【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】

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830 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:42:10.99 ID:13NMDd5A0
【絶望交響曲〜指揮静音凪〜】

【超高校級の指揮者静音凪処刑執行】

縛られた静音さんの前にやってきたモノクマ。

ステージにクラシックがかかり、モノクマは演奏を始めますが……それはあまりにヘタクソなもの。

不協和音に涙すら浮かべる静音さん……しかしその演奏は長く続きません。

あまりの扱いに怒った楽器達がモノクマを吹き飛ばし、指揮者である静音さんに襲いかかったのです。

弦楽器達が弦で静音さんの首を絞めて、打楽器達が棒を持って静音さんの頭や身体を滅多うちにして、管楽器達が大音量で静音さんの鼓膜を破壊して。

そして最後は静音さんの手から落ちたタクトが浮かび上がり……

静音さんの首を貫きました。

静まり返るステージに響く静音さんの喉からこぼれる空気の音。

それも次第に弱まり……最期には何も聴こえなくなりました。
831 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:44:05.39 ID:13NMDd5A0
【罪人来たりて笛を吹く】

【超高校級のフルート奏者四方院奏処刑執行】

動きを固定された四方院さんの口にフルートがあてがわれます。

そして彼女の意思とは関係なしにフルートの演奏会が始まりました。

素晴らしい音を奏でていく四方院さん……その演奏はまさに息つく暇もありません。

そう、文字通り四方院さんは一切呼吸せず、演奏させられているのです。

口にどんどん押し付けられていくフルート、鼻も塞いでしまう腕、どんどん青く赤くなっていく四方院さんの顔。

そして完全に呼吸出来なくなった四方院さんはもがく事すら出来ず、動きが鈍くなっていき……最後に気の抜けたような小さな音を出して、ぐったりと力尽きます。

モノクマ達は窒息死した四方院さんを工場に運んでいくと機械に投げ入れました。

そして出来上がったのは1本のフルート。

真っ赤な真っ赤な大きなフルートでした。
832 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:45:08.28 ID:13NMDd5A0
【無能の驕り】

【鞍馬類処刑執行】

鞍馬クンが薬の瓶を持って処刑場に現れます。

そして次々に出てくる処刑マシンを一瞥すると、薬を口に放り込みました。

身体能力を強化した鞍馬クンは、処刑マシンの攻撃を避けると逆に蹴りで機械を破壊します。

機械を操作するモノクマも慌てながら次々と攻撃を仕掛けますが、鞍馬クンには全く通用せず。

数分も経つ頃には処刑場は機械の残骸だらけとなり、中心には無傷の鞍馬クンが立っています。

怒ったモノクマは新しく機械を投入しますが、何回やっても結果は同じ。

鞍馬クンは一定時間が経つ毎に薬を飲み、機械を破壊し、薬を飲み、機械を破壊し……

しかしとうとう終わりが訪れます。

鞍馬クンの薬が、尽きてしまったのです。

その時初めて焦りを顔に浮かべた鞍馬クンの前にモノクマが現れます。

機械が尽きたのはモノクマも同じ……正真正銘最後の決戦。

モノクマ相手ならまだなんとかなると判断した鞍馬クンが構えると同時に。

モノクマが撃った銃弾が鞍馬クンの心臓を貫きました。

薬がなきゃ何も出来ない癖に何を勘違いしてたのかな、うぷぷ。
833 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:45:57.85 ID:13NMDd5A0
【道化の笑みは歪んで消える】

【超高校級の道化師ジェニー・クラヴィッツ処刑執行】

腕を縛られたジェニーさんが高い崖に連れていかれます。

崖には長いロープがかかっており、モノクマがこの綱を渡れと指示してきました。

ジェニーさんはしばらく戸惑っていましたが、意を決したように綱に向かって1歩足を踏み出します。

腕を縛られたままとはいえ、超高校級の道化師の名に恥じない彼女のバランス感覚。

綱の上とは思えないほど軽やかに進み、とうとう綱の真ん中までやってきたジェニーさんが気に入らないのかモノクマが綱を持ってガンガン揺らし始めました。

さすがにこれはキツかったのか、ジェニーさんがバランスを崩してしまいます。

そして綱が首に引っ掛かったジェニーさん。

モノクマはそれに構わずさらに綱を揺らし、ジェニーさんの首にどんどん負荷がかかっていきます。

苦しそうなジェニーさんですが落ちないためには首で綱にしがみつくしかなく……そして。

首吊り状態だったジェニーさんがとうとう力尽きて綱から落ちていきます。

崖の底に落ちていったジェニーさんの姿が見えなくなると同時に何かが潰れるような音がして。

誰もいなくなったその場で綱だけが風で寂しそうに揺れていました。
834 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:47:09.93 ID:13NMDd5A0
【解体工事】

【超高校級の土木作業員土橋美姫処刑執行】

土橋さんが大きな穴に横たわっています。

そこに現れたモノクマが持ってきたのは大きなコンクリートミキサー車。

土橋さんはそれを見てこれから何が起きるのか察し、穴から逃げ出そうとします。

そんな土橋さんを笑いながら、モノクマはコンクリートを流し込み始めました。

どんどん穴を満たすコンクリート、土橋さんは泣き叫んで逃げようとしますがあっという間に脚が沈み、逃げられなくなってしまいます。

コンクリートで固められていく土橋さんの身体……そして涙を流す土橋さんの頭をコンクリートが飲み込んでいきました。

固まったコンクリートを見て満足そうなモノクマがポロリとダイナマイトを落とします。

火がついていたダイナマイトはコンクリートの上を転がり、爆発してコンクリートを粉々に砕きました。

コンクリートに混じって降り注ぐ赤いなにかを傘で弾きながらモノクマは立ち去っていきました。
835 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:55:01.12 ID:13NMDd5A0
赤穂は本編終わってからやります。
続いてはシティモードは結局頓挫したので新芽のエンゲージリング集を……
836 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 22:16:39.63 ID:13NMDd5A0
【エンゲージリングを渡したら……吹石編】

新芽「……」

正直あたしは未だに自分で自分が信じられない。

吹石「おい新芽、いい加減俺の女になる気になったかよ?」

だってこいつよ?

この今でも人の神経を逆撫でしてくるこのゲスよ?

新芽「……」

吹石「あん?いつもみてえに抵抗しねえのか?」

新芽「……」

そんな奴に、あたしは今……

新芽「これあげる」

指輪を渡そうとしてる。

吹石「ああ?んだこれ指輪?」

新芽「エンゲージリングよ。ゲームコーナーにあったの見たでしょ」

吹石「ああ、アレか……あ?エンゲージリング?」

新芽「……」

吹石「なんだお前、俺に惚れたのか?」

新芽「っ、あたしだって信じられないわよ!だけどしょうがないじゃない!好きに、なっちゃったんだから……」

吹石「ほーん、男見る目ねえなお前」

新芽「それ自分で言うわけ……?」

吹石「けっ、自分の事は自分がよくわかってんだよ」

新芽「それで、どうなのよ」

吹石「めんどくせえなぁ……」

新芽「っ!」

わかってた、こいつはこういう奴だって。

こんな男を好きになった自分がとても馬鹿に思えて……あたしはそれでも涙を流すつもりはない。

こんな男にフラれて泣いてなんかやらない……!

新芽「悪かったわね……今の忘れて」

吹石「ああ?何言ってやがるさっさと指輪よこせや」

新芽「は?」

吹石「特定の女なんざめんどくせえけど、まあお前なら構わねえよ」

新芽「……なんでよ」

吹石「――コンプレックス、刺激されねえからな」

新芽「は?」

吹石「なんでもねえよ!ほら、さっさと指輪渡せ!」

新芽「あっ、ちょっと……」

指輪取られた……あたしの気持ち、通じたのよね?

吹石「じゃあ新芽は今から俺の女だ。早速部屋に行こうぜ」

新芽「いきなりそれ!?」

やっぱり自分がわからない!

なんでこんな男好きになっちゃったのよ、あたしは!!
837 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 22:37:15.13 ID:13NMDd5A0
【エンゲージリングを渡したら……錦編】

錦「ありがとうございました!」

新芽「はぁ、はぁ……」

錦のテニスに、付き合うの、本当にしんどい……

錦「新芽さん、大丈夫ですか!楽しくて少し全力を出してしまいました!」

新芽「だから、後半なんか走馬灯が見えたのね……まあ、楽しんでくれたなら何よりだけど」

錦「本当にごめんなさい!好きな人とのテニスだから受かれてしまいました!」

新芽「はい?」

今、なんて?

錦「新芽さん!」

新芽「えっ、あの、なんで手握って」

錦「好きです!」

新芽「ちょっ!?」

なんでこんないきなり!?ああ、でもなんか錦らしいというか、いやそうじゃなくて!

ポロッ

新芽「あっ!」

錦「これは、指輪ですか?」

新芽「いや、違うの!一緒にいたらなんか渡すチャンスあるかなとかそういう風に思って、は少しはいたけど!」

錦「……」

新芽「あの、錦……?」

錦「わかりました!立花さん!結婚しましょう!」

新芽「だからなんでそういきなりなのよ!?」

心の準備も何もあったもんじゃないじゃないの!

