10:47.09 ID:nMvSO+or0


ノノハラ レイ
「さて、朝倉さんの部屋に行こうか。……正直、余り気乗りしないけど」

コウモト アヤセ
「どうして?」

ノノハラ レイ
「ほら、朝倉さんの正体をなまじ知ってる身としてはさ、部屋がどんなかはある程度予想がついちゃってね」

コウモト アヤセ
「あー……。それはほら、覚悟を決めるしかないんじゃない?」

ノノハラ レイ
「頼むから普通でありますように――、なんて淡い期待は無価値かなぁ」


 朝倉さんの部屋へ向かった。


ノノハラ レイ
「鬼が出るか蛇が出るか――っと」

コウモト アヤセ
「……よかった。普通みたい」


 ドアを開けるとそこには壁一面の写真――なんてことはなく、何の変哲もない普通の部屋を捜査している七宮さんがいただけだった。
 ちょっと拍子抜けしたなとかは、全然思っていない。


ナナミヤ イオリ
「二人そろって、どうかしたのですか?」

ノノハラ レイ
「いや、何もないなら何もないでいいんだ。それにこしたことはないから」

コウモト アヤセ
「そうそう。わたし達が勝手に変な想像してて、それがただの偏見だってわかっただけだから」

ナナミヤ イオリ
「……? それはさておき、先程は聞きそびれましたが、野々原さん。その格好はどうしたのですか?」

ノノハラ レイ
「浅い事情があるんだ、触れないで欲しいな」

ナナミヤ イオリ
「もしや今まで性別を偽って……?」

ノノハラ レイ
「普通に男だから。男湯に入ったときアラーム鳴らなかったでしょ」

ナナミヤ イオリ
「ならとうとうそちらのケが……?」

ノノハラ レイ
「邪推を重ねないでくれ。――で、ちゃんと調べてる? 何か見つかったの?」

ナナミヤ イオリ
「……特にこれと言って何も。死者への冒涜も憚られますし」

コウモト アヤセ
「そう言われると何も言い返せないわね」

ノノハラ レイ
「こちとら命懸けなんだから、多少の禁忌には目を瞑って欲しいものだけど……。
 ベッドの下とは、また古典的な隠し方だ事。中身は想像がつくから余り見たくないんだけどなぁ」

コウモト アヤセ
「アルバムよね、それ。……わぁ」

ナナミヤ イオリ
「何が……。……。……? ……!? ……」


 七宮さんが気絶した。まぁ、見るからに初心そうだし、しょうがないよね。
 増田クンの盗撮写真。あれやこれやもバッチリ写っちゃってるからね。仕方ないね。


コトダマGET!
アルバム;増田勇のあられもない姿も写されている盗撮写真が納められている。アサクラトモエの部屋のベッドの下で見つかった。


579 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 01:35:28.23 ID:nMvSO+or0


 失神した七宮さんをよそに朝倉さんの部屋を見回したけど、これ以上めぼしいものはなさそうかな。


ノノハラ レイ
「あとは……、ランドリールームぐらいか」

オモヒト コウ
「その必要はないな。もう調べ終わったところだ。目ぼしいものは何一つなかったよ」


 タイミングを見計らったかのように、公がやってきた。その隣には小鳥遊さんもいる。


ノノハラ レイ
「やぁ公。実験の結果はどうだった?」

オモヒト コウ
「お見通しってわけか。ま、それ以外は特にこれと言って収穫はなかったからな」

ノノハラ レイ
「へぇ。こっちは色々と収穫はあったよ。それで、結果は?」

オモヒト コウ
「ゴンドラリフトとスキー、どちらで降りるのがはやいか。その検証だ」

コウモト アヤセ
「前者は10分で固定だけど……、後者は主人君が試してみたのよね?」

オモヒト コウ
「その通りだ。夢見にはゴンドラリフトで降りてもらって、俺はスキーで降りた」

タカナシ ユメミ
「お兄ちゃんがあたしを迎えてくれたって結果で終わったの。ちょっとびっくりしちゃった」

オモヒト コウ
「スキーで降りたら大体7〜8分ってところだな」

ノノハラ レイ
「それをやろうと思ったのは、やっぱりシュプールやらスキー用具入れやらを見たから?」

オモヒト コウ
「察しの通りだ。その質問をしてきたんだから分かってるとは思うが、蛇行してるのが俺のつけたものだよ」

ノノハラ レイ
「もう一方の直線は公が実験をやる前――つまり死体発見前につけられたものとみて間違いはないみたいだね」

オモヒト コウ
「だろうな。そしてそいつは極めて怪しい。途中何か所かかなり急な斜面があったんだが、そこでもシュプールはまっすぐだった。
 減速することは一切考慮せず、ただ最短最速を目指したコース取りって感じだ。あれなら5分もかからずに降りられるかもしれない」

ノノハラ レイ
「ゴンドラリフトで10分かかる距離を半分の時間で、か。にわかには信じられない話だ」

コウモト アヤセ
「スキーにはそんなに詳しくないけど、真っすぐ滑ることってそんなにおかしいことなの?」

オモヒト コウ
「傾斜が緩やかならシュプールが一直線になるのは解る。だが急斜面でシュプールが一直線って言うのは不自然だ。一切の減速を考慮してないってことだからな」

ノノハラ レイ
「だから普通は蛇行するんだよね。急斜面で減速しないとなると、下手したら転んだら大怪我じゃすまない大惨事間違いなしだ」

オモヒト コウ
「だがそれをやってのけた者がいるのは間違いない。そいつはよっぽど身体能力に自信がありかつ――」

ノノハラ レイ
「恐怖をまるで知らない、あるいは相当な精神力の持ち主ってことになる」

オモヒト コウ
「それが出来る人間は限られてくるが――どう思う、澪?」

ノノハラ レイ
「ボクも大方見当はついてるよ。けど違和感がある」

オモヒト コウ
「俺もだ」

タカナシ ユメミ
「……何二人で意気投合しようとしてるのよ」

ノノハラ レイ/オモヒト コウ
「「あまりに露骨すぎる」」
580 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 02:05:12.18 ID:nMvSO+or0



コウモト アヤセ
「……息ピッタリね」

オモヒト コウ
「――今ので疑惑が確信に変わったよ」

ノノハラ レイ
「ボクだけだと思ってたんだけど、公もとなるといよいよもって間違いないね」

オモヒト コウ
「どうする? このままじゃ思うつぼだぞ」

ノノハラ レイ
「どうするもなにも、学級裁判如何でしょ。ボクの所見では議論次第って感じ」

オモヒト コウ
「現場は本館か別館か。それが肝だな」

コウモト アヤセ
「……何此の疎外感」

タカナシ ユメミ
「奇遇ね。あたしもお兄ちゃんが何考えてるのか全然わからないから話についていけないの」

オモヒト コウ
「俺が思うに、死因は頸椎骨折だろう。前の事件でお前がオルトロスにやったように、な。モノクマファイルにも全身の骨が粉砕骨折しているとあるから、首の骨だって折れてもおかしくない。
 刺し傷はフェイクだ。服に血が滲んでないことから死後8時間以上経過してから、何らかの痕跡を隠す目的でやったんだ。
 しかも犯人は相当な怪力の持ち主だ。それくらいは朝飯前なんじゃないか?」

ノノハラ レイ
「いくら被害者が小柄とはいえ、そう簡単にできるものかな?」

オモヒト コウ
「俺の考えが正しければ、楽に力技で捻じ伏せられたはずだ。体格差も十分だろ?」

ノノハラ レイ
「確かにその通りだけど。それじゃ公はどっちが現場だと思ってるの?」

オモヒト コウ
「一度本館で殺してから、隙を見て別館へ死体を運び込めば、リフトの稼働時間も加味してアリバイを作ることができる。
 朝倉は小柄だから、映画観賞会で使ったような大きいクーラーボックスの中に詰め込めば自然に運べるだろう。
 誰にも見られずにゴンドラリフトに乗り込んで別館で死体を発見させれば、現場は別館だと思わせることができる。
 死亡時刻がゴンドラリフトの稼働時間外だとわかれば、当時本館にいたと証明されればアリバイ成立だ」

ノノハラ レイ
「ゴンドラリフトでも片道10分かかる距離を、あの猛吹雪の中、しかも死体を抱えて登るとなると最早自殺行為ですらないからねぇ。
 じゃぁ死体をあそこまで損壊させたのは、それをごまかすためだって言いたいわけ?」

オモヒト コウ
「死体をクーラーボックスに詰めるために蹲るような姿勢を取らせていたのだとしたら、死後硬直で不自然な姿勢のままになるからな。それをごまかすために全身の骨を砕いたと考えれば辻褄は合う。
 全身を滅多刺しにしたのは死斑を隠すためのカモフラージュと考えるのが妥当だろう」

タカナシ ユメミ
「じゃあ犯人は23時に本館に居た人間ってことになるのね! 流石お兄ちゃん!
 その辺のアリバイはあたしが裁判の場で証言してあげるからね♪」

ノノハラ レイ
「小鳥遊さんは解るんだ? 23時以降誰がどこにいたのかを」

タカナシ ユメミ
「……女装してる奴なんかに教えることなんて一つもないもん」

オモヒト コウ
「おい、夢見」

ノノハラ レイ
「ま、裁判での証言とやらに期待することにするよ」


コトダマGET!
主人公の証言:死体発見前につけられたシュプールは最短最速を目指したようなコーナリングで、5分足らずで別館から本館へ移動できそうだ。


581 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 02:15:55.87 ID:nMvSO+or0


―キーン、コーン、カーン、コーン



モノクマ
「そろそろいいかな? もう限界だから、もういいよね?
 ってなわけで、捜査時間しゅーりょー!オマエラは至急、別館一階のエレベーターホールにしゅーごー!
 うぷぷ。ワックワクドッキドキの、ハートフルでスペクタクルな学級裁判の始まりだよ!」



 これで捜査は終了、か。まぁ、大方の証拠品はそろったわけだし。
 後は犯人の立ち回り次第、ってところかな。



オモヒト コウ
「おい、伊織。起きろ、裁判が始まるぞ」


ナナミヤ イオリ
「うーん、うー……ん、っは! 何か破廉恥なものを見た記憶が!」


ノノハラ レイ
「片隅に追いやって消してしまえばいいんだ。思い出そうとすればまた気絶するだろうから」


ナナミヤ イオリ
「……そうですね、そうします。……その、起こしてくれたのは嬉しいからそろそろ離れて欲しいのだけど」


オモヒト コウ
「おっと、悪い」


タカナシ ユメミ
「羨ましい……っ!」


オモヒト コウ
「何か言ったか?」


タカナシ ユメミ
「ううん、何も言ってないよ、お兄ちゃん♪」


ノノハラ レイ
「この手のひらの返しっぷりよ」


タカナシ ユメミ
「何か言った?」


ノノハラ レイ
「別に? 珍しいことじゃないことを言っただけだよ。さ、時間がかかるんだから、さっさとゴンドラリフトに乗ろうぜ」



 再びゴンドラリフトに乗って、別館へ向かった。


582 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 02:25:53.22 ID:nMvSO+or0



 別館のエレベーターホールに全員が集合している。
 犯人はこの中にいる。その緊張感からか、空気がひりついているのが分かった。



モノクマ
「うぷぷ。役者もそろったところで、学級裁判場へ13名様ごあんなーい!」



 モノクマが楽し気に腕を振り上げると、エレベーターのドアがあき、さらに一基のエレベーターがせりあがって、その下のエレベーターがその姿を現した。



ノノハラ レイ
「こんな仕掛けがあったなんてね。本館のあれは何だったんだ」


モノクマ
「あれ? ただのパフォーマンスだよ! 前回は派手目にいったから今回は抑えてみたんだ!
 さあ、時間は有限だ! 待っちゃくれないぞ! 早く乗った乗った!」



