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楓「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝後編】
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209 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 13:16:57.92 ID:FQGgq6Zl0
凛「…ん。そうだね。奈緒は菜々さんと仲良かったもんね」
凛「アニメの話とかたくさんしたって、菜々さんから聞いてるよ」
奈緒「そうだよっ…。あたしがレッスンで伸び悩んでたときも、親身になって話聞いてくれて」
奈緒「そういう菜々さんもすっげえ頑張ってたから、応援してたのに……!!」
凛「…うん。辛いよね。でも菜々さん、今奈緒が泣いてくれてること、すっごく嬉しがってると思うよ」ギュ
奈緒「〜〜〜っ……! 菜々さんっ……!」
凛「…………」
――――――――――
凛「…落ち着いた?」
奈緒「グスッ……ああ。大丈夫。ごめんほんとに。凛を慰めにきたはずだったのに……」
凛「私より奈緒の方が、ずっと菜々さんのこと考えてたでしょ?」
奈緒「んなこと言わなくていいんだよ……凛だって仲良かったじゃん……!」グスグス
凛「…そうだね。ほら、また泣いてるよ。大丈夫じゃなかったの?」
奈緒「ううっ……! …うん、大丈夫。段々落ち着いてきた」
凛「ん…本当に大丈夫みたいだね」
奈緒「ああ。ホント、気を遣わせちゃったな。凛にも、加蓮にも……」
凛「いいっていいって。……そういえば加蓮は?」
210 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 13:17:25.61 ID:FQGgq6Zl0
奈緒「加蓮は、あたしの分も歌詞カード取りに行ってくれてるんだ」
凛「歌詞カード? 何か歌うの?」
奈緒「ああ。もうすぐ、あたし達2人ともソロ曲出すことになってさ」
凛「! ソロ出すの? ってことは、もうすぐデビュー?」
奈緒「そう。だから、完成したら菜々さんにも聞いて欲しかったんだけど……」
奈緒「っ……」
奈緒「……うん。だから、こんなところでいつまでも泣いてるわけにはいかねーよな!」
奈緒「あたし、ずっと菜々さんに助けられたから……」
奈緒「夢を叶えられなかった菜々さんの分まで、アイドル頑張ってのし上がってやる!!」
奈緒「だから凛も! 菜々さんは凛のことも応援してくれてるから!」
奈緒「それ忘れんなよ! これ言いたくてこっちきたんだからな!」
凛「!」
凛「……うん、そうだね。菜々さんは私のことも応援してくれる」
凛「ありがと、奈緒。ちょっと元気出た」
奈緒「おう! その……今のみくちゃんにも言っといて! 菜々さん、みくちゃんのこともすっごく話してて気にしてたから!」
凛「分かった。任せて」
奈緒「頼んだぞー!」
凛「うん。またね」
211 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 13:18:01.34 ID:FQGgq6Zl0
凛「……」
凛(――プロデューサーからは、あらかじめ話を聞いてたけど)
凛(――人間の皆は本当に知らされなかったんだね)
凛(――『菜々さんが喰種』だってこと)
凛(――奈緒は菜々さんのことを、本当に好きだった)
凛(――ずっと応援してもらって、奈緒も菜々さんのことを応援してた)
凛(――でも、奈緒は菜々さんのことを『人間』だと思ってる)
凛(――奈緒は菜々さんが"喰種"だって知っても、今みたいに好きでいてあげられるのかな)
凛(――私のことを"喰種"だって知っても、今みたいに好きでいてくれるのかな)
凛(――加蓮はどうなんだろう)
凛(――考えるの、いやだな)
――――――――――――――――――――
212 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 13:49:42.09 ID:FQGgq6Zl0
――――――――――――――――――――
美嘉ちゃんは……私達に変装をさせてから、「おいで」としか言わなくて。
私達はほとんど喋らないで、道を歩いて行ったよ。
美嘉「ごめんね連れ回しちゃって。本当は今ここ来るの危ないからダメなんだけど……ついたよ」
そう言って、美嘉ちゃんが立ち止まった先は……ゴミ捨て場?
