永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」

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278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 02:02:17.49 ID:PrSgG1Elo

 そこは、かつての故郷に比べれば、随分と質素な場所でした。
 巻割り、かまど、徒歩、収穫……等々、まさに文明のぶの字もない、原始的な生活そのものでした。
 けれど不満はありませんでした。
 不自由だらけな生活なのに、何故か、心からの自由を感じていたのです。

 いつしか兎は、自らの意思で永琳にこう言うようになります。
 「自分もあなたのような薬師になりたい」――――こう述べる兎に、永琳は快く受け入れました。


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 こうして、兎は再び、居場所を手に入れました。
 永遠を生み出す師の元で、永遠の一部となる弟子として。


レイセン「違う……あの時弟子入りを志願したのは……ただのその場凌ぎだった……」

レイセン「逃げ出す為に咄嗟に思いついたでまかせ……薬師なんて、ほんとはどうでもよかったはず……!」

薬売り「と、思っている割には、随分と熱心に勉強されてましたね……」

薬売り「夾竹桃なんて……薬師じゃなければ、ただの花なのに」

レイセン「なッ…………!」


 正式に弟子として入門し、いくつの時を経たでしょう。
 かつて、あれほど拒み続けた地上の生活が、いつしか兎にとって、なくてはならない物となっていました。
 変わらない日々、変わらない生活。いつまでも変わらない永遠亭――――。

 けれど、兎にとっては、それこそが幸せだったのです。
 変わらなくていい。
 「この幸せがいつまでも続きますように」。
 いつしか兎の心は、その思いだけが全てとなっていきました。


レイセン「そんな……なんで……なんでよ……鈴仙……」

レイセン「あんなに怯えていたのに……あんなに、目を背けていたのに……!」


薬売り「だとすると……これはあくまで……ひょっとしたらの話なのですが」

薬売り「もしかすると……”逃げ出したのは貴方の方”だったのでは?」


レイセン「は――――」


 けれどやっぱり、永遠なんて所詮儚い幻想でした。
 永遠の意味が「変化のない様」だとすると、やっぱりそんなものは存在しないんだと、兎は改めて思い知りました。
 よくよく考えれば当然でした。「過ごしたい永遠」と「成りたい薬師」。
 この二つは、変わると言う意味に置いて、全く正反対の物だったのですから――――。



【矛盾】
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