うしおとセイバー

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302 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/04/12(水) 00:18:51.11 ID:f9d2oEFZ0


凛「桜っ!! 桜ーーっ!!」

桜「…………」

凛「なんとかしてキャスターの魔術を解析して……。そんな時間なんて……」

桜「…………」

うしお「桜姉ちゃん、オレは魔術師の家の協約とかは分からねえよ」

うしお「でも、いきなり仲の良い姉ちゃんと離ればなれになるなんてつらかったよなあ」

凛「蒼月君……」

うしお「でもよ、遠坂先輩は桜姉ちゃんを忘れたりなんてしてないぜ」

うしお「その証拠によ、遠坂先輩は桜姉ちゃんを助けに来たんだ」

桜「…………」

凛「桜……。駄目なの……」

うしお「まだだ、まだ……!!」

凛「蒼月君、その手にあるのは宝具『獣の槍』じゃないのよ……」

凛「バーサーカーのときみたいに心に語りかけるなんてことは出来ないわ……」


キャスター「残念、どうやら時間切れ。そろそろ聖杯召喚のようね」

303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/12(水) 00:21:30.08 ID:CTG5tr6Qo
うしおがまだっつってんだ!こんなんで終わりなはずがねぇ!
304 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/04/12(水) 00:32:20.20 ID:f9d2oEFZ0


桜「…………」

凛「桜……」

凛(……魔術師にとって一番大切なのは命じゃない。守らなくちゃいけないのは魂の尊厳……)

凛(アンタも魔術師の家に生まれたんだから、分かるわよね)

凛(大勢の生贄の器にされるぐらいなら……。そうでしょう、桜……)

桜「…………」

凛(……私も甘いなァ……。蒼月君、あと、お願いね……)

パシィッ

凛「蒼月君……? 放しなさい!!」

うしお「させねえさ。桜姉ちゃんの代わりに器になるなんて」

凛「……っ!?」

凛「ち、違うわ……。わ、私は、桜を、こ、殺そうと……」

うしお「今回さ、おかしいとは思ってたんだ」

凛「え……?」

うしお「いつも冷静な遠坂先輩が、キャスターの神殿をどんどん進んでいくからよ」

うしお「桜姉ちゃんを一番心配してたのは遠坂先輩だ」

うしお「そりゃそうだよァ、妹なら当然だよな」

凛「あ、蒼月君……私は……私は……」

305 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/04/12(水) 00:42:28.23 ID:f9d2oEFZ0


凛「でも、私たちにキャスターの魔術を解くなんて出来ないわ……」

凛「あとは大元のキャスターを倒すしか、でも、もうその時間もないのよ……」

うしお「いや、方法はまだあるぜっ!!」

キャスター「フフ、面白いわね。まだ足掻いてくれるのかしら?」

うしお「あぁもちろんさキャスター!!」

うしお「桜姉ちゃんのためなら最後の最後まで足掻き続けてやる!!」

うしお「それによ、オレには桜姉ちゃんがキャスターの魔術に負けるなんて思えねえよ!!」

キャスター「なっ……」


うしお「桜姉ちゃん、初めて会ったときのことを覚えてるかい?」

桜「…………」

306 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/04/12(水) 00:49:54.33 ID:f9d2oEFZ0


「桜、まさかお前、僕に意見するつもり?」

「そ、そんなことはないです兄さん」

「それじゃなに? なにを言いたいの、お前は」

「ただ、まだ一年生には弓を持たすのは早いんじゃないかと思って……」

「それが僕に意見してるって言ってるんだよっ……!!」

バシッ

「ただの兄妹喧嘩ならほっとくつもりだったんだけどよ」

「あ……」

「女の人に手を上げるのは黙ってみてられねえよ、センパイ」

「お、お前、あの蒼月か……。く、くそっ……」


「はぁ、うしおのケンカっ早さは高校生になっても変わんないのね」

「だ、だってよォ」

「まぁ今のはアンタが行かなくても、この麻子さんが行ったけどね」

「とか言って麻子はうしおくんが助けに行くの分かってたくせに〜」

「ま、真由子!!」


「あの、ありがとうございます」

「えっ? あ、いや、礼なんてやめてくれよ。オレが勝手にやったことさ」

307 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/04/12(水) 00:57:00.58 ID:f9d2oEFZ0


「蒼月君……」

「あれ、確かこの前の……」

「この間は、ありがとうございました」

「も、もう礼はいいよっ。それよりセンパイも買い物かい?」

「はい、夕飯の準備を」

「オレもさ。今、親父と母ちゃんが総本山に行っててさ、オレ一人なんだ」

「そうなんですか……。それが、今晩の夕飯ですか……?」

「あぁ、ジェットサンダーラーメン」

「……………………」

「ん……?」

「今日の夕飯は私が作ります。私にお礼をさせてください」

「えぇっ!?」

「蒼月君はこの町を、いえ、この国を救った人なんですよ。もっと食べるべきです」

「い、いや、ちょっと待ってくれよっ。それとこれなんの関係が」

「待ちません。それに後輩は先輩の言うことをきくものです」


「買い物かご持って行っちまった……」

「ひゃー、意外に強引な姉ちゃんだったんだなァ」

「でも良かったぜ。あれなら兄貴にも誰にも負けねえや」

308 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/04/12(水) 01:16:23.98 ID:f9d2oEFZ0


うしお「あの桜姉ちゃんがキャスターの魔術に負けるはずがねえ!!」

桜「…………」

キャスター「まさか私の魔術を直接この娘に破らせるつもり?」

キャスター「坊や、その儚い希望も空しくなってこないのかしら」

キャスター「桜さんは抗うことなんて出来ないのよ。過去も、そして今も」

凛「そんなことないわ!!」

凛「昔は出来なくても今なら出来る。私も桜も、今なら抗える!!」

凛「桜、私も覚えてるわよ。アンタが負けず嫌いだってこと」

凛「だって私はアンタの……」

凛「桜の……姉なんだからっ!!」

桜「……っ……」

うしお「確かに桜姉ちゃんは『間桐桜になったとき』は一人ぼっちだったかもしれねえ」

うしお「でも『今の間桐桜』は一人だなんて言わせねえぜ!!」

うしお「ここに桜姉ちゃんを待ってる人間が二人もいるんだぞ!!」

桜「……あ……ぁ……」


うしお「オレたちだけじゃねえ!! 麻子も真由子もそうだ!!」

うしお「間桐桜を待ってるヤツらがたくさんいる!!」

うしお「だからよ、キャスターなんかに負けるなァーーーー!!!!」


桜「……あぁ、姉、さん……蒼月、くん……」

309 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/04/12(水) 01:28:42.73 ID:f9d2oEFZ0


キャスター「そんな馬鹿な……。ありえないわ……」

キャスター「外側から魔術を破れないからって、内側から魔術を破らせるなんて……」


凛「さ、桜……。桜ァーー!!」

桜「夢の中で、ずっと、姉さんと蒼月くんの声が聞こえていました……」

凛「ごめん、ごめんね……」

桜「私は姉さんがうらやましかった……。でも、今は違う……」

桜「私を……私として必要と……。私を待ってくれている人たちがいるんですね……」

凛「ええ、ええ、そうよ、桜……」


キャスター「大人しく夢の中で私の操り人形になっていればいいものを……」

うしお「キャスター!!」

キャスター「見事、と褒めるべきかしらね。現存する英雄とはいえ島国の坊やと甘く見ていたわ」

うしお「もう桜姉ちゃんを器の魔術師になんてさせねえぞ、キャスター!!」

うしお「聖杯の召喚なんてことはやめろよ!!」

キャスター「フフ、面白いわね。すでに勝った気でいるのかしら?」

キャスター「別に器の魔術師は一人でなくてもいいのよ。そう、二人でも、ね」

310 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/04/12(水) 01:36:37.61 ID:f9d2oEFZ0


桜「姉さん、これは……」

凛「ごめん桜。今は説明してる時間がないの。ここに隠れてて」


キャスター「まずは現代の魔術師さん、褒めてあげましょう」

キャスター「正攻法ではないとはいえ私の魔術を破ったのですから」

凛「そりゃどうも。でも古代の魔術師の魔術も大したことなかったわよ」

キャスター「フフ、言うようになったわね。そうでないと面白くないわ」

キャスター「今から私の魔術でアナタも桜さんも器になるのですから」

うしお「そんなことはさせねえよ」

キャスター「まさか、そのなんの能力もない槍で私と戦うつもりかしら?」

うしお「あぁそうさ」


凛(……そうよ。あれは宝具『獣の槍』じゃない。ただの槍よ……)

凛(キャスターの魔術で、桜は完全に洗脳されてた。それを蒼月くんは宝具なしで……)

凛(バーサーカーのときは宝具の能力だと思った、でも違ったってこと……?)