街から外れた川辺の、誰も目を向けなさそうなゴミだらけの場所。
カーペットやコンテナとか、色んなゴミが散乱してるようにしか見えなかったけど……
よく見ると、ビニールシートが木の棒で持ち上げられてたり、コンテナに人が入れる穴が開いてたりしてる。
美嘉「…みんなー。元気してるー?」
「「「!!!」」」
コンテナを覗き込んで、美嘉ちゃんは誰かを呼んだみたい。
そしたら……
「美嘉ちゃんだ!」
「美嘉ちゃーん!」
「あたし美嘉ちゃんの出てる雑誌拾ったの! ほら!」
「美嘉ちゃん! この本むずかしくて読めないの!」
出てきたのは、小さな子供。
私や輝子ちゃんより、ずっと小さい子供が、わらわらーっと美嘉ちゃんに飛びついた。
まるでエイリアンみたい。
蘭子「? この子達…如何にして、このような廃城に……?」
小梅「……全員、"喰種"だよ」スン
蘭子「そうなの? ……本当だ」
美嘉「はいはい、後でねー★ ……蘭子ちゃん、廃城ってひどくない?」
美嘉「まあ、まともな家じゃないのは確かだけど……仮にもアタシの実家をそう言われるのは、あんま良い気しないなー?」
蘭子「ご、ごめんなさい……実家!?」
美嘉「そ」
美嘉「アタシと莉嘉の実家。……正確には、第二の実家かな?」
213 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/29(土) 14:53:42.90 ID:FQGgq6Zl0
一旦ここまで。
214 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/07/29(土) 16:10:39.13 ID:K2WWhnAFO
福岡LV行ってきます
215 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:48:30.56 ID:xM7A3UPr0
――――――――――――――――――――
美嘉『アタシ達には親がいないってとこは、莉嘉から聞いてるんだっけ?』
美嘉『莉嘉がまだ覚えてるか覚えてないかくらいの時に、お父さんとお母さんが殺されちゃって』
美嘉『アタシは莉嘉を連れて逃げられたんだけど……それまで割と良いとこ住んでたのに、一気に家なしになっちゃってさ』
美嘉『その時、ここを見つけて2人で暮らすようになったの』
美嘉『で、アタシがアイドルになっていいとこ住めるようになったから、ここを引き払ったんだけど』
美嘉『割と住みやすいとこだったし、家のない子供見つけたらここを紹介するようにしてたんだ』
美嘉『あとは、たまに本読んであげたりご飯の探し方教えたり、プレゼント贈ったりするためにたまにここに来てる』
美嘉『本当はウチに連れてって面倒見てあげたかったけど……流石に危なくて、できなかった』
――――――――――――――――――――
「美嘉ちゃん美嘉ちゃん! これは何て読むのー?」
美嘉「んー? これは……『あじさい』」
「これはー?」
美嘉「『しぐれ』……かな」
「じゃあこれー!」
美嘉「なんとか、あめ……ゴメン分かんない。今度莉嘉に聞いてみる」
蘭子「えっと……『しゅうう』、です」
「しゅうう?」
蘭子「う、うん。急に降り出す雨のことで……」
美嘉「へー、蘭子ちゃんすごいじゃん★ こんなムズい漢字読めるなんて!」
蘭子「ど、読書は好きだから……」
――――――――――――――――――――
美嘉「さっきはありがとね、蘭子ちゃん。蘭子ちゃんに教えたい事があって来たのに、逆に教えられちゃうなんて」
蘭子「ど、どういたしまして……あの、美嘉ちゃん?」
美嘉「ん? どしたの?」
蘭子「その……美嘉ちゃんの『教えたい事』って……?」
美嘉「……それはね」
216 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:49:19.29 ID:xM7A3UPr0
美嘉「……今日、菜々ちゃんが死んだばっかでここに来るのは危ないって言ったけどさ」
美嘉「ここに来たかったのは、ここの皆に悲しい事があったからなの」
小梅「!」
蘭子「悲しいこと……?」
美嘉「ついこの間、ね。この子達のうち一人が、ご飯探ししてるところを白鳩に見つかっちゃったらしくて」
美嘉「それで、殺された」
美嘉「……ほら、皆おいで。今日は美嘉ちゃんが一緒にいてあげるから、泣いていいんだよ」
「「「!!!」」」
「……っ〜〜〜ううう〜〜〜!!!」ダッ
ここに来た時、なんだか子供たちが張り切ってて、どうしたのかなって思ってた。
その理由が、やっとわかった。
ここの子達みんな、強がってたんだね。
だから、美嘉ちゃんが手を広げると、子供たちは美嘉ちゃんに駆け寄っていって……
かなしい映画みたいに、わんわん泣き始めた。
ずっとずっと、死んだ子の名前を呼んで、泣き続けてた。
217 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:50:27.67 ID:xM7A3UPr0
それから、子供たちが泣き止んでも……美嘉ちゃんはずっと抱きしめ続けてて。
日が暮れそうな時になってやっと、その手を離したよ。
