魔法少女ダークストーカー 2スレ目

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1 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 01:02:12.92 ID:qA82S3wZo
魔法少女ダークストーカー
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414330789/
前スレが落ちてしまったので、2スレ目です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1466265732
2 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 01:04:19.51 ID:qA82S3wZo
大変長い間お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

PCが壊れたり、PCを買うために職探しして、またその職場に慣れるまでの間に色々あったりと…時間を作る事ができませんでしたが
生活環境も仕事の方も大分落ち着いて来たので、更新を再開させて頂きたいと思います。

前回の更新からかなりの期間が経ってしまいましたが、引き続き本作にお付き合い頂ければ幸いです。
3 : ◆TPk5R1h7Ng [sage]:2016/06/19(日) 01:16:54.48 ID:qA82S3wZo
●もりびと

俺「えっと、とりあえず……その虚獣ってのは、一体何なんだ?」


神風「スピリット同様に、この世界の仕組みとして存在する…世界の免疫機能のような物です」

俺「ザックリとした判り易い説明だが、何だってまたそんな奴が……いや、待てよ?まさか……」


虚獣…その余りにも唐突な出現と、神風による説明により明かされるその存在理由。俺はまず、何故そんな物が現れたのかを考え…

言葉の途中で、その理由…と言うよりも今までの出来事を思い出して、ある可能性に行き着く。


ハル「私も……まさかとは思いますけど。でも…」

ディーティー「やれやれ…またこのパターンか」

俺「いや、お前が言うな!!」


ハル「それで…実際の所はどうなんですか?」

神風「虚獣も、スピリット同様に世界とリンクしているため…正確な情報は掌握出来ません。ですが…可能性の有無で言うのであれば…無いと断言も出来ません」

俺「ってー事は………」


カライモン「今回の当面の敵は、虚獣…そして、虚獣を背後から操っているのは……もう、言うまでも無さそうだね」


ここまでの会話で皆が理解を示し、カライモンの言葉に頷いて答える。

そして、皆の認識が纏まった所で……まるで見計らったかのように、周囲を暗闇が包み込み……

俺達は、その原因を確かめるべく窓の外へと目を向けた。


すると、そこには…


俺「なぁ…キョジュウのキョって…巨大の巨じゃなくて、虚構の虚だよな?」

神風「はい、その通りです。それと、大変言い難い事なのですが…あれはまだ、尖兵にあたる…その、虚獣の中でもまだ小型な分類の者です」

俺「………マジかよ」


都市まるごと一つを覆い、影を落す程の…巨大な白い鳥のような物。虚獣と呼ばれる存在が浮かんで居た。
4 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 01:31:25.82 ID:qA82S3wZo
●おおぞら

