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精神レイプ!概念と化した先輩
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346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/06(火) 13:25:47.00 ID:psPAM/k50
......。
その男は元々、ただ龍騎が好きだっただけの少年であった。毎週、日曜日の朝にテレビの前にへばりつき、ストーリーの続きと魅力的なキャラを楽しみにしていただけの、純朴な少年であった。
だが彼が楽しみにしていた龍騎は、物語の中盤で唐突に終わりを告げた。現実で起きた凶悪犯罪の影響で、放送自粛に追い込まれたのである。
事件の名は、下北沢無差別殺傷事件。当時、中学2年生であった少年Aの犯行であった。
逮捕された少年Aは、警察の尋問で一貫したこう供述した。
「イライラしたから殺った。殺せるなら誰でも良かった。仮面ライダー龍騎に登場する、浅倉威に影響されて殺った」
と。十を越す死傷者を出した事件の犯人がこう供述したことで、当時ことさら少年を庇う風潮の強かったマスメディアの批判は、ほとんど龍騎へと集中した。
曰く、「少年を犯罪へ走らせたのは、犯罪を格好良いものとして演出した龍騎に原因がある」
曰く、「仮面ライダー同士が殺し合うという設定が、そもそもモラルに欠ける。少年の鑑賞に相応しい内容ではない」
曰く、「仮面ライダー龍騎は殺人を肯定している」
などと、新聞の記事やニュース番組に登場するコメンテイターに、連日言いたい放題に叩かれた。
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/06(火) 13:26:12.49 ID:psPAM/k50
従来の『正義の』仮面ライダー像を破壊した龍騎というのは、元々が批判の対象となっていた異色の作品である。そこに加えて、大事件の原因として槍玉に挙げられたとあっては、そのダメージはとても庇い切れるものではない。
龍騎のスポンサーはことごとく去り、TV局も早々に、龍騎の打ち切りを決断した。
ファンにとっては寝耳に水な話である。突然起きた......本来ならば何の関係も無いはずの......事件の犯人が「龍騎に影響された」と語っただけで、毎週の楽しみが奪われてしまったのである。たった一人のクズのために、いい加減な証言の為に、なんで俺達が龍騎を見れなくなるのかと、視聴者の誰もが強く憤った。
しかも放送が休止したタイミングというのが、ファンにとってたまらない展開であった34話の直後であった。
『友情のバトル』と題された、龍騎34話。特にその最後の一分間は、龍騎が放送局のタブーとして歴史の闇に葬られた現在でも、『伝説の一分間』としてファンの間に語り継がれている。
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/06(火) 13:26:51.43 ID:psPAM/k50
[伝説の一分間]
恋人を救う為、殺人への躊躇を断ち切る為。友である龍騎を倒そうとするナイト・サバイブ。
神崎の思惑であるライダーバトルを止める為、ナイトの覚悟を受け止める為。龍騎がサバイブカードを手にすると同時に流れる、初披露の挿入歌『revolution』。
映像が一旦切り替わると、時を同じくして、凶悪犯罪者の王蛇とスーパー弁護士ゾルダも、因縁の宿敵との決着へ臨んでいた。
『ユナイトベント』ゾルダの背後に、王蛇のモンスターが現れる。
『ファイナルベント』ゾルダが自らのモンスターに銃を差し込み、全弾発射の準備を整える。
『ファイナルベント』王蛇のモンスターの腹部にブラックホールが発生し、そこにゾルダを叩き込むキックを放つ為、王蛇が跳躍する。
王蛇と、ゾルダ。双方が必殺のファイナルベントを撃ち合う寸前で、映像は、対峙する龍騎とナイトへと切り替わる。
サバイブカードを使い、強化フォームへと変身する龍騎。サバイブの影響で、謎の炎に包まれた空間の中で、龍騎はナイトに宣言する。
龍騎「俺は絶対に死ねない。一つでも命を奪ったら、お前はもう......後戻り出来なくなる!」
ナイト「......俺はそれを望んでいる」
強化フォームでの戦いへと突入した龍騎とナイトの運命は、果たしてどうなるのか。
ファイナルベントを撃ち合った王蛇とゾルダは、果たしてどちらが勝つのか。もしかしたら、どちらかがここで死ぬのか。
目を離せない激熱の展開。その続きは、問いの答えは、来週の35話にて明かされる。
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/06(火) 13:27:37.21 ID:psPAM/k50
......という、続きが待ち遠しくてたまらなくなる34話、伝説の一分間の後での放送休止である。ファンにとって最悪のタイミングであることは間違い無かった。
生き甲斐と言っていい程に、龍騎を楽しみにしていた男は烈火の如く怒った。続きを見させてくれ。彼らの戦いの結末が知りたいんだ、と。
しかし、純粋な少年の願いは叶わなかった。署名活動も反対運動も空しく、龍騎は永久に御蔵入りした。龍騎は十数年経った今も、一度たりとも日の目を見たことが無い、不遇の作品となってしまった。
男がある程度成長した頃に、仮面ライダーシリーズそのものは復活を遂げた。だがそこには男が憧れた、漢達の命懸けの魂のぶつかり合いは無い。二度と世間の反感を買わぬよう、極端に明るく、どこまでも子供向けに作られた『腑抜け』の作品が、現代の仮面ライダーであった。
......。
男は初め、マスメディアを憎んだ。安全地帯から物事を語り批判し、強者に媚びて落ち目の物を叩き、正義面で人々を扇動する報道機関を憎んだ。
真に叩くべき殺人鬼の実名は、『少年だから』と隠す。その代わりに無関係のはずの龍騎を、さも「この番組が無ければ事件は起きなかった」と言わんばかりの報道をし、執拗に叩く。
そんな的外れな行動の為に、龍騎を奪った報道機関というものに、男は今でも強烈な不信感を抱いている。
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/06(火) 13:28:25.91 ID:psPAM/k50
次いで、男はPTAや人権団体を憎んだ。「自分に理解出来ない漫画やアニメは、気持ち悪いから無くなって欲しい」という本音を、「子供の為に」という建前で押し通すババア共が、たまらなく嫌いであった。
男から見てそういった団体は、みな正義感に浸っているだけであった。連中の思想というのは、ようは性善説を信じているのであり、漫画やアニメを悪魔として信仰しているのだ。
「愛しい子供達が犯罪を犯したとしても、それは生まれもったサガや教育の失敗が原因ではなく、悪魔に誘惑されたからに決まってる」
という狂った妄想の為に、そういう世間に蔓延る馬鹿共の為に、龍騎は放送休止になったのだと、男は心底信じていた。
そして最終的に、男は犯罪者を最も憎んだ。根本的に、犯罪者がいなければ龍騎は放送休止にならなかったのである。
無期懲役の判決を喰らい、三十歳そこそこで出所してくる少年Aを殺してやろうと、少年の頃はずっと思っていた。
だが、高校に上がる頃にはその考えも薄れていた。龍騎好きの自分が殺人犯になるのは、マスメディアの吐いた戯言を、自分自身の手で実現してしまう事になると思ったからだ。
しかし、龍騎を奪われた怒りは、何年経っても消えない。蓄積した怒りは憎悪へ、そして犯罪者をこの手で殺したいという衝動へと変質していった。
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/06(火) 13:29:17.25 ID:psPAM/k50
「『合法的に』犯罪者を殺せる職業は?」
と男は考えた。検事や判事というのも考えたが、男は犯罪者を殺したいのであって、裁きたいわけではない。刑務官の死刑執行は、かなり理想に近かったが、『複数人で同時にボタンを押して、誰が殺したか分からないようにする』という、要らぬ気遣いが邪魔であった。
結果、男は警備警察の機動部隊を選んだ。数年経った今年には、異常な執念によって鍛えた実力を買われ、特殊部隊の一員に選出された。
男の名前は、秋戸秀一。龍騎を奪われ、犯罪者を殺したいという『願い』の為に、『正義』の組織に所属する男。その是非を問える者はーーー
〜〜〜
訓練中に課長に呼び出された秋戸は、警備課長直々の命令を受けた。
課長「お前に任務を命じる。世田谷区×××の廃病院に立て篭もる殺人鬼を始末しろ」
秋戸「随分乱暴な命令ですね、犯罪者にお優しい日本らしくも無い。それに、何故私だけに命じられるのですか」
特殊部隊は常にチームで動く。個人に事件解決を任せるなど、通常ありえない。
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/06(火) 13:29:47.11 ID:psPAM/k50
課長「お前のそういう態度が問題なんだ。体制への不満や、理不尽への怒り。そういう感情を抱くなとは言わんが、お前は露骨過ぎる」
課長「廃病院の殺人鬼は、既に四人の警官の命を奪っている。お前一人に命じる理由は、このことがまだ表沙汰になっておらず、その上で秘密裏に処理しろと、上からお達しがあったからだ。大々的に動くわけにはいかん。報道を通して世間に知れ渡る前に、殺人鬼を処理しろ」
秋戸は心の内でククッと笑った。報道する自由と報道しない自由があれば、報道『させない』自由もあるということが、マスコミ嫌いの秋戸には小気味良かった。
課長「この人選は、お前の隊長によるものだ。聞けばお前は、殺人犯を殺したくてこの職務を選んだそうじゃないか」
秋戸「そうです。交渉が最優先でありチームで動く職務の為、思いの外機会に恵まれず、一度も達成出来たことはありませんが」
課長「ならやはり、今回の件はお前に最適だ。相良隊長によれば、お前は『能力はあるのに、人格が不適切で勿体無い』らしい。これで望みを叶えて、早く真っ当な人間になれ」
秋戸「お心遣い、感謝致します」
課長「感謝する必要も無い。お前が選ばれたもう一つの理由は、現在、部隊の中で一番死んでも構わない人間がお前だったからだ」
秋戸「え?」
課長「気をつけることだな。あちらは仮にも銃を持った警官を、しかも複数人殺めている。下手を打てば、お前も彼らの二の舞になるぞ」
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/06(火) 22:45:12.54 ID:3x0RLdcmo
おつ
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/09/13(火) 20:58:53.84 ID:1IAbAQ+Y0
保守
355 :
◆aL7BEEq6sM
[saga]:2016/09/18(日) 02:08:45.59 ID:5L7OD9tk0
【第24話】廃病院の殺人鬼
〜〜〜
.........オトゥーサン.........オトゥーサン.........
