【ラブライブ】千歌「テニスをしよう!!」【サンシャイン】

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165 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/21(日) 22:11:07.91 ID:hob2xv9bO
ダイヤ「……ルビィ、大丈夫?」

ルビィ「ほぇ、あ、ぅん」ホケーッ

ダイヤ「…………すぐ終わらせましょう」ターンターン

ダイヤ「……いきますよ、花丸さん」

花丸「っ」グッ



ダイヤ「『硬度7』」

ダイヤ「はっ!!」パァァァァン



善子「ずら丸!」

花丸「っ」


花丸(まるの『技』はたぶんほとんど使えない)

花丸(使えて1回か2回、かな……)

花丸(だから、今、まるがやらなきゃいけないのはーー)



花丸「っ、ずらっ」ベシッ



「ダイヤさんのサーブを返した!」
「やるね、まる!」

善子「ナイスよ! ずら丸!」ダッ

花丸「おねがい、善子ちゃん!」


ダイヤ「返しましたか」

ダイヤ「ですが!!」グッ



ダイヤ「『硬度9』」

ダイヤ「このゲームはこれで終わりですわ!!」パァァァァン



善子「ずら丸!」

花丸「うんっ」スッ

善子「『黒の羽衣』!」ダッ

善子「これでッ!!」パァァァァン

ダイヤ「もう、それもーー」



ダイヤ「効きませんわ!」ベシィィィィィィン



善子「……っ!?」

善子「そん、な……あっさりと」



ーー パァァァァン ーー



166 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/21(日) 22:15:16.66 ID:hob2xv9bO
ーーーーーー



その時。
なんとなく、察してしまった。



もうダメなんだって。



『蠱惑の魔眼』も。
『黒の羽衣』も効かない。

そして、同時に気づいたわ。
私はずっと、ずら丸の力に頼ってきただけなんだって。

なにが、安心しなさい、よ。

ここからは私がやる?
無理に決まってるじゃない。

私は『無力』だ。
だから、この試合はもうーー


167 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/21(日) 22:17:39.30 ID:hob2xv9bO




花丸「ずらぁぁぁぁっ!!!」ベシッ



ーー ポーーーーン ーー




善子「…………え?」



ダイヤ「っ、『硬度8』!」

ダイヤ「終わりです!!」ベシィィィィィィン



花丸「っ、まだ、ずら……」ベチッ



善子「ずら丸……?」

善子「なんで?」


168 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2017/05/21(日) 22:29:02.06 ID:hob2xv9bO
なんで?
なんで必死になって食らいついてるの?
その答えは、ずら丸を見ていたら、分かった。



まだ諦めてないから。



まだどうにかなるって信じてる顔だ。



その根拠は?



どうにもならない。
そう思ってしまった私を信じているから。

………………。


まったく、馬鹿よね。
私の言葉を信じきってて、私がどうにかしてくれるって思ってる。
……どうかしてるわ。


……………………。


そっか。
きっと、さっきのダイヤはこんな気持ちだったのね。
だから、今、あんなに強いのね。

じゃあさ。
ずら丸が信じてくれてるなら、私もあんな風に強くなれるのかしら?




……違う。
違う違う違う違う!



強くなれるのかしら、じゃないわ!

ずら丸があんなに頑張ってるのよ!

体力も限界のくせに!
『技』だって使えないくせに!
それでもあんなに頑張ってる。



なら、私はーーッ!!


169 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/21(日) 22:30:31.05 ID:hob2xv9bO
ーーーーーー




善子「今、強くならなきゃなのッ!!』




ーーーーーー ドクンッ ーーーーーー




ーーーーーー
170 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/21(日) 22:39:39.22 ID:hob2xv9bO




ーー カンッ ーー




ダイヤ「え……?」




ーー ポーーーーーン ーー




『よしまる 15 - 40 ダイルビ』



ダイヤ「……な、なにが……っ」

「え? い、今のって……?」
「鞠莉の……『技』!」

ルビィ「……『妙技』……?」




善子『…………』

花丸「はっ、はぁ……よしこ、ちゃん……?」

善子『ごめん、花丸』ナデリ

花丸「ひゃぁ!? く、くすぐったいずら///」

善子『今度こそ安心していいわ』

花丸「………………ずら」



ダイヤ「善子さん、貴女……」

善コ『…………これで、追いつけるわ!』

ダイヤ「っ、一体なにを……!?」

ヨシコ『フッ、決まっているでしょう……?』




ヨハネ『ヨハネ、今ここにっ!

ヨハネ『堕天降臨ッ!!』ダテンッ



171 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/21(日) 22:42:18.83 ID:hob2xv9bO
本日はここまで。
途切れ途切れになってしまい申し訳ないです。
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/22(月) 11:10:21.15 ID:YRxv/xAAO
善子が無我使うのか!
完全に曜ちゃんか果南だと思ってたわ
173 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 19:34:48.62 ID:UawRt8x/O
可能であれば更新します。
174 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 20:41:50.57 ID:UawRt8x/O
ーーーーーー



梨子「あれって、鞠莉さんの……?」

千歌「教えたの!?」

鞠莉「NO! 教えてないわ」

梨子「でも、さっきのは確かに」

鞠莉「えぇ、マリーの『妙技・鉄柱当て』だったわ」

梨子「……なにが……?」

千歌「うーん……」



千歌「…………はっ! もしかして!」ゴソゴソ



梨子「千歌ちゃん?」

千歌「あった! これだ!!」

鞠莉「What's?」

梨子「えっと、μ'sのテニス動画……って、これ!」

千歌「そう! 穂乃果さんのこの『技』! 今の善子ちゃんと同じだよ!」

千歌「今の善子ちゃんが使ってるのは、きっとこの『技』なんだよ!」



ーーーーーー
175 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 20:48:26.54 ID:UawRt8x/O



ダイヤ「『無我の境地』ですわね」



ルビィ「むがの?」

花丸「境地ずら?」

ヨハネ『…………』

ダイヤ「えぇ、限界を超えた者のみが使えるという技です」



ダイヤ「身体能力が上がり、更に疲労を一時的ではありますが、感じなくなるほどの集中力」

ダイヤ「そして、今まで見た『技』を使うことが出来るようになる」

ダイヤ「それが『無我の境地』ですわ」



ヨハネ『…………』

ダイヤ「その境地に到達していたとは…………」

ルビィ「……」ゴクリ

花丸「善子ちゃん、すごいずら……」

ヨハネ『……………………』フッ




ヨハネ(これ、そんなすごいの!?)

ヨハネ(確かに、さっきのは無意識だったけど!)

ヨハネ(…………まぁ、いいわ!)