ユズ「一応聞いて置きたいんッスけど……たまたま散歩に来ただけとか…そう言うんじゃ無いんッスよね?」

俺を含め…各々が変身を行う等して、臨戦態勢に入る中…神風に対して、僅かな期待を込めて疑問を投げかけるユズ。

だが、その結果は……


神風「現時点で…既に、我々に対しての攻撃態勢に入って居ます。戦闘は避けられない…と、考えた方が良いでしょう」

ユズ「やっぱり…無理ッスか」

案の定、淡い期待を打ち砕く内容だった。


カライモン「では…戦闘に入る前に、可能な限りスペックを把握しておきたいのだが…何か特筆するような能力を持っているのかね?」

神風「まず、スピリットと同等の未来予測と…次に、耐性能力が大きな特徴でしょう」


カライモン「ふむ…未来予測は良いとして…耐性能力とは、具体的にどのような能力なのだね?」

神風「自らが受けた攻撃に対して耐性を作り出し…以降、その攻撃を無効化出来るようになると言う能力です」

カライモン「定番と言えば定番だが…それはまた厄介な能力だな」


神風「また、能力とは異なりますが…対峙する上で最も大きな問題となるのは、やはり…その質量でしょう」

カライモン「見ての通りの、あれだけの巨体を削り切るだけの戦力もさる事ながら…耐性を上回るだけの手段を用いる必要がある…と言う事だね」

神風「その通りです」


カライモン「しかも、あれだけの大きさでまだ小型……裏を返せば、あれよりも大型の物が後に控えている事が確定している…と来た物だ」

ディーティー「圧倒的な戦力差による消耗戦が待ち構えている…そう考えておくのが妥当だろうね」


俺「ってーか今更だが…そんな無茶苦茶な免疫が居ながら、何で今までの世界の危機に現れなかったんだ?」

ハル「それは多分…私達が居たからじゃ無いですか?」

俺「そりゃ結果論……いや、スピリットと同じように未来予測が出来る以上は、それも順当な判断だった…って事か。釈然としねぇなぁオイ」


と言った流れで、俺達の会話は締め括りに向かい…虚獣への距離が縮まる最中。


カライモン「………」

俺「どうした?まだ何か気になる事でもあんのか?」

何故か無言で考え込むカライモンに、俺は話しかけた。


カライモン「いや、本当にそれだけだったのだろうか…と思ってね。まぁ…今はまだ確証の無い憶測に過ぎないので、気にしないでくれ給え」

俺「だから、そう言う言い方だと余計に気になるんだが…って言っても、詳しく聞いてる時間はもう無さそうか」

カライモンが何を考えているのか、正直気にはなるのだが……俺も言った通り、それを問い質すだけの時間的余裕は無いらしい。


そう、当然と言えば当然なのだが…俺達の到着を、虚獣が大人しく待ってくれる筈も無く……

腹部の蓮の種のように窪んだ穴から、白い球体が射出され…それが俺達に向けて飛来して来ていた。
5 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 01:45:25.64 ID:qA82S3wZo
●へきれき

俺「作戦は…どうする?」


カライモン「まず未来予測を相殺するためにも、可能な限り神風君との契約による連携を展開。それと…」

俺「耐性能力にはどう対応するんだ?俺達の攻撃手段って、そんなに多くは無いよなぁ?」

カライモン「それに関しては、幾つか確認をしてからで無ければ結論を出す事は出来ない。まずは目の前の相手で確かめてみよう」


飛来する球体が流線型に変形し、速度を増しながら落下する中…俺達は神風との契約を行い、意識を共有する事で連携を取る。


カライモン『まずはユズ君…君の炎で奴等の戦力を削いでくれ給え』

ユズ『はいッス!』

軌道を変え…螺旋を描きながら収束して俺達の頭上へと迫り来る、虚獣から射出された流線型の物体。

それにを…カライモンの指揮の下、ユズが火炎の魔法で迎え撃つ。


次々と敵を飲み込み焼き尽くす、ユズの火炎。


その火力は、傍からは相手を全滅させるのに充分な物に見えたのだが…

群の奥に進むその最中、ある瞬間を境に…焼き尽くすどころか、焦げ目一つ残す事すら出来なくなってしまっていた。


俺『マジかよ……これって、リアルタイムで例の耐性が反映されてるって事だよな』

カライモン『…そのようだね。なるべく大量に引き付けておいて、一網打尽…と言う訳には行かないか』

ユズ『じゃぁ、残りはどうするッスか?炎じゃなくて光の魔法で自分が……』

カライモン『いや、恐らくそれはまだ早い。分の悪い賭けになってしまうが…彼のディメンションスレイヤーで残存兵力を片付けよう』


レミ『…って、むしろそっちの方が早すぎるんじゃないの!?切り札をいきなり使っちゃって大丈夫なの?』

カライモン『だから、分の悪い賭けと言っただろう?それに―――』
6 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 01:47:11.78 ID:qA82S3wZo
●うらわざ