 モノクマに促されるまま、全員がエレベーターに乗っていく。
 ――流石に13人も乗るとなるとかなり窮屈だ。
 そしてエレベーターは下降を始める。深い深い、あの忌まわしい学級裁判場へボク等を誘う為に。


583 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 02:29:29.93 ID:nMvSO+or0



ノノハラ レイ
「……ねぇ、綾瀬。真実と嘘、どっちが正しいと思う?」


コウモト アヤセ
「それは、当然真実でしょ?嘘をつくのはいけないことなんだから」


ノノハラ レイ
「じゃぁさ、皆が傷つく残酷な真実と、誰も傷つかない優しい嘘、なら?」


コウモト アヤセ
「わたしはそれでも真実のほうがいいと思う。嘘はいつかばれる時が来るし、現実から目を背けたりしたら駄目だと思うから」


ノノハラ レイ
「そう、だよね。うん。ありがと。これで僕のやるべきことは決まったよ」


コウモト アヤセ
「どういたしまして……?」



 答えはもう出てる。それが正しいであろうことも予想がつく。
 頭では理解していても、心の底ではその答えを否定したいと思っているのは、認めたくないから。認めてしまえば、そこには希望なんてカケラもありはしないから。
 明らかになるのは、考えうるどんな可能性よりも無慈悲で理不尽で不条理で冷徹で冷酷で残酷で非情で無情な現実なのだから。



 さぁ、始めようか。苦し紛れの言訳。不条理な言いがかり。理不尽な裏切り。
残酷な真実。無慈悲な判決。
 冷酷無情な、学級裁判。



584 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 02:41:58.64 ID:nMvSO+or0


――ということで捜査パート終了となりました。いよいよ学級裁判の始まりです。


――今回も今までで出ている情報でクロを特定することが可能となっております。


――答えが分かった方はクロの名前と証拠品となるコトダマをワタクシのTwitterのDMに送ってくださいませ。


――正解者の皆様にはささやかながらプレゼントをお送りいたしたいと思います。


――締め切りは来月中旬、学級裁判開始までとさせていただきますので、皆様のご応募、お待ちしております。


――それでは、よろしくお願いいたします。


――おやすみなさい。


585 :♪私と僕の学級裁判 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:31:34.92 ID:Xz0HGEmy0



  何故朝倉巴の遺体は死後も痛めつけられなければならなかったのか?
  混迷の裁判の中、明らかになる被害者の死亡時の全員のアリバイ。
  この不可能犯罪を可能にした犯人は誰なのか?
  朝倉巴を死に追いやったクロを突き止める学級裁判の行く末とは……?


586 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:32:15.29 ID:Xz0HGEmy0



   学 級 裁 判

    開 廷 !


587 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:34:04.51 ID:Xz0HGEmy0



 エレベーターが止まり、扉が開く。その先の光景は見慣れた忌々しい裁判所。
 咲夜さんを殺した誰かさんの遺影は四枚の桜の花弁で象られたバツ印で顔を潰されている。
 朝倉さんの遺影は何の皮肉か、例の剣をバツ印に見立て、刀身の長さも相まって首に刃を突き付けられているような形になっていた。
 そしてそれぞれが自分の席に就く。ボクの真正面に公がいて、後ろにはモノクマ。正直気が滅入る配置だけど、泣き言は置いておくとしよう。



モノクマ
「まずは、学級裁判の簡単な説明をしましょう。学級裁判では誰がクロかを議論し、その結果はオマエラの投票により決定されます。
 正しいクロを指摘できればクロだけがおしおきされますが……。
 もし間違った人物をクロとした場合は、クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけが晴れてこのホテルから脱出する権利が与えられます!」



 聞き飽きたテンプレなモノクマのセリフを皮切りに、忌々しい学級裁判が再び幕を開ける。



588 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:35:30.31 ID:Xz0HGEmy0



ノノハラ レイ
「あ、ちょっといい? 議論始める前にさ、裁判長に聞いておきたいことがあるんだよね」



 まずはボクが口火を切る。皆してこっち睨んでくるけど、今回ばかりは許してほしいな。



モノクマ
「にゃぽ?」



 モノクマもキョトンとしないでよ。進行が滞るじゃない。
 まぁ、いい。さっさと話してしまおう。余計なことを考えるのは時間の無駄だ。



589 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:37:19.86 ID:Xz0HGEmy0



ノノハラ レイ
「自殺だった場合は被害者に投票すればいいのはなんとなく想像がつくけどさ、病死や事故死だった場合はどうするの?
 自己責任ってことでその人自身がクロ? それとも原因を作った人間がクロにされるの?」


モノクマ
「……イヤなところ聞いてくるなぁキミも」


オモヒト コウ
「その質問に何の意味がある?」


ノノハラ レイ
「後で揉めたくないから言質取りたいだけだよ。で、どうなのさモノクマ」


モノクマ
「ではお答えしましょう。結論から言うと、クロの定義は『コロシアイ修学旅行の参加者の中で、被害者を直接死に至らしめた者』としています。
 なので例えばオマエラの中に末期がん患者がいて、コロシアイ修学旅行期間中に死んでしまった場合は、クロがいないことになるので学級裁判自体起きません。
 傘を貸した相手が不運にも階段から転がり落ちて、そのはずみで傘が喉に刺さって死んでしまった場合、傘を貸さなければ相手は死ななかったかもしれませんが、直接転ばせたわけではないので、これもクロにはなりません。
 ですが、転んだ原因が階段に落ちていたバナナの皮を踏んだことだった場合、バナナの皮をその場所に置いた者は、殺意があろうとなかろうと、問答無用でクロにいたしますのでくれぐれもご注意ください!」


ノノハラ レイ
「――ふぅん。つまり学級裁判では過失致死も未必の故意も殺人と同義で、判決は無罪放免か情状酌量の余地なく死刑のどちらかっていう認識でいいんだね?」


モノクマ
「はい、その通りでございます」


590 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:38:24.22 ID:Xz0HGEmy0


ノノハラ レイ
「じゃぁ物は次いでなんだけどさ、死体発見アナウンスは三人が死体を発見した時にされるんだよね? その三人にクロは含まれるの?」


マスタ イサム
「いい加減にしろよ。そんな質問に何の意味があるっていうんだ?」


ノノハラ レイ
「いやだなぁ、ルールはちゃんと詰めておかないと。ゲームマスターとプレイヤーのルールの認識の齟齬なんて一番やっちゃいけないやつなんだからさ。
 特にこういう命がかかってる場面だと、それこそ致命傷になりかねないでしょ?」


マスタ イサム
「……そうかよ」


ノノハラ レイ
「で、どうなのモノクマ? 含むの? 含まないの?」


モノクマ
「随分と意地の悪い質問をしてくる生徒だこと……。ま、お答えしましょう。結論から言えば含みません。
 ただし、状況に応じてアナウンスのタイミングをずらす等フレキシブルに対応させていただく場合がございます、とだけ言っておくよ。ボクから答えられるのはここまでだからね!」


591 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 20:03:27.61 ID:Xz0HGEmy0



ノノハラ レイ
「そ、わかったよ。説明ご苦労様。じゃ質問終わり。始めようか。まず朝倉さんの――」


サクラノミヤ アリス
「ちょっと待ちなさいよ。なに勝手に話進めてるわけ?」


ノノハラ レイ
「何か言いたいことでもあるのかい?」


サクラノミヤ アリス
「現状最も疑わしいアンタが議長面すんなって言ってるのよ」


ノノハラ レイ
「疑うには根拠に足りないと思うけど……、まぁいいや。ユーミアさん、取り敢えず検死の結果から聞かせてくれる?」


サクラノミヤ アリス
「ちょっと!」


ユーミア
「落ち着いてください、議論が進みませんから。……結論から申し上げますと、死亡時刻は昨夜の23時から25時の間と考えられます。
 根拠としては、顎に見られた死後硬直がつま先まで達していなかったこと、体内の血液が完全に凝固していることから、8時間以上12時間未満となります。
 また、全身の刺し傷と骨折は死後につけられたもので間違いないでしょう。それらしい腫れも見つからなかったので」


オモヒト コウ
「死因は解らずじまいってことか?」


ユーミア
「残念ながら……。損壊が激しく特定には至りませんでした。解剖ができれば話は別だったのですが……。
 生憎そこまで法医学の知識を持ち合わせてはいなかったのもので……」


マスタ イサム
「そう、気に病むな。お前は充分に役に立ってるよ」


ユーミア
「マスター……!」


592 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 20:49:11.65 ID:Xz0HGEmy0


ウメゾノ ミノル
「茶番はその辺にしておいて、だ。要するに被害者はゴンドラリフトが動いていない時間帯に殺されたってことじゃないか。
 なら、現場は本館だ。殺した後、今朝別館へ死体を運んで一連の工作を行ったんだよ」


サクラノミヤ アリス
「本気で言ってるの? ただでさえ死体をあれだけ甚振るなんてリスクの高いことするのに、それに重ねて死体を運んだって?」


ウメゾノ ミノル
「実際そうとしか考えられないじゃないか。ゴンドラリフトの稼働時間を考えれば23時には被害者は本館に居た筈だもの。別館に寝泊まりする場所なんて無いんだから」


サクラノミヤ アリス
「馬鹿ね。朝に死体を運んでるところを見られたらそれでおしまいじゃない」


オモヒト コウ
「……死亡推定時刻にも個人差はあるだろう。もっと前に本館で殺して、22時50分にゴンドラで死体を別館の入り口近くまで運び、スキーで滑り降って何食わぬ顔で本館に戻ったとも考えられる。
 翌朝急いで死体を磔にすれば、あたかも別館で事件があったかのように見せかけることができ、23時以降に本館に居た人間にアリバイができるって寸法だ。
 あそこまで死体を痛めつけたのは、その痕跡を隠すため。死斑や死後硬直による不自然な姿勢を誤魔化すための偽装工作だったんだ」


サクラノミヤ エリス
「でも、そこまでやっておきながら、結局は犯行現場を誰かに見つかってしまったらおしまいですよね? アリバイ工作も何も無いんじゃないですか?」


マスタ イサム
「絶対に見つからない自信があったんじゃないか? 22時50分となれば消灯時間だ。わざわざ寒い外に出ようとする奴はいないだろう。
 同じく、朝一で別館に行けば誰かに見られる可能性は限りなく低い。賭けに出るとしても悪くはないと思うぞ」


593 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 21:08:46.56 ID:Xz0HGEmy0



ナナミヤ イオリ
「正直、どこで殺したかなんてどうでもいいと思うのですが。そんな時間帯ならクロであろうとなかろうと“自分の部屋に居た”と主張するだけでは?」


タカナシ ユメミ
「いや、大事でしょ。ここでわざわざアリバイを主張するような証拠を残した人間がいるかいないかで大きく変わるんだから」


ナナ
「きっとお風呂で殺したのよ。キレイにするのが簡単だから」


ノノ
「返り血が飛び散っても洗い流せちゃうもんね」


ノノハラ ナギサ
「……物騒な言葉が聞こえたような気がするけど、気のせいだよね。でも、やっぱり事件は別館で起きたんだと思う」


ノノハラ レイ
「困ったね。初っ端から意見が真っ二つだ」


コウモト アヤセ
「澪、そのセリフは――」


594 :ファンサービスを受け取れ! ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 21:14:37.68 ID:Xz0HGEmy0



モノクマ
「かっとビングだ!」


595 :♪モノクマ先生の課外授業 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 21:22:06.60 ID:Xz0HGEmy0



モノクマ
「いきなり“コイツ”の出番とはね。よもやよもやだ!」


コウモト アヤセ
「だから言ったのに」


ノノハラ レイ
「ま、いいじゃないの、初手がこれっていうのも。こっちとしても流れを掴んでおいた方がいいし」


モノクマ
「少年少女諸君! 思うが儘に意見をぶつけ合うがいい!」




       意  見  対  立  



596 :♪議論SCRUM ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:12:34.74 ID:Xz0HGEmy0


             犯行現場は何処か?


