許嫁「……聞いていない?」 2

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4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/25(土) 21:49:14.22 ID:U1pklzVA0
待ってたぞ
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 21:52:43.23 ID:DoDNxTqgo

許嫁(メイド服)「……」

男(言わされた感があってとても癪である)

男(が……)

男(……)

男「……まあ。その格好。悪く……ないんじゃないか?」

許嫁「えっ?」

男「うん。馬子にも衣装ってところだな」

許嫁「……あ」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 21:55:18.14 ID:DoDNxTqgo

許嫁「……馬子にも衣装、ですって……? そう言ったの……?」

男「え? あ、ああ」

許嫁「……、馬子にも衣装……」

男「? どうした?」

許嫁「……」

男「決して悪い意味で言ったつもりはないんだが――」

許嫁「……っ」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 22:00:01.91 ID:DoDNxTqgo

許嫁「ふっ……ふふふっ」

男「?」

許嫁「ふふっ。ふふ、……ふふふふふ」

男「な、何だよ。急に笑い出して」

許嫁「い、いえ。ごめんなさい。そんなつもりじゃ、なかったんだけど……ふふふ」

男「そこまで、おかしいこと言ったかな、俺?」

許嫁「いいえ? その……そのね? ふふ、あはは!」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 22:03:03.50 ID:DoDNxTqgo

許嫁「あのね。私、私ね? ふふ……何て言うかなって、色々たくさん予想してたの」

許嫁「でも、あなただったらね?」

許嫁「そういう言い方すると思ったの……回りくどい褒め方、すると思ってたの!」

男「……なっ」

許嫁「そしたら本当に。あなたそう言ったから。そんな言い方したから。だから……その、おかしくて。ふふふっ」

男「……ぐ」

許嫁「素直じゃないんだから。あなたって。ふふふ」

男「ど、どっちが素直じゃないんだよっ」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 22:06:57.85 ID:DoDNxTqgo

男(ぐ。ぐぬぬぬぬ。……恥をかかされた気分だぜ)

男(委員長も協力してるとはな……どっちの企みだ?)

男(にしても……)

許嫁「馬子にも衣装だって! あなた……ふふふ!」ファサー

男(コイツ、今までにないくらい……)

男(……)

男「ま、いいけどさ。それ汚すなよな? まだ俺も最後のシフト残ってるんだから」

許嫁「……あら?」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 22:09:35.85 ID:DoDNxTqgo

許嫁「もしかして、このメイド服。あなたのだったの? そうなの。私、知らなかったわ」ブン

男「さきほどから白々しいことをなさいますね、お嬢様。……っと」ペチ

許嫁「文化祭だし、せっかくだから私も何かしようかなって。そうしたら委員長が偶然コレ要らないって」ブンブン

男「要らないってのはちょっとヒドいぞ、委員長……っとと」ペチペチ

許嫁「コレ、あなたのだったなんてね。へー知らなかったわへー」ブンブン

男「……ええい! ぶんぶん腕を回すな! さっきから袖の先がぺちぺち俺に当たってる!」ペチペチ

男(テンションたっかいなあ!!)
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 22:15:41.48 ID:DoDNxTqgo

男(こ、これがお祭りテンションというものか? そんなに文化祭楽しみだったのか?)

許嫁「フフフ。だけど、そうね。言われてみると確かに、あなたのものね?」

男「?」

許嫁「だって、この服。ほんの少しだけど確かに。あなたの優しい匂いがするもの」

男「え……? え……」

男(な、何言い出したのこのコ?!)

男(なんか、すごく……。いや、ものすごく。恥ずかしいことおっしゃっていません?)

男「い、いや。ち、違うんじゃないか? ハハ、何かの間違いだろ――」

許嫁「? そんなことないわ?」
12 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 22:19:14.82 ID:DoDNxTqgo

許嫁「掃除が大好きな、あなたの優しい匂い」

許嫁「私たち、どれだけ一緒に暮らしてきたと思ってるのよ?」

許嫁「あなたが否定しても、私はよく覚えてるもの。この――……」

許嫁「この……」

許嫁「……?」

男「あ、ああっと……」

許嫁「……」

許嫁「……ぁ」

男(ようやく気がついたかな……お祭りテンションってこわい)

許嫁「……い、いえ……わ私……その……」

許嫁「今のはべ、別に、ヘンな意味じゃなくて……その……えっと」
13 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 22:39:17.55 ID:DoDNxTqgo

許嫁「い、今のは……ちょ、ちょっと。その、言い過ぎだった、かしら……」

男「あ、ああ。俺も、そう思うな。言い過ぎだったな」

許嫁「……今のは。無しってことに、しましょう?」

男「……分かった。……そうしよう」

許嫁「……お願い」



男「……その。文化祭が楽しみなのは、分かるが」

許嫁「え?」

男「少し。少しだけ、テンション抑えたほうがいいんじゃないか?」

許嫁「あ……。あ! じ、時間! 時間、もったいないから、もう行くわよ!」ツカツカ
14 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 22:45:09.39 ID:DoDNxTqgo