俺『成程な……確かにそれなら何とかなるかも知れないが…実際に上手く行くかも、そもそも俺がそれを出来るかも判らないぞ?』

カライモン『…何度も言わせないでくれ給え。それを踏まえた上での分の悪さでも賭けるしか無いのだよ』

俺『プレッシャーかけてくれやがるなぁ、おい。くそっ…失敗しても恨むなよ』


残った戦力に向けて跳躍しながら、ディメンションスレイヤーを形成。

おあつらえ向きな事に、標的の方から飛び込んで来てくれているため…討ち漏らす事無く難無く残機を迎撃。

更にその勢いのまま虚獣本体へと切迫し、翼にディメンションスレイヤーを突き立てる。


先の…ユズの火炎への耐性が付くまでの間隔を考えても、ディメンションスレイヤーへの耐性を付けられた様子は無し。

………カライモンの目論見通り、ディメンションスレイヤーの投入が功を奏したようだ。


ユズ『えっと…これってつまり、どう言う事ッスか?』

レミ『身も蓋も無い言い方だけど…ディメンションスレイヤーって、何でもありの反則技じゃない?』

ユズ『そうッスね』

レミ『だから…攻撃の際に耐性を作られないように、ディメンションスレイヤーがディメンションスレイヤーである事を隠して、偽装しながら攻撃…って事が出来れば』

ユズ『耐性を付けられる事無く、攻撃する事も出来る…って事ッスね!』


俺『とまぁ、そう言う訳で…実際に試してみたんだが……』

レミ『何?言い淀んじゃって、どうかしたの?』

俺『今確認してるんだが…その偽装に対しても、耐性を付けられた形跡が無い。多分…ディメンションスレイヤーその物への耐性が付けられないみたいだ』

カライモン『それは朗報だね。ならこのまま…次の段階に進んでくれ給え』


そう………ここまでは順調だった。最初の懸念も無駄に終わり、予想以上の成果を得て……何もかもが順調に進んでいるように見えたのだが……
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 01:47:47.37 ID:e0gCDI94o
>>2
なんか大変だったんだな
お疲れさま
8 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 02:01:49.95 ID:qA82S3wZo
●つながり

俺『………くそっ…ダメだ!!』

万事が万事、思い通りに進む…と言う訳には行かなかった。


カライモン『そうか…では、駄目だった原因を報告してくれ給え。ディメンションスレイヤーの限界かね?それとも、君の技術面での限界かね?』


俺『ディメンションスレイヤーで干渉する所までは持って行けたんだが…肝心の免疫機構を書き換える事が出来ない!いや、やろうと思えば出来なくも無いんだが…』

本来の予定ならば…ディメンションスレイヤーで虚獣の免疫機構を書き換え、最大の難関である耐性の構築を無効かする筈だった。

だが…いざそれを実行しようとした所で、思いもよらない問題が俺を待ち受けて居た。


カライモン『実行出来ない理由は何なのだね?』

俺『この免疫機構…そっくりそのまま、世界の物理法則に直結してやがる。下手に…いや、どんだけ上手くやったとしても…』

カライモン『干渉が世界に与える影響は計り知れない…か。さすがにそうなってしまっては、元も子も無いね』


俺『って訳で、一応これで確認の方は終わったと思うんだが…肝心の作戦はどうなるんだ?ってか、どうにかなりそうなのか?』

カライモン『そうだね…ディメンションスレイヤーを中心として、各自最小限の魔法使用に抑えて立ち回れば…としか、言えないね』

俺『中心にって、簡単に言ってくれるが…いや、んでもまぁ、打つ手が無いって言われるよりは幾分かマシか……』


ここに至るまで…たった一太刀浴びせたこの時点での消耗でさえ、決して少なくは無い。

ガス欠の心配がある以上、ここは短期決戦に持ち込みたい所なんだが………


俺『しっかし……こいつを倒すためには、全身を削り切る必要があるんだよなぁ…』


そう……さっきディメンションスレイヤーで干渉した際に判った事なんだが…虚獣には弱点が無い。

巨大な身体を持っていたり、再生能力を持っていたり、と言うお決まりの強敵にはありがちな…ここだけ何とかすれば倒せる!と言った弱点が存在しない。

この巨体に真正面からぶつかって、絶望的なまでのこの質量を削り切らなければ勝利する事が出来ない…と言う訳だ。


レミ『毎度毎度の事ながら…ジリ貧の戦いになりそうね』

あえて言葉にしないでくれ…まだ戦いも序盤だと言うのに、心が折れそうになる。
9 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 02:05:17.68 ID:qA82S3wZo
ハル『そう言えば…耐性の方は、どの程度の範囲に適用されているんですか?ユズちゃんの炎で、私達の光の魔法全般が無効化されるとかは…』


