京太郎「俺はもう逃げない」 赤木「見失うなよ、自分を」

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 13:29:09.56 ID:a7vou1VWO
基礎も分からない初心者に構う時間はないんでしょ
野球部なのにキャッチボールすら出来ない奴に一から指導したら時間がいくらあっても足りんわ
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 13:42:48.74 ID:n56bHGWZ0
小学生の感想発表会かな
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 15:37:18.28 ID:pDCq0KyVo
夏休みだなあ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 15:45:59.20 ID:8hdUXqHq0
最後まで読みたいのに、いつもいつも外野が出ては潰れる
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 16:38:34.29 ID:3fRYBellO
>>104
夏休みだなってレスする奴見ると夏だと実感するわ
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 17:29:28.86 ID:wLnSRHxs0
基礎もできてないヤツが小手先のテクニックに頼って勝とうとしてたら、まずは勝てなくてもいいからまっすぐ打てって言うわ
中学の部活動で何学んだの?ってレベル
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 17:33:13.56 ID:hD5ZuTdRo
夏休みキッズが指摘されてイライラしてて草
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 19:53:59.16 ID:YrY0a3F/O
いくら運ゲーとはいえ初心者が経験者に勝てる事は少ないわな
なんか勘違いしてる人がたくさんいるけど
一朝一夕で勝てれるようになるなら誰も苦労しないという
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 20:18:03.66 ID:1CqkxAOn0
現状の問題点は勝てないことよりも先が見えないことだろう。
基礎を付けるにしても初心者だと手探りでやるのと指導してもらうのは全然違う。
部活入ってるのに指導なしで雑用ばっかり。基礎は自力で参考書見て付けるしか無いってそりゃ心おれるわ。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 20:56:13.73 ID:/vh1iqZk0
そら自分から頼まなかったら、大会近いレギュラーがわざわざ初心者に指導しないだろ
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 21:17:18.61 ID:YrY0a3F/O
レギュラー部員「大会近いからちょっと指導できないわ」
補欠部員「ヤダ!教えないと心折れる!」

みたいなこと言ってるなぁ
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 21:23:31.09 ID:IzJt3YWfo
そもそもは指導云々よりも頑張って懸命に見つけた戦いかたも姑息だとか何気なく言われたのが、鬱状態の原因だろ
落ち込んでるときは何にでもイライラするもんだし、しゃーない
こっから赤木さんが何とかしてくれるからそれを楽しみにしてればいいよ
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 22:03:31.14 ID:2s7C3MPDO
そう言えばアカギが幽霊で京太郎に憑く奴ってどうなったんだろうな
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 22:15:34.91 ID:1CqkxAOn0
>>112
大会前はむしろサポートに専念してたやん。
問題は大会後も指導がないこと。久がプロになることを理由にしないならその後も次の試合の為に指導してくれんだろうな。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 22:17:35.03 ID:Gm0KcBo+o
ここの京太郎は雑用に逃げただけだろ
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 00:27:12.31 ID:IC9OiN+00
ダブリー倍満ツモで優希を煽る
→国士交通事故で煽られ返される

この流れで急にキレるのがなぁ
直前に優希の弱点である南場もネタにしてるし
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 00:29:50.80 ID:AfVzmg9io
そんな状況も赤木が何とかしてくれる…!
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 00:39:23.30 ID:96emo+tCo
今までの負けの蓄積があるんだよ……
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 00:45:51.58 ID:IC9OiN+00
読み返したら、咲と部長のセリフから察するに京ちゃんが自分で指導してもらうチャンスを捨ててるようにしか思えないんだけど
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 01:29:00.57 ID:zhhswjE/O
なんなんだこのスレは?
ガキの雑談板になってるのか?
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 05:30:51.53 ID:9d/AJTCg0
>>1よ幼稚園児が溢れかえってるが気にせず続きを待ってるぞ
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 07:25:36.60 ID:orBGhVeL0
言えば言うだけ自分の恥になる…
自分は馬鹿だと公言して回るのと一緒だ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 14:48:58.04 ID:YH6QOrVnO
煽るような台詞を添えてる時点で同類である。俺も含めて
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 18:54:52.92 ID:aM4Ep3EjO
こんだけ反応で溢れるってことはいい意味で刺さってるってことよ
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 19:09:01.88 ID:lCXX6ZItO
(刺さってる…?)
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 19:40:09.73 ID:h+hFtaSz0
んっふ
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 20:02:44.92 ID:LYC2tyV2o
酷いな
最低限の雑談に留めておこうという考えはまるでないのか
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/30(火) 10:29:15.63 ID:mS2FMk+QO
>>128
(そんな考え)ないです
脊髄反射しちゃう京豚信者ですし
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 15:10:34.53 ID:nqEUQ12b0
ま〜た棲み分け出来ない百合豚が凸してるの?
131 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:09:51.10 ID:Bg+oYlAv0
どうも、スレ主です。
少し投下していきます。
132 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:11:19.54 ID:Bg+oYlAv0
「ねぇ、京ちゃん」