             本館だ!/別館だ!


            ―議論スクラム開始―



ウメゾノ ミノル
「常識的に考えなって。事件当時朝倉さんが別館にいる【理由】がないじゃないか」


    /ノノハラ レイ
    /「それって逆に言えば、【理由】があれば朝倉さんが別館に居てもおかしくないってことでしょ?」


オモヒト コウ
「本館に居たと考えるのが普通だろ。【痕跡】でもあれば話は別だがな」


    /ノノハラ ナギサ
    /「それらしい【痕跡】なら、お兄ちゃんが見つけてくれたもん」


タカナシ ユメミ
「事件が本館で起きてないと【アリバイ】が成立しなくなるじゃない!」


    /ナナミヤ イオリ
    /「そもそもその時間帯に【アリバイ】があったほうが逆に不自然な気がしますが?」


マスタ イサム
「仮に現場が別館だったとしたら、【犯人】も現場に居たってことになるよな?」


    /ナナ・ノノ
    /「「その時間に絶対【犯人】がいなきゃいけないって理由はないよ?」」


ユーミア
「ゴンドラリフトの稼働時間がある以上、【移動手段】は限られているのでは?」


    /コウモト アヤセ
    /「リフト以外の【移動手段】があるなら、十分に可能でしょ?」


ウメゾノ ミノル
「犯人は【焼却炉】を使っているんだ。別館で殺したのなら何を燃やした?」


    /サクラノミヤ エリス
    /「別の証拠品を【焼却炉】で燃やしたかも知れないじゃないですか」


オモヒト コウ
「別館で殺されたって言う【決定的な証拠】がどこにあるっていうんだ?」


    /サクラノミヤ アリス
    /「【決定的な証拠】――とは違うけど、怪しい奴からの証言ならあるんじゃない?」


597 :全論破 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:16:55.61 ID:Xz0HGEmy0



「これがボク等の答えだ!」
「これが私たちの答えだ!」
「これが私達の答えです!」
「これがナナの答えよ!」
「これがノノの答えだよ!」
「これがわたし達の答えよ!」
「これが私たちの答えです!」
「これがあたし達の答えよ!」

598 :♪学級裁判復活編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:35:25.49 ID:Xz0HGEmy0



ノノハラ レイ
「いい加減目覚めなよ。物証もそれなりにそろっている以上、現場は別館で間違いないんだって」


ウメゾノ ミノル
「そうは言ってもだね、って言うか、それを言っちゃあ君が――」


サクラノミヤ アリス
「さっさと白状しちゃいなさいよ、野々原澪。聞けば、どう言う訳かゴンドラリフトが動く前から別館に居たらしいじゃない」


コウモト アヤセ
「……それはそう、だけど」


ユーミア
「ユーミア達は稼働開始時間である6時丁度にゴンドラリフトに乗りました。それよりも前に別館に居るには夜中に徒歩で登るか――」


サクラノミヤ アリス
「最初から別館に居た。被害者もね。どう? 何か反論があるなら言ってみたら?


599 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:43:30.07 ID:Xz0HGEmy0



ノノハラ レイ
「ないよ。その通りだ。ボクは昨晩から今朝にかけてずっと別館に居たからね」


オモヒト コウ
「おい!」


サクラノミヤ アリス
「あっそ。じゃ、あんたがクロってことでいいのね?」


ノノハラ レイ
「そんなわけないじゃん。第一、ボクは男なんだから女湯には入れないんだよ?
 死体が発見された非常事態ってことで入れただけであって」


サクラノミヤ アリス
「じゃあどうして一晩中別館に居たわけ?」


ノノハラ レイ
「……態々話すほどの事でもないと思うから言わないし、言えないんだ。こればかりは。ボクの口からは、ね」


コウモト アヤセ
「ちょっと、澪?!」


ノノハラ レイ
「それにさ、ほら。ボクが今更何を言おうが、どうせ信じてくれないでしょ、キミ等。
 そういう無駄はさ、極力省かないと。ボクのキャパ的にもキツいから」


サクラノミヤ アリス
「黙秘ってワケ? それ、自分で自分の首絞めてるって解ってる?」


ノノハラ レイ
「好きなだけ言えばいい。ボクは、嘘は吐かないし約束も守る男だからね」



600 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:52:09.91 ID:Xz0HGEmy0

―――



 どうしてこんなときに黙秘権なんて使うのよ澪ったら……。
 ――待って。もし澪の言うことが本当なら。
 鍵は他の誰かが持っている。その誰かから口を割らせろって事ね。
 ちょっと疑問に思っていたことが、一つだけある。
 それは――



 河本綾瀬に対する反応

 ❘>野々原澪に対する反応

 朝倉巴に対する反応



 これよ!


601 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:53:53.65 ID:Xz0HGEmy0



コウモト アヤセ
「……ねぇ、澪以外の男子に聞きたいことがあるんだけど。何か隠してない?」


ウメゾノ ミノル
「何の話かな。脈絡って知らないの?」


コウモト アヤセ
「梅園君も主人君も、しきりに現場は本館だって言ってた。増田君も別館が殺人現場だって意見には反対してた」


ウメゾノ ミノル
「そりゃ確かにそうだけどさ、さっき言った通りあれは――」


コウモト アヤセ
「その推理を信じるにはあまりにも根拠が薄い。本当は別の理由があったんじゃない? 殺人現場が本館であって欲しい理由が」


オモヒト コウ
「――何だ。言ってみろ」


コウモト アヤセ
「結論から言うわね。澪を含めたあなた達四人は、昨日の夜からずっと別館に居た。具体的に言えば、麻雀をやっていた。違う?」


オモヒト コウ
「俺たち四人が揃いも揃って別館で夜通し麻雀、か。面白い考えだが、それこそ根拠が薄いぞ。
 確かに雀卓を使用した形跡はあるだろう。だがだからと言ってどうしてそれがそんな推理に行きつくんだ?
 時間ギリギリまでやって、ゴンドラリフトで帰った可能性だって十分あるだろう?」


コウモト アヤセ
「今日の澪への反応」


オモヒト コウ
「――!」


コウモト アヤセ
「女子のみんなは澪の格好について言及してきたのに、男子はみんな澪の格好について触れもしなかった。
 “何なんだそのふざけた格好は”って、普通は言うんじゃない? 言わなかったのは、事情を知っていたから。違う?」


602 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 23:09:39.60 ID:Xz0HGEmy0



マスタ イサム
「……そこまで言われたんなら仕方ない、か」


ウメゾノ ミノル
「おい、ちょっと!」


オモヒト コウ
「しこたま笑った後だったからな。そこまで気が回らなかったってのもある。徹夜明けだしな。
 ――それに、思いたくなかったんだ。俺達がのうのうと遊んでる傍らで、誰かが朝倉を殺しただなんて」


サクラノミヤ アリス
「……呆れた。まさか自分の命がかかってるのに、律義に約束守ろうとしたの?」


ノノハラ レイ
「今日一日中この格好でいる、その事情を口外しない。それが最後の一局で大負けしたボクの罰ゲームだからね。粛々と受けただけだよ。
 それに、友達を売るような真似したくなかったし」


オモヒト コウ
「だからってお前なぁ」


サクラノミヤ アリス
「でも同じね。容疑者が増えただけで。犯人はあんた達の中の誰かでしょ」


ウメゾノ ミノル
「忘れたのか? 大前提として、男は女湯に入れない。その状態でどうやって被害者の死体を女湯の壁に磔に出来るんだよ」


マスタ イサム
「それに、俺達には全員アリバイがある。昨日の23時頃から今日の6時少し前までずっと麻雀をやっていたのは事実なんだからな」


オモヒト コウ
「麻雀は基本的に四人でやるゲームだ。対戦時間も長い。小休憩もあったが、基本的に誰もゲームコーナーから出なかったな」


ウメゾノ ミノル
「で、6時丁度にゴンドラに乗って本館へ戻ったんだ。朝風呂に入りたいって言った野々原君を置いていってね」


ノノハラ レイ
「だから、ボク等四人には完璧なアリバイがある。
 ――これじゃ誰も朝倉さんを殺せない。困ったね?」


603 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 23:20:03.17 ID:Xz0HGEmy0


   学 級 裁 判


     中断



604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/16(月) 23:03:03.75 ID:63pvuc400
待ってました!期待してます
605 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:35:10.70 ID:vCkDR9zS0


   学 級 裁 判


     再 開



606 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:38:05.30 ID:vCkDR9zS0



ウメゾノ ミノル
「じゃぁやっぱさ、事件は本館で起きたんだって。それならこの状況に説明がつく。な?」


ノノハラ レイ
「残念ながら、それはないね。事件は別館で起きた。何故なら、被害者朝倉巴自身が、事件当夜明らかに別館に居たんだからね」


オモヒト コウ
「痕跡があるとか言ってたな、そう言えば。なんなんだよ、それは」



 巴ちゃんが別館に居た明確な痕跡……、それはこの証拠品で間違いない。



|脱衣所のゴミ箱>



コウモト アヤセ
「これよ!」


607 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:41:04.56 ID:vCkDR9zS0


コウモト アヤセ
「女湯の脱衣所に、巴ちゃんのカバンが捨てられてたの。ゴミ箱の中にね。
 本館で巴ちゃんを殺したとなると、カバンも一緒に運んだことになるでしょ? なんで、って話にならない?」


オモヒト コウ
「一理ある、が、こうは考えられないか? カバンは最初から別館に置きっぱなしにしてあった」


マスタ イサム
「……いや、それはないな。あいつは、あのカバンを肌身離さず持ち歩いていた。別館に置きっぱなしにしておくなんて考えられない」


ノノハラ レイ
「まぁ、中身を見ればそれも妥当と言わざるを得ないよね」


マスタ イサム
「中身?」


ノノハラ レイ
「ちょっとショッキングな内容だからね、ワンクッション入れておこうかな。
 増田クンさ、最近爪切った?」


マスタ イサム
「爪? 切ったには切ったが……、二日前の話だぞ」


ノノハラ レイ
「誰かに切ってもらったりしてない? 朝倉さんに」


マスタ イサム
「……何でお前がそのことを知ってるんだよ」


ノノハラ レイ
「うん、じゃ確定だわ。朝倉さんがその爪どう処分したか、知らないでしょ」


マスタ イサム
「何が言いたい」


ノノハラ レイ
「朝倉さんのカバンの中には色々なものがあってね」


コウモト アヤセ
「……その中の一つに、こんなものがあったの」



|小瓶>



608 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:42:21.49 ID:vCkDR9zS0



オモヒト コウ
「小瓶? 中に何が――、爪、か?」


ノノハラ レイ
「大当たり。大きさや厚さ的に増田クンのかと思ってたんだけど、ドンピシャだったね」


ナナミヤ イオリ
「他人の爪を? 持ち歩いていた? ごめんなさいちょっと言っている意味がよく解らないというか頭が理解することを拒んでいるというか――」


ナナ
「ばっちいわね」


ノノ
「えんがちょー」


マスタ イサム
「俺の、爪を、巴が? 何をしているんだ? あいつは一体何を――?」


ノノハラ レイ
「これくらいは序の口だよ。増田クン、映画鑑賞会で飲んだプァンタのフレーバー当ててみせようか? すももでしょ」


マスタ イサム
「何でそれを――」


ノノハラ レイ
「朝倉さんのカバンの中にあったんだよ、空のボトルが。ついでに増田クンのサイン付きの紙コップも。映画鑑賞会の時のあれね」


マスタ イサム
「……確かに、俺の字、だ、な……」


オモヒト コウ
「おいおい、何がどうなってるんだ? どうして朝倉が増田の持ち物を持ってるんだ?」


ノノハラ レイ
「止めだ。コレ」



|盗聴器>



609 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:45:29.77 ID:vCkDR9zS0



マスタ イサム
「何なんだよ、その機械」


ノノハラ レイ
「盗聴器の受信装置。イヤホンから聞こえてくるのは増田クン周辺の音。簡潔に言えば増田クンは朝倉さんに盗聴されていた。
 さて、ついでだ。これを」



|アルバム>



サクラノミヤ エリス
「見たところ普通のアルバムでは……?!」


サクラノミヤ アリス
「なっ、ちょ、ちょっと、これ、何?! 何なの?!」


ナナミヤ イオリ
「……、……」


オモヒト コウ
「伊織? ……立ったまま気絶してやがる」


ノノハラ レイ
「ご覧の通り、増田クンは知らず知らずの間に朝倉さんのストーカーの被害を受けてたわけだ。この盗撮写真を収めたアルバムがその証左なんだけど」


マスタ イサム
「何……だって……?」


コウモト アヤセ
「ごめん、こればっかりは受け入れて欲しいの。信じられられないかもしれないけど、ここまで証拠が出そろってしまっている以上、否定はできないでしょ?」


