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【ダンガンロンパ】辺古山「猫のいる生活」
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38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/08/10(木) 06:54:15.65 ID:HDxCzCIE0
9日午前11時半ごろ、大阪市平野区瓜破東2の市営住宅4階一室で、住人で韓国籍の無職、李洙漢(リ・シュウカン)さん(66)が倒れているのを長女が発見し、119番した。李さんは外傷があり、救急隊員が現場で死亡を確認。大阪府警平野署は事件と自殺の両面で捜査している。捜査関係者によると、李さんは胸などに複数の刺し傷があった。
39 :
◆AZbDPlV/MM
[sage]:2017/08/25(金) 00:01:52.68 ID:CJUYsngr0
保守
>>33
2スレ進行してないと落ち着かない…でも、それは片方が1日で済ませられるくらいの安価スレである場合なんで、完璧に首が絞まってますね…活字嫌いが身の丈にあわないことをしてはいけなかった
エタる気はないですが、
>>1
でも書いてるように、進められる気もしないという…星君視点が行き詰まってる
>>36
>>37
検索かけられるとかメッチャ恥ずかし…
過去に2回トリップ大公開して現在のトリップなんで、全部はでないと思いますが
40 :
◆AZbDPlV/MM
[sage]:2017/09/07(木) 13:00:25.13 ID:AXhxCYg/O
短いですが少し進めます
41 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2017/09/07(木) 13:01:01.84 ID:AXhxCYg/O
辺古山が出ていってから、寝たフリをやめて目を開ける。まず考えたのは、部屋で別れた獄原のことだ。
(用が済んだら戻ると約束しちまったからな…獄原は確実に俺の心配をするだろうな)
(……考えなしに居座るのはマズかったか)
(あいつのことだから、しばらくは俺を探しまわるかもしれねぇな…)
戻ると約束をしたクセに、無責任にそれを破るようなマネをしたことを反省する。
改めて、体を起こして辺古山の部屋を見回す。こざっぱりとしていて、あまり女の部屋という感じではない。
ゴテゴテと飾りたてた部屋より、気持ち的には遥かに過ごし易いか。
(俺が自ら飼い猫生活を選ぶとはな)
俺はもう、学園の外へ出ると決めていたはずだったが…辺古山のヤツがらしくない寂しげな表情をしやがるから、つい同情してして残ることにしちまった。
(らしくねぇな…)
部屋の中とはいえ、自由度の低さは檻の中とそう変わらない。食事と睡眠を繰り返しながら、辺古山の帰りを待つだけの飼い猫…か。だが、ホンモノの檻の中よりマシなのは、間違いねぇか。
新入りが受ける“歓迎”という名の洗礼からはじまって、看守に目をつけられない程度の陰湿な嫌がらせ…避け方を覚えるまでの間は、まさに地獄といってもいい環境だったあの頃と比べれば、なんてことはない。
しかし、なにもすることがないってのも困ったモンだな。ここを出たほうが、やることは多そうだ。ここでは思考を巡らせるくらいしか、することがない。だが、余計なことばかりを考えてしまいそうだ。
先をみようとしても途切れている。ならば後ろを振り返るしかない。しかし、情熱を注いで打ち込んでいたすべてを不意にした愚かしさ──大切なものを自分の手からとり落とした愚かしさ──それらをわざわざ振り返るなんざ、なんともお笑い種だ。
(だが……)
ここに来るまでの間に蘇った、あいつがいて、テニスができさえすれば概ね満たされていた頃のような“生きている”と実感し、高揚したあの感覚──
全てが許された気がした
喜びが全身に溢れた
自分という存在に意味があるように思えた
──それらが嘘のように今は残っていない。
(アレはなんだったんだろうな。名残惜しく感じちまうのは未練か……)
(…………まったく……クールじゃねーな……星 竜馬……)
あんなモノ、忘れてしまった方がいい。
(忘れてはいけないのは、自分の過ちの方だろう?)
(死にたくはねぇ。けど、その日はどんな姿だろうと訪れる。ケジメはつけなきゃならねぇ)
(あいつを不幸にした罰と、テニスで殺人を行使した罪の清算は、死をもって終える)
(忘れるべきは自ら棄てた“未来”への“期待”と“希望”だ)
(……それでいい…それが正解だろう……?)
