貴方「奴隷たちに救済を」【安価スレ】【2スレ目】

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157 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/07/24(月) 02:59:46.71 ID:q8bGJI1G0
>>156、あ、本当ですね…。すみません。少々お待ちください。
158 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/07/24(月) 03:23:19.77 ID:q8bGJI1G0
「…まぁ、これ以上あいつらに与する必要もない、か」

「俺の知ってることを全て話させてもらう」

「嫌なことを無理して言う必要はないぞ」

「そういうものは無いから気にするな」

「…そうか」

バジルスの言っていたことを纏めると、次のようになった。

バジルスは紛争地帯出身で、それ故に、幼少期から殺しあって生きていた。

そのため、気に掛ける家族も友も存在せず、生き延びるために何もかもを利用してきた。

紛争が終結した後は、傭兵組織を転々としていて、レジスタンスの占領地域に入った時にスカウトされた。

バジルスが知っていたのは、数ヵ月前からキメラを少しずつ入手していたこと。

それと、キメラの販売人は人間だということくらいらしい。

もう一つ加えるなら、レジスタンスの主導者は、人間に従うのを嫌う賢人とのことくらいか。

…となると、今回の戦闘…迎撃戦でも生存している可能性が高い。

追撃部隊が働いてくれれば、捕縛することも充分あり得るだろう。

「レジスタンスに戦力を供給しているのは人間か…。それも、キメラを有する」

「ああ。かなり物資も支給していた。莫大な資産を持っているのだろう」

「…ということは、首謀者はリゼル…で間違いないな。だが、情報が少ない」

「もっと有力な発言があればいいのだが」

「ふむ。この料理は美味いな」

口をリスのように膨らませているバジルス。

めっちゃ満足気にカツ丼を食べている。

というか、少し目を離した隙によくここまで食べられたな。

「一口でいいから食べさせてくれ。凄い美味そうだ」

「ほれ」

「…美味ーい!」

…忘れていたが、そろそろ追撃作戦の報告が来る頃か。

吉報があれば嬉しいのだが、そう事は上手く運ばないだろうな。
159 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/07/24(月) 03:36:34.67 ID:q8bGJI1G0
椅子の背もたれの寄りかかってぐったりしていたら、ドアがノックされる。

「ん、誰だ?」

「アリサです。緊急の連絡があります」

「…なんだ?」

「レジスタンスの主導者が捕縛されました。現在、輸送中とのことです」

「本当か!?」

「はい。伝令からの通達なので確定事項かと」

「よし、これで一気に事態が進展する」

「ここに戻るのはいつになる?」

「本日の夜だそうです。尋問は深夜ごろになるかと」

「分かった。他の特級貴族にも通達は行ってるな?」

「だと思いますけどねぇ」

「ならいい」

まさか、主導者を捕縛できるとは思わなかった。

上手くいけば、来週には決着を付けられそうだ。

…親父、もう少しだ。

あともう少しで、俺たちの願いが叶いそうだよ。

そこから見えるのなら、最後まで見届けてくれよ。

…それはそうとして。

「バジルスはもう出ていいぞ。食器は厨房に運んでくれ」

「承知した」

「では私も失礼し」

「あ、アリサは残れ。命令だ」

「うぐ」

積年の恨み、今晴らさでおくべきか。
160 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/07/24(月) 03:39:43.35 ID:q8bGJI1G0
すみません。時間がギリギリなので、短いですがこれで終了にさせてもらいます。次回は正直分かりません…。

一月経つことはないと思うのですが、いつ休暇になるか分かりませんので…。

更新日が判明したら報告しますね。遅くまでお疲れ様でした。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 03:41:24.76 ID:uKtGCBlQo

待ってます

もしやリゼルが相手を選ばずにキメラを売っていたという話だったり……
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/25(火) 20:24:17.46 ID:ohv5+QOCo
捕縛されたのが本当に首謀者ならリゼルの配下が暗殺に来るかも
163 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/07(月) 14:54:14.06 ID:dRuwrWdcO
本日の夜10時頃に再開できそうです。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/07(月) 21:13:25.03 ID:RuNd9bDqo
待ちます
165 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/08(火) 00:34:49.94 ID:jlEeQR3M0
すみません…。予定を大幅に過ぎてしまいました…。今から再開します。
166 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/08(火) 00:53:29.74 ID:jlEeQR3M0
さて、今までにされたことの仕返しはどうするべきか。

痛くなるようなことはNGだし、心に傷を残すのももってのほかだ。

ドッキリ的な感じのやつでいいか。

「アリサ、とりあえず四つん這いになれ」

「は?」

「椅子だよ椅子。これは今までの蛮行に対する罰だからな」

真顔でこっちを見るな。

マジで怖いんだってば。

「…なるほど」

「当主様の趣味は他人を椅子にして優悦に浸ることですか」

「えっ」

「分かりました。どうぞご自由にお使いください」

そう言って四つん這いになるアリサ。

なんだか背徳感を感じる光景だ。

「ほらほら早く座ってくださいよー」

「んじゃ遠慮なく」

「んっ…。…ん?」

アリサ椅子に腰を下ろすが、直前でギリギリ止める。

実際に体重を載せるのはダメだと思います。

「あの、それ空気椅子状態ではないですかね」

「誰がなんと言おうと、今のアリサは椅子で、俺を座らせている。OK?」

「体重が載ってない時点で椅子になってないじゃないですかやだー!」

あっこれ凄い太ももにくる。

踏ん張れマイタイ。

「当主様一人なら充分耐えられますので…。ほらもう楽になってください?」

「断る!そんな酷い仕打ちをしてたまるか!」

「変なところで頑固ですねホント!」
167 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/08(火) 01:06:03.81 ID:jlEeQR3M0
どうして、四つん這いと入力しようとしたらヨツンヴァインが出るんですかねぇ…。


次の仕返しは…これだ!

「聞いてくれよアリサ」

「はいはい何ですか?」

「俺、気になる人ができたんだ」

「…はぁ!?」

突然叫ばないでくれ。

ビックリするじゃないか。

「それって恋的な感じですか?それともライバル的な感じですか?」

「あっ!そもそも相手は女性ですか?男性ですか?ショタですか?ロリですか?」

「っていうか人間ですか?まずそれは生きていますか?」

「うん、俺に対するイメージが尋常じゃないくらい酷いことだけは分かった」

ホモ疑惑を掛けられているどころか、無機物フェチとかそんな感じのレッテルを貼られている可能性があるな。

「普通に女性だよ。気になるっていうのも、たぶん恋だと思うぞ」

「今までしたことが無いから分からんが」

下のアリサを見ると、明らかに動揺しているのが分かる。

凄い震えてるんですけど。

氷水に落ちたおっさんですかあなたは。

「そ、そうですかー!遂に身を固める気になったんですね!良かった良かった!」

「ところで相手はどなたですか!?」

「プライバシーってものがあるからな。秘密だ」

「せめて特徴だけでも!」

「ダメ」

「うぅ〜…!」

どうしてそんなにがっつくんだ?
168 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/08(火) 02:04:08.29 ID:jlEeQR3M0
最後は、ぶっ飛ばされるかもしれないが、アレでいこう。

「もう終わっていいぞ」

「あ、はい。全然辛くなかったですけどね」

「誰かさんがずっと空気椅子してたおかげで」

「太ももがヤバいです」

「でしょうねぇ」

立ち上がったアリサの目の前へと歩き、見つめる。

「な、なんですか…?」

そして、右手で頭を撫でながら、左腕で抱き寄せる。

「ひゃっ!?」

アリサが驚いてもぞもぞと動くが、そんなことは気にせずに抱きしめる。

「冗談はやめってっ…くだ…さい…」

抜け出そうとしても、決して離しはしない。

「はうぅぅ…」

20秒もすれば、アリサは全く動かなくなった。

アリサの耳まで真っ赤だが、こっちの方がよっぽど恥ずかしい。

5分ほどそのままの状態が続き、充分だと思ったので抱きしめるのをやめる。

すると、力が抜けているかのように、ペタンと地面に座り込むアリサ。
169 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/08(火) 02:16:12.49 ID:jlEeQR3M0
「…いきなり何するんですかぁ…」

