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王「我が娘が騎士になりたいと言ってるのだが……」女騎士「姫様が?」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 17:58:41.40 ID:MBuo2UAyo
―城内 謁見の間―
騎士「陛下、お呼びでしょうか」
王「来たか。早速だが、騎士隊で唯一の女性であるおぬしに頼みたいことがある」
騎士「はっ。何なりとお申し付けください」
王「もっと近くへこい」
騎士「はい」
王「実はな、我が娘が騎士になりたいと言ってるのだが……」
騎士「姫様が?」
王「うむ」
騎士(まさか、私が姫様の教育係に……! 幼いうちに教育すれば立派な騎士になれるかもしれないな。これは大役……!)
王「なんとか諦めさせてくれないか」
騎士「え?」
王「娘には普通に育ってほしいんだ。なんとかおぬしから騎士の厳しさを叩き込んで諦めさせてほしい、この通りだ」
騎士(そうか……。確かに陛下も一人の父親。愛娘に剣を握らせたくはないはず)
騎士「はっ。お任せください」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1490345921
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 18:06:41.82 ID:MBuo2UAyo
―廊下―
騎士(引き受けたのはいいけど、私は姫様と直接会ったことがないし……上手くいくだろうか……)
騎士(この時間はここにいると言っていたが……?)
姫「やー! えいやー!」ブンブン
ポニー「……」ムシャムシャ
騎士「……すみません」
衛兵「なんだ?」
騎士「あそこでポニーに跨って木の棒を振り回しているのが、姫様ですか?」
衛兵「お前、姫様の顔もしらないのか」
騎士「ああ、いえ。私が見ていたのは、煌びやかな衣装に身を包んだ姫様だけでして、あのようにその、腕白な姫様は知らないものでして……」
衛兵「まぁ、仕方ないか。俺みたいな内勤でもない限りはあんな姫様を見られる機会なんてそんなにないしな」
騎士「では、やはりあの少女が……」
衛兵「我らの姫様だ」
騎士(独自で騎士になるための修行を初めているなんて……)
衛兵「姫様に何か用か? 今は見ての通り特訓中だ。邪魔すると怒られるぞ」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 18:12:38.09 ID:MBuo2UAyo
騎士「私は陛下より任務を仰せつかっています」
衛兵「任務? 俺は聞いてないが」
騎士「陛下に確認を取ってください。それでは」
衛兵「おい」
姫「やー! おりゃー!」ブンブン
ポニー「……」
姫「ふー。素振り20回、おわり!」
騎士「姫様」
姫「だれ? え……あ……」
騎士「初めまして、と言ったほうがいいですね。私は姫様の姿を遠くからしか拝見したことがありませんでしたから、姫様も私のことなど知らないでしょう」
姫「あ……」
騎士「数多の兵の顔を把握するなど陛下でもできないことですからね」
姫「わぁ……」
騎士「姫様? なにか……?」
姫「おぉぉ! すごい! ほんものだ! あの、わたしね! あなたのこと、ずっと前から気になってたの!」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 18:19:19.01 ID:MBuo2UAyo
騎士「私のことを?」
姫「うん! 私ね、貴方みたいな騎士になりたいの!」
騎士「え……!? わ、わたし……のような……?」
姫「あなたがね、おおきな馬に跨って訓練してるところみたときにね、こんなにかっこいい女の人がいるんだって思ったの」
姫「それでね、私もあなたみたいにカッコいい大人の女になりたいの!」
騎士「私なんて、そんな……いえいえ……」
姫「だから、私も騎士になって、かっこよくなりたいの! なれるかな?」
騎士「あ、えと……」
騎士(陛下から直接受けた任務だ。遂行させないと)
騎士「姫様、残念ですが無理です」
姫「え?」
騎士「姫様では、騎士にはなれ――」
姫「だめ……な、の……な、んで……なん、で……?」ウルウル
騎士(泣いた!? まずい! こんなところ誰かに見られたら……!!)
