【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】

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627 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 21:45:44.54 ID:mFIepzIA0
赤穂「口を塞がれて刺されたジェニーは……その時クロの手を噛んだ?」

苗木「でも怪我してる人はいっぱいいるし……」

佐場木「……いいや、これはクラヴィッツの遺した重要な証拠だ」

遠見「佐場木殿、では!」

佐場木「怪我をしている人間は当該箇所を言ってみろ」

赤穂「俺は、腹部の銃創だな」

御影「私は頭の怪我ぐらいだけど」

兵頭「私も御影さんと同じです」

津浦「ワタシも頭部を負傷しています」

道掛「美姫ちゃん止めてた時に振り払われて全身擦り傷だらけってぐらいか?」

苗木「うん、ボクも道掛クンと同じだよ」

如月「……以上の方々が怪我をしている人物ですか」

六山「うーん、噛まれた傷はないね……」

土橋「正直に言うはずもないだろうけど……」

赤穂「……」

あれ?

ちょっと、待てよ?

あいつ……おかしくないか?

……まさか。

お前なのか?

お前が、クロなのか!?
628 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 21:59:51.21 ID:mFIepzIA0
【苗木誠】

赤穂「お前が、犯人なのか?」


赤穂「……苗木」

苗木「どうしたの赤穂クン……そんな怖い顔して」

赤穂「お前、その擦り傷どこでつけた」

苗木「どこでって……もちろん土橋さんを止めた時に」

赤穂「本当か?」

苗木「ど、どうしちゃったの?ボクは本当に……」

赤穂「俺がジェニーの所に来た時……」

※※※※

赤穂「土橋は、ずっと?」

御影「うん……苗木が頑張って抑えてるから大きな事にはなってないけど、道掛とか何回も振り払われてたよ」

赤穂「そう、か」

※※※※

赤穂「牡丹からそう聞いた……そうだよな牡丹」

御影「えっ、あっ、うん。苗木はずっと土橋を抑えて……あれ?」

津浦「ワタシもその場にいましたが、確かにMr.苗木はMr.道掛のように振り払われては……えっ?」

道掛「お、おい苗木……なんでお前、俺みたいな傷あんだよ?お前が美姫ちゃん抑えてて、すげえって俺思ってたの覚えてるぞ!?」

土橋「ア、アタシもずっと誰かが抑えてたのは覚えてるよ……」

苗木「…………」

佐場木「苗木、これはどういう事だ」

遠見「苗木殿、まさか苗木殿が……アンノウンなのでありますか!?」
629 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 22:09:46.70 ID:mFIepzIA0
苗木「……は、ははっ、酷いなぁみんな」

苗木「ボクだって必死だったんだよ?土橋さんを止めなきゃってそればっかり頭にあってさ……」

苗木「まさかそれで疑われるなんて、思わなかったよ……」

六山「それはいいからさ、いつその傷がついたか答えてよ」

苗木「覚えてないよ」

兵頭「覚えてない?」

苗木「言ったでしょ?必死だったって」

苗木「その状態でいつついた傷かなんて覚えてるわけないじゃないか」

苗木「道掛クンと同じような傷だから自分のもそうだって勘違いしちゃったのかな?」

赤穂「そんな言い訳……!」

苗木「事実なんだからしょうがないよ……それとも赤穂クンはボクが犯人だって言うつもり?」

苗木「さっきまで如月クンしか犯人いないって主張だったのに随分簡単に主張変えるんだね」

赤穂「っ……!」

なんだ、なんなんだ?

目の前にいるのは本当にあの苗木なのか?

まるで違う、今までのあいつとは雰囲気が……!
630 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 22:28:17.71 ID:mFIepzIA0
※※※※

御影「……」

兄さん、黙っちゃった……

苗木「全く酷い言いがかりだよ……これが噛まれた傷じゃないなんて見ればわかるのに」

手を振りながら苗木は兄さんを睨み付けている……

その視線ははっきり言ってすごく怖い。

だけど、だけど……!

御影「苗木、犯人はあんただよ!」

私は、兄さんを信じる……

だってたった2人の兄妹だから!

私だけは、赤穂政城の味方でいるんだ……!

苗木「何か言った?」

御影「っ」

苗木の視線がこちらに向けられる……その無機質と狂気の間の目はあの私を滅茶苦茶にしたあいつを思い出して……

御影「あんたが……犯人だって、言ったの」

だけど負けない。

負けて、たまるもんか……!
631 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 22:41:26.11 ID:mFIepzIA0
【議論開始!】

コトダマ>>571
【モノクマファイル3】

苗木「はぁ……」

苗木「赤穂クンが黙ったと思ったら今度は御影さんか」

苗木「【兄妹】揃って酷い人だね」

御影「そんなの関係ない!あんたが怪しいのは事実でしょ!」

兵頭「【怪しい点がある】のは確かにそうです」

苗木「勘弁してよ……ボクが何をしたっていうんだ」

佐場木「なら申し開きはあるのか」

苗木「申し開きも何も勝手な言いがかりにどうしろっていうのさ」

苗木「御影さんは【色々病気抱えて】大変かもしれないけど」

苗木「それに付き合うほどボクはお人好しじゃないよ」

赤穂「牡丹……」
632 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 23:05:10.19 ID:mFIepzIA0
【色々病気抱えて】←【怪しい点がある】

御影「それは違ってるよ!」


御影「……なんで」

苗木「何?」

御影「なんで知ってるの?私の才能」

苗木「……!」

道掛「は?どういう事だ、牡丹ちゃんの才能……?」

土橋「それに病気って」

御影「……私の才能は【超高校級の被験体】」

御影「今、私の身体には普通なら死ぬ病気がたくさん巣を張ってるんだ」

御影「だけど私は死なない、死ねない……そんな体質なの」

如月「っ!?」

兵頭「御影さんがそんな……」

御影「今は私の才能はどうでもいいよ。重要なのは」

御影「兄さんと鞍馬しか知らない事をなんであんたが知ってるかだよ苗木!」

苗木「っ!」

御影「鞍馬とその事で話したすぐ後に私と兵頭は襲われた!兄さんと話した時には私は聞かれないようにしてた!」

御影「あんたなんでしょ苗木!兄さんを撃ったのも、私や兵頭を襲ったのも……鞍馬やジェニーを殺したのも!」

苗木「……どこまでも」

苗木「言いがかりをつけてくるねキミ達は!」
633 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 23:11:50.40 ID:mFIepzIA0
【パニックトークアクション開始!】

苗木「ボクは犯人じゃないんだよ」

苗木「さっきからそっちが言ってるのは状況証拠ばかりだ」

苗木「ボクに罪を着せたいのかな?」

苗木「本当に兄妹揃って……」

苗木【ボクを犯人にしたいなら決定的証拠を見せなよ!】



     土橋

なぜ        抑えられた?

     を

634 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 23:20:03.18 ID:mFIepzIA0
【なぜ土橋を抑えられた?】


御影「これで終わりだよ!」


御影「じゃあ聞くけど……なんで土橋を抑えられたの」

苗木「は……?」

御影「運動系の才能の道掛は何度も振り払われて、あんたが振り払われてないのはどうして?」

苗木「それ、は……」

御影「それは身体強化してたから……じゃないの」

苗木「そんな事……!」

如月「……」

遠見「如月殿!?」

赤穂「っ!?」

それは一瞬の出来事だった。

如月が苗木に向かって放った拳は……

苗木「……やって、くれたね」

苗木に、受け止められていた。

如月「もはやこれしかなかったので」

苗木「……ああ、本当に」

苗木「最悪の気分だよ」

苗木は笑いながら、如月の腕を振り払う。

それは……苗木の身体強化を示す決定的証拠だった。
635 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 19:56:37.90 ID:zZqHgncA0
【クライマックス推理開始!】

ACT.1
大部分は兄さんの推理だと同じだと思う……今回の犯人は2人の人間を殺そうとしていたとかそれが鞍馬とジェニーだって事も。
だけど1つ違うのは……この犯人はかなり前から人を殺そうとしていたって事だよ。

ACT.2
犯人はあらかじめ鞍馬のコテージからあいつが使っていた身体強化薬を盗んでいた。
さらにモーテルから残りの薬とナイフも盗んで……閉じ込められて取りに行けなかった鞍馬にとっては気が気じゃなかったと思う。
そして犯人はジェニーと鞍馬に手紙を送って……2人が発電所に来るよう誘導したんだよ。

ACT.3
犯人は発電所で鞍馬に会うと持っていた薬をばらまいた。
それを拾うためにかがんだ鞍馬の頭に、盗んでおいたナイフを突き刺したんだよ。
薬をばらまかれた事に加えて犯人も薬を飲んで身体強化されてたから、鞍馬に抵抗なんて無理だったろうね。

ACT.4
そして次はジェニー……鞍馬が殺害される瞬間を見て逃げたジェニーを犯人は追いかけて。
道で捕まったジェニーは口を塞がれてお腹を刺された。
でもこの時ジェニーが犯人の手を噛んだ事が……犯人を追い詰める鍵になったんだ。

ACT.5
2人を殺した犯人は強化された身体を使って全速力でモーテルに戻った。
その後アナウンスが鳴るのに合わせて外に出た時に……噛まれた部分に新しく擦り傷を作ったんじゃないかな。
そして土橋を止める事で擦り傷を作っても不自然じゃないようにしたんだ。

ここ最近の一連の事件、その犯人は……

御影「あんただよ、苗木誠……!」

苗木「……あーあ」

COMPLETE!
636 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:00:28.13 ID:zZqHgncA0
モノクマ「うぷぷ、今度こそ終わりかな?」

苗木「……」

苗木はもう反論しない……どうやら、ここまでみたいだな。

赤穂「ああ、終わりだ」

モノクマ「それでは投票タイムとまいりましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票をお願いします!」

モノクマ「オマエラの答えが正解?それとも不正解?」

モノクマ「運命はどっちだー!!」

         VOTE

      苗木 苗木 苗木

       チャッチャッチャー!


     【学級裁判閉廷!】
637 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:11:59.82 ID:zZqHgncA0
モノクマ「大正解ー!」

モノクマ「今回鞍馬類クンとジェニー・クラヴィッツさんを殺したクロは……」

モノクマ「苗木誠クンでしたー!」

道掛「な、なんでだよ!?なんで苗木が鞍馬とジェニーちゃんを……」

佐場木「この男がした事はそれだけではない」

遠見「赤穂殿を撃ち、死体を出さない方法で御影殿と兵頭殿を殺そうとしたアンノウン……」

兵頭「それが、苗木さんだとは……さすがに予想外でしたね」

如月「……混乱を防ぐために詳細は伏せますが、彼には他にも余罪があります」

苗木「……」

薄井とグレコリーの件だな……

津浦「Mr.苗木……何がアナタをそこまで」

土橋「誠がジェニーを殺したなんて、追い求めてた答えなのに信じられない……」

六山「ゲーム好きに悪い人はいないと思いたかったんだけどな……」

確かに苗木がここまでやるなんて、普段の姿を見ていたら想像出来ない。

赤穂「苗木……いったい何があったんだ?」

苗木「……」

御影「何か言いなよ。まさかこのまま黙りで……」

苗木「……………………」
638 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:13:56.48 ID:zZqHgncA0






苗木「あはっ……!」






639 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:21:56.64 ID:zZqHgncA0
苗木「あははははははははははははははははははははははっ!!」

苗木「ああ、もう駄目だ、我慢出来ない……!」

佐場木「貴様、何がおかしい」

苗木「だ、だって笑えるでしょ?」

苗木「こんなにあっさりと死んでいくんだよ……本当にボクの思うがままに殺しあってさ!」

苗木「所詮才能を持つ者もその程度の存在って事だ!これがおかしくなくて何を笑えばいいのさ!」

道掛「な、苗木!お前何を……!」

苗木「あれ、わからない?ボクがやったからだよ」

苗木「静音さんにサプライズの提案してそれを薄井クンが聞くように仕向けたのも」

苗木「四方院さんに静音さんの名前で手紙と雑誌送ってグレゴリークンを水族館に呼び出したのも」

津浦「なっ……!」

苗木「土橋さんを撃って赤穂クンに怪我させたのも、兵頭さんと御影さんを襲ったのも、鞍馬クンから薬とナイフを盗んで脅迫状を送りつけたのも」

苗木「今回鞍馬クンとジェニーさんを殺したのも!」

苗木「そして!」
640 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:23:21.63 ID:zZqHgncA0






苗木「今回このコロシアイを計画したのも!」

苗木「全部ボクの仕業なんだ」






641 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:35:20.94 ID:zZqHgncA0
赤穂「なっ……」

苗木が、黒幕?

