士郎「……俺は、偽物なんだ」

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1 : ◆026JPAkZvkOC :2017/04/01(土) 20:06:12.48 ID:vHgXoMr+0
「……素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公」

ーー冬木市、衛宮邸。かつて"爺さん"が住んでいた家であり、衛宮士郎が暮らす家。そしてここは、現在は主に魔術の鍛錬を行っている土蔵。

「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

自分は今、聖杯戦争に参加するためにサーヴァント召喚の儀式を行っている。

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。?繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

事前に用意できたのは即興の魔法陣のみ。できれば何かの触媒も欲しかったが、時間にあまり余裕がなかったので仕方ない。

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。?聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

魔法陣に魔翌力が集中するのが感じられる。
いよいよだ。いよいよ、この狂った運命を覆すための戦争が始まる。

「誓いを此処に。?我は常世総ての善と成る者、?我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、?抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

魔法陣の中心から眩いほどの光が放たれ、思わず目を腕で隠す。
どこからともなく強い風が吹き、その勢いに後ずさりをしてしまう。
…光と風が収まったのを確認し、改めて目を魔法陣の方にやると、その中央には何かがぼうっと浮かんでいた。
その姿はーーー

「謂われはなくとも即参上。軒轅陵墓から、良妻狐のデリバリーにやって参りました!」

……巫女装束、だろうか?何やら露出の多い和服を身に纏い、獣耳と大きな尻尾を付けた女性だった。

「…あ、なんかドン引きしてません?えーっと、貴方が私のご主人様…ですよね?」

その言葉にはっと我に帰る。
そうだ、彼女とはこれから先共に闘っていかねばならないのだ。見た目なんかに困惑してはいけないし、何より彼女に失礼だ。

「ーーああ、俺がお前のマスターだ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1491044772
2 : ◆026JPAkZvkOC :2017/04/01(土) 20:07:53.34 ID:vHgXoMr+0
△▲△▲△▲△▲△▲△▲△


【聖杯戦争1日目:開始】


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
3 : ◆026JPAkZvkOC :2017/04/01(土) 20:08:46.22 ID:vHgXoMr+0
『ーー近頃、冬木市内では通り魔事件が相次いでおり、警察が住民に警戒を呼びかけています。被害者はこの一週間で4人に及んでおり……』

「なーんか、最近物騒よねー」
そう言いながらご飯を口の中に放り込んでいくのは、クラスの担任である藤村大河。士郎にとっては姉貴分でもある。

「藤ねえ、食べながら話すのは行儀が悪いって……」

学校ではしっかり者の教師として人望を集めているのだが……ここだとご覧の通りだらけまくっている。オンとオフの差が激しい人だ。

「なーに、士郎?いつの間に私に指図出来るような立場になったのー?」
「いや、別に指図とかそういうわけじゃ……」
「大体ねぇ、私は士郎がちゃーんと成長するまで親代わりをするって切嗣さんに誓ったのよ?だから毎日様子を見に来てるっていうのに、それを士郎ったら…」

申し訳ないが、そんな事情は知らない。
……が、ほぼ毎日様子を見に来てくれる彼女のことは嫌いではない。そもそも嫌いなら毎日のように一緒に朝食を食べてないし。

「…ってあー!もう出ないと遅刻する!テストの採点あったんだーーー!」
彼女はそう言って慌てて家を飛び出した。
朝からテンションが高いようで何よりである。
4 : ◆026JPAkZvkOC :2017/04/01(土) 20:09:36.93 ID:vHgXoMr+0
場面は変わり、通学路にて。

「藤村先生、今日は一段とハイテンションでしたね」

隣でそう言って歩いているのは、後輩の間桐桜。クラスメイトの間桐慎二の妹で、家の手伝いをよくしてもらっている。

「まぁな…」

適当な相槌を言いながら通学路を歩いていく。思えばこの道ももう慣れたものだ。
と、交差点に差し掛かった時。目の前にはあまり見慣れない風景があった。

道路を通過していく何台ものパトカー。あたりには警察官が至る所におり、よく見ると路地裏の方には「KEEP OUT!」のテープが張り巡らされている。

「何でしょう、先輩…」
「……いや、分からん」

先ほどテレビでやっていた通り魔事件の捜査だろうか?だとするなら家のすぐ近くで事件が発生したことになる。

「…まあ、あまり気にするな。桜」
「はい」
5 : ◆026JPAkZvkOC :2017/04/01(土) 20:10:38.10 ID:vHgXoMr+0
「…………」

昼。普段なら教室で弁当を食べたり生徒会室で会長の手伝いをしたりしているのだが、今日は屋上に来ている。
もちろん理由はある。今目の前で膨れっ面をしているこのサーヴァント、『キャスター』と会話をするためだ。
するためなのだが。

「あのー、『キャスター』さん?何をそんなに拗ねてるんです?」
「…だってご主人様、召喚してから私と全然話そうとしてくれないんですもん……」
「仕方ないだろう?桜や藤ねえの前で実体化させるわけにもいかないし…」
「でもでも!念話でもいいんです、もっと私にも構って下さいまし!狐は寂しいと死んじゃうんですよ?」
「なんでさ」

それを言うなら兎だろう。

「てゆーか、何なんですかあの女二人!ハーレムですか!?一夫多妻ですか!?去勢されたいんですか!?」
「分かった、分かったから!取り敢えず落ち着けって!」
6 : ◆026JPAkZvkOC :2017/04/01(土) 20:11:17.74 ID:vHgXoMr+0
閑話休題。

「で、聖杯戦争の話なんだけど…」

先ほどから言っているように、このサーヴァントはキャスター。
キャスターはスキル『陣地作成』と『道具作成』により、時間が経てば経つほど強力になるという特性を持つ。
『対魔翌力』スキルを持つ三騎士クラスとの白兵戦は苦手だが、日数が経過するにつれて十分勝ちの目が出てくるのだ。
つまり、キャスターで聖杯戦争を勝ち残るには、いかにして時間を稼ぐかが鍵になるというわけだ。

