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楓「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝後編】
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87 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/26(日) 00:31:39.66 ID:t3C5XZj40
>>86
そっすねえ
ピエロとかフルタとか和修とか、正直このシリーズを書き始めた頃に鍛えた知識では
原作の理解が追い付かなくなってきてます
88 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:19:18.81 ID:zYet9Dkf0
凛さんが、私の疑問を言ってくれた。
卯月さんたちの方を見ると、みんな同じことを思ってたみたいだ。
自分から言わなかったのは、もしかしたら楓さんを怒らせるかもしれない……と思っていたからなんだが……
楓さんは、くすくすと笑って答えてくれた。
楓「意外かもしれませんけど」
楓「ここ、私のデビューライブの場所なんです♪」
…………
「「「―――――えええええええええ!!?」」」
89 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:19:59.64 ID:zYet9Dkf0
未央「え! は!? 嘘!? 楓さんほどの人が……お方が!? ここで!?」
卯月「私達よりずっと狭い場所ですね!?」
凛「もっと大きな舞台かと思ってた……」
蘭子「歌姫は馬小屋にて産声を上げた……?」
楓「もう! お仕事には大きいも小さいも無いんですーっ」
少しだけむくれる楓さん。
……あの、蘭子ちゃん。馬小屋はひどくないか?
あ、神様の話に出てくるのね。
……神様、か。懐かしい言葉だな……
90 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:21:07.73 ID:zYet9Dkf0
楓「……まあ。私も、後から知ってびっくりしました。ここは、普通346のアイドルがデビューライブを行う場所よりずっと小さいって」
楓「実はここでのお仕事、プロデューサーさんは『あえて』ここを選んだみたいなんです」
楓「かつては『隻眼の王』なんて呼ばれて、誰もが恐れる私を捕まえて……あえて」
『―――あなたは誰ですか? 私の暇つぶし相手ですか?』
『? そうですよ? 少しの力で死んでしまうひと達が、暇つぶし以外の何かになるんですか?』
『だって、つまらない人ばかりですから』
『決まったポーズしか求めないカメラマンさん、睨むか物陰で悪口ばかりの同僚さん』
『大声を上げて、勝てもしないのに私に襲い掛かって来るだけの"喰種"や捜査官』
『悲鳴を上げるだけの、さらに弱い"喰種"や人間』
『そんな人たちしかいないのに』
『??? どうして? どうして、貴方には勝てないんでしょうか』
『……私は、死ぬのでしょうか』
『ああ、そうですか』
『……えっ?』
『……アイドル?』
楓「……」
楓「……でも、この会場はすてきなところです」
楓「だって、ほら」
91 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:21:34.97 ID:zYet9Dkf0
楓さんは目をつぶる。
静かになった楽屋には、私達以外の声が響いていた。
『楓さんまだかなー』
『へえ! 初ライブに参加してた人なんですか!』
『サイリウム、余分に持ってきてるんです。良かったらどうぞ!』
『今日はニュージェネが来ると聞いてチケット買いました!』
『きのこはいいぞ』
『じゃあ蘭子ちゃんの可愛さについて語ってあげましょう!』
とても近い場所から聞こえる声だった。
楓「――こんなにも、ファンの皆さんが近いんですから」
――――――――――――――――――――
92 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:22:01.69 ID:zYet9Dkf0
―――その後、ファンの列が崩れるトラブルがあった。
そこに楓さんが現れて、解決してくれた。
皆と一緒にうちわを手渡してる時も、舞台で歌っている時も。
来てくれた楓さんの……トモダチ一人一人に、楓さんはニッコリ笑いかけていた。
おお、なるほど……
楓さんはこういう人なんだ。
私と同じことを考えていた人。
こう言うのを、親近感って言うのだろうか。フヒ
そう言うことなのかな。
私や、蘭子ちゃん。
凛さん、卯月さん、未央さんが呼ばれた理由って。
みんな、楓さんに親近感を抱いてるんだろうな。
93 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:22:28.43 ID:zYet9Dkf0
――――――――――――――――――――
そして、ミニライブは無事終わった……
蘭子「碧眼の女神!」
楓「あら? 女神って私のこと?」
蘭子「うむ! 是非とも、碧眼の女神が為した業を奏でよ!」
楓「業? そうね……業なら……喰種に自分の赫子を仕込んで、無理矢理動かしたお話とか……」
蘭子「ぴいっ!? い、否! 業とはそのような堕天の印に非ず!」
楓「あら! 続きを話して欲しいのね? そうそうこの方法、死体にも有効でー……」
蘭子「ちがいます〜っ!」
凛「すごいね。蘭子、すっかり楓さんに懐いてる」
卯月「まるで親子みたいですねっ!」
未央「親子とな? ……そう言えばかえ姉さまとらんらんって共通点多いよね。羽赫だし何より……」
凛「未央。そういう話は、今はいいんじゃない?」
未央「……そうだね! かえ姉さまも、私達と同じアイドルだったって分かったし!」
卯月「楓さんがすごく近くなった気がしますね!」
卯月「ね、輝子ちゃん!」
輝子「!」
輝子「……ああ、そうだな……!」
94 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:23:07.14 ID:zYet9Dkf0
卯月「ところで……楓さんにあの会場を充てたプロデューサーって一体どんな人なんでしょう?」
凛「そう言えばそうだね。楓さんのプロデューサー、見たこと無いな…」
未央「すごいよねその人。度胸あるって言うか、怖いもの知らずって言うか」
輝子「……」
神様。女神。
アイドルになる前は、知らなかった言葉だった。
意味を教えてくれたのは、まゆさんだったな。
輝子『――なあ、まゆさん』
まゆ『? どうしました、輝子ちゃん?』
輝子『この間きいた言葉なんだけど……「カミサマ」ってなんだ?』
まゆ『神様、ですか?』
輝子『うん』
95 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:23:37.05 ID:zYet9Dkf0
まゆ『宗教……って言っても、輝子ちゃんは知りませんよね』
まゆ『そうですねえ……』
まゆ『……神様って言うのは、心から信じられるもののことです』
まゆ『人間は、その「神様」のために、なにかを我慢したり、生きる力が湧いたり』
まゆ『…誰かを殺す事だって出来るんです』
輝子『す、すごいな人間……』
まゆ『そう考えたら、まゆにとっての「神様」は……まゆのプロデューサーさんですね♪』
まゆ『輝子ちゃんには「神様」はいますか?』
輝子『え? ……えっと……』
輝子『そ、そうだな。トモダチのシメジクンだったり……』
輝子『親友とか、小梅ちゃんとか、幸子ちゃんとか……』
輝子『ファンの皆や……まゆさんのためになら、ちょっとくらいお腹がすいたり、仕事を減らされても我慢できるかな……』
まゆ『!』
輝子『こ、殺すのは……どうだろう……あ、ブナシメジクン、エリンギクン、あとあと藍子ちゃん、愛梨ちゃんもカミサマだな……』
輝子『ど、どうしよう……一人に決められない』
まゆ『……くすっ。別に神様を一人にする必要なんて、ないんですよ?』
96 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:24:54.70 ID:zYet9Dkf0
輝子「……」
まゆさんが教えてくれた通りなら。
私にとって、ファンの皆はトモダチで、カミサマだ。
みんながいるから、生きていて楽しい。
…こんなにカミサマが多かったら、クラリスさんに怒られるかな……
……楓さんにとっても、そうなのか?
楓さんも、楓さんのファンのおかげで、生きられるのかな。
ファンのためなら、何かを我慢することが出来るのかな。
――――――――――――――――――――
97 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:26:00.54 ID:zYet9Dkf0
――――――――――――――――――――
美城「フフフ……できたぞ! 『プロジェクトクローネ』だ!」
美城「新人や仕事の少ないアイドルにも輝く星はあるじゃないか」
美城「私の権限が足りず4人ほど削る羽目になったが……まあいい。早速メンバーを召集しよう!」
美城「待っていろ……この6人で直ちに成果を出し、私が正しいと言うことを証明してやる」
美城「ゆくゆくは美城の在るべき姿を……っ!」
早苗「楽しそうねあの常務」
セクギルP「結構人材集めに苦労したみたいですしね。達成感でハイになるのも分かります」
早苗「それにしてもキャラ変わりすぎじゃない? もう少し静かな人だと思ってたわ」
P「言わないであげてください……」
98 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:26:42.30 ID:zYet9Dkf0
ヴーッヴーッ
早苗「…来た」
P「? 誰からです?」
早苗「んー…昔の後輩から! ちょっと集まる約束してたのよ」
早苗「と言う訳で今日はあがるわね! お疲れー!」
P「お疲れさんです」
早苗「……」
――――――――――――――――――――
ガチャ
早苗「よっ、久しぶり!」
早苗「どう? 結果出た?」
早苗「…ん? ええ、誰にも教えてないわよ。極秘で頼んだ捜査だもん」
早苗「あたしのプロデューサー君にも雫ちゃんにも黙ってるわ」
早苗「……それで、どうなのよ」
早苗「ユッコちゃん、見つかった?」
99 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:27:16.95 ID:zYet9Dkf0
早苗「…そう。まだ見つかってないのね」
早苗「何よ? 気にしてないから、まだ言いたいことがあるなら言っていいわよ」
早苗「は? スプーン? ユッコちゃんの?」
早苗「帰り道に落ちてて、指紋も付いてる……?」
早苗「何よそれ。……誘拐ってこと?」
早苗「…………」
早苗「―――――"喰種"の、体液?」
早苗「…待って。待ちなさい」
早苗「それってまさかユッコちゃんが食べられたってこと?」
早苗「……落ち着けるわけないでしょ!? 冗談じゃないわよ!」
早苗「客のことなんて今はどうでもいいわよ! そんなことより……」
早苗「……客? 誰よそれ」
早苗「…………え?」
早苗「……喰種捜査官?」
100 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:28:01.89 ID:zYet9Dkf0
――――――――――――――――――――
早苗「……あなた達が?」
?「ええ。この度は、私達にお時間を割いていただき感謝します」
??「ッス」
?「貴女の同僚である堀裕子さんの持ち物と思われるスプーンから採取された"喰種"の体液について」
?「我々CCGが過去に得たデータと照会することで、その身元をある程度特定できました」
??「どーやらあたし達が追ってる組織のやつがユッコちゃんを誘拐したみてーだぜ」
??「ウチでつけた名前は『キャッスル』。ユッコちゃんみたいな新人アイドルや美少女をあちこちで攫ってる奴らだ」
?「私達は、一身上の都合で志願してこの事件の捜査に携わっています」
?「ほんの少しの情報提供で構いません。どうか、早苗さんや貴女の仲間にこれ以上魔の手が伸びないよう」
?「私達に協力していただけませんか」
101 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:30:44.62 ID:zYet9Dkf0
早苗「……あたし、今はもうただのアイドルよ?」
早苗「何が出来るってわけじゃないけど……」
早苗「放っておくと皆が危ないのね。いいわ、協力する」
早苗「それに、あなたたちも他人事じゃないもんね」
早苗「…ただし。その代わり、ちゃんとユッコちゃんのこと探してちょうだい」
早苗「……それで?」
早苗「橘準特等に」
早苗「市原一等捜査官」
早苗「あたしは何をすればいいの?」
102 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:34:24.71 ID:zYet9Dkf0
今日はここまで。ちょっと出だしがコケた感じはしますが、とりあえず15話範囲は終了です。
輝子の中の人の松田颯水さんって声優で双子のお姉さんがいたんですね…。初めて知りました。
次回ウサミン回の予定です。またの名を346版エリーゼ回。
103 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/27(月) 20:55:34.18 ID:zYet9Dkf0
…すんません。最初に注意書き入れるの忘れてました。
オリキャラ出ます。出ました。
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/27(月) 23:42:33.99 ID:hz5fMYjwO
おつん
105 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/02/28(火) 08:49:00.33 ID:oyBYwCEV0
杏「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝小ネタ、短編集】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1486942971/
一応宣伝。
外伝後編で書けないネタが浮かんだら
このスレに投下する感じで行きます
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/01(水) 01:29:03.40 ID:Vbu8DVk3O
アニメ準拠なら志希にゃんは出ない感じか
107 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/03/01(水) 17:13:46.09 ID:i/tPTgV60
>>106
とりあえずこのスレじゃ出ないと思いますねー
ちなみに志希にゃんの嗅覚でも人と喰種の判別は出来ない設定です。
108 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/03/03(金) 22:04:38.69 ID:ERLJoYu20
346アイドルの設定いろいろまとめてみました
http://imgur.com/zpYwG3a
http://imgur.com/Oq0rEZN
http://imgur.com/oN1O9Z2
続きの執筆が捗らなかったのでねー…
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/03/04(土) 01:54:42.17 ID:Yzgu2mrH0
乙です
少し見ない間に輝子の話が進んでた
楓さんは隻眼の中でもエトのポジションか
110 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/03/05(日) 10:46:55.43 ID:QEuJG5m20
〜過去・前川みく〜
「みくちゃんは人間が嫌いなの?」
シンデレラプロジェクトの皆には、よくこんなことを言われるの。
皆と比べて人間と話したがらないから、そう思われるんだって分かるけど……
みくね。別に、人間が嫌いってわけじゃないの。
ホントだよ?