俺『あぁ、その点は問題無い。あの時点で付いた耐性は、熱耐性だけで…それも、あの炎の温度までだ』

カライモン『ならば、それ以上の温度…収束させた光で焼き切るのも、削り切るのもまだ有効…と言う事だね』

俺『そう言う事だ』


カライモン『適応では無く、耐性でありながら…この結果とは。律儀と言うか何と言うか…』

俺『まぁ、言いたい事は判らないでも無いんだが…さすがにこれ以上の雑談をしてる暇も無さそうだ…ぜっ!』


神風を介して、意識を直結させた状態での意思の疎通。

通常の会話と比較にならない程の、ほんの数秒の間に済ませたやりとりであっても…戦いの最中では、決して短くない時間を費やしている。

そして…虚獣に至っても、その時間を無為に過ごす筈が無く……


俺「やれやれ…今度は人型かよ。まぁ、こっちとしちゃぁ丁度良いサイズだから願ったり叶ったりなんだがな!!」

先の球体のように…今度は背中に空いた無数の穴から、人型の小さな虚獣を大量に生み出していた。


カライモン『生み出した質量に対して、減少した本体の質量が多い。決して見た目で油断せず、気を引き締めて迎え撃ち給え』

俺『その点だけは安心しな。こう言うのも何だが…油断なんざしてる余裕はこれっぽっちも無ぇよ!』


その手に剣を形成し…俺に向けて一斉に斬りかかって来る、人型の虚獣達。

足の運びに、刃の軌跡…切り返しから回避に至るまで……姿形こそ人のそれでありながらも、動きに関しては全くの別物。

まるで人型の水風船がうねるような奇妙な攻撃を、俺は紙一重の所で躱しながら…一瞬の隙を突いて、反撃する。


俺「だぁぁぁぁぁりゃぁぁぁぁ!!!」

掛け声と共に人型虚獣の胴体を切り裂き…間髪入れずに、後ろに跳んで一気に間合いを離す。

そして1テンポ置いた後、切り裂かれた虚獣の断面から眩い光が溢れ………


周囲に爆音が響き渡った。
10 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 22:26:19.44 ID:qA82S3wZo
●ばくはつ

ユズ「な……何事ッスか!?」

ハル「……爆発…?まさか、虚獣の攻撃で彼が…!?」


俺『あぁ、いや…驚かせちまって悪ぃな。今のは俺の攻撃だ』

レミ『攻撃って…一体何したの?!アンタの攻撃レパートリーに、あんなの無かったわよね?!』

俺『今まで使った事ぁ無かったけど、試してみたかったのがあったんだよ。とは言っても…思ったような効果は出せなかったけどな』


カライモン『効果が出なかった理由は……虚獣の組織構成が原因かね?』

俺『……何に失敗したかをすっ飛ばして、何で失敗したかを聞くんだな』

カライモン『そんな物、君の趣向と結果を照らし合わせれば推測も難しく無い。大方、あの人型虚獣を反転して本体もろとも爆破しようとしたのだろう?』


俺『…………』


カライモン『図星のようだね。それで、失敗の原因は何だったのだね?』

俺『……さっき言われた通り、虚獣の組織構成だ』

カライモン『反転に対する耐性を、予め持たれていた…あるいは…まさか、虚獣その物が反物質で構成されて居たと言うのかね?』


俺『いや、そうじゃ無くてだな…虚獣はそもそも、普通の物質構成と違うんだ。そこに存在してるけど、存在するための条件をすっ飛ばしてるって言うか…』

カライモン『無理に説明しようとしなくても良いので、結論だけ言い給え』

俺『まぁ、つまり…反転させようにも元が無いから、無理矢理変換しようとしたんだが…そしたら何故か表面だけ変換出来て、あぁなっちまったんだよ』

カライモン『表面にしか干渉出来なかった。いや…逆を言えば、表面には干渉出来たと言うべき…なのか?』


ユズ「…カライモンさんが二人居るみたいで、チンプンカンプン…ッス。先輩達は言ってる事判るッスか?」

レミ「原因はともかく、何をしようとしてどうなったか…って所までならね」

ハル「私も…レミちゃんと同じくらいの理解度かな」


カライモン「と……雑談に入っている所を悪いが、そろそろ戦闘準備に準備に入ってくれ給え。彼一人では危なくなって来たようだ」

ハル「………え?」
11 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 22:45:17.97 ID:qA82S3wZo
●せつじつ

