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【ラブライブ!】スクールアイドルを始めるらしい
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115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/12(月) 12:07:06.63 ID:Zsc17v54O
>>114
sageろ
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/12(月) 20:10:53.77 ID:dxgevPIdO
乙!
わくわくな展開が繰り広げられる予感
117 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2016/12/18(日) 23:46:09.57 ID:kBlbzY1g0
○
本来二年生と三年生は休みのはずの入学式。
けれども私が学校に行くと、意外にも生徒達の人数は多かった。
深羽「それもそうか……」
朝。半笑いの母に見送られて登校し、いつものように教室へ向かう私。たった数日前は縁すらなかった、青春の雰囲気漂う賑やかな校内を歩きながら私はひとりごちる。
入学式。帰宅部の在校生には何の関係もない日だが、部活をやっている人間にとってこのイベントはとても大切だ。
なにしろ勧誘ができる一番早い日なのだ。今年一年部がどうなるかがかかっている日と言っても過言ではない。賑わって当然。
深羽「新しく部を作るなら尚更、だね」
無論、スクールアイドル部その2にとっても重要な日だ。
今日は特に何をするかとか聞いてなかったけど、きっとあの行動的な芽衣なら何か考えていることだろう。期待しておこう。
文化祭のような浮かれた空気をひしひしと感じつつ、ようやく教室の前に。
深羽「……」
今日、この日を逃せばスクールアイドル部その2を作ることは難しくなる。不安と期待。緊張してしまう自分を追い払うように頭を振り、私は勢いよくドアを開いた。
芽衣「お。おはよう」
晴香「おはよう、飛島さん」
教室の中は学校の活気に反して二人しかいなかった。落ち着いて挨拶してくる二人に私は安堵する。ちょっと肩の力が抜けた気がした。
深羽「おはよう。早いね、二人とも」
芽衣「まぁね。色々やることはあるし」
晴香「私は暇で……」
机を二つほどくっつけて、その上に先日のポスターやビラを広げている二人。勧誘の準備はバッチリって感じ。
あとは……ん? なんか衣装みたいなものが……。
118 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2016/12/18(日) 23:47:02.81 ID:kBlbzY1g0
芽衣「気づいた?」
教室のドアを閉じて二人の近くに。服らしきものを見ていると、芽衣がフッと笑った。
芽衣「これこそ今日の秘策。晴香の作成した衣装!」
深羽「これが? ……ふむ」
何故か芽衣が得意気にしているのはともかく、置いてある衣装はかなりの出来だ。畳んであって全貌は分からないけど素人が作ったとは思えない。
晴香「……おかしかったかな?」
深羽「そんなことはないよ。すごい出来だったから」
芽衣「でしょ。私の目に狂いはなかったね」
晴香「そ、そうかな……」
対称的な二人のリアクション。芽衣は自信満々に、晴香はおどおどと。こんなクオリティで作れるなら、晴香も胸を張っていいのに。
芽衣「で、問題は誰がどの衣装を着てどんな勧誘をするかなんだけど……」
深羽「……芽衣じゃないの?」
芽衣「私でもいいよ? でも、アイドルはしいって言ったら……」
チラッと前を見る芽衣。その視線の先には晴香。……確かに、性格の消極的なところは除いて、アイドルらしいって言ったらこの面子だと彼女がトップだ。ふわふわと可愛らしくて、髪型もらしいし、色合いもとてもいい。
芽衣も小さくて可愛くて、人の注目を集めるだろうけど……小さすぎて注目を集めるまでが長そう。
119 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2016/12/18(日) 23:47:34.75 ID:kBlbzY1g0
芽衣「……なんか失礼なこと考えなかった?」
深羽「そんなことは全然……」
危ない危ない……。
芽衣「で、深羽もいいし。ここが男子校なら注目集めるのは間違いなく深羽だし……髪上げて笑顔見せてればらしく見えるんじゃない?」
深羽「褒めてるのか褒めてないのか……」
晴香「片目隠しにスタイル抜群、セーラー服に黒タイツ……アニメのキャラみたいだよね!」
深羽「……それも褒めてるの?」
なにはともあれ、誰でもいいってことだ。私は釈然としないけど……主に自分への評価が。
芽衣「うーん、どうしようかな……」
深羽「……」
ここで何かアドバイスしておくべきだろうか。私はまだポスターやビラに文字をちょろっと書いたくらいしかしてないし……。
1「私がやろうか」
2「芽衣に任せるよ」
3「晴香のアイドル姿見てみたいな」
↓1 一つ選択
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/18(日) 23:55:45.23 ID:tQpFMVGVO
3
121 :
◆XxLp/boApQ
[saga ]:2016/12/19(月) 00:24:55.02 ID:8MC08CMn0
選択 3「晴香のアイドル姿見てみたいな」
【ルートが若干分岐します】
深羽「晴香のアイドル姿見てみたいな」
適任と言えば彼女。ここは晴香にやってもらうのが間違いないだろう。
晴香「ひえ!? な、なんで私?」
芽衣「すごいサラッと言った……むしろ不審者」
深羽「そんなことない」
芽衣「そうかな。まぁ――晴香。アイドルらしいのは晴香だと思うんだけど、どう?」
私と芽衣。二人の注目を受け芽衣があたふたと慌てる。
性格的には適任とは言えないけど、可愛くはあるよね。うん。
晴香「あの……私、衣装だけの協力って言ったわよね?」
芽衣「言ったね。でも深羽見たいって言ってるし」
深羽「是非」
芽衣「そこは否定しないのね……」
晴香「ううぅ……でも」
深羽「駄目かな? サポートはするから」ジー
深羽「ね?」ジジー
晴香「ぐぐぐ……分かった。頑張る」プイッ
見つめながら真摯にお願いすると彼女は顔を逸らして頷いてくれた。
よっぽど恥ずかしいのか頬を赤くさせて。
芽衣「うん、オーケー。それなら私達はビラ配り頑張ろうか」
深羽「了解。晴香が身体張ってくれるんだし」コクッ
芽衣「うん。死ぬ気でやろう」グッ
晴香「大袈裟なような……」
握手する私と芽衣。それを呆れた様子で見つめ、晴香が肩を落とした。
さて大事な勧誘、この方針でうまくいくといいけれど……。
122 :
◆XxLp/boApQ
[saga ]:2016/12/19(月) 00:54:54.15 ID:8MC08CMn0
入学式、そしてホームルーム。
それを終えて校舎から出てくる一年生を勧誘する、というのが学校側から定められている大まかなルールらしい。
なので時間まで作戦の確認や雑談しながら教室で待機をし――
戦いのときはやってきた。
校舎から出てくる新入生。
校門前はそれまでのざわつきを塗りつぶすかのようなにぎやかさに包まれ、一変する。
勿論私たちもその中にいた。
深羽「……」
芽衣「……」
活気の中、自分たちの武器を手に機会を待つ。
私たちの視線の先には仕留めるべき的に、ジッと身動き一つせず慎重に周囲に視線を巡らせる大将。
喧騒の中動き出さない戦い。それはさながら達人同士の対峙のようだった。
先に動き出した方が負ける。
ちっとも意味が分からなかった言葉が今は痛いほど理解できる。だって――
晴香「……」ガタガタガタ
動いたら卒倒しそうだから。
他の部活に混ざってほぼ中心位置。中々いいポジションを取れたけど勧誘は順調とは言えなかった。
まぁ……あれだよね。フリフリの可愛い服を着た美少女が、マッチ売りの少女よろしく寒さに震えたみたいにガタガタしながらビラを差し出したまま硬直していたら、誰だって近寄りたくはなくなる。新手のパフォーマーと勘違いしておひねり置こうとする人がいるくらい勧誘という言葉からはかけ離れているのだから。
芽衣「やっぱり無理だったかな」ソワソワ
深羽「もう少し様子を見よう? やってくれるって言ってくれたんだし、私たちはビラ配って」
武器――もといビラを抱え、心配そうな顔をしている芽衣。
新入生の中で緊張と恥ずかしさですごいことになってる晴香は確かに心配だけど、引き受けてくれた彼女を駄目そうだからとすぐ回収することはあんまりしたくない。彼女は彼女なりに頑張っているのだから私たちも頑張るだけだ。
123 :
◆XxLp/boApQ
[saga ]:2016/12/19(月) 01:27:04.32 ID:8MC08CMn0
深羽「スクールアイドル、興味ありませんか? いかがですか?」
晴香だけに頑張らせるわけにもいかない。私もぼちぼちと勧誘をはじめる。
できるだけの元気と愛想を振りまいて、にっこりと笑って。
新入生1「スクールアイドル……?」
すると存外あっさりと立ち止まってくれる子が。
流石スクールアイドル。大流行の看板は伊達ではない。ここがチャンスと私はまだそわそわしている芽衣に声をかけ、立ち止まった新入生の御一行に接近。
深羽「どうですか? 新設のスクールアイドル部その2――名前は未定ですけど」
芽衣「興味あります?」
新入生2「いいじゃん、スクールアイドル。中学の友達もやるって言ってたし――」
新入生1「う、うん。興味はあったけど」
新入生3「でも、あれよね?」
深羽「……?」
『あれ』。一人が口にした途端、三人の様子が変わる。
その表情に私は見覚えがあった。
新入生1「あ、あの……やっぱりいいです」
新入生3「ごめんなさい」
深羽「え? あ、うん」
引き止めるのは無駄。なんとなく察し、私は他の部活のところへ歩いていく彼女達を見送った。
深羽「……なんだろう」
何か、私が知らないことがあるのだろうか。
分からないけど……なにしろあの反応だ。勧誘がすんなりうまくいくとは思えない。
なにかしら改めて作戦を練ったほうが。頷く。私は隣の芽衣へと振り向き――
深羽「芽衣、一旦話を――」
芽衣「やっぱり見てられない! 晴香、大丈夫っ?」ダッ
話しかける間もなく芽衣が走り去った。
芽衣「ほら、ビラは私たちに任せて晴香は笑顔笑顔」
晴香「うぅ……ごめんね、芽衣ちゃん……飛島さん……私、もうダメみたい……」ガクッ
芽衣「あ、晴香!? 晴香ー!」
あ、動かしたから負けた。――って言ってる場合じゃない。
深羽「一旦下がろう。今は不利」
芽衣「そ、そんな……くっ!」
……芽衣、キャラ違う。私も戦闘モノみたいな台詞を言っといてなんだけど。
まともに勧誘できていない内に一度撤退。勧誘している校舎から校門の道の左端へ。
知識も経験もない新参者の未熟さを、私は身に沁みて理解するのだった。
124 :
◆XxLp/boApQ
[saga ]:2016/12/19(月) 02:22:38.81 ID:8MC08CMn0
そんな、バトル漫画みたいなノリで避難して――
深羽「スクールアイドル、この学校でなにかあったの?」
芽衣「『なにか』?」
件の疑問について尋ねてみた。
けどまぁ、返ってくるのはぽかんとした様子の復唱だけ。そりゃそうである。連続してお断りされるような理由があって、それを知っているならば私が誘われた時点で説明がないのがおかしい。
晴香「……様子が、おかしかったことよね」
芽衣「晴香が?」
深羽「むしろそれは全員」
晴香「真面目な話だよね?」
ほんとごめんなさい。
深羽「……ごほん。さっき勧誘した子達、途中で断ってきたんだけど――スクールアイドル部はなんかダメみたいな……」
なんとも言えないけど、でもなんとなく……。
深羽「ラーメン屋のバイトさんみたいな感じだった」
芽衣「……あの人?」
深羽「うん。スクールアイドル部ができなくて当たり前みたいな。自分はもう諦めてる、みたいな」
晴香「……うん。なんとなく分かる」
晴香「みんな興味はあるみたいなのに、声かけてこなかったから」
前にいて彼女はそう感じたらしい。
もうすっかり落ち着いた様子で晴香が静かに語る。
125 :
以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/24(土) 08:12:30.96 ID:wWSoAVF80
投下乙
遂に新入生勧誘!だが、やはりこの学校では過去に何かあったのか・・・?