このコロシアイを計画したのがこいつなのか!?

苗木「あはは、驚いた?まさか黒幕直々に殺人だなんて思いもしなかったでしょ?」

兵頭「……いくらなんでも予想外過ぎでは?」

苗木「まあ、我慢出来なかったんだ。ボクとしてはここにいる全員早く皆殺しにしたかったしさ」

津浦「な、なぜそんな……」

苗木による黒幕宣言。

それは少なからず俺達に混乱と衝撃を与えていた。

如月「……なぜ、こんなコロシアイを?」

それはおそらく、如月さんも例外じゃなかっただろう……

その証拠に、手は震えて、顔も少し青ざめていた。

あの【超高校級のヒーロー】であり【ジャスティスジャッジ】の如月さんがだ。

苗木「簡単に言えば希望のためかな?」

だけどそれとは対照的に苗木は事も無げに語る。

苗木「ねぇ、君たちは未来の希望だなんて言われて持ち上げられてるけどさ……」

まるで罪悪感など微塵も感じていないと言わんばかりに。

苗木は、語る。
642 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:36:38.22 ID:zZqHgncA0






苗木「自分達の存在がどれだけ周りを絶望させてるか、考えた事ある?」

このコロシアイがなぜ行われたのかを。






643 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:49:47.44 ID:zZqHgncA0
遠見「何を、言っているのでありますか……?」

苗木「……ああ、ごめん。やっぱり難しかったか」

苗木「君達みたいな自分1人で偉くなったつもりの屑にわかるわけないもんね」

佐場木「ここまで歪みきっていたのか……!」

苗木「選ばれた才能を持つ【超高校級】の生徒達。世間に希望だなんだと崇められてさぞかし気分がいいだろうね」

苗木「だけど君達の存在によってどれだけ本来評価されてしかるべき人が比較され、貶められ、絶望していってるか」

苗木「おかしいよね?少しだけの差なら切磋琢磨するライバルにだってなれる、次はって希望を持てる」

苗木「だけど【超高校級】というラベルはそれを全てぶち壊す」

苗木「希望ヶ峰学園が設立していた予備学科ってあるでしょ。確かにあそこは【超高校級】のラベルが欲しいだけの人間もいたよ」

苗木「だけど一番多かったのは……No.2として見向きもされなかった凡人なんだよ」

苗木「ああ、この世界は素晴らしいね!本当に狂ってるとしか思えない!」

苗木「そしてその象徴が君達なんだよ!」
644 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:56:07.99 ID:zZqHgncA0
苗木「そのくせ君達ときたらまるで自分1人で今の地位になれたって勘違いしてる」

苗木「芸能関係はファン、スポーツ関係はチームメイトやマネージャー、芸術関係は評価する人……」

苗木「そして何より敗者がいてこそ君達は輝ける!」

苗木「例えばやってるのがたった1人しかいない競技でトップに立ってもそんなの【超高校級】とは言えないもんね?」

苗木「君達が【超高校級】でいられるのは大多数の凡人達がいてくれるからなんだ」

苗木「なのに君達はそれを理解しようともしない」

苗木「挙げ句のはてに世界を滅茶苦茶にしたのも、その世界を管理者気取りで牛耳ってるのもどいつもこいつも才能のある奴らばかり!」

苗木「【超高校級】なんているから絶望が広まる……君達は異物なんだ、凡人達の希望を食らって世界に巣食う寄生虫なんだよ」

苗木「だからさ……」

苗木「早く死んでよ」

苗木「この世界を本当に支える大多数の凡人達が、希望を持って生きるために!」

苗木「さっさと絶滅しろよこの寄生虫!」

苗木「お前達は明確に害する絶望なんかよりはるかにたちが悪いんだからさぁ!」
645 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 21:08:35.80 ID:zZqHgncA0
苗木の言葉はどんどん熱を帯びていく。

その狂った考え方は……俺にはどうしても理解出来ない。

如月「……とんだ食わせものだったわけですか」

苗木「君と似たようなものだよ如月クン。君が犯罪者を殺して平和な世界を作りたいように、ボクは寄生虫を殺して平和な世界を作りたいんだ」

赤穂「……」

こいつは、狂ってる。

こんな狂った考えでみんなは殺されたっていうのか。

モノクマ「うぷぷ……いいねぇ!ボクが言うのもなんだけど実にイカれてるよ苗木クン!」

苗木「酷いなモノクマ。こんなに寄生虫達を消せたんだから褒めてくれたっていいのに」

御影「狂ってる……狂ってるよあんた……!」

苗木「んっ?」

御影「みんなが、いったい何したって……」

苗木「あはは、死ぬ病気大量に抱えて生きてる化け物に狂ってるとか言われたくないよ」

御影「っ……!」

赤穂「お前っ!!」

道掛「苗木、てめえ!!」

牡丹に対する暴言、俺はそれを許せなくて苗木に掴みかかろうとする。

だけどその前に。

土橋「うああああああっ!」

土橋が苗木の胸ぐらを掴んで地面に叩きつけた。
646 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 21:21:03.46 ID:zZqHgncA0
苗木「いてて……どうしたの土橋さん」

土橋「許さないっ!」

赤穂「っ、土橋!」

津浦「ひっ!」

苗木の頬に土橋の拳が入る。

その衝撃で飛んできた歯が、床に転がった。

佐場木「おい、やめろ!」

遠見「土橋殿!」

佐場木や遠見が止めに入るけど、土橋はさっきの比じゃないぐらいに暴れている。

まずい!このままだと土橋は苗木を……!

土橋「アンタはっ……」

道掛「お、おい美姫ちゃん!?」

兵頭「土橋さん、それ以上は!」

土橋「殺してやる、アンタなんか殺してやる……ナワキィィィィィィィィィィッ!!!!」

御影「っ!」

土橋の咆哮が響き渡る。

それは憎悪という言葉でも生温い感情の爆発で。

情けない事に、俺はそれに当てられて脚が震えてしまう。

だけど、これほどの言葉や拳を受けても……


苗木「いいよ?」


苗木は涼しげに、笑っていた。
647 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:11:28.00 ID:zZqHgncA0
土橋「……は?」

苗木「いやだから殺していいよ土橋さん」

笑う。

笑う。

笑っている。

苗木「ボクを殺せばキミは処刑される!あはっ!つまり寄生虫がさらに1人減るって事だ!」

自分自身の命さえ、こいつには俺達を殺すための道具でしかない。

苗木「ほらどうしたの殺しなよ!殺してみなよ!ジェニーさんの仇だよ?ほらほら!」

土橋「うっ、あっ」

土橋の手を掴んで、自分の首に持っていく苗木。

力を込めればきっと首が絞まって苗木は死ぬ。

苗木「出来ないの?」

土橋「あっ、あっ……」


苗木「じゃあボクがやるよ」


赤穂「っ、土橋!離れろ!」

苗木の笑みに寒気を覚えた俺の言葉もむなしく。

土橋「あっ」

苗木は土橋の腕を掴むと……息をするように、骨を折った。

土橋「ーーーーーーっ!!?」

腹に響くような嫌な音の後、声にならない悲鳴をあげて土橋が床を転げ回る。

遠見「土橋殿!っ、今治療を!」

苗木「あはは、ボクが薬飲んでたの忘れるなんて頭悪いなぁ」

止まらない、止められない。

この悪意に満ちた男はどうしたら止められるんだ。

そんな絶望にも似た心は……

モノクマ「じゃあそろそろ始めようか!」

よりによって、こいつに救い上げられた。
648 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:22:07.97 ID:zZqHgncA0
苗木「あっ、もう?」

モノクマ「このまま任せてたらただの虐殺映像になっちゃうからね!キミも満足したでしょ?」

苗木「仕方ないな……まあ、こんな世界にも嫌気が差してたしそろそろ退場しようかな」

津浦「み、Mr.苗木……?アナタも処刑されるんですか?」

苗木「えっ?当たり前だよ。ボクは裁判で負けたからね」

佐場木「貴様……」

苗木「あはは、それじゃあモノクマ!寄生虫の顔も見飽きたし始めてよ!」

モノクマ「それでは今回は、黒幕である苗木誠クンにふさわしいスペシャルなおしおきを用意いたしました!」

苗木「じゃあね寄生虫!せいぜい早く死ぬ事を願ってるよ!」

モノクマ「それでは張り切って参りましょう!」

苗木「あははははははははははははははははっ!!」

モノクマ「おしおきターイム!!」

苗木「あっ、そうだ」
649 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:22:57.87 ID:zZqHgncA0






苗木「君達の中に黒幕もう1人いるから」






650 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:26:47.74 ID:zZqHgncA0






     CONGRATULATION!!

  ナワキクンがクロにきまりました。

    おしおきをかいしします。






651 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:41:02.46 ID:zZqHgncA0
最後の最後にとんでもない爆弾を残して……苗木は処刑部屋へと消えていった。

※※※※

苗木クンがいるのはベルトコンベアーで流れる机の上。

それはかの希望と絶望へのおしおきを思い起こさせるようなそんな光景。

【既習】

【コロシアイ研修旅行黒幕苗木誠処刑執行】

モノクマの授業を聞きながら苗木クンは退屈そうにあくびをします。

その後ろでは彼を潰さんとプレスが大きな音をたてていて。

ゆっくりと迫り来る死の気配……しかし苗木クンはどうでもいいのか眉1つ動かそうとしません。

そしていよいよ苗木クンの座る机がプレスの下に……入ると同時に穴が開き、苗木クンは穴の中に落ちていきます。

それはあの希望の再現なのか……モノクマが穴を覗くと大きな音をたてて下から何かが上がってきます。

そして。

槍だらけの鉄板に串刺しにされた苗木クンが。

そのまま止まっていたプレスと上がる鉄板に押し潰されました。
652 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:53:28.70 ID:zZqHgncA0
モノクマ「エクストリィィィィィィィムッ!!」

モノクマ「苗木クンもお疲れ様だったね!これからはボクが改めてコロシアイを盛り上げていくよ!」

如月「モノクマ……苗木さんの言葉は本当なんですか」

モノクマ「うぷぷ、黒幕がもう1人って話ならボクがその証明でしょ?」

兵頭「それでは本当に……」

津浦「黒幕が、ワタシ達の中に……?」

モノクマ「うぷぷ、まあそこのところはノーコメントって事で!」

土橋「……」

遠見「っ、土橋殿を治療したいのでありますが」

モノクマ「うん、もう戻っていいよ!うぷぷ、これからもっともっとコロシアイは絶望的になるから楽しみにしててね!」

モノクマが消えて、土橋を連れた遠見もいなくなって……

佐場木「もう1人、か」

如月「……まだ終わらないんですね」

道掛「もうわけわかんねえよ……」

六山「……ゲームする相手、いなくなっちゃった」

そしてどんどん人が減って……

赤穂「……」

御影「……」

俺と牡丹だけが、残された。
653 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 23:04:36.47 ID:zZqHgncA0
御影「……兄さん」

赤穂「……ありがとうな牡丹。代わりに苗木を、追い詰めてくれて」

御影「……兄さんは二回もあんな事してたんだね」

赤穂「……ああ」

御影「重い、ね。投票もだけど……直接追い詰めるのはもっと」

赤穂「……」

御影「ごめん、やらないといけなかったのはわかってるんだけどっ……」

牡丹はもう言葉にならないのか涙を流す。

それは緊張から解き放たれた安堵か、人を1人処刑へと誘った後悔か……

赤穂「……」

御影「あっ」

赤穂「俺の前で泣くのを我慢しなくていい」

だけど俺のやる事は変わりはしない。

御影「うっ、うううっ」

赤穂「……」

妹の涙を受け止めるのは……兄としての役目だからな。


そして絶望的な夜は明ける。




だけど俺はまだ理解してなかった。

絶望はまだこれからだという事に。
654 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 23:09:29.02 ID:zZqHgncA0






CHAPT.3【悪意のアンノウンは高らかに唄う】 END

生き残りメンバー11→10人

To be continued...