幸い、今の俺はただの猫だ。猫にテニスは必要ない。余計な期待や希望をもたなくて済む。
“あの頃の星 竜馬はもういない”と、言ってきていたが、結局は過去を気にして、戻りたがっている自分をみつけ、ふいに乾いた自嘲を零す。
(今の俺は辺古山に飼われる、ただの猫だ)
(俺の存在する意味も理由も、それでいい)
(…………猫らしく寝ておくか)
ようやく思考を止める。瞳をとじただけの不完全な闇から、意識が落ちてほんとうの闇へ落ちていく。
42 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2017/09/07(木) 13:01:44.32 ID:AXhxCYg/O
(私が猫を飼う…か)
今、こうしている間にも、自分の部屋で猫が留守番をしているのだろうと考えると、自然と頬が緩んでしまう。
(今頃はもう夢の中かもしれんな)
しかし、浮かれてばかりではダメだ。必要なモノを買い揃えなければならない。放課後にホームセンターに向かわねばな。ペットショップだと、動物たちが私に怯えて騒ぎだしたりしてしまうからな……。
「あ」
(いやまて……放課後に買いに行くまで…餌がないということではないか…。トイレだって…)
今、こうしている間にも、自分の部屋で猫は過ごしている…猫に必要なモノがなにひとつとして備わっていない部屋で、だ。
気分が舞いあがってしまって、なにも考えていなかった! 休んでしまうか?
この学園は、才能テストで結果を出せてさえいれば、出席や授業態度に関して問題はないしな。
(今日は休んでしまおう。坊っちゃんに連絡しておかねば)
スマートフォンを取り出し、見慣れた番号にかける。それほどの時間もかからず、電話はとられた。
九頭龍 『おう、ペコ。朝っぱらから電話してくるたぁ、どうした?』
「申し訳ありません。今日は授業を休もうと思いまして、ご連絡をさしあげました」
九頭龍 『休むって、オメー体調悪ぃのか?!』
「いいえ。むしろ体調はよいぐらいです」
九頭龍 『? んじゃあ、なにか用事か?』
「はい。急なことで申し訳ありません」
九頭龍 『…なんか妙なことじゃねーだろうな?』
「血を見たり、複雑な内容ではありません。ご安心ください」
九頭龍 『そんならまぁ…いいけどよ』
「今日はあなたのお側に着けません。周りにはくれぐれもお気をつけください」
九頭龍 『学園内なら、オメーが心配するような事態はそうそうおきねぇよ。むしろオメーが安心しとけ』
「……ありがとうございます」
「それでは失礼します」
通話を切ると、私は部屋へ戻るために踵を返した。
(制服のまま学園の外に出るのは、さすがに目立ってしまう。いちど着替えてから、ホームセンターへと向かおう)
(あの猫は今頃、夢の中だろうか? 起こさぬようにせねば)
そんなことを考えながら、いつもに比べ足取りも軽く感じながら、自室へと戻った。
43 :
◆AZbDPlV/MM
[sage]:2017/09/07(木) 13:12:30.37 ID:AXhxCYg/O
最初、ホムセンのことが頭になくて
辺古山 「ペットショップへと向かっても、動物を怯えさせてしまう…どうしたものか…」
辺古山 「口の固い者に同行してもらい、私は店前で待機し、同行者に店内での商品選びを頼んでみるか…さて、誰に頼むか…」
辺古山 「罪木ならば問題なさそうだな……ないよな……? 荷物は自分で持つしな」
みたいな感じで罪木ちゃんと買い出しいくのを予定してました。すぐに“ホームセンターあんじゃん。バカ野郎”と気づき、罪木ちゃんの出番が削れてしまいました。
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/08(金) 00:53:02.98 ID:R0g09ELA0
乙。待ってました 無理なさらないように頑張ってください
45 :
◆AZbDPlV/MM
[sage]:2017/09/11(月) 13:08:15.77 ID:Lr3pRybAO
>>44
ありがとうございます!ゆっくり少しずつでも進めていきます!
問題ないとは思いますが、一ヶ月音沙汰なければ
>>1
は死んだと思ってください、ガチで
一ヶ月以内には保守なり続きなり投下しますんで、投下されていればこれは見なかったことにして下さい。
46 :
◆AZbDPlV/MM
[sage]:2017/10/01(日) 12:08:22.73 ID:NjkkXU6g0
保守!
47 :
◆AZbDPlV/MM
[sage]:2017/10/31(火) 11:09:14.54 ID:5Pz8nhoVO
保守!
