京太郎「俺はもう逃げない」 赤木「見失うなよ、自分を」

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41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 13:20:27.74 ID:/9xq6odsO
おおん下げ忘れすまん許してください
42 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/26(金) 20:45:49.12 ID:NDZ3YBKR0
こんばんわ。風邪でぶっ倒れてました。
投下していきます。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/26(金) 20:46:09.73 ID:ONzjdGYGo
待ってた
44 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/26(金) 20:47:16.74 ID:NDZ3YBKR0
4日後
「こぉら、須賀ぁ! おきんか!」

「ふげっ!?」


 机に突っ伏していつのまにか寝てしまっていた俺を、国語の先生が文字通りたたき起こす。


「うぐ………すんません」


 目をこすり、無理やりふらつく頭をまっすぐにとどめる。


「お前ぇ、よく提出物忘れた回の授業で堂々と寝れるなぁ?」

「すいません…………」

「昨日何時に寝たんだ?」

「えっと…………3時前くらいです」

「馬鹿、何してたんだ」

「えっと…………本読んだり、ネットとか…………」

「あほかぁ! はよ寝ろ!」

「ほんとすいません…………」


 本当にそうだからいいわけが出来なかった。

 昨日は1時過ぎまで牌譜の整理をやった後、1時間ずつ自分の練習のために麻雀の本とネット麻雀をやっていたのだ。


「まったく期末前だっちゅうのにお前は………」

「はい、ほんと済みません…………」


 俺は心底先生の言う通りだと思いつつ、ぺこぺこ頭を下げることしかできなかった。


「京ちゃん…………」


 ふと、後ろから先の不安そうな声が聞こえた。

 俺は苦笑いしながら、大丈夫だというように手をひらひら振った。
45 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/26(金) 20:48:38.69 ID:NDZ3YBKR0
「大体お前部活は入ってないだろ? 放課後に一体何してんだ?」

「いえ、俺麻雀部なんですけど…………」


 インターハイベスト4入りの部活が大会が近いということで、麻雀部は学校側が特別に期末テスト前なのに活動を認めてくれていた。

 おかげ期末テストや課題との両立で死にそうな毎日だ。


「あ、そうだったのか? インターハイお前も勝ったの?」

「いえ、予選1回戦負けです…………」


 周りからの失笑が漏れる。俺自身「はは………」と笑いを漏らしてしまった。


「じゃああれだ。お前がそっちに努力しても無駄だから、普通にテスト対策しろ。それにしても宮永は同じ麻雀部だろ? 今のところは宮永は提出物も全部出しているし、お前ももっと見習わんか!」


 ガタッ! と、後ろの方で勢い良く椅子を立つ音がした。


「京ちゃんは、京ちゃんは私たちよりずっと頑張って―――!」

「咲、いいって。授業中」

「でも………!」


 咲はまだ何か言いたそうだったが、俺が前を見て姿勢を正すと、やがて座ってくれた。

 先生は何かまずいことを言ったかと感じたようだったが、その後何事もなく授業は進んだ。
46 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/26(金) 20:50:08.09 ID:NDZ3YBKR0
 キーンコーンカーンコーン………


「はぁ…………」


 昼休みになると同時に、俺は麻雀の教本だけ持って、校舎の外に出た。

 相変わらず雪はそこかしこに残っているし、空模様は最悪で、冬にしては下手に気温が高い日だから今にも雪でなく雨が降りそうだ。

 でもだからこそ外には誰もいなくて、一人になりたかった俺にはありがたかった。

 比較的濡れてないベンチに腰掛けて、本を開く。

 だがここ数日でさらに強さを増した倦怠感のせいで、まるで内容が頭に入ってこなかった。

 いったん本を閉じて、深呼吸をする。


「須賀君」


 びくっ となって後ろを振り返ると、そこには部長がいた。


「あれ、どうしたんですか部長?」


 努めて明るい風を装って、俺は返事をした。


「それはこっちの台詞よ。こーんな天気の悪いときに、わざわざ外に出てへこんでる部員を見かけたら、放っておくわけにはいかないわ」

「へこんでる? 俺がですか?」

「そうよ」


 そういって部長は人差し指で、俺の瞼の周りをなぞった。


「こーんな真っ黒なくま作っちゃって。いつも何時に寝てるの?」

「え…………」
47 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/26(金) 20:52:41.15 ID:NDZ3YBKR0
 俺は言葉に詰まった。自分ではそんな自覚はなかったのだが、そんなに見た目で分かってしまうほど疲労が浮き彫りになっていたのだろうか。


