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楓「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝後編】
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1 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/10(火) 22:11:23.70 ID:299m36On0
見なよ、あの数。
"白鳩"も大人げないよね、たかが芸能事務所にさ
ちょっと"喰種"がアイドルやってるだけだって言うのに。
こうやってさ。
突然終わっていくんだね
当たり前みたいだった日常が、突然崩れる。
終わるときは……いつも突然なんだ
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1484053883
2 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/10(火) 22:12:13.67 ID:299m36On0
アイドルマスターと東京喰種のクロスオーバーssシリーズ
『偶像喰種』の346サイド最終章です。
このスレが初めての方にも問題がないように書くつもりなので、
最終章だけでも楽しんでいただけたらと思います。
舞台はアニメ版シンデレラガールズと同じものとして書きました。
書くことが割とたくさんあるため、かなりの亀更新になると思います。
また、シンデレラガールズ主要人物の死亡シーン・苦痛描写・捕食描写等も結構入れる予定なので、
どうかご注意ください。なるべくレーティングには引っかからないよう配慮します。
http://imgur.com/xotECx3
http://imgur.com/ebzCOpk
上の添付画像は346プロダクションに在籍しているアイドル183名の人間・喰種振り分け設定です。
尚、トレーナー姉妹は全員が喰種の設定となっています。
3 :
◆AyvLkOoV8s
[sage]:2017/01/10(火) 22:15:51.63 ID:299m36On0
とりあえずスレ立てだけしました。
デレステで183人全員そろったこの日にどうしてもやっておきたかったので…
本格的なお話は明日以降開始させていただくことになります。
4 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 22:12:40.40 ID:DnYpiQvm0
―――過去・島村卯月―――
始まりは、テレビを見ていたときでした。
すごくちっちゃい頃に見ていたテレビ。
そこには、とってもきらきらした女の子が映っていたんです。
キラキラしたステージに立って、素敵な衣装を着て、それがまるでお姫様みたいで。
テレビや街のスクリーンに映ったたくさんの女の子達を見ているうちに、
それが『アイドル』って呼ばれる人たちなんだと知りました。
そして……
私もあんな風になりたいって、思うようになっていったんです。
私もアイドルになって、あんな風にステージに立ってみたいって。
心の底から願うようになったんです。
でも、それをパパやママに話した時……すごく、悲しそうな顔をされたんです。
『ごめんね卯月』って。
『あなたはアイドルになれないの』って。
『あんな風に、人前で踊ることなんてできないの』って……
ちっちゃな私は、どうしてどうしてって泣きながら尋ねました。
パパとママは、私を抱きしめて答えを言ってくれました。
とっても簡単な答え。
私が、アイドルになれないのは。
それは、私が。
島村卯月が―――――
グール
―――"喰種"だからでした。
5 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 22:24:18.50 ID:DnYpiQvm0
"喰種"っていうのは、人間みたいな姿をしているけど人間じゃない生き物のことです。
人間よりずっと力が強くて、
人間よりずっと目や耳や鼻が良くて、
人間の持っていない武器を持っていて。
だけど、人間と同じものが食べられない生き物です。
"喰種"が唯一食べられる『それ』とコーヒー以外のものを食べちゃうと、
すっごく不味くて、身体も壊してしまうんです。
コーヒーだけは美味しく飲めますが、それでも栄養にすることは出来ません。
私達"喰種"は『それ』を食べないと生きていけないんです。
だから人間は"喰種"を敵だと思っているんだって。
だから人間に見つかった"喰種"は殺されてしまうんだって、ママは教えてくれました。
もし私がアイドルになれたとしても、私が"喰種"だってばれちゃえば。