126 :
◆XxLp/boApQ
[saga ]:2016/12/26(月) 02:07:07.44 ID:vfqnBiNq0
芽衣「うーん……なんかあるのかな。それより晴香、もう大丈夫?」
晴香「え? あ、うん。平気よ」
……芽衣、過保護すぎる気が。それよりって。
こういう子なのね。勧誘の大事な時間だというのに人がいいというか。
晴香「ちょっと緊張しちゃっただけだから……」
深羽「ちょっとどころじゃなかったような気がするけど」
晴香「うっ……」
図星だったらしい。短く呻いた晴香ががくっと肩を落としてしまう。
彼女の容姿は素晴らしい。アイドルらしい可愛らしさ全開に、ふわふわフリフリな衣装。どことなく制服っぽい半袖のフリルが付いた白いシャツに、首元にピンク色のリボン。下はチェックのミニスカート。
晴香の髪色に合わせたコーディネートで、健康的で眩しい――女の子が憧れるアイドルそのもの。
道のど真ん中で石像になるパフォーマンスをしていなければ、本来人だかりができてもおかしくないレベルなのだ。
その有り余るポテンシャルが彼女の性格面でマイナスされた。きっとそれも事実なのだけれど……それ以上に誰一人として晴香に近づいてこなかったのは不思議としか言い様がない。
何か理由があるはずだ。
深羽「でも、勧誘がうまくいってないのは晴香のせいじゃないと思う。っていうか失敗しても誰のせいでもないし」
芽衣「頼んだのは私たちだからね。それにおかしいのは薄々分かってたんだ」
芽衣もやはりそれは感づいていたらしい。三人が揃って抱く違和感。これはもう偶然とは言えない。
けれどそれが何か分からない以上、どうすることもできないのも事実で……。私達は暗い顔でうつむく。
何もできることはない。けどこのまま勧誘を続けてもメンバーが集まるかどうか……。
困り果てた私は自然と芽衣を見る。晴香もまた彼女を頼るように視線を向け――芽衣はまるでそのタイミングを見計らっていたかのように顔を上げた。
芽衣「……じゃ、奥の手やろうかな」
そして短く告げる。
サイドテールを揺らしフッと不敵に微笑む芽衣。身体を伸ばし、両手でガッツポーズを作る。
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/26(月) 02:17:25.16 ID:QlZzsaoj0
お、リアタイで遭遇したの初めてかも
ファイトだよっp(・8・)qグッ
128 :
◆XxLp/boApQ
[saga ]:2016/12/26(月) 02:27:31.73 ID:vfqnBiNq0
晴香「奥の手?」
芽衣「うん。スクールアイドルらしい、入りたいって思うような勧誘」
深羽「……?」
そんな方法が? 首を傾げる私の前、彼女は私へと振り向き自信ありげに笑みを浮かべた。
赤っぽい瞳が私をまっすぐ見据える。何も分からない不安に圧されているであろう彼女。しかしその目は希望に輝いていた。
芽衣「見てて、深羽。私の本気。本当にスクールアイドルをやりたいんだ、って」
私にはない、ひたむきな勇気。楽しむ心。
それが眩しくて、私は目を逸らすようにして頷いた。
深羽「うん。何をするかは分からないけど……見てるよ」
彼女がここまで言うのだ。見届けるとしよう。
成功するか失敗するかはともかく、見守っていたい。そう思ったから。
芽衣「よし。晴香も見ててね。アイドルの魅力、教えちゃうから」
このまますぐ行くつもりらしい。セーラー服を整えると彼女はまっすぐ、私たちが勧誘していた場所へと向かっていく。
静かにしっかりとした足取りで歩いて行く芽衣。小柄な彼女の背中は勧誘している同級生や先輩よりも大きく、頼もしく見えた。
晴香「何をするのかしら……?」
深羽「分からない。けど……大丈夫な気がする」
誰も何もなかったところからここまで来たのだ。
私たちのリーダーと言えば芽衣。私たちを取り巻く話の主役は彼女。
芽衣ならばなんとかできるはずだ。
芽衣「……さ、はじめよう」
喧騒の中力強く、彼女のそんな一言が聞こえた。
129 :
◆XxLp/boApQ
[sage]:2016/12/26(月) 04:11:26.87 ID:vfqnBiNq0
芽衣「……」
すーっと息を吸う。
瞬間、静寂が訪れた――ような気がした。
その場の誰もが同時に黙るなんてこと、あるはずもない。
けれどその瞬間はまるで彼女のステージが始まる直前のように、周りにいる人達が観客になったかのように、無音の世界が訪れたのだ。
芽衣「『ここから、今から、はじめよう』」
芽衣『過去へ未来へ今へ繋がる道を、駆け抜けて』
聞いたことのない曲。その冒頭部分。
伴奏もなしに高らかに歌い上げた彼女。
ちらちらと彼女を見る周囲の人達。けれどまだ注目という域には至らず、賑やかさに変わりはなく。
芽衣『最初は誰でも一人で』
それでも芽衣は歌うことをやめない。
むしろ楽しそうに声を弾ませて、リズムをとっていた身体を大きく動かしはじめ踊りだす。
周りが見えているのか、いないのか。いずれにせよ私には信じられない行為だった。
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/07(土) 20:43:01.86 ID:LLOpXe8a0
忙しいのかなかなか更新来ないね
ちゃんと待ってるで〜
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/12(木) 19:44:05.90 ID:Sw7SYrClO
まだ、
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/23(月) 11:17:35.45 ID:C718olty0
(^8^)
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/23(月) 12:51:13.88 ID:EFvZTKhlO
エタった
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/25(水) 00:13:21.32 ID:hr2TC8b40
エタったのかなあこれ
待ってるからね…
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/26(木) 10:21:16.58 ID:a6cBAl1XO
待ってるぞ
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/10(金) 20:28:32.98 ID:7ERzjvNxO
無事にエタった
いい安価だったのにな
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/13(月) 19:55:23.68 ID:yK+1MAoHO
まだ二ヶ月経ってないからエタったとは限らないし(震え声)
138 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/03/06(月) 11:00:16.07 ID:LW7Mo8Dn0
芽衣『分かれ道だってある』
ちら、ちらと次第に彼女は注目を集めていく。歌い踊り眩しいほどの笑顔を浮かべ、芽衣は客観的に見ればリ・バースと比較して技術が勝っているとは言えない。けれど彼女の歌はにぎやかさの中で明るく響き、まるで楽しさを体現しているかのようなダンスは見ているだけで気持ちが明るくなってくる。
芽衣『けど、寂しくはない。目指す場所がここにあるから』
それはテレビで見るアイドルからは感じなかったもので、私に希望というものを教えてくれて。
その点では、私が見た筈の生リ・バースより――いや、全アイドルより優れているのだろう。
晴香「……芽衣、こんなに踊れたの?」
深羽「予想外だね……てっきり、思いつきでここまで突っ走ってたのかと」
これまでの芽衣の印象とはまったく違うクオリティ。……否、思ってみれば彼女らしいといえるか。わざわざスクールアイドル部を新たに立てようとしているのだ。その情熱はくすぶっていた私には想像できない。
芽衣『私はここにいる。声を張り上げよう。みんなの声も聞こえる、この空の下で』
歌が盛り上がっていく。彼女の歌声は一層強く響き、確信を得たようなキリッとした彼女の横顔は凛々しく、思わず見とれてしまう。それはこの場にいるほぼ全員がそうだったのだろう。楽しげな声でざわついていた場は静まり、視線が集まりはじめる。
有名スクールアイドルとは違って、うまくもない歌。うまくもない踊り。なのに人を惹きつけてやまない。
緊張もあるはずなのに、芽衣は生徒たちが静まった一瞬の静寂、息を大きく吸い、一歩前へ。空いていたスペースへと跳び、軽やかに踊りだす。
芽衣『一人じゃない。見えないだけさ。だから走っていこう、明日へ』
芽衣『そばにいなくても力になるよ。だって私はそう思うから』
大した技術もない。けど高鳴る胸は止められない。私は初めてアイドルに憧れる人達の気持ちが分かった。
私も彼女みたいに誰かに希望を与えられたら。踊れたら。……楽しく思えたら。
きっと人生は変わるのだろう。
深羽「……」
遠い世界みたいな話だ。