ユーミア
「……やはりあの悍ましい有機体はもっと前に始末しておくべきでしたか」


マスタ イサム
「……そういうことをいってやるな、……と、言っていい、のか……?」


オモヒト コウ
「とりあえず、だ。被害者をそう論うことに何の意味がある? 朝倉が……、まぁ変態趣味だってことは解った。だがそれが何だって言うんだ?
 この先の議論に進展をもたらすとは到底思えないんだが」


ノノハラ レイ
「被害者の性格、趣味趣向を鑑みたうえで、事件当夜被害者はどこで何をしていたのか。すべての問題はそこに集約するんだよ。
 朝倉さんは別館に連れてこられたのか、それとも自発的に別館へ行ったのか。それが分水嶺なんだ」


610 :♪学級裁判太陽編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:52:07.59 ID:vCkDR9zS0



ウメゾノ ミノル
「……君の推理では後者の方を考えてるんだろ?
 確かに動機ビデオとかで呼び出しようは幾らでもあるけど、この場合だと自分から別館に行ったって考えた方が自然だ。
 それなら、事件が別館で起きたって不思議じゃない、か」


ノノハラ レイ
「察しがいいね。ボクが思うに、朝倉さんは自分から別館に向かったんだと思うよ。れっきとした目的を持ってね。
 それがいつなのかは、ひとまず置いておこう。一応、ゴンドラリフトに乗ってきたと考えて23時よりも前だってことは確かなわけだけど」


サクラノミヤ アリス
「目的ってなんなのよ。そのバッグの中身を見る限りだと、もう目ぼしいものは別館に残ってないんじゃない?」


ノノハラ レイ
「ところが、あったんだよ。垂涎のお宝がね。それを知ったのは恐らく、盗聴器で増田クンの零した言葉を聞いた時だと思うけど」


マスタ イサム
「……聞かないわけにはいかないだろうが、ここまで聞きたくないと思うのも初めてだな。
 だが、聞くしかないなら、そうするしかない、か。そのお宝とやらは、何だ?」


ノノハラ レイ
「男子更衣室にキミが忘れておいていった体操服だよ」


マスタ イサム
「……そう言えば確かに、何度か零したな。昨日も、今日持ち帰ればいいかとばかり思っていたが」


ノノハラ レイ
「ストーカー気質のあった朝倉さんにとって文字通り垂涎のお宝な増田クンの体操服が無防備に放置されて朝倉さんの行動は――。
 餅は餅屋だ。同好の士に聞いてみようじゃないか。ねぇ? 小鳥遊さん?」


タカナシ ユメミ
「はぁっ?! 何でそこであたしの名前が出てくるのよ! おかしいでしょ?!」


ノノハラ レイ
「キミと朝倉さん、基質が似てるよね。この証拠品がそれを物語ってる」


コウモト アヤセ
「それって……、これのこと?」



|消えた紙コップ>


611 :♪学級裁判異形編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 23:04:10.02 ID:vCkDR9zS0



ノノハラ レイ
「その通り。シアタールームにゴミとして残っていた紙コップの中に、無くなっていたものが二つあったんだよね。
 まぁどっちも紙コップなんだけどさ。一つはさっき言った通り増田クンのだ。
 で、もう一つは公のなんだけど、公。キミ、それ自分で持って帰って自分で捨てた?」


オモヒト コウ
「いや、普通にゴミ箱に入れてそのままだったが……、なあ、おい、まさかとは思うがな」


ノノハラ レイ
「単刀直入に言おうか、小鳥遊さん。キミ、公の使用済み紙コップ、持ち帰ったでしょ」


タカナシ ユメミ
「はあぁ?! なんの根拠があってそんな言いがかりつけるわけ!?」


ノノハラ レイ
「キミが公に向ける視線が、朝倉さんが増田クンに向ける視線と同じ感じだから、じゃ納得してくれないかな。
 それともキミが公の行動を逐一把握している理由もキミが盗聴をしているから、じゃ駄目かい?」


タカナシ ユメミ
「ダメに決まってんでしょ?! 何考えてんのよ! そこまで言うんだったら証拠を出しなさいよ証拠を!」


ノノハラ レイ
「キミ、公に送られた動機ビデオの中身知ってるでしょ。
 本人の口からちゃんと聞いたボクと、送られた当の本人である公以外は知らないはずの秘密を。
 二人っきりで話せる場所で話した、あの場所での会話を」


タカナシ ユメミ
「ふっ、そんなハッタリであたしを騙せると思ってるの?
 残念でした。ゴンドラリフトの中は電磁遮蔽で電波が届かないの。聞けるわけない、じゃ……、あ……」


オモヒト コウ
「夢見、お前……」


ノノハラ レイ
「ダメだよ小鳥遊さん。そこは嘘でもしらばっくれないと。なんで電磁遮蔽のことをキミが知ってるんだ?
 しかも、話した場所がゴンドラリフトの中だってことも、ねぇ?」


612 :♪学級裁判異形編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 23:25:08.41 ID:vCkDR9zS0



タカナシ ユメミ
「あ、ああ……、うぅ……」


ナナ
「お姉ちゃん、てっきり探偵ごっこでもしてると思ってたのに」


ノノ
「ストーカーさんだったんだねー」


オモヒト コウ
「……夢見、どうなんだ? 本当のことを言ってくれると助かるんだが。あと俺の紙コップ何処にやったのかも」


ノノハラ レイ
「大丈夫だって。多少キミが、その、特殊性癖の持ち主だとしても、さ。公なら受け入れてくれるはずだって。タブン」


タカナシ ユメミ
「……あー! もう! 認めればいいんでしょ認めれば! そうよ! あたしの部屋はあたしの大好きなお兄ちゃんの写真でいっぱいだし!
 お兄ちゃんの使ったものなら他人にとってはゴミでもあたしにとっては宝物!
 居場所も会話もわかるようにGPSとか盗聴器とか! 色々使ってるわよ! ピッキングだってお手の物なんだからね!
 でも夜這いや朝駆けなんて邪道だからよっぽどのことがない限りお兄ちゃんの部屋に入ったりなんかしないわよ! そこまで拗らせてなんかないんだから!」


ノノハラ レイ
「……いや、誰もそこまで言えとは言ってないけど」


オモヒト コウ
「取り敢えず、この裁判終わったら色々お話ししよう、な?」


タカナシ ユメミ
「O・HA・NA・SHI?! お兄ちゃんと?! 二人っきりで!? やっとお兄ちゃんから手を出してくれるようになったのねやったー!」


ナナミヤ イオリ
「……はっ! いや、その、不健全よ!」


オモヒト コウ
「……何をどう解釈したらそう喜べるんだよ。無敵か?」


ノノハラ レイ
「キミの趣味趣向はさておき――、いや、置かないのかな? 話を戻そう。
 仮に、だ。仮に公の脱ぎたての体操服がキミの手の届く場所に放置されていたとする。キミは、どうする?」


タカナシ ユメミ
「そんなの決まってるじゃない! お兄ちゃんの臭いが消えないようラッピングしてから持ち帰って部屋で存分に楽しむのよ!」


613 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 23:50:29.70 ID:vCkDR9zS0



ノノハラ レイ
「うわぁ……」


サクラノミヤ エリス
「あの、えっと……、楽しむっていったい何を――」


サクラノミヤ アリス
「そこまでにしておきなさい慧梨主。それ以上聞き出してもロクなことにならないから。
 あんたもね、自分から聞き出しておいてそんなドン引きしないの。まぁ、解らなくもないけど」


ウメゾノ ミノル
「あー、えー、そうそう。野々原君の考えだと、朝倉さんも増田君の体操服目当てで別館へ行ったってことでいいんだね?」


ノノハラ レイ
「うん……、そうだよ……」


コウモト アヤセ
「ちょっと、いくら何でも、その、その反応はあんまりにもあんまりでしょ。いくら夢見ちゃんのアレが、アレだからって」


ノノハラ ナギサ
「綾瀬さん、それフォローになってないよ?」


ユーミア
「しかし、それはおかしくありませんか?」


マスタ イサム
「どういうことだ?」


ユーミア
「マスターのいうことが確かなら、体操服は別館二階の男子更衣室に放置されていたのですよね?
 使用用途が使用用途なわけですから誰かに頼むこともできません。事実、そのカバンの中から体操服なんて繊維一本見つかりませんよね?
 朝倉巴が男子更衣室に侵入し、マスターの体操服を奪取することなど不可能なのでは?」


オモヒト コウ
「男湯と女湯でも異性が入ろうとすれば警告と共にマシンガンが構えられるからな。更衣室もそうなのか? その辺どうなんだよ、モノクマ」


モノクマ
「不純な異性友好なんて一教育機関として認められるわけないじゃん!
 女子が男子更衣室に入ろうとしたら、その逆の場合でも、温泉と同じ対応を取るよ!」


マスタ イサム
「そうか、なら朝倉には俺の体操服を手に入れる手段もなかったし、実際手に入れられなかったんだよな。そうだよな」


ノノハラ レイ
「――それはどうかな」


614 :♪学級裁判太陽編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 00:02:59.47 ID:bhZGwmc90



マスタ イサム
「何だって?」


ノノハラ レイ
「キミは入ってないから知らないんだろうけど、無くなってたんだよ。キミの体操服」


マスタ イサム
「は?」


コウモト アヤセ
「でもそれって勝手に回収されたって――あれ?」


ノノハラ レイ
「そう、ちょっとおかしな話になるんだよ。更衣室に残された体操服には謎が多い」


オモヒト コウ
「どういうことなんだよ。二人だけで通じ合ってないで説明をしてくれよ」


ノノハラ レイ
「それをこれから議論しよう。何がおかしいのか。そして、男子更衣室で何があったのかを、ね」


615 :♪議論 -BREAK- ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 00:23:35.92 ID:bhZGwmc90



――議論開始――


|吐瀉物>
|消えた体操服>
|手付かずの体操服>
|梅園穫の証言>



コウモト アヤセ
「女子更衣室にはね、手付かずの体操服が二着あったの」


ノノハラ レイ
「そしてそれは捜査時間中も変わらなかった」


タカナシ ユメミ
「自分のものは自分で管理しろってスタンスだったんでしょ? それがどうだって言うのよ」


オモヒト コウ
「いや、おかしいぞ。男子更衣室にあったあの体操服は、結局【誰も使わないものだから回収された】んじゃないのか?」


ナナミヤ イオリ
「どうしてそう思ったの?」


オモヒト コウ
「球技大会の前に着替えた時にはあった体操服が、終わった後には無くなっていたら誰だってそう思うだろ」


ノノハラ レイ
「捜査時間中に男子更衣室で無くなった体操服はそれだけじゃない。
 増田クンが忘れておいていったはずの体操服も無くなっていたんだよ」


ウメゾノ ミノル
「その回収がモノクマによるものでないとするなら誰かが明らかに持ち去ったとしか考えられないわけだが――」


サクラノミヤ エリス
「どこに行ってしまったんでしょうか? 【誰かが処分した】んでしょうか?」


サクラノミヤ アリス
「それはないでしょ。仮に朝倉巴が持ち去ったとしたら、それを燃やすなんて矛盾してるし」



 使われなかった体操服の処理の仕方が男女で差がある?
 いえ、そうじゃない。この矛盾はわからないけど、確かに解ることが一つだけある……!



