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会長「音が紡ぐ笑顔の魔法」
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109 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/06/21(水) 04:47:31.26 ID:wLMlW9QXO
部長「まぁ、いい勝負になると良いな」
幼馴染み「さっさと運びなさいよ木偶の坊!!」
部長「んだと!?このチビ助!!」
幼馴染み「キーッ!何よ!!」
副部長「うーん……会長達に勝てるかなぁ?」
ロリ「生徒が贔屓目無しで良かった方に投票してくれるらしいからこの勝負、どうなるかは分からないにょ〜」
男「待ってくださいロリ先輩」
男「部長と副部長って……友達が物凄く多い人気者だから絶対に贔屓目が入りまくりますよね!?」
不良「それって卑怯じゃねーか!!」
ロリ「悔しいなら友達を増やすにょ〜」
不良「……」
男「……勝つぞ」
不良「……おう」
作詞「この学校、現生徒会長の支持率が凄い事になっていたと思うけど……」
会長「男と不良は私の事を生徒会長と認識していません、恐らくは碌でもない存在と認識しています」
110 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/06/21(水) 04:48:06.05 ID:wLMlW9QXO
副部長「設営終了〜っ!!」
副会長「」
部長「」
部長と副会長との2人は仲良く伸びている、雑用自体も副部長が殆どこなしたのにも関わらずだ。こんな状態でまとも演奏なんて出来るのか?
作曲「副部長……すごい」
幽霊部員「相変わらずの化け物っぷりすね〜」
「部長〜っ!」
「休んでんじゃねーよバーカ!!!!」
「頑張れ副部長〜!」
部長「うるせー!」ガバッ
副会長「会長、お先に失礼します」ペコッ
副部長「負けてられないよね!」
ロリ「さぁ、後輩達に私達の偉大さを見せてやるにょ!!!」
なんとか時間通りに終わったステージ設営は文化祭のメインイベントの一つ、自由天文部の演奏の始まりを予告する。
しっかりと衣装を用意した俺達とは裏腹に、部長達は制服のままステージへと飛び出した。
部長「聞いとけよ〜〜っ!!!」
副部長「♪」ギュイ-ンッ
副会長「……」ダンッダンッダダンッ
ロリ「……」ギュギュッキュインッ
俺達の勝負は部長達の先攻からはじまった。
111 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/06/28(水) 17:51:00.11 ID:gPuoysuqO
部長「……」チラッ
ロリ「……」ニコッ
部長(本当は廃部が決まった瞬間、辞めようと思ってたんだけどな……無理矢理連れ戻されたけど)
部長(多分だけど副部長も)
部長(ロリ……先輩は『辞めるなら先輩らしいところを見せてから』って無茶言うしなぁ)
部長(大体、俺の先輩らしい所って何なんだよ……部長としての威厳は無い、真面目さの欠片も無い、誰も着いてこない、本職の歌も微妙)
部長(どうして、俺が部長なんだろうな)
幽霊部員「はぁ……僕の事も忘れてもらっちゃあこまるっすよ」
部長(ステージに上がるのがおせーよ、幽霊部員)
部長(いつもはサボってばかりだけど、大事な時はしっかりと来てくれる)
部長(幽霊部員みたいな天才と一緒にバンドを組めるってだけで本当にありがたい)
部長(うーん……実は恵まれてたんだな……)
部長(まだこの面子で歌いたいなぁ……)
部長(もっと真面目にやれば……クソッ)
部長(――また、チェロでも弾こうかな)
112 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/07/08(土) 18:54:51.25 ID:/388drF/O
ワァァァァ
部長達の演奏は大喝采の元で終わりを迎えた。
「やるじゃん!!!」
「ロリちゃん可愛い〜!」
部長「次は可愛い後輩の演奏を聞いてやってくれ!!」
部長「あ!俺はこれで引退だからさ!!投票よろしく!!!」
ドッ
「部長サイテー!!」
「みなさーん!!あの男の言う事を素直に受け入れてはいけませーん!!!」
部長「本当だっつーの!!」
部長「……」
部長(呆気なかったな、最後の文化祭)
副会長「……」
副部長「……」
幽霊部員「……」
113 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/07/08(土) 18:56:22.19 ID:/388drF/O
男「そうか……皆は自由天文部がほぼ廃部って知らないのか」
それにしても下手なヤジだな、もう少し捻れば良いのに。
ロリ「ふぅ〜隙を見つけて抜け出してきたにょ」
男「あ、ロリ先輩」
ロリ「ちょっと休憩だにょ」ゴクゴク
ロリ先輩は裏に置いてあるスポーツドリンクを、仰向けになりながらもだらしなく飲み干した。
男「急に戻ってきてからろくに話もしていない…… 正直に言うと聞きたい事ばかりです」
ロリ「……分かってるにょ」
男「でも、まずは勝ちたいです」
ロリ「――分かってるよ」クスッ
男「あれ、口調が――」
不良「よーし!!用意できたかー!?」
不良「って、うわ……マジかー」
会長「男を見ると女としての自信が打ち砕かれてしまうよ」
ロリ「わあぁ、本当にお姫様みたいだにょ〜」
男「……」
また何かをはぐらかされてしまったかのような気分、ロリ先輩の底は知れない。
114 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/07/11(火) 07:19:34.75 ID:EPkOAP8AO
男「本当に嫌々ですからね、女装」
ロリ「じゃあ、幽霊部員達の演奏の間に私も着替えてくるにょ〜」トテテ
作詞「うわぁ、女装すると本当に可愛いね。体つきも女性のようで……」
幼馴染み「?……相変わらず……女みたいな顔ね」
幼馴染み(ソニアに……似てる?)
作曲「綺麗……」
男「はぁ……どうもご好評なようで」
女装とか、するつもり無かったんだけどなぁ。不良が『あ、そ、そうだ、お、お、おとこは女装してみれば!?』とか抜かして下さった結果こうなってしまった。ご丁寧にくどいウインクもおまけでついてきた。
不良「しっかし、フリフリだなこの衣装」
会長「派手なドレスだ」
作曲「舞踏会がイメージ……会長には仮面も……」
そうか、会長がステージに立った時のマスクが作曲先輩のインスピレーションになったのか。
115 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/07/11(火) 07:31:10.17 ID:EPkOAP8AO
作詞「作曲は何かと衣装を集めるのが趣味だからね、いつも助かるよ」
作詞「男君……似合ってる」ニコッ
男「そんな喜ばれても……あはは……」
幼馴染み「男……下着、どーなってんのよ?」
男「今回は男物だよ」
幼馴染み「え、えぇ、うん?」
不良(今回は?)
幼馴染み「アンタ普段……」
作曲「幽霊部員が……待ってる……」
幼馴染み「そうだったわね、早く行きましょ」
作詞「それでは、君達の前座を丁重に勤めさせて頂くよ」グッ
幼馴染み「ぜっっっったいに!!!勝ちなさいよ!!」ビシッ
作詞「学園生活最後の文化祭が前座なんてね、全国の軽音楽部員の中でこんなにも不幸なのは私ぐらいかな?」
幼馴染み「つべこべ言わない!!行くわよ!!」ポロッ
作詞「あ、そうだ、男君。演奏中は私の教えを少しでも思い出してくれたら嬉しいな」
男「はい、先輩」
作詞「師匠と呼びたまえ」クスッ
116 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/07/11(火) 08:52:05.90 ID:EPkOAP8AO
作詞先輩と幼馴染みが舞台へと上がっていく。
幽霊部員先輩との3人でボーカル無しのスリーピースで演奏をするそうだ。
男「あれ、幼馴染みがなんか落としていった……」ヒョイッ
男「って、これは……」
マジですか……
幼馴染みの思わぬ落し物は衝撃的だった。出来る事ならば見て見ぬ振りをしたかったのだが、そういう訳にはいかないのだろう。
男「俺、気付けよ……」
しかし、あの幼馴染みがまさか……ね。
似ているとは思っていたが、普通は誰かが勘付くだろう……俺が言うなって話ではあるが。
つい最近まで会っていなかったとは言え、これは酷い。
男「このまま上手に隠せませんかね?」ボソッ
男「ははっ……」
会長「……大丈夫か?」
男「ええ、大丈夫ですよ、大丈夫ですとも……」
不良「熱中症か?ウィッグ取るか?」オロオロ
男「大丈夫。ちょっと疲れただけ」
そうだ、俺の秘密を握っている人が居たんだったな、相談するのは気が引けるがこの人は信頼出来る……と思ったが、話したくない。
そうだ、大体この人が俺の秘密を知ったのもカマかけに近いやり口、あれ以来この人には強く言う事も逆らう事も、脅され
男「会長、後で話が」
会長「……分かった」
あ、口が滑った。
俺はどうしてしまったのかなぁ……本当。
初夏の熱が頭髪を越え、脳天に突き刺さる。自由天文部に入ってから、会長とのやり取りが一瞬にして思い起こされた。
脅された事は無かったな。
117 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/07/11(火) 08:52:48.60 ID:EPkOAP8AO
一旦ここまでです。
ここまで何か質問などございましたら、どうぞ。
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/11(火) 21:43:03.99 ID:2NIVw2Zio
ようやく皆が先に進めそうで今は只単にとにかく筆を進めてくれ