私はその世界の外で、ずっと存在すら知らずに生きてきた。今、見学者っていう立場で、スクールアイドルになろうと思えばなれる位置にいても彼女は遠すぎる。
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/06(月) 11:11:04.81 ID:OPWIGytf0
おかえり
140 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/03/06(月) 11:15:24.12 ID:LW7Mo8Dn0
芽衣『過去へ未来へ今へ――この声はどこまでも響くんだ』
光輝くステージの中。彼女は生徒達の視線を釘付けにさせるお姫様のように綺麗で可愛くて、とておも同級生のように思えなくて。私と晴香が見ている先で、彼女はあっという間に新入生たちに囲まれた。
晴香「これがアイドル……」
私も同じようなことを呟いていたかもしれない。まさかプロではなく、素人同然の高校生にアイドルのすさまじさを思い知らされるとは。
深羽「……って、私たちも勧誘しないと」
晴香「あっ! そうだねっ」
見事なパフォーマンスを披露した芽衣は新入生に質問攻めにされている。一人では対処しきれないだろうし、私たちも手伝わないと。
急いでビラを手に。芽衣の元へと向かっていく私たち。
深(それにしても……)
さっきまで見向きもされなかったのに、こうも変わるものなのか。
それも見向きされない理由が何かあったはずなのに、だ。興味がないだとか、そういう理由ではなく『係わりたくない』明確な理由がある様子だったのに――まったく、芽衣の情熱には恐れ入る。
これならよく分からない事情も越えて、本当に部を新設できるかも……。
晴香「……? 上級生?」
小走りで人だかりへ向かっていたそんな最中、晴香がふとそんなことを呟いた。
私は後ろを振り向き晴香の視線を辿る。斜め前――ちょうど芽衣らから横に離れた位置を見ると、
深羽「あれ?」
そこには二人の生徒がいた。制服の具合に見た目の年齢。見るからに新入生ではない。視線を真っ直ぐに向けて人だかり、芽衣らの方へと歩いている。
私は彼女らに見覚えがあった。
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/06(月) 12:30:45.19 ID:bqAKM/wFO
来てれう〜
待ってたよー!
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/06(月) 13:46:49.88 ID:KOSAmQX8O
待ってた。
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/06(月) 15:31:16.68 ID:kI4VWUBsO
復活したか!待ってたぜ!
144 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/03/06(月) 22:53:09.63 ID:LW7Mo8Dn0
薄水色のセミロングヘアの女の子。
クールそうなきりっとした顔立ち、モデルのようなスタイル、ピンと背筋を立てせて凛々しく、歩く姿にすら華がある。
冷静沈着で冷酷さすら感じさせる彼女の表情だが、私は知っている。仲間に可愛らしいアイテムなどを指摘され照れたり、ライブで楽しそうに笑う彼女の女子高生らしい面を。
彼女の後ろを歩いている人物のことも知っている。
青みがかった白髪のロングヘア。前髪で目を隠していて、暗めな印象を受ける少女だ。
制服を着ていても用意に分かるほど豊かな女性らしいスタイル、低めな身長、目が隠れていても予想できる綺麗な顔立ち――謙虚である必要などないのではと思える容姿で、控えめでおしとやかで、とてもいじらしい女性である。
私の知る彼女はもっと楽しそうな顔をして、雰囲気ももう少し明るかったのだけれど、今はまるで戦いに赴く戦士のような覚悟を感じられた。
並々ならない雰囲気で芽衣へと向かっていく二人。
見覚えがあるのは何故だかすぐ分かった。上級生に興味がなかった私が彼女らを目にする機会が最近あったのだ。
つまりは、彼女らこそ――
晴香「もしかして『яebirth』?」
そう。現在学園に存在する唯一のスクールアイドルグループである。
彼女らが芽衣に何の用があるのか。嫌な予感がするのは言うまでもない。
145 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/03/06(月) 23:24:52.02 ID:LW7Mo8Dn0
深羽「……」
これから何が起こるのか。なんとなく察しがついてしまった私は足を止める。
怖いだとか、面倒だとか、そんな感情からではない。ここから先は関係者以外足を踏み入れることは許されない領域だ。
見学するつもりでいた私が、ただ偶然に勧誘を手伝うことになった私が無遠慮に首を突っ込んでいい問題ではない。
晴香「飛島さん?」
深羽「……」
立ち止まった私の後ろから横へ、ひょっこりと顔を覗き込むように並ぶ晴香。彼女はこれからどうなるのか私と予想が違うみたいだけど……。
行くべきかここで見守るべきか。悩んで立ち止まっていると、その直後に声が響いた。
薄水色の女の子「なにをしているのかしら?」
ざわつきの中で透き通る声。声が極端に大きいわけではないのにはっきりと聞き取れて、それでいて全く不快ではない。
彼女の声が発せられると間もなく、辺りは静寂に包まれた。芽衣のパフォーマンスで盛り上がっていたのがまるで嘘みたいに。
芽衣、そして私と晴香。張本人らを除く殆どの人達が彼女の出現にバツが悪そうな気まずそうな顔をしている。まるでこうなることが悪いことだって分かっているかのように。
芽衣「榎本 悠さん……? 影山 真央さんも……」
悠「……」
真央「……」
そして彼女ら二人が芽衣を見る目も『責められて当然』といった感じのもの。
すっかり話の場に立つタイミングを失ってしまった。そこにのこのこと歩いていくだけの勇気は私にはない。
146 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/03/07(火) 00:59:52.99 ID:wNYIgYGe0
【訂正 そこに → あそこに】
悠「スクールアイドル部――二つ目を作ろうとしているって聞いたけど」
冷たい視線が芽衣を射抜く。重苦しい空気。芽衣も敵意に身体を向け、真剣ムード。
新入生が怖気づくんじゃないかと場違いな心配をしてしまう私である。
芽衣「はい。名前はまだ決めてないですけど……それが何か?」
真央「――決まり、知らないの?」
芽衣「決まり?」
芽衣が首を傾げる。そのリアクションが意外だったのか、敵意を剥き出しにしていた二人は驚く様子を見せた。
真央「……悠ちゃん、どうする?」
悠「……」
額に手を当て丸々一分ほど思考。
重たい雰囲気のままの短い筈の時間はとても長く感じられた。
芽衣「……えと、その決まりって?」
悠「え? それは……」
真央「スクールアイドルグループの結成禁止」
急に声をかけられてびっくりする悠に代わり、簡潔に答える真央。
スクールアイドルのグループ結成の禁止。……なるほど、確かにそれならみんなのリアクションにも納得ができる。
芽衣「禁止? そんなこと聞かなかったですけど」
悠「コホン。……それはそうね。聞かなかった人も多分いるわ」
悠「校則に載せるようなルールじゃないこともあって、暗黙の決まりみたいなものだけど――」
芽衣「それでも、みんなは守ってたってことですか?」
周囲をちらと見て芽衣が呆れた顔をする。彼女の心境は分からない。けれどスクールアイドルの先輩を前にこの不敵な態度は中々できるものじゃない。物怖じせずに自分を表現する彼女がかっこよく見えた。
147 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/03/20(月) 03:51:09.72 ID:pvosI/iw0
悠「ええ。とても大切な決まりごとなの」
わずかに緩んでいた空気が、再び鋭く張り詰める。戸惑い気味だった悠もいつの間にかクールさを取り戻しており、場は再び緊張感に包まれた。
流行りのスクールアイドルを禁止して自分らは続けているのだから、それなりの理由があるのは道理。
わざわざこうして言いに来ているのだ。余程のことなのだろう。でも……。
芽衣「なんで禁止なんてされているんですか?」
納得はできなかった。芽衣も同じだろう。
悠「理由はどうでもいいわ」
まっすぐ向けられる芽衣の眼差し。そして問い。それをあっさりと払うように悠は言い捨てた。
悠「私達は確認しに来たの。ルールはもう一つあってね」
芽衣「もう一つ?」
睨み合う二人。この場にいる私達は揃って彼女らの会話をただ見守っていた。
やがて、悠が口を開き語りはじめる。
悠「私達と勝負をして、勝った方のグループをこの学校のスクールアイドルとして認める」
それは衝撃的で、理不尽な規則だった。
悠「それがもう一つの決まりごと。負けた方はグループを解散してもらうわ」
芽衣「なっ……」
芽衣が息をのむ。私と晴香もまた、予想外なルールに驚愕した。
勝負? 負けた方が解散?