「っしたらさぁ、俊樹がサツにパクられちまってよぉ」
「っそ、マジ? マジ? あいつ超バカじゃん! キャハハッ」
深夜。廃病院の一室に、数名の男女がたむろしていた。暗く寂れた病棟には不釣り合いな、ギャハハ、という粗野な笑い声があたりに反響する。その声は、どれもとても若かった。
「パコるか、パクられるか。それが俺達の生き様っからなぁ」
「龍矢、マジ頭おかしすぎっしょ! ほんとサイコーだよもう!」
彼らは、ただ本能に忠実であった。食う、寝る、ヤる。遺伝子に刻まれた本能からの指令を、ただ、ただ、好きな時に好きなだけ実行したかっただけである。
結果、彼らは学校をほとんどサボり、酒や薬物に手を出し、喜んで法を破る少年少女となった。普通の人間がしない事、出来ない事をやるのが、最もカッコ良くてイケているのだと彼らは信じていた。
世間からの白い目やウザい親達の制止の声というのは、ようは自分達への妬みだ。本当は連中も、自分達と同じようにハッチャケたいのに、勇気も才能も無いからそれが出来ない。だから連中は、自分達の事が羨ましくて、妬ましくて、それで無益な苦言を語ってくるのである。
「人間はいつ死ぬか分からない。だから明日の為に頑張るより、今日を楽しむ方がずっと賢い生き方だ」
という主張が、彼らの思考の根底には流れていた。どこまでも享楽的に今日を過ごす為に、彼らは理性を捨て、獣の快楽へとその身を寄せる。
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/18(日) 02:09:20.28 ID:5L7OD9tk0
廃病院にたむろしているのも、特に考えがあってのことではない。ただ、危険な臭いのする場所で遊ぶ、騒ぐ、ヤるというのが、普通の場所よりも興奮できると思ったからいるだけだ。
あるいは、彼らの思考を掘り下げてみれば。『危険な場所に平気で居られる自分』というのが、自らの優越感、選民的な高揚感に浸れたからなのかも知れない。
.........オトゥーサン.........オトゥーサン.........ナンデ.........オトゥーサン.........
病棟の一室を占拠する彼らの元に、カツン、カツンと足音が響いていく。
目的も無く彷徨うような足取りで、ゆっくりと。しかし、彼らとの距離を着実に縮めていくその歩みは、やがて彼らの眼前へと辿り着いた。
その男は、髪は金髪に染め、身体は不健康に痩せていた。眼はどこか遠くを見つめるような虚ろな目をしていた。そして何より目を引くのが、その右手に握られたナイフであった。
「......あん? 誰だよテメェこら! なに見てんだよ殺すぞ! あぁ!?」
「え? 待ってよ、あいつナイフ持ってる。ナイフ持ってるよぉ!」
「や、やべぇよ......やべぇよ......」
オトゥーサン......ナンデ......? ナンデボクノコト......ボクノコト......アイシテクレナカッタノ......? オトゥーサン、オトゥーサン、オトゥーサン、オトゥーサン............
「ヒッ、や、やめ! やめろやめ......! ゲブゥ!」
「やだ! やだやだやだ! 怖いよぉ! 助けてお母さバガガ、ガベエッ!」
「うわあああああ! ああああああああ! アーッ! アーッ! アアーーーーーー!!」
357 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/18(日) 02:09:55.86 ID:5L7OD9tk0
男の凶刃が、若者達へと襲いかかった。グサリ、グサリと、次々と刃が舞い、半裸や全裸の若者達の肉を突き刺していく。
喉笛を掻き切られて即死した幸運な者もいれば、中途半端に腹を抉られ、地獄の死痛に悶え苦しむ者もいた。死の絶叫が、助けの来ない廃病院に空しく響く。
若者達は、今日、死ぬ運命にあった。ならば、彼らの掲げた「いつ死ぬか分からないから今日を楽しもう」という思想は、彼らにとっては正しかったのだろう。
......しかし、そもそもそんな思想を抱かず、無意味に危険な廃病院に訪れなければ、今日死ぬ運命は避けられたのではないか。そんな自問を抱く暇も無く、若者達はその命を散らしていった。
数分後、若者達は死の覚悟も、事態の把握も出来ないままに、男の玩具へと成り果てた。
6人の男女は既に息絶えていたが、男にとっての本番は、むしろ殺した後にあった。
??「オトゥーサン......ああ、オトゥーサン」
髪を毟る。目玉を抉る。耳と鼻を削ぎ落とす。下顎を切り落とす。胴体を真二つに裂いて、粘液と糞尿の臭いたっぷりの内臓を、両手で掬い上げる。そして、陰茎部分を切り落とす。膣や子宮はナイフで滅多刺しにする。
指を、掌を、腕を、足を、首を、頭と上半身を、胸と腹を、下腹部と脚部を切り離し、各部位をまたコマ切れにする。
これを、6人分。肉の人形に父を重ね合わせながら、どす黒い感情を思い切りぶち当て、バラバラにする。彼にとっては、これは生きる上で必要不可欠の行為であった。
解体者の名前は、MNR。その名は、淫夢史上最悪の殺人鬼として、界隈に響き渡っている。
358 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/18(日) 02:10:51.18 ID:5L7OD9tk0
〜〜〜
ANAL航空893便墜落事件より、5日経った18日の夕刻。coat博士が口を開いた。
coat博士「ANALの公式発表を受けて、墜落事件の犯人は、アッシリヤのテロリストが被ってくれた。実際の真相はともかく、これで我々も身動きが取れる」
彡(゚)(゚)「その疑われるかも、ってのがそもそも気に入らんわ。守ってやってるはずの愚民共相手に、なんでワイがコソコソ隠れなアカンのや」
宇野「良かったじゃないですか。『人知れず戦う孤独なヒーロー』って人気高いんですよ、視聴者には」
(´・ω・`)「ここは現実だよ。形而上の存在に評価されても、ファンレターの一つも届かないよ」
coat博士「ま、絶対に存在しないって認識しているモノが現実に現れたら、人はそれだけショックを受けるって話だ。サンタなんて信じていない子供に、突然ガチもガチのサンタが現れたら、喜ぶどころか腰を抜かすだろ?」
彡(゚)(゚)「は? 信じるもなにも、サンタは実際おるやろ。そのガキ頭沸いとんのか」
(´・ω・`)「博士は例え話が下手だねー。話にリアリティが無いと共感出来ないよ」
coat博士「......そうだな。今のは私の例えが悪かったな。すまんな」
宇野(......え? 信じさせてるんですか? サンタ)
coat博士(いや、何故か最初から信じてた。聞き分けが良くなるし色々と便利なので、そのまま放っておいたんだ)
宇野(デフォなんですか。原住民はともかく、なんJ民のナリでこれは、かなり痛々しいですね)
coat博士(やめろ貶すのは。......こいつらの意識は、人間の情念の集合体だからな。実際の掲示板の連中も案外、性根は子供なままの奴が多いのかも知れん)
宇野(『子供なまま』の奴は、そりゃ多いでしょうけれど)
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/18(日) 02:11:34.29 ID:5L7OD9tk0
彡(゚)(゚)「なにコソコソ喋っとるんや」
coat博士「とにかく、ショックが大きいんだお前らは。衝撃的なんだお前らの存在は、ビジュアルの良し悪しに関わらず。それ故一昨日までは、衆目を浴びると騒がれ、無関係な墜落事件の濡れ衣を被る危険があった」
coat博士「だがその危険は消えた。そしてタイミングを見計らったかのように、我々にあるご依頼が届いた。ある廃病院に出没している殺人鬼を、処理して欲しいとな」
彡(゚)(゚)「殺人鬼? そんなん警察の仕事やろ」
coat博士「その警察の職員達が、数名殉職してしまってな。廃病院で見つかったバラバラ遺体の調査中に送り出した所、彼らもバラバラ遺体になって帰ってきたらしい」
(´・ω・`)「うわぁ、ミイラ取りがミイラに......」