ただ、「この世界は人間の世界」だってことを受け入れられないだけなの。
"喰種"は人間の天敵。
だから、もし人間に自分が"喰種"ってバレたら…問答無用で殺されちゃう。
そのために"喰種"は自分の正体を必死で隠さなきゃダメ。
吐きそうになる人間のご飯を、笑顔で飲み込まなきゃダメ。
人と関わりすぎちゃダメ。
どれだけ辛くても、"喰種"よりずっと多い、周りの人間たちに合わせてニコニコ笑っていなくちゃダメ。
目立っちゃダメ。
人と違う所は隠さなきゃダメ。
とってもキュートなネコチャンが、小さい頃からの親友だったことも隠さなきゃ。
アイドルなんてもってのほか。
学校ではそうやって、地味でマジメな人間を演じてた。
みくの周りは人間ばっかりで、みくだけが「フツウ」じゃなかった。
みく達"喰種"は、フツウにしてちゃダメなの。
111 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/03/05(日) 10:47:36.86 ID:QEuJG5m20
みくが346プロを知ったのは、適当に友達付き合いしてた人間たちにライブに連れていかれた時だったよ。
その時みくは中学生だったけど、アイドルなんて見たくもなかった。
だってライブに出てるアイドルなんて、人間ばっかりなんだもん。
ここに"喰種"の居場所はないって、言われてる気分になるんだもん。
でも、断る理由がうまく思いつかなくて……ご飯の匂いで満ちてるライブハウスに嫌々ついていくしかなかった。
だから、こんなこと思ってもいなかったの。
まさか、出てるアイドルの半分から"喰種"の匂いがするなんて。
ライブが終わった直後、いてもたってもいられなくて、正体を隠すことも忘れかけて、舞台裏に乗り込んじゃった。
真っ先に目についた"喰種"のプロデューサー……今のPチャンにしがみついて、
みくもアイドルにして。
舞台のみんなみたいに、みくも輝きたいの。
…って涙ぐみながら駄々をこねてた。
Pチャンはみくのこと分かってくれて、あとでシンデレラプロジェクトに入れてくれたけど……
Pチャンもスタッフの皆も、困らせちゃったよね。
あの時はごめんね、Pチャン。
…あと、初めてのお仕事の時も……本当にごめんね。
112 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/03/05(日) 10:48:04.28 ID:QEuJG5m20
卯月チャンが入って来て、未央チャンが入って来て、遅れて凛チャンも加入を決めて。
やっとメンバーが揃ったから、みくもアイドルを始められるんだーって喜んでた。
人間の目に怯えるだけじゃない、みくの好きなことをいっぱいできる生活が始まるんだって思ってた。
初めてのお仕事は先輩アイドルの背景の着ぐるみ役だった。
それも、相手は人間。
憧れの"喰種"アイドルでさえなかった。
それからも、何度も、何度も、何度も、何度も。
みくの下積みの相手は、人間アイドルばっかりだった。
小日向美穂、輿水幸子、日野茜。
十時愛梨に、その他諸々。
美嘉チャンや瑞樹さん、小梅チャンや紗枝チャン、まゆチャンみたいな、
"喰種"なのにちゃんとアイドルとして活躍してるひと達が相手なら。
どれだけ地味な下積みでも、みくは喜んでお仕事したのに。
みくが人間のこと苦手だって知ってるはずなのに。
Pチャンはまるで当てつけをするみたいに、みくに人間の踏み台ばっかりやらせた。
113 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/03/05(日) 10:48:34.23 ID:QEuJG5m20
…何よりも許せなかったのは、みく以外のみんなが「人間相手の下積み」を受け入れていたこと。
あの時もそうだった。
ニュージェネとラブライカのデビューが決まった時も、みくの「踏み台」は続いてた。
だからPチャン相手に怒鳴り込んだことがあったの。
「もう人間の荷物持ちは嫌だ」って。
「なんで人間を立てるお仕事ばっかりやらなきゃいけないの」って。
みんな同じ不満を抱えてるに決まってるって思ってた。
だから、みくが代表して文句を言えば、みんなも後押ししてくれる。
それなら、Pチャンもお仕事を変えてくれるかもって、期待してた。
「ダメだよみくちゃん。私達は"喰種"なんだから」
こんなことを言われるなんて、思いもしなかった。
114 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/03/05(日) 10:49:19.10 ID:QEuJG5m20
悔しかった。
情けなかった。
この時だけは、大声が周りに響いて正体がばれてしまうかもってことも考えられなくて。
人間相手に気後れしてた智絵里チャンやかな子チャン、きらりチャンなんかに、
怒鳴り散らして、泣きわめいて。
言うことがなくなって、涙をぼろぼろこぼしながら、引き止める美波チャンも無視して部屋を出ていっちゃった。
大声で人間たちに"喰種"のことを知られたかもって気付いて青ざめたのは、何もかも嫌になって出てきた中庭でのこと。
泣きながら歩いてるみくを、人間のアイドル達が見てた。
また余計なことをすれば人間たちに正体がバレるかも。
もしかしたら、もうバレてるかも。
下手したら、みくだけじゃなくて……
今考えたら、ただみくを心配してくれてただけって分かるんだけど、
あの時は視線が怖くて怖くて仕方なくって、
何処でもいいから、視線から隠れる場所が欲しかった。
必死で周りを見渡した。
やっと掴みかけた夢なのに、全部崩れてしまうかもしれないって考えたら、恐ろしくて仕方なかった。
ほとんどパニックになりかけて、逃げまわった先で……
みくは346カフェと。
それからナナチャンに出会ったんだよ。
115 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/03/05(日) 10:50:53.92 ID:QEuJG5m20
今日はここまで。
本当なら外伝前編で書いてたはずのエピソードでした。
116 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/03/05(日) 16:48:38.75 ID:QEuJG5m20
〜現在・安部菜々〜
"喰種"に生まれたからには、遅かれ早かれやって来てしまう「出来事」があります。
野良猫みたいに暮らしていても、
普通の人間みたいに街で暮らしていても、
夢なんか無くて毎日をだらだらと過ごしていても、
ひとつの夢を抱いて必死に生きてる最中でも、
やっと夢がかなって、すっごく幸せな気持ちの時でも。
"喰種"が生きるなら、たった今起こってもおかしくないこと。
今日起こっても、何も不自然じゃないこと。
「その時」がいつ来るか……
ナナたち"喰種"は、それに内心ではずっと怯えながら。
それでも、毎日をすこしでも楽しいものにするために生きています。
だから。
今日、ナナに起こったことは、決して不幸なことなんかじゃなくて。
仕方のないことなんです。
どれだけ小さくても弱くても、ナナは"喰種"に生まれちゃいましたから。
117 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/03/05(日) 16:49:45.73 ID:QEuJG5m20
1レスだけ追加。
ウサミンは赫子を出せない"喰種"です。
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/14(火) 20:23:18.54 ID:65cRCcJg0
一応乙
119 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/03/18(土) 21:32:50.67 ID:VTG9pU+j0
そろそろ再開できそうです。
飛び飛びの更新ですみません
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/19(日) 06:10:09.78 ID:G/GybNNNO
エタらなかったら何でもいいよ
楽しみに待ってる
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/26(日) 14:35:44.18 ID:dUo1oEwE0
短編のほう落ちてたな
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/25(火) 02:33:39.29 ID:fKBIZUymO
そろそろ
123 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/04/26(水) 22:34:40.70 ID:93meDdzX0
>>122
保守感謝です。生存報告。
やっぱり今月中は書けそうにないです…
124 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/04/26(水) 22:37:12.55 ID:93meDdzX0
>>121
気晴らしぐらいにはなるかと思って立てたけど
意味ありませんでしたね
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/28(金) 02:15:56.82 ID:9QTgwKGPO
おう待ってるぞ
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 22:47:55.99 ID:JIWISpAB0
気晴らしの短編ぐらいならスレ立てせずここに書いてもいいんじゃない?
短編って注記入れたうえでさ
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/05/13(土) 23:32:40.01 ID:X5xjQEz7O
5月だぞあくしろ
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 23:33:22.85 ID:X5xjQEz7O
sage忘れたすまない
129 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/05/20(土) 18:40:20.73 ID:Q+XGLJVG0
生存報告。
このまま書き進めるとどこかでアカン矛盾が生じそうだと思ったので、
今更ながら346プロダクションについて作っていた設定を
改めて文章化してまとめてます。
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 19:12:53.88 ID:rgvlWi27O
おう待ってたぞ
そしてまた待つぞ
131 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/05/21(日) 00:42:06.16 ID:/ZkmsORB0
せめてもの設定まとめたやつの一部公開
http://imgur.com/a/zMrcd
ネタバレを極力除いたものです
ところどころ頭の悪い書き方してそうな気がするけどゆるして
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/21(日) 21:42:32.52 ID:UAsELI49O
今月中は無理そう?
133 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/05/22(月) 19:10:30.80 ID:vFuv4ZRo0
>>132
少なくとも29日まではまともに書けそうにないっす…
レポートと中間テストが団子状態
それが終わったら頑張ってみる
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/05/23(火) 03:24:33.47 ID:QsSm+Ab3O
>>133
分かった頑張ってくれ
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/23(火) 03:25:14.74 ID:QsSm+Ab3O
sage忘れちゃった
136 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/05/31(水) 22:42:01.68 ID:q13HahN70
こう言うのを、「虫の知らせ」って言うんでしょうか?
…その日はなんだか、色んなところで昔のことを思い出す日だったんです。
≪ミミミン ミミミン ウーサミン! ミミミン ミミミン ウーサミン!≫
朝が来て、ケータイの目覚ましが鳴り響いたとき。
ナナはどうしてか、すごく救われた気分になりました。
まるで、この曲がナナを…深くて苦しい水の底から引き上げてくれたような。
寝起きのぼー…っとした頭が段々冴えてきたことで、その理由が分かりました。
それは、目覚ましの曲が「メルヘンデビュー」で、ナナのプロデューサーさんがナナにくれた曲だったからってことと。
ついさっきまで、去年までの寂しいナナが夢に出てきていたからだったんです。
137 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/05/31(水) 22:42:33.96 ID:q13HahN70
プロデューサーさんに拾ってもらえる前のナナは……そうですね……?
知ってる人のお話だと、みくちゃんと智絵里ちゃんと未央ちゃんを足して3で割ったような人生なんじゃないかと思います。
智絵里ちゃんみたいに、ちっちゃい頃に家族を失って。
未央ちゃんみたいに、周りには人しかいない環境で育っていって。
そしてみくちゃんみたいに、ずっとアイドルになりたいって思い続けながら生きていました。
……い、いや。
3人の方がずっと苦労してると思いますけどね!
ナナの周りの人は……人間ばっかりでしたけど。
それでも、何も知らないナナに優しくしてくれて、色んなことを教えてくれるような良い人たちばっかりでしたから。
……うん。
今のナナ、なんだかワガママになってました。
あの時はあの時で、ナナは恵まれてましたね。
お隣の鈴木さんは、レッスンやご飯さがしで夜遅くに帰っちゃうナナを心配してお野菜たっぷりのご飯を作ってくれますし。
生活費を稼ぐためにアルバイトしてたメイドカフェのオーナーは、とっても美味しそうなクリームパフェを作ってくれますし。
大家さんも、逃げ込むようにお部屋を借りたナナのことを怪しまずに、新鮮なお魚の差し入れなんかしてくれたりして……
……
………
……ごめんなさい。
やっぱりナナ、あの頃は辛かったです。
今がメチャクチャ幸せです……!
