紗南「仮面ライダーサナ」

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74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 19:07:10.28 ID:wE4VPC8M0
お待たせしましたー。今夜9時ごろに4話が更新できると思いまーっ
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:16:58.18 ID:wE4VPC8M0




第4話:二人はnot friendly
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:18:22.43 ID:wE4VPC8M0
「ワンツースリーフォー、ファイブシックスセブンエイ」

御白プロダクションのあるレッスンルーム、緑ストライプのトレーニングウェアを着た女性が、リズムを刻みながら二人のアイドルのダンスレッスンをしていた。

「はい決めポーズ!……よし、だいぶ様になってきたな。これなら来週のミニライブには間に合いそうだ」

その女性…御白プロのダンス専門トレーナーは満足げに頷いた。

「はぁーっ…」

「…ふぅ」

決めポーズのままで固まっていた紗南とありすは同時に大きく息を吐き、その場に座り込んだ。

「お疲れのようだね」

キィ、とレッスルンルームの扉が開く。

「あ、飛鳥さん。おつかれさまー」

「…何か用ですか」

「フフッ、差し入れだよ
 全くボクは嫌われているようだね」

スポーツドリンクを差し出す飛鳥はそう言いながらもまんざらでもなさそうだ。

「ねえ、あんずの分は?」

「うわっ」

レッスンルームの隅でゴロゴロしていた杏がむくりと起き上がって言った。

「…なんだ、双葉さんもいたのか。見かけなかったから居ないと思って持ってきてないよ」

「えー…まあいいけど。あと、そんなかしこまらずにあんずでいいよ〜」

杏はぶーと頬を膨らませるが、それほど不満ではなさそうだ。

「私達三人は一つのユニットなんですから、一緒にレッスンするのは当然です」

「ゲーマーズ.incって言うんだよ!」

「ゲーマーアイドルのユニットってコンセプトなんだってさー、あんずはゴロゴロしてるほうが好きなんだけどな〜」

「へぇ…」

「…そういえば、二宮も来週のライブに出るんだったな?」

トレーナーが飛鳥に訊ねる。

「そうなんですか?」

「ああ、キミ達と同じルームに入って初めてのお仕事さ。
 フフッ、奇遇だね」

「へー、お互い頑張ろうね!」

「ああ…ところで二人とも、もうレッスンは終わりだろう?少しいいかな?」

紗南とありすは顔を見合わせると、飛鳥と連れ立ってレッスンルームを後にした。

「…なんだ、随分仲がいいなあの三人は、いいのか双葉、付いていかなくて」

「別に?子供同士秘密の話くらいひとつふたつあるでしょ」

「お前も子供だろう…あと、次のレッスンは本番前最後だからな、お前にもみっちり踊ってもらうぞ」

「じゃ、あんずはこれで〜」

「コラ逃げるな!」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:20:02.78 ID:wE4VPC8M0
「…わざわざ連れ出して、何ですか。と聞くまでもないですよね」

「バグスターの事?」

「ああ、昨日キミ達と別れた後、少し調べてね。
 確かに、バグスターの被害にあっているのはうちのアイドルだけのようだった」

「待ってください、どこでそれを調べたんです?誰も覚えていないのに」

ありすがすぐさま突っ込んだ。

「…前も言ったと思うけど、ボクにはちょっとした協力者がいるんだ」

「例の、白衣の少女ですか?誰なんですか、名前くらい教えても」

「悪いけど言えないよ。…じゃあこれだけ言っておこう、彼女はとある理由でバグスターに追われている。
 ボク以外とは会うつもりは"今のところ"無いらしい」

飛鳥は「今のところ」を強調して言った。

「…つまり、今後会える可能性も」

「まあ、あるんじゃないかな。これでこの話は終わりだ、奴らバグスターはどこに潜んでこの話を聞いているかわからない。
 奴らに関しては分からないことだらけさ、ボクも…彼女もね」