ヨハネ(なんでもいい! 使えるものは使って、勝つんだから!!)
176 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 20:58:08.27 ID:UawRt8x/O

ダイヤ「『無我の境地』……」ターンターン

ダイヤ「脅威ではありますが……」スッ

ヨハネ『来い!』グッ



ダイヤ「はぁっ!!」パァァァァン

ダイヤ「今のわたくしならば!」ダッ



「サーブ&ダッシュ!?」
「普通ならやらないようなプレイを……」

ヨハネ『…………っ』スッ

ダイヤ「まずはこのゲームをいただきーー」



ーー トンッ ーー



ダイヤ「な!?」

ヨハネ『……ふぅ』

ダイヤ「今、なにを!? なぜボールがもう打ち返されてーー」



ヨハネ『フフッ』

ヨハネ『ダメじゃない。ヨハネに気をとられてボールから目を離したら♪』



ダイヤ「っ、花丸さんのーーっ」

花丸「まるの『技』!?」

ヨハネ『そうよ、これこそーー』



ヨハネ『†『蠱惑の魔眼』†』ダテン



『よしまる 30 - 40 ダイルビ』
177 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 21:05:28.94 ID:UawRt8x/O

ダイヤ「…………」ターンターン



ダイヤ(……なるほど。悔しいですが、強いですね)

ダイヤ(穂乃果さんやにこにーが使っていた『技』ですから当然ですわ)

ダイヤ(…………)

ダイヤ(けれど、これはーー)



ダイヤ「『硬度9』!!」

ダイヤ「はぁっ!!」パァァァァン



花丸「っ」グッ

花丸「ーーえぃっ!」ベシッ



ーー ポーーーーン ーー



「甘い球だ!」
「ダイヤたちのチャンス、だね」

ダイヤ「はぁぁぁーー」グッ



ダイヤ「やぁっ!!」ベシィィィィィィン



ヨハネ『ずら丸っ』グッ

花丸「っ!」スカッ



ーー パァァァァン ーー



ダイヤ「そう。これはダブルスですわ」



『よしまる B - B ダイルビ』
178 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 21:10:30.97 ID:UawRt8x/O
『チェンジサービス』
『サービス 花丸』



花丸「ずらっ!!」ベチッ



ダイヤ「『硬度8』!」

ダイヤ「はぁぁっ!!」ベシィィィィン



ーー パァァァァン ーー



花丸「う、ぅぅ……」

ヨハネ『切り替えるわよ』

花丸「う、うん!」



『よしまる 0 - 15 ダイルビ』
179 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 21:15:37.34 ID:UawRt8x/O



ヨハネ『甘いわよ!』パァァァン



ーー ポスッ ーー



ダイヤ「っ!」



ーー シュルルルルルル ーー




ルビィ「ピギィッ、こ、これって!!」

ダイヤ「っ」ダッ



ーー トンッ ーー



ヨハネ『ルビィの『神憑り』……いえ』

ヨハネ『†『堕天使憑り』†』ダテン



花丸「……また勝手に名前つけてる……」ジーッ



『よしまる 15 - 15 ダイルビ』
180 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 21:19:11.67 ID:UawRt8x/O



ダイヤ「『硬度0』」フワッ



ーー トンッ ーー



ヨハネ『っ、届かないっ!』



『よしまる 15 - 30 ダイルビ』





ヨハネ『『スネイク』よ!!』パァァァァン



ーー グググググッ ーー



ダイヤ「エリーチカの『スネイク』まで!?」



『よしまる 30 - 30 ダイルビ』
181 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 21:26:52.75 ID:UawRt8x/O
ーーーーーー



『よしまる 30 - 40 ダイルビ』

『よしまる 40 - 40 ダイルビ』

『よしまる 40 - Ad ダイルビ』

『よしまる 40 - 40 ダイルビ』



ーーーーーー



千歌「き、決まらない……」

梨子「お互い、決め手にかけるって感じかな……」

鞠莉「というよりも、決め手がありすぎるんじゃないかしら? ダイヤも善子もゼーンブ決めちゃうし?」

梨子「確かにそうですね。だから、点差が広がらない……」

千歌「このままだと…………」ゴクリ

梨子「…………」ゴクリ

鞠莉「…………」ゴクリ




千歌「どうなるのー?」ホェー?




梨子「っ、ま、まぁ……そうね……お互い一歩も引いてないし、それに、点数も互角だから……」チラッ

鞠莉「んー?」



鞠莉「体力があるほうがWinner?」



梨子「……そうですね。でも……」

鞠莉「えぇ」フフッ

千歌「?」




鞠莉「二人とも、持久戦で戦おうって目じゃないわね」




ーーーーーー
182 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 21:35:26.37 ID:UawRt8x/O
ーーーーーー



ダイヤ「はっ、はあ……」

ヨハネ『はぁ……はぁ……』




ダイヤ(今の善子さんのプレイも分析は出来てはいますわ)

ダイヤ(ただ、今のままでは不十分……)

ダイヤ(μ'sの『技』も使えるのならば、このまま押しきられる可能性は十分にありますが……)

ダイヤ(……………………)

ダイヤ(……ならば、わたくしはーー)




ヨハネ(『無我の境地』、使いこなせてる)

ヨハネ(向こうもまだ完全に対応できてはいないわ)

ヨハネ(でも、このままじゃきっと対応される)

ヨハネ(それに、自分でも分かってる。この技は体力すごい使うから……)

ヨハネ(…………)

ヨハネ(……うん、決めたわ。私はーー)




ダイヤ(ーー『もうひとつ』先へ行きますわ!)

ヨハネ(ーー無理をしてでもね!!)




ーーーーーー
183 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 21:44:55.11 ID:UawRt8x/O
花丸「…………善子ちゃん」ターンターン

ヨハネ『ヨハネよ!』

花丸「無理はしないでね……」

ヨハネ『………………うん』

花丸「っ」スッ



ルビィ「おねえちゃ……」

ダイヤ「なんですの、ルビィ?」

ルビィ「えっと、その……無理、しないで……?」

ダイヤ「…………分かっていますわ」スッ




ヨハネ『はぁぁぁっ!!!』パァァァァン




「あれは!?」

ダイヤ「まさか……エリーチカの『高速サーブ』!?」

ヨハネ『当たり!』

ダイヤ「ーーっ」グッ



ーー ミシミシミシッ ーー



ダイヤ「くっ……こ、『硬度10』!」

ダイヤ「はあぁぁっ!!」バァァァァァァァン



ヨハネ『あれを、返した!?』

花丸「善子ちゃん!」

ヨハネ『っ』スッ



ヨハネ『『硬ーー』ズキッ

ヨハネ『っ、『硬度0』!』フワッ



ーー トンッ ーー



「ダイヤの『技』まで……」
「ダイヤさん!」

ダイヤ「くっ、まだ、ですわッ!」ダッ



ダイヤ「『硬度10』!!」

ダイヤ「っ」ズキッ



ダイヤ「はっ!!」パァァァァン


184 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 21:47:28.57 ID:UawRt8x/O
ルビィ「10をれんぞくでっ!?」



ダイヤ「まだまだですわッ!!」

ヨハネ『っ、こっちも!!』



花丸「っ、善子ちゃん……」

ルビィ「おねえちゃ……」




ダイヤ「はぁっ!!!」ベシィィィィィィン




ヨハネ『食らいなさい!!』バァァァァァァァン



185 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 21:52:51.36 ID:UawRt8x/O
ーーーーーー




ーー ズキズキ ーー



痛みが、引きませんわね。
まぁ、『硬度10』を連続で使ってしまいましたから……。

ですが、ここで引いては善子さんの思う壺ですわ!



全てに『硬度10』を使う。



そうすることで、善子さんは『技』を使い続けるしかなくなるはず。

『無我の境地』は諸刃の剣です。
使い続ければ、必ず綻びが生まれますわ。

その時こそーー。



ーーーーーー
186 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 21:57:08.51 ID:UawRt8x/O
ーーーーーー




ーー ズキズキ ーー



痛みが、引かない。
『技』使い続けてたし。
その上、『硬度10』なんていうパワーショットをずっと返してたらこうもなるわよ。

けど、ここで引いたら負け!



『無我の境地』は止めない!