「どうする?『キャスター』が陣地作成してる間、俺も外に出ない方がいいよな?」

「……えーっとですね、その事なんですけど……」
「?」

「私、陣地作成とか道具作成とか苦手なんで……ぶっちゃけいつまでも最弱です☆」

「……マジ?」
「大マジです」
「…………」

「一応、魔術攻撃はそこそこですけど、耐久も低いんで……一発喰らったらアボンです」

……………。
7 : ◆026JPAkZvkOC :2017/04/01(土) 20:12:20.98 ID:vHgXoMr+0
……こういう時、何て言えばいいんだろうか。

「うぅっ、すみません。こんなサーヴァントで……。幻滅しましたよね……?」

「……何言ってんだよ。幻滅なんてするわけないだろ?」
「……ふぇ?」

「弱いからって『キャスター』を嫌うはずないって。だって、俺のサーヴァントは『キャスター』しかいないんだから」
「それに、ただ単に正面からの戦いが苦手ってだけだろ?そんなのは戦術次第でどうにでもなるし」

「キャー!ご主人様ったらイケメンッ!」

『キャスター』は自分の言葉に感動したのか、自分の手を握ってブンブンと上下に振っている。耳と尻尾もせわしなく動いていた。
少々オーバーリアクションにも見えるが、サーヴァントが友好的なのは喜ばしいことだ。


その後、大雑把ではあるが今後の方針を決めた。

基本的には周りに不信感を抱かれないためにも普段通りに学校に通うこと。ただしアサシンの対策のため霊体化した『キャスター』が常に共に行動すること。

基本的に夕方、もしくは夜間に探索を行うこと。

そして、可能な限り不意打ちを狙うこと。複数のサーヴァントが戦っているときに漁夫の利を狙えればベストだ。

「じゃあ、こんな感じで。よろしくな、『キャスター』」
「はい!もちろんです、ご主人様!」
8 : ◆026JPAkZvkOC :2017/04/01(土) 20:14:27.62 ID:vHgXoMr+0
こんな感じで進んでいきます。
今更ですが、これはFate/staynightのSSです。
キャラ崩壊・原作設定からの乖離などがあります。ご注意ください。
あと遅筆です。ちまちま書き溜めながら進めていきます。今日はこれだけです
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/04/01(土) 20:22:37.06 ID:rMOVX5So0
士郎がセイバーじゃなくてキャス弧が来たと言う事はマスター面子は同じでもサーヴァント面子が全員違うと考えて良いんですか?
例えば凛の所にはエミヤじゃなくてオリオンが来たりとか、イリヤ所にはヘラクレスじゃなくてダレイオス三世が来たりとか
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 20:26:54.39 ID:2/vXczsZ0
期待
あとメール欄にsaga入れれば魔翌力にならないぞ
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 08:16:32.14 ID:ZetAxneno

タイトルとふじねえへの反応から察するに
12 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/07(金) 22:33:13.85 ID:NrJBnilv0
ーー午後3時。

「……どうだ、衛宮?直りそうか?」
所変わって生徒会室。生徒会長でクラスメイトの柳洞一成に頼まれ、画面が真っ暗なブラウン管とにらめっこしている。

「前々から不調ではあったんだが、この度天寿を全うしたらしくてな」
「あのなぁ……さすがに天寿を迎えた機械は直らないぞ?」
「そうか……無理を言ってすまない」

「……一成、俺のロッカーから工具箱をとってきてくれるか?」
「え……ということは…!」
「多分まだこいつは、現役で戦えるさ」
「おお…忝い!」

「ご主人様、なんで無関係なあのメガネの手伝いなんかしてるんですか?」
柳洞一成が先に帰った後、一人で作業をしているところに『キャスター』がふと語りかけてきた。

「いや、別に?あいつは友達だし、これも単なる趣味だ」
かく言う自分は、絶賛修理に苦戦中だ。
思ったより複雑なところで回線がこんがらがっている。これは下校時間ギリギリまでかかるコースかもしれない。ーー午後3時。

「……どうだ、衛宮?直りそうか?」
所変わって生徒会室。生徒会長でクラスメイトの柳洞一成に頼まれ、画面が真っ暗なブラウン管とにらめっこしている。

「前々から不調ではあったんだが、この度天寿を全うしたらしくてな」
「あのなぁ……さすがに天寿を迎えた機械は直らないぞ?」
「そうか……無理を言ってすまない」

「……一成、俺のロッカーから工具箱をとってきてくれるか?」
「え……ということは…!」
「多分まだこいつは、現役で戦えるさ」
「おお…忝い!」

「ご主人様、なんで無関係なあのメガネの手伝いなんかしてるんですか?」
柳洞一成が先に帰った後、一人で作業をしているところに『キャスター』がふと語りかけてきた。

「いや、別に?あいつは友達だし、これも単なる趣味だ」
かく言う自分は、絶賛修理に苦戦中だ。
思ったより複雑なところで回線がこんがらがっている。これは下校時間ギリギリまでかかるコースかもしれない。
13 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/07(金) 22:34:54.74 ID:NrJBnilv0
「……ま、正義の味方に憧れてたからな。このくらいのことはして当然だ」

「おおー、正義の味方ですか。さすがご主人様、夢が大きいですね!」

「いや……俺は所詮、偽物だから。本物にはどう足掻いてもなれないさ」
「偽物、ですか?」
「……あぁ。俺がやってるのは正義の味方の真似っこにすぎない。こんなの、本物に比べたらおままごとレベルだ」

自分の言葉への返事に困ったのか、沈黙が続く。しばらくして、『キャスター』が口を開いた。

「……でもでも、今はご主人様のおかげであのメガネが助かってます。間違いなく、ご主人様は正義の味方ですよ!」

「……ありがとう。そう言ってもらえると、嬉しい」
14 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/07(金) 22:35:48.41 ID:NrJBnilv0
午後7時。
結局、下校時間ギリギリどころか完全にオーバーしてしまった。すっかり日も落ち、夜の闇が街を包んでいる。