「ええっと、それでも昨日は12時過ぎには寝てましたよ? むしろいびきがうるさいって親にたたき起こされました」


 わざとおちゃらけて、本当のことを悟られないようにする。


「本当? なら、よっぽど日中に疲れているのね…………それ、麻雀の教本?」

「あ、はい」


 俺が手に持ってる本を見て、部長が尋ねてきた。


「ちょっと見せてよ。どんな本使ってるの?」

「使ってるっていうか、最近ようやくこうやって勉強を始めたばかりなんですけど………」

「いいことじゃないの」


 『基礎から始める麻雀の打ち方』というタイトルを確認して、先輩が適当にページを開く。


「うわっ、こまっか! どんだけ読み込んでるの?」


 本のあちこちにひかれた赤線や書き込みを見て、先輩が驚愕の声を上げる。


「読み込むっていうか………とにかく気になったところを片っ端から忘れないように線を引いていったらそうなったっていうか…………」

「須賀君偉いじゃーん! 私もうかうかしてらんないわね。たまにはこういう本買って読んでみようかなぁ。でも悪待ちの本ってなかなかないのよねぇ」


 部長が笑って俺のことを褒めてくれる。
 
 だが、俺は部長の言葉に引っかかるところがあった。


「いや…………部長たちは、もうそんな低レベルなもの読まなくても大丈夫じゃないっすか?」

「そんなことないよー。私なんてまだまだ弱い弱い。勉強はいくらしたって足りるってことはないのよ」

「…………………嘘つけよ」

「え?」
48 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/26(金) 20:54:49.87 ID:NDZ3YBKR0
 いけない。心の声が漏れてしまった。慌てて取り繕う。


「またまたぁ、謙遜しちゃって。俺はまだしも、みんなは――――」

「須賀君」


 部長が真面目な顔になって、俺の言葉を遮る。

「ごめん。私、何か気に障ること言っちゃったかな?」


「え…………いや、気に障るも、そもそも何にも――――」

「須賀君」


 もう一度、遮られる。


「ごめん、正直に言ってほしいの。部長として情けないけど、私たち、最近須賀君に本当にいろんなことを任せてばっかりじゃない? 須賀君はネト麻とかで自主練してるからいいって言うけど………。
 もし不満とかがあるなら、正直に言っちゃってほしいの」

「いや、だから――――――」

「本当に?」


 疑いの目を向けられ、俺は言葉に詰まって息をついた。

 この反応で、そうだと白状をしてしまったようなものだ。

 俺は観念して、今素直に思ったことを口にした。


「部長。部長が弱いなんて…………、冗談にしてもたちが悪いっすよ」

「冗談なんかじゃないわよ。私より、強い人なんていくらでもいるわ」

「それはプロとかを含めてですよね? 高校生だけなら、部長たちより強い人なんて全国でもほんの数人だけじゃないですか」

「まぁ…………自画自賛するわけじゃないけど、多分そうかもしれない」

「じゃあ、自分のことを弱いなんて言わないで下さいよ。今更こんな本を見て、勉強しなきゃとか」


 俺は先輩の手から本を返してもらって、ぱたぱたと目の前で仰いだ。


「それは本当のことだもの。私たちはまだまだ全然勉強不足で――――――」

「嘘つくなよっ!!」
49 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/26(金) 20:56:34.69 ID:NDZ3YBKR0
「っ…………!」
 

 部長の両肩が跳ね上がる。

 俺が怒鳴り声を上げるなんて、予想だにしていなかったのかもしれない。


「それだけ強くて、自分を貶めるようなことを言って、何が面白いんだよ! あんたらみたいな化け物で弱いっていうなら、俺は―――!」


 そこまで言って、俺はその後に飛び出しそうになった言葉を必死に堪えた。

 その先を言ったら、取り返しのつかないことになると思ったからだ。


「すんません………ちょっと、柄にもなくイライラしちゃいました」


 何とか作り上げた笑顔を浮かべて、何でもなかったかのようにふるまう。

 だが部長は、そんな俺の急ごしらえの嘘なんてすぐに看破したのだろう。


「須賀君、私……」

「あぁーそーだ! すんません、今日はテスト前でどうしても片付けないといけない課題があったんです! 昨日までに整理した牌譜は後で咲に渡しておきますから、今日部活休みます、すみません!」

「ちょっと、須賀君!?」


 部長が引き止めてきたが、俺はそれを無視して校舎に戻った。

 部長が追いかけてくるより早く、廊下を抜けて階段を上り、人通りのない最上階の一角に出る。
50 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/26(金) 20:58:06.59 ID:NDZ3YBKR0
「……………あんたたちで弱いっていうなら、俺は――――――」

(俺は一体何なんだ。あんたで弱いっていうなら、それより弱い俺は何だっていうんだよ)

