【ガンダム00】沙慈「僕の義兄はフラッグファイター」

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15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 21:38:14.29 ID:CN7CGQ/zo
ハム公は一回結婚したらきっちり操立てそうだしなあ
本編の刹那関連の動機が全部サーシェス対象になりそう
16 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/24(水) 03:44:43.55 ID:lfGXqz9z0


――日本・マンション――

沙慈「へー、姉さんがお見合い。ふーん」ジュゥゥゥゥ

沙慈「………………」ジュゥゥ

沙慈「OMIAI?!」ボゴォンッ

絹江「沙慈、お肉焦げてる! 」

沙慈「わわわわ!!」カチカチ

沙慈「……ふう、で?」

絹江「で、って?」

沙慈「受けるの? この縁談」

絹江「はあ、あんた私の話聞いてたの? 受けるわけ無いでしょ」

沙慈「結構……っていうか相当かっこいい部類じゃない? この人」ピラ

絹江「面食いの気はないわ。第一ね、その人相当な食わせ者よ」

沙慈「そうなの?」

絹江「ええ……」


 ・
 ・
 ・
 ・

イケダ『グラハム・エーカーか。ああ、知ってるよ。というかユニオンの軍部に詳しい奴に知らん奴はいないだろう』

イケダ『なんたって現ユニオン・エアフォース最強の呼び声高いトップガン。最新鋭機【ユニオンフラッグ】の筆頭エースだものな』

絹江『そ……そんなに凄いんですか? 彼』

イケダ『別格だろうな。一部の評論家からは馬鹿みたいに嫌われているが、一般論ではまず彼の名が挙がる』

イケダ『2302キューバ派兵で初めて戦果を出してから、以降狂ったように空を飛び続けてる。毎回酷い目に合わされてる人革の対空専門部隊の的には、彼の写真が毎回貼られてるって三文記事も上がったけな』

絹江『へえ……』

イケダ『んー……だがなあ、人間的には絵に描いたような偏屈だそうでな』

イケダ『何より、2304のコンペの模擬戦でかつての上官を撃墜させ死亡させたという曰くから、ブンヤの間でも良い噂は聞かん男だよ』

絹江『【上官殺し】……あ、彼が……?』

イケダ『聞いたことあったか。まあ噂は噂、裏が取れんものは多い。あんまり気にし過ぎない方が良いとは思うが』

イケダ『叩いて損をする橋はない……この世界の鉄則だな』



イケダ『あ、女絡みの噂は驚くほど出ないらしいぞ。同性愛者かもって向うの特派員がな』

 

 ・
 ・
 ・
 ・

絹江「……」
17 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/24(水) 03:58:02.47 ID:lfGXqz9z0


沙慈「……それ、大丈夫なの?」コト

絹江「婚約するわけでもあるまいし、気にすることじゃないわ」

絹江「と、言うわけで。来週少し空けるから家のことはよろしくね」

沙慈「いつものことじゃないか、こっちは気にしないでよ」

沙慈「でも……少し残念かな」

絹江「……何がよ……」ズズ


沙慈「だって、姉さんこういうのでもないとどうせ結婚出来ないだろうし」

絹江「 」ブフォ


沙慈「父さんの後を追って、ジャーナリストになったのはいいけど、僕の世話もあって学生時代だって男っ気皆無の日干し生活」

沙慈「社会に出ても上から睨まれて、書く記事全部攻撃力高すぎて同僚には女傑扱い、出逢いらしい出逢いも飛び回ってる生活じゃあ期待も出来ず」

沙慈「弟の僕から見ても……何ていうか、地味というか……もう少し彩りがあってもいいと思うんだけどねえ」ハァ……

絹江「…………で……!」

沙慈「……ん?」



絹江「なぁんで養われの身のあんたにそこまで言われなきゃあならんのじゃあああああああ!!!」ドンガラガッシャーン

沙慈「わぁあああああああ!!!」ガシァーン


沙慈(でもね、姉さん)

沙慈(もしね、誰か、姉さんの夢と一緒に姉さんも幸せにしてくれる人が出来たのなら)

沙慈(僕のことなんか気にしないで、一緒になってもらえたらって)

沙慈(――本当に、そう、願ってるんだよ)
18 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/24(水) 04:31:42.15 ID:lfGXqz9z0


――前日・MSドック――


グラハム「……」

「眠れんかね?」

グラハム「!」


エイフマン「爆風吹きすさぶ鉄火場を生き抜くユニオンのトップエースも、自身の未来の掛かった出会いの前では、緊張もするか」

グラハム「……プロフェッサー」

エイフマン「ふふふ、良い良い。まだ若い証拠というわけだ、老骨には眩しい限りよ」

グラハム「その様子ですと、謀られましたな。教授」

エイフマン「んー?」

グラハム「……貴方には感謝をしています。この若輩者をフラッグのテストパイロットに選定していただけたことも、今なお有能な整備班を預けてくださることも」

グラハム「我が戦果の半分以上は、その頭脳と見識よりもたらされたもの。そう日々肝に銘じ飛び続けているほどに」

エイフマン「……」

グラハム「ですが今回ばかりはお節介が過ぎるのではありませんか、教授」

グラハム「私は期待に応えるべく、そして自ら望みこの空を飛び続けている。その妨げを自ら我が眼前に置かれるとは、悪戯にも度がありましょう」


エイフマン「……くく、まだまだ、青いな」

グラハム「なんと?」

エイフマン「青い青い。出逢いを妨げと突き放し、繋がりを鎖と遠ざけ、知らぬ世界を書割と称し見向きもしない」

エイフマン「成る程、確かに君は弱卒だ。【飛ぶこと】が人生の全てと言い切るならば、なぜ今怯える必要があるというのかね」

エイフマン「何処へなりとも迷わず飛んでいけばいいだけなのに、今、何故か眠れない。それそのものが君の致命の弱点だと何故気付かない」

グラハム「っ……」

エイフマン「君は強い。君がへりくだった先ほどの言葉、私はその全てに否と答えよう」

エイフマン「君と同じ機会を、君と同じ待遇を与えたとして、果たして何人がそれに【近しい結果】さえ出せるというのかね」

エイフマン「君は強い。おおよそ、君が飛ぶことを妨げられるものなどこの世には存在し得ない、そう言い切れるほどに」

エイフマン「だが、君の【弱さ】がその矛先を狂わせる。一人で飛び続けたとして、君は……」


エイフマン「――決して、君の望んだ空を飛び続けることは出来ない。だから、君は、弱い」

グラハム「……!」
19 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/24(水) 05:26:33.64 ID:lfGXqz9z0

グラハム「ならば敢えて問い返しましょう、この縁談の真意を」

グラハム「よもや貴方ほどの叡智を持った人物が、伴侶を得ただけで真の強さを得られるなどという世迷い言を申されるつもりでは……!」

エイフマン「ないない。第一断られること前提の人選じゃ、【お互い】な」

エイフマン「だから明日も遠慮なく断ってきたまえ。逃げさえしなければ何してもいいぞ、セクハラと犯罪以外でな」

グラハム「ッッッ……!!?」

エイフマン「なんというかな、そろそろ教えとかんといかんと思っただけのことよ」

グラハム「な……何を、でしょうか」


  スッ


エイフマン「【空の広げ方】じゃよ」


グラハム「そらの……広げ方……?」

エイフマン「あぁ……分からなくてもいい。今はまだ、な」

エイフマン「じゃ、おやすみ。遅刻するでないぞ、フラッグファイター」スタスタ

グラハム「あ……!」

エイフマン「俗世のことを知るのも勉強じゃ。空と違って、ここはままならぬものだから、のう」

グラハム「……!」


――――

ホーマー「……まさか本当にやるとは思いませんでしたよ」

ホーマー「しかしよろしいのでしょうか。貴方の株を下げるようなことを……」

エイフマン「なぁに、年寄りの道楽であることに間違いはあるまい」


エイフマン「あれはなあ……このまま行けばきっと何処かで道を踏み外す」

エイフマン「強すぎるのだ。一人で立ち続けることが出来てしまう。だから、あれの膝を折れるものこそいないものの」

エイフマン「対等にでも張り合われたら、それだけで奴はどんどんねじ曲がっていく」

ホーマー「……」

エイフマン「まあ、俗世間に染めて弱くするのがいいこととも思えんが、狂うよりは幾分マシじゃろうて」

ホーマー「上手くいきますかね」

エイフマン「断っていいとはいったが、ちゃんと断ってくれるか不安だの」

エイフマン「お前としては、あれがただの【力】であるままのが良いのかもしれんがな」

ホーマー「明言は避けさせていただきます」

エイフマン「ふん……」
20 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/24(水) 05:35:58.83 ID:lfGXqz9z0
また今晩、早急に続きを
しばらくは眠れぬ夜の道楽ですが、休みが来たらまとまってお送りいたします
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 07:18:58.41 ID:notREI9DO
ハムはほっとくとガンダムの所為でどんどん歪んじゃうからね

身持ちが堅いな!絹江!!

しちゃうのか……
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 07:25:21.44 ID:l8cP+lc4O
数年後、そこには仕事を放っぽり出してひたすらイチャつく二人の姿が

さすがに想像できない
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 08:38:32.22 ID:notREI9DO
>>22
身持ちが堅いな!絹江!

の後

貴様と言う存在に妻を奪われた者だ!!!!!

