桐生一馬「Re:ゼロから始める異世界生活」

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38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/29(日) 23:08:42.42 ID:EzpDAByko
自分で決めろ
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/29(日) 23:18:58.54 ID:jyEKQMt7O
スレタイに安価が云々言ってくる輩が来ちゃうぞ
自分で決めなさい
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/29(日) 23:34:30.35 ID:TPI5ydau0
男なら自分で決めるもんですよ…1の兄貴
41 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/01/30(月) 00:11:17.32 ID:D+UOKZjT0
>>38-40

意見ありがと
意見の多い方を選ぶつもりだったけど、腹が決まりました

>>37は取り消して、今から自分で考えます
これもある意味多数決の結果なので

さてどうすっか…
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/30(月) 00:52:02.57 ID:FGnSSqLro
それでええんや
小説もスレもあんたのもんやで
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/01(水) 00:38:01.32 ID:t2a8zNeHo
男気溢れるスレやなぁ
44 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:20:57.64 ID:yXowHRrC0
桐生「まて誤解だ。虐めれていたのはこの俺だ」

ラインハルト「え?でもそこの彼は、恐怖のあまり失禁してるじゃないか」

カン「……」ガクガク

桐生「そいつらは度胸もねぇのにカツアゲしかけてきたんだ」

桐生「まあいい。俺はこれ以上手出しするつもりはない」

ラインハルト「…それなら安心だ。問題解決だね」

ラインハルト「君たちもほどほどにね。タイミングが違えばキミたちを取り締まる事だってあった」

カン「は、はひ…」

桐生「ところで」

ラインハルト「ん、なんだい?」

桐生「このあたりで白いローブ着た銀髪の女の子って見てないか?」

ラインハルト「白いローブに、銀髪…」

桐生「ああ」

ラインハルト「ちょっと心当たりはないな。もしよければ探すのを手伝うけど」

桐生「……」

桐生「いやいい。その代わりもし見つけたら伝言を伝えてくれ」

桐生「貧民街の盗品蔵には絶対に立ち寄るなとな」

ラインハルト「……ああ。わかったよ」
45 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:22:14.38 ID:yXowHRrC0
【貧民街】

桐生「さて、なんのプランも立てずにまたここに来ちまった」

桐生「俺の予想が外れてなければだが…時間が巻戻っているように見える」

桐生「それも記憶を保有してるのは俺だけだ」

桐生「……」

桐生「自分では知らなかっただけで、実は超能力でも使えたのか?」

桐生「まだ確信は持てないが…俺のやるべき事はとりあえず、徽章を返してもらうことだ」

桐生「……」

桐生(なぜ俺はこの期に及んでお節介を焼くんだ…前回はともかく、今回はサテラと関ってすらいないのに)

桐生(頼みごとをされるのは良くあることだが…なぜ俺がここまでする必要が。俺は自分の状況すらよく分かっていないのに)

桐生「……だが危ない目に合うと分かってる奴を黙って見過ごせない」

桐生「何のことはない。今までだって俺は…そうやって生きてきたからな」
46 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:23:38.82 ID:yXowHRrC0
【貧民街・盗品蔵】

コンコン

桐生「…………」

桐生(返事がないな。さては居留守か?)

コンコン

桐生「いるのは分かっている。返事をしろ」

「合言葉を」

ガチャッ

桐生「そんな物は知らねぇな。失礼する」

ロム爺「おい!合言葉を言わんかい!!」

桐生「すまない。もう時間がないんだ」

ロム爺「誰じゃお主は」

桐生「きり…鈴木太一だ」

桐生「あんた、昨日の事は覚えてないか?」

ロム爺「昨日の事?はて、なにかあったかのう」

桐生「……」

桐生(見た感じ傷跡も無いし部屋も荒れていない、そして昨日の記憶も無い)

桐生「やはり時間が巻き戻っている…?」

ロム爺「なに独り言をブツブツと…何のようじゃ!」

桐生「あんたフェルトってガキを知っているな?」

ロム爺「なんじゃフェルトに用があるのか」

桐生「ここが盗品蔵という事は、あいつがいま何をしてるのか大方わかっているはずだ。そうだよな?爺さん」

ロム爺「ああフェルトなら今日は依頼されたある物を、回収している所じゃ」

桐生「……依頼?だれかに頼まれていたのか」

ロム爺「ああ、たしかエルザという若い女からな」

桐生(エルザ…あのイカれ女の名前か)

桐生「悪いことは言わない。あんたは今すぐこの盗品蔵から逃げるんだ」

ロム爺「ああぁ?いきなり何を言い抜かすんじゃ」

桐生「直にフェルトもココに来るハズだ。一緒に逃げるといい。悪いが説明している暇は無い」

ロム爺「合言葉も知らない男に、いきなりココを出て行けと言われても困るんじゃが」

ロム爺「そもそもお主の用件はなんじゃ」

桐生「俺の目的は二つ。一つはアンタらを保護する…二つ目は」

桐生「フェルトが盗んだ徽章を返してもらうことだ」
47 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:26:16.35 ID:yXowHRrC0
ロム爺「盗んだ徽章を返してもらうじゃと?」

桐生「ああそうだ」

ロム爺「そんなの返して欲しい言っても簡単に戻ってくるほど、容易い話ではないぞ?」

ロム爺「それにお前さんが買い取れるか…徽章となればそれなりの値打ちはするはずじゃ」

桐生「……あんた何を勘違いしているんだ」

ロム爺「あぁん?」

桐生「ハナっから交渉なんかするつもりはねぇ」

桐生「俺はな、その徽章を持ち主に返したいんだよ」

桐生「盗まれたモンを取り返す為に金を払うなんてよ…筋が通らねぇにも程があるだろ」

ロム爺「ではどうするんじゃ」

桐生「手荒なマネはしたくはないんだが…」

桐生「痛い目に合ってもらうしかないな」

ロム爺「…………」

桐生の意思を聞くや、巨人の老人は後ろを振り向き、なにやらカウンターの奥でゴソゴソと探し物をし始める

桐生「……」ゴクゴク

老人から殺気を感じ取る桐生だが、お構い無しに無防備に、老人から出されていた酒を飲んでいる

ロム爺「……」ギロッ

やがて老人は桐生の方を振り向く
その目は先ほどとは打って変わって、鋭く怒りに満ちていた
そして手には巨大なこん棒を持っていた

ロム爺「うおぉぉぉああ!!」

ボゴォォォン!!!

桐生「……っ」

老人はカウンター越しに、桐生に目掛けて巨大なこん棒を振り下ろし、酒を飲んでいる桐生の頭部を叩く
その勢いで、カウンターと桐生の座っていたイスは無残に破壊される

ロム爺「……フェルトはな、わしにとって孫みたいな存在じゃ」

ロム爺「フェルトに手を出すなら客人だろうが容赦せんぞ!!」
48 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:28:21.56 ID:yXowHRrC0
桐生「すげぇ力だ…驚いたぜ」ボタボタ

桐生は額に、大量の血を流しながら何事も無く立ち上がり拳を構える

桐生「だが残念だが、20年以上前にムショの監視員に殴られた警棒の方がよっぽど痛かったぜ…あの時は気絶したからな」

ロム爺「よほど打ち所が悪かったんじゃな」

ロム爺「……それにしても巨人族の力で殴られ平気でいられるとは」

ロム爺「只者ではないな?」

桐生「喧嘩は慣れてるんでな」バッ

桐生はそう言って上着を脱ぎ、上半身を露わにする

ロム爺「よし…こい若造が!」

桐生「いくぞ!ジジイ!!」

  VS盗品蔵の主・ロム

桐生「うおぉぉぉ!!」

桐生はダッシュして老人の懐まで辿り着く
それに合わせる様にして老人は、こん棒を高々と振りかぶり振り下ろす

ロム爺「フン!!!」

桐生「ぐっ…」ガシッ

ロム爺「なっ!?両手で掴んで防ぎおった…!」ググッ

桐生「……」ググッ

ロム爺「じゃが巨人族の力にはかなうまい」

両手でこん棒を抑えるも徐々に押されていく
そのまま地面に叩き落す勢いで桐生を追い詰める
49 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:29:55.61 ID:yXowHRrC0
桐生「昔、あんた程じゃないが、でかいバケモノと戦ったことがある」

ロム爺「なんじゃと?」

桐生「名前は…たしか総称でカツアゲ君なんてよばれてた連中だ」

桐生「アイツらも相当なバケモノだったが…何とか勝利した」

桐生「もう一つ教えてやる。おれは二十代の頃よりもずっと強いぜ?」グイッ

ロム爺「ぬっ!?」

桐生は老人の持っていたこん棒を強引に奪う
そして大きく振りかぶる

桐生「オラァァァ!!」

ボゴォォ!!

ロム爺「ぬぅぅ!」

老人の頭部に目掛けて、巨大なこん棒をブチ当てていく

桐生「まだまだいくぞ!!」

ボゴォォ!!ボゴォォ!!ボゴォォ!!ボゴォォ!!

右に左に反復させながら、巨大こん棒の攻撃は続く
50 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:31:16.62 ID:yXowHRrC0
桐生「そろそろ終わりにしようか」

桐生はそういって巨大こん棒を捨てる。そして両腕を腰にひきつけて、低く声を張り上げる

桐生「おおおおぉぉぉ…!!」ゴゴゴ

ロム爺(なんじゃあの男…青白いオーラが…!?)

桐生「せいや!!」ボゴォ

ロム爺「ぐっ!?」

桐生は勢いよく老人の腹部をアッパーで殴ると、老人の体は一瞬だが宙に浮く
その宙に浮いた瞬間を桐生は見逃さない

桐生「オラオラオラオラオラ!!」

桐生は目にも止まらぬ勢いで、老人の腹部にパンチを繰り出す
パンチの重みで老人は宙に浮いた状態が続く

コンコン、コンコン

桐生「オラオラオラオラオラ!!」

ドアからノックの音がする。しかし桐生の猛攻は尚も続く

「お〜い!あたしだよ!フェルト!合図を言うからいつもの質問してくれ!」

桐生「オラオラオラオラオラ!!」

ガチャッ

フェルト「あ〜もう!入るぞロム爺!」

フェルト「って、なんじゃこりゃ!?」

桐生「オラオラオラ!!オラァァァ!!!」

ドサッ

ロム爺「」

桐生「おう、やっと来たかフェルト。待ちくたびれたぜ」

フェルト「お、おっさん確か…昼間に路地裏で不良狩りしてた…」

フェルト「よくもロム爺をこんな酷い目に!あんた何しにきたんだ!」

桐生「お前ら二人を保護しに来た」
51 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:33:09.38 ID:yXowHRrC0
フェルト「……意味がわからねぇ。あたし達を保護しに来ただと?」

フェルト「嘘つくならもっとマシな嘘をつけってんだ!」

フェルト「言ってる事とやってる事が逆だぜおい!!」

ロム爺「ぐ…ぬぅぅ…フェルト…に、逃げるんじゃ…」

フェルト「よくもロム爺を!!」

桐生「おれは爺さんに襲われてたんだ。それはさっきの路地裏の時も一緒だ」

フェルト「どっちにしたってやりすぎだ!」シャキッ

フェルトは腰から短剣を取り出す

桐生「俺は女やガキを殴りたくない」

フェルト「うっせ!!覚悟しろ!!」

  VSフェルト

フェルトは物凄いスピードで桐生へ突進していく

桐生(……速い!!なんだあのスピードは!?)

そして一瞬で懐までたどりつく

桐生(だがそのスピードは、場合によっては命取りになる事もある)スッ

桐生「虎落し」

ズドォォン!!!