138 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/05/31(水) 22:45:53.45 ID:q13HahN70
2レスだけだけどここまで。
ブランク空きすぎて読みづらくなってるけど許してね。
モバでブライダルウサミンが出たことですし、そろそろウサミン回をちゃんと書いていかなきゃなとおもいます。
139 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/01(木) 18:02:05.38 ID:xM2QAswW0
――――――――――――――――――――
ずっと使ってる、小さい冷蔵庫を開けると、中にはもらい物の食材がそこそこ。
そろそろ寒くなってきましたし、また早苗さんや心さんをお鍋にでも誘おうかな?
ナナが食べても、吐いちゃうだけで捨てるのと変わりないですし……
そんな事を思いながら、お魚や野菜を少しかき分けて「ナナのご飯」を取り出します。
…これ、早苗さんたちに見つからないようにするの大変なんですよねー。
ある時はあんまり奥深くまで見つからないように、手前におつまみを用意しておくとか。
ある時は「お肉」のタッパーにもんのすごい前の日付を書いて、思わず手を引いちゃうくらいの消費期限切れを演出するとか。
宅飲みのときは出来るだけ瑞樹さんにも来てもらって、先に冷蔵庫を漁って誤魔化してもらったりもして。
まあ、瑞樹さんからしたら宅飲みに付き合っても損しかしないですから…頼りすぎないようにはしてるんですけどね?
140 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/01(木) 18:02:42.71 ID:xM2QAswW0
片手でもぐもぐと「ご飯」を食べながら、もう片方の手でお着替え、あと忘れ物のチェック。
左手だけで食べられるようカットするのは、結構時間とコツがかかります。
でも年々寝起きが辛くなりますし、かと言って遅刻なんて絶対できませんし。
こういうところで時間を短縮できれば、それだけ余裕ができますからね。
…うーん。やっぱりご飯は346プロの支給に頼った方がいいんでしょうか?
でも、ナナが頼っちゃえば、その分困ってる子達に行き渡らなくなるかもしれないし……
…うん。まだ自殺死体を見つけることはできるし、もうしばらく頑張ろ。
よし。準備はオッケー!
ちゃんと口も拭いてっと。
「あら? ナナちゃん今日も早いのね」
菜々「はい! 今日はアニメイベントのお仕事があるんです!」
「あらそう! すごいわねえナナちゃん! ついこの間までは苦労してたのに、おばちゃん嬉しいわ〜」
菜々「まだ先は長いですけどねアハハ……それに鈴木さんが応援してくれるおかげですよっ!」
「そーお? うふふっ、帰ったら楽しみにしててね? こないだすっごく大きなお魚届いたんだから、ナナちゃんにもごちそうしてあげるわ!」
菜々「ウッ……あ、ありがとうございます!!」
さ、さて。
帰ったらどうしようか、考えることが一つ増えましたけど!
準備してるうちに、夢の寂しさもだいぶ無くなったし!
ガスの元栓よし!
ゴミ出し(一部カムフラージュ済)よし!
戸締りよし!
菜々「安部菜々、ウサミン星より職場へと向かいます!」
141 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/01(木) 18:03:13.74 ID:xM2QAswW0
ここまで。
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/02(金) 08:34:15.76 ID:sko8rI/zO
おつん
143 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/02(金) 21:19:49.75 ID:JtjSw0NX0
――――――――――――――――――――
〜CCG本局〜
早苗「……なるほどね。その『キャッスル』ってのはあくまで攫い屋、運び屋で」
早苗「誘拐した女の子を『マダム』達に売り渡すことで稼いでる集団……って思われてるのね」
橘「その通りです」
早苗「じゃあ、そのマダムを叩けば攫われた子達も見つかるんじゃないの? 今更運び屋を探したところで、もう……」
橘「いいえ」
橘「これは、奴等の『下請け』を行っている喰種に尋問を行い得た情報ですが」
橘「『キャッスルは手に入れた食材に加工を施して味わい深いものにしている』などと話しており」
橘「また『商品ひとつひとつを運ぶのではなく、定期的に十数人ほどの運送をいっぺんに行う』という供述もあることから」
橘「『キャッスル』は誘拐した少女を保存……あるいは何らかの施術を行うために」
橘「複数存在すると思われる奴等の活動拠点に一時監禁しているのだと推測されています」
早苗「……つまり……ユッコちゃんは今、『キャッスル』が監禁してるってこと?」
橘「誘拐されてからの日数を考えれば、おそらくは」
144 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/02(金) 21:20:46.74 ID:JtjSw0NX0
早苗「…ねえ、施術って何? あいつらユッコちゃん達の体に何するつもり?」
橘「現時点では不明です。しかし……」
橘「尋問の結果、被害者が輸送される間『歩行・会話や受け答えに障害がある様子はない』」
橘「また『五体満足だとはっきりわかる』ことから」
橘「誘拐時に与えた負傷の治療施術、また軽度の薬品投与……いわば栄養剤のような、被害者の健康にはほぼ何ら影響のないものだと判断されています」
橘「そして、奴等のターゲットの基準、その意味や需要からして外見・あとは表情に影響のある行為は行わないだろうとされており」
橘「よって、輸送前に『キャッスル』の拠点から被害者少女たちを取り返せば社会復帰は可能……と我々は判断しています」
橘「"喰種"をまたいで判明した情報である以上100%確実とは言えませんが、複数に尋問して得られた共通の情報ですから信憑性は高いかと」
早苗「……ふー。とりあえず、取り返せるかどうかは時間勝負ってことなのね」
早苗「そして早く取り返せれば、ユッコちゃんも……」
早苗「ありがと、準特ちゃん。希望が見えただけ、ちょっと安心したわ」
145 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/02(金) 21:21:13.28 ID:JtjSw0NX0
橘「現在のところ、我々から提供できる『キャッスル』の情報は以上です」
橘「片桐さんには―――」
早苗「分かってるわ。346プロ内で信頼できる人間をリストアップしておけ、でしょ?」
橘「ご協力感謝します」
橘「…その、片桐さんを疑っているわけではありませんが、巧妙なやり口で周囲に喰種やその協力者が身を隠していない保証はなく……」
早苗「いいわよそんなの。あたしも『知り合いは全員人間!』って胸張って言えるわけじゃないもの」
早苗「でも、あくまでハッキリさせるのは白だけでいいのよね? グレーゾーンは放置で、わざわざ正体を明かすこともないでしょ?」
橘「はい。必要以上に、民間の方を危険に晒すことはできませんから」
橘「ですから……片桐さんの身の安全を前提とした範囲で構いませんから……」
橘「…どうか娘を、守ってください」
146 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/02(金) 21:24:14.15 ID:JtjSw0NX0
早苗「……ぷっ」
早苗「あははっ! 分かってるわよ、任せなさいって!」
早苗「そんな申し訳なさそうな顔してないで、準特ちゃんはあなたの仕事をしなさいよ。ありすちゃんは私がなんとかしたげるから」
橘「……! ありがとうございます。本当に、本当にっ……!」
早苗「……うん。ちゃんと分かってるわよ。大事な一人娘だもんね。忙しいのに、攫われるかもって考えたら、居てもたってもいられないわよね」
早苗「こっちは大丈夫だから。ありすちゃんもお母さんのこと、頑張ってるってちゃんと分かってるから。だから安心してちゃんと捜査に集中しなさいよ」
橘「……。はい」
――――――――――――――――――――
早苗「送ってくれてありがと。ここで降りるわよ? この協力が公になっちゃまずいんでしょ?」
橘「分かりました。ご協力感謝します」
早苗「ユッコちゃんのことも勿論お願いするけど……捜査が落ち着いてからでいいから、たまにはありすちゃんのライブ見に行ってあげなさいよ?」
早苗「当然、それまでに死んだら問答無用でギルティ! お姉さんが逮捕しちゃうわ!」
橘「…市原一等はともかく、私は片桐さんよりずっと年上ですよ?」
早苗「そーいやそうね! 若くてキレイだから忘れてたわあはは!」
早苗「初めて会った時は一等ちゃんと同い年かと思ったくらい……ああ」
早苗「そうよ仁奈ちゃん! あの子もあの子で、すっごく寂しがってるわよ!」
早苗「今日どこ行ってんのか知らないけど、流石にもっと娘に構いなさいって言おうと思ってたのに!」
早苗「いくらなんでも、事務所を託児所代わりにするのは非常識よ! ネグレクト寸前よ!」
橘「……ええ。その通りですね」
橘「ですが、その……あの子とバディを組んでいる私が庇えた義理ではありませんが……」
147 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/02(金) 21:32:25.87 ID:JtjSw0NX0
早苗「……どうしたのよ? いきなり口ごもって」
橘「……申し訳ありません、片桐さん。私的で勝手なお願いではありますが、今からお話しすることは他言無用でお願いします」
橘「特に仁奈ちゃんには、出来るだけ伏せてあげて欲しいんです」
早苗「……?」
橘「市原一等は今日……今日に限らず、暇があれば単独喰種の駆逐に積極的に参加しています」
橘「一等には仁奈ちゃんの養育費以外にも、討伐報酬を稼ぎ続けなければいけない理由があり―――――」
――――――――――――――――――――
148 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/02(金) 21:33:30.53 ID:JtjSw0NX0
今日はここまで。
149 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/03(土) 11:09:50.11 ID:UNFmkHOJ0
――――――――――――――――――――
ナナの目の前にいる、この人は誰なんでしょう
会った覚えなんかない人
どこかで見たようなオレンジ色の髪
そして……
覚えておかなきゃいけないものであるはずの、白いコート。
それを着込んだ人が……
どうして、ナナの仕事先に。
どうして、ナナの目の前に?
「…どーもォ。安部菜々さんでやがりますよねェ?」
150 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/03(土) 11:10:19.54 ID:UNFmkHOJ0
市原「喰種捜査官だ」
市原「てめえに"喰種"容疑がかかってやがるんですけど」
市原「大人しく付いて来てくれませんかねェ?」
151 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/03(土) 11:10:45.75 ID:UNFmkHOJ0
――――――――――――――――――――
そこから、ナナに何ができたでしょうか。
ナナは弱っちくて、赫子も出せなくて。
だから、走って逃げることしかできなくて。
逃げながら、電話を取り出したけど、プロデューサーにはつながらなくて。
焦って震えた手は、じゃあ、どうしようかって、電話帳をかき分けて。
みくちゃんの番号を見つけて、電話をかけようとしたところで……直前で踏みとどまりました。
思い出したんです。
『喰種に対するあらゆる権利は『人間側に正体を露見させていない』事を最低条件として定められています』
『アイドル、そして私のような職員を問わず、この規定に違反した者への処分は……』
『当人と346プロダクションの間に交わされていた契約の、一切の破棄』
『……即ち、『346プロからの追放』となります』
ナナがアイドルを始める前に、繰り返し言われたこと。
ナナは、とっくに見捨てられてたんだってこと。
152 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/03(土) 11:11:20.19 ID:UNFmkHOJ0
どこから、正体がバレちゃったんでしょうか。
「ご飯」を集めてる時?
それとも、"喰種"についてお話してるところを、誰かに聞かれてた?