「…だから、あなたは信用ならないんです」

ありすは不機嫌そうに言った。

「一緒に戦ってほしいなんて言いながら、自分の持っている情報は共有しようとしない…そんな相手と友人になんてなれません」

「バグスターに関してまだ解らない事だらけなのは事実だよ…まあ、無理に信用しろとは言わないよ。隠し事があるのも事実だしね」

「開き直ったって無駄ですよ」

「まあまあ二人とも…」

紗南がいよいよ仲介に入る。先の思いやられる関係だ。

「…話はそれだけですか」

「…情報共有のために、連絡先の交換くらいしようかと思ったんだけど、この調子だと駄目そうだね」

「あ、アタシとなら…ほら、アタシとありすちゃんはユニットだから基本一緒にいるし…」

「橘と呼んでください」

仏頂面のありすを置いて、紗南と飛鳥は連絡先を共有する。

「…そもそも、私たちは本来アイドルですよ?こんなことに時間を割かれるのは良くないと思います」

「じゃあバグスターの動きを放置するのかい?」

「っ…そうは言ってません。私は文香さんを守ると決めた…」

「あれ、それ言っちゃっていいの?」

紗南のツッコミに、ありすは「あ」と小さく声を上げた。
飛鳥がフフッと笑う。

「それも"彼女"から聞いたよ。鷺沢さんを助けたそうじゃないか」

「…どこまで知ってるんですか、その"彼女"は」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:21:13.75 ID:wE4VPC8M0
「さあ?ボクは話を聞いただけさ」

「ともかく、私は文香さん…いえ、ここにいるアイドル全員が私にとって大切な仲間です。それを害するバグスターは、許せません。
 だから、戦います。あなたはどうなんですか飛鳥さん、戦う理由はあるんですか」

ありすの言葉に、飛鳥の顔からフッと笑みが消えた。

「…?」

「戦う…理由、フフッ、さあ、楽しそうだったから…かな」

だがそれも一瞬、いつも通り不敵な笑みを浮かべて飛鳥は答えた。

「…本当に、あなたは信用ならない人ですね」

「…アタシも、特に理由がない…かなあ」

「ちょっと、紗南さんまで!」

「いや…そういうのじゃなくて
 アタシもさ、ここに来ていろんな人やPさんに会って、今までゲームしか知らなかった自分の世界が凄い広がったんだよね。
 それで、それが当たり前になっちゃった、今更もうゲームだけの世界には戻れないもん。…だからアタシは、その当たり前を守るために戦う…って感じ?理由がないんじゃなくて、全部が理由って言うのかな」

「…凄いいい事言ったはずなのに、煮え切らない感じで全然感動しません」

紗南はてへへ、と頭を掻く。

「ともかく!あなたの事はまだ信用してないんですからね!」

ありすは機嫌悪げにずんずんと廊下を先に進む。
と、唐突にその足が止まった。

「?…どうし」

飛鳥は訊ねようとしたが、その理由はすぐに分かった。
廊下の先から、見慣れた一人のアイドルが走ってきたからだ。

「ゼェ…ハァ…」

「…杏さん?どうかしたんですか」

先にルームに帰っていたはずの杏が、なぜか息を切らして走ってきたのだ。

「あ、ありすちゃん…えっとね…ゼェ…えっと…ハァ」

「落ち着いてください、らしくないですよ。杏さんがそんなに慌てるなんて」

「…うん…えっと……なんだっけ?」

ありすはズルッ、と肩を滑らせる。

「もう、しっかりしてくださいよ」

「うん…なんか、怖いもの見た気がするんだけど…よく覚えてない…」

その言葉に、飛鳥がピクと反応した。

(…杏さんは、"適合者"ではないね?)ヒソ

「え?あ、うん…」

隣にいる紗南に一言確認すると、タッ、と走り出した。

「ちょっと!」

ありすが慌てて後を追う。

「…何?なんなの?」

「何でもないよ!ちょっとー!飛鳥さん!ありすちゃん!待ってー!」

最後に紗南が二人を追って走り出す。

「…変なの」

杏は頭をぽりぽりと掻いてそれを見送った。

「…しかし、なんでよく思い出せないんだろう…」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:23:49.81 ID:wE4VPC8M0
―――…

「っと!」

「きゃっ!」

自分たちのルームに入った途端、飛鳥は仰々しい動きで立ち止まり、ありすは思わずつんのめった。

「もー、二人とも急に走り出して…うわ」

最後に来た紗南が、眼前を見て思わず声を上げた。
ルームの中央に、巨大なオレンジ色のキノコが鎮座していたのだ。
キノコはドクドクと拍動しながら、その根元からオレンジの菌糸を伸ばして部屋中を覆いつくしていた。