誰もやりたがらないわけだ。
二人は二年ほどスクールアイドルをしてきた。それに比べて、アイドルをしようと挑戦することになる生徒はおそらく未経験。
それで負けたら解散。おそらくは再結成することも許されないのだろう。
148 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/03/20(月) 04:18:23.81 ID:pvosI/iw0
ようやく見えてきた学校の事情。けれど私にはまだよく分からない点がいくつかあった。
疑問点はある。けれどこの時点で、部を作るには過酷な条件を乗り越えなければならないことが分かった。
素人が先輩に勝つなんて不可能に近い。だからみんな諦めていたんだ。
暗い顔をする新入生達。見れば周囲で勧誘をしていた在校生らも同じような顔をしていた。
みんな無理だと分かっているのだ。私だって芽衣を応援したいけどよく分かる。
ここで終わりだ。
悔しいけど、ここで退けばまだ新しく他の部を作ることだって――
芽衣「……分かりました」
みんなが諦めたと思っていた。
けれど彼女はちっとも諦めていなくて。
少しだけ目を閉じて大きく頷くと、芽衣は笑みを浮かべてみせた。
芽衣「スクールアイドル、諦めるつもりはないから――やってみせます」
悠「――そう」
真央「自信はあるの? 部員、五人集められる?」
芽衣「自信はありますし、やってみせます」
きっぱりと断言。できると思っている人がこの場で何人いるだろうか。笑みを浮かべている者が何人いるだろうか。
多分、彼女一人だけだ。
一人だけ芽衣は明るく立ち向かおうとしている。自分がそうしたいから。アイドルをしたいから。
やっぱり、彼女は眩しい。
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/21(火) 12:06:05.95 ID:QaWIFWo20
芽衣ちゃんの主人公感半端ねぇな
150 :
以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/03/21(火) 20:20:09.60 ID:rwSlbUqb0
久しぶりに見に来たら
これは・・・まずは部員集めか〜
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/22(水) 19:12:07.75 ID:ks4SQgodO
オリキャララブライブ新鮮いいぞ〜
前世のやつは荒らしにつぶされたのがなあ
152 :
以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/23(木) 19:30:53.17 ID:gYMKo9aY0
乙〜
いきなり対決か〜勝負内容はどうなるんだろ
153 :
◆XxLp/boApQ
[saga sage]:2017/03/29(水) 03:03:47.63 ID:1oiarfCl0
悠「分かったわ。なら――律華」
律華「……本当にやるの?」
悠が目配せをする。視線の先、いつの間にか立っていた女子生徒が不安そうな顔をした。
あの人は確か、生徒会長の律華さん。新入生の誘導や、勧誘のアナウンスをしていたような。
スピーカーやら色々な機材が彼女の周りに置いてあって……二人が何をするつもりか、すぐ察しがついた。
真央「お願い」コクッ
律華「……」
律華は何も答えない。ただ一度首を縦に振ると芽衣を見やり、何かのスイッチを操作した。
悠「さっきの歌とダンス、見せてもらったわ」
真央「だから今度は私たちの番」
音楽が鳴りだす。スピーカーからだろう。話ながら彼女らは身体でリズムをとり、音楽に合わせて踊りはじめる。
クールな印象の曲だ。芽衣達と見たリ・バースの雰囲気とは正反対と言っていい。
154 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/03/29(水) 03:05:02.86 ID:1oiarfCl0
悠『倒れても歌い続ける』
真央『声を上げて高らかにずっと』
それぞれ順番に一人ずつ歌う。文にすればたった一行にも満たないであろう短いパートで、彼女たちの経験や実力が窺えた。
踊りに視線の動き、表情。歌もスピーカーの音楽に負けない大きさで、やはり通る綺麗な声をしている。
技量は芽衣と比較にならないほど高い。
二人『生まれた時から変わらない そうこれは定められたfighting』
真央『可愛いだけじゃ何も得られない』
悠『綺麗なだけじゃ乗り越えられない』
二人『自分で強く 勝ち取るのよready』
照れ臭い歌詞も彼女らが口にすると不思議とかっこよく思える。私の思うアイドルらしさとはまた違うけど、こういったかっこいい女性も映えるものだ。
まさに圧倒的。技術に演出、歌にダンスに表情に。全てが芽衣を上回っていた。
端から見ていた素人がそう判断できるほどの明確な差。けれども私は何故だろう、二人のライブに心が震えることはなかった。
――テレビでアイドルを見た時と同じだ。スクールアイドルとアイドル。テレビで編集された姿と、ネットの動画。
考えてみればすぐに分かることだった。
悠「……。これが『яebirth』」
曲が止まり、若干息を上げた悠が涼しげな顔をして口を開く。あれほど声を出し、踊っていたのに全然疲れた様子はない。二人きりでもしっかりと練習やトレーニングをしていたのだろう。
真央「遊びでアイドルをするつもりなら……やめた方がいいと思う」
彼女らは真面目にスクールアイドルと向き合っている。
そんな彼女らが発する警告は、事情を知らない私にも重く響く。
155 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/03/29(水) 03:06:07.30 ID:1oiarfCl0
彼女らの意思に、スクールアイドルとして過ごしてきた時間に真っ正直から対抗する。それはとても難しいこと。
……でも、芽衣ならやれるんじゃないかと思う私もいた。
新しく部を作り、自分のしたいことに真っ直ぐで、一人で歌い踊った彼女なら。眩しさを感じるほど輝く彼女なら。
頑張れ。私は拳を握りしめ、呟いた。彼女ならできる。そう信じて。
みんなの注目の中。二人のパフォーマンスを見ていた芽衣が、言葉をかけられハッとした様子で悠らを睨み直した。
芽衣「……っ、遊びじゃ」
彼女はそう言って、初めて目線を二人から逸らす。
あの芽衣が遊びならばという言葉に言い淀み、目を逸らしてしまう。意外だった。彼女が遊び気分なんかじゃないことは知っていたから。芽衣自身もそう思っているはずなのに、なんで黙ってしまうのだろう……?
悠「否定、しないのね。それもそうね」
律華「――悠ちゃん」
悠「あなたは黙ってなさい」
宥めようとした律華を悠が冷たい声で制する。厳しい、敵に向ける視線を律華から芽衣へと向け、そして周囲へ。
156 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/03/29(水) 03:07:30.90 ID:1oiarfCl0
悠「あなたの味方をしようだなんて人、周りにいないもの」
シンプルな一言。彼女の視線と言葉に、私は自分が青ざめるのを感じた。
あぁ、そういうことか。芽衣は分かっているのだ。自分以外のみんなが諦めていると。自分の味方などいないのだと。
私もそうだ。諦め、でも彼女ならと、頑張れと観客席で見守るような気持ちでただ眺めてるだけ。
……勇気がないのだ。
二人は正論を口にしている。でもそれは間違っている。分かっているのに、私達にはそれを否定する力がない。自分より強いものに立ち向かう材料がない。
だから、見ているだけしかできない。
そうだ。それしかできない。
だから、正しい――
悠「いくら人が集まったって、物珍しさからの野次馬しか集まらない。そんな実力で、なにができるの? なにもできないでしょう?」
芽衣「……」
――わけがない。
俯いて何も言い返せずにいる芽衣の姿に、私は自分を重ねていた。
157 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/03/29(水) 03:08:22.34 ID:1oiarfCl0
かわいくて、眩しくて、輝いていて――まさにきらびやかなステージの上が似合う彼女は、ひねくれてステージの上を貶す私へと手を差し伸べてくれた。
なんてことはない。ただの勧誘だ。人数合わせのつもりだったのかもしれない。
でも私は、芽衣に救われていたんだ 。憧れていたんだ。
見ていただけだった私。見学するつもりでいた私。けどそんな私でも、ステージの近くにいて。暗がりにいる私へ手を伸ばしてくれて。
私と彼女の間に障害はない。ちょっと進めば行けるんだ。同じ場所に。
だから今度は私が。
深羽「……よし」
ペンを持ち気合いを入れて記入。一枚の紙を手に、それ以外のビラはポケットに突っ込み一歩踏み出す。
突然歩き出した私に晴香のびっくりした声が聞こえたけど、説明は後回し。早足で芽衣の前、三人の間へと飛び込む。
158 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/03/29(水) 03:09:15.96 ID:1oiarfCl0
悠「……? 遠くで見ていた観客がどうしたのかしら?」
不可解そうな顔をする悠に真央。後ろをちらっと見れば、顔を上げた芽衣もまた不思議そうに私を見ていた。
みんなの注目を集める。そのプレッシャーは想像以上に重い。緊張で震えそうになる声をなんとか抑え、私ははっきりとした口調で告げる。
深羽「観客じゃないです。私は芽衣の作るスクールアイドル部の見学希望者です」
悠「見学者が一体何の用? 関係ない人は――」
深羽「関係あります」
くるっと方向転換。先輩方から芽衣へ身体を向け私は微笑む。さっきは他人面しちゃったけど……今は違う。
深羽「芽衣。私は芽衣の作るスクールアイドルが見たい」
ほぼ無音に近いほどに静まった場で、私の声だけが響く。
自分の気持ちを正直に大勢の人の前で口にする。照れ臭いけど、私は少し成長できたのだろう。
159 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/03/29(水) 03:11:12.64 ID:1oiarfCl0
深羽「芽衣の夢がラブライブに出ることなら、私の夢はそれを見届けること。それがはっきり分かったから……私、見学は止める」
深羽「今度は芽衣の隣で一緒に歩いて、しっかり見てるよ。だから――」
口を出る想いは止まらない。震えそうになる緊張はいつの間にかどこかへ消え、私は再度リ・バースへ振り向く。
そして手にしていた紙を突きつけるように前へ掲げ、宣言。
深羽「――宣戦布告!」
『入部届け』。
私の名前が大きく記入されたそれを示し、目を丸くさせる二人の先輩へ私は堂々
と告げた。
深羽「芽衣は私を動かしてくれた。なにもできないのはあなた達二人だ」
芽衣に感じた心が揺さぶられるような踊り、歌、笑顔――それが前のリ・バースにもあったから。
その『яebirth』の輝きの強さを知っているから、私は確信できた。
160 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/03/29(水) 03:12:46.50 ID:1oiarfCl0
それは素人から見た、直感的で頼りない予感。
けど私はそれを信じることができたんだ。
だって、ここに彼女によって突き動かされた私がいるのだから。
深羽「芽衣は――私達は絶対に負けない!」
その宣言がどれほど途方もなく無謀なものなのかは言うまでもない。
初心者が数年の経験者に勝つ。不可能にほぼ近い勝負になることは馬鹿でも分かる。
無謀で、不可能で――けれど、それができてしまうと信じる自分がいて。
きっと青春ってそういうものなのだ。
呆気にとられる私以外の全員。その視線を浴び、私は不敵に笑う。
――ここからが、始まり。回想の終わり。
何の起伏もない人生を送っていた私は、いつの間にかステージの上へ立っていた。
きっかけはяebirth、そして芽衣。
夢を見届けるため。自分が変わるため。私は未知の世界へと飛び込んだ。つまりは――
スクールアイドルを始めるらしい。
161 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/03/29(水) 03:14:30.11 ID:1oiarfCl0
【今回はここまで更新。お待たせして申し訳ないです】
162 :
以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/29(水) 04:49:09.66 ID:kAkjiubn0
ステージを眺めているだけの観客だった深羽がステージの上に立ち遂に、スクールアイドルに。
そして熱いスレタイ回収
プロローグも終わり本編開始って感じですね
これからまだ未登場の安価キャラも続々出てくるのでしょうか、期待してます!