宇野「そんな大事なのに、ニュース番組にはてんで流れていませんね。変死体が見つかったというニュースなら、一昨日チラと目にしましたが」
coat博士「情報規制しているのさ。なにせ、銃を持った警官数名を殺す化物だ。概念体の可能性もあるので、こちらで調査して欲しいそうだ」
coat博士「人目を最大限避けるため、出発は深夜とする。殺人鬼が人間だろうと概念体だろうと、正直どちらでも構わない。警察が手に負えなかった殺人鬼を捕まえて、手柄を立てて、我々の存在価値を証明してこい」
360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/18(日) 02:12:29.99 ID:5L7OD9tk0
〜〜〜深夜・廃病院西棟、1階〜〜
敷地の入り口や敷地内に、見回りの警官が配置されていた。建物内の犯人を逃さぬ為、そして野次馬気分で侵入しようとする者を阻止する為、警備を強めているらしい。
予め許可を貰っていたらしく、宇野が入り口の警官に何事か話すと、すんなりと中に入れた。ワイと、宇野と、原住民とで、建物内に侵入する。
彡(゚)(゚)「ジメジメしてて、腐った雨の臭いがするなぁ。テンション下がるわ」
宇野「ここも潰れてから十数年経っていますから、気を付けて下さい。手入れのされていない建物は、想像よりずっと危ないですよ」
彡(゚)(゚)「しかし気になるんやが、こういう廃墟って何で残っとるんや? ここの土地の所有者とかは、今でもちゃんと存在するんやろ? とっとと潰して土地を有効活用しようとは思わんのか?」
宇野「ここは立地が悪く、一通りも少ないんです。取り壊しの工事や新しく建物を作る代金を払うより、放ったらかしにしていた方がまだ割がいいんですよ」
(´・ω・`)「うぅ......暗いよぉ、広いよぉ、怖いよぉ......」
宇野「あぁ、ここの病院も『出る』って噂はちらほらありますね。首から下だけの男だの、戦時中の陸軍兵士の亡霊だのと」
(´・ω・`)「うへぇぇぇ......」
彡(゚)(゚)「ま、実際に出るのは殺人鬼だけやから安心せえや」
(´・ω・`)「う、うへぇぇぇ......」
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/18(日) 02:13:05.19 ID:5L7OD9tk0
彡(゚)(゚)「それにしても、廃墟の割には雑多に散らかっとるなぁ。空きカンだの、菓子の袋だの、ピンク色のゴムだの、けっこう真新しいのが捨ててあるぞ」
宇野「被害者の遺体のほとんどは若者でした。廃墟や心霊スポットには、そういう手合いばかり集まるもんなんです。彼らは、立ち入り禁止の看板なんて気にも止めませんからね」
(´・ω・`)「うわぁ、可哀想に」
彡(゚)(゚)「そうか? 勝手に不法侵入した馬鹿が勝手に殺されたんやから、自業自得ってもんやろ」
宇野「まぁ、犯した罪と罰が釣り合っていないのは確かですね。それに警察の方も」
??「おいおいおいおーい! なに自分はそいつらとは違う、みたいな素振りで話してんだ? お前らも立派に不法侵入者だろうが! それ『万引きって良くないよねって語りながら、無料で違法な動画サイトにアクセスしてる』ようなもんだぞ! お前らの頭はあれか? ひまわりが咲いてるのか!?」
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/09/18(日) 02:13:31.20 ID:5L7OD9tk0
彡(゚)(゚)「!? な、なんや! 誰や!」
後方から声がかかり、慌てて振り向く。こちらに近付いてくる影は、手にライトを持っていた。暗く、まだ顔は見えない。
??「無料は駄目だ! コンテンツを駄目にするのはいつだって無料だ! ただ飯オーケーの食堂なんざ、すぐに潰れるに決まってんだろ! 広告収入なんかで作品が持つわけねぇんだから、ファンを名乗るなら金払って視聴しろ! 金を払わねぇ奴が作品を語るんじゃねぇ反吐が出る!!」
宇野「この声......まさか」
??「違法はもっと駄目だ! ルールを破る奴は、間接的にルールを増やすクズだ! ルールが増えると良い作品が作れなくなる! 結果コンテンツが駄目になる! 仮面ライダーがそうだった!」
(´・ω・`)「な、なになに!? 誰!? なんなの!」
??「俺は制限(ルール)が大嫌いだから、ルールを破る奴も滅茶苦茶大嫌いだ! ところでお前らはなんだ? 破滅主義のバカ餓鬼か? ゴシップ写真目的のハイエナか!? 俺はマスコミも最悪に大嫌いだぞ!? 何はともあれルール違反者共、お縄の時間だ! 逮捕しちゃうぞ!!」
五歩程の距離まで近寄ると、男の顔が見えた。若く精悍な顔の上に、何か青いヘルメットが見えた。
宇野「相変わらず、ギャーギャー五月蝿いんですね。秋戸さん」
??「んん? その声にその顔は......おぉ、お前宇野じゃないか。何してんだこんな所でって、ウォォォォオ!?」
彡(゚)(゚)&(´・ω・`)「ギャァァァァァァァァ!」
男がワイと原住民を視認すると、突然声を上げた。ワイらもその大きな声にビックリして、また声を上げる。
その傍らで、宇野が一人呟いた。
宇野「なんでよりによって、こいつが来るんですか」
と。
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/03(月) 00:55:16.20 ID:335IB2Xf0
保守
364 :
◆aL7BEEq6sM
[saga]:2016/10/16(日) 00:23:35.52 ID:uRnqkyrFO
虐待おじさん『野獣、刺客がようやく到着したらしい。3日待ってようやくだ』
野獣『確かなのか?』
虐待おじさん『外から来るのを遠目に見ただけで、姿形は分からなかったが、フードを被ってる奴が二人いた。片方はおそろしく小さい。おそらく、人間の見た目じゃないからだろう』
野獣『そうか。ろくにニュースにもならんから、計画はもう失敗したのかと思っていたが』
虐待おじさん『俺達はどうすればいい?』
野獣『俺も今からそっちに向かう。戦って殺せるようなら殺して構わない。が、手こずるようなら俺が着くまでの時間を稼いでくれ』
虐待おじさん『了解だ。奴らにもそう伝える』
野獣『よろしく頼む』
〜〜〜
秋戸「なるほどねぇ。ここの殺人鬼は概念体っつー化物で、この黄色いデカブツと白いちっこいのもその概念体だと」
彡(゚)(゚)「飲み込み早いな。普通もっとこう、ワイらに怖がったり、これは夢だとか叫ぶもんとちゃうんか?」
秋戸「俺は『自分の目で見たものくらい信じられる』男なのさ。2話目の真司くんとは訳が違うぜ。ミラーワールドがいつ現れてもいいように、心の準備は常にしているからな」
(´・ω・`)「なんか手品とか詐欺にあっさり騙されそうな主義だね」
宇野「マトモにこの男に取り合っちゃダメですよ。こいつは情緒が破綻したイカれです」
廃病院中央一階の、広々とした元待合室にて。ギシギシと音を立てる、傷んだ椅子に座りながら、ワイらは顔を合わせた警官と話をしていた。どうやら宇野は、この男と顔見知りらしい。
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:24:33.79 ID:uRnqkyrFO
(´・ω・`)「二人はどういう関係なの? なんか、宇野さんは嫌ってるみたいだけど」
秋戸「あん? 嫌われてるってのは言い過ぎだろ。ちょっと過激な軽口じゃねぇか、なぁ宇野」
宇野「嫌いと言うか、関わりたくないんです。何するか分かんなくて怖いんですよこいつ」
秋戸「おぅ言い過ぎだぞ宇野。......昔、仕事仲間だった時期があるだけだ。かなり短い間だけだったけどな。俺はすぐに特殊部隊入りしたし、こいつもすぐ辞めたし」
(´・ω・`)「えっ、宇野さんお巡りさんだったの!? なんで辞めちゃったのさ!」
宇野「公務員って儲かんないんですよ。周りは正義の味方気取りか、やさぐれているかの両極端で居心地悪かったですし」
彡(゚)(゚)「こいつの経歴なかなか怪しいな。洗えばいくらでも埃が出そうや」