「いや、今までいいようにされてきたからな。一泡吹かせようと思ってつい」

俺が答えたら、アリサはふくれっ面になる。

「ということは今のは全部嘘だったってことですかぁ。酷いですね」

慌てている姿が見られただけでも満足だ。

全て種明かしをしよう。

「嘘なのは気になる人云々と椅子のところだけだ」

「それ以外は全部本心だぞ」

アリサが突然、小悪魔のような笑みを浮かべる。

「つまり、私は大切な人なんですね?」

「当たり前だ。この家の人はみんな大切に決まっている」

「ふふっ。それは嬉しい限りです…ねっ!」

「…!?」

状況が理解できない。

アリサが飛び込んできたと思ったら、唇に柔らかい感触を感じる。

息もできない。

そのまま、時間が止まったと錯覚するような感覚が続く。
170 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/08(火) 02:46:02.31 ID:jlEeQR3M0
「…ぷはっ」

その感覚は、アリサが離れることで終わりを迎えた。

それと同時に、自分が何をされたのかを理解した。

「ど、どうしてこんなことを…」

「…当主様は、今までに何回私を抱きしめたか憶えていますか?」

しばらく記憶を掘り起こすが、該当するものは何も出てこない。

「…いや」

「3回ですよ。といっても、私がここに来てすぐのことですけど、ね」

アリサは下を向きながら、一つ一つ言葉を発していく。

「…私は、結構悩んでいたんです。ずっと伝えられなくて。本当の気持ち」

「正直に言おうと、伝えようとしても、照れ隠しできつい行動を取ったりしてましたから」

「…ですが、もうやめます。当主様が本心をぶつけてくれたなら、私も本心をぶつけなきゃ」

アリサは顔を上げる。

その目からは、一筋の涙が零れ落ちており、その顔は、優しく微笑んでいた。

「…愛しています。当主様。主としても。一人の人間としても」

「そして、一人の男性としても、です」

「今まで散々ふざけた行為をしておいて言えるような口ではありません…」

「だけど、はっきりと、何度でも言いましょう」

「私は、貴方に助けられたあの時から、ずっとお慕いしておりました」

「この体は、命は、心は、すでに貴方のものです」

「どうか、この命が尽きるまで、私をお使いください」

「それが、それこそが、私の最大の悦びですから」

それほどまでに、俺は慕われていたのか。

どうして、俺がそこまで慕われていたのかは分からない。

俺はただ、正しいと思ったことをしているだけだ。

正しいと思ったから、瓦礫に埋もれていたアリサを助けた。

正しいと思ったから、カエデの飼い主をこの手で殺めた。

後悔はない…はずだ。

「…俺は」

アリサに言わなければならないことがある。

それは。

「お前たちが老衰や病気で死ぬ以外は許さない」

「命が尽きるまで使え?ハッ、馬鹿馬鹿しい」

「何があっても、死なせはしないさ」

「大切な家族だ。死なせるわけがないだろう」

「だから…」

言いたいことを言いきる前に、アリサの指が口に触れる。

「…いえ、言わなくていいですよ」

「…何があっても、私は貴方の傍にいます」

「だから、これからも共に進みましょう」

「…言われなくても、そのつもりだ」

そうはっきりと答え、拳と拳を軽くぶつけた。
171 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/08(火) 03:07:39.08 ID:jlEeQR3M0
その後、今までの自分の行いを振り返ると、凄い恥ずかしくなってきた。

「俺めっちゃ痛いやつじゃないか…。黒歴史確定だ…」

「私は胸キュンでしたけどね」

「大切な家族って言ってくれた時は、本当に嬉しかったですよ」

「私の家族は、目の前で死にましたので…」

「…自殺に見せかけた他殺…だっけか」

「…はい。おそらく、土地と遺産目当ての人たちです」

「今、その場所は都会になっているようですから」

「…帰りたいとは思わないのか?」

「全く。…とは言えませんかね。両親の墓参りくらいはしたいです」

「もっとも、両親が眠っているわけではないですが…」

「…全てが終わったら、みんなの故郷を回ってみるか」

「いいですね」

「…絶対生き残るぞ」

「はい」

時計を見ると、約束の時間が近づいていた。

「俺はそろそろ出るよ。アリサには、一仕事頼みたい」

「何なりと」

「現在帰還中の追撃部隊の護衛だ。そろそろ西中島南方に到着する頃だからな」

西中島南方は、ハイランディアの首都、我々の住むレステルとレジスタンスの本拠地の中継地点だ。

自動的に、この場所を通ることになる。

「リゼルのことだ。暗殺部隊を向かわせている可能性が高い」

「主導者を連れてくれば、それで全て終わるはずだ」

「殲滅するよりも、守ることを優先してくれ」

「分かりました」

そう言って、アリサは姿を消す。

転移魔法が使えて羨ましい。

だが、使えないものを求めても仕方ない。

早く店に向かわなければ。
172 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/08(火) 03:10:20.80 ID:jlEeQR3M0
これで今回の更新は終わりです。自分で書いていて顔から火が出ていました。

ただの仕返しでワイワイするはずだったのに…。どうしてこうなった。

次回更新は今日の同じ時間に再開できれば…と思っています。あと数回で終わりそうですね。お疲れ様でした。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/08(火) 03:19:48.71 ID:UFsr+cwCo

決戦前に告白……死ぬのか

暗殺者は直接主人公やアーバンを取りに来る可能性もあるな
174 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/09(水) 00:07:33.37 ID:WQ6XKafM0
>>173、充分あり得ます。今まではそこまで目立った行動をしていませんでしたが、今回は襲撃判定を行います。

失敗すれば、強制的に戦闘となります。貴方が死亡する可能性もありますよ。今から再開します。
175 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/09(水) 00:54:58.33 ID:WQ6XKafM0
これから向かうレストランは、俺が所有しているものだ。

というより、この街にある娯楽施設は殆どが俺の一族の管轄内だ。

その中には飲食店も含まれている。

大衆食堂などはそこまで経営していないが、いわゆる高級レストランは殆ど管轄内である。

今回向かうレストランも、所有している高級レストランの一つだ。

他の貴族も使うため、安全面には細心の注意を払っている。

店内外に警備員を配置し、要望があれば、送迎用の馬車も向かわせる。

従業員は、シェフと警備員は俺の一族から、それ以外は民間人を起用している。

全員保険にも入れているし、住居等の手配も当然している。

ホワイトなのが自慢なので、その辺りの整備はしっかりとしているのだ。

屋敷を出て、門外に停められている馬車へと乗り込む。

今回、護衛は付けていない。

アリサは別の護衛任務に就いているし、カエデはみんなに食事を振舞っている時間だ。

アルヴァは洗濯中だし、レイスにはそんなことはさせられない。

バジルスは名目上は捕虜だから仕事はさせられないし、ユウはまだ孤児院にいるらしい。

警備員もいるから、襲われるようなことはないだろう。

リゼルだって、民間人が近くを通るような場所で襲撃するほど、傍若無人な行いをするバカではないはずだ。

「到着いたしました」

「分かった」

知らせを聞き、馬車を降りる。

店内に入ると、すでにスジャータが席に着いて待っていた。

護衛のアインも一緒だ。

「貴方は護衛を付けてないのね」

「ここなら安心だしな」

「貴方は当主なのよ?常に護衛を付けるべきだと思うわ」

「相変わらず心配性だな。スジャータは」

「貴方がいなければ、法律を変えるのだって不可能でしょうに…」

「お爺様が敵の時点で、正面から戦って勝つのは厳しいわよ」

「爺さん、闘病中なのに現役だもんなぁ…」

昔は非常に腕の立った剣士だったらしいが、病には勝てないようだ。

「そういえば、お爺様とは面会したの?」

「いや」

「…最近、また容体が悪化したわ。早く会いなさい」

「間に合わなくて後悔しても遅いのよ」

「…そうだな」
176 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/09(水) 00:58:08.72 ID:WQ6XKafM0
スジャータに聞きたいことがあれば、↓1、2にお願いします。無い場合はその旨をお書きください。
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/09(水) 01:16:30.53 ID:8phcNhCMo
最近の周辺警備員の人員管理についての意見
178 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/09(水) 03:28:03.93 ID:WQ6XKafM0
なさそうなので、先に進めます。ちょっと待ちすぎでしたね…。深夜だから人はいないのに…。
179 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/09(水) 04:03:00.10 ID:WQ6XKafM0
「しかし、今日は警備員が多いわね」