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/05(土) 04:55:55.46 ID:dzyK6WUMo
会長の名前が変わったのはどうしてなんだぜ
更新待ってる
おつおつ
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/18(金) 08:43:54.91 ID:+jxpM1SHo
続きが早く読みたいぜ
121 :
◆MOhabd2xa8mX
[sage]:2017/08/23(水) 04:02:58.80 ID:sr6f0GtVO
更新はお待ちください、申し訳ございません
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/23(水) 23:43:41.84 ID:VcY6JiIyo
続きが読める幸せよね
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/01(金) 21:51:30.70 ID:TfiRPZjvo
まだかしら
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/11(月) 01:46:15.66 ID:3iHFgRdQo
そい
125 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/09/12(火) 09:20:26.13 ID:lLMIBJDBo
男「幼馴染、お前がツンデレだったなんて……」ボソッ
幼馴染は現在も絶大な人気を誇っているアイドルグループ、ダブルフェイスのセンター、ツンデレだったのだ。
これで幼馴染が自由天文部に顔を出す頻度が少ないのも頷ける。アイドル活動に精を出していたのだろう、作曲先輩が“仮面を出した”時から直感のような物が働いていたのは確かだが、直感が確信に変わったのは幼馴染が落としたネックレス。
男「期間限定ユニットの時は一緒に着けてたな」
合わせるとハートになる銀のネックレス。
俺が綺羅星ソニアだった頃、ツンデレにあげたプレゼントだ。
男「まだ大事にしてたのか……確かに特注の高額な物だけど」
片割れのネックレスどこにやったかな?捨ててない筈だけど、もし、万が一正体が明らかになりネックレス無くしましたじゃあ許されないだろうな、只でさえツンデレは綺羅星ソニアを狂気的に愛しているのだ、正体が幼馴染の男君でしたとなれば去勢されかねない。
青嵐が逆風となって吹き抜けるとドレスの裾が激しく靡く、遠くない未来に何かが起きるかを暗示しているかのように、夏を告げる爽快な風は新たな問題も知らせていた。
男「……」ギュッ
仮面で顔を半分隠しているとは言え、幼い時からずっと一緒にいた幼馴染に気が付かないなんてな、会長と言い化粧で変わりすぎだろ……俺も人の事は言えないが。
声と仕草が丸っきり違うのは幼馴染の演技力か、性格だけは瓜二つ。
俺は先程拾ったツンデレのネックレスを強く、恨めしく握った。
どうせなら落とさないでいてくれれば方が良かった、何も知らなかった方が……
不良「やっぱりどっか悪いんじゃ……ぼーっとしてると困るぜ男ぉっ」オロオロ
会長「考え事だろう、もし倒れたらやめよう」
不良「倒れたらおせーだろ!」
作曲「……」オロオロ
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/13(水) 00:22:51.15 ID:PoAX38C2o
去勢されちゃうからね
おつおつ
127 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/09/14(木) 16:25:10.73 ID:kiyqW8d8O
男「おっと」
みんなが心配している、早く取り繕わなければ。
男「ゴメン、ゴゴメン」
男「ちちちっと考え事をしていたで候、拙者、考え事をすすっと、ぼーっとしてしまうくせがおなーりー」
不良・会長「「カウンセリングが必要ですね……」」
作曲家「『後輩 鬱』で検索してるから……待って」
男「だだ、だいじょうぶ、ですよ僕は大丈夫」
会長「男」グイッ
会長は俺の肩を持って傍に引き寄せる。
顎が当たる、いい匂いだ。
会長「作詞先輩には色々教えて貰ったのだろう?」
男「会長」
会長「しっかりと見よう」
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/16(土) 11:36:53.01 ID:pbyisC+oo
イケメンかよ会長
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/04(水) 18:08:00.54 ID:sl7oA84tO
まつぞ
130 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/10/06(金) 16:31:09.69 ID:LUPzOmcBO
優しく頭を撫でられた気がした。
ぼくの、俺の気のせいか分からない。
でも、ほんのすこしだけ落ち着いたよ。
ほんのすこし、ほんのすこしだけ、お母さんを感じた気がする。
男「……離してください」
会長「いい匂いがする」
不良「……」
舌打ちのようなものがどこからか聞こえてきたのは気のせいだろうか、俺の中の何かが会長との僅かな接触を盛り立てる。
キャ-サクシサマ-
作詞「うーん、いつ見てもこの景色は最高だね、そう思わないかい?」
幽霊部員「あーそっか、作詞ちゃんは今年で最後っすね」
作詞「最後が前座でも悪い気分じゃない」
幼馴染「感慨深いかしら?」
作詞「そうだね、歌があれば完璧だったけど可愛い後輩とならば何だっていいさ」
作詞「さっ、弾こうか」
131 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/10/08(日) 06:45:06.93 ID:qJDs1U2pO
幽霊部員「盛り上がってきたっすよ〜!」
幼馴染「……」
カイチョ-
幼馴染「まって」
作詞「んー?」
幽霊部員「だんだだっ、だっだっ」
幼馴染「私が歌っても良いけど」プイッ
作詞「いいよ、歌う?」
幼馴染「かるっ、それでいいの?」
幽霊部員「あー……………盛り上がっている所悪いっすけど、幼馴染ちゃんの声じゃあ私達の曲に合わないっすね」
幼馴染「早く言いなさいよ!!」
作詞「ははっ、歌まで即興になったら滅茶苦茶だからね」
幼馴染「……………」
幼馴染「――始めるわよ」ギュインッ
幽霊部員「楽しむっす」ポ-ンッ
作詞「今まで……ありがとう」
作詞「うんっ、悪くない」
そうさ、何もかもが悪くない。
私はこうして可愛い後輩に囲まれて引退出来る。
ロリ……先輩、部長(OG)、ごめんなさい。
私は本当に何も役に立てなかった。
花を咲かせずに枯れ落ちる徒花にも劣る無意味な蕾。それが私、後悔は先に立たず、時間は終わりを告げる。
その事実を噛み締めながら自由天文部の3年生として可愛い後輩に恵まれたと宣い、そんな可愛い後輩の道を閉ざすのだ、私は。
許して欲しい訳ではない、ただ、音楽を嫌いにならないで欲しい。
幽霊部員「……」ニコッ
ロリ「……」ニコッ
作詞「!」
二人が振り向きざまに私へと微笑みかける。
そうか、最後の演奏も終盤に差し掛かったのか。私は最後の最後に無意識で演奏していたのか……そうか、なら、せめて、せめて最後のソロパート、私のソロは私を音に乗せて――
132 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/10/10(火) 18:11:23.21 ID:fzHcOgHsO
キャ----
3人の天才が織り成すメロディーは音だけでも聴き入ることが出来る、実に素晴らしい物だった。
聴きやすくて、分かりやすい。
そして、何よりも特徴的なのがこの3人を表している。
スタンダードにとどまらない、彼女達なりに新しい何かを追い求めていた。
男「これも、作曲先輩が?」
作曲「ううん、私はほんの少し手伝っただけ」
男「……」
そして、作詞先輩のソロに移る。
男「そうか……うん……」
俺でも分かる。
作詞先輩は後悔している。
133 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/10/11(水) 04:32:14.24 ID:lIlYdtOQo
違う、俺だ、俺だからこそ分かるのか。
作詞先輩からほんの僅かな期間でも教わることができた俺だからこそ分かる。
音から分かるなんて大それた話ではない、即興で生まれたであろう弾き方とテンポ……何よりも表情。
先輩は鬱陶しい程に満足げな顔をして俺の隣でギターを語っていたんだ。それが何だ、部活に顔を出す回数も少なかった癖に、今まで何をしてきたのかも分からないサボリ魔があんな顔をしてしまったら駄目なことぐらい先輩だって理解しているだろ?
それじゃあまるで自由天文部のために実は頑張っていました、実はこの部活が自由天文部が――
作詞「――大好きだったなぁ」
幼馴染「最後の演奏、良かったわ」
幽霊部員「作詞ちゃんっぽくはないっすけど、いいソロだったっすよ!」
作詞「あはは、そうかい?」
幼馴染「アンコールも来てるけど……」
幽霊部員「僕はいつでもいけるっす!」
作詞「盛り上がっているところで悪いけど私はもういいかな、完全燃焼だ」
幼馴染「ホント……?」
作詞「すまない、最後の我儘だと思って聞き入れてくれないかな?」
幽霊部員「じゃあ舞台から降りるっす―」
幼馴染「このまま廃部になったら私達だって……」ボソッ
作詞「気持ちを整理したいんだ、こんな状態で弾くのは良くない」
幼馴染「え……?」
作詞「さっ、我等が誇る後輩達の出番だね。前座は前座らしく舞台から降りてしまおう」
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/11(水) 14:57:10.23 ID:MJx5tZgVO
めっちゃ熱いな!