凛(桜の洗脳を解き、バーサーカーの暴走を止めた能力……。それは蒼月くんの……)

311 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/04/12(水) 01:40:31.50 ID:f9d2oEFZ0


キャスター「なめられたものね。サーヴァントなしで大した武器もなく私と戦うと」

キャスター「思い知らせてあげましょう。魔女の指先、とくと味わってもらおうかしら」


うしお「遠坂先輩、準備はいいかい?」

凛「ええ、蒼月くん。いつでもいけるわ」

うしお「それじゃオレたちとキャスターの……」

凛「タイマン、始めましょうかっ!!」

うしお「おう!! 行っくぜェーーっ!!」

312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/12(水) 02:30:07.67 ID:+thN8obHO

うしとらは外伝もスバラシイ
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/04/14(金) 22:53:45.81 ID:Pd+IXNOmO
乙ー
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 02:27:45.56 ID:RL8IeC0j0
自害しろ、ランサー
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1233579.jpg
315 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/09(火) 21:41:44.12 ID:Epm9CavJ0


【第十九話 教師と魔女『雨に現れ、雨に消え』 】

316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/09(火) 21:52:49.71 ID:Epm9CavJ0


アサシン「……音が止んだか」

とら「ああ? 音だァ?」

アサシン「どうやら女狐の企みは失敗したようだぞ」

とら「へっ、そうかよ。それならわしもこの門をそろそろ通らせてもらおうかね」

アサシン「フッ、お互い頃合いか。私も秘剣の魔翌力しか残っていないのでな」

とら「決着といこうぜ、サムライ」


アサシン「…………」

とら「…………」


アサシン「……最後に一つだけ聞かせてくれ」

とら「なんだよ?」

アサシン「セイバーのマスター、あの少年は嬉々として私の名前を出した」

アサシン「だが私にはその実感がない。少年が真っ直ぐ私を見ても、私は返すことが出来なかった」

とら「アイツはただの馬鹿だぜ。お前が本物かどうかなんて考えちゃいねーよ」

アサシン「だからこそ知りたい。私は、いたのか……?」

317 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/09(火) 21:59:53.05 ID:Epm9CavJ0


アサシン「他でもない、物の怪のお前に問いたい」

とら「わしに?」

アサシン「人間では意味がないのだ。捏造された記憶を持った人間ではな」

アサシン「直接その時代にいた物の怪、そしてお前だからこそ信用に足るというもの」

アサシン「佐々木小次郎は、存在していたのか?」

とら「おめえ、それを確かめるためにわしと戦って……」


とら「……生憎だがよ、わしはおめえが知りたいことは答えられんぞ」

とら「わしは槍にはりつけにされて五百年閉じ込められてたのよ」

とら「その間にサムライの時代は終わっちまってたよ」

アサシン「そうか……」

とら「そもそもわしは人間の顔も名前も覚えちゃいねーよ」

アサシン「フッ、それもそうだな。物の怪とはそういうものか」


とら「だがよ、一つ分かることがあるぜ」

アサシン「なに……?」

とら「おめえは最強のサムライよ。わしが戦ったサムライの中で一番強えぜ」

アサシン「私が、最強の侍……?」

とら「わしが認めてやらァ。この『わし』がな」

アサシン「……そうか、私は最強の侍か。フフ、かの雷の物の怪に認められたからには……」

アサシン「無様な一芸は、披露出来んな……!!」

とら「きな、ブッ倒してやるよォ……!!」

318 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/09(火) 22:17:48.40 ID:Epm9CavJ0


アサシン「参る……!!!!」

アサシン「秘剣……『燕返し』!!!!」


とら(来る!! あの鎌鼬より鋭いやつかァ〜〜!!)


アサシン(まずは頭上から股下までを断つ縦軸の「一の太刀」)

とら(速すぎて発動は潰せねえか、避けるしかねえ……!!)


アサシン(それから一の太刀を回避する対象の逃げ道を塞ぐ円の軌跡である「二の太刀」)

とら(な、なにィ〜〜!? こっちにも太刀が迫ってきてやがる!?)

とら(それなら避ける場所はここしかねえ……!!)


アサシン(そして左右への離脱を阻む払いの「三の太刀」)

とら(どうなってやがる!? どこにも逃げ場所がねえ!?)


アサシン(三つの異なる太刀筋を同時に放つことで対象を囲む牢獄を作り上げる)

アサシン(これが我が秘剣『燕返し』だ)


アサシン「勝負あったな、雷の物の怪よ」

アサシン「我が剣先からは燕でさえ逃れ得ぬ。翼がなくても飛べるそなたでも酷な勝負であったかな?」




とら「……タコが。なに勝ち誇ってやがる」




アサシン「……っ!?」

アサシン(自身の身体を伸ばして、いや、変化させて牢獄から逃げ……!?)




とら「おめえの相手はツバメじゃねえ」


とら「バケモノなんだぜ……!!!!」



319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 22:37:56.56 ID:1jFtrXm1O
とらカッコイイ
320 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/09(火) 22:47:16.08 ID:Epm9CavJ0


アサシン「……行け。勝負はついた」

とら「ああ」

アサシン「我が秘剣の全てをかけた極上の立ち合いだった」

アサシン「感謝する。長飛丸、いや……」

アサシン「とら殿」

とら「わしも楽しかったぜ。じゃあな」

とら「コジロウ」


サァァァ

アサシン「フッ、そろそろか……」

アサシン「聖杯戦争、なかなかに楽しい一時であった」

アサシン「しかし私としたことが修行不足であったな」


アサシン「だが私は『雷の物の怪』が認めた『佐々木小次郎』」

アサシン「次に呼ばれるまでには、どれ……」


アサシン「雷を斬れるようになっておこうか」

321 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/09(火) 23:07:34.44 ID:Epm9CavJ0


凛「今よ蒼月くん!!」

うしお「うおおおおおお!!!!」

キャスター「貴方たちの考えなんて手に取るように分かるわ」

キャスター「キャスターが相手なら二人で接近戦を挑めば数の有利で勝てる」

キャスター「今までもそんな愚かな騎士たちを多く見てきたわ。でも残念ね」

うしお「防がれた……!?」

キャスター「私の高速神言は剣士クラスの刃にさえ先んじる。坊やの槍が当たることなんてないのよ」

うしお「まだまだこれからだぜ、キャスター!!」


キャスター「貴方の戦い方は優雅さに欠けるわ」

うしお「オレは……地味さ!!」


キャスター「そうね、それなら派手に散らせてあげる……!!」

うしお「ぐっ……!?」

凛「とらの言うとおり、蒼月くんはいつも背中がお留守よねっ!!」

うしお「ごめんよ遠坂先輩!!」

キャスター「なっ……」

322 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/09(火) 23:17:39.46 ID:Epm9CavJ0


キャスター「押されている、私が……。あ、ありえない……!!」

キャスター「宝具の槍のない坊やと、格下の魔術師のお嬢さんに、私が……!?」

うしお「遠坂先輩!!」

凛「ええ、次行くわよっ!!」

キャスター「しかしこの連係、歴戦の槍兵と術師が組んだかのような……」

キャスター「フ、フフ。そう、そういうことね。私が甘かったわ、お嬢さん」

凛「なによ?」

キャスター「意識の共有かしら、それとも私と同じような魔術で坊やを操っていたのね」

凛「はぁ? なに言ってんのよ?」

キャスター「もう隠さなくてもいいのよ。確かに意識や洗脳の魔術も使えたのは予想外だったわ」

凛「あのねぇ、そんな魔力あったらとらに送ってるわよ!!」

キャスター「ウソが下手ね。同盟を組んで一週間程度の二人がこんな連係を出来るわけが……」

凛「ああ、そういうこと。それなら教えてあげるわよキャスター!!」

凛「こんな山の中で自分の神殿なんかコソコソ作ってるアンタと違って、私たちは!!」


うしお「『練習』出来るんだよ!!」


キャスター「なっ!?」

キャスター(お嬢さんの後ろに隠れて……!?)

うしお「どうだいキャスター!! オレの槍、当たったぜ!!」

キャスター「こ、この……!!」

323 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/09(火) 23:26:58.35 ID:Epm9CavJ0


キャスター「……いいわ、認めてあげる。なかなかやるわよ、貴方たち」

キャスター「でもね、何か忘れていないかしら?」

うしお「なんだ……?」


桜「きゃっ……!!」

骸骨騎士「アァァ」
骸骨騎士「ウゥゥ」


凛「桜っ!!」

うしお「桜姉ちゃん!!」

キャスター「忘れてもらっては困るわね。私は神代の魔術師。はじめから数の有利不利などないのよ」


「おめえもなーんか忘れとるよな、術使い」

ドゴーン!!