「んじゃ、帰るぞ『キャスター』……どうした?」
「……ご主人様、サーヴァントです。それも2体」
「……っ!」

『キャスター』からの報告に、思わず気が張ってしまう。戦争は既に始まっているのだ。

「……場所は?」
「そんなに遠くない、というか学校内っぽいですね。方向は……」

キャスターが言い終わるより早く、激しく金属音が鳴り響く。音が聞こえてきた方向は、学校のグラウンドの方だ。

こういう時、どう行動すべきだろうか。

「ご主人様、どうします?とりあえずは様子見ですかね?」
「……そうだな。とりあえずグラウンドの方に行ってみよう。一応、少しでも気配が悟られないように霊体化して」
「はい、了解しました!」
15 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/07(金) 22:39:14.55 ID:NrJBnilv0
「はああぁぁっ!」
「フっ!せやっ!」

グラウンドのフェンス付近に着いた時には、戦闘はさらに激しさを増していた。鎧を着込み金髪を後ろで束ねた女性と、和服に身を包んだ侍のような男が切り結んでいる。
……しかし、奇妙なのは女性の武器だ。彼女は剣でも槍でもなく、旗を武器に戦っているのだ。

「なるほど……その刀捌きと立ち振る舞い、お見事です。日本の侍よ」
「得物が旗であってもその腕前。『セイバー』、其方からの賛辞、有難く頂戴する」

自分がここまで到着するのにかかった時間も考慮すると、既に切り結んだ回数は二十では足りないだろう。事実、彼らの戦場であるグラウンドの一部は土が大きく抉れている。
しかし一方で、彼らにはまるで疲れた様子もなく、汗の一滴も垂らしているようには見えない。

(これが、サーヴァント同士の戦い……)
人智を超えたその戦いに、息を呑まずにはいられなかった。
16 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/07(金) 22:40:15.07 ID:NrJBnilv0
戦闘は続いた。
『セイバー』が攻める。侍のサーヴァントが受け流し、反撃を試みる。『剣士の英霊』が急激に加速し、体制を立て直す。
戦局はまさに膠着状態で、両者一進一退の接戦だった。思わず魅入ってしまうが、今はそれどころではない。
自分は観客ではなく役者なのだ。今は偶然出番がないだけで、いつ表舞台に上がることになってもおかしくない。

「……なあ『キャスター』、あの侍のクラスは何だか分かるか?」
「あれ?マスターにはサーヴァントの能力が見れるんじゃないんですか?」
「いや、この距離だと流石に厳しいみたいだ」
「そうですか……すみません、私にも正確には分からないです。ただ、消去法で考えるとアサシンじゃないかなーって」

日本刀を武器に戦っている時点でランサー、アーチャー、キャスターは除外される。また、普通に会話が出来ているのでバーサーカーでもないだろう。
一番可能性がありそうなのはセイバーだが、女性の方が即ちセイバーなのでこれもあり得ない。
となると最有力候補はアサシン、次点でライダーといったところか。

どちらか片方だけでも真名が分かれば理想的なのだが……旗を武器に戦った女性の英雄なんて、果たして存在しただろうか?
17 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/07(金) 22:41:11.88 ID:NrJBnilv0
「……む?」
突然、侍のサーヴァントが動きを止めた。負傷を負ったのかと思ったが、そうではなさそうだ。まるで、何かの気配を探しているかのような……。

「『セイバー』よ、ここまでにしておく。どうやら我らの戦いを盗み見する輩がいるようだ」

「っ!」
その言葉が聞こえた途端、全速力で逃げ出した。もし今襲われたら、こちらに勝ち目があるとは思えない。相手は三騎士である『セイバー』と互角の打ち合いをしていたのだ。

例え侍のサーヴァントだけなら対処出来たとしても、最悪の場合『セイバー』も同時に相手にしなければいけないかもしれない。可能性は薄いとはいえ、そうなってしまっては万に一つも生き残れまい。

「キャスター、いつでも戦闘出来るように準備しといてくれ」
『はいっ!』
18 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/07(金) 22:41:44.77 ID:NrJBnilv0
「もし彼が無関係な人間だとしたら、これ以上戦いを続けるのはいかがなものかと思うのだがな」
「……マスター。指示を」

『セイバー』のマスター、遠坂凛はしばらく悩んだのち答える。
「……構わないわ。ただ、一つだけ条件がある」
「ふむ?」

「『アサシン』、貴方は目撃者を殺さないで。人が残ってるのに気付かなかったのは私の落ち度だから、責任は私がとるわ」

魔術師たるもの、神秘は秘匿しなければいけない。そのためには、一般人の目撃者は殺すしかない。
そんなことは百も承知だし、この決断が心の贅肉なのも分かっている。
ただ、自分のせいで無関係な生徒が犠牲になることがどうしても許せなかった。

「なるほど、承知した。では失礼するとしよう」
そう言って、『アサシン』…佐々木小次郎は姿を消した。
19 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/07(金) 22:43:00.79 ID:NrJBnilv0
「マスター、どうするんですか?」
戦闘終了後、『セイバー』が尋ねてきた。

「そうね……兎に角、明日目撃者に直接聞くしかないわね。今から追っても間に合わないでしょうし」
「はい…。けど、その目撃した人が誰か分かるんですか?」

「ええ。一応、心当たりがあるわ」
足跡がした方を振り向いた時、一瞬だけ見えた短髪の赤毛。そもそも、こんな時間まで学校に残っているという時点で候補は限られているのだ。
あまり他の生徒と関わらない私の耳にも、否が応でも彼の噂は入ってくる。頼まれたことは断らない、学校の便利屋。きっと、今日も生徒会か何かの手伝いをしていたのだろう。

「衛宮くん。きっと彼に違いないわ。明日、朝一で確認しましょう」
20 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/07(金) 22:43:52.47 ID:NrJBnilv0
△▲△▲△▲△▲△▲△▲△


【聖杯戦争1日目:終了】


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
21 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/07(金) 22:46:17.39 ID:NrJBnilv0
本日の投下は以上です。