655 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 23:13:25.91 ID:zZqHgncA0






【作りかけのウサミ人形】を手に入れました!

【スマイルクラウン(未完成)】を手に入れました!

【幸運の千円】を手に入れました!






656 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 23:29:46.90 ID:zZqHgncA0
CHAPT.3終了です。

色々あって筆を折っていましたが、ようやく再開する気力が戻りました。

なお今回のクロに関しては如月時代からの設定です。

希望厨絶望厨がいるならいわゆる凡人厨がいてもいいのではないかと思って産まれたキャラでした。

それではまた。
657 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/11(火) 22:11:48.08 ID:UHtObsmA0
【????】

「そうか、苗木が死んだか」

「……」

「あいつの作る世界には興味もあったんだけどな。真に凡人のみで構成された世界……」

「……」

「こっちの様子?ああ、薄井が動いた。弟がもう既に処刑されてたなんて知らずにな」

「……」

「もし地獄があるなら今頃再会してるんじゃないか?」

「……」

「で?お前はこれからどうするんだ」

「……」

「ふーん、コロシアイは続行……まあ好きにすればいいさ。協力といっても俺達がしてるのは情報交換ぐらいだからな」

「……」

「そろそろ戻る?ああ、わかったよ」
658 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/11(火) 22:13:55.32 ID:UHtObsmA0






佐木原「――じゃあな」

佐木原「お前の作るものが俺にとって興味深いものである事を祈ってるよ」






659 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/11(火) 22:14:51.94 ID:UHtObsmA0






CHAPT.4【そして希望は捨てられた】(非)日常編






660 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/11(火) 22:26:46.52 ID:UHtObsmA0
【赤穂のコテージ】

赤穂「……」

久々に戻ってきたコテージ。

そのベッドに座りながら俺は苗木に思いを巡らせていた。

このコロシアイの黒幕であり、何よりも才能を憎み滅ぼそうとしていた狂人。

赤穂「あいつが最期に言っていた事……」

黒幕がもう1人、俺達の中にいる。

モノクマはノーコメントと言ってはいたけど、それは肯定してるようなものだ。

赤穂「いったい誰が……」

考えても答えは出ない。

ここまで過ごしてきた相手だ、信じたい気持ちだって当然ある。

だけど苗木がああだった以上、もう誰が裏の顔を持つかなんてわからない。

そうしてグルグルと答えの出ない思考を繰り返す。

そんな無駄な時間を今俺は過ごしていた。
661 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/12(水) 21:11:46.18 ID:fSwyz+vA0
コンコン

「兄さん、私だけど」

赤穂「牡丹?」

ガチャッ

赤穂「どうしたんだ牡丹」

御影「新しい島に行けるようになったって」

赤穂「そうか……みんなも調査に?」

御影「うん、病院にいる土橋と遠見以外は行くみたい」

赤穂「……」

土橋……苗木に撃たれかけたり骨折られたならあいつは黒幕じゃないよな。

でもそう思わせる演技の可能性も……

御影「それと佐場木ともう1人のヒーローから伝言」

赤穂「伝言?」

御影「疑うのはこっちの仕事、だってさ」

赤穂「!」

御影「兄さん、どうせ苗木の言葉気にしてるんでしょ?」

赤穂「そりゃ、まあな」

御影「でも私も兄さんにはそういうの似合わないと思う」

赤穂「似合わないって」

御影「というか、ここには疑う専門が多いから……信じる専門がいてもいいんじゃない?」

赤穂「……」

信じる専門か……

赤穂「確かに、こうしてても何も好転しないしな……わかったよ」

御影「じゃあ早速新しい島に行こうよ。苗木がいなくなったとはいっても私1人はあんまり……」

赤穂「わかったわかった。俺も牡丹を単独行動はさせたくない」

御影「危ないから?」

赤穂「大切な妹だからだよ」

こうして俺と牡丹は新しい島に向かう事になった……
662 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/12(水) 21:24:33.01 ID:fSwyz+vA0
【第4の島・ウインターアイランド】

ビュオオ……

赤穂「……」

御影「……」

わかってはいた。

第2の島は夏、第3の島は秋……ならこの第4の島は冬だろうとは。

赤穂「……」

だけどいくらなんでも寒すぎるだろう!

なんだよ、この吹雪は!

モノクマ「」カチーン

御影「に、兄さん、凍ったモノクマの幻覚が見えるよ……」

赤穂「あれは現実だ牡丹……」

凍ったモノクマの持っている温度計はマイナス20度を下回っている……気温の差が激しすぎてコロシアイなくても死ぬぞこれ。

御影「くしゅん!」

赤穂「風邪引くぞ牡丹。とりあえず俺の上着着とけ」

御影「兄さんは?」

赤穂「まあ、なんとかなるだろ……」

いきなり出鼻をくじかれた気はするけど、俺達は改めてこの第4の島の調査に入る事にした……
663 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/12(水) 21:48:16.30 ID:fSwyz+vA0
【スケート場】

赤穂「ここはスケート場か……」

スケートなんてやる機会もなかったんだよな……今となってはこの足でさらに難しいだろうし。

赤穂「牡丹は滑れるのか?」

御影「やった事ない……」

赤穂「……」

まあ、牡丹も普通の青春とは無縁だったろうしな……

道掛「どわあああああっ!?」

御影「あっ、道掛だ」

見事に滑ってるな……身体全体で。

道掛「くっそ!なかなか難しいなこれ!」

赤穂「道掛」

道掛「おっ、赤穂と牡丹ちゃんか!スケートってなかなか手強いな!」

御影「よくチャレンジする気になるよ……」

道掛「あはは、まあ身体動かしてりゃ色々考えずに済むしな」

赤穂「……」

道掛「考えたってろくな事思い浮かばねえし、苗木の事も鞍馬の事もわけわかんねえけど……」

御影「道掛……」

道掛「俺はやっぱり身体動かして何も考えねえ方が似合うんだよな!だからもっとスケートに挑戦するぜ!」

そう言って道掛はまた滑っていってしまった……

御影「相当まいってるねあれ……」

赤穂「道掛、苗木や鞍馬とよく話してたからな……」

その果てがあれで、道掛にとってはショックな事だったはずだ。

赤穂「今は、そっとしておこう」

御影「うん」
664 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/12(水) 22:27:20.13 ID:fSwyz+vA0
【巨大冷凍庫】

赤穂「これ、建物丸々冷凍庫になってるのか」

御影「防寒用の服あるし、入ってみる?」

赤穂「そうだな……」

中は確かに寒かった……でも外が酷いからむしろ助かった感がある。

津浦「……」

赤穂「津浦?」

津浦「ああ、Mr.赤穂にMs.御影……」

どうしたんだ、何だか様子がおかしいけど……

津浦「ここを見てください」

御影「設計……あっ」

壁に彫られた設計士の名前、それは【グレゴリー・アストラル三世】。

赤穂「この冷凍庫は、グレゴリーが設計したのか……」

津浦「こんな形で、またあの人の名前を見るなんて」

壁の名前をなぞる津浦の横顔は複雑な表情で。

前を見る決意はしてても、ふとした事でまた立ち止まる……このコロシアイのつける傷をはっきり見せられたような気がした。
665 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:14:01.59 ID:JMKU4sQA0
【温泉施設】

赤穂「ここは温泉か」

御影「寒いからありがたいね……」

兵頭「あら、お2人もこちらに?」

六山「あー」

赤穂「……六山は何をしてるんだ?」

六山「マッサージチェアだよ。結構肩とかこるんだよね」

御影「……まあ、そうかもね」

兵頭「こうしたマッサージ器具にサウナ……だいたいの物は置いてあるようですね」

赤穂「近くに温泉あるからかここにいるだけでなんだか暖かいな」

六山「あっ、そうだ。わたしと兵頭さんはこれから温泉入るけど2人も一緒に入る?」

赤穂「男1人は気まずいし遠慮しとく」

御影「えっと、私は……」

チラリと牡丹がこちらを見てくる。

ははあ、これは……

赤穂「牡丹、寒かったろうし入ってきたらどうだ?」

御影「えっ、でも」

赤穂「調査する場所は残り1つみたいだし、そっちは俺がしとく。それに」

赤穂「牡丹には友人付き合いを大事にしてほしいしな」ポンポン

御影「うっ……わ、わかった。ごめんね、私が連れ出したのに」

赤穂「いいっていいって。2人共、牡丹をよろしくな」

兵頭「わかりました」

六山「はいはーい」

さて、俺は調査続行といくか……
666 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:22:12.22 ID:JMKU4sQA0
【モノクマ量産工場】

赤穂「うわっ!?」

なんだここ……モノクマが大量に!?

如月「……見るに堪えませんね」

佐場木「今回ばかりは貴様に同意だ」

赤穂「……」

珍しい組み合わせだな……

佐場木「どうやらこのモニターに奴の残りが表示されるようだな」

如月「……現時点で82体ですか」

赤穂「少ないのか多いのか判断に困りますね」

如月「一体一体は壊そうと思えば脅威ではありませんが」

佐場木「貴様に関しては他の誰かが処罰される……ふん、82人の命を引き換えにする計算か」

如月「そんな事出来ませんよ。たとえ1人でもそんな形で亡くしたら……僕は僕を許せません」

赤穂「……」

如月さん……
667 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:29:23.79 ID:JMKU4sQA0
赤穂「……」

新しい島の調査は終わったけど……

赤穂「ああ、そういえば」

俺第3の島をしっかり調べた事なかったな……

赤穂「ほとんど病院にいたし、暗かったしな」

病院には今、土橋もいるはずだ。

様子見がてら、行ってくるか……
668 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:50:23.90 ID:JMKU4sQA0
【病院】

遠見「赤穂殿?」

赤穂「遠見、土橋の様子は?」

遠見「固定はしたであります。後は自然治癒に任せるしか……本当は手術した方がいいのでありましょうが」

土橋「大袈裟だよメメ」

赤穂「土橋」

病室から出てきた土橋はギプスで固定した腕を吊っている……あれを人の手でやったんだよな。

土橋「土木作業してると結構骨折とかに関わるのも多いし、そんなに深刻でもないってなんとなくわかるから」

遠見「……何かあれば言ってほしいでありますよ」

土橋「うん、ありがとう。政城も来てくれてありがとうね」

赤穂「いや、そんな……それで、心はどうなんだ?」

土橋「……辛いし、憎いよ。誠を理解なんて出来ないし、したくもない」

赤穂「……」

土橋「でももう誠はいない。ジェニーの遺言もある……だからアタシは、生きるために頑張っていくよ」

赤穂「そう、か」

遠見「無理はしないように、お願いするであります」

土橋「うん」
669 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/23(日) 20:16:47.04 ID:IzOHySQA0
【ホテルミライ・レストラン】