「まぁ、ちょっと気を遣ってな」

人数が多い方が、相手からしても攻めにくいだろう。

「…私としては、今の半分でもいいと思うわ」

「…ふむ。詳しく頼む」

「まず、この店は開けた作りをしているでしょう」

「つまり、見通しがいい、ということよ」

「人数が増えるほど、見通しが悪くなる。だから、隠れる場所が増えてしまうのよ」

「それに万が一、戦闘になった時に、相手が動きやすいったらありはしないわ」

「そもそも、ここの警備員は巡回させるのではなく、一定の距離に配置して、監視させるタイプよ」

「だから、数を増やせばいい、という話でもないのよ」

「お、おう」

矢継ぎ早に話すスジャータに、つい気圧されてしまった。

いちおう俺の方が年上のはずなんだがな。

「だけど、状況に合わせて考えるのは悪くないことよ」

「これは一つの意見として、軽く捉えていればいいから」

「最後に決めるのは貴方でしょう?」

こうして、他人の意見を貰えるのはありがたい。

自分とは違う視点から見て、判断された意見は、考えもしなかったものばかりだからだ。

「ありがとな、スジャータ」

「別に感謝されるようなことじゃないけれど」

「素っ気ないなぁ」

だが、そこがスジャータのいいところなのだろう。

人によって態度は変えず、はっきりと物を言える。

つまり、誰に対しても平等に接するということだ。

そんなところがあるから、アインだってずっと従っているんだろう。
180 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/09(水) 04:22:32.46 ID:WQ6XKafM0
「そうだ。数日前に、他国の首脳と話し合ってきたんだ」

「へぇ。結果はどうだったのかしら?」

「上々だ。近いうちに、ここに鉄道が通ることになったぞ」

「凄いじゃない。移動手段が増えるということはレステルの、いや、ハイランディアそのものの利益が増えるのと同義よ」

「ああ。貿易の手段も増えるし、何より、ここに来る人が増えるだろう」

レステルは、ハイランディアが位置する大陸の玄関口でもある。

他の大陸や島国の物資はいったん、ここを通るのが殆どだ。

空路…飛空艇を使った場合は、直接輸送されるのでここは使われない場合が多い。

こちらも幾つか飛空艇は飛ばしているのだが、空路で得られる収益は少なくなってしまう。

なので、新しい貿易ルートが増えることは、ハイランディアの所得が、仕事が増えるのと同じなのだ。

今まで数ヵ月掛けて移動していた場所へ、数時間で行けるようになるのは非常に大きい。

観光に利用することもできるだろう。

とはいえ、鉄道の開通にはまだ時間が掛かる。

あと数ヵ月は必要だ。

気長に待とう。
181 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/09(水) 04:23:44.34 ID:WQ6XKafM0
襲撃判定です。直下コンマが4以下だと戦闘に移行します。
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/09(水) 04:43:09.93 ID:8phcNhCMo
空路あったのか
183 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/09(水) 05:08:55.32 ID:WQ6XKafM0
「今日、主導者の尋問を行う予定で、来週にはたぶん終わるはずだ」

「先週頼みにきたばかりじゃない…」

「俺も驚いてるさ…」

まさか、主導者を捕縛できるとは思いもしなかった。

兵士たちの報酬を増やさなければ。

「まぁ、早く終わるのならいいことじゃない」

「だな」

「それと、全てが終わったらアリサたちの故郷を巡る予定でな」

「スジャータが良ければだが、一緒にどうだ?」

「構わないわよ。面白いことがありそうだし」

「そうか」

「…話していたら、時間がかなり経過してたわね」

「…あっ。早く王宮に行かないと」

「でしょうね…。早く行きなさい」

「ああ。またな」

「ええ、また」

席を立ち、外に出ようとした瞬間、目の前で爆発が起こった。

「ぐぅっ!?」

直撃は免れたが、爆風に耐えられず吹き飛ばされる。

「…最悪だ。このタイミングで襲撃されるか…」

「貴方様、それとお嬢様は後ろへお下がりください」

「アイン…」

「大丈夫です。命に代えても護りますから」

「…頼んだわ」

「奴らの数はざっと十人…。警備員を増やしていて正解だったかな」

「相手がバカ、とも言えるわね。わざわざ狙うタイミングじゃないわよ」

「とにかくスジャータは俺の後ろだ。俺だって多少は戦える」

「分かったわ」

腰に差していた剣を抜き、相手に向ける。

数人キメラが交じっており、戦力差は大きい。

ここで死ぬ可能性も充分ある。

そう思った直後、紫色の光が降り注ぐ。

「このアホみたいな魔力は…!?」

「すまない、処理するのが間に合わなかった」

「カエデ!お前は飯を作ってたはずだろう!」

「急いで済ませてきたのさ。嫌な予感がしたのでな」

「さて、手早く片付けようか」

「ああ…!」

恐れないで、できることだけをしよう。

カエデがいる今なら勝てるはずだ。
184 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/08/09(水) 05:10:33.26 ID:WQ6XKafM0
>>182、申し訳程度ですが、存在はしてます。九割以上は陸路(キャラバンとか)と航路に依存してますが…。

時間も遅いですので、これで終了にしたいと思います。

次回更新では、主導者の尋問まで進ませようと思います。いつ再開できるかはまだ分かりませんので、後ほど連絡します。

皆さん、お疲れ様でした。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/09(水) 21:56:14.11 ID:8phcNhCMo

スジャータを守り一般人を壁にされながら伏兵も気にして多数と戦う
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/14(月) 22:16:49.89 ID:MnJsns3zo
そういえば複数の亜人を合体させたキメラってどんな見た目だろう?
今回のは市街地なんだから邪魔にならない程度の人型なんだろうけど
187 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/03(火) 15:56:23.09 ID:Np1IfwbvO
>>186、この世界では技術的にはまだキメラ製造が可能なレベルに到達してません。
ですので、ベースとなった素体に複数の種族の特徴(角や尻尾、指や腕の数、体毛etc…)がごちゃ混ぜになってます。
基本的にサイズはベースよりも大きくなっております。技術的な問題で、寿命は短命です。助ける手段は2つしかありません。
片方はすぐに実行可能、もう一方は時間が掛かる可能性が高いです。

ある程度落ち着いてきたので今週の土曜の深夜に再開をします。お待たせして申し訳ありませんでした…。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 20:51:09.78 ID:6SrAiHkXo
そのレベルでも戦争を左右するくらいに強いという意味なのか
そんなレベルの物をリゼルはたくさん造ってしまったという意味なのか
189 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/06(金) 13:11:55.83 ID:IOtoIe+pO
>>188、どちらかといえば前者です。

すみません、再開時間を本日の深夜に変更します。
190 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/07(土) 03:00:41.77 ID:I5K9xarh0
まずい…。流石に深夜になりすぎました…。せめて戦闘だけでも終わらせます。
191 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/07(土) 03:11:48.55 ID:I5K9xarh0
勝利条件:四回の判定成功、または特殊判定の発生

敗北条件:貴方の死亡

直下コンマで判定します。

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1〜4:失敗
5〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

キメラの重圧:-1
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 03:16:56.58 ID:h9Vee1xRo
おきてる
193 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/07(土) 03:37:48.63 ID:I5K9xarh0
判定:7 成功