135 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/10/18(水) 17:52:23.58 ID:kregBKZgO
部長「あいっかわらず、マイペースだな。」
作詞「うん。否定しないよ」
部長「どうしたんだよ、あっさりと認めるなんてらしくねぇな」
作詞「部長だっていつもは追い出されるまで舞台を独占しているじゃないか、らしくないのはお互い様さ」
部長「あ〜そうだっけ?」
作曲「いつもそうだった……」コクッ
副部長「あの三人がまともに話してるの、三年生になってからは初めてじゃない?」
副会長「そう言えばそうかも……」
幽霊部員「元はと言えば仲良しっすよね〜」
幼馴染「あいつ……また蹴り飛ばさなきゃ思い出せないのかしら」
副部長「あはは……去年は幼馴染ちゃんが追い出してたね」
副会長「そろそろ会長が歌うころですね……どちらが勝つと思いますか?」
幼馴染「部長のバンドの二人には悪いけど、贔屓目が無ければ会長のバンドが勝つと思うわ」
副部長「あはは……そうだよね、やっぱり観客にとってはボーカルが左右するよねぇ」
幽霊部員「全体の完成度としては私達の方が長くやってきた分上っすけど、高校生のバンドじゃあボーカルに華があればあるほど……っすね」
幽霊部員「唯一のネックである男君がどうなるか……」
副部長「……」
副会長「……」
幼馴染「まともに喋れるのね……」
136 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/10/18(水) 17:55:43.43 ID:kregBKZgO
>>135
訂正
幼馴染「部長のバンドの二人
↓
幼馴染「部長のバンドの三人
です
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/18(水) 19:23:54.57 ID:+11kIzGBO
幼馴染辛辣過ぎる
おつ
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/11(土) 00:04:08.36 ID:jfeDqnh9O
まだか
139 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:27:44.40 ID:KyHuQLq+O
幽霊部員「ひ、ひどいっすよ!」
副会長「幽霊部員がそう言われても仕方ないよ、普段何言ってるか分からないから」
幽霊部員「副会長ちゃんまで!?」
幼馴染「あんた達って本当に仲が良いわね。副会長の口調だって幽霊部員が居る時だけはまともだし」
副会長「私の今までの口調、変でした?……幼少の頃からの仲ですから」
幼馴染「変よ……腐れ縁ね」
副部長「そう言えば幼馴染ちゃんと男君も幼なじみだよね」
140 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:31:03.80 ID:KyHuQLq+O
副会長「変だったんだ……」
幽霊部員「なになに?恋バナっすか?私大好きっよ恋バナ」
副会長「恋バナって言いたいだけでしょ……」
幼馴染「そうね、でも大した仲じゃないわよ」
副部長「仲悪いの?」
幼馴染「仲はすごく……良いと思うわ」
副会長「私はてっきり男君の事なんか嫌いとでも言うかと思っていました」
幼馴染「雄に一々腹を立てても仕方ないでしょ」ボソッ
幽霊部員「え?」
幼馴染「そうね、お互いに忙しいから会えなくなったりが続いているだけで特に何かがある訳でも無いわ。普通に幼なじみとして仲が良いわよ」
副部長「ふーん……」
幽霊部員「お互いに忙しいと言えば……幼馴染ちゃんってぜーんぜん学校に来ないっすよね?学校に来れない程忙しい事をしているんすか?」
副会長(皆が気にしている事を……)
幼馴染「そうね、高校に上がってからは特に忙しいわね。でも、これからはどうなるか分からない」
幼馴染「私は学校って行く意味が無いと思ってたの。でも、ちょっと勘違いしてたのかしら?」
幼馴染「身近にあるものを見落としていた……のかな?分からないや」
副会長「悩み事ですか?」
幽霊部員「天才の幼馴染ちゃんでも悩むことがあるんすね」
幼馴染「鬼才の幽霊部員だけには言われたくないわ」
141 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:32:17.61 ID:KyHuQLq+O
副部長「何はともあれ頭がいい子は羨ましいな〜学校に来なくても勉強ができるなんてずるいよ」
幼馴染「私だってこれでも苦労してるわよ」
副会長「副部長は勉強の仕方が悪いのでは……話を戻しますが、男君の事が嫌いな訳ではなく、普通にすれ違いが続いているだけと?」
幼馴染「そうね、仲に関してもあいつが勝手に暗くなったり、明るくなったり、私を遠ざけたりするだけよ」
副部長「ふーん……」
幼馴染「私は年上のお姉さんらしくアイツに接しているだけ」
幽霊部員「お姉さん……?」
副部長「それは無茶がある……かな?」
幼馴染「うっさい!!」
副会長「二人共言い過ぎですよ、本人が思っている事を簡単に否定してはいけません」
幼馴染「」
142 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:33:58.48 ID:KyHuQLq+O
幼馴染「でも……男がギターをやるなんて思ってもいなかったわ。てっきりボーカルかと」
副部長「あっ、そう言えば最初はボーカルもやるとか言ってたよ」
幼馴染「どうして歌わないのかしら?」
副部長「分からないなぁ、気付いたら会長だけがボーカルになってるもん」
幼馴染「どうしてかしら……?」
幼馴染「家が隣だった頃に何度かあいつの歌を聞かせてもらった事があるけど、凄く綺麗な声してたの。張り詰めてて儚くて……」
幽霊部員「それって声変わりの前っすか?」
幼馴染「前よ。でも……」
副部長「声変わりの前なら男性でも声は綺麗だよね」
幼馴染「むっ……大人になっても根本の良さは残るわよ、声の高さは別として…………お稽古だって沢山してたもの」
副会長「小さな時から沢山歌ってたんですね、男君」
幼馴染「音楽一家だし……って、あいつの話ばかりじゃない……」
143 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:35:21.41 ID:KyHuQLq+O
幽霊部員「男君は人気者っすね」
幼馴染「でも……隣町に引っ越してからは聞いてないわね、男の歌。今度久しぶりに聞かせてもらおうかしら」
副部長「あっ!じゃあ……今度さ、皆でカラオケ行こうよ!」
幽霊部員「いいっすね〜!大部屋でパーリーピーポーっす!」
副部長「自由天文部の皆で……素敵ですね」
幼馴染「……」
幼馴染「話を戻すけど」
幼馴染「この勝負の勝敗関係無しに……残った僅かな時間。そうね、精々8ヶ月あるかないかで自由天文部はどうなると思う?」
幽霊部員「そっすね、部長達にこれからの自由天文部とか言われてもピンとこないのが正直な話っすね」
副部長「ごめんね、もっと練習してれば……」
幼馴染「気にしないで、あれは練習どうこうじゃないもの」
幽霊部員「僕的には惜しかったと思ってるっす!」
幼馴染「あんたの感性はホントに分からない……」
副会長「私は……」
副会長「諦めたくない」ボソッ
144 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:36:44.40 ID:KyHuQLq+O
男「よいしょっと……」ギュイーン
ロリ「女装して人前に立つ感想はいかがかにょ?」
男「えっ?」
男「うーん……」
と言われてもな、俺はこの舞台とは比べ物にならない人の前に立ってきた訳だから緊張をする筈がないし恥じらう筈もない。
メイクだってソニアの物とは違う。よって、ソニアバレを心配する必要がない。
男「べつに何も……」
ロリ「少しは恥ずかしがらないとつまらないにょ〜」
会長「うぅむ、堂々としているな」
不良「認めろよ」
男「何をだよ」
145 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:42:29.84 ID:KyHuQLq+O
「えっ?あれ本当に男?」
友「男だよ」
「いや流石にあれは女子だろ、綺羅星ソニアちゃん並に可愛いぞ」
「ばっか、言いすぎだろ」
友「男は綺羅星ソニア並みに可愛いから言い過ぎでもない」
「でもあのバンドのギターって男だったろ?」
友「だから男だって」
「助っ人じゃね?あいつこの前ギターは始めたばっかりとか言ってたし」
友「何回言えばわかるの?男だって」
「そっか、部長のバンドと競うから初心者はいらないって事か」
友「だから男だって、耳ついてる?」
友(あの肉付き……顔の特徴は男。メイクも男の個性を出している)
友(俺……私……は男のせいで……もっと分からなくなったよ……)
146 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:45:12.66 ID:KyHuQLq+O
不良「そう言えばさ〜リハで男のギターを聞いたけど、かなりやるようになったよなお前」
ロリ「私がマンツーマンで教えてた頃が懐かしいにょ」
男「最近の上達は作詞先輩のお陰ですね」
会長「そうか」
ロリ(へぇ……あの子が後輩に…………)
ロリ(そっか、うん)
男「で、会長。また顔を隠すんですか?」
会長「こればかりは仕方が無い。これでも進歩したんだ」
会長は自信に満ちた笑みを零す。
そんな得意気に俺を見ても困るな、仮面で顔が下の半分しか見えないから地味に怖い。
不良「どこが?」
あの酷いメイクよりは全然良いと思うけど。
不良「隠してんのは顔の上半分だけ、これじゃあまるでダブルフェイスだな」
ダブルフェイスが隠すのはは右か左のどちらかだよ。
ロリ「会長ならダブルフェイスでもやっていけそうだにょ!」
会長「いや、私は……」
男「ははっ」
あそこは何よりも性格がキツくないとやっていけないからなぁ、幼馴染なんて可愛い方だよ。
147 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:46:49.25 ID:KyHuQLq+O
不良「あのグループ、アイドルの中でもすっごいキャピキャピしてるからな、会長じゃあ難しいだろ」
会長「少しは詳しい様子だが、好きなのか?」
不良「昔の連れがな」
会長「それは残念だ」
不良「残念?」
男「でも、歌は負けてないと思いますよ。ダブルフェイスの歌って加工ですし」
ロリ「え、マジかにょ?」
会長「え?加工?」
でもね会長、貴女の歌で人を笑顔にするのは難しい。そう、魔法、奇跡でも無い限り。
俺は踊り、演出、歌、媚び、アイドルとしての全てでようやく笑顔を見ることが出来た。が、それは俺が求めてきた物では無かったんだ。
それでも会長なら俺が見たかった物を見れるかもしれない。
会長「聞いてるか?私はダブルフェイスのファンなんだ、加工だなんて聞き捨てならないな…………本当に?」
ロリ「会長が……意外だにょ」
男「ガッツリと加工ですね」
本音では先を越されたくない、悔しいから……酷いかな?
