叔母「今日からココに住んで」男「ラブホテルで?」

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72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/03(金) 15:16:42.74 ID:bWGqtqfcO
叔母「その分、安く買い物出来たから良しとしようよ」

男「そ、それは確かに行幸でしたけどねっ!」プイッ

叔母(これがケルケル君が言ってたツンデレかな?)

男「って、いうか。叔母さんの用事は良いんですか? もう帰り道ですけど」

叔母「ん? もうとっくに終わってるよ、ありがとう」

男「……? もろもろ含めてどういう意味です?」

叔母「私は商店街の連中に気に入られてないからね、あんまり来れないんだココには」

叔母「ふと気になっても気軽に来れる気がしない」スッ

男(あ。そういや煙草屋のお婆さんと喋ってる時、すごく楽しそうだったな)

男(他の店でも警戒度マックスだったけど、会話してる姿はみんな最後は笑顔で───)

男「──良かったですね、今日はこれて」

叔母「うん。良かったよ」コク

男(普段は周りのこと全然気にしてない感じだけど、ちゃんと想ってるんだなあ)ニコニコ
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/03(金) 15:18:59.69 ID:bWGqtqfcO
叔母「さて、それじゃあ」

叔母「見た限りの売上ぶりを兄貴に報告するかな」

男「ん?」

叔母「うん? だから君の父親で私の兄貴が、ココの商店街潰そうとしてるから…」

叔母「数ヶ月に一回見回りしに来てるの。その代表が私、面倒くさいんだよねコレ」

男「なにそれ恐ッ! そりゃみんなに嫌われるしみんなヘコヘコするわ!」

叔母「そうでもないよ。普段は面と向かって文句言ってくる強者揃いだよ」

男「ちょ、ちょっと待って下さいよ…!? じゃ、じゃあ俺の正体がバレたらどうするんですか…!?」

叔母「そりゃ巨悪の代官様の息子となれば、うん」フゥー

叔母「そういや、くらむちゃうだーって美味しいの?」

男「誤魔化しが下手くそ過ぎるッ! だァー!? 明日から買い物しずらァーいッ!」

叔母(しずらいだけで行くんだね、凄いなこの子)プカァ

男「あぁもうどうしよう…っ」

叔母「大丈夫。きっとバレても売り物ぼったくられるだけだから」ニコ

男「その時点でアウトなんですけどねェ!?」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/03(金) 15:19:26.49 ID:bWGqtqfcO
〜〜〜


受付「あれ? じゃあ全ヘイトを彼に集める作戦じゃなかったんッスか?」

叔母「そこまで考えてないよ私でも…」

男「帰り際で末恐ろしいことサラッと言った人が何言ってるんですか」コトコト

受付「泣いて損したじゃん。じゃ今度からはハラドキの買い物展開なんだねガンバ!」

男「面白がってる所アレですけど、あそこで買い物できないなら食費あげますよ」

受付「今度からお姉さんの弟だって騙っちゃう?」

男「ちょっとは同情とかないんですかねェ…!?」

叔母「その点に関しては安心していいよ、男君」

男「え?」

叔母「君が兄貴の息子だとバレる前に、先手を打っておいたから。明日から普通に行けるよ」

男「いつの間に…叔母さん…」キラキラキラ

受付「じゃあなんスか? 商店街での彼の立場って?」


叔母「ああ。私の恋人になってた、なんかココのラブホに一緒入ってるの見られてね」

男「………」カランカラーン…


第三話 終
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/03(金) 15:20:13.99 ID:bWGqtqfcO
気まぐれに更新ノシ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/03(金) 15:30:05.17 ID:emZgRDJtO
おつおつ
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/03(金) 16:06:47.97 ID:nzBD6vwAO
乙!
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/05(日) 13:59:48.79 ID:xSrJBjoAO
ラブホと人妻、高校生

素晴らしい響きだ
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/05(日) 15:24:19.48 ID:C39hPBShO
今のところ叔母は人妻じゃないからな?
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/05(日) 16:19:35.63 ID:TVtl8ZHS0
人妻?
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/05(日) 17:44:32.91 ID:wEU51yFP0
受付は元男?
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/05(日) 20:42:28.98 ID:meuVKZpEo
『ラブホと男子高校生と巨乳叔母 〜時々お姉さん〜』だろ。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 19:14:13.33 ID:zHRBdrx80
まだ?
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 21:55:50.70 ID:U/6nxyQRO
男「よっと、これで準備よし」

男(明日はやっとこさ入学式だ。制服もカッターシャツもピンっとノリが張ってある)

男(なんの不都合なく迎えることが出来るぞ…!)

男「…そうであっても、まあ他で不安は有り余って凄いことになってるけど」

受付「いまさらじゃんか」ズルズル

男「例の如くまた俺の部屋に来ましたね、受付さん」

受付「おばんわー、この時間帯って妙にお腹が空いちゃうのよね。てへっ」

男「まあ暇してたんで構わないですけど…」チラリ

受付「ん? ああ、下は大丈夫よ? ケルケル君が受け持ってくれてるからー」

男「ああ、そういや帰ってきてたんでしたっけ? 確か清掃係の人ですよね」

受付「えーっと、多分だけどキミと歳近いはずだから気軽に話しかけてみなよ」

男「えっと、まあ、はい…機会があれば…」

受付「どったの微妙そうな顔して」

男「い、いえっ! その、だって、その人ぱっと見た限り───外国人じゃないですか」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 21:57:17.78 ID:U/6nxyQRO
受付「日本語上手よ? むしろお姉さんより礼儀わきまえてるし」

男「最上級の謙譲語ですね、それ。日本語では負けないでくださいよ」

受付「いやいや、若くして他国に渡る根性に勝てやしないよぉ」

受付「特にケルケル君は趣味だけで日本に来た強者だから、やばいよ彼は」

男「趣味、ですか」

コンコン

受付「おんや? 噂をすればケルケル君じゃない?」

男「えっ!? な、何故に俺の部屋に…っ」オソルオソル

ガチャ

男「ど、どなたですか…?」キィ

清掃「………」きょとん

男(わわ! やっぱりケ、ケルケル…君…が居る! ど、どどどうすればっ!?)

男「あ、あのっ! えーと、えくすぷれっそ、じゃなくて! そのっ!」

清掃「………」

清掃「!」ポンッ

清掃「ワオ! きみがownerのオイッコーのオトッコー!?」パァァアアア
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 21:58:23.64 ID:U/6nxyQRO
男「ひゃいっ!? そうですッ! よっ!?」

清掃「ハジメマシテ! ボクはケルケルです! よろぴこ!」ビッ

男「よ、よろぴこ…お願いします…?」

清掃「え? ヨロピコオネガイシマス!? なにそれ復活の呪文とか!?」パァァアアア

男「ん!?」

清掃「えーと、んーと、じゃあじゃあドラクエの復活呪文噛まずに言える勝負ね!」

男「ドラク、えっ? なに? 何の話を…?」

受付「やほーケルケル君、どったのー?」

清掃「あ! フォクシーはやく戻ってこい! owner怒ってたよ!」

受付「げにッ!?」

清掃「ゲニゲニ! 戻らんと、えーとえと、ドハデなPlayした部屋を掃除させるって…」

受付「カレーうどん食ってる場合じゃねぇ! さらば二人共!」ババッ

清掃「バァーイ!」ブンブン

男「あ、はい、がんばってくださいね…」フリフリ


パタン
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 21:59:19.84 ID:U/6nxyQRO
男(いつの間にか来て嵐のように去る人だな相変わらず)

清掃「………」にこにこ

男(──そして何故っ…彼はここに残ってしまっているのだろう…!?)ダラダラ

清掃「えとえと、んー、オトッコーでいいんだよね?」

男「え? えっと、それ俺のこと言ってるの…?」

清掃「名前知りたい! ボクが名前知るの好き…知らないと満足できないから!」ニッコニコ


男「そう、なんだ。えっと俺の名前はあってるけど、イントネーションが違うかな…」

清掃「ワオ! マジデ? どんなのどんなの?」

男「お・と・こ、男って感じ」

清掃「お…と…こ…ゆっくりね! ゆっくりオトコ! こうっ? こんな感じ? オトコ!」

男「う、うん、そうそう。あってるよ」

清掃「ありがとうオトコ! いいオトコオトコね!」グッ

男(なんだかハイテンションな人だなあ。もう十二時回りそうなのに、超元気だ)ポリポリ

清掃「……………」

男「…………」

男(…!? ヤバイ! 静かになられても困る! 会話的な意味でッ!)ドキドキドキ
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:00:35.23 ID:U/6nxyQRO
男「あ、あの! け、ケルケル…君で良いんだよ、ね? 皆そう呼んでるから…」

清掃「うんっ! ボクはケルケル、FullNameは超長すぎダルいから!」

男「そ、そうなの? そういやケルケル君って何処の人なの?」

清掃「タイだよ! ボクはタイ人! タイ人みーんな長い名前大好き!」ニコニコ

男「へぇ〜ちなみにケルケル君の名前って?」

清掃「んーっと、日本語っぽくいうとー」


清掃「けるじがけるどっとけるだびんどけるでぃーくけるどっく!」


男「長い! どんだけケル入ってるの!?」

清掃「タイは長い名前つけるのカッコイイ、だからボクも自分でつけた!」

男「すげぇ!! 名前自分でツケられるんだ!?」

清掃「うんうん! …かっこいい? オトコもカッコイイ思う?」モジモジ

男「う、うん…魔法の呪文みたいでカッコイイと思う…?」ハッ

男(し、しまった!? 変な感想を述べ──)

清掃「へへっ!」テレッ

男(──超嬉しそうだからいっか!)
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:01:31.08 ID:U/6nxyQRO
男(しかし立ち話もなんだし、上がってもらおう)イソイソ

清掃「オトコ? なにそれ?」キョトン

男「ん? これは座布団って言って、ああ、他の部屋には無いもんな」

男「あんまり椅子で生活する習慣がなくって落ち着かないんだ、だからドンキで買ってきた」

清掃「床、掃除してる?」

男「もちろん。あと安物のカーペット買ってもうちょっと居心地良くするつもり」

清掃「ほぇーオトコすごい。でもなんでラブホで充実しようとしてるの?」

男「ええ…確かにそのとおりですよね、ええ…」ズーン

清掃「?」

男「ま、まあ取り敢えずお茶でも飲む?」

清掃「好き!」

男「おおっ? それはよかった、じゃあ用意するから待っててね」ガチャガチャ コポ…

清掃「うんっ! すわってまってる!」ストン

男「はい。どうぞ、安物のお茶パックでごめんね」

清掃「ソチャですが! ってやつ? ボクそれ好き、日本のお茶美味しいから」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:02:35.07 ID:U/6nxyQRO
男「そうなの?」

清掃「うん! 公園のお水ガブのみ出来るのやべえ思うんだ、これ」

男(とりあえず日本が凄いんだと捉えよう…)

清掃「っ……っ……っ……」キョロキョロ

男「づづ、ん? どうしたの?」

清掃「あっ! え、えとね、その、ね…」モジモジ

男「うん?」

清掃「……………」じぃー

男(うっ、なんだろ。この妙に熱の篭った視線は)

