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新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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1 :
◆8zklXZsAwY
[saga]:2017/01/02(月) 23:59:51.21 ID:uQO4md64O
『アイドルマスターシンデレラガールズ』と『亜人』のクロスオーバーSSです。地の文あり。
『シンデレラガールズ』の世界観はアニメ版を準拠、時間軸は最終回以降。クロスオーバーに際して
・新田美波が永井圭、慧理子の姉(正確には異母姉)に。その影響で、新田家と永井家の家庭環境の諸々を変更。
・『シンデレラガールズ』側の登場人物の一名が亜人
の二点の設定変更があります。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1483369191
2 :
◆8zklXZsAwY
[saga]:2017/01/03(火) 00:03:12.31 ID:5kzXp0UHO
1.あの外国の人はいないんだ
「おまえはのべつ死を口にしていて、しかし死なない」−−フランツ・カフカ [創作ノート]
その生物は死なない……
その生物は亜人と呼ばれている
その生物はーー
−−七月二十二日・埼玉県・永井家
永井圭が玄関の扉を開けると、玄関に母親のものではない女性ものの靴が一足、ていねいに並べられ、つま先を圭の方に向けていた。
圭はその靴を見た。見て、靴があること以上のことは思わず、自分もスニーカーを脱いで、靴箱にいれた。
真夏の日差しは、夕方近くになっても弱まらず、白い光線から放射された熱が、学校から帰ってくるあいだに圭の身体からすっかり水分をぬきとってしまっていた。太陽が西に傾き、輝く線の角度が水平に近づいていっても、紅色とオレンジ色が入り混じった、夕暮時にふさわしい色彩に空は染まらず、住宅街の無機質な並びに熱を浴びせつづけていた。蜃気楼が生まれそうなくらい暑い。なのに、住宅街の輪郭はあいかわらず固まったままだった。圭は喉を渇きを我慢しつつ、リビングを抜け、キッチンにむかった。
リビングのソファには、やはり姉が腰掛けていた。姉といっても、血のつながりは半分だけだったが、今更そんなことを気にするでもなく、圭は姉の後ろを通り過ぎた。姉はキッチンへ向かう弟を追って首を回し、その背中に向けて声をかけた。
美波「おかえり、圭」
永井「姉さん、今日は早かったんだ」
圭は手に持ったガラスのコップに水が満たされるのを見つめながら、美波にこたえた。浄水器から出てくる水をコップの四分の三程まで注ぎ、口をつける。美波は圭がコップの水を飲み干すまで待ってから返事をした。
美波「今日はオフだから。夕飯もこっちで食べてくつもり」
永井「母さんは買い物?」
美波「うん。もうすぐ帰ってくるんじゃないかな」
永井「そう」
圭は飲み終えたコップを流しに置くと、ふたたび姉の後ろを通り過ぎ、二階にある自分の部屋に向かおうとした。圭がリビングのドアを開け、廊下を通り、階段の一段目に足をかけようとしたとき、おなじようにドアを抜けた美波が、追いかけるようにして圭に声をかけた。
3 :
◆8zklXZsAwY
[saga]:2017/01/03(火) 00:04:25.47 ID:5kzXp0UHO
美波「あ、待って、圭」
永井「なに?」
美波「これ……今度発売されるCDのサンプルなんだけど」
美波は一枚のCDを差し出した。白い隊服に身を包んだ美波を先頭にして、同様の隊服を着たほかのアイドルたちと並んで、それぞれどこか別の方向を指差している。彼女たちの背後には光が差し込む巨大な扉があって、そこからは光とともに吹き込んでくる風があり、その風が美波たちの髪や服を翻している。そのような光景がCDのジャケットに印刷されていた。