「…また、珍妙なバグスターが現れたもんだね」

飛鳥がガシャットをキリキリと回しながら取り出す。

「…これ、まさか輝子さん?」

ありすの呟きに、飛鳥の動きが止まる。

「だよね、キノコだし…」

「…成程、宿主のイメージから形を作り出すのか。よく気付いたね」

「これくらい何度か見てくれば普通に分かると思いますが」

「…っまあ、倒してしまえば一緒さ」カチッ

『デビルズクライ!』デデデーン

ありすも、すこし顔をしかめながらもポケットからガシャットを取り出す。

「…あなたと一緒にやるのは気が進みませんが、輝子さんを助けるためです」カチッ

『パズル&ウィッチーズ!』テテンテテテーン!

「よし、アタシも!」グッ

紗南も同様にポケットから出したガシャットを押し…

「…あっ!しまった、これ普通のガシャットだ!」

今度はありすと飛鳥が同時にズルッと肩を滑らせた。

「何やってるんですか…」

「そう言えばキミのはプロデューサーに取られてたんだったね…あとで見つけておく必要があるな
 今日はボクらに任せて、下がっていてくれ」

飛鳥とありすは体勢を立て直してガシャットを構える。

「「変身!」」

『ガシャット!』
『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?』

『アイムア…アイドル!』

変身を察知したのか、キノコバグスターがグネグネと身をよじらせる。
するとどうだ、周囲の菌糸が盛り上がり、奇妙な姿を形作っていく。

「なにこれ…気持ち悪いっ!」

「キノコの人形…?妙なものを」

それは細長い四肢を生やした、人型のキノコであった。
キノコ人形は中央の本体を守るように次々に湧き出してくる。

「わ、わわっ!」

紗南はそれらに囲まれないように、慌ててルームの一角へ…その一角、プロデューサーの机周辺だけは何故か菌糸が全く伸びていなかった。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:25:49.02 ID:wE4VPC8M0
「ふぅ」

紗南は机の下に潜り込むと、一息つく。

「…ぁぅ」

「ひゃああっ!」ゴツン!

唐突に背後から声がして、紗南は驚いて机に頭を打ち付けた。

「いったたたた…」

「ぁああ…すいません紗南さん…うぅ…森久保のせいで…」

「乃々ちゃん…いたんだ…」

「いたんですけど…ずっといたんですけど…」

森久保はいつになく弱弱しい声だ。その体も、いつも以上に小さく縮こまらせて、机の暗がりにすっぽりと埋まってしまっている。

「…もしかして、輝子ちゃんを?」

「ひぅっ…も、森久保は何も見てないんですけど!輝子さんが急に倒れたとか…変なぐにょぐにょに変わっていったとか…見てないです、見てないんです…うぅぅ…!」

「大丈夫だよ乃々ちゃん…皆が助けてくれるから」

「皆…?皆って誰ですか…誰でもいいです、助けてください…」

暗がりで見えづらいが、乃々はぽろぽろと涙をこぼしていた。

「まゆさんがいなくなって、輝子さんまでいなくなって…もう、森久保には頼れる人が…」

「…大丈夫だよ、アタシがここにいるから。ほら、涙拭いて」

「あぅぅ…」

紗南はポケットからハンカチを取り出す。一緒に先ほどのガシャットがコロンと落ちた。

「…あ、そうだ。ねえ乃々ちゃん、Pさんがこれと同じものどこかに仕舞ってなかった?」

「ふぇ?…えっと、そういえばこの前そこの引き出しに…」

乃々はおどおどと机の一番下の引き出しを指さす。

「ここか…鍵が掛かってて開かないや…」

「…大切なもの、なんですか?それ、いつも紗南さんがやってるゲームソフトですよね…?」

「あー、うん、そう。Pさんに取り上げられちゃって…」

「プロデューサーさんが…?そこは、森久保のポエム…じゃなくて、森久保の大切なものが入ってるんですけど…本当に大切なものだから、仕舞っておいてもらってて…」

「じゃあ、鍵とかは?」

「プロデューサーさんがいつも持ち歩いてるんですけど…森久保が頼めば、開けてもらえる…はず……」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:26:59.17 ID:wE4VPC8M0
「話は聞かせてもらったよ」にゅっ