ファンもステージも衣装も全部失って、殺されてしまうんです。
人を殺して、『それ』を喰らう―――――
―――『人肉』を喰らう化け物として。
6 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 22:38:14.90 ID:DnYpiQvm0
それだけ聞かされても、ちっちゃい私は夢を諦めきれませんでした。
それまでに無いくらい……もしかしたら、生まれてはじめてなくらい。
それくらい駄々をこねて、わがままを言って、泣いてパパとママを困らせたんです。
絶対に正体を隠すから。いい子にするから。
お勉強でもお手伝いでもごはんの訓練でも、なんでもするから。
そう約束して、まずは学校で頑張って、約束したことは全部守り切って。
そしてやっと、アイドルの養成所に行くことを許してもらえたんです。
それからは……とっても長い時間を、養成所で過ごしました。
周りにいたのは、ほとんどが人間の女の子。
その子たちは夢を諦めたか、私より先にデビューしたかで、養成所を去っていきます。
時々"喰種"の女の子とも一緒になったんですけど、その子たちは皆、遅かれ早かれ辞めてしまいました。
デビューした女の子は、みんな人間の女の子だったんです。
私はオーディションを受けても落ちて、
目立ちすぎることも出来ないから、ほかに派手なアピールもできなくて。
"喰種"の私はたった一人、養成所でレッスンして毎日を過ごしていました。
7 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 22:52:11.66 ID:DnYpiQvm0
どれだけ笑顔で頑張っても、何も変わらない日々が過ぎていきました。
近付きすぎると正体がバレちゃうかもしれないから、一緒に頑張る友達だって中途半端に作れませんでした。
でも止まり続けた時計は……ある日、動き出しました。
私を見つけてくれた人がいたんです。
背が高くて、目が細くて、初めて見た時はちょっと怖いって思った男の人。
匂いで"喰種"だって気付いた人。
あの人が養成所に訪ねてきて、私をアイドルにしてくれるって言ったんです。
理由は、補欠合格。
少し前に、とあるプロダクションで受けたオーディションのことでした。
新しいプロジェクトに応募して、一度は落ちたオーディションだったんですが……
3人の欠員が出て、だからあの人は私を拾ってくれたって話をしてくれました。
私を選んでくれた理由は、ふたつありました。
ひとつは、私が"喰種"だから。
信じられない理由でした。
何も知らずに応募したオーディション。
プロジェクトの名前は『シンデレラプロジェクト』。
そして事務所の名前は『346プロダクション』。
なんと、シンデレラプロジェクトも、346プロダクションも……
"喰種"が運営をしていて。
"喰種"がアイドルをプロデュースして。
"喰種"がアイドルになる―――――
―――"喰種"のための芸能プロダクションだったんです。
8 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 23:12:28.08 ID:DnYpiQvm0
目をぱちくりさせている間に、見たことのない新しい景色はどんどん広がっていきました。
隣には、たくさんの女の子が……
クールできつく見えるけど、決めたことにはまっすぐな渋谷凛ちゃん。
人間に育てられた、とってもフレンドリーで色んな人と仲良くなれる本田未央ちゃん。
人間がちょっと苦手だけど、猫が大好きでアイドルへの情熱は一番な前川みくちゃん。
一番年上で、色んな勉強をして運動もバッチリな新田美波さん。
一番年下で、いつもキラキラした目で楽しそうにはしゃぐ赤城みりあちゃん。
お菓子作りが得意で、いつも人間の皆にお菓子をあげて笑顔にしている三村かな子ちゃん。
ロシア系の"喰種"で、とってもキレイな髪と瞳を持ってるアナスタシアちゃん。
お姉ちゃんの美嘉ちゃんが大好きで、お姉ちゃんみたいになりたい城ヶ崎莉嘉ちゃん。
弱気だけど、本当はすっごく強くて勉強熱心な緒方智絵里ちゃん。
ロックに憧れて、"喰種"だからこそアイドルになった多田李衣菜ちゃん。
とっても大きくて、でも可愛いものが大好きな諸星きらりちゃん。
"喰種"としてすごい力を持っているけど、ちょっと面倒くさがり屋な双葉杏ちゃん。
なんと人間と"喰種"の間に生まれた、難しい言葉が好きな神崎蘭子ちゃん。
私と同じ、"喰種"に生まれながらもアイドルになった女の子たちが並んでいました。
9 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 23:14:06.75 ID:DnYpiQvm0