サーヴァントは色々ごちゃ混ぜにしてます。マスターはだいたい五次準拠です。もしかしたら五次にいないマスターも出るかもしれませんが
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/08(土) 01:42:57.28 ID:mk3cR1Qio
おつーにゃ
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/08(土) 01:47:00.93 ID:pD6KkMNLo
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/08(土) 10:43:53.68 ID:pAEGW/Ozo
おっつおつ
25 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/15(土) 21:08:48.52 ID:JEHN0CMH0
△▲△▲△▲△▲△▲△▲△


【聖杯戦争1日目:開始】


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/15(土) 21:09:29.82 ID:JEHN0CMH0
※訂正

△▲△▲△▲△▲△▲△▲△


【聖杯戦争2日目:開始】


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
27 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/15(土) 21:10:41.36 ID:JEHN0CMH0
結局、他のサーヴァントからの襲撃はなかった。上手く巻けたのか、それとも別の理由があるのかは分からない。
なので、今日も学校に普通に登校することにした。今日は一人での登校だ。

『一人じゃないですよ、ご主人様♪』
「いや、ナチュラルに心の声読むのやめてくれないかな」

訂正。『キャスター』と二人での登校だ。

昨日の時点で、『セイバー』とアサシンらしきサーヴァントの存在は確認出来た。となると、残るサーヴァントはアーチャー、ランサー、ライダー、バーサーカーの四騎だ。
アーチャー以外の三騎は基本的に白兵戦を得意とするサーヴァント。それらが互いに消耗しあってくれればベストだ。残った方を『キャスター』が仕留めればよい。

そうなると、問題はアーチャーだ。(多分)遠距離狙撃が可能であるアーチャーをどのように発見するか、前線に引っ張り出すかが課題になるわけだが……
28 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/15(土) 21:11:27.65 ID:JEHN0CMH0
「ねえ、衛宮くん」
そんな事を考えている時、突然声をかけられた。気付けばもう校門の前だ。

声をかけた主が誰かはすぐに分かった。

「遠坂……さん?」
遠坂凛。才色兼備、文武両道。文句なしの優等生で、学園のアイドル的存在だ。
別に衛宮士郎と同じクラスじゃないし、特に接点もないはずだが……

「えっと、何か用か?」

彼女は少し悩む素振りをした後、こう答えた。

「……あなた、マスターなのね?」
「!?…マスターって、何のだよ」
「とぼけても無駄よ。貴方がそばにサーヴァントを霊体化させてることは分かってるわ」

『ご主人様、間違いありません。あの小娘のすぐそばにサーヴァントの気配があります』
「…ああ。遠坂もマスターなんだな」
29 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/15(土) 21:12:17.26 ID:JEHN0CMH0
「で、何の用だよ」

「そうね……もし貴方が私たちの戦闘を目撃しただけの一般人だったら口封じをしてたところなんだけど」
『口封じ』って、最悪殺されたんだろうか。恐ろしい。

「ま、宣戦布告ってところね。日中の学校ではさすがに戦わないけど、そうじゃない所で会ったら容赦しないから」
そのまま彼女は手を振りながら去っていく。自分にはその背中を黙って見ることしか出来なかった。

『……よろしかったのですか?彼女と手を組む選択肢もあったのでは……』
「あぁ…それも考えたけど。向こうにメリットが無いから、どうせ乗らないと思ってさ」

先ほど、彼女は『私たちの戦闘を』と言っていた。ということは、彼女は『セイバー』か『アサシン』のマスターだということ。
昨日の戦闘からして、どちらも強力なサーヴァントだ。きっと、向こうは単騎でも戦えるだろう。であれば、自称最弱のサーヴァントである『キャスター』と同盟を組む必要はない。
30 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/15(土) 21:12:56.99 ID:JEHN0CMH0
「ま、焦る必要はないさ。まだ戦争は始まったばかりだし、しばらくは様子見に徹した方がいいだろ」
そう。『キャスター』の戦力も考えれば今仕掛けるのは無謀だ。当面は敵の出方を伺うべきだろう。ひょっとしたら、その最中に同盟相手が見つかるかもしれない。

『おぉー……なるほど、流石ご主人様。素晴らしい分析です!』
「いや、そんな……このくらい普通だって」

『それはそうと、ご主人様。一つご報告しなければいけないことがありまして』
「ん、何だ?」

『どうやら、この学校に魔術的な罠が仕掛けられているみたいです。それも大量に』
「……なんだって?そんなの全然気付かなかったぞ」
『けっこう巧妙に仕掛けられてるみたいですから、違和感がなくても仕方ありません。ぶっちゃけ私にも正確にはどこにあるかは分かりませんし』
「そうか……でも、罠なんて昨日の夜には無かったはずだよな?」
『はい。つまり、これだけ大量の罠を一晩で設置したとなると……』
「……仕掛けた犯人はかなりの魔術師、ってことか」
『はい。もしくは魔術の心得があるサーヴァントですかね』
31 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/15(土) 21:14:26.76 ID:JEHN0CMH0
書き込み出来てるか不安だけど一応今日投下する分は終了ってことで。
動画作りと新生活の色々が忙しすぎてこっちに手を全然回せてない現状。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/15(土) 22:26:07.67 ID:pWw9r1zVo
おつおつ
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/15(土) 22:49:29.48 ID:EkKaPk5Fo
おつ
動画も作ってるのか、大変だろうけど頑張ってくだせえ
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/15(土) 23:23:48.68 ID:Fe9uC+pqo
(あ、これエタるな。こっちか動画かは知らないけど)
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/15(土) 23:41:00.67 ID:CMFf+b/jo
魔術の心得がある未登場クラスの鯖なんてエミヤとフィンくらいしか…
エターナルに筆が続くんですねわかります
36 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/23(日) 23:44:03.42 ID:w3itw7Mi0
その日の放課後。自分は『キャスター』と共に罠を解体することにした。

「罠がもし発動したらウチの生徒や先生がみんな巻き添えになる。それだけは阻止しないとダメだ」
『くっ、イケ魂が眩しい……!……ですが、きっといたちごっこになりますよ?片っ端から解除していっても、また張り直されたら意味が……』

「いいんだよ。罠の展開を遅らせることは出来る。それに、誰が仕掛けたかが分かれば大きいだろ?」
『なるほど!罠を解除した上で張り直すところを待ち伏せするわけですね!』
「ま、そういうことだ」