……いいえ
そんなことは、もうどうでもいいんです。
出口が遠い楽屋の中で、さっきの捜査官の足音が近づいてくるのが分かります。
せめて、みくちゃん達は巻き込まないように、電話帳の入ったケータイごとどこかのゴミ箱に捨てました。
あとはもう、やることなんて……
たくさんありました。
アニメの声優をやりたかった。
みくちゃんたちと一緒に歌いたかった。
もっともっと、色んな子達と踊って、たくさんの人に応援してもらって。
カフェの後輩や、今までお世話になった人たちも、ライブに誘って。
153 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/03(土) 11:11:47.53 ID:UNFmkHOJ0
市原「―――見ぃつけたァ」
……ああ。
最後に思い出すのが、なんでこんなことなんでしょうか。
昨日、なんとなく思った言葉。
『ああ…………疲れたぁ〜。よっこらせっと』
『通勤に1時間って、もう引っ越した方がいいよね、絶対……』
『うぅ……でもまぁ、まだ先はわかんないし、頑張ろっと……』
『菜々ちゃん、今日もLIVEとメイドさん、頑張ったね!』
『ありがとう、ウサミン!』
『……なーんちゃって』
154 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/03(土) 11:12:17.81 ID:UNFmkHOJ0
『でも……』
『今日も、アイドル楽しかった……へへ……へへへへ……』
『明日も……』
楽しいといいなあ
155 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/03(土) 11:14:28.75 ID:UNFmkHOJ0
ここまで。
3か月悩んでこうなりました。3ヶ月かけてこれでした。
後から書き直すことを前提に投稿していますが、もうちょっとウサミン編ボリュームあげたかったなと思います。
次からようやく本題に入ります。
どうかお付き合いよろしくお願いします
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/03(土) 21:06:39.68 ID:gzgVbsW7o
おつ
157 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/03(土) 22:56:35.18 ID:UNFmkHOJ0
あと、オリキャラ捜査官として橘準特等と市原一等を出したんですが
この2人について今のところどんな印象を抱いたか、よければ教えてください。
ちゃんと狙ったキャラに書けてるか気になるのです
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/04(日) 09:29:58.12 ID:CmdOyv7Bo
市原一等は仁奈+真戸(父)
橘準特はありす+亜門
そんなイメージ
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/04(日) 13:28:37.90 ID:hR0ScyGBO
待ってたぜ
160 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/06(火) 21:06:05.70 ID:nB1i8LTj0
――――――――――――――――――――
ちひろ「――ええ、そうですか。了解しました、お疲れさまです」
「……!!」
ちひろ「はい。後処理はこちらで行いますので、――さんは通常業務に戻っていただいて結構です」
「ッ……ンー! ンムゥー! ンーヌーウー!!」
ちひろ「…いえ。今のは、『いつもの』です。もう慣れたでしょう」
ちひろ「そうです。次はあなたの身かもしれません。どうか、これまで以上に警戒を怠らないよう」
ちひろ「……では」
ピッ
ちひろ「……予定通り、安部菜々さんの駆逐が確認されました」
ちひろ「規定通り、ここの皆さんには『火消し』をお願いします」
ちひろ「――さんはRc検査偽造診断書および偽造履歴書について、菜々さんのものを作成された方に改めて『警告』を行ってください」
ちひろ「――さんは[???]プロダクション所属の喰種から、配布試料を基に『密告対象』の決定を」
ちひろ「――さんは通常通り『キャッスル』としての活動をお願いします」
ちひろ「では今から、一切の抜かりなく、速やかに仕事を遂行してください」
ちひろ「皆さんが導く『シンデレラ』は、貴方たちの仕事に生かされていることをお忘れなく」
ちひろ「……さて」
ちひろ「もう菜々Pさんを解放してくださって構いませんよ」
161 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/06(火) 21:06:44.02 ID:nB1i8LTj0
パッ
菜々P「……」フラ
菜々P「……」ペタ
ちひろ「菜々Pさん、先ほどまでの行為を謝罪します。…また、菜々さんの不運を心よりお悔やみします」
ちひろ「今後のプロデュース活動についてですが……菜々Pさん? 大丈夫ですか?」
菜々P「…はい。大丈夫です」
菜々P「謝ってもらわなくて結構です。説明は腐るほど聞いてましたから」
菜々P「……」
菜々P「……すんません、ちひろさん」
菜々P「雇ってもらって何ですけど……俺、もうこの仕事やめます」
菜々P「……辞めさせてください」
162 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/06(火) 21:07:28.41 ID:nB1i8LTj0
ちひろ「……そうですか」
ちひろ「分かりました。では本日中に退職の手配をいたします」
ちひろ「しかし改めて申し上げますが、退職されたプロデューサーにも監視がつくことをお忘れなく」
ちひろ「もし、自暴自棄になり346プロダクションごと機密を流出させようと考えるものなら……」
菜々P「大丈夫です。……そんなの、もう、どうだって……」
ちひろ「……お気をつけて」
――――――――――――――――――――
ちひろ「さて。プロデューサーさんもお疲れさまでした」
ちひろ「…その、良かったのですか? 貴方に菜々Pさんの拘束を任せてしまって……」
武内P「構いません。能力から、菜々Pさんの確保、拘束は私が適任の仕事だと判断しました」
ちひろ「でも…プロデューサーさんだって、『あの子達』の時……」
武内P「今は、シンデレラプロジェクトの皆さんを危険から遠ざけるのが私の役目です」
武内P「皆さんが白鳩に目をつけられることも、『最終隠匿プロトコル』によって346プロダクションを失うことも、避けなければいけません」
武内P「そのためには、たとえ安部さんのプロデューサーだろうと、あの場に行かせてはいけなかった」
ちひろ「…ご協力、本当に感謝します。プロデューサーさんは、シンデレラプロジェクトの皆のところに行ってあげてください」
武内P「……失礼します」
パタン
ちひろ「……」
ちひろ「……あの時は、プロデューサーさんを抑え込むの……大変だったなあ」
――――――――――――――――――――
163 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/06(火) 21:08:06.27 ID:nB1i8LTj0
今日はここまで。
菜々Pも喰種です。
164 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/06(火) 23:23:10.54 ID:nB1i8LTj0
せっかくなのでちょっと修正。
165 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/06(火) 23:23:56.54 ID:nB1i8LTj0
せっかくなので
>>160
をちょっと修正。
166 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/06(火) 23:30:45.32 ID:nB1i8LTj0
――――――――――――――――――――
ちひろ「――ええ、そうですか。了解しました、お疲れさまです」
「……!!」
ちひろ「はい。後処理はこちらで行いますので、JKTPさんは通常業務に戻っていただいて結構です」
「ッ……ンー! ンムゥー! ンーヌーウー!!」
ちひろ「…いえ。今のは、『いつもの』です。もう慣れたでしょう」
ちひろ「そうです。次はあなたの身かもしれません。どうか、これまで以上に警戒を怠らないよう」
ちひろ「……では」
ピッ
ちひろ「……予定通り、安部菜々さんの駆逐が確認されました」
ちひろ「規定通り、ここに集まって下さった一級P・準一級Pの皆さんには『火消し』をお願いします」
ちひろ「肇Pさん、美玲Pさん、雪美PさんはRc検査偽造診断書および偽造履歴書について、菜々さんのものを作成された方に改めて『警告』を行ってください」
ちひろ「フリルドスクエアPさん、KBYDPさん、ブルーナポレオンPさんは[???]プロダクション所属の喰種から、配布資料を基に『密告対象』の決定を」
ちひろ「NWPさんとガールズ・パワーPさんは通常通り『キャッスル』としての活動をお願いします」
ちひろ「では今から、一切の抜かりなく、速やかに仕事を遂行してください」
ちひろ「皆さんが導く『シンデレラ』は、貴方たちの仕事に生かされていることをお忘れなく」
ちひろ「……さて」
ちひろ「もう菜々Pさんを解放してくださって構いませんよ」
167 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/07(水) 21:17:51.21 ID:RVpcWtQd0
〜過去・神崎蘭子〜
今年の夏は、すごく楽しかった。
心の底からそう思えるようになったのは、サマフェスに向けた夏合宿のときでした。
美波さんと、アーニャちゃんが合わせてくれた二人三脚。
透き通る爽やかさが、口や体中に飛び込んでくる水鉄砲。
夕陽を見ながら、みんなで息をそろえて飛んだ大縄。
「変わらない」って、思ったんです。
私は、"喰種"になり切れなくて。
人のご飯を食べる苦痛も、理解できないから。
だから、みんなと私には、大きな壁があるって思ってたけど。
こうやって笑ってるときは、何も変わらないって。
美波さんが、みんなが、教えてくれたから。
だから、私もみんなに教えたかったんです。
人間は怖くないよ、って。
私達となにも変わらないよ、って。
人間でもある私だから、分かることを教えたくって。
もしみんなが人間を知らなくて、苦しんで。
そのまま死んでしまうのが「普通」だって思ってるなら……
私はそれを壊したい。
168 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/07(水) 21:20:01.25 ID:RVpcWtQd0
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
169 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/07(水) 21:21:28.62 ID:RVpcWtQd0
〜現在・白坂小梅〜
―――皆には、知っておいてほしいんだけど……
346プロダクションは…とっても大きな会社で、
その分、会社が長く続く方法も、しっかり考えられてて……
たくさん持ってる「コネ」や、お金をたくさんつかって。
たくさんの人間、あと、ちょっとの喰種の犠牲を払いながら。
絶対に倒れないように成長していったんだ…。
「ある目的」のために、ね……。
だから、346プロダクションは……
人間や喰種が、ちょっと反抗しようとしても、どうにもできない会社……。
想像できないくらい、強い喰種……まさに、「化け物」でも現れない限り、ね。
そう、だよ。
これは、何十年…何百年も、倒れなかった会社が、
ある一人の「化け物」に壊されちゃうお話。
そして、会社を壊した「化け物」は……
じつは全部、友達や大切な人のために、自分の力を使っただけなんだけど……
"喰種"になり切れてないから、"喰種"の立場や気持ちが全部は分からなくて。
人間にもなり切れてないから、人間の恐怖も分かってなくて。
だから、助けようとした人は不幸になって。
救おうとした人は死んじゃって。
不幸に巻き込んじゃった人を救おうとしても、余計なことしかできなくて。
だから、どんどん失って。
最後の最後には、『生まれてきたことが間違いだったんだ』って。
『生まれた瞬間に死んでいればよかったんだ』って泣き崩れるくらい、
血でがんじがらめの坂道を、小さな体が傷つきながら転がり落ちていく化け物……
……これは、ある"隻眼の喰種"の、小さな女の子の……
魔法が解けちゃうお話。
170 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/07(水) 21:23:28.00 ID:RVpcWtQd0
今日はここまで。
ひびきんよりらんらんの方がカネキっぽいと思うのです
171 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/08(木) 20:39:21.76 ID:95KG3qVQ0
――――――――――――――――――――
菜々さんは……
喰種捜査官に駆逐されちゃった菜々さんは、「事故死」したってことになったよ。
まだこれからって時に、死んじゃったから……
あんまり、大っぴらに騒ぐ人もいなかったんだけど……
それでも、「喰種として駆逐された」なんて言ったら……
アイドルが"喰種"だったなんて言われたら……人間のみんなは混乱しちゃうから……
だから、346プロだけじゃくって……
アイドルを"喰種"として殺した時は……『事故死』って、みんなに言うんだって。
だからね。
菜々さんを知ってる「人間」のファンや仲間は……ただ、悲しんで終わりなんだけど……
172 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/06/08(木) 20:39:52.46 ID:95KG3qVQ0
1レスだけですが今日はここまで。
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/09(金) 21:28:10.60 ID:adjKvVoSO
大阪LVで見てきました。
かわいいかわいい言われる蘭子だしかわいいけど、
やっぱステージの上ではカッコいいのが蘭子だなと思わされました
174 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/06/09(金) 21:28:55.79 ID:adjKvVoSO
酉忘れ。
175 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/06/09(金) 21:43:42.25 ID:adjKvVoSO
https://youtu.be/vQZ55w9Lrrk
あと東京喰種実写の最新予告が公開されたみたいですね。
色々言われてるけど正直すごく楽しみです。
公開初日の7/29日に見に行こうと思います
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/11(日) 12:00:37.68 ID:iMgDSPfv0
おつー
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/21(水) 12:37:28.86 ID:eN5WKtBgO
まだかなまだかな
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/01(土) 12:35:36.24 ID:U1BQpNkKO
かなかな
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/09(日) 00:13:56.67 ID:R73L825QO
1ヶ月たったよ!
180 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/07/11(火) 23:35:00.91 ID:2jBpe/ih0
生存報告。
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/12(水) 20:58:42.58 ID:an1waKMsO
生きとったんかワレェ!
