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【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:00:06.68 ID:KpK00xl90
古い時代。
世界はまだ分かたれず、霧に覆われ
灰色の岩と大樹と、朽ちぬ古竜ばかりがあった。
だが、いつかはじめの火がおこり
火と共に差異がもたらされた。
熱と冷たさと、生と死と、光と闇。
そして、闇より這い出た幾匹かが
光に寄る羽虫のように、偉大なるソウルを見出した。
最初の死者、ニト。
イザリスの魔女と、混沌の娘たち。
太陽の光の王グウィンと、彼の騎士たち。
そして、誰も知らぬ小人。
それらは王の力を得、古竜に戦いを挑んだ。
グウィンの雷が岩の鱗を貫き
魔女の炎は嵐となり
死の瘴気がニトによって解き放たれた。
そして、ウロコのない白竜、シースの裏切りにより、遂に古竜は敗れた。
火の時代の始まりだ。
だが、やがて火は消され、暗闇だけが残る。
今や、火はまさに消えかけ
人の世には届かず、夜ばかりが続き
人の中に、呪われたダークリングが現れ始めていた…
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1473930004
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:05:13.88 ID:KpK00xl90
コブラ「はぁ〜あ〜…」
コブラ「……ダメだレディ。今回ばかりはお手上げだぜ」
レディ「あら、珍しいこともあったものね。いつもの貴方なら何とかなるさって言うところよ?」
コブラ「オレもそう思ってたよ。コイツを地球の美術館から盗み出す前まではな」
コブラ「実際この『古い時代の1節』については、てんで手詰まりさ」
コブラ「分かってるのはこの一文が地球で、しかも機械では計れない程の超古代に書かれたってコトと、人種や文化に関係無く、何故だか誰にでも読めるって事だけで、それ以外はサッパリだ」
コブラ「いつ、どこで、誰がなぜ書いたのか。何が記されているのか。そして何故この一文が記された金属板だけが、全く劣化せずに地球の地層奥深くに残っていたのか…」
コブラ「宇宙のありとあらゆる芸術品を知り尽くしたと思っていたんだが、そいつはとんだ自惚れだったみたいだ」
レディ「私はそうは思わないわ。 貴方に盗まれるものは、貴方の眼に適った物だけだもの」
コブラ「オレがコレに何かを感じたって?」
レディ「ええ。だから盗んだ。違うかしら?」
コブラ「いいやあ、違くないさ」
コブラ「ただ、こうまで人見知りされるのは初めてなんだ」フフッ
レディ「ようやく調子が出てきたみたいね。もうすぐ目的地よ」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:08:25.60 ID:KpK00xl90
草木一つ生えない不毛の地に、ところどころ穴が開いている。
その穴は全て深く大きいが、不毛の大地と同様に、暑い太陽に照らされても何があるわけでもない。
知識欲と発見欲に魅せられた者達がこの地を掘ったが、遂に一枚の金属片以外の発見がないまま、作業は惰性の中続けられている。
その不毛の地に、一隻の宇宙船が着陸した。
作業着に身を包んだ男は、宇宙船から降りてきた男に歩み寄り、握手を求めた。
コブラ「すみませんね。道が混んでたもので」
発掘責任者「いえいえ、よくぞ来てくれましたギリアン博士」
コブラ「ジョーで構わないですよ。こちらは私の助手のレディ。早速で悪いとは思いますが『古い時代の1節』が発掘された地点というのは?」
責任者「はい、こちらです。ついて来て下さい」
宇宙船から降りてきた男と女は、作業着姿の男との握手を終え、彼の後ろを付いて行く。
コブラ「話には聞いてましたが、遺跡というよりかは、まるで洞窟と言った風情ですね」