錦「立花さんはぼくを好きで!ぼくは立花さんが好き!だから問題ありません!」

新芽「いや、あの、だから……」

錦「全力で幸せにします!だから、全力でぼくと幸せになってください!」

新芽「……」

ああ、もう……本当に常に全力で。

そんな錦だから、あたしは好きになったのよね。

新芽「じゃあ錦……ううん、修二、1つお願いしていい?」

錦「全力で応えます!」

新芽「指輪、薬指にはめてくれる?」

全力で幸せか……うん、あたしもその全力に頑張って応えなきゃね!
838 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 22:55:50.67 ID:13NMDd5A0
【エンゲージリングを渡したら……真白編】

新芽「……どうしよう」

真白「……」

新芽「いや、これはさすがに……うーん、でも」

真白「幸運、さっきから何をブツブツ言ってるんだ」

新芽「真白君……」

真白「な、なんだ?幸運なんか変だぞ……」

新芽「真白君は、好きな子とかいる?」

真白「好きな子?まあ、ここのみんなは嫌いじゃないぞ」

新芽「そうじゃなくて、ガールフレンドとか」

真白「な、なんだいきなり!そんなのいるわけないだろう!ボクは暇じゃないんだ!」

新芽「そう、いないのね……だったら、予約していい?」

真白「よ、予約?」

新芽「そう、予約。このエンゲージリングあげるから、将来的にあたしと……」

真白「ま、待て待て待て!ボクはまだ10歳だぞ!?」

新芽「いつも子供扱いするなって言ってるじゃない」

真白「いや、それはその、だけど」

新芽「大丈夫、もちろん待つわ……真白君が18歳になるまで」

真白「こ、幸運、お前、そういう趣味が……」

新芽「それは違うわよ真白君!あたしは10歳だから真白君が好きになったんじゃない!好きになった真白君がたまたま10歳だったのよ!」

真白「ま、待って、待ってよ立花お姉さん!ボクそんな事言われても本当に恋なんてわからないよ!」

新芽「あたしも色々テンパってわけわからないからおあいこよ!」

真白「絶対違う!」

それからなんとか落ち着いたあたしは、真白君に改めて告白した。

恋がわかる時まで待ってほしいって言われて保留だけど……断られなかっただけ全然マシよね!

これから覚悟してなさい真白君……絶対にあたしを好きにさせてみせるから!
839 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 22:04:50.31 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……泉編】

泉「毎度すまんな新芽よ、我が輩の手伝いなどさせてしまって」

新芽「いいのよ、気にしないで!生原稿見られるだけでファンとしては感涙物なんだから!」

泉「むうっ、そんなものか」

新芽「でもあれよね、こうして一緒にいて色々話して……たくさん泉の事を知れた気がするわ」

泉「我が輩も新芽と話して学ぶ事が多かったであるな。参考になる意見も多々……やはりファンの目線は大事という事か!」

新芽「……ファンと言うより、恋してるから、じゃないかしら」

泉「ほう?確かに恋する少女の気持ちについては特に参考になったが……しかしいかんな」

新芽「えっ?」

泉「新芽は恋をしているのだろう。それも察するにこの生活の中の誰か……ならば我が輩が拘束してしまうのは問題である!」

新芽「い、いやいや、それに関しては大丈夫!問題なし!むしろ困る!」

泉「……新芽よぉ」

新芽「な、なに」

泉「我が輩は少女漫画家であるからして、そういう事には理解が早いと自負しているが……今の反応はそう判断してもよいのであるか?」

新芽「うっ……」

泉「よいのであるな……むうっ、まさか新芽が……」

新芽「一応、本気よ?こんなのまで用意してるし……」

泉「エンゲージリング!これはまた」

新芽「……重いかしら」

泉「ふんっ!我が輩は鍛えておるからな!それくらいの重さなら障害にもならん!」

新芽「泉……」

泉「……うーむ、しかしいかんなこれはいかん」

新芽「こ、今度はなに?」

泉「少女漫画家でありながら気の利いた言葉がまるで浮かばん!」

泉「故に新芽、情けないがこの言葉で許してほしい」

泉「これからも我が輩と共に生きてくれるか?」

新芽「気の利いた言葉なんかじゃなくても、それだけで充分過ぎるわよ……」
840 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 22:19:40.22 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……赤内編本編の場合】

赤内「さてと、スカウトとして再出発だ……新芽さんには色々とお世話になったね」

新芽「……」

赤内「どうかした?僕の顔ジッと見ちゃって」

新芽「赤内……これ受け取ってくれない?」

赤内「プレゼント?新芽さんは本当に人によくプレゼント…………」

新芽「……」

赤内「あのさ、新芽さん?これエンゲージリングだよね?」

新芽「そうよ」

赤内「意味、わかって渡してるんだよね?」

新芽「当たり前じゃない」

赤内「そっか……」

新芽「……」

赤内「…………ごめん」

新芽「っ!」

赤内「僕はもう、奈美以外はそういう目じゃ見られないと思う」

新芽「……」

赤内「もういないのは理解してる。だけど、それでも……」

新芽「……うん、わかってる」

赤内「新芽さん」

新芽「いや、わかるわよ!あんなに奈美さんについて話す時楽しそうだし!赤内が奈美さん好きな事くらい!」

赤内「……」

新芽「だから、ありがとう。しっかりフッてくれて……これで、諦めつく」

赤内「……」

新芽「じゃあ、またね!今のはなかった事にしていいから!」

赤内「……」

赤内「泣いてたな、新芽さん」

赤内「彼女が好きなのは心沢くんか佐木原くんだと思ってたんだけど……」

赤内「奈美、怒るかなぁ……」
841 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 22:38:24.49 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……赤内編】

赤内「はぁ」

新芽「人を見るなりため息なんて失礼ね。まあどうせあたしはキラキラしてないけど」

赤内「そう言わないでよ、僕も色々あって当時の事少しは反省してる」

新芽「人がキラキラしてないからってぶつけてきたあの態度と言葉が少しの反省で何とかなるとでも?」

赤内「新芽さん、怖いよ……」

新芽「あたしはもっと怖かったわよ」

赤内「うっ」

新芽「……はぁ」

赤内「あの、今の新芽さんにこれ言ったら殴られそうなんだけどさ」

新芽「なに」

赤内「……好きです」

新芽「は?」

赤内「いや、あの、僕はほらキラキラしてない人に酷い態度だったでしょ?」

新芽「そうね、泣いた事もあるわ」

赤内「そ、それでも新芽さんは諦めず話しかけたりとかしてくれたよね?」

新芽「まあね」

赤内「言い合いしたりしてる内になんというか、それが心地よくなってたというか」

新芽「……」

赤内「あ、あはは……」

新芽「えいっ」

赤内「痛っ!?」

新芽「それが答えよ」

赤内「暴力反対……えっ」

新芽「……」

赤内「あの、これエンゲージリング……」

新芽「だからそれが答えよ!」

赤内「ちょっ、それにしては態度キツくない!?」

新芽「今までのあれこれ考えてみなさいよ!?あんな口論ばっかりだったのに両想い!?意味わかんないわよ!」

赤内「だからといってそんなキツくなくてもいいじゃないか!だから新芽さんはキラキラしてないんだよ!」

新芽「またキラキラ言ったわね!?」

赤内「なんだよ!事実だろ!」

新芽「なによ!自分こそキラキラなんかないって泣いてたくせに!」

赤内「酷い捏造だ!」

この後しばらく口論してたあたし達は……我に返ってからしばらく顔を合わせられなかった。

いや、本当に予想外だったのよ……
842 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 23:01:33.64 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……佐木原編】

佐木原「んー……」

新芽「佐木原?」

佐木原「おぉ、新芽か。何か用か?」

新芽「いや、まあちょっと……それより何してたの?」

佐木原「んー?この生活も終わりが見えてきたからな。なんか新しい事したいなと」

新芽「新しい事ね……佐木原は帰ったら何するの?」

佐木原「逃げる。俺はこれでもお尋ね者だからな」

新芽「またそんな事……じゃあ逃げるでもいいけど、あたしもついてっていい?」

佐木原「はあ?なんでまた」

新芽「言葉じゃ、ちょっと恥ずかしいから……これで察して」

佐木原「ほー、これはマーケットのエンゲージリングか」

新芽「そういう事なんだけど、ついていったら駄目?」

佐木原「……」

新芽「……」

佐木原「【俺でもまともな幸せってやつを得られるのか?】」

新芽「えっ?」

佐木原「興味が湧いてきたな……まあ、新芽なら話してもいいか」

新芽「佐木原……?」

佐木原「あのな新芽」

それから佐木原があたしに話したのは……到底理解が追い付かない真実の数々。

新芽「……」

佐木原「そういうわけだ。撤回するなら今の内だぞ?」

新芽「……佐木原は、興味を持った事を知りたがるのよね?」

佐木原「まあな」

新芽「今興味があるの、さっき言ってた事よね」

佐木原「そうだな」

新芽「いいわ、だったらそういう事ばかりに興味を向けさせるだけよ」

佐木原「へぇ?」

新芽「あたしがずっとそばにいて、変な事に興味を持たないようにするわ!それなら佐木原も危険人物じゃなくなるでしょ?」

佐木原「……」

新芽「……」

佐木原「くっ、あははははっ!マジか、そんな事言う奴はお前が初めてだぞ!」

新芽「きゃっ!?」

佐木原「新芽、お前って人間に興味が湧いてきたよ……もう何しても俺から離れられないぞ御愁傷様」

新芽「……望むところよ。あなたこそせいぜい考えたら?」

佐木原「何を?」

新芽「【どうすればあたし達2人が幸せになれるか】、をよ」
843 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:42:09.71 ID:hdiNFerA0
【エンゲージリングを渡したら……安原編】