フェルト「ゴハァァ!?」

桐生は間一髪のところでスウェーして避けつつカウンターを決める

ロム爺「フェルト…!!貴様よくも!!」

桐生「安心しろ、本気で殴った訳じゃない。あんなにスピードを出した状態で、本気でカウンターを決めてたら死んでしまう」

ボタボタ…

桐生「ん?腹にキズが…どうやら完全には避け切れてなかった様だ」

桐生のサラシは血で赤くにじんでいく

桐生(そこまで深い傷ではないが…この俺を相手にやるじゃねぇかあの嬢ちゃん)
52 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:34:31.19 ID:yXowHRrC0
桐生「さて、これでひと段落したな」

桐生「素直に俺の言う通りにしてくれれば、これ以上痛い目に合わせやしない」

フェルト「ぐ…痛てて…何なんだよアンタ。いきなり保護するってどういう意味だよ」

桐生「説明してる暇は無い」

フェルト「っざけんな!ちゃんと説明しろ!」

桐生「……俺の用件は二つだ。一つはお前らの保護。もう一つはお前が盗んだ徽章を返してもらうことだ」

フェルト「はぁ!?」

桐生「間も無くここに徽章の持ち主がくる。ちゃんと返してやるんだ」

フェルト「な…なんで私が徽章盗んだ事知ってんだよ!」

桐生「いいから持ち主に返せ!!!」

フェルト「」ビクッ

桐生「もう時間が無いんだ早く逃げるぞ。うまく行けば持ち主とも合流できるハズだ」

フェルト「アンタは一体、誰から私たちを守ろうとしてんだよ?」

桐生「お前の依頼者…エルザからだ」

フェルト「な…」

桐生「あいつは『腸狩り』とか言う異名を持っている」

桐生「あいつは人のいう事なんて聞かない残酷な奴だ」

フェルト「そりゃアンタ自身のことじゃなくて?」

桐生「冗談で言ってるんじゃない。お前も徽章を渡した瞬間、報酬なんて渡さずに殺されるぞ」

桐生「早くエルザから逃げるぞ。もう本当に時間が無い」
53 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:36:54.32 ID:yXowHRrC0
エルザ「一体、誰から逃げようとしてるですって?」

桐生「……!!遅かったか…」

エルザ「ええ。タイムオーバーよ」

フェルト「あ、エルザ!ちゃんと徽章は手に入れてきてやったぜ!」

エルザ「ふふ、流石だわ」

桐生「まて!そいつは渡さんぞ!」

エルザ「じゃあ交渉でもする?」

桐生「盗まれたモンに金払って取り返すとかふざけた事をするつもりはない。筋が通らねぇしな」

桐生「大体お前は、金を払わずにコイツらをぶっ殺して奪うんだろ?」

ロム爺「おいおいお前さんや…いくらなんでもそんな言い方…」

エルザ「ええ、勿論そのつもりよ」

ロム爺「なに?」

フェルト「は?」

桐生「お前ら!!いますぐ逃げろ!!」

エルザ「じゃあまずは…目の前にいるお嬢さんから」

桐生「おおぉぉぉ!!」スッ

ザシュッ!!

桐生「ぐぅぅ!!」

フェルト「おっさん!!?」

ロム爺「なっ…!?」

桐生は身を呈してフェルトを守る
そしてエルザから繰り出される短刀は、桐生の心臓を貫く

桐生「ぐ…ぅぅ…」ガクッ

エルザ「フフフ。あなた頑丈そうだから、早々に退場させてもらうわ」

桐生「……」

フェルト「おいオッサン!しっかりしろ!」

桐生「……」ググッ
54 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:39:57.23 ID:yXowHRrC0
フェルト「おっさん…」

ロム爺「フェルト!早く逃げるんじゃ!!」

老人はエルザにこん棒で殴りかかる

ロム爺「こんな小娘などワシの敵ではないわ!!」

ザシュッザシュッ!

ロム爺「ぐぅぅ…!!」

エルザ「さようなら」

ドサッ

ロム爺「」

方腕とノドを切られ、出血多量で倒れる
見るも無残な姿になった老人はそのまま息を引き取る

フェルト「ロム爺!!この…よくもぉぉ!!」

フェルトは目にも止まらぬスピードで、エルザへと突進していく

エルザ「風の加護…素敵、世界に愛されてるのね」

エルザ「妬ましい」

ザシュッ…ブシュゥゥゥ

フェルト「ぐっ…!」

フェルト「」ドサッ

フェルトの血が部屋中に飛び散る

エルザ「終わったわね…さて、あとは徽章を回収して…」

エルザ「その後はじっくりと三人の腸を見させて貰おうかしら///」

桐生「……」ムクッ

桐生「ウオォォォォォォォォ!!!!!」

エルザ「!!?」

咆哮の如く叫ぶ桐生の声が部屋に響く

桐生「ぐふ…げほげほ…」
55 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:40:59.65 ID:yXowHRrC0
エルザ「驚いたわ。確実に心臓を貫いたのに」

桐生「……」コツコツ

桐生はフラフラとした足取りで、胸部にエルザの短刀が刺さったまま近づいていく

桐生「お、お前…だけは…もう…女だろうが…関係ない…」

桐生「終わらせてやるよ」チャキッ

桐生は懐からドスを取り出し鞘を捨て、両手で持ち腰に引き付ける

桐生「ゼェゼェ…」

エルザ「……あなたの腸はきっと極上なのでしょうね〜///」ニヤニヤ

フラフラと近づいてくる桐生に対し、エルザは頬を染めながら桐生を見つめる

桐生「ぐっ…がはぁ…」ガクッ

そしてようやくエルザの懐まで辿り着いたところで、桐生は強い意志を持ちながらも、無常にも膝を落とす

エルザ「無駄よ。私がこれ以上手を下すまでも無いわ」

エルザ「あなたは直に死ぬ」

桐生「ま、まだ…まだだ」ドサッ

カララッ…

起き上がろうと必死に決意するも、体がいう事を聞いてくれない
両手に持たれたドスを床に落し、桐生はうつ伏せに倒れ、血だまりが広がっていく

エルザ「いま仰向けにしてあげるわね〜その極上の腸、見せて頂戴///」

歪んだ笑みを浮かべながら、エルザは桐生の体を仰向けにする

桐生「……」

桐生「俺には…秘策がある」

エルザ「秘策ですって?もう間も無く息を引き取るのに?」

エルザ(でも不思議ね。嘘を言っている風には見えないわ)

桐生「俺は…必ず…」

桐生「必ず…お前を…」
56 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:42:28.48 ID:yXowHRrC0
―――――
―――


桐生「俺は必ず、お前を殺しに行く…!!」

桐生「絶対だ…覚えてろ」ギロッ

カドモン「」ドサッ

桐生「……」

桐生「ん!?」

カドモン「」ガクガク

桐生「そうか…おれは…また死んだのか」

カドモン「ひぃ…!や、やめてくれ!俺には妻も子供もいるんだ!」

八百屋の店主は一般的に見て、立派な体つきと度胸を備えていた
しかし桐生の眼力と殺害予告に驚いてしまい、腰を抜かしてしまう

桐生「あ…すまん。いまのはアンタに言った訳じゃないんだ…忘れてくれ」

カドモン「もういいから出て行ってくれ!ほら!リンガならタダでやるから!」

桐生「いや、大丈夫だ…」

カドモン「いいから持ってけ!」

桐生「……」

桐生はタダでリンゴをもらった
57 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:44:39.08 ID:yXowHRrC0
【路地裏】

桐生「またここに来ち待ったな…たしかこの後、あの三人が来るはずだ」

桐生「このままじゃアイツらはきっとカツアゲをし続けるんだろな…ここは予定通り、痛い目に合ってもらおう」

桐生「お灸を据えていく必要がある」

桐生「そしてあのタイミングで、ラインハルトかサテラに会えるはずだ」

桐生「そういえば何故か毎回フェルトが俺の事を知っている。少し離れた場所からフェルトがその様子を見てるのだろうな」

カン「おいオッサン!なーに独り言ブツブツ言ってんだよ!」

桐生「来たな…」

チン「痛ぇ思いしたくなかったら出すもん出しな!」

桐生「予定通り終わらせてやるよ!」ドォォン

三人組「っ!?」

桐生は片手で地面を思いっきり叩き、全身から青白いオーラを放つ
58 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:45:58.11 ID:yXowHRrC0
桐生「よし。倒したぞ」

トン・チン「」

カン「ひぃぃ!?や、やめてー!見逃してくれ!!」ジョワァァ

桐生「またお漏らしか…もう悪さしないと誓うか?」

カン「誓う誓う!」

桐生「よし…なら見逃してやる」

カン「ほっ…」

桐生「……その代わり、お前に頼みがある」

カン「た、頼み?」

桐生「少し芝居がしたい。上手く演技してくれ」

カン「え、演技?芝居?」

桐生「悪いようにはしない…いくぞ」

カン「え?は、はい」

桐生「スーッ…はぁぁ…」

桐生「フェルト、そこにいるのは分かっている」

フェルト「!?」

フェルト(なんだあのオッサン…どうして物影に隠れて様子を見てるのが分かった!?)

桐生「お前、徽章を盗んだな?」

フェルト(っ!?何でそんな事まで知ってんだよ!?)

フェルト(って言うか何で私の名前を…!)

桐生「いますぐ盗んだ徽章を俺に差し出せ。元の持ち主に返したい」

フェルト(返すだぁ!?何言ってんだ…そんな事して何を得するんだあのオッサン)

桐生(……)
59 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:47:25.75 ID:yXowHRrC0
桐生(ココから先は不本意だが…時間も無いし止む終えん。芝居開始だ)

桐生「もし…返さないと」スッ

桐生は懐からドスを取り出し、鞘を引き抜く
そして小さな不良少年カンの体を後ろからつかみ刃を向ける

桐生「今すぐに徽章を差し出さないと…このガキの命がねぇぞ!!!」

カン「」

フェルト(何やってんだあのオッサン!?脅しかよ!!)

桐生「オラァァ!!このガキがどうなっても良いのか!!」

カン「ひ、ひぃぃ…!!」ジョワァァ

カン(こ、これ演技だよな!芝居なんだよな!?本気じゃないよな!?)ガクガク

桐生「早く徽章を差し出せゴラァァ!!」

桐生「すまんな。これは演技なんだ。本気じゃない」ボソッ

桐生「あと頼むからションベン漏らさないでくれ」ヒソヒソ

カン(演技でも怖すぎるっつーの…!!)ジョワァァ

フェルト(ええい!もう知るか!あんなガキがどうなった所で私は関係ない!)

カン「た、助けてぇ〜!!」ボロボロ

フェルト(でもちょっと可哀そう…うーん…)

フェルト(お、丁度あそこに騎士らしき奴が!あいつに頼んでおくか!)
60 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:49:06.69 ID:yXowHRrC0
桐生「フェルト!!早く出て来い!!このガキを本気で殺すぞ!!」

カン「ヒィィ…!!」ガクガク

桐生(おかしい…フェルトは泥棒をやっているが、根は良い奴そうに見えるんだがな…)

桐生(ここであいつが助けに来てもおかしくない…早く出て来いフェルト。時間が無い)

「そこまでだ」

桐生「ん?その声は…」

「僕は今日非番だけど…こんな路地裏で恫喝とは許せない」

桐生「……」

カン「赤髪に…竜爪の刻まれた騎士剣」

カン「まさかあの剣聖ラインハルト!?お…お助けぇぇ!!」

ラインハルト「自己紹介の必要はなさそうだ……最もその二つ名は僕にはまだ重すぎる」

ラインハルト「今なら見逃してあげても良い。だがもし強硬手段に出るというのなら相手になる」

桐生(なるほど、フェルトはラインハルトに助けを求めたか。まあ、ある意味正しい判断だ)

桐生「そうか…剣聖ラインハルトが出てきたんじゃ仕方が無い」

桐生「すまなかったな。もう悪さはしない」

ラインハルト「んん?あ、ああ…」

ラインハルトはどこか釈然としない様子で桐生を見る

桐生「それじゃあ、俺は急いでるんで」

ラインハルト「待つんだ。ついさっきまで脅し行為をやってたキミが急ぎの用事…?」

桐生「……」

ラインハルト「さてはまた違う人々に危害を加える気だね?」

桐生(今回はやけに絡んでくるな…まあこの状況なら無理もないか)

ラインハルト「手荒な真似はしたくないんだけどね…キミが危なそうな人物である以上、僕はキミを許しはしない」

桐生「俺もお前と戦う理由が無い」


桐生「もう一度言う、俺は急いでるんだ。いますぐ貧民街の盗品蔵に行かないといけない」

ラインハルト「貧民街の…盗品蔵?」

桐生「じゃあな」ダダッ

ラインハルト「あっ…ちょっと、待つんだ!!」

ラインハルトの言葉を無視して、桐生は走って路地裏を後にする

カン「何だったんだよ…あのオッサン…」グスッ
61 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:50:31.18 ID:yXowHRrC0
桐生「ぜぇぜぇ…」ダダッ

桐生は街中をダッシュして盗品蔵に向かう

桐生(……)

桐生(俺はかつて、本気で人を殺そう決意した事が二回ある)

桐生(一回目はまだ二十歳だった時に渋澤と闘った時。あの時は錦が止めてくれ無かったら俺は一線を越えていた)

桐生(そして二回目は…つい最近の話だ。会長代理の菅井と、巌見造船の巌見恒雄…奴らと共に刺し違える覚悟だった)

桐生「今度は三度目だ…しかも相手は女…」

桐生(俺は果たしてあの女を殺せるのか…?)