責任者「ええ。ここにあるどれもこれもが、長い年月の中で朽ちてしまっていましてね。意識的に見れば石畳や柱に見えない事もないような土塊や、ちょっとの風で崩れる灰の塊ばかりでして」
責任者「お偉い学者先生が例の金属板には計り知れない価値がある『かもしれない』と言い、更にはその金属板がもっと出てくる『かもしれない』らしいので、こうやって一応発掘作業は続けてますけどね…私のような者からしてみりゃとんだ赤字……おっと失礼。口が滑りましたな」
コブラ「いえ、お気持ちは分かりますよ。考古学なんてのは、言って見ればバクチみたいなものですからね。ハズレだって引くんですよ」
責任者「おお、話が分かる方で助かりますな!はっはっは!」
そうは言いつつも、コブラはあの金属板には何かがあると確信していた。
それが何なのか、形がしっかりと把握出来ていないため弱音こそ漏らしたが、見限ってはいない。
責任者「着きました。ここですよ。ここで例の金属板が見つかったんです」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:16:22.67 ID:KpK00xl90
作業着姿の男がそう言って指差した場所には、黒々とした粘土状の窪みがあり、その窪みの中心には泥炭のような大きな板が敷いてあった。
責任者「この板……スキャンの結果、デカイ剣のような形をしていましたんで、我々は『剣』と呼んでいるんですが、その剣の刀身部分にはめ込まれるようにして、例の金属板があったんです。 まるで剣の一部のように」
コブラ「まさかとは思いますが、ここが鍛冶屋だったとでも?」
責任者「そうは思いませんが…なんにせよ、この有様じゃ用途の特定は不可能ですよ。触れば崩れる。太陽光並みの光であっという間に変質する。全くお手上げです」
コブラ「………いや、出来ることが全く無いってわけじゃ無いかもしれませんね」
責任者「え?」
コブラ「しばらく外に出てもらえませんかね?この調査には集中が必要でして」
責任者「!? そりゃ困りますよ!何かあったら…」
コブラ「お願いしますよ。それとも、私の代わりに宇宙考古学とその芸術史に長けた、専門的な調査ってものを貴方が代わりにやってくれるんですか?」
責任者「いえ…それは無理ですが…」
コブラ「だったらお願いしますよ」
責任者「は、はい…」
コブラの有無を言わさない物言いに、作業着姿の男はすごすごと退散した。
だが現場から離れたわけではなく、遠くからコブラとレディを見つめている。
コブラ「さーってと、ああは言ってはみたが、どうしたもんかねコレ」
レディ「考えてみれば何か思いつくかもしれないわよ?宇宙考古学と芸術が、貴方の味方になってくれるわ」
コブラ「それがなレディ、残念ながら散々考えたせいで、考古学も芸術も俺を見放しちまったらしい」
コブラ「今思い浮かぶのは、金星の美女達の腰に手を回したあの感しょ…」
コブラ「ん…まてよ」
レディ「どうしたのコブラ」
コブラ「触れただけで崩れるくらい、この剣とやらは脆い…」
コブラ「なのにこの金属板を剥がしたにも関わらず、この剣は形を保っている。普通こういう物は形が変わるだけでも、内部の構造に歪みやほころびが生まれて、あっさり崩れちまうものだ」
スッ
レディ「それは金属板?持ってきていたの?」
コブラ「念のためってヤツさ。とにかく、コイツとこの剣には、何か特別な関係があるように思える」
コブラ「行き詰まってる以上、それならやる事は一つだ」
コブラ「まあ、何も起きないだろうが…」スッ…
カチッ…
コブラ「!」
レディ「はまったわ」
コブラ「ああ。しかもさっきの音から考えて、この剣は金属板を受け入れた瞬間にのみ、硬度をあげるらしい」
コブラ「……だが、何も起きない所を見ると、罠でも無い…」
責任者「ギリアン博士?一体何を…」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:18:06.32 ID:KpK00xl90
ボッ…
レディ「あっ!」
コブラ (火が点いた!やはり罠かっ!)
