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【ダンガンロンパ】辺古山「猫のいる生活」
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1 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2017/03/11(土) 01:49:47.60 ID:XmOu0iY50
猫好きの星君ともふもふ好きのペコちゃんが中心のSSです。
育成計画次元。
※星君が “猫” になっています。そうした要素が苦手な方は閲覧非推奨。
※CP要素はありません。
※視点が星君とペコちゃんでくるくる切り変わります。
※ペコちゃんに思いっきりもふもふしてもらいたいという
>>1
の願望でできています。
※猫好きな星君に猫になってもらおう!という深い理由も意味もなく、ただただ理不尽な理由でできています。
後先考えていないので、続けられるか不安しかない。
ゆっくり進行していきます。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1489164587
2 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2017/03/11(土) 01:51:38.24 ID:XmOu0iY50
辺古山 「殺気を抑えられないということはこの先、強敵と対峙することになった場合、居場所を把握され形成不利となってしまう」
辺古山 「最近は、殺意を抑える訓練もしたほうがよいだろうかと考えている」
辺古山 ペコという、一風変わった可愛い響きの名前の女から発せられる気配は確かに、業物のように研ぎ澄まされた剣先を思わせる。
その気配を眼光に宿して睨めつければ、喉元に刃物をスレスレにまで突きつけられているような気分を味わうだろう。
「理由はそれだけか?」
辺古山 「け、決して動物に触れたいという不純な動機ではないぞ…!?」
「ふっ、お前さんが動物好きなのは承知なんだ。焦って隠すこともないだろ」
辺古山 「うっ…確かにそうだが…」
どれだけの強者でも、感情を捨てていなければ人間らしい表情をみせる。こうして好きなものを意識している内はこいつも、武装している殺気や、緩むことのない表情が柔和になる。
普段からこうだったら、動物に逃げられることもねぇだろうに。
「だがそうだな…必要もないときに殺気を垂れ流したままというのは良くねぇかも知れねぇな」
辺古山 「やはりそう思うか? 今までは護るべきお方のために、剣技を磨くことにだけ集中していたが故、気配を殺すことは考えていなかった」
辺古山 「まさかそれを必要に思う日がくると思わなかった…」
憂うように目を伏せて、辺古山は嘆息する。動物に触れないことにそれほどに思い悩んでいるのか。確かに、こちらは好意があるのに、相手から幾度も怖がられたりしたら、さすがにメンタル削られちまうか。
「お前さんにやる気があるなら、いつかは触らせてくれるヤツが現れるだろうよ」
辺古山 「ああ。いつかこの手にもふもふを…」
苦い表情で、歯の隙間から感情の籠った言葉をこぼしながら血が滲むんじゃねぇかというくらいの力をいれて拳を握る。
俺なんかと違って辺古山には生きていればまだ先がある。未来がある。何ができるワケではないが、辺古山の願いが成就するよう、応援くらいはしてやろうじゃねぇか。
そう思っていた。
しかしまさかこの辺古山の願いを、俺自身が叶えてやることになるとは想像もつかなかった。
3 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2017/03/11(土) 01:53:27.81 ID:XmOu0iY50
「……」
剣道場にてひとり、正座をして眼を閉じる。
止水明鏡。静寂の中に自分の意識を落とし込み、この場の空気と一体になるよう心を鎮める。
ここまではいつもと変わらない。しかし、この先へ進むためには私が自然と放ってしまっている殺気も鎮めなければならない。
(気配を消すということが、これほどに難しいモノだったとは……)
(しかしだからこそ、これを極めれば私はより高みへと登りつめられるということ)
(坊っちゃんを確実にお護りできる力にする)
自分から発されている殺気を、また自分の中へと閉じ込めるイメージを描く。なかなかうまくいかないが、これを続けていれば、いずれはモノにできるはずだ。
何者かの気配が、背後に現れたのを感じる。閉じていた眼を開き、背後の気配へ呼びかける。
「……誰だ」
私の問いに答えた声は
猫「にゃー」
「?!」
予想だにしなかった可愛らしい声に、私は弾かれるように振り向いてしまう。その視線の先には、頭頂部だけ茶色で黒い毛並みの猫がたっていた。
「ね、猫…ま、迷い込んで来たのか?」
この学園は広い。故に迷い込んでここまで来てしまったのかもしれない。その猫を外へ帰してやろうと思い手を伸ばそうとしたのだが、その手をとめる。
触れようとすれば、おそらく私の殺気に恐れた猫が、またあらぬ場所へ逃げていってしまうかもしれない…と。
「そのままここで待っていてくれないか? …と言ったところで、猫に私の言葉は通じないか……」
詫びしい気持ちを抱えながら、私の代わりにこの猫を外へ逃がしてくれる人間を探そうと、なるべく猫から離れて出口へ向おうとしたのだが
猫「にゃー」
その一声が、私を引き止めているように聞こえ、足をとめてしまう。
薄い灰色の双眸が真っ直ぐ私を見つめている。
(私を…恐れていないのか……?)
4 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2017/03/11(土) 01:54:26.12 ID:XmOu0iY50
私を前にした動物は、私の殺気を恐れて一目散に逃げてしまう。坊っちゃん達の犬も、自分で飼っている文鳥でさえも、私を受け容れてくれなかった。
こんなことははじめてだ。もしかしたら、私の動向を伺っているだけで、動いてしまえば逃げてしまうのではないかとも思う。
けれども、私は賭けてみたい。この猫が、私に触れることを許してくれるかもしれないと。
再び、中腰になって猫に向かって手を伸ばす。期待と不安で手が震える。口が開いたままになって呼吸が荒くなる。今の私は人にみせられない酷い顔をしていることだろう。
しかし、そんなことよりも今私が優先するべきは、目の前にいる猫に触れられるか触れられないかを確かめること!!