と、ボツにしたけど残していた、星君がペコちゃんに会いにくと王馬君に言っていた場合のルートを投下しときます。浮かんだセリフだけぱかぱか先に書くと、大体はボツになる。
王馬 「えー? 辺古山ちゃんに用事ってあっやしーんだー」
王馬 「それに、辺古山ちゃんって九頭龍ちゃんの女でしょ?」
王馬 「あっ! もしかして星ちゃん、NTR?! ヤクザ相手に星ちゃんやるぅー!!」
『……』
獄原 「わわわっ!! 王馬君!! ゴン太には単語の意味は解らなかったけど、星君がスゴく怒ってるよ?!!」
王馬 「今の可愛い星ちゃんに怒られたところで怖くな…イッテ!!」
獄原 「わ、わーっ!! 星君、落ち着いて!! 怒ってても人を引っ搔いたらダメだよ!!」
王馬 「うっわ、星ちゃんってこういう野蛮なことするヒト…おっと、今は猫だったねー?」
王馬 「獣だったらしかたないかー。 知性ある行動なんて、とれるわけないもんねー」
『この野郎…言いたいこと言ってつけ上がりやがって…っ!』
獄原 「ストップ! ストップだよ!! 喧嘩はダメだってば!!!」
獄原 「そうだ! こんなときは虫さんをみんなでみて和むのが一番だと思うんだ!」
星・王 「あ」
獄原 「ふたりが仲直りできるように、今からゴン太のへ……」
王馬 「いやあ! 悪かったよ、星ちゃーん! オレってば嘘が過ぎたよねー!!」
王馬 「大好きな星ちゃんをオレが許さないはずないじゃーん!!」
『……俺もついカッとなって熱くなり過ぎちまったみてーだ』
王馬 「鳴き声しか聞こえないけど、きっと通じあってるよね! うんうん! お互い様だね! もうこのことは忘れよう! 仲直りだね!!」
『ああ』
獄原 「ふたりが解りあってくれて良かったよ! もっとふたりが仲良くなれるように、みんなで虫さんを……」
星・王 「!!!」
獄原 「あ、あれっ? ふたり共どうしたの?!」
https://i.imgur.com/Jk76ruy.jpg
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/24(金) 07:43:41.65 ID:IaX+2QmV0
あげ
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/25(土) 00:39:42.99 ID:3u29XNPmo
マターリと待機
50 :
◆AZbDPlV/MM
[sage]:2017/12/29(金) 14:56:47.52 ID:rvvSYjF10
保守
まだまだおまたせしてしまうと思いますが、気長にお待ちいただければと思います。
51 :
◆AZbDPlV/MM
[sage]:2018/02/24(土) 03:15:53.16 ID:boHBJ6q00
保守
誤字脱字とかもそうなのですが、加筆とかもしたい部分もあるので、保守忘れて消えたりした場合、pixivでそれらを修正しつつ続きを書くかもしれません
ペコちゃんと九頭龍君の部分加筆したい…めっちゃしたい
今の運営状況なら早々消えたりはしなさそうではありますが、万が一のための御報告です
52 :
◆AZbDPlV/MM
[sage]:2018/04/01(日) 04:17:43.96 ID:atmKb77u0
保守!
53 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2018/04/27(金) 01:05:50.80 ID:DfuxZ7bv0
ガチンッ
ガチャッ
「!?」
鍵を解錠する音と、扉を開ける音で闇に沈み込んだ意識は浮上し、自然と瞳がひらく。
(……辺古山が出て行って、そう時間は経ってねーはずだが…)
見上げて時計をみれば、HRがはじまる時間だ。
(……忘れものでも取りに帰ったのか?)