美波「慧理ちゃんにはもう渡したの。圭にも聴いてほしくって」
永井「あの外国の人はいないんだ」
美波「これはラブライカとは別のユニットだから」
永井「ふうん」
圭の興味はCDを裏返したあたりで尽きた。
永井「あとで聴いておくよ」
それだけ言うと、圭は二階へ上っていって消えてしまった。弟との会話は、これが平均的な長さだった。ここ一年でかわされた会話では、これより長い会話も、短い会話も、美波の記憶にはほとんどなかった。弟の背中を見送りながら、美波は取り残されたような気持ちになった。
4 :
◆8zklXZsAwY
[saga]:2017/01/03(火) 00:05:53.27 ID:5kzXp0UHO
約二〇年前、美波が生まれてまもない頃、彼女を産んだ母親は病院内でなんらかの感染症に罹り死亡した。なぜそんなことになったのか、いま現在になっても美波は詳しい事情を知らない。母親が自分を抱きしめたのかどうかすら、美波が知ることはなかった。
分かっているのは、それが父の勤めていた病院での出来ごとだということだけだった。父は失意のどん底に落ちた。そこから這い上がることもできず、生後間もない美波をつれ、生まれ故郷である広島から離れた。友人の紹介で次の勤め先である病院はすぐに見つかった。その病院は東京にあり、職員用の託児所もあった。だが、託児所といっても、そこは多忙を極める外科医にとって、いつまでも幼い娘を預けられる場所ではなかった。どうしても深夜まで働かなければならないときは、子育ての経験がある友人の家庭に美波を預けることもあった。それは、父と娘双方に大きなストレスをもたらした。
しかし、その問題はやがて解決することになる。美波が生まれてから二年が過ぎようとしていた頃、暦上では秋に入ったが、気温や湿度も、公園や街路に植えられた樹の葉っぱも、その緑色をした葉に当たる太陽の光も、その葉が歩道に落とす影の濃さも、まだ夏の風情を残しているときのことだ。秋雨前線の到来もまだ先で、快晴の日々が続いていた。 父親と同じ病院のER勤務の女性医師が、すべての事情を知り、またそれをすべて受け入れて、美波の父親と結婚することを決意した。そして、またたくまに休職を決めてしまうと、家庭で美波を育て上げることまで決断してしまった。同僚たちは、この彼女の突然の思い切った決断に、当然驚きを隠せなかった。合理性に固まった性格で、内部の感傷性をまったく吐露しない彼女が、いったいどのような理由でこの新しい同僚とその幼い娘に同情し、人生を共有することを決めたのか? 結局のところ、それは本人と美波の父親しか知らない事実となった。
5 :
◆8zklXZsAwY
[saga]:2017/01/03(火) 00:07:29.98 ID:5kzXp0UHO
かれら夫婦が離婚したのは、美波に弟ができて九年が経ったときのことだった。臓器売買。ある患者の生命を救うために、違法な手段で切り取られた臓器を購入すること。
裁判では父親に執行猶予付きの有罪判決がくだされた。腎臓の購入をブローカーに持ちかけられ、それを承諾したものの、実際の売買が未遂であったこと、医師としてドナーの発見に奔走し、すべての取りうる手段や可能性に当たっていたこと、患者の状態を鑑みるに移植を早期に行わなければ重篤な状態におちいり、生命の危機に瀕するだろうことが病院から提供されたデータから明らかであったことなどから、医師としての職務を遂行しようとする思いが強過ぎたあまりの犯行であることは明白だと弁護士は強弁した。
執行猶予の判断材料には、過去、美波の母親が彼の勤める病院で亡くなったという事実も考慮に加えられていた。その出来事によって、彼がこうむった打撃が、法の枠組みを越えてさえ患者の生命を救うという思いを生んだのだと、弁護士は裁判長に向かって訴えたそうだ。