桐生(実力的な意味だけではない。どんなに腐ってもあいつは女だ)

桐生(……)

桐生(迷ってるヒマは無い。あのイカれ女、話が通じるとも思えない…もうやるしかねぇ)

ドンッ

エミリア「キャッ!」

桐生「っ!!すまない、大丈夫か…」
62 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:53:45.56 ID:yXowHRrC0
エミリア「もう!ちゃんと前を見てよね!危ないじゃない!」

桐生「ん?お前は…サテr」

桐生(おっといけない。まだ今回は初対面だな)

エミリア「……?ちょっとアナタ、いま何か変な事言いかけなかった?」

桐生「何でもない。間違えただけだ」

エミリア「もう…気をつけてよね?間違え方によっては私、すごく怒ってたんだから!」

桐生「……?ああ」

桐生(すでに少し怒ってるように見えるが…?)

桐生「俺はいま急いでる、それじゃあ」

エミリア「そう。私も急いでるからこの辺で」

桐生「そうだ。貧民街の盗品蔵には近づくなよ!」

エミリア「え?」

桐生「お前の徽章は必ず取り返す。明日の昼、徽章を取られた場所の近くにある八百屋で会おう」

桐生「じゃあな」

エミリア「え…ちょっと!なんで私が徽章盗まれた事知ってるの!?」

桐生(時間がない!急がないと…)

桐生(そして今度こそあの女を殺す)

エミリア「……」

エミリア「ねえパック」

パック「ん、さっきの男の事?」

エミリア「うん。なんで私が盗まれたこと知ってるんだろ」

パック「どこかで見てたんじゃない?」

パック「僕的に見た目に反して、悪い人には見えなかった…むしろ逆だね」

エミリア「良い人なの?ふーん…」

エミリア「盗品蔵ねぇ…」

パック「行くの?」

エミリア「……」
63 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/05(日) 02:54:28.73 ID:yXowHRrC0
今日はここまで
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 02:58:26.83 ID:Df8CFBFn0
おっつおっつー。
これから先の展開にワクワクしてきた。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 04:58:45.39 ID:/GfrPAJNo

桐生ちゃんの外見のせいで話がこじれまくっている気がするのは気のせいだと信じたい
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 15:04:39.36 ID:3SA9YDWt0
正直言えば桐生さんなら死なずにいけるんじゃね?
と思ったけど流石にコンセプトを完全否定してしまうよな
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 18:11:57.48 ID:l2Yn/8Zyo
乙!
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 21:59:18.20 ID:LEMkRFkO0
いわゆる今の桐生ちゃんは最高難易度を前作の鍛錬&周回プレイ引き継ぎ一切
無しの初期レベルなのだろう。…と、思ったら虎落とし使えてるじゃないですかヤダー!
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/06(月) 08:07:23.07 ID:8aYutnTQ0
やっぱエルザをどうにかするにはラインハルト連れてくしかないんだろうか
でも桐生さんは何でもかんでも一人で全部背負い込んじゃうタイプの人間だしなぁ
70 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:17:18.61 ID:9LCUEB/c0
投下します
最初の2レスは訂正文を
71 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:18:30.78 ID:9LCUEB/c0
>>52(訂正)

桐生「さて、これでひと段落したな」

桐生「素直に俺の言う通りにしてくれれば、これ以上痛い目に合わせやしない」

フェルト「ぐ…痛てて…何なんだよアンタ。いきなり保護するってどういう意味だよ」

桐生「説明してる暇は無い」

フェルト「っざけんな!ちゃんと説明しろ!」

桐生「……俺の用件は二つだ。一つはお前らの保護。もう一つはお前が盗んだ徽章を返してもらうことだ」

フェルト「はぁ!?」

フェルト「な…なんで私が徽章盗んだ事知ってんだよ!」

桐生「いいから徽章を返せ!!!」

フェルト「」ビクッ

桐生「もう時間が無いんだ早く逃げるぞ。運が良ければ持ち主とも合流できるかも知れない」

フェルト「アンタは一体、誰から私たちを守ろうとしてんだよ?」

桐生「お前の依頼者…エルザからだ」

フェルト「な…」

桐生「あいつは『腸狩り』とか言う異名を持っている」

桐生「あいつは人のいう事なんて聞かない残酷な奴だ」

フェルト「そりゃアンタ自身のことじゃなくて?」

桐生「冗談で言ってるんじゃない。お前も徽章を渡した瞬間、報酬なんて渡さずに殺されるぞ」

桐生「早くエルザから逃げるぞ。もう本当に時間が無い」
72 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:19:21.02 ID:9LCUEB/c0
>>55(訂正)

エルザ「驚いたわ。確実に心臓を貫いたのに」

桐生「……」コツコツ

桐生はフラフラとした足取りで、胸部にエルザの短刀が刺さったまま近づいていく

桐生「お、お前…だけは…もう…女だろうが…関係ない…」

桐生「終わらせてやるよ」チャキッ

桐生はポケットからドスを取り出し鞘を捨て、両手で持ち腰に引き付ける

桐生「ゼェゼェ…」

エルザ「……あなたの腸はきっと極上なのでしょうね〜///」ニヤニヤ

フラフラと近づいてくる桐生に対し、エルザは頬を染めながら桐生を見つめる

桐生「ぐっ…がはぁ…」ガクッ

そしてようやくエルザの懐まで辿り着いたところで、桐生は強い意志を持ちながらも、無常にも膝を落とす

エルザ「無駄よ。私がこれ以上手を下すまでも無いわ」

エルザ「あなたは直に死ぬ」

桐生「ま、まだ…まだだ」ドサッ

カララッ…

起き上がろうと必死に決意するも、体がいう事を聞いてくれない
両手に持たれたドスを床に落し、桐生はうつ伏せに倒れ、血だまりが広がっていく

エルザ「いま仰向けにしてあげるわね〜その極上の腸、見せて頂戴///」

歪んだ笑みを浮かべながら、エルザは桐生の体を仰向けにする

桐生「……」

桐生「俺には…秘策がある」

エルザ「秘策ですって?もう間も無く息を引き取るのに?」

エルザ(でも不思議ね。嘘を言っている風には見えないわ)

桐生「俺は…必ず…」

桐生「必ず…お前を…」
73 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:19:48.14 ID:9LCUEB/c0
本編投下します
74 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:21:23.28 ID:9LCUEB/c0
【貧民街】

エルザ(待ち合わせの時間まであと少し…盗品蔵はすぐそこだし、少し散歩でもしてようかしら)

桐生「……」ザッ

エルザ「……」

エルザの前に立ちはだかる桐生
鋭い目つきで睨む

エルザ「あら素敵な紳士さん。何か私に用?」

桐生「……」バッ

桐生は無言のまま上着を脱ぎ上半身を露わにする

エルザ「いきなり女性の前で脱ぐなんて、すごく大胆…そんなに私とヤリたいのかしら?」クスクス

桐生「ああ、今すぐお前を殺りたい」

エルザ「それにしても凄い体つきね…これなら楽しめそうだわ」

桐生「手加減はしないぞ?今度は本気だ」

エルザ「あら、あなたとやり合うのは初めてのハズだけど?」

桐生「お前が忘れてるだけだ」

エルザ「……」
75 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:23:06.04 ID:9LCUEB/c0
桐生「初めてのときは…俺は頭の中がグチャグチャだった。感情を整理する時間が欲しかった」

桐生「だがそんな余裕なんてなかった。次から次へとトラブルが俺の前に押し寄せて来たからだ」

桐生「女相手に俺は本気が出せなかった。あの時のオレにできたのは精々、アイツらを守るための時間稼ぎだけだった」

桐生「そして二回目、今度はアイツらの保護を優先的に考えた」

桐生「だが事態は空回りし続け…最悪の結果を迎えた。おれ自身も心のドコかで殺人に躊躇していた。決意が甘かった」

エルザ「……アナタが何を言っているのかサッパリ分からないのだけれど」

桐生「だが今度は本気だ…オレはお前を本気で殺す」

エルザ「……」

エルザ「困ったわね…ここではあまり騒ぎを起こしたくないのだけれど」

桐生「テメェの都合なんざ聞いていない」

桐生「お前はこの後、依頼した相手の盗品を回収したあと、筋も通さないで無残に殺害するんだろ?」

桐生「腸狩りのエルザ」

エルザ「あら、私の異名まで知ってるのね」

桐生「ああ、オレは…時間を巻きm」

ドクンッ!!

桐生「ぐっ…!!!」ガクッ

エルザ「?」

自分の能力を打ち明けようとした刹那、心臓が握りつぶされるような感覚を覚え、思わず膝を崩す

桐生(な…なんだ?いまの不快感は…)

エルザ「どうしたの?いまさら命乞い?」

桐生「いや…なんでもない」

桐生「とにかく、これ以上の狼藉は働かせない。オレはお前を殺す…!!」

エルザ「フフフ…良いわ。あなたの腸、見せてもらうわ!」

 VSエルザ・グランヒルテ

桐生「いくぞぉぉ!!」

エルザ「……」ヒュンッ

桐生「……」ササッ

エルザは短剣を薙ぎ払うが、それを桐生はスウェーして避ける
同時に桐生の拳が、エルザの腹部に突き刺さる

桐生「虎落し…!」
76 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:24:31.52 ID:9LCUEB/c0
【盗品蔵】

ロム爺「そろそろ時間かの?」

フェルト「ああ、そうだな」

フェルト「へへへ…今日の商談はかなりでかいぜ。楽しみだな」

ボゴォォォン!!!

ロム爺「なっ!?」

フェルト「な、なんだ!?いきなりドアがぶっ壊れたぞ!」

エルザ「ぐっ…!」ガクッ

突如、ドアが破壊されたと同時に何者かが飛んでくる
目線を部屋の奥へ向けると、壁にめり込んだフェルトの依頼者であるエルザがいた

桐生「しまった。つい吹き飛ばしすぎてしまった」

桐生「いや…闘うべきを場所をもっと離れた所にすべきだったか」

ロム爺「なんじゃこの男は!?」

フェルト「げげ…!?お前たしか路地裏にいた気狂い親父!」

桐生「昼間の路地裏の一件はすまなかったな。あれはちょっとした芝居だ」

フェルト「はぁ!?」

桐生「だがいまの状況は本気だ、芝居じゃない」

エルザ「ええそうよ、正真正銘の…公開処刑よ」

エルザは桐生の懐に入ってきて、二回、三回と短剣を薙ぎ払う

桐生「ぐっ…!!」

フェルト「!?」

桐生の腹部からドバッと大量の血が溢れ出る
しかし桐生の闘志は消える事はない

エルザ「さあ、そろそろ公開処刑も終わりにしましょう」

桐生「オレの公開処刑だと?違う、これはお前の公開処刑だ」

桐生「オラァ!!」ボゴォォ

エルザ「ぐっ…いいパンチだわぁ」ニヤニヤ

桐生「ふん…笑っていられるのも今のうちだ」
77 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:26:03.49 ID:9LCUEB/c0
ドス!ドガ!バキ!