今のところ、対応できてるのは『硬度10』だけ。

けど、あんなパワーショット使い続けられるわけないわ!
絶対チャンスはある!

その時こそーー。



ーーーーーー
187 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 22:08:31.79 ID:UawRt8x/O
ーーーーーー



そう。
二人の予想通り。
チャンスは訪れる。



ーーーーーー




ーー ポーーーーン ーー



ダイヤ「くっ」

「チャンス! 善子ちゃん!」

ヨハネ『だから、ヨハネよっ!』グッ



ヨハネ『終わりよ! 『蠱惑の魔眼』!』スッ

ヨハネ『加えて『動くことーー』




ヨハネ『ーー雷霆の如し』ッ!!!』ベシィィィィィィン




ダイヤ「負けられませんわっ!!」

ダイヤ「まだわたくしはーー」




ダイヤ「『硬度11』ッ!!!」

ダイヤ「はあぁぁぁッ!!!」ググッ




ーー パァァァァン ーー





ーー カランッ ーー


188 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 22:13:56.00 ID:UawRt8x/O



ダイヤ「はっ、はぁ……」

善子「はぁ……はっ、はぁ……」




ルビィ「……おねえちゃ……」

花丸「善子ちゃん……?」

「ボールは…………?」
「あそこだね」



ーー トンッ ーー



善子「っ」

善子「こっちのコートに……っ」




『よしまる 40 - 40 ダイルビ』



「また振り出し……」

「…………ううん。どうやら、違うみたいだよ」

「……え?」




ーー カランッ ーー




ダイヤ「痛ッーー」ズキズキ

ルビィ「おねえちゃ!!」ダッ



善子「…………」プルプル

花丸「善子ちゃん……?」


189 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 22:18:19.53 ID:UawRt8x/O
「二人とも、ラケットが……」

「うん。ダイヤはパワーショットの打ちすぎで、善子ちゃんの方は『無我の境地』の副作用かな」

「そ、それじゃあ……?」




ダイヤ「っ、いえ、まだ終わりではありませんわ!」ズキズキ

善子「え、えぇ……そのとおり、よ」フラフラ



ルビィ「…………」

花丸「…………」

ルビィ「はなまるちゃん……」チラッ

花丸「うん、ルビィちゃん」コクリ




ルビィ「あ、あの!!」

花丸「千歌ちゃんにお願いがあるずら!」




千歌「……ほぇ?」


190 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 22:26:41.80 ID:UawRt8x/O
ーーーーーー




『よしまる B - B ダイルビ』
『善子・ダイヤ試合続行不可能により』



『無効試合』




ーーーーーー
191 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 22:34:42.77 ID:UawRt8x/O
ーーーーーー


ダイヤ「納得いきませんわ……」

善子「同じく……」

千歌「……二人ともしょーかふりょー気味?」



善子「当たり前!」
ダイヤ「当たり前ですわ!」



千歌「わっ、ハモった!」

ダイヤ「これだけやって無効試合? ぶっぶーですわ!!」

善子「そうよ! まだ堕天使ヨハネの本領発揮はこれからだったのに!!」

ダイヤ「まったくですわ! 少し経てばわたくしもまだ戦えたというのに!」




千歌「……でも、二人ともルビィちゃんと花丸ちゃんに怒られたんでしょ?」




ダイよし「「うぐっ……」」

千歌「無理しすぎだって」

ダイヤ「くっ、で、ですが、黒澤家の跡取りともあろう者がーー」



千歌「ルビィちゃん、泣いてましたね」



ダイヤ「」

善子「フッ、堕天使にとって、この程度の負傷など、天界の天使を相手取ったあの大戦と比べたらーー」



千歌「花丸ちゃんも目、潤んでたよね」



善子「」

千歌「あ、二人とも固まっちゃった……」

千歌「うーん。この間に、次の試合の紹介をしちゃおう!」

千歌「さぁ! 次はこの二人だよ!」
192 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 22:42:08.19 ID:UawRt8x/O
「えっと、鞠莉ちゃんが負けて、今の試合が引き分けだったから……」

「ん? どうしたの?」

「あ、ううん。ただ、この試合で決まらないってこともあるから、そしたらどうなるんだろうなぁ……って思ったんだ」

「……あー、そっか」

「…………その顔は考えてなかったって顔だよね?」

「アハハ、正直ね」

「…………ふーん、そっか」




曜「じゃ、ちゃんと考えなきゃね」ニッ




「うーん?」

「でも、それは曜ちゃんが勝ったらって話でしょ」

「ならーー」




果南「ーー問題ないかな」


193 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 22:43:06.80 ID:UawRt8x/O
ーーーーーー




シングルス1



渡辺曜 vs 松浦果南



試合開始




ーーーーーー
194 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/05/28(日) 22:44:53.11 ID:UawRt8x/O
今日はここまで。
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 10:53:42.11 ID:wnXFQb9SO
>>181
ばかちかわいい
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/29(月) 19:08:36.93 ID:YXXJlpUVO
果南から感じる魔王感
前のツバサより強そう
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/03(土) 23:36:44.45 ID:NNrNc7aKO
追いついた
あついな!
これってテニプリが元ネタ?
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 23:37:42.08 ID:NNrNc7aKO
sage忘れたスマヌ
199 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/05(月) 17:39:43.70 ID:gu5H2h93O
本日更新予定です。
200 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/05(月) 19:16:09.32 ID:gu5H2h93O
『1セットマッチ』
『サービス 果南』



果南「さ、行くよ、曜ちゃん」ターンターン

曜「……うん!」

果南「まずはーー」スッ



果南「ーーこれ!!」パァァァァン



「強烈なサーブずら!」
「う、ぅん……すごそう……」

曜「……そっか、パワー型って訳だね」

曜「でも!」グッ



曜「はぁっ!!」パァァァン



曜「このくらいなら返せる!」

果南「っ、だよね」ダッ

果南「じゃあ、もう一回!!」




果南「はあっ!」パァァァァン



曜「っ、まだーー」グッ

曜「っ!?」ベチッ



ーー ポーーーーン ーー



「ロブが!」
「果南さん! チャンスですよ!」

果南「うんっ」バッ



果南「やっ!!」ベシィィィィィィン



ーー パァァァァン ーー




曜「っ」

果南「……ふぅ」



『曜 0 - 15 果南』
201 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/05(月) 19:26:15.00 ID:gu5H2h93O
果南「じゃあ、次いくよ?」ターンターン

曜「……うん」



果南「はぁっ!!」パァァァァン



曜「っ! なっ!?」グッ

曜「パワーが上がってる!」ググッ



曜「くっ!?」ベチッ



「曜、Powerで押し負けてるみたい……」
「果南さん、すごいずらぁ!」

果南「ふっ!」グッ



果南「はっ!!」パァァァァァァン



曜「っ!」グッ

曜「負けないっ!」パァァン

果南「お、粘るね! でも、これならどう?」



果南「はぁぁぁっ!!」バァァァァァァン



「な!? なんてStrokeなの!?」
「よ、ようちゃんっ……」

曜「っ!?」グッ

曜「うっ!」ベチッ



ーー ポーーーーン ーー



曜「し、しまっーー」




果南「やっ!!」ベシィィィィィィン




『曜 0 - 30 果南』
202 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/05(月) 19:32:10.59 ID:gu5H2h93O
果南「流石、曜ちゃんだね」ターンターン

曜「…………」



曜(流石、なんて……)

曜(こっちは返すので精一杯。正直、あのパワーで攻められるとすこーし厳しいかな)