過去の精神的打撃のことを裁判長から尋ねられたときーーと、美波は想像したことがあるーー父はきっと何の罪で裁かれているのかよくわからなくなっていのたでないだろうか? もしかしたら、妻を亡くしてしまったことが罪に問われているのだろうか、と不安に苛まれた瞬間もあったはずだ。いまにして思えば、父が医師の仕事に打ち込んでいたのは、わかりやすいくらいの代償行動だった。妻を喪った悲しみが、いつしか罪悪感に変質し、その感情をモチベーションにして救えなかった人の代わりに患者を救おうとする。そのような深層にひそむ動機を暴かれてしまったことは、父にとって罰を受けることよりつらいことだったのかもしれない。
6 :
◆8zklXZsAwY
[saga]:2017/01/03(火) 00:08:59.46 ID:5kzXp0UHO
結局、父親は職も家庭も失い、広島に戻ることになった。そして、誰にとっても予想外なことだったのだが、美波も父親といっしょに生まれ故郷に戻った。母親はもちろん、美波を引き取るつもりだったし、父親の方もそのことに異論はなかっただろう。
そのような事態の推移に対して、強くはっきりと反抗したのが美波だった。そのとき美波はまだ十一歳だったが、今振り返ってみても、あれほど強硬な態度をとったことはなかったし、おそらくこれからもないだろう。あれは、人生で一度きりの決定的な意思表示の瞬間だった。美波の父親は本来なら、妻が死んだ時点で残りの人生を健全に過ごすことはできないくらい心に打撃を受けていた。そうならなかったのは、ひとえに産まれたばかりの娘の存在があったからだ。だから、今回もわたしがいっしょにいてやらねばならないのだ。
美波「わたしはパパといっしょに暮らす」
そう宣言した美波を、義理の母親である律はただ黙って目を細めてじっと見つめていた。しばらく沈黙が続き、律がやっと口を開いたとき、美波が耳にしたのは、彼女の考えがいかに幼稚で情動的なものかを合理立てて批判する義母の説明だった。それは説得ではなく、否定だった。もちろん、反対はされるとは思っていた。自分はただの子供でしかないし、親の庇護下になければ生活などしていけない。そして執行猶予が付いたとはいえ、罪を犯した父親よりも義母の方が子供の育てるのにふさわしいのは明らかだった。当時の美波からしてもその事実は否定しようがない。
7 :
◆8zklXZsAwY
[saga]:2017/01/03(火) 00:10:14.25 ID:5kzXp0UHO
美波「ほんとうのお母さんじゃないくせに」
美波の口から突然そんな言葉が飛び出した。人を傷つける言葉を口にしたのはそれがはじめてだった。義母がどんな顔をしているのか眼に映るまえに、美波は椅子を倒し、父親が制止するのも無視して二階にある自分の部屋へ逃げ込んでいた。心臓が逸っていたのは、階段を駆け上がったせいばかりではなかった。
あんなことを言うつもりはなかった。美波は誰に言うでもなく、心のなかで自分に向かって言い訳をした。
義母の律は、世間一般的にみれば優しい母親ではなかったが、愛情がないわけでなかった。合理的で厳しくはあったが、それは、母親として、という形容が前につく類いのものだった。だから、ちゃんと説明さえすれば娘である自分の気持ちもわかってくれるはず、と美波は思ったのだ。夫婦のことはわからないけれど、家族のことは十一歳の子供なりにわかっているつもりだった。だが、うまくいかなかった。子供の論理と大人の論理は、それぞれ別の機能で働いていて、そしてよくあることだが、違いがあることを忘れたまま互いに論理をすり合わせようとする。そういうとき、たいていの場合は互いに相手を思いやっていたりする。だがその結果生まれるのは、相互不信だけだ。
美波は床に座って、ベッドの端に頭を沈み込ませていた。左腕をベッドに置き、その上に右腕を交差させる。瞼を閉じた両目を上になったほうの腕で押さえ込む。左右の手はそれぞれ反対側の肘をつかんでいて、かなり力を込めていたのでつかんだところが白っぽくなっていた。
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