キャスター「よ、妖怪のサーヴァント!!」

凛「とら!!」


桜「あ、あの、ありがとうございます。とらさん」

とら「へっ、いいから捕まっときな」

324 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/09(火) 23:38:57.58 ID:Epm9CavJ0


キャスター「アサシン、あの役立たずが……!!」


セイバー「ウシオ!!」

うしお「とら、それにセイバーも!?」

桜「セイバーさんまで……」

セイバー「良かった。サクラも無事のようですね」


葛木「キャスター、状況はどうなっている」

キャスター「すみませんマスター。聖杯の召喚は失敗。人質を逃がしアサシンを失いました」

葛木「別に構わん。ここで終わりではない。それに状況が不利なら撤退するだけのことだ」

キャスター「はい、分かりました。撤退します」


セイバー「キャスター、まさかこの場から逃げれると思ってないだろうな?」

とら「ここがおめえらのしめえの場所だぜ」

凛「形勢逆転ね、キャスター」

325 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/09(火) 23:45:39.57 ID:Epm9CavJ0


キャスター「形勢逆転? いいえお嬢さん、形勢はそのままよ」

凛「なんですって……?」


ゴゴゴゴゴゴ


うしお「な、なんだ、地震かっ!?」

セイバー「いえ、違います。これは……」

キャスター「ここは私の神殿。造るのも思いのままなら、壊すのも思いのまま」

凛「キャスター……!!」

とら「それがどうした術使い。そんな脅しでわしが見逃すとでも思ったのかよ?」

キャスター「ええ、そうよ。妖怪のサーヴァント、貴方は逃げていくことになるわ」

とら「ああ? わしが逃げる?」

キャスター「別に私は神殿が崩れるまで貴方とやりあったっていいのよ?」

キャスター「貴方のマスターが私のように転移の魔術が使えるのなら、ね」

凛「くっ……」

うしお「だ、駄目だ。このままじゃ生き埋めになっちまうよ!!」

凛「……とら、桜を乗せて。蒼月くん、セイバー、この神殿から脱出するわよ」

キャスター「フフ、それでいいのよ。お嬢さん」

326 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/09(火) 23:55:09.24 ID:Epm9CavJ0


とら「おい!! りん!!」

凛「桜はキャスターの洗脳のせいで衰弱してる。アンタが運んでくれないと脱出できないわ」

凛「アンタとセイバーを神殿の崩壊限界まで残らせてキャスターを倒す手もあるけど」

凛「もしまだキャスターが奥の手を持ってるなら危険だわ。ここは逃げるしかないのよ」

とら「チッ……。あーあ、分かったよ」

うしお「へっ」

凛「どうしたのよ蒼月くん。何か変?」

うしお「いや、いつもの冷静な遠坂先輩だから嬉しくてよ」

凛「な、なによそれ……」

セイバー「ここまで来てキャスターを討てないのは不本意ですが、マスターの安全を考えれば当然です」

うしお「オレは桜姉ちゃんが無事に帰ってきたならそれで十分さ」

桜「蒼月くん……」

とら「オラ、さっさと乗りな」

桜「と、とらさん、本当にいいんですか?」

とら「おめえには手作りはんばっかの借りがあるのよ。槍で脅して乗っかるヤツと違ってな」

うしお「とらァ、聞こえてんぞ!!」

うしお「って、こんなことしてる場合じゃねえ。脱出しねえと……」

327 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/10(水) 00:13:41.33 ID:hOwTvVaQ0


キャスター「さぁ、私の神殿からお逃げなさい。『見逃して』あげるわよ」

凛「くっ、蒼月くん行くわよ!!」

うしお「あぁ遠坂先輩」


キャスター「最後に坊やに忠告してあげるわ」

うしお「なに……?」

キャスター「私は今回のことで役立たずのアサシンを失ったわ」

キャスター「貴方のセイバーは、とても綺麗で強くて美しいわね」

セイバー「何が言いたい、キャスター」

キャスター「坊や、夜道には気をつけなさい。私のルールブレイカーが常に狙っているわよ」

うしお「桜姉ちゃんの次は、セイバーを狙うっていうのかよ!!」

キャスター「ええ、次はセイバーを頂くとしましょう」

セイバー「キャスター、貴様……!!」

キャスター「フフ、私のモノにしてみせるわ、セイバー」




??「チッ……。戯けが……」

??「身の程の違えたな、雑種」



328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/10(水) 06:02:04.14 ID:4gaAiq1fO
乙ー
329 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/10(水) 22:46:53.67 ID:hOwTvVaQ0


うしお「なぁキャスター。なんでそんなことするんだよ?」

キャスター「なんで? 坊やは頭が悪いのかしら……」

とら「そいつは馬鹿だぜ」

桜「と、とらさんっ」

キャスター「この聖杯戦争に勝ち残り、聖杯を手に入れるために決まってるでしょう?」

うしお「そんなことは分かってるよ。でもよ、セイバーを奪ったりなんてしなくていいだろ?」

キャスター「……意味が分からないわね」

葛木「蒼月、その理由はなんだ。なぜそう思う」

うしお「さっきキャスターと戦って分かったんだ。キャスターの魔術はスゴかったぜ」

うしお「きっと一人じゃ負けてた。遠坂先輩と二人だったからなんとかなったけどよ」

うしお「葛木先生の拳法もすげえし、キャスターの魔術もすげえよ」

うしお「きっと二人が組めば絶対に強えんだろうな」

キャスター「私とマスターが……。そんなこと、貴方に言われなくても……」

葛木「…………」

うしお「だったら人質を取ったり、他のサーヴァントを奪わなくてもいいだろ?」

うしお「相当強いぜ、葛木先生もキャスターもさ」

キャスター「あ、貴方はいったい……」


桜「姉さん、あれ大丈夫なんですか……」

凛「面食らうわよね普通。私もそうだったし。でもあれが蒼月くんなのよ」

330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 22:49:12.07 ID:aS9hYPK6o
これが潮のいいとこなんだよなあ
331 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/10(水) 22:58:38.38 ID:hOwTvVaQ0


葛木「……キャスター。お前のやり方に口は出さないと言ったが気が変わった」

葛木「蒼月とセイバーの二人に『お前と』戦ってみたくなった。手を貸せ」

キャスター「いいえマスター。今私もそれを提案しようと思っていました」


キャスター「坊や、約束してあげるわ。貴方とセイバーは私たちが倒す、必ずね」


うしお「あぁいいぜ。オレたちも負けねえからよ」

セイバー「いずれキャスターのマスターとは決着をつけるつもりでした。望むところです」

キャスター「フフ、楽しみだわセイバー。約束よ」


??「約束? 抜かしたな雑種」

??「その女と取り決めをしていいのは、王である我(オレ)だけだ」


キャスター「っ!?」

セイバー「!?」

うしお「な、なんだ、誰だ!?」


??「先ほどの騎士王を奪うなどと口にしたのも大罪だが……」

??「我のモノであるアレと、我を差し置いて取り決めだと?」


??「……失せろ、雑種」

332 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/10(水) 23:10:25.64 ID:hOwTvVaQ0


凛「空一面に剣や槍が……なんなのよあれ……」

うしお「飛んできた!? オレたちを狙ってるのか!?」

凛「と、とらっ、雷で撃ち落としてっ!!」

とら「こんなもん全部に当てれるかよ!! りん、防ぐしかねえぞ!!」

凛「そんなこと出来るワケ……!!」


キャスター「フン、現代の魔術師は結界も張れないのかしら……!!」


凛「広範囲結界!? なんで、私たちまで……」

キャスター「あら、私は言ったわよ、お嬢さん。私の神殿から『見逃して』あげると」

キャスター「私の神言は古代より絶対なの。だから無事にここから逃げてもらわないと困るのよ」

凛「キャスター……。アンタ……」


??「久しいなセイバー。覚えているか、我が下した決定を」


うしお「セイバーの知り合い……?」

セイバー「貴様が……なぜここに……」


??「なんだその顔は、未だ覚悟が出来ていないというのか」

??「男を待たせるとは戯けた女だ。だが、こんなみすぼらしい神殿では再会も色褪せるか」

333 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/10(水) 23:20:54.38 ID:hOwTvVaQ0


キャスター「早く行きなさい。私の結界が維持されてる間に……!!」

凛「でも、それは……」

キャスター「貴方だって『アレ』が並じゃないことぐらい分かるはずよ、行きなさい」

キャスター「神殿の崩壊はもう私にも止められないのよ。それともこのまま潰されるつもりかしら?」


ゴゴゴゴゴゴ


凛「…………」

凛「みんな、キャスターが結界を張ってる間に逃げるわよ。急いで!!」

とら「あの金色野郎……!!」

桜「と、とらさん……」

とら「チッ、行くぜ。捕まってろ」


??「色褪せた再会など我には似合わん。今日は雑種と戯れて終わりにするか」

??「いずれ逢うぞセイバー。それまでに覚悟を決めておけ」


セイバー「…………」

凛「蒼月くん!! セイバー!!」

セイバー「はい、今行きます」

うしお「あ、あぁ」

334 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/10(水) 23:30:36.14 ID:hOwTvVaQ0


??「どこまで耐えれるか試してみるのも一興か」

??「雑種、我が戯れに付き合ってやるのだ。少しは愉しませてみろ」


葛木「…………」

キャスター「私がこんなことをしてるのが可笑しいですか、マスター」

葛木「いや、そうでもない」

キャスター「えっ……」

葛木「お前は『こうする側』だと思っていた」

キャスター「マスター……」


ゴゴゴゴゴゴ


??「神殿の崩壊が本格的に始まったか。戯れも終わりだな」


キャスター「マスター、転移の魔術の準備が出来ました」

葛木「うむ」

335 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/10(水) 23:37:53.49 ID:hOwTvVaQ0


キャスター「それでは……」


??「フン」


キャスター「っ!?」

キャスター(大量の武器を飛ばすのを止めて、一本の剣を……)

キャスター(私の結界を破れないと知って苦し紛れに……?)

キャスター「いえ、そんなはずはない。それでも、どんな剣でも私の結界は破れない……!!」


キャスター「……!!」


キャスター(何もないかのように貫通して……そんな宝具知らな……)


キャスター「ぐっ、はっ…………」

葛木「キャスター!!」


??「やはり雑種では愉しめんな。終わりにするか」

336 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/10(水) 23:47:49.14 ID:hOwTvVaQ0


キャスター(だ、駄目。今の私には結界は張れない……!!)