曜(…………でも)



果南「はぁっ!!」パァァァァン



「またキョーレツな!!」

曜「っ、大丈夫!」

「よ、曜?」

曜「パワーが全てじゃない!」ダッ



曜「ふっ」フワッ



ーー トンッ ーー



「ドロップ、ショット……」
「あの果南さんの球を……曜ちゃん、すごい……」



曜「…………っし!!」

果南「……へぇ」



『曜 15 - 30 果南』
203 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/05(月) 20:31:59.63 ID:gu5H2h93O
果南「やるね」ターンターン

曜「果南ちゃんほどじゃないよ」

果南「っ」スッ



果南「はっ!!」パァァァン



曜「ふっ」フワッ


ーー トンッ ーー



「連続でドロップショット!?」
「果南さん!」

果南「大丈夫。そんなに心配しないでもーー」ダッ

「読まれてるわ! 曜!」



曜「うん! わかってるよ!」ダッ



果南「! 前に!」

曜「ここなら強打は出来ない!」

果南「フフッ、いいよ!」グッ



果南「はあっ!」パァァァァン



曜「なっ!?」

曜「っ」ベチッ


ーー ポーーーーン ーー



果南「はぁぁぁっ!!」ベシィィィィィィン



ーー パァァァァン ーー



果南「よっ、と……ふぅ」

曜「…………なんで……」

果南「あそこで強打はないと思った?」

曜「……っ」



果南「甘いよ、曜ちゃん」ニコッ



『曜 15 - 40 果南』
204 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/05(月) 20:39:25.05 ID:gu5H2h93O
ーーーーーー



千歌「果南ちゃん強くない!?」



ダイヤ「それは果南さんですし」

善子「そうよね、果南さんだし?」



千歌「そう言われて、少し納得しちゃう自分がいる……」



ダイヤ「……まぁ、ですが、あの曜さん相手にあっさりと点をとれるのは、恐ろしいですわね」

千歌「うん! それはわたしも思った! 曜ちゃん、すっごい強いはずなのに!」

善子「……相手の出方をうかがってるってのはあるんじゃないかしら?」

ダイヤ「ふむ、確かに。わたくしもそうでしたが、まずは相手のプレイスタイルを見極めることも戦術の内ですわ」

千歌「うーん?」

善子「千歌さん?」

千歌「でも、曜ちゃん、そんなタイプかなぁ?」

ダイヤ「って、そんなことを話している間に、また決まりますわ!」



ーーーーーー
205 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/05(月) 20:45:44.19 ID:gu5H2h93O




ーー パァァァァン ーー



『曜 0 - @ 果南』



果南「よし! まずはサービスゲームキープ!」

曜「……っ」

果南「さ、次は曜 ちゃん のサーブだよ。はい、ボール」スッ

曜「…………う、うん」モヤッ



曜(…………正直、ここまで強いなんて……)

曜(なんとなく、分かってはいたけどさ)

曜(…………しょうがない)



曜(『アレ』使わないと、だよね)




ーー ブンッ ーー




果南「……?」
206 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/05(月) 21:24:19.25 ID:gu5H2h93O
『チェンジサービス』
『サービス 曜』



曜「すぅ……」ターンターン

果南「……」スッ

曜「……っ」スッ



曜「やぁっ!!」パァァァン



「速いずら!」

「出たわ! 曜の『クイックサーブ』!」

「そっか、打つタイミングが早いのね。だから、スピードが出てなくても体感としては速く感じるってこと……」

果南「なかなかいいサーブ、だねっ」グッ



果南「はっ!」パァァァン



曜「っ、難なく……まぁ、だよね」

果南「?」

曜「返されると思ってたよっ」ダッ

果南「……もしかして、今のが曜ちゃんの『技』だった?」



曜「一応ねっ」パァァァァン



果南「そっか」スッ

果南「はぁっ!!」パァァァァン



曜「くっ!?」



『曜 0 - 15 果南』
207 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/05(月) 21:28:54.46 ID:gu5H2h93O
曜「っ、はぁ……ふぅ……」

果南「……っと、曜ちゃん?」

曜「……なに? 果南ちゃん」



果南「千歌から聞いたんだけどさ」



曜「……」ピクッ

果南「…………えぇと」

曜「…………」

果南「…………ううん。いいや、なんでもない」

曜「………………かり」ボソッ

果南「え?」



曜「…………」プイッ



果南「曜 ちゃん ?」
208 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/05(月) 21:30:39.24 ID:gu5H2h93O
今日はここまで。
レス感謝です。
励みになってます。
209 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 19:49:54.81 ID:VPWjuDzOO
曜「……」ターンターン

果南「……ふぅ」



曜「っ!!」パァァァァン



「また出た! 曜ちゃんの『クイックサーブ』!」

果南「またーー」クスッ



果南「ーーそれ?」パァァァン



曜「っ、だよねっ」ダッ

「前に!?」
「ネットに着くのが速いずら!」

果南「なるほどね。そのためのサーブか」

曜「っ、これなら!」スッ



曜「はぁっ!」パァァァァン



果南「いいボレー、だね」ダッ

曜「なっ!?」

「果南さんも前に出たの!?」
「は、はやいっ」



果南「ほっ!」ベシィィン



曜「っ」



『曜 0 - 30 果南』
210 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 19:55:35.90 ID:VPWjuDzOO
曜「……」ターンターン



曜(あれを……返すんだ)

曜(角度もつけて……結構いいボレーだったと思ったんだけど……)

曜(ほんとーー)



曜「やっ!!」パァァァァン




果南「ふっ」フワッ



曜「………………え?」



ーー トンッ ーー



「ど、どろっぷしょっと……」
「さ、さっきの曜ちゃんみたいな……」

曜「っ」

果南「ふふっ、よかったよかった。成功したね」

曜「今のって……」




果南「お返し、だよ」ニカッ




『曜 0 - 40 果南』
211 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 20:09:45.46 ID:VPWjuDzOO
ーーーーーー




善子「つっよ……」ボソッ




千歌「う、うん……」



ダイヤ「曜さんのスピードはかなりのものですわ。『クイックサーブ』。そして、そこから繰り出される多彩なプレイ」

ダイヤ「半端な相手ならば、圧倒できるでしょう」

ダイヤ「……ですが」チラッ



善子「相手が悪いわね」

千歌「スピードは曜ちゃんが勝ってるみたいだけど……」

ダイヤ「打球の重さ、柔軟さ、それに勝負勘。全てが恐ろしいほどに洗練されています」

善子「……あれ、勝てる?」

ダイヤ「………………わたくしでは無理、でしょうね」

善子「……ま、同感。勝ち筋が見えないわ」

善子「圧倒的……あれ、まるでーー」




善子「ーー『魔王』ね」




ーーーーーー
212 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 20:23:14.87 ID:VPWjuDzOO
曜「…………」ターンターン

果南「次はどうやって攻めようかな」

曜「っ」スッ



曜「っ、はぁっ!」パァァァァン



ーー ポスッ ーー



『フォルト』



果南「ん?」

曜「っ」

曜「…………っ」ターンターン



曜「はぁっ!」パァァァァン



「『クイックサーブ』じゃないずら!」
「流石にSecondじゃ攻めきれないわね」

果南「ラッキー、だね」グッ

曜「……っ」



果南「やっ!!」パァァァァン



曜「っ」



曜(なにが、ラッキー……?)

曜(果南ちゃんは私のサーブ簡単に返せるのに?)

