ドイツ「地球立キチガイ学園にようこそ!今日も今日とて偽善に励むぞ!」

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524 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:20:20.53 ID:My0lU9vO0

扶桑「あなたー、帰りにやまとのお着物を買おうと思ってるのだけど」

扶桑「あの子、もしかしてドレス派かしら?ひらひらドレスも着せたいわねぇ##」

飛鳥日本「どちらも買えばいいさ、あの子は可愛いから着こなすだろうよ!」ニッコリ

飛鳥日本「さ、飛行機の時間までに荷物をまとめよう」

飛鳥日本はほくそ笑みながら、妻と共にその部屋を出る。

扶桑「それにしても・・・あの子びっくりするでしょうね」

飛鳥日本「ああ、まさか家に戻ってから唐くんと新羅くんに会えるとは思わないだろう」

飛鳥日本(俺としては新羅ジュニアとは遊ばないでもらいたいけどな)ネトラレェ

扶桑「唐くんも、少しは気を紛らわせてくれたらいいんだけど」

扶桑「隋さんが寝たきりになってから、目に見えて痩せたでしょ?あの子」

飛鳥日本「強がってるけど、隋は親代わりみたいなものだからな」

飛鳥日本「俺もかなり心配だ・・・」

飛鳥日本(あいつはもう、駄目かもしれない)

飛鳥日本(モルヒネ投与が始まって、笑う余裕なんか残されてないんだ)

扶桑「そういえば、高句麗くんも心配だわ」

扶桑「最近パッタリと連絡をくれなくなって・・・どうしたのかしら」

飛鳥日本「高句麗のことだ、どこかでプラプラ遊んでるよ」

そう言いつつ、実は飛鳥日本も気にしていた。

飛鳥日本(こないだ会ったとき、様子が少しおかしかったが・・・)

飛鳥日本(いや、まさか・・・たまたま元気がなかっただけだろ)
 
525 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:21:11.32 ID:My0lU9vO0

部屋で本を読みながら蝦夷は考えていた。

蝦夷(やまとちゃんが帰ってくるなら、俺は出て行くべきなのかな)

蝦夷(旦那にめちゃめちゃ嫌われてるし)

蝦夷(でも、俺には行くとこがないよ)

蝦夷(俺は先生に甘えてる、クソガキなんだよなァ)

蝦夷(・・・やまとちゃんってどんな子なのかな)

蝦夷(もしも先生みたいに優しい子でさ、俺と一緒に遊んでくれたら?)

蝦夷(毎日楽しいだろうなー##)ニヘラァ

蝦夷(あっでもこれ旦那から見たら娘をたぶらかしてることになる・・・?)ハッ

蝦夷(でも俺・・・)

蝦夷(ここに居たいなぁ・・・)グスン

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--------------------------------