616 :同意 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 00:25:37.10 ID:bhZGwmc90



サクラノミヤ エリス
「どこに行ってしまったんでしょうか? 【誰かが処分した】んでしょうか?」


  |梅園穫の証言>


 それに賛成よ!


 -BREAK!!-


617 :♪学級裁判太陽編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 00:49:05.40 ID:bhZGwmc90



コウモト アヤセ
「焼却炉が今朝から稼働していた。そうよね、梅園君」


ウメゾノ ミノル
「それはそうだけど……、いやいや、確かに増田君の体操服が影も形もないって言うんなら焼却炉で処分したってのが妥当な判断なんだろうけどさ、それって思いっきり矛盾してないかい?」


コウモト アヤセ
「巴ちゃんが、せっかく手に入れた体操服を燃やすのか、ってことでしょ?」


ウメゾノ ミノル
「どんなトリックを使ったのかは皆目見当もつかないけど、そこには苦労があったんだろうぜ。
 そんな艱難辛苦の果てにようやくゲットしたお宝をなんでそう易々と手放せるんだよ」


ノノハラ レイ
「前提からして間違ってるよ。焼却炉が稼働できる時間帯にはもう朝倉さんは死亡してるんだから。
 おそらくは朝倉さんが持って行ったのを犯人が証拠隠滅の為に焼却炉へ投げ入れたんだ」


ウメゾノ ミノル
「あ、そうか。……で、結局それが何だって言うんだ?」


サクラノミヤ エリス
「朝倉さんがどうやって体操服を持ち出したのかはいまだ謎のままですからね……」


サクラノミヤ アリス
「それに犯人の行動もいまだ謎のままじゃない。あそこまで死体を痛めつける理由も何もわかってないし」


ユーミア
「死体損壊に関しては死後八時間以上経過してから――となれば、必然的に候補は絞られそうですが」


コウモト アヤセ
「それってやっぱり……」



|別館に居た澪>



618 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 01:24:19.70 ID:bhZGwmc90



ユーミア
「えぇ。その時間帯なら、一連の作業を誰にも見られることなく行うことができます。
 死体なら異性の浴室に持ち込んでも問題はないでしょう。
 それに、貴方なら混浴場経由で女湯に侵入できるのでは?」


ノノハラ レイ
「無理だね。それだと綾瀬の協力が必要になる。此の学級裁判で勝ち抜くのに共犯者のメリットがあるのか?」


ユーミア
「命を懸けてでも貴方を助けたいと河本さんが心底思っているのなら十分な理由になりますよね?」


ノノハラ レイ
「キミの検死が正しいなら、ボクのアリバイは立証されているはずなんだけど?」


ユーミア
「ならユーミアの検死が誤っていたのでしょう。あるいは、困難の分割、とでも言いましょうか。
 小休憩ごとに監視の目は緩むわけですから、一瞬の隙を見て朝倉巴を殺害。しかる後に損壊を施した。
 徹夜なら注意力が散漫になってもおかしくはありませんよね?」


ノノハラ レイ
「それを言われると厳しいねぇ。でも、それはキミの主の言葉を信じないってことにもなるんだぜ?」


マスタ イサム
「……ユーミア。澪の言うとおりだ。いくら徹夜してるとはいえ、二階へ行くにはエレベーターへ行かなきゃならない。
 そんなことをすれば否が応でも目立つ。音も鳴るしな。
 だから、俺達四人のアリバイは成立してしまっているんだよ」


ユーミア
「……。マスターがそう仰るのなら、ユーミアはこれ以上反論いたしません」


ノノハラ レイ
「――さて、ボクの身の潔白も証明されたわけだから、最後の重要参考人に話を聞こうか?
 ねぇ? ユーミアさん? ――別館についてから死体発見までに、キミは一体どこで何をしていたんだい?」


619 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/14(月) 01:25:13.73 ID:bhZGwmc90


   学 級 裁 判


     中 断


620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/12/15(火) 21:57:08.04 ID:TRRj4tZP0
更新してた、続き待っとるやで
621 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 19:58:57.92 ID:0q4noyk20


   学 級 裁 判


     再 開



622 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:00:37.75 ID:0q4noyk20


―――




ユーミア
「と、言いますと?」


ノノハラ レイ
「惚けるなよ。女湯に入れる、別館で綾瀬と別れてから死体発見までアリバイがない、頑なに検死結果を出し渋る。
 これだけ条件が揃ってて怪しまれないとでも思ってるの?」


ユーミア
「二階の掃除をしていただけです。怪しまれるようなことをした覚えはありませんね」


ノノハラ レイ
「具体的には何処を? いや、答えなくていいよ。当ててやろうか? 男子更衣室の前の廊下だろ?」


ユーミア
「無論そこも掃除しましたが、二時間もかかりません。
 それとも、あんなところの掃除でさえそこまで時間をかけないとまともに出来ないと、遠回しに馬鹿にしているのですか?」


ノノハラ レイ
「とんでもない。でも、他の場所をおざなりにしてまであそこを入念に掃除しなければならない理由はあったんだろ?」



623 :反論! ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:01:06.67 ID:0q4noyk20




ユーミア
「完全で瀟洒なメイドに死角などありません」




624 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:03:40.48 ID:0q4noyk20


ユーミア
「先ほどから貴方の質問はどうにも要領を得ない様子。貴方の頭の中だけで完結されてもらっても困るのですが」


ノノハラ レイ
「あくまでも白を切るつもりかい? なら、証拠を列挙してあげようじゃないか」


ユーミア
「受けて立ちましょう」


625 :♪反論―CROSS SWORD― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:10:32.90 ID:0q4noyk20



 反論ショーダウン・追打


|///野々原渚の証言///>
|///多目的ホール///>
|///食べかす///>
|///掃除用具///>



ユーミア
「確かに、ユーミアが別館二階の掃除をしていたという【アリバイを証明する証拠品や証人】は存在しません。
 それは認めましょう。
 しかしだからと言って、それだけでユーミアが朝倉巴の【死体を損壊させた】理由になりますか?
 6時20分以降なら【他の女性でも朝倉巴の死体を磔にすることは出来た】筈です。
 何故ユーミアだけが疑われなければならないのですか?」


ノノハラ レイ
「正直に言ってさ、怪しすぎるんだよ。君の動向が。
 二階の男子更衣室前は入念に掃除をしたにもかかわらず、他の場所には全くと言っていいほど手を付けていないんだから」


ユーミア
「その発言の【根拠がない】以上話にならないのでは?」


626 :♪反論―CROSS SWORD― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:13:26.40 ID:0q4noyk20


|///食べかす///>


ユーミア
「その発言の【根拠が//ない】


―発展―


ノノハラ レイ
「シアタールームのゴミ箱にはゴミが残っていた。しかも床に食べかすまであった。
 つまり、一昨日の映画観賞会の後からこれまで一切掃除されてないって事じゃないか。
 だから少なくともキミは今朝シアタールームの掃除を行っていない。違う?」


ユーミア
「えぇ、そうですね。後回しにしようと思っていたので。それよりも昨日の球技大会の後片付けを優先したんです。
 【シアタールームよりも多目的ホールの方が広い】ので、掃除には時間がかかるのは当たり前でしょう?
 だから【多目的ホールの掃除を優先した】んですよ」



627 :♪反論―CROSS SWORD― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:15:56.77 ID:0q4noyk20



|///多目的ホール///>


【多目的ホールの//掃除を優先した】


―発展―


ノノハラ レイ
「そうかなぁ。確かに粗方奇麗にはなってたけどさ、舞台袖とかは埃が残ってて手付かずだったじゃないか」


ユーミア
「細かいところをこれからといった所で悲鳴が聞こえたんです。急いで駆け付けましたよ、何事かと思ったので。
 無論、きちんと片付けはしましたが」


ノノハラ レイ
「そんな悠長なことしてた割には随分と早かったね。男湯の脱衣所で悲鳴を聞いたボクよりも先んじて駆けつけるなんて。
 ボクが着替えてた分のタイムラグを考慮するにしても」


ユーミア
「それだけユーミアが完璧で瀟洒ということです。
 貴方が主張するような【男子更衣室の前の廊下】の掃除するなど、【時間をかけるまでもない】ことなのですよ」



628 :♪反論―CROSS SWORD― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:18:56.86 ID:0q4noyk20



|///野々原渚の証言///>
|///掃除用具///>


【男子更衣室の//前の廊下】の掃除するなど、【時間をかける//までもない】



ノノハラ レイ
「そんな言葉は螺子伏せる」



 ―BREAK―



629 :♪学級裁判未来編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:24:08.81 ID:0q4noyk20



ノノハラ レイ
「キミが使った掃除用具には色々あったねぇ。モップやバケツは濡れていたし、消臭剤も結構使ったんじゃない?」


ユーミア
「それがどうかしたのですか? 掃除をすればそうなるのは当たり前でしょうに」


ノノハラ レイ
「そうだね。たださ、どうして消臭剤なんて使ったのかな? 多目的ホールの掃除に使う必要なんてないじゃん」


ユーミア
「……消臭剤など使用していませんよ。言葉の綾と言う奴です。
 言葉尻を捕らえるような真似で吊し上げるのが貴方のやり口のようですが、そういつもうまくいくとは思わないことです」


ノノハラ レイ
「でも確かに消臭剤は使われていた。渚が証言してくれたんだよ。誰かが、男子更衣室の前の廊下で、饐えた臭いを消すために」


ユーミア
「それがどう繋がると?」


ノノハラ レイ
「球技大会まではそんな臭いはなかった。でも、事件当夜からその臭いの元が発生したんだ。
 そしてキミはどうにかして出来る範囲ではそれを絶った。けど、大本までは取り除くことは出来なかった」


ユーミア
「理解できませんね。何が言いたいのですか?」


ノノハラ レイ
「キミがどうしても始末したくて、絶対に出来なかった証拠品。キミが本当に掃除したかったのはこれだろ?」


 |///吐瀉物///>


630 :♪学級裁判復活編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:38:21.65 ID:0q4noyk20


ユーミア
「……なんですかそれは」


ノノハラ レイ
「男子更衣室の隅にぶちまけられていたんだよ。捜査時間の時にはすでに乾いてたから、吐いてかなり時間が経っている。
 さらに、消化具合から考えると食後3〜5時間後ぐらいのものかな」