許嫁(メイド服)「……」ツカツカ

許嫁「……」

許嫁「浮かれすぎ」

許嫁「……」

許嫁「……でも」

許嫁「抑えられないもの、こんな」

許嫁「……」

許嫁「なのに、文化祭?」

許嫁「……」

許嫁「……もー」ツカツカ
15 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 22:57:00.84 ID:DoDNxTqgo

……

文化祭

占い屋

『お・も・て・だ・け』

男「なんだ、このしょーもない店の名前は」

許嫁(メイド服)「? ……うらない。占いなんて興味あったの、あなた?」

男「いいや、俺は全くと言っていいほどないな。だからといって否定するほどでもないが」

許嫁「あら? 珍しく意見が合ったわね? 占いなんて、自分の選択に責任が持てない人がするものだわ」

男「そこまでは言わないぞ……ん?」

「おや旦那ァ? 何か、助けることができますかい」
16 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:00:43.21 ID:DoDNxTqgo

「へへへ。旦那。いいコ……揃ってますぜ。この店」

男「いいコって何だ。ここは占い屋じゃないのか」

「もちろん占い師たちのことでさあ」

男「妙な言い方をするな」

「どうです? 世界数々の占いを取りそろえておりますぜ?」

「花占い・星占い・動物占い。手相・人相・二十面相。タロット・カバラ・点取り占い!」

「占星術から朝の情報番組的占いまで! どうです? 旦那ァ。興味、沸いてきましたね?」

男「へー↓」

「……う。な、何なら占いだけでなく、その他相談・カウンセリングまで受け付けておりますぜ!」

男「相談?」

「ええ。健康の悩みから、人間関係の相談。育児や近所づき合いの話! 保険やローン、資産運用の相談まで、なんでもござれ!」

男「文化祭のこんなところでそんなものを相談するヤツがいたら是非見てみたい」

「もちろん恋愛相談も絶賛受付中ですぜ……いひひひひっ」

許嫁「……」

男(にしても妙な喋り方をする女の子だ)
17 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:03:35.69 ID:DoDNxTqgo

男「悪いが他を当たってくれ。興味ない」

「そんなあ。 RPGのクール系主人公みたいなこと言わないでくだせえよ、ゴムタイな」

「どうです、お連れさんは? 占いなんて?」

許嫁「私も興味ないわね。占いに責任を預けて、自分の行動を決めたくはないわ」

「さ、参考までに、って話でさあ……何も責任とかそういう話じゃなくて……」

許嫁「ごめんなさいね」

「ど、どうでしょう、そうだ! 例えば、お二人の相性占いなんて。特に我々が得意とするところでさ」

許嫁「……」

「古今東西異世界仮想世界。あらゆる占いを収集・研究した我々が独自に開発した、オリジナルな占いなんですがね。信頼度が随分高いと評判でして!」

「この学校の多くのカップルが、この占いを受けて泣いたり笑ったりしております。どうです、お二人さんも?」

男「いや、カップルじゃないからな。俺たちは」

許嫁「……」

男「ん?」

「より親密になるためのアドバイスも完備!! お客様満足度豪快ナンバー1! さ! どうです? そんなにお時間はとらせませんから!」

男「ふふ、悪いな。君の言い回しは面白かった。けど、やっぱり占い興味ないからな。……じゃあ、行くか?」

許嫁「……」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/25(土) 23:06:27.99 ID:UlDbsZP2o
スレ立ておつ
19 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:07:26.16 ID:DoDNxTqgo

『お・も・て・だ・け』

「お待たせいたしました。では、準備が整ったようですので、こちらにお通りください」

男「……。ってあれ!? 何で俺たち入店してるの?」

許嫁「何言ってるのよ。相談してそうすることに決めたじゃない」

男「え、そ、そうだっけ? 占いなんて2人とも当てにしない、って言ってたのに?」

許嫁「そうね、けど。そんなにオススメされるなら、少しくらいなら良いか、ってことに決まったじゃない?」

男「え、本当に?」

許嫁「……いいから行くわよ。もう入っちゃったんだから」ツカツカ

男(あれー?)
20 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:08:06.89 ID:DoDNxTqgo

占いルーム

「……ようこそ、いらっしゃいましたね、悩める子羊たち……」

男「……? あ。君、さっきの妙な言葉遣いの客引きだろ?」

「……何をおっしゃる、うさぎさん……私はしがないいち占い師……」

「……客引きなどでは……ございません……では……こちらにどうぞ……」

男「今度はやたらとタメを作って話すな」
21 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:09:02.40 ID:DoDNxTqgo

「……ではまずこちらに、参考のために……。……お名前と誕生日、血液型をご記入ください……」

男「ええと、名前と誕生日、それから……」カリカリ

許嫁「……」カリカリ

男(俺の誕生日は、とうにすぎてるが。そういや、コイツ誕生日いつなんだろう)チラッ

男(ん!? ち、近いな。もうすぐじゃねえか)

「あ、書いた紙ですけど、……決して私に見せないでくださいね……」

男「え?」

「……こちらは係りのものに渡します……。……私は、見てませんよ……?」

「……見ての通り……係りのものと、私に………連絡手段のようなものはありません……」

男「……」

「……では、今から始めますが……、その前に、まずは……」

男「『……力を見せるために……誕生日を当てます……』なんて言ったら今すぐ出て行くからな」

「えっ! な、なんでそれを……っ。へ、へへへ。旦那ァ、そんなことはしませんぜ?」

男「キャラブレてるぞ」
22 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:14:04.47 ID:DoDNxTqgo