清掃「その…オトコはぁ〜…げ、げーむとか、したり…する?」チラチラ

男「え、ゲームって、こうやってコントローラー持ってするやつ?」

清掃「………」コ、コクコク

男「ああ、ごめん。俺はそういうのあまり、興味がなくて」

清掃「あ…」

清掃「…ソウナンデスネ…」しょんぼり

男(あぁっ!! すごいしょんぼりしてる! そ、そうかそこを期待されてたから、部屋に残ってたのかっ)
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:03:48.89 ID:U/6nxyQRO
男「ご、ごめんね? 俺も引っ越してきたばっかりだから」

清掃「!! じゃ、じゃあ荷物きたら入ってたりする!?」

男「えっと、トランプとか?」

清掃「……………………」ズーン

男「そういうのじゃないよね! ごめん!」

清掃「ううん、オトコ悪くないよ。ボクが勝手に期待しすぎた、ごめんなさい」ペコペコ

男「あ、うん、でもケルケル君はゲームが好きなんだね」

清掃「好き! だって日本のゲーム超たのしい!」

男(へぇ、俺の周りじゃ皆ゲームなんて興味ない人ばっかりだったからなぁ。凄い新鮮だ)

清掃「だからボクは日本きた!」

男(うん、このレベルは他と比べたら失礼だ。凄すぎる趣味力)

清掃「でももっともーっと楽しいことあるよ。日本やばすぎ、なんでリアルに人描ける?」

清掃「アニメやらコミック、みんな人っぽくて良いの。ド変態ばっかだよね日本!」けらけらーっ

男「そ、そうかな? そこら辺もあんまり詳しくないからどうにも…」

清掃「え…? じゃあどうやっていつも休み過ごしてるの…?」

男「もっと他に選択肢あるよね!? 絶対にあるからそんな顔しないで!」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:04:49.75 ID:U/6nxyQRO
清掃「でもオトコの部屋ってなんにもないね、とにかく」

男「さっきも言ったけど引っ越してきたばっかりだから。これから増える予定だよ」

清掃「じゃあじゃあゲーム買おうよ! ゲーム! おすすめあるよ?」

男「う、うん、ちゃんとそういったことも視野にいれてる。学校で話題作ろうと思ってるから」

清掃「そうそう! ボクも日本でトモダチつくったとき、ゲームで仲良くなった!」

男「良いよね、楽しく皆でゲームって。でもね…」

男「ここ、テレビの主導権が全部フロントにあるんだよね…見れてもエロいのばっかり…」フフフ

清掃「わぁお…」

男「hdmi端子も三色ケーブルも、妙な機械に阻まれてるし。ははっ、大丈夫かな高校生活…」ホロリ

清掃「大丈夫! トモダチ出来なくてもケルケルが居るよ!」

男「け、ケルケル君…!」ぱぁああ

清掃「でもまずはゲーム買ってからね!」ニコ

男(悪気は全くないんだろうけど、なんかなぁ、なんかなあっ)

清掃「むふふ」ニコニコ
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:05:24.96 ID:U/6nxyQRO
男(友達作るのって、自分から趣味を合わせないといけないのかな…)

清掃「ん!? よく考えればそう! あれでいいよ!」ガタッ

男「どうしたの急にっ?」

清掃「待っててオトコ! すぐ戻ってくる!」ダダダッ ガチャ バタン

ダダダダ

清掃「ただいま!」ガチャア

男「うん、えっと、その手に持ってるのは?」

清掃「小型ゲーム機だよ! これ、テレビもいらないし皆で出来る!」

男「なん…だと…? 世の中そんなものまで出てるのか…!?」

清掃「オトコ本当に日本人? 知らないなら教えるよ、ほれほれ」ぱかり

男「ほ、ほぉー…凄い、普通にテレビ画面がついてる…しかも二つ…」

清掃「………。このスイッチ入れるです!」カチリ

男「ぐぁあああ!? な、なんだ目が急におかしくなった!? これがゲーム脳ってやつじゃ…!?」

清掃「落ち着いて、落ち着いてオトコ」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:06:28.95 ID:U/6nxyQRO
男「あ、ああ、思わず驚いて面白い反応してしまった…魂取られたりしないよね…?」

清掃「ボクのお婆ちゃんみたいなリアクション取るね、オトコは」

清掃「へいきへいき、これはゲームが3Dで見れるの! マジファンタジー!」

男「すりぃーでぃー? なに、飛び出して見えるワケ? 嘘だろこんな小さいのに…」

清掃「……」スッ

男「すげぇええええええええ!!? なにこれェー!!??」

清掃「デショー!!?」


ガチャッ… スッ…


受付(気を揉んでたが無事に仲良くなってる様子)コソコッソーッ

受付「国境を超えたフレンドタイム…スバラなことやで…」ナムナム

受付(撮って友達に送ろ。ラブホで同性十代わいわいなう、っと)

シュボッ

受付「ヒッ!」ビックゥウウン

〜〜〜

叔母「──ケルケル君、君まだシフト中だろう」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:07:08.99 ID:U/6nxyQRO
清掃「大丈夫! フォクシィと違って終わらせてココ来たから!」

叔母「いや、その時間にも給料は発生してるんだけどね…」

叔母「あの馬鹿よりはマシか。しかし男君も明日は早いんだ、もういい加減に寝た方がいいよ」

男「あ。そうだった、明日学校だった…」

清掃「ワァオ! ガンバってオトコ! レッツエンジョイ!」ぐっ

男「うん。ありがと、がんばる」

がちゃ きぃ パタム

叔母「いい子だろ」

男「はい。勝手に距離をおいてた自分が馬鹿みたいでした」

叔母「これからも良くしてやって。あの子は一人で日本に来たんだ」

叔母「そら数年もこっちに住めば知り合いなんて出来る。けれど、歳が近いヤツはそういないだろうし」

男「そうなんですか?」

叔母「良い子なんだけど癖が強くてね。日本人の友達を作りづらいみたい」

男「そうなんですか…ま、まあ俺でいいのなら構わないですけど…」

叔母「君だから良い」ニコ

男(…むぐぐ、この人は本当に面と向かっていうよなあ…っ)

叔母「それじゃあオヤスミ。初日で遅刻なんてしないように、いいね」ガチャ
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:08:28.72 ID:U/6nxyQRO
男「勿論です。おやすみなさい、叔母さん」

叔母「ん」フリフリ

パタン

男(叔母さんの言う通り早く寝ないと、始まる前に色々考えても意味ないしな)

男(学校、入学式、友達、ゲーム、かあ。俺、本当に明日から───普通に…学校に…)

スヤスヤ

男「むにゃむにゃ」

叔母「男くん!!」ガチャアッ!!

男「むァいッ!? な、なんですかッ!?」がばぁっ

叔母「い、いい忘れてたことがあったんだ…はぁはぁ…これは大事なことだよ…っ」

男「え、な、なんですか?」 

叔母「歯磨きちゃんとやった?」

男「すげえどうでもいい!」

受付「うぇぇ…おーなぁ〜〜…あの部屋の掃除は業者に任せましょおお〜…」ベトー

男「うっ! な、なんて匂いをさせて俺の部屋に…!?」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:09:24.50 ID:U/6nxyQRO
叔母「ちゃんとやれ。あと近寄るな、クサイ」

受付「ヒドイ!」ガーン

男「あ、あの、本当にそろそろ寝たいんですけど…」

清掃「アァ!? そういやオトコ、ここ電気消して寝てる?」ヒョコ

男「ケルケル君まで!? どうしたの急に…え、消してるけど何時も…」

清掃「そ、そなんだ…ウン、なんともなかったらいいよです…」スッ

男「なにそれ恐い!? 気まずそうな顔して何なの一体!?」

受付「あり? 説明受けてないの? ココ、おふざけで44号室作ったら出───」

叔母「おやすみ男くん」キィ

男「誤魔化せると思ってんのかッ! 出るんでしょココ! どうして黙ってたんですか!?」

叔母「……私は見たこと無いし」フィ

男「見たことある人いる時点でアウトですよねッ!」

叔母「客の戯言だよ。従業員みんな見たこと無いし、平気だよ」

受付「誰も居ないのに物音はたまにしてたッスよね、ココ」

清掃「この部屋むかしから掃除しなきゃいけなくて大変だったよ!」ニコ

男「ワンチャンあったら見えてましたよねそれ!? あとケルケル君のは何の掃除!?」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:11:00.87 ID:U/6nxyQRO
叔母「ほら、解散解散。男くんは早く寝るんだし、みんな邪魔しちゃ駄目だよ」ぱんぱん

男「寝れるかコラーッ!! 俺もそっち側に連れてけー!」

〜〜〜

男(──なんてことだ、結局、一睡も出来なかった)うつらうつら

男(あの部屋で寝るの怖すぎてスタッフルームにお邪魔したけど、逆効果だった)チラ


受付「ぐかー」

清掃「ふんふーん♪」ピコピコ


男(受付さんの晩酌に付き合わされるし、ケル君のゲーム話題で頭がぐらぐらする)

清掃「CLEAR! フィー! あれ? オトコ、大丈夫なの?」

男「大丈夫じゃないよ…このままじゃ電車を寝過ごしそうで恐いよ…」フラフラ

清掃「ああ、エット、そうじゃなくって、んーっと」チラ

清掃「──あの壁カケ時計、一時間遅いから!」ニコ

男「……………………」ボー

男「ッッッ!!?」ババッ

【六時四十五分】+一時間
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:12:15.28 ID:U/6nxyQRO
男「遅刻してるゥーーーーーーッッ!!」

受付「わぁいッッ!?」ビクゥン

清掃「エェッ!? やっぱりダメ感じッ?」あたふた

男「あと十五分で入学式始まるッ! 電車で移動考えたら当然のごとく間に合わない!」ダダッ

清掃「アワワワ」

受付「ん〜…どったの…?」ゴシゴシ

清掃「フォクシィ! オトコが遅刻だってあぶないよ!」

受付「ちぃこくぅ〜? んなのお姉さんだっていっぱいしてるよぉふぅうわぁあぁあぁあ〜…」

男「アンタと一緒にするなーッ!」ババッ

受付「まあヒドイ」

男「ごめんなさいテンパってるもんで! あぁもうッ! どうしてココの時計こんなに狂ったまま何ですか…っ!」バタバタ

清掃「フォクシィが働く時間ごまかすためだよ!」

男「やっぱアンタ最低だよッ!」

受付「あ。あの壁時計見てたの? そりゃごめんね、だったらお姉さんの原付きかすからそれで行きなって」

男「どうあがいたって遅刻は免れないですよ…!?」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:13:28.86 ID:U/6nxyQRO
受付「となり町の高校でしょ? 電車だと遠回りで十五分、歩き含めりゃ五分で合計二十分」フワァ