ここに集まるのも久しぶりだな……

佐場木「相変わらず手がかりはなしか」

如月「黒幕である苗木さんがいなくなったとはいえ、犠牲を考えると全く喜べませんね」

津浦「しかし、Mr.苗木が今までの全ての事件の引き金を引いていたのなら……これからはそういった事はなくなるのでは?」

兵頭「そうも言っていられないでしょう。私達の中にもう1人の黒幕がいるのならば」

苗木とモノクマが告げたもう1人の黒幕……

それは間違いなく疑心暗鬼の種を俺達に植え込んでいた。

遠見「それなのでありますが……今は考えない方がいいであります」

道掛「な、なんでだ?」

赤穂「単純に手がかりがない。この状態で疑いあってもただ険悪になるだけだ」

六山「ヒントなしでしらみ潰しにしてもこういうのはクリア出来ないもんね」

御影「それに……多分今までみたいには動けないんじゃない?」

土橋「もう1人が誠みたいにしたら今度こそ黒幕いなくなるもんね」

黒幕の存在は不安材料だ……でもそれで本末転倒の事態になるのは避けたい。

だから俺達はこんな逃げのような選択をするしかなかった……
670 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/29(土) 21:44:08.13 ID:amIDGLVA0
【ホテルミライ・レストラン】

赤穂「……はあ」

話し合いでも特に実りはなく、俺達は解散する事になった。

佐場木は道掛を連れて新しい島の調査。

遠見は動きにくい土橋の手伝い。

牡丹は兵頭や津浦と頭の包帯を変えに行って。

如月さんはいつの間にかいなくなっていた。

そういうわけで……

六山「……」カチカチ

俺はなぜか六山と2人でレストランにいた。

赤穂「……」

だけど会話がない……六山がゲームしてるのはいつもの事だけど、いつにも増して空気が重い気がする。

六山「苗木くん」

赤穂「えっ?」

六山「わたしにも死んでほしかったのかな」

赤穂「……」

苗木は俺達全員を殺したくて直接鞍馬とジェニーを殺した。

それは、六山も例外じゃないだろう。

六山「結構仲良くしてたつもりだったんだけど、むしろ嫌われてたのかなぁ」

赤穂「……」

六山「苗木くんはわたし達を異物だって言ってた……彼からしたらわたし達はバグだったんだね」

赤穂「六山……」

六山「今まで色んなバグに対処してきたけど……まさか自分がバグ扱いされるなんてなぁ……」

ゲームをしていて下を向いている六山の表情はわからない。

だけど、その悲しげな声に俺はなんて言ったらいいのか、わからなかった……
671 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/01(月) 21:35:35.24 ID:ZgPtUigA0
気まずい空気から逃げるように外に出ると、牡丹と兵頭が歩道を歩いていた。

病院から帰ってきたみたいだな。

御影「あっ、兄さん」

赤穂「津浦は一緒じゃないのか?」

御影「また冷凍庫行くって別れたんだ」

赤穂「そうか……ああ、巻いてないみたいだけどもう包帯はいいのか?」

兵頭「私達は元々気絶させるための怪我だったので……苗木さんもそこは考えていたようです」

御影「私達がその場で殺されなかったのは、万が一見つかって学級裁判が起きるのを避けたかったんじゃないか……って兵頭が」

なるほど……あの時はまだ2人までのルールはなかった。

苗木はリスクを避けつつ全滅させるつもりだったはずだからな……

兵頭「しかし……苗木さんは黒幕だというのに、モノクマはなぜあんなルールを追加したんでしょう」

御影「どういう事?」

赤穂「苗木とモノクマは黒幕として繋がっていたはず……それなのにモノクマはむしろ苗木を邪魔するようなルールを作った」

御影「あっ、そうか」

兵頭「案外、モノクマは苗木さんとは違う目的で動いているのかもしれませんね」

違う目的……苗木が俺達の全滅なら、モノクマの目的ってなんなんだ?
672 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/01(月) 22:10:42.75 ID:ZgPtUigA0
【モノクマ量産工場】

佐場木「……」

赤穂「佐場木?」

モノクマの数が表示されるモニターを睨んで何をしてるんだ?

道掛「おっ、赤穂も来たのか」

赤穂「佐場木は何をしてるんだ、あれ」

道掛「ああ、今日でここに来てから2週間だろ?モノクマがどれだけの間隔で増えてんのか調べてんだと」

赤穂「そうだったのか……」

佐場木「……ふん、なるほどな」

道掛「おっ、終わったのか?」

佐場木「モノクマは4時間に一度、1日6体量産されるようだ」

赤穂「4時間に一回……また多いのか少ないのか微妙な数字だな」

道掛「つうかこれ止めるスイッチとかねえの?これとか」

道掛が壁にある見るからに怪しい赤いスイッチを押そうとする。

……それ押して大丈夫なやつなのか?

赤穂「ちょっと待……」

モノクマ「こらー!」

道掛「うおっ!?」

モノクマ「何してんの道掛クン!この工場の自爆スイッチ押そうとするとかさ!」

道掛「これ自爆スイッチなのかよ!?」

佐場木「なんでそんな物がこんな所にある」

モノクマ「うぷぷ、自爆スイッチはやっぱりロマンかなって思ったんだよね」

赤穂「ロマンって……」

モノクマ「だけど押すのは許さないよ!もし押したらおしおきだからね!」

道掛「危ねえ……押すところだった」

赤穂「少し考えた方がいいぞ……」
673 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/03(水) 22:13:55.06 ID:u3WptC/A0
調査を再開した佐場木達と別れた俺は津浦の様子を見に冷凍庫に向かう。

津浦「……」ハァ-

白い息を吐きながら津浦は冷凍庫の中心に立って目を瞑っていた。

赤穂「津浦」

津浦「Mr.赤穂」

赤穂「あっ、もしかして邪魔しちゃったか?」

津浦「いえ、大丈夫ですよ」

津浦は冷凍庫を見渡しながら目を細める。

津浦「Mr.グレゴリーは……なぜ設計を続けたのでしょう」

赤穂「えっ?」

津浦「ワタシの両親の事故のように、いくら彼自身が素晴らしい設計をしてもそれを歪められて責任を押し付けられて」

津浦「あの人は、絶望しなかったんでしょうか」

赤穂「……」

グレゴリーがどうして設計を続けたのか、か。

赤穂「きっと、好きだったからじゃないか?」

津浦「好きだったから?」

赤穂「やっぱり絶望は、したと思うんだ。苦しくて辛くて悲しくて……でも好きな設計をそんな形で終わらせたくはなかった」

赤穂「答えはわからないけど……そんな気持ちだったんじゃないかって俺は思う」

津浦「好きだから……」ハァ-

息を吐く津浦が納得したかはわからない。

でもグレゴリーの設計に対する姿勢の根本はそこなんじゃないか……俺はそう思いたかった。
674 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/03(水) 22:46:56.10 ID:u3WptC/A0
一度コテージに戻るという津浦を見送って、俺は島を回る。

遠見「……」

すると道を歩く遠見を見かけた。

赤穂「遠見!」

遠見「赤穂殿でありますか」

赤穂「土橋は一緒じゃないのか?」

遠見「さすがに怪我をした土橋殿を連れて調査をするわけにもいかないので……」

赤穂「ああ、確かにな……」

遠見「しかしこの島はまた気候が急激に変化するでありますね」

赤穂「そのわりにはなんだか動じてないな」

遠見「極寒の戦場もあったでありますから。妹と身を寄せあい、暖をとりながら進軍したでありますよ」

赤穂「へぇ、遠見妹がいるのか」

遠見「まあ、血は繋がってないのでありますが」

赤穂「そうなのか?」

遠見「そもそも自分は隊長殿が名前をくださるまで名前もなかったのであります」

赤穂「えっ?」

遠見「自分はその、戦災孤児だったのであります。妹とは奴隷市場で一緒にいた子でありますよ」

赤穂「……悪い。踏み込んじゃまずい話だったか」

遠見「いえいえ!今の自分は幸せでありますから!」

そう言って笑う遠見……いったいどれだけの苦労をしてきたんだろうな……
675 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/05(金) 22:30:57.32 ID:Z4o0hhNA0
土橋「ううん……」

赤穂「土橋?」

マーケットに行ってみると段ボールの前で土橋が何やら困った顔をしていた。

赤穂「土橋、どうかしたのか?」

土橋「あっ、政城。ちょっと暇潰しに何か作ろうかなって道具を集めてたんだけどさ……」

土橋は吊られた腕を見て苦笑いすると、頭を掻く。

土橋「あはは、この腕じゃ運べないって今さら気付いたんだよね」

赤穂「それはまた……」

手伝えたらいいんだけど、俺も杖で基本的に片腕塞がってるしな……

赤穂「あっ、そうだ。確か台車があったはずだからそれに乗せて運ぼう」

土橋「それしかないか……なんか政城の苦労が少しわかった気がする」

赤穂「ははは……」

それから荷物をコテージに運ぶ土橋を手伝った。

だけど何か作るって片腕で出来るのか……?
676 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/05(金) 22:51:13.46 ID:Z4o0hhNA0
如月「……」

ホテルの前で如月さんが佇んでいる。

その手には昨日の事件で見つけたバッジがあった。

赤穂「如月さん……」

如月「ああ、赤穂さん」

赤穂「そのバッジ妹さんの、なんですよね」

如月「えぇ、間違いなく……だから本当に不思議なんですよ」

如月「なぜ、これがここにあるのか」

赤穂「……」

如月「妹は死んで、その遺体が着けたままだったはずのバッジ」

如月「もし、もしも可能性があるとすれば……」

如月「あの男の関係者が、ここにいる可能性です」

赤穂「あの男って、まさか……」

如月「僕の妹を殺し、あなたの妹さんを傷つけた男」

如月「あのマッドサイエンティストの関係者が……」

赤穂「……」

ただでさえ色々あるのに、そんな奴までいるっていうのか……?
677 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/06(土) 23:25:30.18 ID:paXAvg0A0
【赤穂のコテージ】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

長い1日だった気がする……

それもそうか、学級裁判の後すぐ調査したりしてたんだから。

赤穂「……」

苗木の影に隠れる黒幕。

だけど苗木がいなくなった以上、これからはそいつが中心で動くはずだ。

赤穂「……頑張らないと、な」

もうこれ以上誰かを失ってたまるか。

それを心に刻みながら俺は眠りについた。
678 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/08(月) 21:37:07.19 ID:yBYxaBbA0
【15日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「よし、牡丹を迎えに行くか」

【ホテルミライ・レストラン】

赤穂「おはよう」

御影「おはよ」

どうやら全員来てるみたいだな……俺達が最後か。

兵頭「土橋さん、どうぞ」

土橋「ありがと千。片手だとやっぱり不便だからね」

2週間経ってこうして集まって食事するのにも慣れた感がある。

道掛「千ちゃんの飯は相変わらず美味いな!」

遠見「佐場木殿、今日は……」

佐場木「予定としては……」

だけど7人もいなくなったという事実が、どこか空気を歪にしていて。

津浦「ふぅ……」

如月「……」

六山「うーん……」カチカチ

所々にある空席……それをつい意識してしまうのは、何でなんだろうな。

御影「どうかした兄さん?」

赤穂「いや、何でもない」
679 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/08(月) 22:22:39.79 ID:yBYxaBbA0
【倉庫】

赤穂「……」

静音が薄井に殺された倉庫。

ここからコロシアイは始まったんだよな……

如月「おや、赤穂さん」

兵頭「こちらで何を?」

赤穂「ああ、ちょっとな。2人はどうして?」

如月「少し思うところがありまして」

兵頭「ここは最初の殺人が起きた現場ですから」

2人も俺と同じか……

如月「僕は薄井さんを悪と断じました。彼が静音さんを殺した動機は……言ってしまえば【誰でもよかった】でしたから」

赤穂「……」

確かに薄井はお姉さんの事を心配してここから脱出しようとした。

だけどコロシアイの標的に静音を選んだ理由は……

兵頭「本当にそうなんでしょうか?」

赤穂「えっ?」

兵頭「私は静音さんが殺された理由は別にあると思いますよ」

如月「それは、苗木さんが誘導したからですか?」

兵頭「いえ、もっとはっきりした理由です」

赤穂「それっていったい」

兵頭「静音さんが、あの時誰よりも前向きだったからですよ」

如月「前向きだったから?」

兵頭「彼女は中止になりそうだった懇親会を行いたがっていましたが……それはなぜなんでしょう」

赤穂「それはきっと四方院さんの……」

兵頭「そう、静音さんは家族と慕う四方院さんのために頑張っていました」

赤穂「……ああ」

そういう事、か。

薄井の殺人の動機は……

如月「……嫉妬」

兵頭「姉の努力を否定するしか出来ない自分、一方ただひたすらに四方院さんのために動ける静音さん」

兵頭「きっと、薄井さんには眩しかったんでしょうね」

赤穂「……」

如月「……だとしても、それは」

兵頭「はい、身勝手な動機です。しかしそう考えると如月さんにも、彼の気持ちがわかるのでは?」

如月「……!」

赤穂「えっ?」

如月さんが、薄井の気持ちをわかる?

