ハルヒ「みて、キョン!ここ家賃が1万円だって!!」キョン「……!」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/16(木) 19:26:03.48 ID:+enzTC0Eo
キョン(土曜日。俺の気分は下り坂ながら、本日は文句なしの晴天だ)

キョン(そもそも、不思議探索をする日が雨だった記憶があまりないのだが)

キョン(これもハルヒの為せる技なのかね。そういえば長門も天候を操れるんだっけか)

長門「……」

キョン(土下座すれば呆れながらもやってくれそうだが、生憎と数百万年後の生態系を崩す理由は今のところない)

キョン(などとくだらない考え事をしている余裕がある、というのが既に異常の始まりを告げている)

朝比奈「遅いですね……」

古泉「ええ。何かあったのでしょうか」

キョン(二人が不安になるのも分かる。かくいう俺だって流石に心配のひとつぐらいはする)

キョン(いつもの待ち合わせ時間から10分が経過しているのにも関わらず、ハルヒの姿がなかった)

キョン(谷口や国木田が10分ぐらい遅刻したところで何とも思わないが、ハルヒだけは別だ)

朝比奈「電話、してみましょうか?」

キョン(朝比奈さんの提案に頷こうとした瞬間、俺は安堵と共に恐怖を抱いた。何故なら――)

ハルヒ「みんなー!!! 不思議をみつけてきたわよー!!!」

キョン(年中不発弾だった奴が、とうとう導火線に火をつけながら満面の笑みで走ってきやがったからだ。今日は何が起こるのか。想像などできるわけもない)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1487240762
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/16(木) 19:34:07.27 ID:+enzTC0Eo
古泉「不思議、ですか?」

キョン(古泉の顔が引きつっている。無理もない。ハルヒが見つけたという不思議は、物理法則を軽く無視してくれるからな)

ハルヒ「そうなのよ!! で、ちょっと遅刻しちゃったの。ごめんね。あと、おはよー!!」

キョン(いかん。今までに見たことのないぐらい上機嫌だ。閉鎖空間は完全に出現しないだろうな)

古泉「それはそれで困ったものです」

キョン「仕事が減ってよかっただろ」

古泉「慣れている仕事のほうがまだ楽という場合もありますが」

朝比奈「あの、えっとぉ、す、涼宮さん……ど、どんなふしぎをみつけてきちゃったんですかぁ……」

キョン(その言い回しだと「なに余計なことしているんだ」という風にしか聞こえません、朝比奈さん)

ハルヒ「ふっふーん。今日はクジなんかしなくてもいいわ。みんな、あたしについてきて」

キョン(ハルヒは鼻息を荒くさせ、歩いていく。朝比奈さんの言葉の裏には気づいていないようだ)

キョン「どこに行くつもりだ」

ハルヒ「いいから、ついてくる」

キョン「やれやれ……」

キョン(しかしまぁ、背中にも表情というのはあるんだな。あいつの背中はとても楽しそうである)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/16(木) 19:44:38.32 ID:+enzTC0Eo
ハルヒ「じゃじゃーん!! ここよ!!」

キョン「は?」

キョン(俺はてっきり空間にぽっかりと穴が開いていたり、落書きのような暗号が書かれている看板などを想像していたが、全く予想とは違っていた)

キョン(ハルヒが嬉しそうに指を差している場所は、駅前になら必ず一店舗は存在する不動産屋である)

キョン「ここにどんな不思議があるっていうんだ?」

ハルヒ「なんでも人に聞くんじゃないわよ。まずは自分で考えなさい」

キョン(そう言われてもな。店の中では若い男性がパソコンとにらめっこしているだけで、変わった様子はない。店も至って普遍的だ。場にそぐわないアンティークがあるわけでもない)

キョン「全く分からん」

ハルヒ「はぁーあ。キョンはあれよね。すぐにネットで検索して答えを調べちゃう派だから、思考力が身につかないのよ」

キョン(自分で調べるだけマシだろうが。と心の中で反論する)

古泉「まさか……」

キョン「何か気が付いたのか」

古泉「物件広告をみてください」

キョン(古泉の視線の先にあるのは、貼り出されている物件の間取りを記したものだった。一人暮らし用から分譲マンション、戸建てまで多種多様。長門や朝倉もこういったものを見て住む場所を決めたのだろうか)

キョン「別に不思議なことはないだろ。不動産屋にとっての商品だし、無い方が不思議だぞ」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/16(木) 19:52:39.74 ID:+enzTC0Eo
ハルヒ「物わかりの悪い鈍感なキョンのために答えてあげるわ」

キョン(本当は言いたくて仕方ない癖に)

ハルヒ「みて、キョン! ここ家賃が一万円だって!!」

キョン「……!」

ハルヒ「ワンルームのアパートだけど、ここの相場からいって1万円は安すぎると思わない!?」

キョン(みなさん。事故物件という言葉を聞いたことはあるだろうか。幾度となくテレビなどでも特集されているから耳にした人は多いだろう)