今日はここまで。
10 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 23:24:38.33 ID:DnYpiQvm0
一番最初に特等席から見たアイドルのみんなは、人間も"喰種"も関係なく輝いて見えました。
いつか私達も手に入れられるって言ってくれた輝き。
時計の針がすすむごとに、たくさんのいい所を知っていった仲間のみんな。
そして始まったアイドル生活。
胸を膨らませて飛び込んだ世界は……でも、ちょっとだけ大変でした。
11 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 23:35:28.13 ID:DnYpiQvm0
一番最初に躓いちゃったのは、デビューライブ。
私と、凛ちゃんと、未央ちゃんの3人ユニット『ニュージェネレーションズ』のデビューライブが、トラブルにあって中止になってしまったことです。
一度中止になってしまったデビューは、後に続く皆のためにもなかなかやり直せるものじゃなくて。
3ヶ月か4ヶ月、ほかの皆がユニットデビューするまで、ずっと地道な下積みを重ねなくちゃいけなくなってしまったんです。
でも、その中で皆のことをよく見られるようになって。
その中で、"喰種"のお友達や、ちょっとだけ人間のお友達もできて。
凛ちゃんや未央ちゃんの悪い所、それだけじゃなくってもっといい所をたくさん見つけられるようになって。
実は3人だけの秘密も作っちゃって。
苦しいこともあったけど、凛ちゃんや未央ちゃん、応援してくれるみんなと一緒に。
養成所で止まっていた時とは違って、確かに一歩一歩階段を上っていくことが出来ました。
12 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 23:45:20.24 ID:DnYpiQvm0
そして迎えた合宿に、初めて立つ舞台……サマーフェスティバル!
多くはないお客さんでしたけど、それでも積み上げてきたものがあったから。
凛ちゃんと未央ちゃんと一緒に歩いてきた道のりがあったから。
だから、私もいっぱい笑顔になって!
プロデューサーさんが私を選んでくれた、もうひとつの理由で!
精一杯、その時を踊りつくしたんです!
わたしたちの曲が終わった時に、ふと気付きました。
キラキラしたステージ、素敵な衣装。
それはまるで、私が夢見たアイドルのステージだって。
夢みたいに綺麗な景色の中心に、いつの間にか私も立っていたんだって。
13 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 23:54:15.69 ID:DnYpiQvm0
フェスティバルが終わって、たくさんのファンレターが届いたときに。
ふと、「アイドルみたい」って呟いちゃいました。
そしたら、みんなが笑って
「アイドルだよ!」
って言うんです。
そっか。
こんな景色が、まだまだ先に待っているんですね。
進めば進むほど、色んな素敵なものが待ってるんですね。
それを考えるだけで、すっごく楽しくてうれしい気分になるんです。
本当にありがとうございます。
私をここに連れ出してくれて。
ここまで引っ張ってくれて。
次は何があるんですか?
どんなお仕事ができますか?
今私が歩いている道は、どこに続いていくんでしょうか?
14 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 23:54:44.27 ID:DnYpiQvm0
一緒に歩かせてください。
ニュージェネレーションズのみんなと一緒に。
シンデレラプロジェクトのみんなと一緒に。
そして、プロデューサーさんと一緒に!
島村卯月、頑張ります!
15 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/12(木) 23:56:17.05 ID:DnYpiQvm0
ここまで。
前編と比べて結構な変更点を加えています。
混乱させたら申し訳ない。
16 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/14(土) 22:42:06.08 ID:ucSBsxz10
―――現在・今西部長―――
盛りこそ過ぎたけど、まだまだ暑い日が続く。
私も"喰種"である以上、人より身体も丈夫な筈なんだが
暑すぎる夏も寒すぎる冬もつらいつらい、長く生きるのもいい事ばかりではないねえ。
ハハハ、若いうちに鍛えておいてよかった。
おかげで今では部長と言う、なかなか余裕があって
外で汗水垂らして歩き回るような仕事をせずにすむ役職に就けている。
今の私は杏君のいい教科書といったところかな?