話を切り上げ、意識を集中する。今いるのは屋上。ここから下へ下へと降りて罠を順に破壊するという寸法だ。
37 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/23(日) 23:45:50.01 ID:w3itw7Mi0
「解析、開始……っ!」

頭の中を高圧電流が流れるような感覚。脳が焼き切れそうなほどの痛みの中、違和感がある場所を片っ端から探って行く。


「……屋上には4箇所。ここから12時の方向に1つ、6時の方向に2つ、4時方向に1つかな」
「はい、分かりました!じゃあちゃっちやまと解除してきますね!」

いつの間にか『キャスター』は実体化していた。自分が言った方に駆け足で向かい、罠を丁寧に解除している。
その間に自分は精神を落ち着かせて、買っておいたペットボトルの水を飲むことにした。

魔術も小規模なものならまだしも、大規模なものやある程度高度なものを使うと体への負担が大きい。
もし校舎全体を一気に解析しようものなら間違いなく廃人になってしまうだろう。手間がかかるとはいえ、一箇所ずつ地道に調べていくしかないのだ。

「はぁ……もっと効率的に出来ればなぁ。どんなに楽だったか……」

「なーに言ってるんですかご主人様。正義の味方は泥臭くあってこそですよ!落ち込む必要はありません!」

「あぁ……そうだな。悪い、らしくなかったかもな。よし、次行くぞ!」
「はい!」
38 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/23(日) 23:47:35.03 ID:w3itw7Mi0

『キャスター』の協力もあって、無事校舎にあった罠は日が落ちる前に全て解除することが出来た。

「いえ……まだです。まだ、とびきり大きい罠が残ってます」
「え……?」
……いや、校舎にはもうないはずだ。それは既に全ての階層を解析し終えている。細かいのならまだしも、とびきり大きいのがあるはずがない。
となると、残る可能性は一つだけ。

「弓道場か……!」

この穂群原学園の特徴として、バカみたいに大きい弓道場がある。理事長の趣味だか何だか知らないが、この町どころか市でも有数の大きさだ。
ここは何かと縁がある場所だ。というか、何を隠そう衛宮士郎はかつて弓道部の一員だったのだ。とはいえ一年以上前に辞めてしまっているが。
39 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/23(日) 23:48:33.87 ID:w3itw7Mi0
こうして弓道場に足を踏み入れるのは本当に久しぶりだ。
だが、いくら久しぶりといえこの異変に気付かないほど愚鈍な人間ではない。

「これは……!?」

そこには、壁一面に書かれた膨大な量の魔術式があった。今は静かに威圧感を放っているが、ここに少しでも魔力が流れたら……考えるだけでも恐ろしい。

「『キャスター』、今すぐ解呪を……っ!?」
その時、閉めたはずの扉から突風が吹き込んできた。同時に感じたのは、『キャスター』と似たような魔力の塊。
今は舞い上がるホコリと月光のせいで姿はよく見えないが……間違いない、サーヴァントだ!
40 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/23(日) 23:49:50.35 ID:w3itw7Mi0

「よお坊主。死にたくなけりゃそれに触るんじゃねーぞ」

ホコリが晴れて見えたのは、青い装束を身に纏い紅の槍を手にした男性だった。ステータスを見るまでもない、間違いなく彼は『ランサー』だろう。

触るなと言われたので、大人しく壁から離れる。ふと横を見ると、『キャスター』が敵意むき出しで『ランサー』を睨みつけている。
このまま戦闘になるのだろうか。そう思っていたところに、予想外の声が聞こえてきた。

「クハッ、ハハハッ!もういい、下がっていいよ『ランサー』」
『ランサー』が霊体化し、今度は声の主が姿を現した。……間違いない、間違えようがない。彼が、『ランサー』のマスターなのだ。

「よお、衛宮」
「慎二……!」
41 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/23(日) 23:53:41.01 ID:w3itw7Mi0
課題レポートと動画作りとポケモンに追われながらも週一投稿のペースは維持していきたい。
今回の描写から分かるように(ぶっちゃけタイトルで分かる)このSSの衛宮士郎は原作とは大きく離れています。
何故本編からこうも違ってしまったのか。そこら辺はSSの後半で分かります。タブンネ。
42 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/23(日) 23:57:54.37 ID:w3itw7Mi0
【余談】
このSSから入ってくれた人がいるみたいで嬉しいです。ぶっちゃけTwitterでの身内くらいしか見ないんじゃないかと思ってたので()
もし興味があって見てやってもいいって人がいたら今日上げた動画も見てね!(露骨な宣伝)

ということで今回はここまでです。お疲れ様でした
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/24(月) 00:15:10.15 ID:fzziGhNMo
気持ち悪い
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/24(月) 00:21:42.35 ID:nGT2Q7RSO
\  ヽ  |  /  /
 \ ヽ | /  /
\         /

_ き も い で す _
    / ̄\
―   |^o^|   ―
    \_/
 ̄          ̄
/         \
 /  / | ヽ \
/  /  |  ヽ  \
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/24(月) 05:46:32.95 ID:qhrVC8WBO
申し訳ないが自分語りはちょっと…
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/24(月) 15:13:57.20 ID:vNRpOjRAo
おつーな
47 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/30(日) 21:55:03.85 ID:Tb+QMk480
間桐慎二。間桐桜の兄で、衛宮士郎のクラスメイト。そして、弓道部の副部長。
だが、彼が魔術師なんて話は聞いたことがないし、そんな素振りだって見たことない。

「慎二、お前……!」

お前が『ランサー』のマスターなのか?お前がこの罠を仕掛けたのか?何のために?この罠が発動すればどれだけの生徒が犠牲になる?そもそも、お前は魔術師だったのか?

