見滝原に微笑む刹那(まど☆マギ×ネギま!)

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324 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 01:58:00.94 ID:zUxBw6DX0

「学園警備とこちらの仲間に救援要請を出します。
美樹さん、それまで暁美さんのガードを、
任せて大丈夫ですか?」

「おーけーおーけー、
杏子や刹那さんに結構ボコられてるからね、
この程度なんて事ないって、ててて」
「冗談じゃないわっ! まどか、っ」

「見た所、直ぐに解除するのも力ずくで突破するのも無理です、
私が安全な所まで誘導しますから大人しくしていて下さい。
ここで無理をしても消耗するか最悪大怪我です」

「って、事だからここはあたしに任せといて。
今度来たらぶった斬る」

コメカミに汗を伝わせながら、
大股開きで正眼に構えたさやかが宣言する。

「それでは、お嬢様はしんがりをお願いします」

刹那の言葉に、近衛木乃香は力強く頷く。

「分かった。まどかちゃん、うちとせっちゃんから離れんといてなっ」
「はいっ」
「大丈夫や、せっちゃん強いんやから!」
325 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:02:22.97 ID:zUxBw6DX0

ーーーーーーーー

「もしもし? うん、こっちで確保して………
何、それ?」
「?」

教会で、着信したスマホの通話を終えた裕奈の目が見開かれていた。

「どうしたの?」
「襲撃、された」
「!?」
「こっちに来てる巴さんのお仲間が襲撃されてるっ!」
「襲撃、って、魔法使いなのっ!?」

「質問の答えはイエス、
そうとしか思えないけど誰がやってるのか分からない。
今、刹那さんがガードして安全な所に避難中、私も出るっ!!」

「置いて行くとか言わないでしょうねっ!?」

ーーーーーーーー

路地裏を抜け、行き着いた先は世界樹前広場だった。

「「アデアット!」」

巨大な神木「蟠桃」に向かう巨大な上り階段の幾つもの踊り場。
簡単に言えばそういう作りの「世界樹前広場」にたどり着いた桜咲刹那は、
夕凪と長匕首の二刀で上段から突っ込んで来た斬撃を弾き飛ばした。

「下がってっ!」

まどかを背に隠した水干緋袴姿の木乃香が、
飛来した水晶球を魔法障壁を込めた白扇からの強風で吹き飛ばす。
326 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:05:27.11 ID:zUxBw6DX0

「あなた達、ここで、
麻帆良で私達を手に掛けると言う事の意味を理解していますか?」
「何者を敵に回そうが、私の救世を成し遂げる」

呉キリカを前衛に従え、
広場の上段に現れた美国織莉子の宣言だった。

「匕首・十六串呂!」
「とっ!」

ドドドドッとまとめて打ち込まれた匕首手裏剣を
キリカが横っ飛びに交わした。

「アデアット! お嬢様っ!!」
「はいなっ!」

みょんみょんみょん

「おおおっ!!!」

刹那の手で文字通りぶった斬る勢いで振るわれた建御雷を、
キリカが這う這うの体で交わす。
本当の所を言えば、木乃香の魔力供給を受けた建御雷の一撃は、
キリカとしてもチビらなったのを自慢したくなるぐらいの
とんでもない威力の上にスピードだった。

「!?」

織莉子が放った水晶球が、遠くからの銃弾を受けて砕け散った。
織莉子がたたたっと階段を下りながら水晶球を放ち、
銃弾が水晶球や地面に弾ける。

「上ってっ!!」
「はいなっ、まどかちゃんっ!」
「はいっ!!」

刹那が叫び、牽制されている織莉子、キリカを後目に
木乃香とまどかが階段を上り
刹那がしんがりについて二人の敵を牽制する。
327 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:09:46.80 ID:zUxBw6DX0

ーーーーーーーー

「正義の使徒、高音・D・グッドマン、見参っ!!!」
「おー」パチパチパチ
「魔法使い? 早速だけどこれ、解いてくれないかしら?」

路地裏で、捕縛結界に拘束されたほむらが
颯爽登場した高音に要請した。

「メイ」
「はい………これは………メイプル・ネイプル・アラモード………
………きゃあっ!!」
「メイっ!?」

ほむらの足元の魔法陣を確認しながら呪文を詠唱していた佐倉愛衣が
すってーんっと転倒した。

「大丈夫、です」
「何やってるのよ」
「いや転校生ちょっと偉そうだから」
「これは、魔法陣で人をとらえる捕縛結界ですね」
「ええ、丸で地雷ね」

「その通りです。基本を踏まえながら幾つか嫌なトラップが仕掛けてある、
手作業でこれを外すのはちょっと、骨ですね」
「今、携帯用の破砕装置を手配してはいますが、それ程のものですか」
「そこそこ手間がかかってますし、よく勉強していると思います」

「あれは魔法使いよね?
まどかが魔法使いに追われて逃げているってどういう事なのかしら?
急がないとまどかが………」

「この結界の中で焦ってもケガするだけです、少しだけ時間を下さい。
桜咲さんと近衛さんが一緒であれば安全な筈です」

「ええ、ここでマギカ、魔法少女を襲撃する魔法使い、
その意味は分かりません、至急究明する必要がありますが、
あの二人が一緒なら大丈夫でしょう」
328 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:13:47.98 ID:zUxBw6DX0

ーーーーーーーー

「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!」
「くっ!!」

建御雷の一閃と共にすごいばくはつが巻き起こり、
下段から刹那に迫るキリカも後退を余儀なくされる。

「織莉子っ!」
「釘付け、みたいね」

動こうとする先に銃弾が弾けている状態の美国織莉子も苦い口調で言った。

ーーーーーーーー

「ちょっと待って」

裕奈と共に現場に急ぐマミが、
裕奈を引き留めて指輪から変化させたソウルジェムを取り出した。
そして、掌に乗せたソウルジェムの感触を頼りに移動を始める。

「な、何?」
「気づかなかった? 私達は本当に目的地に向かっていた?」

言葉と共に、変身したマミが走り出し、
マミの髪飾りの黄色い輝きが空中に壁の様に広がった。

「オッケー行くわよ」

駆け出したマミが突き抜ける様に到着したのは、
世界樹広場だった。

「マミさんっ!!」
「鹿目さんっ、もう大丈夫っ!!」

広場の最上段近くから叫ぶまどかとマミが言葉を交わした。
329 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:17:21.20 ID:zUxBw6DX0

「これって………」
「ちょっとだけ中和したけど、
根本の発生源があるみたいね」
「もしもし、こちら世界樹広場、保護対象者発見、
エリアが人払いの結界に飲まれてる、発生源の特定と排除お願いします」
「お邪魔は嫌われるわよ」

スマホを使う裕奈の前で、マミが両手に持つマスケット銃が
飛び掛かって来た呉キリカの刃爪をギリギリ抑える。

「ちいっ!」

通話を終えた裕奈がどんどんどんっと魔法拳銃を発砲し、
キリカが飛び退いた。

「なんとか、なりそうですね」

上へ上へと進んでいた刹那が、ふうっと一息つく。

「………せっちゃん?」

木乃香の言葉と共に刹那が天を仰ぎ、
裕奈の目も見開かれた。

ーーーーーーーー


「正義の使徒、高音・D・グッドマン、見参っ!!!!!
………馬鹿なっ!?」

「世界樹広場」に飛び込んだ高音が叫び声を上げた。

「どう、して?」
「な、何?」

高音、愛衣、魔法使い二人の反応にさやかが聞き返す。
330 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/10(日) 02:21:26.49 ID:zUxBw6DX0

「手間をかけ過ぎたライトアップイベント、
じゃなければ魔法的な何か、みたいねその反応」

ほむらが言い、前を見たさやかもようやく異常に気付く。

「さやかちゃんっ、ほむらちゃんっ!!」

その瞬間、視界が真っ白になった。

「まどかあっ!!!」

その場に呆然と突っ立っていたほむらが、肩を叩く感触に我に返る。

「あそこに、いたよね?」

ほむらに尋ねるさやかの声は、震えていた。

「ねえ、さっき、たった今まどかあそこにいたよね、
刹那さんとこのかさんと一緒に?」

「まどか?
まどかああああっっっっっ!!!!!」

==============================

今回はここまでです>>320-1000
続きは折を見て。
331 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 03:48:08.07 ID:QrZnS/zy0
時刻もよろしい頃合いでしょうか。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>330

「まど、か? ………」
「なんだよ、これ………
まどか? まどかっ!? 刹那さんこのかさんっ!!!」

麻帆良学園都市世界樹前広場では、呆然と突っ立っていた暁美ほむらの横で
美樹さやかが階段を途中まで駆け上って叫び、スマホを取り出した。

「駄目だ、携帯も繋がらなくなってる。
いたよね、さっき絶対いたよね………」
「だ………」
「まどか、まどかどこまどかっ!?」
「黙りなさいっ!!!」

広場を震わす様な一喝に、
一同が肩で息をするほむらに視線を向ける。

「間違いなく魔法、魔法使いの領分の話よね?
説明出来るのは誰っ!?」
「明石さん」

ほむらが叩き付ける様に尋ね、マミが促した。

「魔法、世界だと思う」

裕奈がぽつっと言い、
マミは、苦い顔で小さく首を横に振る高音・D・グッドマンに気づく。
そこに、新たに数人の集団が駆け込んで来る。
今度はスーツ姿の大人が中心だ。

「初めまして、麻帆良学園教師葛葉刀子と申します。
マギカの方々ですか?」
「はい」

その中の一人、魔法少女達も見覚えのある馬鹿でかい棒を手にした
長身の美女が挨拶し、マミが応答する。
332 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 03:51:46.78 ID:QrZnS/zy0

「魔法使い………もしかして神鳴流の方ですか?」
「はい」

マミの問いに刀子が答える。

「学園の魔法教師として、この事態の収拾に参りました」
「まどかは何処? 魔法世界って!?」

噛みつく様に尋ねるさやかに刀子は小さく頷いた。

「不安はもっともです。
魔法に関わる者が住まう別の空間、それが魔法世界です。
まどかさんは出入り口のトラブルでそちらに転移したものと思われます。
只、有能な魔法使い二人が同行していますし世界自体も安定しています。
マギカの皆さんとは言え、
こちらの魔法の世界の事はまだ機密と言ってもいい存在。
こちらで無事に送り届けますので、今日の所はお引き取りいただきたい」

刀子の丁寧な一礼に、
今度こそ噛み付きそうに動いたさやかをほむらが腕で制する。

「分かりました」

ほむらが淡々とした口調で言う。

「まどか、鹿目まどかはあなた達で送り届けてくれるんですね?」
「約束します」
「分かったわ」
「おいっ」

ほむらに続いて同意を示したマミに杏子が声を尖らせる。

「分かりました、それでは必ずお願いします」
「承りました、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

マミと刀子が双方丁寧に頭を下げる。
333 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 03:55:03.93 ID:QrZnS/zy0

ーーーーーーーー

「なーに、まき絵?
見せたいものがあるって………」

その夜、自分も住まう麻帆良学園女子中等部寮に戻っていた明石裕奈は、
自室とは別の部屋を訪れていた。

「!?」

ダッ、と、室内に飛び込み仮契約カードを抜き出す裕奈。
そのカードを持った右手がきつい締め付けと共に引っ張られ、
裕奈は体勢を立て直す間もなく、
ぐにゅっ、と、胸に硬いものが押し付けられていた。

「まき絵、亜子っ!!」

同時並行で、裕奈に同行していた
大柄な少女大河内アキラも玄関からリビングに飛び込む。

「おっと、手を上げな」

すっ、と、無造作なぐらいに槍の穂先を向けられ、
アキラは足こそ止めたが、その目の力はむしろ倍増しになっていた。
334 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 03:58:16.65 ID:QrZnS/zy0

「お、っ」
「何をしている?」

槍の柄を手掴みにしてアキラが低く問う。
槍を向けた佐倉杏子は奪い返そうとしたが、
取り敢えず相手が人間である事を標準に力を込めた槍が動かない。

成程、アキラはこの年頃の女子にしては明らかに長身で
一見するとモデルの様にスタイルがいい。
だが、モデルにしては全体に力強過ぎる。

それは、十分な肉付きを見せるスタイルもそうだし、
豊かな黒髪の美少女と言ってもいい顔立ちは、今は侍の様に凛々しい。
まあ、それにしたって尋常ではない馬鹿力だが。

「!?」

杏子が鼻で笑った、かと思った時には、
槍が尋常ではない長さに変化し、更に多節棍に変化してアキラを縛り上げる。

「降参っ! 他の子は関係ないから手ぇ出さないでっ!」

リボンで縛り上げられリビングに転がされているこの部屋の本来の住人、
佐々木まき絵と和泉亜子を横目に、
右手をリボンで引かれ
アンティーク拳銃の銃口を胸に押し付けられた裕奈が叫ぶ。

ーーーーーーーー

麻帆良学園女子中等部寮大浴場「涼風」では、
忙しい一日も終わりに近づき、
佐倉愛衣が掛け湯代わりにシャワーブースに入っていた。

「!?」

心地よく汗を流していた愛衣が、不意に、
左腕を掴まれ右の脇腹に硬い感触を覚える。
背後から促されるまま回れ右をした愛衣は、
その鼻先に刀の切っ先を見た。

「ちょっと、顔貸してもらえる?」
335 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 04:01:43.99 ID:QrZnS/zy0

ーーーーーーーー

「!?」

女子寮の一室で巴マミ、佐倉杏子に監視されていた明石裕奈は、
突如として増えたキャストに目を丸くする。

「メイちゃんっ!?」
「明石さんも、ですか」

得物を手にした暁美ほむら、美樹さやかの手で
裕奈の側に座らされた愛衣に裕奈が声をかけ、言葉を交わす。

「グリーフシード、あるかしら?
お風呂からここまでだと流石に」

ほむらがマミに囁き、グリーフシードを受け取る。

ーーーー(回想)ーーーー

(引き返すつもり?)
「魔法使いの性質上、テレパシーはむしろ危ない」

世界樹広場を出てから、ほむらが小声でマミに言う。
そして、一同は一度、「図書館島」裏手に移動していた。

「よく、こんな所見つけたわね」
「街の死角を見つけるのはあたしらの日常だからな」

ほむらの言葉に、一度先行して潜伏先を探した杏子が言う。

「大体分かった、情報提供感謝する」
「私が連れて来たんだもの、他人事じゃないわ」

マミから分かる限りの事を聞いたほむらが取り出したのは
複数の小型カメラだった。
336 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 04:05:33.68 ID:QrZnS/zy0

「本来は魔女関係のために用意していたものだけど、
動画をスマホで遠隔視聴できる。
一台は今言った佐々木まき絵の部屋、もう一台は女子寮の大浴場近く、
廊下の天井に設置しましょう」
「お風呂?」

ほむらの言葉にさやかが聞き返す。

「メイ、と呼ばれていた魔法使いを押さえる。
タイプ的に見て金髪の先輩は捕獲しても骨が折れそうだから」
「佐々木まき絵さん、明石裕奈さんの大事な友達みたいね」
「嫌かしら?」

ほむらの問いにマミが首を横に振る。

「状況が状況だから、部屋のドアが開いた瞬間に、でいいわね。
暁美さん、かなりの魔力を使う事になるけど」
「一応グリーフシードのストックは用意して来た」

ーーーー(回想終わり)ーーーー

「!?」

リビングで拘束され転がされていた佐々木まき絵が、
自分の魔法練習杖をしゅっと床に滑らせた。
愛衣がそれを手に立ち上がった瞬間、
マミが首元から抜いたリボンが鞭と化して愛衣の右手を叩き、
そのまま愛衣に絡み付いた。