新芽「安原!」

安原「……新芽か」

新芽「またここにいたのね、おかげで探す手間は省けたけど」

安原「俺を探していたのか?」

新芽「えぇ、話がしたくてね」

安原「話か……その様子だと大切な話のようだな」

新芽「それも探偵の推理?」

安原「そんな大袈裟なものじゃない……それで話とは?」

新芽「……色々考えたんだけどね、あたしはやっぱり一般人だから普通にいくわ」


新芽「安原、あたしあなたの事が好き」


新芽「色々見守ってくれて、気にかけてくれて、たくさん話もして……いつの間にかあなたを好きになってた」

安原「……」

新芽「これエンゲージリング……気が早いかもしれないけど、あたしの素直な気持ち」

安原「……新芽。俺は探偵だ」

新芽「うん」

安原「それも国家犯専門……潜入も多い。何より命の危機にさらされる」

新芽「……」

安原「悪い事は言わない、考え直せ。お前を幸せに出来るような人間ではない」

新芽「……安原の気持ちは?」

安原「何?」

新芽「あたしが危ないとか、あたしが幸せになれないとかそういう理屈じゃなくて、安原はあたしの事どう思ってるの?」

安原「……」

新芽「……」

安原「好意は、抱いている」

新芽「だったら問題ないじゃない!危ないなんてこんな世界なら今さら!それにあたし、安原関係なく誘拐されて殺されかけたしね!」

安原「……しかし」

新芽「それに幸せになれるかどうかなんてあたしが決める事……安原といられれば、あたしはそれだけで幸せになれるわ」

安原「現実は、そう甘くない」

新芽「そうかもね。だけどわざわざ悲観する事もない……違う?」

安原「……何を言っても聞かないか」

新芽「恋するとそんなものよ女の子は」

安原「わかった……俺の全てを懸けて誓おう」

安原「――お前を、世界で2番目に幸せにしてみせる」

新芽「2番目?」

安原「俺の1番は、揺らがないだろうからな」

新芽「……」

安原「柄ではないのは、理解している」

新芽「ううん、嬉しい!安原があたしをそれだけ思ってくれるって、わかるから」

安原「……立花」

あたしの名前を呼んで、安原は黙っちゃったけど……その想いはしっかりと伝わってくるような気がした……
844 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:43:07.68 ID:hdiNFerA0
【エンゲージリングを渡したら……安原編本編の場合】

※本編仕様なので表記は佐木原です。

佐木原「……」

新芽「……あの、佐木原ちょっといい?」

佐木原「なんだ?」

新芽「ここじゃ、ちょっとあれだから……」

【モノクマ大橋】

佐木原「わざわざここまで来るという事は……あまり聞かれたくない話か」

新芽「うん、まあ……人にはあまり聞かれたくないかも」

佐木原「奇妙なものだな」

新芽「えっ?」

佐木原「新芽は今狂人、そして記憶もない俺を相手に何か重要な話をしようとしている」

佐木原「俺自身が1番自分を信用出来ないというのに」

新芽「……」

佐木原は狂人、それも記憶がない……本当はどんな人かもわからない。

だけど。

新芽「あたしにとって佐木原は狂人なんかじゃない」

佐木原「なに?」

新芽「ほら、この生活が始まったばかりの頃辛くないかって声かけてくれたじゃない?」

佐木原「そんな事も、あったな」

新芽「あたしね、すごく嬉しかったの。ああ、こんな状況でもあたしを気にかけてくれる人がいるんだなって」

佐木原「……」

新芽「だからあたしにとって佐木原は、口数は少ないけど優しくて、頼りになって、その……」
845 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:43:48.74 ID:hdiNFerA0






新芽「――ずっと一緒にいたいって、思える人なの」






846 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:45:53.52 ID:hdiNFerA0
佐木原「……!」

新芽「佐木原、あたしね!佐木原の事」

佐木原「駄目だ」

新芽「えっ……」

佐木原「それは駄目だ新芽、狂人の俺にそんな気持ちを抱いても破滅しか待っていない」

新芽「あたしはあなたを狂人だなんて思ってないって言ったはずよ!だいたい今までの佐木原のどこに狂人なんて言える部分があったわけ!?」

佐木原「それは記憶がないからだ……本性はわからない」

新芽「つまりまっさらな佐木原は狂人なんかじゃないって事よ!」

佐木原「っ」

新芽「佐木原は前にあたしが辛くないか聞いた時、結局答えなかった……改めて聞くわ、辛くない?」

佐木原「……わからない」

新芽「……」

佐木原「何もかもがわからない。俺の才能、今、過去……全てがちぐはぐに思えるほどに」

新芽「……」

佐木原「だが、1つだけ」

佐木原「お前に、側にいてほしいという気持ちだけは、はっきりしている」

新芽「佐木原……!」

佐木原「……狂人の俺には過ぎた願いだと、思っていたんだがな」

新芽「そんな事ない!」

佐木原「……お前はそう思ってくれるのか」

新芽「こんな物、用意しちゃうくらいにはね」

佐木原「エンゲージリング……全く、ここまで覚悟を持って挑んでいたのか」

新芽「しかたないじゃない、それだけ好きになってたんだから」

佐木原「……貸してくれ」

新芽「あっ」

佐木原があたしの左手薬指に指輪をはめる。

そして慈しむようにあたしの手を握ると、彼はあたしをとても優しい瞳で見つめてきて。

佐木原「新芽、いや、立花と呼ばせてくれ」

新芽「は、はい!」

佐木原「俺の本性がどれだけ狂っていても」

ああ、思った通りだ。

佐木原「これからどれだけ記憶を失っても」

やっぱり佐木原は、彰は狂人なんかじゃない。

佐木原「これだけは狂わない、失わない」

だってそうでしょ?


佐木原「――立花、俺は……お前を愛している」

こんな優しい声と瞳の人が狂ってるなんて、つまらない冗談だもの。
847 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/08(木) 21:49:31.77 ID:iVf1rbOA0
【エンゲージリングを渡したら……錦&鈴木編】

錦「ふっ!」

鈴木「修二さん、お茶を用意しましたからそろそろ休憩しませんか?」

錦「華さん!ありがとうございます!」

鈴木「私が好きでしてる事ですから……はいどうぞ」

錦「いただきます!熱っ!?」

鈴木「ああ!?もう落ち着いてください修二さん」

錦「ごめんなさい!」

鈴木「……でも、少し嬉しかったりもします」

錦「なぜですか!」

鈴木「だってこうしてるとなんか、夫婦みたいだなって」

錦「……」

鈴木「はっ!?な、何を言ってるんでしょう、私!いくらなんでも気が早すぎ、いや、修二さんが相手なのが嫌という訳じゃなくて!」

錦「華さん!」

鈴木「ひゃ、ひゃい!?」

錦「これを受け取ってください!」

鈴木「な、なんですかこれ」

錦「エ、エ……指輪です!」

鈴木「エンゲージリングですか!?修二さんどうして……」

錦「華さんが大好きだからです!」

錦「ぼくは病気になってから、全力で生きていこうって決めて生きてきました!」

錦「だから気持ちも全力で伝えます!」

錦「華さんが夫婦みたいだって言ってくれて嬉しかったです!だってぼくも華さんとそうなれたらって思いますから!」

鈴木「しゅ、修二さん……」

錦「華さん!ぼくと結婚して錦華になってください!」

鈴木「……うっ、ぐすっ」

錦「は、華さん!?ぼく、何か嫌な事を……」

鈴木「ち、違います!これは嬉し涙です……本当に、嬉しい……」

錦「華さん……」

鈴木「私、ドジだけど、全力で修二さんのお嫁さんとして頑張りますね……」

錦「はい!ぼくも華さんを……全力で、誰にも負けないぐらい幸せにしてみせます!」

鈴木「もう、誰にも負けないぐらい幸せですよ……修二さん」
848 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/08(木) 22:34:15.86 ID:iVf1rbOA0
【エンゲージリングを渡したら……吹石&早坂編】

吹石「……」

早坂「隣、いい?」

吹石「……」

早坂「無言は肯定って事で……」

吹石「……」

早坂「もうすぐこの生活も終わりか。じょ……吹石は、少しはみんなと仲良くなれた?」

吹石「……」

早坂「わたしはさ、結構周りと仲良くなれた気がするというか、その」

吹石「……よく話しかけられんな」

早坂「……」

吹石「馬鹿じゃねえのか。俺とお前がどんな形で別れたか忘れたのかよ」

早坂「……」

吹石「俺はボクサー、お前はランナー、もう生きる世界も違えんだ。関わる意味も必要性もねえだろ」

早坂「……」

吹石「わかったら二度と話しかけてくんな、お前見てると惨めになるんだよ!」

早坂「……別れてない」

吹石「あ?」

早坂「別れようとも、嫌いだとも言われてない。だからわたしは……今だって丈を」スッ

吹石「!!」バッ

早坂「あっ!?」

吹石「こんな写真を今でも後生大事に持ってやがんのか!!俺への当て付けか!?お前を忘れたくて色んな女に手出してきた俺への嫌みかよ!!」

早坂「返して!」

吹石「うるせえ!こんな写真……!」

早坂「やめっ!」

吹石「……ちっ」ポイッ

早坂「っ!」

吹石「なんなんだよ、さっさと忘れてくれよ俺の事なんかよ!!」

早坂「……」

吹石「しかたねえだろ!?忍は才能があって、俺には才能がなかった!!一緒にいてもただ俺が惨めになるだけじゃねえか!!」

早坂「……」

吹石「なのにお前はまた、つまらなそうに走りやがって……じゃあ俺はどうすりゃよかったんだ?あのままだったら俺はきっと取り返しのつかねえ事を忍に……」

早坂「……誇れば、よかったんだよ」

吹石「あん?」

早坂「丈、わたしね……公式戦でもそれ以外でも絶対に負けないって決めてるの」

吹石「はっ、そりゃ御大層な目標なこった。【超高校級のランナー】様は言う事が……」



早坂「わたしに勝ったのは、丈だけでいいから」
849 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/08(木) 22:35:21.52 ID:iVf1rbOA0
吹石「……は?」