「……では、……本日は相性占いということですが……よろしい……ですね……?」

男「え。相性占い?」

「ええ……そういう……お話でしたが……旦那ァ……違うのでェ……?」

男「そうなの?」

許嫁「いえその……。そうよ」

男「なんでそんなのを」

許嫁「それは……そう。例えばだけど、ここで相性が悪いって結果が出るじゃない?」

許嫁「いえ。私とあなたの相性なんて、悪いって出るのもちろん分かってるわ?」

許嫁「そうしたら、その結果を。家に突きつけたら、あなたとの……この関係を。解消できるかもしれないじゃない?」

男「占い結果一つで解消できたら苦労しておまへんがな」

許嫁「確かに、それは難しいかもしれないけれど、交渉の材料の一つとしてね?」

許嫁「私とあなたが、その……ケッコン……相手には向いてない、ってことで」

男(……最近、より無茶苦茶なこと言うようになってない?)
23 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:25:15.58 ID:DoDNxTqgo

「あ、あのー、……そろそろ、お決まりになりました……かね?」

男「まあ、別にそれでいいか。他にあるわけでもないし。相性占いで頼みます」

「……はい。分かりました……」
24 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:26:43.89 ID:DoDNxTqgo

男「相性が悪い、って結果が出ればいいんだよな?」

許嫁「ええ。そうね、もちろんよ。それが私達にとっては良い結果だわ」

許嫁「というか、その結果が当たり前よ。あなたと私が良い相性なワケがないものね?」

男「だな。そうだよな。出会ったころなんて、衝突してばかりだったし。良いハズがない」

許嫁「ええ、そうね。その通りよ」

男「あれから色々あったとはいえ、未だにこんな感じだ。俺たちの相性が良いなんて、ありえない話だ」

許嫁「……ええ、そうね」

男「おそらく心底悪い相性って出るだろう。水と油以上の悪い関係性」

許嫁「……」

男「史上最悪の相性と出るかも」

許嫁「……」ムス

男「何かムッとしてない?」

許嫁「してない……早く、お願いしますっ」

「は、はい」
25 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:31:49.13 ID:DoDNxTqgo

「……こほん……」

「……では……相性占い……」

「……入ります……」

男(入ります?)

「……」

男「?」

「ハアァ〜〜〜〜〜〜ァァァァ!!!!! 」

男「!?」

「どこいっしょっどこいっしょおおおおっ!!!!!」

男「!? ?? ……?」

「かもっかもっかもっかもっ」

男「????」

「ぐるーぜもなはいもなぴっぽ? もなぴっぽ……もなぴっぽ! へいっ!」

男(……なんだこれ……なんだこれ……)

「はいるがゆおーるなーむねなむがーはいるがゆーるなむよねがー!」

男(……どうしよう……)
26 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:32:20.29 ID:DoDNxTqgo

……

「……終わり……ました……」ゼェゼェ

男(や、やっとか。良かった……どうしていいか分からなかった)

「……それでは最後に……」

男「ま、まだあるの?」

「最後に……この相性占いコンピュータ『2番じゃイヤなんです』に情報を入力して……エンター……」カタカタッターンッ

男「おい。何だったんだよ今のくだりは」

ジージジジジジジジジー

「結果の用紙が出ましたよ。どれどれ……。あ! こ、これは……」

許嫁「ど、どうだったのかしら?」

「その。……良くない……結果でして……」
27 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:34:38.94 ID:DoDNxTqgo

男「ほーん。やっぱり良くなかったか」

許嫁「……っ」

「その……ここまでの結果なんて、私も。今まで見たことがなくて……」

男「そこまで?」

「これをお見せするのは……さすがにちょっと……何というか」

許嫁「ちょ、ちょっと見せてください……」バッ

「あっ……」

許嫁「……」

許嫁「……」

許嫁「…………………………え…………」
28 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:35:25.41 ID:DoDNxTqgo

許嫁「……」

男「どうした? 何て書いてあった?」

許嫁「え? そうね……良くない、結果だったわね……」

男「ほう。なんて?」

許嫁「良くない、結果だったわ」

男「いや、だから何て書いてあったんだ?」

許嫁「……こんなの……誰にも、見せられないわ……」

男「え? おいおい、俺にも見せてくれないの?!」

許嫁「こんなの……こんなの。誰にも……見せられないもの」ゴソゴソ

男「いや、当事者の俺には見せてくれたって」

許嫁「……何よ。あなた占いなんて興味ないって言ってたじゃない? ……っ」

男「それはそう言ったけどさ」

男(? 何かコイツとても……)

許嫁「じゃ、いいじゃない? 見なくても。でしょう……? ちがうの?」

許嫁「……ふふふ?」

男(嬉しそうなんだが)
29 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:36:58.10 ID:DoDNxTqgo