美嘉「…みんな、ゴメンね? もうちょっと傍にいてあげたかったけど、アタシも帰らなきゃ」
「ううん……美嘉ちゃん、ありがとう」
美嘉「……また来るね」
美嘉「蘭子ちゃん、小梅ちゃん。帰ろっか」
――――――――――――――――――――
美嘉「……アタシが言いたかったのはさ」
美嘉「"喰種"だからって、最初から仲間の死にドライなわけじゃない」
美嘉「みくちゃん達は冷たい子じゃないってことだったんだ」
美嘉「最初はあの子たちみたいに、我慢してても泣きたくて仕方ないんだよ」
美嘉「……でもさ。"喰種"って生きてるとものすごく友達とのお別れや、その危険が多くって」
美嘉「そのうち、悲しむヒマなんてないって気付いちゃうんだ」
美嘉「そんなことするくらいなら、自分や残った大切な人がいなくならないように、頭を回す方がずっと良いって」
美嘉「そうやって、アタシ達"喰種"は死んだ命に真正面から向き合えなくなっちゃう」
美嘉「いつの間にか……」
美嘉「『アタシ達は失いながら生きるしかない』って、受け入れちゃうんだ」
218 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:50:54.51 ID:xM7A3UPr0
――――――――――――――――――――
蘭子『じゃ、じゃあっ……そんな!』
美嘉『?』
蘭子『美嘉さん達は……みんな、美波さんもみくちゃんも菜々さんもみんなっ……』
蘭子『仲間が殺されたり自分が殺されたりするのが当たり前って思いながら生きてるんですか!?』
蘭子『"喰種"が幸せに生きられるのはおかしいって思いながら生きてるんですか!?』
美嘉『……なーに言ってんの』
美嘉『「"喰種"はいつか殺される」ってのと「"喰種"が幸せに生きることは出来ない」ってことは全然違うよ』
美嘉『むしろ……いつ死ぬか分かんないからこそ、アタシは毎日全力で生きてる』
美嘉『どこまで行けるか分かんないけど、最期までアタシは全力で輝いて見せる』
美嘉『アタシが"喰種"ってバレたら、アタシをカッコいいって思ってくれたファンは掌返して化け物扱いするかもだけど……』
美嘉『それでも、どーせ長生きできない駆逐対象』
美嘉『どうせ死ぬなら、カッコいいお姉ちゃんのまま死にたいじゃん★』
――――――――――――――――――――
美嘉ちゃんの言うこと……私は、むしろすごいって思うよ?
私は、"喰種"は日陰で生きるべきだって。
プロデューサーさんが見つけてくれるまでは、そう思ってたから。
だから……"喰種"なのに、どこまでも上を目指そうとして。
いつかどこかで、ぷっつり終わるかも知れないって分かってるのに。
全力でキラキラ、眩しく輝いてる美嘉ちゃんは……私には真似できないくらい、すごい人。
だけど、蘭子ちゃんはそう思わなかったみたいで……
蘭子「……この世界は……」
蘭子「この世界は、間違ってる」
――――――――――――――――――――
219 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:54:02.37 ID:xM7A3UPr0
――――――――――――――――――――
バタン
P「! 神崎さん」
P「……先ほど、城ヶ崎さんからお話を伺いました。ですが、無事帰って来てくれて良かった……」
蘭子「うむ。心配をかけたようね」
蘭子「我が友」
P「? はい」
蘭子「そなたの下に、堕ちた魔王の使者が救済の書を託す……」
蘭子「……プロデューサーにお願いがあります」
"喰種"になり切れなかった蘭子ちゃんは、こうして前へ進み始める。
ただ……
220 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:55:01.84 ID:xM7A3UPr0
――――――――――――――――――――
ちひろ「『安部菜々』さんの火消しは、無事終了しました」
ちひろ「これも皆さんの仕事のおかげです。本当にお疲れさまでした」
ちひろ「あとは、我が社に協力してくださった方々への報酬についてですが……」
ちひろ「あちらの要求は何人ですか?」
「二人です」
「それと、出来るだけ仲睦まじい二人組を希望されていました」
「『美しい友情を見ながら、食事を楽しみたい』、と……」
ちひろ「仲のいい二人組ですか」
ちひろ「それでいて経営に影響のない新人、とくれば……」
『神谷奈緒』
『北条加蓮』
ちひろ「この『財産』を報酬にしましょう」
――――――――――――――――――――
進んだ先は、とても厳しい下り坂。
蘭子ちゃんは、気付くはずもなかった……よ。
221 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/30(日) 09:55:30.73 ID:xM7A3UPr0
今日はここまで。
福岡はなおかれでした。
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/30(日) 19:53:47.20 ID:Gkn72cw3O
おつおつ
映画面白かったのかよかったな!