受付「八時に入学式なら電車乗って行くより原付き乗って突き進んだ方が速いよ、全然」

男「そ、そうなんですか? でも俺免許も持ってないし…」

受付「そっか。ならケルケル君に任せたらいいんじゃない」

清掃「ボク? オッケー!」

男「超柔軟! しかし二人乗りって、というか何故にケル君に任せるんですか…!?」

受付「お姉さん飲んで八時間立ってないもの。ケルケル君は免許持ってるし、平気平気」

清掃「ボクの国もみーんな二人のり! へたすりゃ五人乗り!」

男「曲芸師かよ! い、いやいや! ケル君に迷惑をかけるのはっ!」

清掃「オトコ!」がしっ

男「ハイッ!」

清掃「よくきいてっ! ボクはオトコの為にやりたい、がんばりたい! それダメなこと?」

男「だ、ダメじゃないけど、なにより危険で最初から俺のせいだから…っ」

清掃「…それは違うよ、オトコ。危険だからがんばる、オトコの為にがんばりたいからがんばる!」

清掃「──それがトモダチってことだから! ケルケルはそう思う!」ビッ
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:14:25.37 ID:U/6nxyQRO
男「ケル君…お、俺…」

男「──わかった、俺、ケル君に助けて欲しい。どうかお願いしたい」ペコーッ

清掃「じゃあ行くよオトコ! はやく駐車場へレッツ!」ダダッ

受付「ヘルメはボックスにスペアあるからねー」

男「は、はい! 受付さんもありがとうございました! 帰ったら好きなの作りますから!」

パタン

受付「まあ…」ポリポリ

受付(あの時計、遅いんじゃなくて速いんだけどね。だから今は五時四十五分過ぎ)

受付「じゃないと就業時間誤魔化せないし…ふわぁ…まあ親交深められた、良いお姉さんってことで」モゾリ

シュボッ

受付「…………………何時からそこに?」

〜〜〜

清掃「早くのってオトコ! 出発するよ! 今するよ!」ブィイン ブィイイイン

男「う、うん! 本当にありがとうケル君!」ドスン

清掃「お礼は無事についてからってね! へへっ、今のかっこいい?」

男「タイミング考えてケル君! でもカッコイイよッ!」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:15:54.93 ID:U/6nxyQRO
ブィイイイイイイイン

男(うぐっ、凄い風と揺れだ…! 二人乗りが危険だと言われる理由がとてもよくわかる…!)ぎゅっ

男「け、ケル君! 有り難いけど、あまりスピードの出しすぎには気をつけて…!」グラングラン


清掃「ぐー…」スヤー


男「ケル君!? ちょっとケル君!?」

清掃「はっ!? じゅるる、もう着いちゃった!?」

男「違うよ寝てたよ完全に熟睡してたよ今っ!?」

清掃「あ! だから学校に着いた夢みてたのかー!」てへ

男「その照れ隠しが出来てよかったね! あと一歩で夢のままで終わってたよ!」

清掃「うぐぐ、朝までゲームしたから限界なのかも…」うつら…うつら…

男「えぇっ!?」

清掃「大丈夫! こんなときに効くおまじないの言葉ある! それで元気なる!」

男(そ、それって故郷に伝わる系の、お婆ちゃんが教えてくれる感じのヤツかな…!?)

清掃「ぞたういびほぜもむのねひぎなひにこおてぐじりばほさりくつした!」

男「ねっからゲーム脳だなあ! ケル君はぁッ!」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:17:00.25 ID:U/6nxyQRO
清掃「うっ…じゅもんちがいます、間違えたよオトコ…もうねひほ…」スピー

男「ダメダメダメ! 寝たらその後は復活の呪文でも効かないからねッ!」

清掃「うん、じゃあ眠らないようオトコも手伝って、一緒に言って」

男「いや、だから、俺はあんまり詳しくないんだって…っ」

清掃「……。そっか、ならボクがんばる」

男「あ…」

男(違う、違うそうじゃなく、そんな悲しそうな顔をさせたかったワケじゃない)

男(興味がなかったことをいきなり、…押し付けられても困るだろ。俺だって仲良くなりたい、けれど)

男(自分に無かったものを、相手と仲良くなりたいってだけで増やしていくのは変じゃないか)

男(何時かは無理出る。限界が訪れる。その終わりを抱えたまま友達に、なんて、そんなの)

男「………」

清掃「ぞたう、いびほ、ぜもむの、ねひぎ…」ボソボソ

男「ケル君、あのさ」

清掃「ハーイ? なに?」ニッ

男「…。俺実は、夜遅くまでケル君が話してくれたゲームのやつ、殆ど意味がわからなかったんだ」

清掃「じゃ帰ったらまた話すね!」

男「そゆことじゃないよケル君! そうじゃなく興味が持てないんだ、君が言ってることに…」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:18:18.38 ID:U/6nxyQRO
清掃「そうなの?」

男「君が楽しそうに話してること、俺にはちんぷんかんぶんで良くわからない」

男「…だから、それを聴き続けてるのはとても辛い、んだと思う、多分」

男「だから! だから…俺は…」

清掃「………」

清掃「すごいね、オトコ」

男「ええっ? な、なんで! 俺は君に酷いことを言ってる、のに」

清掃「ううん、そうでもない。だってボクが言ってること、あんまり楽しくないの知ってる」

清掃「それをハッキリとノーって言ってくれる。そんな人、オトコが初めてよ?」

男「俺が初めて…」ズーン

清掃「違う違う褒めてる、褒めてるよオトコ! ボクはそんなハッキリと言えるオトコが凄いって言いたい!」

清掃「いやならいやでいい、ダメならダメでいい、一番しちゃだめなのは───」

清掃「───ひとり抱えて黙ってるコト」

男「…っ…」

清掃「ボクはそう思う。だって、ムリなんてトモダチにしてほしくない。いやならいやって言って欲しいから」ニコ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:19:10.21 ID:U/6nxyQRO
男「それで、君は良いの?」

清掃「どうしてそんなこと訊くの? ボクはねオトコ、こんな話を出来たことが嬉しいんだよ!」

清掃「だってすごい、やっと日本で友達できた感じ。正直にいってくれる、そんなトモダチが!」

男「ケル君…」

清掃「好き。そういうの言えるオトコは好きよ、だからカッコイイ」

清掃「だから自信を持ってチャレンジ。オトコならきっとたくさんいっぱいトモダチできるから!」

男「───……」

男「……………」ぎゅっ

男「ぞ、ぞ…ぞたういびほぜもむのねひぎなひにこおてぐじりばほさりくつしたッッ!!」

清掃「オトコ?」

男「む、昔から物覚えだけは良いと両親に褒められてたんだ。だから、もう一度だけ教えてくれ」

男「あと! さっきまでのこしゃくれたしゃべり方はもう辞める! だ、だって…」

清掃「………」

男「…トモダチ、だから」テレ

清掃「うんっ! ボクらトモダチ! じゃあいっくよー! オトコ!」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:19:56.39 ID:U/6nxyQRO
男「おうよッ! ドンと来やがれってんだッッ!」

清掃「一文字でも間違ったらじゅもんがちがいますだよ!」

男「まかせろォ!」


「「せーのっ」」


清掃&男「──ぞたういびほぜもむのねひぎなひにこおてぐじりばほさりぐつじもッッ!」


ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイインッッ!!!


〜〜〜〜〜〜


「うう…」

「緊張しすぎて早く登校しちゃった…こんな時間じゃ生徒どころかお姉ちゃんだって…」

(入学式、ああもぉうイヤだイヤだ、心機一転なんて狙うんじゃなかった)


『私の妹であるなら、きちんと品行方正で真面目に無事に卒業すること! わかった?』


「…そんなコト言われても、あたしにどうしろっていうのよ」

「あぁーもうッ! 漠然とじゃなく教師ならタメになるアドバイス教えなさいよね全く!」ズンズン
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:21:30.45 ID:U/6nxyQRO
(はっ!? ま、また怒りっぽくなった。もうもうもう、この性格をバレないうちに本当にどうにかしなきゃ)

「……」

「ちゃんと友達、できるかなぁ」


──イイイイイイイイイイ──


「ん? 何の音?」


──ブィイイイイイイイイイイイイイイイ──


「え、後ろから」チラ


ヴイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!!!!!


「ひっ」


清掃「ぞたういびほぜもむのねひぎだびにこおてぐじりばほさりぐつじもォオオオオオオオオオオ!!」
男「ぞたういびほぜもむのねひぎなひにこおてぐじりばほさりぐつじもォオオオオオオオオオオオ!!」


ゴバアアアアアアッッ!!
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:22:30.77 ID:U/6nxyQRO
ドンッ!! キキィ! どっがらがっしゃーーーーーん!!


(う、後ろに乗ってた人飛んでったー!? ひ、人殺し、事故!? いやそれよりも…!)ダダッ

男「うう…」

「あ、意識がある…きゅ、救急車を呼ばなきゃ…」ブルブルブル

男「…ぁぁ…」

(どうしようどうしよう、こんなのどうればいいってのよ! 血は出てないみたいだけど、ってか同級生!?)

男「…じゅ…」

「え、なにっ?」

男「復活の呪文を…」

「ヤバイ! 頭打ってる系だわコレッ!」

『もしもし、救急ですか、消防ですか』

「あ、繋がってた──もしもし、それがそのっ……!? ひいいいいい!?」


清掃「───ぞたういびほぜもむのねひぎなひにこおてぐじりばほさりぐつじもォオオオオオ!!」ダダダダダダ


(外国人がこっち向かって母国語っぽいの言いながらで走ってきてるぅー!!)
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 22:23:22.45 ID:U/6nxyQRO
ズサァッ…!

清掃「オトコ!ぞたういびほぜもむのねひぎなひ、だよ。途中で間違ったよね!」

「あ、あの…ちょっと…」

男「…ぞたう…」

男「ぞたういびほぜもむのねひぎなひにこおてぐじりばほさりぐつじもォオオオオオ!!」カッ!!

「ひぃいいいいいい!!!?」

清掃「ナイス! さあ学校はもう目の前だ、行っておいでオトコ!!」

男「ああ行ってくるッ! 有難う、我が友よ!」ダダッ

清掃「うんっ! ファイトヨー!」ちゅっちゅっ

「…………」ぽかーん

清掃「さて、帰ろっと」ガチャン


ドルゥン ドルゥン ぶびっ ブィイイン


「……なん、なななん、なな…」

『あのー? きこえてますかー?』


第四話 終
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 22:24:02.06 ID:U/6nxyQRO
気まぐれに更新ノシ

次は二話連続です、宜しくお願いします
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 22:51:25.39 ID:93bFIBAA0
ケルケルくん好きだわ
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/10(金) 20:15:56.57 ID:tyyRxUKLo
でも台詞が大変そう
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/16(木) 08:41:55.89 ID:42HwMNTe0
まだかー
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/25(土) 18:47:53.07 ID:yheg8Zf30
はよ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/08(金) 08:15:47.27 ID:VX+RCdKB0
一ヶ月たつぞ早くしてくれ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/28(木) 01:38:50.17 ID:7vetUMhU0
面白いのに出会えた!と喜ぶ
でも放置される作品が多いの
勿体無いな
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/13(土) 07:07:46.28 ID:6YIIaBcX0
まだかあ
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/04(日) 06:05:34.92 ID:5/qpadKn0
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 18:22:16.10 ID:6/2XRr6Z0
はよ
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 05:47:51.70 ID:FlsfUqEx0
書かないなら削除しろ
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/06(木) 04:00:24.43 ID:Ul/dxfQY0
しんで
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/09(日) 10:31:59.16 ID:Q/X+YRGGO
もう死んでて書けないんだよ
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/10(月) 20:34:28.08 ID:Srov+a6O0
は?
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:37:34.50 ID:t4eqgCHaO
ぽちょん ぽちょん


男「ぐぬぬ、うぬぬ、うーぐ」もぞり

ポチョン

男「………」モゾ


── ケタケタ キヒヒ アハハ ──


男「……!?」バサァッ

男(き、気のせいだよな、絶対に絶対で気のせいだよな!?)キョロキョロ


ぽちょん!