しちゃうハムは……?
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 10:29:18.63 ID:n/7HyHT/0
公さんFXの時に撃墜してしまった上官の娘とお見合いしてなかった?
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 12:25:13.57 ID:1yABeENsO
絹江・エーカーっていいな
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 14:22:47.58 ID:Oixhjxl3o
【ギャルゲの】GLAHHAM―グラハム―【主人公】

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm5101755

支援
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/24(水) 16:22:05.59 ID:/EXdtled0
よもやこのようなSSに出会えようとは……

センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない
28 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/25(木) 04:56:30.02 ID:sXSNeRCP0
休暇を勝ち取り意欲がトランザムいたしましたので今夜改めて投稿いたします。
量に関してはお察しください。筆の速さまで三倍とはいかないものです。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 10:07:07.94 ID:eeZh/ZbBO
乙乙
沙慈、お前も一応マクロスの主人公だったやん、ゲームだけど
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 18:56:57.03 ID:Lqsw+pmso
面白そう
31 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 03:42:26.15 ID:Qlgv2gam0


――そして、今――


――お見合い当日――


ルイス「ここがお見合い会場ね!!!」バァァーン



絹江「 」


沙慈「ごめん……姉さん」


――アメリカ・某将校別荘――


ルイス「すっごーい! 見て見て沙慈、鯉よ鯉! いっぱいいるわ!」

沙慈「ルイス……お願いだから静かにしててよ? 僕たち完全に部外者なんだから」

デスク「はは……部外者ってわけでもないとは思うが、あまり遠くに行かないでくれよ?」

デスク「ここは向うの将官どのの別荘みたいなもんでね、日本通で知られる彼の趣味で整えられている」

デスク「ハレヴィ家のご令嬢なら心配いらないとは思うけれど、絹江のお相手はなかなか手ごわいらしいから、慎重に行かないとね」

ルイス「はーい!」

デスク(……この子本当にあの世界的富豪の子か? いや、いい意味で違和感というかなんというか……)


絹江「……沙慈、私着替えてくるから、あとよろしく」

沙慈「あ、うん。頑張って、姉さん」

絹江「あの子、ちゃんと後で紹介しなさいね」ポン

沙慈「……うん」

女中「こちらです、足元にお気をつけを」

絹江「はい、ありがとうございます」


絹江「……ふうー……」


沙慈(…………)

沙慈(何だか緊張してるみたいだ。大丈夫かな、姉さん)
32 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 03:44:23.59 ID:Qlgv2gam0




デスク「や、心配かい?」

沙慈「あ、いえ……本当にすみません。押しかけるみたいにこんな……」

デスク「いや、構わんよ。ああ見えて絹江も相当キテたっぽいからむしろありがたい」

沙慈「え?」

デスク「そりゃあ断るのを前提にしても、お見合いだもんな」

デスク「自分の将来に関わるデリケートな問題だ。何も感じるなというのがおかしいさ」

沙慈「そう、ですか」


沙慈(……家ではそんな素振り見せなかったのにな)

沙慈(自分のことなんだから自分のことだけ心配してくれればいいのに……相変わらずなんだから)


デスク「ああ見えて本番にはめっぽう強い子だ、心配はしていない、が……」

沙慈「グラハム・エーカー中尉、ですか」

デスク「大丈夫だと思いたいんだけどなあ……相手が相手だ」

沙慈「お相手に変なこと言われなきゃいいんですけど、ね」

デスク「ああそうだ、さっき向うの連絡役に庭の出歩きを許可されたんだ」

デスク「彼女のお守りは任せていいよね? いい関係みたいだし、さ」ニヤニヤ

沙慈「そういう詮索、ルイスにはしないでくださいよ……? もう」

――――


沙慈「ルイス」

ルイス「……もういっちゃった?」

沙慈「うん、お色直し……じゃなかった、おめかしでいいのかな、ああいうの」

沙慈「いいの? 庭、今なら見放題だって」

ルイス「……沙慈……」

沙慈「……何?」



ルイス「どぉおしよう! 絶対お姉さんに勘違いされた!! 頭の弱い子だって思われたよぉ……!!」ワーン

沙慈「はー……人見知りが無理して第一印象コントロールしようとするから……」ポリポリ
33 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 03:52:05.64 ID:Qlgv2gam0


ルイス「うわー! 絶対やらかした……」

沙慈「ルイスはルイスのままでいいんだから、下手に作らなくても」

ルイス「い・や・な・の!」

沙慈「……な・に・が?」


ルイス「……お姉さんに、気取ったお嬢さまだとか、ぶってるとか、思われるの」

ルイス「沙慈に似合わないとか思われるの、やなの」


沙慈「……」

ルイス「っ……」

沙慈「…………」


沙慈「……ねえ、ルイス」

ルイス「……なに?」


沙慈「今日僕ら主役じゃないんだからそこまで頑張らなくてm《沙慈のバカ!!!!》グワーッ脛?!!」バシーン

――――

絹江「……どうでしょ?」ピシーッ

女中「すごくお似合いになっておりますよ!」

絹江「あー……ありがとうございます……」

絹江(まさか見合いで訪問着着るとは思わなかったわ……流石にクるなあ)

絹江(ええい、ここまで来たらなるようになれよ……!)パシンッ

絹江(作戦決行まで残り……!!)


 ・
 ・
 ・


グラハム「……30カウント」

ホーマー「往くぞグラハム」

グラハム「御意に」



34 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 04:18:59.71 ID:Qlgv2gam0


デスク「お、来たか……」

JNNの偉い人(以降Jオジジ)「時間ピッタリ、流石は軍人だのう」


沙慈「あ、来たみたい」コソッ

ルイス「グラハムさんだっけ、童顔だけど結構顔はいいよね」

沙慈「僕だって多分大人になっても変わらないよ」

ルイス「沙慈はいいの、沙慈は!」

沙慈「基準が曖昧だよ……と」

ルイス「き……た……?」



グラハム「――此度は、宜しくお願い致します」スッ

デスク「う……!」ゾワッ

Jオジジ「ふが……?!」ブルッ


沙慈「……!!」

沙慈(なん、だろう……写真とはぜんぜん、空気が違う)

沙慈(表情……違う。確かにしかめっ面だけどそこじゃない)

沙慈(不安? 姉さんみたいに……違う! そういった弱い感じは全くしない、むしろ――)

ルイス「ね、ねえ沙慈……あの人……」

ルイス「何だか、獣みたい……」


グラハム「……」ジロ

沙慈(! こっち見た!)サッ

ルイス(わわっ……)ササッ


グラハム「……彼ら、いや、彼はクロスロード氏の付き添いですか?」

デスク「え、ええ……よく分かりましたね、弟さんです」

グラハム「顔に面影が宿っている。もう片方はそうでもなさそうだが」

デスク「あはは……弟さんからは、けっこう高評価で……」

グラハム「もう会うこともありません、詮無いことです」

デスク「……う……」

Jオジジ「どうなされたのだ、エーカー殿は。かなり不機嫌そうだが」

ホーマー「昨晩、わざわざ喧嘩を売りに行った70代の世界的権威がおりましてな……」

Jオジジ「あー……」
35 :※談笑をしています。グラハムも楽しんでおります ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 04:48:03.66 ID:Qlgv2gam0

カツンッ

グラハム「!」

沙慈「!」

エイフマン「くっくっく……ここまで予想通りだと、笑うしかないかな」

グラハム「教授」

沙慈(誰だろう……かっこいいお爺さんだな)

ホーマー「ほら、アレです」

Jオジジ「何わろうとるんじゃあのジジイ」


エイフマン「いい具合に仮面が剥がれてきとるではないか。ん? 大丈夫かグラハムよ」

グラハム「何処ぞの恩師のおかげで平静には程遠い精神状態を余儀なくされておりますよ」

エイフマン「もう少し余裕を顔に浮かべてはどうかね。そう怖い顔をしていては、お相手が逃げてしまうかもしれんぞ」ニッ

グラハム「この茶番をハラスメントと犯罪行為以外で終わらせる、条件には合致しているように思われますが」

エイフマン「意趣返しか、ふふ、抜かしおる。それでこそ儂の選んだ男よ」

グラハム「……もし無為に終わろうものなら、今後も兼ねて考える時間を頂きたいものですな」

エイフマン「案ずるな、どう転ぼうと損はさせん。だが死なばもろともでわしの顔に泥を投げんでくれよ」

グラハム「女性に無礼を見せる男とお思いですか、低く見られたものだ」

エイフマン「男にしとる時点で信用はストップ安じゃよ。一部上場からやり直すんじゃな」


沙慈「…………」

ルイス「おじいちゃんすっご……あの怖い人と言葉で殴り合ってる……」

沙慈(あの人が姉さんの……)

沙慈「……いや、だな……」


エイフマン「さて、立ち話もここまでにしよう。乙女が着飾ってお前を待っておる」

グラハム「たのしみですな」

エイフマン「そうだろうそうだろう……はっはっは!!」


ホーマー「…………」

ホーマー(さて、あのスレッグ・スレーチャーが不可能だったことを……レイフ・エイフマンはどのように仕掛けるおつもりかな)


エイフマン「さーて、はたして何秒保つかのう、絹江どのは」

ホーマー「えっ」
36 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 05:17:28.53 ID:Qlgv2gam0
明日また早急に続きを。
想定外のコメント数にひたすらの感謝を。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/26(金) 05:49:19.67 ID:t3m1JqO40
楽しそうだなジジイ
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 01:11:28.86 ID:KLdjaNf/0
面白い!期待
39 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/27(土) 03:45:04.13 ID:l010DIjG0


――応接間(和室)――

グラハム(まだ時間には少し早い……が……)


グラハム「…………」

エイフマン「ほうほう、庭もよく見える。良い会場じゃな」

グラハム「……教授」

エイフマン「ん?」

グラハム「あなたはご存知のはずです。私がかつて、戦場での恩師の愛娘を袖にしたことを」

エイフマン「応。まあ袖にしたというほど冷酷なものではないと聞いたがな」

グラハム「無関心を理由に事後処理を怠った、相手の好意を無視したことには変わりません。当然の烙印でしょう」

グラハム「そして、そんな自分が、ましてや見ず知らずの女性を伴侶に迎え家庭を得る……どう熟慮しても不可能です」

エイフマン「分かっておる。そう考えていることは、だがな」

グラハム「ッ……」チッ


グラハム「第二の恩師よ、私にはあなたの真意が読めない」

エイフマン「それは、自分が主役だからと見誤っておるからだグラハムよ」

グラハム「なんと……?」

エイフマン「学べ。【彼】とは会わせられなかったが、彼女はその遺志を継いでおる」

エイフマン「手段が悪いのは自覚しておる、が、まあ……」

エイフマン「もしかしたら、そんな老婆心が湧いたのも事実。軽蔑も甘んじて受け入れよう」

グラハム「?……??」

エイフマン「! ほれ、来たぞ」ヒソ

グラハム「! …………」スクッ


ガラッ





絹江「し、失礼いたします!」
40 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/27(土) 03:46:36.17 ID:l010DIjG0





グラハム「――――!」





絹江「――――!」



41 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/27(土) 04:17:24.92 ID:l010DIjG0

Jオジジ「では絹江くん、彼の向かいに座っ…………絹江くん?」

絹江「……は、はい!」ハッ

エイフマン「ほぉ…………」

エイフマン(あの小さな子がここ迄……月日とは無情ならざるものよな)

グラハム「……」フイッ

エイフマン「どうしたグラハムよ、右下に見合い相手はおらんぞ?」

グラハム「っ……は……失礼いたしました」

エイフマン「かかか……ここの女中は着付けの腕なら知る人ぞ知る名人ぞ。素材も良いが、見事なものよな」ヒソ



グラハム(彼女が絹江・クロスロード……写真で見るより小柄な印象を受けるが)

絹江(わー、実際見てみるとやっぱりいい顔してるわ。モデルか何か? いや軍人なんだけどさ)

グラハム(彼女の何が私の弱さを克服するに足り得るか……刮目させてもらおう!)