「ひいぃっ!?」

飛鳥がレベル1の姿のまま、机を覗き込んできた。

「あ…へ…?飛鳥、さん…です…か……?」

乃々が目を白黒させて訊ねる。

「ああ…紗南のガシャットはこの引き出しの中、そして鍵はプロデューサーが持ってる。フフッ、だからここだけ奴らが来れないのか。ガシャットの力を恐れているんだな…
 さて乃々さん、後ででいいから、鍵をプロデューサーから借りてもらってもいいかい?」

「あ、え?」

「ちょっと飛鳥さん…乃々ちゃん茫然としてるよ」

「まあ、この状態で何言っても記憶には残らないんだから、後でキチンと言うよ…フフッ」

「ちょっと飛鳥さん!手伝ってください!」

「はいはい」

ありすの声に、飛鳥が机を飛び越えて見えなくなった。

「え…ぅぇえっ…と?あの…今の、は…?」

「あー…えっとね、話すと長くなるし難しいんだけど…」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:29:00.04 ID:wE4VPC8M0
―――…

「キリがありません…」

「全くだ、本体に攻撃が届かないね」

飛鳥とありすはキノコバグスターを挟んだ形で追い詰めようとするが、周囲の菌糸から無尽蔵に湧き出すキノコ人形が攻撃をことごとく阻んでいく。

「…ここはひとつ、協力しようと思わないかい?」

飛鳥がひゅっ、とひと跳びにキノコバグスターを飛び越えてありすの傍へ降り立つ。
その間にも銃撃を仕掛けているのだが、やはりキノコ人形が全て防いでしまった。

「仕方ありませんね…」

「キミの魔法で、このキノコ共を蹴散らしてくれ。ボクがトドメを差そう」

「はぁ?あなたの方こそ、その二丁拳銃で道を切り開いてください。私がとどめを差します。私の方が高威力です」

「…全く」

言い争っている場合ではない。飛鳥はやれやれと右の拳銃、青いそれに刻印されたBボタンを連打した。

「抉れッ!」

マシンガンじみた連射が拳銃の口から吐き出される。
部屋狭しと埋め尽くし始めていたキノコ人形たちが、一直線に大きく削り取られた。

「はあっ!」

そこを炎の槍と化した杖を持ったありすが貫く、即座にキノコ人形は再生しようとしたが、間に合わない。
ありすの身体がキノコバグスターの中にめり込んだ。
キノコの表面の波が一瞬凪いだかと思った瞬間、内側から炸裂し周囲にオレンジ色の飛沫を散らした。

「…やっぱり、輝子さん」

その中心でふわりと着地したありすの腕の中で、気絶したように眠る輝子がいた。

「全く、もうちょっと華麗に倒せないものかな」

身体に降りかかった飛沫を掃いながら飛鳥が愚痴る。ありすは睨み付けたが何も言わず、そっと輝子を床に寝かせた。
散らばった飛沫がモゾモゾと動き出し、バグスター粒子となって、部屋の窓から外へと逃げだしはじめる。

「おっと、逃げるつもりのようだけど」

「追います。当然です」

「…終わった?」

紗南がおそるおそる机から顔を出す。

「紗南さん、輝子さんを頼みます」

「え?あ、うん」

紗南が床に寝かされた輝子の元へ走り寄るのと同時に、二人は開いた窓へと走り出す。

「ぁぅ…」

乃々もそろそろと机から顔を覗かせると、ちょうど二人が窓から床を蹴って飛び出したところであった。

「……!?」

「セカンドフェイズ」
「第二ステージ!」

乃々が今まで生きてきた中でしたことがないほど目を見開く中で、二人は空中で同時にレバーを開いた。

『『ガッチャーン!』』
『『レベルアップ!』』

『解き明かせ古代呪文、パズル&ウィッチーズ。』
『DieDieDie!マストダイ!デビルズクライ!』

空中で二人はレベル2へと変化し、プロダクションの正面広場…最初に紗南が戦った場所に降り立った。
飛鳥は片膝を立てた"スーパーヒーロー着地"で、ありすは足元に魔法陣を展開しふわりと…最後に、魔女帽子が彼女の頭にぽふ、と乗った。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:32:11.20 ID:wE4VPC8M0
「…ヴヴヴゥ……」

二人の眼前で怪人を形作っていくバグスター粒子は、デスボイスのような重低音の唸り声をあげなら二人を睨み付けた。
体中にチェーンやトゲを巻き付け、顔はコープス・メイクのような白黒…さながらヘヴィメタルバンドのメンバーのような風体を持つ獣人の怪物であった。