「ん?」


 県大会個人戦が終わり、合宿に咲たちが向かう数日前。

 コンビニのプリンタの前で、検討会用の県団体決勝戦の牌譜を咲と一緒に大量コピーしていた時だった。


「京ちゃんは、怒らないよね」

「はぁ?」


 ホチキスを片手に、牌譜が1セット出てくると綴じるいう単調な作業の中、咲がよくわからないことを聞いて来た。


「いやいやいや、俺だって怒ることはあるぞ? 今日だって優希に犬呼ばわりされて「あんだとコラ!」って言い返してたじゃんか?」

「いや、あれはむしろ受け入れたらだめっていうか…………」

「?」


 咲が何を言いたいのかよくわからない。

 俺に対しては一切遠慮のないこの少女にしては珍しい。


「その………大会前に指導とか、出来なかったこととか………」

「あー」


 おずおずと切り出された台詞で、大体のことを察した。
133 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:12:42.32 ID:Bg+oYlAv0
「俺だってそんな子供じゃねーよ。そりゃそれこそわかりやすく特訓だ―! とかあれば嬉しかったけど、皆が頑張れた方がいいだろ?」

「いや、その……団体戦までは、そうだったかもしれないけど。でも団体戦の後、個人戦までの間くらい、京ちゃんの特訓とか、皆でしてあげてもよかったんじゃないかなって………」

「終わった後に言われましても…………」

「ご、ごめん!」


 まぁ、咲の言うことにも一理はあるかもしれない。

 決して言い出せなかったが、一山超えたんだし、俺のことも少しかまってもらえると嬉しいなー………とか、もちろん考えた。


「でもま」


 パチン と新しい牌譜を綴じる。


「残念ではあっても、怒りゃしねーよ。しかも下手したら、それで俺が皆の足引っ張ったらヤだしな。
お前なんかに構っていたせいで、最後にあと一歩届かなかった、とか思われたややだし」

「そ、そんなこと考えません!」

「お、今のちょっと和っぽかった。『そんなオカルト在り得ません!』ってやつ」

「もう!」


 黄色い声で和の真似をしてみると、咲が埒が明かないというようにそっぽを向いた。


「…………悔しいって、思った?」

「うん」


 即答。もちろんだ、大会で負けて誰が嬉しいものか。
134 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:14:18.29 ID:Bg+oYlAv0
「…………京ちゃん」

「ん?」


 あと1セットで終わりの時、咲が袖を掴んできた。


「京ちゃんは………偉いね。文句ひとつ言わずに、皆のために頑張れて………かっこいいと、思うよ?」


 その時の咲の顔は、うつむいているせいでよく見えなかった。

 多分、ちょっと照れてるんだろうと思った。

 一連の話は全部、咲なりの感謝だったんだろう。雑用を一手に引き受けてくれたことに関しての。


「いや、まだまだだ」

「わ、わ………!」


 うれしくなった俺は、咲の頭をわしわし撫でまわした。


「いつかもーっとカッコよくなってやるよ。雑用全部引き受けながらも影で努力して、大会で勝ち抜いちまうくらいのスーパー部員とかな。
 そんで俺だって魔王宮永咲率いる、最強清澄軍団の一員なんだぞって、お前たちの隣で声高に言えるくらい強くなってやる」

「魔王って…………」


 俺の言葉に、咲が何とも言えない表情になる。


「ま、今は気遣う暇があったら、勝ち進んでくれってことだな。こんだけ奉公してるのに、結果IH一回戦負けとかなったら泣くぞ、俺だけ別の意味で」

「が、頑張ります」

「うん、まずは合宿頑張れ」

「うん」
135 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:15:49.25 ID:Bg+oYlAv0
ザアアアア…………

 夕暮れの綺麗な夢の中と正反対に、土砂降りの雨の音が、俺の意識を呼び戻した。

 少し、意識が飛んでいたらしい。

 今も頭がぼーっとする。


「俺も…………隣で………」


 靄のかかった意識で、半年前のことを思い出す。

 個人戦で負けた後、咲がこっそり俺を元気づけてくれた時の記憶だ。

 あの時俺は、口には出せなかったが、咲の気づかいがすごくうれしかった。

 中学だって、ハンドボールというれっきとした競技をやっていたんだ。

 初心者だからって、負けて悔しくないはずなかった。

 でもおくびに出してみんなの集中を削いじゃいけないと、結局しまい込んでいた。

 咲はそれを見抜いて、こんな俺を格好いいと言ってくれた。

 撫でたり夢を語ったりしてごまかしたけど、あの時俺は、凄くうれしかった。


「かっこわりぃ……………」


 一方、今はこの体たらくだ。

 影でやって来た努力を皆に否定された気持ちになって、麻雀をやめようとしている。


「もう…………いいだろ…………?」


 こうしてる今も、頭の中には形を成さないが、あいつらの顔や一緒に過ごした日々が浮かぶ。

 でも、今の俺にはそれが、あいつらが俺の頭の中に入ってきてまで、俺を引き留めようとしているようで、止めてほしかった。


「まだ…………一緒にいろっていうのかよ…………!」


 一緒にいても辛いだけだ。

 底知れぬみじめさを常に味わされる。

 格好いいなんて、褒め言葉はいらない。もう素直に、辛いことからは逃げ出させてほしかった。
136 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:18:03.63 ID:Bg+oYlAv0
「おいおい、こりゃあまた…………。また随分と薄れちまったな…………」