曜(っ)

曜(果南ちゃんっ)



「曜ちゃん!」

曜「っ、しまっーー」ベチッ



ーー ポーーーーン ーー



果南「! チャンス!!」グッ



果南「はぁっ!!」ベシィィィィィィン


ーー パァァァァン ーー




『曜0-A果南』
213 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 20:44:20.75 ID:VPWjuDzOO
ーーーーーー



曜「…………ふぅ」



曜(やっぱり強い)

曜(スピードは確かに私が上。だけど、勝てる気がしない……)

曜(……はぁ)

曜(…………って、いやいやいや! 違う違う!)

曜(ここで勝って、引き分けに持ち込む! これが私のやること!)



曜「よーし!」

曜「全速前進っーー」




ーー曜ちゃん。

そんなに落ち込まないでよ。




曜「っ」
214 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 20:50:29.53 ID:VPWjuDzOO


仕方ないって。

ね?
今回はたまたまだからさ。
今度は、きっと勝てるよ。



ーー 曜『ちゃん』 ーー




曜「…………っ」ゾワッ

曜「っ、はっ……」

曜「はぁ……はぁっ……」




曜(だ、め……だ)

曜(勝てる、気がしない……)

曜(記憶っ……昔のこと、思い出してっ……)

曜(やっぱり……私は、また……)




「曜?」




曜「…………え……?」




鞠莉「曜?」

曜「まり、ちゃん……?」



215 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 20:59:48.74 ID:VPWjuDzOO

鞠莉「どうかしましたー?」

曜「っ、あ、あはは……なんでもないよ! ただ、ちょっと息切れしただけでーー」

鞠莉「本当に?」

曜「っ、ほ、ほんとうだって!」

鞠莉「んー?」ジーッ

曜「い、いったい、なんーー」




鞠莉「勝てない、と思った?」




曜「っ、そ、そんなことーー」

鞠莉「ま、果南のPlay見たらその気持ちも分かるけどね」

曜「…………」

鞠莉「ねぇ、曜? ワタシ、チョットは曜のplayを見てるわ。だから、言える」

鞠莉「ちょっとヨーリョーがいいくらいじゃ、勝てないんじゃない?」

曜「っ、鞠莉ちゃんにそんなこと言われーー」




鞠莉「『アレ』使わないの?」



216 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 21:05:32.94 ID:VPWjuDzOO

曜「なんで、知ってっ!?」

鞠莉「知ってますよ。未完成だってことも」

曜「……そ、そっか。ならさ……」



鞠莉「使えばいいんじゃない?」



曜「え、え? だって!」

鞠莉「言ったでしょ? ヨーリョーいいくらいじゃ勝てないって♪」

曜「…………」

鞠莉「フフッ」



鞠莉「…………あとは曜シダイデース♪」

曜「………………うん」




ーーーーーー
217 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 21:10:18.47 ID:VPWjuDzOO
『チェンジサービス』
『サービス 果南』



果南「いくよ? 曜 ちゃん 」ターンターン

曜「っ」

果南「ふっ」スッ



果南「はぁぁっ!!」パァァァァン



「ぅゅ……威力、おちてない……」
「ずらぁ……」

曜「……っ」グッ



曜「やっ!」パァァン



「返した、けど……」
「果南さんの力に完全に負けてるね、曜ちゃんのレシーブ」
「あ! また!?」



果南「ふっ」フワッ



ーー トンッ ーー




曜「…………」

「……曜」




『曜 0 - 15 果南』
218 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 21:15:29.69 ID:VPWjuDzOO
果南「…………」ターンターン

曜「…………」ジーッ




曜(分かってた)

曜(果南ちゃんが強いことくらい)

曜(このままじゃ勝てないことくらいッ!)

曜(分かってるよッ)




ーー パァァァァン ーー



曜「っ!」ダッ




曜(そう)

曜(このままじゃ勝てない。だからーー)





曜「私はっーー」グッ

果南「!」ゾワッ





ーー パァァァァァァン ーー




219 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 21:20:40.61 ID:VPWjuDzOO
「ずら!?」
「あ、あれ!? ボールは……?」



曜「行け!」



「打ったの!?」
「見えない、打球…………曜!」



果南「…………確かに、速いね。でも……」

果南「ーーーーっ」ジーッ



果南「見えた!!」ダッ



「えぇ!? 見えたって!?」
「曜の高速のショット……果南には見えてるみたいね」

曜「…………」

果南「すごいショットだね。けど、もう捉えたよ!!」グッ




果南「はあっ!!」ブンッ



ーー スカッ ーー




果南「……え?」


220 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 21:28:09.32 ID:VPWjuDzOO

曜「…………ふぅ」

果南「……今、なにが……? 確かに捉えたはずなのに……?」

曜「…………うん。そうだと思った」

果南「曜ちゃん……?」

曜「っ……果南ちゃんなら、きっと『アレ』も見えるんだろうなって」

曜「でも、返せないよ」

曜「そういうショットだから」

果南「…………曜ちゃん」

曜「……『今度こそ』倒すよ」




曜「『音速弾』」ソニックブリッド

曜「たった今完成した私の『必殺技』で!!」




『曜 15 - 15 果南』
221 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 21:39:14.18 ID:VPWjuDzOO
ーーーーーー



善子「はっや……」



ダイヤ「『音速弾』」

ダイヤ「見たところ、スライスショットでしょうね」

善子「? 確かに、スライスだとバウンド後に滑るから速くは感じるけど……果南さんが空振るほど速くなるのは変でしょ?」

ダイヤ「えぇ。ですから、そのカラクリは恐らく曜さんのスピードにありますわ!」

ダイヤ「相手の打球に対して、走り込み、その跳ね際……ライジングで返す」

ダイヤ「相手が返球モーションに入る前に打つという点では『クイックサーブ』と似ていますが、こちらは相手の打球に対して走り込みながら打つわけですから、相当難しいはずです」

ダイヤ「その上、曜さんの超人的なスピードがあってこそのーー」



千歌「お、おぉぉぉ……」

ダイヤ「って、千歌さん? こういう解説は千歌さんの仕事ではないですの!」

千歌「う、おぉぉぉぅぅぅ」

善子「千歌さん……?」





千歌「曜ちゃんスゴイ!!!!」バンッ




ダイヤ「ぴぎゃっ!?」

善子「!?!?」
222 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 21:45:35.69 ID:VPWjuDzOO
千歌「スゴイよ! すごいすごい!!」

千歌「くうぅぅぅ!! かっこいい!」

千歌「なにあれ!! チカも打ちたい!!」

千歌「うぉぉぉ!!!」



善子「な、なに、これ……?」

ダイヤ「お、恐らくですが、なにかが千歌さんの琴線に触れたのかと」



千歌「だって!」バンッ



ダイヤ「ぴぎゃっ!?」ビクッ

千歌「すごいじゃん!!」

善子「だ、だから、なにがよ?」

千歌「だから! 果南ちゃんに勝てるかもしれないんだよ!!」

善子「ま、まぁ、確かに果南さん強いから、興奮するのもーー」



千歌「そうじゃなくて!!」バンッ



ダイヤ「ぴぎゃっ!?」ビクッ

善子「っ!?」ビクッ

千歌「だって、だよ!!」




千歌「曜ちゃん、初めて勝てるかもしれないんだよ! 果南ちゃんに!」




善子「……え? それってどういうーー?」




ーーーーーー
223 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 21:48:26.85 ID:VPWjuDzOO
ーーーーーー



