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多分、素直になると、死んでしまう病気(艦隊これくしょん)
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145 :
◆yJGN1SPTmzFo
[sage saga]:2019/03/11(月) 00:38:49.56 ID:n52VVqhm0
――駐車場に車を停め、全員で砂浜へと向かった。
――彼女は帽子を抑えながら、海を静かな微笑みと共に見つめながら歩いている……。
「綺麗ですね。海ってこんな色をしていたんだ」
叢雲「艤装を外すとそんな感性まで戻ってくるの? 見飽きた上に人が多いったら、もう」
「私が引っ越したのは内陸のほうで、海がありませんでしたから」
「……無意識で海を避けていたところもあったかも」
満潮「もうその必要もないわ。私たちが海を取り戻した」
「そうですね」
叢雲「だからこうして、海まで来て遊べるわけね。……まあ、私たちは飽きてるんだけど」
満潮「仕事場に休日にやってくるってのも悪くないわよ、たまには」
「仕事場、か」
「……二人は、艦娘をやめる気はないんですか?」
叢雲「あー、それ聞いてくる? んんー、どうだろ」
満潮「さっさとやめれば? で、こんな風に背でも胸でも伸ばし放題すればいいわ」
叢雲「……背とか胸とか、あんたが言う?」
「満潮はやめる気はないんですね」
満潮「私は艦娘でいいわ」
叢雲「そうなの?」
満潮「こいつを放っておけないしね」
叢雲「……そういえば、司令官はやめるつもりは?」
「……え? 考えたこともなかった? そうですか……」
満潮「いいかげんなとこがある割には仕事人間だから……」
叢雲「らしいっちゃらしいけどね……でも……」
「でも、叢雲はそのせいで3年間が何のアドバンテージにもならなかったのが不満だ、と」
叢雲「何の話よ! ……将来のことくらい考えたほうがいいって言いたかったの」
146 :
◆yJGN1SPTmzFo
[sage saga]:2019/03/11(月) 00:45:16.89 ID:n52VVqhm0
叢雲「艦娘も、それを率いる司令官も、一つの役割を終えたんだから。存続させておくのは社会にとってのコストよ」
叢雲「いきなり放り出されてから後悔したら遅い。ちゃんと考えておかないと」
「そうですね。未来を思い描く……曙だったころの私には想像もできなかった」
「だから私は、艦娘をやめたんでしょうね」
満潮「………………」
満潮「……え? どうかしたのか、って? 別に……」
満潮「……いや、今更よね。遠慮する必要もないわ。このメンツに」
叢雲「なに? どうしたのよ」
満潮「ねえ、二人とも」
叢雲「ん?」
「なんですか?」
満潮「艦娘には……未来がないと思う?」
――満潮の問いかけに、思わず三人で顔を見合わせる。
――確かに、叢雲や彼女の言葉は、そういう結論に繋がっていたように思えたかもしれない。
――叢雲は、少し考えて答えた。
叢雲「そうは言ってないけど。どうなるかはわからないとは思っている」
「確かに。でも、どうなるかわからないのは、みんな同じですよね」
「私が艦娘をやめたのは単に、私の限界だったんだから」
満潮「なるほど、ね」
――満潮が頷いて、立ち止まった。
――その視線の先には、空と海の境がある……
満潮「それなら私は、今のまま、艦娘のまま、もう少し先を見てみたいと思う」
「満潮……」
147 :
◆yJGN1SPTmzFo
[sage saga]:2019/03/11(月) 00:46:42.02 ID:n52VVqhm0
満潮「ずっと思ってた。私たちは本当に、単に深海棲艦と戦うためだけに生まれたのか」
満潮「もし、それだけじゃないんだとしたら……」
満潮「……え? そ、そうなの?」
満潮「……そっか、あんたもそう思ってたんだ」
満潮「……はあ? さすがに楽観的すぎない? まったく、これだからほっとけないのよ」
満潮「だから、付き合ってあげる! で、まあ……これからもよろしくね! あ、司令官がいつやめても私は構わないんだからね!」
148 :
◆yJGN1SPTmzFo
[sage saga]:2019/03/11(月) 00:49:00.47 ID:n52VVqhm0
「……悩みどころですね、叢雲」
叢雲「うー」
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/06/30(水) 00:19:20.92 ID:SYTLpyDi0
終わり?