ボボボッ…ボボ…
コブラ「………」
レディ「コブラ!何をしてるのっ!?手が焼けて…」
コブラ「いや…これは罠じゃない…この火には熱も煙も無い」
レディ「…じゃあ、これはホログラム?」
コブラ「そうとしか思えないが、こんな豆電球程度の明かりじゃ受験勉強も出来ないぜ」
責任者「ギリアン博士!その光は何なんですかっ!?」
コブラ「なに、ちょっと葉巻が吸いたくなってね」
ボウッ!
レディ「火が強くなったわっ!」
コブラ「あ、あら?」
ゴオオオッ!
コブラ「お、おいおい、確かに葉巻は吸いたかったがこりゃお節介だ…」
責任者「か、火事だ!おーい火事だーっ!誰か来てくれーっ!」タッタッタッ…
レディ「コブラ、本当に熱くないのっ?」
コブラ「ああ、熱くは…」
コブラ「いや…あっ!アチチッ!熱くなってきたっ!」
ゴワッ!!
コブラ「逃げろレディ!コイツはホログラムなんかじゃ…」
グ ワ ッ ! !
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:24:10.81 ID:KpK00xl90
瞬間、小さな種火は大きな火の球となり、2人を飲み込む。
その炎の中で、実体を失くしたコブラに語りかけるものがあった。
「永らく待っていたぞ。稀なるソウルを持つ者よ」
コブラ「!」
「お前を待っていた」
コブラ「待っていたにしても歓迎が熱烈すぎるな!」
コブラ「おたくにワープホールへ招待される覚えはないぜ!」
「招待ではない。これは願いだ」
コブラ「願い?」
コブラ「よせよ。願いならサンタにでもするんだな。オレの専門じゃない」
「それが通るのならば、そうも出来よう」
「だが、お前にしか出来ぬ」
炎の輝きが薄れていく。 コブラの実体が再び生を帯びはじめる。
コブラ「待ちなよ。人に願いを押し付けるんだ、せめて名前ぐらいは名乗ってもいいだろ?」
「火となった我が身に、もはや真名など無く、もはや語り名のみが遺される」
「我が名は薪の王」
「世界を救え」
炎はただそれのみを言い残し、消えた。 コブラは戻った感覚で辺りを見渡し、音を聴く。
足元には蛆が湧く石畳。周りは寒々しい石壁と鉄格子。 頭上から吹き込む風には雪が交じり、コブラの火照った体を冷やす。
レディ「コブラーっ!何処にいるのーっ!」
コブラ「ここだよレディ。牢屋の中だ」
ドグァーッ!!
コブラを見つけたレディは鉄格子を掴むと、力任せに引っ張って石壁ごと鉄格子を外した。
ドゴーッ!!
それと同時に、コブラは頭上から降ってきた干からびた死体を、サイコガンで蒸発させ、死体を蹴落とした騎士を驚かせた。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:26:02.69 ID:KpK00xl90
上級騎士「なっ…!?」
レディ「どうしたのコブラ?」
コブラ「早速お出ましらしい。気をつけろレディ!」
レディ「分かったわ!」
ピシュッ カッ!
リストバンドからワイヤーフックを射出したコブラの照準は、騎士の足元に定められていた。
小型ウィンチが生む猛烈なパワーで引き上げられ、コブラは騎士に猛スピードで接近する。
サッ
そしてコブラは、接近と同時にサイコガンを放っていた。
ドウドウドウーッ!!
グ ワ ッ ! !
騎士「オオオーッ!」
3発のサイコエネルギーは騎士の足元の石積みを吹き飛ばし、剣と盾を弾き飛ばす。
騎士はもんどりを打って尻餅を着いたが、レディはその隙を見逃さなかった。
ササーッ!
上昇するコブラを追い越す程のスピードでかの女は駆け上がると…
ガキーッ!