「ただの雑魚未満………虫けらが良い所じゃねえかよ………」


 部長も、咲も和も優希も染谷先輩も、皆俺からすれば雲の上の存在だ。俺が死ぬ寸前まで一生努力しても、今の皆にすら追いつけないだろう。

 そんな人たちと何の因果か俺みたいな凡夫が一緒にいて、才能を見せつけられて、当の本人たちはそれでも自分たちのことをまだ未熟だと評する。

 なんて―――みじめだろう。

 俺は今、自分の中にわかだまっていた黒い感情の原因を察した。

 多分、みんなが―――強者であるくせに、強者として振舞わないから。

 美徳なまでにひたむきで努力家で、それは構わない。

 あの龍門渕のお嬢様、龍門渕透華といっただろうか? 彼女のように、自分が強者であることを自覚し、それらしく振舞ってくれるならどんなに気が楽だったろう。

 みんなは自分の未熟さを常に意識して言葉にするのが大事だと考えているのだろうが、その意味を理解していない。

 それは、自分達より弱いすべての人間に対する、最大級の侮辱なのだと。

 ずきずきと痛む胸を抑えて、俺はその場で腰を下ろした。

 もうすぐ昼休みも終わりのはずだが、昼食は摂る気になれなかった。

 食欲など、一切しない。

 ただ今は、このどうしようもなくみじめな気持ちを、どこかにやってしまいたかった。

 窓の外では、今にも纏わり付いてきそうな沈んだ天気が、ずっとそこに停滞していた。
51 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/26(金) 21:00:04.49 ID:NDZ3YBKR0
後味悪いけど今日はここまでです。
とりあえずめっちゃ段落を差し込んでみました。
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/26(金) 21:02:13.02 ID:McK+wHyh0

早く不遇な時期を抜けてほしい
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/26(金) 21:05:28.27 ID:nZlU80rrO
清澄救済なしで
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/26(金) 21:12:46.75 ID:IZKwNY6tO
大変見やすいんでないかと
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/26(金) 21:30:30.06 ID:p8ulw3kVO
寝た時間誤魔化しても咲ちゃんからばれちゃうじぇ
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/26(金) 22:19:22.24 ID:poMq213SO
ブラックホール教えてもらって能力?なにそれ?みたいな麻雀しようぜ

教われるものなのかは知らない
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/26(金) 22:50:59.61 ID:mkCX/9aBo
こういう不遇な時期大好き
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 00:48:57.14 ID:y9Tvdg0C0
乙!
見やすくなりました。
展開もいい味が出てますね。これからが楽しみです。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 02:28:43.59 ID:/RCWxgsj0
ブラックホールは並外れた強運で相手の運を捻じ曲げる能力だから…
京ちゃんにはダメみたいですね
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 02:56:47.37 ID:A+3ujGsho
あんなん使えるようなったら高校生相手とか無双よ
普通に咲のリンシャン阻止とかやれそうだが、京ちゃんがそれやっても魅力があんまり…
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 17:06:05.60 ID:XcfBjMHpo
他に男子部員がおればそんな劣等感に悩ませられることもなかったろうに
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 17:48:53.87 ID:cjwmVJsZo
高校の男子と女子でプロ野球とその辺の中学生野球部くらい差がある世界だしね。そんな世界で男子の標準を知らず女子のしかも全国トップと比べてたら劣等感は凄まじいだろう
京ちゃんがあんなひどい暴言を思わず部長に言っちゃうのも理解できる
63 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/27(土) 19:37:33.93 ID:k4AKpYPM0
こんばんは。ちょこっと投下していきます。
64 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/27(土) 19:39:03.69 ID:k4AKpYPM0
 放課後、何か言いたげにしている咲に無理やり牌譜を押し付けて、俺はすぐに帰路に就いた。

 別に用事なんて、実はなかった。

 そりゃあ未だに手のついていない大量の期末課題は残っているが、もう正直そちらは最初からあきらめていた。

 俺の成績なんて、ハンドボールで鍛えた体のおかげで体育だけ5。残りは2か3だ。そこらがオール2になったところで、今更大して変わりはしない。

 部活と勉強を両立している(優希除く)皆とは、雲泥の差だ。


『もっと宮永を見習わんか!』


 頭の中でさっき先生に言われたことを反芻する。


「俺だって…………」


 口から言葉にならない音が零れ落ちそうになるが、押しとどめる。

 いつもとは異なり、まだ日の沈み切っていない、周りには同じ学校の生徒たちがいるにぎやかな帰路なはずなのに、俺の心は一向に晴れなかった。

 二学期が始まってからは、俺はずーっと麻雀部のみんなと一緒にいた。

 そりゃあ同じクラスの男子なら一緒に昼食をとることもあったけど、もう特に最近は昼休みは貯まった雑用や課題、牌譜の整理などに追われて誰とも話していなかった。

 そんな俺が周りで広げられている会話の輪に入れるはずもなく、結局余計にみじめな気分のまま歩を進めていく。
 
65 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/27(土) 19:39:52.90 ID:k4AKpYPM0
 ぽつ…ぽつ…………


「あ」

 頬に、空から落ちた水滴が掠ったかと思うと、指数関数的に勢いを増した雨がざーざーと音を立てて振ってきた。

 俺は慌てて肩にかけたカバンを開き、中の折り畳み傘を出そうとする。しかし………


「あ、あれ?」

 傘が見当たらない。

 そういえば、と学校を出た時のことを思い出す。

 終業になって、カバンから持ってきた牌譜を咲のところに慌てているふりをして持って行った。

 あの時に、机の上に置きっぱなしにしてしまったかもしれない。


「嘘だろ………」


 降り注ぐ雨を全身で浴びながら、俺は空を情けない目で見上げる。


「部活サボった罰か………な」


 今更学校に戻って傘を回収する気にもならず、俺はカバンの中身の紙類が濡れないように両腕で抱えて、道を急いだ。

 が、雨は容赦なく勢いを増していった。

 乾燥した冬とは思えない量の豪雨が降り注ぎ、俺はおろか、抱えていたカバンの中までずぶ濡れになった。

 潤った山の空気というのはこういう時裏目になる。
66 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/27(土) 19:41:16.49 ID:k4AKpYPM0
「え、へ……へぇっくし!」