絹江(ひいー……めっちゃ睨まれてる。私生きて帰れるかなぁ……)

グラハム(おっと……その前に)

絹江(大切なことがあったわね……)




((どうやって断ろう……?))




――別室・実況中継室――


ビリー「さあ始まりました、第一回【グラハム・エーカー&絹江・クロスロードお見合い会場実況】」

ビリー「此度の実況、お送り致しますはエーカー中尉の盟友にしてMSWAD整備班長兼技術顧問兼専任整備士のビリー・カタギリと」

ルイス「未来の義弟とそのハニー、沙慈・クロスロードとルイス・ハレヴィがお送りいたします!」

沙慈「あぁ……もう……」ガクッ

ビリー「よろしくお願いいたします、ご両人」ペコリ

ルイス「よろしくお願いしまーす!!」ペコリ

ビリー「いいノリだねえ、君たちに付き合って貰った甲斐があったというものだよ、うん」

ルイス「いえいえ、どうやって会場出歯亀しようかなって思ってたからほんと渡りに船でしたよー!」

沙慈「あの……一ついいですか?」

ビリー「んー? なんだい義弟クン」

沙慈「まだ決まってません! ……えっと」

沙慈「この大量のモニター、何処から画像取ってるんです?」

ビリー「全部三時間前に仕掛けた極小隠しカメラからだよ」

沙慈「 」

ルイス「うわ……」

ビリー「いやあリアルな蔑みの眼差しが心地よいね」
42 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/27(土) 05:05:08.91 ID:l010DIjG0
しまった、区切るところ間違えた
なのでここからは一週間スパンで。
10レス以上書けていない場合は「足りねえぞ怠けんな」とでも𠮟咤してください。

では、次回金曜日にまた。
グラハムNLもっと増えて欲しい。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 07:08:38.64 ID:IitpCuVz0
よし、やはりグラハムはガンダム一筋のようだな
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 07:39:24.44 ID:/1fzrI9Po
乙乙

ハムは軍服は流石にないから無難にスーツなんだろうか
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 11:53:30.59 ID:3wXTf1NDO
>>44
ブシドースタイル
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 13:05:07.03 ID:cm8PuRg5o

何やってんですかカタギリさん……GJ
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/27(土) 18:45:14.35 ID:olQ1Ql1E0
>>44
軍人だったら礼装の軍服を持ってると思うが。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 03:27:34.12 ID:26RRF2dPo
そもそも本編でもスーツ着てたし
というか初登場はスーツだったし
49 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:32:45.00 ID:9mNf6Wgo0
絹江の身長は五話の画像判定から165cmほどとしています。
ちょうどドモンとレインの身長差と同じくらいですね。

スーツでいいんじゃないですかね、多分。
50 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:33:52.97 ID:9mNf6Wgo0

――――

グラハム「グラハム・エーカーであります。27歳、階級は中尉。所属は【ユニオン直属米軍第一航空戦術飛行隊】、不肖ながら隊長を務めさせていただいております」

グラハム「こたびはこのようなせきをあたえていただき、かんしゃのねんとともにきょうえつのいたり。ともによいじかんとなればさいわいと」

エイフマン「少し黙っとれ、声帯がやられたみたいになっとる」

絹江(棒読みぃ……)

Jオジジ(本当に大丈夫かこやつ)


絹江「ん……MSWAD、ですか。アメリカ西海岸に基地を構えるMS部隊……最新鋭機フラッグを早くも導入して研究を重ねているという」

グラハム「! お詳しいのですね、流石はJNNの特派員、お若いのに優秀なリサーチ速度だ」

絹江「あはは……ユニオン方面の特派員からの又聞きも含まれておりますので、私個人のそれではありませんよ」

グラハム「だが調べてくださったのなら話は早い。私自身がどのような人物か……すでに調査済というわけだ」

絹江(っ……棘のある言い方するわね)

絹江「ええ、多々諸々には……ですが、噂はあくまで噂、でしょう?」

グラハム「好意的な解釈の出来る返答だ、結構」

グラハム「ですが、私は敢えて貴女のことは書面で知れる程度に留めてあります」

絹江「……?」



グラハム「出来るなら、貴女自身の口から、貴女のことを私は知りたい。そう言っています」

絹江「…………え、へ、えっ……?!」

エイフマン「あー……多分、前向きな意図はないと思われるよ、うむ」

――――

ルイス「おおっと、これはグラハム中尉怒涛の攻め! カタギリさん、これは……!?」

ビリー「あれはグラハム語で【私はしたんだから早く自己紹介して欲しいな、そんなことも分からないのかね】ですね」

ルイス「思ってた以上に辛辣ッ!!」

沙慈「……」
51 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:36:17.97 ID:9mNf6Wgo0
絹江「えー……はい、では」コホン

グラハム「…………」ジーー

絹江(……この数分だけで分かったことがあるわね)

絹江(この人、恐ろしく極端だわ。自分自身でも出来ないくらい融通が利かない性格)

絹江(ああもう、なんか目をそらすのも癪だわ。何もしてないでしょ、まだ!!)キッ

グラハム「! ふ……」クスッ

絹江(!? 今度は笑われた! 何なのよもぉ……!)

エイフマン(ほお……?)


――――

ビリー「へえ? 意外だな、グラハムを睨み返すとはね」

沙慈「……そんなに、反応するものですか」

ビリー「機会があったら真正面に立ってみるといい。あれの眼力は相当なもんだよ」

ビリー「ましてや、今の彼は教授のちょっかいでそういうところの我慢が抜けているようだからね。僕や部下たちでもどうだか……」

ルイス「分かる気はします。何ていうか……豹とか虎とかに、襲われないんだけどジーっと見られてる感じ」オマエヲクウ

ビリー「とにかく圧が凄いんだよねえ。目つきは悪くないんだけど、さ」

絹江『絹江・クロスロード、年齢は22歳。JNNのジャーナリストとして、日夜取材に明け暮れております』

ルイス「始まった!」

絹江『此度はこのような……ええ、弟いわく、結婚など程遠い華のない女に!』

沙慈「姉さん!?」

ビリー「はっはっは! 言うねえ弟ぎみ!」

ルイス「沙慈サイテー」

絹江『大変素敵な目線をいただける男性との邂逅の場を与えていただき、ありがとうございます!』

52 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:39:33.09 ID:9mNf6Wgo0
――――


グラハム「ふはは、成る程、これは……」クックック

絹江「また笑って……!!」グヌヌ

グラハム「プロフェッサー、謀ったのは私だけではなかったと、そういうことですか」

エイフマン「あー、なんとなくそんな気はしとったが、そっちも無理くり連れてきたタチか」

絹江「え?」

Jオジジ「そらそうじゃ、この子上の言うこと滅多に聞かんもん」

エイフマン「ふふ、うちもじゃよ、儂に命令権などは無いがね」

Jオジジ「どこも同じじゃのー」

絹江「え? え?」

グラハム「いえ、此方の話です。では続けて」

絹江「???????」


――――

ルイス「んー、今のやり取りなんか怪しい」

ビリー「さ〜何のことやら」

沙慈「姉さん……お相手になんてことを……!!」

『 』ガヤガヤ

 ・
 ・
 ・


絹江『――――』ペラペラ

グラハム『――――』ジー

エイフマン『――――』ケラケラ


ルイス「小康状態が……っていうか、普通。つまんない」

ビリー「そりゃあね、彼らは大人だ。世間体というものを抜きにしても、そうそう初対面の人間に踏み込んだことは言えないさ」

沙慈「カタギリさん」

ビリー「はいはい?」

沙慈「グラハムさんは、どんな人なんですか?」

ビリー「ふぅむ、ストレートな意見だね……」
53 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:43:45.87 ID:9mNf6Wgo0

ビリー「見たまま、というのは答えにしてはいささか横暴かな」

ビリー「いい男だよ。もっとも、それは軍人という観点であり、盟友という視点からの意見だけれど」

沙慈「……姉さんには、合わないと思うんです、そういう人」

ビリー「かもね。だが、決めるのは君かい? それとも僕かい?」

沙慈「っ……」ジロ

ビリー「恋は己と相反するものに惹かれるもので、愛は己と同一のものに捧げるもの……かつてそう謳った人を知っているけれど」

ビリー「こうは思わないかい。こんなこと――理解不能な方が万倍面白い、ってね」

沙慈「無責任ですよ……そんなの」

ビリー「そりゃあそうさ、僕のことじゃない。だから思うだけ、見ているだけ……」


――――

グラハム(かねがね想像通り、見掛け倒しとは行かぬがこれといって特筆すべき点はない)

グラハム(はて……我が目に狂いがなければ、あのお方がそろそろ仕掛けるはず、だが?)