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/29(水) 12:12:11.72 ID:ZsKDNA8Z0
乙
まだプロローグなのにこのワクワク、これからが本当に楽しみだわい
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/03(月) 23:45:21.51 ID:nz+wzSDtO
おお、更新来てたのか!
これは可能性感じる展開やね、どうなってくか楽しみ
165 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/04/05(水) 01:49:58.12 ID:Vy7uRHaCO
◯
それは今までの子達にはなかった決意。
勝負すると、やってみせると、負けないと、確信を持って断言する彼女らは眩しくて。
圧倒した筈の私達はただ一言。
悠「……勝負の内容と日時を決めるなさい」
真央「いつでも挑戦を受けるから」
それだけ口にして背中を向けた。
周りの生徒達の呆気にとられた顔がチラッと見えた。私たちもほんの少し前はあんな表情をしていたのだろう。
けれど今は違う。
真央「……なにもできないのは、私達」
悠「――戯れ言よ、素人の」
私の呟きに悠が吐き捨てた。
彼女らしくない冷たい口調に思わず身体が跳ねてしまう。
166 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/04/05(水) 01:53:05.33 ID:Vy7uRHaCO
――でも私も彼女と同じ気持ち。
なにもできない。そう言われて腹が立たない人間はいないだろう。何かしてきたのなら尚更。
真央「……」スッ
けどね、ゆーちゃん。私はこうも思うんだ。
今のままじゃ誰も前に進めやしないんだ、って。
今の私達はあの頃と違う。それが間違ってるだなんてことは思わない。でも……ゆーちゃんにはもっと楽しく笑っていてほしいから。
だから――ちょっとだけ。
真央「……今日は、もう帰るね」
悠「え? ええ。また」
簡単な挨拶を済ませ、ゆーちゃんと別れる。生徒会の仕事がある彼女は校舎の中へと入っていった。
私はそのまま前へと進み、先程取り出した携帯電話のアドレス帳を開く。目的のアドレスはすぐ見つかった。
『きょうこちゃん』。連絡するのはいつぶりだろう。元気にしてるといいけど。
真央「……ちょっとだけ、あの子達のこと手伝うね」
変わらずに終わりを迎えそうになっていた私達。そこへやってきた一縷の希望。
あの子達の真っ直ぐさを信じたくなったから。
私は意を決してメールを打ちはじめた。
【2話 おわり 3話に続く】
(あらすじ(
>>109
)の前を1話としてください)
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/07(金) 23:45:13.32 ID:hk0EwbrQO
乙!
ここからどう動いてくのか楽しみだわ
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/08(土) 02:49:57.30 ID:rxD4oouA0
乙!!
久々に見に来たら更新されていてすごく嬉しい。
気長に待つから、ゆっくり続き書いてくれ
169 :
以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/18(火) 04:00:20.92 ID:4zCEWd6A0
待ってるよ〜
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/22(土) 18:17:00.54 ID:y8v3aoA3O
ワクワクしてきた>ω<
171 :
◆vcwOztGGw2
[saga]:2017/04/23(日) 19:06:35.85 ID:n1etrTqb0
前回のラブライブ!
ついにやってきた入学式当日。
スクールアイドル部を新たに作るため、私たち三人で新入生勧誘をはじめる。
晴香「うぅ……ごめんね、芽衣ちゃん……飛島さん……私、もうダメみたい……」ガクッ
芽衣「あ、晴香!? 晴香ー!」
けれども待っていたのは失敗の連続。段々と私達は焦りを積もらせて――
芽衣「……じゃ、奥の手やろうかな」
そこで立ち上がったのが芽衣。彼女の素晴らしいパフォーマンスで勧誘は無事成功、と思いきや、
悠「私達と勝負をして、勝った方のグループをこの学校のスクールアイドルとして認める」
私達の想像以上にこの学校は何かを抱えているらしかった。
先輩との勝負。無謀な挑戦。ほぼゼロに近い勝算に、意外にも乗り気な人物が。
深羽「――宣戦布告!」
それが私。
深羽「芽衣は――私達は絶対負けない!」
ついさっきまで見学者だった私は、その場の勢いでスクールアイドル部への入部、勝負することを決めたのだった。
……ほんと、これからどうなるんだろう。
【ルート情報】
・前回選択肢が3話に影響します
・主人公に対する評価が変化します
172 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/04/23(日) 19:11:31.81 ID:n1etrTqb0
前略。
青春とはいつだったのか。おそらく多くの人が思い浮かべる疑問。その答えを私は早くも手にしてしまったような気がします。
理由の分からない入学式の異常現象に構わず突っ込み、感情のまま自分の身を不安定な場所に持っていき、挙句の果てに身の丈以上の敵に啖呵をふっかけ――嗚呼まさに若気の至り。
望郷の思いが如く、つい昨日の自分を懐かしく微笑ましく思う自分がいると同時に、その無謀さを恥じてしまう私もおりまして。
その感覚はさながら空を浮遊するよう。
明日からの私は果たしてどこに向かうのやら。いつどこへ風が吹くのか。飛ばされてしまうのか。先行きすら見えず大変不安でございます。
深羽「はぁ……」
なんて、慣れない言葉遣いで思考を延々と繰り返していた私は思い身体を起こした。
173 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/04/23(日) 19:18:15.18 ID:n1etrTqb0
朝である。
入学式から翌日。色々あって頭が追いつかない状態だけれども、今日も学校に行かなくてはならない。
深羽「……正直凄まじく気が進まない」
それなりに有名な先輩スクールアイドルに喧嘩をふっかけた素人。私がどんな評価をされるかなんて、自分自身でしっかりと理解している。
……とても学校に行く気になんてなれない。
深羽「でもここで行かないのはもっとまずいことになるだろうし」
今なら無謀な生徒で済む。けどここでサボれば無謀な上に臆病で、卑怯な生徒だと思われること間違い無し。
それに行きたくないと言っても、ただの気分的な問題。私達は当然の権利を使ったまでで、今のところ世間のルール的には何の問題もない。
つまり学校に行かないだとか、逃げの姿勢をとることは不自然で。あまりしたくはない。
深羽「……思考が延々ループ」
ため息。行かないといけないのは分かっているし、行こうとも思っている。
でもいまいち勇気がわかず、あれこれ考えるだけ。どうにも周囲の目が気になってしまう。これも平坦な人生を歩んできた結果か。
174 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/04/23(日) 19:23:43.71 ID:n1etrTqb0
深羽母「深羽ー。友達が来てるわよー」
深羽「……え?」
ぼんやりと壁を眺めながらついつい考え込んでいると、部屋の外からそんな声が聞こえてきた。
やたら楽しそうな声である。友達? こんな朝早くに……芽衣かな?