148 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:48:14.93 ID:KyHuQLq+O
不良「おーい、早くしようぜー」
男「オッケー」
不良「手ぇ抜くなよ」
ロリ「な〜にを言うかと思ったら……私は皆の味方だから安心するにょ」ドヤァ
不良「うぜぇ……」
ロリ「何を〜!?」
男「あ、俺のソロからか」
エルボーカットを軽く叩いてリズムを作る。
作詞先輩から教わった事の一つ、案外と浸れるし音にも入り込めるのが個人的には新鮮だった。
ロリ(成長したなぁ……)
不良「……」
不良「さってと、始めますか」
続いてベースとドラムが世界観を創造する。
男「……」
149 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:50:17.88 ID:KyHuQLq+O
部長のバンドが演奏する曲は正直言って好きな人間でないと分からない奇抜な物が多い。
だったら、こちらは王道で攻めてしまえば良いっていうのが今回の作戦だ。
会長「LAAAAAAA――」
友「うわ、好きな歌だ」
「前より上手くなってね?」
「ってかあの仮面、前回の覆面と同じ人だよな?」
友「え?そうなの?」
「……」
「なんか見覚えあるんだよな」
150 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:56:59.02 ID:KyHuQLq+O
幼馴染「ずっる……皆が知ってる曲じゃないこれ」
作曲「私の……私の曲は?」
作詞「わた……わたしの……詩?あれ?」
副部長「きっと!きっとアンコールされたら演奏するよ!うん!」
副会長「ええ、副部長の言う通りですよ!」
幽霊部員「男君、うまくなったんすね」
部長「あーこりゃ完敗だわ。会長の野郎、まだ成長すんのな」
受付「まあまあやるようになったじゃないか」
アルバイト「ほら!会長ちゃんですよ!か〜わ〜いい〜〜〜〜!」パシャパシャ
受付「ふん!たかが学校行事で写真なんか……」パシャパシャ
151 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 04:58:34.74 ID:KyHuQLq+O
??「久しぶりだな……ここの近くに来るの」
「おらバイト!人様の敷地に勝手に入るんじゃねえ!」
??「あっ……はい。ご、ごめ、ん……なさ……い……」
「ちっ、つまんねーやつ」
??「……」ブツブツ
152 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 05:03:23.56 ID:KyHuQLq+O
演奏終了と共に割れんばかりの歓声が学校全体を埋め尽くす。
これは勝ったな、そう、アイドル時代にはこういった本物の歓声を何度も聞いてきたのだから確信がある。
男「――ふぅ」
そしてなによりも……
なんとか弾き切る事が出来た。
会長「ふふっ……」
会長は身を震わせながら不吉な笑みを浮かべる。一体この人はどうしてしまったと言うのか。
不良「どうしたの?」
会長「先生とのレッスンが功を奏しているのが嬉しくてな、つい……」
ロリ「会長らしい理由だにょ」
不良「うーんこうなるともう投票とか面倒臭いな」
男「は?」
153 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 05:06:02.76 ID:KyHuQLq+O
不良は勝手に会長のマイクを奪ってこう叫んだ。
ロリ「嫌な予感……」
不良「はいはい、だまってー」
未だに興奮が冷めやまぬ様子の観客に対して言う言葉ではない、もし生徒たちの気分を害して票を入れてもらえなかったらどうするつもりだ。
不良「投票とかさ、面倒臭いから一人一人のアンコールを一票として数えさせてもらうわ」
「え?」
「まじで?」
不良「先輩たち、馬鹿が多いからさ、圧勝しても文句言われかねねーんだ」
「あはは」
「確かに部長の馬鹿なら言いかねねーな」
不良「だからこうして分かりやすい形でケリをつけようって訳」
不良「因みにアンコールしてくれたらこの時の為に作った新曲も演奏する予定だから、明らかに全員がアンコールしてくれたら全力でやるよ」
男「あいつ、まじかよ」
不良「部長達のバンドよりも私達のバンドが良かったと思ったらアンコールを頼むよ」
ロリ「手慣れてるにょ〜」
不良「だからほら……アンコール!!!!」スッ
不良は高々とアンコールを叫び、マイクを会場の全員に向けた。
こいつは中学の時人気者だっんだろうな、なんだか羨ましい。
「「アンコール!」」
不良「小さい!!」
「「「アンコール!!!」」」
154 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 05:09:49.20 ID:KyHuQLq+O
作詞・作曲「「アンコール!アンコール!!!」」
副部長「よかったね〜」
副会長「はぁ……」
幼馴染「アホらし……」
幽霊部員「アンコール!アンコール!」ピョンピョンッ
部長「ここまで来るとすげーとしか言えねえ……」
アルバイト「アンコール!アンコール!!ほら!先生も!!」
受付「ったく……あんこーる……あんこーる…………」
155 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 05:14:20.14 ID:KyHuQLq+O
不良「小せえ!聞きたくね―のか!?」
「アンコール!」「アンコール!」「アンコール!!」
「「「「アンコール!!!アンコール!!!!!」」」」
会場が一体となり、熱が辺りに蔓延する。
きっと部長派だった人間も周りの人間に流されてしまったのだろが、こればかりは仕方がない。
不良「はい勝ったーこれで文句なし〜」
男「ははっ……」
会長「こんなに楽しいのは初めてだ」
不良「中学の時よりもすげーよ」
会長「よし、歌うか」
この日は俺が今まで過ごしてきたどんな日にも勝る、とても楽しい一日だった。
きっと、会長にとっても不良にとっても。
156 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 06:43:16.51 ID:KyHuQLq+O
アンコールも無事に終え、それなりに楽しかった文化祭はあっという間に終わりを迎えた。
作詞「終わったね、全部」
作曲「結局、会長たちの圧勝……」
部長「え〜〜この度私達は……」
自由天文部はと言うと打ち上げでカラオケボックスに集まっていた。
ロリ「謝れ〜謝れ〜」
不良「あんたが煽ってどうすんだよ……」
副部長「本来励まなければならない部活動を蔑ろにし……」
部長バンドの全員が部員の前に立ち、謝罪を行っている真っ最中だ。
副会長「ライジングロックでの失態を招きました」
本当は早く謝りたかったからあんな勝負を挑んだのだろうをしたのだろう。
今となっては誰も見向きもしない投票箱の中にも仕切りが設けられており、部長たちにはどうやっても票が入らないように作られていたのだから。
それにしても余計なお世話だな、どっちにしろ俺らの勝ちだし。
幼馴染「そう言えばアンタ、投票箱知らない?」
男「さあね」
これ以上は無粋だろう?
幽霊部員「本当に反省をしています」
「「「「「ごめんなさい!」」」」」
ロリ「それじゃあ歌うにょ〜!」
157 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 06:46:32.55 ID:KyHuQLq+O
作詞「あっけらかんとしているね、でもそれがロリの良い所であり私達は昔からロリ特有のテンポに着いて来たのだからそれに関して異論を挟む余地はなく、寧ろ助けられていると言うべきか……」
副部長「じゃあ歌いまーす!」
副会長「さっそくデュエットですか!?ってこれは、私も?」
副部長「ほら!副会長も早く!」
副会長「もう……」
この二人はよく一緒に歌うらしい、やっぱり仲が良いんだな。
幽霊部員「歌え―!」
会長「私は何を歌えば……」
不良「ほら、入れてやるから歌えよ」ピピピ
会長「なっ!勝手に!」
ロリ「私も歌うかにょ〜」
部長「最近の曲で頼むぜ」
幼馴染「あっ!私の曲まで勝手に……」
男「メチャクチャだな」
幼馴染「あんた、何歌う?」
男「適当に入れてくれよ、カラオケならこなせるし」
幼馴染「こなすって……そうさせてもらうわ」
副会長「ぷーりきゅー○ー」
部長「ギャハハ!!」
副部長「○リキュアー!」
158 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 06:48:27.28 ID:KyHuQLq+O
会長「そう言えば男、話とは何の用だ?」
男「……」
カラオケで皆が騒いでいる中なら耳元で話しても気付かれ無いだろう。
会長の耳元に話しかける。
会長「!」ビクッ
男「ファンである貴女に言いたくはないですが」ボソッ
会長「……」コクッ
男「俺の秘密を知っている以上、話させてもらいます」ヒソヒソ
副部長「プーリキュー○ー」
男「幼馴染の奴はダブルフェイスのセンター、ツンデレなんですよ」ヒソヒソ
会長「……」カタカタッ
会長「驚きを超えて……」
会長「サインもらっても良いか?」
男「駄目に決まってんだろ」
会長「ずっとサインを頼もうとしてたんだ」
男「分かりましたから、家にあるグッズあげますよ」
会長「改めて、男は本当に綺羅星ソニアなんだな」ヒソヒソ
男「何を今更。で、本題ですが……」ヒソヒソ
男「ツンデレはガチレズで、綺羅星ソニアがおかしいほどに大好き。正体は俺、ましてや大事なペアネックレスを無くしたとなると……」ヒソヒソ
会長「最低だな、私も腹が立つ」
男「去勢されかねない」
会長「法治国家だぞここ」
男「とにかく正体がバレないように手伝ってください」
会長「可愛い後輩のためだ、任せてくれ」
男「先輩……!」
幼馴染「あんた何話してんの?」
会長「ひゃっ!ひゃい!」
会長は分かりやすく声を裏返して動揺している。初恋の乙女かあんたは。
男「言わなきゃよかった……」
159 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 07:56:15.61 ID:KyHuQLq+O
人には何かを変える力があり、それを介するのもまた人である。
この出会いは、歪で、偶然、はたまた奇跡と呼ぶのか。
軌跡が導いた出会いは今までの挫折者に何を与えるのか。
幽霊部員「カラオケ楽しかったっす!」
副会長「そうだね、皆揃うと楽しいね」
部長「また行くか!」
副部長「うん!」
作曲「……人、倒れてる」
作詞「そこは救急車だね、うん。素晴らしきかな、私達には行政がある」
夜、街灯の下には全てのきっかけが倒れていた。
??「ご……ごはん……」
部長「腹減ってるらしいぞ」
副会長「男君達が居たら収集がつくのに……」
副部長「男君とかすぐに警察呼びそうだよね!」
??「行政はやめ……」
純粋な青春の名残が、後悔を呼び。
幽霊部員「なんか見覚えあるような……うーん……」
幽霊部員「とりあえず家が近いから運ぶっす!」
新しい絆が全てに立ち向かう。
部長「は!?運ぶの!?」
副会長「もうやだこの子……」
過去の楔が絆を重ね、重ねた絆は奇跡を起こす。
to be continued
160 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/20(水) 08:06:02.81 ID:KyHuQLq+O
第二章 笑顔の魔法 完
このシリーズも2周年です。本当にありがとうございます。
最近は多忙な事もあり、更新が滞っていますがしっかり生きています。
次が最終章でございます。このペースでは何年かかる事やら……
最終章のアナウンスは出来るだけこのスレで行いたいと思います。
いつも支援のレスありがとうございます。大変励みになっております。
何か質問があればお答えします。
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/22(金) 21:15:18.95 ID:ErG6FqELo
おお、やっと一区切り付いたか
部内でのgdgdが片付くの待ってたのにもう最終章!?
間に何章か入れようず
162 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2017/12/25(月) 00:16:26.39 ID:VM6GviWNO
>>161
最初から三部構成だったのでお許しください。
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/29(金) 15:51:32.16 ID:LA75qJ1Eo
おつおつ
次回もまってる
164 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/01/31(水) 08:34:11.11 ID:wZW44q1SO
ちょっとした短編かつ番外編
その1恥ずかしくないの?
男「この部活のライブって結構人が集まりますよね」
ロリ「そうだにょ〜」
男「俺は平気ですけど、大人数を前にして歌うって恥ずかしくないですか?」
ロリ「私は慣れたにょ」
あれだけ留年してたらそうなりますよね。
作詞「私は……人前に立つ事が多かったからね、そこまで気にしないよ」
この人が人前に立って何をするんだ?過去にスポーツでもやってたのかな?
作曲「私は……絶対に無理」
幽霊部員「僕はそんなの気にした事ないっすね」
考える事があるのか?