古泉「……」

長門「……」

キョン(古泉は恐らく、9割以上は察しているはずだ。長門は最初から全てを知っていたと考えたほうがいい)

朝比奈「わー、とっても安いですねぇ。すごーい」

キョン(朝比奈さんは可愛らしい瞳をキラキラさせて広告を眺めている。この人は本当に愛らしい)

ハルヒ「でっしょー?」

朝比奈「確かに不思議ですね。あとのお家は安くても5万円ぐらいからなのに」

ハルヒ「ふっふーん。そうなのよ、みくるちゃん。これはまさに不思議でしょ」

キョン(今、世界では幽霊なるものが量産されているのだろうか)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/16(木) 20:03:00.21 ID:+enzTC0Eo
ハルヒ「と、いうわけで、今日はこのアパートを見に行くわよ!!」

朝比奈「はぁーい」

キョン(朝比奈さんの中では、家を見に行くだけなら安全ですねぇ、ということで片付いてしまっているようだ)

キョン「まて、ハルヒ」

ハルヒ「何よ」

キョン「築年数によっても家賃ってのは変わってくるはずだ。そこのところはどうなんだ。築40年以上で今にも崩れそうなボロアポートなら1万円でも納得できるだろうが」

ハルヒ「ちゃんと見たわ。築10年よ」

キョン(まだ新しいほうなのか?)

古泉「あなたの自宅は貴方の年齢以上のはずです」

キョン「そう考えると、家としてはかなり新しいな」

ハルヒ「こっちのアパートは築15年だけど6万円だし、こっちのマンションは築20年だけど10万よ。やっぱり、このアパートだけおかしいわ」

キョン(おーおー。ハルヒさんが輝いていらっしゃる)

古泉「最寄り駅までの距離、または工場や交通量の多い道路が傍にあると家賃が変わるといいます。騒音等の問題で下げざるを得ないと不動産を経営する友人から聞いたことがあります」

キョン(新川さんのことだろうか)

ハルヒ「住所をネットで調べてみたけど、住宅地っぽいわ。あと、駅まで徒歩15分ってあるし、まぁ、遠いって思う人もいれば、それぐらいならいいかって思う人もいる距離ね。ちなみにあたしは、徒歩20分圏内ならオッケーだから」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/16(木) 20:03:16.47 ID:20mpoNd10
あさひなという苗字人はなんでこんなに純粋なんだろうか……
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/16(木) 20:04:42.82 ID:npmehwbso
事故物件にしても安すぎる
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/16(木) 20:10:49.10 ID:+enzTC0Eo
キョン「どうでもいい」

ハルヒ「あやしいわ。この物件から、とてつもない不思議を感じるわ」

キョン(ここまできてハルヒを止められた試しがない以上、覚悟を決める必要がある。とはいえ、前情報は持っていたい)

キョン「長門。ハルヒの所為で地球が逆回転しても発生しそうにないことが、この世に現れてないか?」

長門「ない」

キョン「え?」

長門「涼宮ハルヒによる情報改竄、並びに情報改変に類する事象は確認できない」

キョン「そ、そうなんか」

キョン(今までのセオリーとしてはこうなったとき、ハルヒの力で世界の均衡が崩れているのが常だったのが)

キョン「とりあえず、危ないことはないってことか」

長門「ない」

古泉「長門さんがこういうのであれば、心配は必要ないでしょうね」

キョン「そうだな」

キョン(現在まで長門の言うことが外れたことはなかった。異常があるときはいつも忠告してくれるのが長門だ。今回もそれは一緒のはずだ)

ハルヒ「さぁー、いくわよー!!」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/16(木) 20:23:52.46 ID:+enzTC0Eo
キョン(鼻歌を歌いながら進むハルヒ。その隣で物件見学ときいて安心しきっている朝比奈さん。二人の背中を眺める俺と古泉、長門が後に続く)

キョン「しかし、不動産屋を通さずに見学なんてできはしないんじゃないか」

古泉「コンピ研部長氏宅を訪問した際も、鍵などは必要ありませんでした」

キョン「あれは長門のおかげだろ」

長門「……」

キョン(後ろからトコトコとついてくる寡黙な少女がそれを成したわけだ。といってもあの一件は宇宙人勢がハルヒを退屈にさせないために画策したんじゃないかと思っているが)

古泉「あるいはそうかもしれませんね」

キョン「待てよ。だったら、今回も長門や喜緑さんが……」

古泉「なるほど。故に長門さんは涼宮さんによる情報改変は行われていないと回答した」

キョン「そう言えなくもないよな」

古泉「だとしたら、長門さんに質問してみるべきですね。この一件は、長門さんが計画したのですか、と」

キョン(古泉の言うことも尤もだ。ここで長門にズバリ、ドッキリ大成功のプラカードでも持ってきてもらえれば、気が楽になる)

長門「わたしは何もしていない。無関係」

キョン(訊くよりも早く、長門から返答が届いた。古泉も呆気にとられ、言葉を失っている様子だ)

ハルヒ「ここだわ! このアパートね!!」
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