言いたいことは山のようにある。だが、何と言っていいのか分からない。お前、の後の句がまるで出てこない。
自分言葉を詰まらせているのを見てか、それとも初めからその予定だったのか、彼は友人に声をかけた。

「衛宮。久しぶりに二人だけで遊ばないか?」
「は……?」
「僕の家で、さ」
48 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/30(日) 21:56:56.43 ID:Tb+QMk480
彼に案内されるがままに間桐家に入り、大きなソファに座る。
外見通り広々とした部屋とは対照的に照明は薄暗く、なんとも不気味に思えた。

「……いきなりだけど、聞かせてもらうぞ。慎二、お前は魔術師だったんだな?」
「ああ、そうとも。もともと間桐の家は魔術師の家系でね、聖杯戦争のシステムや令呪を開発したのも間桐なのさ」
「そうだったのか……初耳だ」
「というか、衛宮。お前こそなんでマスターとかやってるわけ?お前が魔術師だなんて、こっちこそ聞いてないんだけど?」
「あー……まあモグリでやってたからな。いや、それはどうでもいいんだ」

話が本筋からズレそうだったので軌道修正する。無駄話をする余裕は時間的にも精神的にもないのだ。
49 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/30(日) 21:59:15.18 ID:Tb+QMk480
「慎二、あの罠はお前が用意したんだろ?」
「ああ。うちの『ランサー』は魔術の心得もあったからね。で?それがどうかした?」
「それがどうしたって……!キャスターに聞いた!あれが起動すれば学校中が火の海になりかねないんだろ!何でわざわざあんなものを!」

「ほら、この学校には遠坂凛っていう生粋の魔術師がいるだろう?僕としても防衛策はとっておきたくてね」
「だからって、あんな危険なものを……!」
「衛宮も知っての通り、僕はケンカが嫌いだ。それに……僕たちは昔からの友達じゃないか」
「………っ」

違う。
今の彼はどこかおかしい。聖杯戦争という大きな戦いに参加したことで、きっと無意識のうちに狂ってしまったに違いない。
そうでなければ、あんな歪んだ顔で笑えるはずがないのだから。
50 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/30(日) 22:00:00.37 ID:Tb+QMk480
「まぁいいや。今度はこっちから一つ」
「……なんだよ」

「衛宮。僕と協力する気はないか?」
「……!」

「実はマスターになったものの、いかんせんまだ不慣れでね。信用できる仲間がほしいのさ」

……。

どうするべきか。『ランサー』のマスターである彼に、学校を火の海にしようとした彼に、協力を持ちかけてきた彼に。自分は何と言えばいいのだろうか。
51 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/04/30(日) 22:01:05.83 ID:Tb+QMk480
そろそろ書き溜めがヤバい。
今回はここまでです。

先週の件は、ほんとすみません。完全に調子乗ってました。忘れて
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/30(日) 22:12:58.53 ID:9GnTgnKuo
おつ
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/30(日) 22:22:58.43 ID:6auWs7ag0
乙でした
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 13:43:34.19 ID:d+aUNrHEo
気持ち悪い
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 14:27:47.28 ID:06sYl2q7O
おつ
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 19:17:49.07 ID:Ee6wBTP6O
ええんやで
57 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/05/09(火) 19:49:45.39 ID:MFReYlV7o
「……協力できる相手が欲しいのは、こっちだって同じだ。こちらこそ頼む。慎二、俺と同盟を結んでくれ」

「……はっ。さすが僕の友達だ。遠坂凛とは大違いだ」

「ただ、一つだけ条件がある」
「条件?」
「他の、無関係な生徒に被害が出るような作戦は絶対にとらないこと。これだけは必ず守ってくれ」

「あぁ、そのくらい構わないさ。僕だって、無駄な犠牲は出したくないからね」
「じゃあ、同盟成立だ。よろしくな、慎二」
「こちらこそ。ま、精々足を引っ張らないでくれよ」

慎二の軽口に苦笑しながら、握手をする。
ここに、『キャスター』陣営と『ランサー』陣営の協力関係が成立した。

霊体化していた『キャスター』は、二人のマスターを複雑そうに眺めていた。
58 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/05/09(火) 19:53:47.95 ID:MFReYlV7o
―――――
――――
―――
――


「……旦那。やっぱあんたにゃ向いてねえよ」
「……そうか」
「旦那にこんな戦争なんざ似合わねえ。今のあんたの手は、他人の心臓を握りつぶすためのもんじゃない」
「……」

「……オレはもう降りますわ。マスターが魔術師でもなくて、願いもないんだったら、俺に戦う理由はねぇ」

「……『アーチャー』。お前は、それでいいのか?」
「あン?いや、いいんすよ。オレの願いなんてあってないようなもんっすし」

「……そうか。それなら、いい」

―――――
――――
―――
――
59 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/05/09(火) 19:54:22.86 ID:MFReYlV7o
△▲△▲△▲△▲△▲△▲△


【聖杯戦争2日目:終了】


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
60 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/05/09(火) 19:54:49.03 ID:MFReYlV7o
△▲△▲△▲△▲△▲△▲△


【聖杯戦争3日目:開始】


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
61 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/05/09(火) 20:02:53.80 ID:MFReYlV7o
『……ご主人様。本当によろしかったのですか?』

翌日。通学路で『キャスター』が念話で聞いてきた。今日もまた一人での通学だ。

『あのワカメ、ぶっちゃけ魂がドロッドロですよ?ご主人様とは正反対です』
「……ひっどい言われようだな……」
『いつご主人様を裏切ってもおかしくないですけど。そもそも、なんでご主人様とあんなのがお友達なんです?』

「そうだな……いつからだったっけな。大分前からの付き合いだから、もう覚えてないや」
『……よくご主人様もあんなのと付き合えますね。イケ魂ここに極まれりというか』
「まあ、あいつにだっていい所はあるから。あとは慣れ、なのかな」
62 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/05/09(火) 20:07:30.29 ID:MFReYlV7o
『で、同盟は打ち切らないんですね?』
「もちろん。というか、そんなの今更慎二に言い出せるわけないだろ」

もしそんなことを言ったら彼のことだ、十中八九逆上するだろう。
自分に当たってくるだけならまだいいが、最悪の場合ほかの生徒たちにも迷惑がかかる。それだけは避けなければいけない。