会長「顔さえ隠せばなんとかなる」
この人はなんでアイドルをやっていたんだろう。
幼馴染「慣れてるわ」
俺が思うにお前の神経はそこらのアイドルより図太いからな、学校如きのライブで緊張する訳がないよ。
部長「俺はガヤがウザかったなー」
副会長「殆どが部長と副部長の友達ですよね…!?ガヤも観客も……!」
副部長「あはは……やっぱりライブは盛り上げないとね!」
部長「あいつらって頼んでもいねぇのに毎回人集めんだよな」
ロリ「部長と副部長の友達にはいつも助けてもらってるにょ〜」
作詞「観客はライブの命だからね、彼らが居ないと成り立たないけど……うん。うるさいよね」
不良「盛り上がった方が面白いじゃん」ニッ
男「目立ちたがりだな、ほんとに」ハァ
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/31(水) 20:39:55.09 ID:fq9m7hbNo
雰囲気いいな
166 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/02/03(土) 11:04:55.19 ID:pbR6XZD1O
その2 不良家
自由天文部が終わるといつも歩くのが遅くなる。
不良「はぁ……」
ハッキリ言って私は自分の家が嫌いだ。
理由は……まぁ色々とある。
不良「もう着いちまった……」
ガチャッ
そんなこんなで家に帰るといつも最初にする事がある。
不良「……気付いてないな」コソコソ
ガチャッ
見られる前にヘアピンとワックスでセットした髪を治す為、シャワーを浴びる。
ジャ-ッ
不良「なんか、最近大きくなってる気がする……」
私からすれば身体を洗うのはそのついでだ。
ガチャッ
不良「ふーっ、スッキリした……」
着替えも済ませた事だし今日はもう寝よう。
ガチャッ
不良「あっ……」
不良母「きゃー♡私の可愛い可愛い不良ちゃんが帰ってきたわ!!」
こんなのをみんなに知られたら全て終わりだ。
不良母「ご飯出来てるわよ♡今日も学校であった事を聞かせてね!お手伝いさんと私で作ったのよ〜」
不良母「あっ、パパが不良ちゃんと私にお揃いの時計を買った来たわよ〜☆あの人ったら……///」
またよく分からない物に私の名前が刻印されている。
不良「えへへ!早くご飯食べたいなぁ!」
不良母「嬉しいわー♡早くこっちに来て♡」
不良「……うん」
不良「ママ!!」
私はこの家が嫌いだ。
男「会長、この豪邸本当に大きいですよね」
会長「昔からこの近所で一番目立つ家だな」
男「不良の家だったりして……」
会長「まさか」ハハッ
167 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/02/04(日) 17:09:38.73 ID:5sL8hWADO
その3 プロ目線 文化祭の帰り道にて
会長「男」
男「なんですか」
会長「男」
男「なんですか」
会長「呼んでみただけだ」
なんだこいつ。
会長「ソニア」
男「……嫌がらせですか?」
周りに人が居ないとは言え、この人は何を言っているんだ。
会長「文化祭、私達は綺羅星ソニアから見てどうだった」
男「あぁ……へぇ、うん」
男「意外とせっかちですね」
会長「……っ」
俺の意見か、うーん。
幼馴染と同意見になるのかな、あいつとは見ている視点が違うのか。
正真正銘、ソロとしてアイドル業界の1位を取った俺から言わせてもらえば……
男「んー……ごほんっ」
どうだ、こんな声だったか?
なんて忘れる筈がない。
ソニア「そうだね〜☆」
ソニアとして答えて差し上げよう。
ソニア「お遊戯会……かな?」
会長「ははっ……そう、だとは分かってた……けど」
会長「まだまだ先は遠いな」
ソニア「でもね」
会長「っ!」
ソニア「あと少しでお遊戯よりも上、バンドになれるよ」
会長「ソニア……」
男「俺も含めて」
男「それに………………」
男「いや、何でもないです」
会長「言うならハッキリとして欲しいが、嫌なら仕方ない」
会長「ありがとう、気になってたんだ」
男「しょっちゅうソニアを呼ばれたら困りますけどね」アハハ
会長「また呼ばせてくれ」ドヤッ
男「やめてくださいよ」ウゲェ
本音を言うと。
男「まぁ……会長以外の話ですけど」ボソッ
嫉妬でおかしくなってしまいそうだ。
168 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/02/08(木) 00:15:07.34 ID:Z6D616I8o
……どうしてソニアとして答えてしまったんだろうな。
分からない。
ライバル視?まさか。
ソニアと会長にはまだ大きな差が存在する。
でも、それでも、いつかは……
この人、この人は……会長はどこまで行くのだろうか。
理想のままに俺が居た位置にでも立ちたいのか?
反吐が出るね、酷いじゃないかそんなの。
俺よりもずっと下に居たはずなのに。
169 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/02/09(金) 08:22:32.92 ID:RKmEnffZO
その4 会長
会長「ただいま」
会長父「ああ、お帰り」
会長「今日はどうだった?」
会長父「ああ、今日はね」
会長父「久しぶりに来たんだよ……って覚えてないか」
会長「久しぶり?」
会長父「ああ、会長が小さい頃には凄い音楽一家が居てね」
会長父「よくうちのホールに来てたんだ」
会長「へぇ……」
普通の家、だけど。
この普通はとても大切な物だ。
普通のあり方にもよるが、今は普通の方が貴重なのだから。
170 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/02/10(土) 08:15:01.05 ID:UG7EutatO
その5 部長 ライジングロックの帰り道
部長「……」
ロリ先輩は帰ったのか。
また一人で泣いているのか、今の俺にかける言葉無い。
先輩の夢、叶えてあげたかったなぁ。
副会長「何か手立てがある筈です。このままでは本当に廃部してしまいます」
幽霊部員「副会長……」
部長「廃部だよ」
どうしてもっと練習をしなかったのか、やる気が無かった?時間が合わなかった?どれも違う、きっと無理だって気付いていたんだよ。
部長「俺が悪かった」
どうして気付けなかった。例え報われなかったとしても、しなければならない努力がある事に――
パンッ
部長「っ!」
副部長「最低……!」
優しい平手打ちだった。
171 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/02/10(土) 18:49:01.50 ID:cZ95xm5hO
副部長「どうして、自分だけのせいにするの!?」
副部長「皆だよ!皆!!副会長は何でもかんでも激しく叩くし、ロリちゃんは私達を置いて新しく作ったバンドに夢中、幽霊部員なんか部活にすら顔を出さない、部長は率先して練習をしない、私は……は……私は凄く下手っぴだ…………から」グスンッ
昔は何をやっても人並み以上にこなす事が出来た。
副部長「まだ……諦めちゃ駄目だよ!」ポロポロ
歌だってその例外ではない。
副部長「学校にだって掛け合って……」グスッ
副会長「作詞先輩が何回も掛け合いましたよ」
そんな俺が惹かれたのはチェロという楽器。
幽霊部員「副部長ちゃん……」
親に何度も無理を言ってやらせてもらった。
副部長「嫌だよ……新しく部員が入ったのに……」ポロポロ
そんな俺は周りよりも上達が早く、何度もコンクールに出て、気付けば……周りに追い越されていた。
才能?感覚?クソ食らえよ。
副部長「男君と不良ちゃんが可哀想だよ……」グスッ
俺には才能が無いとでも言うのか?器用貧乏?
俺に才能があったら自由天文部になんか……
「お疲れ様!!打ち上げにでも行くかにょ?」
部長「!」
副部長「ロリ……ちゃん」
副会長「……」
幽霊部員「いたたまれないっすよ……」ボソッ
部長「あ……あ……っ……あぁ……」ガクッ
自由天文部になんか……
ロリ「ごめんね……私のわがままで辛い思いをさせて」
部長「ロリ……先輩……ごめんなさい……!俺!!自由天文部を……自由天文部を……!」
ロリ「土下座しないで……私が悪いのに……ほら、涙拭いて」ナデナデ
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/02/11(日) 04:20:23.95 ID:OcTB4Gt2o
ロリはみんなのお母さん
173 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/02/19(月) 21:47:25.10 ID:qaWYH822o
その6 ロリ ライジングロックの帰り道
部長「ごめんなさい……ごめんなさい……」
この子も器ではなかった。
それだけの話。
むしろこの状況の中、最も重圧がかかるポジションをよくこなしてくれたとも思っている。
二年前の今、自由天文部の部長をやっていたドラムをこの子は慕っていたと思う。
この子はドラムのようになりたかったのか私には分からない。
それとも……
ロリ「立派だったよ」
私のようになりたかったのか。
ロリ「ほら、立ってよ」
最初は「モテたいから」と言って入部した彼が「この部活を残したい」と言ってくれたのには本当に驚いた。
本人が綺麗な言葉で飾ろうとも燻った感情を募らせている子だとは分かっていた。そんな癖のある子だからこそ奇跡を起こすと信じた私が自由天文部の代表に相応しいと思ったからこそ部長に指名したのだ。
そんな子に対してトラウマを更に積み重ねてしまった私は人として最低だろう。
「モテたい」というのは嘘で何かを残したい事も分かっていた癖に……
先輩ならどうしていたのかな、もう分からないよ。
ロリ「まずはたくさん休んで……それから」
ロリ「文化祭があるから、それには出よう」
ロリ「最後の思い出だからね」
先輩、ごめんなさい。
私は貴女の夢を叶える事が出来なかった。
174 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/02/26(月) 19:33:59.37 ID:N89DNej0O
第三章 ロリ「絆の奇跡」 始まり
男「話しって?」
打ち上げの帰り、俺は友に呼び出された。
場所は俺の家の前。
祖父と祖母にいらぬ誤解でもされたらどうするつもりなのか……
友「俺……いや、私は」
男「文化祭でテンションでも上がったのか?変な事言うなよ」
友は正直に言ってかなり変な奴だ、いつも男のように振舞っている。
学校に1人は居る痛い奴なのかと思えば普通に会話も出来るし、むしろ上手だ。
友「男が分からないんだ」
男「その言葉そっくりお返しするわ」
友「ほら、男って女として美しいけど、男として美しくもあるだろ?」
男「心外だけど、否定しないよ」
友「だからさ、そんな男を見てると俺……私はどうしたらいいのかなって……」
男「結局は何が言いたい?もっと男らしくしろとでも?」
友「ごめん、違う。俺の話なんだ。俺がどう振る舞えば良いのか……」
友「初めてなんだよ、俺と同じような人を見たのが……絶対に同類だし、仲良くなれると思ってる。だから出来るだけ男が俺と一緒に居て心地良い風にしたいんだ」
男「趣味悪いなお前」
こいつ、俺と全く同じ事を考えて居たのか。
間違いなく同類だな、だからこそ言ってやらなければならない。
曖昧な発言で友を狂わせてはならない。
男「あのさ、女なんだから女らしくしろよ。折角の高校生活、楽しまなきゃ損だぜ」
友「……わかった」
綺羅星ソニアだった時も俺が男であるように、友も女であるべきなんだ。
男「はぁ……仕方ない。ちょっと上がれよ」
友「ふぇっ!?」
こいつには俺の事を教えてもいいと思った。例え軽蔑されたとしても、友ならば良いとすら思えたのだ。
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/03/04(日) 00:30:12.56 ID:uhszVFXUo
きたか!