(´・ω・`)「叩けば、だよおにいちゃん。洗ったら水に流れていっちゃうよ」
宇野「それより秋戸さん。特殊部隊の人間がなんでここにいるんですか。それに、その間抜けな格好はなんですか」
宇野が秋戸、と呼ばれた警察官に疑問を投げかける。言われてみれば確かに、男の格好は一般的な特殊部隊の格好とは程遠かった。
青いヘルメットに、防弾チョッキ。手には小銃では無く、小型のピストルが握られていた。
一般人よりは戦闘向きの格好であろうが、国家治安の最終防衛線の装備としては、いささか以上に頼りない。
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:25:16.13 ID:uRnqkyrFO
undefined
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/23(日) 11:59:25.69 ID:93qKs7QIo
保守
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/02(水) 10:14:00.27 ID:Js/q9JtQo
保守
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/23(水) 01:44:32.10 ID:g603hjn3O
宇野さんの過去とか原住民の孤独感によるすれ違いとか気になるんです!なんでもするんで続き書いてくださいオナシャス!
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/04(日) 15:04:23.89 ID:9P51/Jdso
h
371 :
◆bhb.NJHtRg
[saga]:2016/12/09(金) 23:45:07.19 ID:Wsd/4PPQ0
すいません。ラノベ選考用の小説を書いていたことと、殺人鬼出したあたりから文章と展開に詰まった為に、長い期間放置していました。
物語を終わらせる責任は果たさなければいけないので、また更新を再開します。しばらく、リハビリがてら地の分は手抜きすると思いますが、よろしくお願いします。
372 :
◆bhb.NJHtRg
[saga]:2016/12/09(金) 23:47:27.48 ID:xQWvEWsD0
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373 :
◆bhb.NJHtRg
[saga]:2016/12/09(金) 23:49:48.86 ID:xQWvEWsD0
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374 :
◆bhb.NJHtRg
[sage saga]:2016/12/09(金) 23:55:10.52 ID:xQWvEWsD0
秋戸「事情はお前らと同じだ。情報を規制したいから、大掛かりな動員は出来ない。少数が好ましいが、向こうは銃を持った人間を殺せる化物だ。なので特殊部隊の中でもとりわけ優秀な俺が、単独での事件解決を任されたってわけだ」
彡(゚)(゚)「ほーん。ようは捨て駒か、大変やね」
宇野「威力偵察の意味が多めで、死んでも構わない、ぐらいの気持ちで送られたんでしょうね」
「そうはっきり言われると否定したくなるが、その通りだよ宇野。特殊部隊の装備じゃないのもその為でな、俺はここで死ぬと『警察のコスプレをした、銃を所持した変質者』として処理される。ま、その時はバラバラ遺体になってるだろうから、要らぬ世話だけどな」
(´・ω・`)「えぇ、そんな酷い扱い受けるぐらいなら断ればいいのに。仮に辞めちゃったも、どうせお給料も良くないんでしょ?」
秋戸「断る? はっ、バカ言うな白饅頭。これは俺が心から望んだ、この上ないチャンスなんだぜ?」
宇野「......"殺人犯の殺害、公的に認められた殺人"、まだそんな馬鹿な望みを捨ててないんですか。それさえ無ければ、捨て駒扱いなんて受けずに済むのに」
秋戸「関係無いね。龍騎を奪った『モノ』の象徴を、俺のこの手でぶち殺す。2002年から今日の今まで、俺の目標はそれだけだ」
宇野「変われていませんね、哀れなほどに」
秋戸「変わりたいとも。いや、今日で変わるんだ。殺人鬼をぶち殺して、この長い旅に決着をつける。そうしてやっと、俺は前に進める」
秋戸「......さて、と。お前らは殺人鬼の処理、俺は殺人鬼の殺害が目的だ。途中までは利害が一致しているわけだ。手を組もうぜヒーロー」
彡(゚)(゚)「ヒーロー? ワイのことか?」
秋戸「おおとも。化物の身でありながら、人間を守る為に同種の化物を狩る存在。これはヒーローの、いや仮面ライダーの根幹だ。分かるか? お前は今まさに、ヒーローの具現と言えるわけだ黄色」
彡(゚)(゚)「......ほぅ」
宇野「いやいやいや、要らないですって。怖いからどっか遠くへ行っててくださいよ」
彡(゚)(゚)「いや、別にええやろ。ワイらに敵意は無いみたいやし、なにより気に入った」
宇野「ちょっと!」
375 :
◆bhb.NJHtRg
[saga]:2016/12/09(金) 23:56:40.39 ID:xQWvEWsD0
彡(゚)(゚)「お前がこいつを嫌いってのに、ワイらを巻き込むなや。仮にも特殊部隊なんやから、絶対役に立つはずやぞ」
秋戸「話が分かるな。じゃあよろしくな、黄色と宇野と、...おい、白饅頭はどこ行った?」
彡(゚)(゚)「はぁ? 隣におるやろ頭沸いとん......あれ?」
宇野「どこにもいませんね。トイレにでも行ったんでしょうか」
彡(゚)(゚)「いや、臆病な原ちゃんが、一人で黙ってどっか行くなんてありえん。てことは、つまり」
秋戸「......攫われたってことか。気配も無く持っていくとは恐ろしいなぁ、殺人鬼さん」
376 :
◆bhb.NJHtRg
[saga]:2016/12/09(金) 23:58:22.63 ID:BeWeROAj0
目を覚ますと、暗い部屋が視界に広がった。破れたカーテンから覗く、穴が空いた古いベッドの列に、腐ったコンクリートの臭い。すぐに、先程までいた廃病院だと気付いた。
「うーん、お兄ちゃん達はどこにいるんだろ」
唐突な場所の移動に、頭が追い付かない。自分は先程まで、みんなと一緒にいたはずだった。廃病院の中で出会った、秋戸という警察官の話を座って聞いていたところまで記憶はある。
「突然誰かに掴まれた気がして、それで、それで......今まで気絶していたのかな」
記憶を辿り、状況をなんとなく飲み込み始めると、恐怖の感情が徐々に湧いてきた。
見知らぬ場所で、廃病院で、ひとりぼっち。そしておそらく、この状況を作り出した人物が、自分以外にいる。
「ひっ......ま、まさか殺人鬼に拐われちゃったの?」
慌てて動こうともがくと、腕に痛みが走った。見やり、その時やっと、自分の身体が縄で縛られていたことに気付いた。
「ええ、なんで気付かないんだよ僕は! マズイよ、かなり気が動転してるよ!」
とにかく、早く逃げなければ。そう思い、背の方を向いてなんとか逃げ出そうとした時、病室の入り口に気配を感じた。
??「やっぱり可愛いなぁマシュマロみだいで〜!」
377 :
◆bhb.NJHtRg
[saga]:2016/12/09(金) 23:59:16.95 ID:MBkMALpc0
〜〜
秋戸秀一は、人を殺した者を、一括りに殺人鬼とは認めていない。自衛の為に人を殺した者は勿論、金や土地といった利益の為に人を殺す者や、個人的な憎しみや感情のもつれで人を殺めた者も、まったく殺人鬼などではない。
要は、殺すことを『手段』としている人間というのは、自分が殺すべき象徴では無いのだ。
極刑に処されるリスクを知ってなお犯してしまう程に、殺人に快楽を見出した者。生まれつき備わっている自制の機能が破綻し、同種殺しの衝動を抑えられない者。
殺すことそのものが『目的』となり、生きる『糧』になってしまった精神異常者を、人は『人を殺す鬼』と呼ぶ。