桐生「オラァァ!!」

エルザ「ウフフ…」

あざ笑うエルザに対し、鬼の形相で立ち向かう桐生
二人の激しい闘いは、次第に部屋を荒らしていく

ロム爺「お、おい!お前さんらいい加減にせんか!わしの家を壊す気か!」

フェルト「そうだぞ二人とも!それとオッサン、そのケンカ相手は私にとって商談相手だ」

フェルト「殺されちゃ困るんだよ!」

桐生「お前はだまされている」

フェルト「は、はぁ!?」

桐生「細かい説明をしてるヒマは無い。爺さんもフェルトも今すぐ逃げろ」

桐生「お前たちも関係者である以上、始末されるぞ」

フェルト「え…」

ロム爺「な、なんじゃと!?」

桐生「お前らじゃコイツに敵わない。逃げろ」

エルザ「あ〜あ…本当、何でもお見通しなのね…」

エルザ「いま逃げられちゃ困るし…先にお嬢さん、あなたを始末しましょうかしら」

フェルト「え、ちょ…!嘘だろ!?」

エルザ「フフフ…」

ボゴォォン!

エルザ「ぐっ…!」

エルザがフェルトの方へ襲い掛かる瞬間、部屋においてあったテーブルが飛んでくる
直撃したテーブルは粉々に砕ける

桐生「お前の相手はこのオレだ」

エルザ「……」
78 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:27:22.39 ID:9LCUEB/c0
フェルト「ちっ…分かったよ。こうなったら私も加勢してやる」

桐生「待てやめろ!!」

エルザ「あら?自分から殺されにくるなんて…」

桐生「ちっ…またこのパターンか!いい加減学習しやがれ…!」

フェルトは物凄いスピードでエルザへと突進していく
だがフェルトの攻撃があと少しで届く瞬間、桐生が目の前に立つ

フェルト「っ!?おっさん邪魔だ!」

桐生「ぐっ…!!!」

フェルトは攻撃を寸止めする
しかしなぜか桐生のうめき声が部屋に響く

桐生「くっ…」ボタボタ

フェルト「おっさん!!」

エルザ「フフフ、身を呈してあなたを守ってくれたみたいね」

桐生「フェルト…お前じゃ敵わない。逃げろ」

エルザ「惜しいわね。もう少しで心臓を串刺しに出来たのに…」

桐生はギリギリの所で、己の右手でエルザの手首を握り、わずかに軌道をずらしていた
心臓に近い場所に刺さったものの、誰よりも頑丈である桐生の致命傷には至らない

桐生「こっちも学習してきたんでな」

桐生「混乱していた一回目の時とは違う…覚悟が甘かった二回目とも違う」

桐生「今度はお前を本気で殺す。覚悟しろ」

桐生「オラァァ!!!」ドスッ

エルザ「ぐぅぅ!!」

桐生の殺気を込めた拳が、エルザのみぞに減り込む

桐生「まだだ…こんなんじゃ…お前を殺せない」

桐生は右手で、エルザの腕を掴んだまま攻撃を続ける
腹部に短剣が刺さったまま、エルザの片腕を強引に制止させる

桐生「ふん、一回目の時は随分と余裕そうだったがな…今回は生憎、手加減なしだ」

桐生「オラァァ!!」ドスッ

エルザ「ぐぅぅ…!」

桐生「オラ!まだまだ!!」

ドス!ドス!ドス!

エルザ「ぐっ…!予備の短剣ならもう一つあるんだから」

桐生(しまった…!そういえば予備が)
79 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:30:02.50 ID:9LCUEB/c0
エルザ「終わりよ」ブンッ

桐生「甘い!!」バキッ

エルザ「なっ!」

掴まれていた腕とは反対側から、予備の短剣で桐生を襲う
しかし桐生は左手でそれを薙ぎ払う

エルザ「それなら蹴りならどうかしら!?」ゲシッ

桐生「ぐっ…!」

エルザの強烈なキックが桐生の腹部を襲う
その衝撃でエルザの掴まれていた腕は解放され、桐生の腹部に刺さってた短剣を引き抜く

再びお互いに距離が開く

桐生「お前本当に打たれ強いな。俺の本気のパンチをこれだけ喰らってまだ立っていられるとはな」

エルザ「頑丈なのはお互い様でしょ?」

エミリア「ちょっとアナタ達…何やってるの!?」

桐生「な、お前!?来るなと行った筈だ!」

エミリア「何があったのかしらないけど、もうケンカはやめなさい!」

エミリア「私はそこの金髪の女の子に用があるんだから!」

フェルト「げっ!アンタは…」

エミリア「さあ!早く私の徽章を返して!」
80 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:31:36.97 ID:9LCUEB/c0
エルザ「これはこれは、始末しなきゃならない相手が増えちゃったわね」

エミリア「え?あなた…何を言って」

桐生「チッ!どうしてこうも面倒な展開に…」

桐生(一回目の時は…全員をどうにか逃がしたがオレは死んだ)

桐生(二回目はオレの油断で最悪な結果に)

桐生(俺がコイツと差し違えて、全員を仮に守れたとしても…結局のところ時間は強制的に巻き戻されちまう)

桐生(……ならばココは賭けにでよう)

桐生「おいお前、確か魔法が使えたな」

エミリア「え?うん…何で知ってるの?」

桐生「よし、それなら精霊と共にオレを援護してくれ」

エミリア「もう!色々と聞きたいことあるのに…」

エミリア「行くわよパック!」

パック「任せて!」

桐生「すまない…こんな事に巻き込ませたくなかったんだが」

エミリア「いいのよ、私だって闘えるもの」

桐生(さて、この後はどうせめていこうか)

桐生(ひとまず様子を見よう。サテラがどこまで戦えるか)

桐生(奴を責めるチャンスは必ず来る)

パック「自己紹介がまだだったねお嬢さん。ボクの名前はパック。名前だけでも覚えて…逝ってね!」

それからパックとエミリアのコンビネーションがきいた攻撃がエルザを襲う
81 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:34:46.51 ID:9LCUEB/c0
桐生「……」

桐生(初めにエルザを完全に氷漬けにしたが…奴が魔法のコートとやらで身を守った)

桐生(魔法のコートを失ったが、厄介なことに素早さが跳ね上がった…だがオレとの闘いでスタミナは既にかなり消耗しているはずだ)

桐生(いまの所、互角の闘いを見せているが…たしかパックには時間制限があった)

桐生(パックが寝てしまうと、残るはオレとエミリアだけになる…その前にどうにかしたい)

キン、キン!キン、キン!

放出される氷の弾丸と、短剣が弾く音が部屋中に響く

桐生「よし…今のうち準備しておくか…」

桐生「おおおぉぉぉ…!!」ゴゴゴゴ

フェルト「っ!?な、なんだ…おっさんの体から青白いオーラが…」

ロム爺「魔法とはちいと違うのぅ…これは一体…?」

桐生「……」ゴゴゴゴ

パック「そろそろ眠くなってきたな…ケリをつけないとね」

エルザ「せっかく楽しくなってきたのに。つれないわ〜」

パック「モテる男の辛いね。女の子の方が寝かせてくれないんだから。でも夜更かしするとお肌に悪いからさ」

パック「そろそろ幕引きといこうか!」

エルザ「ぐっ、足が」

エルザの右足は凍結した床に張り付いて動けずにいた

パック「無目的にばらまいてたわけじゃ…にゃいんだよ?」

エルザ「……してやられたってことかしら?」

パック「オヤスミ〜!!」

パックの手から氷の塊がビーム状に射出される
しかし氷漬けにされることなく、右足の負傷を覚悟で力任せに、ジャンプし回避する

エミリア「くっ…避けられた!」

パック「もう眠い…限界だよリア…」

桐生「……」ゴゴゴゴ
82 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:36:24.39 ID:9LCUEB/c0
桐生「まてパック、寝るのはまだ早い…」ゴゴゴ

パック「え?」

桐生が宙に浮いてるエルザを睨む

桐生(氷で縫い付けられた足の表面を強引に引き剥がした…という事は、いま奴の足裏は血まみれだ)

桐生(床に着地した瞬間、激痛が伴うはずだ)

桐生(どんなに余裕なツラを見せても…内心、痛がっているに違いない)

桐生「奥義をみせてやる」ゴゴゴゴ

エミリア「奥義…?」

桐生「おおおおぉぉぉ…!!!」

エミリア(青白かったオーラが、急に赤くなりはじめた…!?)

桐生「いくぞ」ヒュンッ

桐生は目にも止まらぬスピードで、床に着地するエルザの前まで突進していく

エルザ「あらあら…せっかちな男は嫌われるわよ?」

ズバッ!

桐生「……っ!!」

エルザは着地すると同時に短剣を薙ぎ払い、桐生の胸部にダメージを与えていく
だが決して怯まず、短剣が水平に薙ぎ払い終えると同時に、拳を腹部へ送り込む

桐生「究極の極みだ…!!」

ズドォォォォン!!!

エルザ「ッ!?」

メキメキ…ボォォン!!

すごい勢い吹き飛ばされ壁に激突する
だが勢いは収まる事無く、壁を破壊して外へと飛ばしていく
83 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:37:49.25 ID:9LCUEB/c0
桐生「ぜぇぜぇ…」

エルザ「」

ロム爺「あの男…やりおったわい」

フェルト「まじで何モンだよあのおっさん…!」

エミリア「凄いわね貴方。見た限り…マナを自在に操れる訳でもなさそうなのに」

桐生「マナ?ああ…魔法関連の事か」

桐生「生憎オレは、体術と武器だけで修羅場を潜り抜けてきた。魔法はオレの専門外だ」

桐生「ありがとな。助かったぜ」

エミリア「酷いキズ…あなたよく生きてるわね」

桐生「ケンカ慣れしてるんでな…とは言え、今回闘ったこの女。相当やばかったぜ」

桐生「50年近く生きてきたが…その中でも間違いなくトップクラスの強さだ」

桐生「さて」クルッ

フェルト「あ…」

桐生「わかっただろ?お前は…言わばだまされていた様なもんだ」

桐生「徽章を返してやれ」

フェルト「……はぁぁ、分かったよ」

フェルト「命を助けてくれて…ありがとう」

フェルト「今度からは盗まれないようにちゃん隠せよ」

エミリア「貴方にその忠告されるのって、ヘンテコな気分ね」

桐生「ん?」ゴソゴソ

桐生「な…ない」

フェルト「ん?どうした、今度はおっさんが無くしものか」

桐生「アサガオの…写真…」

84 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:39:56.45 ID:9LCUEB/c0
桐生「写真…どこだ…」

ロム爺「もしや、このやけにリアルに描かれた絵の事か?」

桐生「ああそれだ!すまねぇな」

ロム爺「気にするこたぁない。命を救ってもらったんじゃからな…まあ家の壁に穴があいたり、玄関のドアはぶち壊されてしまったがのう」

桐生「……」

ロム爺の皮肉は桐生の耳に届いていなかった
アサガオの写真を大切に懐かしげに、それでいて切なそうに見つめる

エミリア「その絵、すごく上手いわね」

フェルト「ホントだ。いったいどんな描き方すればそんなにリアルに描けるんだ」

桐生「……」

エミリア「その絵の中に貴方もいるわね」

桐生「ああ…みんなかけがえの無い奴らさ」

桐生「この写真にも写ってないのもいるがな」

エミリア「そう、大切な人が沢山いるのね…」

桐生「……」ビクッ

桐生「フェルト、下がってろ」

フェルト「え?」

桐生がそういうと後ろに振り返る
その視線の先には、倒れてたハズのエルザが短剣をもって襲い掛かってきていた

エルザ「……」ダダッ

桐生「虎落し…!」

ズドォォン!!