 心が声にならない叫び声を上げそうになったとき、低く重く響く声が、雨の向こうから届いた。

 のろのろと頭を上げると、そこには傘を差した、数日前に俺を「煙っている」と評したおじさんが立っていた。

 相変わらずすさまじい存在感だ。雨のカーテンのせいで視界はそれこそ煙っているが、このおじさんだけは、輪郭がはっきりしているような感じがする。

 俺はただぼうっとおじさんの方を見ていた。


「次のバスは………ああ、あと20分近くもするのか………」


 おじさんは時刻表を見てつぶやく。そして、黙ったままの俺に目を移した。


「兄ちゃん………また何か嫌なことがあったのか?」


 おじさんはすべてお見通しだと言わんばかりの調子で俺に話しかけてきた。


「おじさん………」

「ん?」

「おじさんは…………ずっと後悔しない生き方をしてきたんすよね」

「ああ、そう言ったな」

「悔しいって………、誰か自分より能力のある人がいたとして、その人に嫉妬した事とかって……ありますか?」

「嫉妬か………多分ねぇな。俺は俺だからな。他人とつるむこと自体あんまりなかったし………」

「はは、羨ましいっす…………」
137 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:19:06.47 ID:Bg+oYlAv0
 俺はそこで言葉を切って、もう一度うなだれた。

 幸せそうな人だなぁと、ちょっとうらやましくなった。

 そりゃあ周りに誰もいなければ、嫉妬する対象がいないんだから、そもそもすることがないだろう。

 でも俺は違う。周りには、麻雀部のみんながいる。どいつもこいつも化け物じみた才能と能力を持っている。

 他の友人は、麻雀部のみんなに振り回されている間に、どっかにいってしまった。


「あぁなんだ。何があったかは知らないが………こんなとこで雨に打たれてちゃあまずい。ついてきな。すぐそこの旅館に、俺は泊まってるんだ」

「え………」

「まぁ、来たくないっていうんなら別に構わないがな………」

「あ…………」


 正直、どこかで雨宿りするとかはどうでもよかった。

 ただ、このおじさんは何か、まだもっと話していたいと思わせる、引き寄せる力があった。

 俺は立ち上がって、おじさんについていった。
138 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/08/30(火) 16:23:32.59 ID:Bg+oYlAv0
ここまでです。

投稿は書き溜めたものにスレの反応を見つつ加筆修正を加えてるんですが、なかなかうまくいきません。

今回も本当は冒頭から赤木さんに会う予定だったのに、回想シーンはスレの反応を見て差し込んでみたものです。

結局、自分でもかいててよくわからないものになってしまいました。

それと雑談ですが、まぁ荒らしだとかはスレ主は思ってません。

感想も「あぁ、見ている人からすればそういう疑問が生じるのか俺の文章は」と参考になるのでどんどんどうぞ。^^

ただもし収拾のつかなくなった場合、別の場所にてもう一度スレ立て直すかもしれません。
死蔵なんかさせてたまるか。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 16:56:38.38 ID:vabu3jLzO
乙〜
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 17:00:56.49 ID:mnWjlCnI0
支援
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 17:02:17.17 ID:I1yCm+eDo
乙乙
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 17:03:07.87 ID:eex7YWiJO
ハーメルンとかでも良いのよ?

143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 17:24:43.10 ID:SPPeCXI60
乙!
目に余るようなら、笛吹きの方が良いかもですね。
応援してます!頑張ってください!
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 18:38:24.61 ID:lr+TdX4VO
回想よかったと思うよ
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 20:41:58.62 ID:576iK1p0O
イッチなに煽ってんの?
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 20:45:17.04 ID:dy84KIDEo
>>145
煽ってるのはお前だけなんだよなあ
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 23:27:32.10 ID:wQEIshyYO
>>145
お前みたいなカスは消えてくれ
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/31(水) 00:14:52.77 ID:/Ku1v0840
荒しに構うな
それがルールだ
149 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:32:30.69 ID:MFyxpBzt0
こんばんわ。投稿していきます。
150 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:33:53.96 ID:MFyxpBzt0
 バァアアン!!!


「ひゃあ!?」


 空気が力任せに破かれたかのような雷の轟音に、卓を囲んでいた和が跳び上がる。

 数秒かけて息を吐き出し、動悸を落ち着かせる。


「おっきかったですねぇ………」

「うむ、眼福だじぇ」

「え?」

「跳びはねた動きで、のどちゃんのおっぱいすげぇ揺れてたじぇ! 相変わらずおっきいな!」

「ゆ、ゆーき!」


 下家の優希の冗談に、和が顔を赤くして怒る。


「まったく………あら? 咲さん、どうかしましたか?」


 対面の咲が全く雷にも会話にも反応せず、沈んだ表情をしていたのを見て、和が尋ねる。


「え? あ、うん。今日、ちょっと嫌なことがあって」

「何があったんです?」

「えっと………京ちゃんがね、授業中に居眠りしちゃって、先生に怒られてたんだけどね」

「まったくなにやってるじぇ、犬のくせに」
151 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:34:43.20 ID:MFyxpBzt0
 左手に持ったタコスをかじりながら、優希が相槌を打つ。


「みんなおんなじこと言うんだね………」

「じょ?」

「それで先生がね、京ちゃんに昨日は何時に寝たんだって聞くとね、夜中の3時まで起きていたんだって」

「それじゃあ眠くて当然ですよ………」


 和が呆れたように息を漏らす。


「3時ですって?」


 部活が始まってから卓にも入らず、ずっと窓の外をぼうっと見つめていた久が反応した。


「昼休みに須賀君に会って、ぎょっとするほどくまが出来てたから聞いたけど、昨日は12時過ぎにはもう寝てたって言ってたわよ?」

「普通、先生に訊かれたら叱られないように早く寝たって答えるよのぅ?」


 咲の持ってきた、京太郎が昨日までにまとめた牌譜を眺めていたまこが、視線を上げずに会話に参加してきた。
152 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:35:22.65 ID:MFyxpBzt0
「じゃあ、やっぱりほんとは3時まで起きてたんだ…………」