男「ひぃっ!?」ビクゥウウ

男(ああ、くそっまた水漏れしてるじゃないか。まったく何度締め直せば気が済むんだっ)ストン

男「これでよしっと」ギュッギュッ

男(早く寝ないと…明日も学校だし、委員長としての仕事もあるし…)スッ

男「バカなこと考えてないで、ちゃんと頑張らないと──」チラ


──ピチョン


男「…え!? あああああああああああああああああッッ!!!???」


翌日 スタッフルーム

受付「ゆぅ〜れぇ〜いい〜?」バリボリボリ…

男「もうもう何度何度締めても締めても水漏れ水漏れでぇ!?」

受付「あーうん、必死なのはわかる。けど状況が水漏れしか分からないよーう」セイセイ
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:38:35.01 ID:t4eqgCHaO
男「アレは絶対に幽霊の仕業なのでは!? 何とかして下さい受付さんッ!」

受付「なんとか言われてもお姉さん困っちゃうんだけどなぁ、あ、ケルケル君?」

清掃「ん? ハーイ! どしたのフォクシィ?」スタスタ

受付「ちょっと聞いてよ、男くんってばまた幽霊みたんですって」

清掃「ワオ! オトコってば運イイネ! ボクまだ一度も見れてない! テラクヤシイ!」ニコニコ

男「ちっとも思ってない顔で言わないでくれっ」

受付「でも凄いよね。お姉さんも未だ音だけ、オーナーだって見たことないのに

清掃「ownerは信じてないだけっぽいケド」キョトン

受付「ありゃ信じる感情がそもそもないのさ。客だって騒いで問題になったのに」

男「問題なってる!?」

受付「苦情たんまりよ、黙殺して証拠隠滅してるけど。だからキミが何時だって使えるわけじゃんか、住まわせてもらってるんだから文句いわなーい」

清掃「掃除しなくて大変ラクチンね」ウンウン

男「だからケル君はそこでなんの掃除をしてたのか教えてくれ…ッ!」

受付「でも水漏れ程度ならケルケル君が直せそうじゃない?」

男「程度ってなんですか? 今までそれ以上なことがあったんですかッ?」

清掃「うん! まかせてオトコ、ボクならきっと安眠を保証できるよ! イッツオーライ!」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:39:15.48 ID:t4eqgCHaO
夜 44号室


清掃「──バルブが緩んでたので治しましたケド、どうだろー?」ゴソゴソ

男「これで水漏れしない…?」

清掃「平気と思うよ? パッキン傷んでたらバイしてくるし、ミズモレ程度なら安心楽ちんよ」にぱー

男「そっか〜…」ホッ

男(……。冷静になってみると、何を水漏れ程度で幽霊幽霊と騒いでたのだろう。凄くケル君に申し訳ないなあ)

男「その、ありがとねケル君。俺の我が儘につき合わせちゃって」

清掃「ノンノン、気にしないのがトモダチだから!」

男「ケル君…!」

清掃「でもやっぱ、シャワールームの水漏れはチョット意味わかんない。アレ謎すぎだよ」ニコニコ

男「唐突に新情報出さないでッ!? シャワールームも!?」

清掃「あ、あれ? 知らなかったの? むしろそっちの赤い液体ドロップを怖がってるとばかり…っ」アセアセ

男「ひょおおおああああああ!!」メキュメキュメキュ…

清掃「ひぁー! オトコが見たことない顔になってくよー!」


【怖すぎたので泊まってもらうことにしました。】
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:41:30.30 ID:t4eqgCHaO
男「け、消したの方がいいの? 前に電気は消さない方が良いって…」

清掃「ヘイキ! ユーレイなんてボク信じないから! どーまんせーまんだよ、オトコ!」

男「う、うん、台詞はアレだけど度胸は頼もしいね…」

──パチン

清掃「えへへ」ニコニコ

男「? どうしたの、うれしそうだね」

清掃「とってもなつかしーフンイキなのです。ボク、故郷で兄弟たくさんで小さな部屋で寝てた!」

清掃「今それをちょっと言いたかったの、オトコにね!」ニコ

男「ふーん、そうなんだ。ちなみにどれくらいの大きさだったの?」

清掃「ここの三分の一ぐらい?」

男(やべぇ…軽く想像を超えてきたので、気安く感想を言いにくい…)

清掃「ジャパンは高く細く家を造るからすごい」フンスー

男「そ、そうだね日本ってやるときゃやるよね…」

清掃「あ。そういえばオトコはどうだったの?」もぞり

男「ん? なにが?」

清掃「前の家ね。ココ来る前はどんな感じの部屋だった?」

男「──……」

男「いや、別にフツーの部屋だったよ、特に何も無い、かな」

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:42:00.75 ID:t4eqgCHaO
清掃「そうなの?」

男「兄妹も居なかったし、両親も毎日仕事で家にも居なかったから、あれだね、中学生の頃は友達よび放題」

清掃「……」

男「休日前になんて、男の友達と真夜中にお酒を飲んだりしてさ。べろんべろんに酔っぱらって大変だったよ」

清掃「……」

男「え、えと、そんな感じだったんだけど…?」チ、チラリ

清掃「すっごい楽しそう! ケルケルも一緒にいたかったそこ!」ぱぁああ

男「あ、うん! お酒は懲り懲りだけど、今度はココで一緒にやろうよ」

清掃「うん! やろうよ、ね!」ニコニコ


ぽちょん


男「今の音って、」ババッ

清掃「──オトコ、静かに」シッ

ぽちょん

男「シャワールームから、だよなコレ…うわっ…どうしようどうしよう本当に…!」

清掃「大丈夫、安心して。ボクが居るからヘイキ」スサササッ

清掃「ボクが見るよ、怖くないしヘイキだし、オトコはそこで待っててね」コソーッ

男(ケルケル君…っ!)

清掃「どまーんせまんッ! わるいごはいねがァーッッ!」がぱぁ

男(色々間違ってるけど威勢は格好いいよ!)

清掃「……」

男「…? け、ケル君? どうしたの固まって──」

清掃「…ファック…」スッ ばたこぉーん!
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:44:06.46 ID:t4eqgCHaO
次の日

受付「ありゃ重傷だ。想像してみ、あの温厚なケルケル君がさ、流暢な英語で罵詈雑言の場面をね」

男「ハイ…マジ気安く頼んでスンマセンでした…っ」ドンヨリ

受付「君がダメージ受ける必要ないのに、どったの?」

男「いえ、無視してください…儚い俺の夢が砕け散っただけの話です…」

受付「うむぅ、にしても見逃せない状況になっちゃったなぁ。従業員が認めちゃえば対策を講じないとね、流石にさ」

男「…何か案でもあるんですか?」

受付「御札貼ろっか。あと部屋の隅に塩盛って、部屋の空気の出入り口にちょっとお高いお香を焚いてみよう」スッ

受付「そういや昨日の晩酌のお酒、残ってたっけ。神棚上げてないけど、まっいっか」

男「え、えっ? あれ、意外としっかり考えてたんですねっ?」

受付「おいおい、失礼なやっちゃなチミ。言っとくケドお姉さん、これでも現職の巫女さんよ?」

男「はぁっ!? 嘘でしょそんなん!?」

受付「ハイ傷ついた〜〜お姉さんのやる気全てその反応でブチ折られたので、もう帰りまーす」

男「ま、待ってください! ごめんなさい! 謝りますから、どうか戻ってきてください! 何でもしますから!」

受付「…いったなぁ〜?」キラリン


夜 44号室


男(確かになんでも、とは言ったけども…)

受付「ほれっ、もっとツマミもってこォーい! ゲラゲラゲラゲラ!」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:44:41.51 ID:t4eqgCHaO
男(一晩、晩酌につき合えって。後で使うっぽいお酒飲んじゃってるし、しかし無碍にしても解決しない…)

受付「げぇえぇぷ」プヒー

男「……。敢えて突っ込みますけど、豪快ですね本当に」

受付「にゃははー、おねえひゃんらんはぁ〜すろいのれす!」

男「呂律ヤバいヤバい。…だ、大丈夫なんすか?」

受付「んぐっんぐっんぐっ──ううん、大丈夫じゃない、明日地獄みると思うよん?」

男「なら何故そんな無茶を…」

受付「知らないのー? 騒ぎは一種の厄払い、だから世の中にお祭りって概念があるんだから」

受付「人が居て、皆騒いで、血の通った空間は、吹き溜まった厄を洗い流すの」コトリ

男「へぇ〜そりゃ凄いっすね、なんだか格好いいです、受付さん」

受付「ほめろー! もっとお姉さんをうやまえー!」

男「へへぇ…どうかご贔屓にお願いしやす…へへっ…」トクトク…

受付「ん…」

男「でも、これぐらいにしておいて下さい。あんま飲み過ぎて辛い目にあってる姿も見てて辛いですし」

受付「ん? んん、うん…」くいっ

男「って、聞いてねーなこの人。ま、まあ除霊的なことしてもらってる立場ですし多くは言いませんけども…」

受付「……。なんか、きみ、イイね」ジッ

男「へっ?」びくっ
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:45:10.92 ID:t4eqgCHaO
受付「慣れてるじゃん、めんどーな大人の相手シカタさ。前から思ってたけど、本当に高校生なりたて?」ジィー

男「そう、ですけど、いやっ一週間前ぐらいにみたでしょ? 俺の制服姿を…」

受付「くす、そうだったね。確かに、そうだった」ニコ

受付「でも好きだよ。君のそういった気苦労多そうな部分、魅力的だと思う」クス

男「──ゴクッ」

男(はぁうっ!? な、なんだこの空気!? 視線逸らしたいのに逸らせない!)

受付「……」じぃー

男(どうして無言で見つめてくるんだ!? やばい、何がやばいか知らんがとにかくヤバい!)

受付「どしたのよ、見るからに緊張しちゃってさ。いつも余裕ある君らしくないじゃん」ススス

男「なっなーに言ってるんですかーっ? 意味不明ッス、理解不能ッス、全くもって!」ススス

受付「──意識、しちゃった? お姉さんと一緒の部屋に、二人っきりだもんね」ズズズイッ

男「あっははまっさかー! んな冗談はたち悪いッスよほんっとにぃ〜〜〜……っ!」ズサァッ

トン!