許嫁「こんな、結果なんて……。……あはっ」

男「……良くない結果だったんだよな?」

許嫁「え? う、うん。そう言ってるじゃない……そう言ったわよ?」

男「あーなるほど。そっか。だから、そんなに笑顔……なんだ?」

許嫁「……ん、そ、そうかしら? そんなこと、ないけど? ……ふふ」

男「おい、抑えきれてないぞ」

許嫁「? 何も抑えていることなんてないわよ? ふふふ?」

男(な、何が書いてあったんだあ?)
30 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:37:38.65 ID:DoDNxTqgo

男「あの、良くない……結果だったんですよね?」

「ええ、もちろんでさあ。『良くない結果』ですよ?」

「さきほど、お二人がそうおっしゃってたじゃないですか」

男「?」

「お二人がおっしゃっていた『良い結果』に対する『良くない結果』だとそう申し上げました」

「まあ。『良くない相性』とまではあっしは一言も、言ってませんぜ?」

男「……」
31 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/02/25(土) 23:38:10.11 ID:DoDNxTqgo

「旦那ァ! またいつでもこちらに。どの道からでも、来れるようお待ちしてますぜ」ノシ


男「最後まで怪しい女の子だったな……あんな子学校で初めて見たぜ。ところでさ」

許嫁「? なあに?」

男「結局見せてくれないの? 結果」

許嫁「あら、ゴメンなさい。もうどこかへ行っちゃったわ、紙。どこへ行ったのかしらね?」

男(大事そうにしまったの知ってるわい)

男(……ま、この先いつか見る機会もあるかもな)

男「そうか。なら、いいや。俺は占いなんて当てにしてないし」

許嫁「そう?」

男「?」

許嫁「悪く、ないのかもしれないわね? 占いも。信頼が置ける、とまでは言えないけれど。何かの参考になるかもしれないわ?」

男「……さっきと言ってることが違いません? お嬢様?」
32 : ◆Jiax/7r6DNu8 [sage]:2017/02/25(土) 23:44:53.65 ID:DoDNxTqgo
今日は以上です。
次のスレになりました…が
もし読んでいただいてるならば嬉しいです。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/25(土) 23:50:40.13 ID:0nXi7e4rO
最高!
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/25(土) 23:55:37.78 ID:U1pklzVA0
後輩ちゃんも可愛いのにぃいいいぃ!

許嫁がマジでつよい
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 01:20:44.84 ID:IcBYYtaY0
おつ、次も楽しみにしてる
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 01:27:10.08 ID:/J9VURbA0
モブキャラー
キャラクター濃すぎない?
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 01:28:49.44 ID:4nPSIHO5o
おつです!

今更だけどメイドインヘブンって…
某メイドゲーだよな…
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 01:48:16.08 ID:/J9VURbA0
>>37
ぐぐった
いかんでしょ
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 04:24:58.46 ID:4NFvVZ0P0
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 11:32:05.65 ID:DIGgv53S0
>>37
ジョジョのプッチ神父しか思い浮かばなかったw
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 14:40:54.72 ID:Dg7jRNDD0
占いの呪文からどうしてもグルグルのレイドを思い出した
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 16:04:12.99 ID:RBNysG+3O
許嫁のあなた呼びに所帯染みたなにかを感じすらする
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 02:07:04.12 ID:Wi7kg4eKo
このss終わったと思ってた
まだやってたんだ、うれしい
44 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 20:13:19.33 ID:zGYBvvElo

お化け屋敷

『あくのじゅうじか』

許嫁「? このクラスは何かしら? ふふ。妙な絵なんてあるけれど……」

男「ああ。文化祭の定番、お化け屋敷だな」

許嫁「……え?」

男「ちょっと聞いただけなんだが、随分と評判らしいぞココ」

男「現国の先生呼んで体験してもらったら、割りと本当に泣きだしそうになったって」

許嫁「あの……勇ましくて気高いと自ら誇る先生が?」

男「ああ。だから、途中で止めざるを得なかったとかなんとか、そういう話聞いたぜ」

許嫁「……」

男「どうだ? そういう話聞いたら面白そうじゃないか?」

許嫁「……どう、かしらね」
45 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 20:15:20.19 ID:zGYBvvElo

許嫁「まあ、分からないでもないけど? でも、お化け屋敷なんて、ねえ?」

許嫁「確かに。外装だけでも凄く力入ってるのは分かるけれど……」

男「プロの人にまで意見を伺ったらしい。相当出来が良いって聞いたが」

許嫁「っ。なおさら……」

男「……ん?」

許嫁「……。そもそもがオバケなんて、いないじゃない?」
46 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 20:16:43.67 ID:zGYBvvElo

許嫁「オバケなんて信じるほうが、よっぽど。どうかしてるのじゃないかしら?」

許嫁「まあ、あなたみたいな子供の思考している人は、オバケに興味があるのかもしれないけれど」

許嫁「私はそんなものに興味を抱く精神年齢ではないから」

許嫁「悪いけれど、このクラスの出し物にも興味なんてないわね」

許嫁「まあその……このクラスの努力は伝わった。伝わったわ! ……凄かったわね?」

男「……」

許嫁「じゃあ、次は? どのクラスに行こうかしら?」
47 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 20:20:11.26 ID:zGYBvvElo