近所でやってないしレンタル始まったら見るわ
223 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/31(月) 22:47:55.19 ID:by51/LQK0
〜過去・市原仁奈〜
仁奈はパパとママが大好きでごぜーます。
パパとママは「しーしーじー」ってところでお巡りさんをやってやがるです。
人に化けて人を困らせる、悪い「グール」たちをこらしめて平和を守るお仕事をしてるですよ!
桃太郎のオニ退治でやがります!
でもパパとママはお仕事や「グール」のこと、あんまり話してくれねーです。
ママに聞いたら、しかめっ面になってしばらく口きいてくれねーです。
それがさみしーから、仁奈はママのお仕事について聞かねーようにしてるですよ。
パパもママも、お仕事ですげー忙しーです。
パパはずっと海外でお仕事してて、帰ってこれないってママが言ってやがりました。
ママも、ずっと「グール」退治に行ってて帰ってこなくて、
帰って来てもおにぎり作ったらすぐ「グール」退治に行っちまうです。
パパが日本にいたときは参観日も運動会も来てくれたけど、
今はすげー忙しくて、学校には来てくれなくなったです。
パパが海外でお仕事するようになってから、ママは仁奈とぜんぜんお話してくれねーです。
224 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/31(月) 22:49:36.36 ID:by51/LQK0
でも、ある日ママとお出かけすることになったですよ!
ママが久しぶりにお休みをとってくれて、仁奈に
「仁奈が楽しめる場所に連れてってやる」
って言ってくれたですよ!
仁奈の前ではいっつもしかめっ面なママも、その日は嬉しそうだったでやがります!
「この間、テレビで346プロダクションのことを知ったんだよ」
「仁奈と同い年の子も優しそうな女もいる。仁奈の好きな着ぐるみの仕事だってあるぜ」
「仁奈もアイドルやってみろよ」
ママは仁奈を「アイドルじむしょ」に連れてくって言ってやがりました。
ママ言ってたです。仁奈にとってすげー楽しい場所だって!
仁奈、アイドルが何なのかよく分かってねーですけど……
ともだちも優しいおねーさんもたくさんいて、きぐるみがたくさん着れるって言ってたです!
「そう言うトコに行けるの、仁奈も嬉しいだろ?」
うれしーです!
たくさんきぐるみ着れるの、仁奈すげーたのしみです!
ともだちもたくさん出来るってほんとでごぜーますか?
アイドルってどんな楽しーことなんだって、仁奈わくわくしてるですよ!
225 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/31(月) 22:50:15.45 ID:by51/LQK0
……でも、楽しいのはそれだけじゃねーです。
だってママが、仁奈とお出かけしてくれやがりましたから!
ママ、帰って来る時はいっつも疲れてて、しかめっ面で。
でも今日のママは仁奈に笑ってくれて、いっぱいアイドルのお話してくれるですよ!
パパが日本にいたときみたいに、またいっぱい遊べるって分かって。
だから、仁奈すげー嬉しーです!
「……あ? 仁奈、ちょっと待ってろ。電話だ」
「はい市原です……増援要請? どこだ?」
「……近いな。ああ、ちょうど近くに来てンだよ」
「ああ、クインケは持ってる。待ってろすぐ行く」
「……仁奈。お前ここで待ってろ」
「お前のプロデューサーをやってくれる奴がすぐ来るからよ」
「そんな怖い奴も来るわけじゃねェだろ。ちゃんと仁奈の面倒も見てくれるから、それまで良い子で待ってられるな?」
……え?