日本「渤海くん」

日本は渤海の部屋の前に立つ。

日本「渤海くん・・・」

返事はない。

大地立青少年精神医療センター院内学校ワクワク学級。

東病棟委員長だった唐は、叔父・隋の容態悪化を理由に退院した。

唐の指名で後梁が次の東病棟委員長になったが、
彼女もすぐに退院したために、現在は後唐が委員長を務めている。

新羅も退院した今、日本には話し相手がいなかった。

彼女の親友であった渤海はというと、既にこの世に居なかった。

渤海は殺害されたのである。
 
526 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:22:20.25 ID:My0lU9vO0

彼の私物は跡形残らず処分され、部屋はもぬけの殻であった。

日本「なんもあらへん」

日本「なんも、なーんも残ってへん・・・っ」

少女はポロポロと涙を流した。

渤海少年は日本が寝ている間に、喧嘩をして殺された。

渤海の死亡が確認されてすぐ、職員達によって部屋は片付けられた。
おそらくそれらは全て、彼の母親・粟末に渡されたのだろう。
日本に形見は残されなかった。

日本が翌日目を覚まして彼の死を聞かされたとき、部屋は既にこうなっていた。

事件から幾日も経っているが、彼女は毎日こうして彼の部屋を訪れる。

日本「いじわるや・・・ちょっとくらい、ちょっとくらい待ってよ!」

日本「酷いわ・・・酷いわ・・・わたいのお友達を・・・」

日本「一緒に退院しよねって約束したのに!約束したのに・・・」

契丹「日本」

日本(ピクッ

契丹は花瓶を持っていた。
眼帯の下の肌は蒼かった。

日本「なにしに」

日本「何しに来たん?!」

契丹少年が、渤海を殺したのだ。

彼と渤海は常々仲が悪かったが、あの晩にとうとうそれが爆発した。

激しい口論の末、渤海は契丹の左眼を傷つけた。

怒りで興奮した契丹はナイフを手に取り、

渤海の喉を刺した。
 
527 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:23:19.84 ID:My0lU9vO0

契丹「ごめん」

契丹「俺が言えた口じゃないけど、君のためになんないよ、それ!」

契丹「君は毎日泣いて、どんどんやせ細ってる」

契丹「君のこと嫌いじゃない、心配なんだよ」

日本「あんたのせいやろ!」

日本「あっち行って!人殺し!あんたなんか、嫌いや!大ッ嫌い!」

契丹「ごめん・・・ごめん」

契丹は花瓶を置いて、部屋を出る。

日本「渤海くん・・・」

日本「なんで、なんで喧嘩したん?なんでわたい寝てたん?」

日本「会いたい!会わして、会わしてよ!」

日本「ずっと一緒に居よよ!戻って来てよ!」

日本「あの子居てへんのやったら、こんなとこに居たない!」

日本「うう・・・」
  
   
   
この数日後、日本は退院した。

彼女の両親は、娘の憔悴ぶりに驚いた。

少女は唐や新羅に会えることを知ると、家に飛び帰った。

唐と新羅は彼女から渤海の死を聞いて、共に悲しんだ。

彼女の父親は居候の少年・蝦夷を家から追い出す考えであったが、
娘が少年と話すうち、次第に元気を取り戻すのを見て考えを改めた。
 
528 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:24:09.35 ID:My0lU9vO0

そして、彼女の両親は「渤海」という名前に心当たりがあったので、
共通の友人である高句麗と連絡を取ろうとしたが、
ついに彼の消息はつかめなかったという。
 
 
それもそのはずで、
高句麗は大地立青少年精神医療センターの警備員として、
住みこみで働いていたのである。

それはなぜか?
息子の渤海のためであった。

彼は渤海を認知こそすれ、父親らしいことはまるでやってこなかった。

彼と渤海はほとんど面識がなく、月々僅かばかりの養育費を払うだけの関係である。

息子の死を知って、流石の彼も病院に怒りを覚えた。

葬儀は既に母親が済ませていた。

葬儀を勝手に済ませたことに彼は怒ったが、
今までほとんど親としての責任を果たさなかったことを逆に責められ、
それ以上何も言わずに墓だけ参った。

それから、誰にも相談せずに一人でセンターに乗り込んだのだ。
出るとこ出るつもりであった。

ところが応対したワクワク院長は、彼に世にも恐ろしいことを伝えたのだ。

その内容は以下である。

「渤海くんのお父様ですね。

 よかった、免職される前に私の口から説明したいことがあるのです。

 いくら謝罪しても許されるはずのないことだと承知しておりますが、
 この度の事件を招いてしまったことを深くお詫びいたします。

 息子さんのご遺体及び私物は既にお母様の方へ送ってあります。
 賠償金の方も同様ですね。

 ええ、そんな問題でないことは承知しております。

 ところで、あなたはここの元患者でいらっしゃいますね?
 カルテが残ってありますよ。
 
529 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:25:27.35 ID:My0lU9vO0

 実は、息子さんに関してお母様にはお伝えしていないことがあるんです。

 でも、元患者のあなたになら話しても良いでしょう。

 今回の事件により、息子さんの生命活動は完全に停止されました。

 しかし、息子さんの治療が終了したわけではないのです。

 息子さんは特別な治療メニューへと移行することになりました。

 肉体を持った患者と同じ治療は難しいものでして、はい。

 息子さんは引き続き当センター付属の院内学校の所属となりますが、
 課題プリントの提出や試験等の評価は行われません。

 ここで、肉体を持った他の患者たちとの関わりの間で、

 息子さんの精神状態が快方に進んだと判断され次第、

 息子さんは当センターを退院することができます。

 え?幽霊でもいるのかですって?

 当たり前じゃありませんか、彼の精神はこのセンター内に残っています。

 後でご覧になられますか?

 他の患者たちが就寝したのを確認してから・・・。

 その方がご理解いただけるでしょうしね。

 問題はあなたにそれを見る才能があるかどうかですが、
 なくても空気の違いにはすぐお気づきになるでしょう。

 とりあえず、幽霊がいると考えておいてください!