「手荒な真似をしてごめんなさい」

結論として、体に複雑に巻き付いたリボンで
腕を胴体に縛り付けられた愛衣を前にマミが口を開いた。

「だけど、このままはいそうですか、と帰る訳にはいかないの」

マミの声は、丁寧だからこそ凄味があった。
337 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 04:09:22.02 ID:QrZnS/zy0

「今すぐ私達を解放して下さい。
ここで誰かが大声を出せば、
あなた達は3年A組と関東魔法協会を直接敵に回す事になる。
マギカであっても五人やそこらでどうにかなる体制ではありません。
今なら穏便に、鹿目まどかさんの無事はお約束します」
「巴マミ、ちょっと全員にリボンを」

ほむらの言葉に、マミが小さく頷く。
ほむらに耳打ちされたさやかが、
リビングの一角で床に向けてするりと剣を落とす。

「今、あなた達は止まった時の間にいる。
私達の言う事を聞かないと言うのなら、
この学校の人間はここにいる全員の
両腕両脚を砕かれた白骨死体を見る事になる」
「嘘ですね」

空中で静止する剣を前に、
ほむらの言葉に愛衣が応じた。

「マギカの仕組みを正確には知りませんが、
魔力を使っているのは間違いない。
で、あれば、そんな長時間の時間停止が出来る筈がない、
魔力が持たない」
「ああそう」

ほむらは、敢えて苛立った口調を作り、
青髪ショートカットの少女にざしざしと接近する。

「亜子っ!」

生来色素が薄くショートカットの髪が青っぽく見える和泉亜子が、
米軍制式M9拳銃を手にした
ほむらの急接近にぶるりと震え、裕奈が声を上げる。
338 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/12(火) 04:13:01.84 ID:QrZnS/zy0

「取り敢えず両腕両脚に一発ずつ、でいいかしら?
他の全員分を見せつけてから直接体験してもらう、
取り敢えずその程度の時間はあるわ」

「分かった、分かってる事は全部話す。
元々、私がそっちの立場だったとしても、
あれで友達がいなくなって納得して帰れとか言える話じゃないから」
「分かりました」

裕奈に続き、愛衣も折れた。

「有難う、そしてごめんなさい。
全部私達が悪いって事でいい。
だから教えて頂戴」

二人の返答にマミが頭を下げた。

==============================

今回はここまでです>>331-1000
続きは折を見て。
339 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 03:43:30.41 ID:NVh912BJ0
年末近くでアニメも最終回。
色んな笑いで観てましたが、
まずは楽しませてもらいました。

時刻もよろしい頃合いですか。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>338

「そちらの和泉亜子さん?」
「はいっ」

ツインドリルヘアーの少女に名前を呼ばれ、和泉亜子の声が跳ねる。

麻帆良学園女子中等部寮、
その自分の部屋にいた所を二人組のコスプレ少女に襲撃され、
あっと言う間に拘束された。

実の所、亜子も同居人の佐々木まき絵も、
この手のトラブルには多少の免疫がある。

そして、コスプレが只のコスプレではない、と言う事も理解出来る。
その亜子から見ても、二人組のコスプレイヤーは相当な実力者だ。
亜子達の知るトップクラスには及ばないだろうが、その道の素人ではない。

「今、リボンを解くから
バスタオルと着る物とバスルームを借りられるかしら?」
「分かった」

自分が手にしたリボンの震えに気づいたツインドリル少女巴マミが言い、
その事に気付いた亜子もしっかりした声で応じる。
340 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 03:46:32.02 ID:NVh912BJ0

亜子としても状況が状況であり、怖いものは怖い。
だが、夏休みの経験により、
その前とは比べ物にならないぐらいには腹が座っていた。
少なくとも、誰かが傷つこうと言う時に
僅かばかりの覚悟を決められるぐらいには。

もう一つ、これもその時の、絶対的な善悪とは別の
筋の通った者、通らない者、些かの暴力的な世界に触れた経験則として、
既に四人に増えたこの襲撃者達、
多分、対応を間違えなければ余り理不尽な事はしない。
そう亜子は直感した。

「大丈夫? 風邪引いてへん?」
「大丈夫、です」

和泉亜子と佐倉愛衣の拘束が解かれ、
亜子は、マミに横目で見られながら、
マスケット銃の銃口を向けられてその場に座り込んだ愛衣を
バスタオルで包み込む。

ーーーーーーーー

佐倉愛衣の着替えが終わり、
亜子とマミが飲み物を用意してから全員の拘束が解除された。

「乱暴の上に恥ずかしい思いまでさせて、本当にごめんなさい」
「慣れてますからモトイ
全部は肯定出来ませんが、
明石さんの言う通り状況から言ってお気持ちは分かります」

マミが頭を下げ、テーブルの前に座る愛衣が、
亜子から渡されたドクダミ茶のカップを
両手持ちにして啜りながら答える。

「それはごめん、本当に」
「申し訳ないと思ってる」

さやかとほむらが頭を下げ、明石裕奈が頷いた。
その背景では「悪かった」と言っている佐倉杏子に
大河内アキラが小さく頷いている。
341 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 03:52:31.96 ID:NVh912BJ0

「佐々木まき絵さん?
昼間にも会ったわね。巴マミです」

マミがまき絵に声をかけ、
マミに目で促されて他の面々も名乗りを行うが、
まき絵はじっと伺うだけだった。

「この人達は魔法少女、マギカ、って言って、
私達とはちょっと違う魔法を使う人達なんだ。
ちょっと色々あって正直トラブルになってるんだけど、
本当なら私達の敵じゃない。このかちゃんや刹那さんの友達でもあるから」

「そうなん?」

明石裕奈が説明を行い、亜子の言葉にマミが頷く。

「こちらに、魔法使いに何か非があったと言うのか?」

「それに就いては、特にあなた達を巻き込んだ事は本意じゃなくて
重ねて申し訳ない事をしたと思ってる。
だけど、私達の仲間、友達が、魔法に関わって姿を消してる。
だから、こんな形で魔法協会に関わる人達を秘かに引っ張り出して
どうしても事情を聴きたかった」

アキラの言葉にマミが答えて何度でも頭を下げる。

「この子達も、半分行き掛りだけど魔法は使える、
こっち側に関わってて守るべき秘密は守るから」
「それが本当ならきちんと事情を話して欲しい」

裕奈に続き、アキラが言う。

「まどかが、鹿目まどかと言う、
私達と一緒にここに来た同級生がいなくなったのよ。
あの世界樹とか言う大きな木が光って、
そこにいた筈のまどかが姿を消した。
言っておくけど、まどかは私達と行動を共にしていても魔法少女じゃない、
能力的には只の一般人だった」

「それ見た」

ほむらの言葉にまき絵が続き、亜子が頷いた。
342 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 04:00:14.43 ID:NVh912BJ0

「世界樹が光ってるから又、なんかあったのかって」
「又、って何っ!?」
「落ち着いて暁美さんっ」

勢い込んでまき絵を引かせるほむらをマミが嗜める。

「ええ、そうね。
ここからは穏やかに教えていただけるかしら?」
「ええと、鹿目まどかさん? あなた達の仲間の。
彼女は多分魔法世界にいる」

ほむらの言葉に、裕奈が説明を始めた。

「それはさっき聞いた、魔法世界と言うのは何処にあるの?」

「火星」

「オーケー美樹さやか、適当に腕と脚を十本ばかし斬り落として。
あなたなら後で繋げられるでしょう」

「魔法使いと言うのは、宇宙人か何かなのかしら?」
「それに近いのもいる、だから少しだけ真面目に聞いてくれるかな?」

ほむらとマミの反応に、裕奈が応じた。

「位相って言うんだけど、異次元空間って言えば分かるかな?
火星にある異次元空間、別の世界別の次元。
そこが魔法の世界。
その魔法の世界と繋がるゲートがこの麻帆良学園にあって、
ゲートが作動したら地球のこっちの世界から
火星にあるあっちの世界に一瞬で移動出来るんだ」

「じゃあ、まどかはその、火星にある異次元空間にいる、
そう言いたい訳?」

今度は自主的に腕の一本も居合抜きしそうなさやかに、
裕奈は小さく頷いた。
343 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 04:07:46.15 ID:NVh912BJ0

「火星とか異次元とか魔法の国とか言っても、
こちらの世界同様に普通の人間の秩序はあります。
現在は治安やインフラも安定していて、
こちらの世界との通信や交通も整備されています。
一緒に転移したのがあの二人ですから、
あの二人は実力もあってあちらの世界にも明るいですから
滅多な事にはならない筈です」

「それを信じろと?」
「お願いします」

ほむらの言葉に愛衣が頭を下げ、さやかも浮かした腰を下ろす。

「丸で神隠しね」

マミが嘆息して言った。

「鹿目さん達が魔法の世界に、って、
どうしてこんな事になったのかしら?」
「答えなさい」

マミが問い、沈黙する愛衣にほむらが言葉を重ねる。

「分かり、ません」
「分かる事を話して」

苦し気に言う愛衣にほむらが迫る。

「元々、ゲート自体はこの学園の図書館島地下にあるものですが、
今年の夏休みまでは休止、閉鎖状態でした」
「図書館、島?」
「図書館の島」

さやかの言葉に裕奈が応じる。
344 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 04:11:27.76 ID:NVh912BJ0

「湖の中の島が丸ごと図書館になってるんだ、
あれは一種の古代遺跡だね。
実際の所は大昔の魔法使いが作った重要ポイントとかでさ」

「そこにその、ゲートがあると言うのね?
休止中だった、と言ってたけど、今は違うの?」
「半分は」

マミの問いに、愛衣が答える。

「夏休み中の情勢の変化でゲートの再稼働実験はスタートしていました。
その実験中の事故による稼働、それが関東魔法協会の暫定的な見解です」
「物凄く歯切れが悪いわね」

ほむらの言葉の愛衣は頷く。

「あり得ないんです」
「あり得ない?」
「はい、麻帆良、関東魔法協会の魔法は、
科学技術と高度に融合しながら開発が進められています」
「ふーん、科学と魔術とか絶対に交差させちゃいけない
みたいなイメージもあるけど、違うんだ」
「はい」

さやかの言葉に愛衣が答える。

「ですから、備蓄していた魔力エネルギーの流通制御の一部に
コンピューターを取り入れる。
そこで何等かの誤作動が生じて暴発する程の魔力エネルギーが流出する。
その可能性はなんとか理解できます」

「うん」
「只、それでゲートを作動させるとなると、話は別です。
これは、「魔法」なんです」
「魔法?」

愛衣のどこか抽象的、概念的な話にマミが聞き返した。
345 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 04:14:58.55 ID:NVh912BJ0

「術式を組み魔法を発動させる事は、
ゴーストの無い機械には出来ません。
今回の出来事はどう見ても只の魔力漏れじゃない。
そのタイプの暴発であれば
もっと無秩序に物理的な損害、よしんばゲート現象に限定しても
人間三人の消失程度では済まない筈ですから」

「仕掛けた人間がいる、と言う事ね。
その心当たりは?」

ほむらの言葉に愛衣が首を横に振り、
ほむらが米軍M9拳銃を向けても愛衣はその銃口を見据える。

「分かってた事だろ」

リビングの床で体勢を崩していた佐倉杏子が口を挟んだ。

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今回はここまでです>>339-1000
続きは折を見て。
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/19(火) 08:04:29.76 ID:+dwFurMIO
F9 マギアレコード こうへい 同一疑惑 ネット 2ちゃんねる荒らし 嫌儲
https://2ch.me/vikipedia/F9
347 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:15:08.78 ID:NVh912BJ0
それでは今回の投下、入ります。

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>>345

「あたし等を襲撃した魔法使いがいるんだ、
そいつらじゃねーの?」
「その正体が分からないんです」

杏子の言葉に愛衣が応じた。

「私達は魔法生徒であり学園の魔法秩序を司る学園警備です。
だからお姉様………
私の先輩の高音先輩は、あの後あなた達を追って事情聴取を、
と言う意見でしたが上から止められました。
魔法世界に関わる事である以上、
これ以上外部の、それも魔法使いでも容易に対処出来ない
あなた達マギカが関わる事は物理的にも情報的にも避けたい、
それが学園の魔法先生魔法教師の方針であると」

「隠蔽かよ」
「もちろん、事件の調査は行いしかるべき対応はする筈でした」

吐き捨てるさやかに愛衣が言った。

「只、あの場では機密保持が優先されて
襲撃事件に関する初動の対応が手薄になった。それも事実です。
だから改めて伺います。
あなた達は一体どういう行動をしていたんですか?
そもそもどういう理由で麻帆良にいたのか?
明石さんからある程度の事を聞いてはいますが」

「私達は近衛木乃香さんのお招きでこちらにお茶会に来た、
それだけの事よ。
桜咲さんとの関係はそちらの明石さんにも説明したからいいかしら?」

愛衣の問いに、まずはマミが説明した。
348 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:18:16.01 ID:NVh912BJ0

「はい、およその事は伺っています。
付け加えますと、今回の事件後、
学園長から学園警備に情報提供がありましたから」

「学園長、って言うと」
「近衛木乃香さんの祖父に当たります」

さやかの言葉に愛衣が応じる。

「桜咲刹那さんによる見滝原での調査に就いては、
学園長マターの予備調査と言う事で、
あなた達の事も含めて学園長に情報が上がっていました。
加えて、今日のお茶会に就いても、
近衛木乃香さん、桜咲刹那さんから学園長に上がっていた情報が、
今回の事件の発生を受けて学園長からこちらに降りてきました。
元々は他意の無い私的な会合、友人関係と言う位置づけでしたから」

「あなた達が把握していた訳ではないと?」

「私達は独自に桜咲さんが見滝原でマギカに関わっていた事を把握しました。
しかし、それはほとんど偶然みたいなもので、
その事に就いて公式な事前連絡はありませんでした」

マミの問いに愛衣が答える。

「それで、野点の後であなた達は巴さんと別れたんですよね?」
「うん」

愛衣の問いにさやかが答えた。

「私は、そちらの明石裕奈さんが私達の事を付け回していたのに気が付いて、
状況を把握するために一度離脱して、後はご存知の通りよ」
「あたし達は野点の後で寮のこのかさんの部屋にいたんだけど、
途中で離れたマミさんからの連絡もないしカフェで待とうって事になって。
それで、表に出て歩いてたらいつの間にか人通りがなくなって」

「………人払い?」

さやかの言葉に、愛衣がぽつりと言う。
349 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:22:14.03 ID:NVh912BJ0

「私達は佐倉杏子にしんがりを任せて、
桜咲刹那の先導で路地裏に逃げ込んだんだけど、
そこでも魔法使いに襲撃されたわ」
「ああ、任されたはいいけど、
そこで襲撃受けて不覚を取って気が付いたら眠り込んでたって事」

ほむらと杏子が状況を説明する。

「その辺だね、連絡入ったの」
「連絡? 誰から?」

裕奈の言葉に、ほむらが質問した。

「刹那さん。元々同じクラスでもそんなに仲いいとかじゃなかったんだけど、
私が学園警備のエージェント始めたから、
その時に仕事用のアドレスとか交換した方がいいって言われてね」

ーーーー(回想)ーーーー

「あなたが動いていたのは分かっています。巴マミさんはそちらですか?」

「今、魔法使いからの襲撃を受けています。
ちびせつなを待機させますから、××丁目の屋上に学園警備を寄越して下さい。
私は保護対象者を連れて世界樹前広場に向かいます」