キャスター「マスター逃げてください……!!」

葛木「それは出来ない相談だな」


??「ほう、拳で打ち落としたか」


キャスター「どうして……」

葛木「お前は私のサーヴァントだ。お前を置いて行くことなど出来ない」

キャスター「そ、宗一郎様……」


??「サーヴァントの次はマスターが道化になるか。ならば次も耐えてみせろよ?」


葛木「くっ……がっ……」

キャスター「マスター!!」

葛木「キャスター、蒼月が言っていたな。私たちは強いと」

キャスター「それは……」

葛木「人は誰かのために強くなれる。ようやく気がついた」

葛木「私は、誰かのためになりたかったのだ」


??「終わりだ」


キャスター「マスター!!!!」

337 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/11(木) 00:11:37.15 ID:TbDAlxEa0


「おおおおおおおおおお!!!!」


カキィィン!!


キャスター「あ、あぁ……ど、どうして……」


葛木「あ、蒼月……!!」


うしお「…………」


??「ほう……」


葛木「何故だ蒼月、何故戻ってきた……」

うしお「前にさ、見たんだ葛木先生」

葛木「なに……」

うしお「麻子と真由子が図書委員の仕事してるときに、生徒会の兄ちゃんたちと手伝ってたろ?」

葛木「たった、それだけで……?」

うしお「忘れられねえよ。オレが廊下を走ってたときしかってくれたこともさ」

うしお「そうさ、忘れられるもんかよ。だから……!!」


??「嗤わせる。まさか『槍』も『獣』もなしに我とやるつもりか」

338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/11(木) 00:45:55.09 ID:D4CQ1UmwO
うしおは最高に格好いい主人公
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/11(木) 11:50:53.38 ID:6T5f1Dlio
乙ー
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/11(木) 14:58:28.57 ID:jT2bi3UfO
問題は我様に実際勝つのはむずかしい
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/11(木) 18:03:16.48 ID:045J2nFkO
我様なら獣の槍の起源とか持ってそうなんだよなぁ
342 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/13(土) 21:59:59.30 ID:7vaGHc090


ガラガラガラ!!

??「チッ、崩れ始めたか。時間切れだな」

??「まぁいい。興ざめな幕切れだが、ここは相応しい場所ではない」


うしお「行ってくれた、のか……?」

ドガッ!!

うしお「うおっ!? 危ねえ!!」

葛木「ここはもう、崩れるな」

うしお「葛木先生、立てるかい?」

葛木「ああ」

うしお「キャスターは……」

ガラガラ!!

キャスター「が、瓦礫が……!!」


凛「ガンドォ!!」

セイバー「はあああ!!」


うしお「遠坂先輩!! セイバー!!」

キャスター「貴方たちまで……」

343 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/13(土) 22:19:09.61 ID:7vaGHc090


キャスター「どうしてお嬢さんまで……」

凛「こんなの心の贅肉よ。でもね、止めても行っちゃうヤツがいるんだから仕方ないでしょ」

凛「それに、ここでアンタに死なれちゃ私が気持ちよく聖杯戦争に完璧に勝ったって言えないじゃない」

キャスター「……フフ、残念ね。もう少し賢かったなら教え子にしてあげてもよかったのだけれど」

凛「う、うるさいわねっ。そんなのこっちから願い下げよ!!」


キャスター「セイバー、貴方が聖杯戦争を理解してないとは思わなかったわ」

セイバー「勘違いするなキャスター。以前の私ならここでお前を確実に仕留めている」

セイバー(……そう、彼らに出会う以前の私なら……。やはり私は……)

ガラガラガラ!!

凛「っと、悠長に話してる時間はなさそうね」

キャスター「はぁ、はぁ……。私は、もういいわ。マスターは逃げてください」

うしお「キャスター、まさか……」

葛木「言ったはずだキャスター。お前は私のサーヴァントだと」

キャスター「マ、マスター!? お、下ろしてくださいっ」


凛「はぁ……。助けに来てお姫様抱っこ見せられるとは思ってなかったわ」

キャスター「う、うるさいわよ!!」

344 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/13(土) 22:26:11.71 ID:7vaGHc090


・柳洞寺山門


桜「姉さん……」

とら「おめえの姉ってやつは馬鹿だぜ」

桜「はい、知ってます」

とら「でもまぁ、先に飛び込んだクソうしおのほうが大馬鹿だけどな」

桜「それも知ってます。でも……」

桜「ふふっ」

とら「あ?」

桜「それは、とらさんのほうがもっとよく知ってますよね?」

とら「けっ……」

とら「さくら、とかいったかよ。わしはやつらと違って馬鹿じゃないのよ」

桜「は、はい」

とら「あーあ、でも仕方ねえよな。りんはわしのますたーだからよ」


とら「わしは行くしかねえのよォ!!」


桜「それも、この国の人たちならみんな知ってますよ。とらさん」

345 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/13(土) 22:59:05.72 ID:7vaGHc090


凛「もうすぐ出口よ!! 急いで!!」


ガラガラガラ!!


うしお「出口が瓦礫で塞がって……」

セイバー「くっ……」


ドガーン!!


とら「おめえらなにをやっとる!! さっさと走れェ!!」


セイバー「トラ!!」

うしお「うおおおおおお!!!!」

346 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/13(土) 23:12:09.45 ID:7vaGHc090


凛「はぁはぁ……。間一髪ってやつね……」

うしお「なんとか、脱出できたんだよな……」


キャスター「マスター、もう大丈夫です。下ろして、ください……」

葛木「ああ」

キャスター「ハァ……ハァ……」

サァァァ

葛木「これは……。どういうことだ、説明しろキャスター」

キャスター「どうやら、私はここまでのようです。マスター」


セイバー「キャスター……」

うしお「遠坂先輩、なにか方法は!?」

凛「すでにキャスターの身体は消えかかってる。今から葛木先生がなにをやっても手遅れよ」

うしお「そんな……」

347 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/13(土) 23:57:06.99 ID:7vaGHc090


キャスター「でも、良かった……。貴方の望みが叶って……」

葛木「キャスター……」

キャスター「私は、駄目ね……。分かっていたのに、私のやり方では……ぐっ……」

キャスター「願望機などでは、貴方の望みは叶わないって……。それでも、ねぇ……」

葛木「…………」

キャスター「眩しい、わね……」

うしお「えっ……?」

キャスター「フフ……。姉妹の絆も、坊やの輝きも、私には眩しすぎるわ……」

キャスター「目を背けたくなるほどよ……」

凛「キャスター……アンタ……」


葛木「キャスター、お前の望みを言え。例えお前が消えたとしても、私が代わりに果たす」

キャスター「いいえ、それは必要ありません。だって、私の望みも……」


キャスター「先ほど叶いましたから」

348 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/14(日) 00:03:54.76 ID:rC6jqDiD0


『初めて会ったときも、雨、でしたね』


『…………』


『待って』


『なんだ』


『傘は?』


『必要か?』


『……いいえ。でも、肩に小鳥がとまりたがっていますから』


『そうか。そうだな』

349 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/14(日) 00:17:12.93 ID:rC6jqDiD0


ポタ、ポタタ


凛「雨、か……」

うしお「葛木、先生……」


葛木「…………」


葛木「遠坂」

凛「えっ」

葛木「私はキャスターを失った」

葛木「私は聖杯戦争に詳しくはない。この後どうすればいいか教えてくれ」

凛「あ、は、はい」

うしお「葛木先生……」

葛木「安心しろ蒼月。私はもう聖杯戦争に関わるつもりはない」

うしお「あぁ、分かってるよ」

葛木「そうか」


葛木「……雨が、強くなってきたな」

350 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/05/14(日) 00:20:03.04 ID:rC6jqDiD0


セイバー「トラ。キャスターのマスター。あの男との決着はいいのですか?」

とら「わしは無粋な真似はせんのよ」

セイバー「フッ、アサシンの真似ですか」

とら「へっ……」


とら「それより剣使い、あの金色の野郎はなんなんでえ?」

セイバー「それは……」

351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/14(日) 02:42:58.46 ID:t7EBSKoLO

泣かせるぜ
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/16(火) 01:30:19.78 ID:2SgaeWC3O
我様は白面と戦ってみたのだろうか
ティアマト並みの化け物だと思うんだが
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/26(金) 02:36:40.04 ID:PV99Voslo
乙ー
354 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/06(火) 22:29:10.37 ID:2rXJrzBr0


・間桐邸地下蟲蔵


杜綱「これで終わりだ。柳月派不動縛呪!!」

臓硯「ぐぐ……。光覇明宗がァ……」

杜綱「この縛呪を断ち切ることはお前には出来ない。観念してもらおうか、マキリ」

臓硯「ククク、観念か。それより今更わしに光覇明宗が何用じゃ?」

杜綱「今回の聖杯戦争、いや、前回の聖杯戦争でもお前が暗躍していたことを光覇明宗は掴んでいる」

臓硯「ほう。さすがはこの国の中枢組織、褒めてやろうか」

杜綱「そして紫暮様はこの土地で見張っていたのだ。本物のお前が動き出すときを」

臓硯「前回の聖杯戦争のときから、やはりあの男……」

臓硯(キャスターから逃れるために本体を動かしたのを感づかれたか……。だが、すでに本体は……)