如月「……ああ、なるほど。これが、薄井さんの抱えていた」

如月さんも、誰かに嫉妬してるのか?
680 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/09(火) 23:05:44.56 ID:srPke9iA0
【水族館】

何となく聞く空気にもならなくて、俺は2人と別れた。

そして着いたのは……第2の事件が起きた水族館。

津浦「……」

道掛「……えーっと」

津浦がいるのはともかく道掛がいたのは予想外だったな。

赤穂「道掛、何してるんだ?」

道掛「お、おう、赤穂。琴羽ちゃんが水族館行きたいって言うから送ってきたんだよ」

赤穂「津浦が?」

津浦にとってここは辛い記憶しかないはずの場所。

そこに自分から来た……

津浦「……ありがとうございましたMr.道掛」

道掛「あっ、もういいのか?」

津浦「はい……Mr.赤穂?いつの間にここに?」

赤穂「ああ、いや。今来たところだよ」

津浦「そうでしたか……それに気付かないほど考えこんでいたのですねワタシは」

道掛「よくわかんねえけど……まだどっか行く?」

津浦「そうですね……次は射撃練習場にお願い出来ますか?」

道掛「うっし、わかった!」

津浦「それではMr.赤穂。ワタシはこれで」

赤穂「……大丈夫なのか?」

津浦「そうでありたいとは、思っています」

そう言って少し身体を震わせると……津浦は水族館から出ていった。

グレゴリーの死を受け入れて、次は思い出のある場所を巡って……

あれが津浦なりの、前の進み方なんだろうな。
681 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/11(木) 23:24:50.00 ID:fSmOZa2A0
【発電所】

鞍馬が殺された発電所……あいつは殺される瞬間までいったい何を考えてたんだろうな。

御影「兄さん」

六山「やっ、赤穂くん」

今日は事件現場でよく人に会うな……

御影「鞍馬はここで死んでたんだよね。私結局鞍馬の死体見てないから……なんか未だに信じられない」

六山「鞍馬くんは死にそうな雰囲気なかったもんね」

赤穂「それがそもそも間違った認識だったんだな」

鞍馬が殺されるなんてあり得ない……そんな認識だったあいつをそれこそ動くなんてあり得ないと思える黒幕の苗木が殺した。

あの事件はそれこそあり得ない事だらけだったんだ。

御影「鞍馬……私の才能知ってたんだよね」

六山「御影さんのって秘匿才能なのによく知ってたよね」

赤穂「……」

鞍馬は牡丹を死なせるなって言ってたけど……当たり前だそんなもの。

俺は絶対牡丹を死なせない。

あんな気分になるのは……もうごめんだ。
682 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/14(日) 04:01:32.34 ID:GsyKIGwA0
佐場木「……」

発電所を出て歩いていると、佐場木が考え込むように立っていた。

そこはちょうど、ジェニーが殺された辺り。

赤穂「佐場木」

佐場木「赤穂か」

赤穂「ジェニーの事、考えてたのか」

佐場木「クラヴィッツだけではない。ここで死んだ全員について考えていた」

赤穂「……」

佐場木「静音、四方院、鞍馬、クラヴィッツ……それに薄井やグレゴリーも死んだ裏にはあの男が関わっていた」

赤穂「苗木、だな」

佐場木「そして奴の悪意を見極められず、こちらの作業に参加させ情報を話していた……俺にはもう裁く資格などないのかもしれん。いや、それは事件の発生を許した時点でか」

赤穂「そこまで言わなくても……佐場木は事件が起きないように動き回ってるじゃないか」

佐場木「……なら聞くがな赤穂、もし御影が殺された時にお前はそれで納得するのか?事件を防ごうとしておきながら、結局妹を死なせた俺に思うところがないと言えるのか?」

赤穂「それは……」

佐場木「それが答えだ。頑張ったなど、殺された命の前には言い訳にもならない」

赤穂「……」

佐場木が自他共に厳しいのは知ってたけど、ここまで思い詰めてたのか……

佐場木「……変な話をしたな、忘れてくれ」

そう言って佐場木は行ってしまった……きっとまた見回りやチェックをするんだろう。

無理をして、倒れたりしなきゃいいんだけどな……
683 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/14(日) 04:32:54.18 ID:GsyKIGwA0
【温泉施設】

赤穂「気が滅入ってくるな……少し温泉にでも入って、リラックスするか」

※※※※

赤穂「はあっ……」

誰もいない1人きりの温泉……その暖かさに疲れやら何やらが溶けていく感覚。

赤穂「こんな状況じゃなければ、もっとよかったんだけどな……」

カラカラ

赤穂「んっ?」

隣に誰か来たのか……

「ごめんねメメ、付き合わせちゃって」

「自分が好きでしているので気にしないでほしいであります。1人では大変でありましょうし」

土橋と遠見か……

土橋「でもメメ、半次と色々やってたのに最近出来てないでしょ?」

遠見「佐場木殿は、お1人でも大丈夫でありますよ」

土橋「……心配そうな顔してるけど」

遠見「うっ」

土橋「やっぱり本当は一緒にいたいんだ」

遠見「……佐場木殿はきっと自分自身を強く責めているであります。あの人は真面目故に、妥協が出来ない」

土橋「ああ……確かに半次は頑固なとこあるね」

遠見「自分はそんなあの人に共に動くよう、頼まれて……しかし何が出来たのでありましょうか」

遠見「苗木殿への警戒を真っ先に外したのは自分で、それがなければもっと早く止められたかもしれないのに……!」

土橋「メメ……」

遠見「もしかしたら、自分がこうして土橋殿を介助するのは、ジェニー殿の事があるからで……」

土橋「メメ!」

遠見「……」

土橋「メメは悪くないよ。そもそもこんな事させる黒幕が全部悪い!そうでしょ?」

遠見「しかし」

土橋「半次もメメも自分達だけで抱えすぎなんだよ。まあ、アタシじゃ頼りないかもしれないけど……こうして話を聞くぐらいならするから」

遠見「土橋殿……」

土橋「美姫でいいよ!」

遠見「……美姫、殿」

土橋「はは、なんか湿っぽくなっちゃったね。もっと明るい話しようか!」

赤穂「……」

これ以上は、聞くべきじゃないな……

俺は気付かれないよう、そっとその場を後にした。
684 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 11:45:27.81 ID:9owfMFmA0
【赤穂のコテージ】

赤穂「ふー……」

お腹の傷も少しはマシになってきたな。

病院から持ち帰ってある傷薬を塗って、新しい包帯を巻く。

大怪我をしてから自分1人でこの手の事をするのにも慣れた。

赤穂「よし」

そういえば包帯と傷薬だいぶ減ってきたな……

赤穂「今度病院に行ったら確保しておくか」

服を着て、杖を持つとコテージの外に出る。

もうすぐ夜時間だからか、人の気配はない。

赤穂「……」

コツコツと杖が木を鳴らす音だけが響く。

特に行き先があるわけじゃない、ただ何かせずにはいられなかった。

【図書館】

赤穂「何か参考になりそうな本は……」

とはいっても日本語とせいぜい英語の本ぐらいしか俺は読めない。

だから本を選ぶのにほとんど時間はかからなかった。
685 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 12:17:34.65 ID:9owfMFmA0
赤穂「……」

日本語の本を片っ端から読んではみるものの、そこに手がかりになりそうな物はない。

佐場木や遠見、津浦が調べてる後だろうから当たり前なんだけどな……

赤穂「ふう」

流し読みしていた5冊目を机の上に放り投げる。

それがよくなかったのか、本は机の端に乗って、そのまま床に落ちた。

赤穂「あっ、しまったな」

カバーの外れた本を拾って……俺はそのカバーに封筒が貼り付いているのを見つけた。

赤穂「なんだこの封筒……」

試しに他の本も調べてみても何もない……どうやらこの本にだけ封筒が貼り付いているみたいだな。

赤穂「……」

何かある、そう直感して俺は封筒を外して中を見る。

折り畳まれた紙が1枚入ってる……それを取り出して広げて。

赤穂「……は?」

俺は固まった。

そこに書かれていたのはたった数文。

【六山百夏。
内通者として数日以内に殺人を起こせ。
さもなければ命はない】

だけど、衝撃を与えるには充分過ぎる内容だった。
686 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 12:24:29.34 ID:9owfMFmA0
赤穂「六山が、内通者!?」

どういう事だ、意味がわからない。

だって六山は静音を庇ってモノクマに反抗して見せしめに殺されかけたじゃないか。

如月さんが助けなかったら、あいつは……

赤穂「……だからか!」

この手紙、命はないって書いてある……一度殺されかけた六山は死に対する恐怖心がかなり強いはずだ。

だから従うしかなかった……死ぬのが怖いから。

赤穂「……どうする?」

この手紙を六山がまだ読んでないなら、数日中にあいつは殺される。

もし読んだ後なら数日中にあいつは誰かを殺す。

赤穂「どちらにしても六山は死ぬ……!」

どうにかしないといけない。

だけどどうすれば六山を助けられる?

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「っ、とにかくこの手紙はこっちで持っておこう」

俺は封筒ごとポケットに手紙を突っ込むと、図書館を後にする。

猶予はほとんどない……それでも何とかしないと!
687 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 13:19:22.60 ID:9owfMFmA0
【16日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「くそっ!」

一睡も出来なかった……しかも特にいいアイデアも浮かばない。

このままだと次の事件が……

モノクマ「ああ、それとオマエラ!中央の島に集合してくださーい!」

赤穂「……!」

まさか、動機か!?

この状況でさらに動機だなんて……!

赤穂「とにかく、行くしかない」
688 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/18(木) 21:09:16.68 ID:qO9IeUEA0
【中央の島・未来機関第二十支部】

中央の島に行くともう全員集まっていた。

赤穂「……?」

だけど、様子がおかしい。

誰も喋らない、いや、それどころか互いの顔色を窺うような素振りを見せている。

いったい何が……

モノクマ「いやっほーう!全員集まってるみたいだね感心感心!」

佐場木「ちょうどいい……こちらも話がある」

モノクマ「話?」

佐場木「この指示書はどういう意味だ?内通者に殺人を行えと指示を出しているようだが」

赤穂「……!」

佐場木も六山への指示を見たのか!?