 幽霊になった息子さんの場合、生前よりも治療が難航いたします。

 そもそも患者たちとの交流が非常に難しくなりますし、

 息子さん自身のこだわりが強くなって、

 精神活動が二進も三進もいかなくなるからです。
 
530 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:26:47.62 ID:My0lU9vO0

 しかも渤海くんの場合、はっきり申し上げて、

 彼はいわゆる地縛霊になっています。

 これは非常に厳しい状態です。

 霊的なセンスをかなり持ったお友達にでも恵まれない限り、

 彼の退院は不可能だと思います。」

このような次第であった。

にわかに信じがたい話であったが、
高句麗は院長の案内のもと、息子の霊を見に行ったのである。

歩いているうちに彼は気づいたのだが、
過去に新羅が飛鳥日本の簪を盗んだ時、
自分は不気味な声やら蛇やらを確認しており、
そういう才能はある方だったのだ。

彼にとって懐かしの東病棟給湯室に到着した。

彼は恐怖で声を上げそうになったが、院長に止められた。

彼がそこで見たものは、
  
  
渤海「やまとちゃん・・・どこ?」

渤海「僕・・・なんでか、動けないんだ・・・」

渤海「やまとちゃん・・・助けて欲しいんだ、やまとちゃん・・・」

渤海「助けて・・・ねぇ・・・」
  
  
確かに息子であった。

彼は院長を押しきって、息子に話しかけた。

高句麗「おい、俺だ!お前の父さんだぞ!」

高句麗「なんとなく覚えてるだろ!昔会ったんだ!なあ!」

しかし、渤海には彼の存在が把握できていないらしかった。

何度声をかけても、渤海はずっと似たようなうわ言を繰り返していた。

ついに高句麗は諦めて、その場を離れることにした。
 
531 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:27:39.87 ID:My0lU9vO0

それから高句麗は、このセンターの警備員として、
施設内に住むことを決心したのである。

彼がそれを申し出ると、ワクワク院長は最後の仕事に、彼を警備員に雇ったのだ。

しかし、さすがのワクワク院長も、高句麗の真の思惑には気づいていなかったらしい。

ただ息子のそばに居たいだけではなかったのだ。

高句麗(あんな状態でも、一応は退院を目指して取り組んでもらえるんだろ?)

高句麗(だったら、親が迎えに行ってやらなきゃさ)

彼や友人達がセンターを退院した時には、
親が迎えに来てくれた。
親に反抗的だった彼も、この時ばかりは嬉しかったのだ。

高句麗(死ぬまで、死んでもここで待っててやるさ)

高句麗(今まで大したことをしてやれなかったんだ)

高句麗(退院したら、すぐ迎えに行ってやるからな)

こうして、彼は警備員として生涯働き続けた。

老齢で働けない体になってしまったとき、
彼は施設内で自殺をした。

おそらくは、この施設を追い出されるのを危惧したのだろう。

それから先、彼の精神活動を確認したものはいない。

なにぶん、警備員専用宿泊室に一番近い施設は、
世界で最も現実的な集団、あの情報管理課のオフィスだからである。
あの職員たちに確認出来るはずがない。

ガチャッ

・・・前言を撤回しなくてはならないかもしれない。

彼の精神活動を確認しうる人間がちょうど、警備員専用宿泊室に来るからだ。

例の特殊部隊隊長・南極に「管理が杜撰過ぎる!」とたっぷり怒られて、
長らく使用されていなかった警備員専用宿泊室をしぶしぶ調査しに、
現在の地球立メンタルヘルスケアスクール院長である、

ゴドー・マクガフィンが。
   
532 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:28:54.79 ID:My0lU9vO0
  
-------[人物紹介]--------
 
 蝦夷
 :奈良日本(渤海の言う、やまとちゃん)の夫。
  つまり、平安日本の父にして鎌倉日本の祖父にあたる。
  珍獣ハンターをしていたことで扶桑(獣医をしていた)と出会い、
  彼女の助手として日本の家に居候する。
  姑(扶桑)との仲は本当の親子のように良好だが、舅(飛鳥日本)とは水と油のように険悪。
  
 契丹
 :渤海を殺害した少年。境界性パーソナリティ障害で入院していた。
  渤海殺害後、憔悴した日本を心配するも彼女に拒絶される。
  実はかなり成績優秀で、唐に次いで周囲から宿題の解答をせがまれている。
  後に、(文化人として著名になる)唐を支援する実業家として業界に知られる。
  
  
   
>>>>>>>【ボーナスステージ】!!!!!!!
  