衛兵「どうした? なにかあったのか?」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 18:25:33.97 ID:MBuo2UAyo
騎士「いえ!! なにも!!」
姫「うっ……うぅぅ……どうして……なれ、ないの……なりたいのにぃ……」
騎士「あぁ、あの、姫様! 騎士にはなれずとも、姫様は一国を治める人にはなれますから!」オロオロ
姫「きしに……きしになりたいのに……あなたみた、いな……かっこ、いい……きしぃ……」
騎士「お褒め頂きありがとうございます!! でも、姫様ではその、無理ではないかと……個人的には思ってしまうわけでして……!」
姫「うえぇぇぇぇん!!」
ポニー「ヒヒーン!!」
騎士「わぁぁぁ」
衛兵「おらぁ!! なにしてんだ!! 姫様、ないてるじゃねえかよ!!」
騎士「いや、その……!!」
姫「うわぁぁぁん!!」
ポニー「ヒヒーン!!」
騎士「くっ……!! 任務は失敗!! 退却するしかない!!」ダダダッ
衛兵「あ!! こら!! であえー!!! 反逆者だー!!! 姫様を泣かせた反逆者がいるぞー!!!」
姫「うえぇぇぇん!!」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 18:37:49.48 ID:MBuo2UAyo
―宿舎―
騎士「終わった……私の騎士生活も……これで終わり……」
騎士(初の女騎士として少し調子に乗りすぎたか……。お父さんとお母さんも心配しているし、田舎で農作業を手伝おうかな……。それからお見合いして、結婚して、子どもは二人ぐらいで……)
隊長「よぉ。しけた顔してんな」
騎士「隊長。お疲れ様です」
隊長「今日、色々あったみたいだな」
騎士「隊長の耳にも入っていますか」
隊長「そら、真面目だけが取り柄のお前が問題を起こしたなんて、地平線の向こうでも風の便りで届いちまうぜ」
騎士「すみません……私の力不足です……」
隊長「詳しい話は知らないんだが、姫様を泣かせたとかなんとか」
騎士「はい。それで一時的に反逆者扱いを受けてしまいまして。陛下の助けがなければ私刑にされていたかもしれません」
隊長「姫様はな、望まず内勤となった連中にとっては女神みてえな存在なんだ。本来なら街の外にでて、派手な討伐任務やらに就き、名声と栄誉を勝ち取りたいと願う野郎どもは多くいる」
隊長「なのに基本的には退屈な守衛をやらされる。そいつらにとっては毎日がつまんねえわけだ。守衛をきちんとこなしても評価はされにくいしな」
騎士「姫様はそういった者たちへ何かされていたのですか? 労いの言葉をかけるとか」
隊長「そらぁ姫様本人はそういうこともしてるが、内勤の連中にとってはそこにいるだけで十分なんだそうだ。見ているだけで心が潤うんだとよ」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 18:48:35.47 ID:MBuo2UAyo
騎士「確かに、容姿の愛らしさは筆舌に尽くしがたいですね」
隊長「だから、姫様を泣かせたなんてことになれば、内勤の連中が本気で襲い掛かってくるのも当然なわけだ」
隊長「ある意味、連中の愛娘って感じでもあるからな」
騎士(そこまでの存在だったとは……)
隊長「で、そんな連中の女神をどうして泣かせたんだ」
騎士「陛下より勅命を受けました。姫が騎士になりたいと言っているので、諦めさせてくれと」
隊長「ほぉ。そりゃあ、大役だ。だが、唯一無二の女騎士にはぴったりな任務だ」
騎士「そして姫様と話したのです。そのときに、姫様では騎士になれないと言って……」
隊長「ひでぇ話だ。そりゃ、泣く。泣いちゃうぜ。憧れの存在にそんなこといわれちゃあなぁ」
騎士「え? 隊長、何故そのことを?」
隊長「内勤連中の間じゃ結構有名な話だぜ? 騎士隊に女が入ってから急に姫が騎士なるための特訓を始めたってな」
騎士「全部……私の所為なのですね……! こうなれば、仕方ありません!」
騎士「本日をもちまして、この剣を……剣を……お、置きます……」プルプル
隊長「待て待て。なんでお前が騎士を辞めなきゃなんねえんだよ」
騎士「私の所為で姫様が騎士道を歩むことを望む一方で、陛下はそれを止めさせようとしている。なれば、原因である私がこの城をさればそれで解決です。姫様も目指す者がいなくなれば考えを改めるはず……」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 18:59:05.60 ID:MBuo2UAyo
隊長「姫様、余計に悲しむんじゃねえかなぁ」
騎士「でも……」
隊長「お前だって、並大抵の努力でここにいるわけじゃねえ。こんなことで騎士を捨てられるのか」
騎士「……」
隊長「どうなんだ」
騎士「……いやです」
隊長「だろう? だったら、もうちょっと冷静になれ」
