【安価】世莉架「安価でタクを楽しませちゃうよ」【CHAOS;CHILD】

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302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 01:11:11.14 ID:Wmk/ZlWL0
神成「最初は目を疑ったが、どう考えても科学的には君以外ありえないのだそうだ」

神成「母親のDNAについては未だわからずじまいだ。一致するデータが見つかっていなくてな」

神成「だが君は違った。宮代君は渋谷地震の際になくなった両親の身元特定のために警察にDNA情報を登録していたんだ」

神成「そして、その情報と胎児のものが重なったということなんだ」

拓留「……」

拓留(僕に……子どもだって? そんなバカな)

拓留「ありえませんよ。僕は誰かと子どもをもうけたりしてません」

神成「そういうと思っていたよ。だから我々も理解できないんだ」

神成「いるはずのない君の子どもが実際に存在していた。ということになる」

神成「僕としても、どうしたらいいのか……」

拓留(子作りをしていないのに生み出すなんて不可能だ。生物学的にも)

拓留(そう、原因なしに結果は存在しないから)

拓留(もし神成さんたちが調べた結果が事実なら、必ず原因があるはずだ)

拓留(考えろ……宮代拓留)

神成「今日君に伝えたかったのはこの件だけだ。あまり思い出させても辛いだろうし、僕は帰るとするよ」

拓留(できるはずのない赤ん坊を生み出す……。くそっ、想像つかないぞそんなこと!)

拓留(いくら思い描いたって――)


拓留(――!)


拓留「神成さん!!」

神成「お、ああ、宮代君か。どうしたんだい」

拓留「すみません、久野里さんに会わせてください!」
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 01:14:14.69 ID:7ArEh62/o
ハッ!?
これはもしやおっけいさんによる拓留眠姦という可能性……!
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 01:21:56.69 ID:Wmk/ZlWL0
〜フリージア〜

拓留(ふたたび神成さんに車を出してもらってここにきた)

拓留(ある仮説を検証するために)

拓留(それにはどうしても久野里さんの頭脳が必要なんだ)

久野里「どうした、お前から私を訪ねてくるなんてな」

拓留「ええ、久野里さんに検証してもらいたいことがあるんです」

久野里「ほう……なかなか面白い提案じゃないか。ここ最近身の回りで事件が起こっているというのに、頭は錯乱せずにいるみたいだな」

拓留「おかげさまで」

拓留「検証してもらう前に、一つ導入なんですが、先日青葉医院の――佐久間恒が殺害された事件をご存知ですか」

久野里「ああ、知っている。渋谷における情報を欠かすわけにはいかないのでな」

久野里「ましてやあれほどの猟奇的な事件であれば、私にとって知らないでいろと言うほうが難しい」

拓留「それなら話は早いです。その事件において、佐久間の遺体には第三者の胎児が入れられていたのですが」

拓留「その胎児についてDNAをもとに調査したところ、父親は特定できたそうなんです」

久野里「ほう、そうなのか。それほどの警察の内部情報はまだ入っていないな。もっとも、時間の問題だろうが」

拓留(神成さんは真っ先に僕に教えてくれたというわけか)

拓留「それで、その胎児の父親なのですが」

拓留「それが僕だったんです」

久野里「……それは冗談か?」

拓留「真実です。さっき神成さんに教えてもらったんですよ」

久野里「……」

久野里「わかった、それについては信じよう」

拓留「ありがとうございます」

久野里「お前がいつのまにか女と子作りをしていたとはな、意外というかなんというか」

拓留「それに関してもおいおいわかります。それで、ここからが本題なんですが」



拓留「胎児をリアルブートすることは可能ですか?」

305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 01:27:06.73 ID:Wmk/ZlWL0
ちょっと寝ぼけてて設定が頭から抜けてた。

世界は再構成されているので、

>>302

神成「だが君は違った。宮代君は渋谷地震の際になくなった両親の身元特定のために警察にDNA情報を登録していたんだ」



神成「だが君は違った。宮代君はかつて殺害された両親の身元特定のために警察にDNA情報を登録していたんだ」

に変更でお願いします。
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 01:31:22.94 ID:7ArEh62/o
おk
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/13(木) 19:25:33.88 ID:hP8h8ZYF0
久野里「胎児をリアルブート、……だと?」

拓留「はい」

久野里「……」

拓留「……」

久野里「つまりこう言いたいわけか」

久野里「先の事件で佐久間の腹に入れられていた胎児は、ギガロマニアックスによる仕業で――」

久野里「――リアルブートされたものが使われた、と」

拓留「……そういうことになります」

久野里「ふむ……」

久野里「結論から言えば、リアルブートするという点においては可能であるといえる」

拓留「!」

久野里「理論上は、ギガロマニアックスは人間をリアルブートすることができる」

久野里「ただし、それを行えば当事者にかなりの負荷がかかることになる。それに、人一人を生み出してしまうほどの周囲共通認識というと」

久野里「そいつは相当心が壊れているといっていいだろうな」

拓留「なるほど。わかりました。とにかく、ギガロマニアックスであれば可能ということですね」

久野里「簡単なことではないがな。まあそういうことになる」

久野里「……で? いきなりそんなことを私に尋ねるということは、事件に関して仮説があるということなのだろう?」

拓留「仮説と言えるほどのものでは……ないですが」

拓留「漠然と考えているのは、ギガロマニアックスとしての能力をもつ何者かが、佐久間恒殺害に関与しているということです」

久野里「まあ、その胎児の父親がお前というんだから、それにお前がそういう関係をどっかの女と持っていないのなら、まあそういうことになるだろうな」

拓留「……。今日はもう帰ります。ありがとうございました」

久野里「そうか。帰り道には気をつけることだな」

拓留「もしかして……心配してくれているんですか?」

久野里「なっ、……そうではない。身の回りで事件が多発しているようだから気になっただけだ」

拓留(そういうのを心配するっていうんじゃないだろうか)

久野里「これは私の勝手な考えだが、どうにもお前は事件に付きまとわれているような気がするな」

拓留「そうですかね?」

久野里「気にするな。私の戯言だ」

久野里「それと、宮代」

拓留「……?」

久野里「尾上は、いったいどうしているんだ?」

拓留「……」






拓留「僕が知りたいくらいですよ」
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/13(木) 19:38:59.49 ID:hP8h8ZYF0
〜青葉寮〜

拓留「ただいま」

…………。

拓留(静か、だな)

拓留(そりゃそうか。父さん――いや、佐久間が死んだんだから)

拓留(乃々は立ち直れるだろうか)

拓留(結衣も、結人も、うきも)

拓留(真相は僕だけが知っている)

拓留(情報強者としてじゃなく、この情報は僕が独占しなければいけない)

拓留(そう思う)

結衣「あ、拓留兄ぃ帰ってたんだ」トテトテ

拓留「結衣、ただいま」

結衣「おかえりなさい。って拓留兄ぃ大丈夫? なんだかとても疲れてるみたい」

拓留「え? あ、ああ。大丈夫だって。いつもこんな感じだろ?」ハハハ

結衣「――違うもん」ボソッ

拓留「?」

結衣「いや、ううん。なんでもない。とにかく拓留兄ぃは疲れてるの! だから休まなきゃダメ」

拓留「いいって、勉強もあるしさ。休まなくても平気だから」

結衣「そんなこといって〜もう、知らないんだから」

拓留「はは、まあ、心配してくれてありがとうな」ナデナデ

結衣「そんなことしたって……ダメだもん//」

拓留「夕飯はもうできてるのか?」

結衣「うん。今日は私が作ったんだ。うきちゃんと一緒にね」

結衣「乃々姉はまだ塞ぎこんでて……ぜんぜん何も食べないの」

拓留「なんだよそれ……まずいじゃないか」

結衣「うん、でも私のいうことに聞く耳持たないんだ」

結衣「結人はね、だいぶ落ち着いてきてるよ。乃々姉より早く回復するなんて、乃々姉も子どもみたい」

拓留「そういってやるなって。佐久間――いや、父さんが死んだのは、みんな悲しいだろ?」

結衣「…………うん」

拓留「まあ、こればかりは時間が解決することを願うしかないだろ。とりあえず夕飯をいただこうかな」

結衣「わかった! 準備するから待っててね」

拓留「ああ」
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/13(木) 19:53:15.88 ID:hP8h8ZYF0
〜拓留の部屋〜