 体から熱が急速に奪われていく。

 冬場は雪で自転車が使えないことがほとんどだから、通学は徒歩だ。

 学校から歩いて30分と、こんなど田舎にしては恵まれた方な距離なのに、その距離がやけに長く感じられる。

 水を吸ったマフラーやコートが重くてたまらない。この分じゃあ、家まであと15分はかかるだろう。

 そんな時、後ろから車の音がした。バスだ。

 俺は一瞬迷ったが、こんな時だし仕方ない。普段は使わないし、たった一駅分だが、家への方向は同じだし乗せてもらおうと、駆け足で数百メートル先にあるバス停へ向かった。

 だが豪雨のせいで、視界が悪くて仕方ないし、足元もおぼつかない。


「え、ちょ、ちょっと………!」


 あと20メートルというところで、バスは後ろから走ってくる俺には気付かずに行ってしまった。

 この豪雨と暗くなった空のせいで、ミラーに映った俺を捉え損ねたのだろうと理解はできた。

 だがそれでも、俺は失望を隠せなかった。

 誰もいなくなった後の、屋根もない不親切なバス停で、一人呆然と佇む。


「なんだよそれ………」


 がっくりとうなだれ、バス停の表示の柱にもたれかかる。
67 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/27(土) 19:42:18.40 ID:k4AKpYPM0
 本当ならすぐさま歩き出すなりして、一刻も早く家へと急がねばならなかったのだろう。

 ほどなくして、足が震えて止まないほどに体が冷え込み、胸のあたりが痺れるような感覚に襲われる。

 歩く気は起らない。

 申し訳程度にバス停につけられた、木製のボロボロのベンチに腰掛ける。

 別に次のバスに乗りたいから待つとか、そんな目的があるから座っているわけではなかった。

 平日とは言え、こんな田舎だ。多分今から歩いて家に着くのと、次のバスが着くのと、同じくらいの時間だろう。


「あぁ……………」


 なんだかもう、このまま凍死しても良い気がしてきた。

 涙も出ない。いや、もしかしたら出ているのかもしれないが、雨粒と区別もつかない状態だ。

 とにかく、何もかもが嫌になってしまっていた。

 止まっていたいのだ。


ザアアアアアアアアアア……………


 滝のような雨を浴びて、風呂から出た時よりも身体がずぶ濡れになる。

 身じろぎ一つせず、ただその場で座って、俺は心身ともに停止していた。

 ここ最近感じてなかった、心の平穏を味わう。

 もう何もかもを諦めて、ただこうやってもう目的の類を何一つ持たず、自分のことにすら執着せず身も心も止まる。

 苦しいかっただけの努力が、どこか遠い場所に去っていく感じがした。

 最近の辛い日々が、遠い昔の出来事のように感じる。

 眠気を感じた時のまどろみにも近い、どこか揺蕩うような感覚に、俺は安堵を覚えていた。
68 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/27(土) 19:46:47.23 ID:k4AKpYPM0
「……………?」


 尻のあたりに、違和感を感じた。

 ベンチと尻の間に、何か挟まっているのだろうか?

 いや、俺のポケットの中だ。

 ポケットの中を探り、こないだも転んだ時に俺の尻に刺さりかけた石の入ったお守りを取り出す。


「……………」

 特に何も考えず。中の石を取り出す。

 寒さにかじかむ掌の上で数回転がしてみる。


「麻雀の、神様か…………」


 どうやら、この石ころにはひいじいちゃんが期待していたようなご利益はなかったらしい。

 もう、どうでもいい。

 そんなものはいらないから、もうこのまま、止まって、苦しみから遠い場所に腰かけていたい。

 静かで、平穏で、痛苦がなくて…………何も考えないでいい場所に。

 何もかもどうでもいい。

 もう、辛いことしか待っていない場所に帰るなど、思いつきもしない。

 停止することが、今の俺にとって何よりの幸せだった。
69 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/27(土) 19:48:07.71 ID:k4AKpYPM0
ここまでです。
踏んだり蹴ったりな状況ですが、次辺りからだんだん仲直りルートに入っていきます。
咲本編見てないと京太郎が何通学なのかわかんなくて不安です。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 19:49:55.24 ID:cjwmVJsZo
乙です
続きと仲直り楽しみ
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 19:52:22.78 ID:qp2hOIzq0

このまま逝くのもifで見てみたい気がする
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 20:14:07.61 ID:oq9RSNzJ0