男(思い出したが、そういやコイツ)

男(映画に一緒に行ったときも、夏祭りのときも。あからさまにこういうの避けてたな)

男「はっはーん」

許嫁「な、何よ。その薄ら笑い」

男「怖いんだ?」

許嫁「……っ、この私が?」

男「だから、そんなに必死で否定するんだろ?」

許嫁「必死? ……そんなわけないじゃない。あなた、何を言ってるのかしら?」

男「ま、それならそれでいいよ。怖いのに無理してつき合わせるのも悪いしな?」
48 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 20:22:50.37 ID:zGYBvvElo

許嫁「な、何よ。その上から目線の発言」

許嫁「何を言ってるのかしら、あなたは。そんなはずないでしょう」

許嫁「この私が? こんなもの? 怖がるとでも?」

許嫁「私はただ、私には合わないと思ったから、そう言っただけよ。まったく……勘違いしないでほしいわね?」

男「気にすんなよ。誰にだって一つや二つ、苦手なものはあるんだから」

許嫁「だ、だから私は別に、オバケなんてっ」

男「分かった、分かった。そうだな、怖くないよな。…………ふっ」

許嫁「っ……」

男「じゃ、ほかのところに――」

許嫁「……良いでしょう」

男「え?」
49 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 20:24:26.40 ID:zGYBvvElo

許嫁「あなたがそこまで言うのだったら付き合ってあげるわ。ココにね」

男「え」

許嫁「こんなの。こんなの、まるで怖くないって私知ってるし。オバケなんていないし……いないし!」

許嫁「……ええ、良いわ。良いでしょう。付き合ってあげるわよ」

男「あ……」

男(ま、負けず嫌いが発動しよった)

許嫁「ただ、そうね。そこまで言ったのだから。私を満足させられないつまらないものだったら、そのときは責任を取ってもらうわよ」

男「なんだ、責任って」

許嫁「えっと……そうね。だったら……謝罪。そう、無礼を謝罪してもらうわよ?」

男「謝罪? まあ、それくらいだったら別に――」

許嫁「あ、謝罪って言っても、このお化け屋敷のことだけじゃないから」
50 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 20:29:20.89 ID:zGYBvvElo

許嫁「あなたが、今までに私に働いた無礼をすべて。謝ることね」

男「へ?」

許嫁「例えば……そうね」

許嫁「まだ来たばかりで何も分からない私に、親切そうな顔をして昼食代を押し付けたりとか」

許嫁「お風呂場で、私にその……見せ付けようとしたこととか」

許嫁「嫌がってる私を、ムリヤリ強引に看病したこととか」

男「おい、全て言い方がおかしいぞ」

許嫁「それから、それからね」

男「……まだあるの?」

許嫁「たくさんあるわよ。テストのときなんて――」
51 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 20:34:58.94 ID:zGYBvvElo

……

許嫁「そう言えば。射的で一緒にぬいぐるみを取った、なんてこともあったわね? あなた覚えてる? あのコだけど――」

男「何か話逸れてない?」

許嫁「あ……。ま、まあそういうわけだから。そういったこと、すべて謝罪してもらうわよ……皆の前で」

男「……皆の前?」

許嫁「証人としてよ。クラスの皆の前で謝ってもらうわ」

男「おいおい。そんなことしたら俺たちの同棲、ひいては許婚であるということが皆にバレてしまうではないか」

許嫁「あら、そう? でも、特に問題はないわね」

男「え。問題ない……か?」

許嫁「別に誰に知られても、私には特に困ることなんてないけど。……なのに、あなたにはあるって言うのね」

男「い、いや、ないことはないんじゃないか? 色々と、やっぱり、その」

許嫁「……ふん。あなたの器の小ささが露呈したわね」

男(み、皆に知れ渡っても構わないっていうのか? コイツ)

許嫁「まあ良いわ。そこまで嫌がるなら、皆の前で、っていうのは考えてあげなくもないけど。謝罪はしてもらうから」

男(なぜたかがお化け屋敷でこんな話に)
52 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 20:38:43.16 ID:zGYBvvElo

許嫁「じゃあ、そういう訳だから。は、入るわよ」ゴクリ

男「……無理してない?」

許嫁「し、してないわよ。……オバケなんていないのに、無理する必要なんてないわ」

男「……」

許嫁「いないから。いないもの、いない。いないわ……そう、いない。……大丈夫、大丈夫よ」

男「……やっぱり、止めにしない? 謝罪は、まあ……ある程度だが、ちゃんとしよう」

許嫁「何よ、今さら怖気づいたわけ? 私はもう覚悟を決めたわ……い、行くわよ! イザ!!」ダッ

男「あ、お、おい!」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 21:06:14.74 ID:Cy0j7qdA0
いいぞ
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 21:25:21.19 ID:cWKqzJdx0
いいところで
55 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 21:30:32.55 ID:zGYBvvElo