精神異常者......殺人鬼こそ、龍騎を奪った者の象徴そのものだと、秋戸は理解している。あの日に通り魔殺人を犯したクズも、この廃病院の殺人鬼も、『殺したいから殺す』という点で全く同じだ。
378 :
◆bhb.NJHtRg
[saga]:2016/12/10(土) 00:00:10.66 ID:zx4U+U+K0
秋戸「やっと殺せる。やっと、やっとだ!」
嬉々とした声で叫び回りながら、秋戸は錆びた病棟の廊下を駆ける。
秋戸(いるなら出てこい、獲物ならここにいるぞ)
秋戸「来い! 行くぞ! 戦おう! ほらほら 出てこい戦えや殺人鬼!」
喚き散らしながら、無造作に乱暴に、端から端の病室を開ける。人の気配が無いのを確認すると、隣の病室へと歩を進める。
宇野『こちら西棟3階、原住民さんの姿はありません。他はどうですか?」
『おらん! どこにもおらん! 早く上に行こうや!』
元々は原住民用だった端末に、宇野となんJ民から連絡が入った。なんJ民の声は、通信の度に焦りの色が増している。
秋戸「こちら東棟3階、残念ながら異常無しだ」
宇野「では4階の捜索に入りましょう。......見つけたらちゃんと報告して下さいよ? 秋戸さんだけじゃ絶対倒せませんから」
了解、と短く返事をし、秋戸は通信を切った。
強烈な血の臭いと、腐乱臭のする方へ、秋戸は急いだ。
空いた部屋を三つほど飛ばして、着いたのは401号室。中を見ると、
秋戸「ハッハァ! ビンゴだ・・・!」
401号室の中には、哀れな被害者の・・・恐らくは殉職した警官の・・・遺体が、無残に解体されている最中であった。
頭部の損傷は少なく、まだ胴体と繋がっている。が、胴体部分は中心線を起点に縦に裂かれており、中に納まっていたはずの骨や内臓はすっぽりと抜かれていた。
379 :
◆bhb.NJHtRg
[saga]:2016/12/10(土) 00:01:25.31 ID:+sviqq5G0
秋戸「よう。会いたかったぜ・・・殺人鬼」
人を家畜のように解体する男に拳銃を向け、秋戸は言った。初めて出会う殺人鬼は、いったいどんな反応を示すだろうかと、秋戸は期待していた。しかし、
MNR「あぁ・・・オトゥーサン」
よっぽど殺人作業にご執心なのか、殺人鬼は秋戸に振り向くこともせず、うわ言をぼやきながら作業を続ける。
秋戸「無視は困るな。死んで動かない物を弄ってもつまんねぇだろ? ほれ、ここにまだ動く獲物がいるぜ? 遊ぼうぜ俺と」
MNR「あぁ・・・あぁ・・・」
一向にこちらに興味を示さない殺人鬼に苛立ち、秋戸は右肩部を狙って銃を放った。が、銃は殺人鬼の身体を貫くことなく、出鱈目な方角へ跳ねていった。
『奴らに物理攻撃は効きません。というか生きている次元が我々とズレているんです。殺すにはなんJ民の力を借りなければいけません』 秋戸は宇野から聞いた言葉を思い出し、舌打ちを打った。じゃあやっぱり、俺はこいつを殺せないのか、と。
MNR「うぅ・・・うううぅ! 」銃弾の衝撃で体勢を崩された殺人鬼が、入り口付近にいた秋戸に振り向き、怒りの形相を浮かべる。
秋戸「食事か? それともオナニーだったか? どっちみち、お楽しみを邪魔したら誰だって怒るよなぁ、はは」
駄目元で撃った銃弾が無駄に終わらず、殺人鬼の興味を引けたことに秋戸は喜色を発した」
380 :
◆bhb.NJHtRg
[saga]:2016/12/10(土) 00:31:25.46 ID:+sviqq5G0
奇声を発しながら、殺人鬼が秋戸へと駆けた。避け辛いよう低い姿勢で、手に持っているだろうナイフは背中に隠している。
秋戸(アホっぽいくせに、面倒臭い小技は知っているのな)
護身術の稽古では、暴漢役は刃物を堂々と構え、大きく振りかぶって敵を狙う。傍目には間抜けな絵面に見えるが、これが意味するのは結局、そこまで分かりやすく動いてやらなければ、刃物への対処は難しいということである。
その上刃物を隠されるとなると、どこを狙って、どう動いて、いつ刺し貫いてくるのかの予測は直前まで不可能で、非常に危険だ。
MNR「おぶっ!?」
秋戸は、低い位置にあった顔をめがけ、前蹴りを放った。腕よりも脚の方がリーチは長い。対処の困難な刃物なら、間合いに入る前に潰してやればいい。
ダメージはないだろうが、それでも構わない。秋戸は仰向けで倒れた殺人鬼の腕をすかさず掴み、捻りながらうつ伏せに抑える。
381 :
◆bhb.NJHtRg
[saga]:2016/12/10(土) 00:32:05.98 ID:+sviqq5G0
秋戸「真正面から直線で突っ込んで来るのが悪いよ、お前」
打撃が駄目なら、関節技はどうだろうか。そう思い、組み伏せた殺人鬼の腕を、限界以上に曲げてやろうとする。が、どれだけ力を入れようと、曲がってはいけない一線以上には動かすことが出来ない。
秋戸「どうやっても、普通の人間にはダメージを与えられないわけか」
秋戸は仕方なく、端末を取り出して通信を入れる。不本意であった、救援の要請だ。
秋戸『秋戸だ。西棟401号室で概念体に遭遇し、拘束した。とどめを刺......』
宇野『今それどころじゃないんですよ!』
ピッ、と一方的に通信を切られ、耳障りな機械音が耳を鳴らす。黄色い化物に至っては、通信に出ようともしない。
秋戸「なんだ、あいつら」
382 :
◆bhb.NJHtRg
[saga]:2016/12/10(土) 00:50:09.91 ID:exZFdYAf0
使えねぇ、と一人零し、殺人鬼に目を向ける。
MNR「ウーッ! ウーッ、ウー!」
痛みは無いだろうに、身動きを封じられている不快感からか、殺人鬼は拘束を脱しようと必死にもがく。身体の無敵具合の割に、伝わる力は非常に弱い。
秋戸「......なんとか、殺せねぇかなぁ。殺してぇなぁ、自分の手で」
救援は来ない。かといって自分には攻撃手段が無い。秋戸ら待ち望んだ殺人鬼との対面に相対して、まさか途方に暮れるなどという状況は想像もしていなかった。
秋戸「......ん? そういや、こいつのナイフって」
抱え込んだ殺人鬼の右腕に未だ握られるナイフを見て、ふと違和感に気付く。
先程まで、殉職した警官の解体に使われていたナイフには、新品のように綺麗だった。人間の血は、油は、刃物にこびりつけばそうそう落ちるものでは無い。ましてさっきの今で、血の跡が消えるなどということはあり得ない。
秋戸「あり得ない......ってことは、この刃物もあれか? こいつの一部ってことか」
化物が所有していた、化物の武器。これならば、もしかしたら自分にも、こいつを殺せるのかもと、淡い期待が胸を突く。
383 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/10(土) 01:29:31.38 ID:u87Bef3P0
秋戸「もしそうなら......発狂されるわけにはいかねぇなら、指のあたりを......」
殺人鬼からナイフを奪い、そのまま彼の小指にナイフを押し当て、スパッと振り抜く。すると小指の関節部分に切り口が出来、数瞬後、血が小さく噴き出した。
MNR「オトゥーサン! オトゥーサン! オトゥーサン!」
秋戸「あはははは! やった! 傷付けられた! なんだこいつ簡単に殺せるじゃねえか!」
殺人鬼のうめき声が激しく、大きなものに変わると同時に、秋戸の高揚も一気に高まる。夢が叶う瞬間の近づきを感じ、胸が歓喜に震える。
秋戸「あははは! なぁ、出てるよな血が! 俺、お前を今から殺すからな! 絶対殺してやるからな!? 殺される側に回った気分はどうだよ殺人鬼! なぁ!!」
MNR「オトゥーサン! オトゥーサァン! ああー! あああーー!」
殺す側と、殺される側。血の臭いに塗れた401号室に、両者の絶叫が響く。観客を務めるのは、形を喪った死体の群れ。
384 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/10(土) 23:30:20.85 ID:cm3UEyLko
怖E
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/12/17(土) 01:26:54.95 ID:CSuKq/vX0