赤穂「佐場木、それは」


佐場木「俺は貴様の内通者になった覚えはない」


……えっ?
689 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/18(木) 21:24:12.22 ID:qO9IeUEA0
道掛「はっ!?ちょっと待てよ、内通者ってメメちゃんじゃなかったのか!?」

遠見「何の事でありますか!?自分は、兵頭殿が内通者だと……」

兵頭「あら、私は津浦さんに宛てた指示書を見ましたよ?」

なんだこれ……どうなってるんだ!?

みんながみんな、内通者に対する指示書を持ってる……ただ1つ、内通者の名前だけが違う指示書を。

モノクマ「うぷぷ、それこそがボクがオマエラを呼び出した理由!」

モノクマ「今回の動機!チキチキ内通者当てゲームだよ!」

六山「内通者当てゲーム?」

モノクマ「その通り!オマエラ全員に渡したのは内通者に対する指示書!」

モノクマ「つまりこのままだと内通者は数日中にコロシアイを発生させる事になるね!」

土橋「そんな……」

モノクマ「うぷぷ、さてさて誰が内通者なのかな?もしかしたら親しくしてる人かもしれないよ?」

御影「あんた……!」

今回の動機は、シンプルに疑心暗鬼を引き起こすものだってことか……!

モノクマ「内通者に殺されるか、内通者を殺すか、はたまた勘違いして内通者じゃない人を殺すか!」

モノクマ「うぷぷ、せいぜい面白い展開を見せてくださーい!」

内通者当て……しかも疑いは全員にある。

誰が内通者かわからない状況で、誰かに殺されるかもしれないリスクに囚われる。

赤穂「っ……」

直前に人当たりのいい苗木が豹変したのも拍車をかけて……最悪としか言いようがない動機だった。
690 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/19(金) 23:10:01.27 ID:9X98Un0A0
モノクマが消えた後、俺達は互いに顔を見合わせていた。

ただでさえ黒幕がいるのにさらに内通者の存在を知らされて……冷静になれという方が難しい。

佐場木「……ちっ、如月」

如月「なんでしょう佐場木さん」

佐場木「貴様は歪みきった殺人鬼だが、内通者とも黒幕とも遠い……ある意味一番安全な存在だ」

赤穂「……」

確かに如月さんは命惜しさに内通者になるのも、黒幕としてコロシアイを引き起こすのもありえないだろう。

皮肉にも殺人鬼としての彼がそれを否定しているんだ。

佐場木「だから貴様に一任する。この状況をどうするかをな」

如月「どうするか、ですか……」

黒幕、もしくは内通者として疑われる人間が何を言っても悪戯に疑心暗鬼になるだけ。

だから佐場木は絶対に違う如月さんに託したんだろう……裁判官としてのプライド諸々を切り捨てて。

如月「そうですね……では提案なのですが、皆さん全員で動くと言うのはどうでしょうか」

道掛「全員?」

如月「内通者が誰であれ、ルールからは逃げられません。殺せるのは2人まで……全体で動けば一気に手出しがしにくくなる」

六山「……まあ、最初から人数も減って見張りやすくも、なってるしね」

如月「基本的に1つの場所にいて、動く場合は僕も一緒にいれば……一気に事件の発生確率は減少するかと思います」
691 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/19(金) 23:28:45.81 ID:9X98Un0A0
【旧館】

固まるのに一番都合がいいだろうという事で俺達は旧館に向かった。

病院やマーケットから色々荷物を持ち込んで……一番広い広間に集まる。

如月「怪我をしている方は、特に赤穂さんと土橋さんは気をつけてくださいね」

土橋「うん、ありがとう」

赤穂「はい」

これから少なくとも内通者がはっきりするまでは俺達はここで寝泊まりする事になる。

消極的かもしれないけど、これが今は最善だと反対する人間はいなかった。

御影「兄さん……大変な事になったね」

赤穂「……ああ」

黒幕、そして内通者……抱える問題が多すぎる。

こうして不安を抱えたまま、俺達の籠城は始まった。
692 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/20(土) 23:26:25.79 ID:j8z78B1A0
御影「はぁ……まさかこんな事になるなんて」

赤穂「黒幕の存在がほのめかされてた以上、いつこうなっても不思議じゃなかったけどな」

俺個人は牡丹がどちらでもないというのは確信してるけど、この状況じゃそれが通用しない事もよくわかる。

御影「兄さん?」

赤穂「んっ?ああ、どうした牡丹」

御影「どうしたじゃないよ、なんだかボーッとしちゃってさ」

赤穂「まあ、信じる専門とはいえ考えないといけない事は多いしな……」

御影「……」

赤穂「まあ、1つだけ言えるのは」クシャ

御影「んっ」

赤穂「何があってもお前を信じるのは間違いないって事だけだな」

御影「……シスコン」

赤穂「妹思いと言ってくれ……んっ?」

なんか視線を感じたような……

御影「兄さん?今度はどうしたの」

赤穂「いや……」

気のせい、か?
693 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/21(日) 20:44:07.23 ID:HB4kXUbA0
倉庫を覗いてみると、六山が箱に座ってゲームをしていた。

六山「ああ、赤穂くん。調子はどう?ゲームする?」

赤穂「遠慮しておく。というか、本当に六山はゲームを手放さないな」

俺の知る限り六山は食事時もみんなで集まる時も、それこそ学級裁判や処刑の時、自分が殺されそうになった時すらゲームする手を止めた事がない。

それが精神の安定に繋がるならと思ってたけど、さすがにこれはどうなんだ……?

六山「まあ、わたしはゲームなかったらろくな人生じゃなかったろうしね」

赤穂「えっ?」

六山「わたし、引きこもりだったんだよね。昔通ってた学校でいじめられてさ」

六山「家で親とかがとやかく言うのから逃げるためにずーっとゲームしてた。それこそ寝食忘れてね」

赤穂「それ、大丈夫だったのか」

六山「大丈夫ではなかったね。入院するはめになったし」

赤穂「入院!?」

六山「だから今は少しゲームの時間減らすようにしてるよ」

これで、減らしてるのか……
694 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/22(月) 21:16:23.21 ID:734xLw1A0
遠見「佐場木殿、自分自身を責めないでほしいでありますよ」

佐場木「……」

あれは、佐場木と遠見か?

遠見「自分も苗木殿の策略にかかったのは同じ。佐場木殿だけの責任ではないであります」

佐場木「……」

遠見「佐場木殿が犯罪を憎んでいる事は自分でも理解出来るであります。しかしそれで足を止めるのはそれこそ本末転倒というものでは?」

佐場木「……」

おいおい、あんなに言って大丈夫なのか?

万が一、何かあったりしたら……

佐場木「……お前にはかなわないな」

赤穂「……!」

佐場木があんな声出すの初めて見たぞ……

遠見「なんだかんだ、佐場木殿とは共に任務を行ってきた仲でありますから」

佐場木「たかだか2週間だろう」

遠見「戦場では1日共にいられないなど当たり前でありますから」

佐場木「……そうか」

遠見「そうでありますよ!」

赤穂「……」

佐場木が抱え込んでてどうしたものかと思ってたけど……

遠見がいるなら、大丈夫そうだな。
695 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/22(月) 22:31:50.18 ID:734xLw1A0
津浦「ふぅ……」

兵頭「お手伝いしますよ津浦さん」

津浦「あ、ありがとうございます」

赤穂「何してるんだ?」

津浦が持ち込んできたのは大量の本。

図書館で見た事あるやつばかりだ。

津浦「この辺りの言語の本はワタシしか読めないないので……もしかしたら何かヒントがあるのではないかと」

赤穂「そうか、わからない言語に紛らせておくなんていかにもモノクマがやりそうな事だな」

兵頭「もしそうなら津浦さんが今もここにいて助かりましたね」

津浦「……そうですね。確かにその通りです」

今もここにいる……兵頭の言外の意図を察したのか答える津浦の表情は明るくない。

津浦「時々思うんです、ワタシがこうして生きていられるのは奇跡のようなものだって」

赤穂「それは……」

兵頭「銃の持ち出しの件もありましたからね。あの時はグレゴリーさんが何とかしてくれましたが」

津浦「そう、ワタシの命はあの人に救われたものです……だから、出来る事をしたい」

赤穂「津浦……」

津浦「そして生きて、ここから帰って、あの人に……」

津浦「だから、頑張ります。ワタシにしか出来ない事を」

津浦はイヤホンを外して深呼吸を1つすると、本を取ってページをめくり始める。

赤穂「兵頭」

兵頭「はい、わかってます」

邪魔しない方がよさそうだからな。

本に目を通す津浦を残して、俺達はこっそり部屋を出た。
696 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/22(月) 22:53:45.73 ID:734xLw1A0
道掛「212……213……214……!」

声が聞こえてくるからどうしたのかと道掛がスクワットをしていた。

こもっていると自転車も出来ないもんな……

如月「303、304、305」

だけどなんで如月さんも一緒にしてるんだ?

道掛「っ、はぁ!ちくしょう、限界だ!」

如月「大丈夫ですか道掛さん?」

赤穂「どれだけやってたんだよ……」

道掛「おぉ、赤穂。いや、如月とちょっと勝負をな」

如月「500回を3セット……今は4セット目でしたね」

そんなに。

道掛「如月のやつ、涼しい顔してやりやがるからよ!なんか負けてられっかって気分になんだろ?」

如月「だからといって無茶はやめてください。道掛さんは脚を大切にする必要があるでしょう」

道掛「……へへ、サンキューな」

道掛は嬉しそうに如月さんが差し出した手を取る。

鞍馬の事、苗木の事……色々あった道掛にとって純粋に心配してくれる如月さんの気遣いが嬉しいんだろうな。

道掛「よっしゃあ、次は廊下ダッシュだ如月!」

如月「だから無茶は……」

赤穂「……」

いや、俺の考えすぎか……?

ちなみに道掛はその後佐場木に説教されてるのが見つかった。
697 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 10:33:00.85 ID:Sz46XOLA0
赤穂「はぁ」

まだ裁判があって2日しか経ってない……それなのに起き続ける出来事に正直疲労がかなり溜まっていた。

赤穂「少し、寝るか……」

壁に寄りかかるようにして目を閉じる。

思った以上の疲労があったのか抗えない睡魔に俺はゆっくりと委ねるように沈んでいった。

「……」

※※※※

赤穂「んっ……」

「あっ、目が覚めた?」

赤穂「……?」

目覚めると後頭部に柔らかい感触……そして視界を遮る何か。

赤穂「……」

前にもこんな事があったな……

赤穂「……土橋?今回は熱中症にはなってないぞ」

土橋「なんか寝苦しそうだったから膝枕してみたんだけど……迷惑だった?」

赤穂「いや、驚いただけだよ。ありがとうな、骨折してるから大変だったろ」

土橋「まあ、ちょっと苦労はしたけど……」

土橋はモゴモゴと口を動かしながらも、言葉は出てこない。

まあ、言いにくいなら無理に聞かなくてもいいか……
698 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 11:15:00.21 ID:Sz46XOLA0
赤穂「今何時だ?」

土橋「えっと、8時半だね」

赤穂「2時間くらい寝てたのか……んっ?土橋、いつから膝枕してたんだ?」

土橋「えーと、1時間くらいかな?」

赤穂「そんなにしてたのか!?」

長時間膝枕させてた事での足への負担を考えて思わず飛び起きる。

あっ、と声が聞こえた気もしたけどはっきりとはしなかった。

赤穂「悪かった。重かっただろ」

土橋「いや、そんな事は……」

赤穂「本当か?痺れたりしてないか?」

土橋「大丈夫だって!政城は心配しょ……わわっ!?」

立ち上がった土橋がバランスを崩して倒れそうになる。

咄嗟に手を出して支えたものの、俺も踏ん張りが聞かず結果2人で倒れるように床に転がった。

赤穂「いつ……大丈夫か土橋!」

土橋「う、うん、大丈夫」

どうやらうまい具合に骨折した腕を打つのは避けられたらしい。

赤穂「やっぱり痺れてたんじゃないか……怪我人なんだからあんまり無茶するなよ」

土橋「……だって」

赤穂「だって?」

土橋「したかったんだよ……政城に膝枕」

赤穂「……?」

俺に膝枕したかった?