顔をあげると、部屋に入ってきた辺古山と目があう。俺をみた辺古山は幸せそうな笑顔で俺の元に駆け寄る。はじめてみる辺古山の満面の笑顔に驚いて思わず固まってしまう。
辺古山 「ああ、よかった! やはり夢ではないのだな…!」
辺古山 「実はこれまでのことは夢で、扉を開けたらお前はいないのではないかと不安だったぞ」
これまで動物に触れたくても触れさせてもらえなかったせいか、触れても逃げない存在が現れたことを、なかなか現実のできごとだと信じきれていないようだ。そんな辺古山に少し同情する。
辺古山 「起きていたのか? それとも起こしてしまったか?」
辺古山 「起こしてしまったのなら、すまない」
体を丸めている俺に申し訳なさそうに謝る辺古山に、意味が伝わるかは解らないが、尻尾を揺らして問題ないことを示す。その動きをみて、辺古山の頬と目元が、これ以上は緩まないだろうというくらいに緩みきる。
(しかたないとはいえ…崩れすぎだな…)
辺古山 「私はだいじなことに気付いたのだ…私がいない間のお前の食事やトイレについてだ」
(……なるほど)
辺古山 「心配になって戻ってきた。今日の授業は出ずに、今からお前のモノを買い揃えてこようと思う」
辺古山はこちらにまで歩み寄り、俺と視線をあわせるように屈む。今日で何度めになるだろうか、頭を撫でられる。長年竹刀を握り続けたことでできたタコの硬さを感じとる。こいつからは何者にも負けてはならないという気概が常にみえる。テニスで常に上をみていた、あの頃の俺を思い出させる。
(チッ…また余計なことを…どうにかなんねーもんかね…)
ㅤどうにも癖になっているようで、気分が悪い。しかし、そこであることにふと気がつく。
(……ちょっと待て……トイレ……?)
俺は失念していた。生物にはつきものの、排泄という生理現象。これから辺古山のペットとして飼われるとなれば、出したモノを見られる挙句にその後始末をさせることになる……。
(なんの面識もない人間なら、多少の羞恥心はあっても、すぐにやりすごせるだろうが…それなりの交流がある人間にその手の世話をされるのはさすがに耐えられねぇぞ…!?)
(クソッ! なんで居座ることにしちまったんだ!!)
自分の覚悟の甘さと短慮さに嫌気がさす。
そんな俺の心境なんて知りもしない辺古山はクローゼットを開けて着替えをはじめていた。
(自我まで猫になっていたら、こんなことで悩みもしなかっただろうに…なんでこう中途半端なんだ!!!!)
そう、人間としても、猫としても、今の俺は半端者だ。改めて覚悟しないとなんねーな。
(でなけりゃ、羞恥心で心が潰れちまう……)
頭がと胃が痛んでいるところに、着替え終えた辺古山が戻ってきて、先ほどと同じように頭を撫でる。
辺古山 「改めていってくるからな」
「……にゃー」
辺古山が部屋を出るときと同じように、しかし、すぐには返してやれないながらも短い返事でもう一度送りだした。
せっかくあいつが俺のために、いろいろと買い揃えてくるってんなら、興味を示すくらいのことはしてやらないとな…。飼い猫ってのも大変だな。まあ、あいつらはそんな殊勝なことは考えちゃいないだろうが…。興味のあるモノと、ないモノへの反応が素直だ。そんなところが可愛いんだがな。
しかし、辺古山にとっては俺がはじめて触れあえる猫なんだ、できる限り落ち込ませないようには努めるか。
(……帰ってくるまでに腹を括っとかねぇと……)
ㅤ買い物はなるべく時間をかけてくれと願った。
54 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2018/04/27(金) 01:07:53.16 ID:DfuxZ7bv0
ㅤ(飼うとなれば、名前をつけてやらねばな)
ㅤㅤホームセンターへ向かう道中、猫の名前を考えることにした。なにかに名前をつけるというのは、はじめてのことだ。故に、自分のネーミングセンスにいまいち自信がもてない。
(どんな名前がいいだろうか?)
(幸い、あいつは賢い。気に入れば返事をしてくれるだろう)
ㅤ“自分の言葉を理解できるだろう”と、招いてまだ初日の猫に、なぜかそんな絶対的な信頼を寄せている。いや、実際に理解しているように思う。
ㅤ(不思議な猫だ)
ㅤ相応しい名前をつけてやりたい。
ㅤ(あいつが気に入り、かつ、似合うような名前……)
ㅤ(…………)
ㅤ(む…難しいな……)
ㅤ猫の名前をあれこれ考えるあまり、前方を見ることをつい怠りがちになりながらも目的地となるホームセンターを目指す。
ㅤふと前を見れば、一匹の茶トラが塀の上で尻尾を垂らし寛いでいる姿をみつける。
ㅤ(猫…!)