ママ、お仕事に行っちまうですか?
休みとったって、言ってたのに……。
……分かったです。
分かってるです。
ママもパパも、平和を守るために戦ってるって仁奈知ってるですよ。
しかたねーです。
仁奈はそんなパパとママが大好きでごぜーます。
仁奈、ちゃんと一人でお留守番出来るですよ。
226 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/31(月) 22:50:47.83 ID:by51/LQK0
そうやって仁奈が知らねー場所で、一人でお留守番してたら、
仁奈のプロデューサーが仁奈を見つけたですよ。
プロデューサーは仁奈のこと、すげー気に入ってくれて、
プロデューサーが「たんとう」してた美優おねーさんと一緒に、仁奈はアイドルをやることになったです。
プロデューサーも美優おねーさんも、すげー優しくて、
楓おねーさんや早苗おねーさん、桃華ちゃんや薫ちゃん、千枝ちゃん、きらりおねーさん、
アイドルをやってから仁奈はともだちがいっぱいできたでごぜーます!
動物のきぐるみもたくさん着れて、ママのいう通りすっげー楽しいでやがります!
……だから、仁奈はママとまた遊びてーです。
パパにも会いてーです。
仁奈、すっげー楽しいから……しかめっ面のママにも、忙しいパパにも笑ってほしーです。
大好きなママとパパに、アイドルやってる仁奈を見てほしーです。
――――――――――――――――――――
227 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/07/31(月) 22:52:18.32 ID:by51/LQK0
今日はここまで。
Happy birthday ありす。
あと俺。
つまり私はアリス。(実写バイオ並感)
228 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:35:40.36 ID:xgd1hoPs0
話のキリが良いのと、アイドル達のモノローグが思ったよりやり辛くて書き方変えようかなって考えてたのと、
それとまとめでも実写喰種のレビューを見てもらって出来るだけ多くの人に映画見に行ってほしいのとで、
あと一回だけ話を区切ることにしました。
なので、今回の更新でこのスレを終了してもう一回だけ外伝のためにスレ立てします。
何回も区切ってややこしくしてゴメンね。
229 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:36:16.53 ID:xgd1hoPs0
〜現在・片桐早苗〜
橘「本日もご足労いただき感謝します」
橘「今日は大事なお話がありますので、片桐さんからご報告などあれば失礼ですが手短にお願いします」
早苗「分かったわ。ありすちゃんと仁奈ちゃん、雫ちゃん以外でとりあえず5人、『この子は人間だな』っての見つけてきたわよ」
市原「おお、やるじゃねーか早苗サン。誰だ?」
早苗「向井拓海ちゃんと中野有香ちゃん、櫻井桃華ちゃんにあとは姫川友紀ちゃん、佐藤心ちゃんね。この子達とは一緒に仕事の打ち上げでご飯食べたり、飲みに行ったりしたけど……」
早苗「あの食べっぷり飲みっぷりは間違いなく人間ね」
市原「ブフッ」
橘「…ぷ…それで判断したんですか?」
早苗「なによぉ! あんなん見たら誰だって"喰種"の演技なわけないって思うわよ!?」
橘「…コホン。分かりました。大丈夫、信用しますよ」
橘「ですが、念のためこちらで5名の生活を一時監視させていただきます」
市原「…ゴホン。あたし等や他の女捜査官だけで監視するから、その辺は安心していいぜ」
早苗「ん、分かったわ。…それで」
早苗「……ユッコちゃんのことなんだけど」
230 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:39:46.26 ID:xgd1hoPs0
橘「……申し訳ありません。…言い訳にしかなりませんが、せめて現在判明した情報だけでもお話しします。…ギン」
市原「ああ。…この間『キャッスル』の関係者だと踏んでた喰種を駆逐した」
市原「だが、殺してすぐそいつの家や資料、ニセモンの証明書を作った奴を辿っても…キャッスルに繋がるコネみてーなのは出てこなかった」
市原「これで、あたし達のやったことがムダに終わったっつーんならまだ良かったんだけどよ」
橘「直後、キャッスルの我々への警告と思われる活動により…捜査方法の見直しを強いられることとなりました」
橘「ギンの駆逐した喰種…Aとします」
橘「A駆逐直後、キャッスルによるものと思われる新人アイドルの誘拐事件が発生しました」
橘「事件現場には、とある資料がまとめられた封筒と一つの書き置きがあり……」
『藪をつつけば蛇が出る』
橘「…A駆逐から誘拐事件まで、半日も間が開いていませんでした」
橘「それにも関わらず、『キャッスル』はこのような資料を現場に残していきました」
早苗「…どんな資料?」