「部長?」

「ん、ああいや、なんでもないわ。で、3時って答えたらどうなったの?」

「馬鹿もんって怒られて………先生がお前は帰宅部なんだから、ちゃんと勉強しろって言って、京ちゃんが麻雀部ですって答えると、じゃあ京ちゃんもインターハイでいいとこまで行ったのかって聞いてきて…………」

「あー……」


 そこで優希がその先を察して息をついた。


「京ちゃんが一回戦負けですって言ったら、周りのみんなはそれを笑って…………、先生まで、じゃあお前才能ないんだから、諦めて勉強しろって。私は提出物全部出してるのに、見習え馬鹿もんって…………」

「そりゃあそうだじぇ。咲ちゃんは普通に家帰ってから勉強してるのに、同じ条件で京太郎は何してるんだじぇ全く」

「同じじゃないよ!」

「じぇっ!?」


 咲が声を張ると、優希が驚いてタコスを落としそうになる。
153 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:37:05.90 ID:MFyxpBzt0
「優希ちゃん、牌譜を40局、パソコンとか画像とか使って、私はよく知らないけど見やすい形にするのにどれくらいかかると思う?」

「じぇじぇ? うーん……作ったことないし………」

「私は何度か作ったことがありますけど………、ソフトを使って、1局が終局までフルに行われたとすると………1局あたり10分でしょうか?」

「じゃあ、染谷先輩。今日、京ちゃんが持ってきてくれた牌譜、何局分ありますか?」

「ん? 30くらいかのう? 一昨日までの残っていた分が8つ、昨日の分が21………ありゃ?」


 まこの言葉が途中で途切れる。


「優希ちゃん。じゃあ大体30かける10分で、全部まとめるのに何時間かかる?」

「じぇっ!? え、えーっと、300だから、3時間!」

「何で1時間が100分なんですか………」


 勢いよく答えた優希の答えに、和が頭を抑える。


「でも、確かにこの量を1日でやるのは…………」

「そう、京ちゃんはほぼ毎日、家に帰ってからも5時間近くかけて牌譜の整理をしてくれてるんだよ。もっとも全部終局までやるわけじゃないし、優希ちゃんが居ると東場はすぐに終わっちゃうから、全部が全部10分かかるわけじゃないだろうけど」

「帰ってから5時間………気が遠くなるのう」


 牌譜から視線を上げたまこが、天井を仰ぐ。
154 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:38:06.12 ID:MFyxpBzt0
「私たちが毎日8時まで部活をやって、京ちゃんが家に帰れるのが大体8時半。ごはんとお風呂を済ませて九時半。そこから短く見積もって3時間かかるとしたって、もう12時半だよ?」

「じゃあ、残りの2時間半は何してるんだじぇ? 3時に寝たんだろ?」

「いつ宿題をやるの?」

「あ…………」


 そこまで説明すると、優希も理解したようだった。


「仮に宿題を1時間で済ませたとしても、それで1時半。しかも期末前で提出物も大量にあるから、到底そんなんじゃ終わらないよ。もし終わったとしても、その後京ちゃんはいつどこで自分のための麻雀の練習をするの?」

「うわぁ…………」


 いったい何時までかかるか想像した優希が、頭を抱える。


「私は本を読みこんじゃったりして遅くなっても1時には寝ちゃうけど………、京ちゃん、いったい何時間寝れてるんだろ?」


 そんな大変を過ぎて過酷な状況にあって、教師から心無い言葉をもらった京太郎の心情を考えると、咲はどうしても気分が沈みこんだ。
155 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:39:18.08 ID:MFyxpBzt0
「私たち、大会前だからって…………、どうせ京ちゃんは個人戦しか出れないからって、京ちゃんに任せ過ぎだよね…………」


 咲のその言葉に、その場にいた全員が胸の中を抉られる思いだった。

 自分と同級生、もしくは1つか2つ下の後輩が、毎日深夜まで起きて自分たちの牌譜を整理してくれていて、部活中でもまこが卓に混ざるときは牌譜を全部やらせ、食事や掃除、買い出しといった雑用もすべて任せていた。

 大会前だから、というなら京太郎だって自分達と条件は同じはずだ。

 だけど京太郎に任せておいて異を唱えなかったのはきっと、きっとこの場にいる誰もが、あえて無視し続けていた、「どうせ京太郎は1回戦負けだろうし、実力もないから練習相手にもならない。だったら自分達を優先的に練習させて、雑事は京太郎に任せればいい」という、京太郎を蔑ろにした考えに基づいてのことだ。

 無論、心の底からそう思っていたわけではない。京太郎を疎ましく思うものなど、一人もいはしない。

 だが成人もしていない未成熟な少女たちはどうしても、「もう一度、自分たちが優勝のような好成績を残したい」という欲が勝ってしまい、結果京太郎の境遇に目を向けることを避けてしまった。

 ここで咲にその問題と対面させられて、5人は自分が今までいかに合理的ではあるかもしれないが、非道なことをし続けてきたのか、自分の心の汚さと直面させられる。
156 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:40:18.96 ID:MFyxpBzt0
「で、でも、いぬ………じゃなくて、京太郎はそんな不満そうにはしてないじぇ! 確かに任せ過ぎだけど、これからは京太郎も混ぜてやればいいじぇ!」