ーーーー(回想終わり)ーーーー

「それで、明石さんからの要請で
私達が暁美さん、美樹さんを発見したと言う事ですね」

愛衣の言葉に裕奈が頷いた。

「それで、魔法使いからの襲撃を受けたんですね?」
「ああ、魔法少女じゃなけりゃ魔法使いだろうけど、
多分魔法使いだな」
「そうね、なんとなく私達とは違うと思う」

杏子とほむらが愛衣に答える。
350 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:26:13.27 ID:NVh912BJ0

「どんな相手でしたか?」
「黒いローブにフードで顔はよく見えなかったな。
なん、って言うか薄気味悪い」

「薄気味悪い?」

「ああ、スピードはあたしらから見たらそこそこ、
幻術とかテレポートとかそんな感じでもないのに、
なんか上手く攻撃が当たらない。
その内に不覚を取って眠らされたって感じでさ」

「こちらのは単純な強さが尋常じゃなかったわ」

杏子に続き、ほむらが言った。

「テレポートらしき技術を使うけど、
何より単純な実力がかなり強い筈よ」
「あたしもそう思う」

ほむらに続いてさやかが言う。

「刹那さんとかマミさんとか杏子とか見て来たけど、
匹敵するかそれ以上の使い手だと思う。
あたしは全然叶わなかった」
「どんな攻撃を?」
「光だな、曲がって飛ぶ光、殴られるぐらい痛い光か」
「サギタ・マギカ」

杏子の言葉に、愛衣が呟いた。

「それから、理科に使う試験管、
そいつを割ったら睡眠ガスが出たって感じで」
「こっちは体術ね」

杏子に続いてほむらが言う。

「とにかく目にも止まらぬ速さで殴られるわ交わされるわ、
他に言い様がないわ」

ほむらの言葉にさやかも頷いた。
351 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:30:06.92 ID:NVh912BJ0

「もしかして、魔法使いって基本そんなに強いとか?」
「それは無い」

さやかの言葉に裕奈が言った。

「巴さんの強さは私も身を持って味わったけど、
私はとにかく龍宮さんとガチバトルする巴さんレベルが普通とか
それは流石にないわ」

「そう思います。
マギカの強さに関してはさっきのとは別に私も少々体験しました。
むしろマギカの側が反則的に強い部分があるぐらいです。
基本的な考えとして、マギカを簡単に圧倒する魔法使いがいるなら
それは相当強い部類に入る筈です」

裕奈の答えに愛衣も続いた。

「あの、私が縛られた捕縛結界、あれも魔法よね?」

「ええ、あれは風の捕縛結界ですね。
魔法陣を踏んだら発動するタイプの。
基本を踏まえた上で嫌な仕掛けが幾つもしてあって、
解除するのに骨が折れました」

愛衣の言葉に、ほむらが顎を指で撫でて黙考する。

「後、世界樹広場にもなんかいたけど、
あっちこそマギカっぽくなかった?」
「そうね、どちらかと言うと私達に近いものに感じた」
「一応報告は聞いていますが、詳しくお願いします」

裕奈とマミの言葉に、愛衣が要請する。

「白バケツ」

裕奈の言葉に、ほむらが目を見開く。
352 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:33:40.64 ID:NVh912BJ0

「白いふわふわの衣装を着た女、多分あれがメインだね。
白くてふわふわでバケツみたいにでっかい帽子被って。
前衛で黒っぽい、腕に直接刃物を装着したみたいな
やったら速い切り裂き魔がセットで。
多分あれ、白いのが後詰の指揮で黒いのが前衛、
私達魔法使いにとっては典型的なコンビネーションだから」

「暁美さん?」

裕奈の説明の後、マミがほむらに声をかけた。

「魔法少女、間違いないわ」
「知り合いなの?」

ほむらの言葉にマミが尋ねた。

「直接の知り合いではない。
見た事がある、と言う程度かしら。
その、白黒コンビの事で何か分かった事は?」
「それなんですが、少しおかしいんです」

ほむらの言葉に、愛衣が言う。

「ナツメグさん………こちらの仲間が
街の防犯ツールから追跡したんですけど、結論を言えば逃げられました。
世界樹のフラッシュが最も強くなった隙に監視の目を免れて逃走し、
世界樹前広場から逃走するあの二人の姿を
後から街頭の防犯カメラ等から把握しようとしたんですけど、
どういう訳かぷっつりと消えているんです」

「消えた?」

聞き返したマミに愛衣が頷く。

「はい、念のため機材やデータの確認も行われましたが
異常はありませんでした。
ですから、考えられるのはカメラの無い裏道中心のルートを
完全に選択して逃走した、それが偶然なのか必然なのか」

ほむらは、あり得る、と言う言葉を心の中に留める。
353 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:36:59.99 ID:NVh912BJ0

「その、図書館島地下のゲートはどうなってるの?
誰かが魔法を使って動かした、って話だったわよね?」
「理論的にはそういう事になる筈です」

マミの言葉に愛衣が応じる。

「只、あそこは危険過ぎて
その辺の魔法使いでも近づく事すら容易ではありません」
「図書館が危険、って」

言いかけたさやかが、真面目な表情の愛衣を前に言葉を飲み込む。

「先程明石さんも言いましたが、
図書館島は古の魔法使いが作った重要ポイントです」
「それって、呪いの本とかどっかの官能小説家が聞いた天使のお言葉とか
文字が目に入っただけで全身から血が噴き出して死ぬ本とかがあるとか?」

「そう思っていただいて構いません」

さやかの問いに、愛衣が真面目に応じる。

「幸いにしてそんなものに直接触れた事はありませんが、
あっても不思議ではありません。
地上部分を中心に、大半は普通の図書館です。
図書委員とは別に、
図書館探検部と言う大学を本部とする部活動があるぐらいです」

「図書館、探検部?」

マミの問いに愛衣が頷く。
354 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:41:14.93 ID:NVh912BJ0

「図書館を中心とした図書館島自体が一種のラビリンス、迷宮ですから、
その解明を行い図書館島内の探検、研究を行うための部活動です。
それでも、一般生徒が立ち入る事が出来るエリアは
魔法使いによって確実に限定されています。
図書館島で本当の立ち入り制限エリアに無闇に立ち入ったりしたら、
魔法使いでも命はありません」

「どういう図書館なのよ………」

愛衣の説明にほむらが呆れる。

「報告によると、今回の事件に際して、
地上にいた宮崎のどかさんが、
綾瀬夕映さんに世界樹が異常発光していると携帯で連絡して、
図書館島地下で調べ物をしていた綾瀬さんが
直ちにゲート近辺の調査を行っています。
この宮崎さん、綾瀬さんは共に図書館探検部の部員であり、
同時に、3年A組の生徒、魔法使いでもあります」

「ネギ・パーティーの中でも古参だね」

愛衣の言葉に裕奈が付け加え、スマホを操作する。

「かなり早い段階、少なくとも私よりも前から
ネギ君の近くで魔法に関わって、色々修羅場も潜ったって聞いてるよ。
特に本屋ちゃん、この前髪ちゃんね。
この娘が宮崎のどかなんだけど、
前はあんな大人しかったのに愛の力だねー」

あははっと笑う裕奈の側で、魔法少女達は首を傾げていた。
355 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/19(火) 22:44:44.56 ID:NVh912BJ0

「で、このでこっぱちが綾瀬夕映。
見た目ちっちゃいけど実際小回りが利いて、
魔法関係でもかなり研究してるって切れ者だよ」

「只、綾瀬さんとしても、ゲート周辺は危険過ぎて
その時も直接は接近出来なかった。
確かに図書館島地下まで伸びる世界樹の根に
魔力の異常流入の形跡を見たが、それ以上の事は把握出来なかった。
そう証言していたと学園警備には報告が上がっています。
実際、学園警備としても迂闊に近づけないので
ゲートの直接調査は後回しになっています」

「そんなに、ヤバイの?」
「そういう事になります」

さやかの問いに愛衣が答える。
その時、一同はノックの音を聞いた。

「明石、こっちにいるか?」

==============================

今回はここまでです>>347-1000
続きは折を見て。
356 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:20:48.62 ID:SQ9kiaXf0
それでは今回の投下、入ります。

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>>355

「入れた方がいいと思う、そっちのためにも」
「任せる」

明石裕奈と巴マミが言葉を交わし、裕奈が玄関に向かった。

「どうやら、当たりみたいだな」
「この人………」

新たに入って来たのは三人。
その先頭の、眼鏡の少女を見てマミが呟く。

「そ、長谷川千雨、綾瀬夕映、宮崎のどか。
ま、ネギ・パーティーの中でも結構コアな面子だね」
「誰だ、こいつら?」

紹介する裕奈に、先頭の眼鏡少女長谷川千雨が尋ねた。

「用件は? 今日の世界樹の件?」
「ああ」
「じゃあ、それも含めて説明するから取り敢えず座ってよ」
「うち達の部屋………」

和泉亜子の呟きをよそに裕奈が言い、
女子寮二人部屋の人口密度がいよいよ危機的状態になるが、
その事以外は当面平和に事が進む。

「まず、この人達だけど、
巴マミさん以下、魔法少女、マギカ、そう呼ばれている人達」
「存在は知っているです」
「ああ、裏の情報収集してたら多少はな」

裕奈の言葉に、夕映と千雨が応じる。
357 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:24:49.69 ID:SQ9kiaXf0

「本屋ちゃんとゆえちゃんの事はさっき話したよね、
図書館探検部にしてネギ・パーティーのコアメンバーな
ネギ先生ラブラブコンビ。
それから、ネギ・パーティーの裏番長の千雨ちゃん」
「なんじゃあそりゃあぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」

ぽーっと赤い顔で顔を見合わせるのどかと夕映の側で千雨が絶叫した。

「おい、どういう紹介だよっ!?」

「だってさー、実際問題最初のガチパートナーな
アスナは完全お姉ちゃんモードで
このかもどっちかって言うと甘々お姉ちゃん、
刹那さんは良くも悪くも師匠ポジで図書館二人はこの様。
バランサー的にネギ君にガツンて直言出来るのって千雨ちゃんでしょ」

「だからってなぁ………」
「それで、問題はここからなんだけど………」
「おいっ!?」

身を乗り出した千雨が、裕奈の目を見て浮かせた腰を下ろした。

「千雨ちゃんはどうしてここに?」

「ありゃ、見るからに魔法関係の異常事態だろ。
あんだけ世界樹が光ってて最近学校にいないネギ先生や神楽坂はもちろん、
近衛や桜咲とも音信不通。
いっそ学園警備と繋がってる明石を探してたんだけど、
佐倉がここにいるって事はビンゴって事だな」

「はい」

千雨の言葉に佐倉愛衣が応じた。
358 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:30:55.65 ID:SQ9kiaXf0

ーーーーーーーー

「マギカに絡んだ一般人が目の前で消えた、ってか。
それこそなんだそりゃだ」

裕奈と愛衣から一通りの説明が終わり、
千雨はバリバリ頭を掻いた。

「ナツメグさんを通じて調べましたが、
鹿目まどか、桜咲刹那、近衛木乃香、三人の携帯電話の電波も
ほぼあの時点に合わせて現在に至る迄消失しています」

「つーと、ますます推測通りだろうな」

愛衣の言葉に千雨が言った。

「ゆえちゃんと本屋ちゃんもその用件で?」
「だろうな、私とはそこの廊下で会ったんだけど」

裕奈の言葉に千雨が言った。

「発想はおよそ千雨さんと同じです。
何か分かっている事、出来る事が無いか、
それを確認に来ました」

夕映の言葉にのどかも頷いた。

「ゲートが図書館島の地下にある、と言ったわね?」
「ええ、そうです」

暁美ほむらの問いに夕映が応じた。
359 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:38:25.75 ID:SQ9kiaXf0

「そこまで案内しなさい。
この人達の話を聞く限り、ゲートとやらが発動して
まどか達が火星の異次元の魔法世界に飛ばされた事は確実。
何か分かる事があるかも知れない」

「お勧め出来ないですよ」
「危険だから?」

夕映の言葉に、マミが問いかける。

「その通りです」
「それに、ゲートは魔法使いにとっての重要機密、
部外者、それもマギカの方を無断で案内したと言う事になりますと………」
「部外者?」

愛衣の言葉に、美樹さやかの言葉が剣呑に尖った。

「そういう事よ」

ほむらが続ける。

「その部外者を魔法の国とか言うファンタジーに飛ばしてくれたのは
一体何処の誰なのかしらね?」

「悪いがこっちの方が筋通ってるだろ。
勝手に巻き込んどいて部外者扱いとかさ」

ほむらの言葉に千雨が続いた。

「でも、本当に危険ですよ」
「魔法少女ナメるなってーの」
「調子にのんなよヒヨッコ」
「それでも、美樹さんの言う通り、
私達はかなり危険な状況でも自分の身は自分で守って来たわ。
手がかりがあるなら見逃せない」

のどかの忠告に、最後はマミが言った。
360 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:43:18.73 ID:SQ9kiaXf0

「分かりました。図書館探検部員二名の一存としてご案内します。
可能な限りの事はしますが、
自分の身は自分で守って下さい」

夕映の言葉に、魔法少女達が頷く。

「と、言う事は、私達がついてくのはちょっとまずいんだけど、
千雨ちゃんは?」
「私はパスだ、図書館島の地下とか冗談じゃない」

裕奈の言葉に千雨が身震いして言った。

「言っとくが、その辺のからくり屋敷程度に思ってたらマジで死ぬぞ」
「ええ、気を付けるわ」
「巨大怪獣とかマジでいるからな」
「そういうのあたし達の仕事だし」

マミとさやかの返答に、
千雨は嘆息して手で追い払う。

ーーーーーーーー

「なんだ、こっから入るのか?」

図書館島の図書館裏遺跡群に到着し、佐倉杏子が言った。
他でもない、杏子達がつい先程まで合流場所に使っていた所だ。
そして、夕映、のどかを先頭に魔法少女達が扉の中に入る。

「なかなか、やるですね」

リボンを次々と繰り出して
階段に絡めたリボンにぶら下がりながら降下する巴マミを先頭に、
地下に向かう巨大な螺旋階段を軽々と降下していく魔法少女達に
夕映が感想を漏らす。
361 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:48:57.95 ID:SQ9kiaXf0

「結構、って言うかすっごい深かったねー」

地下通路で、腕で汗を拭いながらさやかが言う。

「気を付けて下さい、この先の通路には侵入者対策の………」

夕映が説明を続けている頃、
さやかの足元ではカチッと音を立てて石畳がへこみを見せていた。

ーーーーーーーー

「広い」
「この先なのかしら?」
「まあ、そういう事になりますが………」

阿鼻叫喚の末に辿り着いた地下の巨大空洞で、
さやかに続いてマミが尋ね、夕映が答える。

「あれって、サイズから言っても世界樹の根っこなのかしら?」
「改めて非常識な大きさね」

壁や天井から突き出している
植物性のオブジェっぽくも見えるものを指して、
マミとほむらが言葉を交わした。

「雨?」

さやかが呟いた次の瞬間には、
さやかと、さやかに飛びついた杏子は岩の地面を転がっていた。

「つーっ、なんだ、よ?」
「は、はは、マジで怪獣? ………!?」

さやかと杏子が見上げた先で、
西洋風のドラゴンが翼で羽ばたきながらガバッと口を開き、
間一髪杏子の張ったバリアが火炎放射の直撃を防いだ。
362 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:52:43.34 ID:SQ9kiaXf0