深羽「とりあえず支度しないと……」
寝起き姿を見せるのは恥ずかしい。引きこもりたくなる気持ちを振り払い、私はベッドから降りた。
175 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/04/23(日) 19:40:38.87 ID:n1etrTqb0
○
深羽母「いやー、アイドルやってるだけあって流石に可愛い子だねぇ」
晴香「そ、そんなことは……。それに、私スクールアイドルはまだ――」
深羽母「ああもう謙虚っ。うちの子にも見習ってほしいわ、この可愛げのあるリアクション!」
学校へ行く準備をあらかた済ませて一階の玄関前、居間へ行くとそこで晴香がお母さんに捕まっていた。
頭のてっぺんを優しい手つきで撫でられ、ピンク色の髪を揺らしながら物凄くあたふたしている。ふわふわと女の子らしく柔らかい雰囲気の彼女は、私のクラスメイトその1。今日は昨日と少し変わって、ツインテールを作っているゴムに花みたいなアクセサリーが付いている。
私よりもはるかにアイドルらしくて、守ってあげたくなる小動物的な可愛さを持つ子である。
さて、そんな彼女が何故一人で私の家へ?
てっきり芽衣だと思っていた私は面食らってしまった。
深羽「おはよう。なにしてるの?」
深羽母「あぁ、やっと来た。おはよう。ご飯置いてあるから食べなさい」
晴香「あ。飛島さん。おはよう」
撫でられ顔を赤くさせながら晴香が挨拶をしてくれる。母親さんは娘に興味がないのか、全然顔を合わせてくれる気配がない。
深羽「ん、分かった」
深羽「……」
二人の隣を歩いて、居間の時計をチラ見。時刻はいつも通り。朝食をのんびり食べている時間だ。晴香の家がどこだかは知らないけど、起きて準備してここまで来るとなると、それなりに早起きしてきたのだろう。
とりあえず、いただきますと一言。朝食の白米、お味噌汁、瓶入りの鮭フレークという簡単なメニューを見、瓶に手を伸ばす。
朝はあんまり食べる気にならないしこれくらいがちょうどいい。
176 :
◆XxLp/boApQ
[sage sagas]:2017/04/24(月) 04:19:35.79 ID:TFpog3VcO
深羽「――晴香、今朝はどうしたの? 一人で私の家に来て」
晴香「えっ? あ、ええ――ちょっと話したいことがあって。迷惑……だったかし」
深羽母「そんなことない!」クワッ
深羽「……私も」
お母さん。撫でるのを止めたのはいいけど食い気味で全力で会話に入ろうとするのは止めてください。
晴香「そ、そう。よかったです、おばさん」
流石に晴香も引き気味である。
それにしても話したいこと……ね。それ以上は言わないし、多分二人きりで相談したいことなのだろう。
なんとなく察した私は朝食をいつもより早めに食べ進める。
友達の相談となれば眠い朝でも話は別だ。
それからすぐに私達は登校の準備を整え、絡もうとしてくる面倒な母親を振り払い、家を出た。
晴香や小さくて可愛い芽衣が今度家に来る時は、事前に連絡するよう言っておこうと心に誓って。
177 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/04/24(月) 04:21:10.77 ID:TFpog3VcO
深羽「……やっと出られた」
晴香「とても家から出たとは思えない台詞よね……あはは」
家から出て学校に向かう。
通学出勤、掃除にゴミ出し。朝は忙しく、道を歩いている人が多い。住宅街ともなると、あちこちから人の声が聞こえてくる。
深羽「それで、話ってなに?」
家では聞けなかったけど、ここなら話してくれるだろう。晴香に興味津々なおばさんはいないし。
晴香「あ、うん。芽衣ちゃんと飛島さんってリ・バースと勝負するのよね?」
ちらっとこちらを見て尋ねる晴香。話といえばまぁ、それが来るのは分かっていた。でも一応彼女は部外者なわけで。関係ないと言える立場で、わざわざ私と二人で何か話そうとするのだから律儀というか。
178 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/04/24(月) 04:23:05.99 ID:TFpog3VcO
深羽「うん。スクールアイドルをするのに必要なら勿論」
晴香「そう、だよね」
晴香「……」
……。どうしたというのだろう。晴香はそこで黙ってしまった。
前髪をいじりつつ、私は首を傾げる。勝負に何か? ……うーん、分からない。繊細そうな子だし、私には考えが及ばない悩みがあるのだろうか。それとも単に負けそうなのが心配だとか……結構有り得る。私も心配だから。
晴香「っ……」
色々考えて黙っていると、不意に晴香が顔を上げた。何か切羽詰まったような表情で私を見、口を少し開いて――閉じる。何かを言いかけたようだ。
深羽「晴香?」
晴香「な、なんでもない。勝負するなら飛島さん含めて衣装が五着は必要だよね。頑張らないと」
思いきり早口。露骨なほど何かを隠そうとする彼女に、私は追及する気になれなかった。
嫌がるところに無理矢理足を突っ込むわけにもいかないし。
179 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2017/05/08(月) 00:51:15.36 ID:YDfg3nLI0
深羽「ね、晴香。悩みがあるなら話――」
ドスの利いた声「――見つけた」
心配していることくらいは伝えておこう。勇気を出して私が言いかけたその時、聞き慣れない声と共に一人の女性が現れた。
フラッと横の道から何気なく何気なく出てきた彼女。長い茶髪に、脚が見えない丈の制服のスカート。黒いセーラー服の上にスカジャンを羽織り――な、なんだ、あのアナログな不良さんは。
刺々しい見た目に驚き立ち止まる私たちを彼女は睨む。大人なお姉さん的な顔立ちで、綺麗な人なのに威圧感が……。
晴香「飛島さん……知り合い?」
深羽「し、知らない……」
二人して蛇に睨まれた蛙状態。さっきとはまた違ったシリアスな空気で、私らは視線だけ合わせる。
朝、知らない不良に見つけたと声をかけられる。すごく怖いことだというのが分かるだろうか。
何かされる? どうして?
完全に真っ白になってしまっている頭。そのまま数秒動けずにいると、睨んだままだった不良が不意に口を開いた。
見た目と同じく綺麗で、でも凄みのある声で彼女は一言。
180 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/05/08(月) 01:06:08.88 ID:YDfg3nLI0
睨む少女「おはよう」
なんかもうただの挨拶が怖かった。
第二声で何故挨拶をチョイスするのか。それが第一声でいいのではないか。
ツッコミの血が騒ぎ、ずっこけたくなるけれどグッとこらえる。
睨む少女「今日はお前に話があってな」
不良の視線が私をとらえ――え? 私?
深羽「あの、初対面じゃ……」
睨む少女「あぁ。頼まれ事をされてな――スクールアイドル、やるんだろ?」
深羽「え?」
な、なんでそれを!?
うちの生徒……なのは違うか。制服が違うし。ならなんで?
サスペンスから最早ホラーと化している現在の状況。そこへ場違いなほど賑やかな足音が聞こえてきた。
181 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2017/05/08(月) 01:49:25.76 ID:YDfg3nLI0
騒がしい声「あ、いた! コラー! 恭子! 今日こそ練習出てもらうんだからね!」
睨む少女「――っ! やべっ」
彼女がやってきた横道の方、遠くから聞こえてきた声に不良――おそらく恭子がギクッと身体を跳ねさせ反応する。
余程捕まりたくないのだろう。私たちに何も言わず彼女はすたこらと逃げ、
騒がしい声の少女「待ちなさいっての! 金髪不良ー!」
その後を追う、赤髪の女の子が慌ただしく走っていく。
二人の少女があっという間に見えなくなり、後にはぽかんとする二人の女子高生が残された。
晴香「な、なんだったの……?」
深羽「さっぱり分からない」
なんで私のことを知っていたのかも、声をかけて何をしようとしていたのかも、彼女が何者なのかも何もかも分からず。
うーん……状況を考えるに、やさぐれたリ・バース三年生が刺客を送り込んできた――とか? いやいや、でもそこまで闇の組織化はしてないよね?
深羽「ん?」
悪役顔した三年生とOBの先輩らを思い浮かべる頭をブンブンと振りため息。
するとさっきまで恭子が立っていた場所に一枚の紙が。
深羽「なんだろ――」ヒョイ
『ターゲット!