「敵の気勢を削ぐ!」

カエデは居合切りの構えを取り、暗殺者たちの懐へと走り出す。

真っ先に反応したのは大型のキメラで、肥大した右腕を大きく振るう。

龍の鉤爪に酷似したそれは、まさに必殺の一撃。

しかし、それは空しくも空を切った。

体に触れる刹那の間に、カエデはキメラの真後ろまで一瞬で移動した。

キメラは明らかに狼狽えたような挙動を見せる。

僅かに残っている知性が、何をしたのかを必死に分析しているのだ。

別に、カエデは何か特別なことをしたわけではない。

ただ、魔力を放出して加速しただけ。

それだけなのだ。

大型のキメラは思考を戻し、同じように右腕を振る。

キメラでない暗殺者たちも、続けて各々の武器を持ち、カエデと貴方に向かって走る。

振るわれる腕を躱しながら、暗殺者たちと剣戟を結ぶ。

一人で対応するには些か厳しい、とカエデは焦りを覚えるが、一人でも多く引きつけるため、更に苛烈に斬り掛かる。

少しでも、貴方たちの負担を軽くしよう、という思いを胸に、カエデは戦う。

主君を護るために敢えて、前で刀を振るうのだ。

カエデの気迫に気圧されたのか、暗殺者を弾き飛ばしたのと同時に、大型のキメラの動きが止まった。

その隙を、熟練の戦士であるカエデが見逃す筈が無い。

カエデはその黄金色の瞳でキメラを見据え、一言呟く――。

――斬り捨て、御免。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1〜4:失敗
5〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

キメラの重圧:-1 未完成:+1
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 03:43:52.21 ID:h9Vee1xRo
195 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/07(土) 03:47:53.91 ID:I5K9xarh0
ファンブルなので、ダメージ判定を行います。

直下コンマ判定

1:カエデ、貴方、スジャータ、アインのうち一名死亡
2〜4:四人のうち一名が負傷(大)
5〜8:味方の支援により回避成功
9:カウンター
0:特殊判定
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 03:55:31.21 ID:h9Vee1xRo
カウンターあるのか
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 03:56:13.60 ID:h9Vee1xRo
いまのはちがうから
198 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/07(土) 03:59:30.39 ID:I5K9xarh0
流石に草を禁じ得ない…。誰が天に召すか直下コンマ判定をします。

1〜4:スジャータ
5、6:アイン
7:カエデ
8、9、0:貴方
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 04:02:04.94 ID:h9Vee1xRo
なんかごめんなさい
200 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/07(土) 04:25:38.58 ID:I5K9xarh0
>>199、コンマ判定なので悪いってわけじゃないんですけどね…。まさかのお嬢様退場。何やってんだ貴方。

判定:4 スジャータ死亡

カエデが前線で奮闘するが、撃ち漏らした暗殺者は、躊躇なく貴方たちの所へと向かってくる。

「お嬢様は下がって!」

アインは、暗殺者たちを右手の拳銃で牽制する。

盲目とは思えないほど、狙いは正確だが、正確であるが故に弾道を見切られ、悉く回避をされる。

杖を持ったドワーフと思われるキメラが、魔法の詠唱を始める。

空に幾重もの魔法陣が展開され、無数の氷弾が降り注ぐ。

「ちぃっ!」

「っ!」

貴方はスジャータの前に立ち氷弾を捌くが、受け損なった氷弾が全身を撃ち抜く。

すぐさま回復用ポーションを飲み干し、傷の修復を図る。

だが、蓋を開けたと同時に、今度は雷が地面から蛇のように襲い掛かる。

避けられない。

そう確信して、防御用の障壁を展開するも、虚しく撃ち抜かれる。

アインも護衛に行こうとするが、複数名に囲まれてしまっており、迂闊な行動はできない。

もう、貴方には対抗策が残されていなかった。

だが、貴方はそれでも、と剣を構える。

たとえ不可能でも、尻尾を巻いて逃げるわけにはいかないから。

護らないといけない人がすぐ後ろにいるから。
201 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/07(土) 04:39:32.25 ID:I5K9xarh0
「うあぁぁぁぁ!」

剣に力を込め、雷を受け止めようと前に突き出す。

だが突然、視界が斜めになる。

「え…?」

理解ができなかった。

いや、したくなかった。

何故なら、先ほどまで貴方がいた場所にスジャータがいて、スジャータの胸を雷が貫いていたのだから。

「スジャータッ!」

「お嬢様ッ!」

地面に手をつくと同時に体を捻り、スジャータの元へと走り出す貴方。

妨害を無視して、ナイフで数ヵ所を刺されながら、アインもスジャータの元へ向かう。

倒れる直前に、貴方はスジャータを抱きかかえるが、胸からの出血が止まらない。

ポーションを飲ませようとするが、気管や食道が焼けているせいで、飲むことができない。

それなら、と治癒魔法を唱えるが、貴方の魔力では治ることは無かった。

「クソッ!治れ!治れよ…っ!治ってくれよ…!お願いだから…」

「お嬢様、大丈夫です…。すぐ治りますから…。すぐ…」

アインはスジャータの手を握り、まるで自分に言い聞かせるかのように鼓舞をする。

貴方は、震える手を抑えながら治癒魔法を唱え続けるが、傷が癒えている兆候は見られない。

風が流れるような、力のない呼吸をしながら、スジャータはアインの手を払いのける。

そして、涙を浮かべながら微笑み、二人に力なきハグをする。

貴方を抱きしめると同時に、眼の光は消え、腕はゆっくりと地に落ちてゆく。

「嘘…だろ…」

「嫌…嫌ぁぁぁぁぁ…!」

今、一つの命の灯が消えた。
202 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/07(土) 04:44:08.79 ID:I5K9xarh0
後味の悪い終わり方ですが、時間が少々まずいので誠に勝手ながら、終わりにさせていただきます。

次回は同日の深夜を予定しております。今日よりも早く始めたい…。

自分で書いておいて言うのもなんですが、やっぱり死ぬ描写を書くのは辛いですね…。

遅くまでお付き合いいただきありがとうございました。
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 04:49:11.00 ID:h9Vee1xRo

おじいさんの病気を治そうとしてたんだ
204 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/08(日) 02:22:45.40 ID:/K3p9hZa0
昨日よりは早く再開できた…。けど遅い…。
205 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/08(日) 02:45:38.44 ID:/K3p9hZa0
「っ!スジャータ嬢が…」

一閃を放とうとしたが、それは令嬢の死によって中断された。

これ以上離れているのは逆効果だ、と思い、貴方の元へと駆け出す。

カエデが敵中に突入し、混乱を起こす。

このスタイルは、カエデ自身が貴方に志願したものだ。

だが、これには致命的な欠点がある。

如何に混乱を起こすために暴れようと、戦力を分散されれば意味が無い。

(リゼル卿の方が上手だったか…!)

リゼルの手のひらの上で踊っていたことに苛立ちを覚えながら、カエデは吼える。

「主人!いつまでも突っ立っていたら、スジャータ嬢が命を棄てて貴方を救った意味がないぞ!」

彼女は賭けたのだ。

貴方が生きて、この国を変革(かえ)ることに。

ここで貴方が死んだら、彼女の想いが、覚悟が無意味になってしまう。

そんなことは、決してさせない――。

――もう、大切な人を、愛している人を失いたくないから――。

――まだ、自分を救ってくれた人に、恩を返せてはいないから。

刀を抜き、迫りくる凶弾と凶刃を捌く。

暗殺者は、完全に狙いをカエデへと変えた。

既に二人は満身創痍。

この場で最も危険な従者を始末すれば、全ては終わる――。

――そんな思惑が透けて見える、とカエデは嘲る。

そして、力強く啖呵を切った。

「私が命を棄てることで主人が助かるのなら本望!」

「我が命に代えてでも、貴様らはここで皆切り伏せる!」

「この刃…決して貴様らを逃しはしない!」

カエデの手に握られた刀が、紫色の光を帯び、瞬いた。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1〜4:失敗
5〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

キメラの重圧:-1 未完成:+2
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 02:52:34.72 ID:npf4wLUBo
死ぬなよ
207 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/08(日) 03:15:38.14 ID:/K3p9hZa0
判定:3 失敗