ずっと夢見た風景が目の前にある。殺人鬼を組み伏せ、有無を言わさぬ状態で、自分は『こいつら』に言いたかった台詞を聞かせてやる。
秋戸「なぁ、お前らを[
ピーーー
]のが俺の夢だった。ずっとずっと、お前らを[
ピーーー
]ことばかり考えていた」
聞かせたい言葉は、存在の否定。絶対悪に対する、侮蔑を込めた拒絶。
秋戸「お前らが好き放題に殺人を犯して・・・・・・特にお前みたいなクソガキだとな、バカなマスコミに出演するアホ共が必ずこう騒ぐんだよ。『何が彼を変えてしまったのか』『家庭環境が悪かったのか』『現代社会の闇の犠牲者』だの、頓珍漢な戯れ言を語りやがる」
MNR「トゥーサン・・・・・・オトゥーサン」
同意など、最初から求めていない。こいつらはどんな罪を犯そうと、自分を正当化する思考を最後まで放棄しない。
秋戸「馬鹿馬鹿しい。お前らが人を[
ピーーー
]のに、お前がクズになったのに、理由なんか無えよ。生い立ちも周囲の人間も関係無い。ただお前らが、生まれながらに欠陥品だっただけの話だ。人を殺さない為の『良心』ってのが最初から抜け落ちてんだよ」
聞く耳など無くていい。反省も懺悔も必要無い。こいつらがやったように、自分も言いたいことを言って、無遠慮に殺してやれればそれで満足なのだから。
秋戸「人間は、大量生産される部品と同じだ。一つや二つなら良くても、百千万と作っていきゃ当然、不出来な欠陥品が発生する。脳みそなんて最高に複雑な部品ならなおさらだ」
しかし、
秋戸「だーのに人間社会ってのは、問題を起こすまではこの欠陥品を廃棄処分しない。それどころか『まだ使い道があるかも』っつって生き永らえさせたりするんだ。理由は・・・・・・生まれながらに悪人がいるって考えるのが怖いんだろうな。そうやって出発点を履き違えた馬鹿共が、お前ら欠陥品を野放しにする。つけあがらせる。挙句、『お前ら』が発生する原因を、無関係な作品に押し付けたりするんだ。反吐が出る」
386 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/17(土) 01:28:34.71 ID:CSuKq/vX0
MNR「オトゥーサン・・・・・・」
秋戸(なんだ?・・・・・・なんだ、この違和感は)
望み通りのはずなのに、胸に湧いて来るのは夢が叶った実感ではなく、何かがズレているという不快感。
秋戸「おい、俺はこれからお前を殺すぞ! 楽には殺さない、お前がやってきたみたいに
嬲ってから殺す! どうだ怖いか!? あぁ!?」
MNR「あぁ・・・・・・オトゥーサン」
違和感の正体は、すぐに分かった。こいつは、この男は、この殺人鬼は、秋戸の声など聞こえていなかったのだ。
聞いていないのでは無く、聞こえていない。罪に対して、開き直っているのでも正当化しているのでもなく、最初から罪を認識していない。
こいつの意識は、『ここ』とは違うどこか遠くの彼方にある。こいつはおそらく人殺しに快楽など感じていない。こいつの殺人は、なにかの情をもった行為ではなく、微生物がただ水中を漂うのと同じに、『動いただけ』なのだ。
秋戸「なんだよ・・・・・・これは」
そこまで理解して、秋戸は悲嘆した。こいつを殺しても、なにも満たされないと分かったからだ。
・・・・・・俗にキチガイ無罪などと揶揄される、罪を犯した心神喪失者への判決がある。この判決の理由は、同情などといういい加減なものからではない。己の罪も罰を与えられたことも認識出来ない者など、裁いても仕方が無いのだ。心此処に在らず、現実に居ない者は裁けない。
秋戸「違う、こいつじゃない。俺が探していたのはこいつじゃない」
自分が憎み、探し求めた殺人鬼はこいつではない。断じてこのような、『下らない生き物』ではないはずだ。
己が人生に決着をもたらすべき宿敵は、もっともっと邪悪で醜悪で、打ち倒すべき強大な歪みの持ち主であるべきだ。
秋戸「駄目だ・・・・・・こいつじゃ、こいつじゃ駄目だ!」
387 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/17(土) 01:29:37.52 ID:CSuKq/vX0
呻き続ける殺人鬼から身を放し、秋戸は狂乱の態でその場から逃げ出した。右手には殺人鬼から奪ったナイフを握りながら、病室を抜け、廊下を走り、階段を下って外に出る。
薄い雲に包まれた満月の、真暗の夜に秋戸は吠えた。地面にナイフを幾度も突き立て、片手で胸を搔きむしる。
秋戸「やっと、やっと終われると思ったのに! 人殺しなら、なんでもいいと思っていたのに!」
秋戸「どこだ、どこにいるんだ! 俺の宿敵はどこにいるんだ!」
掻き立てられる焦燥感は、苛立ちは、浅倉威のそれと同じものだ。きっと同じだ。自分の中に溢れる憎しみで溺れかけている。この苦しみから、解放される方法は・・・・・・。
秋戸「俺にとっての北岡秀一は、どこにいるんだ・・・・・・!」
獣のように吠える。闇夜に向かい、救いを求めるように、この渇きを癒す宿敵を満月に乞うた。
〜〜〜同刻・アッシリヤ領内〜〜〜
満月の夜空の下、片腕の女は港にいた。
始まりのホモ「こ、これに乗るのかい?」
片腕の女「うん、そうだよ。なんだなにか不満か?」
始まりのホモ「いや不満というか、驚いているというか」
片腕の女「まぁ、密入国者が快適な旅しようなんておこがましいから、そこは我慢してよはじめくん」
始まりのホモ「・・・・・・まぁ、僕はムーちゃんに任せるけどさぁ。任せるけどさぁ・・・・・・」
片腕の女「さぁ、極東の島国に向けて出発だ! 張り切っていくよー!」
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/07(土) 17:59:18.02 ID:8J7A7Y6mo
あく
389 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/01/17(火) 17:17:42.64 ID:+aj7/6NvO
秋戸との通信を終え、私は東棟の4階に向かった。今は、病院の東棟と西棟を私と秋戸が、中央棟をなんJ民が搜索している。殺人鬼を発見した時に、すぐなんJ民に救援を呼ぶ為だ。
階段を駆ける私の右手には今、なんJ民の『蛮族の棍棒』が握られている。
博士の説明によれば、概念体が産み出す武器の類は、他人が握ることも可能らしい。
『概念体の武器を持てば、人間でも概念体を攻撃することが可能になる。ただし当人の意思で出し入れが可能だから、敵の武器を奪ったところですぐに消失してしまうだろう。概念体当人が死亡した場合も同様だ。......敵の武器をどうしても使いたければ、説得して仲間に引き入れるか、捕らえて脅して屈服させるしか無いだろうな』
提案した最初こそ「なんでお前にワイの持ち物譲らなあかんのや」と渋られたが、「弟を助けたくないのか?」と問うたところ、すんなりと許容された。
なんJ民が素手で戦えるなら、武器は他の者が持ち、戦闘単位を増やすべきだ。
宇野「おーい、原住民さーん。いませんかー?」
人がいないことを確認した病室に隠れ、私は大声を上げて呼びかける。しばらく無音の時が続き、ここも駄目か、と嘆息をつく。
「誰だよぉ、出てこいよぉ!」
原住民では有り得ない野太い声が響き、私の鼓膜を揺らした。数室先の病室から足音が鳴り、廊下へと出た。
私も廊下に姿を晒し、声の主と対峙した。グラサンに、網タイツ姿の男だった。
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/01/17(火) 17:19:02.52 ID:+aj7/6NvO
「なんだよ姉ちゃんかよ。こんなとこに何の用だ」
「ホモ・アルカディアの、野獣先輩の部下ですね?」
グラサンの気配が変わった。へらへらしたものがピリピリとした殺気に変わる。
「なんだ、警察かお前」
「似たようなもんです。この廃病院で殺人を繰り広げた殺人鬼は、あなたですか?」
「違うなぁ。あんなクソゴミと俺を一緒にすんなよ」
「ではうちの白饅頭を誘拐したのは?」
「なんじゃそりゃ。知らねえよ。つべこべ言わずに来いホイ」