橘「……捜査の都合上、写真そのものまでお見せすることは出来ませんが」
橘「Aがギンに駆逐されるまで、その当日の行動を撮影した写真でした」
市原「つまりだ。あいつ等、アタシ達の行動を既に予測してやがったんだ。その上で尻尾切りをやった」
早苗「尻尾切り……あの子はキャッスルの関係者だったけど見捨てられたってこと?」
橘「そうとは断言できません。ただAをキャッスルへの糸口として捜査していた我々に、組織の力を誇示した…とも取れます」
橘「確実に分かっているのは、キャッスルは常に我々の動きを監視しており」
市原「で、その気になれば人間のアイドルをいつでも殺せるし、下手に探れば犠牲者出すぞと脅しをかけやがったってことだな」
市原「…喰種捜査官は人民の安全・命が最優先だ。地味に効くぜこう言うの」
231 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:40:55.86 ID:xgd1hoPs0
早苗「…そっか」
橘「申し訳ありません。大切な御友人の救助もままならず……」
早苗「仕方ないわよ。あたしも似たような仕事のもんだし、事情は分かってるつもり」
早苗「ただ、それじゃああなた達に協力してる私とか……私だけじゃなくて周りの皆も危ないって事じゃないの?」
市原「ああ、その通りだ。多分泳がされてる」
橘「はい。ですから、ここからが本題です」
橘「片桐さんや片桐さんの御友人。そして私達の娘」
橘「皆様には、芸能活動の一時休止とCCG関連施設への入居をお願いしたいのです」
――――――――――――――――――――
232 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:42:40.09 ID:xgd1hoPs0
――――――――――――――――――――
市原「……ふー」
橘「ため息ついてる暇なんかないわ。今から一日中片桐さんを護衛するのだから」
市原「わーってるよ。……つか、護衛じゃないだろ」
市原「監視だろ?」
橘「……そうね。分かり切った事を喋ってないで、急ぎましょう。片桐さんを待たせてはいけない」
市原「…ま、そうだな」
市原(――今からあたし達は、帰宅する片桐早苗を遠くから監視する)
橘(――直接護衛しないのは、あからさまに彼女を守ってキャッスルに疑念を抱かせて)
橘(――『まだ正体が確定していない』人間アイドルを危険に晒さないため)
市原(――表向きは『今まで通り』だ)
市原(――そのことは早苗サン自身にも話してある)
橘(――しかし、護衛のことを話した理由は別にある)
((―――片桐早苗に『"喰種"だった仲間』と連絡を取らせないため―――))
233 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:44:34.18 ID:xgd1hoPs0
市原(――早苗サンはあたしが駆逐した安部菜々を『あの子』っつった)
橘(――346プロダクションは、駆逐された"喰種"のことを『事故死』と説明している)
市原(――安部菜々のことはあたし達からも話してない。だが早苗サンは気付いてる)
橘(――片桐さんの心境を考えれば……"喰種"だとしても、元仲間に情けをかけてしまうかもしれない)
市原(――346プロに"喰種"が潜んでいる可能性はでかい)
橘(――恐らく、片桐さんに近い人物の中にも)
市原(――早苗サンは『メシの食い方』で人間を見抜いた。しかも、あんなに自信たっぷりにだ)
橘(――つまり、観察したなかで"喰種"の食べ方と人間の食べ方の違いに気付いたということ)
市原(――メシ食いに行った相手に"喰種"がいたと気付いてるってことだ)
橘(――もしかしたら、その職員やアイドルの中に『キャッスル』の関係者がいるかも知れない)
市原(――だとしても、仲間がそうだと知ったら……長い時間一緒にいた相手だ。情が湧くのが普通だ)
橘(――保護もそのため。分かっている人間だけでも、事実上の隔離をして"喰種"への一切の干渉を阻害する)
市原(――"喰種"に情けはかけさせない)
橘(――『喰種対策法第八十八条第一項』)
市原(――『"喰種"を蔵匿・隠避した者。これを重く罰する』……)
橘(――"喰種"などのために)
市原(――人間が罪を負う必要なんかねえ)
――――――――――――――――――――
234 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:46:02.88 ID:xgd1hoPs0
――――――――――――――――――――
橘『改めて忠告しますが……"喰種"を匿うことは重罪にあたります』
橘『"喰種"は罪を負ってまで庇う価値はありません』
橘『長い時間を共にした相手であっても、絶対に"喰種"を庇わないでください』
早苗「……なんか」
早苗「……思ってたより、ずっと大事になっちゃったわね」
早苗「ユッコちゃんのことがあるのに、何言ってんだって話だけど……」