マスタ イサム
「おいおい、そんなものなかった筈だろ」


オモヒト コウ
「昼食なら15〜17時、夕食なら22〜24時だよな。
 そんな時間に俺達は男子更衣室になんて行ってないことぐらいわからないお前じゃないだろ」


ウメゾノ ミノル
「って言うか、そんな乾くまで放置せずすぐ掃除するって」


ノノハラ レイ
「その通り。ベーコンっぽいかけらが混じってたから、昨日の夕食のマルゲリータだ。
 そしてさっき証明した通り、ボク等四人にはその時間帯にアリバイがある。あからさまに不自然な証拠だ」


ユーミア
「要領を得ませんね。何が言いたいのですか? まさか、その吐瀉物がユーミアの物だとでも?」


ノノハラ レイ
「まさか。でも、キミはこれを絶対に処理しなければならなかったけど、それは叶わなかった。
 キミは女子で、男子更衣室に入ることは出来ないんだから」


マスタ イサム
「おいおい待てよ。じゃぁ、これは一体誰の物なんだ?」


631 :♪学級裁判復活編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 20:58:57.58 ID:0q4noyk20


ノノハラ レイ
「……一つ、疑問に思ったことがある。女子更衣室の体操服、2着余ったんだよね?」


コウモト アヤセ
「その通りよ。見た通り手付かずで……、待って、おかしいじゃない」


ノノハラ ナギサ
「え、何が?」


コウモト アヤセ
「球技大会の時点で女子は10人のはず。女子更衣室で余った体操服は2着。
 でも、最初来た時には11着あった! 余るのは1着じゃなきゃ変よ!」


ノノハラ ナギサ
「数えてたの?」


ユーミア
「勘違いということは?」


コウモト アヤセ
「違う、そもそもあの2着は死んだ咲夜ちゃんと柏木さんの物だと考えたら……、1着足りないじゃない!」


ノノハラ レイ
「そして男子更衣室で最初にあった体操服は5着。合計16着だ。これはこの合宿の参加者の人数と一致する」


タカナシ ユメミ
「女子の方で体操服が1着足りなくて、男子の方が1着余ったんでしょ、だったら考えられるのは……、誰かが性別を誤魔化してた?」


ノノハラ レイ
「その通りだよ。そしてそれが誰かは、もう明白だよね? そしてこの仮説が真実なら、様々な謎が一気に解決するんだ」


マスタ イサム
「おいおいおい、おいおいおいおいおいおい、まさか、まさかとは思うが、そいつは……」


632 :怪しい人物を指名せよ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/01/16(土) 21:03:02.20 ID:0q4noyk20


 ノノハラ レイ

 コウモト アヤセ

 タカナシ ユメミ

 |> アサクラ トモエ

 マスタ イサム

 ユーミア

 ノノ

 ナナ

 オモヒト コウ

 ナナミヤ イオリ

 アヤノコウジ サクヤ

 サクラノミヤ アリス

 ウメゾノ ミノル

 サクラノミヤ エリス

 カシワギ ソノコ

 ノノハラ ナギサ


ノノハラレイ
「この人だ」

633 :♪絶望トロピカル ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 18:29:34.66 ID:/4/swccU0



ノノハラ レイ
「被害者である朝倉巴……、彼女、いや、彼こそが、女のふりをした男だったんだよ。
 だから体操服は女子更衣室に11着で、男子更衣室に5着あったんだ」


マスタ イサム
「い、いやいやいやいや、おかしいだろ。あいつは確かに女のはずで……」


ノノハラ レイ
「主観的な目線で言えば、まず骨格からしてあれは男性のものだ。小柄で華奢だから女性の真似ができただけ。ボクだって今は一時的に骨格を矯正して違和感を消してるだけだし。
 客観的に言うなら、球技大会の時、朝倉巴は最後に更衣室に入って体操服に着替え、最初に更衣室に入っていつもの服に着替えた。
 更衣室に入るところや、自分が入った後の更衣室そのものさえ誰かに見られたら一発で自分が男だとばれてしまうからね」


ウメゾノ ミノル
「……そう、か。だから上下ジャージだったんだ」


サクラノミヤ エリス
「どういうことですか?」


ウメゾノ ミノル
「体操服の下は男子がハーフパンツで女子がブルマ。一人だけハーフパンツをはいた女子がいたとすれば、理由を勘繰られる。
 だからそれを隠すためにジャージで隠さざるを得なかったんだ。色も一緒だったし、多少ずれても気づかれないだろうと踏んだんでしょ」


オモヒト コウ
「朝倉が増田の体操服を手に入れることができたのも、朝倉が男なら問題なく男子更衣室に入れるわけだから、簡単は話になるわけだな」


ユーミア
「それは飽くまで朝倉巴が女装した男性であると仮定した場合でしょう?
 客観的で具体的で決定的な証拠とは言えませんよね?」


ノノハラ レイ
「この期に及んで足掻くつもりなら、聞いておこうか。検死をしたキミ自身に。
 朝倉巴の生物学的な性別は男性か? 女性か? 本当のことを答えてくれると助かるんだけど」


ユーミア
「黙秘権を行使します」


マスタ イサム
「……ユーミア、もしその沈黙が俺を慮ってのことならやめてくれ。正直聞きたくないが、聞かなきゃならない。
 お前が話してくれないと、始められないんだ。……頼むよ」


634 :♪磯の香りのデッドエンド ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 18:34:09.21 ID:/4/swccU0



ユーミア
「マスターがそう望むのなら、そうしましょう。
 ――その通りです。朝倉巴は生物学的に男性です。間違いはありません。
 しかし勘違いしないでください。これは飽くまでマスターを傷つけまいとユーミアが独断で隠していたことです。
 あの悍ましい有機体が、男のくせに女のふりをしてマスターの周りを突き纏っていることを見逃していたのも、ひとえにマスターの心を傷つけたくなかったからです。
 だってそうでしょう? 自分を慕う後輩が実は変態趣味持ちでしかも同性だったなんて。マスターの傷心を想うだけでユーミアは身が引き裂かれる思いをするのです。
 だから、隠していました。それ以上にやましいことなどありません」


マスタ イサム
「……そう、か。そう、なん、だな……」


ノノハラ レイ
「正直に言ってくれてどうも。増田クンはご愁傷様。さて、これで霧が晴れてきたかな?
 被害者の行動とその理由。この二つが解明されたのは大きな進歩だよね。しかも、男子更衣室で嘔吐をしたのが誰なのかも明確になったわけだ」


サクラノミヤ アリス
「ちょっと待ちなさいよ」


ノノハラ レイ
「何さ」


サクラノミヤ アリス
「被害者が男なら、今度はどうやって女湯に入ったのかが謎になっちゃうじゃない。
 男は女湯に入れない。今までもその大前提があって話を進めてきたんだから」


ノノハラ レイ
「死体発見場所が女湯だとしても、事件現場が女湯とは限らないよね?」


サクラノミヤ アリス
「わざわざ殺した後で女湯に入れ込んだってワケ? どうしてそんな手間のかかるようなことをするのよ。
 第一、死体だからって女湯に入れることができるとでも?」


ノノハラ レイ
「その点はモノクマに聞いてみるしかないけど、どうなの?」


635 :♪磯の香りのデッドエンド ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 18:35:58.11 ID:/4/swccU0



モノクマ
「はいはい、その手の質問はもう聞き飽きたから手短に説明するね。一度しか言わないからよーく聞くように。
 “死者は物として扱う”これが基本スタンスだから!」


オモヒト コウ
「なるほどな。つまり、物なら性別は関係ないって事か。これなら死体を女湯に持っていける」


マスタ イサム
「……だが、持って行ったのは女だろ。誰だよ。……巴を磔にしたのは誰なんだよ!」


ノノハラ レイ
「落ち着きなよ、増田クン。――それとも、脳が理解を拒んでいるのかな?」


マスタ イサム
「ほざけ! お前に何が分かるって言うんだ!」


ノノハラ レイ
「状況から鑑みるに一人しかいないじゃないか。そんな人物は。さっき追及したばっかじゃない」


636 :怪しい人物を指名せよ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 18:38:18.07 ID:/4/swccU0



 ノノハラ レイ

 コウモト アヤセ

 タカナシ ユメミ

 アサクラ トモエ

 マスタ イサム

 |> ユーミア

 ノノ

 ナナ

 オモヒト コウ

 ナナミヤ イオリ

 アヤノコウジ サクヤ

 サクラノミヤ アリス

 ウメゾノ ミノル

 サクラノミヤ エリス

 カシワギ ソノコ

 ノノハラ ナギサ


ノノハラ レイ
「キミだよ」


637 :♪磯の香りのデッドエンド ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:10:50.79 ID:/4/swccU0



ユーミア
「……成程、つまりこう言いたい訳ですね?
 男子更衣室の前の廊下で朝倉巴を殺害し、後日その痕跡を消すために現場の掃除をし、死体を無関係の女湯に磔にしたのはユーミアだ、と」


ノノハラ レイ
「一連の死体損壊は紛れもなくキミの犯行とみているよ。その一環として男子更衣室前の廊下の掃除をした。
 朝倉巴は恐らく目的を達成してブツを手に入れた後、何らかの理由で吐き気を催し、我慢できずに男子更衣室の隅で吐き出してしまったんだろうね。
 その後何とか外に出ることは出来たけど、そこで息絶えてしまった。おそらく、蹲るような姿勢で倒れていたんだろう。その時に吐瀉物が廊下についたんだ」


タカナシ ユメミ
「そんなこと何でわかるのよ」


オモヒト コウ
「……普通、吐きそうになったら口を手で押さえるだろ? 出ないようにな。結局堪え切れなかったわけだが。
 その時手にもべっとりと付くわけだ。アレが。そしてそれを拭う暇もなく倒れて、その時に廊下に付着したってことだろ?
 なるほどな。全身を串刺しにして女湯で磔にして、シャワーを浴びさせていたのはその痕跡を消すためでもあったわけだ。
 手や服が多少汚れても洗い落とせることができるし、饐えた臭いは血腥さで誤魔化せる」


タカナシ ユメミ
「さっすがお兄ちゃん! 説明が分かり易い!」


ナナミヤ イオリ
「蹲っていたと、どうして思ったのですか?」


ノノハラ レイ
「モノクマファイルの通り、被害者は全身の骨を折られている。さっき話題に出た通り、死後硬直を誤魔化すためだと考えられる。
 単純に倒れていたなら体操服を回収するのは容易だろうけど、それが出来なかったからじゃないかな。だから無理矢理引き延ばした。体操服を握りしめている指ごと折って。
 そして、そんな芸当が出来るのはキミしかいないんだよ、ユーミアさん」


638 :反論! ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:12:34.26 ID:/4/swccU0



マスタ イサム
「俺が塗りつぶしてやる!」


639 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:17:17.67 ID:/4/swccU0



マスタ イサム
「お前ら揃いも揃って証拠にもなく出鱈目を!」


ノノハラ レイ
「一応、証拠あるんだけどねぇ」


マスタ イサム
「ふざけるな! ただの状況証拠ばかりだろうが! そんな論理破綻させてやる!」



640 :♪V3反論-CROSS SWORD- ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:35:31.54 ID:/4/swccU0

―反論ショーダウン・真打―


| 短剣 |=
| 突き刺さった跡 |=
| ガチャの景品一覧 |=



マスタ イサム
「百歩譲って死体損壊の理由はその推理通りだって認めてやるよ。
 だがよく考えてみろ。【事件当時俺達は何処で何をしていた】? 【ユーミアは何処にいた】?
 俺達は言わずもがな。ユーミアは6時のゴンドラリフトに河本と手ぶらで乗り合わせたんだったな?
 そんなユーミアが一体いつどうやって巴を殺せるんだよ」