オレンジ髪の暗そうな女子。
やる時はやる? スタイル良い
見つけたら始末』
深羽「……」ポイッ
見てない。私は何も見てない。
晴香「あれっ? どうしたの、飛島さん?」
深羽「なんでもないよ。さっ、早く行こう?」
晴香「え、ええ」
さっ、今日も学校頑張ろう☆
※今回はここまでで
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/08(月) 02:16:06.33 ID:4Ljw37VP0
よかった。楽しみにしてます
183 :
以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/08(月) 04:57:29.48 ID:ByC4vd7N0
恭子さんインパクトあるなぁww
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/14(日) 04:36:57.55 ID:cLkSA5fX0
お疲れ様です。楽しみしてます〜
185 :
以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/22(月) 23:50:20.24 ID:vgrui2Bp0
まだ〜
186 :
以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/17(土) 17:40:16.93 ID:K2gQ7+Th0
あと少して2ヶ月か・・・
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/17(土) 23:47:16.49 ID:EL/uJQlE0
がんばってほしいヽ( ;´Д`)ノ
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/06(木) 16:51:34.08 ID:Fy/PqxLGO
待ってる
189 :
以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/07(月) 12:32:32.80 ID:FJKgjm330
まだかな〜
190 :
以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/06(水) 18:26:40.33 ID:nSQO03dbO
エタってる〜
191 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2018/01/04(木) 11:38:14.29 ID:8Yd2JhWKO
朝の件は何だったのか。
対決、我が校のスクールアイドル事情のあれこれに加えて謎の不良。そろそろ私の心労がキャパを越えてくるのではないかと思う今日この頃。
物思いに耽り続けいつの間にか午前の授業は終了。驚愕した私である。ノートはとってたみたいだけど絶対頭入ってないね。復習しておかねば。
に、してもだ。
美羽「なんでこう、問題って続くのかな……」
問題、試練、エトセトラ――の悩み事。
数日前はそんなことに頭を悩ませるなんて思ってもみなかったのに、今や渦中に飛び込んで絶賛苦悩中。
悩んで苦しむことは分かっていた。でも、その最中に新たな問題が飛び込んでくるとは。流れを起こして中心にトラブルが引き寄せられて。本当、渦潮みたいだ。
ため息を吐く。ふと視線を前に向ければ、見知った人物と目が合った。
芽衣「や、深羽」
晴香「お昼一緒にどう?」
ちょうどこちらへ辿り着いた二人はそれぞれビニール袋と丁寧に包まれた弁当箱を私の机の上へ。私が答える暇もなく近くの椅子を移動させ、いそいそと食事の準備をはじめる。
192 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2018/01/04(木) 11:39:19.15 ID:8Yd2JhWKO
深羽「……なにかあるの?」
芽衣「うん。昼休みに勧誘しようと思って」
ビニール袋からコンビニのパンを出した芽衣が、目を輝かせて静かに答える。
勧誘。リ・バースと戦うためにはまずメンバーを揃えなくては話にならない。細かな勝負方法はこちらが決めていいような口振りだったけど、五人――つまり部活と認められる人数以上の部員がいて初めて勝負することができる。
深羽「勧誘、かぁ……」
晴香「厳しそう……。昨日も結局勧誘できなかったから」
芽衣「まぁ……」
ずーん、と空気が重くなる。
私もお弁当を出して食べ始めるけど……とても楽しくランチなんて気分にはなれない。
新入生を勧誘するなら昨日が絶好のチャンス。今日明日としばらく部活の見学会があるものの、それは部活として活動している部にのみ関係するイベント。私たちに出る幕はなく。
芽衣「こほん。ま、一人ターゲットはいるからさ。放課後はその子のスカウトに使うとして……お昼は新入生を無差別勧誘」
晴香「あれ? 二年生はいいの?」
芽衣「んー。希望あるのは一年生かなと思って。二年生はスクールアイドルの決まり今まで守ってたわけだし」
芽衣が淡々と答えると、晴香の表情が若干曇った。確かに、一年生より長くルールを守っていた二年生より入ってきたばかりの一年生に希望を賭けた方が賢いか。
声をかければすぐ加入してくれそうな二年生もいるのだが……私の勘違いだったら嫌だし。
193 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2018/01/04(木) 11:40:15.67 ID:8Yd2JhWKO
深羽「分かった。お昼はいいとして……そのターゲットって?」
芽衣「あぁ、うん。ちょっと待って」
いつも通りにクールな口調で落ち着いて答える芽衣。けどその目は一層輝きを増し、携帯を取り出す動作は慌ただしい。はしゃいでいることが見て知れた。
芽衣「……っと。この子。今朝見つけた金の卵だよ」
深羽「ふんふん……わっ」
晴香「ほえぇー」
携帯の画面いっぱいに映ったのは一枚の写真。校門前と思しき場所でピースしている女の子が撮られている。とりあえず盗撮じゃないみたいで安心した。
すごく綺麗な子だった。反射的に驚きの声が出てしまうほどに。サラサラしたロングの金髪に、まるで作られたみたいな美しい顔立ち。撮影に乗り気じゃないようでブスッと無愛想な表情をしつつピースを作っているけど――そんなシチュエーションでも神秘的なほど綺麗で可愛らしい。
同じ制服を着て同じ通学鞄を持っているというのに、この雰囲気の差。外国人、なのかな? 私の学校の中で第一印象のインパクトがこれほど強い人物はいただろうか。
こんな子が歌って踊って笑顔を見せて……間違いなく人気が出る。すごいことになる。
194 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2018/01/15(月) 05:10:19.46 ID:kP9MRK6k0
芽衣「アイドルをやるからにはやっぱり見た目は大事だし、この子楽器やってるみたいだし、力になってくれそうじゃない?」
晴香「勧誘……こ、このレベルの女の子を……」
晴香がぶつぶつと呟く。私も正直戸惑っている。芽衣はかわいいし、私も決して悪くはない……と思いたいけど、高嶺の花すぎないかなあ、なんて。
芽衣「目標は高くいかないと」
深羽「……スカウトできそうなの? すごい面倒そうな顔されてるけど」
芽衣「はは……。駄目そうかも」
……だよね。楽器やってるなら尚更だろう。
芽衣「でも粘るよ。部活動やらないらしいから」
晴香「お嬢様っぽいし家とかで楽器やるかもしれないよ?」
深羽「……この子も可能性低そう」
うん、また暗くなった。
……本当、私達のやろうとしてることの難しさといったら。
今日の勧誘でちょちょいとメンバー増えるといいんだけど……。
芽衣「ま、頑張っていこう。昨日の出来事もあるし、勝負することは知られてるから」
深羽「……うん」
晴香「やるしかないってことね」
黙々とパンを食べる芽衣。暗くなっていた空気が彼女の真っ直ぐな言葉で元の雰囲気を取り戻す。
口調は淡々としてるし、表情もあんまり変えない彼女だけど、私達を引っ張って挑み続ける姿に励まされる。流石は我らがリーダー。小さいのに頼れる女の子だ。
芽衣「深羽、また何か失礼なこと考えてない?」
同じく無表情気味な私の心を読む技術もまこと恐るべし……。
195 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2018/01/15(月) 05:11:34.17 ID:kP9MRK6k0
○
早めにお昼を済ませて一年生の教室が並ぶ階へ。
第一、第二、第三と校舎がある我らの高校は第一に昇降口、職員室や事務室、三年生の教室。その奥、第二校舎に二年生の教室。更にその奥、第三校舎に一年生の教室……といった具合の、年齢が上がるにつれて歩く距離を減らしていくシステム。
ただ科学室や音楽室などは第二第三にあるため、ご年配に優しいのは登下校のみ。はてには体育館、グラウンドは小さな川を挟んで向こう側と、優しいのやら優しくないのやら。
中途半端な都会田舎な高校はその辺も曖昧である。
深羽「さてと……どうする?」
お昼休みということもあって、廊下は賑やかだ。
ガヤガヤと騒がしい中、階段の踊り場で私たちは小さく固まって作戦会議。この場所で勧誘……あらゆる方向から人目があって恥ずかしい。昨日は同じ目的の人が何人もいたけど、今日はそうでもないし。
芽衣「まずはコレ」
と、芽衣が手にしていたダンボールの板――に付いていた紐を私の首にかける。『スクールアイドル部 部員募集 集え挑戦者』……やたら暑苦しいフォントで書かれた看板である。
晴香「……こ、こんなので集まるの?」
芽衣「フッ、大丈夫」
心配そうに見る晴香に、芽衣はクールに微笑む。小さな子供が背伸びしたかのような仕草に、頭を撫でたくなる衝動に駆られた。ぐっと我慢我慢。
196 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2018/01/15(月) 05:12:38.79 ID:kP9MRK6k0
芽衣「深羽はもう有名人だし。ほら、アレ見て」
コレの次はアレ。何だろうかと、視線を芽衣が指で示した先を見てみる。
深羽「え……ええっ!?」
そこには思わずびっくりする物が。
『リ・バースへ挑戦状!?』。そんなタイトルの新聞が踊り場の壁に貼り付けられていたのだ。
晴香「はぇー……すごい。完璧に小説化されてる」
晴香が感嘆を漏らす。
パッと見は新聞で、最初の数行もそれらしい感じなのだけど……大部分は昨日一連の出来事を見ている誰かの視点で書かれた小説であった。
やたら上手くて、昨日体験したことだというのに引き込まれてしまう。
宣伝としてすごく有り難い。有り難いんだけど……なんで勧誘前の教室で集まったところの会話も書かれてるのだろう。
深羽「何これ」
芽衣「生徒会新聞らしいよ?」
晴香「何やってるんだろう、生徒会」ボソッ
一日で高クオリティのノベライズ化とは……何が生徒会を突き動かしたのだろうか。この学校が心配だ。
深羽「でもこれで有名になるなんて……」
言いかけて、私は気づく。廊下、階段――近くを通る生徒が私のことをチラチラ見ていることに。
中には数人で話していて、私と目が合うと逃げ出す女の子がいる始末。
197 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2018/01/15(月) 05:13:28.25 ID:kP9MRK6k0
芽衣「今気づいた?」
深羽「……ウン」
そりゃあそうだよ……先輩に堂々と喧嘩ふっかけた二年生が出てきただなんて聞いたら間違いなく注目される。それも今をときめくスクールアイドルってジャンルで、部の存続を賭けた決闘――嗚呼、なんてエンターテイメント。張本人は気が気でないのだけれど。
からかうような笑みを浮かべている芽衣へ、私は力無く頷いた。
晴香「気づいた? えっと、何に?」
芽衣「深羽の注目度さ。今日の勧誘は深羽頼みだから頑張って」
晴香「注目……? あ。私にも分かった」
生徒の視線と新聞。交互にそれを見、晴香もようやく察したらしい。大人しめな彼女はススッと私から距離をとった。
晴香「ファ、ファイトっ。飛島さん」ガッツポーズ
……しょうがない。本来なら目立つようなことはしたくないけど、アイドルをやる以上そんなこと言ってられないし。昨日は晴香に頑張らせたし。今度は私の番か。
深羽「分かった、頑張ってみ――」
??「あ、あの……」
やってみよう、なんて思い承諾しようとした瞬間声がかかる。控え目な、晴香を彷彿とさせる大人しそうな印象の声である。不意を突かれたけれども早速私の出番のようだ。意気揚々と振り向く私。
198 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2018/01/15(月) 05:14:45.93 ID:kP9MRK6k0
深羽「はい、何ですか?」
歳下の一年生の教室が近いとはいえ一応見知らぬ人。敬語を使い対応。声をかけてきたのは声の印象通り、大人しそうな女の子。眼鏡をかけたしっかりしてそうな子で、よく見るとかなりかわいい。
暗い、黒髪に近めな緑色の髪を後ろは短めに切り揃えていて前髪は目の辺りの長さで自然に流している。おでこをちょっと見せるように髪を上げているバツ印に交差してとめてあるヘアピン、眼鏡と小物が目を引くお洒落さんだけど、色が大人しいからかパッと見は結構地味めだ。
彩星の制服は上下共に黒いセーラー服。襟やスカートの裾に白いラインが付き、胸に学校のマークが入ったシンプルな制服である。
一年生は白。二年生は赤。三年生は黒。それぞれ異なる色のリボンを付けており、そこで学年は区別できる。
この子は……一年生みたいだ。ピカピカのちょっと大きめな真新しい制服が初々しい。
私に話しかけたということはアイドル部志願、だろうか。
眼鏡の子「あ、あの……その」
深羽「は、はい……」
眼鏡の子「……」モジモジ
深羽「……」
……ど、どうしよう。沈黙が。え? 私が何か話すべき? しまった、会話の自主性が全くない私に勧誘は無理があったか?