176 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/03/05(月) 08:30:27.07 ID:vgr83SUvO
友「おっ、おお、おっ、お邪魔しますぅ……」
男「今日は誰も居ないな」
最近はこういう事が多い、二人揃って何をしているのやら。
友「誰も居ない!?」
友「……」
友「そうか」
男「……」
男「目が据わってるけど……」
友「気のせいだよ」
男「やっぱりお前おかしいって」
男「まぁいいや……」
男「こっち来て」
昔使っていた部屋に案内する。
友はよろめくような足取りで着い来た。
177 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/03/17(土) 19:47:52.41 ID:XY49X/HFO
>>176
友はよろめくような足取りで着い来た
↓
友はよろめくような足取りで着いて来た。
178 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/03/19(月) 19:06:42.54 ID:XrCQ6Rq9O
男「この部屋」
アイドル時代に使っていた部屋だ、ここで一人夜な夜なとレッスンや化粧の勉強とかしたっけな。
まぁ、化粧はマネージャーか社長が全部やってくれたから意味無かったけどな。
友「え、女物の服ばかりじゃん」
男「昔着てたんだよ」
友「?」
友「お前……マジで?」
男「違うって」
友「でも……」
男「ほら見て」ズポッ
ソニア時代のウィッグを被る。
友「!」
男「お前には知られても良いって、思ったんだ」
友「マジでぇ……?」
男「そう……俺が綺羅星ソニアだよ」
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/03/23(金) 20:14:50.01 ID:IoVsUnOPo
めっちゃ期待
180 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/03/24(土) 22:18:10.63 ID:cYWoAi95O
友は頭が追いつかないのか、当時着ていた衣装、超ミニのスカートをずっと握りしめている。
この衣装は着ているだけでハラハラするスカートだったな。
男「その衣装売ったら100万くらいするから」
友「ひゃっ!ひゃくまんっ!?」
テンプレートの反応ありがとうございます、ん?この衣装に不自然なシワがあるな、祖母が触ったのか?
友「あばば……」
俺の格好が男子高校生そのものであるにも関わらず、ウィッグだけでも気付いてしまう親友。
男「やっぱりわかる奴にはウィッグだけでも分かるんだな」
友「き、き、き、綺羅星ソニアさんだったんでつね……」
ここまで恐縮しなくたって良いじゃないか、遠い存在な訳では無いだろう?
男「もう辞めたけどな」
181 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/03/24(土) 22:22:52.07 ID:cYWoAi95O
友「トップ中のトップアイドル様がどうして……?」
男「稼ぎ過ぎたのと単純に新しい道を模索したかったんだ」
友「引退したアイドルが俳優を志すのと似ている……」
男「簡単に言えばそうかもな、俺は学生生活なんて微塵も興味無いけどさ」
友「綺羅星ソニアならギターをやるにしても沢山レッスンを……」
男「おばあちゃんがさ、普通の高校生活をして欲しいってうるさいんだよ」
友「あっ、凄いほっこりする」
男「俺自身もメディアとかプロの枠に囚われない表現を実現してみたかった。てのはある」
男「そしたらさ、身近には凄い人が居るんだよな」
友「会長さんの事?」
男「そう、あの人は天才なんて言葉じゃあ測れない」
友「そんなに凄いの?」
182 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/03/24(土) 22:24:28.49 ID:cYWoAi95O
友は会長の並外れた才能を理解していない。
同じ学生と言うフィルターが評価を落としているのか、そもそも音楽に興味が無いのか。
男「綺羅星ソニア並さ」
下手すれば越えられるかも。
友「自画自賛?」
男「とんでもない。ソニアは俺であって俺ではない」
男「俺が生み出したキャラクターだよ」
実際に綺羅星ソニアを演じている時は本当に別の人間になったかのような、夢を見ているかのような……そんな感覚なんだ。
友「キャラクター……」
友「あのさ……誰かに男の秘密をバラ撒くとかそんな気は一切無いし、墓まで持っていくつもりなんだけどさ」ガシッ
友は急に俺の手を持ってどうするつもりなのか、すごく嫌な予感がする。
友「今一信じられないから……実際に綺羅星ソニアの歌を歌って踊ってみて欲しい……………な」
凄い上目遣いでお願いをされてしまった。
183 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/03/24(土) 22:25:42.28 ID:cYWoAi95O
男「嫌だ」
友「それが嫌だ!」
男「しつこいなぁ、嫌な物は……」
友「……」
友「だったら……」
『だったら?』
秘密をばら撒くつもりか?
友にばら撒かれるのなら許せるけど、少し残念だな……
友「絶対に!ここをどかない!」
間を空けて言う事がそれ?
男「ふふっ……あははっ……!」
なんだか馬鹿らしくなった。
友は俺が思っている以上に良い奴だ。
俺に見せて差し上げよう。
男「良いよ、聞かせてやるし………」
男「見せちゃうよ――」
男「――」
ソニア「私のステージ!!」
友「うおおおおお!!!!」
ソニア「と、その前に☆」
ソニア「お着替えしなくちゃ♡」
友「あ、はいっ。早めでお願いします」
184 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/03/25(日) 07:43:22.91 ID:uHH4384aO
ソニア「では、改めましてっ☆」
私、ソニアは本来ならば大勢の観客の前以外ではステージなんて行わない。
こんなにも規模が小さなステージなんてデビューした時すら無かった。
そもそもで言えばアイドルなんて引退しているけど……
唯一の親友に披露する限定ステージなら話は違うよね、うん。
ソニア「友ちゃーん!今日はありがとー!」
友「きゃあああああ!!!!」
ふーんっ。
友ってこんな表情もするんだね!
ソニア「じゃあ、1曲だけ歌うよ?……」
CD再生、ポチッとな。
友「シュール……」
うん、聞こえてきたよ。
凄く激しい曲で、ダンスも過激だったからレッスンは大変だったな〜懐かしいっ!
ソニア「……っと」
そう、最初のステップが急だったね。
友「パンツ見えてる!見えてる!!」
185 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/03/25(日) 07:45:57.70 ID:uHH4384aO
ソニア「今日はありがとっ!」
友「アンコール!!アンコール!!」
ソニア「もうっ、だめだよー?」スポッ
これ以上踊るつもりは無いので、ウィッグを外すと……
男「めちゃくちゃ疲れたから……これ以上は無理……」
まぁ、男に戻る訳だ。
多重人格とかそんな大層な物ではなく、ただキャラクターを演じ分けているだけなのさ。
友「残念……けど、ウィッグを取っても女みたいだ……ね」
男「見た目だけな。ようやく分かってもらえたと思うけどさ、俺はれっきとした男なの」
男「だからお前も男のように振る舞う必要は無いんだよ、わかった?」
友「分かったよ……」
男「女なんだから、ソッチでも無い限り女の格好をしなきゃ勿体無いよ。折角の女子高生生活を変に楽しんでも勿体無いだろ?」
友「うん、分かった。これからは女らしくするよ」
これだけ真剣に見つめてくれるのならばもう彼女の事を心配する必要は無いだろう。
友「でもさ、えいっ」
スポッ
男「……」
友は綺羅星ソニアの物とは違う、普通のウィッグを俺に被せた。
友「どうみても女だよな」
男「もっと男らしく産まれたかったけど……この顔に産まれて感謝してるよ、おかげで金には困らない」
友「そう言えば……どうしてアイドルになったの?」
男「きっかけはスカウトだけど……思いっきり勝ちたかった……いや、勝ちたいんだ……“あいつら”に」
思い出すだけでも腹立たしい、胸を締め付ける、涙が出そうになる、悔しい、殺してやりたい、勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい、み……
友「“あいつら”?」キョトン
男「両親と姉に……勝ちたいんだ……子供染みてるけどさ、復讐してやるためにアイドルを始めたんだ」
友「どうしてそんな……」
男「……」
男「それは……教えられないな」
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/03/26(月) 05:35:27.15 ID:BWVOUd95o
むっちゃ気になる
187 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/03/30(金) 08:19:25.91 ID:ndijAR7dO
友「話したくない事なの?」
男「まぁ……うん」
友「そっか……」
男「…………」
――6年前
「下手」
「もう一度歌いなさい」
男「う、うん!」ニコニコ
「……」
男「La 〜♪」
母「もういいわ」
父「次は姉が歌いなさい」
188 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/04/04(水) 08:34:14.11 ID:JC88S2aqO
近所のホールでいつものように練習、憂鬱な時間だった。
男「ごめんなさい……」
父「……」
姉「〜♪」
俺はこの家で1番の出来損ないだった。
物心が付いた頃から“適正”を見る為に一通りの楽器、更には歌までも練習させられる。
ギター、ベース、ドラム等の俗に言う大衆向きは“低俗”だそうで、それを扱うジャンルは聞かせてすら貰えなかった。
傍から見たら狂っているのだろう、それに気付いた頃には全てが遅かったが。
父「うん、良い」
母「同じ兄弟なのにどうしてかしら……」
父「声が高過ぎるのか?」
母「まだ子供だから?」
父「それは姉もそうだ、更に言うと男はいつも自由に歌う癖がある」
母「そうね……どうしたらいいのかしら?この子は私達が思い描く方向と逆に行くもの」
男「……」
両親は俺の事でいつも討論する。
それを見られるのも嫌だった。
189 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/04/06(金) 11:12:51.23 ID:sanDJTSlO
「……」ジッ
男「うっ……」
「どうしたの?」
男「なんでもないよ……」
「おうた、じょうずなんだね!」
男「う、うん」
母「男!聞いてるの!?」
男「ご、ごめんなさい!」
「……」
母「この子は……もう」
最初から両親が求める物を持っていなかったのだろう。
結果的には……ある日の事だった。
いつものように家へ帰ると……
男「ただいまー」
男「あれ?お母さん?お父さん?お姉ちゃん?」
祖母「……」
祖父「男……あのな」
祖母「いい、私が言うから……」
