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永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 19:37:24.36 ID:jSwuJJZ7o
草木も眠る丑三つ時。
月明かりも薄れる程闇に沈む、深き竹林の真っ只中にて。
そこには、闇夜の間を縫うように動き回る、一つの影があった。
「ハッ――――ハッ――――ハッ――――」
影は、同時に音を漏らしておった。
盛りのついた犬のような激しい吐息を漏らし、影に触れし竹葉も、釣られてしばしの間歌いだす程である。
しかしそれでも、影は決して速度を落とさなかった。
漏れる吐息も、竹葉の擦音も、自身の心の鼓動でさえも――――
その影に取っては、「進」の前には後回しでしかなかったのだ。
「――――うわっ!」
だが、あまりにないがしろにし過ぎた罰が当たったのだろうなぁ……。
「進」にかまけて「視」までも置き去りにした罰か。
影は、不意に進むのをやめた。
代わりに――――落ちた。
奈落の入口と見間違うほどに、深い深い穴の中へ。
「あっ……たぁ……もう……」
「またかよ……アイツ……」
「――――おや、まぁ」
「誰だ――――ッ!?」
して影が、穴へと落ちたその機を見計らうようにして、もう一つの影が現れた。
この新たに現れしもう一つの影は、先ほどの影と違い、足音一つ立てぬままに静を保っておった。
忍び足同然の接近である。しかしそこは影同士。
穴の中であろうと闇夜であろうと、影は、影の気配を十分捉える事ができるのである。
「いけませんねぇ……こんな闇夜の中は、明かりもなしに出歩いてはいけませぬ……」
「特に兎は……”耳が良い代わりに目が悪い”んだから」
視界が効かずとも……影の持つ”鋭敏な耳”を持ってすれば。
薬売り「ねえ……姉弟子様」
うどんげ「薬売り……!」
薬売りの持つ小さな明かりが、ようやっと影の形を照らし出した。
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