絹江(なんだろ、想像してたよりは悪くない、かな)

絹江(とっつきにくいとことか面倒くさいとこは見えてるけど、隠そうとはしてないから、これがこの人のありのままなんだろうな)

絹江(でもこういう人と家庭は……想像できないなあ)

グラハム(見ている分には、面白いのだがな)

絹江(……いやいやいや、断ること前提だから、取材とかできなくなるのごめんだから!!)ピシャリ

グラハム(?)



エイフマン「さてでは絹江くん、少し個人的な話をしたいのだが、どうだろう」

絹江「はい……?」

グラハム「!」

エイフマン「ここに来るまでに、参考がてら君の記事を読ませてもらった……が、ふむ?」

エイフマン「今君を見ていて思うが、執筆者本人に比べ、記事の方は随分とおとなしいようだ」

絹江「!!」ピクッ

エイフマン「君という人物を知るに際し、この差異……何かあると踏んだが、どうかな?」ニヤリ

――――

ルイス「おっと、ここで教授さんが仕掛けた模様です!」

ビリー「おいおい……何やってんですか……」

沙慈「……」
54 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:48:40.68 ID:9mNf6Wgo0
――――

絹江「……」ギロッ

Jオジジ「いや……ワシもうそういうチェックとかしてないし……」

絹江「……どの記事を拝見されたかは分かりませんが、確かに、私の書いたものは【強制的に】! おとなしめにされる傾向があります」

エイフマン「ほう、これは先々月のJNN関連誌のものだが」

絹江「あ、それ酷いんですよ!?工業地帯の汚染水廃棄問題、地域単位で癒着が広がってたって言うのに上院議員の圧力で尻込みして、あげく連邦捜査局にすっぱ抜かれて……!!」

エイフマン「尻尾きりで工場と若手議員だけが逮捕及び調査を受け、根本まで手が伸びなかったと」

絹江「……そりゃあ、フェッドが動けばいずれは手が及ぶかもしれません」

絹江「ですがそれでも、我々が真実を探る手を緩める理由にはならなかったと信じています」

エイフマン「それが、君のビリーフというわけかね」

エイフマン(いや、今はまだ……【彼】の受け売りか)

グラハム「…………」

グラハム「一つ、よろしいでしょうか」

絹江「え? あ、はい!」

エイフマン(ほう、乗ってきおったか)ククク

グラハム(キラーパスにも程がある……だが、仕掛けた以上ここに彼の意図があるとみるべきか)


グラハム「私が知りたいのは、この記事が本来の書き方をされていた場合」

グラハム「現地工業地帯の従業員やその家族への影響は如何ほどであったか、ということです」

エイフマン「ぬ……」

絹江「それは……」

グラハム「正義の追求、成る程、確かに素晴らしいお題目だ。それで糧が生まれるならそれは最上でありましょう」

グラハム「だが、私の知るジャーナリズムは、その範囲を逸脱する点が非常に多い」


――――
ルイス「なんか、さっきより感情篭ってる感じ……」

沙慈「勝手なこと……!」

ビリー「ま、彼自身マスメディア受けが悪い上に、【例の一件】はそれが原因で歪んで広まったからね」

ビリー「JNNは日本古来の感情扇動型の報道に欧米の無遠慮さが加わって、一時期国内外でも評判悪かったから、彼のイメージが悪いのは積み重ねとも言える」

ルイス「そうなんですか……」

ビリー「ふむ、でも……これは好機かな」

ビリー「ユニオン屈指のしつこさに、彼女の真価が見えるかも……なんてね」

沙慈「!」

沙慈(言われてみれば……僕はジャーナリストとしての姉さんを何も知らない……)

沙慈「……分かるのなら……!」ジッ

ルイス「……こーいうとこ、好きなんだよねえ」

ビリー「三十路過ぎの非リア充の前で青春とは、さては僕を殺す気かい?」ハッハッハ
55 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:56:01.72 ID:9mNf6Wgo0
――――




グラハム「軍人は命令に従い動く存在です。隷属を絶対とする存在から見れば、上官の意見も振り払い動く貴女はとても眩しく、輝いて見えます」

グラハム「ですが、国家に帰属するものとしては、危うくも感じる。そう思えます」

絹江「我々は不要な情報を掘り上げ世を混乱させる存在であると、そう仰りたいのですか?」

グラハム「そう感じられたのなら謝ります。ですが、我々は他者の利潤のために生命を懸ける存在」

グラハム「大局に動かされるものから見て、【割り切る】という考えは如何なるものにも適応されてしかるべきと、そう考えます」

絹江「……否定は、しません」

グラハム「情報が広まって得をする者もいれば、損を被るものもいる。知らねば収まったものが、再び息を吹き込まれた薪が如く燃え盛ることもある」

グラハム「例に挙げたものの、詳細を知らぬ私には言えないことではありますが……影響を鑑みた上で、添削と修正をされたのでしょう?」


絹江「……確かに、現地の方々の暮らしに強い影響が起きたのは、私も知らないわけではありません」

絹江「公表する以上、糾弾と指摘の境界の見極めをすべきとの判断から表現の変更が行われたこと、私自身納得こそ出来ませんでしたが、間違っていたとも思ってはいません」

グラハム「妥協点を見いだせていた、と?」

絹江「言うなれば、ですが」

グラハム「では、他者の利潤や不利益で報道の真実が歪められること、それに是とすると」

絹江「……それに頷くときは、私が筆を折るときでしょう」

グラハム「矛盾。そう突き放せるほど私は冷酷ではありません。だが、凡百の意見であると、そうは思えます」

グラハム「貴女の意見ではない、そうでしょう? 絹江・クロスロード」

Jオジジ(あ、これワシの出番終わってるパターンじゃな)

――――

沙慈「……」

ルイス「これ、答えなんかないですよね……」

ビリー「だね。つまりグラハムも、明確に答えられると思っていない」

ビリー「なら何が聞きたいか……はてさて? 弟くんは、どう考えるかな」

沙慈「……見ていてください。姉は必ず、答えきってみせます」

ビリー「ほう?」

沙慈「だって――あの人は、グラハムさんから、目を背けていない!」
56 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 06:15:03.90 ID:9mNf6Wgo0
――――

絹江「それらがそうなると知りながら、そうあるべきであった……そうですね、それが私の答えになると、思います」


グラハム「自身の報道で作業員らの職に打撃を与え、多くの利潤を無為にしても、その真実はありのままに報道されるべきであった……と」

絹江「勘違いなさらないで欲しいのは、その事実が明らかになることで起きうる混乱を是とはしていないことです」

絹江「この問題だけではない、報道において、後から現れた事実が全てを一変させることなど茶飯の出来事だからです」

絹江「それに、民衆は愚かな存在ではありません。情報を多く受け取れる24世紀であるからこそ、衆愚の恐怖に発信を恐れるような不安は古いものであると、私は敢えて言い切ります」

エイフマン「ふむ……」

絹江「私は【事実】を求めることが報道においての姿勢ではないと考えます。その先の……それらを積み上げた末の【真実】をこそ求めるべきであると、そう、思索しています」

グラハム「……この問題においては、【真実】に至る【事実】の積み上げが足らなかったと、そうお考えですか」


絹江「無論、それらをまとめて一挙に出せるならそれに越したことはなかったはずですが」

絹江「報道が抑止や出頭、事実確認へのきっかけになることもあったはず。今回の一件、それこそを目的とし、結局そこには至れませんでした」

絹江「だからといって諦めるつもりもありません。次こそは……そう、次こそは、と」


絹江「立場や利益では決して揺るがない【真実】に辿り着くため、今ある【事実】を積み重ねること。そこにこそ、ジャーナリズムは存在していると」


グラハム「……事実のみを観点に揺るがぬ姿勢にこそ、それはあると」

絹江「父の受け売りです。ですが、私の指標であり、目標でもあります」

絹江「報道とは幸福に導くものでもない、不幸に陥れるものでもない。人々の【選択】に寄与すべき中庸の要である。それが持論です」

グラハム「…………」スッ

エイフマン「うむ……」

グラハム「――成る程、貴女の語る真実は、私の思うそれより遥かに高く崇高な位置にあったようです」

グラハム「立場こそ違えど、それを知れただけで良かった」

絹江「! そう、ですか……」

絹江(うーん……? 今、ちょっと残念って思った?)

絹江(いや、仕事以外で男の人とここまで話すのも少ないから……きっとそうだ)
57 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 06:41:41.45 ID:9mNf6Wgo0

グラハム「そしてそれ以上に、貴女のお父上が如何に善きジャーナリストであるかが伺えた」

グラハム「機会があれば、お父上にもお逢いしたいものだ。無論、教えを請うという意味で」

エイフマン「あ……!」

絹江「……っ、申し訳ありません。父は既に他界しておりまして。今は、弟だけが家族です」

グラハム「……! それは大変な失礼を……!!」

絹江「いえ、むしろありがとうございます。父を褒めていただけるのは、娘としても感無量ですから」ニコッ

グラハム「――!」

グラハム(ん、ん?)

グラハム(……んん???)