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/18(火) 15:21:27.27 ID:DZX2pQ1WO
そろそろこないとうんこ漏らすぞ
183 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/21(金) 19:53:51.68 ID:qIbBtUmA0
多分今晩更新します
>>182
漏らしてもいいけどちゃんと食べなよ
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/21(金) 23:40:35.84 ID:HnzkuFMaO
おう早く更新したら食ってやるよ
185 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 00:20:55.99 ID:PDvRBj/20
――――――――――――――――――――
小梅「…蘭子ちゃん。ゆっくり、落ち着いて……『何でもないように』、歩いてね」
繋いだ手は、ぷるぷるって震えてた。
すごく怖かったんだと、思うよ。
ホラー映画を見てる時とは全然違う……「死ぬかもしれない」って恐怖。
ぐっ、って固まった体を、無理やり、ゆっくり動かして……
蘭子ちゃんは、目の前の人達を出来るだけ見ないように……
私の手を引いて、346プロを歩いて行った……。
美城「常務の美城です」
「美城さん。本日は捜査のご協力・ご理解感謝いたします」
美城「いいえ。所属アイドルに"喰種"がいたことを見抜けなかった我々にも責任がありますので」
美城「多忙な喰種捜査の合間を縫って我が社にご訪問いただいた皆様のために、資料は既に手配しています」
「おお、それは本当にありがたい。そちらもご多忙でしょうし、手早く受け取って退散いたしましょう」
美城「私の執務室でお渡しいたします」
美城「『安部菜々』の登録情報と、偽造戸籍および偽造診断書の調査資料を」
……346プロのアイドルが"喰種"だってバレたとき。
いつも、その人について聞きに来るために……喰種捜査官がやって来ちゃう。
白鳩たちに怪しまれないで早く帰しちゃうことに、346プロは慣れっこだけど……
やっぱり、みんなにとって……怖いものは、怖いよね。
186 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 00:21:21.86 ID:PDvRBj/20
とりあえず1レス更新。明日たぶん続きかく。
187 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 11:11:39.83 ID:PDvRBj/20
そして、白鳩はいつも通り。
必要な書類だけ持って、すぐに帰っていったよ。
白鳩が346プロのことを……アイドルから"喰種"が出たのに、全然怪しまなかったのは、
ちゃんと、そのための対策をしているからって……プロデューサーさんは教えてくれたなあ。
何をやってるかまでは教えてくれなかったけど……
――――――――――――――――――――
美城「……ふう。帰ったか」
ガチャ
美城「!」
奏「あら。お疲れ様、常務」
美城「速水か。何か用があるのか」
奏「いいえ? ただクローネの一員として、上司を労おうと思っただけ」
奏「コーヒーも淹れたんだけど……常務も一杯どうかしら?」
美城「ああ……いただこう」
188 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 11:12:12.45 ID:PDvRBj/20
美城「…」ズズ
美城「……悪くない」
奏「お褒めの言葉、ありがたく受け取るわね。こんなのより菜々ちゃんの方がずっと美味しかったんだけど」
美城「その話は聞いている。…一度足を運ぶべきだったか」
奏「飲んでなかったのね。本当に勿体ないわ」
美城「そうか」
美城「……それにしても」
奏「? どうかした?」
美城「……いや、独り言だ。気にするな」
美城「次の職務に集中したい。労いには感謝するが、それを飲み終わったら退室してくれ」
奏「……そう。お粗末さま」ギイ
バタン
美城「…………」
189 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 11:13:09.07 ID:PDvRBj/20
美城(…『所属するアイドルの正体が露呈した場合、CCG捜査官への対応は美城一族の者が行う』)
美城(当プロダクションの秘密保持のために作成された、マニュアルの一つであり……私が知らされている数少ないそれだ)
美城(目的はわかる。身分、戸籍、証明書の一切にフェイクが無い人間が代表として彼等と関わることは、一定の信用をもたらす)
美城(だが……)
美城(それだけで、彼らがあれほど早急に引き上げるものか?)
美城(喰種対策法にも、『それ』への対処が記されている)
美城("喰種"を庇う人間が存在することなど、彼らはとっくに想定している)
美城(ならば何だ。なぜ彼らはあれ以上、我が346プロダクションを追求しなかった?)
美城(それも、美城の手によるものだと言うのか……?)
美城(やはり……)
美城(きな臭い)
――――――――――――――――――――
190 :
補足。このとき白鳩は普通のスーツ姿で資料を受け取りに来ています。だから常務以外は捜査官だと分からない。
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 11:43:52.72 ID:PDvRBj/20
――――――――――――――――――――
喰種捜査官。
わたし達を殺せる武器を持った、わたし達"喰種"の天敵。
あの人たちが346プロから出ていって……やっと、皆の緊張も解けたみたい。
でも……それでも人間の皆にはバレないように……
菜々さんが死んだことを、泣きわめくことはしないんだ。
だって人間の皆は、菜々さんが"喰種"として駆逐されたんじゃなくて、
事故死したって思ってるんだから。
『そう言うこと』として泣くことはあるんだけど、
本当に涙を流すのは……家に帰った後。
寮の皆は、帰っても人間がいるから……自分の部屋で、周りを確認してから。
とりあえず、今日一日は何も知らないふりをして。
喰種は泣かないように頑張って過ごすんだよ。
191 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 19:01:14.28 ID:PDvRBj/20
だから……
小梅「蘭子ちゃん……CPのお部屋には……戻らないの?」
蘭子「うむ……彼の部屋に満ちた魔力は淀み……」
蘭子「…なんだか、居づらくて」
それは、シンデレラプロジェクトのみんなも同じ。
表向きは、なんでもないように振る舞って、元気にお仕事しようとしてたけど……
やっぱり、空気はとっても重いんだ。
……ううん。
蘭子ちゃんが気にしてるのは、そっちじゃないかも……。
小梅「……『これが当たり前だから』?」
蘭子「!」
やっぱり。
192 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 19:01:43.37 ID:PDvRBj/20
さっき、蘭子ちゃんは落ち込んでるみくちゃんを励まそうとしたんだよ。
みくちゃんは……特に菜々さんと仲良くしてたから。
大切なお友達を亡くしたみくちゃんを慰めてあげたくて、優しい蘭子ちゃんは一生懸命話しかけてたんだけど……
『そんなに気を遣わなくても大丈夫にゃ』
『ナナチャンが死んだのは、ナナチャンの不注意のせいだもん』
『みく、ちゃんと分かってるよ。どれだけみく達が頑張ってアイドルしても、これだけは受け入れなきゃいけないって』
『"喰種"はこれが当たり前なんだから』
『……むしろ、今までこんなこと忘れて平和ボケしてたみくには良い薬になったもん』
『だから大丈夫っ! みく、いつまでも落ち込んでなんかいないにゃ!』
『だ!か!ら! 蘭子チャンもいつまでも曇った顔しないの!』
『死んだ人より、今生きてる自分のことを考えるの!』
『そうしないとナナチャンも悲しむでしょ?』
そう言って、みくちゃんは元気そうに笑ってた。
193 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 19:02:24.80 ID:PDvRBj/20
小梅「……みくちゃんの言ったこと。私も……正しいと思う、よ?」
蘭子「……」
小梅「"喰種"は、仲間が死んじゃっても……自分は生きてるの。友達にも、まだ生きてる人はいる……」
小梅「いつまでも、死んだ子を気にして……今度は自分が怪しいところ見せちゃったら……」
小梅「……もう、言わなくても分かる…よね…?」
蘭子「……」
蘭子「なんで」
蘭子「なんでそんなに、みんな割り切れるの?」
小梅「……」
蘭子「大切な人が死んじゃったのに。あんなに頑張ってた人が無残に殺されちゃったのに…!」
蘭子「生きてる人の方が大事って、それは分かるの。分かるけど……!」
蘭子「友達の死をまともに悲しめないなんて、おかしいよ……」
蘭子「悲しいよ……!」ジワ
194 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 19:03:42.01 ID:PDvRBj/20
小梅「蘭子ちゃん……」
蘭子「こんなこと考える、私がおかしいのかな」
蘭子「私が、みんなと違うから? 私が甘い生き方してたから?」
蘭子「……みんなの言うことが分からないのは、私がハーフだから?」
小梅「!」
蘭子ちゃん……
まだ、気にしてたんだ。
小梅「……それは……」
「あれ? 二人ともこんなとこで何やってんの?」
蘭子・小梅「!!」
蘭子「え……美嘉さん?」
美嘉「やっほー★ 蘭子ちゃんのこと、みんな心配してたよ? 飛び出したまんま帰ってこないって」
美嘉「みくちゃんなんか、『余計なこと言っちゃったかも』って狼狽えてたよ」
蘭子「!」
195 :
全治全能の未来を予言するイケメン金髪須賀京太郎様に純潔を捧げる
[sage saga]:2017/07/22(土) 19:04:23.40 ID:hBMET1/r0
蘭子P我子ギル入手出来たが蘭子ちひろに課金しないと入手出来ないと告知される
196 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 19:04:28.67 ID:PDvRBj/20
蘭子「みくちゃんが……」
美嘉「お? 何、みくちゃんのこと冷たい女だって思っちゃってた?」
蘭子「!? い、いや、そんなこと……! そんなことないですっ!」
美嘉「みくちゃんに何言われたか、あの子に聞いたよ」
美嘉「おおかた、『なんでこんなに割り切れるんだ』って思ってるんだと思うけど……」
美嘉「ま、蘭子ちゃんもあの子も人間に近い暮らししてたんだし。疑問に思うのもしょーがないよね」
蘭子「…あの子?」
美嘉「そ」
美嘉「それでね。あの子にも蘭子ちゃんにも話しておきたいことがあってさ」
美嘉「あと、ちょっと付いて来てほしいとこがあるんだけど……」
美嘉「いいでしょ?」
――――――――――――――――――――
197 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 19:10:38.78 ID:PDvRBj/20
今日はここまで。うんこは雑菌まみれだし
>>184
は小便飲んでなさい
奏は常務にタメ口使わせるか敬語使わせるか迷ったけど、奏が敬語使うところが上手く想像できなかったのでとりあえずタメ口にしました。
アメリカ帰りって敬語にそこまで拘らなさそうだし、奏の態度見てたら下に見てる訳じゃないって分かると思うので。
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/22(土) 21:40:34.28 ID:E9fyEjp4O
おつ
残念もう食べたんだなこれが
199 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/22(土) 22:04:22.93 ID:PDvRBj/20
>>198
ええ…(ドン引き)
ついに来週映画公開ですね。
試写会も好評みたいですごく楽しみ
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/23(日) 23:05:09.20 ID:5/+dMsh1O
俺はちょっと実写化に抵抗ある方だから見に行くかどうか分かんないや
でも面白いといいね
201 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/28(金) 21:44:28.06 ID:p3jbjl1Y0
>>200
明日朝イチで見てレビューしようと思ってます!
よければそれで見るかどうか判断してみては?
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/29(土) 01:12:14.22 ID:shEeT/d8O
レビューもいいけど更新もちゃんとしてよねまた漏らすぞ!!
203 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 10:50:48.73 ID:0RU2roYyO
観賞終了。
細かい感想は帰ってから書くけど、実写喰種良かったよ!
原作の大事な要素が短い放映時間にちゃんとまとめられてて、
原作漫画が好きな人は見て損しない出来だと思います!
面白かった!
見ようかどうか迷ってる人で何か気になってるところがあれば、
質問してくださればお答えします!
204 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/07/29(土) 10:51:34.64 ID:0RU2roYyO
>>202
今日更新しようと思います!多分!
205 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 12:09:47.43 ID:FQGgq6Zl0
実写喰種感想!
この映画見るときに気になってたのは
1、赫子の動かし方やワイヤーアクションに不自然さがあるかどうか
2、役者の演技、棒演技になってやしないか。実写映画としての魅力が出てるか
3、予告編で出てきた指パキしそうな所など原作と矛盾が出てるところとか改変
だったんです。
まず1は文句なし!
特に馬糞先輩vsカネキは尾赫も鱗赫もグネグネ動いてて、
赫子以外のアクションもちゃんとキレがある!
あと予告で不安だったドウジマの扱いも、ちゃんと「重いものを振ってる」演技になってました!
んで個人的にすごく良かったのが馬糞先輩のヒデ攻撃シーン。
これは見た人にしか分からないけどヒデの頭を打ち付けて気絶させる流れがすごく自然で
おもわず「やるな!」と感心しました。
2について、演技は完璧とまでは言えなくても不自然さに集中を切られるようなものはなく
中盤以降の亜門やトーカの演技なんかはすごく東京喰種の世界観を表現しきってるって感じでよかった!