俺「やれやれ…参ったな。俺的には切り札として格好良く切ったつもりだったんだが…こうも裏目に出ちまうか」

皆との、会話を行うその最中にも続く…人型の虚獣との切り結び。

切り札がほぼ不発に終わってしまった、その痛手もさる事ながら…追い打ちとなるのは、そのしっぺ返し。


小規模ながらも、下手に反物質によるダメージを与えてしまったため…当然のように、衝撃に対する耐性を付けられ………

いよいよもって、ディメンションスレイヤー以外でのダメージが見込めない…と言う危機的状況に陥ってしまっている。

だが…そんな追い打ちさえも、まだ本当の危機では無いらしく……それを知らしめるかのように、俺の背後から破滅の足音が近付いて来た。


俺「っ―――!?」

肉体か精神か…はたまたその両方の疲労か……

僅かに鈍った反射神経の隙を突かれ、人型虚獣の刃が俺の二の腕を掠める。


ダメージだけならば、それ程の物では無い。

痛みも殆ど無く、文字通りのかすり傷。

虚獣との戦闘が始まってから、初めて…たった一度だけ受けた攻撃。

そう…たったの一撃掠っただけ………にも関わらず、俺の背筋を正体不明の寒気が走り抜けた。


俺「何だ…何だってんだ?何で俺はこんな攻撃にビビってる?まだほんの一撃…たったの一撃くらっただけで………いや、そうじゃ無い?」

不安を紛らわそうと、改めて口にしたその言葉。だが…逆にその行為が、目を背けて居た事実を目の前に突き付け………

俺「そうだ…俺はまだ一撃も虚獣の攻撃を食らって無かった。どんな攻撃なのか、何が起きるのかも知らないまま……それを受けちまった?」


…………気付いた時には、もう遅かった。


俺「確か………俺は…腕を斬り付けられて………え?な………何だよこれ!?」

思い出したように、腕の具合を確かめようとした時………


そこある筈の、ディメンションスレイヤーを掴んでいた俺の腕は…既に存在していなかった。
12 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 22:59:19.57 ID:qA82S3wZo
俺「何だ……一体何が起きた?!」

まるで…全身の毛穴と言う毛穴が開き、その内側から電気を流されたような嫌な刺激が体表を駆け巡る。


腕を失った事自体は大した問題では無い。

いや、大した問題ではあるがんだが…この不可解な現象の前では、それすらも些細な問題になってしまっているだけだ。

そう…問題は腕を失った理由。それを突き止める必要がある訳だが…それよりもまず先にやるべき事がある。

それは何か……そうだ、腕の再生だ。


考えるよりもまず先に行うべきそれを、何故か俺は失念していて……思い出した所で、慌てながらもその手順に入る。

だが………


俺「何でだ…何で再生出来ないんだ!?」

人型虚獣の刃を、後ろに跳んで避けながら…俺は、困惑と共に驚愕の叫び声を上げた。


腕を再生させるだけの質量が足りて居ないのか?

いや…質量はまだまだ余裕がある。例え尽きても、そこから更に限界を超えた質量を生成する事だって出来る。

再生能力の問題で無いのなら…虚獣の攻撃の影響か?

考えたくは無いが、その確率が一番高い…と言うよりも、それ以外の原因は考えられない。


俺は、自分の身体に起きた未知の現象に怯えながら……失われた腕の確認を行う。

痛みは…無い。感覚も無い。当然ながら再生も出来ない。となれば…まず最初に思い付くのは…

俺「再生阻害系の能力…って事か。だったら……あんまりやりたかぁ無いんだが、これしか無ぇか…よぉっ!!」


俺は、失った腕の根元…肩を掴んで、自らの手でそれを勢い良く引き千切り…それを放り投げた後、間髪入れずに再生を開始。

能力を受けたと思われる切断面を排除した上で、改めて根元からの再生を試みたのだが………


俺「嘘…だろ………?何で、どうして再生しねぇんだよ!?」

その再生は、腕を引き千切る前まで残って居た部位……二の腕付近で止まり、その先を再生する事は無かった。
13 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 23:16:02.09 ID:qA82S3wZo
●けつらく