 優希が沈んだ空気を取り払おうとして、余計に明るい声で言う。だが、


「不満は………ずっと溜まってたんだと思うわよ」

「え?」


 黙り込んでいた久が、壁に背を預けながら言う。


「あのさ………たとえ話で悪いけど、そうね………。仮にみんなが何かの科目で、毎週テストをやるとするね。それでみんなは、せいぜい頑張っても60何点かしか取れないの」

「私は80点以下はとったことないですけど………」

「むきーっ! のどちゃんひどいじぇ! 私なんていっつも20かそこらなのにー!」

「はいはい、今はそこが問題じゃないぞ」


 どこかずれた発言をする二人を、まこが抑える。


「うん。それでね、隣の………ううん、クラスの前後左右の席の人が、全員毎回90点以上をとっているとするの」

「やなかんじだじぇ」

「うん。それでね、その人たちが自分を囲んで毎回これ見よがしにいうのよ。ああ、また90点だった。
 100点じゃないなんて、自分は頭が悪いなぁ。100点じゃないとか恥ずかしい。90点くらい取れて当たり前だよね、とか」
157 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:41:42.82 ID:MFyxpBzt0
「うっじぇえええええ!! なんつー腹立つ奴らだじぇ!」 


 胸糞の悪い想像に、優希が怒声を上げる。


「他のみんなはどう? そういうことされたら?」

「いい気分は、しませんよね………」

「いたたまれないっていうか………」

「正直、そこまでされたらみじめで泣きたくなるじゃろうのぉ」

「やっぱり、そうだよね…………」


 全員の解答を聞いて、久が顔を曇らせる。


「そうやって自分のことだとわかるくせに………私って、最低ね」

「え?」

「私たちは皆………それと同じことをやって来たのよ。須賀君に」

「それって………?」

「さっき、お昼休みに須賀君に会ったって言ったでしょ? その時にね、須賀君が麻雀の教本を持ってたのよ。
 お世辞にも上級者向けとは言えない、基本的なことばかりの本だったけど、勉強するなんて偉いじゃん、私もまだまだ弱いんだし見習わなきゃねって言ったの。
 そしたらね、すっごい怖い声で、須賀君が嘘をつくなよって言ってたの」

「嘘?」
158 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:43:12.16 ID:MFyxpBzt0
「うん。私もびっくりしてね、須賀君は慌てて笑ってごまかしたんだけど、私は言いたいことがあるなら言ってって言ったの。そしたら須賀君は、部長でまだまだ弱いとか、冗談でもたちが悪いって言ったのよ。私は自分のことを、そんな絶対的に強いとは言えないし、自分より強い人も知っているから、だから私は自分のことをまだまだだなって思ってるって答えたの。
 そしたら…………」


 京太郎に怒鳴られた時の恐怖を思い起こして、久の手足が小さく竦む。


「須賀君が、嘘つくなよって、ものすごい形相で怒鳴ってきたの。
 そんなに強いくせに自分を貶めるようなことを言って、何が面白いんだよ、あんたで弱いなら俺は―――って、
 そこで言葉切ってたけど、多分、あんたで弱いならそれより弱い俺は何なんだよって、言いたかったんだと思う………」

 5人は、京太郎のその言葉に考え入った。


「もし―――さ、私たちが、私たちなんかじゃ及びもつかない人たちの雑用を毎日押し付けられて、その状況でさらに、その人たちが自分のことを弱い弱いってこき下ろしてるのを聞いたら、どう思うかな………。
 私だったら、やっぱり自分がみじめでたまらなくなっちゃうと思うな………」
159 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:45:53.09 ID:MFyxpBzt0
 久は窓の外を向いて、土砂降りで真っ暗になった空間を見つめた。


「私………部長失格ね」

「そ、そんなことはないです!」


 年長者に向かってはいつもの語尾を伴わず、敬語を使って話す優希が声を上げた。


「部長以外の人が私たちの部長になるなんて、考えられないです! 全国で会って来たどんな強い人たちよりも、部長以上に最高の部長なんていません!」

「ありがと。でも、須賀君にとってはそうじゃなかったと思う。考えてみれば、本当に麻雀を知らないのにうちの部に来てくれたのは須賀君だけ。なのに私は………、そんな素人の彼を指導することをしなかった。本当なら、先輩としてそんな彼を真っ先に指導しなきゃならなかったのに。
 自分がこの部に居られるのは実質1年しかないからって、試合に出れる面子のことしか考えていなかった。
 しかも……インハイ後も、内定がもらえたからって有頂天になってた。
 自分がまだ主役で麻雀を続けられるんだって思ったら、それでいっぱいになっちゃって………。
 それまでずっと後回しにしていた須賀君を鍛えることすら、都合よく忘れてた…………私…………」


「この4カ月………まだ1年の彼と、引退した私の4か月じゃ、比べ物にならないのに…………
 須賀君に………どうやって謝ればいいんだろう…………」
160 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:49:15.97 ID:MFyxpBzt0
ここまでです。
小出しにするとなかなか仲直りまで遠い。

清澄連中があくどい立場になっていますが、主は別に清澄嫌いではありません。

ただ、そもそも5人いなけりゃ部活にならないのに、完全初心者なのに来てくれた京太郎にもう少し感謝してもいいんじゃないかなぁと思います。
でもタコスはどっちかと言えば嫌い。人間を人間扱いしないやつは問答無用で嫌い。
犬呼ばわりとか冗談も何回も言えば真実になる。
161 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/01(木) 00:50:56.56 ID:MFyxpBzt0
後関係ない話ですけど、咲実写化らしいですね。

京ちゃんが存在消されたりしないか心配です。

出たとしても完全なこてこてのギャグ要員とか止めてくれ。ましな扱いを。
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 00:51:46.73 ID:J75gByLB0
乙!
そりゃ二年も人集まらんかったわな、こんな人達じゃあ
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 00:52:29.40 ID:RRWfhBYo0