序盤はヒデの喋り方がアニメっぽくて浮いてるのが多少気になるかもしれないけど
話が進むにつれて喰種世界が実写になじんでくる感じがしました。
不安だった蒼井リゼは、たしかに原作リゼのエロい子とはかけ離れていましたが、
本性を現してからのバケモノっぷりは、それまでとのギャップもあってかなり不気味で怖く
ちゃんとリゼやってました。
リゼのモンスター的な怖さはアニメ超えてました。
清水さんのトーカにも注目してたんですけど、
ちゃんとトーカちゃんでした。ビジュアルに差はあれど違和感が全然ない!
続きが作られても出家して出られないだろうなってことがかなり残念になるくらいはまり役でした。
上でも書きましたが、東京喰種の役者さんは見た目こそ原作とは違いますが
「東京喰種」をしっかり表現してるっていう感じのうまい演技をやってくれました。
ウタさんがマスク採寸のために顔をぺちぺち触るシーンとか、
アニメではなく生身の人らしい動き方が実写世界とマンガの世界をうまく融け合わせててですね!
不自然さなんかなかったです。四方以外は。
3については、むしろアニメより原作に近い作りをやってくれたんじゃないかと思ってます。
アニメに出てこなかったビッグガールのシーンが出てきてて、ほかにもヘッセの話とか
アニメになかった要素を拾ってくれたのも良かったです。
中島さんがいないことや錦と戦った場所など改変はありましたが
矛盾も特になく、むしろ原作ちゃんと読んで2時間という短い時間で辻褄を合わせるために行った良改変だったと思います。
気になったのは車が普通に通ってる橋の下とか大学の一室で戦ってたことくらいでしょうか?
あそこから正体バレたりしないのかと気になったくらいですね。
と言う訳で原作喰種、それも初期の話を好きな人は見て損はしないだろう出来だと思います。
懸念があるとすればそこそこグロいってことでしょうか。
ウタさんの目玉おやつとか「本当にこれを食べるのか…?」の中身とか普通に出てきます。
トーカちゃんも人の腕をかじってました。
それらの人肉描写が大丈夫なら、迷ってる人は是非見に行ってください!
206 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/07/29(土) 12:21:43.85 ID:FQGgq6Zl0
個人的な不満点を言うなら、1巻最後の「二つの世界に居場所を持てる〜」の発言が
ちょっと取って付けた感があって割と流されてたなってところでしょうか。
CCG編まで書く以上仕方ないよなあとは思うのですが、
僕自身、偶像喰種のあのシーンは割と思い入れがあったのでそこだけ少し引っかかりました。
207 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/07/29(土) 13:15:46.06 ID:FQGgq6Zl0
――――――――――――――――――――
「りーんー」
凛「……あ」
凛「奈緒……」
奈緒「よっ。……えっと」
奈緒「その……元気?」
凛「これが元気に見える?」
奈緒「……見えない。ごめん。凛が落ち込んでるとこ見てらんなくって……」
奈緒「いや、ホント、一人で泣きたかったかもしれないのに……」ジワ
凛「……」クス
凛「泣きたいのは奈緒の方なんじゃない?」
208 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/07/29(土) 13:16:30.29 ID:FQGgq6Zl0
奈緒「……そうかも。あたし、自分が泣きたいのを誤魔化して、凛にちょっかいかけるとか……最低、だよな」
奈緒「や、でも、ホントごめん……」
奈緒「ほんと、ごめん、あたし、こうやって喋ってないと」フルフル
奈緒「菜々さんのこと、ホントにきつくって」グス
凛「……」
奈緒「菜々さん……なんでっ……」
奈緒「なんで交通事故なんかで死ぬんだよ……!」
奈緒「これからだったのにっ……!!」
209 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 13:16:57.92 ID:FQGgq6Zl0
凛「…ん。そうだね。奈緒は菜々さんと仲良かったもんね」
凛「アニメの話とかたくさんしたって、菜々さんから聞いてるよ」
奈緒「そうだよっ…。あたしがレッスンで伸び悩んでたときも、親身になって話聞いてくれて」
奈緒「そういう菜々さんもすっげえ頑張ってたから、応援してたのに……!!」
凛「…うん。辛いよね。でも菜々さん、今奈緒が泣いてくれてること、すっごく嬉しがってると思うよ」ギュ
奈緒「〜〜〜っ……! 菜々さんっ……!」
凛「…………」
――――――――――
凛「…落ち着いた?」
奈緒「グスッ……ああ。大丈夫。ごめんほんとに。凛を慰めにきたはずだったのに……」
凛「私より奈緒の方が、ずっと菜々さんのこと考えてたでしょ?」
奈緒「んなこと言わなくていいんだよ……凛だって仲良かったじゃん……!」グスグス
凛「…そうだね。ほら、また泣いてるよ。大丈夫じゃなかったの?」
奈緒「ううっ……! …うん、大丈夫。段々落ち着いてきた」
凛「ん…本当に大丈夫みたいだね」
奈緒「ああ。ホント、気を遣わせちゃったな。凛にも、加蓮にも……」
凛「いいっていいって。……そういえば加蓮は?」
210 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 13:17:25.61 ID:FQGgq6Zl0
奈緒「加蓮は、あたしの分も歌詞カード取りに行ってくれてるんだ」
凛「歌詞カード? 何か歌うの?」
奈緒「ああ。もうすぐ、あたし達2人ともソロ曲出すことになってさ」
凛「! ソロ出すの? ってことは、もうすぐデビュー?」
奈緒「そう。だから、完成したら菜々さんにも聞いて欲しかったんだけど……」
奈緒「っ……」
奈緒「……うん。だから、こんなところでいつまでも泣いてるわけにはいかねーよな!」
奈緒「あたし、ずっと菜々さんに助けられたから……」
奈緒「夢を叶えられなかった菜々さんの分まで、アイドル頑張ってのし上がってやる!!」
奈緒「だから凛も! 菜々さんは凛のことも応援してくれてるから!」
奈緒「それ忘れんなよ! これ言いたくてこっちきたんだからな!」
凛「!」
凛「……うん、そうだね。菜々さんは私のことも応援してくれる」
凛「ありがと、奈緒。ちょっと元気出た」
奈緒「おう! その……今のみくちゃんにも言っといて! 菜々さん、みくちゃんのこともすっごく話してて気にしてたから!」
凛「分かった。任せて」
奈緒「頼んだぞー!」
凛「うん。またね」
211 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 13:18:01.34 ID:FQGgq6Zl0
凛「……」
凛(――プロデューサーからは、あらかじめ話を聞いてたけど)
凛(――人間の皆は本当に知らされなかったんだね)
凛(――『菜々さんが喰種』だってこと)
凛(――奈緒は菜々さんのことを、本当に好きだった)
凛(――ずっと応援してもらって、奈緒も菜々さんのことを応援してた)
凛(――でも、奈緒は菜々さんのことを『人間』だと思ってる)
凛(――奈緒は菜々さんが"喰種"だって知っても、今みたいに好きでいてあげられるのかな)
凛(――私のことを"喰種"だって知っても、今みたいに好きでいてくれるのかな)
凛(――加蓮はどうなんだろう)
凛(――考えるの、いやだな)
――――――――――――――――――――
212 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 13:49:42.09 ID:FQGgq6Zl0
――――――――――――――――――――
美嘉ちゃんは……私達に変装をさせてから、「おいで」としか言わなくて。
私達はほとんど喋らないで、道を歩いて行ったよ。
美嘉「ごめんね連れ回しちゃって。本当は今ここ来るの危ないからダメなんだけど……ついたよ」
そう言って、美嘉ちゃんが立ち止まった先は……ゴミ捨て場?
街から外れた川辺の、誰も目を向けなさそうなゴミだらけの場所。
カーペットやコンテナとか、色んなゴミが散乱してるようにしか見えなかったけど……
よく見ると、ビニールシートが木の棒で持ち上げられてたり、コンテナに人が入れる穴が開いてたりしてる。
美嘉「…みんなー。元気してるー?」
「「「!!!」」」
コンテナを覗き込んで、美嘉ちゃんは誰かを呼んだみたい。
そしたら……
「美嘉ちゃんだ!」
「美嘉ちゃーん!」
「あたし美嘉ちゃんの出てる雑誌拾ったの! ほら!」
「美嘉ちゃん! この本むずかしくて読めないの!」
出てきたのは、小さな子供。
私や輝子ちゃんより、ずっと小さい子供が、わらわらーっと美嘉ちゃんに飛びついた。
まるでエイリアンみたい。
蘭子「? この子達…如何にして、このような廃城に……?」
小梅「……全員、"喰種"だよ」スン
蘭子「そうなの? ……本当だ」
美嘉「はいはい、後でねー★ ……蘭子ちゃん、廃城ってひどくない?」
美嘉「まあ、まともな家じゃないのは確かだけど……仮にもアタシの実家をそう言われるのは、あんま良い気しないなー?」
蘭子「ご、ごめんなさい……実家!?」
美嘉「そ」
美嘉「アタシと莉嘉の実家。……正確には、第二の実家かな?」
213 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 14:53:42.90 ID:FQGgq6Zl0
一旦ここまで。
214 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/07/29(土) 16:10:39.13 ID:K2WWhnAFO
福岡LV行ってきます
215 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:48:30.56 ID:xM7A3UPr0
――――――――――――――――――――
美嘉『アタシ達には親がいないってとこは、莉嘉から聞いてるんだっけ?』
美嘉『莉嘉がまだ覚えてるか覚えてないかくらいの時に、お父さんとお母さんが殺されちゃって』
美嘉『アタシは莉嘉を連れて逃げられたんだけど……それまで割と良いとこ住んでたのに、一気に家なしになっちゃってさ』
美嘉『その時、ここを見つけて2人で暮らすようになったの』
美嘉『で、アタシがアイドルになっていいとこ住めるようになったから、ここを引き払ったんだけど』
美嘉『割と住みやすいとこだったし、家のない子供見つけたらここを紹介するようにしてたんだ』
美嘉『あとは、たまに本読んであげたりご飯の探し方教えたり、プレゼント贈ったりするためにたまにここに来てる』
美嘉『本当はウチに連れてって面倒見てあげたかったけど……流石に危なくて、できなかった』
――――――――――――――――――――
「美嘉ちゃん美嘉ちゃん! これは何て読むのー?」
美嘉「んー? これは……『あじさい』」
「これはー?」
美嘉「『しぐれ』……かな」
「じゃあこれー!」
美嘉「なんとか、あめ……ゴメン分かんない。今度莉嘉に聞いてみる」
蘭子「えっと……『しゅうう』、です」
「しゅうう?」
蘭子「う、うん。急に降り出す雨のことで……」
美嘉「へー、蘭子ちゃんすごいじゃん★ こんなムズい漢字読めるなんて!」
蘭子「ど、読書は好きだから……」
――――――――――――――――――――
美嘉「さっきはありがとね、蘭子ちゃん。蘭子ちゃんに教えたい事があって来たのに、逆に教えられちゃうなんて」
蘭子「ど、どういたしまして……あの、美嘉ちゃん?」
美嘉「ん? どしたの?」
蘭子「その……美嘉ちゃんの『教えたい事』って……?」
美嘉「……それはね」
216 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:49:19.29 ID:xM7A3UPr0
美嘉「……今日、菜々ちゃんが死んだばっかでここに来るのは危ないって言ったけどさ」
美嘉「ここに来たかったのは、ここの皆に悲しい事があったからなの」
小梅「!」
蘭子「悲しいこと……?」
美嘉「ついこの間、ね。この子達のうち一人が、ご飯探ししてるところを白鳩に見つかっちゃったらしくて」
美嘉「それで、殺された」
美嘉「……ほら、皆おいで。今日は美嘉ちゃんが一緒にいてあげるから、泣いていいんだよ」
「「「!!!」」」
「……っ〜〜〜ううう〜〜〜!!!」ダッ
ここに来た時、なんだか子供たちが張り切ってて、どうしたのかなって思ってた。
その理由が、やっとわかった。
ここの子達みんな、強がってたんだね。
だから、美嘉ちゃんが手を広げると、子供たちは美嘉ちゃんに駆け寄っていって……
かなしい映画みたいに、わんわん泣き始めた。
ずっとずっと、死んだ子の名前を呼んで、泣き続けてた。
217 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:50:27.67 ID:xM7A3UPr0
それから、子供たちが泣き止んでも……美嘉ちゃんはずっと抱きしめ続けてて。
日が暮れそうな時になってやっと、その手を離したよ。
美嘉「…みんな、ゴメンね? もうちょっと傍にいてあげたかったけど、アタシも帰らなきゃ」
「ううん……美嘉ちゃん、ありがとう」
美嘉「……また来るね」
美嘉「蘭子ちゃん、小梅ちゃん。帰ろっか」
――――――――――――――――――――
美嘉「……アタシが言いたかったのはさ」
美嘉「"喰種"だからって、最初から仲間の死にドライなわけじゃない」
美嘉「みくちゃん達は冷たい子じゃないってことだったんだ」
美嘉「最初はあの子たちみたいに、我慢してても泣きたくて仕方ないんだよ」
美嘉「……でもさ。"喰種"って生きてるとものすごく友達とのお別れや、その危険が多くって」
美嘉「そのうち、悲しむヒマなんてないって気付いちゃうんだ」
美嘉「そんなことするくらいなら、自分や残った大切な人がいなくならないように、頭を回す方がずっと良いって」
美嘉「そうやって、アタシ達"喰種"は死んだ命に真正面から向き合えなくなっちゃう」
美嘉「いつの間にか……」
美嘉「『アタシ達は失いながら生きるしかない』って、受け入れちゃうんだ」
218 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:50:54.51 ID:xM7A3UPr0
――――――――――――――――――――
蘭子『じゃ、じゃあっ……そんな!』
美嘉『?』
蘭子『美嘉さん達は……みんな、美波さんもみくちゃんも菜々さんもみんなっ……』
蘭子『仲間が殺されたり自分が殺されたりするのが当たり前って思いながら生きてるんですか!?』
蘭子『"喰種"が幸せに生きられるのはおかしいって思いながら生きてるんですか!?』
美嘉『……なーに言ってんの』
美嘉『「"喰種"はいつか殺される」ってのと「"喰種"が幸せに生きることは出来ない」ってことは全然違うよ』
美嘉『むしろ……いつ死ぬか分かんないからこそ、アタシは毎日全力で生きてる』
美嘉『どこまで行けるか分かんないけど、最期までアタシは全力で輝いて見せる』
美嘉『アタシが"喰種"ってバレたら、アタシをカッコいいって思ってくれたファンは掌返して化け物扱いするかもだけど……』
美嘉『それでも、どーせ長生きできない駆逐対象』
美嘉『どうせ死ぬなら、カッコいいお姉ちゃんのまま死にたいじゃん★』
――――――――――――――――――――
美嘉ちゃんの言うこと……私は、むしろすごいって思うよ?