エイフマン「あー……さて、どうだろう?」

Jオジジ「お、おお、そうじゃな。では二人だけでそろそろ……な?」

グラハム「む」

絹江「え……!?」


――――


ビリー「お帰りなさいませ、教授」

エイフマン「おうおう、一方的であったが、まあ、こんなもんじゃろ」

エイフマン「っとと、先客がおったか」

沙慈「初めまして、エイフマン教授。絹江の弟の沙慈・クロスロードです」

ルイス「えっと……その、ルイス・ハレヴィ……です、初めまして……」

エイフマン「ほっほ、ここでも見合いが始まっていたか。立会人とは光栄な事だなカタギリくん」

ビリー「いやいや、僕なんて終始おじゃま虫でして」

Jオジジ「ワシ帰りたい」ゲッソリ

エイフマン「後半、視線と視線の撃ち合いだったからのう、お疲れさん」ポン

ルイス(このおじいちゃんも眼力スゴイもんなあ……)

エイフマン「さて、撤退準備と行こうか。儂は一足先に帰る」

沙慈「えっ、見ていかないんですか?」

エイフマン「絶対こじれる見合いを見ても面白くはあるまいよ……?」

沙慈「え? ええ??」

エイフマン「儂が敢えて言わんかったことがすぐに出るじゃろ、そうしたら話は仕舞じゃ」

エイフマン「ヒント:住んでる場所。ほれ、準備せい皆の衆!」
58 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 06:43:05.74 ID:9mNf6Wgo0
足らねえ。ごめんなさい
次回金曜日までには目標値に。おやすみなさい
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/03(土) 06:55:42.51 ID:qaoBy9NTO
面白くなってきやがったぜ
乙乙
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/03(土) 08:10:41.03 ID:FCE37uPDO
えぇい、急げ>>1!私は我慢弱い!
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/03(土) 08:24:14.40 ID:uIXdEKGOo
乙乙
エイフマン絹江父とも知己あるいは目を付けてたんやねぇ
恐るべき爺さんや
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/04(日) 07:59:05.07 ID:gBxA+6qw0
早くしろ生きる為に戦えと言ったのは君がはずだ
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/04(日) 20:52:25.50 ID:9vxCXbDB0
これはなかなか熱いな
楽しみ
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/07(水) 16:49:41.67 ID:Wabt5iDCO
イイネ
65 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 00:48:38.51 ID:wMIlUvHJ0
私の中で最終話が終わりました。

では続きを。
66 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 01:22:52.17 ID:wMIlUvHJ0

――日本庭園風庭――

グラハム「はっははははは……!!」


絹江「……ごめんなさい……」カァァ


グラハム「ふっふ……いや、謝らないでください、くく、しかし、これは……」

絹江「うう……まさかこんなことになるなんて……」


 ・
 ・
 ・
 ・


――数カ月前――

デスク『絹江、お偉いさんがお前に折り入って話があるって……』

絹江『あぁパスしといてください、取材の予定が詰まってるんで! じゃ!』ピュー

デスク『絹江ー!!』

――それから数日後――

沙慈『ユニオンから姉さんと話がしたいってお手紙が……』

絹江『ふーん、置いといて。私また出かけるから留守よろしく! じゃ!』ピュー

手紙『この後私の存在が思い出されることはありませんでした』

――それから(ry――

電子メール『レイフ・エイフマンから貴女宛にお手紙です』

絹江『あーもう忙しいったら……!!』カタカタカタ

電子メール『この子私用メール見なさすぎでしょ……』


――そ(ry――

受付『すいません、まだ社には帰ってないみたいで……』

エイフマン『知ってた』


 ・
 ・
 ・
 ・

グラハム「いやはや、私用メールだけでも三通はスルーしている」

グラハム「私も登録されている者以外は見向きもしない質ですが、奇跡ですなこれは」

絹江「本当……お恥ずかしい限りで……っ」
67 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 01:43:07.16 ID:wMIlUvHJ0
グラハム「いえ、それだけプロフェッサーに熱い期待を送られていたということ。非礼には及ぶかもしれませんが」

グラハム「それ以上に、あの御方にそこまで見込まれているという事実をまず誇るべきでしょう、Ms.クロスロード」

絹江「何でそこまで……駆け出しの身で注目なんて受ける理由も見当たらないんですけれども」

グラハム「天才の眼というものは、一目だけでもその真価を見抜くものなのでしょう」

グラハム「かくいう私も、何故あの方に重用されているか分からんのですよ」

絹江「あら、それこそ天才同士のフィーリングというものでは?」

グラハム「私のことを調査なされているのでしょう? なら、世間の評価が私をどう扱っているか見知っているはずです」

絹江「ええ……まぁ」



絹江「偏執的とも言えるほどの出撃狂、トップエースの名を戦果と出撃頻度だけで飾る獰猛な兵士」

絹江「勢いと無二の技術に目を奪われるが、従来の技術ならばアラスカのジョシュアの方が上だとか、オキナワのタケイに劣るとか」

絹江「ああ後は、隠れて出撃を繰り返す古代撃墜王の再来、偏屈で珍妙な会話が脳髄を焼くインタビュワー殺し、とか!」


グラハム「……ほんとうによく調べられたものだ、最後の方は私も初耳ですよ」

グラハム「ですがかねがね正解と言えましょう。ふ、隠れて出撃していたのがバレていたのは意外でしたが」


絹江「えぇ、全部本当」

絹江「言い換えれば、ですけどね」

グラハム「……含んだ言い方をなさる」

絹江「だって、そうでしょう?」
68 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 02:08:28.58 ID:wMIlUvHJ0


絹江「戦場に出る兵士が戦果と出撃頻度以外でエースの何たるかを競う必要があります?」

絹江「問題行動が多いならまだしも、貴方は軍規違反や命令違反は驚くほど少ない人」

絹江「ましてや、女性問題や飲酒、喫煙などの人間性の問題も皆無ときて、品行方正や趣味などの問題に踏み込むのは事象の根幹を見誤っています」

絹江「……ていうか、この批評書いた人、長く業界にいる人らしいけど書き方が気に喰わないのよね。偉っそうにして」フン

グラハム「っ……?」


絹江「既存技術に関しても、そもそも貴方の評価はフラッグの性能を十全以上に発揮する空中変形技能の習得にあるものであって」

絹江「極端に劣るわけでもない上そこすらトップクラスの兵士から最大の強みを排除して評価するのはフェアじゃないですし」

絹江「何よりこのジョシュア・エドワーズはエアロフラッグ、空戦特化の機体に乗っていて評価も不平等! 頭おかしいんじゃないかしら」

グラハム「仮に彼がエアロフラッグに乗っていて、私が空中変形を封印していようとも……負ける気はさらさらありませんが」

絹江「お、いいですね。トップエースの矜持ってやつ?」

グラハム「元来負けず嫌いな男でして、そう言われるとこみ上げるものが無いとはいえません」


絹江「そういうの好きですよ、男の子って感じで」



グラハム「…………」フイッ

絹江「……そういうんじゃないです、あの、すいません、こっち向いてください、ごめんなさい」カァァ…

グラハム(からかうというのがこうも興に乗るものとは思わなんだ)ワザトー
69 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 02:44:27.14 ID:wMIlUvHJ0


絹江「ええっと……他のものに関しては、まあ、個性ってこういうもんだとしかいえませんが」

絹江「要は全部受け取り様なんです、こういうものは」

グラハム「吟味する側の問題と」

絹江「何も知らない人がこういうものを見れば誤解もするでしょう。私も正直逢うまで怖かったし、逢っても怖いと思うところあります」

グラハム(っ……本当にはっきりとモノを言うなこの人は)

絹江「でも、逢ってみないとわからないことはあります。本当に見てみないと分からないものもある」

絹江「そこがジャーナリストの仕事なんだろうなって思うんです。逢うべきなら【逢いたい】と、危険なら【逢うべきでない】と」

絹江「そう感じさせられるような、きっかけをこそ作るものだと」

グラハム「…………」

絹江「それに、さっき言ったのは一部の批評」

絹江「大半は貴方を高く評価している記事でしたし、私の先輩も貴方のことはべた褒めでした」

グラハム「ほう、そちらは信用なさらなかったと?」フフッ

絹江「? 何でです?」

グラハム「先ほどいっておられたではありませんか、怖かった――と」

グラハム「ん……あぁ、いや済みません。少し底意地の悪い言葉でした、忘れて……」

絹江「はい、言いました。嘘じゃあありません」

グラハム「え?」

絹江「怖いと思ってましたし、思ってます」

絹江「でも内心、何処かで期待もしてたんです。きっと」

絹江「で……」


絹江「多分、その期待も裏切られてはいないから――こうやって話していられるんだと、そう思います」




70 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 03:19:36.30 ID:wMIlUvHJ0


グラハム「…………」フイ

絹江「……あれ」

絹江(結構いいこと言ったと思ったんだけどな……受け悪かったか)

絹江「……」シュン

グラハム「そろそろ……戻りますか」

絹江「あ、はい」

グラハム「…………」


グラハム(うむ、まずいな)

グラハム(彼女の方を向けん)

絹江(分かってたことだけど、はっきり脈なしの反応は女の身にゃ酷だ)

グラハム(鏡など見ずとも自分の顔がどうなっているかはっきり分かる)

グラハム(この高温……恐らく耳までレッドゾーンだ)

絹江(あぁ気まずい。顔も上げられん。睨まれてないかな、いや眼中にもないか)

グラハム(さて、彼女が気づかぬことを祈って歩き続けても、いずれは彼らに遭遇するわけだが)

絹江(沙慈、そのお友達(仮)、お願いだからたすけて)


グラハム(――もう少し、この時間が続いてはくれぬものか)

絹江(――願わくば、この時間がとくとく終わらんことを)
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 04:37:48.97 ID:xJH6wbrkO
(・∀・)ニヤニヤ
72 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 04:43:22.82 ID:wMIlUvHJ0