杜綱「妖に成り果ててまで叶えようとしたお前の野望もここまでだ」

杜綱「悪行を繰り返す妖を光覇明宗は決して見逃さない」

臓硯「そうか……。だが、ここはわしの蟲蔵よ……」

臓硯「貴様一人で、何が出来るかの……!!」

カサカサカサ

??「土剋水!!」

355 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/06(火) 22:41:14.85 ID:2rXJrzBr0


臓硯「誰じゃ!?」

日輪「お前こそ、元獣の槍伝承候補者をなめないでもらいたいな」

臓硯「ぐっ……二人おったか……」

日輪「油断するな杜綱。縛呪で縛られていても蟲を操ることは出来るみたいよ」

杜綱「あぁ、紫暮様が監視をしていた相手だ。何かあるはず……」

日輪「しかし……。早くしろ杜綱、さすがの私でもこの場所は不快だ」

杜綱「確かに。純を連れて来なくてよかったよ」

臓硯「クク……」

杜綱「これで本当に終わりだ。式神、ヒルコ!!」

臓硯「がっ……はっ……」

臓硯「…………」

臓硯「……」

356 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/06(火) 22:47:47.51 ID:2rXJrzBr0


日輪「終わったね」

杜綱「そうだな……」

日輪「どうしたの杜綱。何か変よ?」

杜綱「いや、紫暮様が危惧していた相手にしては……」

日輪「それより報告よ。杜綱はまた教会の監視に戻るんでしょ?」


??(……教会の監視……? なぜ、光覇明宗が教会を……)


杜綱「それなんだが日輪、報告と監視を代わってはくれないか?」

日輪「私は別に構わないが……。何かあるのか?」

杜綱「紫暮様は間桐慎二が入院している病院にいるだろうからね」

日輪「そういうことか。分かった、教会の監視は私が引き継ごう」

杜綱「すまない日輪」

日輪「お前も相変わらずね杜綱」

杜綱「あぁ、いつも純に過保護すぎると怒られてるよ」

杜綱「それでも兄妹の問題は見過ごせな……っ!?」

臓硯「…………」

日輪「杜綱?」

杜綱「いや、なんでもない。気のせい、か……」

357 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/06(火) 22:55:56.40 ID:2rXJrzBr0


・潮の部屋


うしお「遠坂先輩、あれから葛木先生はどうしたんだい?」

凛「すぐに入院よ。立っているのが不思議なぐらいだったんだから」

うしお「そうか……。そうだよな、キャスターの盾になったんだから」

凛「ええ、でも葛木先生は大丈夫よ。命に別状はないわ」

うしお「それならよかったぜ」

凛「それより蒼月くん、今の私たちにはもっと気にしないといけないことがあるわよ」

358 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/06(火) 23:05:06.39 ID:2rXJrzBr0


うしお「それじゃ、あの金色のヤツは前回の聖杯戦争から!?」

凛「それ以外に考えられないのよ」

凛「私はアーチャーの枠を使ってとらを特殊に召喚した。これは色々偶然が重なった結果ね」

凛「例外は確かにある。それでも聖杯戦争で呼び出せるサーヴァントは七騎だけ、これは変えられないはずよ」

凛「そうでしょセイバー?」

セイバー「そうですね。それが聖杯戦争の基本ルールのはずです」

とら「八人目の野郎がいるなら、そいつァ前回の勝者しかいねえってことかよ」

うしお「セイバーはアイツと知り合い、なんだよな……?」

セイバー「知り合い、いえ、そういうワケでは……」

凛「アイツの正体だけでも分からないの?」

セイバー「前回の聖杯戦争でも、私は正体が分かりませんでした」

凛「昨日の夜、山ほど宝具を使ってたのよ。正体を探るなんてこと」

セイバー「その山ほど飛ばしてきた宝具、どれか一つでも見覚えがありましたか?」

凛「えっ、まさかそんなこと……」

うしお「とらはなんか見覚えねえのか?」

とら「けっ、わしが人間の武器なんか覚えとるわきゃねーだろ」

とら「あのクソ忌々しい槍以外はなァ!!」

うしお「言うと思ったぜ……」

359 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/06(火) 23:15:32.15 ID:2rXJrzBr0


セイバー「英雄の証である宝具を、あの男は湯水のように持っているのです」

セイバー「そしてなにより私が不思議に思っているのは……」

うしお「もしかしてセイバーの剣も……?」

セイバー「ウシオ、気づいていましたか」

とら「チッ、わしの見間違いじゃねえようだな」

凛「ちょ、ちょっとなによ、なんの話?」

うしお「あの宝具のなかに『獣の槍』があったんだ」

凛「ど、どういうこと!?」

うしお「オレにも分からねえんだ」

とら「あれは獣の槍じゃねえよ。確かに似てはいたが剣にも見えたしな」

凛「まさか獣の槍が二本あったってこと?」

うしお「いや、それはないと思う」

うしお「前に妖怪たちが獣の槍を作ろうとしたことがあるんだけど、それはオレが止めたよ」

うしお「それに獣の槍は、作ろうと思って作れるものじゃねえんだ」

とら「そういうことよ。あんなもんがそう簡単に何本もあってたまるかよ」

凛「蒼月くんたちがそう言うならそうなんでしょうけど……」

セイバー「獣の槍を持った英雄が他にもいたというのは?」

うしお「獣の槍を使い続けた人間は、字伏っていう妖怪になるんだ。だからそれも違うと思う」

360 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/06(火) 23:24:04.96 ID:2rXJrzBr0


うしお「セイバーの剣もあの宝具の中にあったのかい?」

セイバー「はい、厳密には私の剣とは違う形状でしたが、あれはどう見ても……」

凛「獣の槍やセイバーの剣を持った英雄……? 何よそれ反則じゃない……」

とら「あの野郎が誰だろうと関係ねえよ。次に会ったときはブッ倒す、それだけよォ」

うしお「そうは言ってもよ、とら。アイツの正体だけでも知ってないと困るだろ?」

とら「けっ、わしは必要ねえな」

うしお「ったくよ。なぁセイバー、セイバーは前回の聖杯戦争も参加したんだろ?」

セイバー「はい、そうですね」

うしお「そのときのことを話してくれないか?」

セイバー「前回の……」

うしお「もしかしたらアイツの正体が分かるヒントがあるかもしれねえしよ」

セイバー「……これはいい機会なのかもしれません」

うしお「セイバー……?」

セイバー「いつかは話すつもりでした。ウシオ、貴方は聖杯戦争と全くの無関係ではないのですから」

うしお「えっ……」

セイバー「私の前回のマスターには一人の協力者がいました。それはウシオ、貴方の」


ダッダッダッ、バタンッ


麻子「う、うしお!! 桜先輩がっっ!!」

361 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/06(火) 23:34:42.40 ID:2rXJrzBr0


【第二十話 遠い約束の夜へ 】

362 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/06(火) 23:51:00.50 ID:2rXJrzBr0


・蒼月家居間


真由子「桜先輩っ!!」

桜「…………」ガクガク


キリオ「真由子姉ちゃん放れて!!」

イリヤ「キリオ、サクラを縛るわよ」

キリオ「分かった!!」


凛「桜……!!」

うしお「桜姉ちゃん!!」


桜「…………」グググ


うしお「これは、どうなってんだ!?」

麻子「急に桜先輩の様子がおかしくなって、暴れだしたのよ……」

凛「なんで、桜……」

イリヤ「今は私の魔術とキリオの法力で抑えてるわ」

キリオ「この力、このお姉ちゃんの力じゃない……?」

363 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/07(水) 00:07:51.22 ID:jDv4vkxI0


セイバー「まさかキャスターの洗脳がまだ?」

凛「キャスターはもういない、それはないわ」


桜「…………」グググ

パキィン!!


キリオ「そ、そんな……」

イリヤ「へぇ、やるわねサクラ。今のを破るんだ」

うしお「桜姉ちゃんっ!!」


桜『……手間取らせる。ここまで抵抗したのは蟲蔵に初めて入れたとき以来かの』


凛「さ、桜……?」


桜『ほう、なるほど。昔を思い出す出来事でもあったか』

凛「その声、でも、なんで……」

うしお「これは、いったい……」

桜『クックッ、やっと大人しくなりおったわ。こやつらの前では醜態を晒したくないか』

364 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/07(水) 00:24:07.12 ID:jDv4vkxI0


桜『この小娘は返してやる。お前たちもそこで大人しくしておるんじゃな』

フラッ

凛「桜……!!」

麻子「桜先輩!!」


セイバー「今のは、どういうことなのですか……」


とら「……ちっ、わしとしたことが今まで気付かんかったかよ」

うしお「とら!? どういうことだ!?」

とら「その女の身体のなかに『変化』がとり憑いてやがるのよ」

うしお「変化って……。石喰いのときのヤツかっ!!」

とら「ほーう、本当にちったぁお前もモノを覚えるようになったか!!」

うしお「なにをーー!!」

うしお「……とら。今、身体のなかって言ったよな」

とら「あぁ? それがどうし」

ダッダッダッ

とら「おいっ!! うしお!!」

365 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/07(水) 00:36:23.41 ID:jDv4vkxI0