カエデは放った斬撃が、キメラが展開した障壁によっていなされる。

守るのではなく、無効化する。

その方が効率が良いのだが、簡単なものではない。

相当な手練れだ、とカエデは舌を巻くが、相手は待ってくれない。

キメラが杖を翳すと、先端から無数の鎖が撃ち出される。

魔力を変換しての物質の生成、若しくは、イメージの具現化。

嘗てはさぞかし高名な魔術師だったのだろう。

これほどスムーズに、正確に生成するのは、並大抵の者では逆立ちしたって出来やしない――。

――称賛に値するものだが、それが、無抵抗で受ける理由にはならない。

動きを見切り、最小限の動作で回避する。

自然、カエデめがけて飛んでいた鎖は絡まり、操作ができなくなる。

絡まった鎖を右手で力いっぱい引き寄せる――。

――ドワーフやエルフといった所属は元来力は貧弱だ(例外もあるが)。

故に、力をあまり必要としない杖や弓を使いがちになるのだ。

眼前のキメラは、素体(ベース)がドワーフで、組み込まれたもの(エッセンス)はエルフである。

魔術、魔法の行使に特化したキメラなのだろう。

だが、それが災いして呆気なく引き寄せられる。

左手で構えた刀が、まるで死神の持つ鎌のようにも見える。

「逃しはしないと言っただろう?」

その時、キメラの僅かな知性に明確な死のイメージが刻まれた。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1〜4:失敗
5〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

キメラの重圧:-1 未完成:+3(上限値)
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 03:20:35.85 ID:npf4wLUBo
8割なら
209 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/08(日) 03:46:23.73 ID:/K3p9hZa0
判定:7 成功


恐怖のあまり、杖を手放すキメラ。

瞬時に魔法陣を形成し、蛇の如き雷を数発発射する。

それらは、鎖を持っていたカエデの全身に吸い込まれるように刺さった。

だが、それこそがキメラが持っていた死のイメージ。

極限状態に陥っていた脳に刻み込まれた虚像だったのだ。

当然、それは霧のように消える。

どこに移動した、と辺りを見回すが、視界に一つの光が見えた。

同時に、キメラの意識はそこで途絶えた。

カエデは、鎖を引き寄せた直後に、近くにいた暗殺者の懐に潜り込んだ。

そして、暗殺者の首を刎ね、刀に手を翳した。

先ほどと同じように光を帯び、無防備になっているキメラに向けて、一閃。

前回とは打って変わって、あっさりとキメラの頭部が切り裂かれた。

明らかに動揺する暗殺者たち。

絶対的優位に立っていると思い込んでいた彼らの心は、味方の死によって呆気なく崩れ落ちた。

殆どの知性を失ったキメラだけが、未だに戦意を失わない。

己を奮い立たせるためか、はたまた情けない味方(と言えるのかも怪しい)を鼓舞するためか、空気を振動させるほどの怒号を上げる。

皮肉なものだ、とカエデは思う。

戦いを優位に立たせるために知性があるのに、その知性の所為で戦いから逃げようとしてしまう――。

――ああ、本当に哀れだ。

死の覚悟を持たず、戦いに身を投じるとは。

救いようもない愚者に向け刀を構える。

「主人、前を見ろ」

それは、最愛の人へと向けた鼓舞。

「貴方が前へと進む限り、後悔はしない」

「それはきっと、スジャータ嬢が今思っていることさ」

「男なら、女の期待の一つには応えないとな?」

「…ええ。きっとお嬢様はそう思っているでしょう」

銀髪の従者は、涙を左手で拭って立ち上がる。

「何故なら、お嬢様は貴方を信じていましたから」

「『貴方なら、この国を変革(かえ)られる。そう確信している』と」

「そう…か…」

貴方の剣を持つ手に力が篭る。

「…なら、応える義務があるな…」

「それが、スジャータへのせめてもの餞だ」

言葉とは裏腹に、貴方の剣はどす黒い靄に覆われていた。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1〜4:失敗
5〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

キメラの重圧:-1 未完成:+3
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 03:53:33.41 ID:npf4wLUBo
本来こっちが有利なはずだから
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 04:04:40.86 ID:UTuRwxJn0
まあ、憑いてんだろうなって
212 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/08(日) 04:08:16.36 ID:/K3p9hZa0
>>210コピペ修正忘れですね…。マイナス補正は全部消失します。

またファンブル…。直下コンマ判定です。

1:貴方、アイン、カエデのうち一名死亡
2〜4:三名のうち一名が負傷(大)
5〜8:味方の支援により回避成功
9、0:特殊判定(貴方の剣補正で範囲拡大)

本日はこれで終了です。次回は月曜日の夕方とかにできたらな、と…。再開できるか微妙ですが…。

夕食抜きだと流石にきついですね。頭も痛いですし…。

貴方はこれからどうなるのやら…。一週目でリタイヤは悲しすぎますよ(フラグ)。遅くまでありがとうございました。
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 04:20:23.76 ID:npf4wLUBo

マイナスがあろうとも成功率8割なら勝つはずだし失敗後の救済もあるんだから負けは無いだろうと思ったら……
そして怒り補正がプラスでよかった

スジャータが死んでなかったらぬるいとか言ってたかもしれないけど
214 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/11(水) 18:56:49.58 ID:XOJEZ/BQO
すみません。唐突ですが、19:30頃から再開します。

それと補足ですが、スジャータが生き返る可能性はあります。あくまでも可能性ですが。
215 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/11(水) 20:26:36.79 ID:jGF5t7AZ0
すみません…。渋滞にぶち当たっていました…。今から再開します。
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 20:27:47.71 ID:SGBQD5Ado
はーい
217 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/11(水) 20:53:21.18 ID:jGF5t7AZ0
判定:6 回避成功


貴方は地面を蹴り、暗殺者へと接近する。

近づくほど、剣を覆う靄が濃く、多くなる。

危険を感じた暗殺者はナイフを投擲し、距離を取る。

対して、貴方は迫りくるナイフを意に介さず、速度を上げた。

全身にナイフが刺さるが、一向に止まる気配を感じない貴方に、暗殺者は違和感を覚える。

そして、すぐにその違和感は的中した。

全身のナイフを靄が包み、数秒して剣へと戻る。

すると、そこにあったはずのナイフが、傷が、跡形もなく消えていた。

「っ!」

貴方に気を取られていた暗殺者は、偶然認識できたアインの射撃を体を逸らしてギリギリ回避する。

そのまま、逸らした勢いを活かして貴方へと回し蹴りをし、腰のホルスターから針を取り出す。

一撃でも当てれば。

そう思った暗殺者の意識を汲み取ったのか、貴方は回し蹴りを右肘で相殺しながら後退する。

キメラを抑えているカエデは、一連の攻防を見て恐怖を感じた。

今の行動は、いつもの貴方ならまず行わない。

被弾覚悟の接近よりも、防御を優先する。

そして、剣を覆う黒い靄。

『それ』からは、得体の知れない禍々しさが溢れている。

自分の勘違いなのかもしれない、と前向きに考えようとするが、眼に映ったものが、それを許さない。

あの剣は、貴方の一族が代々受け継いできたもの。

つまり、一族の宝、とも言えるものだ。

だが、それほどの代物が、ここまでの禍々しさを放つのか。

今のカエデには、貴方の持つ剣が触れてはならない、禁忌そのものにしか見えなかった。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1〜4:失敗
5〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

未完成:+3
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 21:01:00.12 ID:OST9kCRqo
自動回復?
219 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/11(水) 21:17:15.13 ID:jGF5t7AZ0
判定:5 成功


「アイン、下がっていろ」

貴方は剣に手を翳し、告げる。

突然の指示に困惑しながらも、アインは従い後ろへと下がる。

眼が見えなくても、いや、見えないからこそ、貴方の負の感情をアインは鋭敏に感じ取った。

今の貴方は危険だ。

そう思っても、アインは口には出せない。

出してはいけない。

彼の気持ちは、痛いほど分かっているつもりだ。

純粋な家族ではない自分でも、お嬢様の死はどうしようもない辛い。

今も、胸が張り裂けそうなほどだ。

家族である貴方なら、自分よりももっと辛い思いをしているはずだ。

だから、言うことができない。

貴方が手を翳した刹那、剣から夥しい量の靄が溢れ、剣を包む。

そして、その靄は圧縮され、飽和状態となる。

「これが、貴様たちの蛮行に対する報いだ」

貴方はただ一度だけ、薙いだ。

同時に、飽和状態に到達していた靄が解き放たれ、眼前の暗殺者たちを包む。

あまりにも疾い『それ』に反応できなかった暗殺者たちは、その場から動けなかった。

靄が全身を包み、大きな黒い球体となる。

「終わりだ」

貴方が指を鳴らすと、靄は高速で剣へと回帰する。

先ほどまで暗殺者たちがいた場所には、塵だけが残されていた。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1〜4:失敗
5〜8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