『あくのじゅうじか』

許嫁「……」ソロソロソロソロ

男「お、進路は……っと」

許嫁「……」キョロキョロキョロキョロ

男「こっちか」ツカツカ

許嫁「あ、ちょ、ちょちょ。早い、待っ」

男「おお? この右のヤツ。よく出来てるなあ、コレ?」

許嫁「? みぎ……? っ!? ひぃぃっ」ガッ

男「がっ!?」

許嫁「っ……、……ぅ」

男「……、おい」

許嫁「な、なに? ……今度はど、どっち?」

男「違う。……そんなに腕を力強く掴まれては歩きにくいのだが」

許嫁「あ……」バッ
56 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 21:32:57.41 ID:zGYBvvElo

許嫁「その……これは……その……ちが……」

ドーン

男「うおっ!?」

許嫁「……っはああああぁぁぁぁ」ギュウウウウ

男「くび! くびはやめて! くび締まってるぅ!」

男(怖がってるのは承知してたが……こ、ここまでとは)

男(動転しすぎだろう)

男「……悪いが、首は、止めてくれ」

許嫁「……え? あ……あ! 私……あなたに……」

許嫁「ご、ごめんなさい」パッ

男「いや。じゃあ、先に進むか」

許嫁「え、ええ……」

男「……」スタスタ

許嫁「…………ぅぅ」トボトボ

男(そんな顔するなよ。……ったく)
57 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 21:36:35.94 ID:zGYBvvElo

男「……暗闇ではぐれるのも、困るし」

許嫁「……え?」

男「腕なら別に掴んでいても構わない、かな……まあ……」

許嫁「あ……。う、うん。そうね」

許嫁「はぐれると、悪いものね。暗いし入り組んでるし……。う、うん、分かった。じゃあ」

許嫁「……あ、これって」

許嫁「……」

男「ん? どした?」

許嫁「いえ……で、では……し、失礼します」

男(失礼します?)

許嫁「……ん」ギュ

男「よし、次に進むぞ?」

許嫁「え、あ……、は、はい」ギュウ

男(はい?)
58 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 21:40:16.96 ID:zGYBvvElo

男「……」テクテク

許嫁「……」ソロソロ

男「……」テクテク

許嫁「……ぁ」スルッ

男「……」テ

許嫁「……、ん」ギュ
59 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 21:41:46.75 ID:zGYBvvElo

男(……)

男(……この感じ)

男(気がつかなかったな)

男(こんな風に誰かと歩くのって、いつが最後だっただろうか)

男(……)

男(何かと理由つけて、まとわりついてくるの好きだったものな)

男(小さい頃からずっと……)

男(……)
60 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 21:43:13.77 ID:zGYBvvElo

男「……」テクテク

許嫁「……」ギュウ

男(にしても、コイツ怖がりすぎだろう。耐性全くないのか?)

男(まあ、このお化け屋敷も本当に良く出来てるからな。正直俺も、ここまでの出来とは思わなかったぜ)

許嫁「……思ってたより、ずっと凄い……」ボソ

男「え?」

許嫁「あっ。ち、ちが……! い、今のは――」

男「……ああ。そうだな。俺もそう思う。正直に言えば、思ってたより凄く良かった」

許嫁「え……え?!」
61 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 21:46:23.83 ID:zGYBvvElo

許嫁「そ、そう思うの……? あなたも……?」

男「ああ」

許嫁「へ、へー。い、意外ね?」

男「意外? そうか?」

許嫁「その……。あなたって、こういうのあんまり、……好きじゃないのかなって」

許嫁「だから、そんなこと言うなんて思ってなかったわ。私」

男「? そんな興味なさそうに見えたか?」

許嫁「きょ、興味って。その……うん」ギュ

許嫁「……あなたって、分からないところも、まだまだあるから」

男「ん、そうか。でも、人並みには興味あるぞ?」

許嫁「……そうなの。……だ、だったら」
62 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 21:48:22.04 ID:zGYBvvElo

許嫁「あ、あなたさえ、良ければ。その、たまには……ど、どうかしら?」

男「たまに?」

許嫁「あ、いや。別に、私はどっちでも良いんだけど? その、あなたが、そうしたい、なら、だけど……」

男(何だ、実際体験してみたら、案外楽しかったってことかな。こういうホラー関係)

男「ああ、まあ……。じゃあ機会があればな」

許嫁「き、機会なんて、いつだってあるじゃない。別に……いつだって」

男「つっても、お化け屋敷なんて遊園地くらいしかないだろうしなあ」

許嫁「……。……へっ?」

男「そんなに行く機会なんてないしなあ……あ、ホラー映画とかそういうこともか?」

許嫁「……え」
63 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 21:49:39.60 ID:zGYBvvElo

許嫁「……い、今の。お化け屋敷の話だったの?」

男「? 違ったの?」

許嫁「あ……い、いえ! ち、違わないけど!?」

男「何でそんなに動揺して」

許嫁「ど、動揺なんてしてないわよ?」

男(? お化け屋敷の話じゃなかった? だとすれば、いったい何の――)

許嫁「お、お化け屋敷の話をしてたの! 私も!」

許嫁「たまにはこういうのもいいかなって思ってたわね! 私も! あなた! もー!」ギュウウ

男「っ。おい、強い、掴む力強いって――あ」

ホロロロロロロロロロロロ

許嫁「あわわわわわ!?」ギュウウウ

男「痛あーい!」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 22:00:41.63 ID:Cy0j7qdA0
どう見ても腕組みの話です。本当にありがとうございました。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 22:03:30.41 ID:cWKqzJdx0
ヨロけた拍子にキス位は…
66 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:11:02.74 ID:zGYBvvElo

……

許嫁「ああああああああああ」ギュウ


許嫁「わああああああああああああ」ギュウウ


許嫁「きゃああああああああああああああ」ギュウウウ


許嫁「いやあああああああああああああああああ」ギュウウウウ


男「いたあああああああああああああああああああああ」
67 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:12:59.01 ID:zGYBvvElo

……

許嫁「……う、うぅぅぅぅ」

男(け、結構キテますね。まだ半ばくらいみたいだが、大丈夫か……ん?)