・蒼月家洗面所


うしお「おんじ!! 雲外鏡のおんじ!!」

うしお「日本中の鏡はおんじに通じてる。そうだよな、おんじ!!」

とら「なーんだ、じじいになに聞くんだよ」


セラ「あれはウシオ様……?」

リズ「鏡に向かって、話しかけてる」

セラ「み、見なかったことにしましょう」

リズ「やっぱり、この間のアレが不味かったのかも」

セラ「え?」


リズ『練習でも、手加減、しない』

うしお『こっちだってさ!!』

リズ『行くよ。あっ』コケッ

うしお『リズさん!? えっ』ゴチーン


リズ「ハルバード、脳天直撃」

セラ「あなたはなにをしてるのですか……」

366 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/07(水) 00:42:23.75 ID:jDv4vkxI0


うしお「駄目か……。あっ」

うしお「セラさんリズさん、いいところに!!」

リズ「見つかった」

セラ「な、なんでしょうウシオ様」

うしお「雲外鏡のおんじを呼んでるんだけど反応がなくてよ」

うしお「一人で呼ぶより三人で呼ぶほうがおんじも聞こえると思うんだ」

うしお「二人とも手伝ってくれよ!!」

セラ「え、あ、わ、分かりました……」

リズ「ウシオ、やっぱり打ち所が悪くて……」

うしお「なんの話だい? とにかく行くぜ!!」


うしお「雲外鏡のおんじ!!」

リズ「おんじー」

セラ「お、おんじー」


??「……この声は聞いたことがあるのとないのがあるぞ」

??「だーれじゃ、わしを呼ぶのは」

367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 06:48:57.15 ID:6iGykWpGo
続き来てたか乙
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 21:18:47.71 ID:BM/xfZwQO

水面下で活躍する面子も良い感じ
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 21:36:45.45 ID:qpPMCm4Bo
あー、いまから体内でたたかうのかね
370 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 17:56:15.78 ID:q9dcR5S+0


うしお「雲外鏡のおんじ!!」

おんじ「なんじゃ蒼月潮か。久しぶりじゃの」

リズ「鏡の、中に」

セラ「こ、この方が、おんじ様ですか?」

おんじ「お〜、こりゃべっぴんさんが二人も。なんじゃ紹介してくれるのか?」

うしお「おんじ!! 頼みがあるんだ!!」

おんじ「頼みィ? おい蒼月潮、人間の頼みごと一つでわしを呼んだのかァ?」

おんじ「あのな、白面のときは手を取り合ったが本来、妖怪と人間っていうのはだな」

うしお「それは分かってるっておんじ!! 急ぎなんだ!!」

セラ「おんじ様、ウシオ様の頼みごとを聞いてはもらえないでしょうか」

おんじ「うっ……」

リズ「おんじ、お願い」

おんじ「わ、わしは色んな鏡からべっぴんさん見とるから、む、無駄じゃぞ」

リズ「そんな」

セラ「おんじ様……」

??「おい、それなら誰が頼めば聞いてくれるんだよ?」

おんじ「えっ……」

とら「よう、じじい」

371 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 18:04:07.43 ID:q9dcR5S+0


おんじ「げぇぇ〜〜!? 長飛丸ぅぅ〜〜!?」パリンッ

とら「けけっ」

おんじ「ど、どうなっとるんじゃ……。妖が復活するには、そりゃ長い時間がかかって」

うしお「それはまた今度説明するからさ!!」

うしお「おんじ、イズナだ!! イズナを呼んでくれ!!」

とら「イズナ? そういうことかよ」

おんじ「イズナだァ? あのな蒼月潮、妖怪と人間は」

とら「じじい、話が進まねーだろ。とっととイズナ呼んで来いよ」

バチバチ、ビリビリ

おんじ「は、はい〜〜〜〜!!!!」


リズ「トラ、頼もしい」

セラ「よ、よかったのですか、トラ様」

とら「いいんだよ。この手に限るぜ」

うしお「いいのかなァ……」

372 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 18:32:16.16 ID:q9dcR5S+0


イズナ「うしおーーっ!!」

うしお「イズナっ!! 元気だったか!?」

イズナ「バッカ、妖怪に元気もなにもないって言ったろォ!!」

セラ「本当に鏡の中から出て……。魔術ではないのですよね……」

リズ「かわいい」

イズナ「ん? こりゃまた綺麗どころが増えてるなァうしお」

イズナ「北海道まで駆けつけてくれた五人じゃ飽き足らず、また二人も増やしたのかい」

うしお「な、なんの話だ?」

とら「けっ」

イズナ「よォ、長飛丸〜〜!!」

とら「お前はあんまり驚かんのだな」

イズナ「どうせ長飛丸のことだからな!!」

イズナ「いつかはうしおのところに戻って来ると思ってたのよォ!!」

ゴォォォォ

イズナ「きゃーー!! これこれ久しぶり!! きっくーーっ!!」

リズ「いいノリしてる」

うしお「イズナは相変わらずみたいだなァ」

セラ「だ、大丈夫なのですか?」

イズナ「綺麗な姉ちゃん、妖怪にはこんなもん挨拶みたいなもんよォ」


イズナ「ふー、さてと挨拶も済んだってことで……。聞かせてもらおうかい」

イズナ「七十五匹の眷族をもつ人間体内のエキスパート……」

イズナ「この『イズナ』様を呼んだ理由を」

373 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 19:05:00.59 ID:q9dcR5S+0


イリヤ「上手いことやってるわね。キリオのほうはどう、こっちが専門でしょ?」

キリオ「駄目だ、完全に妖にとり憑かれてる。法力で無理やり倒すとこのお姉ちゃんが危険だよ」

凛「そんな……」

真由子「桜先輩……」


イズナ「なーるほどねぇ。大体の事情は分かったぜい」

麻子「イズナくん!?」

イズナ「よォ姉ちゃんたち、久しぶり!!」

セイバー「ウシオ、こ、この者は……?」

うしお「イズナさ。前に世話になった妖怪なんだ。詳しい話は今度するよ」

セイバー「分かりました……。そのときにはその、触ってもいいですか?」

うしお「えっ?」

セイバー「い、いえ、なんでもありません」


イズナ「こんなことは長の頼みでもない限りやらないんだが、うしおの頼みじゃ断れねえや」

イズナ「でもよォうしお、杜綱んときは獣の槍があったから体内に入れたんだぜい?」

イズナ「この姉ちゃんを助けたいのは分かるけど、人間のうしおを体内に連れてくことは出来ねえや」

うしお「いや、獣の槍はあるんだ。イズナ」

イズナ「け、けけ、獣の槍がある!?」

374 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 19:19:01.09 ID:q9dcR5S+0


うしお「とら、頼む」

とら「待ちなうしお。おめえ分かっとんのか?」

とら「わしの宝具『獣の槍』には制限時間がある」

とら「この女の体内に入ることに力を使えばいつもの二倍、いや三倍の早さよ」

とら「本物の獣の槍のように妖になるワケじゃねえ、魔力がなくなり次第おめえはただの人間になる」

とら「そうなりゃイズナの力があったって、おめえは死ぬだけよ」

うしお「杜綱さんのときと同じ、いや、それよりもか……」

うしお「それでもよ、とら、オレは行きてえんだ」

うしお「桜姉ちゃんに何がとり憑いてるかは知らねえさ」

うしお「でもよ、もし婢妖みてえのがとり憑いてて苦しんでるなら助けてやりてえよ」

とら「てめえが死ぬかもしれねえ、それでもかよ?」

うしお「これからだったんだぜ。桜姉ちゃん、遠坂先輩を姉さんって呼んでた。もっと呼んでもらいてえよ」

凛「蒼月くん……」

とら「けっ、まぁ分かっとったがな」

とら「だが決めるのはわしじゃねえ。りんだ」

凛「私……?」

375 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 19:35:39.44 ID:q9dcR5S+0


とら「宝具は大量の魔力を消費する」

とら「連戦で魔力が低下してるおめえじゃ獣の槍を維持出来るか分からねえぞ、りん」

凛「…………」

凛「まだ、よく理解出来てないけど……」

凛「宝具『獣の槍』を使えば桜を救えるっていうなら……。やって、とら」

とら「やれるのかよ?」

凛「私の魔力が完全になくなったとしても、維持してみせるわ」

とら「……おめえがそこまで言うとはな」

凛「だってここでおりたら、それこそ本当に姉なんて名乗れないわよ?」


キィィィィン

パシィッ


うしお「とら!!」


とら「わしは行かんぞ。人間の体内なんて二度と行かんと決めとるからな」


うしお「へっ、ありがとよ!!」

凛「これだけで十分よ、とら!!」

376 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 20:39:13.24 ID:q9dcR5S+0


イズナ「うしお……。それ、本当に獣の槍なのかよ!?」

うしお「すまねえイズナ、説明してる時間はねえんだ。頼む、やってくれ」

イズナ「よ、よし、分かったぜい」


うしお「キリオ、イリヤ、何が起こるか分からねえ。桜姉ちゃんを抑えといてくれ」

キリオ「うん、分かったよ」

イリヤ「こっちは任せなさい、ウシオ」

うしお「セイバーもキリオたちを手伝ってやってほしいんだ」

セイバー「分かりました。サクラを助けに行くのですね?」

うしお「あぁ」

セイバー「止めるつもりはありません。ウシオ、ご武運を」


真由子「うしおくん、桜先輩を助けてあげて」

うしお「真由子、もちろんさ」

麻子「えいっ」

うしお「な、なんだよ麻子?」

麻子「私たちはまだ遠坂先輩がお姉さんだとかの話を聞いてないわよ?」

うしお「し、しかたねーだろ。そんな時間なかったんだ」

麻子「だから、絶対無事に戻ってきて説明しなさいよね、うしお」

うしお「……あぁ、分かったぜ」

377 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 20:48:25.78 ID:q9dcR5S+0