未完成:+3
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 21:17:36.04 ID:SGBQD5Ado
せいや
221 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/11(水) 21:42:53.04 ID:jGF5t7AZ0
判定:7 成功 規定回数成功したので、戦闘に勝利しました。


どれほどの剣戟を結んだのだろう。

数えるのが億劫になるほど、キメラの拳とカエデの刀がぶつかり合った。

強者同士の戦いは、一瞬の隙を見せれば終わる。

それを自覚していた両者は、付け入る隙を見せないように、注意を払いながら攻防を繰り返していた。

だが、その見せないようにしていた隙が、一瞬だけ姿を現した。

未完成故か、キメラの腕に亀裂が走る。

それと同時に、キメラの動きが少しだけ鈍る。

カエデの顔に笑顔が浮かべられる――。

――この一騎打ち、私の勝利だ。

袈裟斬り、右薙ぎ、突き、と続けざまに放たれる鋭い斬撃は、いとも容易くキメラの肉を裂く。

突き刺したまま独楽のように一回転し、体から刀を抜き、キメラの懐から上に向かって、飛び上がりながらの一閃。

出雲流抜刀術飛龍裂き″。

腹部から頭部まで、二つに分かたれたキメラは、音を立てて倒れ伏す。

父から教わった殺すための剣術は今、愛する主君を護るために使われた。

カエデの一撃を以て、暗殺者たちによる襲撃は終わりを迎えた。

彼らの心に、深い傷痕を残して。
222 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/11(水) 22:36:06.80 ID:jGF5t7AZ0
カエデの一撃を見届けたのと同時に、貴方は糸が切れたように倒れる。

間一髪、アインが前から押し上げる形で止めるが、アインも怪我の所為で、上手く体態勢を維持できない。

「ぐ…ぅっ…」

よろけて、アインは貴方を離してしまう。

地面に頭が当たる前に、まるで小石でも拾い上げるようにカエデは貴方を抱き上げる。

「…スジャータ嬢を屋敷まで運ぶぞ」

「…っ。…はい…」

スジャータの体に触れる。

既に冷え切ってしまったスジャータの体を感じて、アインの眼から涙が零れる。

もっと、私が強ければ。

私の眼さえ、見えていたなら。

どうしようもない自責の念にアインの心が押し潰されていく。

カエデは言葉を掛けることなく、スジャータも抱えて屋敷へと飛ぶ。

下手な慰めは、却って逆効果になる。

それを理解していたからだ。

激痛で鈍くなった体に喝を入れて、アインも後に続く。

カエデは、先ほどの戦闘を思い返す。

あの時の貴方は異常だった。

あれほどの力を振るっている自分に、一切の疑問を持っていなかったのだ。

言い方が悪いが、貴方はそこまで強くない。

強くないから、私やアリサが護衛に就いているのだから。

あの時の貴方は、本当に貴方だったのだろうか。

もしや――。

――これ以上の詮索は無意味だ。

真実がどうであれ、あの力があったからこその勝利だ。

その代償があまりにも大きすぎたのだが。

スジャータの胸に穿たれた穴を見て思う。

もしかすると、アルヴァなら、フェニックスの力なら、きっと。

カエデは、貴方から叱責される覚悟をして、アインへと告げる。

その被害者になる、とも言えるアルヴァに、申し訳ない、という気持ちを持ちながら。
223 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/11(水) 23:09:03.97 ID:jGF5t7AZ0
屋敷に到着するや否や、すぐさまスジャータの亡骸をベッドに安置し、アインへと例のことを頼む。

「心苦しいかもしれないが…。スジャータ嬢を救いたいなら…それしか…」

アインは頷く。

「覚悟の上です。こうなってしまったのは、全て私の責任ですから」

「いや…。寧ろ私の…」

「私の責任です」

はっきりと言い放つアインに、カエデは口を紡ぐしかなかった。

「カエデ様も早く城内へ。間に合わなかったら元も子もありませんよ」

「…すまない」

カエデは、今もなお眠る貴方を抱え、城へと最高速度で走る。

アインは決意を固め、呟く。

「…こちらも手早く終わらせますか」

お嬢様の魂が還ってしまう前に、と心の中で付け加えながら。

扉を開けると、目の前にはアルヴァがいた。

アインには分からなかったが、覚悟を決めた目をしている。

「…アインさん、話は全部聞きました」

「スジャータさんのために、ご主人様のために、命を懸けてくれてありがとうございます」

アルヴァは深々と頭を下げ、お辞儀をする。

「…私は奴隷ですから。主人のためならば当然のことです」

「そう…ですか…」

奴隷、という単語を聞き、アルヴァは苦虫を噛み潰したような顔をする。

流石に、その感情の機微を感じ取れないほど鈍いアインではなかった。

「…すみません。嫌な思いをさせてしまいましたか」

アルヴァは首を振り、答える。

「ううん、大丈夫」

そして、碧眼が焔のように紅く輝き、尾羽根から火の粉が漏れ出る。

アルヴァは数回深呼吸をしてから、それを力いっぱい引っ張り、引き千切った。

「っ!ぐぅぅぅぅ〜〜〜!」

かつて尾羽根が生えていた場所からは、先ほどよりも激しく火の粉が噴き出し、血が滴っていた。

「大丈夫ですか!?」

痛々しい呻き声を上げて蹲るアルヴァにアインは近づく。

「私は…大丈夫…だから…。早く…使っ…て…」

手渡された尾羽根は温かく、そして力強い鼓動を感じる。

「…了解!」

アインはスジャータの胸の穴のすぐ下に、アルヴァの尾羽根を突き刺した――。

――今一度、命の灯をその身にお与えください。

この世界に、神様がいるのなら。


直下コンマが5以上で蘇生成功となります。
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 23:13:03.53 ID:OST9kCRqo
0が10なら
225 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/11(水) 23:19:26.63 ID:jGF5t7AZ0
※アルヴァの尾羽根は残り一本です。使用しますか?(再生不可なので、もう一度使ったら二度と復活チャレンジはできません)

↓1〜3で多数決です。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 23:23:48.56 ID:OST9kCRqo
使おう
無事かどうかわからないアーバンは仕方ない
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 23:32:41.09 ID:6kWrGN2DO
使わない
正直スジャータよくわからん
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 23:33:43.24 ID:j8UAF7bQ0
使用しない
229 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/12(木) 00:12:03.06 ID:2IroYXSM0
突き刺した羽根は光となり、傷口に吸い込まれていく。

光が消えると、そこにあった穴は塞がっていた。

しかし、スジャータの肌は未だに蒼白いままだ。

「もう一本…!」

アルヴァはもう一つの尾羽根に手を伸ばすが、それはアインに阻止された。

「なんで!?まだ助かるかもしれないのに…!」

アインは涙ながらに返答する。

「それは…本当に必要な時のために残してください…!」

「何本抜いたっては生えてく…あれ…?」

どんなにアルヴァが集中しても、羽根は生えてこない。

たしかに傷は塞がっている。

だが、それだけだ。

すぐ治るものだと思っていたが故に、そのショックは計り知れなかった。

「どう…し…て…?」

「もし何度も採取できるのなら…多少は市場で出回っているはずでしょう…!」

そう、何度も採取できるなら、そこまで目の色を変えて乱獲することはないのだ。

尋常じゃない生命力を持ったフェニックスなら、数匹ストックしておけば無限に生産できるのだから。

しかし、その生態上フェニックスは、非常に個体数が少ない。

ただでさえ長命なのに、転生することで寿命をリセットできるからだ。

「これは罰です…。あまりにも非力だった私への…」

「もう…アルヴァ様が傷ついてほしくはないのです…」

「うぅ…うっ…。うわぁぁぁぁぁん…」

先週まで親しくしていた相手の死。

それは、アルヴァの心に一生残る傷痕だった。
230 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/12(木) 00:27:58.80 ID:2IroYXSM0
城に到着したカエデは、すぐさまソファーにくつろいでいるリゼルのところへと向かった。