スレ主もタコスって人間扱いしてやれよww
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 01:11:07.95 ID:WuC4Lf5Ro
乙です
仲直りはよ
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 02:35:34.64 ID:ONFF3ZZao
おもしろい
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 02:38:07.60 ID:0PVLdss20
わかる、いくら仲のいいことからの冗談でも人に対して犬と呼ぶことが平然と出来る優希はちょっとアレだと思う
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 02:50:13.30 ID:uRmeDpdRo
消えるどころかむしろ出番マシマシまであるでしょ
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 03:10:06.21 ID:rtIJs/ujo
乙です
実写ドラマについてはデスノレベルに主役が改変されなければ咲ちゃんが麻雀部に寄る理由ないし大丈夫

だと思いたい
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 05:18:06.11 ID:ggvMs4tS0
乙!
状況を聞けば聞く程、畜生清澄の印象が強くなっていく…。
更に言うなら来年、大して強くないのに雑用ばっかりやらされてる先輩がいて後輩がどう思うのかまで考えて欲しかったと思う。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 14:35:59.73 ID:mvAT3Ibpo
女性受けも狙った恋愛もの路線になるかもしれないしなぁ
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 15:01:04.00 ID:huskkDrvo
>>168
咲ちゃん例によって迷子で麻雀部の部室前に

優希「お?入部希望者だじぇ」

咲「いえ、あの…そういう訳じゃ…」

優希「まぁいいから1回打ってくじぇ」

これだけで京ちゃん必要なくなる気がするんですがw
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 19:16:59.24 ID:9j3r74geo
アニメとか漫画なら女しか出てこない謎世界でも喜ぶ人がいるから商売成り立つけど
実写だったら男女の恋愛要素入れないと誰にも相手にされないからねえ
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/01(木) 21:21:35.28 ID:vh1rQj+K0
男女の恋愛要素入れるとなると、和が「私はあの人に勝ちたい」と人鬼を追うむこうぶちクロスのほうが客受けしそうだな。
でもそれむこうぶち実写化したほうが早いよねって突っ込まれそう
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/02(金) 12:02:21.64 ID:xKz3J7zQO
京太郎の存在が消されるだけならまだマシかな…
最悪なのは和が男になってタコスワカメ京太郎が消されてる世界か
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/02(金) 15:36:03.21 ID:7tDaF7AKO
そもそもメインキャラが『宮永咲』でない可能性も……
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/02(金) 22:10:43.98 ID:vybQIpFM0
そもそも麻雀やらない可能性も・・・
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/03(土) 05:56:12.83 ID:mUkh/Hf50
対局に時間かかるからソードマスターヤマトみたいに最終回で卓囲んでそのまま終了かな
178 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/04(日) 20:35:57.37 ID:9PCR24Zc0
こんばんは、ちょこっとだけ投稿するよ
179 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/04(日) 20:36:52.91 ID:9PCR24Zc0
「すいません、お風呂を貸してくれただけでもありがたいのに、服まで………」


 旅館の仲居さんが俺の服を洗濯してくれている間、俺はおじさんの服を借りていた。

 俺やおじさんの体形に合う旅館の浴衣がなかったため、おじさんが気を利かせてくれたのだ。


「はは、中々にあってるじゃないか」

「そ、そうっすか?」


 格好いい、真っ黒なシャツに銀色のジャケットを羽織る。

 おじさんのまねをしてシャツの襟をわざと立ててみようとちょっと試してみたが、あまりにも格好つけすぎているのでやめておいた。


「やっと年相応な面になったな」

「え?」


 鏡の前で、襟をいじって照れていた俺を見て、煙草をくわえたおじさんが笑う。

 どうやらそれが最後の1本だったようで、箱はくしゃりと握りつぶしてしまった。


「さっきよりはずいぶんましな顔になった。年相応のガキの顔だ」

「そ、そうっすか…………」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/04(日) 20:36:53.84 ID:PqV9+wiho
おう待っとったゾイ
181 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/04(日) 20:38:10.85 ID:9PCR24Zc0
 恥ずかしいやらなんやらで、俺はおじさんの方に正座して向き直る。


「え、えっと、俺、須賀京太郎って言います。おじさんは………?」

「俺か? 俺は赤木…………赤木しげるだ」


 赤木さん。そう名乗ったおじさんは、部屋の隅に置いてあった座布団を俺によこした。


「あ、ありがとうございます」


 お礼を言って、座布団の上に座る。

 畳の濃い香りが漂う部屋に、赤木さんの煙草の臭いが強くなっていく。


「ああ、煙草は苦手だったかい。だが悪いな、これが今ある最後の一本だから、吸い切らしてくれ」

「は、はい」


 別に煙草はどうでもよかったのだが、威圧感に似つかわしくない赤木さんの気づかいに緊張してしまう。


「くくく………取って食おうってわけじゃねぇ、そう固くなるな」

「は、はい………」
182 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/04(日) 20:39:35.99 ID:9PCR24Zc0
 そんな俺の戸惑いすら見透かしたかのように、赤木さんは笑って気を利かせてくれる。