プレートアーマーの胸元が捻れる程の力で、騎士の胸ぐらを掴み上げた。
騎士「まっ、待ってくれ!話を聞いてくれ!頼む!」ジタバタ
コブラ「そりゃ聞くだけ聞くさあ。なんで死体なんかを落としてきたのか、その訳を是非とも聞かせてほしいね」
コブラは葉巻をくわえると、ジッポライターで火を点けて、寒空に煙を吐いた。
コブラ「とりあえず中で話そうぜ。ここじゃ腹が冷える」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:29:32.67 ID:KpK00xl90
レディ「……」ゴソ…
レディ「あったわ。確かにここの鍵のようね」
コブラ「やれやれ、鍵だけ落とそうとは思わなかったのか?」
騎士「すまない…」
コブラ「まあいいさ。オレもあんたを殺しかけた。割に合わんと思うがこれでおあいこにしよう」
コブラ「で、なんでオレを助けようとしたんだ?」
騎士「………話せば長くなるが、それでも聞いてくれるか?」
コブラ「分からない事は聞いて覚えろってママに言われてるんだ」ニッ
騎士「そうか…ありがとう…では聞いてくれ」
騎士「私の家の言い伝えに、不死の使命というものがある」
コブラ「不死の使命?」
騎士「そうだ。その使命を帯びた者には不死の印が現れ、この不死院から古い王達の住まう地への巡礼が定められる」
騎士「そして巡礼者となった不死は目覚ましの鐘を鳴らし、不死の使命を知る事になる…と」
コブラ「待ってくれ。不死ってのは、文字通りの不死身って事なのか?」
騎士「あ、ああ。不死に死は訪れない。死ぬ度に自分の全てを少しずつ失なっていくが、キミも私も消える事は出来ないんだ」
騎士「例え骨になり、灰になろうとも」
コブラ「………」
騎士「しかし妙なことだ…ここまで来ておきながら、不死について知らないとは…」
騎士「…まさかキミは、一度も死ぬ事なくここまで来たのか?」
コブラ「いや、そもそもオレは不死なんかじゃないんだ。不死身と呼ばれた事はあるがね」
騎士「驚いたな……まさか人の身のままこの地に来るなんて…一体どうやったんだ?」
コブラ「なあに、一眠りすれば直ぐだったよ」フフッ…
コブラ「それより、面倒だがこりゃあやるしかなさそうだな…」
騎士「やる…不死の使命を、キミが?」
コブラ「ああそうさ。そうでもしないとパパが家に帰してくれないらしい」
コブラ「それにオレ自身、自分を不死身だと思ってるからな」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:31:20.60 ID:KpK00xl90
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コブラのリストバンド
さりげなく着用しているように見えるが実は多機能。
ライトが点いたり、ワイヤーが伸びて引っ掛けたり、
回転するカッターが収納されていたり、GPSや通信に使えたり。
もっとも活躍するのは爆弾などに反応する探知機であり、
様々な機能でコブラをサポートする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:34:38.74 ID:KpK00xl90
バキィ!
亡者「グエエーッ」ドターッ
コブラ「ふう…まるでB級ホラーだなこりゃ。不死というからどんなものかと思えば、これじゃゾンビだぜ」ガスッ!
騎士「 さっきからキミは何を言っているんだ?」ズバッ!
コブラ「別にい何も〜?」ボグッ!
レディ「コブラ、この扉の向こうから音がするわ。何かの唸り声みたい」
グルルルル〜ッ グルルルル〜ッ
コブラ「開けてビックリ玉手箱って事か。そんな上品じゃなさそうだが」
騎士「………」
コブラ「レディ、準備はいいか?」
レディ「いつでもOKよ」
コブラ「じゃあ、あんたはどうなんだ?」
騎士「そうだな…少し怯えているよ」
コブラ「よし、じゃあ一二の三で扉を蹴破るぞ」
コブラ「1…2…3!!」ドガーッ!
グワォーッ!
不死院のデーモン「グアアアアアアアアアアア!!」 ズバーッ!!