なんで?

赤穂「俺そんなに寝苦しそうだったのか?」
699 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 11:27:28.26 ID:Sz46XOLA0
土橋「……はあ?」

いや、なんでそんな冷たい目を……

土橋「この、鈍感政城!」

赤穂「ど、鈍感?」

土橋「アタシがなんで牡丹が側にいるって言うのを代わってもらってまで膝枕したと思ってるの!?」

赤穂「いや、今の初耳……」

土橋「好きだからに決まってるでしょ!?」

赤穂「は!?」

好き?

赤穂「誰が?」

土橋「アタシが!」

赤穂「誰を?」

土橋「政城を!」

赤穂「なんで?」

土橋「元々気になってたけど、はっきりしたのはジェニーの事があってから!」

赤穂「……」

土橋「…………あっ」

ようやく自分の言った事に気付いたのか土橋の顔が真っ赤になったり真っ青になったりする。

土橋「ア、アタシ何を……ご、ごめん!」

そして逃げるように土橋は部屋を飛び出していった。

赤穂「……」

土橋が、俺を、好き?

赤穂「……」

御影「兄さん、起きた……ってなんで床に寝てるの」

赤穂「牡丹」

御影「な、なにどうしたの?」

赤穂「悩みが増えた……」

御影「???」
700 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 11:51:02.14 ID:Sz46XOLA0
【旧館】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

道掛「なあなあ、赤穂の奴どうしちまったんだ?」

佐場木「土橋の話によると深刻なものではないようだが」

如月「……」

土橋「あああああ……アタシなんであんな」

遠見「美姫殿、何かあったのでありましょうか」

兵頭「……ああ、そういう」

津浦「……なるほど、理解しました」

御影「えっ、何を」

六山「あー、あー、フラグ成立しちゃったかなこれは」

内通者の警戒のために集まった俺達。

しかしその初日はそんな空気とはまるで無縁な様子で更けていった。
701 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 21:01:47.48 ID:Sz46XOLA0
【17日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「…………」

眠れなかった。

まさかこんな形で悩む事になるなんて……

兵頭「土橋さん、口を開けてください」

土橋「あ、あーん……」

赤穂「……」

道掛「なーに、美姫ちゃんと見つめあってんだよ!」

赤穂「痛っ!?み、見つめあってなんかいない!」

道掛「そうだったのか?悪い悪い!」

赤穂「……はあ」

本当、どうしたらいいんだ。
702 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 21:33:38.09 ID:Sz46XOLA0
御影「へー、ほー、ふーん」

恥を忍んで牡丹に事情を話したら、返ってきたのはそんな言葉になってない返事だった。

なんでそんな冷めた目で見るんだよ……

御影「よかったじゃん、土橋って結構可愛いし、胸もおっきいし」

赤穂「茶化すなよ、本気で悩んでるんだぞ」

御影「なに、土橋嫌いなの?」

赤穂「いや、そういう話じゃなくてだな……多分土橋の好意はつり橋効果だと思うんだよ」

御影「つり橋効果ってあの危ない時のドキドキを勘違いしちゃうってやつ?」

赤穂「そうそう、だから……」

御影「兄さん、まさかそれ土橋に直接言った?」

赤穂「いや、まだだけど」

御影「ほっ……いい?絶対本人にそれ言わないでよ」

赤穂「えっ?」

御影「あのね、兄さん。勢いとはいえ告白した女の子にお前の感情は勘違いなんだなんて言ったらどれだけ傷つくと思う?」

赤穂「うっ……」

御影「土橋の気持ちに応える応えないは兄さんの自由だけど、少なくともその気持ちを否定するのは違うと思う」

赤穂「……」

どんな事があっても、やっぱり牡丹も女の子なんだな……

御影「いい、わかった?」

赤穂「お、おう……わかった」

だけどなぁ……
703 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 21:47:35.40 ID:Sz46XOLA0
道掛「おー、とうとう美姫ちゃんが告ったのか」

六山「やっぱりフラグ成立してたんだね」

赤穂「道掛と六山は気付いてたのか?」

そういえばこの2人は病院にいた時、色々変な事を言ってたな……

道掛「当たり前だ!美姫ちゃんが赤穂に惚れてんのはしっかりわかってたぜ!」

六山「恋愛ゲームをしてればなんとなくね」

そんなもの、なのか。

道掛「……なあ百夏ちゃん。ちなみに俺のフラグは」

六山「あはは、道掛くんは友人ポジションでしょ?」

道掛「よくわかんねえけどバッサリ切られたのはわかるな!?」

道掛と六山の漫才を眺めながら俺は考える。

そんなにわかりやすかったのに俺、全然気付かなかったのか……

これでも、鋭い方だと思ってたんだけどな。

道掛「で、どうすんだ?まさか無視するわけにもいかねえだろ」

六山「バッドエンド一直線だね」

赤穂「だけどな、今はそれどころじゃ」

道掛「バッカヤロウ!こんな時だからこそだろうが!」

六山「うーん、生きる気力にはなるんじゃないかな?」

赤穂「……」

生きる気力、か……
704 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 23:33:57.12 ID:Sz46XOLA0
佐場木「なるほど、そういう事か」

津浦「Ms.土橋らしいと言えばらしいですね」

佐場木と津浦にも話してみたらそんな反応が返ってくる。

なんだ、俺が思ってるよりこういう状況って受け入れられてるのか?

津浦「ワタシには気持ちがわかりますから」

佐場木「それが抑止になるなら俺は何も言わん」

赤穂「……」

理由は違えど、肯定には変わりないか……

佐場木「なんだ、否定材料がほしいのか?」

赤穂「えっ」

津浦「Mr.赤穂、そうなんですか?」

赤穂「いや、それは……」

佐場木「断りたいならただ断ればいいだけだろう。状況、その他の要因をいちいち言い訳に使う必要がどこにある」

赤穂「……」

津浦「Mr.赤穂……向き合ってあげてくれませんか?ワタシには、もうかなわない話ですから」

赤穂「……」

向き合う……だけど俺は……
705 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 21:08:55.18 ID:HTkdcFfA0
遠見「なるほど……美姫殿から話は聞いていたでありますが」

赤穂「土橋、遠見に相談してたのか」

遠見「一昨日の事でありますが、肯定であります」

一昨日って事は、あの温泉で相談してたのかもな……

如月「赤穂さんはどうしたいんですか?」

赤穂「正直、わかりません」

覚悟もなく、いきなりの事だったからな。

遠見「赤穂殿、美姫殿は本気であります。それは自分が証明するでありますよ」

赤穂「……」

ここまで来ると俺もそんな気がしてきた……だけど俺の方がどう考えてるか自分で自分の気持ちがわからない。

如月「今は色々と大変な状況、赤穂さんが混乱するのも無理ありませんね」

遠見「おそらく美姫殿も、それは理解しているはずでありますよ」

赤穂「だろうな」

あれは本当に勢いだった、多分本人に言うつもりはなかったはずだ。

赤穂「……」

だけど俺は知った、知ってしまった。

赤穂「……」

もうわからなかった頃には戻れない以上、考えないとな……しっかりと。
706 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 21:37:18.95 ID:HTkdcFfA0
兵頭「それで土橋さんを避けていると」

赤穂「言わないでくれ」

そう、考えるとはなったものの簡単に結論が出るわけがない。

そして結論が出ない内に土橋に会うのが躊躇われた結果……俺は彼女を避けるように動いてしまっていた。

兵頭「ヒーローもこういう事には形無しですね」

赤穂「仕方ないだろ……こんな事初めてなんだよ」

兵頭「あら、そうなんですか?ヒーローというぐらいですから、モテモテなのかと」

赤穂「むしろ腫れ物だったよ」

俺はいじめをなくしたりしてた関係上、関わるとろくな事にならないって扱いだったからな。

兵頭「なるほど……それならこうなってしまうのも仕方ないのかもしれませんね」

赤穂「……」

やれやれと言った感じの視線を向けられるのもそれはそれで腹が立つな……

いや、俺がしている事の結果と言えば、それまでなんだけどな。

兵頭「まあ、悩むのは特権と言いますから。頑張って悩んでくださいヒーローさん」

赤穂「なんか馬鹿にしてないか……」

兵頭「いえいえ、純粋な応援ですよ」
707 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:07:42.52 ID:HTkdcFfA0
赤穂「あっ」

土橋「あっ」

ここは旧館……そこで避けるのなんてどうしても限界が来る。

だからこうしてばったりと出くわしてしまうのも、必然と言えた。

土橋「ま、政城……」

赤穂「ど、どうした?」

土橋「ちょっと、話があるんだけど」

赤穂「あ、ああ」

【事務室】

赤穂「……」

土橋「……」

……気まずい。

かなり露骨に避けてたしな……

土橋「あの、さ……昨日の事なんだけど」

赤穂「……!」

来たか……!

土橋「忘れて、ほしいんだ」

赤穂「……えっ」

忘れるって、昨日の告白をだよな……?

土橋「こんな状況なのに、アタシあんな事言って政城を困らせて……ジェニーが殺されたのだって、ついこないだの事なのに」

赤穂「土橋……」

土橋「本当に言う気なんてなかった!言えば政城が困るのわかってたから!なのに、我慢出来なかった……」

土橋の瞳からはボロボロと涙が溢れて、旧館の床に雫を落としていく。

土橋「ごめん、ごめんね……アタシ本当に馬鹿だ。みんな、黒幕とか内通者とかに対処しようとしてるのにアタシ……」

……俺、何やってたんだ。

こんな言葉を吐かせるのがヒーローのやる事か?

こんな辛い涙を流させるのがヒーローなのか?

土橋「……じゃあ、それだけ、だから」



違うだろう!
708 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:18:27.99 ID:HTkdcFfA0
赤穂「土橋!」

土橋「っ!」

土橋の腕を掴んでこちらに振り向かせる。

その顔は耐えきれない苦痛を味わったかのようなそんな顔で。

こんな、辛そうな顔してるのをほっとくなんてそれこそ、ヒーロー失格だ!

赤穂「俺は土橋の告白に困ってたわけじゃない。ただ、戸惑ってたんだ」

赤穂「女の子にああ言われるなんて初めて、だったからな」

土橋「そう、なの?」

赤穂「ああ、だから正直……どう答えたらいいかもわからないんだよ」

俺のするべき事は考えるとか結論を出すとかの前に……

彼女と、話す事だったんだ。

赤穂「だから悪い。あの告白に答えはまだ返せない」

土橋「……うん」

赤穂「だけどな!忘れるなんて事もしない!」

土橋「……!」

まだ何もわかってやしない、結局結論は応えられないかもしれない。

赤穂「だから、待っててくれ」

だけど牡丹に言われたように、否定しない。

俺は土橋の気持ちを、受け止めて答えを返す。

そう、決めたんだ。

赤穂「必ず答えを返すから……ちょっとだけ、俺に時間をくれ」

土橋「……」

土橋は涙を拭うと、頷く。

土橋「待ってる、アタシ……政城の答え待ってるから」

その顔はとてもいい笑顔で。

俺は、なんとなくその笑顔をもっと見ていたいなと、そう思った。
709 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:22:25.67 ID:HTkdcFfA0
【旧館】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

まだまだ考えないといけない事や悩み事は多いけど、昨日よりは清々しい気分だ。

赤穂「……」

身体の芯から沸き上がるものを感じる。

それは黒幕に負けてたまるかという気持ち。

赤穂「絶対、生きて帰ってやるからな……!」

そう決意して、俺は眠りについた。
710 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:32:38.51 ID:HTkdcFfA0
【18日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「んっ……」

もう朝か。

「きゃあっ!?」

赤穂「!?」

この声は土橋!?