男「お、これは」

許嫁「っ? こ、今度は何……?」ギュウ

男「看板だ。なになに……『ここで、こっちの扉からリタイヤできます』とある」

許嫁「あ……」

男(……ちなみに現国の先生も、ここで『くっ殺せ』と捨て台詞を残して去ったと書いてある)

男(ついで、この先はもっと恐ろしいものが待ち受けている、とも)

男(……)

男「あー、結構。面白かったな?」
68 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:16:19.58 ID:zGYBvvElo

男「まだ少しだけ残ってるみたいだが、ほぼほぼ終わったようなものと考えて良いだろう、うん」

許嫁「え……」

男「この先は蛇足みたいなものだろうし、それに文化祭の時間も限りあるからな?」

許嫁「あ……」

男「確かに面白かった! いやあ堪能したぜ! 思ったより、ずっと凄かったな? ハハハ」

許嫁「……う、うん。そうね。まあ、認めてあげないこともない……かしら」

男「よし。じゃあ、次のクラスに向かうってことで……良いか?」

許嫁「え、ええ。あなたがそうしたいって言うなら、そこまで否定するものでもないから」

男「よっしゃ。じゃあ出るか……っとちょっと狭いな。この途中出口」

スルッ

許嫁「あ……」

許嫁「……」

男「うし。この扉か」グッ

許嫁「ま、待ちなさい」

男「?」

許嫁「あなたね……逃げる気?」

男「へ?」
69 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:17:46.77 ID:zGYBvvElo

許嫁「まだ終わってないわね、このお化け屋敷。それなのに途中で立ち去るなんて、良いのかしら?」

男「え?」

許嫁「私、見たわよ。『この先はもっと恐ろしいものが待ち受けている』って書いてあったわね」

許嫁「なのにあなたは。途中で逃げ出すのね?」

男「え、えぇ!?」

許嫁「怖いんだ? あなた、怖いんでしょう?」

男「そ、それは俺じゃなくて――」

許嫁「だから、そうやって逃げようとするのね」

男「逃げ……? 違う。逃げようなんてしてないぞ」

許嫁「あらそう? じゃあ、続けるべきだわ。そうじゃないかしら?」

男「いや……えぇ……?」

男(きゅ、急にどうしたんだ、コイツ? 情緒不安定か?)

男(あまりにもコイツが怖がりすぎてるから、配慮したつもりだったんだが……)
70 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:20:09.80 ID:zGYBvvElo

許嫁「ここで尻尾を巻いて逃げるのね、あなた。負け犬のように」

男「む……、そこまで言うか。なら続けるぞ? 本当に良いのか?」

許嫁「ええ。さっきから、そう言ってるのよ私」

男(分からんヤツだ。負けず嫌い……か?)

男「分かった。じゃあ行くぞ、後半」

許嫁「ええ。行きましょう。じゃあ……ん」

ギュッ

男「……」

男(さも当然のように腕を組んできたのです)




許嫁「…………………………………………えへへ」ギュウ
71 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:24:01.40 ID:zGYBvvElo

男(しかし、このときの私には想像もできませんでした)

男(まさか、私の腕があんなことになるなんて)


許嫁「っ。っああああ、き、きゃああああああああああ」ギュウウウウ


許嫁「あ、ああ!? こ、こっちも何かいるわよ、あなた!!」ギュウウウウウ


許嫁「あなた、こっちも、いて、ど、どどどどどどうしよう!?」ギュウウウウウウ


許嫁「あ!? こっち! こっちだったら大丈夫みたい! ……あ、あなただけでも……」ギュウウウウウウウ


許嫁「あ、ああ!? だめ! そっちだめ! あなただめ!! 行っちゃだめ!!!」ギュウウウウウウウウ


男(くれてやる……腕、一本……くれてやる……っ)
72 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:26:01.09 ID:zGYBvvElo

……

男(うでいたい)

男(ものすごくうでいたい)

男(だがしかし、それと同じくらい……怖い。正直に言って、怖い)

許嫁「……ぅぅ、ぅぅ、ぅ」ギュウウウウウウウ

男「や、やー。もうそろそろ終わりみたいだな! 良かった、正直に言って、怖かったなー?」

許嫁「ぅぅぅぅぅぅぅ」ギュウウウウウウウ

男(コイツの感情、臨界点突破しそうなのが怖い)