男(おぅあ!? 壁まで追いつめられたァ!?)

受付「……」

男「…な、なんですか…?」ダラダラダラダラ

受付「──騒ごっか?」ニヘラ

男「え”っ?」

受付「ふたりでいっしょ、おんなじことシて、わいわいきゃっきゃって──お姉さんと、君で」スッ ぐいっ

男「や、厄払いって意味でっ? うぉおっ?」ドサッ

受付「んふふ。そうそう、二人で一緒に厄払いだよ〜〜」すとん
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:47:03.77 ID:t4eqgCHaO
男「……何故、俺の腹の上に座るんスか……」バクバクバク…

受付「君に、近づかなきゃ騒げないからじゃん、ね? 後のことはお姉さん任せで良いから…」スススッ…

男「うッ、受付さんッ!? それ以上は流石に変な感じにッ、つか服を捲るのは一体どんな理由があって…っ!?」

受付「ほほぉー…」コショコショ

男「わぁひぃ!!??!」

受付「やるやないの、君。ちょっと驚いた、坊ちゃん育ちかと思ってりゃ中々どうして」サスサス

男「だぁーーーーッッ!!」びびくん

受付「くふふ、おなか触れて「だぁー!」とか叫ぶ人はじめて見たし。ね、ね、じゃあこっちはどぉーかなぁ〜?」

男(くひっ、おひぇっ!? っっっ……た、耐えるんだ俺最後までッ! ここで機嫌損なわせる訳にいかないのだ!)

男(知ってる、分かってる、この状況がモロに危ない一歩手前だということはッ! しかし…ッ)

男(しかし、だ…ッ!!)チラ


ぽたり ぽたり ぽたぽた…


男(──シャワールームのドア隙間から水がこぼれ落ちてるんですけど! なんか真っ赤な奴が!)ゾゾゾォ

受付「こことかどぉ?」


ビシャッ! バシャバシャ…


男「わあああああああああああああああッッ!!??」

受付「絶叫は凄すぎ、敏感すぎでしょー」ケラケラケラ

男(しくされこの…っ…のんきに笑っとる場合かアンタ!)

男(だが、後ろの状況を知られ逃げられたらかなわない…ッ! 耐えろ、迎える転機までこの状況下を…っ)
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:47:51.39 ID:t4eqgCHaO


──ぴちょん


男(…? なんだ、音が収まった?)

受付「ふむふぅー、たいへん満足した。やっぱ若いこ良いなぁ、ふれてるだけでお姉さん元気になっちゃうなー」

受付「──それじゃ、いただきます」ぱん

男「って、ちょ、ちょっとぉー!? 今、はっきりと不可解な言葉を発しましたよねアンタぁー!?」

受付「大丈夫。ヒドいことはしないしなーい」ズリズリ

男「きゃああああああああああ!!!!」

受付「うへへ…生娘でもあるめーし、なまっちょろい悲鳴あげてるんじゃねーよ…かまととぶりやがってぇ…」ウェヘヘ

受付「ここは正直に身を任せなさ───」

男「っ…っ…っ…」ぶるぶるぶる

受付「──妙に怖がってると思ってたけど、きてたか幽霊っ!」

ばばっ!

受付「今日こそ年貢の納め時! 現職巫女さん厄払い、世に残った残留思念ぱやっと祓ってみんぜようッ!」



叔母「……」



受付「そして続きをぱぱっとはじめ、ちゃ、…う」

叔母「…で?」シュボッ

受付「……………………」ダラダラダラ

叔母「何か、ほかに【お前が】言い残す言葉は?」フゥー

受付「え、ダーイ…な、感じ…ですか…?」

叔母「ダァ〜〜〜イ、だなぁ」ぷかぁ

受付「──ほんっとすみませんでしッぷげらぁッッ!!??」ゴッッ!!

叔母「お、いいの入った」ヒュ〜

男(高速土下座に膝の超反応カウンター…えぐい…)
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:50:50.32 ID:t4eqgCHaO
〜〜〜


叔母「私は怒っているよ。珍しく君にね」

叔母「──居もしない幽霊で周りを騒ぎ立てて、経営に支障が出たらどうするつもり?」

男「で、でも…っ」

叔母「話を聞く限りじゃ、水漏れ程度で騒いでたらしいじゃないか」

叔母「ケルケル君だって「ナニモミテナイヨ」と断言していたし」

男(忘れてたいんだろうなあ…深く追求するのは可愛そうだから良いけども…)

叔母「いい加減にこれっきりにして、二度と騒がないように。良いね?」

男「わかり、ました。本当にすみませんでした…」ペコリ

叔母「素直に謝るのは良いことだ。許そう」ウム

男「…ありがとう、ございます…」ションボリ

叔母「まあ、あのさ。君がこの部屋が嫌なのは別にかまわない」

男「……」

叔母「今日から私と一緒に住めば良いと思うんだけど、どうかな…って」チラ

男「あの。ちょっと良いですか?」

叔母「何?」キラリン

男「少し気になってることがあって。ごめんなさい、もう一回だけ幽霊の話題を掘り下げさせて下さい」

叔母「…………、どうぞ」ムスッ

男(ううっ、やはり機嫌を悪くさせてしまったか。けど気になってる「あの現象」は追求しておきたい)

男「叔母さんは一度も、幽霊的な現象を見たことないんですよね?」

叔母「いないよ、そんなモノは」

男「…そうですか、だから気になったことが一つだけ」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:51:28.67 ID:t4eqgCHaO


男「音が、鳴り止んだんですよ。叔母さんが44号室に訪れた途端に」


叔母「水漏れが収まったって? へぇ、それが何?」

男「ほぼ、毎日ラブホに来てるハズの叔母さんが幽霊未経験で、なのに受付さんやケル君は少しばかり経験してる」

男「つまり、これらに繋がりがあるとは思えませんか?」

叔母「まったく感じない」フリフリ

男「です、よね。こじつけにも程があるし、それじゃあまるで怖がっているのは【幽霊のほう】になるし…」

叔母「……」ぴくっ

男「そんな馬鹿げた話あるわけないっすよね、ごめんなさい」ペコ

叔母「……………」

男「……、ん? え?? ある、んですか…? その可能性…が…?」

叔母「……………、無い!」

男「うそつき! 叔母さんの嘘つき! 可能性感じちゃってる顔してた絶対! 絶対に絶対に!」ビシッビシッ

叔母「あれ…おかしいな…胸ポケットに入れた煙草がなくなってるなぁ……」キョドキョド

男「年がら年中タンクトップだろうに!」ジトー

叔母「いやっ違う、だってあり得ないからっ、そんなことっ」

男「何を隠そうとしてるんですか」じぃー

叔母「……………」ダラダラダラ

男「本当は幽霊が実際に居ることを隠してるんじゃ…」

叔母「それは本当に知らない! 私は…っ」

男「──それは?」

叔母「あが、ぱく、うぅ〜〜っ……はぁ〜〜……っ」カックシ


従業員室

男「──幽霊じゃない…? それどういう意味ですか…?」

叔母「私が知ってることは一つ、過去に、悲惨な目にあった女性が居たってことだけ」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:52:36.74 ID:t4eqgCHaO
男「44号室で、ですか?」

叔母「今からだいたい十数年前に、とある学生カップルがラブホテルを使用したんだ」シュボッ

叔母「二人ともラブホテルは初体験らしくって、そりゃもう楽しみ半分緊張半分で44号室に訪れたらしい」

ふぅー

叔母「そして悲劇が起こったんだ…」

男「いきなり!? い、一体どんな悲劇が…!?」

叔母「うん。フられたの」コクコク

男「…はいっ?」

叔母「彼女のほうが、ココに来ていきなりフられた。実は彼氏のほうが常々鬱憤が溜まってたらしくて…」

叔母「ラブホテルまで着といて、彼女がうにゃむにゃ難癖付け始めたんだ。やっぱり私たちには早いよ、みたいな感じで」

男「それで呆れた彼氏さんが、その彼女さんをフったと…? ここまで来ておいて…?」

叔母「結果論だけど、どっちもどっちだよね」

男「いやっ、まあ確かに悲劇的っちゃあ悲劇ですけどその別れ話がどう幽霊騒動と繋がってくるんですかっ?」

叔母「この話には続きがあって、フられた方の彼女が周りに自慢してたんだ。とうとう彼氏が出来た、今度ラブホテルに行っちゃうって」

男(女子って自慢するんだ、そんなこと)

叔母「でも結果があれだったことで失墜したまた呆然と44号室に佇んでた彼女さんの所に…」

叔母「──当時、彼女の先輩で、極秘バイト中だった私が掃除にやってきた」

男「うわあぁぁ〜〜……」

叔母「あのときの、彼女の顔は忘れようにも忘れられない」フゥー
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:55:03.31 ID:t4eqgCHaO
男「……。え、えっと、もしかしてその…?」

叔母「それからだったね。幽霊騒ぎが出始めたのって」

叔母「そう、その時の彼女のショックもとい【怨念】が44号室に染み着いたと言っても過言じゃないんだ」グリグリ

叔母「特に私が来たら超常現象が収まる、ってところが関連性が見受けられるし」

男「んな馬鹿な話が…」

叔母「馬鹿な話なんだよ。でも原因を突き詰めると必ず、あの日からでしか考えられない」

男(そりゃ叔母さんも認めないよなあ…)

叔母「ちなみに、そのフられた彼女である私の後輩は元気だから安心して」

男「あ、そうなんですか…生き霊って奴なんですかね、よくわからないですけども、生きてるならよかったです…」ホッ

叔母「というか君の学校の教師だけれども」

男「ぐッ……ここにきてまさか聞かなきゃ良かったと思わされるとは……ッ!!」

叔母「後輩と色々話してみたけど、全く認めないしむしろしつこいと、嫌われちゃったしさ」

叔母「出来ればこの話はもう金輪際したくないんだ、個人的に」

男「…はい、わかりました。でも原因だけでも知れて良かったです」

叔母(これは一緒に住むと言われる流れかな?)わくわく

男「でもやっと安心しました、ならここで住み続けても平気ですね!」

叔母「今日は記念にぱーっと出前を──うん?」

男「ただの怨念程度で起こる現象なら、なにも怖くない。俺が一番怖いのは正体不明なことなんで」ニコニコ
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:56:00.90 ID:t4eqgCHaO
叔母「え、え、えっ? あれ? あの、でも超常現象は起こっちゃうかもだよ…?」

男「でも叔母さんの後輩が原因なんでしょう?」キョトン

叔母(え、なに言ってんだこの子?)