うしお「それじゃ、行ってくる」

凛「待って!!」

うしお「遠坂先輩……?」

凛「私も連れて行って」


とら「はぁ〜〜〜〜!?」


凛「私も行くわ」

とら「馬鹿言うんじゃねえ!! りん、おめえはここで宝具の維持に専念すんだよ!!」

凛「その宝具の維持だって蒼月くんの状況が分からないと出来ないわよ」

とら「馬鹿より馬鹿がいやがったかよ……。おいうしお!! こいつを止めな!!」

凛「蒼月くん。あの声、いえ、桜にとり憑いてるヤツに心当たりがあるの」


凛「きっとこの戦いは……『遠坂』の私が行かなきゃならない使命なのよ」


うしお「……よし、行こう!!」

378 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 21:01:22.22 ID:q9dcR5S+0


イズナ「長飛丸は来ねえのかー?」

とら「うるせえーーっ!! そんな馬鹿どもに付き合いきれるか!!」


凛「とら……」

とら「りん、おめえ死ぬかもしれねえんだぞ!? 聖杯戦争はどうすんだよ!?」

凛「それでも行くわ。もう決めたのよ」

とら「わしは行かんぞ!!」

とら「わしを連れてきたきゃ令呪でも使うんだなァ!! 令呪でもよォ!!」

凛「使えないわよ、令呪なんて。だってこの戦いは聖杯戦争とは違う私の戦いだもの」


とら(こんのォ馬鹿がァ〜〜。てめえの呼び名で令呪を使ったヤツが言うことか〜〜!!)


凛「……ごめん、とら」


とら「あ?」


凛「聖杯戦争に勝ち残るって約束、私のほうから破りそうだわ」


とら「…………」

379 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 21:17:21.23 ID:q9dcR5S+0


うしお「遠坂先輩、オレと一緒に槍を握るんだ」

凛「えぇ、分かったわ」

イズナ「ククッ」

うしお「なんだイズナもか。ははっ」

凛「蒼月くん?」

うしお「あぁごめんよ。前にも同じことがあったからおかしくてよ」

とら「……おいうしお、なに笑ってやがるんだよ」

うしお「別になんでもないさ、とら」


とら(その期待した目〜〜!! ムカつく!! てっぺんきた!!)


イズナ「それじゃ、行くぜーーっ!!」


とら「くそったれい!!!!」


凛「とらっ!?」

うしお「とらァ!!」


とら「勘違いすんじゃねーぞ!! うしお!! りん!!」

とら「りんはわしのますたーなのよ!! だからしかたねーの!!」

とら「それに獣の槍はわしの宝具!! どんな使い方されるか見とかんとなァ!!」


凛「フフ、なるほどね。そういうことか」

380 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/10(土) 21:22:06.59 ID:q9dcR5S+0


うしお「へっ……。よし……」




うしお「行っくぞーっ!! とらーーっ!!」


とら「うるっせーんだよ!! うしおーーっ!!」






おんじ「なんじゃなんじゃ、こりゃどうなっとるんじゃ……」



381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 23:40:51.79 ID:XQLk8Shdo
そのセリフは涙腺にくるモノがあるな…
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 01:14:44.70 ID:BWmtl9bsO
イズナ登場嬉しい
毎回上手くリンクさせるなぁと感心する
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/11(日) 13:32:57.14 ID:nF3029Tzo
乙ー
384 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:03:35.58 ID:12y1CqG30


セイバー「ウシオ……」

麻子「大丈夫ですよ。セイバーさん」

セイバー「アサコ、ですが……」

麻子「あいつは絶対戻ってきます。私たちのところへ」

セイバー「信じているのですね、ウシオを」

麻子「アホでバカだから遅刻することもありますけどねっ」

セイバー「分かりました。信じましょう、私も」

385 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:09:13.72 ID:12y1CqG30


・桜の体内


イズナ「なーんだ。長飛丸、やっぱり来たのかァ」

とら「おいイズナ!! おめえも勘違いしとるようだな!!」

イズナ「もう分かってるってー。うしおとその姉ちゃんの為じゃないんだろォー?」

とら「イズナァァァァ!!!!」

イズナ「ひゃーーっ!! って長飛丸、どうやらあちらさんから来てくれたみたいだぜい」


蟲「……!!」

カサカサカサ、カサカサカサ


イズナ「こりゃまた卑猥な形をした妖だなァ」

とら「数も大きさも婢妖と似てやがるがよ、気味がわりいな」

386 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:16:56.75 ID:12y1CqG30


凛「こんなのが桜の身体の中に……」

うしお「遠坂先輩、大丈夫かい?」

凛「なんとかね」

うしお「そうか、よかった」

凛「これが獣の槍なのよね。まさか自分で握ることがあるなんて思ってなかったけど」

うしお「でも遠坂先輩の髪は変わってないけど、なにかあるのかな?」

とら「わしが選んだ宝具の使用者がおめえだからだよ」

うしお「使用者?」

とら「槍の力は今うしおとりんに分散されてるが、使用者って括りならうしおだからな」

凛「なるほどね、そういうことか」

とら「その槍の力も、おめえら二人分が体内に入ることに使ってんだ。分かってんのか、りん」

凛「そうね、時間がないわ。蒼月くん。私のことはいい、派手にやって」


うしお「遠坂先輩……。よーし、分かった!!」


イズナ「あーあ、姉ちゃん。コイツらにそんなこと言っていいのかい?」

凛「えっと、イズナ、くん? どういう意味?」

イズナ「イズナでいいぜい姉ちゃん。まぁ見てなって」

387 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:34:40.04 ID:12y1CqG30


蟲「……!!」

カサカサカサ、カサカサカサ


うしお「数が多いな……」

うしお「とら、来いっ!! こんなときは分かってるよなァ!!」


とら「わしに命令するんじゃねえクソうしお!!」

とら「だが……。へっ、あの方法かよ!!」


凛「ちょ、ちょっと待ってよ。派手にって言ったけど少しは手加減……」

イズナ「もう聞いちゃいねえや」


うしお「うおおおお!!!! 蹴散らせええええ!!!!」

とら「はーっはっはっはっはっ!!!!」


凛「言うんじゃ……なかったわ……」

388 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:41:52.98 ID:12y1CqG30


蟲「…………」カサカサカサ


うしお「なんだ、逃げていく……?」

とら「臭うぜ。こいつらの親玉はこの先よォ」

うしお「イズナ、この奥はどこなんだ?」

イズナ「人間で言うところの心臓って部分だな」

凛「桜の、心臓に……」


イズナ「道を抜けるぜぇ。この先はいっきに広くなるんだ、気をつけてくれよ!!」


うしお「なっ……。あ、あれは……!?」

凛「心臓に何かが張りついてる!?」

うしお「なんて大きさなんだ、こんなのが桜姉ちゃんの心臓に……」


とら「タコが、間違えるんじゃねえ。今のわしらは小さくなってんだ」

とら「あんなのは外から見たらおめえらの親指大ほどしかねーよ」


うしお「そ、そうか……。とにかくアイツを心臓から切りはなさねえと!!」ダッ

イズナ「うしお駄目だーーっ!!」

凛「な、なに!?」

389 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/29(木) 23:52:31.13 ID:12y1CqG30


うしお「イズナ? どうしたんだ?」

イズナ「あぁそうか、そういうことか。長飛丸が気づかねえのも無理はねえや」

とら「おいイズナ!! なんなんだよ、あんな変化一匹わしの雷で」

イズナ「そいつは出来ねえぜ長飛丸」

イズナ「この妖は、この姉ちゃんにとり憑いてるんじゃねえや」

イズナ「姉ちゃんの心臓に、直接とり憑いてやがるのさ!!!!」


とら「な、なにィ〜〜〜〜!?」


イズナ「長飛丸の雷なんて当てたらどうなるか、人間の心臓は妖と違ってデリケイトなんだぜ?」

とら「で、でり……?」

凛「それじゃ……」

うしお「あの変化は、倒せない……!?」


??「だから言ったじゃろう。大人しくしておれと」


凛「こ、この声……!!」


??「貴様らには、何も出来ないのだからの」


凛「やっぱりアンタは……。間桐、臓硯……!!!!」


臓硯「カカッ……」

390 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 00:12:21.71 ID:Ifrpe99S0


うしお「まとう、ぞうけん……。間桐ってことは間桐先輩や桜姉ちゃんの!?」

凛「ええ、そうよ。あの慎二の祖父、間桐家の実質的当主よ」


臓硯「遠坂の小娘がここまで来るとはの」


凛「話してもらえるんでしょうね、間桐臓硯」

凛「これはどういうことなのか。なんでアンタが桜の心臓にとり憑いてるのかを!!」


臓硯「うむ、いいじゃろう。ここまで来た褒美にわしの望みを聞かせてやろうか」

391 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 00:15:27.46 ID:Ifrpe99S0


桜「…………」


真由子「桜先輩の震えが止まった……」

麻子「終わった、ってこと……?」


イリヤ「いいえ、サクラが起きる気配がないわ」

キリオ「妖の力もまだ感じるよ」


セイバー「むしろ、これから、ということですか」

麻子「これから……」

真由子「うしおくん……」

392 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 00:26:15.56 ID:Ifrpe99S0


うしお「それじゃ、桜姉ちゃんは子供の頃からお前に……!?」

凛「……っ……」


臓硯「カカッ、貴様らにも聞かせたかったよのう」

臓硯「蟲蔵に放り込んで初めの三日は、そりゃもう散々な泣き叫びようじゃったからの」


うしお「こォの、ヤロォ……!!」


臓硯「見せたかったよの遠坂の小娘。四日目からは声すら上げなくなったこの小娘の姿をォ」


凛「…………」


凛「……蒼月くん。この槍、貸してもらうわね」

うしお「えっ、遠坂先輩……!?」


凛「アイツはここで……。私が殺す……!!!!」


臓硯「いいぞォ遠坂の小娘。いい貌じゃ」


凛(……憎い、憎い、アンタが憎い……!!!!)