男「ん……お! 良かった、やっと出口だ! ほら、もう終わりだ! 終わりだぞ!」

許嫁「ぅ……ぇ……終わ……り? ぁ……。…………あ、あら……案外――」

男「あ」



くくくケケケケケケケケケケけけけけけけっけけっけ
73 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:27:16.07 ID:zGYBvvElo

許嫁「…………」

男(最後安心したところにね、ズバッとね。さすがですね、心得てらっしゃる)

男(ただ。今は止めてほしかったぜ……)

許嫁「………………う……」

男(あ)

許嫁「ぅ…………ぅう……………」

男「大丈夫、大丈夫だ」

許嫁「っっっっ。ぅぅぅうぅうっうっうっうっうっうっ……ひっ」

男「もう本当に終わりだから。ほら、安心して大丈夫だぞ?」

許嫁「ひっ……ひっ……ひっ……ひっ……ひっ……ひっ……」

男(あ。これ、もう無理な感じだ)
74 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:27:59.96 ID:zGYBvvElo

許嫁「ぅっぅっうっうっうっ、……ぇぇぇぇぇぇぇぇん」

許嫁「うえええぇぇぇぇ……えぐっえぐっひっひっひっくひっく」

男(……しまった……)
75 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:32:45.45 ID:zGYBvvElo

……

屋敷外

許嫁「うぅ……うぅ……」スンスン

男「……ほい」チリ紙

許嫁「……」チーン

男「ほい」チリ紙

許嫁「……」チーン

男「ほい」チリ紙

許嫁「……」チーン
76 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:36:12.48 ID:zGYBvvElo

許嫁「……う、……ぅ」

男(こんなことになるとは)

許嫁「……すん……すん」

男(調子に乗りすぎた、俺)

許嫁「すんすんすん」

男(これからは、もう泣かせないように)
77 : ◆Jiax/7r6DNu8 [saga]:2017/03/04(土) 22:42:42.89 ID:zGYBvvElo

許嫁「……すん……すん……」チーン

男「ごめん、謝る。悪かったよ」

許嫁「……? 何を……?」スンスン

男「いや、お化け屋敷。元を辿れば、俺が無理に――」

許嫁「ああ、あれのこと……?」スンスン

男「え?」

許嫁「……まあ、多少は見られるところも……あったけど……。……すん」

男(すん)

許嫁「……言うほど。大したこと、……なかったわね……?」スンスン

男「……すごいねお前……」

男(腕はまだギュッとしたままであった)
78 : ◆Jiax/7r6DNu8 [sage]:2017/03/04(土) 22:44:23.35 ID:zGYBvvElo
今日は以上です。では
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/04(土) 22:54:48.97 ID:CNZwSzt9O
たまらんなー
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/04(土) 23:10:14.83 ID:Cy0j7qdA0
すごいぜ
そして俺は寝るぜ!
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 23:13:55.64 ID:Cql3vOVm0
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 23:23:11.86 ID:KLQZ6Zwso
おつ

とことん苦いブラックコーヒーでも飲むかー
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 23:41:16.33 ID:887VwwKXo
俺も夜中に女の子を驚かせば抱きついてもらえる?
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/05(日) 00:39:49.03 ID:R/rRK3dE0
やっばいニヤツキが止まんない
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 03:19:10.25 ID:IXe8eZ6r0
あっヤバい

目覚めちゃいけないものに目覚めそう
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 05:25:12.86 ID:YbfjitPA0
可愛いなあ
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 08:51:42.05 ID:VODwq3aKo
やっぱり幼馴染とかなのかな
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 11:52:02.26 ID:SYZnlIqr0
砂糖口から出そう
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 19:20:23.40 ID:IXe8eZ6r0
大丈夫?今夜一人でトイレ行ける?

むしろ、今夜から一人で寝れる?
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/06(月) 02:15:17.91 ID:ptHckWKA0
かわいい

ただそれだけ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/06(月) 02:26:54.65 ID:ptHckWKA0
ただそれだけいいたい

ただただかわいい
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/07(火) 00:42:17.40 ID:Ii8bJMOd0
すんすんすん
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/07(火) 09:08:33.01 ID:rW+q0TwB0
最初から全部呼んだ。めっちゃ良い。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/07(火) 12:17:50.68 ID:wQSMLvxA0
sageろ
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/07(火) 14:38:12.72 ID:pViE9NPx0
やっぱり面白いなー
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/12(日) 01:17:48.59 ID:I1raoABj0
ほんと鬼才だな
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 14:23:28.49 ID:vEq/F2JvO
sageろっつってんだろマヌケ共
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/13(月) 08:11:02.48 ID:A14QpHnK0
マァヌゥケェwwwwwww
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 23:51:56.58 ID:3VUIanRb0
いや普通に更新きたと勘違いするからsageてくれ
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 00:09:23.07 ID:ejmzJt8lo
>>99
そんな勘違いするのお前だけだからな?
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 00:35:32.54 ID:YSuIYtNPO
sage厨ってどうしてそんなに余裕無いの?
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 00:41:13.11 ID:mgQ/j/aA0
「マナー守らない俺カッケー」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 00:47:08.97 ID:JQvgO+lFo
>>101
ルールに固執するアスペだから
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