――終わり――


デスク「終わった……!!」ゲッソリ

Jオジジ「オワタァァ……!!」ゲッソリ

ルイス「日本勢壊滅状態」

絹江「ごめんなさい、お待たせいたしました」

沙慈「姉さん」

絹江「記念撮影に一枚、なんて押し切られちゃって、ごめんね沙慈」

沙慈「ううん、似合ってた。綺麗だったよ姉さん」

絹江「そう? ……ありがと、沙慈」

「うむ、端正なスーツ姿もよく似合っておる」

絹江「!」

沙慈「あ……!」

エイフマン「最後に一声かけてから、と思ってね」

エイフマン「それと、謝罪を。このような場に君を不敵な理由で呼び出したこと、誠に申し訳なかった」スッ

絹江「ッ……」


ビリー「おお、みたまえよグラハム。MS開発の生ける伝説が一介のジャーナリストに頭を下げている、なかなか見れたものじゃないよ」

グラハム「…………」

ビリー「……何があったんだい? 三倍速もかくや、といった赤熱具合だが」

ビリー「君も分かりやすい男だね、恥ずかしくなると耳まで紅潮するんだから」


絹江「頭をお上げください、Mr.エイフマン。私の非礼を詫びる前にそのようなことをされては、立つ瀬もありません」

絹江「此方こそ、再三に渡るお申し出への無礼、お詫び申し上げます」ペコ

エイフマン「……では、これでお互いなかったことにしてもらおうか。棚に上げるような言い方で恐縮ではあるがね」

エイフマン「少なくとも……君にも有意義な時間であったことを祈るよ、クロスロードくん」

絹江「いえ、私は貴重な体験をさせていただいただけで胸がいっぱいで……ただ」

エイフマン「ただ?」

絹江「……そちらに不快な思いをさせなかったかだけが、心残りで」

エイフマン「……」チラ


グラハム「……」

ビリー「グラハーム、彼女帰るよ? 帰っちゃうよー、グーラハーム」


エイフマン「大丈夫じゃろ」

絹江「さいですか……」
73 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 05:33:34.43 ID:wMIlUvHJ0

エイフマン「あれが本当に不快に思ったなら他人には隠さん。好も不好もはっきり告げる男よ」

絹江「ええ、それは理解したつもりです」

エイフマン「だろうな。君の観察眼ならあの男はことに分かりやすかろうて」

絹江「かも知れませんが……そうでもないかもしれません」

エイフマン「ほう?」

絹江「一見で……ましてや小一時間の語りで知った気になるには、惜しい人だと思います」

絹江「更に知りたいと、そう思わせてくれるような人は……嫌いじゃありません」


エイフマン「そう、か。気にかけた男がそこまで評価されると、悪い気はせんが」

絹江「あぁでも、日本から居を変えるわけにも行きませんし、付き合っていきなり遠距離じゃ続く気もしないので」キッパリ

エイフマン「君のそういうとこ好きじゃよ、絹江くん」


絹江「っと……では。もう他のみんなが準備しているみたいですので」

エイフマン「おう。またな、絹江くん」

絹江「エーカーさんにも……」

エイフマン「おっと」

絹江「!」

エイフマン「……」チラ

ビリー「! はいはい、合点承知と」スタコラサッサ

エイフマン「そういったことは自分で告げねば、のう」

エイフマン「アレは勝手に勘ぐって勝手に思い込んで、勝手に暴走しおる」

エイフマン「人間、言わねば何事も分からんものさ」

絹江「……はい!」

エイフマン「立つ鳥跡を濁さず……期待しとるぞ」

エイフマン(クロスロードの娘よ……と言うのは失礼だろうな、彼にも君にも)
74 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 05:42:55.25 ID:wMIlUvHJ0

――――

絹江「グラハムさん」

グラハム「!」クルッ

絹江(わ、顔真っ赤。風邪かしら)

グラハム(そろそろ紅潮も引いているか……変に淀むと怪しまれるな)ゴホン

絹江「さっきはごめんなさい、気を悪くされたなら、謝ります」

グラハム「いや、私は……」

絹江「でも、今日は楽しかったです。仕事じゃなくて誰かと逢うのって、本当、あんまりないんですけど」

絹江「久しぶりに会う【誰か】が貴方で良かった。本当ですよ」ニコ

グラハム「っ……」

絹江(あ、また赤みが増した。本格的に拗らせたかな)??

グラハム(もはや何も言うまい……言葉にも出来ん)

絹江「では失礼致します。いずれ機会ありましたら、何処かで」

グラハム「……」

沙慈《姉さーん!!》

絹江「はーい! じゃあ、さよな……」「絹江さん」


絹江「! え、あ、はい!」

グラハム「……ふう、全く」

75 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 05:55:07.44 ID:wMIlUvHJ0


グラハム「ジャーナリストを志すならもう少し相手の言葉を聞くべきでしょう。私に別れの言葉も言わせないおつもりですか」

絹江「あ、いえ……ごめんなさい……」

グラハム「ふ……萎縮なされないでほしい。私も、今日というひととき、あなたと過ごせて良かったと思っている」

絹江「! えっ」

グラハム「ええ……本当、ですよ?」

絹江「あ、あはは……ありがとうございます……」カァァ


グラハム「そして、良ければこちらを」

絹江「はい?」

グラハム「私の連絡先の入ったメモリです。不要なら廃棄してくださって構いません」

絹江「えっ」


グラハム「ですがもし、この獰猛なエースパイロットと交友関係を結んでいただけるなら……」

グラハム「ふふ、しかるべき時にジャーナリスト・絹江・クロスロードとしての見地から意見を頂きたく、そう思います」

絹江「っ……はい、私で良ければ喜んで。フラッグファイター・グラハム・エーカー」

グラハム「では、またいつか」

絹江「ええ」


「「さようなら」」




――そして、はじまり――
76 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 06:06:36.02 ID:wMIlUvHJ0

――――

ビリー「時間にしてまだ半日も過ぎてないけど、なかなかハード極まりない一日だったね」

グラハム「得るものは大きかった、比率からしても大勝利といえよう」

ビリー「何に勝ったんだい? グラハム」

グラハム「かつての己さ、カタギリ」

ビリー「深いねえ……教授はどうでした? お目当ての子猫ちゃんに会えた気分は」

エイフマン「大収穫といえような。猫は猫でも、獅子の系譜ではあるが」

ビリー「へえ……じゃあ弟くんも?」

エイフマン「あっちは普通極まりないのう。ニュートラルオブニュートラルじゃ、天使も悪魔も敵に回すタイプじゃな」

ビリー「まぁたわかりにくい例えを……」

グラハム「プロフェッサー」

エイフマン「うん?」

グラハム「先日までの驕った姿勢に振るまい、お許し下さい。私は今日までの己の弱卒ぶりに怒りすら覚えています」

グラハム「ジャーナリズムへの偏った認識、外部への穿った視線、色眼鏡。その孤立極まる有り様をこのグラハム・エーカー、自認するに至りました」

グラハム「これからも、どうかこの愚物へ指導鞭撻、お願いいたします!」

エイフマン「あー、うん。分かった分かった」

グラハム「! まだ何か足らないのでしょうか……!!」

エイフマン「いーや、たりとるたりとる」

エイフマン「まあ、これからかな……布石とはその時になってみないと分からんものだからのう」

グラハム(流石はプロフェッサー……更に先を見据えていらっしゃるのか。私も精進せねば)

エイフマン(全体的な概念まで考えが及んでいればいいが、まだまだ、これだけで足りるとは思っとらんさ)

エイフマン「これからこれから……なあ、スレッグよ」
77 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 06:20:17.99 ID:wMIlUvHJ0
――――


絹江「んーおいひいー」ハグハグ

ルイス「ですねー」ハグハグ

沙慈「うわー……すごいビュッフェ。いいんですかこんなの?」

デスク「いいんだいいんだ、金ならJNNが出す! 食わなきゃやってられん!!」ガツガツ

Jおじじ「食え!飲め! 食って全て忘れるのじゃあ!!」グビグビ

沙慈「荒れてるなあ……」

絹江「……」チラ

絹江(食べ終わったら、こっちの連絡先も送っとかなきゃ)


ルイス「彼の連絡先ですか」ズイ

絹江「ふぃ?!」ガタッ

ルイス「いやー、実は結構脈アリだったりするんですか? 顔は良かったですもんね、お姉さま?」ニヤニヤ

絹江「いや、それはない」キッパリ

ルイス「は、はっきり言うんですね……」

デスク「仕事でもこうだからなあ……こいつと会議出ると胃薬必須だよ」ズズズ

沙慈「…………」

絹江「ええ……ほんと、何でもない」

絹江「はず、なんだけどなあ……」チラ


――――


――そして――
78 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 06:38:05.39 ID:wMIlUvHJ0


ビリー「ああ、そうだ。来週からちょっと出張に出るよ。整備は出来ないから、グラハムスペシャルは控えておいてくれよ」

グラハム「ほう、どちらだ」

ビリー「AEUの軌道エレベーター付近、軍事演習場だよ」

エイフマン「例の新型か」

ビリー「ええ。我らのフラッグ同様、可変機能を有した空戦型MSだと聞いております」

エイフマン「儂は遠慮しよう。目新しい物はあるまいし、連中の得意なプラズマ加工技術ならだいたい再現も改良も出来る」

ビリー「予算が降りてくれれば、反映も出来るんですけどねえ」

エイフマン「後追いの軍備拡張ではこんなもんだろうよ」


グラハム「……」

エイフマン「行くか?」

グラハム「カタギリがいない以上、私がMSに乗っては整備班の胃が保ちますまい」

エイフマン「だろうな。程々にしとけよ」

グラハム「はて? 如何様まで行けば逸脱となりましょうか」

エイフマン「お前はイナクトを乗っ取って暴れかねんからな、全く」

グラハム「考え付きもしませんでした、参考にさせていただきます」

ビリー「教授……変な献策は僕の寿命に影響しますよ……?」


ビリー「やれやれ、来週は空から剣でも降ってきそうだよ」


――A.D.2307――


――天使、降臨――
79 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 06:45:36.12 ID:wMIlUvHJ0
でも第二話以降はまだ終わってません
こいつらほんと20代か
ではまた来週

一夜でこんだけ書いてるんだから次は倍書いてきます
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 09:10:44.38 ID:Xd2BtxWZo
楽しみだ
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 09:23:42.84 ID:O0ffW1TWO
乙です
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 13:41:21.26 ID:Ld/8skdwo