祖母「聞いて、男」
祖母「お母さんとお父さんとお姉ちゃんはね、引越ししちゃったの」
190 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/04/08(日) 23:40:45.94 ID:eId9HoRhO
男「引越し……?」
祖母「少し忙しいから……」
祖母「ほんの少しだけ引っ越してるだけだから」
男「いつまで!?」
女のような奇声をあげて叫ぶ。
男「いつまでなの!?」
何度も何度も叫んだが、意味は無かった。
祖母「……」
男「教えてよ!」
子供ながらにして捨てられたって事は分かっていたが、認めたくなかった。
男「じょうずに歌うからぁ………っ………!」
その時の俺は昨日出場した歌のコンクールで起きた出来事を思い出していた。
――――
パチパチパチ
男「……」ペコッ
「では、〜〜番の男君。歌ってください」
男(自由に歌いたい……な)
男(いいよね?どうせコンクールは何回もやるし……)
男(本当はもっと上手に歌えるって……お父さんとお母さんに認めてもらわなきゃ)
「男君?」
男「ごっ、ごめんなさい。歌います」
「はい、緊張しないでね」
男「La〜♪」
父「……」
母「どうしてこうなのかしら……」ハァ
「おお、凄い上手だな……」
「子供でこの表現力は……」
母と父は単純に率直に歌えば満足なことに対し俺はタメやアレンジを加えてしまう。
どちらも決して間違ってはいないが――
――
男「あのコンクールがきっかけだ……帰り道だって一言も……うわあぁぁぁ……!!」
祖母「ごめんね……私がもう少しまともに……!」
祖父「あの馬鹿は……」
そして……
あの頃から人として緩やかに死んでいくだけだった俺の事を……あの人が救ってくれた。
191 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/04/08(日) 23:55:39.94 ID:bJTzmZT9O
中学生になったばかりの頃だった。
「ああ……また誰もスカウトできなかった」ウルウル
男「……」
「あっ、凄い美少女だけど……ボーイッシュだな」
たまたま繁華街を歩いていた時に出会った運命の人、俺の事を変えてくれた人。
「ねぇねぇ、貴女」
男「……?」
「――アイドルになってみない?」
――現在
男「……」
友「おーい?」
男「ごめん、物思いに耽ってた」
友「絶対に昔の事思い出してたろ」
男「ふふっ……そうかもな」
友「教えてくれたっていいのに……もうっ」
男「両親からひどい扱いを受けてきたってだけだよ」
男「ほんとにそれだけ」
完膚無きまで俺の実力を見せつけてやって、姉よりも優れてるって見せつけて……謝らせて……それで……
男「許してはあげたいから」
友「そっか、うん!そうだよな!それでこそ男だ!」
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/11(水) 23:47:49.15 ID:tsX8qE2To
重いな
おつおつ
193 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/04/21(土) 10:18:50.33 ID:rGIivKQtO
友は何ともやるせない表情、捨てられた子犬を見るかのような目で俺を見る。
友「凄く仲が良くないのは分かったけどさ、そんな両親と一緒の家に居辛いとかは無いの?」
男「両親は家に居ないからさ」
友「え?」
ん?急に雰囲気変わったな。
友「じゃ、じゃあ普段は……どうして?」
男「普通におじいちゃんとおばあちゃんが居るよ」
友「はぁ……今日泊まっていい?」
男「自然な流れで泊まろうとすんな」
何が目的なんだか。
友「じゃあさ……あのさ……」ドキドキドキ
友の表情、素振り、雰囲気が急に女性らしく、今までの友を知っている俺からしたら違和感しかない。
友「好きな人とか……居るの?」
友は前髪に人差し指を絡め、すじりもじりと身体を動かしている。そこまで恥ずかしがるような質問なのか……
まぁ答えてやろう。
男「居るよ」
友「誰誰誰!!??」
友は鬼気迫る表情で俺の両手を突然掴んでから引き寄せる。
密接した状態、少し前に顔を出せば唇と唇が触れてしまうだろう。
男「ソニア時代のマネージャー」
ここまで言わされてしまったか、うん。
親友だからと言っても、限度があるのではないか?
194 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/04/24(火) 12:23:46.38 ID:b2q9pkw9O
友「……」
友「えっ?」
友は呆気に取られ、俺が何を言っているのか今一理解出来ていなかった。
男「本当だよ、うん。だってさだってさ、凄く可愛らしいんだよ」
友「歳……いくつなの、その人」
男「21……」
友「ほぼ6歳差!無理だよ!!」
この女、男のように振る舞う割にはまともな事を抜かしやがる。
男「ワンチャンあるかも知れないだろ!」
友「諦めて!!」
男「いやだよ!」
195 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/04/29(日) 09:57:57.69 ID:83Qcb0RoO
友と他愛も無い口論を数十分も続けた後、家に返した。
帰りたくないと喚いていたのだが、文化祭の帰りに女子を家に泊めるのは問題しかない。
男「ギターもしたかったし……」
リビングにはお父さんとお母さんが座っている。
今日は何があったのか話してあげないと、とっても楽しかったって。
男「うん……そうだよ、友がね、とっても面白くってさ」
男「可愛い女の子なのに男のように振舞おうとしているんだよ。でも、それは僕に合わせようとしているだけでさ、本当は人と違う訳じゃないんだって」
男「話聞いてる?え?」
男「歌え?どうして?」
男「いやだよ?もう歌わなくて良いって、無理矢理歌わせてごめんって、謝ってくれたよね!?」
男「……」
仕方なく歌った。
精一杯、下手くそなりに……
下手くそ?
どこが?
男「ははっ……」
笑いがこみ上げてくる、これはたまらなく痛快な喜劇だ
男「あっははははは!!」
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/29(日) 20:08:11.44 ID:qLx/p7wLo
こわい
197 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/05(土) 18:59:26.03 ID:DdI/X0cAO
おとうさんとおかあさんはそれでも下手糞と、期待外れと、心のない一言が僕を、私を、俺を傷つける。
男「うるせぇよ!!」
男「下手糞はてめぇら、あんた達だろ!!」
男「俺の何がいけなかった!?」
何も答えない。
男「表現は自由だろ!?」
男「どう聞いたって俺の歌は上手だろ!!??」
男「お姉ちゃんよりも!!ずっと、ずっと!!」
俺の方がずっと魅力的に歌えると子供の頃から今までずっと思ってきた。それでも2人は姉を選ぶ。
男「俺を“こうした”のは誰だ?男性として歌えなくしたのは誰だ?」
男「女物のウィッグを被らなければ歌えなくしたのは誰だよ!?」
友に被せられたウィッグをまだ被っていたから歌えているだけだ、綺羅星ソニアの姿なら歌えるってだけではない。
男で無ければ歌えるのだ。
男「女に扮する事でしかまともに歌えないって……馬鹿みたいじゃん」
それでも……それでも……
男「歌えるのならそれでいいや」
男「あははは、きゃはははは!」
奇声のような笑い声は女性そのものだった。
198 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/06(日) 00:09:22.50 ID:oAmXNntKO
同時刻
近所では少しだけ名が知られている会員制のレストラン。本日のメインとして招待された若手のジャズバンドが小気味よい即興演奏を行い場を湧かせる最中、ある1つのテーブルでは場違いとでも言わんばかりに聞いていても心地の良くない会話が繰り広げられていた。
周囲の目も憚らず、テーブルには男の両親と姉、祖父母が一堂に会している。
母「お母さんとお父さん、良い音よ。これを家族で聞く為に今日は集まった筈でしょ?」
父「お義母さんとお義父さん、良い音ですよ。いやー今日は記念すべき日ですね。こうしてまた集まれた」
祖母「あなた達にお母さんと言われる筋合いはありません」
祖父「2人揃ってお母さんとお父さんなんて気持ち悪い、どうした?言いたい事は何も無いのか?」
祖父母が出す険悪な雰囲気に対して父と母は何処吹く風だ。
最初からまともに取り合う気も無いかのように。
姉「……」
祖母「どうして今更顔を出したの?」
母「実はね、姉は今度行われるフェスに出場する事になったの」
祖母「フェス……よく分からないけど、凄いのかしら?」
父「ええ、ジャンルを問わずにインディーズの若手実力派が集まります」
祖父「いんでぃーず?」
父「ふっ……まぁ、プロではない若手ミュージシャンの祭典と言ったらわかりやすいかと」
祖父を小馬鹿にした態度をほんの一瞬、わかりやすく出してしまう。
これが父という人間のほん一端、決して悪気があわる訳では無い。
祖父「あ?今鼻で笑ったか?」
母「気のせいよお父さん」
祖父「お前は黙ってろ!」
祖母「やめてよこんな所で……」
祖父「ちっ……」
父「私のツテで参加出来るようになりまして……」
母「この子の実力だって立派よ、きっと良い結果を残すわ」
祖父「そうか、それは良くやったな」
祖母「おめでとう」
祖父母の言葉は心からの本心、姉だって可愛い孫の1人なのだから。
姉「……」エッヘン
が、どうしても気になる事がある。
祖母「……」
聞いても録な事が無いだろう。
このレストランに来てから2時間弱、本当に話すべき事を話さずにずっと無言の食事をしていたのだから。
祖母「男は……気にならないの?」
母・父「……!」
父「あ、あぁ、男は元気にしてますか?」
母「ずっと気になってたの、しっかりご飯食べてるかしら」
祖母・祖父「……」
2人は年の功なのか、人の親としてなのか、今の反応だけでこの2人と男が再び笑い合える日が来る事は二度と無いと理解した。
今日、この場に男を連れて来なくて本当に良かった。
あまりにも惨い。
祖母「姉に対する愛情を少しだけでもいいから男に分けてやれなかったの?」ボソッ
祖父「……」
呪詛のように小さく呟かれた言葉が祖父以外に届く事は無かった。
199 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/10(木) 13:58:23.03 ID:/nY1i46xO
姉「男に会いたい……」
母「……そうね」
母「音のセンスがなくたって男は私達の……」
母「家族だから」
父「だな……」
母は真っ直ぐな瞳で祖母を見据える。
母の言葉は常識でこそあるが、心からの嘘偽り無く望んでいる事ではない。
普通の人間なら2人と男を近付けたくもないだろう、せめて父と母の覚悟を推し量る為にも1度は突き放すだろう。
祖母は理解していた。
試しに突き放したとしても父と母が食い下がる事は無いと。
『はい、そうですか』と待っていましたとでも言わんばかりの反応を取り、自分達が悪者ではない、むしろ普通の人間である事を体良く表現するのが目的だと。
今は会いたくても会えない、それならば昔は?どうして?