早坂「わたしは、丈が告白してきた時のあの勝負以外には絶対負けない」

早坂「だから誇ってよ……丈は、【超高校級のランナー】を唯一負かした男なんだから」

吹石「お前……そんな……」

早坂「忘れられない、忘れられるわけがない。だって陸上の楽しさをわたしに教えてくれたの、丈なんだよ?」

吹石「……」

早坂「……丈」


早坂「わたし達、もう一度やり直せない、かな?」


吹石「……」

早坂「……」

吹石「はっ、ははっ……馬鹿だろ……こんな、こんな糞野郎いつまでも追いかけて、きてよ」

早坂「全然追い付けなかったけどね……わたしを置いてこんなに走っちゃってさ」

吹石「……やり直せんのかな?」

早坂「丈次第だよ。わたしは……信じてるけど」

吹石「……ちょっと待ってろ」

早坂「えっ」

※※※※

吹石「……これ、やるよ」

早坂「指輪……」

吹石「今度こそ、俺はあの夢守れんのか?」

早坂「……死んでも、一緒?」

吹石「覚えてたのかよ……あーあ、色々清算しねえとなぁ……」

早坂「付き合うよ。わたし達、ずっと一緒なんだから、さ」

吹石「……悪かった、忍。ずっと、遠回りして」ギュッ

早坂「……やっと、追いついたよ丈」ギュッ
850 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/11(日) 21:05:40.57 ID:QgAlznhA0
【エンゲージリングを渡したら……赤内&ミーナ&奈美編】

赤内「……」

ミーナ「やっ、赤内クン」

赤内「ああ、ミーナさん。悪いね、呼び出しちゃって」

ミーナ「それはいいんだけど……でもどうしたの、今まではこんな風に……」

赤内「ごめん、正確には話があるのはミーナさんじゃないんだ」

ミーナ「……どういう意味かな?」

赤内「月石奈美……知ってるよね?」

ミーナ「……!」

赤内「いや、もっとはっきり言うなら……ミーナさん、君、奈美でもあるよね?」

ミーナ「……どうしてそう思ったの」

赤内「きっかけは新芽さんだよ。ミーナさんがセーターに眼鏡の格好してたって言われてさ」

赤内「変装用にって奈美に僕が教えた格好をね」

「……」

赤内「それから注意して見るようにしたら出るわ出るわ奈美としか思えない言動の数々」

赤内「最初はミーナさんが奈美の身内なんじゃないかって考えもあったんだけど……それにしては君の顔には奈美に似てる要素がなかった」

「……」

赤内「荒唐無稽なのはわかってるよ。だけどこう思うしかないんだ」

赤内「奈美は、君の中で生きているって」

「…………ふふっ」

赤内「……!」

奈美「晶くんは相変わらずだね。鋭いのか鈍いのかよくわからない変な人」

赤内「な、奈美……?本当に生きて……」

奈美「ううん、私は死んだよ。車に轢かれて、殺された」

赤内「……」

奈美「今もよくわからないんだ。なんで私はまだ意識があるんだろう、それもこの子の中に」

赤内「そんな事どうでもいいよ!奈美とこうして話せる、それだけで僕は……」

奈美「……そうだね。私も晶くんには言いたい事があったし」

赤内「何でも聞くよ!だって僕達はずっと」

奈美「【キラキラしてない人間に価値はない】……私の事もそんな風に思ってたんだ?」

赤内「えっ……あっ、ち、違う!僕は奈美にそんな!」

奈美「今までの晶くんの言葉はずっと聞いてた。残念だよ……私がああいう人嫌いなの知ってるはずの晶くんがそうなってるなんて」

赤内「な、奈美……だけどそれは」

奈美「私が死んだからなんて言い訳しないでね?」

赤内「っ!」

奈美「それだけだから。もう晶くんとは話す事なんて――」
851 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/11(日) 21:11:52.45 ID:QgAlznhA0
ミーナ「ちょっと待った!」

奈美「み、美伊奈ちゃん?」

ミーナ「奈美!なんでそんな思ってない事言うの!?本当は赤内クンに謝りたいくせに!」

赤内「えっ……」

ミーナ「赤内クン。奈美は本当は赤内クンがああなったのは自分のせいだってずっと泣いてたの」

奈美「やめてください美伊奈ちゃん!」

ミーナ「ううん、やめない!だってこんなの悲しすぎるよ!」

赤内「奈美……」

奈美「……わかってた。晶くんを変えてしまったのは私だって」

奈美「見てられなかった、周りを傷つけて、嫌われて、自分自身も傷つける晶くん」

奈美「私がそうさせてるなら、もう振り切ってほしかった」

奈美「晶くんが、引きずる価値のない酷い女なんだって……」

ミーナ「だからってあれは駄目だよ!お互いに傷つくだけじゃない!」

奈美「……」

赤内「……奈美、君の言う通りだ。僕は君を言い訳にして不和ばかり生んでた」

赤内「こんな僕を奈美が見たらどう思うかなんてわかってたのに……こんなものまで用意して、本当に馬鹿だよ僕は」

ミーナ「赤内クン、それ……!」

赤内「ここにあった指輪……奈美が生きてるってわかったら勢いで買っちゃったんだ」

奈美「……!」

赤内「だけどその身体はミーナさんのだ。そもそも渡すのも不可能なのに本当に僕は……」

ミーナ「…………はあ、本当に世話が焼けるよ。奈美、アタシしばらく引っ込んでるから」

奈美「えっ、ちょっと美伊奈ちゃん!?」

赤内「……」

奈美「……晶くん」

赤内「スカウト失格だよ。アイドルに恋い焦がれるなんてさ」

奈美「それなら私だって……アイドル目指してたのにいつの間にか、晶くんが中心になっちゃってた」

赤内「……いいのかな?」

奈美「わからないけど……でも、今だけは」

※※※※

ミーナ「上手くいったかな?」

ミーナ「……アタシはね奈美。ずっと感謝してるんだよ」

ミーナ「二度と目覚めなかったはずのアタシが、こうしてアイドルとして生きていける」

ミーナ「それは全部奈美がいてくれたから」

ミーナ「だからこれぐらいのご褒美は受け取っていいんだよ?」

ミーナ「アイドルとしての諸々はアタシが。女の子としての幸せは奈美が」

ミーナ「だってアタシ達は……2人で【ミーナ・ルナストーン】なんだから」
852 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/12(月) 21:49:19.58 ID:F/0gf3dA0
【エンゲージリングを渡したら……佐木原IF編】

新芽「……」

佐木原「よぉ、新芽」

新芽「あっ……佐木原」

佐木原「わざわざ呼び出してどうしたよ?面白そうな話なら大歓迎……」

新芽「……ねぇ、あたし達って会った事ない?」

佐木原「……へぇ?」

新芽「なんか佐木原との会話の感じが、前にもした事ある気がして……」

佐木原「……」

新芽「変な話だとは思うのよ?でもモノクマは記憶を奪ったって言うし……」

佐木原「……はぁ、念入りに消しといたはずなんだけどな」

新芽「……!」

佐木原「そうだよ新芽。俺達は出会ってた……というか今回の一件の直前まで一緒にいた」

新芽「……なんで記憶を、ううん、そもそもなんでこんな事したの」

佐木原「興味が湧いたからさ。最初はコロシアイさせるつもりだったんだぞ?だけど二番煎じじゃ萎えるし、だから計画を変更したわけだ」

新芽「……」

佐木原「お前の記憶を消したのは興味が湧いたからだ。【新芽立花はまだ引き返せるのか】がな」

新芽「引き返せるか……」

佐木原「なんせ死体見ても慣れたとか言い出す女になっちまってたしなお前」

新芽「あ、あたしが?」

佐木原「そう、そして【超高校級の狂人】である俺と一緒にいるからか、お前は【超高校級の狂信者】って呼ばれるようになってた」

新芽「……」

佐木原「それで?真実を知ったわけだが、新芽はどう思った?」

新芽「…………」

新芽「納得した」

佐木原「納得」

新芽「みんなと仲良くなれたのは間違いないんだけど、あたしどこか違和感があったのよね」

佐木原「……」

新芽「そりゃそうよ。あたしを助けた恩人で、あたしが散々付き合ってきた奴が隣にいないんだから」

佐木原「……んー?」

新芽「まさかあなたが直前で計画変更するとは思って……あっ、そうだ」ゲシッ!