果南「……返せない打球かぁ」

果南「確かに、スゴイね」

果南「目では追えても、スイングが追いつかない」

果南「うーん? どうしようかなん?」

果南「……フフッ、なんてね」




果南「……さて、面白くなってきた」フフッ




ーーーーーー
224 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/08(木) 21:49:21.90 ID:VPWjuDzOO
本日はここまで。
毎回短くて申し訳ないです。
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 22:40:00.87 ID:4RKG6UUiO
果南さんがまだひとつもテニヌしてなくて不穏
226 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 16:30:53.79 ID:ef3JhLvAO
本日更新予定。
227 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 16:57:51.35 ID:ef3JhLvAO



曜「『音速弾』ッ!!」パァァァァン



果南「っ」ブンッ


ーー スカッ ーー



曜「っし!!」



『曜 30 - 15 果南』
228 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 17:01:22.59 ID:ef3JhLvAO
果南「うーん、流石に速いね」

果南「いい『技』だね、曜ちゃん」

曜「っ、また……」

果南「?」

曜「…………果南ちゃん、余裕そうだね」

果南「んー? そうでもないよ。どうやったら返せるかなって必死になって考えてるからさ」

曜「……どうやったら返せるか、か」

果南「……曜ちゃん?」



曜「返させないよ」

果南「………………そっか」


229 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 17:04:49.33 ID:ef3JhLvAO
果南「さ、次行くよ」ターンターン

曜「…………」スッ



果南「はっ!!」パァァァァン



曜「行くよ!」ダッ

「曜ちゃん、前に!?」
「仕掛ける気ね!」



曜「『音速弾』!!」パァァァァン



果南「レシーブで!?」

果南「っ!」ダッ



果南「やあっ!!」ブンッ


ーー スカッ ーー



曜「よしっ!!」グッ

果南「うーん、参ったなぁ」



『曜 40 - 15 果南』
230 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 17:13:39.24 ID:ef3JhLvAO
果南「……フフッ」ターンターン

曜「……なに?」

果南「いや、曜ちゃん、強くなったなぁって思ってね」スッ

曜「な、なんで今ーー」



果南「ふっ!!」シャァァァ



曜「!」

「スライスサーブ!?」



曜「っ、やっ!」パァァァァン



「あ、あれ? 『音速弾』は?」
「さっきみたいに、レシーブで『音速弾』を使わないの?」
「…………ううん。使えない、みたい」



果南「やっぱりね!」シャァァァ



曜「またっ!」

果南「……スライスショットには『音速弾』使えない? そんなところかな?」

曜「そんなことっ!」

果南「まだ未完成……いや、完成したばっかりみたいだし。仕方ないって」



曜「っ! な、なめないで!!」グッ

曜「『音速弾』!!」パァァァァン



ーー ポスッ ーー



曜「なっ!?」

果南「……あーあ、無理するから」



果南「焦っちゃダメだよ、曜ちゃん?」ニコリ



『曜 40 - 30 果南』
231 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 17:26:05.36 ID:ef3JhLvAO
果南「『音速弾』自体がスライス回転のショットなら、同じスライス回転のショットをぶつければいい」ターンターン

果南「走り込みながらのライジングだったら、元々タイミングがシビアだしね」スッ

曜「……果南、ちゃん」




果南「こんな風に!」シャァァァ



曜「また、スライス……っ」

曜「やっ!」パァァァァン

「せっかくの必殺技なのに……ぅゅ」
「……曜」



曜(さすがは果南ちゃんだ……)

曜(せっかく完成させた技をこんなに早く……)

曜(…………)

曜(でも、『音速弾』に意識が行ってる今ならっ!)

曜(次、返ってきたら、ドロップショットをーー)




果南「…………ふっ」フワッ



曜「……………………え?」



ーー トンッ ーー




『曜 40 - 40 果南』
232 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 17:29:23.48 ID:ef3JhLvAO
曜「デュース……追いつかれ……」



果南「ねぇ、曜ちゃん」



曜「っ」ビクッ

果南「確かに『音速弾』は強いよ」

果南「流石に私も返せない」



果南「けど、それ以前に打てなきゃ意味ないよね」ニコリ

曜「うっ」ゾワッ


233 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 17:35:24.59 ID:ef3JhLvAO
ーーーーーー



ダイヤ「千歌さん、さっきの話ですが……」

千歌「え?」

ダイヤ「曜さんが初めて果南さんに勝てるかもと言っていたではないですか」

千歌「あ、あー。はい」

善子「あれってどういうことなの?」

千歌「えっとね……?」

千歌「わたしと果南ちゃんと曜ちゃんが幼馴染なのは知ってますよね?」

ダイヤ「えぇ」

千歌「……勝ったことないんです」

ダイヤ「はい?」




千歌「曜ちゃんは果南ちゃんに一回も勝ったことないんですよ」




ーーーーーー
234 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 17:42:27.07 ID:ef3JhLvAO
ーーーーーー



昔からそうだった。

なんでもできる果南ちゃん。
本当はそうでもないけど、なんでもできるって思われてた私。



本物のヒーローと紛い物のヒーロー。



果南ちゃんと私は、昔からそんな関係だったんだと思う。
勿論、果南ちゃんはそんなつもりはない。
それは私だって分かってる。

けど、私はどこかでずっとそれを感じてた。

幼稚園の頃の鬼ごっこやかくれんぼ。
小学校の頃のサッカーや野球対決。
中学校の水泳。

私は果南ちゃんにひとつも勝てたことはなかった。
ひとつも、一度だってない。
235 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 17:49:10.38 ID:ef3JhLvAO
昔の私は負ける度に、悔しがってたんだ。
なんで勝てないのって。

そして、そんな私を果南ちゃんはいつも慰めてくれた。




「曜ちゃん、そんなに落ち込まないでよ」

「仕方ないって」

「ね? 今回はたまたまだからさ」

「今度は、きっと勝てるよ」



「曜『ちゃん』」



そう言ってくれた。

………………。



同じ幼馴染の千歌ちゃんは呼び捨てで、私のことは『ちゃん』付け。



それは私を慰めるためで。
『ちゃん』がとれることは今の今までなかった。
つまり、それは私が1度も果南ちゃんに勝てなかったって証拠なわけで。




私はそう呼ばれることが、嫌だった。

本当に嫌だったんだよ。




ーーーーーー
236 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 17:52:00.77 ID:ef3JhLvAO




曜「はぁぁぁっ!!!」パァァァァン



ーー ポスッ ーー




『曜 40 - Ad 果南』



曜「はぁっ……はっ……」

果南「大丈夫? 曜ちゃん?」

曜「っ、だいじょうぶ、だよ」モヤッ

果南「……そっか。なら、いいんだけど」
237 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 17:55:58.13 ID:ef3JhLvAO
果南「…………」ターンターン

曜「はぁ……はっ……」

果南「ふっ」スッ



果南「はっ!!」シャァァァ



「スライスっ」
「ヨウシャないわね、果南」

曜「な、なんのっ!」ダッ

「跳ね際に!」
「ってことは、『音速弾』!? 無茶よ!」

果南「フフッ! 曜ちゃんも頑固だね」グッ




曜「ーーふっ」フワッ




「な!?」
「どろっぷしょっとずら!?」
「イヒョーを突いたわね!」

曜「行け!!」




曜(私は、ここで果南ちゃんをーーーー)



238 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 18:01:31.54 ID:ef3JhLvAO