「オ゛ォ…オ゛オ゛オ゛…」

野獣怪人は狼のような口を半開きにし、涎を滴らせながら唸り続ける。

「言葉も解さぬ獣か…へぇ、こんな奴もいるんだね」

「どちらにせよ、敵です」

スチャ、とガシャコンロッドを構えるありす。彼女の周囲にいくつもの光弾がまたたく間に現れる。

「ヴォゥ!ヴォゥヴ!」

それを見た野獣怪人は低く吠え、片手を地に付けた獣らしい野性的な構えを取った。

「はぁっ!」

ありすが杖を振るうと、光弾は曲線軌道を描いて野獣怪人に襲い掛かる。

「ウオ゛オ゛ッ!!」

対し怪人は、すさまじい速さのスプリントでその弾幕へと飛び込んでいった。

「なっ…!」

目で追うのもやっとほどの黒い弾丸と化した野獣怪人は、弾幕を低姿勢で避けると、ありすへと猛烈なタックルをかます。

「あがっ…!」

「っと…!」

飛鳥が反応したときには、ありすは既に奥の花壇へと頭から突っ込んでいた。

「ハハ…大丈夫かいありす!」

「っつ…平気です!ちょっと出足を挫かれ…っ!」

「ア゛オ゛オ゛ッ!」

花壇から起き上がったありすに怪人は飛び掛かるように追い打ちを仕掛ける。
が、その体が空中でいくつも爆ぜ、怪人は呻き声をあげて横へとそれた。

「全く、無視しないで欲しいね」

ガシャコンデュアライザーを構えた飛鳥が銃口から立ち昇る硝煙をフッと吹き消す。

「…一応、お礼は言っておきます。ありがとうございます」

ありすはムスッとした表情で起き上がる。

「一人では辛い相手だ。フフッ、共同戦線と行こうじゃないか」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:33:57.64 ID:wE4VPC8M0
飛鳥はデュアライザーのAボタンを押し、変形したクレイモアをブンと振るう。

「相手は高速移動ができる。となれば、当然スタイリッシュアクションゲームのボクの方が適任だろう
 援護、よろしく頼むよ」

「むぅ…」

ありすは不服そうながらも、同様にガシャコンロッドを長杖に変形させて両手に持つ。

「ヴォオ゛オ゛オ゛…」

野獣怪人は変わらずデスボイスじみた唸り声をあげて警戒する。

「さあ、来たまえよ悪鬼(デーモン)」

飛鳥は左手でクイクイと怪人を挑発する。
野獣怪人の足と腕がギリ、と引き締まった。

「オ゛オォッ!」

「ッフ!」

瞬間、ギャイィン!と金属同士がこすれあう音が響いた。飛鳥の振るった大剣と怪人の爪がこすれあったのだ。
火花が散り、二者は距離を取って再び睨み合う。

「はぁぁ…!」

ありすが杖を大きく振るうと、頭上に巨大な雷球が生まれ、

「はあっ!」

返す腕で素早く振ると、蒼雷が怪人を襲った。

「ァウ゛ッ!」

だが怪人はまたも目にもとまらぬスプリントでそれをやすやすと回避、飛鳥と再び打ち合った。

「そんな!」

「全く、何をしてるんだい」

飛鳥は怪人と鍔迫り合いをする。ギンッ!と剣の向きを変え、鍔に銃口を怪人に向け、トリガーを引いた。

「ガァッ!」

不意の銃弾を喰らった怪人がたたらを踏む。

「ハッ!」

飛鳥はその隙を付いて怪人に横なぎ一閃。更に一歩踏み込んで…

「…はああっ!」

「っとお!?」

足の止まった怪人めがけ、ひときわ強力な蒼雷が落ちた。飛鳥が慌てて一歩引く。
その主は他でもない、ありすだ。頭上の雷球に湛えられた雷が全て怪人へと注ぎ込まれる。

「おい!危ないだろう!」

「援護をしろと言ったのはあなたでしょう!」

「邪魔をしろとは言ってない!」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:35:44.11 ID:wE4VPC8M0
「ッガア゛…」