◆やり場のない話

飛鳥日本「・・・」ハァ

蝦夷「旦那、元気ないですね。水虫でもかかりましたか」

飛鳥日本「失敬な!」

飛鳥日本「はぁ、いや・・・仕方ない。君はまともな反応をしてくれそうだ」

蝦夷「はい?」

飛鳥日本「相談があるんだ、俺はどうすべきなのか」

飛鳥日本「娘とやたら仲良くしていたらしい、渤海という男についてだ」

蝦夷「ああ、渤海くんですか。やまとちゃんから聞きました」

蝦夷「とても親切な子だったんですってね、可哀想に殺されてしまって・・・」

飛鳥日本「ああ、俺も初めはそう思った」

飛鳥日本「だが、話を詳しく聞くと、それがとんでもない奴だったんだよ」

飛鳥日本「この渤海、お前に勝るロクでもない男だったのだ!」ドンッ

蝦夷「え?」
 
533 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:30:06.99 ID:My0lU9vO0

飛鳥日本「何でもな、そいつに娘がやったことを列挙すると・・・」

1.部屋の鍵を没収する
2.生理の日の管理をする
3.着替えを手伝う
4.あーんして食べ物を口に入れる
5.同じベッド(シングル)で寝る
6.娘の濡れたパンツと自分のパンツを交換してはく
7.耳掃除をする
8.お風呂で背中を流し合いっこする

蝦夷「うわキモ」

飛鳥日本「絶対に許せん・・・」プルプル

飛鳥日本「俺なんて、娘と最後に風呂入ったの何年前だと思ってるんだ!!」

飛鳥日本「娘が小学校に入る前だぞ!妖精さんのように可愛かったわ!」ワァァン

蝦夷「いやいや、怒るポイントずれてませんか」

蝦夷「これ、先生(扶桑)は知ってるんですか?」

飛鳥日本「ああ、でも娘同様に『まぁなんて優しい子』で済ませちゃったんだよ!」

蝦夷(先生だいぶ天然だからなぁ)