佐木原「いてっ」

新芽「あたしにスタンガン当てた罰よ。というかね、あんな強化したやつぶつけて死んだらどうするのよ!?」

佐木原「……おいおい、なんか記憶戻ってないか」

新芽「話してたら思い出してきたのよ。誰かさんに散々苦労かけられた思い出をね」
853 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/12(月) 21:50:03.89 ID:F/0gf3dA0
佐木原「んなアホな……記憶を消したんだぞ?会った気がするレベルでも信じられないってのに」

新芽「一応あたし【超高校級の幸運】になりかけてたからじゃない?理由は適当につけといてよ」

佐木原「……くっ、あははっ!全く本当に面白い女だな立花!」

新芽「あたしは面白くないわよ!」

佐木原「そう言うなって……しかしあれだな。【新芽立花はまだ引き返せるのか】って疑問は【引き返せない】って答えになったか」

新芽「そんなのわかってた事でしょ。よほどの事がない限りあたしが引き返すなんて無理よ」

佐木原「そんなものかね」

新芽「むしろ変わったのはあなたじゃないの」

佐木原「俺が?」

新芽「だってあなたが疑問に持つようなのって基本的に周りからすれば危険な事ばっかりでしょ」

新芽「それが仲良くなれるかを疑問に持つ時点であなたは変わった……違う?」

佐木原「……やれやれ、本当に擦れちまったな」

新芽「あなたのおかげでね……で?まだこの生活は続けるんでしょ?」

佐木原「まあな。まだ期間もある」

新芽「じゃあとりあえず……あたしの目的を果たしておこうかしら」

佐木原「目的?」

新芽「あなたにこれを渡したかったのよ」

佐木原「エンゲージリング?おいおい、正気か?」

新芽「言わなかった?あたしも狂ってきてるって」

佐木原「……」

新芽「【世間を騒がせた狂人とその付き添いははたして幸せになれるのか?】……この生活が終わった後の疑問としてはうってつけじゃない?」

佐木原「……本当にどこまでも調子狂わせてくれる女だな」

新芽「狂人の調子が狂ったら普通になるんじゃない?」

佐木原「それはないな」

新芽「……あっ、そう。それで答えは?」

佐木原「いい疑問だ。実に興味をそそられるよ、立花」

新芽「……ふふっ」

佐木原「……?」

新芽「あたし思ってたのよ。あたしはきっと普通に生きて普通に死んでくって」

新芽「だけど彰と出会って世の中がこんな事になって……もう世の中の普通なんて縁遠くなっちゃった」

佐木原「……嫌か?」

新芽「……ううん」

新芽「きっとこれがあたしの【普通】なのよ、彰」
854 : ◆DXWxLR/SkYo1 [sage]:2019/09/01(日) 07:29:19.43 ID:Iu868jHA0
次スレを貼っていなかったので
【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】後編
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1565729618/
855 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:00:13.53 ID:eiZGQf4A0
【未来機関第二十支部】

赤穂「なんだか騒がしいな……今日何かあったか?」

静音「なんだ知らないのか?だったらぼくが教えてやろう!」

赤穂「静音」

静音「今日は天才の日!この世に産まれたパーフェクトな天才……そう、奏を讃える日だ!」

赤穂「えっ、四方院さん今日が誕生日なのか」

静音「いや、違うけど」

赤穂「……」

静音「まあ、冗談はここまでにして……あっ、奏が天才なのは本当だぞ!」

赤穂「わかったわかった。それで、今日は何があるんだ?」

静音「それはもちろん……ハロウィンだ!」

赤穂「……ああ、そういえばそうだったな」

静音「反応が薄い!」
856 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:02:03.26 ID:eiZGQf4A0






EXTRACHAPT【第二十支部におけるハロウィンの過ごし方】






857 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:15:03.80 ID:eiZGQf4A0
赤穂「悪い悪い。どうもハロウィンとは縁が薄くてな」

静音「全く……このぼくがわざわざ仮装までしてるのに!」

赤穂「仮装……あっ、そういえばいつもと格好が違うな」

静音「ふふん、吸血鬼だ!最も美食家のぼくが飲む血は……」

赤穂「四方院さんだけなんだろ?」

静音「……!」

赤穂「なんだよその顔は」

静音「な、なんでわかった!もしかしてエスパーなの!?」

赤穂「……いや、普段の静音を見てればわかるからな」

静音「そうなのか……」

赤穂「それで?わざわざ仮装見せに来ただけじゃないんだろ?」

静音「あっ、そうだった……トリックオアトリート!」

赤穂「お菓子か……確か貰い物のカステラがあったな……」

静音「カステラ!?」

赤穂「あったあった。ほら静音」

静音「わーい、ありがとう!早速奏と食べてくる!」タタタッ

赤穂「転ぶなよー」

赤穂「……」

赤穂「なんか眩しかったな……俺も年取ったって事か?」

薄井「おっさんみたいな事言ってんなよ」
858 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:33:25.67 ID:eiZGQf4A0
赤穂「薄井、いつの間に」

薄井「静音と入れ違いにな。しっかしハロウィンね……」

赤穂「なんか気に入らないって感じだな?」

薄井「へっ、ハロウィンなんざ嫌いだね」

赤穂「嫌いってそこまで言うか……何か嫌な思い出でもあるのか?」

薄井「昔、姉貴がジャックオーランタンだったか?そいつを捕まえんのを手伝ってほしいって依頼されてよ……」

赤穂「また変わった依頼だな……」

薄井「お前の同期生だって聞いてんぞ」

赤穂「そんな奴いたか……?」

薄井「まあ、んな訳で姉貴はその日1日いなかったんだよ」

赤穂「へぇ……んっ?」

薄井「なんだよ」

赤穂「薄井がハロウィンを嫌いな理由って……お姉さんがその日いなかったからか?」

薄井「そう言ってんだろ」

赤穂「……」

薄井「……何か言えよ」

赤穂「シスコンだな、お前」

薄井「お前にだけは言われたくねえよ!!」
859 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 22:13:17.84 ID:eiZGQf4A0
【中央の島・歩道】

赤穂「薄井は少し姉離れした方がいいんじゃないか……?」

道掛「赤穂に言われちゃおしまいじゃね?」

赤穂「道掛……それじゃあまるで俺がシスコンみたいじゃないか」

道掛「自覚ねえのかよ!?」

赤穂「俺はただ妹思いなだけだ!」

道掛「……お、おう」

赤穂「ごほん、それで道掛もハロウィンか?」

道掛「まあな!ゾンビライダーってやつだ!」

赤穂「その格好のまま自転車で爆走するわけか……子供は泣くな」

道掛「実際さっき凪ちゃん泣かせちまったよ……ってやべえ忘れてた!?」

赤穂「何をだ?」

道掛「いや、奏ちゃんもいたんだけどな……凪ちゃん泣かせたから相当怒って」

四方院「見つけましたわよ道掛さん!」

道掛「やべっ!?赤穂助」

赤穂「あー……諦めろ」

道掛「切り捨てんの早えよ!?」
860 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 22:44:36.05 ID:eiZGQf4A0
四方院「凪を泣かせるなんて言語道断ですわ……」

赤穂「まあ、反省してるようだし許してやってくれ」

四方院「はぁ……凪からも言われてますし、ここまでにしておきます」

赤穂「あはは……」

四方院「あっ、赤穂さん。カステラありがとうございました」

赤穂「ああ、ハロウィンだしな……そのわりには四方院さんは変わってないように見えるけど」

四方院「ふふっ、そう見えます?実際は仮装をしているんですよ?」

赤穂「んー……あれ?四方院さんそんなに肌白かったか?」

四方院「わかりました?一応幽霊、なんです」

赤穂「静音の発案だろう?なんか下手なメイクとかさせなさそうだしな」

四方院「そうなんですの……わたくしはどのようなメイクでも受けて立つ覚悟だったんですが」

赤穂「そうなのか?」

四方院「どんな怪物だろうとパーフェクトに演じてみせますもの!」

赤穂「……」

ああ、そういえば四方院さんってこんな性格だったな……

四方院「ふふっ、それはそうと赤穂さん。トリックオアトリート」

赤穂「ああ、マーケットで用意してきた。えーっと、これでいいか?」

四方院「ありがとうございます。あら、少々多いような」

赤穂「静音の分だよ。泣いてたらしいからさ」

四方院「……」

赤穂「ど、どうしたんだそんな見てきて」

四方院「いえ、土橋さんの気持ちが少しわかりましたわ」

なんでそこで美姫の名前が出るんだ……?
861 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 23:12:06.93 ID:eiZGQf4A0
グレゴリー「ふははははっ!!我が力は今宵の収穫祭に向け、高まり、渦巻いている!」

津浦「よく似合っていますよ、Mr.グレゴリー」

グレゴリー「ふっ、言の葉の魔術師も魔導の衣を纏いしその姿……美麗であるぞ」

津浦「あ、ありがとうございます」

赤穂「……」

これは話しかけない方がいいのか?

グレゴリー「むっ、聖痕抱きし英雄か」

津浦「あっ……どうもMr.赤穂」

ほら、なんか津浦ガッカリした感じ出してるじゃないか。

赤穂「グレゴリーと津浦もハロウィンに参加してるんだな」

グレゴリー「然り!我にとって此度の収穫祭はまさに天界より誘われた運命の刻!心ゆくまで舞い踊らねばなるまい!」

津浦「……」

赤穂「そ、そうか……」

グレゴリー、テンション上がって津浦の様子に気付いてないのか!?

というか、その血塗れの仮面とかマントは本格的過ぎて逆に不気味だぞ!?

グレゴリー「さて、聖痕抱きし英雄よ……我は問う。甘き供物を捧げるか、妖精の戯れか!選ぶがいい!ふははははっ!」

赤穂「じゃあこれお菓子。津浦の分もな」

津浦「ありがとうございます……」

グレゴリー「ふははははっ!感謝するぞ聖痕抱きし英雄よ!この甘き供物は天界に確かに届けよう!」

赤穂「じゃあ、俺はこれで……ごめんな」

グレゴリー「むっ?」

津浦「……いえ」

津浦も苦労するな……
862 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 23:35:39.92 ID:eiZGQf4A0
赤穂「グレゴリーは少し女心を理解するべきだな……あの津浦の視線はわりとキツいんだぞ」

佐場木「何をブツブツ言っている」

遠見「お疲れ様であります赤穂殿!」

赤穂「お疲れ。佐場木と遠見は見回りか?」

佐場木「ハロウィンだからと気が抜けているようだからな」

遠見「自分達は何事もないようにする役割でありますよ」

赤穂「相変わらずだな……2人だって楽しんでもいいだろうに」

佐場木「全員が遊び呆けるわけにはいかないだろう」

遠見「それにこうして話をするだけで楽しんでいるようなものでありますから!」

赤穂「そうか……じゃあ差し入れっていうのもなんだけどこれ」

遠見「チョコレートでありますか!佐場木殿、後で分けるでありますよ!」

佐場木「……ああ」

遠見「それでは赤穂殿!自分達は見回りがありますので!」

赤穂「無理はしないようにな」

佐場木と遠見らしいな……
863 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 00:14:10.26 ID:sK4BE3/A0
六山「ふああ」カチカチ

鞍馬「……」チクチク

赤穂「……」

佐場木と遠見以上にいつも通りだなこの2人は……

六山「あー、赤穂くん。ゲームする?」

赤穂「ハロウィンとか関係ないな六山は……」

六山「1日は1日だからね。わたしはわたしらしく過ごすのだよ」

鞍馬「今さら輪に入れないだけでしょう」

六山「むっ……」

鞍馬「ゲームばかりでまともなコミュニケーションを取らなかった報いですね」

六山「それ、鞍馬くんには言われたくないなぁ」

鞍馬「僕はそもそも混ざる気がないので」

赤穂「……」

この2人仲悪いのか?