「んぁ…。遅かったじゃねぇか」

下卑た笑みを浮かべてこちらを見据えるリゼル。

拳を握りしめるカエデだが、何とか理性で押しとどめる。

「まぁ、まだアーバンも追撃部隊も戻ってきてないからゆっくりしとけよ」

貴方はずいぶんグッスリ眠ってんなぁ?と笑いながら小馬鹿にするような物言いをするリゼルへと、殺意が芽生えてくる。

(耐えろ…。でないと、今までの苦労が、犠牲が水泡に帰してしまう…)

ここまで来たのに、癇癪を起こしてしまっては意味が無い。

逸る気持ちを抑えて、精神を鎮めるために瞑想を始める。

沈黙が漂う。

手で宝石を弄るリゼルと、眼を閉じて瞑想をしているカエデ。

お互いに行動には出さないが、水面下では激しい攻防が繰り広げられている。

そして、それは唐突に終わりを迎えた。

「ほっ、報告!」

「っ!」

伝令兵が焦った様子でこちらへと走ってきた。

何やら重要な情報が送られてきたのだろう。

「おうおう焦んなって。まずは落ち着いて正確に話すんだぞ」

「はっ、はい」

勝利を確信しているのか、リゼルの笑みは一層極悪さを増した。
231 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/12(木) 00:30:20.21 ID:2IroYXSM0
今日の更新はこれで終了です。次回は来週の火曜日辺りになるかと思います。状況が変わりましたら、順次報告をしていきます。

直下コンマで追撃部隊の、↓2コンマでアーバンの判定をします。どちらとも4以上なら成功です。

突然の再開でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 00:31:33.92 ID:jQfBA1sno

主人公がこの場に居るのに勝利を確信……?
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 10:15:39.89 ID:UWGnHByQ0
早くも失敗
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 18:59:46.32 ID:jQfBA1sno
主人公の命令が遅かったということなのか
アリサ差し向けても跳ね除けるような戦力がリゼルにはあるということなのか

リゼルとアーバンの配下についてはほぼ出てきてないからな
235 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/17(火) 15:25:31.32 ID:zYuVNGSHO
更新は明日の夜に開始する予定です。

>>232、この状況で伝令兵が焦っていたので奇襲が成功した、とリゼルが判断したためです(勝利を確信したことについて)

貴方の武器の特性は、感情の変化に応じた性質付与(エンチャント)です。今回は負の感情だったので、攻撃的なエンチャントになりました。

貴方の使用時のエンチャントは負の場合が分解、再構築の性質を持つ靄の生成と使役、正の場合が複数の対象に再生効果(リジェネ)を付与する靄の生成と使役です。

この武器の特性は所有者によって変化します。また、使用時は所有者の性格をコピーした武器の内部データに切り替えられます。なので、本人は自覚していません。

このスレではコンティニューは行いません。死んだらその時点で次のキャラにバトンタッチです。ご了承ください。

追撃部隊の被害状況を直下コンマで判定します。

1:アリサ、主導者両名死亡、部隊全滅
2、3:どちらかが重傷を負い捕縛or死亡、部隊壊滅
4、5:両名負傷、部隊半壊
6〜0:アリサらの仕込んだブラフ
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/17(火) 15:30:47.02 ID:pnHSPIu10
死ぬなーっアリサ!
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/17(火) 17:21:27.58 ID:+IxJe1e8O
死んでもいいよ
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/17(火) 20:17:36.79 ID:t891BKJXo
重傷を負ったのがアリサだったなら敵が生かしておく理由は無いな
主導者が重症ならアリサが治癒魔法を使えるはず
239 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/18(水) 21:44:01.14 ID:FwFOWZC20
お待たせしました。今から再開しますが、もう一度直下コンマで判定を行います。一の位が1〜3で死亡、4〜9で捕縛です。

十の位が奇数だと対象はアリサ、偶数だと主導者となります。なお、どちらかで0が出たらブラフに強制変更となります。
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/18(水) 21:51:36.99 ID:CZH0yQPEo
5割で救済
241 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/18(水) 22:41:03.53 ID:FwFOWZC20
「緊急の報告は二つあります!」

カエデはペンを取り、メモを残そうとする。

どうするか、の判断は主人である貴方がしなければならないが、現在も眠り続けている。

情報を現物として残しておかなければ、後々困るのだ。

「一つ目の報告は、アーバン様が城への移動中に襲撃されました!」

やはりか、とカエデは歯噛みする。

リゼルが、襲撃するにはもってこいの、千載一遇のチャンスを逃すはずがない。

「クハハッ!あのアーバンが襲撃されるたぁとんでもねぇな!」

「…で、生きてんのか?アーバンは」

「それが…その…」

まさか、とカエデは冷や汗を掻く。

どちらか一人の特級貴族が死んでしまえば、リゼルの抑止力が無くなってしまう。

今でさえ好き放題させてるようなものなのに、これ以上過激になったらこの国にいられなくなる。

「んだよ。随分あっさりと死ぬのな。あれだけヤバそうなやつだったのに」

「だ・れ・が、死んだんですか?クソリゼル」

「…マジかよ」

城壁の窓から、アーバンの顔がひょっこりと姿を見せている。

「お勤めご苦労様」

「いや、マスターの役に立てたのなら光栄だ」

アーバンを優しく降ろし、傍で鎌に手を添える悪魔。

片方の角が折れているが、過去の戦闘での負傷なのだろうか。

しかし、彼女には見覚えがある。

どこで会ったのか記憶を辿ってみるが、なかなか思い出せない。

「クス、港で会った以来だな。カエデ…殿?」

「港…あっ」

そうだ、彼女は港で資金不足で泣く泣く諦めた悪魔の奴隷だ。

まさかアーバン卿に買われていたとは、と驚く。

「酷いこととかされてないか?大丈夫か?」

アーバンは普段はいい人だが、実は腹黒なことで特級貴族の中では結構有名だ。

女性をすぐ口説く癖もあるし心配でならない。

「いや、寧ろ愛してもらってる。異端である私すらも受け入れるほどの寛容さには感服するよ」

「女性なら皆受け入れますよ」

ダブルピースをするアーバン卿が可愛く見えた自分を殴りたく思ったカエデだった。

しかし、異端とはどういうことなのだろうな。

そんな疑問が残っていた。
242 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/18(水) 23:01:06.83 ID:FwFOWZC20
アーバンが眠っている貴方のところへと歩み寄る。

「こんな状況でよく眠れますね」

「…おそらく、武器の能力を行使したのが原因だ」

あれほどの力を秘めているとは夢にも思わなかったが、とカエデは呟く。

「…アレを使ったんですね。道理で…」

アーバンは貴方の頭に優しく手を添える。

本性を知っているカエデ、リゼルには想像できなかったことだ。

「ゆっくり休んでてください。あとは僕がどうにかしますから」

「それで、もう一つの報告は何ですか?」

「…追撃部隊が同じく何者かに襲撃され壊滅。生存者は4名です」

メモを取る手が止まる。

今、彼が何を言ったのかが理解できない。

「アリサが護衛をしていたんだぞ!?」

咄嗟に、伝令兵の胸ぐらを掴み上げる。

「じっ実際に4人しか帰ってこなかったんですよ!」

「何をふざけたことを…!あのアリサが…!」

「カエデさん。落ち着いて」

「これが落ち着いていられるか!」

カエデは激昂する。

彼女にとって、アリサは妹、のような存在だった。

そして、ライバルのような存在でもあった。

そんな彼女が敗北したことを、信じたくはなかった。

「…4名の生存者の内訳は?」

冷静にアーバンは問う。

「追撃部隊所属の兵が3名、それと主導者が…」

「…参ったなぁ。リゼル、何か知っていることはありますか?」

大笑いをしながら、リゼルは答える。

「ああ、知ってるよ!たまたま、貴方のメイドのアリサが俺のところに売られたんだよ」

アーバンは舌打ちをする。

これは非常に不味い。

最悪の状況に、貴方たちは追いやられていた。
243 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/18(水) 23:38:00.58 ID:FwFOWZC20
「…こればかりは僕だけで判断しては駄目ですね」