―発展―




ノノハラ レイ
「問題視すべきなのはそこじゃない。一連の死体損壊の方法が可能なのはユーミアさんだけだってことなんだ」


マスタ イサム
「全身を串刺しにするのは体重をかければ女だってできるだろ。骨を折るのだっててこの原理でも何でも使えばいいじゃないか。
 【ユーミアにしか出来ない芸当なんてないだろうが】!」



 はてさて。知らぬは自身ばかり成り、って感じなのかな?
 それともやっぱり感情が理性を拒んじゃうのかな?
 いずれにせよ、平静を欠いたキミなんて目じゃないんだよね。今もとんでもない失言してるし。


641 :論破 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:39:47.39 ID:/4/swccU0



【ユーミアにしか出来//ない芸当なんてない】


  | 突き刺さった跡 |=


ノノハラ レイ
「その言葉、斬って捨てようか」


―BREAK―


642 :♪学級裁判未来編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 19:58:32.67 ID:/4/swccU0



ノノハラ レイ
「身に覚えがないとは言わせないぜ。増田クンと公の二人掛かりでやっと抜けたんだから。
 そんな馬鹿力、女だとユーミアさんぐらいにしか出せないよ」


マスタ イサム
「ガチャの景品でも何でも使えば出来るんじゃないのか?」


ウメゾノ ミノル
「いやぁ、どうだろう。ちょっと無理があるんじゃないか? それに、最後の仕上げは両手を重ねさせたうえで、柄の部分まで深く突き刺すんだろ?
 それってやっぱ道具を使って固定なんて無理だし、貫通させるのももっと無理なんじゃないかなぁ」


オモヒト コウ
「増田、思い出せ。球技大会でバレーの準備をする時だ。俺達二人掛かりで動かしてたポールを、ユーミアは一人で悠々と運んでたじゃないか」


マスタ イサム
「それは……、そうだが……。そうだ、誤魔化されんぞ。ユーミアは事件当夜本館に居た筈だろうが。
 でなきゃ始発である6時のゴンドラリフトに河本と相乗りなんてできやしない!」


オモヒト コウ
「スキー用具一式は、別館のゴンドラ乗り場にもあった。それを使って下ればいい。
 ノンストップで滑り続ければ別館から本館まで5分とかからないだろう。
 ……もっとも、そんな芸当ができるのは相当肝が据わっている奴だけだがな。フィジカルもメンタルも優れた人間はそうはいない。
 完璧で瀟洒を自負するお前のメイドなら、あるいは……」


ユーミア
「そう……ですか。――もはやここまで、ですね。マスター」


マスタ イサム
「ユーミア……?」


ユーミア
「申し訳ありません。どうやらユーミアはここまでの様です。
 ――その通り。全てユーミアのやったこと。しかし一切の後悔もありませんとも。マスターに仇成す害虫を、この身を挺して駆除できたのですから」



643 :♪Rise of Ultimate ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 20:32:46.50 ID:/4/swccU0



マスタ イサム
「何を……、言って……?」


ユーミア
「あのおぞましき有機体は、マスターに10TB以上の嘘をついていたのです。
 性別も、履歴も。あの姿だって。マスターの好みに合わせていただけ。パッドで体系を補正していると気づいたときはいっそ憐みの笑みがこぼれるくらいで」


ノノハラ レイ
「……通りでただでさえ薄い胸が絶壁になったと思った。それも処分したんだ?」


ユーミア
「えぇ。朝倉巴が男性であるという事実を隠蔽する為に、朝倉巴の部屋に入って体操服も一緒に。見つからなかったのはそのためです」


オモヒト コウ
「確かに、それらしい体操服は見つからなかったな……。いやいや、どうやって侵入……、あー、いや、そうだな。夢見がピッキングで入れるくらいだ。同じ要領か」


ユーミア
「まぁ、ストーカーと同一視されるのはメイドとしては甚だ心外ですが、おおむねその通りです。
 構造さえわかれば電子ロックのドアであろうとも突破できます」


ウメゾノ ミノル
「いや、それはそれでどうなのさ」


サクラノミヤ アリス
「方法を知ってれば突破されるなんて鍵の意味がないじゃない。どうにかしておきなさいよモノクマ」


モノクマ
「煩いやい! ボクだってなぁ! 色々忙しいの! 解ったよ! 今後はピッキング行為は校則違反とみなします! それでいいでしょ!」


コウモト アヤセ
「……まぁ、気休め程度にはなったわね」


サクラノミヤ エリス
「とにかく、これで終わり、でいいんですよね?」


ノノハラ ナギサ
「うん、間違いないよ。犯人がこうやって自供してくれたわけだし」


ナナ
「なんだかあっけなかったわね」


ノノ
「ほとんど出番なかったよ」


ノノハラ レイ
「――ああ、茶番は終わった? じゃさっさと本題に入ろうよ」


644 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/06(土) 20:33:57.24 ID:/4/swccU0




 学 級 裁 判


  中   断



645 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 18:22:39.17 ID:fC5nz8KP0


   学 級 裁 判


     再 開


646 :♪Wonderful Story ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 18:35:53.16 ID:fC5nz8KP0


マスタ イサム
「茶番……、だと?」


オモヒト コウ
「おいおい、ちょっと待て。もう結論は出ただろ。ユーミアも自供して――、待てよ。
 ……そうだな。投票するにはまだ早い」

ナナミヤ イオリ
「どういうこと?」


オモヒト コウ
「具体的な物証もなしに追いつめられたにしては潔すぎる。まして自分の命がかかってるんだぞ?
 普通はもう少し足掻くもんだろ?」


ユーミア
「これ以上醜態を晒したくないのです。介錯だと思って早く投票していただけませんか?」


ノノハラ レイ
「焦ってるね。でも駄目だよ。一度浮上してしまった以上、疑惑は払わなければね」


コウモト アヤセ
「えーっと、理解が追い付かないんだけど……、ユーミアさんが犯人じゃないってことでいいのよね?」


ノノハラ レイ
「より正確に言えばクロじゃない、かな。一連の死体損壊に関しては間違いなくユーミアさんのやったことだ。
 前提条件として間違っていたんだよ。ユーミアさんの狙いは自分に容疑がかからないように工作をしたわけじゃない。逆だ。
 よく調べれば調べるほど、自分に容疑がかかるように工作されている」


647 :♪Wonderful Story ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 18:38:11.26 ID:fC5nz8KP0


ウメゾノ ミノル
「――おいおい、それじゃまるで狂人じゃないか」


サクラノミヤ エリス
「狂人、ですか?」


ウメゾノ ミノル
「人狼ゲームは知ってるだろ? この場合人狼はクロで、ユーミアさんは狂人という配役だとすると……、ユーミアさんの勝利条件は、クロが生き残ることか?」


サクラノミヤ アリス
「ちょっと待ちなさいよ。それじゃ、自分が死ぬとわかっててあえてそんな工作をしたって言うの? そんなの信じられるわけないじゃない」


ノノハラ レイ
「どうかな。この世には利害を超えてまで通すべき義がある。己が命に代えてまで尽くすべき忠がある。
 奇しくもユーミアさんが口走ったことだ。命に代えてまでも助けたいならシロでもクロに協力する理由になると」


ユーミア
「ユーミアが命を賭して尽くすのはマスターだけです。そしてマスターには完璧なアリバイがある。
 他ならぬ貴方方が保証してくれているではありませんか。これ以上の何が不満なのです?」


ノノハラ レイ
「そうだねぇ。強いて言うなら、キミが頑なに被害者の死因を明かさない理由が気になるから、とか?」


ユーミア
「……それになんの意味があると?
 ユーミアが朝倉巴を殺した。それ以上の情報が必要なのですか?」


ノノハラ レイ
「要りまくるよ。まず断言してもいいけど、キミの犯行は衝動的なものだ。コレがそれを物語っている」



|鞘///>



648 :♪Wonderful Story ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 18:40:29.17 ID:fC5nz8KP0



サクラノミヤ アリス
「何よそれ。袋? にしては薄っぺらいわね」


ウメゾノ ミノル
「鞘、かな? 見るからに結構幅のある剣のものとみた」


サクラノミヤ エリス
「ちょっと待ってください、鞘があるなら剣本体はどこに?」


オモヒト コウ
「大きさからして……、そういう事か。朝倉に刺さっていた剣だな?」


タカナシ ユメミ
「その鞘がどうしたって言うのよ。見るからに何の痕跡もない、普通の鞘じゃない」


コウモト アヤセ
「鞘の出所が問題なんでしょ。その鞘、巴ちゃんのカバンから出てきたんだから」


ノノハラ ナギサ
「ってことは……、どういうこと?」


ナナミヤ イオリ
「その剣の持ち主は被害者自身、ということですか?」


ノノハラ レイ
「その通り。普通剣と鞘はセットだ。抜き身のままカバンに入れることなんて考えにくいし、鞘だけを持ち歩く意味はない。
 該当する鞘が朝倉巴のカバンから出てきたということは、同じく剣も朝倉巴の所持品だということ。
 いくら何でも肝心の凶器を被害者の持ち物に任せるのは計画としては杜撰に過ぎる」


マスタ イサム
「いや、いくら何でも安直すぎないか? ひょっとしたら犯人が自分の凶器を巴のものだと思い込ませるためにわざと入れたって線は?」


ノノハラ レイ
「ガチャの景品にそれらしいものがなかったとなると、あの剣は誰かの凶器ってことだ。
 ユーミアさんの凶器は暗視スコープ、キミの凶器は槍、ボクの凶器は筋弛緩剤で綾瀬のは五寸釘と金槌だからさ、かすりもしないんだよね」


ユーミア
「河本さんの凶器は初耳ですが?」


コウモト アヤセ
「ちょっと澪! なんでよりによってこの場で言うのよ!」


ノノハラ レイ
「黙ってるよかマシでしょ。この調子でみんなの凶器も――と、言いたいところだけど、流石に脱線しすぎるからやめておこうか。
 とにかく、この犯行は衝動的なもの。だとしたら不自然だと思わないかい?
 ユーミアさん程の切れ者が、何故計画的に犯行を行わなかったのか」



649 :♪Wonderful Story ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 18:41:30.45 ID:fC5nz8KP0



ユーミア
「学級裁判でクロが生き延びるということは、シロは皆殺しになるということ。このユーミアがマスターを死なせるとでも?」


ノノハラ レイ
「思ってないさ。だからこそキミは朝倉巴に殺意を抱いてもそれを実行に移すわけにはいかなかった。
 学級裁判になればどう転んでもキミの主人である増田クンが不幸になってしまうのだから」


ユーミア
「マスターの幸福こそユーミアの存在理由(レゾンデートル)ですから。……ただ、どうしても我慢ならなかっただけで、つい」


ノノハラ レイ
「殺したって?」


ユーミア
「そうです」


ノノハラ レイ
「それはおかしいなぁ。じゃぁどうして死体発見アナウンスがあのタイミングで流れたのかなぁ?」


ユーミア
「……さぁ?」


オモヒト コウ
「どういうことだ? そういえば、そこら辺のいきさつ聞いてなかった気がするな。
 さっきの議論からして、河本、ユーミア、澪の順番で死体を発見したらしいが」


ノノハラ レイ
「そうだったかな。……そうだったかも。じゃ、その辺も含めて齟齬があるか、議論と行こうか」


650 :♪V3議論-HEAT UP- ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 19:04:42.25 ID:fC5nz8KP0