「ティロ・フィナーレッ!!!」

気が付いた時には、
魔法少女四人組はリボンで繋がれて止まった時の中にいた。

「どう見る?」

ほむらがマミを見て言う。

「硬いわね」

マミが答えた。

「効いてる手応えが全然ない。
硬さ、速さ、攻撃力、
私達四人がかりでも勝てるビジョンが見えないわ」
「同感だ」

マミの言葉に杏子も吐き捨てる様に言った。

「どうするですかっ!?」
「撤収だっ!!」

時間停止が解除され、夕映の叫びに杏子が応じる。
その時には、大量の迫撃砲の砲弾が空中で爆発し、
マミが大量のマスケットを地面に撃ち込みながら後退していた。

「わああっ! もう動いてるっ!!!」

地面から伸びて一時はドラゴンを埋め尽くす様に絡み付いた
大量の黄色いリボンがブチブチブチと容易くちぎられるのを見て、
撤退中のさやかが叫んだ。
363 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 02:56:28.16 ID:SQ9kiaXf0

ーーーーーーーー

「お帰り」

麻帆良学園女子中等部寮佐々木まき絵・和泉亜子の居室で、
飛び込むなり寝っ転がったり両手を床について
総員荒い息を吐いている面々を見て裕奈が言い、愛衣が大汗を浮かべる。

「はーい、元気が出るお茶入ったよー」
「ああ、サンキュー」
「って、効き過ぎじゃないこれ?」
「なんか、危ないお茶じゃないでしょうね」

亜子が運んで来たお茶を、まず杏子が有難く受け取り、
その強烈な威力にさやか、ほむらが声を上げた。

「で、どうだった?」
「簡単に出入り出来ない場所だと言う事は理解したわ」
「だろうな」

裕奈の問いにマミが答え、千雨が嘆息しながら支度を続ける。

「こっちは、ちょっと分かった事がある」

千雨の言葉に、一同が注目した。

「メリケン帰りのアニメ監督がいてな」

言いながら、千雨がノーパソを操作する。
364 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 03:01:48.33 ID:SQ9kiaXf0

「こっちで魔法と拳と剣と萌えなOVAなんかを監督してから、
長年続いてるミステリーアクションの劇場版監督に抜擢されて、
結果、ミステリー・アクション・ボンバーが
ミステリー・アクション・アクション・アクション・
ボンバー・ボンバー・ボンバー・ボンバー・ボンバー・ボンバー・
ボンバー・ボンバー・ボム・ボンバー・ボンベスト
ぐらいに進化したとも言われている訳だが。
で、そのボンバーマン監督に少し遅れてそっちの映画に合流した脚本家が
十八番にしてるギミックがあってだな。
元々実写の刑事ドラマなんかを長くやってた人だが、
今やこれが出たらこの人だと分かる、ってぐらいの大好物な使い方さ」

千雨の操作がそれまでのせわしない動きから、
カチッ、と、短いクリックが終わり、或いは始まりを告げた事が
素人目にも分かった。
ノーパソに表示されているのは、
裕奈達には見覚えのある地図と大量の顔写真だった。

「たった今あんたらが調べに行った通り、
世界樹と図書館島には密接な繋がりがある。
世界樹が光ってゲートが起動した、って事だからな。
だから、あの時間、図書館島出入り口を中心に、
保存されてた防犯カメラの映像データから
取り出せるだけの人間識別データを取り出して分析に掛けた」

「あー、ホントこういうの科学捜査のドラマとかに出て来そう」
「京都辺りの奴か」

画面の中でパパパパパッと取捨選択される光景に、さやかと杏子が言った。
365 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/22(金) 03:05:52.87 ID:SQ9kiaXf0

「で、そいつを
他の可能な限りのデータベースとも連動させて分析した結果」

千雨の操作と共に、
画面の中で膨大な顔写真がどんどん減少し、一人に絞り込まれる。

「あすなろ市?」
「あすなろ市の御崎海香」

画面に大きく表示された写真とデータを前に、
マミと千雨が結論を口にした。

==============================

今回はここまでです>>356-1000
続きは折を見て。
366 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:37:38.39 ID:3X0wuEGD0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>365

「簡単に言えば、麻帆良、特に図書館島周辺の防犯カメラデータを核に、
アクセス出来るありとあらゆるデータをクロスチェック演算して、
今回の事件に関連して怪しい要素が濃い奴を割り出す。
私がやったのはこういう事だ。
問題なのは、何をもって怪しいと言うべきなのか、だけど、
まあ、その辺りの事は話せば長くなる。
で、怪しいと言うべき要素が見過ごせないぐらいに集結してるのが」

「御崎海香、あすなろ市の中学生ね」

長谷川千雨の説明に、巴マミが続けた。

「まず、事件の後で、
図書館島裏口の比較的近くにいた事が防犯カメラで確認されてる。
そして、麻帆良の外の人間。
しかも、ベストセラー作家と来た」

「ベストセラー作家?」

千雨の言葉に暁美ほむらが聞き返す。

「ああ、一応こんな事になってる」

千雨が差し出したのはウェブ辞書のプリントアウトだった。

「現役中学生って事で本人は表立って目立つ事は控えてるらしいが、
こいつらが電子の海で八方手を尽くして一晩かからずやってくれた」

「イエス、ちう様!」

「は? 空飛ぶネズミ?」
「あら、可愛いわね」
「光栄であります」

ふわふわ姿を現した電子精霊に美樹さやかとマミが反応し、
精霊も律儀に返答する。
367 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:41:16.45 ID:3X0wuEGD0

「これ、千雨ちゃんが使役する電子精霊ね」
「インターネット、電子的な通信、データに関わる事なら
大概なんとかしてくれるです」
「すげー」
「いやー、それほどでも」

明石裕奈と綾瀬夕映の説明にさやかが感心し、
電子精霊が実に嬉しそうに反応した。

「このタイミングで他所から図書館島に、
ってだけでも結構高得点で怪しい上に、
あんたらも関わって来たからな。
あすなろと見滝原は目と鼻の先だ」

「こっち側に関わりがあるってのか?」

千雨の言葉に、佐倉杏子が鋭い声で呟く。

「かもな。その御崎海香先生のあすなろ市での行動パターンを
防犯カメラデータ等から割り出した結果、なんだが」
「魔法少女」

千雨が画面に表示させた地図を見て、マミが呟いた。

「根拠は?」

千雨が尋ねる。

「時刻と場所よ」
「だな」

マミに続いて杏子が言った。
368 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:48:01.84 ID:3X0wuEGD0

「あー、確かにね。只の夜遊びにしては意味が分からない。
この件の関係抜きにしても
あたしらならそう推測するわこれ」

「ええ、これなら美樹さやかでも分かるわね」

「成程」

背景であたしの動きについてこれる? 根競べなら負けないわドガガガガと
大汗を浮かべる亜子の前で展開する壮絶バトルをおいておいて
千雨が納得した口調でカチカチ操作を進める。

「で、今度は逆にあすなろ市でのデータを収集した。
御崎海香の自宅は夢の印税生活でぶっ建てた御崎海香御殿」

「おおーっ」

画面に表示された豪邸にさやかが声を上げる。

「その周辺にある防犯カメラの映像と
今回の事件前後の麻帆良の防犯カメラ映像、
まずはそいつをクロスチェックすると」

画面に、ぱぱぱぱぱっと複数の顔写真が
防犯カメラ映像とセットで表示される。
何れも、女子中学生と言って矛盾の無い外見だ。

「あすなろ市の御崎海香御殿周辺に常時出没してるこいつら、
今日は近い時刻に図書館島周辺に出入りしてる。
で、このグループのあすなろ市での行動範囲」

「だろうな」

画面に表示された地図の画像に、杏子が言った。

「こん中に一人、見知った奴がいる」
「魔法少女?」

さやかの問いに、杏子が頷いた。
369 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:51:35.85 ID:3X0wuEGD0

「和紗ミチル、魔法少女だ」

「今の行動範囲と時刻を見る限り、
今のメンバーは御崎海香さんを含めて
一つの魔法少女チームと見るのが自然ね」

杏子の回答に続けてマミも結論を導き出した。

「………転校生?」

そこで、さやかはほむらの様子に気付いた。

「………まどか………
まどかは、魔法の世界にいる、のよね?」
「状況から見てそう考えるのが自然です」

ほむらの問いに、愛衣が答える。

「それは、今から図書館島の地下から行ける所なの?」
「今は無理です」

続けての質問に愛衣が答えた。

「元々、図書館島地下のゲート再稼働作業は
協会内でもトップシークレットの扱いで進められてきました。
何故こんな事になったのか、正確な情報は降りてきていません。
そもそも、ゲートと言うもの自体、その起動には魔力の蓄積が必要ですから
仮に図書館島のゲートが実用化されていても今は難しい筈です」

「冗談じゃ、ない」

愛衣の答えに、ほむらは震える声で言った。

「こんな、訳の分からない状況で、まどかは」
「そうね」

続けたマミの言葉も、明らかに厳しいものだった。
370 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:55:24.14 ID:3X0wuEGD0

「正体不明の魔法使いに魔法少女のグループまで関わってる。
そんな状況で私達と一緒だった鹿目さんがいなくなった。
とても安心なんて出来ないわ」

「あんたら、魔法の世界に行くつもりか?」
「ええ」

千雨の問いに、ほむらが即答した。

「まどかがそこにいると言うのなら」

「行くに決まってるでしょ、まどかは魔法少女ですらないんだからね。
そんな魔法の国とかに勝手に連れて行かれたって言うんなら、
まどかのお友達、魔法少女さやかちゃんとしては絶対に見過ごせない」

「しかし、稼働したばかりの図書館島のゲートをすぐに動かす事は出来ません」

「かなり突発的な事だったみたいですね。
既に周辺の魔力反応は消失していて、
再稼働のための魔力補給には相当な時間がかかるです」

ほむらとさやかの言葉に、愛衣と夕映が答えた。

「図書館島以外のゲートは? あるんでしょう?」

マミが千雨を見て、千雨がノーパソを操作した。

「ここじゃないとすると、次はウェールズか」

ノーパソを操作する千雨に注目が集まる。

「次にゲートが開くのはウェールズ」
「ウェールズ、って、イギリスの?」
「ああ、大体の時刻は………」

マミの問いに千雨が答え、画面にデータを表示する。
371 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/23(土) 15:59:08.71 ID:3X0wuEGD0

「………無理ね」

マミが言った。

「とてもじゃないけど、今から行ける時間じゃない」

「仮に物理的に可能だったとしても、手続きが間に合いません。
魔法協会内の手続きで許可が出ない限り、
魔法的なセキュリティーに阻まれてゲートには接近できません」

マミに続いて、愛衣が言う。

「無理を、通すか」

千雨か、ぽつりと言ってスマホを取り出した。

「私だ、ああ、こんな時間に悪いな………」

==============================

今回はここまでです>>366-1000
続きは折を見て。
372 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:24:37.33 ID:lDycOOgF0
Happy Merry Xmas!

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>371

ーーーーーーーー

「わあ」

美樹さやかが思わず感嘆の声を漏らした。
さやか達のいる部屋に現れたのは、
同年代の同性が一目でそう感嘆するぐらい、
金髪白人の血縁がありそうなスタイル抜群美少女、
と言う表現がぴたりと当てはまる雪広あやかだった。

「何か、容易ならざる事態が出来したと伺いましたが?」

雪広あやかはきりっとした態勢で長谷川千雨に質問する。
身なりも姿勢も、上品でいて力強い、そういう印象だった。

「ああ、こいつは雪広あやか、3年A組のクラス委員長で、
魔法の関係にもある程度通じてる。
魔法少女、マギカ、って知ってるか?」
「多少の事は。それに、世界樹が光った事も関係が?」
「大ありだ、かいつまんで説明する」

正規に関東魔法協会所属の任務に当たっている佐倉愛衣としては、
本来秘匿事項となっている今回の事件の関係者を勝手に増やされて
正直頭を抱えたい所だった。

しかし、雪広あやかは魔法協会、どちらかと言うと
「英雄」ネギ・スプリングフィールドが進める
巨大プロジェクトに大きく関わるVIP的外部協力者。
本来3Aでもストッパー役の千雨が
予想外のスピードで歩を進める事に飲まれているのも実際だった。
373 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:28:17.23 ID:lDycOOgF0

「その様な事が………」

千雨にマミが加わって、魔法少女の事から今回の事件の経緯まで、
あやかにおよそのあらましを説明した。
その時、電子精霊が千雨に接近し何やら耳打ちする。

「………ヤバイかもな」

改めてノーパソを操作した千雨がぽつりと漏らす。

「これ以上、何が?」
「あすなろ市の件だ」

マミの問いに千雨が言う。

「今まで聞いた話をコアにして、
あすなろ市中心に関連情報をクロスチェック再演算した。
防犯カメラ、学校、携帯電話、
インターネット接続等等の情報をかき集めてな。
佐倉杏子さん?」

「ああ」
「これは、あんたの知り合いか?」
「ああ」

千雨が表示したのは、和紗ミチルのデータだった。

「彼女の特異点は二つ。
まず、御崎海香邸に出入りしている
魔法少女のグループと見てまず間違いないが、
同じ条件のグループの中で彼女だけ麻帆良に入ったデータが無い」

「魔法少女じゃ、ない?」
「あり得るかも」

マミの言葉にさやかが続く。
374 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:31:41.70 ID:lDycOOgF0

「まどかみたいに
魔法少女以外で魔法少女に同行してるケースもあるから」
「そうじゃなくても事情があって今回はパスした?」

さやかの言葉に思案顔のマミが続く。

「そしてもう一つ、和紗ミチルはここ最近学校を欠席し続けてる」
「あたしがあいつに会ったすぐ後からだ」

千雨が表示したデータを見て杏子が言った。

「もう一つ、本格的にヤバイ話がある」
「勿体ぶらないで」

ほむらの鋭い言葉に、千雨が頷いた。

「時期だけで言えば、
この和紗ミチルの不登校の直後から、あすなろ市を中心に、
私らと同年代の少女の失踪事件が続出してるって事さ」
「なん、ですって?」

マミの言葉を聞きながら、千雨がノーパソを操作する。

「まず、さっきの魔法少女の説明にも出て来たが、
正体不明の少女の失踪は、魔女に食われた魔法少女である可能性がある。
そういう話だったな?」
「ええ」

千雨の問いにマミが答える。
375 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:35:10.46 ID:lDycOOgF0

「だとしても、統計的におかしい。
警察が事件性を認知しているケースすら目立ってるから
そこから本格的に警察その他の情報にアクセスして
統計の再演算を実行した訳だけど、
今に至る迄この期間のあすなろ及びその周辺の
同年代の少女の家出、失踪、それも事件性を疑われるレベルのもの、
その発生率が明らかに跳ね上がってる。
そして、やっぱりその事を疑ってる刑事がいた」

「特○係の登場って奴?」
「警察全体の取り組みから見て、そんな所みたいだな」

字面だけは軽口めいたさやかの言葉に千雨が言う。

「関連情報にやたらアクセスしてる刑事のPCをこっちで逆に把握した。
彼女は、この流れを一連の失踪事件と見てリストアップしてる。
もっとも、その刑事は和紗ミチルの不登校の前から追跡していたらしいが、
やはりここ最近で跳ね上がってるらしい」

「………その、失踪者のリストとかって?」
「ああ、今んトコ警察では一連の事件と言う見方をとっていない。
だが、その刑事が独自にリストアップしてたのがこれだ」
「………いた………」