199 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2018/01/15(月) 05:15:55.07 ID:kP9MRK6k0
芽衣「――二人とも黙っちゃったよ」
晴香「あはは……」
それをちょっと後ろから見てた二人が、苦笑しつつ前へ。私の横へ並ぶと女の子の姿を見る。すると声に反応して、女の子が下へ向けていた視線を上げた。
茶色の瞳、ぱっちりとした目は芽衣に向けられており、心なしかワクワクしてるように見えた。芽衣の知り合いかな?
芽衣「ん? 入部希望者だよね?」キョトン
……どうやら知り合いではないみたいだ。
晴香「あれっ? あ、君……昨日、見てた人よね?」
代わりに反応したのは晴香。昨日? 見てたってことは声はかけてこなかったらしい。
これはやはり入部希望の線が濃い。今日はまだ勧誘を始めてもいないというのに幸先がいい。
眼鏡の子「えっ? ぁ、はい……」
深羽「興味があるなら、是非――」
声が大きな子「あーっ! 見つけた!」
200 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2018/01/15(月) 05:17:00.63 ID:kP9MRK6k0
突然響く声に、多分この場にいた四人全員驚いただろう。爆竹でも投げつけられたみたいに至近距離で炸裂した大声にビクッと身体を揺らし、みんなが会話を中断してそちらを見る。
芽衣に負けず劣らずちっさい女の子が、キラキラ輝く目を私達へ向けていた。学年は一年生。緩めに制服のリボンを結び、セーラー服の上から灰色のパーカーを羽織っている。検査に引っ掛かりそうなアレンジだが、だらしない印象はなく、むしろスポーツマン的な活発で爽やかなイメージが強い。
髪は例の勧誘ターゲットよりもちょっと暗めの金色で短めのポニーテール。癖があるのかこめかみ上ぐらいの一箇所がぴょこんと跳ねている。
明るさ元気さに溢れた大きな目、まだまだ子供っぽい幼めな顔立ち――おぉう、この子もレベル高い。芽衣がクールなかわいい猫タイプだとすると、この子は小型犬的な人懐っこそうな可愛らしさがある。
さて、鼻息荒く若干興奮気味な彼女は尻尾みたいに髪を揺らして一歩二歩前へ。そしてそのまま足を速め――あ、あれっ? 突進してきてない?
芽衣「……あ。まさか……山茶!」
ん? 知り合い?
山茶「うん! ひっさしぶりー! 芽衣!」ガバッドゴッ
芽衣「ほんと久しぶりだけど止ま――ぐえっ」ドサッ
あ、飛びつかれて潰された。
……あまりに登場から目まぐるしいから理解が追いつかなかったけど、知り合いで、激しめなボディランゲージするくらいには仲がいいみたいだ。
ふふふ、これはこれは……またメンバーが増えそうじゃないの。
山茶、って呼ばれてたよね。山茶に眼鏡の子で一気に二人も――ん?
201 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2018/01/15(月) 05:18:17.64 ID:kP9MRK6k0
眼鏡の子「……」
どうしたのだろう?
じゃれつく山茶に引き剥がそうとする芽衣。二人の微笑ましいやりとりを見つめながら、眼鏡の子は悲しそうに胸の前で自分の手を抱くように握る。
そんな顔するような場面でもないような……。芽衣は割と迷惑そうだけど。
晴香「あ、あの! どうしたの?」
もしかして飛びつきからのじゃれつきが、ゾンビ映画を彷彿とさせたり――なんて、くだらないことを考えていると晴香が眼鏡の子へと声をかける。
ちょっと意外だ。今までの彼女なら困った感じで様子を見てると思ってたんだけど。
眼鏡の子「っ! な、なんでもないですからっ。――ごめんなさいっ」
声をかけられ、ハッとした女の子。彼女は困った様子で晴香と芽衣達の間で視線を泳がせ、慌ただしく階段を上がっていってしまった。
見るからに逃げたけど……本当にどうしたのだろうか。
芽衣「はー……やっと離れた。あれ? さっきの子は?」
晴香「逃げちゃった。何かあったのかも」
ようやく立ち上がり、山茶を落ち着かせた芽衣が辺りを見回す。けれどまぁもう既に彼女は去った後。見つかるわけもなく。晴香がため息混じりに答えた。
山茶「え? あ。もしかして私、乱入しちゃった?」
晴香「あはは、ちょっと、ね。……でも、他に理由があるような」
芽衣「次見かけたら声かけようか。追いかけたいけどそろそろお昼休み終わりそうだから」
芽衣「山茶、また放課後に話そう」
山茶「りょーかい! じゃ、またねー」
ブンブンと手を振り、山茶が元気よく走り去る。第一印象と変わらず元気の塊みたいな子だ。
202 :
◆XxLp/boApQ
[sage saga]:2018/01/15(月) 05:19:13.27 ID:kP9MRK6k0
芽衣「さて……」
深羽「……」
芽衣「戻るよ? 深羽、どうかした?」
深羽「……うん。少し、引っかかってることが」
晴香「ひ、引っかかってること?」ゴクリ
芽衣「……。うん、言ってみて」
教室へ帰ろうとしていた二人が足を止め、真剣な顔で私を見る。
私はちょっと引っかかることがあった。さっきから気になっている、とある一つの疑問。それを解消せずにはいられなかった。
数秒、間を空け、私は重い口を開いた。
深羽「……私全然喋ってなくない?」
芽衣「……」スタスタ
晴香「……」スタスタ
深羽「ちょっと、リアクションして」
待って損したと言わんばかりに無言で歩き出す二人に、私は慌ててついていった。
自分から喋り出す練習しておかないと……。台詞遮られ率が凄まじい。
203 :
◆XxLp/boApQ
[saga]:2018/01/15(月) 05:20:26.41 ID:kP9MRK6k0
○
それからなんやかんやとお昼休みが過ぎて午後の授業。
2科目が終了し、帰りのホームルームが済むとまた芽衣が晴香を連れて――
芽衣「やほー、深羽」
深羽「ん……あれ? 晴香は?」
芽衣「あぁ、今日は用事あるから別行動だって」
連れて来なかった。
尋ねると、芽衣は不思議そうな顔をして答える。用事あるから帰る、じゃなくて用事あるから別行動……。ひょっとするとスクールアイドル部のために何かしてくれてるのかな。
芽衣「深羽はどうする? 今日は昼休みの子――山茶を勧誘して、例の女の子の勧誘もするつもりだけど」
深羽「えっ? うーん……」
まさかそれを問われるとは。昼休み、既に私へ放課後の予定を話していたし、改めて訊かれるとは思ってもいなかった。
……もしかして晴香についていってほしかったり?
うーん……どうしよう。
1 芽衣に付き合う
2 晴香を探す
↓1
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/15(月) 06:39:44.73 ID:1HjPmOzaO
2
205 :
以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/19(金) 08:45:32.54 ID:h/1WxqIz0
復活してる〜
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/03/06(火) 16:08:05.86 ID:6PMV/BQu0
復活してる!!がんばれー!
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/01(金) 03:45:11.26 ID:4X9vLY4Y0
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