扉を蹴破ると同時に、騎士とレディは身構え、コブラは義手を抜いてサイコガンを放った。
飛び出したサイコエネルギーは怪物の額に握りこぶし大の風穴を空け、怪物はその手に持った巨大な棍棒を構えることもなく息絶えた。
コブラ「あらら…」
騎士「………」
ドズーン……サアアァァァ…
レディ「死体が消えていくわ。まるでゾラ星人ね」
コブラ「思った以上のバケモノだったな。一撃で倒せてなかったらと思うとゾッとするよ」
騎士「信じられない…あのデーモンが一撃で…」
コブラ「デーモン?」
騎士「この怪物の事だ…地の底から湧き出し、命ある者を襲い、ソウルを奪う者達…」
騎士「そのほとんどは人の手には負えぬ強さ…で、あったはずなんだが……」
コブラ「その人ってのが、サイコガンを構えたオレだったって事が、コイツの不幸だな」
コブラ「………」フラッ
レディ「コブラ?」
コブラ「…さあ、早いとここんな場所からはオサラバしようぜ」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:42:22.80 ID:KpK00xl90
ガコン…ギギギギギ…
コブラ「あたり一面雪景色で、おまけに断崖絶壁……いよいよ異世界探訪の始まりか」
コブラ「…へっ…ヘーックショイッ!にしても、 この寒さってヤツには参ったね…」ズズッ
レディ「貴方が風邪?今日は珍しい事の連続ね」
コブラ「金属板とにらめっこしてるうちにインドア派にでもなったかな?」
騎士「この先の崖に立てば、王達の地に行ける」
コブラ「…不死の使命の始まりだな」
騎士「ああ。言い伝えが正しいのなら、そのはずだ」
騎士「そして、その崖に立てる者は、選ばれた者だけだ」
騎士「それには恐らく…認めたくないが、私は含まれないのだろうな」
コブラ「行かないつもりなのか?」
騎士「行かないのではなく、行けないんだ……私では、使命を見つける事も出来ない…」
騎士「こう言ってはなんだが、私は石壁を飛び越える事も出来ないし、腕から得体の知れない呪物を出して、デーモンを即死させる事も出来ない。剣が扱えるだけの、ただの死なない男だ」
コブラ「呪物ねえ……ある意味呪いに掛けられてはいるか」
騎士「私より、キミの方がよっぽど使命を全うするのに相応しい。キミに道を譲ろう」
恐らくは貴族階級にあったであろう騎士は、不死院を出てすぐの瓦礫に腰を降ろした。
デーモンと神々が跋扈する地に脚を踏み入れるには、力が全く至らない。 そう判断した彼は苦渋の選択をし、結果を受け入れた。
コブラはレディを連れて崖の際に立ち、そんな失意の中にある騎士に語りかける。
コブラ「そういやあ、あんたの名前を聞いてなかったな」
騎士「……オスカーだ」
遥か遠くから、風を切る音が響く。 突風とも、鳥の羽ばたきとも取れる音が。
コブラ「オスカー。使命は授けられる物じゃない」
コブラ「使命ってのは、こっちから迎え撃つ物じゃないのかい?」
オスカー「………」
コブラ「授けられるのをただ待ってたんじゃ、それは使命なんかじゃないのさ」
バ サ ッ !
オスカー「!」
騎士へと振り向いたコブラとレディを、瞬間、巨大な鴉が連れ去った。
オスカー「…コブラ……」
こうして、不死院からまた2人の巡礼者が現れたが、かの者らは不死ではなく、伝承にすら予見されていなかった。
かの者らは、かの地へと向かう。 古き王達の地…
ロードランへと…
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/09/15(木) 18:42:34.26 ID:ygjgvGyno
無印ダクソとコブラとか俺得。期待
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:46:06.47 ID:KpK00xl90
ヒュォォ…
バサバサッ! ドサーッ!