150 :
以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします
[sage]:2021/06/30(水) 02:56:40.34 ID:AXyKFgQQ0
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151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/06/21(水) 04:04:11.26 ID:eNQTcyQw0
――施設を使い、全員で水着に着替え、砂浜へと降りていく。
――サンダル越しに砂の熱さが伝わってくる。
――海に、来た。実感が今更ながらに湧いてきた……。
「どうですか? この水着。……ふふ、似合ってますか。ありがとうございます」
叢雲「なぁにデレデレしてんのよ! 秘書艦を放っておいて元艦娘にかまけてるんじゃないわよ!」
満潮「まったく、隙だらけね。鼻の下伸ばしちゃって。シャキっとしたら?」
――三人はそれぞれに、自分を海の方へと引っ張っていく。
「あー! 海ですね! テンションが上がってきました! 泳ぎましょう!」
叢雲「ちょっと、その前に準備運動よ! 司令官は当然だけど、あんたも艤装を外してるんだから」
満潮「そのもう一つ前に荷物とパラソルの設置を手伝いなさいよ、こんなもの誰が用意したんだか……あ、私か」
「なんですかそれ、満潮。平和ボケですか?」
満潮「そうかもねー。昔よりも気を張らずに生きられる気はする」
叢雲「へえ。その割に、鎮守府では変わらずうるさいけど」
満潮「当然でしょ。平和だからって仕事を真面目にやらない理由にはならない」
「満潮らしいですね」
叢雲「三つ子の魂百までって言うしね」
満潮「なにそれ?」
叢雲「変わらないものもあるってこと」
満潮「ふうん。それはそうでしょ」
「……そうですね。ああ……海も空も、こんなにも青いまま……変わってなかった」
満潮「……ずっとそうだったわ」
叢雲「……ええ。ずっと、ね」
――少女たちの横顔は、青い空と海に、いつかどこかの遠い記憶を写し出しているようだ。
――水平線の向こうから吹く風が、彼女たちの髪をなびかせた。
――熱をはらんだ潮風に夏が香る。
――遠い、いつかのどこかのように、今年もまた、夏が来たのだ……。
叢雲「司令官? いつまでぼーっとしてるわけ? ほら、海に入りましょ」
満潮「しっかりしてよね、司令官」
「さあ、行きましょう。提督」
――いえ、と彼女は小さく首を振って笑う。
――耳元に顔を近づけて、自分の名前を呼ぶ。
――自分も笑って、彼女の名前を呼んだ。
――風が吹いて、三人の髪がなびくのが見える。
――それでやっと、自分も素直になれる時がきたのだと、そう思った。
おわり
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/06/21(水) 04:11:43.19 ID:eNQTcyQw0
最後に何を書けばいいのかずっとわからなかったのですが、数年ぶりに読み返して書けました。
最初は気軽にツンデレを書きたいなと思っていただけだったんですけど、急に曙が(自分の中で)告白したいと言い出して、させたら急に死の気配をまといはじめ……。
その結果、思いもよらぬ方向へと行ってしまった作品になってしまいました。人生というのはわからないものですね。
叢雲は長年の付き合いのある妻とか相棒
曙は恋する女の子
満潮は理不尽な妹
……みたいな書き分けを試みたのですが実際はよくわかりませんね!
ここまで読んでくれたみなさまに感謝します。ありがとうございました。
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/24(土) 13:33:59.68 ID:An/cJqKVO
乙
久々だしちょっと読み返すわ
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[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
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