蝦夷「ヤバいですね、特に2・6・8の破壊力パネぇ」

その時、飛鳥日本は蝦夷の頬を引っ叩いた。

パァンッ

蝦夷「なぜぇっ」

飛鳥日本「今、娘の裸を想像したろ」ギロリ

蝦夷「してませんよ!」

飛鳥日本「したろ」

蝦夷「してませんて!」

飛鳥日本「一瞬したろ」

蝦夷「・・・一瞬しました」
 
534 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:31:00.04 ID:My0lU9vO0

飛鳥日本「こんなことが許されていいのか?年頃の娘に何てことしやがるんだぁ」

飛鳥日本「せめてもの救いはキスや性行為の類はしてないことだ」

蝦夷「マジですか、変なとこで紳士ですね、そいつ」

飛鳥日本「ああ、絶対に越えちゃいけない線をギリギリ越えてはいないんだ」

飛鳥日本「でも俺の許容範囲はとうに超えている!」

蝦夷「ちなみにどの辺までが許容範囲で?」

飛鳥日本「娘の半径0.5m以外の空気を吸うこと」

蝦夷「厳しッ」

飛鳥日本「それでな、本当なら渤海を首から下まで埋めて、木のノコギリで首を引きたいんだが」

蝦夷「なにそれ怖い」

飛鳥日本「奴は既に故人だ。そして奴の父親とも連絡がつかない」

蝦夷「渤海くんのお父さんを呼んでどうするんです」

飛鳥日本「息子の代わりにノコギリで引くんだよ。一回引くごとに君と交代でな」

蝦夷「俺を巻き込まないでくださいよ!嫌ですよ」

飛鳥日本「わかるか?俺はこのやり場のない憤りをどこにぶつければいい?」

飛鳥日本「娘を傷つけずに渤海だけを罵倒してぶん殴ってやりたい」

蝦夷「何か別のことでストレス発散してはどうです?」

飛鳥日本「何?」

蝦夷「いやほら、例えばサンドバッグを殴りまくるとか」

飛鳥日本「なるほどな、少しはそれで苛立ちが治まるかもしれん」

飛鳥日本「君にしてはいい案じゃないか」

蝦夷「そんな#」
 
535 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:31:43.56 ID:My0lU9vO0

飛鳥日本「ウラァ!」ボコォ

飛鳥日本は蝦夷を殴りまくる。

蝦夷「なぜぇっ」

飛鳥日本「お前がサンドバッグだからだよ!」

飛鳥日本「渤海め!この!よくもうちの娘にエロいことを!いやらしい!いやらしい!」バキッボコッ

蝦夷「俺は渤海じゃない」

飛鳥日本「二度とこんなことしてみろ、去勢するからな!この勃起野郎!」ダンッガンッ

蝦夷「痛い痛い!やめて」

飛鳥日本「妻だけでは飽き足らず娘までたぶらかしやがってぇ!」バキッボキッ

蝦夷「それ完全に俺への文句じゃないですか」

唐と新羅はビクビクしていた。
 
 
◆万国テレフォンショッピング

シャンシャンシャンシャン・・・

飛鳥日本「いつまでも少年の心を忘れない四十路男、日本です」

蝦夷「何を血迷ったか元・珍獣ハンターの蝦夷です」

飛鳥日本「そのままバラエティ番組あたりで使われてればいいものを」チッ

飛鳥日本「さて、奥様方に今回ご紹介するのはこちらの商品」

飛鳥日本「訳ありズイズイ in the 布団だ!在庫一点限りですよ」

隋「うう・・・」ジャーン

蝦夷「まさかの人身売買!人権侵害でしょこれ」
 
536 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:33:01.03 ID:My0lU9vO0

飛鳥日本「せっかくのクリスマス・イヴを寂しく過ごす予定の奥様にはピッタリの品」

飛鳥日本「訳ありとはいえ一世を風靡したズイズイ、今でもその人気は衰えない」

蝦夷「訳ありとはどのへんが?」

飛鳥日本「見りゃわかるだろ、死にかけなんだよ」

飛鳥日本「だが、うっかり虐待死させてしまっても警察にバレにくい点はかえってお得だな」

蝦夷「なんて鬼畜」

飛鳥日本「このズイズイがなななんとたったの3000円×10回払い!」チャリーン

蝦夷「やっす!」

飛鳥日本「そして今回は特別に、隋を看病する唐少年もお付けする!」

唐「え?え?ちょっと、何なんですかこの番組」ジャーン

蝦夷「あー・・・ええと」

蝦夷「言いにくいんですけど、なんか・・・むしろ隋さんがお荷物のような」

飛鳥日本「だな、唐くんはピチピチの10代で健康で有望株だもんな」

飛鳥日本「死にかけの三十路越え男なんかぶっちゃけ需要ない」

隋(!?)ガーン

飛鳥日本「しかしテレビの前でご覧の奥様、よく考えてください」

飛鳥日本「隋が死んでも、布団と若い男の子が残りますよ!たったの3万!」

蝦夷「確かに安いけど・・・」

唐「さっきから何の話をしてるんです、あなた達は!」
  
537 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:34:18.58 ID:My0lU9vO0

その時、隋が苦しみながらも上半身を起こした。

飛鳥日本「おっ?サービスシーンでもするのか?カメラ寄せて!」

隋「・・・くっ・・・」ググッ

唐「お、叔父貴?大丈夫なのかよ」

隋「ゼェ、ゼェ・・・」

隋「私の方がいい男ですよ、奥さん!」キリッ

蝦夷「残り少ない体力を自分のPRに使った!」

唐「しょうもないことやってんじゃねぇよ!」

隋「う、うるさい・・・」

「マダムキラーになりたい」、その思いが隋を突き動かした。
そしてこれは飛鳥日本の狙いでもあったのだ!