仲直りはいいけど弱いまま仲直りは嫌だな。
そもそも、咲世界の女は強くて男は弱い設定が気に入らないよな
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 20:56:31.14 ID:MEEV4wkBo
それはもう咲読むの向いてないとしか
このSSはアカギとかおるから多少は違うんだろうけどさ
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 20:58:25.60 ID:ZSu6BjaDO
>>72
強いキャラが急に勝てなくなって弱くなる、とかないしな
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 21:29:21.83 ID:r+Yopfcd0
確かにこの設定なら男キャラ一切出さないで欲しかったってのはある
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/27(土) 21:46:44.11 ID:sPNYnhuRO
ゲームとかで最低ステにされる事多い(公式のポータブルとか)
泉が男子チャンプと同格が公式だからなぁ。
そこら辺ある程度分かってたら先生の台詞も正論と言う。
しかも京太郎、公式での飛び方からして腕無い上にマイナスオカルト持ち臭いし。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 22:03:51.22 ID:0+zu57UdO
京ちゃんにはいつものお友だちがいるじゃない!(阿佐田・赤木・傀)
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/27(土) 22:58:47.54 ID:l5tYX1v80
>>76
何かのオカルトの代償って訳ではなくただマイナスなだけってのはある意味オンリーワンの設定だな。
下手なのはガチ初心者で指導も無しだから仕方ない。

まあ大会後も指導がまともに無いのは擁護できんが。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 23:13:03.19 ID:oq9RSNzJ0
昨今のアニメもそうだけど、魔法少女とか女だけが不思議な力を得ることができるっていう展開が許せない。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 23:18:26.85 ID:oq9RSNzJ0
女は強い、男は弱い、百合豚による女尊男卑はいい加減やめてくれ。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 23:19:48.89 ID:3XWvidnFo
まぁ男の異能性を際立たせるって意味では分かりやすい対比にはなるが、女ばっかりってのは飽食気味だわな
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/08/28(日) 00:45:07.18 ID:cLKEi5kg0
そもそも古来より語られる、女性と魔性とか魔物的な何かとの親和性を考えると、男性より女性のほうがそういった能力と相性がいいのは確定的に明らか。

だからオカルト能力で無双するのが前提となっている咲世界の麻雀で男性が弱いのは当然
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 00:52:50.34 ID:bHAShwrvo
京太郎って一回は大会出てるのに男子の基準分からなかったのかな?
男子の麻雀界と女子の麻雀界では強さの次元が違って女子と比べてゴミみたい弱い事なんて普通だと理解してればこんな劣等感持たなくて済んだのに
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 01:02:26.04 ID:vy+EIIdRo
まあ現実で男子バレーとかテニスとかに女子バレーやテニスが勝てないって言ってるようなもんではあるな
でも初心者が一回大会に出たくらいじゃ分からんだろ
麻雀の本とかには書いてそうだけど
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 01:16:54.09 ID:5uVzDYJdo
スレチだぞ
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 01:17:19.10 ID:fpl4wEw0O
なんか京太郎スレ見すぎて頭がおかしくなってる子がいますね…

こんなキチに粘着されててかわいそう
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 01:20:22.86 ID:pDCq0KyVo
古来から語られる〜とかいろいろ頭おかしい長文湧いてて草
夏休みってまだ続いてんのか
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 01:20:41.31 ID:SwkygLgAO
今更だが麻雀の指導って何を教えるんだろ…
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 01:54:19.72 ID:IzJt3YWfo
赤木さんなら極上のメンタルトレーニングが期待できるぞ
その辺の監督は知らん
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 02:46:43.25 ID:wvo6wzEL0
>>83
ここでも1回戦負け、原作に至っては男子ではあり得ないレベルに盛大に飛んでるんだよなぁ。
男女差を感じられない、またはタコスは東場のみ、のどっちデジタル、咲ちゃん無意識に手加減しかねない、でむしろ男子の方が強いと感じてる可能性すら。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 03:10:45.41 ID:+Di2S5HqO
のどっちのデジタルは普通の人間の麻雀の極地点だと思うが…
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 03:43:47.07 ID:nj++AblG0
極限まで最適化したデジタルだけなら普通の人間だけど作中の活躍を見るに幸運補正のオカルト持ちとしか思えないんだよなあ
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 04:32:36.41 ID:IzJt3YWfo
漫画だししゃーない
アカギさんみたいに相手の運命までねじ曲げ始めたらもう能力みたいなもんだが
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 08:48:37.88 ID:iTD9BEAc0
女子部員の牌譜整理で忙しくて、男子の大会の牌譜見てません
とかなら、もうマネージャーになれよとしか思わないな
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 08:54:09.17 ID:wPKHiTUzO
それなら麻雀部辞めて雀荘とかネットで麻雀打つわ。麻雀打ちたいんだからマネージャーになる意味がねーわ
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 09:12:09.34 ID:SwkygLgAO
和の運がいいとか言いうニワカまだいたのか
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 09:17:41.19 ID:1CqkxAOn0
>>94
普段の相手が清澄勢だから女子の牌譜みて勉強するのはいいんじゃ無い?
まあそもそも身近な目標が高過ぎるという問題に関してはこの京ちゃんの視野が狭くなってると思うが。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 10:05:51.08 ID:uGwLfHhqo
というか初っぱなの描写見る限り男子の麻雀界だと京太郎そこそこ勝てそう。次の大会に出て活躍出来れば女子と比べて圧倒的に弱いなんて的外れなコンプレックスなくなりそう
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 10:31:28.07 ID:+Di2S5HqO
そもそもの相手が
優希(最低でも麻雀歴2年以上)
まこ(家が雀荘か麻雀が出来る喫茶)
久(良く分からないがプロと知り合い、最低でも麻雀歴2年)
和(ネトマの伝説 麻雀歴6年くらい)
咲(魔物 やってなかった期間こそ長いが6歳から麻雀していた)