アーバンは貴方の体を揺するが、反応は無い。

「…仕方ない。この魔法は苦手なんですけどね」

手に淡い光が集まり、貴方の頭を包み込む。

「ザメハ…っと」

光が消え、数秒後に貴方は目を覚ました。

「う…。…っ!?」

目を覚ますと同時に、貴方は跳ね起きる。

「主人、もう戦闘は終わったぞ」

「終わ…えっ…?」

貴方の顔に困惑の色が見える。

「落ち着いて聞いてほしい」

「…アリサが、リゼル卿に捕縛された」

「…は…?」

貴方の顔が青ざめる。

そして――。

「…っ!リゼルゥゥゥゥ!」

――貴方は剣を取ってリゼルへと襲い掛かった。

「抑えて!」

甲高い金属音が辺りに響く。

アーバンが、貴方の剣を受け止めたのだ。

「このままじゃ全て台無しですよ!アリサさんだって!」

「ぐ…うぁ…」

ペタン、と貴方は尻餅をつき、リゼルの方を見る。

「あー…。アリサを返してほしいなら、俺が出す条件は一つだ」

「お前ら全員、全ての財産を俺に譲渡してこの国から消えろ」

「それが飲めないなら、アリサは俺が有効活用してやるよ」

それは、死の宣告。

家族を大切にする貴方の心を利用した、傲慢な心を反映させた提案だった。

「…まぁ、こう来ますよね。普通」

諦めたように、一息つくアーバン。

「貴方に委ねますよ。貴方の家族のことですから、ね」

アーバンは微笑み、全ての運命を貴方に、託した。
244 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/18(水) 23:39:24.95 ID:FwFOWZC20
この提案を受け入れるかどうか、を↓1〜5で多数決を取ります。どちらかの選択肢を選ぶと、その時点でこの周は終了となります。
245 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/18(水) 23:42:29.67 ID:FwFOWZC20
すみません、補足です。片方の選択肢が続行へと、もう片方の選択肢が終了へと進む、という意味です。

このレスは安価下でお願いします。
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/18(水) 23:42:52.79 ID:CZH0yQPEo
さよならアリサ
後で生き返って
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 01:24:05.72 ID:BqhgM0pO0
受け入れる
248 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/19(木) 02:13:39.30 ID:fXQIyghR0
時間が厳しいので一回終了します。安価の募集は引き続き行います。次回更新は今週の金曜日の昼を予定しております。

お疲れ様でした。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 03:53:46.48 ID:QbbQ6YgjO
受け入れる
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 05:41:04.66 ID:M0B90F0GO
受け入れない
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 08:29:53.27 ID:f0tEmJcTo
自分で最後?
受け入れる
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 19:34:39.75 ID:VZaSF/3Io
自分を慕っていると言ってくれて絶対に死なせないと約束した女をキメラに改造させるのが正解か
その女の失敗を拭うために女と共に見た夢も財産もおぞましい悪党に渡して尻尾を巻くのが正解か
後者になったが外国でゼロからスタート?
253 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/20(金) 14:55:07.24 ID:/x98I9kg0
>>252、純粋なハッピーエンドは、この状況に追い込まれた時点で残念ながら消滅しています。

お待たせしました。今から再開します。二週目のキャラも、この後作成する予定です。
254 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/20(金) 15:19:13.92 ID:/x98I9kg0
どうするべきなのか、働かない思考を必死に働かせる。

目的を達成するのなら、アリサを諦めるべきなのだろう。

しかし、貴方はアリサと約束した。

『絶対に死なせない』と。

そして、貴方は選択した。

家族をまた喪うくらいなら、この国が滅んでしまう方がいい、と。

「…分かった。全ての資産を、権限を、リゼルに譲渡することを約束しよう」

その言葉を聞いたリゼルは、不愉快なまでに清々しい笑顔を見せる。

「そうかそうか!家族のためなら何でもする貴方らしい判断だ!」

貴方は唇を噛み、必死に耐える。

叶えたかった理想は今、泡沫へと消えた。

何かが壊れた音が、心なしか聞こえてきた気がした。

「んじゃ、後でアリサは送るよ。ああ、心配すんな。何も弄っちゃあいない」

どうなるか分からねえから怖いしな、とリゼルは付け加える。

「…すまん、アーバン。お前まで巻き添えにしてしまった」

利益を求めて、合理的な行動をするアーバンが付いてくれた。

それは、貴方に付く方が未来がある、と判断されたわけだ。

その期待を裏切ってしまったこと、それが一番悔しかった。

「過ぎたことを悔やんでも仕方ないでしょう」

あっけらかんと言うアーバン。

「それに、僕は後悔していませんよ」

貴方と共に進もうとしたことが嬉しかったですから。

アーバンの最後の一言に、救われた気がした。
255 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/20(金) 15:52:24.07 ID:/x98I9kg0
屋敷への帰路の途中、アーバンが一切れの紙を手渡す。

アーバンはウィンクを一回して、従者に抱きかかえられ飛び立つ。

紙には、一言だけ書かれていた。

『3年後にあの場所で』とだけ。

何も変えられなかったことに対する無力感に苛まれながら、その紙を折り畳む。

「これからどうすればいいんだろうな…」

貴方が漏らした言葉を、カエデは聞き逃さなかった。

「私には分からん。が、主人が望むことを私は支えるだけさ」

好きにすればいい、とカエデは言っているのだろう。

それでも、どうすればいいのかが貴方には分からない。

屋敷の門にもたれかかるユウがいた。

しかし、どんな顔を向ければいいのだろうか。

悪霊でありながら、高潔に生き、共に戦った彼に。

何かを察したのか、ユウは口を開く。

「貴殿はよくやったよ。だから、そんな顔をしないでくれ」

「一瞬とはいえ、いい夢を見させてもらった。なら、私は後悔しない」

槍を心臓へと突き立てるユウ。

貴方は、それを見ることしかできなかった。

「所詮、私は悪霊だ。消えるのが道理だろう」

その言葉を最後に、目の前のオークが動くことは無かった。

心が軋み、悲鳴を上げる。

自ら命を絶った仲間を止めることが、止めようとすることすらできなかった、己の愚かしさに対して。
256 : ◆rOVqyGu.Qw [saga]:2017/10/20(金) 16:10:25.70 ID:/x98I9kg0
屋敷に入ると、玄関で待っていたアルヴァが泣いていた。

「ごめんなさい…。スジャータさんを生き返らせられなかった…」

泣きじゃくるアルヴァを見た時点で、結果は分かっていた。

だが、言葉で表された時の辛さは一際大きかった。

「悪いのはアルヴァじゃない。弱かった俺なんだ…」

アルヴァを抱きしめながら言う。

その言葉を皮切りに、アルヴァは更に多くの涙を流す。

「ご主人様は悪くないよぉ…。悪いのは…敵なんだから…」

アルヴァが泣き止むまで、ただひたすらに待つ。

そして、泣き止んだ後のアルヴァに伝える。

この国を出ないといけないから、荷物をまとめてきてくれ、と。

アルヴァの返事は力なく、よろめきながら部屋へと戻っていった。

「カエデも…荷物をまとめてくるんだ…」

「…了解。皆にも伝えてくる」

貴方の気持ちを汲み取ったのか、瞬時に姿を消すカエデ。

その思いやりが、心底有難く思えた。

「うぐっ…。うああぁぁぁぁぁあ!」

そして、涙ながらに叫んだ。

自分の無力さを、愚かさを恨み、声が枯れるまで。
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