私は、"喰種"は日陰で生きるべきだって。
プロデューサーさんが見つけてくれるまでは、そう思ってたから。
だから……"喰種"なのに、どこまでも上を目指そうとして。
いつかどこかで、ぷっつり終わるかも知れないって分かってるのに。
全力でキラキラ、眩しく輝いてる美嘉ちゃんは……私には真似できないくらい、すごい人。
だけど、蘭子ちゃんはそう思わなかったみたいで……
蘭子「……この世界は……」
蘭子「この世界は、間違ってる」
――――――――――――――――――――
219 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:54:02.37 ID:xM7A3UPr0
――――――――――――――――――――
バタン
P「! 神崎さん」
P「……先ほど、城ヶ崎さんからお話を伺いました。ですが、無事帰って来てくれて良かった……」
蘭子「うむ。心配をかけたようね」
蘭子「我が友」
P「? はい」
蘭子「そなたの下に、堕ちた魔王の使者が救済の書を託す……」
蘭子「……プロデューサーにお願いがあります」
"喰種"になり切れなかった蘭子ちゃんは、こうして前へ進み始める。
ただ……
220 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:55:01.84 ID:xM7A3UPr0
――――――――――――――――――――
ちひろ「『安部菜々』さんの火消しは、無事終了しました」
ちひろ「これも皆さんの仕事のおかげです。本当にお疲れさまでした」
ちひろ「あとは、我が社に協力してくださった方々への報酬についてですが……」
ちひろ「あちらの要求は何人ですか?」
「二人です」
「それと、出来るだけ仲睦まじい二人組を希望されていました」
「『美しい友情を見ながら、食事を楽しみたい』、と……」
ちひろ「仲のいい二人組ですか」
ちひろ「それでいて経営に影響のない新人、とくれば……」
『神谷奈緒』
『北条加蓮』
ちひろ「この『財産』を報酬にしましょう」
――――――――――――――――――――
進んだ先は、とても厳しい下り坂。
蘭子ちゃんは、気付くはずもなかった……よ。
221 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:55:30.73 ID:xM7A3UPr0
今日はここまで。
福岡はなおかれでした。
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/30(日) 19:53:47.20 ID:Gkn72cw3O
おつおつ
映画面白かったのかよかったな!
近所でやってないしレンタル始まったら見るわ
223 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/31(月) 22:47:55.19 ID:by51/LQK0
〜過去・市原仁奈〜
仁奈はパパとママが大好きでごぜーます。
パパとママは「しーしーじー」ってところでお巡りさんをやってやがるです。
人に化けて人を困らせる、悪い「グール」たちをこらしめて平和を守るお仕事をしてるですよ!
桃太郎のオニ退治でやがります!
でもパパとママはお仕事や「グール」のこと、あんまり話してくれねーです。
ママに聞いたら、しかめっ面になってしばらく口きいてくれねーです。
それがさみしーから、仁奈はママのお仕事について聞かねーようにしてるですよ。
パパもママも、お仕事ですげー忙しーです。
パパはずっと海外でお仕事してて、帰ってこれないってママが言ってやがりました。
ママも、ずっと「グール」退治に行ってて帰ってこなくて、
帰って来てもおにぎり作ったらすぐ「グール」退治に行っちまうです。
パパが日本にいたときは参観日も運動会も来てくれたけど、
今はすげー忙しくて、学校には来てくれなくなったです。
パパが海外でお仕事するようになってから、ママは仁奈とぜんぜんお話してくれねーです。
224 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/31(月) 22:49:36.36 ID:by51/LQK0
でも、ある日ママとお出かけすることになったですよ!
ママが久しぶりにお休みをとってくれて、仁奈に
「仁奈が楽しめる場所に連れてってやる」
って言ってくれたですよ!
仁奈の前ではいっつもしかめっ面なママも、その日は嬉しそうだったでやがります!
「この間、テレビで346プロダクションのことを知ったんだよ」
「仁奈と同い年の子も優しそうな女もいる。仁奈の好きな着ぐるみの仕事だってあるぜ」
「仁奈もアイドルやってみろよ」
ママは仁奈を「アイドルじむしょ」に連れてくって言ってやがりました。
ママ言ってたです。仁奈にとってすげー楽しい場所だって!
仁奈、アイドルが何なのかよく分かってねーですけど……
ともだちも優しいおねーさんもたくさんいて、きぐるみがたくさん着れるって言ってたです!
「そう言うトコに行けるの、仁奈も嬉しいだろ?」
うれしーです!
たくさんきぐるみ着れるの、仁奈すげーたのしみです!
ともだちもたくさん出来るってほんとでごぜーますか?
アイドルってどんな楽しーことなんだって、仁奈わくわくしてるですよ!
225 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/31(月) 22:50:15.45 ID:by51/LQK0
……でも、楽しいのはそれだけじゃねーです。
だってママが、仁奈とお出かけしてくれやがりましたから!
ママ、帰って来る時はいっつも疲れてて、しかめっ面で。
でも今日のママは仁奈に笑ってくれて、いっぱいアイドルのお話してくれるですよ!
パパが日本にいたときみたいに、またいっぱい遊べるって分かって。
だから、仁奈すげー嬉しーです!
「……あ? 仁奈、ちょっと待ってろ。電話だ」
「はい市原です……増援要請? どこだ?」
「……近いな。ああ、ちょうど近くに来てンだよ」
「ああ、クインケは持ってる。待ってろすぐ行く」
「……仁奈。お前ここで待ってろ」
「お前のプロデューサーをやってくれる奴がすぐ来るからよ」
「そんな怖い奴も来るわけじゃねェだろ。ちゃんと仁奈の面倒も見てくれるから、それまで良い子で待ってられるな?」
……え?
ママ、お仕事に行っちまうですか?
休みとったって、言ってたのに……。
……分かったです。
分かってるです。
ママもパパも、平和を守るために戦ってるって仁奈知ってるですよ。
しかたねーです。
仁奈はそんなパパとママが大好きでごぜーます。
仁奈、ちゃんと一人でお留守番出来るですよ。
226 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/31(月) 22:50:47.83 ID:by51/LQK0
そうやって仁奈が知らねー場所で、一人でお留守番してたら、
仁奈のプロデューサーが仁奈を見つけたですよ。
プロデューサーは仁奈のこと、すげー気に入ってくれて、
プロデューサーが「たんとう」してた美優おねーさんと一緒に、仁奈はアイドルをやることになったです。
プロデューサーも美優おねーさんも、すげー優しくて、
楓おねーさんや早苗おねーさん、桃華ちゃんや薫ちゃん、千枝ちゃん、きらりおねーさん、
アイドルをやってから仁奈はともだちがいっぱいできたでごぜーます!
動物のきぐるみもたくさん着れて、ママのいう通りすっげー楽しいでやがります!