マウスを操作していた杏子が呟いた。

「飛鳥ユウリ、あすなろの魔法少女だ」
「失踪したのは、和紗ミチルさんの不登校の少し前ね」

杏子の答えに、マミが続ける。
376 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:38:52.53 ID:lDycOOgF0

「いいんちょ」

そして、千雨は改めてあやかに向き直る。

「はっきり言って、状況はかなりまずいぞ。
魔法使いに魔法少女、得体の知れない事件が絡んで底が見えない。
今回のテロリストの正体は分からないが、
形の上では魔法使いが魔法少女に宣戦布告した形になっちまった」

「長谷川さんっ!」

千雨の尋常ならざる表現に、愛衣が悲鳴を上げた。

「そうね」

それに続いたのは厳しい口調の巴マミだった。

「この事に就いて納得できない状況が続くなら、
魔法使いから魔法少女に対する敵対の意思ありとして、
この事を私の知る限りの魔法少女に通達する事も考えてる」
「待って下さいっ!」

マミの通告に、愛衣の声が縋り付いた。

「確かに不穏な事は否めませんが、
鹿目まどかさんの事は桜咲さん達に任せて下さい。
あの二人が一緒なら、
一般人である鹿目まどかさんの安全を第一に行動する筈です。
あの人達がガードしている一般人をどうこうするなんて、
魔法使いだろうが魔法少女だろうがまず無理です。
遅くともお二人がガードしている間に
協会で保護して無事送り届けると約束しますから」

戦闘モードに近い眼差しの巴マミに、愛衣は懸命に頭を下げる。

「個人的にはあなた達を信じたいと思ってる」

それが、マミの返答だった。
377 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:42:22.46 ID:lDycOOgF0

「だけど、魔法少女同士ですら常に平和とは言えないのが現実なの。
まして、実際に事が起きてる時に、
あなた達を信じて任せろ、と言われるだけでは
時間も短過ぎて知らない事が多すぎる。
そんな状況で私達のお友達、
それも一般人をそのままにしてはおけない」

「それで、あなた達が魔法世界に行くの?」

そこで、宮崎のどかが口を挟む。

「行くよ、行き方さえ分かれば」

答えたのは美樹さやかだった。

「それに、意味があるとは思えない」
「は?」

さやかが聞き返そうとするが、
むしろ穏やかにさやかを見ているのどかの綺麗な瞳が
さやかの言葉を封じる。

「鹿目まどかさんには、このかと桜咲さんがついてる。
二人はあの世界にも通じてるし実力もトップクラス。
あなた達は、実力があるとは言え魔法の事情をほとんど知らない。
あちらの世界は市街地は整備されてるけど、
迂闊にそこから出たらモンスターの森や砂漠が普通にある、
そこにはあんなドラゴンもいるし現地の人達の習慣もある。
私はそこでトレジャーハンターもしてたけど、
何も知らないあなた達が勝手に人を探しに行って、
それに意味があるとは思えない」

この年頃は小さな年の差が敏感に分かる。
一見大人しそうに見えるのどかだが、実年齢はさやかの一つ上。
今本人も言っている経験のためか、
やんちゃ者のさやかをちょっと圧するぐらいには腹が座っているらしい。
378 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:45:52.32 ID:lDycOOgF0


「それでも行くさ。こんな言葉もあるからね。
やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい」

「一時代を築いたライトノベルに出て来る台詞ですね。
もっとも、それは負けフラグの様ですが」

「さやかちゃんはしぶといからね。
それなら映画だろうがスピンオフだろうが
何度でも復活してやり遂げるよ最後まで」

そっと口を挟んだ綾瀬夕映にさやかが言い返す。

「あたしは、ずっとあがいて、後悔しそうになって、
それでも選んで、あたしの事を待っててくれて………
まどかがいなくなって、後悔なんてしたくない」

「そちらさんは?」
「決まってるわ」

千雨に促され、暁美ほむらが答えた。

「私は、私の手でまどかを守る。
私のすべき事はそれだけよ。
魔法使いやドラゴンが跋扈している異常な状況で、
意味も分からず放り出されたまどかを
得体の知れない他人に任せ切りになんかしない」

長谷川千雨は、一つ年下の少女、
暁美ほむらの殺意の籠った眼差しを頷いて見返した。

「明石、佐倉」

そして、千雨はその二人を見た。

「腹、くくるしかないみたいだな」
「長谷川さん?」

千雨の言葉に愛衣が聞き返す。
379 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:49:51.78 ID:lDycOOgF0

「私らだって、行き掛り上協会と衝突した事もある。
他人に実害が出てる時に、
そうそうこっちの都合よくばかりは行かないさ」

「それは、あなた達はネギ先生達と一緒で………」

「外部の、それも簡単にはねじ伏せられない魔法少女って
敵に回したらもっと厄介だと思わないか?」
「ええ、事に及んでは只でやられるつもりは毛頭ないし、
鹿目さんの事で納得出来なければ退くつもりもない」

千雨の言葉に、マミが真面目に続いた。

「まあな」

続いたのは佐倉杏子だった。

「こっちが魔法少女って知った上で招待されて、
それで、魔法使いと魔法少女に襲撃されてこの様、ってなると、
ちょっとそれ面倒くさいで済ませるには限度があるじゃん」

「それは、無益な争いです。
私達は鹿目まどかさんに危害を加えるつもりなんて毛頭ありません。
危険を避けるなら、こちらを信じて救助を待って下さい」

それでも、愛衣は精一杯声を押し殺して告げた。

「いいんちょ」
「はい」

千雨の呼びかけに、あやかは真面目な顔で応じる。

「ちょっと、試しに考えてみてくれないか」
380 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:53:13.98 ID:lDycOOgF0

ーーーーーーーー

ノーパソに向かっていた長谷川千雨は、
短い打鍵と共にふうっと息を吐いた。

「じゃあ、お二人さんはこの手筈で。
ギリギリの所だけど、ゼロじゃない」

千雨の言葉に、ほむらとさやかが頷く。

「あすなろ市の魔法少女グループは残りの二人で当たるのか?」
「そうね」
「ま、そういう事になるな」

千雨の問いに、マミと杏子が返答した。

「図書館島関係の事、頼めるか?」
「分かった」
「了解です」
「って事だ」

のどかと夕映の返答を受け、千雨が向き直る。

「明石、佐倉、学園警備は一旦引いてくれ。
こっからは3Aと魔法少女で進める」
「はいそうですか、と言う事になると思っているんですか?」
「時間が無いんだ」

怒りを秘めた声で聞き返す愛衣に、千雨が押し被せる様に言った。
381 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 03:56:34.37 ID:lDycOOgF0

「元々、不干渉の関係だった魔法使いと魔法少女が両方絡んだ事件、
ってだけでも対処は難しいんだろ。
魔法少女は魔法少女で勝手にやる気だし、
魔法使いには魔法使いの秩序があるんだろ」

「ええ、ですから………」

「魔法少女は、身内が消えてまともに説明も出来ない事態に本気でキレてる。
これでこっちが邪魔に見える動きをしてみろ、最悪殺し合いだ。
ネギ先生以下の四人組が留守で、
上の方に直に話を通せるパイプが無い。
あんた達だけが灯篭の斧で中途半端に協力するってのはリスクが高過ぎる。
それなら、今ここでの事は見なかった事にした方がお互い話が早い。佐倉」

前を見続ける愛衣に向かい、千雨はほんの僅か前に動いた。

「戦争の引き金を引く心算か?」

明石裕奈から見て、普段は礼儀正しく、
年相応に可愛らしい年齢後輩キャリア先輩な佐倉愛衣は、
魔法使い、魔法協会でのキャリアでは裕奈の先輩。
実際は同年代でも指折りの俊才である努力家らしく、
根っこの所は強い芯と負けん気を持っている。

それが、千雨から、自分達が関わっている事件の事で、
確かに理屈は通っているが一蹴に近い形での撤退を求められて、
一瞬それでも食い下がろうと言う表情を見せてから、
歯噛みが聞こえそうな動きで斜め下を向いていた。

そんな愛衣と、
クラスメイトでもある千雨の顔を見比べた明石裕奈は、
訝し気にちょっと首を傾げていた。

「明石、どうだ?」
「仕事に関してはメイちゃんの方が先輩だから、
私は指示で動くだけ」

千雨の問いに、裕奈はふっとごまかしの笑みを交えて答えた。
382 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 04:00:54.23 ID:lDycOOgF0

「勝手に、して下さい。
私達は何も知らなかった、それでいいんですね?」
「恩に着る」
「感謝するわ」

愛衣の言葉に千雨とマミが言い、
裕奈の眉は益々訝しく動いていた。

裕奈が見習いでも魔法協会に属して改めて分かった事として、
今の3年A組、その中のネギ・パーティーはかなり独特な存在だった。

元々千雨は愛衣の一つ年上であり、何より、あの夏休みの実績がある。
裕奈は千雨を裏番長、と呼んだが、
裕奈が後で聞いた所では、夏休み以前の学園祭からも
今や「英雄」であるネギの側でコアな活躍をしていた。

そして、それが出来るぐらいに頭も回る。
そんな千雨に理屈と現実的なパワーバランスで圧倒されて、
愛衣は自分の正規の持ち場で黙らされる。

今は「こちら側」でもある裕奈としては、
色々な意味での自分の中途半端がもどかしくなる。

「明石裕奈」

その呼びかけに、裕奈は思考を止めた。

「一つ、確かめたい事がある」

それを言ったのは、暁美ほむらだった。

「何?」

「今、まどかの側で彼女を守る桜咲刹那、
クラスメイトでもあるあなたから見て、
一体どういう人物なのかしら?」

ほむらの問いに、裕奈は指先で顎を押し上げながら少しだけ考える。

「誠実な人」

それが、裕奈の答えだった。
383 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 04:04:39.04 ID:lDycOOgF0

「うん、クラスメイトで、
魔法協会の関係で関わる事もあるけど、誠実な人だね。
誠実で寡黙なサムライ」
「見たままね」

マミがくすっと笑い、裕奈がニカッと笑みを返した。

「でも、中身は結構普通な女の子の所もあってさ、
それが又かわいーんだ」
「分かる」

ふふっと笑って言ったのは、美樹さやかだった。

「でも、凄く真面目だから、
このかの事だって、今見たら心の底から大好きなのに、
このかに悲しい顔させても昔は距離をおいた護衛に徹してた。
本当は自分が一番友達でいたいのに、
守るためにそうするべきならそうし続けてた。そういう娘だよ。
色々厳しいけどそれも優しいからで、凄くいい娘だから」

裕奈の真面目な言葉に、さやかは真面目な顔で下を向いた。

「今はこのかともアスナとも、ネギ君ともすっごくいい関係で、
誰よりも強いサムライしながらすっごく可愛い女の子になってる。
それでも、何より守るべきものは絶対、命懸けで守り抜く。
だからさ」

そう言って、裕奈は自分を見据えるほむらをしっかと見返す。

「だから、鹿目まどかちゃん、
あんた達の大切な友達の事も、刹那さんなら必ず、
それこそ命を懸けてでも守り抜く筈だよ。
まー、今の魔法世界に、
あの二人を本気にさせる程の脅威があるとも思えないけどね」

==============================

今回はここまでです>>372-1000
続きは折を見て。
384 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/25(月) 13:31:16.73 ID:lDycOOgF0
すいません
>>374差し替えます。

==============================

「まどかみたいに
魔法少女以外で魔法少女に同行してるケースもあるから」

「いや、だからミチルは間違いなく魔法少女だって。
あたしはいっぺん会ってるんだから」

「だったら、事情があって今回はパスした?」

杏子の言葉に、思案顔のマミが続ける。

「そしてもう一つ、和紗ミチルはここ最近学校を欠席し続けてる」
「あたしがあいつに会ったすぐ後からだ」

千雨が表示したデータを見て杏子が言った。

「もう一つ、本格的にヤバイ話がある」
「勿体ぶらないで」

ほむらの鋭い言葉に、千雨が頷いた。

「時期だけで言えば、
この和紗ミチルの不登校の直後から、あすなろ市を中心に、
私らと同年代の少女の失踪事件が続出してるって事さ」
「なん、ですって?」

マミの言葉を聞きながら、千雨がノーパソを操作する。

「まず、さっきの魔法少女の説明にも出て来たが、
正体不明の少女の失踪は、魔女に食われた魔法少女である可能性がある。
そういう話だったな?」
「ええ」

千雨の問いにマミが答える。

==============================

差し替えは以上です。
続きは折を見て。
385 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/27(水) 03:05:43.83 ID:UojWe8dL0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>383
>>384

ーーーーーーーー

「取り敢えず、お茶でも飲んで考える?
私の部屋すぐ近くだから」
「いえ、取り敢えず………」

麻帆良学園女子中等部寮、
佐々木まき絵、和泉亜子の部屋を出て少し歩いた所で
明石裕奈はスマホを取り出した。
側を歩く佐倉愛衣、大河内アキラの注目が集まる。

ーーーーーーーー

「色々言いたい事はありますが」

裕奈と愛衣は、女子中等部エリアダビデ像前の広場で、
腕組みする高音・D・グッドマンの眉がひくひく動くのを見ていた。

「まずはメイ、着衣一式携帯電話ごと
お風呂場に置いたまま何処かに出歩く、と言うのは
如何に女子寮でもはしたない、では済まない事だと思いますが」

そう言って、高音はビニール袋に入った一式を愛衣に押し付ける。

「メイと連絡がつかない上に、
事件性すら疑われるレベルの忘れ物が寮からこちらに連絡があったので
明石さんに電話してみた訳ですが、
一体何事か、当然説明いただけますね? メイ?」
386 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/27(水) 03:08:50.40 ID:UojWe8dL0

そこで、ようやく高音は愛衣の様子に気付く。
高音にとって愛衣は、長いか短いかはとにかく、
魔法の鍛錬からちょっとした戦場気分も含めて
そこそこ濃い付き合いをして来た相手だ。

その高音から見て、愛衣は明らかに憔悴していた。
それも精神的なものだ。
確かに疲れる一日ではあったが、
何時間か前に分かれた時の事を考えると、
何も無しにここまで憔悴するとはちょっと考えられない。

「何が、あったのですか?」
「ああ、うん」

目を閉じて後頭部を撫でていた裕奈が、
左目を開いて高音を見る。
恐らく厄介事だろう、と、高音は覚悟を決めようとする。

ーーーーーーーー

「何と言う………」

裕奈からのおおよその説明を聞き、
高音は絶句し愛衣は下を向いていた。

「あなた達は、それを看過したと言うんですか?」
「あの場で止めようとしたら、本気で殺し合いになってた」

ビクッ、と肩を震わせる愛衣の隣で、
裕奈はむしろ高音の目を見据えて言った。

「ええ、今のは只の質問です。
魔法少女の火力は私も知らない訳ではありませんから、
その判断を責めるものではありません。
こちらで加担したのは長谷川千雨、雪広あやか、
綾瀬夕映、宮崎のどか、これでいいですね?」

「はい」

高音の問いに、裕奈は迷わず答えていた。
387 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/27(水) 03:12:39.52 ID:UojWe8dL0

「ふざけた真似を………」

裕奈は息を飲んだ。
高音は麻帆良学園系列の聖ウルスラ女子高等学校の生徒、
性格は悪く言えば頑固で指導も厳しい。
その分真面目で育ちの良さが見える礼儀正しい先輩。
それだけに、口調に呪詛の籠った呟きは尋常ではなかった。