エルザ「ぐっ…本当にしつこい相手ね」

桐生「それはこっちの台詞だ」

エルザ「……」スッ

エルザは両手に短剣を持ち、桐生を睨む
85 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:43:35.86 ID:9LCUEB/c0
エミリア「まだ終わってなかったのね」

パック「ごめん…もうボク限界…」

エミリア「あとは大丈夫よ。私と…彼でどうにかするわ」

パック「いざとなったらオドを使って僕をよんでね」

桐生「そのオドってのが何だか知らねぇが…出す必要はない」ゴソッ

桐生は背中の腰に差していたドスを取り出す
そしてゆっくりと鞘を引き抜いて、刃をエルザに向ける

桐生「今度こそオレはコイツを殺す」

エルザ「……」

エミリア「……えーと、そういえばまだ名前聞いてなかったわね」

桐生「ん?ああ…鈴木太一だ」

エミリア「タイチね…私は」

「そこまでだ」

エミリア「え」

桐生「ん?お前は…ラインハルト」

ラインハルト「黒髪に黒い装束。そして北国特有の刀剣…それだけ特徴があれば見間違えたりはしない。君は腸狩りだね」

ラインハルト「危険人物として、王都でも名前が上がっている有名人」

エルザ「そういうあなたは騎士の中の騎士。剣聖…ラインハルト」

エルザ「すごいわ!こんなに楽しい相手ばかりだなんて」

ラインハルト「色々とお聞きしたいこともある。投降をお勧めしますが」

エルザ「血の滴るような極上の獲物を前に、飢えた肉食獣が我慢できるとでも?」

ラインハルト「……」

エルザ「……っと言いたい所だけど。生憎、私はもうボロボロなの」

エルザ「それでも、貴方1人ならまだ殺り合う気もあったけど…」チラッ

桐生「……」

エミリア「……」

エルザ「……」

エルザ「いずれ、この場にいる全員の腸を切り開いてあげる」

エルザ「それまでは精々、腸を可愛がっておいで」

そういってエルザはその場を素早く立ち去っていく
86 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:45:44.88 ID:9LCUEB/c0
桐生「待てゴラァァ!!まだ終わってねぇ!!」

桐生が力強く一歩を踏み出すと同時に、ラインハルトが目の前に立ち制止する

ラインハルト「キミも酷い傷じゃないか。深追いしない方が良い」

桐生「……」

ラインハルト(それにしてもこの傷跡は何なんだ。命がいくつあっても足りない。なんで立っていられるんだ!?)

桐生「うっ…」クラッ

ラインハルト「大丈夫か!」

桐生「ああ、これ位平気だ」

ラインハルト「……」

桐生「それにしてもお前はやはり凄い奴なんだな」

桐生「あのバケモノみたいな女が、お前の名前を聞いただけで警戒し、逃げ出すとは」

ラインハルト「僕なんてまだまださ…それにあっちが退却したのは君たちもいたおかげだよ」

桐生「…改めて礼を言う。逃げられちまったが…助けに来てくれた事に感謝する」

桐生「ラインハルト、ありがとう」

ラインハルト「ハハハ、僕は何もしてないけどね」

桐生「……」

桐生「ラインハルト…ラインハルト…」

ラインハルト「?」

桐生「ライン…ハルト…」

桐生「ハルト……」ツーッ

エミリア「え、タイチ…?」

ラインハルト「っ!?どうしたんだい、急に涙なんか流して…」

桐生「いや…その、オレの知り合いでお前と名前が、かぶっている奴がいてな…」

桐生「つい…」ボロボロ

ラインハルト「そうか。涙を流すほど大切な存在なんだね」

桐生「ああ。付き合いこそ短かったが、あいつもまたかけがえの無い存在だ」

桐生「……もう会うことは出来ないけどな」

87 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:51:17.25 ID:9LCUEB/c0
桐生「そうだ。まだお前の名前を聞いてなかったな」

エミリア「え?」

桐生(今回は、な)

エミリア「えーっと…そうね」

エミリア「エミリア!私はエミリア、ただのエミリアよ」

桐生「なに?エミリア…だと」

エミリア「そうよ」

桐生「……」

桐生(どういうことだ。なぜ名前が違う)

桐生(そういえば昼間にあったときも、サテラと言いかけた時に妙な表情してたな)

桐生(いずれにせよ偽名だったという訳か。そしてエミリアこそが本名)

桐生「……お前が本名を名乗るなら、オレも筋を通さないといけない」

桐生「オレの本当の名前は…桐生。桐生一馬だ」

エミリア「え、偽名だったの?」

桐生「ああ。訳合って偽名で名乗っていた」

桐生「桐生一馬は…本来は死んでいるハズの男だからな」

エミリア「……??」

その後、徽章を無事にかえして貰うエミリア
だがその直後、なぜかラインハルトが血相を変えてフェルトに何かを問い詰める

その後、妙な力を使いフェルトを気絶させ連れて帰ってしまう
更に、とりかえそうと襲い掛かってきた老人を気絶させる
88 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:53:29.64 ID:9LCUEB/c0
桐生「……さて、気絶した爺さんをベッドに寝かせたぞ」

ロム爺「」

桐生「しかし急にどうしたんだろうな。ラインハルトの奴」

エミリア「さあ…悪い人じゃないから、とりあえず彼を信じておく事にしたけど」

桐生「たしかに悪い奴には見えない。だからオレも黙って見届けた。まあ悪いようにはしないだろう」

桐生「さて…そろそろお別れだな」

エミリア「え?」

桐生「元気でな」

エミリア「ま、待って!」

桐生「ん?」

エミリア「そんなキズだらけで…あなたいくら頑丈でも」

桐生「一晩寝れば治るさ」

エミリア「そういう問題じゃないわよ…家族だって心配するわよ」

桐生「帰る場所は無い。これから俺は…適当に旅に出るつもりだ」

エミリア「それなら尚更よ。行くあてが無いなら、ウチで療養していきなさい!」

エミリア「……それに今のあなた、闘ってる時と違って、凄く悲しい眼をしてるわ」

桐生「……」

エミリア「とにかくついてきて」

桐生「……」
89 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/06(月) 09:55:58.88 ID:9LCUEB/c0
今日はここまで。これで第一章終了

いまの所の予定では第二章まで書こうとおもってます

第三章は書きたいけど内容があまりに複雑なので、現段階では断念
桐生さんにしか出来ない展開が思いつけば、三章分もやるかもしれません

ただ三章の序盤だけ、オマケとして書く予定はあります
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/06(月) 10:43:34.69 ID:mTqeGKLEO
乙です!
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/06(月) 11:10:52.06 ID:nOOx+W+BO
リゼロよく知らんのだが面白いわ 乙
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/06(月) 12:24:26.54 ID:4GSJ3iAAO
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/06(月) 15:30:19.04 ID:909M6UVLo
乙!
二章、楽しみです
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/06(月) 16:46:20.94 ID:rC+EP11g0
乙。
リゼロ知らない上に龍が如くもPXZ知識しかなくて本編未プレイだけど凄く面白い。これからもがんがれ
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/06(月) 18:48:49.61 ID:T+WA7h4Io

3章はなぁ...
複雑な上に桐生ちゃんは一人で何とかしようとするからある意味いける気がしないな
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/06(月) 19:50:58.24 ID:fbzEs6JWo
クッソ面白いから4章くらいまで書いてほしいわ
思い付いてくれるように祈っとくわ
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/08(水) 22:45:01.88 ID:Ma9o26um0
割と桐生ちゃんあっさり死んでて草
98 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:23:34.65 ID:RZ3H8hdh0
投下します
99 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:25:26.11 ID:RZ3H8hdh0
桐生は異世界で1つの問題を解決したが、一安心すると同時に我に返る

自分の置かれた状況、心に積もった家族への想い
寂しさで心が押し潰されそうだった

しかしそれは、元の世界の住人もまた一緒であった
100 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:27:07.40 ID:RZ3H8hdh0
【神室町・真島組事務所】

真島「……」ボーッ

西田「親父、今月分のシノギです。お納めください」

真島「ああ、ご苦労や」

真島「……」ボーッ

西田「あの…親父?」

真島「……」

真島「うお…ぉぉぉぉ…」

真島「桐生チャァァァァァン!!!!!」

西田「!?」

真島「んが!!」ガブッ

真島は突如、奇声を発した後に、自らの手を口の中に入れ嚙み始める

西田「親父止めてください!血が、血が出てます!」

南「なんの騒ぎや」

西田「お、親父がトチ狂った!」

南「もともとトチ狂っとるやろ」

西田「いいから一緒に止めるぞ…親父!落ち着いて下さい!」

真島「ああああああ!!」

真島「脳が!!脳が震えるでぇぇ!!!!」

西田「なに意味の分からない事いってるんですか!」

真島「桐生チャァァァン!!!!!!」

真島吾郎のストレスは既に臨界点にあった
101 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:29:51.69 ID:RZ3H8hdh0
真島「ぜぇぜぇ…」

西田「お、親父…救急セットをお持ちしました」

真島「いらんわそんな物!」

南「なんや親父、いきなり手をガブガブしおって。それが最新式のエンコかいな」

真島「ちゃうわドアホ。ちょっとしたインスピレーションみたいなもんや」

南「過激なインスピレーションやのう」

真島「……ちょっと外の空気吸ってくる。留守番頼むわ」

西田・南「へい」

ガチャッ

西田「親父…やっぱり四代目が亡くなってから情緒不安定だ」

南「まあ確かに、信じられへんもんな…あの四代目が死ぬなんて」

【神室町・公園】

真島「スーッ…はぁぁ…」

真島はベンチにすわり煙草を吸う
吐き出し煙は溜め息にも近い物があった

冴島「ここにおったんか兄弟」

真島「なんや、仕事の方はええんか。怠惰やのう兄弟。実に怠惰や」

冴島「お前ここ最近、情緒不安定だと噂になっとるで」

冴島「そんなんじゃ下のモンに示しがつかん。しっかりせい!真島組は東城会最大の組織やろ」

真島「……」

冴島「まあ気持ちは分からんでも無いけどな」

真島「兄弟、お前はどう思う?」

冴島「何がや」

真島「あの桐生一馬が本当に亡くなったと思うか?」
102 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:30:29.66 ID:RZ3H8hdh0
冴島「最初にその話を聞かされたときは、嘘か本当か言うより、悲しみと怒りばかりが込み上げたわ」

冴島「せやけど…いまは色々と疑問に思うこともある」

真島「さすが兄弟、同感や」

真島「俺も後々、冷静になり振り返って思ったわ…あの桐生一馬が死ぬ訳ないと」

真島「大体、銃弾3発程度で死ぬ訳ないんや。大砲3発喰らっても生きとるで桐生チャンの場合」

秋山「さすがお二人です。俺が何も言わずとも、その考えに辿り着くとは」

冴島「秋山か、久しぶりやのう」

真島「お前も何か心当たりあるんか?」

秋山「ええ。死亡確認したのは伊達さんだけ。しかも話によると既に遺灰になった状態…おかしな事だらけでしょう」

真島「あのサツの旦那が真相を知っとるという事かいな」

秋山「でも聞くだけ無駄ですよ?あの人、何言っても口を割る気なさそうだし」

真島「チッ」

秋山「そういえば桐生さんは前に、長洲でタクシーをやってたといってました」

秋山「案外、福岡にいけばアッサリ見つけられるかも知れませんね」

冴島「ほなら、ためしに福岡へ行って探してみるか?」

真島「……」

真島「桐生チャンは福岡にはおらん。多分、もっと遠い所におる」
103 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:32:30.65 ID:RZ3H8hdh0
冴島「なんや、やけに自身たっぷりに言うやないか」