 そのまま何度か煙を吐いて、雨音だけが聞こえてくる時間が続いた。


「ん………待たせたな」


 赤木さんが短くなった煙草を灰皿に押し付け、俺と向き合う。


「この雨で散歩にもいけねぇし、せめて煙草だけ買いに行こうとしたらお前さんが居たんでな。まぁ、ジジイの暇つぶしに付き合わされてると思ってくれて結構だ」

「いえ、そんな………! 赤木さんが着てくれなかったら、あのまま濡れて風邪ひいてただろうし………」

 スッ
 その時、部屋のふすまが開けられて、仲居さんがやって来た。


「失礼いたします。お飲み物をお持ちいたしました」

「おう、ご苦労さん」


 仲居さんは、湯気の出るような熱いお茶を俺の前に置いて、赤木さんの前にはビールの小瓶とコップを置いた。


「ああ、姉ちゃん。この、フグ刺し頼めるか?」


 赤木さんがルームサービスのメニューを指さしながら尋ねる。


「申し訳ありません、最近は天気が良くなくて、業者も来れなくて御品切れとなっております」

「そうかい(´・ω・`)」


 赤木さんはとても残念そうな顔をした後、ビール瓶を開けた。
183 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/04(日) 20:40:30.18 ID:9PCR24Zc0
 赤木さんはとても残念そうな顔をした後、ビール瓶を開けた。


「京太郎、酒はイケる方か?」

「い、いやっ、俺未成年すから!? ばれたら部活の皆にも、迷惑が…………」


 赤木さんの冗談めかした問いかけに、俺は跳び上がって答えた。

 そしてその言葉尻が、沈んでいく。


「部活の連中が、どうかしたのか?」

「えっと…………」

「構わねぇ。どうせ俺しか聞いていないんだ、遠慮なくぶちまけちまえ」


 俺は机の上のお茶を飲まず、うつむいたままポツリポツリと話し出した。


「赤木さん。清澄高校って知ってますか?」

「すまん、俺は世間一般のことに疎くてな」

「すぐそこの高校で、そこの麻雀部は滅茶苦茶強いんです。初出場で、インターハイベスト4とかやってのけちゃうくらいに」

「へぇ、そりゃすごそうだ」


 かかか、と赤木さんが軽い笑い声を上げる。
184 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/04(日) 20:41:20.91 ID:9PCR24Zc0
「男子が俺一人、それと女子五名のたった六人だけの部活なんすけど……。あいつらは、本当に化け物じみた強さなんです」

「お前さんはどうなんだい。それなりに、腕に自信はあるのか?」

「いえ、全然……………」


 膝の上に置いた拳を握り締める。


「俺は、麻雀初めて1年も経っていないんですけど………全然だめです。多分条件が同じでも、そこらの学校の麻雀部の生徒より弱いと思います。いっそ、笑える程に才能がなくて………」


 掌に、握り締めた手の爪が食い込む。


「努力は、正直めちゃくちゃしてるって言えると思うんです。毎日あいつらの傍にいてその牌譜をとって、強い人たちの打ち方をこの目で見て感じて、家に帰ってからも、毎日2時間以上自分で勉強して、夜遅くまで頑張って…………」


 胸の痛みが再びよみがえる。最近の辛いとしか感じられない日々が、頭の中一杯にフラッシュバックする。
185 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/04(日) 20:42:40.30 ID:9PCR24Zc0
「なのに、あいつらは、俺なんか置いてどんどんさらに強くなっていくんすよ………。
 人が100メートル走を律儀に頑張ってるときに、タクシー使ってそばを追い抜かれていく感じっす………。
 でも、別にそれはいいんです。その手伝いは正直、辛いっすけど………、ある意味それも幸運なことだと思えるんです。でも…………」

「でも………何だ?」

「でもあいつらは…………そんだけ急成長していく自分たちを、弱いっていうんです………。
 元から化け物じみてるくせに、最近はさらに強くなって………それでも、まだまだ弱い、まだまだ勉強しなきゃって………。
 それで………そんなあいつらを傍で見ていて、じゃあ、お前たちより弱い俺は何なんだよって………思い始めたんです」


 視界が、涙で歪む。


「お前たちで弱いっていうなら………じゃあ、俺はただの雑魚じゃないかって。
 そりゃ、もともと俺は雑魚っすよ。あいつらが一流じゃなくて二流なら、俺は三流どころか五流っすよ。
 でも、あいつらだけがさらに強くなっていって、それを傍で見せつけられて、自分たちは弱い弱いって、ずっとこき下ろされて………みじめで………!」


 ポタリ、と膝の上で握り締めた拳の上に、涙が落ちた。

 赤木さんは、何も言わずにビールをもう一杯、コップに注いでいた。


「……………それが、お前の煙っちまってる原因かい?」

「……………」


 俺は黙ったまま頷いた。

 赤木さんは、注いだばかりのビールを一口飲み、コップを置いてしばらく黙った。
186 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/04(日) 20:44:08.78 ID:9PCR24Zc0
短いけどここまでです。
次回が説教シーンなので、ひとかたまりドンと行きます。

説教が訳の分からないものになってないか、何度見直してもスゲー不安です。
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/04(日) 20:48:23.04 ID:hI/N1LUNo

熱くても三流は嫌だよね
188 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/04(日) 20:50:30.29 ID:9PCR24Zc0
また本編とは関係ない雑談なんですが、最近脳内でアカギと咲のキャラを入れ替えることがマイブームです。

鷲巣麻雀で 安岡さん(頑張る凡人。最近超覚醒) → 京太郎
      仰木(後ろで20年間フラグ立て続けてきた戦犯)   → 和

とか置き換えるとすごいしっくりきます。


 その状況とかもいろいろ妄想が膨らむんですが、それで1本書けそうなくらいなんでここまでで^^;
189 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/04(日) 20:52:12.12 ID:9PCR24Zc0
 アカギでも咲でも、頑張る凡人枠が大好きです。
 最近の安岡さんはめっちゃ戦力として頑張ってるよ
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/05(月) 00:00:34.35 ID:u6vUbsqIo
乙でした