拓留「ふぅ……今日はここまでにするか」

拓留(なんだろう、ここ最近勉強がはかどらない)

拓留(事件のことや尾上のこともあるけど、それ以上に何か、重大なことがあるような気がする)

拓留(何かを忘れてないか? 僕)

拓留(……)

拓留「ここ最近、いろんなことが起きすぎて……」

拓留(突然の世界の再構成)

拓留(結衣の急接近)

拓留(ギガロマニアックスの真相)

拓留(何者かの視線)

拓留(佐久間の所業、と殺害……)

拓留(僕の遺伝子を持つ胎児、妊娠男の模倣)

拓留(これらに共通して関与していることなんてあるのだろうか)

拓留(久野里さん……教えてくださいよ)

拓留(なんてな)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

久野里「これは私の勝手な考えだが、どうにもお前は事件に付きまとわれているような気がするな」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

拓留(事件に付きまとわれている、か)

拓留(情報強者とリア充を自称していた以前の僕なら、きっと飛びついていたんだろうな)

拓留(……)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

久野里「理論上は、ギガロマニアックスは人間をリアルブートすることができる」

久野里「ただし、それを行えば当事者にかなりの負荷がかかることになる。それに、人一人を生み出してしまうほどの周囲共通認識というと」

久野里「そいつは相当心が壊れているといっていいだろうな」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

拓留(胎児のリアルブート――ギガロマニアックスによる所業……)

拓留(碧朋学園に犯人がいるのか? その可能性はあるよな)

拓留(なんたって収容所だから)

拓留(伊藤か? 有村か? 香月か? ……いいや、ありえない。確証があるわけじゃないけど)

拓留(まさか、尾上?)

拓留(尾上なのか?)

拓留(でも僕は尾上と肉体関係はもっていない……)

拓留(いやまて、リアルブートならそういう生物学上の考えはスルーできるじゃないか)

拓留(尾上が僕との子どもをリアルブートして事件で見せしめにすることへのメリットなんてあるのか?)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「タクが全部悪いんだ」<●><●>

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

拓留(ま、まさか、現実にそんなことが?!)

拓留(あれは僕の妄想だったはずだろ!)

拓留(……なにがなんだか、わからない)
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/13(木) 20:53:31.30 ID:hP8h8ZYF0
だれかが拓留の部屋を訪ねる

だれが来た?(青葉寮の住人限定)>311
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 20:55:36.95 ID:MOTaXXFHO
来栖
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/14(金) 06:35:21.09 ID:qAXtXaWdo
なんかもうLCCかと思ったら本編だったレベルのホラー……行くぞ尾上してた頃が懐かしい
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 23:11:56.89 ID:8A1K5Ugh0
何回か
来栖「(セリフ)」
って書いちゃってたけど、前半では
乃々「(セリフ)」
になってるので、乃々で統一することにしました。
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 23:19:32.46 ID:8A1K5Ugh0
コンコン

乃々「拓留? 入っていいかしら」

拓留「ん? あ、ああ、いいよ」

ガチャッ

乃々「……」

拓留「……どうしたんだよ、こんな時間に」

乃々「ご、ごめんなさい、寝るところ、だったわよね」

拓留「まあ、大丈夫だけどさ」

拓留「それよりも、乃々は大丈夫なのか? その……父さんがあんなことになって、結衣はお前がふさぎ込んでるって僕に教えてくれたぞ」

乃々「それについては心配いらないわ。もう、大丈夫だから」

拓留(本当にそうなのかな。泣きはらしたあとが顔に残ってるけど)

拓留「でも何の用もなく僕の部屋に来たりはしないだろ。乃々らしくもない」

乃々「……いいえ、特に理由があってきたわけではないの」

拓留「?」

乃々「あなたの顔が……見たかったから」ボソッ

拓留「何言ってるのかよく聞こえないんだけど……」

乃々「っ、な、なんでもないわ」

拓留(様子がおかしいな)

拓留(しかし、乃々といえばかねてより気になっていたことがある)

拓留(橋田さんとみた資料には、来栖乃々という人間はすでに死んでいると書かれていた)

拓留(顔写真があったから、同姓同名の人間ということはないといえる)

拓留(それに南沢泉理という少女の存在もチラついている)

拓留(もう今聞いてしまうしかないんじゃないか?)
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 23:33:29.92 ID:8A1K5Ugh0
拓留「なあ、乃々」

乃々「な、なに?」

拓留「AH東京総合病院、覚えてるか?」

乃々「っ!? お、覚えているって、そ、そりゃあ有名な病院だもの。知っているわ」

拓留「乃々。僕は知っているか、じゃなくて、覚えているかって聞いたんだ」

乃々「……あなたが何を言っているのか私にはわからないわ」

拓留「説明不足すぎたかも。AH東京総合病院の“地下”って言えばいいか?」

乃々「……」

拓留「乃々。これは父さんも関与していた重大な事実なんだ。どうか本当のことを教えてくれ。知っているなら」

拓留「まず、乃々は“南沢泉理”っていう女の子を知ってるか?」

乃々「――、知っているわ」

乃々「泉理は、私の小学生時代の友達よ」

拓留「どんな人だった?」

乃々「暗くて、運動が苦手で、周囲になじめていない感じだったかしら」

拓留「それでも、乃々はその南沢泉理と仲良くしていたのか」

乃々「そうよ。私たち仲良しだったもの」

乃々「泉理はよく、私みたいになりたいって言ってくれていたわ」

乃々「私はそんな彼女のことが――」

乃々「……」

拓留「も、もういい。わかった」

拓留「それじゃあ話を病院に戻すんだけど、あの病院の地下では6年ほど前まである実験が行われていたらしい」

拓留「それも人体実験。かなり大規模なものだったみたいだ」

拓留(すくなくともこの世界線ではそういう事実が残っている。僕の記憶にはないけど、僕も実験の被験者だったと資料にはあった)

拓留「それで、南沢泉理はその実験の中でもいろんな実験に使われた被験者だったみたいなんだ」

乃々「……」

拓留「もしかしたら、さっき乃々が言った南沢泉理の体の不自由は、そういったところからきているのかもしれない」

拓留「もっとも、乃々は南沢泉理が実験を理由に体を壊していることは知らないはずだ。なぜなら被験者としての位置づけが少し違ったから」

拓留「僕や結衣たち、それに乃々はそれほどショックの大きな実験にはまわされずにいた」

拓留「そうだよな」

乃々「……ええ。もっとも、私たちはみな天涯孤独だったから、世間一般の小学生とはどこか違っていたかもしれないけど」

拓留「そう、かもな」

拓留(そろそろ、だろうか)

拓留「……」

拓留「――単刀直入に聞くよ」


拓留「お前、来栖乃々じゃないな?」
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/14(金) 23:43:30.77 ID:8A1K5Ugh0
乃々「た、く……る?」