……だから、仁奈はママとまた遊びてーです。
パパにも会いてーです。
仁奈、すっげー楽しいから……しかめっ面のママにも、忙しいパパにも笑ってほしーです。
大好きなママとパパに、アイドルやってる仁奈を見てほしーです。
――――――――――――――――――――
227 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/31(月) 22:52:18.32 ID:by51/LQK0
今日はここまで。
Happy birthday ありす。
あと俺。
つまり私はアリス。(実写バイオ並感)
228 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:35:40.36 ID:xgd1hoPs0
話のキリが良いのと、アイドル達のモノローグが思ったよりやり辛くて書き方変えようかなって考えてたのと、
それとまとめでも実写喰種のレビューを見てもらって出来るだけ多くの人に映画見に行ってほしいのとで、
あと一回だけ話を区切ることにしました。
なので、今回の更新でこのスレを終了してもう一回だけ外伝のためにスレ立てします。
何回も区切ってややこしくしてゴメンね。
229 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:36:16.53 ID:xgd1hoPs0
〜現在・片桐早苗〜
橘「本日もご足労いただき感謝します」
橘「今日は大事なお話がありますので、片桐さんからご報告などあれば失礼ですが手短にお願いします」
早苗「分かったわ。ありすちゃんと仁奈ちゃん、雫ちゃん以外でとりあえず5人、『この子は人間だな』っての見つけてきたわよ」
市原「おお、やるじゃねーか早苗サン。誰だ?」
早苗「向井拓海ちゃんと中野有香ちゃん、櫻井桃華ちゃんにあとは姫川友紀ちゃん、佐藤心ちゃんね。この子達とは一緒に仕事の打ち上げでご飯食べたり、飲みに行ったりしたけど……」
早苗「あの食べっぷり飲みっぷりは間違いなく人間ね」
市原「ブフッ」
橘「…ぷ…それで判断したんですか?」
早苗「なによぉ! あんなん見たら誰だって"喰種"の演技なわけないって思うわよ!?」
橘「…コホン。分かりました。大丈夫、信用しますよ」
橘「ですが、念のためこちらで5名の生活を一時監視させていただきます」
市原「…ゴホン。あたし等や他の女捜査官だけで監視するから、その辺は安心していいぜ」
早苗「ん、分かったわ。…それで」
早苗「……ユッコちゃんのことなんだけど」
230 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:39:46.26 ID:xgd1hoPs0
橘「……申し訳ありません。…言い訳にしかなりませんが、せめて現在判明した情報だけでもお話しします。…ギン」
市原「ああ。…この間『キャッスル』の関係者だと踏んでた喰種を駆逐した」
市原「だが、殺してすぐそいつの家や資料、ニセモンの証明書を作った奴を辿っても…キャッスルに繋がるコネみてーなのは出てこなかった」
市原「これで、あたし達のやったことがムダに終わったっつーんならまだ良かったんだけどよ」
橘「直後、キャッスルの我々への警告と思われる活動により…捜査方法の見直しを強いられることとなりました」
橘「ギンの駆逐した喰種…Aとします」
橘「A駆逐直後、キャッスルによるものと思われる新人アイドルの誘拐事件が発生しました」
橘「事件現場には、とある資料がまとめられた封筒と一つの書き置きがあり……」
『藪をつつけば蛇が出る』
橘「…A駆逐から誘拐事件まで、半日も間が開いていませんでした」
橘「それにも関わらず、『キャッスル』はこのような資料を現場に残していきました」
早苗「…どんな資料?」
橘「……捜査の都合上、写真そのものまでお見せすることは出来ませんが」
橘「Aがギンに駆逐されるまで、その当日の行動を撮影した写真でした」
市原「つまりだ。あいつ等、アタシ達の行動を既に予測してやがったんだ。その上で尻尾切りをやった」
早苗「尻尾切り……あの子はキャッスルの関係者だったけど見捨てられたってこと?」
橘「そうとは断言できません。ただAをキャッスルへの糸口として捜査していた我々に、組織の力を誇示した…とも取れます」
橘「確実に分かっているのは、キャッスルは常に我々の動きを監視しており」
市原「で、その気になれば人間のアイドルをいつでも殺せるし、下手に探れば犠牲者出すぞと脅しをかけやがったってことだな」
市原「…喰種捜査官は人民の安全・命が最優先だ。地味に効くぜこう言うの」
231 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:40:55.86 ID:xgd1hoPs0
早苗「…そっか」
橘「申し訳ありません。大切な御友人の救助もままならず……」
早苗「仕方ないわよ。あたしも似たような仕事のもんだし、事情は分かってるつもり」
早苗「ただ、それじゃああなた達に協力してる私とか……私だけじゃなくて周りの皆も危ないって事じゃないの?」
市原「ああ、その通りだ。多分泳がされてる」
橘「はい。ですから、ここからが本題です」
橘「片桐さんや片桐さんの御友人。そして私達の娘」
橘「皆様には、芸能活動の一時休止とCCG関連施設への入居をお願いしたいのです」
――――――――――――――――――――
232 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:42:40.09 ID:xgd1hoPs0
――――――――――――――――――――
市原「……ふー」
橘「ため息ついてる暇なんかないわ。今から一日中片桐さんを護衛するのだから」
市原「わーってるよ。……つか、護衛じゃないだろ」
市原「監視だろ?」
橘「……そうね。分かり切った事を喋ってないで、急ぎましょう。片桐さんを待たせてはいけない」
市原「…ま、そうだな」
市原(――今からあたし達は、帰宅する片桐早苗を遠くから監視する)
橘(――直接護衛しないのは、あからさまに彼女を守ってキャッスルに疑念を抱かせて)
橘(――『まだ正体が確定していない』人間アイドルを危険に晒さないため)
市原(――表向きは『今まで通り』だ)
市原(――そのことは早苗サン自身にも話してある)
橘(――しかし、護衛のことを話した理由は別にある)
((―――片桐早苗に『"喰種"だった仲間』と連絡を取らせないため―――))
233 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:44:34.18 ID:xgd1hoPs0
市原(――早苗サンはあたしが駆逐した安部菜々を『あの子』っつった)
橘(――346プロダクションは、駆逐された"喰種"のことを『事故死』と説明している)
市原(――安部菜々のことはあたし達からも話してない。だが早苗サンは気付いてる)
橘(――片桐さんの心境を考えれば……"喰種"だとしても、元仲間に情けをかけてしまうかもしれない)
市原(――346プロに"喰種"が潜んでいる可能性はでかい)
橘(――恐らく、片桐さんに近い人物の中にも)
市原(――早苗サンは『メシの食い方』で人間を見抜いた。しかも、あんなに自信たっぷりにだ)
橘(――つまり、観察したなかで"喰種"の食べ方と人間の食べ方の違いに気付いたということ)
市原(――メシ食いに行った相手に"喰種"がいたと気付いてるってことだ)
橘(――もしかしたら、その職員やアイドルの中に『キャッスル』の関係者がいるかも知れない)
市原(――だとしても、仲間がそうだと知ったら……長い時間一緒にいた相手だ。情が湧くのが普通だ)
橘(――保護もそのため。分かっている人間だけでも、事実上の隔離をして"喰種"への一切の干渉を阻害する)
市原(――"喰種"に情けはかけさせない)
橘(――『喰種対策法第八十八条第一項』)
市原(――『"喰種"を蔵匿・隠避した者。これを重く罰する』……)
橘(――"喰種"などのために)
市原(――人間が罪を負う必要なんかねえ)
――――――――――――――――――――
234 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:46:02.88 ID:xgd1hoPs0
――――――――――――――――――――
橘『改めて忠告しますが……"喰種"を匿うことは重罪にあたります』
橘『"喰種"は罪を負ってまで庇う価値はありません』
橘『長い時間を共にした相手であっても、絶対に"喰種"を庇わないでください』
早苗「……なんか」
早苗「……思ってたより、ずっと大事になっちゃったわね」
早苗「ユッコちゃんのことがあるのに、何言ってんだって話だけど……」
菜々ちゃんが死んでから、1週間くらい。
あたしは仕事の休みが入った隙を狙ってCCG本局に来ていた。
もちろん、ここに来ることは誰にも言ってない。
まあオフに来てるんだし、いちいちプロデューサー君に言う必要もないわよね。
……そう。
プロデューサー君には言ってない。
あたしがCCGと関わりを持ってて、「キャッスル」の捜査を手伝ってるってことを。
最初は、昔の後輩からユッコちゃんの行方の手がかりを聞いて、
捜査官二人に取り次いでもらった時
『誰にも話さないでください』
って言われたから…こればっかりは迂闊に喋っていい話じゃないって思って、本当に誰にも話さなかった。
雫ちゃんにも話さなかったわ。
235 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:46:46.35 ID:xgd1hoPs0
だから、事件が少しでも見えてきたら改めてプロデューサー君に話す方向で考えてたんだけど……。
ある時、美樹ちゃん……橘美樹準特等に言われたの。
橘『私達の捜査について……娘を見守ってくれる人には、話していただいても構いません』
橘『しかし…話す前に一度、改めて「人間だ」と確証を得て下さい』
橘『"喰種"の中には長期間、特定の人間と関わり続けて警戒を解かせる狡猾な種類もいます』
橘『付き合いの長い方だからと、その人を過信しないよう心に留めてください』
まあ、確かにね。
言ってることに納得は出来たし、もし万が一"喰種"に今の状況がバレたら……って思うと、かなりヤバいことになりそうだし。
だから、一応プロデューサー君が人間だって証拠を得てから秘密を話すつもりだった。
…「一応」のつもりだったのよ。
なのに……
あたし、気付いちゃった。
プロデューサーは人間と比べてご飯をあまり食べない。
珍しくご飯を食べた時は、必ずトイレに行ってる。
飲むものは大体コーヒー。
砂糖もミルクも、入れてるところを見たことがない。
プロデューサーの生活態度は、まんま"喰種"のそれだった。
236 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:48:28.48 ID:xgd1hoPs0
プロデューサーだけじゃない。
瑞樹ちゃんも、美優ちゃんも、美嘉ちゃんも、夕美ちゃんも、里奈ちゃんも。
よく見れば、拓海ちゃん達の暮らしと全然違う。
分かってるわよ。このまま美樹ちゃんとギンちゃんについて行ったら……
菜々ちゃんみたいに皆駆逐される。
でも……
市原『346プロに潜んでる"喰種"にキャッスルの奴らが混じってるかもしれねえ』
市原『だから今日明日はあたし達が遠くから見張っとく』
ユッコちゃんを攫った奴らに、みんなが関わってるとは思いたくない。
でももし、万が一……ユッコちゃんがいなくなったことが皆のせいなら。
あたし達と仲良くしてる裏で、人攫いをやってるんだとしたら……
あたしは許せない。
許せないけど……
早苗「…………」
早苗「……どっちにしろ」
早苗「……なんか、もう前には戻れない気がするわ」
――――――――――――――――――――
237 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:48:58.35 ID:xgd1hoPs0
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
238 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:50:56.53 ID:xgd1hoPs0
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
239 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:51:40.04 ID:xgd1hoPs0
〜現在・???〜
私は知ってしまった。
この346プロダクションは、私が夢見たお城は。
灰被りが階段を昇り、綺麗なお姫様となり煌めく、美しい城などではなかった。
ここは―――
化け物に喰われた少女達の骸が転がる、青髭の塔だ。
240 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:52:22.27 ID:xgd1hoPs0
そうとは知らず、化け物共は。
骸の大地に築かれた塔の舞台で、また踊ろうとしている。
P「―――先日、神崎さんの要望により」
P「皆さんが参加するライブの企画を作成しました」
P「当企画のコンセプトは『笑顔の橋』」
P「人と"喰種"を繋ぎ、真っすぐに皆さんの笑顔を届ける橋を作ります」
P「皆さんの、"喰種"も人間も、何も変わることのない―――」
P「心からの、本当の笑顔のために」
化け物の陰にも、崩落の兆しにも。
なにも気付くこともなく。
241 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:52:50.93 ID:xgd1hoPs0
次回『偶像喰種外伝 CINDERELLA Ghouls』完結編
卯月「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」
242 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 21:24:10.80 ID:xgd1hoPs0
と言う訳で、また話を区切ることにしました。
そこそこ話は進めたつもりですが、なんかモノローグばっか目立ってる気がします。
なんとか省いた1クール範囲を埋めようと思って過去の振り返りをやってみたんですが、
なんか話が進むにつれてアイドル達がメンヘラ化してるだけのような気がします。
一応補足しておくと喰種アイドルの皆は自分の生まれとか運命をただ悲観してるわけじゃなく、
喰種に生まれても前向きに、一人のアイドルとして輝こうとしてる姿勢もちゃんとあるんです。
美波や智絵里、みくや李衣菜なんかは、前向きな意志をちゃんと出したいと考えていました。
でもそう言う面は1クール範囲をちゃんと書かないと表現できないなと分かりました。
飛ばした話はpixiv小説で加筆するなりでちゃんと書こうと思います。…外伝と第二章を終えた後になりますが。
隠して書いても多分見抜かれるだろうなと思ってキャッスルの正体は早々に明かしたわけですが、
それでもキャッスルは346プロの秘密を、CCGからは隠さなきゃいけません。
CCGをマヌケにせずに、なおかつ秘密を漏らさないよう策や活動方針を考えるのはやっぱり難しいですね。
ただ組織やその活動について矛盾が出ないように設定や話を組むのは結構楽しいです。
CCG側のキャラクターとして、オリキャラを二人ほど出しました。
オリキャラがダメな人はごめんなさい。
なるべくモバマスや喰種の既存キャラクターに寄せたら読んでくださる皆さんの抵抗も薄くなるかなーと思ってキャラ作りをしました。
ちょっとだけ二人の設定も組んだので、もし興味があれば見てくれれば嬉しいです。
この先の話ですが、既に第二章で明かした通り
喰種がアイドルとして活動できる346プロは崩壊します。
菜々以外の死人もゼロではなく、まさに「悲劇」が起こる話になります。
悲劇が起こると分かっていても読んでくださる皆さんのために、
皆さんの共感を阻むような物語としての大きな破綻を作らず、
キャラクターを一人たりとも決して雑に扱うことなく、
それでいて読者の皆さんの心を大きく動かせるような、
そういう話を目指して、遅筆ながら残りを執筆させていただきます。
次回の外伝完結編は、SSAの辺りで書き始めようと考えています。
(本当はすぐに書ききりたいと考えているのですが)
また何か月(ないとは思いたいですが何年)かかるか分かりませんが、
それでも完結に向けしっかりと書いていきたいと思います。
あとがきまで長々と書いてしまいましたが、
ここまで読んでいただきありがとうございました。
どうか最後までお付き合いください m(_ _)m
243 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 21:34:06.89 ID:xgd1hoPs0
こっちは市原一等と橘準特等の簡単な設定です。
http://imgur.com/gKzntL9
244 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 21:39:29.56 ID:xgd1hoPs0
まとめさん
>>108
,
>>131
の設定と実写レビューは最後に載せてください。
245 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 21:41:29.50 ID:xgd1hoPs0
追記。
タイトルは
楓「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝中編】
でお願いします。
246 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 23:54:04.27 ID:xgd1hoPs0
もいっこ追記。
橘準特等は37歳、市原一等は早苗さんと同い年の28歳って考えてます。
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/03(木) 19:29:58.56 ID:J5XCX9DLO
おつー
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/03(木) 22:24:54.58 ID:AUYtLl3cO
おつおつ
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