コブラ「イッテテテ……ファーストクラスにしときゃ良かったかな」スリスリ
レディ「あそこに止まっている鳥が私達を運んできた鴉のようね。次の巡礼者を待ってるのかしら?」
コブラ「なんにしても、ここの飛行機じゃ割引は効きそうにないな」
「お、おい…なんなんだよ、あんたら…」
コブラ「ん〜?」
心折れた戦士「………」
コブラ「おおっとぉ…」
身体に付いた土埃を落とすコブラの前に
鎖かたびらを着込み、帯刀をした男が、剣の鞘に手を掛けていた。
男の視線は二人に、特にレディに対して不信感を抱いているようで、それを隠そうともしていない。
コブラ「あ〜…おたくの言いたいことも分かるが、その前にちょっと冷静に…」
心折れた戦士「なんなんだって聞いてんだ!」
コブラ「別の世界から来た宇宙海賊……なあんて言っても分からないだろ?」
心折れた戦士「???」
コブラ「あー、まあ、分からないからこそ幸せって事もある。忘れてくれ」
コブラ「それよりあんた、ここいらに目覚ましの鐘ってヤツがあるらしいんだが、何処にあるか知らないかい?」
心折れた戦士「…それなら、こっから上に登って行けば、見つかるだろうけど…」
コブラ「ありがとよ」クルッ
タッタッタッ…
心折れた戦士「お…おい!何処に行くんだ!」
コブラ「賛美歌を歌いに行くのさ!」
心折れた戦士「さん、なに?」
心折れた戦士「………行っちまいやがった」
心折れた戦士「なんだったんだ?あいつら」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:48:36.78 ID:KpK00xl90
亡者達「ウオオォ…」
コブラ「ひーふーみー……こいつは素手でやるにはキツそうだな」
レディ「余計な心配じゃなくって?貴方にはサイコガンがあるのよ?」
コブラ「それなんだが、あの雪山から何となく気だるいんだ。本当にインドア派になったのかもなあ」
レディ「サイコガンの調子が悪いのね…タートル号があれば調整も出来るのだけれど」
コブラ「ま、なんとかなるさ」
ダッ
亡者「!!」
ガッ!
岩陰から飛び出したコブラは、反応の遅れた亡者から直剣を跳ね飛ばし、殴り倒すと、もう一人の亡者を倒すべく走る。
しかし、投げつけられた何かによって、進路を炎に阻まれる。
コブラ「爆弾…いや、火炎瓶か」
コブラ「レディ!上の不死を…」
レディ「任せて!」ヒュッ!
だが、コブラに向けて火炎壺を投げた亡者は、レディの投げた直剣を受けて事切れていた。
コブラ「さすがだなレディ!」
レディ「当たり前よ。いつから貴方の相棒をしてると思ってるの?」
投擲を受けた亡者に反応して、他の亡者達がコブラの存在を察知し、盾を構えはじめる。
コブラとレディはその中へ突貫していった。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:50:54.80 ID:KpK00xl90
亡者達を倒し、汚水路を抜けた2人は、更に襲いくる亡者達の群れを切り抜ける。
その途中でコブラは使えそうな剣を亡者から奪い取り、盾として使えそうな木の板も手に入れていた。
しかし、調子よく事が運ぶなど、コブラは考えもしない。
そして実際に、拍子よく事は運ばなかった。
ドドドドーッ!!
コブラ「おお!?」
レディ「こ、これは…!」
前触れなく降ってきた巨大な『赤い塊』には、大きな翼と爪があり、槍のような鱗があった。
胴体から伸びる尾は長くしなやかで、剣のような鋭さを持っている。
コブラ「悪魔の次はドラゴンか…」
コブラ「だが生憎、オレは天使役にはならないぜ!」
飛竜ヘルカイト「ゴオオオォォォ…」
レディ「竜の口がっ!」
コブラ「花火を撃つ気だ!潜り込めっ!!」
ド オ ッ ! !
大きく開かれた竜の口から、灼熱の炎が噴き出された。
コブラに討たれた亡者達の亡骸はその炎に焼かれ、瞬時に塵と化す。
しかし、竜は肝心の獲物を取り逃がし、懐を晒してしまった。
ガキィン!