「ネギ先生の下で、
強大な魔法の実力を持って学園や魔法世界を救う中心にいた。
だから今回もそれを押し通そうと言うのですか。メイ」
「はい」

そこで、ようやく愛衣は怖々と顔を上げた。

「3Aと魔法少女が結託して横車を押そうとしている。
その事に就いては、これからフェイト先生に報告して対処を求めます。
ええ、学園内の魔法関連事件、その調査に関わる学園警備への暴挙として、
私からフェイト先生、魔法先生に厳重に抗議します。
………ふざけるな………」

高音の最後の言葉は、僅かに震えていた。
最近こちらの世界に関わった裕奈は、
お祭り娘の地はなかなか変わらず、高音からもしばしば雷を落とされている。
だからこそ、この事態が高音の心の何に触れたのか、
それぐらいは分かる心算だった。

「高音さん」

だからこそ、裕奈はごくりと喉を動かし、拳を握り、
それでも、口に出した。

「何ですか?」

高音が聞き返す。高音は確かに頑固だが、
責任感が強く、頑迷ではない。
後は、自分次第と裕奈は一度深呼吸をする。
388 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/27(水) 03:16:18.87 ID:UojWe8dL0

「私も、彼女達を追って今回の事件の調査続行を」

そこまで言って、裕奈はぐっと踏みとどまる。
そして、本当にチビりそうな高音の目をしっかりと見返す。

「本気で言っているんですか?」

「本気です。これは、麻帆良学園の中の魔法の事件です。
人が三人消えてて正直何が起きてるのかも分からない。
手がかりは、動き出したグループの後を追う、
今はもうそれ以外には、現実問題として、ない、んじゃないかと、
そう思いますっ!」

「だから、あなたのクラスの暴挙に追随しろと?」

「私も、っ、今回の事はやり過ぎと言うか
やっていい事じゃない。私も、そう思う」

「あなたがそう言うのでしたら、間違いなくそうでしょうね」

「だけど、その事と調査とは別です、
目の前に手がかりがあるんですから」

「そうやって、又、済し崩しに3Aが事件を解決して
私達がそれを手伝って目出度し目出度し、
と言う事にする心算ですか?」

「高音さんっ」

裕奈は踏み留まって前を見て、
高音も決して退かない眼差しでそれを見返した。

「私は、高音先輩を尊敬しています」

裕奈の言葉を聞きながら、高音は裕奈をじっと見据えた。
389 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/27(水) 03:19:45.94 ID:UojWe8dL0

「力だけを持って魔法協会に入った私に、
高音先輩、メイ先輩は魔法使いの事を一つ一つ教えてくれた。
私が調子に乗って、高音さんから雷を落とされた事も一度や二度じゃなかった。
魔法なんて力、好き勝手に使ったらいけないって私にも分かる。
力があるからこそ、何かあったらフォローしなきゃいけない事もいっぱいある。
高音さんもメイちゃんも、
その事にずっと誠実に向き合って努力して積み重ねて、私にも教えてくれた。
魔法協会で高音さんの下について、少しは教えてもらったつもりです」

「それでもあなたは3Aにつくと言うのですか?」

「それでも、高音さんも分かってますよね?
これが只事じゃない、只の魔法のトラブルじゃないって。
襲撃に関わった魔法使いの正体は不明、
魔法少女のグループの関与まで浮上してる。
協会の具体的な動きも見えないで、こっちに手がかりが見えてる。
そんな状態で、一般人が巻き込まれて安否が分からないんです。
だったら、魔法使いとして………」

「私は、あなたよりもずっと長く魔法使いをしています。
身の程を弁えず藪を突く事の怖さもあなたよりは知っています。
いいえ、あなたはその意味では、
3A、ネギ先生と言うとてつもない素質揃いの身近で、
あなた自身が並み以上の素質の持ち主として
魔法に覚醒したと言う環境はむしろ悪かった。
あなたは、お母様の遺志を継ぐと言って魔法使いを志願した。
優秀な魔法使い優秀なエージェントであった
あなたのお母様ですら、任務中に落命した。
見習いが軽々しい事は言わないものです」

「私は………」

裕奈は、ぶら下げた手で改めて拳を握った。

「私は、何も知らなかった、母さんの事を」
「明るくて優しい、強い母だった。
あなたにとっては、
娘の母親としてそれで十分だった。違いますか?」

高音の言葉に、裕奈は小さく頷いた。
390 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/27(水) 03:23:41.65 ID:UojWe8dL0

「それは、明石教授の意思でした。
それを押してあなたに教えたあの時の判断が正しかったか、
今でも私は自問自答します」

「私は高音さんに感謝してる」

「それならば、あなたが知った先人の犠牲に学ぶ事です。
事は、魔法使いに魔法少女まで関わっている。
私も最近関わりましたが、
彼女達は侮れないどころか敵に回したら本気で危険です。
魔法使いとして、ヒヨコとも言えるかどうか分からない雛鳥が。
これは、表向きのスキルや火力の問題じゃない、あり方の事です」

「怒ってたんだ」
「?」

「魔法少女のみんな、本気で怒ってたよ。
大事な仲間、友達がこんな事になって、
魔法使いの範囲でこんな事になって、それで何も分からないって。
刹那さん達と付き合ってたなら、魔法使いの強さだって分かってた筈。
それでも、一般人の友達のために衝突、戦争覚悟で戻って来て
躊躇なく最短ルートのやり方でこっちに迫って来た。
あの娘達、それぐらい本気で怒って、本気で心配してた。
大事な人がいなくなるって、そういう事じゃないの?
私達のテリトリーで私達にもよく分からない事態が進行してる。
それに、もっと、嫌な予感がする」

「まだ何かあるんですか?」
「千雨ちゃん、長谷川千雨」
「ああ、3A側の今回の首謀者だと言っていましたね」
「それがおかしい、おかし過ぎるんだ」

裕奈の絞り出す様な声に、高音は訝し気に眉を動かす。

「確かに、千雨ちゃんは本当の所を言えば
情に厚くて優しくて、だからネギ先生からも信頼されてて。
だから、魔法少女の側につく、ってのも分からないでもない。
それでも、それでもあの千雨ちゃんはおかしかった」

「私も、そう、思います」

そこで、愛衣が口を開く。
391 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/27(水) 03:27:18.99 ID:UojWe8dL0

「あの夏休みの時も割と側にいる事がありましたけど、
あの人、何と言うか、あんな話し方をするとは………」

愛衣の言葉に、裕奈が頷いた。

「千雨ちゃん、長谷川千雨は、能天気な3Aの中では、
どっちかって言うとスカしてる、ノリが悪い、
そっちに近い態度をとってる。
それだけ慎重な娘で、
それに、魔法じゃない日常を大切にする娘でもあるんです。
少なくとも、こっちの世界の事に関して
やたらと無理押しするタイプの娘じゃない」

「確かに、私もそういう印象を持っています」

とうとう高音も思案して同意を示す。

「千雨ちゃんが怒るって言ったら、
むしろ常識とか安全圏が崩れる時。
そうじゃなかったら、慎重派だから
自分からごり押ししてリスクを負う様なタイプじゃない。
率先して魔法の事に関わって仕切りたがるタイプでもないし、
こんなやり方してたら、明日にでも
フェイト先生からのチョーク責めじゃ済まないって事も分かってる筈。
何より、人を踏み付けて押し除けるみたいな言い方、
根が優しいからちょっと距離取ってる千雨ちゃんが好き好んでやる筈がない。
何て言うか、千雨ちゃんから自分の事みたいな
嫌な危機感がひしひしと伝わって来てたって言うか
………焦ってる………」

「彼女が、何かを知っている、とでも言うのですか?」
「それもあり得る」

やや青ざめた高音の問いに、裕奈が答えた。
392 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/27(水) 03:31:12.58 ID:UojWe8dL0

「だから、このまま訳も分からない状態が続けば、
何か凄く嫌な予感がするんです。
分からないままじゃ済ませられない。高音さん………
高音先輩、私に、僅かな勇気を使わせて下さい」

深々と頭を下げる裕奈の前で、高音がはあっと嘆息する。
高音から見て、裕奈は頭の痛い後輩だった。
高音の下につけられた、あの3A出身のお祭り娘。
力だけはやたらと持っていて、
羽目を外して高音から雷を落とされた事も一度や二度じゃない。
気が付いた時には、裕奈は宙に浮いていた。

「メイは念のためです。
夜は長い、少し頭を冷やしなさい」
「ちょっ、高音さんっ!!」

裕奈と愛衣は背後に現れた巨大な黒衣の触手に持ち上げられ、
高音は裕奈の叫びを背にカツカツとその場を後にしていた。

ーーーーーーーー

「高音さん?」

長い様な短い様な時間の後、高音がダビデ像前の広場に戻って来て、
僅かに浮いた裕奈と愛衣の足がすとんと着地した。
そして、高音は裕奈に資料を押し付ける。

「今回の事件に就いて、ナツメグが調査を行いました。
結果、ゲートのある図書館島周辺の防犯カメラの映像から、
麻帆良の外部の人物が割り出されました」

裕奈は、何処かで聞いた話を聞きながらちょっと首を傾げる。

「御崎海香、撮影された顔面と各種データベースを照合した結果、
あすなろ市の女子中学生作家、なのだそうです。
この、御崎海香と言う少女の周辺調査と接触を行い、
事件に関して何か見聞きした事でもないかを確認して下さい。
エージェント明石裕奈………返事は?」

「は、はいっ!」
393 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/27(水) 03:34:24.53 ID:UojWe8dL0

「………ナツメグが言っていました………」
「?」

「こういう場合、学園警備が防犯カメラ映像を調査するためには、
閲覧許可を申請した上で、防犯目的で防犯カメラデータを提供されている
ミラーサーバにアクセスするのが通常手順です。
しかし、今回は、事件直後から提出されていた許可申請は棚ざらしにされ、
調査のために正規にアクセスした痕跡も無い。
それなのに、何かアクセスした形跡はある。
きな臭いものを感じたナツメグは、
学園警備のダミー活動で顔を繋いでいたルートから、
店舗等の防犯映像の生データを直接確保しておいて
今回分析に用いたと言う事です」

「やるね………」
「跳ね返りも地道にやるものです」

裕奈の言葉に高音が答える。

「この御崎海香と言う人物に就いて、私はそれ以上の事は知りません。
出張先での聞き込み調査である以上、
現場の判断で臨機応変に対応するのはエージェントの務めです。
メイは、魔法使いとして経験の浅い明石裕奈のバックアップを。
私自身、緊急時としてこの指示を出していますが、
軽率の疑いがある事も否定はしません。
あくまで魔法先生の指示を待つと言うのなら指示を留保しますが、
あなた達の判断は?」

「エージェント明石裕奈、
只今の高音・D・グッドマン先輩の指示、了解しました」
「佐倉愛衣、同じく了解しました」
394 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/27(水) 03:37:58.37 ID:UojWe8dL0

「明石裕奈、佐倉愛衣」
「「はい」」
「魔法使いの誇りにかけて、
あなた達の本当の魔法と言うものを見せてみなさい」
「「はいっ!」」

高音から見て、裕奈は頭の痛い後輩だった。
それでも、弱小でもバスケットボール部員で、
からりと明るく笑いながら、先輩に対して真っ直ぐな眼差しを向けて来る。
そして、お調子者に見えて、存外聡い。
頭の回転も速く、よく見ている。根っこの所で大事な所を把握している。

「硬い」と言われている高音だからこそ、
チームとして欠落を埋め合わせる必要が分からない程愚かでもない。

愛衣は優秀な魔法使いで可愛い妹分。
姉貴分である高音共々、誇り高き魔法使いは
面を張られて張られっぱなしのタマではない。

==============================

今回はここまでです>>385-1000
続きは折を見て。
395 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/30(土) 02:45:35.36 ID:abUgDWIv0
2018年にはまだ40時間以上ある筈なのですが…………


おめでとうございます!


それでは今回の投下、入ります。

==============================

ーーーーーーーー

>>394

「………ウェヒヒヒ?」

光に包まれた、と思った後の鹿目まどかの視界に広がる光景は、
彼女の脳内処理能力を相当大幅にオーバーしていた。

どこから記憶を辿ればいいのか、
確か、自分は見滝原に住んでいて、

強くてたくましい母、優しくて頼りになる父、
夢いっぱいの可能性をもつ弟
がいて、見滝原に引っ越してから美樹さやかと、志筑仁美と友達になって。
見滝原中学校に入った。

魔法少女なるものと魔法使いなるものと魔女なるものにほぼ同時遭遇した。
魔法少女の巴マミ先輩、その日に転校して来た、
やっぱり魔法少女だった暁美ほむら、
そして、魔法使い、退魔師だと言う桜咲刹那と関わる事になった。
396 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/30(土) 02:49:15.52 ID:abUgDWIv0

そこに、魔法少女の佐倉杏子、
刹那の親友だと言う魔法使いの近衛木乃香も加わり、
魔法少女とか魔女とか魔法使いと言う時点で、
時々命が危なくなる程度には色々なんやかんやがあった。

そして、魔法使いの実力者だと言う近衛木乃香の招きに応じて
麻帆良学園都市でお茶会に参加して、
楽しい時間を過ごしていた。
ところが、そこから外出した途端に何者かの襲撃を受け、
逃げ回っている内に、大きな木のある広場で光に包まれた。

理屈で言えば、大体こんな感じで脳内プレイバックする。

そこまで筋道を立てて、
突っ立っていたまどかは改めて周囲の景色を確認する。
一言で言えば荒野。
その中に、巨大な石造りの何かが見える。
少なくとも、自分がいた筈の麻帆良の街中ではない。

そこで、まどかは思案する。
魔法少女、魔法使い、と来たからには何が来ても余り不思議ではない。

では、今度は、近年本屋にもWeb小説辺りにも
溢れ返っている異世界転生とやらか。
その場合、もしかしたら半々ぐらいで
輪廻転生と言う事になるが、それはちょっと洒落にならない。

まだまだパパとママにはいっぱいいっぱい甘えて
タツヤの彼女のツラぐらいはおがんでやりたい。

取り敢えず、わたくしこと鹿目まどかといたしましては、
不意打ちに後ろから突き落とされる程恨まれた覚えもなければ、
お盆もお正月もクリスマスも家族向けバレンタインデーも
日本西洋どっちのカボチャ祭りも等価に楽しむ程度の
平均的日本産女子中学生であり、
別に信心そのものに喧嘩を売るつもりはないので、
辛辣なジョークを交えた気合の入った演説で
戦場を飛ぶ来世を迎える等と言った展開は御免こうむりたい。
397 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/30(土) 02:52:38.66 ID:abUgDWIv0

その思考の理屈の趣旨を少々分かり易い例示を交えて意訳したが、
およそそんな事を思案していた鹿目まどかは、
であるからして、今、目の前で
見事な翼の巨大なトカゲが素晴らしくギザギザな歯を見せて
風を切ってこちらに突っ込んで来る、
等と言う展開もさもありなん、と、思考的には結論付けつつあった。

「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!!」

その轟音が、まどかの意識を「こっち側」に引き戻した。

「ごめんなー、痛かったやろ。
でも、ちょっとあの娘にオイタは堪忍や。
ほな、あっち行ってなー」
「ご無事でしたかっ!」

目の前に、桜咲刹那の安堵の顔を見たまどかは、
近衛木乃香の声を聞きながらその場にへなへなと頽れた。

ーーーーーーーー

「あの、刹那さん………」
「この状況の説明、ですよね」

話の早い刹那に、立ち上がったまどかがこくんと頷く。

「まず、ここは魔法の国、魔法世界です」
「魔法世界?」
「はい、その通りです」
「魔法の世界、って、つまり、
えーと漫画やアニメに出て来るみたいな魔法の世界で
別の世界って言うか………」