俺「……物理的な干渉じゃ無いのか?まさか、ディメンジョンスレイヤーと同じ直接介入か!?」

その言葉を口にした後…何故か、まず最初に思い出したのは……根幹を食らう竜の力。

失った物の記憶その物は消えていない事や、そこに至るまでのプロセス等…相違点は幾つもあるにも関わらず、俺は何故か奇妙な既視感を覚えた。


攻撃を受けて、その部位が消失した…


一体どんな原理で、どんな作用を起こしてこんな結果になったのは判らない。だが……この攻撃が俺にとって致命的な物だと言う事だけは判る。

失ったのが、末端…腕だったから良かった物の、もしこれを頭に受けて居たら………

俺と言う存在…俺と言う人格を司る頭脳を失ってしまったら………


その仮定の末にある物に、思考が辿り着いた瞬間。久しく忘れてしまっていた……死…と言う物の恐怖が俺に襲い掛かって来た。

そして………


俺「――――!?」

そこに生まれてしまった恐怖が、俺を判断を遅らせる枷となり…

足元から現れた刃に気付く事が出来ず、そのままその刃に両足を貫かれてしまった。


二の腕を斬られた時のように、殆ど痛みは無し。

だが、その痛みが薄れ行くと共に…貫かれた両足に向ける意識や、両足の感覚や存在その物が薄れ………


俺「……………」

再び気が付いた時には…俺は、片腕に続き両足を失い……虚獣の背中の上で、うつぶせに倒れて居た。


俺「…ヤバい。今度こそ本気でヤバいだろこれ………!!」

文字通り、手も足も出せない絶体絶命の状態の中……残った全身から嫌な汗が噴き出すのを感じながら、俺は声を絞り出した。

何か手がある筈…そう信じてやまない自分が居るにも関わらず、手も足も出す事が出来ない。

どこからとも無く溢れ出す違和感…そして、その奥底から溢れ出す恐怖。


脚をもがれたバッタの如く、抵抗すら出来ない俺に…次なる魔の手が迫っている事くらい、深く考えなくても判る。

目視する事は適わないが…頭上では、人型の虚獣が刃を構えて……俺に止めを刺すべく、狙いを定めている筈。


―――やられる

そう確信した瞬間………


ハル「大丈夫、させません。貴方は…私が絶対に守ります」

ハルの声が響くと共に…周囲を光の柱が包み込んだ。
14 : ◆TPk5R1h7Ng [saga]:2016/06/19(日) 23:30:58.58 ID:qA82S3wZo
●てんしん

眼前に広がるのは、虚獣の身体に空いた風穴。

巨体から体積を削り取った証の、その向こう側で………ハルが両手を広げていた。


俺「色んな意味で、無茶してくれるなぁ……んでも、助かったぜ」

ハル「ちょっと手荒な方法になってしまいましたけど…あの場を何とかするためには、仕方が無かったので」

落下する俺の身体を、ハルが抱き留め…そのまま二人で、頭上の虚獣を見上げる。


虚獣は欠損した部位を残った質量で補い…空いた穴が塞がった後の全長は、最初の半分程まで減少。

成果だけを見れば、残りは単純計算で8分の1。かなりの体積を消耗させたと言えなくも無いのだが……

ディメンションスレイヤーで削り取る事が出来た量は、余り多くは無く。実質上は、ユズとハルによる功績が殆ど。

しかも…本来は温存しておくべきだった筈の、ハルの閃光魔法を使ってしまった上でのこの状態。


残り少ない攻撃手段を費やし、止めを刺さなければいけないこの場面にありながらも…

俺は、ディメンションスレイヤーを振るう事が出来ない。


どうしようもない無力感に苛まれる中……俺とハルの隣に、カライモンが現れ…

カライモン「そう考える気持ちも判らないでは無いが…落ち着いて自分の身体を見てみ給え」

その口から、これまた不可解な言葉が飛び出した。


俺「いや…今更こんな惨状を見てどうしろって言うんだよ!こんな状態で、俺にどうしろって………ん?」

カライモンの言葉に苛立ちながら、振り払うように手を伸ばす俺。

だが…その行動を起こした事で、ある事に気付いた。


俺「あれ…?俺、今……手が…」

カライモン「やっと気付いたかね?キミの身体はもう元通りだ。これで何も問題はあるまい?」


そう………どんな手を使ったのかは判らないんだが…虚獣の攻撃により失われた筈の腕と両足は、元に戻っていた。
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