隋「私単体でも奥様方を満足させられるッ」

隋「布団の中に居ても、決して奥様を寝かせない!」

隋「啼かせてみせましょう、この隋が!」

飛鳥日本「ご覧ください、この鮮度!彼はやる気です」

飛鳥日本「それではメモのご用意を!」

飛鳥日本「電話番号2310-8010-8104(扶桑とやまとは天使)にご連絡ください!」

飛鳥日本「今から30分以内にお電話いただいた方には、この蝦夷もお付けします」ニヤリ

蝦夷「えっ」

お電話
おまちしってーいまっすー♪
  
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 22:14:46.47 ID:Qa2omrz30
乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww渤海そんなにキモいやつだったんかいwwwwwwwwww
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/05(木) 22:44:56.94 ID:L+J9ZmVn0
保守
540 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2017/01/07(土) 21:45:01.15 ID:JWGniCcx0
ちょっと忙しいので、一週間ほど更新が無理そうです・・・
541 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2017/01/12(木) 14:57:01.67 ID:krbgfDSI0
読み返してみたら、前回の話のナンバリングを間違えてました・・・
>第18話:約束を破った少女
内容的に次回の話とその次の話(本格的に大日本帝国編が始まる第19話)は時代が前後してしまうので、
次回の話も第18話で通して「第18話が二つ存在する」状態にしようかと思います
実はどちらを19話の直前にするかで悩んでいたので(だからナンバリングを間違えてしまった)
せっかくなので、やや短めの話で第17話を19話の次あたりに書きます
第17話は本編のアメリカ合衆国(Jr.)の父親に関する話にします
第19話は大日本帝国の誕生とキチガイ学園編入までの経緯であるので、
内容的にはあまり混乱しないと思います
彼は大日本帝国編のラスボス・宿敵ポジションなのですが、
その割にちゃんとその生い立ちを説明する時間を作ってなかったなぁと思っていたので、
ちょうどよかったかもしれません
なので、第18話→第18話→第19話(大日本誕生)→第17話(アメリカ誕生)→第20話(キチガイ学園舞台)となります
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/14(土) 21:46:34.46 ID:YH9qahGg0
いよいよ大日本来るか
543 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:05:55.64 ID:AZeSaSLX0
  
第18話:捕らえられるマクガフィン氏

情報管理課のイストワール氏(M. Histoire)は、
厳重で面倒な手続きを全て終えて、看守に案内された。

銃を手渡されたので、氏が理由を尋ねると看守は一言言い放つ。

看守「これからキチガイに会いに行くのに、何を仰るんです?」

氏は「彼は気違いではない」と訂正して、「彼は気違いだったな」と再訂正した。

氏は狂人を殺すつもりで銃を見つめ、それを絶対に人に向けるまいと決心した。

目的地に至るまでの道は非常に静かであった。

それも当然で、鉄格子の中にあるのはたいてい墓碑だからだ。

墓碑に記された年月は遠い昔のものもあれば、つい数分前のものもあり、七週間先のものもあった。

たまに生きた人間もいて、氏と目が合うと軽く会釈した。

それらに氏は何ら感想を抱くことなく、看守の案内に従うのみであった。

看守「ここですね、囚人番号130の牢は」

看守「おい、130番!面会だ!」

看守は鍵を開ける際、氏に「重々気をつけてくださいよ、130番はとくに危ないですから」と囁いた。

氏が牢の中に入るや否や、看守は外側から再度鍵をかけた。
看守は鉄格子の隙間から氏を見守る。

イストワール「130番、どこに隠れているんだ。私だ、イザングラン(Ysengrin)だ」

氏の声を聴いて、奥の影からヨロヨロと男が出てきた。

男はアジア系で鶏がらのように痩せており、目玉だけがギラギラと光っていた。

この男と氏は知り合いであったが、刑務所の規定により囚人は番号で呼ぶことになっていた。

130「ヤオ(1)サン(3)リン(0)、お前のほうが合ってないか?この番号」

130「俺は51号っぽい、うん、51号の人と番号換えてもらおうかな」

氏は男の話を無視して、「資料のありかを言え」とだけ言った。

130番は残念そうに「お前に渡す分は全部、お前んとこの課が回収したはずだが」と答えた。

イストワール「私に渡さない分はどこにやったと聞いてるんだ」

130「どこにって、病棟内に決まってるだろ。あの壁全部だ」

イストワール「壁だって?」
544 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:06:40.36 ID:AZeSaSLX0

130番は小さい子どもにでも教えるように、噛み砕いて答える。

130「あの壁一面にでかでかーっと書いてあるぜ。
 あれは歴代院長が落書きしてきた、超貴重な資料群なわけだ。
 ムカつく職員の悪口から、患者たちの性癖、情報管理課コンピュータの裏コードまで!」

