永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」

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408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/28(火) 01:34:27.65 ID:ZInpvyTS0


てゐ「ほんと、初めてよ……こんなに複雑な気分の勝ちは」

薬売り「いいじゃないですか……如何様な過程であろうと、それでも勝ちは勝ち」

薬売り「あっしが降参せざるを得ない程、貴方は狡」


【訂正】


薬売り「強かった」

てゐ「何噛んでんのよ」


 勝者への賛辞が、どこか棘がある風に聞こえるのは気のせいか。
 いまいち気乗りしない様子の妖兎に、薬売りはこれまた微妙な祝福を投げかけた。
 まぁ、確かに実感はないだろうな……何せ、何もしていないのだ。
 妖兎は妖兎なりに練ったであろう謀りの数々。これらがある種、「全部無駄になった」とも言えるのだから。
 

薬売り「まぁ、そう思っていれば……いいんじゃないですかね」

てゐ「ふん、あんたの下手な世辞なんてどうでもいいわよ」

てゐ「そんな事より、これ……よく見ると、中々かわいいじゃない」


 薬売りの世辞こそ響かぬままであったが、それでも妖兎は、徐々に機嫌を取り戻しつつあった。
 その所以はやはり、その手に掴んだ退魔の剣。
 モノノ怪を斬ると言う唯一無比の価値とは別に、「個人的に好ましい形」が、いつの間にか妖兎の心をがっちりと掴んでいたのである。


てゐ「ふむふむなるほど……刀っつーより、脇差? に近いわね」

薬売り「まぁ、懐に収めれるくらいですからね」

てゐ「それに……軽い。これならあたしでも、十分取り廻せそう」

薬売り「特に貴方様は、背丈が小さいですからね……」


 剣と呼ぶには少し短い寸尺は、薬売りの言う通り、妖兎の背丈にピッタリであった。 
 「よっほっは」と取り廻す姿も、妖兎の小ささが相重なり、存外様になっておる。
 ふむ……確かに、ある意味薬売りより妖兎の方が、主に相応しいかもしれぬ。
 それ程までに、退魔の剣と妖兎との「上っ面」の相性は、抜群であったのだ。


てゐ「なんか……なんか、テンションあがってきた!」

薬売り「それはそれは……ようござんした」


 楽し気にじゃれる妖兎に、その様子を冷ややかな目で見守る薬売り。
 妖兎の童に近い姿も手伝い、一見すると、まるで親子かのような実に微笑ましい光景にも見えよう。



【宴】



 しかしながら――――所詮は幻。
 そういう風に見えた所で、無論親子なわけはないし、どころか同じ種族ですらない。
 如何に盛り上がった所で、たかだか偶然なる一期一会。
 故に二人の関係は、どこまで行っても――――”赤の他人”に過ぎなかったのだ。


薬売り「あ・それ。あ・それ」

妖兎「ほぉぉぉぉ……とおッ!」


 そんな事は、当人同士こそが一番よく存じ上げていた。
 故にあえて、流れに身を任せた。
 そう、不意に訪れたこの愉快な一時は――――これから始まる【本当の決戦】への、わずかな余暇にすぎなかったのだから。


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