果南「やられたよ、曜ちゃん」スッ




曜「…………え? なんで、一瞬でそこに……?」

果南「別に隠してた訳じゃないよ。ネットまで『1歩』で動けるってことは」

曜「な!?」

果南「それにーー」ググググッ





果南「はぁぁぁっ!!!」バァァァァァン




曜「!?」



ーー カランッ ーー




果南「これを打てることだって隠してた訳じゃない」

果南「少し負担がかかるんだ。このーー」




果南「ーー『波動球』はさ」




『曜 0 - B 果南』
239 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/11(日) 18:02:36.10 ID:ef3JhLvAO
一旦ここまで。
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 18:08:42.96 ID:pMnQ+G2V0

嫉妬は曜ちゃんの代名詞なのか・・・
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 20:28:06.79 ID:e+VzyeltO
縮地に波動球って化け物じゃないっすか果南さん!
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/13(火) 01:13:03.95 ID:w6g4zP4MO
ネタ元は全方向縮地にビッグバンハブバイキングホーン使える化け物だしへーきへーき
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/16(金) 09:46:12.41 ID:UcF0Kb9NO
追いついた!曜ちゃんまだなんかありそう
244 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 08:35:43.19 ID:EoMtEYWhO
本日余裕があれば更新します。
245 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 21:18:18.98 ID:EoMtEYWhO
ーーーーーー



善子「なによ、あれ……?」

ダイヤ「……日本武術にある『縮地法』でしょうか」

千歌「しゅくち……?」

ダイヤ「一瞬で間合いを詰める技術で、決して瞬間移動であるとかそういったものの類いではありません。ですが……」

善子「果南さんが使うと……ってやつ?」

ダイヤ「……はい。それに……」コクッ



善子「……『波動球』」ゴクリ



ダイヤ「曜さんのラケットをいとも容易く弾き飛ばしたあの打球……回転もなにもない、ただ威力だけに特化した技ですわね」

千歌「……ね、善子ちゃんはあんなのがあるって知ってた?」

善子「知るわけないでしょ! 知ってたら、曜さんに言うわよ!」

ダイヤ「……善子さん、曜さんは相手チームですわよ?」

善子「…………あ」

ダイヤ「しかし、あと1ゲームですか……。ケガだけはしないでくださいまし、曜さん」

千歌「…………」

善子「? ……千歌さん?」




千歌「……………………曜ちゃん」ボソッ




ーーーーーー
246 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 21:24:32.86 ID:EoMtEYWhO
『チェンジサービス』
『サービス 曜』



曜「…………」ターンターン

果南「いつでもいいよ」スッ

曜「……っ」ビクッ



曜「や、やっ!!」パァァァァン



果南「ん?」スッ



果南「ほっ!」パァァァァン



曜「……っ、くっ!」ビクッ

曜「ま、まだ!」ダッ



曜「『音速弾』っ」パァァァァン



果南「! おっと!」ブンッ


ーー スカッ ーー



果南「っと、油断してたね。それを見逃さなかったんだね、曜ちゃん」

曜「……そ、そんなんじゃ……」

果南「…………」

曜「つ、次、行くよ」

果南「…………うん」



『曜 15 - 0 果南』
247 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 21:32:59.15 ID:EoMtEYWhO
曜「……ふ、ふぅ」ターンターン

果南「…………」



曜「やっ!!」パァァァァン



果南「今度はーー」スッ



果南「ーー油断しないよ!」シャァァァ



「スライスよ! 曜!」
「よ、ようちゃんっ」

曜「くっ……」グッ



曜「はぁっ!!」パァァァァン



果南「うんうん。そうだよね、それじゃ『音速弾』は打てない」

曜「っ、で、でも、まだ!」

果南「まだ? ……フフッ」

曜「な、なにを笑ってーー」




果南「『波動球』ッ!!」バァァァァァン




曜「!?」ビクッ



ーー バァァァァァン ーー



「ぅゅ、おとが……」
「……果南のShotはここまで……」

果南「…………手」

曜「…………え?」

果南「出さなかったね」



果南「…………いや、出せなかった?」



曜「っ、そ、そんなんじゃないよっ!!」

果南「……なら、いいけどさ」



果南「じゃあ、あと3球だけ付き合ってくれる?」ニコリ



『曜 15 - 15 果南』
248 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 21:40:02.31 ID:EoMtEYWhO
曜「あと、3球だけって……」ターンターン

果南「ん? なにか変?」

曜「…………もしかしたら、取り返すかもしれないよ?」スッ

果南「…………」



曜「はぁぁっ!!!」パァァァァン



果南「……ううん。それはないかな」

曜「え?」




ーー バァァァァァン ーー




曜「っ」ビクッ



『曜 15 - 30 果南』
249 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 21:44:52.91 ID:EoMtEYWhO
果南「うん。やっぱりあと3球……ううん、2球だね」

曜「な、なにを……」

果南「だってさーー」



果南「ーー今の曜ちゃんが勝てるわけないから」



曜「そ、そんなの分からなーー」

果南「分かるよ」

曜「な、なにが分かるの!? まだ試合は終わってない!」

果南「……曜ちゃん、気づいてない?」

曜「は? な、なに……」




果南「さっきからずっと手、震えてる」



曜「っ」ビクッ

曜「っ、な、なんで!? 止まれ、止まれッ!!」グッ

果南「………………」

曜「ま、まだ……私は!!」

果南「……………………」




果南「鞠莉」



「……What's? なに?」

果南「お願いがあるんだけど」

「……うん」




果南「曜ちゃん、棄権させてくれないかな?」



250 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 21:49:50.23 ID:EoMtEYWhO

曜「………………え?」

果南「これ以上はたぶん無駄だから」

曜「っ、ま、待って!! なんでそんなことッ!?」

「………………よ、曜」

曜「! ま、待ってよ! 鞠莉ちゃん! 私はまだ! まだできるから!」

曜「ほら! 手だって、もうーー」



ーー ガクガク ーー



曜「ち、ちがーー違う!」

果南「………………」




果南「………………」クルッ




曜「ま、待って、待ってよ!!」
251 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 22:01:35.09 ID:EoMtEYWhO
ーーーーーー



私と千歌は幼馴染みだ。
そして、千歌と曜ちゃんも幼馴染み。
勿論、私と曜ちゃんもだ。

だから、っていうわけじゃないけど、曜ちゃんともよく遊んでいた。
というよりは、勝負をすることが多かったかもしれない。

鬼ごっこやかくれんぼ。
サッカーや野球。
それに、水泳。


………………。



結果は全勝。

まぁ。
曜ちゃんも昔はすごく負けず嫌いでさ。
悔しかったんだろうね。

その度に、曜ちゃんは膨れてたよ。
というより、拗ねていた。

それで、そんな曜ちゃんを慰めるのは勿論私だった。
機嫌がなおるまで、一緒にいて、次は勝てるよってね。

まぁ、それでかな?
ずっと『ちゃん』付けで呼んでいるのは。



………………。



それと同じだ。
今回のこの試合も。

あとで、たくさん慰めなきゃね。
それが私のーー
252 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 22:03:07.07 ID:EoMtEYWhO
ーーーーーー




千歌「逃げちゃダメだよ、果南ちゃん」




果南「…………え?」




ーーーーーー
253 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 22:06:52.47 ID:EoMtEYWhO
コートを去ろうとした私の前には、千歌の姿があった。



果南「逃げようとした訳じゃないよ」

千歌「…………」



私の声は耳に入っていないみたいで、そのままツカツカと歩いてくる。
表情はよく見えない。
けど、



果南「…………千歌」

千歌「ね、果南ちゃん」




千歌「曜ちゃんのこと怖い?」



254 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 22:13:27.76 ID:EoMtEYWhO
ポツリ。
千歌はそう言った。

……って、怖い?
誰が?
曜ちゃんが?