だが、股下に潜り込んだコブラが腹に突き立てた剣は、硬い鱗に阻まれて折れた。
レディも拳を突き上げはしたが、やはり、鱗を貫くには至らない。
レディ「逃げるのよ!ここは危険だわ!」
グワッ…
腹部に生じた違和感に苛ついた竜は、大きく足を上げるが、既にコブラはワイヤーフックを民家の屋根に打ち込んでいる。
ド ゴ ン !
竜の足元から土埃が上がるのと、コブラとレディが屋根に着地するのは、ほとんど同時だった。
コブラ「なんて野郎だ。何食えばあんなに腹が硬くなるんだ?」
レディ「今回は逃げてみてもいいんじゃない?」
コブラ「いやあ、まだ手はあるさ。相手が竜なら、こっちも竜の気持ちになればいい」
レディ「えっ?」
コブラ「レディ!オレがあいつに躾をしてやる間、屋根の裏に隠れていてくれ!」
レディ「何をする気なのっ?」
コブラ「虫歯にしてやるのさ!」ニッ
レディ「?」
コブラはなにかを確信したように、不敵な笑みを浮かべると…
レディ「!? コブラーッ!?」
竜の首筋にワイヤーを引っ掛けて、棘状の鱗に飛びついた。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/15(木) 18:53:45.49 ID:KpK00xl90
ヘルカイト「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」
コブラ「カーッ!キンキンわめくんじゃねえや!口うるさいと女にモテないよぉ!」
犬が纏わりついてくる虫を振り払うように、竜は身体を捻ったり、声を張り上げるなどをして抵抗する。
コブラは右手で耳を塞いで苦い顔をしつつ、しかし両足でしっかりと鱗にしがみついており、左手のリストバンドはワイヤーを巻き戻していた。
バサァッ! バサァッ!
翼が起こす風は民家の瓦を吹き飛ばし、朽ちたドアや窓を割る。
しかし、足場を激しく揺すられる以外に、コブラにはなんの被害も無い。
コブラ「それーっ!」 ピシィ!
ヘルカイト「ギャウッ!」
それゆえに、再び放つワイヤーフックで竜の弱みを握る事も、容易かった。
ズ ズ ー ン …
コブラ「レディ、ゲームセットだ」
レディはコブラの合図を聞き、屋根の裏から身を乗り出す。
レディ「やったのね、コブラ!」
コブラ「ああ。」
コブラの放ったフックは竜の首に巻きつき、下顎の裏にある弱点に引っかかっている。
その部分を強く引っ張られているため、竜は火を吹く事も出来ず、痛みに身を丸めるばかり。
ヘルカイト「………」
コブラ「まさかと思ってやってみたが、こんなに大人しくなるとは思わなかったぜ」ギュウ…
ヘルカイト「!!」フルフル…
レディ「凄いわね……貴方、魔法は苦手じゃなかったかしら?」
コブラ「魔法だなんてとんでもない。オレは虫歯に爪楊枝を突っ込んだだけさ」
コブラ「竜には必ず弱点がある。酒だの美女だの宝石だのなんかより、よっぽど即効性があって確実な物だ」
コブラ「逆鱗だよ」
レディ「逆鱗…」
コブラ「地球の文明に古代から伝わってる伝説によれば、ドラゴンってのは逆鱗に触れられるだけで顔を真っ赤にして襲いかかってくるんだ。そこを刺して引っ張ってやれば、さぞかし堪えるだろう」
コブラ「まあ虫歯にしちゃあ、ちょっと度が過ぎてるが。へへ…」
レディ「でも、何故この竜に逆鱗があるなんて分かったの?」
コブラ「コイツの下を潜る時に、バッチリと」
コブラ「さてと、今度の飛行機の乗り心地はどうかな?」
レディ「チケットが無いのだけれどいいかしら?」
コブラ「構いませんよ、お姫様」
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