乃々「いきなり何を言い出すのよ。私は来栖乃々よ。父さんがあの地下から連れ帰ったあなたと結衣と結人の世話をしてきた来栖乃々よ!」

拓留「そう。僕たちは父さんに連れ出されてここにきた」

拓留「それじゃあさ、乃々――いや、君はどうしてここにきたの?」

乃々「!?」

拓留「僕はこう考えてる。父さんがAH東京総合病院から直接拉致したのは僕と、結衣と、結人の3人だと」

拓留「なぜそう考えるのかというと」


拓留「その時点ですでに来栖乃々はこの世にいないから」


乃々「ッ!」

乃々「はぅっ……ううっ……」ポロポロ

拓留「その代わり、別の人間が今度は自力であの地下を抜け出しているんだ」

拓留「それが南沢泉理、その人だ」

拓留「これは本物の資料をみたから間違いのない情報だよ」

乃々「もぅ……もう言わないで! やめて……ちょう、だい――」

拓留(ごめんな)

拓留(僕は自分の仮説を証明したい)

拓留「南沢泉理には地下の人体実験で実験を行う側の人間にしか解くことの出来ない暗示がかかっていたんだ」

拓留「機密保持のために」

拓留「でもそれを解ける人物を僕は一人知っている」

拓留「ギガロマニアックスがすがりついてくれば飛び上がって喜ぶような、そんなやつを」

拓留「青葉寮で僕たちの親代わりをしてくれていた、そんな人間を」

乃々「ぅぅ……」

拓留「まさか、佐久間と共謀だったなんてな」

拓留「“南沢泉理”」
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/15(土) 00:02:33.50 ID:IURmo9U90
拓留「来栖乃々は何者かによって撲殺されている」

拓留「天涯孤独だった来栖乃々にとって、戸籍ある子どもとして国から目をつけられないように通わされていた学校で見かけた南沢泉理という子は、みていてどこか放っておけない存在だったんだと思う」

拓留「さっき、二人は仲が良かったと言ったけど、それについては僕は信じている」

拓留「南沢泉理の側からすれば、来栖乃々は自分に優しくて、見た目もよくて、輝いている存在に映ったにちがいない」

拓留「でも来栖乃々は南沢泉理が地下の実験の被害者であることを知りはしない」

拓留「地下では、二人の間には隔たりがあるから」

拓留「だから二人が通じるのは、外の世界だけ」

拓留「しかし、もし南沢泉理が少しひねくれていて、こう考えたらどうなるのかと僕は思ったんだ」

拓留「――実は来栖乃々は自分を憐れんでいる、心の中では蔑んでいるのではないか、と」

乃々「っ」

拓留「南沢泉理は君が言ったとおり、明るい子ではなかった。そして、そのような子どもはひねくれた思考をもつようになるといっても過言ではない」

拓留(僕もその一員だけど、な)

拓留「子どもなりにいろいろ考えたんじゃないか? でもついには憎くて憎くて仕方がなくなってもしょうがないかもしれないよな」

拓留「それが、ましてや来栖乃々が同じ地下の実験の被験者だと知れた日には」

拓留「いつも自分より明るくて、可愛くて、実験もたいしたことはされていないのに、その陰で自分はいつも辛い思いをしている」

拓留「そう考えたら苦しくてたまらないかもしれないな」

乃々「……なにが、いいたいのよ……」

拓留「……」

拓留「来栖乃々を殺したのは南沢泉理だ」

乃々「……」

拓留「否定は、しないんだな」

乃々「……しても、仕方がないもの」

拓留「それじゃあ肯定と受け取る」

拓留「南沢泉理は来栖乃々を殺害した後、地下を脱出した」

拓留(もしかしたら、殺人のショックでギガロマニアックスとして覚醒したのかもしれないな)

拓留「ここから先は詳しくはわからないんだけど、南沢泉理は紆余曲折あった末に佐久間の下にたどりついた」

拓留「佐久間にこういわれたんじゃないのか? “人殺しだってことをばらされたくなきゃあ、ちょいとばかし俺の考えに力を貸してくれねぇか”とか」

乃々「……思考盗撮でもしたの?」

拓留「ああ、ごめん」

拓留(この世界じゃ、碧朋に通う人間は覚醒していればまごうことなきギガロマニアックスだから)

拓留「思考誘導で、佐久間と家族同然のようにすごしてこれたんじゃないのか?」

乃々「答えたくないわ」

拓留「そう、か。まあ、なんにせよ、佐久間と共謀して僕たちに家族としての絆をもたせ、いつかそれを壊してギガロマニアックスとしての実験をひそかに進めようとしていたんだろ」

乃々「まあ、そんなところかしら、ね」

拓留「もう隠そうとはしないんだな」

乃々「さっきもいったでしょ。そんなことしても無駄なの」

乃々「もう私は、ダメなのよ。なにをしても」

乃々「この姿も、やめるしかないわね」
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/15(土) 00:08:15.23 ID:IURmo9U90
泉理「……」

拓留「……っ」

泉理「これで満足? これが私の本当のすがた」

泉理「がっかりしたでしょ。貧相な体で、根暗そうな見た目で」

拓留「いや、それは……」

泉理「……」

拓留(乃々……この世界ではこんなにも悲しい運命のなかで生きているのか)

拓留(もしかしたら、再構成される前の世界のほうが、乃々にとっては幸せだったのかもしれないな)

泉理「……フフッ」

拓留「な、なんだよ」

泉理「もう、どうしていいかわからなくって、とたんに笑いがこみ上げてきたわ。それに私の道化っぷりにも」

泉理「本当、私の人生ってなんだったのかしら」

泉理「なにもかもバカみたい――」つディソード

拓留「っ!?」

泉理「さよなら、拓留」

泉理「私は、あなたのことが――」

拓留「よ、よせっ!!!!」



泉理 バタッ



拓留「乃々ッ!!!」



???「死んでないよ」

拓留「……え?」

???「気絶しただけ。私が、気絶させただけ」


拓留「お、お前は……」

拓留「なんで――」




















結衣「それ以上はお口をチャック♪ だよっ」
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/15(土) 07:51:12.88 ID:B3DS+khVo
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/15(土) 10:20:44.82 ID:Jgr+YEl6O
アイエエ!?結衣!?結衣ナンデ!?
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/15(土) 20:03:20.43 ID:IURmo9U90
まだ終わってないです。まだつづきます。
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/21(金) 21:58:46.31 ID:D6W6f47J0
最近忙しいのでもうすこし待ってください(by>>1
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/21(金) 22:42:47.01 ID:TBd9c4FIO
おっけい
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/23(日) 00:30:25.16 ID:zz7XKoDN0
結衣「本当、自殺って無責任だと思わない? 悲劇のヒロインだなんて笑っちゃうよ。ねえ? 拓留兄ぃ」

拓留「結衣……お前、なんで?!」

結衣「それは何に対する“なんで?”なのかな」

拓留「そ、それは……」

拓留(なんだろう……僕は結衣に聞きたいことがあるような気がする)

拓留(突然のことでうまく考えがまとまらないぞ……どうする、僕)

結衣「ふふっ、拓留兄ぃったら慌てちゃって――かわいいなぁ」

結衣「でもそんなとこも……」ゴニョゴニョ

拓留「なんだよ……」

結衣「う、ううん、なんでもないっ」

拓留「乃々の……あ、いや、泉理が死のうとしていたのを止めてくれたのは、感謝するよ」

結衣「別にそんなことで感謝されても私は嬉しくないけど」

結衣「ただこの無責任で自分勝手な女に対してもどかしい気持ちになっただけ」

拓留「女って――たとえ正体がなんであれ姉に対してそんな言い方は」

結衣「知ってるもん」

拓留「え?」

結衣「私、知ってるんだからね」
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/23(日) 00:43:11.62 ID:zz7XKoDN0
結衣「いまここで倒れてるこの女は、劣等感に苛まれたあげくに人を殺して、私たちのことをずっとだまし続けて生きてきたってこと」