『それはまあ、そうですけど……』
「それに、俺は『キャスター』のことを信用してるからな」
『へ?』

「もし俺が慎二や『ランサー』にやられそうになったら、『キャスター』が守ってくれる。そうだろ?」
『……はい!もちろんです!このt…『キャスター』、ご主人様のために頑張ります!』
63 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/05/09(火) 20:08:24.02 ID:MFReYlV7o
今回はここまでです。
昨日おとといはちょっと体調崩してました。更新できなくてごめんなさい。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 20:36:53.35 ID:NIeWX/ESo
気持ち悪い
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 20:41:04.66 ID:QQTZsNHWo
おつ
待ってた
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 20:48:59.13 ID:6AutDSjCo

結構鯖とそのクラス配分がずれてるな、残ってるのはライダーとバーサーカーか
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 22:38:50.43 ID:OCt1yIgvO
麻婆が「やっちゃえばーさーかー」って言ってるところは想像した
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/28(日) 23:00:23.33 ID:Sg/WHqDe0

昼休み。自分は慎二に呼び出されて弓道場に向かった。
まだ弓道場には彼が用意したトラップがでかでかと残っている。その存在感は、少しでも魔術の心得があれば近づいただけで存在を感知出来るレベルだろう。

「なあ、撤去しないのか?こっちに発動させる気がなくても、もし暴発でもしたら……」
「大丈夫だって。これは僕の指示がない限り絶対に開かないから。そうだろ?」

慎二が虚空にむかって声をかけると、「おうよ」と、どこからともなく『ランサー』が姿を現した。

「こいつらは俺の『発火』の合図がない限り絶対に作動しないようになってるからな。そういう術式なんだわ」
「そういうこと。だからこれは撤去する必要はないってわけ。残しておけば遠坂への圧力にもなるからね」

「それは……そう……なのか?」
本当にいいのだろうか。
目の前にあるのは、無関係な生徒が犠牲になりかねない爆弾だ。それを、仕掛け人が友達だからって、見過ごしていいのだろうか。
69 :トリ忘れてた ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/05/28(日) 23:02:21.84 ID:Sg/WHqDe0
「ま、それは重要なことじゃない。今考えるべきは、どうやって遠坂を倒すかだ」
そこで、慎二は半ば強引に話題を切り替えた。これ以上の追及は難しいと考え、そちらに思考をシフトする。

「あいつのサーヴァントは危険だ。お前もこの前の戦いを見てたんだろ?」
慎二が言っているのは、校庭で侍と斬りあっていたあのことだろう。確かに、あれは人智を超えた戦いだった。
「ああ、しかもそれだけじゃない。あいつはまだ宝具を隠し持っている。それがどれだけ恐ろしいことか」

宝具。英霊たちの伝説やエピソードを象徴する、言うなれば必殺技のようなもの。
もちろん、英霊によって種類や範囲などは様々だ。だからこそ、「分からない」ことが何よりの恐怖なのだ。

「だとすると、最初は相手の戦い方や宝具を見るだけ見て、適当に撤収するのがいいかもしれないな。その後対策を練って……」
「おいおい衛宮、随分消極的じゃないか。そんな時間のかかることしなくても解決策はあるんだけど?」
「……解決策?」
70 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/05/28(日) 23:04:41.42 ID:Sg/WHqDe0
「一撃必殺だよ、衛宮。最初の一発で相手を即死させれば、何もさせずに戦いは終わる。簡単なことじゃないか」
「いや、そんな簡単に言われても……。確かに、それが一番理想的ではあるけどさ」

「それが出来るんだよね、僕のサーヴァントには。こいつの宝具は優れものでさ」
そう言って、慎二は『ランサー』を……正確には、彼の持つ真紅の槍を指差す。

「詳細は省くけど、この槍は真名を解放すれば『必ず心臓に当たる』宝具なんだ」
「……はい?」
「それでいて燃費もよくて、僕みたいなマスターでもしばらくは魔力を補充しなくて済むらしい」

「……それなんてチート?」
「もちろん弱点はあるさ。僕が思いつく限りでも、射程は槍の長さしかないから短いし、複数戦には弱い」
ただ、一対一の白兵戦ならまず最強の武器であろう。敵に回っていたらどれだけ恐ろしいことか。

「あと、相手の運が良いと直撃を免れることもあったりな。ま、それでも俺の切り札であることに代わりはねえ」
と、『キャスター』と雑談していたらしい『ランサー』本人が付け加える。そっけない言い方ではあったが、その表情には自信と誇りが垣間見えた。
71 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/05/28(日) 23:06:32.43 ID:Sg/WHqDe0
「えーっと、つまりはこういうことか?」

まず、今日の放課後に自分が遠坂凛を呼び出す。
『決闘を申し込む。今日の真夜中、弓道場で待つ』
ただし、自分は実際には弓道場には行かず、遠くから監視するだけ。

弓道場に遠坂凛がやってくる。今まで存在に気付かなかった巨大な魔法陣を見て唖然とする。
その隙に彼女のサーヴァントに対して隠れていた『ランサー』が奇襲にかかる。
宝具が当たればその時点で勝ちだし、外れても相手の宝具を確認するまで粘ってから撤退すれば痛み分けだ。

「まあいいさ。戦略なんてのはマスターである坊主たちに任せるわ」
「ご主人様の選んだ方法ならピンポン大正解に決まってますから。私は一向に構いませんよ?」
サーヴァントたちの許可も得た。だが……