鞍馬もなんだかいつもより棘がある気がするぞ……

六山「むうっ……」カチカチ

鞍馬「……」

今度から気をつけて見てみるか……
864 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 08:02:04.37 ID:sK4BE3/A0
赤穂「……」

あいつの様子も見に行くか……

【第二十支部・地下】

赤穂「苗木」

苗木「……何さ寄生虫、ボクを笑いにでも来たの?」

赤穂「……」

苗木「全くお笑い草だよね。寄生虫を殺すために来たのにまさか捕まるなんて」

赤穂「まだ話す気はないのか?」

苗木「話す事なんてないよ」

赤穂「……そうか」

苗木が危険思想の持ち主だったってわかった時は本当に驚いたけど……

この様子だとやっぱり元々持ち合わせてたものだったみたいだな。

苗木「誰か死んだとかないの?それならボクも歓迎するよ」

赤穂「全員元気だよ」

苗木「あっそ……」

処刑を望んでる未来機関の強硬派はなんとか抑えてるけど……それもいつまで続くかわからない。

赤穂「また来る」

苗木「次はいいニュースを持ってきてよ」

それでも最後まで諦めてたまるか。

それが俺達全員の一致した気持ちなんだから。
865 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 08:41:37.48 ID:sK4BE3/A0
如月「苗木さんに会いに行っていたんですか?」

赤穂「まあ、一応俺が支部長なんで」

地下から戻ったら如月さんと出くわした。

如月さんも結構苗木を気にしてるみたいだから、なるべく様子は伝えるようにしている。

如月「彼も早く考え直してくれればいいんですが」

赤穂「相当難しいでしょうね。苗木のあれは根深いみたいですから」

如月「そうですね……長年染み付いたものは拭うのが本当に難しい」

赤穂「……」

それは如月さんもですか?とは聞かない。

如月さんは何かとんでもないものを抱えていて……だけど誰にもそれを見せていない。

如月「とにかく苗木さんについては慎重にいきましょう」

赤穂「はい」

慎重に……誰にも悟られないようにしないとな。

それが年長者として俺に出来る事だ。
866 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 11:46:20.18 ID:sK4BE3/A0
ジェニー「マサキ!マサキ!」

赤穂「そんなに跳び跳ねると危ないぞジェニー」

ハロウィンの巡回を再開した俺に跳び跳ねながらジェニーが近付いてくる。

いつものピエロの格好じゃなくて、羽の生えた……これは妖精か?

ジェニー「トリックオアトリートですマサキ!」

赤穂「おっと、ちょっと待ってな……よし、これだ」

ジェニー「サンキューですマサキ!あのあの、ところでこのフェアリーどうです?」

赤穂「よく似合ってる、可愛いぞ」

ジェニー「えへへ」

赤穂「でも1人なんて珍しいな。美姫はどうしたんだ?」

ジェニー「ミキは恥ずかしいて逃げちゃいました!」

赤穂「恥ずかしい?」

恥ずかしいって何がだ?

ハロウィンのコスプレは美姫もしてるだろうし、その衣装か?
867 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 12:08:15.48 ID:sK4BE3/A0
兵頭「赤穂さん、お疲れ様です」

赤穂「…………」

兵頭「あの、何か?」

赤穂「いや、ちょっと驚いてた……兵頭だよな?」

兵頭「そうですが……そんなにビックリしますか?」

赤穂「いきなりのっぺらぼうが声かけてきたら誰だってビックリするだろ……」

兵頭「道掛さんはすれ違っただけで驚いていましたね」

道掛も災難だな……

兵頭「それでは赤穂さん、トリックオアトリート」

赤穂「どこから声出してるんだそれ……これでいいか」

兵頭「はい、確かに。ところで如月さんを見てませんか?」

赤穂「如月さん?如月さんなら支部の近くにいるぞ」

兵頭「ありがとうございます。それでは」

兵頭はどこか急いだ様子で支部に向かっていく。

……あれ、どうやって前見えてるんだ?
868 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 12:20:46.31 ID:sK4BE3/A0
赤穂「おっ、あそこにいるのは……牡丹!」

御影「うっ、兄さん……」

赤穂「なんだその見つかっちゃったって顔」

御影「だって、恥ずかしいんだよ……」

赤穂「恥ずかしいってその猫耳と尻尾か?いいじゃないか、可愛いし」

御影「身内に見られるのは恥ずかしいの!兄さんもコスプレ私に見られたら嫌でしょ!」

赤穂「……いや、別に。昔はヒーローの格好してんのちょくちょく見せてたしな」

御影「……そ、そうだった。兄さんは慣れてるんだったよ……」

赤穂「だから牡丹も気にするなって。毎日してればその内慣れるから」

御影「今日だけだよこんな格好するのは!」

赤穂「なんだ、もったいない。そうやって周りと打ち解けていけば……いや、悪い虫もよってくるか?」

御影「私に悪い虫なんか来ないよ……」

赤穂「いいや、自覚するべきだ。牡丹は俺と違ってモテると思うぞ」

御影「自覚ないのはどっちなの……」

赤穂「何か言ったか?」

御影「なんでもない」
869 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 12:49:48.94 ID:sK4BE3/A0
【未来機関第二十支部・支部長室】

赤穂「みんな楽しそうだったな」

まだまだ問題は色々あるけど今日ぐらいは楽しんでほしいもんだ。

赤穂「だけど結局美姫には会えなかったな」

まあ、ジェニー曰く恥ずかしくて逃げてるらしいし……会えなくても仕方ないか。

赤穂「んー……!島中歩き回ってたら少し疲れたな」

少し寝るか……コテージには、行かなくていいな。

赤穂「……Zzz」

「……」

※※

赤穂「んっ……」

目覚めると後頭部に柔らかい感触……そして視界を遮る何か。

赤穂「……」

正直期待してたけど本当にそうなったか……まあ、いつもの事だもんな。

赤穂「恥ずかしいから逃げてるって聞いたぞ美姫」

土橋「し、仕方ないでしょ……こんな格好なんだから」

膝枕されたまま美姫を見てみると、包帯を巻いてるのが見える。

だけどその包帯は身体の一部にしか巻かれてないし、挙げ句その下には何も着けていなかった。

土橋「そんなにジロジロ見ないでっ!」

赤穂「嫌ならやめておけばよかっただろう……俺は眼福だけどさ」

土橋「だ、だって」

赤穂「だって?」

土橋「衣装、胸がキツくて入らなかったんだよ……」

そういう事言われると、なんだか妙に意識してこっちが恥ずかしくなってくるぞ……

土橋「も、もう!政城トリックオアトリート!恥ずかしいから早く!」

赤穂「わ、わかった。そこの鞄の中にあるぞ」

土橋「鞄、これだね…………えっと」

赤穂「どうした?」

土橋「何もないんだけど……」

赤穂「……あっ」

そういえば牡丹に渡した後補充してなかった……
赤穂「悪い。ちょうど切らし……うわっ!?」

起き上がろうとしたところを美姫に押し戻される。

美姫は何か上の空になっていて……あれ、ちょっと何する気だ?

土橋「悪戯、悪戯、お菓子ないんだから仕方ないよね……」

赤穂「待て美姫、顔が近い!お菓子なら用意するから落ち着い――」

その後の俺の言葉は、口に出る事はなかった。

どうしてかは……まあ、察してほしい。

END
870 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:29:32.41 ID:zpdoyx8A0
赤穂「今日はクリスマスか……」

御影「もう年末だなんて時間が経つのは早いよね」

赤穂「牡丹は今日予定とかあるのか?」

御影「まあ、一応……兄さんは?」

赤穂「俺は特には……牡丹に予定とかないなら家族水入らずで過ごそうかと」

御影「……」ジー

赤穂「な、なんだよ」

御影「兄さんはもう少し女の子の気持ちとか考えた方がいいよ」

赤穂「意味がわからないぞ……」

御影「土橋、きっと待ってるよ」

赤穂「美姫が?いや、だけど牡丹と過ごすっていうのは美姫からの提案」

御影「いいからさっさと行く!」

赤穂「えっ、おい牡丹!?」

バタンッ

御影「全くもう……あっ、私もそろそろ行こうかな」
871 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:31:06.03 ID:zpdoyx8A0






EXTRACHAPT【聖夜の光を追い求めて】






872 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:42:23.84 ID:zpdoyx8A0
御影「まだ時間には早いかな……」