拓留「!!」

結衣「かなしいなあ。でも大丈夫。私には拓留兄ぃがいるから」

結衣「“お姉ちゃん”なんていなくたって、何よりも大切なお兄ちゃんがいてくれれば、それで」

拓留「結衣……」

結衣「えへへ、拓留兄ぃは私のこと愛してくれたもんね」

結衣「何度も」

結衣「何度も何度も何度も何度も」

結衣「……」

結衣「私ね、乃々姉の真実しってから心が壊れちゃったみたいで」

結衣「もう誰に頼っていいかわからなくなっちゃったの」

結衣「でもね、ちょうど拓留兄ぃが帰ってきてくれたから」

結衣「私は救われてるんだよ」

結衣「ありがと、拓留兄ぃ」

拓留「あ、ああ……」

拓留(結衣はさっきから何を言っているんだろう。結衣は僕に何を伝えようとしているのか――)

結衣「そういえばさ」

結衣「死んじゃったよね、お父さん」

拓留「っ……ああ、そうだな」

結衣「拓留兄ぃは、悲しくなんてなかったでしょ」

結衣「だってお父さん悪い人だったもんね」

拓留「お前っ、なんでそれを――」

結衣「嘘泣き、結構難しいんだね。悲しそうな顔くらいで終わっちゃった。えへ」

拓留「……」

結衣「私は悲しくもなんともなかったよ」

結衣「もう拓留兄ぃのことしか考えてないから」

結衣「拓留兄ぃ拓留兄ぃ拓留兄ぃ……」

結衣「また、結衣を愛してくれるよね」スルッ

拓留「お前、何脱いで……」

結衣「……」







結衣「私、欲しいなあ」
















結衣「二人目の赤ちゃんが」<●><●>
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/23(日) 00:59:37.25 ID:zz7XKoDN0
拓留「ふ、二人目……」

拓留「二人目って一人目は――」

拓留(――まさか!)

結衣「一人目の子はね、残念ながら死んじゃったんだ」

結衣「だからお父さんにプレゼントしてあげたんだ」

結衣「……」

拓留(佐久間の腹にあった胎児は僕と結衣のこどもだったのか……)

拓留(でもおかしい。確かに僕と結衣との間には肉体関係があったけど)

拓留(まだ数ヶ月くらいしかたっていないぞ)

拓留(すくなくとも産んだってことはないだろう)

拓留(どういうことだ?)

結衣「中学の保健体育で赤ちゃんの作り方を教わって、拓留兄ぃとしてみようと思ったの」

結衣「それでね、実際に何回かしたでしょ」

結衣「そしたら、ときどき体調が悪くなったりして、絶対つわりだなって思った」

結衣「でも誰にも相談できないから、しばらく我慢してた」

結衣「同時に嬉しかったんだけどね。だって拓留兄ぃが私を愛してくれた証拠だから」

結衣「……けど、おかしかったの」

結衣「お腹が大きくならなくて」

結衣「どうしてどうして、って思って。目をつぶってお祈りしてみるとね」

結衣「気づいたら目の前に赤ちゃんがいたんだよ」

結衣「不思議だよね」

拓留「……」

拓留(それは恐らくリアルブートだ)

拓留(結衣はさっき心を壊したと言っていた。恐らくそのときにギガロマニアックスとして覚醒したんだ)

拓留(だから、その胎児も結衣がリアルブートしたものに違いない)

拓留(それと、これは僕の予想だが――)

拓留(結衣の妊娠は、たぶん想像妊娠に過ぎなかったんじゃないだろうか)

拓留(僕に愛して欲しいという強い欲求と、好奇心で)

拓留(それがさらにリアルブートにつながったと、そういうことなのだろうか)

拓留「結衣、聞いてもいいか」

結衣「なあに? 拓留兄ぃ」

拓留「佐久間を殺したのはお前か?」

結衣「うん、だって悪い人だもん。乃々姉だって悪い人。どいつもこいつも――」

拓留「結衣……?」

結衣「お父さんが悪いんだ! だって私たちにうそついてたから! あれ、嘘ついてたのは乃々姉――」

結衣「乃々姉、そうだ、この女だ。こいつが悪いんだよ! 拓留兄ぃ!」

拓留(まずいかもしれない。様子がおかしいぞ)

結衣「うううっ!!!!??」グラッ

拓留「結衣ッ!」

結衣「痛い! 痛いよお、拓留兄ぃ……。痛い……」

結衣「頭が、いたいの……!」

拓留「結衣、しっかりしろ! 結衣!」

結衣「がぁあぁっ、いたい、いたいいたいいたいよぉ!」
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/23(日) 01:01:36.32 ID:zz7XKoDN0
結衣「拓留兄ぃ、ねえ拓留兄ぃ、……」ビクッ

拓留「なんだ、結衣!?」

結衣「拓留兄ぃ、は……私の、こと、――」

結衣 クタッ

拓留「結衣ッ!!!!」
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/23(日) 01:07:58.50 ID:zz7XKoDN0
数日後


拓留(結衣はあのあと救急で病院に搬送された。今は入院している。命に別状はないようだ)

拓留(乃々――いや、泉理はあのあと来栖乃々の姿に戻って、普段どおり結人やうきと接している)

拓留(それでも僕に対してはどこかよそよそしい)

拓留(僕は結局、かつて住んでいたトレーラーハウスに戻っていた)

拓留(すくなくとも今の青葉寮は、僕にとって居心地がいいわけじゃなかったから)

拓留(埃とカビが充満していたトレーラーハウスを一日かけて清掃し、僕はかつてのような暮らしを始めた)


拓留「結衣……」

拓留(結衣はいったいどうしたのだろう)

拓留(真実をかなり晒してくれてはいたが、最後の症状が気になる)

拓留(激しい頭痛に苦しんでいるようだったな……)

拓留「……」

拓留「さて、これからどうしようか」


安価 >>329

とりあえず誰と何をするか
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/23(日) 01:26:23.82 ID:cauZt4vMO
久野里さんと尾上を探す
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/23(日) 12:14:44.03 ID:5oNoM9Wto
明らかに思考誘導かけられてる……
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/11(木) 20:08:59.39 ID:beEAU3k/0
ここ最近忙しくて更新できてませんが、そろそろです(by>>1
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/11(木) 22:15:51.30 ID:Z90q7HwuO
まってる
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 23:37:24.30 ID:6+ofQ8+k0
拓留「そうだ、久野里さんと尾上を探そう」

拓留(はっきりとした確証はない。けど、尾上が真相に関わっていると、なぜかそう思えて仕方がない)

拓留(それに僕ひとりの知恵では無理だ。ここは久野里さんの力を借りよう)

拓留「尾上……」

拓留(世界が再構成されて尾上はどこかへ行ってしまった……)

拓留(久野里さんに話さなければ……すべてを)
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 22:01:46.46 ID:V/dGcdRY0
期待
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/18(日) 23:48:48.90 ID:fNY0htRn0
申し訳ない、ここのところ忙しさが半端ないが、かならず完結させるのでしばしお待ちを……。(by>>1)
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/19(月) 22:12:46.70 ID:DTR78Qppo
まってる
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/09(日) 19:29:48.90 ID:6JCS7XU+0
8月かなあ、更新は、、、
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 22:12:11.16 ID:qk/8AmRpo
つい先ほどsilentsky終わった俺氏
期待して待っとるよ
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/04(金) 15:01:08.72 ID:QT2ZgMyX0
拓留(僕は久野里さんにすべてを話した)

