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永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 21:32:39.29 ID:jSwuJJZ7o
うどんげ「ここから見る月は、空に輝くただの盆にしか見えないでしょうけどね」
うどんげ「月から見た地上は……違うわよ」
時に皆は、月と言う存在にどういう情感を覚える?
美麗・優雅・幻想……まぁ大抵、この手の感傷が大半であろう。
身共だってそうじゃ。月見うどんに月見そば。月見団子を頬張りながら月見で一杯……
っと失敬。少し偏ってしまったの。
しかし月は違う。月の者は地上を奉ったりはせぬ。
その根本は、先ほど申した通り、月は地上を”穢れた地と見ている”点にある。
うどんげ「月の文明で最も発達した物。それは……”観察”」
うどんげ「月の発展はいつだって地上の監視と共にあった……長い時を掛けて、より細かに、より隅々まで見渡せるように」
月都文明が総力を挙げて生み出した、最大の利器――――。
玉兎はそれを「瞳」と呼んだ。
曰く、都の中心には、「眼を模したいと大きなる筒」があるのだとか。
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1237991.jpg
その眼力はもはや「月の模様が兎の餅つきに見える」程度の話ではない。
・いつ
・どこで
・誰が
・どのような身なりで
そして
・今現在何をしているのか
これらの全てを、一目瞭然に映し出す程なのだとか。
うどんげ「そして月の瞳はもちろん、裏切者の捜索にも応用が利く」
うどんげ「穢れに塗れた地上に、穢れなき月の者が混ざってたら……あの瞳なら、きっと一発で判別できるわ」
月の発展はすなわち監視の歴史。
月に存在する数多の利器は、その全てが瞳から枝分かれした物なのだ。
逆説的に言えば、こうとも言える。
それほどまでに、月は恐れていた――――得体の知れぬ死の穢れを。
うどんげ「月が何故夜に輝くかわかる?――――地上を見やすくする為よ」
薬売り「そうなの……ですか?」
幽霊・怪異・百鬼夜行。
人は得体の知れぬ存在に恐怖すると言うが、月人にとっては、穢れこそがそれに当たるのだ。
しかも穢れは正体不明ながら、いつでも見れる場所に存在する。
確かに……そう考えれば恐怖そのものじゃろうな。
なんせすぐ目の前にあるのじゃ。ならば、未来の可能性も容易に想定できるであろう。
”穢れが月に持ち込まれる時”が、いつか来るやも知れぬと。
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