菜々ちゃんが死んでから、1週間くらい。
あたしは仕事の休みが入った隙を狙ってCCG本局に来ていた。
もちろん、ここに来ることは誰にも言ってない。
まあオフに来てるんだし、いちいちプロデューサー君に言う必要もないわよね。
……そう。
プロデューサー君には言ってない。
あたしがCCGと関わりを持ってて、「キャッスル」の捜査を手伝ってるってことを。
最初は、昔の後輩からユッコちゃんの行方の手がかりを聞いて、
捜査官二人に取り次いでもらった時
『誰にも話さないでください』
って言われたから…こればっかりは迂闊に喋っていい話じゃないって思って、本当に誰にも話さなかった。
雫ちゃんにも話さなかったわ。
235 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:46:46.35 ID:xgd1hoPs0
だから、事件が少しでも見えてきたら改めてプロデューサー君に話す方向で考えてたんだけど……。
ある時、美樹ちゃん……橘美樹準特等に言われたの。
橘『私達の捜査について……娘を見守ってくれる人には、話していただいても構いません』
橘『しかし…話す前に一度、改めて「人間だ」と確証を得て下さい』
橘『"喰種"の中には長期間、特定の人間と関わり続けて警戒を解かせる狡猾な種類もいます』
橘『付き合いの長い方だからと、その人を過信しないよう心に留めてください』
まあ、確かにね。
言ってることに納得は出来たし、もし万が一"喰種"に今の状況がバレたら……って思うと、かなりヤバいことになりそうだし。
だから、一応プロデューサー君が人間だって証拠を得てから秘密を話すつもりだった。
…「一応」のつもりだったのよ。
なのに……
あたし、気付いちゃった。
プロデューサーは人間と比べてご飯をあまり食べない。
珍しくご飯を食べた時は、必ずトイレに行ってる。
飲むものは大体コーヒー。
砂糖もミルクも、入れてるところを見たことがない。
プロデューサーの生活態度は、まんま"喰種"のそれだった。
236 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:48:28.48 ID:xgd1hoPs0
プロデューサーだけじゃない。
瑞樹ちゃんも、美優ちゃんも、美嘉ちゃんも、夕美ちゃんも、里奈ちゃんも。
よく見れば、拓海ちゃん達の暮らしと全然違う。
分かってるわよ。このまま美樹ちゃんとギンちゃんについて行ったら……
菜々ちゃんみたいに皆駆逐される。
でも……
市原『346プロに潜んでる"喰種"にキャッスルの奴らが混じってるかもしれねえ』
市原『だから今日明日はあたし達が遠くから見張っとく』
ユッコちゃんを攫った奴らに、みんなが関わってるとは思いたくない。
でももし、万が一……ユッコちゃんがいなくなったことが皆のせいなら。
あたし達と仲良くしてる裏で、人攫いをやってるんだとしたら……
あたしは許せない。
許せないけど……
早苗「…………」
早苗「……どっちにしろ」
早苗「……なんか、もう前には戻れない気がするわ」
――――――――――――――――――――
237 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:48:58.35 ID:xgd1hoPs0
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
238 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:50:56.53 ID:xgd1hoPs0
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
239 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:51:40.04 ID:xgd1hoPs0
〜現在・???〜
私は知ってしまった。
この346プロダクションは、私が夢見たお城は。
灰被りが階段を昇り、綺麗なお姫様となり煌めく、美しい城などではなかった。
ここは―――
化け物に喰われた少女達の骸が転がる、青髭の塔だ。
240 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:52:22.27 ID:xgd1hoPs0
そうとは知らず、化け物共は。
骸の大地に築かれた塔の舞台で、また踊ろうとしている。
P「―――先日、神崎さんの要望により」
P「皆さんが参加するライブの企画を作成しました」
P「当企画のコンセプトは『笑顔の橋』」
P「人と"喰種"を繋ぎ、真っすぐに皆さんの笑顔を届ける橋を作ります」
P「皆さんの、"喰種"も人間も、何も変わることのない―――」
P「心からの、本当の笑顔のために」
化け物の陰にも、崩落の兆しにも。
なにも気付くこともなく。