コウモト アヤセ
「まずわたしが巴ちゃんの死体を発見したのが、7時45分……ぐらいだったと思う」


ノノハラ レイ
「そして綾瀬の悲鳴を聞きつけてボクが女湯に向かおうとしたら、いつの間にか女湯から出てきたユーミアさんに阻まれた」


ユーミア
「河本さんの悲鳴を聞きつけたのはユーミアも同じ事。貴方が着替えている間に駆け付けることなど、ユーミアにとっては朝食の用意より簡単です」


コウモト アヤセ
「……今思ってみたら、ユーミアさん、かなり早い段階で来なかった? 移動距離は澪よりあるのに」


ユーミア
「気のせいでは?」


ナナ
「【順番なんてどうでもいい】んじゃない?」


ノノ
「【三人が死体を発見したらアナウンスが流れる】んでしょ?」


オモヒト コウ
「……裁判の冒頭でモノクマに質問したのはこれが狙いだったのか?」



 さすがは公。ボクの考えてることの予想もついてるみたいだね。



651 :論破 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 19:23:58.97 ID:fC5nz8KP0


ナナ
「【順番なんてどうでもいい】んじゃない?」


 |【三人が死体を発見したらアナウンスが流れる】///>



 それは違うよ


 -BREAK!!-


652 :♪学級裁判未来編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 19:28:22.16 ID:fC5nz8KP0



ノノハラ レイ
「いい? 死体発見アナウンスは三人以上の人間が死体を初めて発見した時に流される。
 そしてその三人の内にクロは含まれない。モノクマに確認した通りだ。
 さて、本題に入ろう。死体発見アナウンスはボクが死体を発見した時に流れた。おかしいね?」


ノノハラ ナギサ
「どこが……あっ!」


ユーミア
「……」


ノノハラ レイ
「渚も気づいたみたいだね。どうしたユーミアさん、顔色が悪いぜ?
 その間ボクと綾瀬とユーミアさん以外その場にいなかったから、ボクが三人目ってことになる。
 当時ボク等以外はみんな食堂に居た、間違いないね?」


マスタ イサム
「……そうだ」


ノノハラ レイ
「ユーミアさんがクロだとしよう。死体発見アナウンスが流れるタイミングがボクが死体を発見した時にするには、ボクと綾瀬の前にもう一人死体を発見した人間がいなければならない。
 無論ユーミアさん以外でね? いるのかな? この期に及んでもまだ死体を発見したにも関わらず叫ばず誰にも言わなかった人間なんて」


オモヒト コウ
「いないだろ。ここまで議論を進めておいて、実はもっと前に死体を見つけてたけど黙ってましたなんて奴は」


ノノハラ レイ
「つまりユーミアさんがクロだと仮定した場合、条件を満たしていないにもかかわらず死体発見アナウンスが流された。
 何故か? ユーミアさんがクロだという仮定が間違っていたからだよ。以上数学でいう背理法により、Q.E.D.(しょうめいしゅうりょう)ってわけさ」


653 :♪学級裁判未来編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 19:41:25.12 ID:fC5nz8KP0



ユーミア
「……モノクマの言うフレキシブルな対応をしただけでは?
 死体発見アナウンスが流れなければ真っ先に容疑者が絞られてしまうのですから」


ノノハラ レイ
「あれれ? 何でそんなことを言うのかな? せっかく自分の身の潔白が証明されそうだっていうのに」


ユーミア
「推理の穴を指摘しているだけです。そのような杜撰な充て推量で勝った気になられるのは癪なので」



ノノハラ レイ
「あっそ。ま、どうだっていいんだけどね。重要なのは、見かけ上キミが二番目の死体発見者になっているってことだ。
 キミはどうしても第二死体発見者を装わなければならなかった。だから綾瀬が死体を発見して悲鳴をあげたときすぐにでも駆け付けられるよう、脱衣所で待機してたんじゃないの?
 他の誰かに見つかったときは“二階の掃除が粗方終わったからここを掃除していた”とか言い訳できるようにも」


コウモト アヤセ
「だから澪よりも早く駆け付けることが出来たって事?」


ユーミア
「話になりませんね。何故ユーミアがそのような真似をしなければならないのです?」


ノノハラ レイ
「本当の第一死体発見者がキミだからだよ」



654 :♪学級裁判未来編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/20(土) 20:28:08.03 ID:fC5nz8KP0



ユーミア
「……っ!」


ノノハラ レイ
「蒼褪めたね。図星かな? キミは二階の男子更衣室の前の廊下で倒れている朝倉巴の死体を目撃してしまった。叫び声もあげず君は冷静に検死に努めたんじゃないかな?
 そして死因に気付いたとき、キミは凶行に及んだのさ。
 全身くまなく刺したのは死斑をごまかすためで、骨を折ったのは死後硬直で動かなくなった体の姿勢を無理矢理捻じ曲げた痕跡を隠すため。
 そしてそれらの行動すべての本当の理由は、直接の死因を隠すためだね?
 ――後頭部を強く打ったことによる硬膜下出血。頭部に一切刺し傷がなかったのは、誰にも頭部を調べて欲しくなかったから、かな?」


ユーミア
「何を根拠にそのような出鱈目をほざけるのですか?」


ノノハラ レイ
「胃の中が空になるくらいの激しい嘔吐なんて、小脳や脳幹が圧迫されるなりなんなりで機能不全に陥るぐらいしか考えられないからね。
 そしてそれが外傷によるものなら、急性硬膜下出血ぐらいだろうと思った次第さ」


コウモト アヤセ
「硬膜下出血って?」


ノノハラ レイ
「くも膜下出血は知ってるね? 人間の脳はデリケートだから、頭蓋骨だけじゃなくて脳そのものを膜でくるんでいるんだよ。
 硬膜は、くも膜と頭蓋骨の間にある膜のこと。硬膜下出血っていうのはその字の通り、硬膜と脳の間に出血がおこって、たまった血液が脳を圧迫して最悪の場合死に至る。
 そしてこれらの多くは、頭部外傷からなる。今回のようにね」


ウメゾノ ミノル
「じゃぁ、本当の死因は撲殺ってことか?」


ノノハラ レイ
「そう簡単にことは進まない。死体を降ろすときにカツラが取れたけど、頭部に目立った外傷はなかっただろ?
 人を殺そうと物で頭を殴打しようものなら、腐った果実みたいにグニャグニャになっても可笑しくない。力の強いものなら猶更ね」


オモヒト コウ
「人間の頭部は髪の毛に引っ張られてかつ毛細血管が張り巡らされているから、軽くぶつけただけでも頭皮が裂けて大出血とかもままあるからな。
 あのカツラに血痕なんてついてなかったじゃないか」


ユーミア
「返り血の処理は面倒ですからね。加減をしたのですよ。それで納得できませんか?」


ノノハラ レイ
「この手の症状で厄介なのは、脳自体への損傷がなかった場合なんだよね。
 頭を打ったその場では目立った症状は出ないけど、徐々に血が溜まっていって気づいたら手遅れなんてこともざらだし」


マスタ イサム
「……何が言いたいんだ?」


ノノハラ レイ
「クロは増田クン、キミだよ」


655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 18:33:18.97 ID:WuHhitiP0
マスター…
656 :♪絶望トロピカルfancolle [saga]:2021/02/27(土) 17:28:01.03 ID:cMg7GukF0



―――



マスタ イサム
「なっ……!



 空気が凍った。みんなの息をのむ声が聞こえる。その沈黙が長いのか短いのかもわからない。



コウモト アヤセ
「ちょっと澪、何言いだすの?!」


ノノハラ レイ
「皆の大好きな感情論で言えば、ユーミアさんがここまで庇うほどのクロは、ユーミアさんの主人である増田クン以外あり得ない、って所かな」


マスタ イサム
「確かにそうだが、俺はやってないって言ってるだろうが! アリバイだってあるんだぞ!」


ノノハラ レイ
「言ったじゃん。頭部外傷を受けても症状が出るのにはタイムラグがある場合があるって。
 つまりさ、犯行時刻と死亡時刻が一致するわけじゃないんだよ。なら、アリバイも無意味だよね?」


コウモト アヤセ
「それはそうかもだけど、そんなこと狙ってできるわけないじゃない!」


マスタ イサム
「そもそも、動機は何だ? 巴がその……、俺を付けてたって俺が知ったのはついさっきの事なんだぞ!
 それに、俺がクロだとどうやってユーミアは思ったんだ? 死因が分かったところで俺の仕業だと何故わかる?
 言っておくが、そんな指示ユーミアには出してないぞ。……証拠がない以上信憑性ゼロだが」


ノノハラ レイ
「その点に関しては信じるよ。ユーミアさんの犯行はユーミアさん自身の独断専行とみて間違いない。
 朝倉巴の死体を目にしたキミの怒りと悲しみは紛れもなく本物だ。演技ではない。
 でも、だからこそ、ユーミアさんがありもしない罪を被ろうとするのはキミがクロだからだとしか考えられないんだよ。
 クロであるキミを生かすこと。その為なら罪もキミの罵声も厭わない。それがユーミアさんの存在価値なら尚の事ね」


ユーミア
「惑わされないでくださいマスター。この男の妄言に耳を傾けてはなりません。
 証拠がなければただの想像の域を出ないのですから。マスターがクロなど、断じて在り得ません。
 さあ、早くユーミアに投票を。それですべて終わりますから」


657 :♪絶望トロピカル ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 17:33:56.22 ID:cMg7GukF0



ノノハラ レイ
「……これじゃどこまでいっても水掛け論にしかならないか。
 流石は超高校級のメイド候補生さんだよ。忠義のためになりふり構ってられないんだね。
 その見苦しさも醜さも一周周ってむしろ清々しい。
 正直言ってね、凄いと思うんだ。キミの頭の回転の速さにはさ。
 朝倉巴の死体を発見してから死因を把握し、その原因が増田クンにあることがあるということを理解したうえで、自分が何をするべきかを考えすぐに行動に移した。
 突発的な犯行なのに、さも自分が計画的に犯行を行ったかのように偽装して増田クンの身代わりになろうとするなんて、普通じゃできない発想だよね。
 憎まれてでも守ろうとするなんて従僕の鑑だ。感動すら覚えるよ。
 キミがそこまで徹底して抗うって言うなら仕方がない。ボクも本気で相手してあげようじゃないか。
 来なよ。忠義も忠誠も信念も、何もかも、叩き潰して圧し折って螺子伏せてやる」


ユーミア
「受けて立ちましょう。こちらこそそのような無駄口を叩く舌を引き抜き、永遠に黙らせなければならないようですから」


マスタ イサム
「お前ら揃いも揃って好き勝手言うなよ! 頭冷やせ!」



         「クロはユーミアですよ」


「俺はクロじゃない!」


    「クロは増田クンだよ」


658 :♪V3議論 -PANIC- ◆S7YK1FdmZg [saga]:2021/02/27(土) 17:51:31.75 ID:cMg7GukF0



  パニック議論 開始


|壊れたゴールポスト>
|ウィッグ>
|二人きりのゴンドラ>



       「一連の犯行は全てユーミアのやったこと。この結論は既に証明された筈です」
       「そのロジックはもう適応されない。【アリバイも軒並み保証をなくした】。振り出しだよ」
       「まだ続くの? さっさと終わらせればいいのに」
       「お姉さま! そんな元も子もないことを言わないでください!」



「俺が巴を殺す動機もないし、チャンスだってない! 第一アリバイだって証明されてるじゃないか!」
「でも死因が澪お兄ちゃんの言うとおりなら、その限りじゃないんでしょ?」
「うまく殴れば出来なくはないんじゃない?」
「そんな器用な真似できるか! 第一俺は【巴に傷一つつけてない】んだぞ!」



   「自分で言っておいてもなんだけど、こんなにも【自分の推理が当たっていて欲しくない】なんてね」
   「頓珍漢なこと言ってないでさっさと要点を言えばいいじゃない!」
   「何故そうはぐらかすのですか?」
   「おい、ちょっと待ってくれ……、まさか、お前、これを見越してあんな質問を……!?」



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