「そう思っていただけるなら、話は早いです。
場所としては、火星の異次元空間にある様です」
398 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/30(土) 02:55:56.39 ID:abUgDWIv0

「あーまどかちゃん、大丈夫やから瞳のハイライトオンしてな」

「あ、はい、カセイノイジゲンなんですね」
「ええ、理屈としてはそういう事になりますが、
元の世界に無事戻る方法は確立されていますので
その辺りの事はご安心下さい、失礼」

鹿目まどかは、一礼して跳躍した桜咲刹那が、
斜め上結構上空でプテラノドンの魔改造か何かみたいなの一撃して
まどかの隣に戻って来て一礼するその間、億のつかない35秒を
大汗を浮かべて眺めていた。

ーーーーーーーー

「少し、手間取りましたね」
「ごめんなさい、私が足手まといで」
「とんでもないっ!」

陽の沈んだ後、荒野の中の焚火の前で、
頭を下げるまどかを刹那が両手で制した。

「そもそも、魔法少女に関わっているとは言え、
一般人を勝手に魔法の世界に連れて来てしまった事自体、
身近にいた魔法使いとして大変な責任ですから」

「さっきも言ってましたけど、理由は分からないんですか?」

「両方の世界を繋ぐゲートが暴走した、
それは確実なんですが、事態は明らかにイレギュラー。
現在使われていなかったゲートが急に稼働した結果です」
「焼けたえー」

そこで、にこにこ笑った木乃香がマンガ肉を二人に差し出す。
399 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/30(土) 03:00:10.61 ID:abUgDWIv0

「いただきます」
「………どうですか?」

「はい、ええと普通に美味しいって言うか、
本当に普通のお肉みたいだし、
刹那さんが一生懸命戦ってくれてたのも分かりますから」

「そうですか。では、食べたら休んで下さい。
明日には市街地に到着します。
そこで普通の食事と寝床も用意できます、
そこから帰りの算段もすぐにつけます。
ですから今夜だけはご辛抱を。
安全だけは私が必ず」

「はい………あの」
「?」
「刹那さんも寝ないと」
「大丈夫」

そこで、木乃香が口を挟む。

「うちが交代するさかい、
うちでも見張りぐらいは出来るえ。
心配してくれてありがとな」

木乃香がにっこり笑い、
まどかが、何とか材料をかき集めた寝床に身を横たえた。
400 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/30(土) 03:03:52.40 ID:abUgDWIv0

ーーーーーーーー

オ オ オ オ オ オ オ…………

英国、某基地内。
長谷川千雨と雪広あやかのアーティファクトとコネを総動員して、
日本国内某基地からこの基地迄を
地球上で科学的に最も速いであろう乗り物で直行した結果として、
暁美ほむらと美樹さやかはバケツに顔を突っ込んでいた。

「はいはーい、乗り物酔いは収まりましたですわねー」

顔を上げた二人が見たのは、
どうも十代後半ぐらいであろう快活そうな女性であった。

「雪広のお嬢様からあなた達の事を最高スピードで、
とのオーダーによりわたくしが選ばれた訳でございますから、
それでは早速参りますわよ」

かくして、二人はあれよあれよで
ジャガーEタイプの座席にふらふらと到達する。

「シートベルトオッケー歯の食いしばりオッケーですわね。
信号機オール進めの根回しオッケー、
それではエンジン全開出発進行でございますわよおっ!!!!!」
401 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/12/30(土) 03:07:52.51 ID:abUgDWIv0

ーーーーーーーー

「………ウェヒヒヒ?」

夜も明け、程なくして新・オスティア都市部に到達した鹿目まどかは、
脳内での過密処理に難渋しながら通りに突っ立っていた。

「あー、やっぱりそうなるわなー」
「大丈夫ですよ」

目の前で、にっこり微笑む刹那の顔を見て、
まどかの脳内ではようやくカシャンと噛み合った。

「見ての通り、獣やら魔物やらに見える人達も色々いますが、
ええ、彼らは人と言って差し支えの無い存在です。
我々と同様の感情も頭脳も意思疎通もあります。
そして、このオスティアの都市部は相応の秩序も保たれています。
私達がついていますから、海外旅行程度に気を付けていれば大丈夫です」

「まあー、今回は逃げ隠れする必要もないしなー」
「は、はい、有難うございます」
「それでは早速、寄りたい所がありますので」
「はい」

かくして、刹那を先頭にした三人組が到着したのは、
巨大な扉の前だった。

==============================

今回はここまでです>>395-1000

本年最後の投下の可能性が大ですので
一言ご挨拶を。

よいお年を。

続きは折を見て。
402 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/16(火) 02:52:43.93 ID:poFWmeVh0
遅ればせながら
新年あけましておめでとうございます。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>401

 ×     ×

連合王国ウェールズ国内

「はーい、お車はここまででございますわよーっ」

運転手が陽気に声をかけた時、ジャガーEタイプの各席では
辛うじてマウス・ピースを吐き出した美樹さやかと暁美ほむらが
べろんと舌を出して脱力していた。

「出発の前に、お食事のご用意がありますわ」
「「いただきます…………」」

人里離れた緑豊か過ぎる一帯で、
少しばかり車を離れていた運転手が用意した食事に、
二人の魔法少女はふらふらと両手を合わせる。

「………それでもその有様で食が進むのは、
なかなかの根性でございますわね」

「うん、さっきの基地で出すもん全部出しちゃったし」ガツガツガツ
「作りだけは頑丈に出来てるから」モシャモシャモシャ

「ふふっ、気に入りましたわ」
403 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/16(火) 02:59:57.69 ID:poFWmeVh0

「でも、今度はもっと穏便に、
折角のイギリスだから優雅にティータイムとか洒落込みたいわー」
「なかなか、簡単にお似合いとは言えない事ですわよ」
「お互いにね」

\アハハハハハハ/

「それではどうも」
「ご馳走様でした」
「それでは、お気を付けになって」

スターゲイジーパイとハギスをお腹いっぱいご馳走になり、
さやかとほむらがぺこりと頭を下げて運転手も陽気に見送った。

「いやー、なんか凄い人だったね」
「確かに、凄い運転だった。魔法少女じゃなかったら心臓止まってたかも」
「言えてる。まあ、流石に今回だけの付き合いだろうけど」
「そう願いたいものね、少なくとも同乗者としては」

ーーーーーーーー

さやかとほむらがジャガーから離れてどれぐらい経過したか、
二人は霧の中にいた。

「駄目ね」

ほむらが携帯機器を見て言った。

「スマホと軍用のGPS、
用意はしておいたけど、完全に妨害されてるわ。
この分だと方位磁針も当てにならないと思った方がいい」

「で、気が付いてるよね」
「誰に言っているのかしら美樹さやか?」

自分のソウルジェムを掴んださやかの側で、
ほむらが手だけファサァと架空の黒髪を払う。
二人共麻帆良で用意されたフードつきのローブ姿だった。
404 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/16(火) 03:03:59.08 ID:poFWmeVh0

「この空間、結界の類よ」
「だったら………」
「ええ、私達が知っているものとは異質な部分はあるけど、
魔力を辿って行けば辿り着ける………その前に………」
「!?」

最近まで疎遠、と言うか避けていた部分のある「転校生」に
バッと手を握られ、やはり慣れない感情を抱きながらも、
さやかはほむらと共に走り出していた。

「引っ張らない様に気を付けて」
「オッケー」

ほむらが注意しているのは空中に浮いている紐であり、
その先にはゴムボールが縛り付けられていた。

「霧の中からこっち囲んでた?」
「ええ、だから、
迷う前に時間停止を解除して又方角を確認するわよ」

 ×     ×

「あの、ここって………」

魔法世界新・オスティアの一角で、
鹿目まどかは巨大な門を見上げて問いを口にした。

「温泉です。このオスティアは現在は観光都市、
中でもこの巨大温泉は魔法世界の中でも
極めて高い知名度を誇っています」
「これが、温泉………」

桜咲刹那の回答を受けて、
自分の知識がどれぐらいだろうか、と思いながらも、
それでも桁違いに大規模そうな建物を前にまどかは瞬きをする。
405 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/16(火) 03:08:41.48 ID:poFWmeVh0

「この温泉は魔法世界でも一種の聖域、
ですからここで少々確かめたい事もあります。
只、鹿目さんがこうした所が苦手だと言うのでしたら………」
「いえ」

真摯な態度の刹那の言葉に、
まどかはにこりと笑顔で応じた。

「今、お風呂に入れるんだったらそれはとっても嬉しいなって。
魔法世界の温泉ってちょっと興味あるしウェヒヒヒ」
「そうですか」
「せやせや、こんなんなる迄お風呂無しって、
女の子には辛いとこやなー」

もちろん作為的に言った部分はあっても、
およそ正直な事を言ったまどかに近衛木乃香が気さくに声をかけ、
刹那もほっとして返答する。

ーーーーーーーー

「ウェヒヒヒヒヒ」

まどかが知る温泉、入浴施設、温泉レジャー云々を
まとめてぶち込んで桁を一つ二つ外した様な光景の中、
鹿目まどかは借り物のタオルをぶら下げて突っ立っていた。

「相変わらず凄いなぁ」
「はい、凄いですウェヒヒヒ」
「気に入ってもらえて何よりです」

隣からまどかに声を掛ける木乃香にまどかも素直に目を輝かせた。
そして、きょろきょろ辺りを見回していたまどかが、
つーっと視線で半円を描く。
406 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/16(火) 03:12:37.10 ID:poFWmeVh0

「相変わらず、こっちの人はスタイルええなぁ」
「そうなんですねウェヒヒヒ」

すらりと背が高くそれでいてボンキュボンで
生物学的レベルで異国情緒過ぎる美女二人組が通り過ぎるのを
つーっと目で追っていたまどかに木乃香がにこにこ声を掛けた。
改めて、いよいよどの温泉に、と、まどかが思った刹那、
手近な湯舟からどっぱーんっと水柱が上がる。

「彼女は狼藉には不慣れなあちらの世界の一般人ですので、
オイタはご遠慮いただけますかね?」ギリギリギリ

「いやいや、背丈こそおちびさんでも、
あの全体のふわふわ感は愛情に包まれてすくすく育ったもの。
故に、ちょっと見の大きさだけでは測れぬ
健康に育ったそのぷにぷに感こそがモフフフフ
その上であの至高の白絹の肌に包まれた慎ましき………」メキメキメキ

「それが遺言ですか?」ギリギリギリギリ

「えーとウェヒヒヒ」
「気にしない気にしない、気にしたら負けや、さ、お風呂入ろ」
「はい」

最近知り合った美少女剣士とこの辺では割と見かけるタイプの褐色の女の子が
普通に硬そうなお風呂の床で寝技の応酬をおっ始めたのを横目に、
鹿目まどかは大汗を浮かべながら未知の入浴に心躍らせた。
407 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/16(火) 03:16:08.48 ID:poFWmeVh0

ーーーーーーーー

「ふぅーっ」

とにもかくにも、とてつもない数の湯舟から
木乃香に手を引かれるままに温泉を堪能し、
少々体が茹った所でまどかは湯を上がる。

「んー」
「?」

床に立ち、タオルでまとめた髪の毛を解いたまどかに
湯舟の中から木乃香が微笑みかける。

「髪解くと感じ変わるなぁ。
その、ちょっとうぇーぶしたのが可愛ええわ」
「私はこのかさんのすっごく綺麗な長い黒髪が羨ましいですけど」
「ややわー」

木乃香がころころ笑いながら湯を上がり、
まどかが羨む黒髪をタオルから背中にさらりと流す。

「あの、暁美ほむらちゃんも」
「はい、さらさらの綺麗な黒髪で美人で」

「まどかちゃんも可愛ぇよ。可愛い小動物系と言うか、
隠れファンとかクラスに一杯いるんと違う?」

「ウェヒッ、ママみたいな………
あ、ごめんなさ、い………」

調子に乗って人込みでおしゃべりが過ぎた上での感触に、
頭を下げようとしたまどかが目をぱちくりさせる。
確かに、体に当たった時点で、肌に触れた感触がちょっと変わっていた。
408 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/16(火) 03:20:12.10 ID:poFWmeVh0

「ぬい、ぐるみ?」

最初、キュゥべえの事をぬいぐるみだと思った。
確かに、今見ているのも、形状自体はぬいぐるみに見えない事もない、
只、問題はそのサイズだった。

ここにいる時点で着ぐるみではなさそうだ、
確かに、今まで見ていてこの手の人がいても不思議ではない。
それはその通りであるのだが、それでもやはり見た目微妙に可愛くても
サイズが多分ヒグマ越えでそのままの姿の生き物で、

「もしかしてあっちの世界の娘かい?」
「ウェヒッ?」

そして、まどかは気さくな中年女性に声を掛けられていた。

「こっちの世界でも北の方だと私らの同類は少ないからね」
「あ、あのっ、私達の世界の事をっ?」

「ああー、ちょっとだけ知ってるよ。
昔、こっちに来た娘達を世話した事があってる。
アンタ、ちょっとあの娘に似てるかね。
ほら、そんな風に可愛らしく笑う所も」

「ウェヒヒヒ」

気さくに笑う、どうやらかなり懐の深い女性らしい
でっかく温かそうな熊のぬいぐるみに優しく話しかけられ、
まどかもほっと笑みをこぼしていた。
409 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/16(火) 03:23:57.35 ID:poFWmeVh0

ーーーーーーーー

「あら」
「おや」

木乃香とまどかを追っていた刹那は、
ふと近くの浴槽に視線を向け、声を掛ける。
そちらでは、浴槽の中の岩の島で刹那と同年代の少女の一団が寛いでいた。

それぞれタオルを手にしているが、元々ここは女湯、
それも彼女達が女子校育ちと言う事もあってか、タオルの身に着け方もまちまち。

集団の中心となっているのは、
ツインテールの金髪から「角」が覗いている褐色肌の少女。

彼女を中心とした一団の大半は、
この風呂場にはよくいる人間と獣、或いは幻想獣の特徴を備えているが、
角ツインテールの隣のきちっとした黒髪ショートカットの少女達だけは
人間以外の外見上の特徴は見当たらない。

==============================

今回はここまでです>>402-1000
続きは折を見て。
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/16(火) 21:45:15.37 ID:h+7XtgJi0
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411 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/19(金) 02:37:09.05 ID:IOxANT5I0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>409

「ユエの友達の?」
「はい、桜咲刹那です」

岩の島から声を掛けられ、刹那はぺこりと頭を下げる。

相手は、魔法世界の独立学術都市
アリアドネーの騎士団の騎士団候補生グループ。
その中でも、綾瀬夕映が一時所属していたために、
刹那とも面識のあるグループだった。

そうすると、声を掛けて来た少女、
褐色肌に頭から垂れる耳を持ったコレット・ファランドールは
島から湯に入りざばざばと刹那に近づいて来た。

「やっぱり! ユエは元気?」
「はい、とても。あなた達との再会を心待ちにしています」

可能なら手を取らんばかりに食いついたコレットの質問に、
刹那も優しい微笑みで返答する。
コレットが動作からしてぱあっと明るくなり、岩の島にも喜色が広がる。

「それはそうと」

刹那が言葉を続けた。

「アリアドネーの騎士団候補が集団でこちらに?」
「あら?」

いつの間にか湯に入り、そそそと接近していた
角ツインテールの少女が口を挟む。
この集団のリーダー格、エミリィ・セブンシープだ。

「あなたもその用事でなくて?」
412 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/19(金) 02:40:09.16 ID:IOxANT5I0