ニュートラルオブニュートラルで神も悪魔もぶったぎりとか実は一番普通じゃないんじゃ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 15:42:10.45 ID:NBji8AzoO
ライザー搭乗してあれだけ高濃度のGN粒子漬けになって完全に一般人のまま終わった辺りある意味では凄い
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 01:12:24.40 ID:pZPnYZRX0
多分イノベーターに覚醒する条件満たしてないから身体だけ覚醒の準備は何時でもできてると思うんですけど
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 10:57:40.76 ID:oBCtZjIY0
割りとメリケンさんそういう空気になったら抱いちゃう気がするんだけど、武士ハムじゃない一期で何処までいくんだろう
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/12(月) 18:57:23.85 ID:XK23ESqV0
我慢弱いハムには分が悪い戦いだな
87 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/17(土) 02:19:36.23 ID:GkGGRqzI0
致命的な時期的ミスが発覚したため全話見直してきます。(具体的には三話〜六話が完全になかったことになってる)
皆様方へ大変なご迷惑をお掛けするに際し、罵っていただけると嬉s次回までの活力となります。
申し訳ない、次回来週には必ず。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/17(土) 09:57:26.78 ID:toIGifP0O
私は我慢弱い
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/18(日) 03:19:04.82 ID:1RZm+bvz0
私は果てしない程このssを所望している!!!!
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/19(月) 11:46:38.59 ID:G2NxujnO0
ようやくSSと巡りあえたというのに。口惜しさは残るが、私とて人の子だ。
91 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:05:27.50 ID:zNOD7PDK0
では、再開を。
92 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:06:05.18 ID:zNOD7PDK0

――ガンダム、襲来

――ソレスタルビーイングによる全世界の紛争への【宣戦布告】

――火は点いた、賽は投げられた

――全ては、ここから動き出した


――JNN――


デスク「番組特別報道用に全部切り替えていくぞ! 現地の映像届き次第重ねられるようにな!!」

部下A「はい!!」

デスク「ぼさっとすんな絹江! 手ぇ空いてないとこ回って片付けてこい!!」

絹江「はぁい!!」

絹江(特ダネ入ると人が変わるんだから……もう!)


ウチオトッセッナーイ

絹江「げ……切り忘れてた、もう……誰よ!!」


【Graham Aker】


絹江「え……?」



 ・
 ・
 ・
 ・


絹江「もしもし?」


グラハム『ごきげんよう、絹江さん。グラハム・エーカーです』
93 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:07:58.67 ID:zNOD7PDK0
絹江(サウンドオンリーか……まあいいか、化粧もそこそこだし好都合)


絹江「それは分かっています。登録してありますから」


グラハム『敢えて名乗らせていただきました。此方からかけるのは初めてのことでありましたので』


絹江「お心遣い感謝いたしますぅ……はあ、で? ご用件は?」


グラハム『ふふ、その様子ですと相当お忙しそうだ。報道機関は特に眠れぬ毎日でありましょう』


絹江「……切りますよ?」


グラハム『失敬、お時間は取らせません。カタギリからこのようなプレゼントを、と提案されまして。良ければお受け取りください』

ビリー『あーあー、僕の名前を出したら台無しじゃあないか』


絹江(?……あ、何か送られてきた……)

絹江(…………!!!???)


絹江「えっ!!? これ??! ガンッ!?!」


ビリー『ええ、ええ。二体のガンダムが介入してきた軍事基地の、ユニオン側の映像をちょいと拝借したもので』

ビリー『映りがあれだったり広報に適さないものも多いですけれど、まあグラハムとの友情を祈念として、ね』


絹江「あ、ありがとうございます……いいんですか、これ?!」

ビリー『そっちの特派員が手に入れたとか何とか言って出してもらえれば。ユニオン軍の名前を出されたら最悪国際問題なので、そこは配慮を』

ビリー『……とまあ、君の好感度アップを狙って持ちかけたというのに、全く君という人は……』

グラハム『他人の好意を着て身を飾る趣味はない、感謝はお前にこそ向かうべきだろう?』

ビリー『君らしいけれど、目的は未達成で不完全燃焼だよぼかぁ』

グラハム『? 謝罪しよう、そして重ねて感謝する。カタギリ』


絹江「……ん?」

94 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:17:56.23 ID:zNOD7PDK0


絹江「……済みませんグラハムさん、まさか……」

絹江「あの基地で、ガンダムを目撃していたのですか!?」

グラハム『ええ、真正面で。見事な解体劇と驚異的な性能を目の当たりにさせてもらいました』

絹江「……!」

絹江(向こうの特派員の情報以上に、第三者の、しかも軍人の情報となれば信憑性が出る……!)

絹江(特に同じ可変型MSのパイロットの発言、比較した情報も聞き出せればその手のところにだって評価を得られるわ!)

絹江「よ、よろしければ電話口で申し訳ないのですが、インタビューを……!!」

グラハム『ええ、匿名でお願いできるなら構いません。ですが、申し訳ない』

絹江「はい?」


グラハム『これから意中の相手との逢瀬に出かけるところでして。出来るなら終わった後にしてもらいたい』




絹江「……え……」



ビリー『……うわ』


ビリー『うわあ』


ビリー『うーわー』


ビリー『うーーわーー』


グラハム『? いきなりどうした、カタギリ』
95 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:23:16.19 ID:zNOD7PDK0
ビリー『最悪だよグラハム、今の発言はそう経験のない僕が考えうる中でもトップクラスの最悪だ』(NGワード:皆無)

グラハム『???』

ビリー『えーっと、クロスロードさん? できれば携帯の映像をオンにするので「結構です」』

ビリー『……Ooh』

絹江「申し訳ありませんでした、どうぞ事が済んだ後にでもごゆっくりとご連絡を」

グラハム『えぇ、お心遣い痛み入ります。では後ほど』

絹江「っ……!」

ブツッ


絹江「……あぁ……もう」

絹江「そういう話、普通……あー……!」

絹江「…………最っ低……」



絹江「デェェェスクッ!!!」バァンッ

デスク「ひい?! 何!?」

部下A(鬼だ……!)

部下B(鬼がいる……!!)




――――

『中尉、作戦遂行可能ラインに到達いたしました』

グラハム「ご苦労! さて……どう出るかな、お相手は」

ビリー「グラハム……せめてそのパイロットスーツ姿を映像に出しておけば言い訳も出来たろうに……」

グラハム「着替え中の見苦しい姿を見せるわけにはいくまい。彼女はレディだ」

ビリー「あぁ……そういう言い方を矯正せずに放置した僕らの咎だとでも言うのか、神よ」
96 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:28:36.00 ID:zNOD7PDK0
ビリー「僕の努力をマイナスに変換してみせる辺り、さしずめ君は恋の錬金術師と言ったところかな……」

グラハム「? 先程から妙に絡むな、カタギリ。どうした?」

ビリー「……いや、終わってからにしよう。これからあの謎のMSに奇襲を仕掛けるのだからね」

グラハム「運良く出会えたなら、だがな」

ビリー「グラハム、イナクトは猿真似でも性能自体はフラッグに比肩しうると僕は考えている」

ビリー「そのイナクトを圧倒してみせたあのMS……恐らく四機全てがその水準であることは間違いないわけで」

グラハム「どれが姿を見せようと深追いは厳禁、そう言うのだろう? 熟知しているさ」

グラハム「男として女性との約束を反故には出来ん。締結した以上は、生還が絶対条件となるだろうよ」

ビリー「……生きて帰ったところで、してくれるかどうか……ハァ」

グラハム「まあ、せいぜい祈っていてくれ。私の一世一代の賭けだ」

ビリー「あいにく君の無事だけは神に祈ったことがないんだ。必要が無いからね」

グラハム「ははは! ではその信頼にも応えねばなるまいな、盟友よ」



グラハム「では、行ってくる!」

ビリー「ご武運を、フラッグファイター」

『お気をつけて、中尉!』


グラハム『グラハム・エーカー、フラッグ! 出撃する!』






グラハム「初めましてだなぁ、ガンダム!!」

『クッ……何者だ!?』

グラハム「グラハム・エーカー……君の存在に心奪われた男だ!」



 ・
 ・
 ・
 ・


グラハム『……と、言うわけでありまして。ものの見事に圧倒されて終演と相なりました』ハッハッハ

絹江「 」

ビリー(このドーナッツは当たりだね)モグモグ
97 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:32:21.58 ID:zNOD7PDK0
――クロスロード宅・絹江自室――


グラハム『……どうか、なされましたか。絹江さん』

絹江「……このおバカ……」ハァー

グラハム「はい?」


絹江「いーえ、お気になさらず!! まさか【意中のお相手】が件のガンダムだとはつゆ知らず、勝手に心乱した私が悪うございましたっ!!!」

グラハム『それは申し訳ないことを。確かに下品な物言いでありました、謝罪します』

ビリー(そういう意味じゃあ無いと思うんだけどなあ)

ビリー(でも……ふぅん?)

絹江「そういうことじゃ……あー、いいですよもう。話が進まないったら……!!」

絹江(……でも、プレイボーイってわけじゃあないってことかな……)

絹江(だから何だって話なんだけど。)

絹江(…………)

絹江(だから何だって話なんだけどっ!)