秋山「他に心あたりでも?」

真島「…………」

真島「近頃、毎晩の様に奇妙な夢を見るんや」

秋山「はぁ?」

冴島「夢やと?」

真島「夢の中の桐生チャンはな、異世界ファンタジーを満喫しとったわ」

真島「異世界でも桐生チャンは相変わらずお人よしでな、困ったハーフエルフの嬢ちゃん助けとったわ」

真島「それとオレ好みのエロい女がいてな。ナンパしようとしたら桐生チャンが本気でその女を殺す覚悟で闘っとるんや」

真島「しかもゲームの主人公みたいに何度も死んでは蘇ってな…さすが桐生チャンやと思ったわ」

秋山「あの、真島さん?」

冴島「おい兄弟、何を言うとるんや」

真島「まあつまり、あれや…桐生チャンはきっと異世界にいるんや。そして俺は桐生チャンの現状を知る特殊能力みたいなのを手にしたんや」

真島「俺も桐生チャンと一緒に!!異世界ファンタジー満喫して、大暴れしたいでぇぇ!!!」ガタッ

真島はベンチから立ちあがり両手を掲げ、天に向かって叫ぶ

秋山・冴島「…………」

冴島「秋山、この辺でいい精神病院あるやろか?」

秋山「う〜ん、真島さんは重症だから慎重に探さないと」

真島「ドアホ!聞こえてるで二人とも!」

真島「ええか?桐生チャンはな!きっと異世界にいるんや!間違いない!」

冴島「兄弟…こんな事なら陽銘連合会と戦争させてストレスを発散させた方がよかったかのう…」

秋山「桐生さんも酷だな…嶋野の狂犬がここまで苦悩してると言うのに」

真島「あああ!脳が震えるでぇぇ〜!!桐生チャンと異世界で冒険したいわぁぁ!!」

104 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:34:17.70 ID:RZ3H8hdh0
その頃、桐生一馬は大きな屋敷に泊まっていた

【異世界・とある屋敷】

桐生「……ん、朝か」パチッ

桐生「変な夢を見た…知り合い三人が公園のベンチに座って、俺の話をしていた」

桐生「真島の兄さんは俺の名前を叫んでたな…あの人、俺がいなくなって現実でも発狂してないよな?」

桐生「……」ブルッ

桐生「トイレにいきたくなった…トイレ…トイレ…」

ガチャッ

桐生はベットから起きて扉を開ける
すると左右共に長い廊下が続いていた

桐生「徽章をもっていたからそれなりのお嬢様だとは理解してたが」

桐生「想像以上にデカい屋敷だなここは」コツコツ

桐生「……」コツコツ

桐生「そういえば、俺のキズはどれ位ふさがったのだろうか」サッ

桐生は廊下でおもむろにガウンを半身分だけ脱ぎ、自分の体を見つめる
なぜか傷跡は無くなっていた

桐生「……」

桐生「エミリアが回復魔法で傷口まで完璧に消してしまったのか」
105 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:35:45.49 ID:RZ3H8hdh0
桐生(それにしても廊下が長い。そして扉も多い)

それから桐生は適当に思うがままに、扉を開けていく

〜〜〜

桐生(全然トイレが見付からない)

桐生「チッ…トイレはどこだぁぁ!!」

ガチャッ

ベアトリス「……」

桐生「……」

ドスを利かせるような声で叫んだ桐生
しかしその部屋の中には図書館のような場所で、金髪の幼い少女が本をみていた

不本意に怒鳴ってしまったせいで、こちらを警戒した眼差しで見つめてくる

桐生「すまん。忘れてくれ」

ガチャッ

ベアトリス「……」

ベアトリス「なんなのアレは」

ベアトリス「……ああ、そういえばあの小娘が妙な男を拾ってきたわね」

〜〜〜

ガチャッ

桐生「ぜぇぜぇ…また同じ場所…」

桐生「どうなってやがるんだこの屋敷は!?」

ベアトリス「なんて心の底からうっとおしい奴なのかしら」

桐生「すまん漏れそうなんだ。トイレの場所を教えてくれ」

ベアトリス「……」パチンッ
金髪の少女は指を鳴らすと、桐生の方を改めて見向きする

ベアトリス「……もう一度、後ろの扉を空ければトイレに行けるわよ」

桐生「なにを言っている?そこの扉を開けたら廊下じゃねぇか」

ベアトリス「いいから開ける!」

桐生「…?」

ガチャッ

桐生「うおぉ!?本当にトイレが合った…どういうことだ!?」

ベアトリス「漏れそうなんじゃなかったの?」

桐生「おおっとそうだった…」ガチャッ
106 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:38:14.48 ID:RZ3H8hdh0
桐生「ふぅ」

ベアトリス「……」モジモジ

桐生「ん?何だお前もトイレか」

ベアトリス「この状況で普通、女相手にそういうこと聞くかしら?」

桐生「……そうだな。すまない」

ベアトリス「ふん」

桐生「ところで、トイレに行く前に聞いておきたいんだが…ここは何なんだ?」

ベアトリス「ベティーの書庫であり、寝室権私室かしら」

桐生「ほう。ずいぶんと豪華な部屋なんだな」

桐生「さて俺はそろそろ戻るか…まだ朝も早いしな。二度寝でもするか」

ベアトリス「それならベティーが良い事をしてあげるわ」

桐生「ん?」

ベアトリス「二度寝にはもってこいのお呪い」スッ

金髪の少女はそっと、桐生の腹部に手を当てる

ベアトリス「何か言いたいことは?」

桐生「いや無い」

ベアトリス「そう。じゃあお休み」

ドクンッ!!

桐生「っ!!?」

次の瞬間、全身に言葉では言い表せない衝撃が走る
体力が根こそぎ持っていかれる様な、極めて不快な感覚が桐生を襲う
107 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:39:51.55 ID:RZ3H8hdh0
ベアトリス(さて、この辺でいいかしら)スッ

少女の手が桐生の腹部から離れる

桐生「ぜぇぜぇ…なるほど、二度寝には持って来いだな」

桐生「全身がだるいぜ」

ベアトリス「」カチーン

桐生「ん?」

なぜか少女は不服そうに桐生をにらむ
そして再び桐生の腹部に手を置く

ベアトリス「立っていられるハズがない。もう一度やってあげる」

ドクンッ!!

桐生「うおぉ!?」

再び桐生の全身に衝撃が走る

桐生「」ガクガク

桐生「離せぇぇ!!!」バッ

ベアトリス「……」ムスッ

桐生がドスのきいた声で、少女の手を薙ぎ払う

桐生「ぜぇぜぇ…何なんだ。おまじないどころか嫌がらせじゃねぇか」

ベアトリス「おかしいわね…」

桐生「え?」

ベアトリス「普通なら一回目の時点で気絶してもおかしくないのに」

ベアトリス「二回も体内のマナを徴収したのに。まだ意識があるなんて」

桐生「なんだ。やっぱり嫌がらせじゃねぇか」

ベアトリス「お前が他領からの間者という可能性もあったから、すこし懲らしめておいたのよ」

桐生「間者って…俺は別にこの屋敷を襲うスパイでも何でもない」

ベアトリス「敵意がないのは理解できた。それでチャラで良いじゃない」

ベアトリス「それに体がだるいのだから二度寝には繋がるわ」

ベアトリス「ほら、さっさと部屋に戻りなさい」

桐生「その前にお前がトイレに行かないと俺は部屋に帰れない」

桐生「扉の先の移動場所を変えてるのはお前の魔法なんだろ?ならさっさと用を足してくれ」

ベアトリス「〜〜〜ッ!!いちいち癪にさわる男ね!」

ベアトリス(それにしても…あの小娘の言う通り、体が異常なほど頑丈なのね)
108 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:44:35.70 ID:RZ3H8hdh0
その後、桐生は部屋に戻り二度寝をする

桐生「さて寝るか」

桐生「zzz…」

〜〜〜

一方その頃、現代日本にいる真島もまた昼寝をしようとしてた

真島「おう。帰ったで」

真島(どうにか夢の中だけでも、桐生チャンと会話できんかのう)

真島「俺はいまから仮眠する。起こすなよ」

南・西田「へい」

真島(俺だって異世界ファンタジー満喫したいんや!)

真島「zzz…」

真島「お、桐生チャン…zzz」

〜〜〜

【???】

「おう桐生チャン」

「兄さん…」

「やっぱり生きとったんかワレ」

「……」

「聞いておきたいことは互いに仰山あるだろうけど」

「まずは挨拶しようや」

「ああ、そうだな…俺たち流の挨拶をな」

「いくで…桐生チャァァン!!」

「来い!!」
109 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:46:03.87 ID:RZ3H8hdh0
【異世界・桐生の寝室にて】

レム「お客様はまだ寝てます。姉さま」

ラム「ええ、呑気に寝てるわねレム」

桐生「zzz…」

レム「そろそろ起こしましょうか。姉さま」

ラム「そうね。そろそろ起こしましょう。レム」

水色の髪をしたメイドの少女と、ピンクの髪をしたメイドの少女は、眠る桐生に近づいていく

桐生「zzz…」

レム「お客様、そろそろ起きましs」

桐生「本気でいくぞ!!」

レム・ラム「!?」

突如、眠っていたはずの桐生は大声を張り上げる

桐生「うおぉぉぉああ!!!」

レム「ね、姉さま…お客様の体から青白いオーラが…」

ラム「レ、レム…お客様は魔法が扱えないと聞いていたはずなんだけど」

意気揚々とベットから起き上がる桐生
そしてガウンがはだけ、上半身が露わになる

レム・ラム「」

相変わらず目を瞑ったままだが、全身にオーラを纏いながら、拳を構える

桐生「ふん!ふん!せいやぁぁぁ!!!」

右に左にと拳を振り子に振るう

レム・ラム「」ガタガタ

二人のメイドは部屋の隅で、桐生の奇行に怯え、両手を合わせながら震えるしか出来なかった

110 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:47:46.08 ID:RZ3H8hdh0
コンコン…ガチャッ

エミリア「失礼するわ…カズマその後はどう?」

桐生「オラオラオラオラオラ!!オラァァァ!!!」

レム・ラム「」ガタガタ

エミリア「」

エミリア「ちょっとカズマ!なにやってるの!?」

桐生「そろそろ終わりにしてやる」

桐生「おおおおぉぉぉ!!せいや!!!」

桐生の正拳突きが決まると一瞬、静寂の時間が流れる

桐生「……」

桐生「兄さん」ツーッ

桐生「ああ…黙っていて悪かった。俺は本当は生きていたんだ」

桐生「だが俺にはこの選択しか残されて無かった。大切な物を守る為だ」

桐生「アンタとの決闘もこれで最後だ」

桐生「悪いな」ボロボロ

エミリア「……」

エミリア「もう…仕方ないわね」テクテク

エミリアは立ちながら涙を流す桐生に近づく
そしてそっとハンカチで涙を拭く

エミリア「もう良い加減に起きなさい。お寝坊さん」フキフキ

桐生「……」

桐生「ん?」パチッ

エミリア「あ、やっと起きた」

桐生「……」

桐生「俺は寝ていたハズなんだが。気がついたら半裸で立ち上がり、涙を流し…お前にハンカチで目元を拭いてもらっていて…」

桐生「まるで意味がわからねぇ。一体どういう状況なんだ」

エミリア「それはこっちの台詞よ…もう」

桐生「……うしろで震えている二人は何なんだ?」チラッ

エミリア「ウチの使用人のメイドさん達よ」

レム「姉さま姉さま…お客様は重度の夢遊病患者です」ガタガタ

ラム「レムレム…お客様は重度の露出狂の変態よ」ガタガタ
111 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:49:20.19 ID:RZ3H8hdh0
それから桐生はいつものスーツへ着替え、エミリアと共に庭園へ向かう