私の手が近づいていくにも関わらず、黒猫は私の瞳を見つめて逃げようとしない。こんなことは、はじめてのことだ。
もふっ
「ふぉおっ!!」
はじめて触れる生きた猫の毛の柔らかさと艶やかさに、私は喜びと感動で妙な声を出してしまう。
しかし夢にまでみた、もふもふした動物に触れている! なんて気持ちがいいのだ! 撫でる手がとまらん!!
猫「にゃー」
(はっ!!)
さすがに撫ですぎてしまったか! 鬱陶しがってなのかなんなのかは解らないが、身を引きながら鳴かれてしまった…。
「あ…」
人間だって、好意をもっていない相手からの過度の接触はイヤなモノ…猫だって同じだろう…。私はなんということをしてしまったのだ…。
「すまない…」
私が謝罪をすると猫は、まだ頭上にある私の掌に鼻先をちょんと押しつけた。
猫のその行為に、私の胸はきゅうっと締まるような衝動的なトキメキが襲いかかってきた。
まるで私の言葉や心の内を理解しているように思えて私は────
私は────
5 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2017/03/11(土) 01:56:34.59 ID:XmOu0iY50
「……」
俺の1日は陽が登ろうかという時間からはじまる。これは監獄にいたことにより身についた習慣だ。
体を起こそうと身を捩ったが、腹筋に力が入らない。少し浮いたとしても、すぐに背中が後ろに引かれたように戻っちまう。
「?」
体を起こすだけの簡単なことだ。だが、2、3度同じことを繰り返してみるが…
「にゃー (動かねぇ」
「!?」
(今の…にゃーって声はなんだ……?)
(いやいや…聞き間違いだろう…?)
イヤな予感に焦りが生まれる。しかしまさか、俺が“にゃー”なんて口に出すワケがねぇ。自分の馬鹿げた思考に自嘲してから、もういちど言葉を発してみた。
「にゃー」
間違いなく、俺から発された声だった。
(冗談だろ?! どうなってやがる!?)
上体を起こせないならと、体を横向けて起きあがる。それから真っ先に立ちあがろうと脚に力を入れる。
(立てねーことはねぇな…だが、やはり不安定だ)
立っていられたのも数秒間だけで、すぐに上体が前に傾く。そして、確かめるように視線を落として、手をみてみる。
(はっ…)
乾いた笑いが込み上がる。そこにあったのは人間らしさの欠片もねぇ、毛むくじゃらで肉球のついた前足だった。
(まったく…笑えねぇなぁ)
(アンジーじゃねぇが、こいつは神様からの“人間をやめろ”っつーお告げかも知れねぇな)
非現実的な状況にありながら、どこかそれを受けとめて諦めている自分がいる。悪足掻きしなけりゃならない理由が、俺にはないからだ。
俺は冷たい地獄のような監獄の中で、いずれ処刑されるその日をただ待つだけの人間。
自分の人生を自分で捨てる覚悟をきめて、マフィアを潰したんだ。人間としての価値はない。だったら逆にこの先、猫として生きてみるのも悪くねぇかもな。
6 :
◆AZbDPlV/MM
[saga]:2017/03/11(土) 01:57:13.72 ID:XmOu0iY50
(しかし、猫になっちまうとはな…部屋から出られねぇな)
(ずっとここでおとなしくしているつもりはねぇ)
この部屋の扉は内開き。しかもノブは押して引かなきゃならねぇタイプだ。今の姿じゃ、この部屋をひとりで出ることはできねぇだろう。
(連絡なしに休んだとなれば、先公が部屋を訪ねるかも知れねぇが…いつになるかねぇ)
そんなことを考えてから、扉を仰ぐのをやめ、することも限られているため、寝ちまおうとベッドに戻ろうとした時。
ピンポーン
部屋のチャイムが鳴った。時計をみれば6時。大体のヤツは今から起きだすような時間だろう。今起きているようなヤツは体育会系で朝練しているヤツらだろうが…この時間にわざわざ訪ねてくるようなヤツは思いあたらねぇ。
とりあえず、扉を爪で引っ搔いてみることにした。
木製ではない扉を引っ掻けば、爪からイヤな感覚と金切り音が響いた。すると、相手に聴こえたのか? 唐突に扉を叩きはじめた。しかしそれはすぐにやんだ。
(なんだったんだ?)
静かになったところで踵を返してベッドに飛び乗る。猫になっちまったせいなのか、布団が暖かくなってくるとすぐに眠気がさしてきた。
(このまま目を閉じちまえば、気持ちよく眠れそうだな。二度寝なんざ、何年ぶりかね)
忘れてしまおうとしてきた在りし日の自分を、ふと振り返っちまった。このまま戻れないようなら、この学園を卒業した後に、監獄に戻ることもない。そうすればどれだけ楽だろうな。
(しかしそいつぁ、逃げだな。カッコつきやしねぇ)
いろいろと考えている内に、そのまま眠りに落ちそうになったとき、扉からガチャガチャと奇妙な音が聴こえてきた。
(なんだ?)
なかなか鳴りやまない音を不審に思い、ベッドからおりようと体を起こした瞬間、ガチャンと大き音がするのと同時に、聞き覚えのある声と姿が賑やかに部屋へ入ってきた。
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