絹江「コホン……それで、部隊の損害は大丈夫だったのですか? さっきの話では貴方はライフルを喪失されたそうですが」

グラハム『はて、部隊、とは?』

絹江「ガンダムを待ち伏せた部隊ですよ。貴方が指揮なされたのでしょう?」

グラハム『いいえ、おりません』

絹江「……あぁ、では上官がいらっしゃったと。思いつきで待ち伏せた割にユニオンも柔軟で……」


グラハム『私一人です』


絹江「……はい?」



グラハム『私の駆るフラッグ一機で、ガンダム一機と交戦いたしました』



絹江「……この……おばか……!!」

ビリー(超同意)

グラハム『今度は聞こえましたぞ、失敬な』ムッ


グラハム『自覚はしていますがね』

ビリー(自覚してたのか)ズズズ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 02:37:43.11 ID:gf6dAeMxO
大尉流石です
99 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:40:21.05 ID:zNOD7PDK0
――輸送機・士官室――


絹江『だっ……な、貴方は! 分かってるんですか?!』

絹江『今回のセイロン島の武力介入で、ガンダムはあのティエレンを概算三十は撃破しているんですよ!』

グラハム「一機辺りおよそ七機ですか。恐らくそれ以上の数値が明日人革連から公表されることでしょう」

グラハム「30:0、ふふ、馬鹿げた計算ですな。おおよそフラッグ部隊でもアレをそこまで痛めつける術はない」

ビリー(ティエレンキラーの空中変形技術保持者がよく言うよ、全く)


絹江『そんな相手に一機で戦闘を……あぁもう信じられない……っ』

グラハム「敵は帰投中でした。初お目見えのときの展開から察するに、彼らは段階的で高度な作戦目標に従っていると推測されます」

グラハム「それならば勝てないのは当然としても、予定が狂うことを恐れ深追いを防止でき、多少の交戦によるデータ収集が可能であると判断しました」

絹江『っ……答えになってません……一撃で撃墜されたっておかしくない相手なのに!』

絹江『それなのにそんな平然と……怖くなかったんですか?』


グラハム「……怖かったですよ。いえ、今でも恐怖が手のひらを濡らしているほどです」

グラハム「ですがそれ以上に、興味以上の衝動が私を支配していた」

グラハム「【逢いたい】と……そう思ったのです。それを止める術が私には無かっただけのこと」


絹江『……頭痛くなってきました……まだインタビューしてないのに……』


グラハム「中断いたしましょうか、Ms.絹江」

絹江『いーえ……やりますとも。せっかく例の画像でボーナスまで貰えそうなんですから』

グラハム「それは吉報だ。お役に立てたなら私も嬉しいしカタギリも喜ぶでしょう」

ビリー(そろそろ怒るぞ……)チッ

グラハム「……?」


絹江『中尉』

グラハム「何でしょう?」


絹江『また会えて良かったです。知ってたら、もう少し感慨もあったのでしょうけれど』


グラハム「――!」


グラハム「……ええ、ありがとうございます。私もです」

絹江『嘘ばっかり』ケッ

グラハム「今のも聞こえましたよ」

――――
100 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:43:23.07 ID:zNOD7PDK0
本日は此処まで。
また来週。
今のうちに、戦闘描写が本格化し好き勝手やり出すタイミングで地の文も混ぜていきます。
しばらくはこのままです。
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 04:14:18.72 ID:BB6nsyfA0
絹江さんがヒロシに殺される未来は果たして変わるのだろうか…
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 05:44:50.18 ID:q5b3iccAO
世の中には死んだと思ったら実は生きていた歌姫がいてだな…
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 10:45:47.91 ID:YwZwk0WAO
不可能を可能にすれば……
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 11:20:57.12 ID:NUrgUol3o
絹江さんが生きててもさらにその先の未来への水先案内人イベントも生き残ってもらわないといけないとか大変だなこれは
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 13:09:51.00 ID:HoeyZF3mO
ELSブレイヴに乗ってメタルイノベイターになって帰ってくれば良し
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 18:59:13.17 ID:VynIEVyHo
メタルグラハムとかちょっと未来に行きすぎでは……
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 23:38:48.21 ID:IEbrW82wO
サヨナラノツバサ的展開で回避しよう
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/30(金) 14:07:50.65 ID:wiXE/FTGo
あれは結局どっちもだめだったじゃないですかあ!
109 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/30(金) 23:51:14.35 ID:xkFQHiMy0


沙慈「……ふあ……」スタスタ


『――――』

「では――」


沙慈「……?」


沙慈「……」チラ


『ええ、現行のMSでは対応は困難でしょう。戦って分かりました、あれに拮抗するのは不可能と言っていい』

絹江「では、彼らの宣言である【武力介入による紛争根絶】は可能であると?」

『まだ手札を見ていない以上は肯定的には語れません』

『ですが、あの【ガンダム】を用いた戦闘行為を手段とされた場合、一方的かつ甚大な被害は免れないでしょう』

絹江「なるほど……」


沙慈(この声……姉さん、あの人と話してるのか……?)


絹江「ユニオン側が取るであろう、そして取るべきだろう行動は……ええ、もちろん個人が特定されない範囲で構いません、お答え願えますか?」

『静観、ただそれのみでしょう。彼らがどう出るか、早急な対応はかえって思わぬ被害を招く』

『国連軍にも近しいユニオンの表立った動きは他国の強い反発を招きます。人革連やAEUほど目立って彼らの興味を引く諍いも抱えていない』

『で、あるならば……ええ、あくまで世論の後押し、そして世界の守護者としての立場を以て彼らに対峙する。それが方向性となるかと』

絹江「こすずるい……」

『はは、えぇ、全くです』
110 :割りと皆さん「生か死か」が気になる模様で ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/01(土) 00:52:21.44 ID:W/TTnvzb0
絹江「……いえ、もちろん戦った場合貴方がたユニオン軍人にも多大な被害が出るのは理解しています」

絹江「ですが、それはつまり……」

『ええ、ええ。つまり他二国が彼らに蹴散らされる様を傍観するのみ、ということ』

『今回の一件で分かる通り、ティエレンで対応できない以上ほぼ三大国以外の軍隊の尽く、蹂躙を防ぐ手立てはない』

『世論がガンダム排斥に寄るまでは、いわば見殺しの態勢を取る……ユニオンらしい手でしょう?』


絹江「……」

絹江「いずれ、多くの国が連携してガンダムと対峙するとしても、ですか」

『だとしても、なのでしょう。そうやすやすと手を取り合えるほど、啀み合いの根は浅くないということです』

絹江「……貴方は……」

『はい、従うでしょう。国家の意志の体現こそ軍人の在るべき様であるゆえに』

絹江「呵責は」

『無いといえるほど自我が希薄な男ではなく、あるといえるほどグローバルな立場でもなし、といったところでしょうか』

『ですが、いざガンダムと対決するに際し……我が背に誰がいようと』

『ええ、人革連、AEU、その他無関係の国家、個人がいても。この手は迷わず引き金を引くでしょう』

絹江「護るために、ですか?」

『無論。それが建前であっても、おのが欲求の次点であろうとも、存在意義なればこそ』

絹江「……ある意味天職ですね、本当」

『此処でなら飛べますから。私の心の臓はそのために早鐘を打つのです』
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/01(土) 02:43:38.20 ID:A7/tac0UO
この時間に君と出会えようとは…乙女座の私にはセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない!
112 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/01(土) 03:36:03.39 ID:W/TTnvzb0
沙慈(……?)

沙慈(グラハムさんと話してるのか、電話で)

沙慈(……まだ、終わってなかったんだ……)


絹江「噂噂と思ってましたけど、本当に好きなんですね、飛ぶことが」


『何にも代えられぬ、生きる目的そのものです』

『子供の頃より、ずっと焦がれ続けてきた蒼穹への渇望……』

『ふふ、お陰で婚期を逃しましたが、後悔は微塵もありません』


絹江「あら、それ私のことじゃなさそう?」

『……口を滑らせました、追及は勘弁願いたい』

絹江「ええ、勿論。友情を長続きするコツは詮索しないことですもの」

『参考になります』

絹江「それに? 惜しいと思われるほど長い関係でもありませんし?」

『確かに……と言うのは非礼に値しましょうね』

絹江「ええ、よく出来ました」


『ですが、こうして話しているひとときは、これでも良いものだと感じておりますよ』

絹江「……お世辞」

『本音です』

絹江「嘘ばっかり」

『信じていただけない?』

絹江「今はまだ、って言ったら?」

『この関係が長く続くことを祈念いたしましょう』

絹江「ふふふ、歯が浮きそうでなくて?」

『口を抑えていなくてはならぬ程度には』

絹江「あはは……!」



沙慈「ッ……姉さん……?」

絹江「! 沙慈」

『おや?』
113 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/01(土) 03:51:31.23 ID:W/TTnvzb0
沙慈「まだ寝ないの? 明日も早いんだろ?」

絹江「お気遣いなく、これでも仕事の延長よ」

絹江「ねえ沙慈、すごいのよ! グラハムさんってばね」

沙慈「【中尉】の!」

絹江「!」

沙慈「……中尉のお時間も、考えてあげなきゃ」

沙慈「ほら、ソレスタルビーイングとか、色々……忙しくなるでしょ?」

絹江「それはそだけど……」

『いや、彼の言う通りだ』

沙慈「……」

『申し訳ない、絹江さん。話が脱線してしまったようだ』

『インタビューの方は匿名で、それと私が交戦したという事実は胸のうちに秘めていていただきたい』

絹江「え、ええ……もともとそういうお話でしたから」

『それと、先程話していた【イオリア・シュヘンベルグ】の件ですが』

絹江「ええ、謎の解明ができ次第意見交換を。とはいっても、記事にできる内容とそうでないのが混ざりそうで……」

沙慈「姉さん……?」

絹江「……分かってるわよ、もう……」

『はは、姉上想いの弟君だ。誇るべき良い家族です』

絹江「大げさ……でもありがとうございます」

『では、失礼致します』

絹江「おやすみなさい、グラハムさん」


ピッ


絹江「……沙慈?」

沙慈「何だよ……」
114 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/01(土) 03:59:40.78 ID:W/TTnvzb0
絹江「…………」ジー

沙慈「…………」

絹江「…………」ジーーー

沙慈「…………っ」


絹江「…………」ジーーーーーー


沙慈「……分かった、わかったよ! ごめんなさい、仕事中に邪魔して申し訳ありません! これでいい!?」

絹江「……よしとしときましょうか、自覚はあったみたいだし」

沙慈「……仕事の話以外で盛り上がってたくせに……」

絹江「あぁん?」

沙慈「何でもないです!!」


絹江「全く……珍しく機嫌が悪いから、何かと思ったわよ」

沙慈「何でもないよ、何でも……」

絹江「ま、止め時がなくなってたのは確かだし、ちょうどよかったってことにしとくわ」

絹江「おやすみ沙慈……ふぁ……明日も忙しくなるわぁ……」スタスタ


沙慈「……何なんだろう……な……ほんと」
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