男「というか実家の方がやばかったですよ、ガチもんでしたもん」

男「夜に誰もいないのハズの庭から酒盛りする声聞こえたりして。あと確実に戦時中の若い兵士っぽい会話だったり」

男「後で調べ尽くして、近所に特攻隊の基地があったのが分かって安心しましたけどね」

叔母「…ぇぇぇ…」ドンビキ

男「あ、そうだ。後輩さんのことも調べないとダメな流れかなコレ、こうしちゃいられない。明日から備えないとな」バッ

男「それじゃあ叔母さん、言い辛い事情話させてしまってすみませんでした! もう金輪際しませんので! ではっ!」


パタン


叔母「……うん」スッ

叔母「やっぱ、あの子すごいな」


【叔母は深く考えるのをやめた】


第五話 上編 終
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:58:19.64 ID:t4eqgCHaO
学校 教室 放課後

男「……」

女「……」

男「あの、女さん? 出来ればクラス委員長として意見を頂きたいんだけど…?」

女「ふん。貴方の好きにしたら良いでしょ、私のような不出来な人間の言葉より、貴方の意見のほうが通りやすいわよ」

女「…きっとねっ」キッ

男「そう、言われても。今回は委員長二人で今月のクラス目標決めるって話だったじゃないか」

女「なによ、不良のくせに優等生ぶっちゃって」

男「だからそれは誤解だ!」

女「なーにが誤解よばーかばーか! 日本全国どこ探しても、入学式当日に原チャリでぶっ転ける奴がいますってーの!」

バン!

女「なのにっ…誰一人信用しないどころか、私が何故か変な奴だと周りから思われる始末…!」ぶるぶるぶる

男「う、うん、えと大丈夫? 手痛くない?」

女「うっさいッ! なんでよ…なんでこうなるのよっ、どうして貴方が一年代表の最優秀生徒なのよ…っ!」

男「またその話か…」ハァ

女「このインテリ不良! 人を騙して悦を得る変態男子ぃー!」

男「ちょっと!? あんまり大声だすなってば…!」

女「なによ! 触らないでよっ!」バッ
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:59:39.34 ID:t4eqgCHaO
男「いや、あんまり騒いでるとまた変人だと思われるんじゃないかなってさ…」

女「おぐッ」

男「あのね、入学式の日に一緒に謝られなかったのは本当に申し訳ないと思ってるよ。許してくれとまでは言わないから」

男「騒ぐのだけはやめとこう。お互いのために、俺は俺で君の手助けができればそれでいいよ」

女「…なによ、まったく」ブツブツブツ

男「…というか、君まで委員長になる必要あった?」

女「はぁっ!? そりゃあるに決まってるじゃない!」

男「てっきり面倒な仕事は全部、俺がやれってことかと思って」セイセイ

女「だって委員長って優等生っぽいじゃない…! なって損なんて考えられないし! 格好いいと思うの!」

男「……あぁ〜、そういう…」

女「今ッ、アホっぽい理由だと思ったでしょ…ッ!」ブルブル

男「いやっ!? 無い無い無い! まったくもって!」ブンブン

女「──私はならなくちゃダメなの、優等生に。ダメな大人にならないよう、これからずっと頑張らなきゃいけないのよ」

男「志は素晴らしいと、思う。それを初っぱなから挫かせてしまったのも申し訳ないと思ってます…!」

女「本当にその通りよ全く…」ハァ

男「なら、頑張って考えないと。今月の目標をさ、格好いい委員長としての最初の仕事なんだし」

女「元気な挨拶ぐらいで良いじゃないの」

男「言う割にはテキトウに決めるね、君。もっとこう他にある気がしない?」

女「じゃ貴方のほうには良い案があるってわけっ?」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:01:22.47 ID:t4eqgCHaO
男「……。この前、男子グループと女子グループが衝突した雰囲気があった」

女(え、全然知らないんだけど…)

男「周りは今後一切、その事は触れないでおこうって空気だけど、少し気になるし、仲直りを促す的なものにすれば…」

サラサラ

男「うん。これでどーだろう?」

女「『男女で挨拶を心がける』…えぇ〜? こんなの明らかに意識してますってアピールしてるようなもんじゃない」

男「…やっぱそうなるか」シュン

女「はぁーん、優等生不良は同級生間での雰囲気把握は苦手なようね、良いこと知ったわ」クスクス

男「………」

女「な、なによ? 急に黙って」

男「優等生不良ってどういう意味?」

女「私も知るかんなモン! 目標なんてちゃっちゃと決めて、雰囲気変えたいならもっと現実的なことしなさいよ!」

女「今月クラス目標なんて誰も気にしない。高校生にもなって小学生な無垢さ持ってるワケないじゃない!」

男「へぇー、じゃあ例えば何をすれば良いと?」ジトー

女「え、ぇえと、そりゃ考えてるわよ、勿論」

女「……。クラスの男女仲が悪いなら、代表的な男女が仲良くしていけば──どうのこうの上手く影響が広まったりとか?」

男「代表的な男女って?」

女「え? そりゃ君と私になるけど…」


男「……」

女「……」


女(あれ、突然なにを言い出したんだろ、私)ドキ
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:02:02.96 ID:t4eqgCHaO
男「確かに良い案かも知れないな…」

女「…マジで言ってるのそれ?」

男「他に思いつく案があるわけでもない。よし、それでいこう」ガタ

女「ちょ、ちょっと本気なの!? わ、私と貴方と二人で、率先して仲良くするってことよそれ!?」

男「良いじゃないか、むしろ望んでた機会だと思ってるし」

女(な、なによその行動力は)

男「? なにしてるの? 早く一緒に帰ろう、確か同じ方向の駅だったよね」がらり

女「へっ?」

男「早いうちから始めていこうじゃないか、仲直り作戦って奴」

女「……あ、うん…」ぽかん


数日後

女(──うそでしょ、本当に?)キョロ

わいわい がやがや

女(たった数日で、確かにギスってた雰囲気が収まった気がする。これも作戦のお陰…?)

「ねえねえ女さん。ちょっといい?」

「あの噂ほんとっ?」

女「へいっ!? な、なんのことかしら…っ?」

「委員長二人がつき合ってるって話だよ〜」

「よく一緒に帰宅してるの、見てる人多いよ〜?」

女「──…ハァッッ!? んなワケ、もがぐごっ」ぐいっ

男「すぐ大声出すのは悪い癖だよ、女さん」しぃー
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:04:24.97 ID:t4eqgCHaO
女「けほこほっ、貴方ねえちょっと力加減考えなさいよ!? 死ぬかと思ったじゃない!」

男「あ、ごめん。でも、いつも女さんは唐突に騒ぐし…この前も…」

女「あーっ!? ゲーセンの時のやつまだ言ってるの!? クレーンゲームで景品とれて騒がない方がばかじゃない!」

くすくす

女「そればっかりは貴方が納得するまで言い続け──…え、何よ?」

「ねー、やっぱ付き合ってるよねww」

「お幸せにー」フリフリ

女「なぬッ!? なにを馬鹿なことを言って…! かふッ!」グイッ

男「…ちょっとこっち来て」ズリズリ

廊下

男「否定しても良い、けど必死になって騒ぐのはダメ。わかった?」

女「必死に否定しなきゃ勝手に勘違いされるでしょ…!? さっきみたいに!」

男「だったら言われる度に否定すればいい、躍起になって作戦内容を暴露しない自信あるの、女さん」

女「……、何気に私の扱い方わかってきてるわね、貴方」

男「自分で言うな。ほらそーいうところだ、この数日で君がどれほど率直に物事をぶっちゃけるかを身を持って理解したんだ」

男「もう少しだけ我慢して。嫌だろうけど、あとちょっとで今の雰囲気なまま定着しそうな感じはするから」

女「う、うす…」コ、コクコク

男「後で散々に俺のこと罵倒してくれ良いから、それじゃあね」フリ
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:04:54.11 ID:t4eqgCHaO
スタスタ…

女「ま、待ちなさいよっ。 …貴方の方はそれで良いの? 周りから勘違いされたままでも」

男「自分は平気。慣れてるから」

女「…変な返事しないでよ、不安になるじゃない」

男「うーん、でも、嫌な気はしないよ? だって女の子と付き合ってると噂されるのは男として悪くないし」ポリ

男「あとで散々ボロクソに言われる前提だったとしてもね、うん」ニッ

男「じゃあ、また放課後で」フリフリ

女「………」ムスッ

女(なによそれ、変に意識してるの私だけみたいじゃないっ)プンスカプン

女(フン! 良いわよ、だったら私なりのやり方で楽しんで行こうじゃない。始めはそうね、貴方の余裕綽々の顔剥いでやったるわ!)


〜〜〜


男「どうしたの? 急に自転車で帰ろうって」

女「送って行きなさいよ、私のこと」

女「それぐらいお手のモンでしょー? 原付で二人乗りしてた奴が、規則が〜〜なんて生っちょろいこと言わないでよね」ぷいっ

男「これ、荷台無いけど大丈夫?」

女「え”?」

男「流石に後ろをスカートで立ち乗りは辛いと思うけど…?」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:06:39.09 ID:t4eqgCHaO
ギィ ギィギィ…

女「ふぬりゅうううううー!!」ギィコギィコ

男「アンタ本当にガッツというか諦め悪さ凄いよね…」グラグラ

女「やるといったらッ、やるッ、んのよぅ! どうッ!? 参ったかしら!?」ブモモォーッ

男「う、うん、今ちょっと女子としてやらかした顔してるけど概ねオッケーです」コクコク

〜〜

女「ん」グイッ

男「え、何? 弁当箱? これ、くれるの?」

女「作ってきたわ、超! 完璧にね、代わりにアンタの食べさせなさいよ」

男「……」スッ

女「どうも。じゃない! ふん! 有り難く思いなさいよね! …どれどれ…」シュルシュル

ぺかー!

女「え…超綺麗…」ぽけー

男「がりぼりがりっ、すげぇ…全部の卵焼きの中に巨大殻入ってるんですケド…カルシウムばっちし…」

女「くッ! いいわよもうッ、交換は無し! ハイ終わり!」ササッ

男「あ。でもご飯の炊き方は凄い好みだ、いいよね固めに炊くの」のほほん

女「あぐっ…あ、ういッ…いいわよね、固い方が口触りいいし…お姉ちゃんもそっち好きでさ…」モジモジ

男「うんうん。どうせなら二人の弁当分のオカズ合わせて食べようか?」

女「…うん」コク

〜〜

女「──…」ボォー

女(今日は何をしよう。一昨日はカラオケで点数超えてやったし、中間テストの見直しもやっちゃったし)

女(あ。そうだ、まだケータイのアドレス知らないじゃない)ハッ

女「くくく、さすれば機会が多く訪れるというものよ…」ケケケ
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:08:14.96 ID:t4eqgCHaO

カァーカァー


女「…遅いなぁ、アイツ…」ボソリ

女(何してるんだろ、この時間帯いつもならすぐに教室に来るのに)