安岡さん、確実にアカギと鷲巣に引っ張られて成長しとるよなw
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/05(月) 01:35:14.30 ID:wYvEdz7o0
おつです

部長的には「てっぺん獲るわよー」と参加したのにベスト4で終わっちゃったからまだまだ弱いって思ってるんじゃないかな。
まぁだからと言って京太郎の現状に納得できるかどうかは別問題だけど
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/05(月) 12:49:46.62 ID:wCFLDhSjo
正直アカギとかそっち系の運のどうこうだの流れがどうこうだので考えたらさ、
京ちゃん真面目に麻雀始めてから少なくとも部活で1位になれた事すらない可能性が割とあるし、
大会前の時点で「俺が麻雀やると絶対に負ける」って無意識に刷り込まれてる可能性。
他の麻雀漫画になるが、「卓についた瞬間から常時背中煤け続けてる」とか「いつでもご無礼可能」とかそんな感じになってたとしたら……。

りつべブログの男子麻雀とアニメでの京ちゃんのトビっぷりが矛盾しまくってるし、本気でそう言う状況なのありえなくはないんだよね。
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/09(金) 02:16:32.32 ID:7xDFOEDz0
>>192
真面目に描写されてないだけだぞ…
まあその点置いておいてもちょっと負けすぎな感はあるな
咲和は天才だし優希もとんでもない成長速度だから仕方ないともいえるが
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/09(金) 04:47:05.60 ID:GXx777Muo
>>男子の試合は能力も特になくて地味です。
男子って高校生以下の男性のことなのかそれともプロ含めた面子のことなのかで話が変わるね
「最近の男は情け無い」なのか「男は麻雀に向いていない」なのか
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/09(金) 15:08:52.38 ID:Qr8YjuXUo
>>192
アニメ全国編EDのユキのポーズが実は伏線でしたーwwとかやるりつべだぞ。
つかその京ちゃんのシーン以外は大体連携取ってやってるはずなのに、そこ「だけ」アニメスタッフが暴走ギャグやる理由が無い。

>>194
んでそれがどっちにしたって「男子のそれも県一次予選の場であそこまで盛大に吹き飛びまくった」って京ちゃんの状況が明らかにおかしい事には、なぁww
多少なりとも麻雀してるシーンがある中で、だと亦野さんがマタンゴ言われる切欠になったアレと泉の焼き鳥の被害が大きい部分足したみたいな感じだし。
亦野さん:結構高火力の喰らいまくってたけどまぁ上がれはしてる
泉:焼き鳥だが一発一発はそこまで

京ちゃん:原作通して「上がった描写すらないし作中で京ちゃんが入ってた卓の結果見ても上がったこと無いと考えても矛盾すら起こらない」&「その予選描写だと最低が跳満レベル」
作中描写とりつべブログでの話が全部事実と仮定すると、マジで京ちゃんの評価↓になる。
「クソ雑魚ナメクジばっかの現男子高校生の中でもぶっちぎりで話にならないクソ雑魚ナメクジ」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/09(金) 21:58:20.02 ID:wr07rfZA0
ということは京ちゃんはわざと振り込んで初心者のふりをしてるってことにならないかな?
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/09(金) 22:04:44.09 ID:HQW5NmKs0
京太郎「今日はこれ、上がってもいいんだよな」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/09(金) 23:37:08.20 ID:/ZoPVQdm0
初出場で優勝の清澄(しかも美人揃い)でたった一人の男子、となると相当マークや恨み食らうことになって、
いざ試合が始まるとすぐに弱いと見抜かれ、あとは個人戦の定石「弱い奴からむしって稼ごう」に飲まれる。
相手同士で和了って展開が紛れるより、山越しや低目見逃し使ってでもで狙われることにならないか?
まあ、作者がこうですと言ったらどうにもならないけど・・・
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 00:19:16.69 ID:JHXAr4iBo
長文の応酬やめーや
200 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/10(土) 00:43:54.91 ID:Isi5rKUz0
こんばんはー
これ以上見直しても自分じゃ改善でき無さそうだったし、そろそろ投下していくよー
201 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/10(土) 00:45:20.41 ID:Isi5rKUz0
「おかしいな…………」

「え?」

「俺の中だとな………努力してる時点で、そいつは輝くものなんだよ。
 だがお前は輝いていない。
 何か叶えたい望みがあって、それに向かって動けるだけで、人は幸せなはずなんだ………京太郎」

「は、はい」

「お前ひょっとして、努力を憎んでしかいないんじゃないか?」

「え…………」

「お前の場合、とにかく動いてみながら、あがいてみながらも………同時に、自分に足枷をはめちまってるんじゃあないか………? 
 じゃあその足枷とは何か………恐らく、その動こうとする努力自体を憎んじ待っていること………努力に何の価値も見出そうともしていない。
 本来命を輝かせるための動き、あがきを………逆に捉えてるんだ」

「逆?」

「お前の話を聞いているとどうも………お前は、努力に結果を求めすぎているように感じる。
 わからなくもない………あれだけ努力したんだ、だから当然、その対価は得て当然だ………と、そんな風に考えたくなるのもわかる。
 けど………それが強すぎるんだ。
 成功……繁栄………そんなものに目が行き過ぎて、結果の実らない努力を、辛さだけ押し付けてくる努力を、憎んじまってる………!」
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