グラサンが、何も無い手から鞭を取り出した。グラサンの言うことが本当だとすると、概念体が複数いることになる。
グラサンの鞭がしなり、私の体へと向かう。後ろに下がって避けると、グラサンはこちらに駆け寄りながら腕を振り回した。暴れる鞭の先端が床や壁、割れたガラスに襲いかかり、景気の良い音を立てる。
宇野(当たったら凄く痛いんだろうなぁ)
十歩程下がったところで、追いつかれた私の体が、鞭の間合い、射程圏内に入ったことを悟る。
鞭の届かない相手の懐に、一気に潜り込む隙は無く、しなる鞭を棍棒で受け止めた。
顔を掠めかけながら、鞭が棍棒に一周、二周と絡まる。すぐに解ける緩い絡みだが、チャンスと思い、私は棍棒をぐいと引き寄せた。
391 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/01/17(火) 17:20:01.64 ID:+aj7/6NvO
「おっ、おっ?」
案の定すぐに鞭はほどけたが、鞭を離さないグラサンに圧をかけるには十分だった。突然引っ張られたグラサンの足がよろめくと共に、私はその懐へと距離を詰める。
棍棒が狙うのは、勿論......。
「ホアァ......!」
男の急所、股間目掛けて、私は棍棒を突いた。メチュ、と小さな音を立てて、嫌な手応えが棍棒から手に伝わる。恐らく右片側の玉は潰れたはずだ。
「やっばいですね。気持ち良いですね、これ」
泡を吹いて崩れ落ちたグラサンから目を離し、棍棒を眺めながら私は感慨に耽った。
渾身の蹴りも銃弾も効かなかった化物に、初めて一発くれてやれたこと。そして男の玉を潰した感触からの「ざまあみろ」という暗い思いが、気分を高揚させた。
「酷いことするじゃねえか」
新手が現れた。ラフな黒シャツの姿とは不釣り合いな、日本刀が右手に握られている。
チャンバラ程度ならいくらも凌げる。だがもし達人なら、間合いに入って数秒で私の首が飛ぶ。
相手の土俵に付き合うことは無い。が、背を見せて逃げるのも得策では無いと思えた。私は黒シャツに調子を合わせ、棍棒を握る左手を前に突き出し、構えた。
私は後方へ、黒シャツは私に向かい、双方ジリジリと足を運ぶ。数秒経ち、構えながらも消極的な私の態度を見かねた黒シャツが、猛然と疾走してきた。
二歩の距離まで詰められ、上段に構えた刀を肩口に振り落とされかける。私は右手に持つ、背中に隠していた銃を胸目掛けて撃った。
「グッ!?」
真剣勝負とでも思っていたのだろうか。不意を突かれた黒シャツが、驚愕の表情で上体を仰け反らせる。
形勢がそっくり逆転した。私は崩れた黒シャツに、握り締めた棍棒を振り下ろしにかかる。殺った、と確信を持つ。
392 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/01/17(火) 17:20:37.44 ID:+aj7/6NvO
しかし黒シャツのこめかみに棍棒が当たる直前、棍棒の感触が手から消えた。
「あ?」
「あ?」
双方事態を飲み込めず、数瞬動きが止まる。そして私は、なんらかの事情でなんJ民が、棍棒を自らの手に引き寄せたことを悟った。
「あの、大馬鹿野郎があああああ!!!」
最悪のタイミングで武器を取り上げられた私は、なんJ民を罵倒しながら、慌てて逃げの手を打った。無防備に背中を晒し、中央棟側の階段へと走る。
その途中で秋戸から通信が入ったが、それどころでは無いが乱暴に切った。
数瞬遅れて、黒シャツが私を追いかける。じわじわと距離が縮まることを感じ、4階から3階に降りた所で、私は廊下側に向かった。
gそして、3階の窓から身を投げ出し、派手に割ったガラスと共に外へと出た。
〜〜
秋戸との通信を終え、しばらく4階を搜索していると、ギャアアアアアア、という叫び声が響き、ワイは跳ね上がった。
「原住民の声や!」
声の方に駆けつけると、気絶した原住民と、下卑た顔で原住民の顔に触る男がいた。ワイは蛮族の棍棒を手に取り、思い切りそいつの顔をぶん殴った。
「おい、原ちゃん大丈夫か! しっかりせえ!」
「う、ううん......アレ? お兄ちゃん? なんでここに」
「なんでもいいわ。早くこんなとこ出るぞ。殺人鬼なんぞ知ったことか、とにかく早く家に帰るぞ」
秋戸からの通信を無視し、立てるか? と聞きながら原住民に手を差し伸べる。
「......。」
少し逡巡した様子を見せた後、原住民が手を取った。ワイはその手を握って原住民を抱え、4階の窓から外に飛び降りた。
393 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/01/17(火) 17:21:29.86 ID:+aj7/6NvO
〜〜〜
夢を見ていた。博士が僕を『息子』と呼んでくれて、育ててくれて、期待してくれる夢だ。
夢の中の僕は、博士のことをお母さんと呼んで、成長して強くなって、博士の期待通りのヒーローになる。ヒーローになって......悪い奴らをやっつけて、すると博士が「よくやったな」って褒めてくれるんだ。
そんな都合が良くて、頭の悪い夢を。続きの無い夢を見ていた。
......ある日の夜、研究室で、博士とお兄ちゃんが話しているのを聞いたことがある。たまたま通りがかった僕は、ドアの外から話し声を聞いていた。
「なぁなぁババア。質問があるんやけど」
「物を尋ねる時くらい呼び方を改めろバカ息子」
「英雄と正義の味方の違いってなんなん?」
「......。」
「なんや陸に揚げられた飛び魚みたいな面で固まりおって」
「いや、お前がそんなことに興味を持つとは思わなかった。成長するのは嬉しいが、昨日まで幼稚園児だった息子がいきなり中学生になったみたいで気持ちが悪い」
「fateのUBW編プレイしてたらな。アーチャーとの決戦でな。正義の味方になりたいっつってた士郎くんが急に『英雄になるんだ』って言い出してな。え、お前正義の味方になりたいんちゃうん?ってなってな。そんで」
「分かったもういい。......ざっくり言えば、英雄か否かは功績を残したかどうかで決まる。英雄という基準においては、どんなに善良な人間でも功績を残せなければ凡人だし、逆に功績さえ残せばどんな悪人であれ英雄になれる」
394 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/01/17(火) 17:22:12.88 ID:+aj7/6NvO
「??」
「つまり英雄の条件には、その人物の人柄は一切反映されないってことだ。歴史の教科書を適当に開いてみろ。性格だけ見ればクズと呼ばれる人物のオンパレードだが、彼らはちゃんと英雄として後世に名を残しているだろ?」
「あー、コロンブスとかヒトラーとか、そういうのか」
「対して正義の味方はその真逆だ。結果の如何は関係無い。彼が正義の味方かどうかは、その心の在り方と生き様によって決まる」
「正義というより、善、と呼んだ方が正しいと私は思うがな。つまり、人対人、国対国といった相対的な正義では無く、人間が普遍的に信じる善を行う者を、人は正義の味方と呼ぶ。子供を守り、困難に陥った人間を助け、愛と勇気への憧憬を人々の心に湧き立たせる存在だ」
「トロッコ問題は知っているか......? ......よし、なら話は早い。五人の命を救う為に、一人の命を自らの手で犠牲にするか、否か。この状況に置かれたら、お前ならどうする?」
「んなもん一人をぶっ殺して五人助けるやろ。足し算が出来れば誰でも分かるわ」
「お前の答えは、英雄としては正解だ。何も行動しなかった場合に比べ、より多くの命を救うという功績を残しているからな。英雄の基準において、お前が一人の人間を殺めたり、悪人であったという汚点はさして影響しない」
「だが正義の味方としては落第だ。正義の味方は人を、まして罪の無い一般人を殺してはならない。倫理的、道徳的に白か黒か不明瞭な行為を、正義の味方はしてはならない。それは普遍的な善では無いからな」
「正義の味方がトロッコ問題の状況で取るべき行動はこれだ。『誰も犠牲にせず、自らの身を呈してトロッコを止めようとする。......結果、正義の味方は死に、守りたかった五人の命も救えずに終わる』」