ーーーーーーーー

「チーフさん」
「おや、確かコノカだったかい?」
「はいな」
「知り合い、なんですか?」

するりとまどかの隣に立って
熊のぬいぐるみな外見の多分中年女性と言葉を交わす
近衛木乃香にまどかが尋ねた。

「うん、前に友達が世話なって」
「アコ達は元気かい?」
「はいな。チーフはこっちに?」
「ああ、仕事にね。あんた達もその用事じゃなかったのかい?」

ーーーーーーーー

「せっちゃんせっちゃんせっちゃん!」
「お風呂で走ると危ないですよ」

ぱたぱたと急接近して来た木乃香に刹那が優しく言うが、
きらきら輝く瞳で刹那に縋り付く木乃香を、
後を追ったまどかは大汗を浮かべて眺めていた。

ーーーーーーーー

「凄い………」

いただいたばかりの温泉をあっさり無効化しそうな熱気。
建物に入る前からの尋常ならざる盛り上がりの中、
きゅっと手を握られる感触を確かめる。

「私から離れないで下さい」

刹那の言葉にまどかが頷く。
413 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/19(金) 02:43:59.00 ID:IOxANT5I0

「でも、なんか大変な事みたいなのに私までいいんですか?」
「大丈夫大丈夫」

まどかの隣で、木乃香がにっこり笑う。

「まあー、確かにコネそのものやけど、
向こうさんも二つ返事で入れてくれたさかい」
「確かに、濫用は控えるべきですが、
そのぐらいの事はしましたからね。こちらです」

そして、刹那を先頭に三人は長蛇の列とは別の入口へと移動する。

ーーーーーーーー

どういう状況か、まどかにも朧気に把握出来た。

スタジアムの中を、一般の混雑を他所に
スタッフが案内するVIP待遇で通路を進み、
そして観覧席へと到着した。

まどか達の前方には、如何にも高貴な椅子に掛けた、
やはり褐色で少々変わった耳の形の女性が腰かけている。
まどかの見た所では高校生ぐらいの年齢、民族衣装か何かなのだろう。

その側には矍鑠としたスーツ姿の年配の女性、
こちらは色白で豊かな白い髪の毛から生物学的な角が見える、
そんな女性が椅子の側に起立して控えている。

「おお」

前方の二人がこちらを見て、褐色の女性が立ち上がり声を掛ける。
刹那がざざっと片膝をついた。

「この度は、この様な席までお招きいただき感謝いたします。
姫様、グランドマスター(総長)」
「お招きいただき、おおきに」
「あ、有難うございます」

木乃香がぺこりと頭を下げ、
勢いで土下座一歩手前だったまどかもそれに倣う。
414 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/19(金) 02:47:09.13 ID:IOxANT5I0

「おお、久しぶりじゃの。
その娘か? 旧世界の知り合いと言うのは?」
「はい、鹿目まどか、と申します。
行き掛りで私達と同行する事となりまして、
無理をお願いしました」
「あ、あの、鹿目まどかです。有難うございます」

刹那の言葉に続き、まどかがもう一度頭を下げる。
まどかの見た所、褐色の女性の方が偉い、それも尋常じゃなく。
側に控えるスーツのご婦人も気品があり、只者ではなさそうだ。

「うん。私はテオドラ、ヘラス帝国の第三皇女である。
この魔法世界において、南北二つの大きな国の一つ、
ヘラス帝国の三番目のお姫様、易しく言えばそういう事じゃな」

「アリアドネー騎士団総長のセラスです」
「は、はいっ」

「良い、頭を上げよ。いい娘の様だ。
名乗る以上説明はしたが、この者達には返し切れぬ恩義がある。
まして、この者の言う事であれば信ずるに値する」

「「有難うございます」」

刹那とまどかが同時に言った。
こちらに来てからはよく見かける褐色肌にちょっと別の生物っぽい、
それでも、素人のまどかが見ても分かる高貴な美人。
まどかが何の事情も分からなくても平伏してしまいそうなオーラと、
それでいて懐の深い優しさがそのまま感じられる相手だった。

「ほら、そろそろ始まるぞ」

テオドラの言葉に、三人はスタジアムの試合場に視線を向けた。
415 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/19(金) 02:50:35.78 ID:IOxANT5I0

「あれが………」
「はい、私達の担任、ネギ・スプリングフィールド先生です」
「本当に、十歳の子どもなんだ………」

スタジアムに現れた男の子を見て、まどかは感心を口にする。
まどか達は明らかにVIP待遇の観覧席にいるが、
スタジアムの観客、熱気はとんでもない事になっている。
そんな中を、まどかよりも年下の少年が堂々と、
それも虚勢には見えない品のいい仕草でスタジアム中央へと進んでいる。

「ラカンさん」

木乃香の言葉に、ネギとは逆側に視線を向けたまどかは目を見張った。
一言で言えばマッチョマン、
確かテレビの映画で聞いた、筋肉モリモリマッチョのなんとか。

「あ、あの………」
「ん?」

掠れる声で尋ねるまどかに、木乃香がにこーっと応じる。

「えーっと、その、この、スタジアムって、
なんか、戦う、みたいなそういう事確か来る前に
そんな事と言いますか………」
「案ずるな」

答えたのは、くすっと笑ったテオドラだった。

「優しい、いい娘の様じゃの。
たまにはなかなか刺激的なものが見られるぞ」
416 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/19(金) 02:53:59.24 ID:IOxANT5I0

ーーーーーーーー

鹿目まどかが呆然としている間にそれは始まり、終わった。
ここ最近、見るだけであれば、
まどかも非常識な戦いと言うものをそれなりに経験している。
先輩の巴マミの魔砲力等は兵器と言ってもいいだろう。
だが、今見ていたものは、桁が二つ三つ違った。

「あー、負けてもうたなぁ」
「残念でしたね」

首をつーっと動かして、会話をする木乃香と刹那に視線を動かしながら、
まどかはようやく口を閉じる。
取り敢えず、スタジアム中央で握手をしている
ネギが負けてラカンが勝ったらしい。

まどかに言わせればそれはまあ、
ちょっと服装をいじれば可愛い女の子にすら見えそうな
確かにここでは精悍な雰囲気でもまどかより年下の少年、小さな男の子と
見た目からして魔女の一つや二つ捻る事が出来そうな
筋肉モリモリマッチョのなんとかが正面対決すればそれはそうなるだろうと。

魔法を駆使していい勝負をしていた、
と言うのは一応まどかにも理解は出来たが、
とにかく壮絶、の一言だった。

「さあ、お待ちかねじゃぞ」

==============================

今回はここまでです>>411-1000
続きは折を見て。
417 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/20(土) 03:17:36.58 ID:X0NSnIeo0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>416

ーーーーーーーー

「セブンシープ分隊、お召により参上しました」
「有難う」

試合の余韻も冷めやらぬスタジアム。
その貴賓室で、片膝をつくエミリィ・セブンシープ以下に
セラス総長が声を掛ける。

「事情は先に伝えた通りです。
イレギュラーな任務、いえ、お願いと言うべき事で申し訳ありませんが」
「大切なゲストの案内、光栄です」

セラスの言葉に、エミリィが改めて一礼する。

「鹿目まどかさん」
「はい」

セラスの言葉に、格好いい黒制服の一団を眺めていた
鹿目まどかが小さく飛び跳ねそうに返答する。

「今から少し、彼女達と行動を共にして下さい。
こちらの二人も一緒です」
「分かりました、有難うございます」

刹那と木乃香が小さく頷くのを見て、
まどかが頭を下げた。

「この人達は、私達とも存じよりです。
ご配慮感謝いたします」

刹那が言い、刹那と木乃香も頭を下げた。
418 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/20(土) 03:21:38.93 ID:X0NSnIeo0

ーーーーーーーー

「箒は初めて? 命綱は付けた?」
「はい」

スタジアムの外でコレットに問われるまままどかが答え、
詳しい説明がなくとも今ここがどういう場所で
コレットが跨っているものが何か、と言う所から
今更ながらむしろ簡単過ぎて信じたくない予想もつく。

「うわぁー」
「ま、魔法の力で転落はしないけど、手は離さないでね」
「はい」

絵本そのままのシチュエーションで、
箒に跨ったコレット・ファランドールにしがみつく形で
建物よりも高く浮遊し、まどかは歓声を上げた。
周囲では、刹那と木乃香も他の面々の箒で飛行を始めていた。

「確か、アリアドネー騎士団、でしたっけ?」
「はい」

まどかの声に、隣を飛ぶエミリィが応じた。

「あなたの事は、旧世界からの迷い人であり
こちらのコノエコノカ、サクラザキセツナの同行者と伺っています。
我々はオスティア総督府での夜会までの案内とガードを仰せつかりました」

「ヤカイ?」
「パーティーや」

「色々引っ張り回して申し訳ありませんが、
向こうの世界に戻るための根回しだと思って下さい。
無論、鹿目さんに何かをしてもらうと言うつもりはありません」

「美味しいお食事ぐらいに思っててええさかい」
「はい。皆さんも有難うございます」
「だーいじょうぶ大丈夫」

まどかの言葉にコレットが口を挟んだ。
419 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/20(土) 03:25:18.37 ID:X0NSnIeo0

「私達もユエの事とか色々聞きたかったしね。
それに、そのまま夜会で自由行動って聞いたら委員長が真っ先に」

コレットの言葉に、エミリィが大きく咳払いをした。

「ユエ?」
「綾瀬夕映、麻帆良学園における私達のクラスメイトです」

ーーーーーーーー

まどか達が到着した先は、飛行船だった。
確かに、ゲートのある廃都からこちらの新・オスティア市街地に行き着く迄にも
なんとか危険区域を脱出した後でヒッチハイクの飛行船のお世話になった訳だが、
今乗り込んでいる飛行艇は、まどかの素人目にも立派に思える代物だった。

「よう」
「どうも」

飛行船に到着した面々を待っていたのは、
まどかから見たら
古い映画でトレーラーでも運転してそうな精悍なおじさんだった。

「ジョニーさん、お久しぶりです」
「協力感謝致します」

「おう、あいつら、ユーナちゃんやマキエちゃんは?」

「はい、元気にしています」
「そりゃあ何より。あんたらの事だし貰うモン貰ってるからな。
出来る事ならなんでも持って来いだ」
「有難うございます」

ドンと胸を叩くジョニーおじさんに刹那以下三人組が頭を下げる。
420 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/20(土) 03:29:00.46 ID:X0NSnIeo0

「この娘は?」
「はい、少々事情がありまして」
「やっぱり、旧世界の?」
「ええ。こちらはジョニーさん、以前こちらの世界で一方ならぬ協力を」
「いやー、そんな大層な事じゃねーって」

「どうも、鹿目まどかです」
「ははっ、素直でお嬢ちゃんだな。あいつらの事思い出すよ。
ま、ここじゃあ大船にいるつもりでいてくんな」
「有難うございます」

ジョニーの言葉に、まどかがもう一度頭を下げる。

ーーーーーーーー

「まどかちゃん」

飛行船のリビングで、木乃香がまどかにスマホを差し出す。

「この娘、この娘がゆえや」
「へえー………ウェヒヒヒ………」

まどかがそれを目にした瞬間、一挙に高まった背後の密度に
まどかが乾いた笑いを漏らす。

「夕映さんは一時期彼女達、アリアドネー騎士団で
共に候補生として参加していた事があります」
「アリアドネー騎士団」

刹那の説明を聞き、先程も聞いた単語をまどかは聞き返す。

「アリアドネーはこの魔法世界の都市の名前です。
極めて高い独立性と学術水準を持つ独立学術都市だからこそ、
その中立かつ高度な技術のアリアドネーに属する魔法騎士団の意義があります」
「その通りですわ」

刹那の説明に、エミリィが腕組みしてうんうん頷く。
421 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/20(土) 03:32:27.77 ID:X0NSnIeo0

「夕映さんは私達の同級生ですが、
事情によりそのアリアドネー騎士団候補生としてに参加し、
今でもその身分を持っている筈です」

「ま、まあ、そういう事もありましたわね。
それで、そのお話に出て来た旧世界に戻った候補生は
その後如何です事?」

「はい、すこぶる元気に、
あなた方との再会を心待ちに勉学、修行に励んでいます」
「それは結構」

刹那の言葉にエミリィが頷くが、
既に周囲もくすくす笑いが我慢出来ないエミリィの顔の緩みが、
まどかにも何となく関係性を察知させる。

「でもさ、凄かったんだよユエ」

笑いを噛み殺しながら、コレットが話に加わった。

「最初は全然だったけどメキメキ上達して
あの時の選抜チームにも実力で選ばれて」
「ま、まあ、向上心と努力は立派なものでしたわね」
「凄かったんだ」
「ん」

呟くまどかに、木乃香が声を掛けた。
422 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/20(土) 03:35:43.43 ID:X0NSnIeo0

「ゆえはな、うちのクラスメイトで学校の図書館探検部でも一緒、
それで、おんなじぐらいに魔法に関わったけど、
頭が良くて一杯勉強してなぁ、ほんまに凄い娘や」

「それは、お嬢様も同じです。
溢れる程の才に驕らず、幾度となく地獄の特訓を繰り返して」

刹那の言葉に、木乃香ははにかんで小さく頷く。

綾瀬夕映、まどかも、女子寮に行った時も含め
ちょいちょい写真を見せてもらったが、
もっさりなぐらいたっぷりとした黒髪でまどかよりも更に小柄な女の子。

何時も一緒の娘とは対照的におでこが光り、
そして、ちょっと冷静に見えながら
みんなと一緒にいい笑顔で撮影されている少女。

「さあさ」

エミリィがぱんぱん手を叩く。

「そろそろ支度の時間でなくて?」
「そうだね、マドカ」
「はい?」

にっこり笑うコレットにまどかが聞き返す。

「こちらへ」
「よろしく頼みますわよ、ビー」
「かしこまりましたお嬢様。
ベアトリクス・モンローと申します」

案内の分隊メンバーの中から、この中では珍しく
生物学的に人間の少女にしか見えない黒髪の娘がまどかに一礼した。
423 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2018/01/20(土) 03:39:02.11 ID:X0NSnIeo0

ーーーーーーーー

「上がりました」
「それではこちらに」

VIP待遇とは言え大混雑のスタジアム帰のまどかが、
高級飛行船らしくシャワーでさっと汗を流してバスローブ姿で戻った所で、
ビーことベアトリクス・モンローが飛行船内を先導する。

ベアトリクスは、生物学的にやや人間離れした面々の多い中、
余り長くないかちっとした黒髪の、
元の世界でまどか達の側にいてもおかしくない少女だった。

そして、ビーに連れられた飛行船の奥で扉が開くのを見て、
まどかはわあっと声を上げた。

「パーティー会場になりますので、お好きなものをお選び下さい」
「え、ええーっと、ウェヒヒヒ………」

素人目にも分かるゴージャスな臨時クローゼットのラインナップに、
まどかは乾いた笑いを漏らす。
だが、それでも、中の上以上の家庭に育ち、
友達付き合いで上条恭介のコンサートにも出入りしていた。
そんな経験があって本当に良かったとまどかは有難く思う。

「こちらですね? 社交場の嗜みも騎士の任務の内、
万全に淑女を完成させていただきます」
「うらー、良いではないか良いではないかー」
「ウェ、ヒヒヒ、ヒヒヒヒ」

閉ざされた扉の向こうからの声を、
残された一同は大汗を浮かべて聞いていた。

==============================

今回はここまでです>>417-1000
続きは折を見て。
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