「本当にこんなのでいいのか?俺と『キャスター』、ほぼ仕事してないんだけど」
「いいんだよ。下手に足を引っ張られても困るし、同盟を組んでることを悟られるほうがマズいじゃないか」
確かに一理ある。それにこの作戦、上手くいけば自分のサーヴァントが『ランサー』だと誤認させることが出来るのだ。
慎二がマスターということを遠坂凛に把握されていない(これは慎二の自称だが)現状、これが一番賢い戦法ということか。
72 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/05/28(日) 23:08:00.32 ID:Sg/WHqDe0
今回はここまでです。
投下サボりまくっててすみませんでした。たぶん今後も不定期更新になりますが、気長に待ってくだされば幸いです。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/28(日) 23:26:08.06 ID:F38V/ZwkO
おつー
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 00:50:52.20 ID:jj3pnICmo
おつなの
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 22:48:57.85 ID:KzebVcONo
staynight のSS完結してるの少ないからなんとか最後まで行ってほしい期待してる
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 19:37:46.82 ID:8oLH/LxYo
面白いなこれ
77 : ◆026JPAkZvkOC [sage]:2017/06/21(水) 04:59:23.58 ID:s3Au7Dp50
ほしゅ
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/21(水) 11:17:56.31 ID:S/Q8hqufo
保守してないで早く書いてどうぞ
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/21(水) 12:18:52.54 ID:WrneLKxEO
スレ落ちたら元も子もないんだよなぁ…
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/21(水) 17:41:00.14 ID:ZTNMk5EqO
スレ落ちても続ける気があるなら普通立て直すんだよなぁ
結局、スレが落ちたら書くのやめちゃう程度のやる気しかないって自分で言ってるようなもんなんだけど
81 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/06/24(土) 22:18:17.58 ID:gLYssYjn0
深夜零時。
自分と『キャスター』は、弓道場から少し離れた場所にスタンバイしていた。勿論、弓道場の様子は使い魔で把握できるようになっている。

「そういえば『キャスター』、『ランサー』と何を話してたんだ?」
『んー、基本的には向こうが勝手に愚痴ってる感じでしたよ?「ランサーで現界したのにルーンとかやってられっかよ」みたいな』
「……ルーン?」

ルーン魔術。古代文字を媒介とすることによって効果を発揮する、魔術系統の一種……だった気がする。
必中必殺の槍の名手でありながら、ルーン魔術も使いこなす英霊。これだけヒントがあれば、『ランサー』の真名は比較的容易に特定出来るだろう。

……と、ここで自分は『キャスター』から真名を聞いていないことを思いだす。彼女ならいつ聞いても教えてくれそうだが……
まあ、別に今聞くことでもないだろう。というか正直、狐耳という時点で三択くらいに絞れてるし。
82 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/06/24(土) 22:18:51.77 ID:gLYssYjn0
ーーーー
ーーー
ーー


「おらぁっ!喰らいな!」
「くっ……!」

嵌められた。
突如目の前に現れた『ランサー』を見て浮かんだ、遠坂凛の率直な感想はそれだった。

どうやら衛宮くんから受け取った果たし状は罠だったようだ。その可能性も少しは考えていたが、彼の人柄から切り捨ててしまっていたのだ。これが心の贅肉というやつか。
そもそも、何故私はこれほど大きな魔法陣の存在に気付かなかったのか。もし昨日の自分に会えたら、思い切りぶん殴りたいくらいだ。

総じて、自分の甘さが今の状況を生み出してしまったことは間違いない。だが、反省するのはあとでいい。今は、この危機をどう打破するかを考えなくては。
83 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/06/24(土) 22:19:35.81 ID:gLYssYjn0
目の前では青装束のサーヴァント……『ランサー』が自分の『セイバー』と戦っている。
『セイバー』は、『ランサー』の不意をついた最初の一撃をもろに喰らってしまっている。幸い急所は逃れたようだが、このまま戦いを続ければ間違いなく不利だ。

自分の後方には巨大な魔法陣……おそらくは地雷のようなトラップとみていいだろう。迂闊に刺激を与えるのは避けた方がいい。

そして、なにより問題なのは、出入り口がサーヴァントたちを挟んで反対側にあることだ。このせいで、自分だけ戦線を離脱して安全な場所に避難する、ということすら難しい。魔法陣に気を取られて、『ランサー』に背後を取られてしまったのがミスだった。

他の陣営の乱入は望み薄。早く決断しなければ、『セイバー』が消耗しきってしまう。
84 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/06/24(土) 22:20:35.48 ID:gLYssYjn0
「ーー『セイバー』、宝具の使用を許可するわ。何がなんでも1分は耐えて!」
「分かりました、マスター!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『ご主人様、どうやら『セイバー』が宝具を使うみたいですよ』
「そうみたいだな……というか、かなり思惑通りに進んでるみたいでびっくりだ」

正直、この作戦が上手くいくかは分からなかった。なにせ、相手はあの遠坂凛なのだ。
どこかで作戦の穴を突かれるのではないかと思っていたのだが……今の所、いい具合に慎二が立てた術中に嵌ってくれている。

問題は相手の宝具だ。使用されることで相手の真名も自ずと見えてくるが、その威力がどれほどのものなのか……
85 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/06/24(土) 22:21:23.98 ID:gLYssYjn0
「どうした?来ないんならこっちから……行くぜ!」
『ランサー』が紅の槍を手に、『セイバー』へと特攻する。

「『セイバー』!」「はい!」
マスター、遠坂凛の合図を受け、『セイバー』が構えをとる。


「その心臓、貰い受けるーー!」
『ランサー』の槍が禍々しい光を放つーー


「我が旗よ、我が同胞を守りたまえーー!」
『セイバー』の持つ旗が神々しく輝くーー



「『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』!」

「『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』!」
86 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/06/24(土) 22:24:19.06 ID:gLYssYjn0
今回の更新は以上です。かなり遅れちゃって申し訳ない。
保守は単に、スレを落としたくないってだけです。夏が終わるまでには頑張って完結させるつもりですので、出来れば最後までお付き合いください。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 01:38:16.78 ID:QwDlxB8Qo
おつかーレ
一ヶ月ルールもこの前は処理されたっぽいし注意
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/29(木) 22:06:06.06 ID:QKx62PbMo

先が気になるスレだが気長に待たせて貰うよ
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 02:41:26.51 ID:jX6xyd4lo
>>80
少なくとも落とすより落とさない方がいいだろうが
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 09:50:37.77 ID:+/uICw6mo
>>89
>>1がそれやるならまだしも、読者がやるのはただの我儘
10日も昔の話題に噛み付くような初心者には判らないだろうけどそういうもんなんだよ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/06(木) 17:19:42.14 ID:lxEmwByoO
士郎がセイバー以外を召喚 凛がアーチャー以外を召喚できた理由とかは掘り下げる感じ?
それともこまけぇこたぁいいんだよ!で読んでった方がいい?
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