がらり

女「! ばかねっ、この私を待たせるなんて良い度胸じゃない!」バッ

女「今日という今日は堪忍袋の尾が切れたわ! 駅前クレープおごりジャンケン、受けて立ってもらうわよ──」チラ


女姉「ずいぶん楽しそうね、貴女」


女「──おね、ちゃ!?」サァーー

女姉「失言よ、それ。学校では絶対に姉と呼ばないよう散々注意したのに、まだ理解できてないの?」

女姉「ちゃんと先生と呼びなさい。良いわね」

女「ご、ごめんなさい先生…」シュン

女姉「もういいわ。無駄に残ってないで早く帰りなさい、折角、私が親に掛け合って塾を免除させてあげたのに」ハァ

女「…はい…」

女姉「貴女が自主勉強を頑張ると言い切ったの、忘れたのわけじゃないでしょうね」

女「……」コクリ

女姉「──でも、今回の中間テストは良かった」

女「えっ?」

女姉「勉強したのね、ちゃんと。しかしまだ甘い、ニアミスの酷さが教員連中で話題のネタになるぐらい酷かったわ」

女「…ウッス…」

女姉「けれど個人的に評価してあげる。貴女の頑張りは認めるわ。きっと良い──」

女姉「──良い、クラスメイトが居たのね」フッ

女「……!」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:08:46.67 ID:t4eqgCHaO
女姉「暗くなる前に帰りなさい。良いわね、絶対よ」

女「あ、おね、えぇと先生…!」

女姉「なに?」クル

女「あ…その…えと…これからも、頑張りますっ」ピシッ

女姉「くす。ええ、勿論。だって期待の妹ですから」ニコ


電車内

女(えへへ、お姉ちゃんに褒められちゃった)デュフフ

女(しばらく嬉しさに呆然としちゃってて、さらに帰宅時間が遅くなったのは我ながらアホっぽいけど…)

すたすた

女「頑張ったね、だって…期待の妹ですから、だって…んふふ〜」ニヨニヨ

女(でも、あれかしら。認めるのは癪だけど、ほんの数歩は貴方のお陰って考慮しても良いかもね)クス


がたんことーん がたんことーん


女「……今日のこと報告したら、なんて言うかしらアイツってば」

女(なーんてね、お姉ちゃんのことも知らないだろうし、言っても意味不明だけだろうし)

女「ってあれ!? 既に降りる駅通り過ぎてない私!?」ガバァッ

ぷしゅー
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:10:03.68 ID:t4eqgCHaO
女(やばいやばい! これ以上遅くなったらお姉ちゃんが先に家に着いちゃう! 早く対向車線に乗り換えないと…!)

女「はやくはやく───」ダダッ


女姉「……」

男「……」


女「───…ぇ…」

女「お姉ちゃん、に。どうして隣に、貴方が居て…」ピタ

女姉「…」スタスタ
男「…」スタスタ

女(そのまま駅を降りていく…? こんないかがわしい繁華街しかない駅で、二人でっ、どうして…!?)

女「…っ…」ゴクリ すた、すたすた…

〜〜〜

女(どこまで行くんだろう、というか二人は知り合いだった? 二人で一緒に出歩くぐらいに? いつのまにっ?)スタ…

女(いや、待って、でも確かに)


『──良い、クラスメイトが居たのね』


女(──お姉ちゃん笑ってた、あんまし人を評価しないで普段もピクリとも揺るがない鉄仮面お姉ちゃんが…)

女(知ってた、の? 誰に教わってたのか、一体誰が良いクラスメイトだったって…)

女「あ! 見逃してしまった…!?」キョロキョロ


たったったったっ
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:11:28.82 ID:t4eqgCHaO
女(やだ、なんかやだ、こんなの嫌だ…っ)ドッドッドッドッ

女(これ以上追いかけたら駄目な気がするのに、でも、足は止められない───)

ババッ

女「………」ドサリ


『スィート・ラブホテル』


女「…あ…」


女姉「…っ…」スタ、スタスタ…

男「………」スタスタ…


女「…嘘、あはは…そんなの、だって…っ」

女「ッ…!!」くるっ ばっっ!


たったったったっ……


第五話 中編 終
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/22(土) 18:11:55.52 ID:t4eqgCHaO
三日後ノシ
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/22(土) 19:04:09.02 ID:MkT9wMmMO
まだ読んでる途中なんだが一言いいたい
スレタイで敬遠してたがメッチャ面白いんだけど
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/22(土) 19:41:15.72 ID:sw2l5ml40
続きが気になる。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/23(日) 02:03:01.35 ID:A9ZYyl18o
超待ってた
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/23(日) 04:56:19.09 ID:38V5B8E7O
どんだけ待ったと思ってるんだよ!
エタってなくてよかった
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/23(日) 10:49:41.49 ID:+gGjxSgpo
おおっ!!来てる!!
待ってなんか居なかったけどスレ覗いたら更新が!!
叔母さんと一緒に住む流れに見せ掛けてわくわくさせたのは許さん
責任持って叔母さんルートも書きたまえ
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/23(日) 14:31:15.62 ID:UzCuB8vQO
えっと…これはつまり男と女は従兄弟?
従兄弟は結婚できるはず…
このまま女ルートに突入してほしい
でも受付ルートも…大穴でケルケルくんルートでも
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/25(火) 03:53:38.38 ID:60CGWpVD0
諦めかけてた作品の更新を偶然知った時の嬉しさはパネエ

158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:40:18.51 ID:m7QS7m8KO
【今から時は遡り…『入学式前日』】


女姉「……」スタスタ

「今日も凛々しいよな、女姉先生」
「もう歩く姿も完璧すぎて笑える」
「大学生の頃にいかがわしいサークルを何件もぶっ潰したらしいぜ」

女姉(まったく、噂をするなら耳に届かない範囲でしなさいよ。まる聞こえじゃない)フゥ

女姉(まあ…悪い気はしないけれど、せっかくのプラス評価に水を差すきはさらさらないわ)スタスタ

「女姉先生。今日も一段と歩き方が美しいですねえ」

女姉「それ、軽度のセクハラですよ校長。おはようございます」ペコ

「これはこれは手厳しい。おはようございます」

女姉「それで、何かご用でも?」

「ええ、明日は新入生の入学式ですから。確か貴女の妹さんが入学されるとか…」

女姉「はい。不出来な妹ですが」

「またまたご謙遜を。期待していますよ」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:40:45.38 ID:m7QS7m8KO
女姉(……、そうだ。あの子がとうとう入学する──中学で問題ばかり起こしていた妹が、私が教鞭を執る学校へ…)

女姉「けれど…」

女姉(大丈夫よ、私。この私が居る限り、妹には決して問題行動を起こさせたりしないわ)

〜〜〜

「おい!? 聞いたか、入学早々に一年女子が一年男子に喧嘩ふっかけたらしいぜ!?」

「ああ、しかも周りに舐められんようにと、目立とうとして救急車を体育館に呼び込んだんだろ…!?」

「やべえなマジでやべぇの来ちゃったよ一年坊…」


女姉「……………」


「…聞いた話によると女姉先生の妹らしいぜ…」
「まだ騒いでるって、一年女子。凄い気迫で喚いてるらしい」
「先生が完璧主義者なのって、妹さんを更正させる為らしいぞ」


女姉「………………………」ピクピクピクピクビクビクッッッ


「女姉先生」ニコニコ

女姉「こ、校長…! 今回の不祥事、教員立場という以前に姉として──」

「ええ、ええ、わかっていますよ」ニコ

女姉「え、いや、あの、…一体なにを?」

「私の【期待】、裏切らないようお願いしますねえ」ニッゴリィ

女姉「……ハイ……」ダラダラダラ
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:41:44.58 ID:m7QS7m8KO
〜〜

女姉(これじゃあ私の完璧な人生設計に傷、いや罅、ううんそれ以上の影響が出てしまう…)ギリッ

女姉(妹に、あの騒動の理由を問いつめても意味不明なことばかりいう。なによ、復活の呪文で起きあがったってッ!)

ダァンッ!

女姉「──私はいつだって完璧じゃないと駄目なのよッ!」

女姉(なんとしてでも、今後の妹の問題の芽を潰す手段を考えないと…)グググ


ガラララ


女姉(…! こんな時間に生徒っ? しまった、さっきの殴打を聞かれた可能性が──)

男「あの、すみません…」コソ

女姉「──君、一年代表に選ばれた生徒よね?」

男「え、あっ、はいっ! 覚えていただいてたなんて嬉しいです!」

女姉(忘れるわけがないでしょう! 馬鹿妹が喧嘩ふっかけた張本人、ただの生徒ならここまで問題にならなかったというのに…!)

男「その、えーっと…」キョロキョロ

女姉「君、もう下校時刻はとっくに過ぎているのよ」

男「す、すみません! 実は部活動の勧誘を遅くまで受けてまして…断るに断りきれずこの時間帯に…」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:42:20.38 ID:m7QS7m8KO
女姉(うぐッ、超良い子そう。まったまったくあの子はなんでまた、こんな子に喧嘩売ったわけ…?!)

男「その〜無理を承知でここに来たんです。実は個人的なことで先生に相談がありまして〜…」チラ

女姉「個人的相談?」

〜〜

男「──というワケなんです、ええ」シュン

女姉(嘘、まさか本当にこの子が原付二人乗り事故を? あの子が言っていた通りの展開が起こってた…?)

男「今更、周りに真実を話しても信じてもらえずに、むしろ庇ってあげる必要ないと言われる始末でして…」

男「だから、こうなったらもう公式的に教師の方々から俺が起こした真実を発表してもらいたいんです!」

女姉「……」

男「どうにか出来ないでしょうか? このままじゃ彼女が可愛そうで…」

女姉(──駄目だわ、学校側が認めた代表一年が起こした不祥事を発表するなんて認めるわけがない)

女姉(こうなってしまえば話は別。むしろ妹が話題を肩代わりしてくれて有り難いと言わんばかり)

女姉(それにしてもこの子。わざわざそれを教師に提案しに来るなんて、ただのお人好しにしては…不可解ね)

男「あの? 先生…?」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:43:15.22 ID:m7QS7m8KO
女姉「……。君は彼女に謝罪がしたいのかしら、それとも周りの誤解を解きたいのかしら」

男「…どちらもです」

女姉「賢明な判断ね。けれど、良心の呵責から出た行動だとしても【学校側はなにもしない】が私の見解よ」

男「っ!? ど、どうしてですか…!?」

女姉「【君がそういう立場だから】。わかるでしょう? 君が起こした罪は簡単に周囲は認知できない、してはならない」

男「……」

女姉「だから──どうしたの?」

男「そう、ですか」スッ

男「有り難うございます。教師として、言いにくいこと敢えて言ってもらえて、改めてふんぎりがつきました」

女姉「私は…」

男「──一人で、頑張ってみます。何とか誤解が解けるように」ニコ

女姉(この子…まさか、始めからそのつもりで…?)ハッ

女姉(これ、は。決まったわ、今さっき咄嗟に浮かんだ名案が。きっとこの子ならやり遂げてくれるかも知れない──)

男「では、これで…」ガタ

女姉「待ちなさい! ううん、待って…! どうか最後まで私の話を、いや願いを聞いてほしいの…!」

男「願い…?」

女姉「そう、お願い。貴方でしかきっと出来ない、やり遂げられないことを教師として、一人の人間として…ううん」

女姉「──一人の姉としてお願いしたい
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:44:04.80 ID:m7QS7m8KO
数日後