うしお「獣の槍を通して、遠坂先輩の感情が流れ込んでくる……!?」

393 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 00:48:05.97 ID:Ifrpe99S0


イズナ「姉ちゃんどうしちまったんだ、いきなり仕掛けるなんてよ!!」

とら「ちっ、宝具は宝具でもあれは獣の槍かよ……。槍自身が使用者を選びやがった……」

イズナ「あの心臓に攻撃しちゃ駄目だぜ!! この姉ちゃんが危ねえよ!!」

とら「おいうしお!! りんを止めなァ!!」


凛(……憎い……憎い……!!)


うしお「ダメだ遠坂先輩っ!!」

凛「なんで止めるのよ蒼月くん!?」

うしお「それじゃダメなんだよ……」

凛「どうしてよ!? 蒼月くんは桜を助けたくないの!?」

うしお「助けたいさ。でも今の先輩のままじゃ桜姉ちゃんは助けられない」

凛「そんなことないわ。今すぐアイツを殺せばいいのよ……!!」

うしお「いいや。きっと、この槍は砕けちまうよ」


うしお「オレのときみたいにさ」


凛「……っ!?」


うしお「あいつが許せないのは俺も一緒さ。だからよ、一人でやろうとなんてしないでくれよ」


凛「……わ、私……なんで……」

394 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 01:02:00.61 ID:Ifrpe99S0


臓硯「……あの白面を倒した小僧か。不要なことをするわ」


うしお「間桐臓硯……。お前の思いどおりにはさせないさ!!」


イズナ「人間ってのはちょっと見ない間にあんなに変わるもんかねぇ。妖とは大違いだぜい」

とら「へっ、コーコーセーとかいうのになってマシになったかよ。だがまぁ、悪かねえぜ」


臓硯「せっかく良い貌をしておったのにのォ、遠坂の小娘」

臓硯「貴様らには分からんか、長年生きとると色々と飽いてくるものよ。なのだが……」

臓硯「飽きんよなァ、あの人間の憎悪を貌だけは……ククク……」


とら「けけっ、けけけ!!」

イズナ「へへっ、おいおい長飛丸。あんまり笑ってやるとカワイソウだぜい?」

とら「悪い悪い。ここに来る前のうしおじゃねえが笑うのを耐えられなかったぜ」


臓硯「同じく白面を倒した妖怪のサーヴァント……。何が、そんなに面白い?」


とら「いやァ、あんまりにも面白くてよォ」

とら「もっと聞かせてくれよ。たかが数百年しか生きてねえ変化の話をよ」

395 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 01:55:44.86 ID:Ifrpe99S0


臓硯「その口ぶり、生前は大層な妖怪じゃったろうが……」

臓硯「今の貴様は魔力で動く人形、ただのサーヴァントじゃ」

臓硯「ククク……。貴様を殺すのも」


蟲「!!!!」


うしお「巨大な蟲が四方から……!?」

凛「とらっ!!」


臓硯「簡単じゃ」


とら「で?」


ドゴッ!!


蟲「」


臓硯「なっ……」


とら「誰が、誰を、殺すってぇ?」

396 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/06/30(金) 01:59:15.06 ID:Ifrpe99S0


セイバー「始まったようですね」


桜「…………」ガタガタ


キリオ「結界を張るよ。お姉ちゃんたちは下がって」

真由子「私たちにも何か出来ることがあればいいんだけど……」


イリヤ「…………」

リズ「イリヤ、どうしたの」

イリヤ「ウシオたちが突入して、どれくらい経ったか分かる?」

セラ「三十分以上は経ったかと」


イリヤ「……不味いわね」


麻子「イリヤちゃん……?」

397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 02:58:04.52 ID:i/LPljmoO

格の違いを見せつけるとらマジかっけぇ
398 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/02(日) 02:34:56.13 ID:SbmFcXbs0


臓硯「行け、行け、蟲どもよ。奴らを嬲り殺しにしてくれるわ」


蟲「……!!」カサカサカサ

蟲「……!!」カサカサカサ


イズナ「おーおー、大勢お出ましだぜい!!」

とら「イズナ、東の妖たちはどうなっとる!? あんな若僧の変化にデカイ顔させとるのかよ!!」


イズナ「仕方ねえだろー? 長たちがこの国の礎になってから東もゴタゴタしてんだ」

イズナ「今の東の妖は、遠野妖群頭の一鬼が長を引き継いでなんとかなってるけどよ」


とら「一鬼が長だァ!? くっ、くくく、そいつァ見物だな」


イズナ「東は西と違って仲間意識があるっていっても、変化まで面倒見切れねえのさ」

イズナ「ああいう変化もいるってことだぜ。珍しくもねえや」


とら「あーあ、最近はあんな妖が増えてんのかねえ」


イズナ「妖だって色々いるんだぜい。長飛丸を知らない妖だって、ましてや変化なら当然いるって」

とら「けっ。まぁ、獣の槍に五百年はりつけにあってたからな。知名度低いのは認めるさ」

399 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/02(日) 02:42:31.95 ID:SbmFcXbs0


蟲「……!!」カサカサカサ


うしお「キリがねえ!! おいとらァ!!」

うしお「大口叩いといて何か方法あるんだろうなァ!?」


とら「クソうしおが!! そんなもんあったらとっくにやっとるわい!!」

とら「あんなカスに負ける気はしねえが……。ん……?」


凛「はぁ、はぁ……。なんとか、アイツを桜の心臓から離さないと……」

イズナ「姉ちゃん大丈夫かよ!?」

うしお「遠坂先輩っ!!」

とら「りん、おめえ魔力が限界を……」

凛「はぁはぁ……。私が槍を、暴走させたせいだわ……」

とら「ちげえよ。始めから無理だったろうがよ、二人分も体内に入る魔力なんてよ」

凛「それでも、ね……。一秒でも早く、桜を助けたいじゃない……」

凛「桜が、間桐に行って、姉らしいこと私、全然やれなかったからさ……」

とら「りん……」

うしお「遠坂先輩……」

400 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/02(日) 03:29:26.76 ID:SbmFcXbs0


とら「もういいイズナ。引き上げだ!! 脱出すんだよ!!」

イズナ「だ、脱出っていっても……。長飛丸、この状況じゃ……」


蟲「……!!」カサカサカサ

蟲「……!!」カサカサカサ


うしお「うおおおお!!」

凛「はぁ、はぁ……」


うしお「すまねえイズナ。オレが突破口を開くから道案内してくれねえか」

イズナ「うしお、姉ちゃんを抱えながらで戦えるのかよ!?」

うしお「大丈夫さ。でも、獣の槍が重くなり始めてる」

とら「宝具の時間切れかよ!? ちっ、魔力がねえなら当然か……」


臓硯「カカッ。あれだけ吠えておきながら尻尾を巻いて逃げるとはの、所詮はケモノか?」

臓硯「逃がしはせん。行け蟲ども、そのまま喰らい尽くすがいいわ」


蟲「!!!!」カサカサカサ

401 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/07/02(日) 03:42:03.69 ID:SbmFcXbs0


セイバー「ぐっ……」

麻子「セイバーさん!? どうしたんですか!?」

セイバー「おそらく、ウシオたちが危機に……」

真由子「えっ!?」

セイバー「私とウシオは、マスターとサーヴァントという契約の繋がりがあります」

麻子「繋がり……」

セイバー「ウシオは魔術師ではないので遠距離の会話は出来ませんが、繋がりは確かにあります」

キリオ「うしお兄ちゃんたちが危ないって、感じられるってこと?」

セイバー「そうですキリオ。正確な状況は分かりませんが危機的状況なのは確かです」

イリヤ「それはそうでしょうね」

セラ「お嬢さま……?」

イリヤ「今更ここにいる人間に、宝具『獣の槍』の説明なんていらないわよね」

イリヤ「あれほど規格外の強力な宝具よ。リンだけで宝具の発動、維持、本当に出来ると思う?」

リズ「まさか」

セイバー「サクラの体内で、宝具を消失……!?」

イリヤ「消えてはないわ。それならセイバーも分かるはずよ。でも、時間の問題ね」

麻子「そ、そんな……」

イリヤ「短時間で倒せる相手ならよかったけど、そんな甘い相手じゃなかったみたいね」

キリオ「いったい、どうしたら……」

イリヤ「ここは、私の出番かな」

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