杏君が私くらいの年になった時、私のところまで来れているだろうか?
是非とも、悠々自適に好物の目玉を舐めて過ごすような生活を送って欲しいものだ。
彼女は結構有能だし、不可能ではないだろう。
そして才に溢れるのは"喰種"の能力も同じ。小さい体や耳の良さが功を奏して、生き延びることも難しくなさそうだ。
……まあ、こんなことを望むのはある意味残酷かもしれないねえ。
"喰種"が長生きすることはつまり……
たくさんの友達を看取ることになってしまうからね。
17 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/14(土) 22:42:48.34 ID:ucSBsxz10
「おかえりなさいませ」
「ああ、ご苦労」
おっと。老人らしくまた昔の思い出に浸ってしまった。
冷房が効いた快適なビルの中から出るつもりはないが、これでも上司の出迎えに参ったんだ。
気持ちくらいはちゃんとしておかなくては失礼じゃあないか。
何せあの御方はアメリカから帰国した足で出社するほどの仕事人。
もう若いとは言い辛いのに、このとんでもなく暑い中を表情一つ変えずに移動してきた仕事人。
大学生の時でもアイドルの番組を片っ端から見続けて仮想プロデュース計画を書き込み続けた仕事人。
中学生の頃は1ヶ月にノート5冊以上に相当するファンレターを生成し目をキラキラ輝かせながら投函していた仕事にククク
プアハハハハしまった高校生の頃の悶えようを思い出すだけでハハハハハハハハハハハハ
「私の顔に何かついていますか?」
今西「いや何も。私こそ顔に何かついてたかい?」
「いえ。何か不愉快なことをお考えでいた気がしたので」
今西「真面目に君の帰りを待っていたさ」
美城常務「……時間を浪費するだけの追及は止めましょう」
あぶないあぶない。
18 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/14(土) 23:01:23.34 ID:ucSBsxz10
美城「……」
今西「我が社の若人たちが気になるかい? 働きぶりはそこらの人間よりいい筈だがね」
美城「ええ。流石は高いパフォーマンスを誇るだけのことはあります」
美城「ですが、『彼ら』の生み出す効率の良さはそれだけに由来しない」
今西「ほう?」
美城「『彼ら』の中には常に『緊張』がある。死と隣り合わせの生を送ってこなければ生まれない緊張が」
美城「それが、常に目の前の仕事の実行に余念がないフットワークと、かつ日常的に些細なミスを逃さず処理する丁寧さに現れている」
美城「アメリカの兄弟会社にて研修を受け、学んだことです。"喰種"は人材として非常に優秀だ」
今西「それは嬉しい評価だ。未来のリーダーとして非常に期待できるよ」
今西「この場に人間が混じっているのを確認せず"喰種"という単語をハッキリ言ってしまわなければね?」
美城「問題はありません。仕事ぶりを見れば、少なくとも346プロダクションの職員ならば見分けは付きます」
美城「見られて困るアイドルも今はいない」
今西「おや、そこまで考えていたか。小さい頃からの容赦ない観察眼は健全と言ったところかな?」
美城「……無駄話をする時間を設ける予定はありません。それでは、社内の見学がありますので」
今西「はいはい」
19 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/14(土) 23:20:30.50 ID:ucSBsxz10
まったく、相変わらず昔話を嫌う子だ。
……うーむ。彼女自身は『ここまで』は気付いていないようだが
やはり、ここにいる皆が彼女に注目しているね。
無理もない。
特例かつ我々の雇い主である美城一族の一人であり、いずれこの城を任せる後継者であるとは言え。
この場のほとんどが初対面の『人間』であり、我らが346プロダクションの秘密の一端を握っている存在だからね。
ピリピリしてしまうのも仕方がない。
やれやれ……肝心なところで情熱が目を塞ぐ子だから
思いがけないところで背中を刺されて食い千切られやしないかとヒヤヒヤしてしまうね。
今西「待ちなさい、美城常務」
20 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/14(土) 23:29:48.95 ID:ucSBsxz10
美城「何でしょうか。用件は手短に」
今西「分かったよ」
今西「君は"喰種"をどう思っている?」
今西「罪を犯さなければ生きられない身体を持って生まれた者にも、城やドレスは与えられるのか?」
美城「本来ならば、斯く在るべき身を持ち生まれた者だけにガラスの靴は相応しい」
美城「生まれに寄り添うのは罪だけではない。星の輝きは、生まれた時すでに決まっている」
美城「むしろ"喰種"であるからこそ城に相応しいシンデレラとして舞い、より輝きを放つことが出来る、と私は考えています」
美城「ただし、人間を卑下するつもりは毛頭ありません」
とりあえず…喰種を認めていることだけ皆に伝われば、それでいいか。
これで今すぐ咬まれることは、もうないだろうね。
21 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/14(土) 23:32:12.28 ID:ucSBsxz10
今日はここまで。
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/14(土) 23:50:26.64 ID:DYmPpPFJ0
乙
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/01/15(日) 00:23:01.59 ID:UhqMNciVO
常務…
24 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/15(日) 15:19:49.81 ID:6E8xIkAH0
さて、懐かしい娘の顔も見れたことだ。
次は孫娘たちの顔でも見に行くとしようかな?