騎士「しかし、打つ手がないようにも……。任務を果たそうとする以上、私は衛兵たちから私刑を受けることになります」
隊長「なぁに、姫様がお前を尊敬しているなら、それを逆手にとってしまえばいい」
騎士「どういうことですか」
隊長「心からお前のことを敬愛しているなら、どんなことでも信じるだろう?」
隊長「騎士はこんなに厳しい世界なんだってことを、姫様に教えてやればいい」
騎士「王にも言われましたが……。私のしてきたことを教えればいいのですか」
隊長「それでいいんじゃねえか。お前がやってきたことは、普通の女には真似できねえ。いや、並の男でも無理だな」
騎士(一人で鍛錬を積む姫様が私の特訓程度で音を上げるとは思えないけれど、一度やってみよう)
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 19:04:45.23 ID:MBuo2UAyo
―翌日 中庭―
ポニー「……」モシャモシャ
姫「やー! やー!!」ブンブン
衛兵(今日の姫様、鬼気迫る表情だな。昨日、あのアマにひでえこと言われて自分を追い込んでる。おいたわしい……)
姫「ふー。素振り23回、おわり!」
衛兵(あんなに自分を痛めつけて……くくぅ……)
騎士「すみません」
衛兵「あぁ!?」
騎士「ひっ」ビクッ
衛兵「よくここにこれたなぁ。その根性だけは認めてやるよ」
騎士「通してもらいます」
衛兵「そりゃ、墓標に刻む言葉かぁ?」
騎士「そ、そういうことでは……なくて……」
衛兵「ならなんだってんだぁぁ!!!」
騎士「ひぐっ……ごめんなさい……でなおします……」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 19:09:46.46 ID:MBuo2UAyo
衛兵「二度とこの聖域に足を踏み入れるんじゃねえよ!!」
騎士(やはり、田舎に帰るしか……)
姫「どうしたの?」
衛兵「なんでもありません。姫様はどうぞ、お気の済むまで特訓を続けてください」
姫「あー!」テテテッ
騎士「姫様?」
姫「またきてくれたんだ!」
騎士「……」
衛兵「姫様、この者に近づかない方がよろしいかと」
姫「静かにして」
衛兵「申し訳ありません!!!」
姫「時間はある?」
騎士「はい」
姫「よかったぁ。こっちにきて。話したいことがあるの」
騎士(なんだ……。まさか、不敬罪で死刑を言い渡される……!?)ガクガク
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 19:16:37.04 ID:MBuo2UAyo
ポニー「……」モシャモシャ
姫「この子はユニコーンっていうの。カッコいいでしょ?」
騎士「姫様が乗馬するに相応しい馬の名かと」
姫「ありがとう。角があればよかったんだけど」
騎士「あの、私にお話とは」
姫「……」
騎士「……」
騎士(やはり、昨日のこと……。覚悟を決めよう。一国の姫を傷つけてしまった罪は重いのだから……)
姫「ごめんなさい!」
騎士「は?」
姫「……怒ってるんだよね?」
騎士「え? はい?」
姫「私が、軽々しく騎士になりたい、なんて言ったから……」
騎士「えと……」
姫「あなたはきっと人に自慢できる程度の努力なんかで騎士にはなっていないはずなのに、私、簡単に騎士になりたいなんて、言って……。だから、あなたは気を悪くしたんだよね。ごめんなさい」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/24(金) 19:26:10.33 ID:MBuo2UAyo
騎士「と、とんでもありません! 私は……!」
姫「あなたに無理だって言われて、ようやく分かったの。この程度の鍛錬では全く足りないんだって」
姫「だからね、これから毎日素振りをする回数を増やしていくことにしたの。今日は3回増やしたから、明日は更に3回ぐらい増やそうと思うんだけど」
騎士(まさか、姫様が気に病んでいたなんて……。叱責を受けるどころか罰を与えるものだと思っていた私が情けない)
姫「まだ、足りない? 5回ぐらいにしたほうがいい?」
騎士(こんなにも真剣……こんなにも真っ直ぐに……姫様は私を向き合ってくれている……)
騎士(私も正面から向き合わなくては。もうこれ以上、不敬を重ねるわけにはいかない)
騎士「……姫様。正直に言いますと、それでは、全くと言っていいほど、足りません」
姫「え……」
騎士「そのような児戯にも等しい行為を鍛錬を呼称するなど、片腹痛いです」
姫「……」プルプル
騎士「児戯を何万回繰り返したところで意味などありません。ただの徒労です」
姫「うぅ……」プルプル
騎士(しまった……!!! 泣く……!?)
騎士「で、でも、あれですよ、流石にその、何十万回ってやれば、えっと、騎士になれたりするかも、しれませんよ? たぶん、きっと」オロオロ
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