バチィッ…と音を立てて雷が消えると、ぶすぶすと煙を上げて野獣怪人は膝をついた。

「…っ!トドメは私が!」ガッシューン

「いいや、ボクがやるね!」ガッシューン

二人は同時にガシャットを引き抜く。ありすはキメワザスロットに、飛鳥はクレイモアの柄先にそれぞれ差し込んだ。

「っはぁぁ…」

ありすの足元に魔法陣が現れ、その体がふわりと宙に浮かぶ。
更に魔法陣から極彩色の光が彼女の足へ移っていく。

「フゥゥ…」

飛鳥は大きく息を吐いて、黒炎を纏うクレイモアを構える。

『ウィッチーズ・クリティカルストライク!』
『デビルズ・クリティカルフィニッシュ!』

「たあああああっ!」
「セヤァァァァッ!」

ありすはそのまま上空からの極彩色キックを、飛鳥は滑るような踏み込みからの一閃を怪人へと見舞った。

「オ゛オ゛オ゛オオオオォォォ!」

地面を震わせるような雄叫びを上げて、野獣怪人は01粒子となって爆散した。

「…よし」

「フゥ…」

同時に立ち上がる二人。一瞬顔を見合わせると、フン、と互いに鼻を鳴らして顔を逸らした。

「まさかキミがここまで不仲を引っ張るとは思わなかったよ」

「あたなこそ、自分の本心を打ち明けたらどうですか。あまりにも隠し事が多すぎます」

「まだ言うべきじゃないだけさ。タイミングというものがあるんだ」

「なら、そのタイミングはいつですか」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:36:51.47 ID:wE4VPC8M0
「おーい、二人とも―!」

第三者の声に二人が振り向くと、プロダクションビルの入り口から紗南が走り出てくるところだった。

「紗南さん…輝子さんは?」

「乃々ちゃんが見てくれてるよ。でも、何ともなさそう…どうしたの?難しい顔して」

紗南が飛鳥の様子を見て訊ねた。

「…別に、何でもないよ。そうだ、キミのガシャットを取り返しておかないとね」

飛鳥は腕組みを解いて、何事もなかったかのように話を逸らす。

「うん、さっき乃々ちゃんにお願いしたよ。プロデューサーさんと会ったときに開けてもらって、一緒に取り出しておいてって」

「仕事が早いね、助かるよ」

「へへっ、それほどでも」

「……」

飛鳥と紗南が並んで歩きだすのを、ありすは後ろからしかめ面で見ていた。

「…ダメです、私はアイドルなんですから」

そんな自分に気付いたのか、ぺしぺしと頬を叩いて自分を叱咤する。

「…こんな戦いが、いつまでも続けられるわけありません…」

ありすは再び、飛鳥の後姿を睨み付けた。

「早く終わらせるためにも、飛鳥さんには全部喋ってもらわないと…」

そして、二人を追うようにビルの中へと入っていった。


To be continued... See you next Game.
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/17(土) 21:41:39.47 ID:wE4VPC8M0
第四話は>>75からです。

平成ライダー序盤でおなじみの不仲ライダーズが顕著な4話です。エグゼイドもあの調子では協力し合うのはずいぶん先そうですねえ
しかしタイトルが仮面ライダーサナなのに紗南ちゃんが1話から戦闘どころか変身すらしてません。ノリと勢いでタイトル付けたからこういう事になる。

4話まで進んで、設定なんかはずいぶん固まってきました。大筋のストーリーも出来てきたので筆がそこそこ進みます。
これからもよろしくお願いします。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/17(土) 22:56:43.42 ID:ND3p9lBDO
パックマンガシャットに太鼓の達人ガシャット……
シンデレラガールズガシャットはまーだ時間掛かりそうですかねー
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/19(月) 16:55:13.42 ID:S6V+8v290
今気付いたんですけどありすの変身音声間違ってますね…
二つ案を出しててこんがらがっちゃったっぽいです。気を付けます
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/08(日) 11:55:35.13 ID:jLuEf3qBo
待ってる
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/16(月) 12:15:07.84 ID:t5HKc2Ud0
すみません。祖父が危篤で、書いている余裕が無いのでしばらくお休みいたします。
待っている方は申し訳ないです
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/11(土) 00:51:58.04 ID:oXJxFl3lO
本編でもパズルゲーマー出てきたね
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/16(火) 03:11:15.97 ID:dhQa28uB0
待ってます
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