久野里「……」

拓留「その、信じられないとは思いますが」

久野里「いや、私が信じる信じないは今関係ない。事実として起こったことに目を向けるだけだ」

拓留「はい……」

久野里「それで? 尾上を探したいのか」

拓留「はい。僕が平凡な日常――終わりなき日常に戻ると決めたときに世界は再構成され、尾上はどこかへ行ってしまいました」

拓留「僕の保護者は殺され、殺した義理の妹は脳へのショックで入院中です」

拓留「僕はこのまま現状を受け入れるだけで終わりなき日常を生きつづけたいとは思いません」

拓留「かならず、決着をつけたいと、そう思います」

久野里「なるほどな」

久野里(橘結衣の倒れる寸前の挙動――なにかがあるとしか思えないのも事実だ)

久野里「今回の件、私はギガロマニアックスの存在がすべてを掌握していると主張しよう」

久野里「そして、私の研究としてもこの件には決着をつけなければならないと感じた」

久野里「だから宮代、私はお前に協力しよう」

拓留「……ありがとうございます」
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/04(金) 15:05:17.14 ID:QT2ZgMyX0
久野里「まず、記録として“尾上世莉架”が存在しないという事実の意味を考えるべきだろうな」

拓留「僕と新聞部の連中の記憶の中には確かに存在していました」

久野里「それが気がかりだ……。お前が蒼井セナから聴いた記憶のバックアップの仮説が、しいて言えば有力、か」

拓留「ギガロマニアックスの能力としては、僕としてもアリなんじゃないかと思います」

久野里「ふむ――」
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/10(木) 19:39:23.24 ID:roKNiyqJO
追いついた
>>335応援してるぜ
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/22(火) 21:02:31.70 ID:H0g+Cq6po
乙!
続きはまだかな
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/29(火) 15:32:24.11 ID:2suJJMH00
拓留(なにか……、なにか手がかりはないのか!?)

拓留(状況を整理することはそこまで難しいことじゃない。大事なのは、そして難しいのは、そこに埋もれたヒントを見つけ出すことなんだ)

拓留(思い出せ……。一連の流れをもう一度整理しよう)

拓留(来栖乃々の死――南沢泉理、そして僕ら兄弟のルーツ……)

拓留(それを知ったのは、確か――)
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/29(火) 15:33:48.43 ID:2suJJMH00
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
拓留「これは……『実験・調査レポート』」ゴクリ

拓留「ひ、開くぞ……」カチッ

拓留「『第1回レポート。碧朋学園の新入生として多くのギガロマニアックス予備軍の子供たちを向かいいれてから三ヶ月が経過した。

彼らは今のところ、何の変哲もない少年少女のようにみえる。身体能力も学習能力も一般的なそれである』」

拓留「第1回から第7回レポートまでは同じような内容だ……」

拓留「うまくいってなかったのか?」

ダル「そう願うお」

拓留「『第8回レポート。ついに強硬手段を決行した。

進路相談などでチェックした精神的に不安定な生徒数名を地下に連れて行き、精神の崩壊を試みた。

予想通り彼らはディソードを発現し、覚醒した。実験は成功だ。

これからは同様の手段をもって強制的に覚醒させることができると考えられるため、今回覚醒した彼らは廃棄前提として複数の実験を試みた。

感覚の遮断およびブースト。リアルブートの強制。これらを行った結果、覚醒して間もない彼らは老人のような姿へと変貌してしまった。

委員会の想定したカオスチャイルド症候群者に類似している。以降は経過を見守るため、AH東京総合病院のデッドスポットにある部屋に

収容する。』」

拓留「」

ダル「」

拓留「ん? レポートの右下、そういえばすべて同じ署名がされているな……すごく小さいけど何か書いてある」

ダル「あ、ちょいまち。いま解析して拡大するお」


ダル「ええと、署名には――」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


拓留「……そうだ」













拓留「和久井だ」
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/29(火) 15:39:52.33 ID:2suJJMH00
拓留「ギガロマニアックスについていろいろ調べていて……、橋田さんに仕事を依頼して一緒に機密書類を見ていたときだ」

拓留「実験レポートと称された書類には同じ署名があった」

拓留「それが、――それが和久井修一だったんだ」

久野里「……そうか、アイツがか」

拓留「碧朋学園の生徒を使ったギガロマニアックスの覚醒実験――それを担当していたのは和久井だ!」

拓留「そうだ、確か最近のレポートにはこんなことも……!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『第11回レポート。すでに三年生は五分の一が覚醒を終えている。彼らには特別な進学先として

ヴィクトルコンドリア大学のファウンデーションコースを設けた。これで、向こうには留学という形で

サンプルを送ることが出来る。そして、現時点でまだ覚醒していない生徒の中に面白い被験者を見つけた。

第9回レポートにおいて私が報告したとおり、ギガロマニアックスには各々ことなる波動のパターンを

持っており、それが一致することはないと、独自の調査で結論付けた。今では委員会の認証待ちであるが。

さて、件の面白い被験者だが、ありえないことに、各々で異なるはずの波動パターンが一致する二者を発見した。

私の打ち出した仮説では、このようなことは、一方が他方をリアルブートした場合でないと起こりえないといえる。

ギガロマニアックスがギガロマニアックスをリアルブートしたとなれば、これ以上のサンプルはない。この二人が卒業

するまでにはアクションを起こさねばならないだろう』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

拓留「和久井はアクションを起こすと言及していたんです! まさか、一連の流れすべては――」

拓留「――僕たちは手のひらで踊らされていたのか……?」

久野里「ちっ。だとしたら不愉快極まりない話だな」
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/29(火) 15:50:45.31 ID:2suJJMH00
拓留「クソっ! なぜ僕は――なにか、なにかできたかもしれないのに!」

拓留「乃々の正体を暴いて突きつけてる暇なんてなかったんだ!」

拓留「結衣がああなったことも未然に防げたかも知れなかったのか……?!」

拓留「僕は……僕は……」




拓留「そういえばこのネタを発案してくれたのは尾上だったな」

世莉架「えへへ〜そうだよ」

拓留「尾上のおかげでいい記事になりそうだ」

拓留「ありがとうな」

世莉架「そ、そんなお礼なんていいよ/// タクのためだもん」

世莉架「楽しかった?」

拓留「もちろんだ」

世莉架「良かった///」




世莉架「タクを楽しませることが、私の存在意義――」

世莉架「――それ以外には、なにもないの」




拓留「うっ、うぅっ……」ポロポロ

拓留(そうだよ、はじめからわかってたことじゃないか)

拓留(尾上が――世莉架が何よりも、僕にとっては大切で)

拓留(世界が再構成されたとき――それは僕が尾上を見限ったときなんじゃないか?)

拓留(すくなくともそう観測されたはずだ)

拓留「ぉっ、……おのぇぇ」


ギュッ


拓留「っ?!」

久野里「らしくないことをするからだ」

久野里「お前は、情報強者でリア充なんだろ?」

久野里「なのに平凡な生徒に戻るって、それ自体おかしな話だ」

久野里「まだ勝機はあるはずだ。科学でも、取り返しのつかないようにみえることはアプローチのしがいがあるってものなのだぞ」

久野里「尾上を、みつけよう」

久野里「お前だって決着をつけずにはいられないだろう?」

拓留「くの、さと、さん……」
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/29(火) 15:55:21.99 ID:2suJJMH00
拓留「……ありがとうございます」

拓留「決着を、つけましょう」

拓留「この世界は間違っている」

拓留「不合理でも尾上世莉架と過ごす世界を取り戻します……!」

久野里「ああ、それでこそ、だ」

拓留「はい」























拓留「ところで久野里さん」

久野里「ん? なんだ?」











































拓留「久野里さんは包容力のある人なんですね」ムギュ

久野里「」
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/29(火) 15:57:49.56 ID:2suJJMH00
拓留「知っていますか久野里さん」