「無茶苦茶やな。とんでもないバッドエンドやんか」
395 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/01/17(火) 17:22:55.04 ID:+aj7/6NvO
「結果を残せなくても、正義の心があれば誰でも正義の味方になれる。他人の為の自己犠牲は普遍的な美徳だ。だが彼らは英雄では無いから、ただの正義の味方では命を救えない。その為の能力が無いからな」
「英雄とは何か? その能力を持って、功績を残した者のことだ。正義の味方とは何か? 普遍的な善に寄り添い、正しくあろうとする心の持ち主のことだ」
「英雄かどうかはテストの点数、正義の味方かどうかは授業態度が決めるってことか」
「良い例えだな。そう、そして授業態度の良い生徒には、テストでも良い点数を取って欲しいと思うのが人情だ。だから人は、正義の味方と英雄を足して繋ぎ合わせた。正しい人間が、強大な力を手にして、悪を討ち滅ぼす物語を望み、そして生み出した」
「『そいつ』はトロッコ問題の状況において......一人の犠牲も出さず、自らの身を呈してトロッコを止め、五人の命を救う。すなわち、正義の味方と英雄の両方の性質を備えた『正義の英雄(ヒーロー)」
「仮面ライダー、戦隊ヒーロー、ウルトラマンといった正義の英雄を、日本ではまとめてヒーローと呼称する。......日本では英雄とヒーローは別物なんだよ。もしヒーローと英雄を同一視するなら、アンチヒーロー(英雄らしからぬ英雄)なんて単語は存在してはならない。英雄か否かは功績があるかどうかで決まり、その人格や人となりは考慮されないからな」
「はぇ〜」
「まとめれば、正義の味方と英雄をミックスしたのが、お前がTVや漫画で見かける『ヒーロー』なんだよ、って話だ。お前には是非とも、これを目指してもらいたいものだ」
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/01/17(火) 17:23:23.61 ID:+aj7/6NvO
......その次の日、僕も正義の味方と英雄の違いについて、博士に尋ねた。詳しい話を聞きたかったわけでは無い。僕は、博士にとっての僕とお兄ちゃんの違いを、試してみたかった。確かめてみたかった。
帰ってきた答えは素っ気ないものだった
「厳格な違いなど無いさ。あれは、ヒーローに好意を抱いた人間達が、各々の考えに依って好きなように呼称しているだけだからな」
お兄ちゃんに説明したものと全く違う、淡白な説明だった。
その違いで、僕は理解した。博士がお兄ちゃんにヒーローになることを望み、僕にはなんの期待も、望みも持っていないことを。
どこでその『差』が生まれたのか、僕は知らない。でも、もし僕がその理由に答えを見出すとしたら、それは......。
「おい! 原ちゃん大丈夫か!? しっかりせえや!」
夢を終わらせる使者が、目の前にいた。いつも隣で笑っている男が、今は不安げな目で僕を見つめ、安否を問うていた。
寝ぼけ眼から、靄がかかった意識から現実へと立ち返る。返事を返した僕に、お兄ちゃんが手を差し伸べる。
「......。」
あーあ、と思った。顔はブサイクだが、長く逞しいその腕が、僕を助けんと伸びている。そして、それに応える僕の腕は、虚弱さを思わせる白色で、ちんちくりんで短かった。
どちらの方が『ヒーロー』に近い姿かは、誰の目にも明らかだった。
あーあ、と口の中で溢す。
......僕の夢には、続きが無い。僕以外の誰も、その夢の続きを望んでくれないからだ。
397 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/22(日) 20:47:17.39 ID:yy3blmiio
お前の投稿を待ってたんだよ!
398 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/12(日) 16:38:24.30 ID:zcVcmTJco
保守
399 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/11(火) 16:43:05.86 ID:+FvTTq2aO
そろそろ続きオナシャス
400 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/05/03(水) 18:21:19.62 ID:qvNL5v5J0
アーナキソ
401 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/28(日) 22:50:52.93 ID:ylPwkEego
早く続き書いてください!なんでもしますから!
402 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/07(水) 13:52:39.60 ID:Cgum+76nO
すいません。就職活動が終わる目処が着いたので、また再開しようと思います。半年も経っているので、とりあえず前に書いた文章を読み直して整理しています。......書き直したい所だらけですね。
まだスレが残っていて、続きを読みたいと言ってくれる方がいたことに驚きました。ありがとうございます。物語は終わらせます。
403 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/07(水) 17:31:45.04 ID:89sygStgO
将来にかかわることだから仕方ないね(レ)
>>1
の丁寧なシリアスが好きなので無理しない範囲で頑張ってどうぞ
404 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/08(木) 22:21:21.92 ID:3IkVVHBy0
お前のことが好きだったんだよ!
405 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/22(木) 02:26:50.81 ID:FQZJTdqe0
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彡 と ____/
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406 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/06/23(金) 22:12:30.18 ID:W8omkDZf0
アーイキソ
407 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/05(水) 00:39:03.30 ID:EYWXj4w5o
タイトルに釣られて読んだらとんでもない大作で草
淫夢ファミリーの名前だけ変えたら普通にラノベとして通用しそうな内容じゃないですか……
続き待ってるんでオナシャス!センセンシャル!
408 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/26(木) 09:17:53.53 ID:64naKxCj0
オイ!
409 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/26(木) 10:39:50.86 ID:VGAPr+ASO
>>401
ん?
410 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/03/08(木) 14:14:53.20 ID:yJSam14q0
あげ
411 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/02/10(月) 20:40:32.23 ID:hSitHAtV0
?
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