桐生「驚いた。凄く広い場所だな」

エミリア「お食事までココでちょっと我慢してね」

桐生「ああ気にするな。あまりお腹も空いてないしな」

ぐぅぅぅ〜

桐生「……」

エミリア「ふふふ、おもいっきりお腹が鳴ってるわよ」

桐生(そういえば、昨晩から何も食べてないな)

桐生(まあ正直、いまはゴハンがノドに通りそうも無いが)

桐生「……とりあえず、食事の前の運動でもするか」

桐生「いっちにっ、さんしー」

エミリア「なにをやってるのカズマ?」

桐生「ラジオ体操だ」

エミリア「ラジオ体操ってなに?」

桐生「俺の故郷に伝わる準備運動だ。ムショにいた時も毎日これは欠かさなかった」

エミリア「ムショってなに?故郷の名前?」

桐生「あ…すまん。いまのは聞かなかった事にしてくれ」

エミリア「…?うん」

〜〜〜

桐生「よし、これで終わりだ」

エミリア「うん、たしかにスッキリしたかも」

パック「やあカズマ、おはよう!」

桐生「パックか。おはよう」

エミリア「おはようパック。昨日は無理させてごめんね」

パック「おはようリア。昨日は危うく君を失うところだ。カズマには感謝してもし足りないくらいだね」

パック「何かお礼をしなきゃ」

桐生「……礼などいらない。俺の気まぐれで動いたようなもんだ」
112 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:50:35.71 ID:RZ3H8hdh0
パック「そんな事言わずにさ、何か言ってみなよ」

桐生「それなら今夜にでも俺はこの屋敷を出て行く」

エミリア「え…でも帰る場所ないんでしょ!?」

桐生「エミリア。お前たしか療養していけと俺に言ったな?」

エミリア「え、うん」

桐生「……昨晩、俺が寝てる時に治癒魔法をかけてくれたな?」

エミリア「うん。キズの具合も良くなったでしょ?」

桐生「ああ。見事なまでに傷跡すら無くなっていた」

桐生「それならもう俺はこれ以上、ここにいる理由はない」

エミリア「いいえ。まだココに残る理由ならあるわ」

桐生「なに?」

エミリア「昨晩、『とても悲しい眼をしている』って貴方に言ったわよね?」

桐生「……」

エミリア「貴方は家族の絵をいまでも大切に持っている。それなのに帰る家がない」

エミリア「詳しい事は聞けないけど、カズマはかなり訳ありなんでしょ?」

桐生「……」

パック「そうだね。カズマはもう少しここにいた方がいい」

パック「薄っすらと心が読めるけど…キミはこの状況に混乱していて、更に寂しさのあまり心が押しつぶされかけてる」

パック「眼も闘っている時と違って…光の無い眼をしている」

桐生「なんと言おうが構わない。だが…俺がここに残るのはやはり…」

レム「エミリア様」

エミリア「あ、二人とも。どうしたの?」

ラム「当主、ロズワール様がお戻りになられました。どうかお屋敷へ」

エミリア「わかったわ。さあカズマ、食事の時間よ」

桐生「……」
113 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:52:55.57 ID:RZ3H8hdh0
【大食堂】

桐生「ここが食堂か。ここも豪華だな」

ベアトリス「……」ジーッ

桐生「お前か…そんなに睨むな」

ベアトリス「ふん」

ロズワール「おんやぁ〜?ベアトリスじゃ〜ないのぉ。わぁ〜たしと、一緒に食事をしてくれる気になったとは嬉しぃ〜じゃないのぉ」

ベアトリス「この屋敷はキチガイばかりでイヤになるわ」チラッ

桐生(なにか俺までキチガイ扱いされている気がするな)

桐生「……」

桐生「ん?隣に誰かいるのか…」チラッ

ロズワール「んんん〜〜??おんやぁ、起きたんだねぇ〜」

桐生「うおぉ!?な…何だお前は!」

長身に濃紺の髪、瞳の色は左右が黄色と青のオッドアイ、そして白塗りの化粧をした男が現れる

エミリア「紹介するわカズマ。彼がこの屋敷の当主。ロズワール・L・メイザースよ」

桐生「なに?」

ロズワール「あ〜らぁためてぇヨロシク。キリュウカズマくん」

桐生(なんだこの変な口調は)

その後、改めて各自の自己紹介を始める

双子の使用人のメイドは、桃色の髪をした少女がラム、水色の髪をしたのがレム
屋敷の禁書庫を管理し守っている金髪の少女ベアトリス

他にもルグニカ王国の現状や、エミリアが時期王候補の1人だという説明を聞かされる
114 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:55:35.59 ID:RZ3H8hdh0
桐生「そうか。徽章をもっているからそれなりに偉い立場だというのは想像していたが」

エミリア「ごめんね。もっと早く説明すれば良かったかな」

エミリアは手のひらに乗せた徽章を見せる
試金石が王の資格を現すように赤く光っている

桐生「不思議な石だな。今度は取られるなよ」

エミリア「うん。カズマには私にとって恩人、何でも言って」

ロズワール「褒美は想いのまま!さぁ〜なんでも望みを言いたまぁ〜えぇ!」

桐生「さっきも言ったはずだ。おれは今夜中に出て行く」

ロズワール「あ、あれぇ〜??」

エミリア「カズマ…!」

桐生「大体、いまは王を決める跡目争いの真っ最中なんだろ?」

桐生「そこに俺のような男が偶然にも近づく…俺のこと疑っているよな?」

ロズワール「……」

レム「……」

桐生「俺はな、これまで跡目争いに散々巻き込まれてきた。その度にウンザリした…裏切りも散々見てきた」

桐生「素性が良く分からない以上、俺を警戒するのは当然だ」

レム「……」

桐生「言っておくが俺も自分が置かれている状況が良く分かっていない」

桐生「俺は日本にいたのに、なぜこのルグニカ王国にいるのか」

ロズワール「余計な事を言うよぉ〜だけどぉ?」

ロズワール「キミィ、相当病んでるね?」

エミリア「あのねロズワール、事情は知らないけどカズマはね、愛する家族や仲間に会えなくなっちゃったの。あんまりその…」

桐生「良いんだ。気を使うな」

ロズワール「朝の一件のも聞いたんだ〜よ?キミは夢遊病患者な〜んだってぇ〜?」

桐生「あんた等にとって俺は、夢遊病の患者以前に、他領の間者じゃないのか?」

ロズワール「……まあ正直、疑いがなぁ〜いかと言われたウソになるねぇ〜」

桐生「なら出て行ってやる。それで身の潔白を証明する」

レム「……」

レム(そんな事で…)
115 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:57:46.30 ID:RZ3H8hdh0
ロズワール「そう〜こまで言うなら止めはしないさ、カズマくん」

桐生「ああ。やっと分かってくれたか」

エミリア「ちょっと待って!」

桐生「……」

エミリア「私はやっぱり…どうしてもカズマに恩返しがしたいの!」

エミリア「眼に光を失ったままの貴方を放っておけない!」

エミリア「せめて明日の夜までいてくれる?」

エミリア「私が…貴方の変わりにお願い事を考えてくるから」

桐生「え?」

エミリア「もう少しだけ、待ってもらえる?」

桐生「……」

桐生「ああ、わかった。明日の夜までな」

レム「……」ギロッ

ロズワール「話はまとまったよ〜だねぇ」

桐生「ただしココにいる間…おれはスープしか飲まない」

ラム「お客様、それはどういう事でしょうか」

桐生「ノドに食事が通らない。だからスープだけでいい」
116 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 06:59:25.74 ID:RZ3H8hdh0
それから桐生は宣言通り夕食も、次の日の朝も昼も、スープだけ飲んで過ごした
日中は庭園で昼寝しつつ感情を整理し、今後の事を考えていた

桐生(……俺がアサガオの園長をやっていた頃なら、元の世界に帰ることを模索してたに違いない)

桐生(だが俺は死んだ事になっている。今さら戻る意味が無い)

桐生(もう二度とアサガオの連中を…遠くで見守る事すら出来なくなった)

桐生(錦や由美、風間の親っさんの墓参りも行けない)

桐生「……何回おんなじことを考えてるんだ。情けない」

桐生「まるで、ばかみたいだぜ…」

桐生「……」

桐生「誰もいないよな…?」キョロキョロ

桐生は周囲を確認すると、やがて1人で歌いだす

エミリア「あ、いたいたカズマ…」

パック「ん?なんか歌ってるよ」

桐生「馬鹿みたい〜子供なのね〜夢を、追って傷ついて〜」

〜〜〜
117 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 07:00:16.46 ID:RZ3H8hdh0
桐生「どれだけ〜強い、お酒で〜も〜」

桐生「歪まない〜思い出が〜馬鹿みたい」

桐生「……1曲歌っただけじゃダメだな。あと3曲くらい歌ってみるか」

パチパチパチパチ!

桐生「え?」ビクッ

エミリア「カズマ上手ね!ビックリしちゃった!」

パック「心に染みるね〜僕、感動しちゃったよ〜!」

エミリア「わたし、音痴だから羨ましいわ」

桐生「」

桐生「お前らいつから?」

エミリア「初めの頃から」

桐生「」

パック「カズマったら顔真っ赤だよ〜」

桐生「お前らはどうしたんだ。王選の為の勉強とやらをしてたんじゃ」
118 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 07:01:01.49 ID:RZ3H8hdh0
エミリア「勉強はひと段落したからきたわ」

エミリア「それよりもね、私ちゃんと考えてきたの…カズマへの恩返し」

桐生「そうか。一応聞いてやる」

エミリア「カズマ、私と…」

エミリア「家族にならない?」

桐生「え」

エミリア「家族よ家族」

エミリア「カズマは…どんな理由か知らないけど、もう二度と家族に会えないんだよね?」

エミリア「だから私でよければ…家族にならない?」

桐生「家族…」

エミリア「あ…でも家族ってなんかおかしいかな?」

エミリア「友達の方が良いかな」

桐生「……」
119 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 07:02:54.30 ID:RZ3H8hdh0
桐生「ふふ…はははは…」

桐生「ははははは…!」

エミリア「あーっ!笑ってるひどい!一生懸命考えたのに!」

桐生「…………」

桐生「ありがとう」ツーッ

桐生の瞳から一筋の水滴が流れる

桐生「その気持ち、嬉しいぜ」

エミリア「えっと…どっちがいい?家族と友達」

桐生「両方だ。家族であり友達だ」

エミリア「ふふ、カズマったら欲張りね」

エミリア「じゃあ今日からカズマと私は家族であり友達ね!」

エミリア「ただひとつ…困った事があるわ」

桐生「ん?」

エミリア「友達は良いとして…家族と言うのは、役割があるじゃない?」

エミリア「カズマにとって私は、家族では何に入るかな?」

桐生「そうだな……娘?」

パック「ちょっとストーーップ!」

パック「娘だって?父親役はこの僕が担ってるんだよ〜!」

桐生「む、そうなのか?」



120 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 07:05:07.60 ID:RZ3H8hdh0
エミリア「そうよ、それに私はハーフエルフだから…確実にカズマよりも年上だし」

桐生(そうか。場合によっては俺の倍は生きてるんだもんな。見た目は十代だが)

桐生「なら…どうすれば良い…」

エミリア「うーん…どうしよう」

パック「…………」

パック「ハッ!!」

パック(この流れからして)

桐生「どうした?」

パック「あ、あああ、あのねカズマ!僕は、僕はね!キミなら別に構わないと思っているんだ…でも、でも…」

桐生「え?」

パック「カッコいいし、マッチョだし、渋いし、異常なまでに頑丈だし…キミならリアを幸せにしてくれるって信じてる…でも…それでも…」

パック「流石に…ね?まだ出会って間もないんだし…もうちょっと互いを知ってからでも」

桐生「……」

桐生「安心しろ。お前が想像していることは望んでいない」

パック「ほっ…」

エミリア「??」

桐生「その代わり、俺から提案がある」

121 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 07:06:25.43 ID:RZ3H8hdh0
桐生「エミリア、俺の兄弟になってくれないか?」