イストワール「馬鹿言うな、壁にそんな落書きなんかない」

130「あるんだよ、ちょっと特殊な字だけどな。
 その字には正類がなくて、韻にも正音がない!
 凡人には朦朧として存在しないように見えているが、
 選ばれし院長が見れば黄金のように鮮明に輝いて、その意味を理解することができるとゆー」

イストワール「ふざけるな、裸の王様の詐欺師みたいなこと言いやがって」

130「あーあ、なんて頭の固い、だから嫌いなんだよ情報管理課!」

氏はため息をつく。
氏と130番の会話はいつもこうであった。

氏にとって130番は、だらしがなくてわけのわからないことばかり話す頭のおかしい人間である。

130番にとって氏は、何を言っても理解してくれずに役に立たない提案ばかりする頭の悪い人間である。

氏は呆れて言う。

イストワール「君はいつもそうだ、私を馬鹿みたいな冗談で誤魔化そうとする。
 どうしてまともに接してくれないんだ?
 どうして普通に仕事をしてくれなかったんだ?」

130番が言い返す。

130「ほらな、俺の言うことを無条件に冗談だと決め付けやがる。
 お前って本ッ当、模範的な情報管理課職員だよ」

イストワール「ああ、だから君のバディに選ばれたんじゃないか」

130「・・・だろうな。
 俺は上の発掘能力が怖いよ、お前みたいなのを見つけてくるんだもの」

130「・・・イザングラン、お前はここに来て何を思った?」

イストワール「何って、暗くて寂しいところだ。君が不憫だよ」

130「ああやっぱり、お前はそれっぽっちしか思うことがなかったんだな」

130「俺はここに来るとき、周りの奴らの行動、看守の冷酷さ、この空間に存在する全てに頭を狂わされそうになったよ」

イストワール「そうなのか、でも君は元々狂ってるからここに連れてこられたのに」

130「俺は狂ってねぇよ!」

イストワール「患者は皆そう言うんだよ。君が一番よくわかってるんじゃないか」
545 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:07:48.78 ID:AZeSaSLX0

130「ハァ、お前にはわからないんだろうけどな。俺は人より感性が鋭いんだ、だから院長に選ばれた」

130「学生時代、意味もわからず祭り気分で反政府デモの集会に参加したらブラックリストに載っちゃって、
 就活ボロボロだった俺が院長なんて職に就けたのは、特殊な才能を認められたからなんだ」

イストワール「君って昔からチャランポランだな」

130「ここは人を生かせる場所じゃない。殺す場所なんだぜ」

イストワール「何を言っている。君は別に死刑宣告されたわけじゃないんだよ」

130「俺にとってこの刑は死刑宣告に等しいんだ、だから、俺は死に向かっているよ」

イストワール「私はそれに関して怒っているんだ。君はなぜ自殺しようとしているのかね」

イストワール「君は、生徒達に対して大変酷いことをした!
 生徒達の病んだ精神を救うのが君の仕事であるのに、あろうことか君は彼らに劇薬を投与したんだ。
 医者失格だよ、君は!
 君は生きて、彼らに対して罪を償うべきなんだ!」

130番は静かに答える。

130「上はそう考えちゃいないさ・・・上はお前の考えとはまるで違ってるよ」

130「上は俺の行動をおそらく評価しているんだ、表面上は怒っているけどね。
 あの手のつけられない癌細胞、問題児達を弱めるためにはあれしか方法がないんだから。
 そして、お前たちを利用して俺を悪者に仕立て上げたんだ。
 上は完全に俺を殺すつもりでここに入れたんだよ」

イストワール「130番、君は被害妄想とかいうのに捕らわれているんじゃないか?
 そんな馬鹿げたことを上がやるわけないじゃないか。
 どこまでも私を悲しませないでくれよ、私は君の友人なんだよ」

130「ここは、空気が悪い。
 俺はここに居て日々それに侵蝕されていく。
 お前にとって、ここはメンタルヘルスケアスクールと同じようなものに見えてるんだろう?
 だが、あそことここは大違いなんだよ。
 あそこは俺の城さ、俺は生徒達のために常にあそこを清潔に保ってきたんだ。
 だから、生徒は世界のどこよりもあの学校が快適なんだ。
 逆に、ここは世界で一番不潔で危ない場所なんだぜ」