これに麻雀始めて3ヶ月くらいで安定して勝とうって時点でズレてるとは思う
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 11:32:02.17 ID:8rNZK9V1O
進んでるから来てみればま〜た外野がSSと関係ないことでヒートアップしてるのか…
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 13:14:46.32 ID:S1lRmVtF0
男女の麻雀の実力差うんぬんよりも
序盤であった優希の京太郎を見下して貶した発言のほうがよっぽど気に食わない
そもそも優希は京太郎の麻雀が弱い理由の一つが
『自分がタコス関連等の身勝手なワガママで京太郎が独学や練習などで麻雀強くなるチャンスを奪ってるから』
という自覚はあるんだろうか………
微塵も自覚してないからあんな心無い発言ができるとしか思えない。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 13:29:09.56 ID:a7vou1VWO
基礎も分からない初心者に構う時間はないんでしょ
野球部なのにキャッチボールすら出来ない奴に一から指導したら時間がいくらあっても足りんわ
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 13:42:48.74 ID:n56bHGWZ0
小学生の感想発表会かな
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 15:37:18.28 ID:pDCq0KyVo
夏休みだなあ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 15:45:59.20 ID:8hdUXqHq0
最後まで読みたいのに、いつもいつも外野が出ては潰れる
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 16:38:34.29 ID:3fRYBellO
>>104
夏休みだなってレスする奴見ると夏だと実感するわ
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 17:29:28.86 ID:wLnSRHxs0
基礎もできてないヤツが小手先のテクニックに頼って勝とうとしてたら、まずは勝てなくてもいいからまっすぐ打てって言うわ
中学の部活動で何学んだの?ってレベル
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 17:33:13.56 ID:hD5ZuTdRo
夏休みキッズが指摘されてイライラしてて草
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 19:53:59.16 ID:YrY0a3F/O
いくら運ゲーとはいえ初心者が経験者に勝てる事は少ないわな
なんか勘違いしてる人がたくさんいるけど
一朝一夕で勝てれるようになるなら誰も苦労しないという
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 20:18:03.66 ID:1CqkxAOn0
現状の問題点は勝てないことよりも先が見えないことだろう。
基礎を付けるにしても初心者だと手探りでやるのと指導してもらうのは全然違う。
部活入ってるのに指導なしで雑用ばっかり。基礎は自力で参考書見て付けるしか無いってそりゃ心おれるわ。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 20:56:13.73 ID:/vh1iqZk0
そら自分から頼まなかったら、大会近いレギュラーがわざわざ初心者に指導しないだろ
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 21:17:18.61 ID:YrY0a3F/O
レギュラー部員「大会近いからちょっと指導できないわ」
補欠部員「ヤダ!教えないと心折れる!」

みたいなこと言ってるなぁ
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 21:23:31.09 ID:IzJt3YWfo
そもそもは指導云々よりも頑張って懸命に見つけた戦いかたも姑息だとか何気なく言われたのが、鬱状態の原因だろ
落ち込んでるときは何にでもイライラするもんだし、しゃーない
こっから赤木さんが何とかしてくれるからそれを楽しみにしてればいいよ
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 22:03:31.14 ID:2s7C3MPDO
そう言えばアカギが幽霊で京太郎に憑く奴ってどうなったんだろうな
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 22:15:34.91 ID:1CqkxAOn0
>>112
大会前はむしろサポートに専念してたやん。
問題は大会後も指導がないこと。久がプロになることを理由にしないならその後も次の試合の為に指導してくれんだろうな。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 22:17:35.03 ID:Gm0KcBo+o
ここの京太郎は雑用に逃げただけだろ
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 00:27:12.31 ID:IC9OiN+00
ダブリー倍満ツモで優希を煽る
→国士交通事故で煽られ返される