ㅤ数分前にはじめて猫に触れられたとあって、猫との接触に自信がついた私は、期待と高揚で暴れる心臓を抑えきれないまま茶トラへと近づいた。
茶トラ 「ニ゛ャ゛ヴヴヴヴッッ!!」
「あ……」
ㅤおそらく私は、ただならぬ殺気を発していたのだろう。威嚇しつつ飛び跳ねながら塀を降り、見えてはいないが音からしてその場を一目散に去ってしまったようだ。
(やはりあいつが特別なのだな……)
ㅤ物悲しさが胸に去来するが、私にはあの猫がいるじゃないかと気持ちを立て直す。
(あいつとの出会いは運命なのかもしれないな)
ㅤ運命などと、らしくないとは思うが、そう感じずにはいられない。あの猫への愛着と、元よりその気だが、だいじにしなければという想いがいっそう湧いてしかたがない。胸がほんのりと熱くなるのが解る。
(あぁ、あいつを撫でたくなってきた…早く買い物を済ませて帰ろう!)
ㅤ急がずとも部屋で待ってくれていると解ってはいても、1秒でも早く帰り、1秒でも長くいっしょに今日を過ごしたいと思ってしまう。坊っちゃんをお護りする道具でなければならない身でありながら、なんと無様なことか。解っている。解ってはいるのだ。しかし口元の綻びを引き締めることも、弾む心を抑え込むことができないまま、私は止めていた歩みを再開した。
55 :
◆AZbDPlV/MM
[sage]:2018/04/27(金) 01:14:50.48 ID:DfuxZ7bv0
少しですが進んだので投下。やっぱり手軽な安価スレもやりながらの方が筆が進むなぁ…
56 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2025/01/13(月) 16:25:40.41 ID:srIrBjX40
お久し振りです。1から誤字脱字、読み難い箇所の修正したモノを投下と、新しく1レスだけ投下します。未だにラスト全く決めていませんが、ゆっくりお待ち頂ければなと思います。
https://imgur.com/a/SJJ3EgQ
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2025/01/13(月) 16:27:28.02 ID:srIrBjX40
辺古山 「これまでは危機感を抱くほどの相手がいなかった。だがこの先、強敵と対峙することになった場合、垂れ流しになっている私の殺気で、居場所を把握され、形成が不利になってしまいかねない」
辺古山 「最近は殺意を抑える訓練もしたほうがよいだろうか、と考えているのだが……どう思う?」
そう語るのは辺古山 ペコという、一風変わった可愛い響きのする名前の女。しかし、名前の響きに反して、辺古山から発せられる気配は、研ぎ澄まされた業物のように鋭い。
その眼光で一度睨めつければ、刃物を喉元スレスレにまで突きつけられているような気分を味わうことだろう。
「理由はそれだけか?」
辺古山が語るソレが、表向きの理由だということを解っている俺は、薄く笑いながら隠している“本心”を意地悪く聞き出そうとする。
辺古山 「け、決して動物に触れたいという不純な動機ではないぞ……!?」
語るに落ちるとはいったモンだ。焦って“本心”がまろびでている。俺が笑うと、辺古山は“しまった”という顔をすると、諦めたように俯いて肩を竦めた。
「ふっ、あんたが動物好きなのは、こっちは承知なんだ。焦って隠すこともないだろ」
辺古山 「うっ……確かにそうだが……」
どれだけの強者でも、機械でもなければ、どこかで人間らしい表情をこぼす瞬間はある。こうして好きなものを意識している内は、辺古山だって全身に武装している殺気や、固い表情が柔和になる。
普段からこうだったら、動物に逃げられることもねぇだろうに。
「だがそうだな……必要もないときに殺気を垂れ流したままというのは良くねぇかもな」
辺古山 「やはりそう思うか? 今までは護るべきお方のために、剣技を磨くことにだけ集中していたが故、気配を殺すことは考えてこなかった」
辺古山 「まさか必要に思う日がくるとも思わなかったが……」
憂うように目を伏せて、辺古山は嘆息する。動物に触れないことを、よほど思い悩んでいるようだ。確かに、こちらは好意があるのに、相手から幾度も怯えられたりしたら、さすがにメンタルを削られちまうか。
「まあ、気配を消す問題が解消できれば、いつかは触らせてくれるヤツが現れるだろうよ」
辺古山 「ああ。いつかこの手にもふもふを……」
苦い表情で歯の隙間から感情の籠った言葉をこぼしながら、血が滲むんじゃねぇかというくらいの力をいれて拳を握る。これじゃあ、猫が逃げちまうのも仕方がない。
俺なんかと違って、辺古山は生きていればまだ先がある。未来がある。俺に何ができるワケではないが、辺古山の願いが成就するよう、応援くらいはしてやろうじゃねぇか。