【旧館・倉庫】

赤穂「土橋!」

土橋「あ、あいたたた……」

声がした倉庫に来てみると土橋が、床に倒れて段ボールの下敷きになっていた。

遠見「美姫殿!?何をしているのでありますか!」

土橋「いやー、ちょっと落ち着かなくて倉庫漁ってたら段ボールが崩れちゃって」

道掛「うおっ、美姫ちゃん頭にコブが出来ててんぞ」

土橋「頭打っちゃって……」

津浦「Ms.土橋!少し頭を切ってますよ!」

土橋「うわっ、本当だ!?」

佐場木「全く、人騒がせな」

如月「何事もなかったならよかったじゃありませんか。とりあえず怪我を治療しましょう」

御影「じゃあちょっと傷薬取ってくるよ」

兵頭「私は朝食の準備を」

六山「ふああ……おはよー」

赤穂「今起きてきたのか……」
711 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 05:40:54.12 ID:5dF676iA0
遠見「これでよし、であります」

あの後遠見が牡丹の持ってきた傷薬を塗って土橋を治療した。

たいした怪我ではなかったみたいで、ガーゼだけで済むぐらいのもので正直安堵する。

土橋「悪いね、メメ。みんなも心配かけてごめん」

六山「まさか寝てる間にそんな事があったなんて」

御影「むしろよく寝てられたね」

兵頭「本当結構悲鳴大きかったのに……はい、土橋さん」

土橋「あむっ」

佐場木「……警戒が足りないんじゃないか」

道掛「でもこうしてこもってからは何もねえからな」

如月「現状怪しい動きをしている人もいません」

津浦「何かあったと言えばMr.赤穂とMs.土橋の件ぐらいでしょうか?」

赤穂「おい津浦!?」

いくらなんでもそこを持ち出す必要はないだろう!

佐場木「とにかく倉庫を片付けるぞ」

道掛「俺もやるぞ!」

そうして今日も1日が始まった。
712 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 05:49:47.56 ID:5dF676iA0
あれから何人かは倉庫に行ったり、各々動いたり……今この場には俺と土橋だけが残された。

土橋「うー、頭痛い」

赤穂「大丈夫なのか?」

土橋「結構思いっきり打っちゃったからね……」

赤穂「だいたいなんで今は片腕しか使えないのに無茶したんだ」

土橋「……だって本当に落ち着かなくて」

赤穂「……もしかして昨日の事か」

土橋「……」コクッ

赤穂「……」

ま、まあ……そういう事なら落ち着かないのは無理ないか。

土橋「あー、もう2人きりだから余計落ち着かないよ。ちょっとトイレ行ってくる!」

赤穂「あ、ああ」

土橋が立ち上がって大広間のドアに向かう。

そしてドアノブを掴んで外に――
713 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 05:50:14.36 ID:5dF676iA0






土橋「うぷっ……!」






714 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:04:39.29 ID:5dF676iA0
赤穂「土橋?」

土橋「おええっ!」

土橋がいきなり嘔吐する。

そして、床に、倒れた。

赤穂「土橋!?」

土橋「ううっ、げほっ、頭、痛っ、ぐっ!」

なんだ、なんでこんな吐いて……

赤穂「誰か来てくれ!!土橋が!!」

俺の叫びにみんなが集まってくる。

そして土橋を見て、息を呑んだ。

遠見「美姫殿!何が起きたのでありますか!」

赤穂「わからない!ただ急に吐き出して……」

道掛「吐いた……あっ、おい赤穂!美姫ちゃん頭痛するとか言ってなかったか!?」

赤穂「そ、そういえば頭痛いって」

道掛「やべえ、やべえやべえやべえ!!俺大会で頭打った後に頭痛い吐き気するってぶっ倒れた奴見た事あんぞ!」

佐場木「そうか、頭を打った際に脳が傷付いたのか……!」

赤穂「は……?」

御影「そ、それでどうなったの!」

道掛「し、死んじまった……」

津浦「そんな!」

兵頭「どうにかならないんですか!?」

六山「とりあえず病院に……」

如月「しかしこれは医者がいなければ……!」

なんだよそれ。

さっきまで普通に話してたんだぞ?

それがこんな、こんな……!

土橋「政、城……」

赤穂「土橋!しっかりしろ!今病院に」

土橋「アタシ、死ぬの……?」

赤穂「そんな事言うな!ジェニーの遺言通り生きるんだろう!?」

土橋「アタシ、まだやりたい事あるのに……」

土橋「アタシ、まだ答えを聞いてないのに……」

土橋「アタシ、アタシ……」

赤穂「お、おい……」
715 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:08:03.34 ID:5dF676iA0






土橋「政城っ……アタシ、まだ、死にたくないよぉ……」

そう、泣きながら、呟いた土橋の俺に伸ばした腕は……

届く事なく、床に落ちた。






ピンポンパンポーン…!
716 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:08:32.09 ID:5dF676iA0






モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」






717 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:14:25.18 ID:5dF676iA0
赤穂「……」

何も、聞こえない。

何も、わからない。

ただ土橋の最期の言葉と顔が俺の心を抉る。

赤穂「……」

そしてわかった。

俺は。

※※※※

土橋「だってそれヒーローとして頑張って出来た傷でしょ?だったらむしろ勲章だって!」

※※※※

あの言葉をもらってから、俺は。

赤穂「土、橋……」

きっと。

赤穂「うわああああああああああああっ!!」

彼女に、惹かれていたんだ。

それが俺のあまりにも、遅い。

残酷な結論だった。
718 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:16:44.68 ID:5dF676iA0






CHAPT.4【そして希望は捨てられた】(非)日常編 END

生き残りメンバー10→9人

NEXT→非日常編






719 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:18:16.30 ID:5dF676iA0
一旦ここまで。

土橋さん退場です。

捜査はまた夜に。

それではまた。
720 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 20:02:42.00 ID:5dF676iA0






CHAPT.4【そして希望は捨てられた】非日常編






721 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 20:37:01.15 ID:5dF676iA0
【旧館・大広間】

モノクマ「うぷぷ、せっかく固まったのに何の意味もなくコロシアイが起きたみたいだね!」

如月「モノクマ……」

佐場木「ちっ、腹立たしい奴だ……!」

赤穂「……」

モノクマ「あれれ?赤穂クンボーッとしちゃってどうしたのかな?」

御影「ちょっとやめなよ!」

赤穂「……」

モノクマ「うぷぷ、もしかして絶望しちゃった?ねぇねぇ、どうなの?」

道掛「やめろよてめえ!今赤穂は……」

ダンッ!

津浦「っ!?」

兵頭「赤穂さん?」

赤穂「大丈夫、だ」

立ち上がって土橋の死体を見下ろす。

俺は結局、あんな無念な最期を迎えさせてしまった。

赤穂「学級裁判があるんだろう……やってやる」

遠見「赤穂殿……」

六山「本当に大丈夫なの?」

赤穂「ああ、土橋の無念は……必ず晴らす!」

それが俺のやるべき事のはずなんだ……!

    【捜査開始】
722 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 20:49:31.91 ID:5dF676iA0
赤穂「まずはモノクマファイルからだ……」

【被害者は土橋美姫。
死体発見現場は旧館・大広間。
死亡推定時刻は8時2分。
被害者の頭部には瘤と切り傷がある】

赤穂「……」

このモノクマファイル……

コトダマ【モノクマファイル4】を手に入れました。
〔被害者は土橋美姫。
死体発見現場は旧館・大広間。
死亡推定時刻は8時2分。
被害者の頭部には瘤と切り傷がある〕
723 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 22:04:04.91 ID:5dF676iA0
佐場木「土橋はお前の目の前で苦しみだしたのか?」

赤穂「ああ……いきなり吐き出して、倒れて、頭が痛いって」

佐場木「典型的な症状ではあるが、気になる事もあるな……」

赤穂「気になる事?」

佐場木「見てみろ、土橋の腕を」

赤穂「……これは、引っ掻いたような傷か?」

佐場木「朝にはこんなものはなかったはずだ」

赤穂「確かに……俺も見てない」

この傷、事件に関係あるのか?

コトダマ【土橋の死亡時の状況】を手に入れました。
〔土橋は赤穂と普通に話していたところいきなり吐き出して倒れた〕

コトダマ【腕の傷】を手に入れました。
〔土橋の腕に残されていた引っ掻いたような傷〕

724 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/27(土) 20:24:05.67 ID:cxROkNOA0
遠見「美姫殿……」

土橋のそばに膝をついて口元を拭う遠見……ここ数日で仲良くなっていたみたいだから辛いんだろうな……

赤穂「遠見、大丈夫なのか?」

遠見「自分は、大丈夫であります。亡くなった人間はたくさん見てきたでありますから」

赤穂「……」

遠見「美姫殿の無念、自分も晴らしたいであります。だから赤穂殿、絶対に真相を突き止めるでありますよ」

赤穂「ああ、もちろんだ……それで、土橋に変わったところはあるか?」

遠見「1つ。美姫殿の吐瀉物に血が混じっていたであります」

赤穂「血が?」

だけど土橋の嘔吐は、脳にダメージがあった事が原因だよな?

それなのに血を吐いた?

これはいったい……

コトダマ【土橋の吐瀉物】を手に入れました。
〔土橋が吐いた物の中に血が混じっていた〕
725 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/27(土) 21:01:48.34 ID:cxROkNOA0
【旧館・倉庫】

道掛「……」

赤穂「道掛?何してるんだこんなとこで」

道掛「赤穂か。いや、美姫ちゃんが死んだ原因朝の怪我だろ?もしかしたらそこに何かあるんじゃねえかって思ってよ」

赤穂「あの事故が、そもそも仕組まれてたって事か?」

道掛「それを調べに来たんだよ。だけどどうすりゃそんな事出来んのかさっぱりわかんねえ……」

赤穂「そうだな……道掛は佐場木と片付けしてたよな?そこで何か気になる事なかったか?」

道掛「うーん……あっ、そういやなんかパイプみてえなのがたくさん転がってたな!」

赤穂「パイプ?」

道掛「これだよこれ!」

道掛が持ってきたのは金属の棒……ちょうど俺の杖に似たような形の。

道掛「そういやこれ、昨日結構高いとこにあったんだよな」

赤穂「……!」

まさか、土橋は……

コトダマ【金属の棒】を手に入れました。
〔倉庫にあった赤穂の杖に似た形状の金属の棒〕

コトダマ【道掛の証言】を手に入れました。
〔事件前日、金属の棒は高い所にあった〕
726 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/27(土) 21:19:51.49 ID:cxROkNOA0
【旧館・厨房】

兵頭「まさかこんな事になるとは……」

赤穂「朝食の時は土橋の様子に変わった所はなかったか?」

兵頭「そうですね、いつも通りでしたよ。ああ、ただ……」

赤穂「ただ?」

兵頭「機嫌がよかったのかなぜか私や御影さんも食べさせられまして……土橋さんの分だったのに本人は気付いてませんでしたが」

赤穂「ああ、なんか騒いでたのはそれか」

兵頭「だからこそ、今でも少し信じられない気持ちです」

赤穂「……」

コトダマ【兵頭の証言】を手に入れました。
〔土橋は朝食の時機嫌がよく、兵頭や御影にも自分の分のご飯を食べさせていた〕
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