この流れで急にキレるのがなぁ
直前に優希の弱点である南場もネタにしてるし
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 00:29:50.80 ID:AfVzmg9io
そんな状況も赤木が何とかしてくれる…!
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 00:39:23.30 ID:96emo+tCo
今までの負けの蓄積があるんだよ……
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 00:45:51.58 ID:IC9OiN+00
読み返したら、咲と部長のセリフから察するに京ちゃんが自分で指導してもらうチャンスを捨ててるようにしか思えないんだけど
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 01:29:00.57 ID:zhhswjE/O
なんなんだこのスレは?
ガキの雑談板になってるのか?
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 05:30:51.53 ID:9d/AJTCg0
>>1よ幼稚園児が溢れかえってるが気にせず続きを待ってるぞ
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 07:25:36.60 ID:orBGhVeL0
言えば言うだけ自分の恥になる…
自分は馬鹿だと公言して回るのと一緒だ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 14:48:58.04 ID:YH6QOrVnO
煽るような台詞を添えてる時点で同類である。俺も含めて
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 18:54:52.92 ID:aM4Ep3EjO
こんだけ反応で溢れるってことはいい意味で刺さってるってことよ
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 19:09:01.88 ID:lCXX6ZItO
(刺さってる…?)
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 19:40:09.73 ID:h+hFtaSz0
んっふ
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 20:02:44.92 ID:LYC2tyV2o
酷いな
最低限の雑談に留めておこうという考えはまるでないのか
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/30(火) 10:29:15.63 ID:mS2FMk+QO
>>128
(そんな考え)ないです
脊髄反射しちゃう京豚信者ですし
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 15:10:34.53 ID:nqEUQ12b0
ま〜た棲み分け出来ない百合豚が凸してるの?
131 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:09:51.10 ID:Bg+oYlAv0
どうも、スレ主です。
少し投下していきます。
132 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:11:19.54 ID:Bg+oYlAv0
「ねぇ、京ちゃん」

「ん?」


 県大会個人戦が終わり、合宿に咲たちが向かう数日前。

 コンビニのプリンタの前で、検討会用の県団体決勝戦の牌譜を咲と一緒に大量コピーしていた時だった。


「京ちゃんは、怒らないよね」

「はぁ?」


 ホチキスを片手に、牌譜が1セット出てくると綴じるいう単調な作業の中、咲がよくわからないことを聞いて来た。


「いやいやいや、俺だって怒ることはあるぞ? 今日だって優希に犬呼ばわりされて「あんだとコラ!」って言い返してたじゃんか?」

「いや、あれはむしろ受け入れたらだめっていうか…………」

「?」


 咲が何を言いたいのかよくわからない。

 俺に対しては一切遠慮のないこの少女にしては珍しい。


「その………大会前に指導とか、出来なかったこととか………」

「あー」


 おずおずと切り出された台詞で、大体のことを察した。
133 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:12:42.32 ID:Bg+oYlAv0
「俺だってそんな子供じゃねーよ。そりゃそれこそわかりやすく特訓だ―! とかあれば嬉しかったけど、皆が頑張れた方がいいだろ?」

「いや、その……団体戦までは、そうだったかもしれないけど。でも団体戦の後、個人戦までの間くらい、京ちゃんの特訓とか、皆でしてあげてもよかったんじゃないかなって………」

「終わった後に言われましても…………」

「ご、ごめん!」


 まぁ、咲の言うことにも一理はあるかもしれない。

 決して言い出せなかったが、一山超えたんだし、俺のことも少しかまってもらえると嬉しいなー………とか、もちろん考えた。


「でもま」


 パチン と新しい牌譜を綴じる。


「残念ではあっても、怒りゃしねーよ。しかも下手したら、それで俺が皆の足引っ張ったらヤだしな。
お前なんかに構っていたせいで、最後にあと一歩届かなかった、とか思われたややだし」

「そ、そんなこと考えません!」

「お、今のちょっと和っぽかった。『そんなオカルト在り得ません!』ってやつ」

「もう!」


 黄色い声で和の真似をしてみると、咲が埒が明かないというようにそっぽを向いた。


「…………悔しいって、思った?」

「うん」


 即答。もちろんだ、大会で負けて誰が嬉しいものか。
134 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:14:18.29 ID:Bg+oYlAv0
「…………京ちゃん」

「ん?」


 あと1セットで終わりの時、咲が袖を掴んできた。


「京ちゃんは………偉いね。文句ひとつ言わずに、皆のために頑張れて………かっこいいと、思うよ?」


 その時の咲の顔は、うつむいているせいでよく見えなかった。

 多分、ちょっと照れてるんだろうと思った。

 一連の話は全部、咲なりの感謝だったんだろう。雑用を一手に引き受けてくれたことに関しての。


「いや、まだまだだ」

「わ、わ………!」


 うれしくなった俺は、咲の頭をわしわし撫でまわした。


「いつかもーっとカッコよくなってやるよ。雑用全部引き受けながらも影で努力して、大会で勝ち抜いちまうくらいのスーパー部員とかな。
 そんで俺だって魔王宮永咲率いる、最強清澄軍団の一員なんだぞって、お前たちの隣で声高に言えるくらい強くなってやる」

「魔王って…………」


 俺の言葉に、咲が何とも言えない表情になる。


「ま、今は気遣う暇があったら、勝ち進んでくれってことだな。こんだけ奉公してるのに、結果IH一回戦負けとかなったら泣くぞ、俺だけ別の意味で」

「が、頑張ります」

「うん、まずは合宿頑張れ」

「うん」
135 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:15:49.25 ID:Bg+oYlAv0
ザアアアア…………