241 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 20:52:50.93 ID:xgd1hoPs0
次回『偶像喰種外伝 CINDERELLA Ghouls』完結編
卯月「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」
242 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 21:24:10.80 ID:xgd1hoPs0
と言う訳で、また話を区切ることにしました。
そこそこ話は進めたつもりですが、なんかモノローグばっか目立ってる気がします。
なんとか省いた1クール範囲を埋めようと思って過去の振り返りをやってみたんですが、
なんか話が進むにつれてアイドル達がメンヘラ化してるだけのような気がします。
一応補足しておくと喰種アイドルの皆は自分の生まれとか運命をただ悲観してるわけじゃなく、
喰種に生まれても前向きに、一人のアイドルとして輝こうとしてる姿勢もちゃんとあるんです。
美波や智絵里、みくや李衣菜なんかは、前向きな意志をちゃんと出したいと考えていました。
でもそう言う面は1クール範囲をちゃんと書かないと表現できないなと分かりました。
飛ばした話はpixiv小説で加筆するなりでちゃんと書こうと思います。…外伝と第二章を終えた後になりますが。
隠して書いても多分見抜かれるだろうなと思ってキャッスルの正体は早々に明かしたわけですが、
それでもキャッスルは346プロの秘密を、CCGからは隠さなきゃいけません。
CCGをマヌケにせずに、なおかつ秘密を漏らさないよう策や活動方針を考えるのはやっぱり難しいですね。
ただ組織やその活動について矛盾が出ないように設定や話を組むのは結構楽しいです。
CCG側のキャラクターとして、オリキャラを二人ほど出しました。
オリキャラがダメな人はごめんなさい。
なるべくモバマスや喰種の既存キャラクターに寄せたら読んでくださる皆さんの抵抗も薄くなるかなーと思ってキャラ作りをしました。
ちょっとだけ二人の設定も組んだので、もし興味があれば見てくれれば嬉しいです。
この先の話ですが、既に第二章で明かした通り
喰種がアイドルとして活動できる346プロは崩壊します。
菜々以外の死人もゼロではなく、まさに「悲劇」が起こる話になります。
悲劇が起こると分かっていても読んでくださる皆さんのために、
皆さんの共感を阻むような物語としての大きな破綻を作らず、
キャラクターを一人たりとも決して雑に扱うことなく、
それでいて読者の皆さんの心を大きく動かせるような、
そういう話を目指して、遅筆ながら残りを執筆させていただきます。
次回の外伝完結編は、SSAの辺りで書き始めようと考えています。
(本当はすぐに書ききりたいと考えているのですが)
また何か月(ないとは思いたいですが何年)かかるか分かりませんが、
それでも完結に向けしっかりと書いていきたいと思います。
あとがきまで長々と書いてしまいましたが、
ここまで読んでいただきありがとうございました。
どうか最後までお付き合いください m(_ _)m
243 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 21:34:06.89 ID:xgd1hoPs0
こっちは市原一等と橘準特等の簡単な設定です。
http://imgur.com/gKzntL9
244 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 21:39:29.56 ID:xgd1hoPs0
まとめさん
>>108
,
>>131
の設定と実写レビューは最後に載せてください。
245 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 21:41:29.50 ID:xgd1hoPs0
追記。
タイトルは
楓「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝中編】
でお願いします。
246 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/08/02(水) 23:54:04.27 ID:xgd1hoPs0
もいっこ追記。
橘準特等は37歳、市原一等は早苗さんと同い年の28歳って考えてます。
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/03(木) 19:29:58.56 ID:J5XCX9DLO
おつー
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/03(木) 22:24:54.58 ID:AUYtLl3cO
おつおつ
またまってるわ
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