久野里「なにがだ」

拓留「ビンタって最悪鼓膜が破れるそうですよ」

久野里「私をナメているのか? それぐらい知っている」

拓留「まだ痛いんだけど……」ボソッ

久野里「何か言ったか?」ギロッ

拓留「なんでもありません」
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/29(火) 16:03:34.42 ID:2suJJMH00
久野里「こうなった以上、こちらから和久井にアプローチを仕掛けるのが賢明かと思う」

拓留「レポートの内容から察するに、研究の拠点になっているのはやはり碧朋学園ですかね」

久野里「そう考えるのが妥当だろうな。だが、一筋縄ではいかないだろう。きっと研究室にたどり着くにはなんらかの細工を突破しなければならないはずだ」

久野里「ノーガードだとは考えにくいしな」

拓留「しかし、細工といってもどのような……」

拓留「あ」

久野里「ああ」

久野里「やつがギガロマニアックスならば、おおよそ答えは見えたようなものだ」
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/29(火) 16:08:09.21 ID:2suJJMH00
久野里「和久井はおそらくギガロマニアックスの能力を駆使して入り口を隠しているはずだ」

久野里「我々のデッドスポットに恐らく突破口がある」

拓留「ディソードを使うしかないか」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/30(水) 09:13:47.81 ID:923qFbnrO
ついに決戦か
……勝ち目が見えねぇ真ギガロマこわい
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/01(日) 22:45:37.15 ID:tUZ6l1UK0
>>1です。しばらくお待ちください。
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 01:10:40.46 ID:1Yyze+RW0
期待
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/22(日) 18:53:16.20 ID:qeaLQv5M0
別にやっている執筆のほうで全然更新できていませんが、物語は大体できているので、完結します。安心してください。
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/22(日) 23:32:42.56 ID:jdnmdIy/0
のんびり待ってるでー
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 11:47:25.65 ID:8PRW6qsGo
まってる
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/14(火) 18:47:26.14 ID:GqF2TV/w0
拓留「僕たちの盲点に、入り口があるはずだ……」つディソード

久野里「……デッドスポット、か」ボソッ

拓留「壁にディソードを這わせてみます。それで感触がなくなったところが、きっと」ツー

拓留「……」

ガコッ

拓留(来たッ)コツコツ

拓留「ここには入り口がある、という妄想をリアルブートできれば」カッ カッ

拓留 スタスタ

拓留(そして、妄想シンクロだ。久野里さんに)

久野里「……入り口が、見えた」
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/14(火) 18:49:59.79 ID:GqF2TV/w0
拓留「ここから降りていきましょう。この先は、何があるかわかりません。正直、ここで引き返したほうが身のためかもしれない。……やっぱり、久野里さんは、帰ってもいいですよ」

久野里「何をバカなことを言っている。ここまできて引き返すわけがないだろう」

久野里「さっさと進め。こうしている間にも和久井が何かよからぬことを推し進めているかもしれないんだぞ」

拓留「はは、そうですね。すみません。じゃあ、行きましょうか」

久野里「ああ」

久野里(大丈夫だ……大丈夫)
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/14(火) 18:57:21.17 ID:GqF2TV/w0
〜地下、研究室〜

拓留「誰も……いない?」

久野里「そのようだな。まあ、いつアイツが戻ってくるかもわからん。とりあえず調べられることは調べよう」

拓留「そうですね」

拓留(はぁ、心臓が張り裂けるかと思った。冷や汗をかいたぞ)

久野里(別に緊張していたわけじゃない……そうだろ)

久野里「今すべてのPCを起動させた。ここからわかる情報を引っ張り出そう」カタカタ

拓留「僕は何をすればいいですか?」

久野里「お前が、か」

久野里「……」

久野里「ディソードを構えておいてくれ。和久井が戻ってきたら穏便に済むとは考えないほうがいいだろう」

拓留「ッ、そうですね、わかりました」
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/14(火) 19:08:50.63 ID:GqF2TV/w0
拓留「……」つディソード

久野里「……」カタカタ

久野里「……これは」

拓留「何か、見つかりました?」

久野里「いいや、そうじゃない。強いて言えば、何も見つからない」

拓留「何……も?」

久野里「脳科学に関する論文やレポートなど、いわゆる研究者のデータベースであることは、同じ立場である私からすればわかる。だが、この中にはそれ以外のものは何もない。ギガロマニアックスに関する記述なんて一ミリもない……」

拓留「そんな……和久井の研究は、この碧朋学園の地下で行われているはずです! 何もないなんて、そんなことがあるの……か?」

久野里「まだ全データの100%をハックしたわけではない。もう少し探してみる」

拓留(僕らは何のためにここに来たんだ?)
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/14(火) 19:37:08.28 ID:KPITE86aO
キター!
ギガロマ相手だともう既に敵の術中とかあり得るから怖い
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/14(火) 20:06:05.85 ID:GqF2TV/w0
久野里「……クソッ! 全然見つからない!!」

拓留「そんな……」

久野里「くっ、これが最後のフォルダだ。これを開けても何もなければ、無駄足だったということになる」

久野里 カタカタ

拓留(頼む……!)
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/14(火) 22:24:21.93 ID:GqF2TV/w0
久野里「……」

拓留「……」

拓留(だ、ダメだったか?!)


久野里「ふっ、ようやく見つかった」

久野里「あったよ、宮代」


久野里「ギガロマニアックス実験の資料だ」
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/14(火) 22:26:18.33 ID:GqF2TV/w0
>>1です。気づけばあと何ヶ月かでスレ立ててから1年経ってしまいますが、どうぞ長い目で見守ってくれればと思います。本業のほうが忙しく、更新が遅いことをご了承いただけるとありがたいです。また、時間を見つけたら更新しますので、お待ちください……。

世莉架はどこへ行ったのか……?
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/14(火) 22:33:43.75 ID:QFvcCGXPo

完結してくれるなら待つよ
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/15(金) 06:41:24.59 ID:BPv/Y2dAO
ほす
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/18(月) 21:15:26.54 ID:ZqNbyB5y0
久野里「これは、第11回レポートと書いてあるな。和久井の署名がある」

久野里「本来異なるはずのギガロマニアックスの波動が一致するケースを発見、だと?」

拓留(それって、この前橋田さんと見たやつ、だよな……)

拓留「久野里さんはそれ、どのように考えますか」

久野里「普通に考えれば、ありえないことだ。ここで和久井が書いているようにな」

久野里「だが、今お前と話しながら、私の脳内にはある仮説が思い浮かんでいる」
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/18(月) 21:18:11.11 ID:ZqNbyB5y0
久野里「前に、橘結衣が胎児をリアルブートしたことがあっただろう?」

拓留「……ありましたね」

拓留(とたんに、結衣の顔が思い浮かぶ)

拓留(佐久間を殺した僕の「妹」は、明らかに異常だった)

拓留(なんらかの外的要因があって、行動を起こしていたような、そんな感じだ)
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/18(月) 21:22:07.52 ID:ZqNbyB5y0
久野里「仮説を述べよう」

久野里「あるギガロマニアックスがいて、そのギガロマニアックスがリアルブートした人間もまたギガロマニアックスであるとき、両者は同じ波動パターンを示す。これは事実だ。証明をしている時間は、今はないがな」

久野里「これをもとに考えると、碧朋学園にいる生徒がリアルブートしたギガロマニアックスがいて、そいつもまた碧朋学園の生徒として生活しているとすれば」

久野里「和久井が発見したのはそれであるとほぼ断定していい」

拓留「リアルブートしたのが人間ってだけでなくて、ギガロマニアックスですか? そんなことがありえるんでしょうか」

久野里「だから仮説だと言っている。だが、碧朋学園のようなギガロマニアックスの収容施設であれば、ありえないと断定するほうが野暮だ」
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/18(月) 21:30:08.19 ID:ZqNbyB5y0
久野里「まずいな……和久井はこの件に関して本腰を入れて研究に着手しようとしているらしい。もし対象が高3生なら、もう和久井が動いていてもおかしくないぞ……!」

拓留「そうでない可能性に、かけるしかないですね」

久野里「くっ……」カタカタ

久野里「これは……11番目のロールシャッハだと?」

久野里「AH東京総合病院の地下で行われていた実験か」

久野里「およそ人道的とはいえない内容、か」

久野里「他には……」

拓留(なんだろう、こののんびりとした感じ)

拓留(なんで、危機感が薄れてきているんだ?)