薄井「いいから放せ!」

静音「いやだ!ぼくは絶対薄井を連れていく!」

御影「……何してんの?」

薄井「御影!ちょうどいい、こいつを何とかしろ!」

静音「御影!このわからず屋にはっきり言ってやって!」

御影「いや、そんな事言われても……何があったの」

薄井「静音の奴がオレをパーティーに連れてくってきかねえんだよ!」

静音「1人で寂しそうだったから!こんな日にそんなのもったいないよ!」

薄井「ほっとけ!」

静音「やだ!」

御影「……」

なるほど。

御影「犬も食わないっていうからね。まあ、程々にしときなよ」

静音「犬?」

薄井「ちょっと待て!?お前何かとんでもない勘違いを……」

静音「薄井、犬ってなんなの?」

薄井「いや、それは……おいこら御影待て!責任持って説明もしやがれ!」

薄井の叫びを聞き流して待ち合わせ場所に急ぐ。

四方院「……」

御影「……」ビクッ

途中物陰からすごい目で静音と薄井を見てる四方院を見つけたけど……声はかけないでおいた。
873 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:56:12.68 ID:zpdoyx8A0
グレゴリー「今宵は聖誕祭!今こそ我が天具その十二、雪原の園を使うとき!」

津浦「小型の人工雪発生装置ですか……Mr.グレゴリーは本当に様々な物をお作りになるのですね」

グレゴリー「フッ、これもまた天界からの囀りによるもの……言の葉の魔術師」

津浦「はい、なんでしょうか」

グレゴリー「今宵は我と共に刻の流れに身を任せぬか?」

津浦「えっ」

グレゴリー「無論、言の葉の魔術師が異なる術式をその身に宿すというなら、我も影となるが」

津浦「……いいえ、他の約束なんてありません」

津浦「Mr.グレゴリー。ワタシとクリスマスを過ごしてくださいますか?」

グレゴリー「……契約を持ちかけたのは我。その言霊を祓うなどありえん!」

津浦「ふふっ」


御影「……」

なんだか2人だけの世界って感じだね……ほっといてあげようかな。

グレゴリー「ならば早速この雪原の園を起動する!吹き荒れる結晶の欠片がこの世界を埋め尽くすであろう!」

津浦「さすがに吹雪はまずいのでは……」


御影「あっ、佐場木?グレゴリーが吹雪起こそうとしてるよ」
874 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 21:15:07.31 ID:zpdoyx8A0
佐場木「本当にろくな事をしない……これで没収は何度目になると思っている」

御影「あはは……」

佐場木「御影、連絡に感謝する」

御影「あっ、佐場木は今日どうするの?まさか仕事なんて事は」

佐場木「そのまさかだが」

御影「いやいや、今日ぐらい休みなよ」

佐場木「全員が浮かれているわけにもいかない。こういった日は特にな」

御影「ほ、ほら、遠見と過ごすとか」

佐場木「あいつはここにいない。家族と過ごすように前々から言ってある」

御影「て、徹底してる……」

佐場木「……俺はな、御影。普段の日常を平和に過ごせるだけで十分なんだよ」

佐場木「犯罪者共の相手ばかりしていたからな。そういった日々は何よりも貴重だと理解しているつもりだ」

御影「……」

佐場木「だから特別な日は俺がこの空気を守る……それだけの話だ」

御影「佐場木……」

佐場木「赤穂に明日は休みを取ると伝えておいてくれ」

御影「うん、わかった。明日はしっかり休みなよ」

佐場木「遠見と同じ事を言うな……」

あっ、やっぱり遠見にも言われてるんだ。
875 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 18:20:41.60 ID:wgoLr7nA0
ジェニー「はーいボタン!」

御影「あれ、ジェニー1人なの?」

ジェニー「ミキはマサキと一緒ですから2人にしたです!」

御影「あっ、そうか……ジェニーはこれからどうするの?」

ジェニー「……」

御影「まさか苗木の所に行くつもりじゃないよね?」

ジェニー「……」ビクッ

御影「やっぱり……ジェニー、あいつに散々酷い事言われたでしょ」

私だって面と向かって化け物呼ばわりされてる……あいつと私達はきっとわかりあう事なんて出来ないのに。

ジェニー「でもボクは、諦めたくないです……」

御影「……」

とはいえ、ジェニーの気持ちをバッサリ切り捨てるのも……

御影「わかった。じゃあ私も」

鞍馬「僕が一緒に行きましょう」

御影「うわっ!?」

ジェニー「ルイ」

鞍馬「苗木誠が不審な行動をしないように見張ればいいのでしょう。それに彼の悪意は1人で受けるにはいささか苛烈です」

御影「……」

鞍馬が一緒に来るなら心強いけど……

御影「どういう風の吹き回し?普段あんなに関わりませんって態度なのに」

鞍馬「……気紛れですよ。ただのね」

気紛れ、ね……

ジェニー「じゃあボタン!ボクはルイとセイに会てきますです!」

御影「えっ、私も一緒に行っても」

ジェニー「ボタン約束あるですよね?ボクは大丈夫だからそちに行てください!」

御影「……ジェニーがそう言うなら」

まあ、私はあいつに相当敵視されてるし……刺激しない方が無難かな。

鞍馬「……」
876 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 18:36:02.50 ID:wgoLr7nA0
御影「ジェニー大丈夫かな」

鞍馬がいるならそうそう変な事にはならないだろうけど。

六山「おはよー」

御影「おはよう……って、百夏今起きたの!?」

六山「いやぁ、ダンジョンの攻略が思いの外白熱しちゃって」

御影「クリスマスでも百夏は平常運転だね……」

でもゲームに夢中で呼んでもコテージから出てこない日もあるから今日はマシなのかな……

六山「あはは、褒めないでよ」

御影「今私褒めたっけ……」

六山「まあ大丈夫だよ。わたしはこういうの慣れてるからね」

御影「あんまり慣れる事じゃないと思う……」

※※※※

六山「ふぅ……ごめんね牡丹ちゃん」

六山「でもさ、わたしとしては牡丹ちゃんには穏やかに生きてほしいんだ」

六山「せっかくお兄ちゃんと再会出来たんだからね」

六山「苗木くん以外にもいる絶望の残党、殺人鬼……」

六山「それはわたしが、何とかするからさ」
877 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 18:51:30.82 ID:wgoLr7nA0
御影「百夏のあれは何とかしないといけないよね……」

兵頭「牡丹さん?」

御影「あっ、千……と如月も」

如月「こんにちは御影さん」

兵頭「お悩みだったようですが……何かあったんですか?」

御影「いや、百夏のゲーム中毒」

兵頭「……ああ」

御影「昨日もずっとゲームしててさっき起きてきたみたいで……どうしたものかなと」

兵頭「六山さんのあれはもう筋金入りですからね……」

如月「……」

御影「今度コテージに無理やり乗り込んじゃおうかな……」

如月「それは……」

御影「えっ?」

兵頭「如月さん?」

如月「いえ、強硬な手段に出ると逆効果ではないかと」

御影「そうかぁ……うーん」

兵頭「長期戦になりそうですね……私も手伝いますから頑張りましょう牡丹さん」

御影「うん、ありがとう千」

如月「…………」

如月(六山さんが夜に支部を抜け出している事はまだ知られていないようですが……)

如月(一度彼女と話した方がいいかもしれませんね)
878 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 19:01:13.93 ID:wgoLr7nA0
御影「余裕持ってたはずなのに話してたらもうこんな時間だよ……!」

急がないと……あれ?

土橋「政城〜♪」

赤穂「落ち着け美姫!ちょっと頬擦りは駄目だって……!」

御影「……」

赤穂「誰だ、美姫に酒を飲ませたのは……!」

土橋「アタシお酒なんか飲んでなーい!ちょっと葡萄ジュースは飲んだけど!」

赤穂「それはワインだ……!ちょっ、力強いな!倒れる倒れる!」

土橋「……アタシが女の子らしくないって事?」ウルウル

赤穂「えっ、いや、違っ」

土橋「うええーんっ!まさきがひどいこというー!」

赤穂「そ、そんな事ないぞ!美姫は立派な女の子だって!」

土橋「ほんと?」

赤穂「本当だ」

土橋「じゃあー……ちゅーして?」

赤穂「うっ……わ、わかった。誰も見てないよな……」

御影「……」

私にもこんな時に隠れるだけの情けはあった。

兄さん……まあ、見なかった事にしておくよ。
879 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 19:37:34.11 ID:wgoLr7nA0
御影「間に合った……」

道掛「おっ、牡丹ちゃん!」

御影「ま、待たせてごめん」

道掛「気にしなくていいぜ!好きな女の子待つのも青春だからな!」

御影「そ、そう」

道掛「おっと、忘れる前に……メリークリスマス牡丹ちゃん!これは俺からのクリスマスプレゼントだぜ!」

御影「手袋?」

道掛「牡丹ちゃん、よく手寒そうにしてるからさ。鞍馬に習って作ってみた!」

御影「あ、ありがとう……あれ?」

道掛「どうした牡丹ちゃん?」

御影「この手袋、片方は合うけど……もう片方はサイズ大きい」

道掛「えっ、うわっ、マジか!?や、やっちまった……」

御影「……道掛、ちょっとこれ着けてみてよ」

道掛「……おぉ、ピッタリだ」

御影「それで……こう」

道掛「牡丹ちゃん!?」

御影「着けてない方の手を繋いだら、寒くないでしょ?」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……今年は最高のクリスマスだぜ!」

御影「早いって……まだ始まったばかりなんだから」

道掛「よっしゃ、クリスマスデートの始まりだ!」

御影「あっ、私もプレゼント」

道掛「お楽しみは後にとっておくよ!行こうぜ牡丹ちゃん!」

御影「あっ、ちょっと……もう」

私にこんなクリスマスが来るなんて思わなかったけど……うん。

御影「青春だよね、こういうのも」

END
880 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:21:40.52 ID:Yg2JAeKA0
2月14日、バレンタイン。

こんな世の中になっても、いや、こんな世の中だからか?