いやいやいや。
怖いなんて、そんなことあるわけないよ。
かわいい幼馴染みだしね。
そう、千歌と同じ。



千歌「……そうかな」



…………千歌?




千歌「果南ちゃんにとって、きっと千歌と曜ちゃんは違うよ」



違う?
千歌と曜ちゃんが?



千歌「うん」

千歌「だって、試合始まる前も、果南ちゃん変だったもん」

千歌「わざわざ自分が負けるわけない! みたいなこと言って、それに試合の間もずっとそんな風だった」

千歌「……それにさっきのだって」

千歌「ねぇ、果南ちゃん?」




千歌「もしかして、自分にそう言い聞かせてたの?」



255 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 22:18:20.81 ID:EoMtEYWhO
自分に言い聞かせてた、か。



………………。



…………フフッ。
そっか。




果南「確かに、そうかもしれないね」


256 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 22:29:23.39 ID:EoMtEYWhO
昔を思い返せば、曜ちゃんとはいつも勝負していた。

最初は、かわいい幼馴染みにいいところを見せようと思って。
コテンパンにした覚えがある。
…………いや。
今思うと、かなり大人げないことをしたなとは思う。



けれど。
曜ちゃんはまた私と勝負したがった。
こっぴどく負けたのに。
ただ、次も私の勝ち。

その次も。
その次の次も。
その次の次の次も。

ずっと私は曜ちゃんを負かし続けてた。



………………じゃあ、いつだろう?
いつだっただろう。
それが、曜ちゃんとの勝負がピタリと止まったのは。



…………いや。
忘れたふりはやめよう。
もう、むだだから。

中学生の時、学校の行事でやった水泳記録会。
学年代表で競ったあの日。

どうにか2秒差で勝ったあの日が最後の勝負だった。




「やっぱり、負けちゃったか」

「…………うん。今まで、ごめんね、果南ちゃん!」

「もう、こういうの止めにするから!」



それ以来、曜ちゃんとの勝負はなくなって。
私は何故かホッとしたんだ。
257 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 22:33:40.45 ID:EoMtEYWhO

果南「………………そっか。うん、そうだった、ね」

千歌「…………果南ちゃん」

果南「…………あの日はさ、結構ギリギリだったんだ。余裕ぶってたけど、本当はーー」

千歌「果南ちゃん!」

果南「ん?」

千歌「千歌に言っても意味ないよー」

果南「………………フフッ、そうだね」




千歌「じゃ、いってくる!」

果南「うん。私が言えた義理じゃないけど、よろしく頼むよ、千歌」




ーーーーーー
258 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 22:44:55.21 ID:EoMtEYWhO
ーーーーーー



千歌「よーちゃん」

曜「ちか、ちゃん……」

千歌「ね、曜ちゃん?」



千歌「やめる?」



曜「っ」

千歌「この試合、もうやめる?」

曜「……わ、私は……」

千歌「…………」

曜「………………っ」

千歌「…………」

曜「……わ、たしは……」

千歌「……………………」



千歌「ね、よーちゃん」



曜「な、なに……?」

千歌「昔さ、一緒に見てたヒーローのテレビ覚えてる?」

曜「…………日曜日の?」

千歌「うん」

曜「……と、それが、なに?」

千歌「そのなかでさ、ヒーローが強い敵と戦って負けて諦めちゃったの覚えてる?」

曜「…………えっと……?」

千歌「あはは、やっぱり覚えてないよね?」

曜「ご、ごめん」

千歌「……ううん。たぶん、曜ちゃんにとっては些細なことだったんだと思う。けど、千歌にとってはすっっごく印象に残ってるんだ」

曜「……それって?」



千歌「もし、曜ちゃんだったらどうするって」

千歌「諦めないで戦えるって」

千歌「そう聞いたんだ」


259 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 22:55:06.58 ID:EoMtEYWhO
曜「っ、そ、それで……私は……なんて?」

千歌「…………うん」



千歌「絶対諦めない!」

千歌「相手がどんなに強くても戦うんだ!」

千歌「だって、負けたままじゃ悔しいし絶対後悔するもん!」



千歌「だって」

曜「…………っ」

千歌「ね、曜ちゃん? その時と一緒じゃない? このままじゃきっと後悔するよ?」

曜「っ、で、でも……私は……ヒーローじゃない」

千歌「そんなことない」

曜「ち、千歌ちゃん……で、でも、私は違うんだよ。果南ちゃんみたいな本物のヒーローじゃない……」

曜「……ただ少しだけ要領がいいだけの偽物……偽物のヒーローだよ……」

千歌「っ!!」




千歌「そんなことないっ!!」



260 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 23:07:33.24 ID:EoMtEYWhO



千歌「曜ちゃんはヒーローだよ!!」



千歌「千歌がクラスの子から少しでもいじめられたら守ってくれた!」

千歌「飛び込みの大会で見る曜ちゃんはかっこよかった!」

千歌「旅館のお手伝いしてくれる曜ちゃんはきゅーせーしゅだし!」

千歌「人気者な曜ちゃんが幼馴染みってことがすごく嬉しかったの!」

千歌「それに、落ち込んでるときに曜ちゃんはすぐ気づいてくれた!」

千歌「スクールアイドル始めるときだって…………」

千歌「って、もー!! なんかよくわかんなくなってきた!」




千歌「っ、とにかく!!」

千歌「他の誰かは知らないけど!!」

千歌「千歌にとっては、曜ちゃんは正真正銘ヒーローなの!!!」



261 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 23:16:52.92 ID:EoMtEYWhO

千歌「はぁ……はぁっ」

千歌「わかった!?」




目の前で、息を荒くする千歌ちゃんを見てた。

そしたら、なんだろう?
なんだから胸の奥の方がわーっと熱くなってくるのを感じた。

それは、そう。
いつかも感じた感覚だった。
昔は……よく感じてた感覚。



曜「……千歌ちゃん」

千歌「はぁ、はっ……なに!!」

曜「やっぱり私はヒーローじゃないよ」

千歌「っ! まだそんなことーー」




曜「だって、まだ認めてもらってないから」

曜「私のヒーローに」




まだ、認めてもらってない人がいる。
私は、そうだ。

その人に『ちゃん』付けされるのが嫌だった。
だって、対等だって思われたかったから。



私の憧れる人と肩を並べられる、そんな私になりたかったから。




曜「……ねぇ、千歌ちゃん」

千歌「なに? よーちゃん?」

曜「もう一回聞いてくれないかな?」

千歌「…………」




千歌「やめる?」




曜「やめないっ!!」




ーーーーーー
262 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/17(土) 23:20:38.28 ID:EoMtEYWhO
本日はここまで。
曜ちゃんは少年漫画だと主人公になれる逸材だと思います。
更新遅くて申し訳ないです。
更新もあと何回かで終わる予定ですので、もう少しだけお付き合いください。
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/18(日) 19:22:52.98 ID:8Tqzw6SbO

ちかっちが実況だったのはこのためだったんだな
曜ちゃんマジ主人公
264 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/06/25(日) 17:58:47.44 ID:xDPkFbDIO
本日更新予定。
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