拓留(確かに僕らはシリアスな状況にあるし、何が待ち受けているかわからないから怖くて仕方ない)

拓留(なのに、妙に落ち着いた気分だ)
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/18(月) 21:34:39.62 ID:ZqNbyB5y0
久野里「うむ……、ターミナルを開いてファイルを解析していくか」

久野里「鍵となる情報を知る最短ルートがわかればいいんだがな」

拓留「鍵……ですか?」

久野里「私たちの目標は、尾上世莉架の探索だろう? まあ、個人的には碧朋学園や委員会の研究を暴くという目標もあるが、尾上の件はそれに内包されている」

久野里「ま、まあ、私を頼ってくれれば、いいってこと、だ」

拓留「ハハ……ありがとうございます」
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/18(月) 21:36:58.65 ID:ZqNbyB5y0
久野里「ん?」カタカタ

久野里(これは、無名のファイルだ……)

久野里(開くべきだろうか)

安価>>373

開く OR 開かない

373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 21:38:20.37 ID:I3zPwLOP0
開く
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 23:01:58.79 ID:+YWItZiio
更新来てた
ファイルの中からは鬼が出るか蛇が出るか……
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/19(火) 19:17:38.37 ID:t+EuIJD90
久野里(開こう)

久野里(このまま放置しても後味が悪いからな……)カタカタッ


『HEKIHO Lab』


久野里「これは……」

拓留「何かあったんですか?」

久野里「無名のファイルがあって、気になったから開いてみたんだ」

久野里「工夫しないと開けられないような特殊な細工がほどこされていてな。まあ、それ自体に手こずることはなかったんだが」

久野里「開いたら新しいウィンドウが出てきた。この碧朋学園があたかも実験施設だと言わんばかりのな」
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/19(火) 19:20:22.82 ID:t+EuIJD90
拓留「ギガロマニアックスの研究、ですよね」

久野里「そう思ってまず間違いないだろう」

久野里(いくつか項目があるな……)

・担当者について
・現段階までの研究報告
・今後の展望

久野里(不思議だ……)

久野里(個人サイトのような見た目で、フェイクやダミーの可能性も示唆できるが……)

安価>>377

どの項目を開く? 一つ選択。
・担当者について
・現段階までの研究報告
・今後の展望
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/19(火) 20:20:51.88 ID:y6S0T3AA0
現段階までの研究報告
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/19(火) 21:48:48.09 ID:t+EuIJD90
久野里「現段階までの研究報告、か」

久野里「最新の情報が見られるというわけだな」

拓留「そこに、和久井の真意が見つかるんですかね」

久野里「……いずれにせよ、いやな予感がするけどな」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/19(火) 22:05:09.40 ID:t+EuIJD90
―研究報告(The Latest)―

まずは近況をお伝えしよう。過去に、AH東京総合病院の地下にあった研究施設でギガロマニアックスの研究にたずさわっていた研究員のうちの一人が死亡した。より詳細に言えば、殺害された。ここまでの内容だけでは報告することはない殺人事件のように思えるが、より詳細をお伝えすれば私の真意を汲み取っていただけるだろう。

まず、その殺害された研究員の死に様は異常である。殺害の方法は恐らく鈍器などによる暴行だが、その後、腹を裂かれて胎児をねじ込まれ縫合されていた。すなわち、猟奇的殺人事件である。このような異常なケースは、実はこの件が初ではなく、2009年のニュージェネレーションの狂気と呼ばれる一連の事件でも同様のパターンが見受けられる。私は、ふと、今回の事件にはギガロマニアックスがかかわっているのではないかという興味本位で、少々調べてみたところ、驚くべき事実を知った。

被害者研究員の腹部に入れられていた胎児からは、微弱ながらギガロマニアックスの波動が検出されたのである。それだけではなく、それと同様の波動パターンが渋谷近辺で検出されたのだ。これは本来ありえないことだ。しかし、次の仮説を認めれば、ありえる。「ギガロマニアックスがギガロマニアックスをリアルブートした場合」という話である。もしこれが本当ならば、第11回レポートに記述した件を裏付けることにもなる。

早急に調査・研究に取り掛かる。次の報告では結果がお伝えできるだろう。
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/19(火) 22:08:55.74 ID:t+EuIJD90
久野里「研究報告、というよりは事実の確認と報告のような内容だな」

拓留「それだけ、和久井の研究は行き詰っていたということですか」

久野里「そうかもしれない……が、事態はあまりいい方向には進んでいないかもしれないな」

拓留「?」

久野里「和久井は自分の大きな研究テーマ、私も思いついた例の仮説を裏付けようと、ついに研究のための重要な一歩を踏み出している」

久野里「加えて、この報告が更新された日付を確認すると、しばらく間が空いている」

久野里「くそっ、手遅れになっていなければいいが……!」

拓留「手遅れって、何がですか」

久野里「わからない……しかし、私にはわかる。非常にまずい状況に置かれているであろうことは」
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/19(火) 22:10:12.74 ID:t+EuIJD90
久野里(どうする……いやな予感はより強く訴えかけてくる)

安価>>382

項目を開く?開かない? 開くならば一つ選択。
・担当者について
・今後の展望
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/19(火) 22:17:23.02 ID:g1EzsYPXO
今後の展望
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 22:09:51.11 ID:Ke9vrW4i0
―今後の展望―

尾上世莉架を分解する。









久野里「……、は?」
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 22:12:13.45 ID:Ke9vrW4i0
久野里(なんだ……なんなんだ! それだけ、か?)

久野里(分解、だと? どういう意味なんだそれは!)

久野里「くっ……」

拓留「ど、どうしたんですか久野里さん」スッ

久野里「来るな!」

拓留 ビクッ

久野里「いいから、そこに立っていろ……」

久野里「……」
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 22:33:45.63 ID:Ke9vrW4i0
久野里(正直、何がなんだかさっぱりだ)

久野里(研究報告のページだってそうだ。報告だぞ? あまりに短くなかったか)

久野里(特に、今後の展望は短いなんてものではない)

久野里(既に和久井が手を染めていることは尋常ではないということはわかっている)

久野里(だからと言って、なんで尾上が、しかも分解とは……)
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 22:35:36.32 ID:Ke9vrW4i0
久野里(くそっ! 結局ここに来てもまともに得られたものなんて全然ないじゃないか!)