かのプロデューサー君ほどではないが、私もCPの進行に一枚噛んでいる身だ。
彼女たち専用ルームにはそこそこ足を運んでいるし、暇な子とはコミュニケーションも取る。
そのおかげで「暇を持て余してフラフラしているお爺さん」とでも思われているかな?
何にせよ五ヶ月も関わっていれば、どの子が何処にいるかくらいの検討はつくようになる。
匂いを追ってもいいのだけど……まあ、この年で変態扱いされるのは流石に堪えるからねえ。
まずは中庭にでも行ってみようか。
25 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/15(日) 15:20:28.00 ID:6E8xIkAH0
「かな子ちゃん、この漢字……読み方、教えてくれませんか?」
「いいよ〜。これは……『しぐれ』!」
「しぐれ、ですね……!」
おお、いたいた。やはりここだったか。
今西「具合はどうだい?」
かな子「…あ! 今西部長、おはようございます!」
智絵里「お、おはようございます! ちょっとずつですけど、漢字を覚えてます……!」
三村かな子君に、緒方智絵里君。
我が346プロダクションには、学校に行けなかった"喰種"の学力をサポートするために秘密の部屋を作っている。
アイドルには基本的に、そこで読み書きや計算を修めてもらうのだが……。
彼女たち…特に智絵里君は、はどうやらこの青々とした芝生の上で勉強に励むのが好きなようだ。
かな子君とは対照的に幼少期はあまりいい暮らしが出来なかったようで、学校にも行けなかったと聞いている。
その分を取り戻そうと、こうして勉学に精を出している。
ふふ、いつの時代も若者の学ぶことに一生懸命な姿はいいものだ。
今西「それはいい! ……おや? ずいぶんと可愛らしい栞じゃないか。何処で買えるんだい?」
智絵里「あっ、それは……。マッスルキャッスルの時に、幸子ちゃんがくれたんですっ」
今西「輿水君が?」
智絵里君はとても嬉しそうに、四つ葉のクローバーが入った栞を見せて来る。
幸子と言うと、輿水幸子君のことかな?