そう、思っていた。
しかしまさか、この辺古山の願いを、俺自身が叶えてやることになるとは、この時はどうしたって想像もつかなかった。
58 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2025/01/13(月) 16:30:03.80 ID:srIrBjX40
「……」
剣道場にてひとり、正座をして眼を閉じる。
明鏡止水。静寂の中に自分の意識を落とし込み、この場の空気と一体になるよう心を鎮める。
ここまではいつもと変わらない。しかし、この先へ進むためには、私が自然と放ってしまっている殺気も鎮めなければならない。
(気配を消すということが、これほどに難しいモノだったとは……)
(しかしだからこそ、これを極めれば私はより高みへと登りつめられるということ)
(坊っちゃんを確実にお護りできる力にしてみせよう)
自分から発している殺気を、自分の中へと閉じ込めるイメージを描く。なかなかうまくいかないが、これを続けていれば、いずれはモノにできるはずだ。
集中している中、何者かの気配が背後に現れたのを感じる。閉じていた眼を開き、背後の気配へ呼びかける。
「……誰だ」
私の問いに答えた声は
猫「にゃー」
「?!」
予想だにしなかった可愛い声。私は弾かれるように、自分でも驚くほどの速度で振り向いていた。その視線の先には、黒い毛並みの、しかし頭頂部だけ赤茶色という特徴のある猫が立っていた。
「ね、猫……? ま、迷い込んでしまったのか?」
この学園は一般的な学園にくらべ、遥かに広い。故に、迷い込んでここまで来てしまったのかもしれない。迷い猫を外へ帰してやろうと、立ち上がって手を伸ばしながら距離を詰めていくが、その脚を止める。
触れようとすれば、私の殺気に恐れた猫が、またあらぬ方向へ逃げていってしまうかもしれないと危ぶんだ。一度目を閉じ、深呼吸をして感情の昂りを自制をする。しばらくの間を置き、落ち着いたところで目を開け、猫へ語りかける。
「そのままここで待っていてくれないか? お前を外に出してくれる者を連れて……と言ったところで、猫に私の言葉は通じないか……」
詫びしい気持ちを抱えながら、私の代わりにこの猫を外へ逃がしてくれる人間を探そうと、なるべく猫から離れて出口へ向おうとしたのだが
猫「にゃー」
その一声が、私を引き止めているように聞こえ、足をとめてしまう。
薄い灰色の双眸が真っ直ぐ私を見つめている。
(私を……恐れていないのか……?)
私を前にした動物は、私の殺気に怯え、一目散に逃げてしまう。坊っちゃん達の犬も、自分で飼っていた文鳥でさえも、私を受け容れてはくれなかった。だから、動物と触れ合うという夢を半ば諦めていたのだ。だというのに、これはどうだろうか?
いや、もしかしたら、私の動向を伺っているだけで、近づけば逃げてしまうのかもしれない。
59 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2025/01/13(月) 16:30:48.12 ID:srIrBjX40
「…………」
けれども、私は賭けてみたい。この猫が、私に触れることを許してくれるかもしれないと。
再び、中腰になって猫に向かって手を伸ばす。期待と不安で手が震える。口が開いたままになって呼吸が荒くなる。今の私は人にみせられない酷い顔をしていることだろう。しかし、そんなことよりも今、私が優先するべきは、目の前にいる猫に触れられるか触れられないかを、確かめること!!
私の手が近づいていくにも関わらず、黒猫は私の瞳を見つめて逃げようとしない。こんなことは、はじめてのことだ。
もふっ
「ふぉおっ!!」
はじめて触れる生きた猫の毛の柔らかさと艶やかさに、私は喜びと感動で奇妙な声を出してしまう。しかし夢にまでみた、もふもふした動物に触れている! それも気持ちがいいのだ! 撫でる手がとめられないのだ!!
興奮しながら何度も何度も頭から腰の辺りを繰り返し撫で続ける。
猫「にゃー」
(はっ!!)
さすがに撫ですぎてしまったか! 鬱陶しがってなのか、それ以外のなにか不満があったのか、身を引きながら鳴かれてしまった……。
「あ……」
それはそうだ。人間だって、好意をもってもいない相手からの過度な接触はイヤなモノ……猫だって同じだろう……。私は欲望に任せてなんという酷いことをしてしまったのだ……。
「すまない…」
私が謝罪をすると、猫はまだ頭上にある私の掌に鼻先をちょんと押しつけた。
猫のその行為に、私の胸にきゅうっと締めつけるような、衝動的なトキメキが襲いかかってきた。
まるで私の言葉や心の内を理解しているように思えて私は────
私は────
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