エミリア「兄弟?」

桐生「ああ。渡世の兄弟になってほしい」

エミリア「え?トセーノキョーダイ?」

パック「兄弟…そうきたか。まあ構わないけど、その場合…」

桐生「ああ、分かっている」

桐生「パック、お願いがある」

桐生「俺の…渡世の親になってほしい」

パック「……」

パック「良いよ。なってあげる」

パック「ただし、僕は娘をひいきするけど良いよね?」

桐生「構わない」

エミリア「えへへ、じゃあこれからもウチにいてくれる?」

桐生「ああ、勿論だ」

桐生「……じゃあ、早速。盃をかわすか」
122 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 07:08:12.95 ID:RZ3H8hdh0
【数時間後・庭園にて】

ラム・レム「お待たせしましたエミリア様」

ベアトリス「なんで私まで…」

エミリア「ありがとう二人とも」

ロズワール「なにやら面白〜いことをはじめ〜ると、聞いてきちゃったんだぁ〜よ」

エミリア「これはロズワールにとっても重要な話だから、よく見ていてね」

ロズワール「いったいどぉ〜んな余興がはじまるのか〜なエミリア様?」

エミリア「いまから私とカズマは、トセーノキョーダイになるの!その為の儀式よ!」

ロズワール「ん?んん?トセーノキョーダイ?」

桐生「ええっと…レムと言ったか、酒を持ってきたか?」

レム「はいお客様。こちら白ワインですが」

桐生「構わない。ラム、スープ用の皿は?」

ラム「はいお客様。スープ用の皿よ…でも、ワイングラスじゃなくて良いの?」

桐生「俺の故郷ではワイングラスで盃は交わさない。スープ用の皿が一番形として近い」

桐生「ほらエミリア、盃を出すんだ」

エミリア「うん!」

エミリアは両手に皿を持って、そっと差し出す
そしてゆっくりと白ワインを盃モドキに入れていく

桐生「次はお前が俺の盃に酒を入れてくれ」

エミリア「はい!」

コポポポ…

桐生「……よし。準備はできた」

二人は正座して向かい合う
123 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 07:09:17.32 ID:RZ3H8hdh0
桐生「まあ本来の作法とはちょっと違うが…コレでいいだろう」スッ

エミリア「ええっと…こう?」スッ

桐生の腕とエミリアの腕が、互いに交差する
そして互いの持っている盃を、唇へと持っていく

エミリア「んく」ゴクゴク

桐生「ん…」ゴクゴク

エミリア「……んく。これで終わり?」

桐生「ああ、これで俺とお前は」

桐生「渡世の兄弟だ」

エミリア「ええ。これで私たちは家族…トセーノキョーダイよ」

桐生「次はパックだな」

パック「うん」

パックも正座してキリュウに向き合う
124 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 07:14:12.55 ID:RZ3H8hdh0
桐生「しかし驚きだぜ、まさか巨大化できるとはな」

現在のパックの身長は、元の手のひらサイズではなく、2m近い物に変身している

パック「ふっふっふっ、その気になればもっとデカくなれるよ!」

桐生「さて、もう盃には酒を入れた。あとは交わすだけだ」

パック「……カズマ」

桐生「ん?」

パック「僕の息子となる以上、キミの身にもしもの事があったら」

パック「僕はその相手に対し、ケジメつけさせるから」

桐生「そうか。親分らしいな」

パック「ただし、僕はさっきも言ったように、エミリア贔屓だから」

パック「キミが娘を守り切れなかったら、ぼく〜怒っちゃうからね〜?世界が滅亡しちゃうかもよ〜?」ニッコリ

そういって可愛らしい顔で、ウインクを桐生に送るパック

桐生「フン。世界を滅ぼすって…なかなか面白い冗談を言うんだな」

桐生「だが約束は守る。もしも兄弟を守り抜く事ができなかったら」

桐生「きっちりケジメをつける」

そういうと同時に、パックと桐生は手に持たれた盃を一気に口へ運んでいく

パック「んく」ゴクゴク

桐生「ん…」ゴクゴク

パック「……ヨロシク、わが息子よ」

桐生「ああ、ヨロシクなパックの親父」
125 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 07:16:19.12 ID:RZ3H8hdh0
エミリア「ふふふ、家族が増えたわねパック!」

パック「うん!」

桐生「家名は精霊一家で良いか?」

エミリア「…?うん、良いんじゃない?」

エミリア(なんだろう…改めて家名って。ま、いっか)

ロズワール「ええっと…要するにぃ〜?カズマくんはやっぱり出〜て行かないという事にな〜るのかぁ〜な?」

桐生「ああ。昨日あんたは俺に何でも望みを言ってくれと言ったな?」

桐生「もしアンタさえ良ければ…この俺を雇って欲しい」

ロズワール「ふむ、たーった1日でぇ、随分とぉ心境がかわったんだぁ〜ね」

ロズワール「言っておくけどぉ〜?キミに対して、疑いが晴れてるわぁ〜けじゃないよぉ?」

桐生「構わん。俺はこの屋敷に渡世の義理を尽くす」

桐生「俺が間者でないことは、今度の動きをみて判断してくれ」

ロズワール「ふふふ、キミはほんと〜にぃ、面白い男だぁ〜ね」

ロズワール「二人とも、明日から彼の面倒をみてくれたま〜え」

ラム・レム「はい。かしこまりましたロズワール様」

レム「……」

レム(何が…兄弟)ギロッ
126 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/11(土) 07:16:47.23 ID:RZ3H8hdh0
今日はここまで
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/11(土) 10:22:53.46 ID:soj7j6jBo

真島さんそれは普通に話したら頭イカれたと思われても仕方ありません
そして桐生ちゃんはマジで心が病みそうで怖い
家族の契りがいい方向に向かわせてくれると思いたい
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/11(土) 11:07:37.09 ID:YHPOi4ou0

桐生さんのセーブポイントはエミリアとの杯の後であって欲しいけど、そうならないのがリゼロなんだよなぁ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/11(土) 21:23:17.80 ID:uGqGCBS8o

リゼロしか知らないけど、面白い!
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/12(日) 04:11:52.33 ID:eoAb0jRio
>>97
常時ムービー状態だからね。仕方ないね。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/13(月) 12:24:57.05 ID:CY2i3gGSo
この世界にはスタミナンと牛丼屋がないから普通にやられるに決まってるだろ!
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/13(月) 14:16:35.95 ID:a4f3p5rgo
せめて酒を用意しておこう。
酒を飲めばヒートゲージが溜まりやすくなるし、この世界にだって酒くらいは普通にあるだろうし。
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/14(火) 12:26:58.44 ID:q/VBY6jjo
>>132
尾田「昼間から酒の臭いを漂わせているような奴は信用されない。」
134 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/18(土) 19:14:39.28 ID:m/vMHFKm0
【次の日】

桐生はメイド二人、エミリアとともに仕事着を選んでいた

桐生(仕事の服を着たのは良いが…)ググッ

桐生「きつ過ぎる…!」ミチミチ

エミリア「他にないのかしら?」

ラム「それが一番大きめのサイズです」

レム「おかしいですね…身長180越えのサイズなのに」

ラム「肩幅と胸板が無駄に広いからじゃないかしら?」

桐生「う、動き辛いぜ」

ブチン、ブチン

桐生「……」

仕事着のボタンが幾つか弾けて、薄っすらと上半身が露わになる

ラム「あなたって本当に脱ぎたがりなのね。そんなに筋肉自慢したいの?」

桐生「いや、そういう訳じゃ…」

レム「仕方ありませんね。少々、見苦しいかもしれませんが」

レム「カズマさんの私服は幸いにも背広です。そのままの格好で仕事をしてもらいましょう」

レム「もっとも、背広が灰色にシャツが赤色と珍奇な色合いですが」

桐生「俺の背広にケチをつけないでほしい。気に入っているんだ」

桐生「大体、俺の地元じゃ似たような格好した奴らがゴロゴロいる」

ラム「ブツブツ言っていないで、ついてきなさい。館内の案内をするわ」
135 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/18(土) 19:16:24.85 ID:m/vMHFKm0
館の案内を終え、掃除や選択、料理といった仕事に取り掛かる

【調理室】

桐生「……」シャリシャリ

包丁でジャガイモの皮を剥いていく

ラム「あら、意外と器用なのね」

桐生「料理は毎日やってたからな」

ラム「ふーん。見かけによらず」

桐生「……」

レム「……」ギロッ

桐生(ん?)

レム「……」プイッ

桐生「……」

〜〜〜

ラム「さあ次は庭の手入れよ」

桐生「くっ…なかなか難しい」

桐生(冴島ならこういうの得意なんだろうな…)

ラム「流石に庭の手入れには苦戦しているようね」

桐生「……なあ、余計な事を言うかも知れないが。お前、適当にやってないか?」

ラム「適当じゃないわ。私は精一杯、一生懸命にやっているわ」

桐生(いや嘘だな。コイツ、意図的に手を抜いている)

ラム「それにレムという優秀な妹がいるおかげで、手入れは問題ないわ」

桐生「もう少し頑張ったらどうだ」

ラム「先輩に文句言ってる暇があるなら、少しでも技術を磨きなさい」

桐生「はぁぁ…まあ立場上、先輩ではあるが」

レム「……」ジッ

桐生「ん?」

レム「……」ギロッ
136 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/18(土) 19:16:56.61 ID:m/vMHFKm0
桐生「おい、さっきからジロジロと何だ?」

レム「」ビクッ

桐生はさり気に聞いたつもりだが、その身長差からか、レムには妙に威圧的に伝わってしまう

ラム「こらバルス。レムは別に貴方に喧嘩を売っている訳では無いわ…ね?レム」

レム「え、ええ…その、ちょっと」

レム「えと…」

桐生「……」

ラム「……レムは貴方の髪型が気になったのよ。少し髪の量が多くて、ね?」

レム「はい。少々もっさりした感じがしました」

桐生「……そう言われてみれば、最近髪を切っていなかったな」

ラム「今度、切ってあげたら?レムがその気であればの話だけど」

桐生「いや、そういうわけには」

レム「良いですよ。今度カズマさんの髪を切ってあげます」

桐生「そうか。すまないな」

レム「……」ギロッ
137 : ◆637SXWkvW2 [saga]:2017/02/18(土) 19:18:31.71 ID:m/vMHFKm0
ラム「次はこの部屋を掃除しなさい」

桐生「わかった」

桐生「……」フキフキ

桐生は丁寧に雑巾で窓やら机を拭いていく

ラム「……」

ラム「つまらないわ」

桐生「え?」

ラム「料理も洗濯も掃除も…全てにおいて、新人とは思えない位、そつなくこなし過ぎているわ」

桐生「そんな事はない。備品の場所や、館内の部屋を完全に把握していない。庭の手入れも全然だ」

ラム「バルスは何を聞いていたの?つまらないと言ったのよ…あまりに仕事が出来すぎて」

ラム「これじゃいじりがい無いじゃない」

桐生「フン、仕事に慣れない新人をいびろうとでも思ってたのか?」

ラム「……何か面白いことをしなさい」

桐生「え?」

ラム「なにか面白いことよ…そうね、一発芸でも良いわ」

桐生「おいおい、いきなりそんな事言われてもな」

レム「姉さま、いまは掃除中なので」

レム「ロズワール様の夕食時に余興として、やってもらうのはどうでしょう?」

ラム「それは良い提案ねレム。バルスは今日の夕食時に、ロズワール様に一発芸を披露しなさい」

桐生「…………」

ラム「バルス、返事は?」

桐生「はぁぁ…分かった」
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