祖母は考える事すらも馬鹿らしくなり、仮にも腹を痛めて産んだ筈の子を小さく鼻で笑ってやった。
祖母「……」
祖母「綺羅星ソニアって知ってる?」
こんな茶番を繰り広げるよりも別の事を話した方が良い、自分の娘で無ければ思い付く限りの罵倒雑言を浴びせてやりたかった。
母「えぇ、有名ね」
父「アイドルとは思えない歌唱力ですが、どうして?今はそれどころでは……」
祖母「……」
あの時の事は少し行き過ぎた教育だと思っていた。
男に対する情熱が間違えた方向に行ってしまっているだけだと、祖母はひどい勘違いをしていた。
目の前で座っている2人は男を道具かなにかと勘違いしていたのだ。
その結果、男は屈折した感情を今でも持ち続けている、理由は言うまでもない。
祖母「気づくわけない……か」
200 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/14(月) 20:07:00.39 ID:n6/G/YMiO
これで分かった。
この二人は男の親ではない。
分かってはいた。
言うまでもない。
それでもやりきれない。
祖母「姉は今幸せかな?」
綺羅星ソニアが男だと分かっていたのなら、ほんの僅かな可能性があったのかも知れない。
姉「はい、とっても」
祖母「お父さんと、お母さんみたいになっては駄目よ?」
何も期待出来なかった。
ジャズバンドの演奏が終わると同時に言い放つ。
祖母「あんた達と男は会わせないよ」
パチパチパチパチ
その声が拍手と共に掻き消されていたとしても関係無い。
お代だけを置いて祖父とレストランを後にした。
201 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/17(木) 08:41:19.29 ID:ny5dU8viO
同時刻。
「あはは……ごめんね、たくさん食べちゃって」
幽霊部員の家には部長、作詞、作曲、副会長、副部長までもがお邪魔していた。
幽霊部員「いいっすよーそれくらい」
副会長「この人、常識と言う物が……」ピクッピクッ
名も知らぬ女性は幽霊部員の家にある炊飯器を全て平らげる。
その行いは副会長の琴線に触れるのに充分だった。
空腹で倒れていたとは言え、マナーが無いと副会長は考えていたのだ。
しかし、気にしていたのは副会長だけであり、他の部員達はその事を気にしてすらいなかった。
作詞「君は相変わらずだね、副会長」
副会長「かいちょ、作詞先輩……しかしですね」
作詞「そう、この女性の行いは明らかに非常識。しかし、それをもってしても余りある空腹が彼女を苦しめていたのだろう。本来ならば限界を迎えてしまったであろう人間を助けたと言う事実こそが今の私達に」
副部長「どうしてご飯も何も食べずにあんな所で倒れていたんですか!!??」
作詞「必要であり……」
部長「珍しく折れたな」
作曲「眠い……」
「お金が無いから、です」
「うん、そう、お金が無い、から……あはは」
この女は感情が無いのかどうなのか、口は笑っても目が笑っておらず、どうしても心象が悪い。
一言で言うと気持ちが悪いのだ。
副会長「……お名前は?」
202 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/18(金) 23:00:56.68 ID:kfQdpLGcO
作詞「折れた訳では無いよ、副部長の
無神経にほとほと呆れ果て……」
幽霊部員「作詞ちゃんうるせーっす」
幽霊部員の言葉はシンプルに作詞の言葉を遮った。
作詞は静かに腕を組み、横目で幽霊部員を見ながら笑っている。
この状況では仕方が無いと言った様子だ。
「その前に、聞いて……いい?」
部長「あぁ、どうぞ」
質問を質問で返しても気にする素振りは無く、あっけらかんとした様子だ。
部長「……」
部長は静かに目の前の女性を分析していた。
前髪は口元、襟足は腰までの好き放題に伸びきった髪の毛を無理して金髪にしたからなのか、髪は痛みきっている。
人として常識の無い姿に隠してはいるが、嫌悪感を抱いている。
その全てをひっくるめて気持ち悪いと言うのが彼の素直な気持ちだった。
そう、部長の見る目は正しくもないが間違ってもいない。
目の前で座っている女は人として死んでいると言うのが正しい。
「……あのさ」
痛みきった髪を指先で弄りながら質問する。
「――自由天文部なの?」
203 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/21(月) 08:42:45.33 ID:lfhakcVzO
前髪の隙間から覗く、暗く淀んだ目で部長の事を見据える。
部長「え?あ、そうっすけど……」
「楽器持ってるからね……そうかなって」
小さな声でぽつりぽつりと語り出す。
耳を凝らさなければ聞こえない。
「OG……だから……君たちの学校にも通ってたし」
部長「え?マジすか?」
作詞「!」
幽霊部員「どっかで見た事ある気がしたんすよねー!」ドヤッ
「毎日のように……ううん、サボってばかりだったけどね」
作曲「あ……でも……」
「まだ潰れてないのが不思議なくらいだよ」
204 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/24(木) 01:48:56.87 ID:oNBvphcjo
作曲「違います……」
作曲「三学期中に廃部します……」
「……そっか」
静かにタバコを取り出し、火をつける。
「ごめんね、ちょっとだけ」
幽霊部員「お姉ちゃんも吸うから良いっすよ」
「お姉……ちゃん……そっか、一緒に……住んでる……の?」
自信の無い掠れた声で質問する。
ここに居る全員が彼女の声を聞き取るのに必死だった。
幽霊部員「そうっすよ!今はイギリスでホームステイしてるっす!」
「そっか」ニチヤァ
口角だけを上げた気持ちの悪い笑みを浮かべる、不自然かつ気味が悪い。
誰から見ても彼女が人とまともに会話をしてこなかったの事が伺えたのだった。
部長「なぁなぁ……」ヒソヒソ
部長は幽霊部員の部屋に立て掛けられていた写真をこっそりと副部長と作詞に見せる。
副部長「んー?」
写真には過去の自由天文部が写っていた。
部長「これって昔の自由天文部だよな?」
作詞「そうだね。見た所によると写真の隅に立っているのがロリ先輩で、中央でピースをしているのが自由天文部を作った伝説の先輩だろう。幽霊部員の姉も写っている」
「私は女……です……」
幽霊部員「女……聞いたことないっすね」
女「サボってばかりだったから……」
二人の会話を横目にして話は盛り上がる。
副部長「うーん、女さんは顔が隠れてるから誰か分からないや」
部長「だよなー世代違いか?」
作詞「どうだろう?幽霊部員のお姉さんを知っていた素振りはあったからね、私からはこの写真に女先輩は居ないとしか言えないな」
205 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/25(金) 08:28:44.79 ID:kYP2e3HmO
幽霊部員「ちなみに今住んでる家はあるんすか?」
副会長「幽霊部員!こんな所でお人好しを発揮してどうするの!?」
部長「でた、幽霊部員にだけタメ口」
女「無い……追い出された」
女「荷物もなにもかも……うん」
女「家賃未払いだからって荷物まで没収は酷い……よね?ははっ」
副会長「それだけで済んで感謝する所でしょう……」ハァ
女「とり、あえずはお金を稼いで……未払い分の家賃を払わなきゃ……」
作曲「逞しい……意外」
幽霊部員「それまでうちに泊まるっすか?」
副会長「幽霊部員!!」
部長「あいつ、本当に何考えてるかわかんねーわ」
作詞「ふふっ……」
副部長「本当に変な子だなー」
幽霊部員「どうするっす?お姉ちゃんが帰ってくるまでの間っすけど」
女「……お言葉に……甘えて……」
幽霊部員「決まりっす!ちゃちゃん!」
女「本当に似ている……」ボソッ
部長「じゃっ、帰るか。また来週」
206 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/25(金) 08:39:27.62 ID:kYP2e3HmO
そして、平等に夜が更けていく。
3日後
ロリ「夏休みぃぃぃ!!」
幽霊部員「あと少しで夏休みっすよ!」
男「どうします?俺達が狙えるとしたらこのフェスが……」
会長「そうだな、うまくいけば……」
副会長「会長を中心に据えていくのは当然として」
月曜日の放課後、全員が部室に集まっている。
自由天文部は新たなスタートを切った。
207 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/27(日) 00:11:06.43 ID:D+XqGNx9O
>>206
訂正
そして、夜は平等に更けていく。
3日後
副部長「夏休み!!!!」
幽霊部員「あと少しで夏休みっすよ!」
男「どうします?俺達が狙えるとしたらこのフェスが……」
会長「そうだな、うまくいけば……」
副会長「会長を中心に据えていくのは当然として」
月曜日の放課後、全員が部室に集まっている。
自由天文部は新たなスタートを切った。
208 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2018/05/27(日) 00:24:20.20 ID:D+XqGNx9O
部長「そう言えばうちのOGに会ったぜ」
不良「ふーん、どんな人だったの?」
部長「うーん……口では表しにくいな」
作曲「暗い……人」
部長「お前がそれ言う?」
幽霊部員「頑なにパートを教えてくれないんすよね、センスありそうなのに」
幼馴染「サボってばかりだから言えないんじゃないの?」
部長「お前もそれ言う?」
副部長「ねぇねぇ知ってる!?ダブルフェイスのツンデレちゃんが脱退だって!!」
男「ごはぁっ!!!?」ブ-ッ
どういう事だ?現状で言えばトップアイドルだったのに自らそれを捨てるか!?
会長「本当か!?残念……だな」
作詞「驚くのは結構だが……かかっているんだよね、男君が飲んでいたジュース」ピクッピクッ
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