久野里(残されたリンクは一つ)


・担当者について


久野里「これを押すしかないということか」
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 22:38:00.00 ID:Ke9vrW4i0
久野里 カチッ


ターミナル『』


久野里「なぜターミナルが起動するんだ?」

388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 22:43:50.56 ID:Ke9vrW4i0
ターミナル『私は委員会の一員だ』

ターミナル『来るべき次の世界でよい人生を送るために、委員会へ献身している』

ターミナル『特に、私の行っていることは、ギガロマニアックスの研究だ』

ターミナル『ギガロマニアックスというのは稀有で特殊な存在だ。妄想を具現化し、世界を変えることができる』

ターミナル『私もそのギガロマニアックスの一人だ』
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 22:50:10.94 ID:Ke9vrW4i0
ターミナル『なぜ、私がギガロマニアックスの研究をしているのか』

ターミナル『その答えとしては、「自分自身を理解する」というものがあると思っている』

ターミナル『世界を変えうる我々ギガロマニアックスこそが、次の世界で生きるにふさわしいと考えれば、それを曖昧にしておくことはリスクが大きい』

ターミナル『傲慢だと思うかな。傲慢なのだ。私は』

ターミナル『そう、ギガロマニアックスこそ次の世界にふさわしい進化した人類だ』

ターミナル『だが、どうだろう。そうすると、ある問題が浮上する』


ターミナル『誰が統制するのか、だ』
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 22:53:10.68 ID:Ke9vrW4i0
ターミナル『もちろん、委員会には他にもギガロマニアックスの人間はいる。しかし、ギガロマニアックスに最も精通している人間は一人しか存在し得ない』

ターミナル『ここまで私の無駄話を聞けば理解しただろうか。そうだ』

ターミナル『私が最もギガロマニアックスについて理解していれば、私は次の世界の頂点に立てる』

ターミナル『そのためにも、今の研究があるのだ』

ターミナル『そう、思うよね』







































和久井「お二人さん」
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/26(火) 22:56:00.52 ID:Lo63i4CuO
きやがった……!
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/26(火) 22:58:20.94 ID:e2ACj2nOo
ついにわくわくさん登場か
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 23:10:05.21 ID:Ke9vrW4i0
久野里「なっ、いつの間に!」

和久井「おいおいいやだなぁ、その台詞は少々間抜けじゃないかな久野里君」

和久井「僕がギガロマニアックスだって知っていただろう?」

拓留「僕だって、ギガロマニアックスですよ」

和久井「……はぁ」

和久井「かなしいなぁ。いや、かなしいよ。僕は教師として十分な教育を施せていなかったんだね」

和久井「僕は教師で、君は生徒だ」

和久井「僕は大人で、君は子どもだ」

和久井「どちらが上位かは言うまでもないだろう」

和久井「おっと、安直な論理展開だという文句は却下させてもらおう。なんたって、二人がギガロマニアックスであるという前提の議論だからね」

和久井「僕よりもギガロマニアックスというものに精通していると豪語するのであれば、ぜひ一度語り明かしたいものだがね」
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 23:15:11.67 ID:Ke9vrW4i0
和久井「さてと、だ」

和久井「君たち随分と人のテリトリー……ラボを嗅ぎまわってくれたみたいだが」

和久井「何か進展はあったかな?」ニコッ

久野里「くっ……!」

拓留「僕らは真相を追っているんです。尾上だってその真相のうちの一つだ。何も言わずに消えるようなやつじゃない」

和久井「ふむ……なんだか以前の君を見ているようで感慨深いね」

拓留「そういうのはいいです」

和久井「おっと、これは手厳しい」

久野里「答えろ」

和久井「こっちもきついね」

久野里「分解、とはどういう意味だ」

和久井「んー?」

久野里「とぼけるな! この無名のファイルを開いたところにある、「今後の展望」に書いてあることだ!」

久野里(宮代に説明する時間がなかったが、こうなってしまってはその余裕はない!)

和久井「ああ、それのことね」
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 23:21:48.24 ID:Ke9vrW4i0
和久井「文字通りの意味さ」

和久井「君たちは第11回レポートを既に読んでしまっているね? おっと、言い訳は無用だ。僕はすべて知っているからね」

和久井「まあ、それは問題ではない」

和久井「同じ波動を生み出すギガロマニアックスが二人いるんだよ。本来ありえないことだが」

和久井「それは、誰だと思うかい? 宮代君」

拓留「……」



拓留「……尾上」

和久井「ビンゴだ。やはり君は優秀だね」

和久井「そう。碧朋学園にいるとある生徒と彼女は同じ波動を発している」

和久井「君たちも知ってのとおり、ここ碧朋学園はギガロマニアックスを研究するための収容施設のようなものだ。もちろん、学校としての機能も有しているがね」

和久井「だがね。僕とて、自分のすべての研究をおおっぴらにしたくはないんだよ」

和久井「独占したいものだってあるんだ」

和久井「とりわけ、尾上世莉架の事例の詳細はね」

和久井「だから、消したんだよ」

和久井「尾上世莉架という存在を、認識上ね。それが僕にはできる」

和久井「僕はギガロマニアックスだから。自分で言うのはなんだが、これでもかなり強いんだよ? 僕は」

和久井「これが、「尾上世莉架が存在しない」という君たちの認識に対する真相だ」
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/26(火) 23:23:22.28 ID:Ke9vrW4i0
和久井「ここまでで、何か、僕に聞きたいことはあるかな?」

安価>>387 聞きたい内容を入力
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/27(水) 00:29:39.21 ID:t/V97tlio
世莉架は今どこにいて無事なのか
……って安価過去に行ってるけどいいよね?
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/29(金) 19:47:14.64 ID:YnTk2GqL0
拓留「尾上は……今どこにいるんだ。無事、なんだろうな」

和久井「なんだ、そんなことでいいのかい?」

和久井「ああ、彼女なら無事だ。何事もないよ」

和久井「そうそう、今どこにいるのか、だったっけ」

和久井「よし、こっちに来てもらおう。ほら」

拓留「……」

久野里「宮代、とりあえず、ここは行くしかないと思うぞ」
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/29(金) 19:53:53.58 ID:YnTk2GqL0
拓留(和久井に連れて行かれた先は、まるで手術室と宇宙船を足して2で割ったかのような、そんな場所だった)

拓留(なぜ宇宙船なのかと言うと、室内の見た目は基本的に手術室なのだが、ところどころSF映画で見るようなカプセルや椅子が設置されているからだ)

久野里「ここは一体……」

和久井「僕が実際に実験している場所さ。まあ、僕は頭脳を使うことのほうが多いんだが、実験だってもちろんやる」

和久井「特に、対象がギガロマニアックスとあっては、実験は避けては通れないだろう」

和久井「僕の実験レポートは、もう既に読んでいるのだろう?」

拓留「……」
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/29(金) 19:58:47.43 ID:YnTk2GqL0
和久井「さて、君たちが探している尾上世莉架だが」

和久井「まあ、君たちは彼女の友人であるわけだし、感動の再会くらいは容認してあげようか」カタカタ ポチッ


ウィーン


拓留「……ッ!」

久野里「これは……」

和久井「ご対面だ。彼女の麗しき姿を是非ともごらんあれ」


世莉架「」


和久井「まあ、もう頭部と脊椎と心臓、あと最低限の内臓が残っているだけだがね!」
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/29(金) 20:03:10.86 ID:YnTk2GqL0
和久井「彼女は生きている。ほら、無事と言えば無事だろう?」

拓留「……貴様ッ、何をふざけたことを!!」

和久井「おやおや、その口の利き方はいただけないね」ブンッ

拓留「!」

拓留「ぐぁっ! いてぇぇぇぇ」

和久井「ちょっとディソートで切り傷をつけさせてもらったよ。次は腕ごともらう」

久野里「お前、何をしたかわかっているのか?」

和久井「何をしたか? そんなことわかっている。わかりすぎるほどにわかっているとも」

和久井「僕は次の世界で最上位の存在として生きるために、この少ない犠牲を払っているんだよ」

和久井「おっと、もしかして、僕が彼女を扱う上で卑猥なことをしたと思っているのかな?」

和久井「安心したまえ。あくまでも、死ぬ直前まで眠らせた上で、体のパーツを機械的に一つずついただいているだけだ」

和久井「性的な目的なんてないよ」
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