「えー、今日はこのクラスでの委員長二人決める。誰か立候補、また推奨する者はいるか」

女「は、はいっ! 私が委員長に立候補します!」バッ

ヒソヒソ ザワザワ

「え、あっいやぁーそのだね、君は…」

男「自分も委員長に立候補します」ガタ

「えぇっ? し、しかし、でも君は…」チラ

女「……っ」ビクッ

男「他に誰か立候補する人も、推薦する者も居ないみたいですし。どうでしょう、このまま決めてしまっては」

「ふぇぇ…?」

男「──何か問題でも?」

「そうだそうだー早く帰りたいつーの」
「先生ぇも中間テストの範囲決めで忙しいっしょー?」


キーンコーンカーンコーン


女姉「……」スタスタ チラリ


女「っ〜〜〜! 〜〜!?」

男「……、…、……」


女姉(無事に二人、どうやら委員長になれたようね。これからも頼んだわよ、男くん)スッ
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:44:54.35 ID:m7QS7m8KO
女姉(彼には妹の面倒を直で見てもらう。担任じゃない私では介入に限界がある、だから同士を見繕う必要性があった)

女姉「でも、よくこんな願いすぐさま承諾してくれたわね…」ハァ

女姉(──彼の謝罪と真実の露見、この件のお返しに私が手助けするとは言ったけど…彼にも無理に近いことは理解してるはず)


『もし、仮に君の願いが叶えられなかったら。また異なった願いを言って頂戴、出来る限りのことはするつもり』

『大人がそういうこと言わないで下さいよ。期待してます、先生』


女姉(大人、か。私もまだまだね、子供に諭されるなんて完璧主義者が聞いて呆れるわ)フッ

女姉「今更かもしれないけれど、立派な大人として、彼に良いところを見せなければ…」ツカツカ

〜〜

「聞きましたよ先生、あの問題の二人が委員長って話」
「ええ、今から胃がキリキリと…」

「やっかいごとは増やさないで欲しいもんですなあ。ただえさえ問題児が多い学校と噂されとるのに」
「過去にもいましたねぇ、繁華街のホテルで無断にバイトする生徒がおったりして」

「──まったく、学校にまで持ち込んで欲しくないもんですよ」

女姉「……」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:45:22.18 ID:m7QS7m8KO
〜〜

「女姉せんせーおはようございまーす」

女姉「あら。どうしたのかしら、今日は一段と良い挨拶ね」

「へへ、あのね? 一昨日からカレシと仲直り出来たんだぁ」

女姉「へぇ…」

「クラス中巻き込んでさ、変なフンイキになっちゃってたんだけど──ここだけの秘密だよ?」コソコソ

女姉「? なにかしら?」

(実はウチのクラスの委員長二人、付き合ってる噂で持ちきりなの。先生の妹さんでしょ? それって?)

女姉「え、あ、うん…?」

「あの仲悪い二人がそっこーで仲良くなってる姿みたらさぁ、ウチも喧嘩してたのばからしくなっちゃってww」

「──だから先生もはやく、良い人みつけなよー?」

女姉「馬鹿ね。大人を心配する暇があったら将来を悩みなさい、今度の中間テスト期待してるわよ」

女姉「……」

女姉(……。そこまで近づけとは言ってないのだけど、私は)

〜〜
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:45:54.83 ID:m7QS7m8KO
『ええっ!? な、なりゆきですっ! 誤解ですってば!』

女姉「君、嘘が露骨に声に出るわね。電話越しでも動揺顔が手に取るようにわかるわよ」

『…はあ、まさかの予想外。でも、作戦は上手くいったみたいで安心しました』

女姉「作戦ですって?」

『ええ、クラス男女仲を良くする為に。仲の悪いと噂される二人が率先して一緒に帰宅すれば変わるかもと』

女姉「思い切ったことするものね。君からの提案かしら?」

『違いますよ、妹さんです。…煽ったのは俺ですけど、まあ、女姉先生から彼女の性格はよく聞いてましたし』

女姉「そう、なら油断しないことね。妹はどこで感情を爆発させるかわかったもんじゃないの、注意を怠らないように」

『あの、遅いですその助言…この数日でいやと言うほどわからされましたけどね…』

『──ぅーん、あ! こりゃナオンと電話中デショ! んな雰囲気だしてるー!──』
『ワオ! オトコってば手がはやーい──ちょっとお姉さんに変わってみ? 働け──ゴキィイインッ』

女姉「どうしたの? こんな夜中に騒がしいわね」

『ちょ、電話中だって言ったでしょさっき!? シッシッ! …い、いや、その親戚の人がお酒飲んで騒いでまして…』

女姉「? そう、なにか骨が折れた音も聞こえたような…」

女姉「まあいいわ。それよりも明日も学校なのだから早く寝なさい。良いわね」

『わかりました。では、これで』ピッ

女姉(順調そうでなにより。けど、まさか妹のほうから彼に提案するなんて少し変わったのかしら、あの子も)
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:47:20.82 ID:m7QS7m8KO
〜〜

女「……」ザッザッ…

女(ふぅー、目についたから気まぐれに掃除してみたものの)キョロ

女「…ヤバイわね、コレ、今日中に終わるのかしら」ズーン

男「大丈夫。終わらせよう」

女「おわーっ!? びっくりした!」

男「おわーってアンタ…もう少し繊細な驚き方が出来ないのか…」

女「う、うるさいわね! 良いでしょ別に、つか驚き方まで口出すんじゃない!」

男「はいはい。口うるさくてすみませんね」ザッザッ

女「…っ…な、なによ、一緒にしてくれるのっ?」チラリ

男「素直に手伝うと言えば怒るだろうから、勝手に始めただけだよ」

女「分かってるなら口に出・す・な!」ガァンッ

男「だァー!? なにも集めたゴミを蹴ることないだろ!」

女「いちいち突っかかってくるなら手伝わなくて良いわよ馬鹿!」

男「説明しないならしないで、意味がわからないからキレ始めるだろアンタは!」

女「きぃ〜〜〜!! 腹が立つ、なによわかったようなこと言って! ええそのとおりよバカ!」

ギャーギャー ワーワー

女姉「…ハァ…」

〜〜
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:48:13.29 ID:m7QS7m8KO
女姉「もう少し静かに活動できないかしら…人払いできるタイミングも限られてるのよ、私でも」

男「うぐ…すみません、どうにも彼女相手だと口が止まらないようで…」

女姉「相性が良いのか悪いのか、とんとわかりづらいわね貴方達」

男「相性、良いですか俺ら?」

女姉「あの娘相手に上手くやれてる方よ。…勘違いしないように、交友関係であって交際関係では無いから」ジィー

男「まだ疑ってるんですね…」ハァ

女姉「勿論。私の監視下である限り、そのような自体は認められないわ」

男「それ、妹さんを想っての発言ですか?」

女姉「変なことを聞くのね。どうしてそう思う?」

男「…いえ、なんとなくただ、」

男「──女さんと女姉先生が話してる姿が、全然思い浮かばなくて」

女姉「そう、私もそう思うわ」スッ

男「えっ?」

女姉「でも良いのよ別に。妹にとって私は壁でいい、辛い存在で良いの。私も望んでも居ないし、彼女だって望んでいないでしょう」

男「……」

女姉「今日はここまで。遅くなりそうなら車で送っていくけれど?」

男「い、いえっ、電車はまだあるので大丈夫です! それでは…」ガララ

女姉「そう。じゃあまた明日」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:49:15.33 ID:m7QS7m8KO
女姉(…そう、私は厳しい姉として居ればいいだけ)

〜〜

「女姉先生。おはようございます」

女姉「! 校長、おはようございます!」サッ

「いえいえ。そう堅くならず、私も少々言い過ぎたと反省しておるのですよ」

女姉「仰る意味が…」

「目まぐるしいばかりではないですか、妹さんのご活躍は私の耳にも届いてますよ」

「率先してでの委員長立候、風紀委員で自らゴミ拾いをし、挨拶運動にも自主的に取り組んでいると」

女姉「……。それは嬉しい限りですが、彼女が起こした問題が決して無かったことになるとは思いません」

「お厳しい言葉で。ですが、過ちもまた成長。何時かの機会に妹さんへ言葉を投げかけてみては如何でしょう」

女姉(…言葉を、投げかける)


第四講義室

女姉(甘い言葉なんて必要ない。私は妹にとって厳しく、現実を突きつける嫌な姉で良いのよ)

女姉(今更彼女に優しい言葉なんて──)

ガララ

女姉「ん、来たわね。今日は遅かったじゃない」

男「少し私用な用事があって、もう終わったので安心して下さい」


パタン
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:49:50.73 ID:m7QS7m8KO
女姉「? そう、ならいいわ。では早速始めましょう。今日は私の方から君へのお返しする件について──」

男「……そのことなんですが」

男「『あの件の願い』は撤回したいと思って、ここに来ました」

女姉「撤回…? 急にどうして…」

男「やはり自分の力で彼女が受けている誤解を解こうかと。その道も何とか見えてきましたし、わざわざ先生の力を借りなくても…」

女姉「……」

男「あ。でも、先生との取引は続けるつもりです。まあ、公私混同なことになりますけど…」

女姉「君は…」

女姉「ハア、なんというかお人好しという部類に入る人間ね」

男「です、かね」ポリポリ

女姉「敢えて私から言わせてもらうけれど、君がやってきたことは私の要望でもあったのよ。そして君もそれを受け入れた」

女姉「その結果、私の要望を限りなく成功させたのが君。それが事実」

男「でも…」

女姉「でもじゃない、あのね? 私が一人で成し遂げるべき私用に他人を巻き込むだけじゃなく、生徒一人を使ってやり遂げたの」

女姉「本来なら教えとくべき立場の君に、……無様にすがりついた」

女姉「こんな体たらくぶり許されるわけがない。なのに今まで嘆かず突き通せたのは、君へのお返しがあったからこそ」

女姉「それを今更になって要らないと言われたら、私はどう自分に落とし前をつけたらいいのよ」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:50:47.63 ID:m7QS7m8KO
男「どうといわれましても…」

女姉「勝手なことを言ってるのはわかってる。けど、君はそれだけの仕事をこなした、だったら見返りある報酬を受け取るべき」

男「仕事、なんですか?」

女姉「…!」

男「俺思ったんです。俺は報酬を受け取るから女さんと仲良くなったのかって、始まりはそうでも…今は違うと思ってます」

男「誤解を生んでしまったのは俺の責任です。解く方法があるならきちんとやり遂げるべきだとわかっているつもりです」

男「でも、こうじゃないって思ってしまって…結局、自分は最初から最後まで女さんを騙してるんじゃないかって…」

女姉(騙して、る…)ズキン

男「俺、ちゃんとやります」

男「先生との約束は守りますが結果としてそうなってるだけで、ちゃんと俺の意志で仲良くやっていきます」

男「だから報酬なんてものも要りません。でも、そうであっても先生が納得しないなら…」

男「…どうか女さんに一言あげてください。頑張ってるって、よくやってるねって」

女姉「な、なぜ、そんなことを私が…」

男「彼女が言ってくれたんです。頑張る理由が、駄目な大人にならない為には、」


『私、お姉ちゃんみたいにカッコいい女性になりたいの』


男「だから、どうか一言で良いので褒めて下さい。彼女を…」

男「もっと近くで見てあげて下さい。それが、俺の今の願いです」ペコリ
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