こういう時は俺達第二十支部の面々は楽しむようにしている。

時々他の支部から小言をもらう事もあるけど、まあそれくらいは支部長らしく俺が引き受けるさ。

普段は世界をまた復興させるためにみんな頑張ってるんだからな。

御影「兄さん、これチョコレート」

赤穂「おっ、ありがとうな牡丹」

御影「市販品に大げさだって」

赤穂「こういうのはもらう相手が重要なんだよ」

特に生き別れてた妹からだしな……感激もひとしおだ。

御影「……そんなものなの?」

赤穂「ああ」

御影「そっか……」

赤穂「んっ……?」

なんだ、牡丹の様子がおかしいぞ?

というか、その手にある綺麗にラッピングされたチョコレートはなんだ?

御影「ありがとう兄さん、私頑張ってくるよ」

赤穂「えっ?ああ、頑張……って待て牡丹!頑張るってなんだ!?」

不穏な妹の言葉を聞き逃せるわけもなく、俺は杖を取って牡丹の後を追いかけた。
881 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:22:38.22 ID:Yg2JAeKA0






EXTRACHAPT【バレンタインの喜悲劇】






882 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:32:53.97 ID:Yg2JAeKA0
赤穂「くっ、見失った……!」

牡丹、いつの間にそんなチョコレートを渡すような相手が出来たんだ!

クリスマスか、俺が酔った美姫の相手を一日中してたクリスマスのあの時か!?

静音「チョコレートー♪チョコレートー♪」

赤穂「あっ、静音!牡丹見なかったか!?」

静音「御影?御影ならさっき図書館に行くって言ってたけど」

図書館?そこに牡丹に手を出した不届きものがいるのか!

静音「あっ、そうだ。せっかく会ったんだしこれをやろう!」

赤穂「……チョコレート?」

静音「義理チョコ!一応支部長だしな!」

赤穂「お、おう、ありがとう……静音は誰かに渡す予定とかあるのか?」

静音「奏とジェニーになら渡した!友チョコってやつ!」

赤穂「ああ、それは想像ついてた……んっ?じゃあそのチョコレートはもらったやつなのか?」

静音の手にはやけに気合い入ったチョコレートが……二つある。

てっきりあれが四方院さんに渡すやつだと思ってたんだけどな。

静音「これは奏と薄井からもらった!」

赤穂「…………薄井?」

えっ?
883 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:48:14.43 ID:Yg2JAeKA0
四方院「ふふっ、凪からのチョコレートは相変わらず可愛らしいですわ」

薄井「……おい四方院」

四方院「なんです」

薄井「なんでさっきから人についてきやがる」

四方院「あら、心外ですわ。偶然一緒の方向に行っているだけですのに」

薄井「……」

四方院「ああ、それにしても凪のチョコレート……」

薄井「わざとか!おい、わざとだよなオイ!?」

四方院「何の事です?せっかく気合いを入れて手作りまでしたのに凪からは貰えなかった人に自慢だなんて……完璧たるわたくしがするとでも?」

薄井「やっぱりわざとじゃねえか!この依存女!」

四方院「なっ!?わたくしはあなたのような粗暴な人は、凪のお相手には相応しくないとわざわざ教えてさしあげてるだけですわ!」

薄井「へっ、自分が相手いねえからって僻むなよ!」

四方院「誰が僻んでると言うのですか!?」


赤穂「……」

まさかこんな事になってるとは思わなかった……

中心の静音は何も知らずか……


静音「あっ、おーい!」

四方院「あら、凪。どうしましたの?」

薄井「……」

静音「薄井薄井、はいこれ!」

薄井「はっ?」

静音「さっき渡すの忘れてたから!」

四方院「なっ……!?」


静音……わざとじゃないんだろうなぁ、あれ。
884 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:07:31.39 ID:Yg2JAeKA0
津浦「……」ソワソワ

グレゴリー「ふむ、言の葉の魔術師よ」

津浦「は、はい、なんでしょうか」

グレゴリー「先ほどから妖精達の悪戯を受けているようだが……自惚れでなければそれはこの時間軸の影響か?」

津浦「え、ええ、今日はバレンタインデーですので、そのMr.グレゴリーにチョコレートを、用意したのですが……」

グレゴリー「フッ、その誘惑をはね除ける術はない。歓喜を持ってその贈り物を受け取ろうではないか」

津浦「で、ではこれを」

グレゴリー「確かに託された、言の葉の魔術師よ」

津浦「あ、あの……Mr.グレゴリー。もし良ければどこかで落ち着いて話をしませんか」

グレゴリー「ふむ、言の葉の魔術師の誘いならば。して約束の地はいずこか?」

津浦「では……」


赤穂「……」

見つかる前に退散しよう……
885 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:21:44.72 ID:Yg2JAeKA0
【図書館】

赤穂「牡丹はいないか……」

遠見「おや、赤穂殿」

赤穂「遠見、牡丹見なかったか?」

遠見「御影殿でありますか?自分達はここにいたでありますが、誰も来ていないでありますよ」

赤穂「そ、そうか……」

さては牡丹、これを見越して静音に図書館に行くって言ったな……!

赤穂「悪い、邪魔したな……」

遠見「いえいえ、大丈夫でありますよ」

となると、牡丹はどこに……



遠見「御影殿も大変でありますなぁ」

佐場木「誰か来たのか」

遠見「いえ、なんでもないでありますよ佐場木殿」コトッ

佐場木「チョコレート?」

遠見「バレンタインでありますから。佐場木殿、甘い物は苦手でありましたか?」

佐場木「いや……ありがたくいただこう」

遠見「はいであります」
886 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:29:33.80 ID:Yg2JAeKA0
六山「……むうっ」

ジェニー「モモカ?どしました?」

六山「あっ、ジェニーさん。チョコレート、マーケットでつい買っちゃったんだよね」

ジェニー「チョコレート!モモカ、誰かに渡すですか?」

六山「いや、渡す予定は、ないんだけどね……はあっ、なんで買っちゃったんだろ」

ジェニー「モモカ、あーんです!」

六山「えっ、んむっ」

ジェニー「美味しいです?」

六山「美味しいけど……」

ジェニー「バレンタインデーに暗い顔はダメですですよ!」

六山「ジェニーさん……」

ジェニー「スマイルスマイル、です!」

六山「うん、そうだね。あっ、よかったら他にも人呼んでみんなで食べよっか?」

ジェニー「パーティーですか!」

六山「あはは……そこまでのものじゃないけどね」


【六山のコテージ】

鞍馬「……」

コトンッ

鞍馬「……」スタスタ
887 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:42:15.07 ID:Yg2JAeKA0
如月「バレンタイン、ですか?」

兵頭「はい。如月さんはチョコレートをいただいたりは……」

如月「僕は基本的に世界各国を飛び回っていましたから、いただく機会はありませんでしたね」

兵頭「そう、ですか」

如月「兵頭さんは?」

兵頭「はい?」

如月「今まで誰かに渡したりは」

兵頭「義理を配る事はありましたが……」

如月「……」

兵頭「……」

如月「ふうっ」

兵頭「なんでしょう、ぎこちなくなってしまいますね……」

如月「そうですね……僕はこういった事に不得手ですから、柄にもなく緊張しているのかもしれません」

兵頭「如月さんも緊張するんですね」

如月「……本命をいただくのは、初めての出来事ですからね」

兵頭「……私も本命を誰かに渡すのは初めてです」

如月「……」

兵頭「……」

如月「兵頭さん」

兵頭「はい」

如月「……これからも、よろしくお願いします」

兵頭「……はい、こちらこそ」
888 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:53:55.94 ID:Yg2JAeKA0
御影「はい、これ」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……これはまさか……」

御影「チョコレート。マーケットのやつだけど」

道掛「う、うおおおお……!ありがてえ、ありがてえよ牡丹ちゃん!」

御影「ちょ、ちょっと、泣くほど?さっきも言ったけどこれマーケットの」

道掛「関係ねえ!牡丹ちゃんからチョコレートもらえたって事実が大事なんだよ!」

御影「……兄さんの言った通りだった」

道掛「赤穂?」

御影「こういうのは、もらう相手が重要だって」

道掛「おぉ、赤穂もいいこと言うな!さすが牡丹ちゃんの兄貴だ!」

御影「……でも私としては、手作りを渡したいんだよね」

道掛「へっ?」

御影「……好きな人にあげるものだし」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……!」

御影「だから、またいつかを楽しみにしててよ」

道掛「おう、おう!一生だって待つぜ!」

御影「……うん」
889 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 23:11:48.60 ID:Yg2JAeKA0
土橋「で?結局牡丹見つからなかったから拗ねてるの?」

赤穂「別に拗ねてるわけじゃ……だけど牡丹はまだ」

土橋「子供だーって言うなら同い年のアタシに手出してる政城はどうなの?」

赤穂「うっ」

土橋「ほらほら、チョコレートあげるから機嫌直しなよ。はい、あーん」

赤穂「んむっ……美味い」

土橋「ありがと」

赤穂「……わかってはいるんだよ。牡丹がそういう相手見つけるのはいい事で、あいつも子供じゃないのは」

赤穂「だけど、俺にとって牡丹は……離れたあの頃のままだったからさ」

土橋「牡丹が養子に行ったのが小学生の頃だっけ?最近止まった時間が動いたから追い付いていかないって感じかな」

赤穂「そう、だな……後はやっぱり寂しいのかもな」

土橋「寂しいか……だったらさ」ギュッ

赤穂「美姫?」

土橋「アタシがその分一緒にいるよ。いや、牡丹の代わりなんて無理なのは知ってるけど……せめて寂しくないって思えるぐらいに」

赤穂「……」

土橋「アタシは、その、政城の恋人なんだし」

赤穂「……こう言ってもらえるなんて俺は幸せ者だな」

牡丹もいつか大事な人を見つけて離れていく。

必ず来るだろうその時に美姫がこうして隣にいてくれたらいいなと、俺は思った。

END
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