彼女は確か人間だったと思うが……
そうか、ここにも『こんな関係』が築かれているんだね。
26 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/15(日) 15:21:15.32 ID:6E8xIkAH0
「カワイイボクの話をしましたね!?」
匂いで分かってはいたが、こうも「にゅっ」と現れてくれると流石に心臓に悪いよ。
今西「おはよう幸子君。今、君が智絵里君に贈呈した栞の話をしていてね」
幸子「ああ、おはようございます部長さん……栞?」
幸子「……そ! そんなものよりもっとカワイイものがここにいますよ! ほら! ボクの話をしましょう!」
おや? やけに焦るねえ。
「幸子はんはほんま、優しいやさしいとこの話されるんは嫌がりはるんどす〜」
「わざわざ徹夜して手作りしてきたからね! ほんっと幸子ちゃんは優しいよね!」
おっと、今度は"喰種"と人間が一人づつ。
幸子「い、いいじゃないですか紗枝さんに友紀さんまで!」
幸子「これは一時的にでも智絵里さんを馬鹿にしたボクなりのけじめです! カワイイボクは智絵里さんが入院されていた時の苦しみをちゃーんと理解できるだけですから!」
今西「入院?」
友紀「あれ、知らないんです部長? 智絵里ちゃん、ちっちゃい頃は病気で学校に行けなかったんですよ? ね、紗枝ちゃん!」
小早川君を見ると、この場の人間二人に見えないよう人差し指を口に当てていた。
ああ! そういう話として纏めてくれたんだね。
27 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/15(日) 15:21:52.02 ID:6E8xIkAH0
今西「それはそれは、お大事に……。ところでお茶会の約束をしていたのかい? 私はお邪魔かな?」
かな子「いえいえ! 良かったら部長も召し上がっていってください♪」
かな子「コーヒーだって淹れてみたんですよっ♪」
今西「ほほう! それは楽しみだ」
紗枝「幸子はんは、お砂糖いくつ入れはるんです〜?」
幸子「なっ! 入れる前提で言わないでください! 別にお砂糖もミルクもなくたって……!」
智絵里「じゃ、じゃあどうぞ……!」
幸子「ええ、ありがとう、ございます……ゴク」
幸子「……」
かな子「コーヒーに合うクッキー、作ってきたよ?」
幸子「……ありがとうございます」
幸子「おいしい……」
28 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/15(日) 15:25:04.63 ID:6E8xIkAH0
友紀「幸子ちゃんはほんっとにかな子ちゃんのお菓子好きだねー!」
幸子「当然です。カワイイボクの舌に合う上質なお菓子です。誇ってもいいんですよかな子さん!?」
かな子「わあ! ありがとう〜!」
今西「……お菓子、かあ」
かな子君もすごいものだ。
"喰種"でありながら人間の十時君や槇原君に負けないくらい、彼女のお菓子はたくさんの人間アイドルを魅了している。
うちには佐久間君という、"喰種"であるにも関わらず料理を極めた前例もいるが
やはり味が分からない身で人間の舌を唸らせるものを作れると言うのは、素直にすごい。
こういう時は自分が"喰種"に生まれてしまったことが残念で仕方ないねえ。
人間にとっては甘いお菓子でも、我々にとっては灰の塊のようなものだから。
今西「……美味いなあ。かな子君の淹れてくれたコーヒーは、とてもうまい」
かな子「! ……えへへ、ありがとうございますっ」
かな子「どうかこれだけでも、楽しんでください」コソ
今西「ああ。とても素晴らしいコーヒーだよ」
幸子「ほら、部長もどうぞ! 紗枝さんも遠慮しなくていいですから!」
今西「!? い、いや私のような老いぼれより若い皆で……」
紗枝「一人だけ仲間はずれなんてあきまへんえ?」
友紀「あっ! じゃあ部長ビールどうです!? せっかく成人同士なんですし飲みましょうよホラホラ」
今西「え、ええ〜!?」
……喰うふりより、飲むふりの方が辛いんだねえ。
29 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/15(日) 21:12:52.15 ID:6E8xIkAH0
今日はここまで。
こんな感じで少しずつ1クール範囲にあったことをさらっていきます。
30 :
◆AyvLkOoV8s
[saga]:2017/01/16(月) 18:35:31.23 ID:PloBVjx70
――――――――――――――――――――
まったく、ひどい目に遭った。
喉にざわりと染み付いたビールの泡に、粘膜を焼かれたかと思ったよ。
これからは人間から『飲み』の付き合いに誘われないよう、細心の注意を払わないといけないね。
だが、かな子君のコーヒーは実に美味しかった。
あのコーヒーは346カフェのものにも決して引けを取らない出来だった。
また頂きたいものだ。
…ふむ。菜々君のコーヒーも飲みに行くとしようかな?
この時間なら、あの二人もいるだろう。
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