 夕暮れの綺麗な夢の中と正反対に、土砂降りの雨の音が、俺の意識を呼び戻した。

 少し、意識が飛んでいたらしい。

 今も頭がぼーっとする。


「俺も…………隣で………」


 靄のかかった意識で、半年前のことを思い出す。

 個人戦で負けた後、咲がこっそり俺を元気づけてくれた時の記憶だ。

 あの時俺は、口には出せなかったが、咲の気づかいがすごくうれしかった。

 中学だって、ハンドボールというれっきとした競技をやっていたんだ。

 初心者だからって、負けて悔しくないはずなかった。

 でもおくびに出してみんなの集中を削いじゃいけないと、結局しまい込んでいた。

 咲はそれを見抜いて、こんな俺を格好いいと言ってくれた。

 撫でたり夢を語ったりしてごまかしたけど、あの時俺は、凄くうれしかった。


「かっこわりぃ……………」


 一方、今はこの体たらくだ。

 影でやって来た努力を皆に否定された気持ちになって、麻雀をやめようとしている。


「もう…………いいだろ…………?」


 こうしてる今も、頭の中には形を成さないが、あいつらの顔や一緒に過ごした日々が浮かぶ。

 でも、今の俺にはそれが、あいつらが俺の頭の中に入ってきてまで、俺を引き留めようとしているようで、止めてほしかった。


「まだ…………一緒にいろっていうのかよ…………!」


 一緒にいても辛いだけだ。

 底知れぬみじめさを常に味わされる。

 格好いいなんて、褒め言葉はいらない。もう素直に、辛いことからは逃げ出させてほしかった。
136 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:18:03.63 ID:Bg+oYlAv0
「おいおい、こりゃあまた…………。また随分と薄れちまったな…………」


 心が声にならない叫び声を上げそうになったとき、低く重く響く声が、雨の向こうから届いた。

 のろのろと頭を上げると、そこには傘を差した、数日前に俺を「煙っている」と評したおじさんが立っていた。

 相変わらずすさまじい存在感だ。雨のカーテンのせいで視界はそれこそ煙っているが、このおじさんだけは、輪郭がはっきりしているような感じがする。

 俺はただぼうっとおじさんの方を見ていた。


「次のバスは………ああ、あと20分近くもするのか………」


 おじさんは時刻表を見てつぶやく。そして、黙ったままの俺に目を移した。


「兄ちゃん………また何か嫌なことがあったのか?」


 おじさんはすべてお見通しだと言わんばかりの調子で俺に話しかけてきた。


「おじさん………」

「ん?」

「おじさんは…………ずっと後悔しない生き方をしてきたんすよね」

「ああ、そう言ったな」

「悔しいって………、誰か自分より能力のある人がいたとして、その人に嫉妬した事とかって……ありますか?」

「嫉妬か………多分ねぇな。俺は俺だからな。他人とつるむこと自体あんまりなかったし………」

「はは、羨ましいっす…………」
137 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:19:06.47 ID:Bg+oYlAv0
 俺はそこで言葉を切って、もう一度うなだれた。

 幸せそうな人だなぁと、ちょっとうらやましくなった。

 そりゃあ周りに誰もいなければ、嫉妬する対象がいないんだから、そもそもすることがないだろう。

 でも俺は違う。周りには、麻雀部のみんながいる。どいつもこいつも化け物じみた才能と能力を持っている。

 他の友人は、麻雀部のみんなに振り回されている間に、どっかにいってしまった。


「あぁなんだ。何があったかは知らないが………こんなとこで雨に打たれてちゃあまずい。ついてきな。すぐそこの旅館に、俺は泊まってるんだ」

「え………」

「まぁ、来たくないっていうんなら別に構わないがな………」

「あ…………」


 正直、どこかで雨宿りするとかはどうでもよかった。

 ただ、このおじさんは何か、まだもっと話していたいと思わせる、引き寄せる力があった。

 俺は立ち上がって、おじさんについていった。
138 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:23:32.59 ID:Bg+oYlAv0
ここまでです。

投稿は書き溜めたものにスレの反応を見つつ加筆修正を加えてるんですが、なかなかうまくいきません。

今回も本当は冒頭から赤木さんに会う予定だったのに、回想シーンはスレの反応を見て差し込んでみたものです。

結局、自分でもかいててよくわからないものになってしまいました。

それと雑談ですが、まぁ荒らしだとかはスレ主は思ってません。

感想も「あぁ、見ている人からすればそういう疑問が生じるのか俺の文章は」と参考になるのでどんどんどうぞ。^^

ただもし収拾のつかなくなった場合、別の場所にてもう一度スレ立て直すかもしれません。
死蔵なんかさせてたまるか。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 16:56:38.38 ID:vabu3jLzO
乙〜
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 17:00:56.49 ID:mnWjlCnI0
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