イストワール「確かにここは窓もないし空気が悪いけど、君の言ってることは何もかもおかしいね」

130「イザングラン、悪く思わないでくれよ。俺はお前の親友だけども、俺はお前が大嫌いだ」

イストワール「私もそうだよ。だけど君のことが心配だ。それで、なぜ君は自殺なんかしたいんだ?」

130「俺だって死にたくないけど、ここにいるくらいなら死んだほうがマシだ。
 後ろの看守を見てみろ、ゴーグルをかけてマスクをしているだろ?
 あれは普通の人間ですら、ここに居るのが危ないからなのさ。
 お前って奴は超人なんだよ、皮肉でなく尊敬しちゃうぜ」

そのとき、獣のような叫び声が聞こえて、生肉をかき回すような音が聞こえた。
それを氏は冷静に推理する。

イストワール「あー130番、その・・・君の牢屋仲間が自殺を図ったようだが。
 あれ、君のほうもどうしたというんだ?」

130番は頭を押さえながら悶絶していた。

イストワール「いい加減冗談はよしたまえ」
546 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:08:38.72 ID:AZeSaSLX0

130番の痙攣は続くが、イストワール氏は冷ややかに見つめる。
後方で待機する看守も何もしない。

130番はようやく落ち着きを取り戻す。

イストワール「気がすんだか?」

130「お前はいいよな・・・はぁ、はぁ・・・。
 おい看守!今絶命したのは囚人番号82番だ!
 奴め、俺を道連れにしようとしやがったぞ・・・」

イストワール「もういいよ、君がイカレてることは十分わかってるって」

看守は内線で他の者を呼んでいる。

130「お前にはわからないさ・・・お前は生徒の顔すら把握していない」

イストワール「顔写真は全て暗記しているよ」

130「写真のない分は?」

イストワール「写真がない?!そんなはずはない、全ての生徒は入院時に写真を撮るはずだ」

130「・・・夜郎、トレビゾンド、渤海」

130「彼らについて知ってることは?」

イストワール「何だって?・・・誰だ、彼らは?データになかったぞ」

130「彼らはメンタルヘルスケアスクールの在校生さ」

イストワール「待て、メモを取る!後で調べるから、彼らの生年月日を教えてくれ」

130「彼らの命日で調べたほうが早い」

イストワール「命日?・・・いい加減にしろ!」

イストワール「死んだ人間が生徒なものか!」

130「彼らは鬼籍に載った上で、在籍名簿にも載っているんだ・・・院長用のな」

130「夜郎君はいつも亜細亜病棟の百葉箱の近くに居てね、雨の日にはたまに生徒に目撃されるね」

130「トレビゾンド君は欧羅巴病棟の図書館に住んでいる。いつも聖書を熱心に読んで、クルアーンを破っているよ」

130「この2人は周囲と接触することがないから、擬似友人として外部のマクガフィン少年を定期的に投入している」

130「まぁ・・・夜郎君は高慢ちきだし、トレビゾンド君はインテリすぎてゴドーとは気が合わないみたいだが」
547 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:09:28.12 ID:AZeSaSLX0

イストワール「いつまで茶番を続ける気だ?」

130「聞けったら、これまでゴドーに反応すら見せなかった渤海君の治療が大躍進したんだ」

130「俺は嬉しい、幾代もの院長が望んだ光景を見ることが出来たのだから」

130「彼は目覚めた。親友ができて、絶交するまでに回復したんだ」

130「これは快挙だ。なのに、俺へのこの仕打ちは酷すぎるじゃないか!」

130「新しい院長を任命するでもなく、学校を閉鎖するなんて酷じゃないか!」

130「先の二人はともかく、今の渤海少年の精神状態は危ないのに」

イストワール「もういい、君はやっぱり病気なんだよ」

イストワール「君の妄言にはうんざりだ」

130「頼む、マクガフィンを呼んでくれ!」

130「一刻も早く、ゴドーに引き継ぎしなければ・・・」

イストワール「何を言ってる?あの子はまだ小学生じゃないか」

130「そうさ、ユートピア小学校3年生だ」

130「そして、将来のここの院長だ」

イストワール「院長は世界中から選ばれる。君の知り合いが選ばれるとは限らないだろ」

130「限るよ。上があの子を逃すわけない」

130「あの子の夢を全て奪った上で、院長に迎えるだろうよ」

130「俺も連中と同じ、あの子の敵なんだ」

130「でも、それは救世主としてのあの子の宿命さ」

130「生徒たちを救えるのは、全世界であの子だけなんだから」

イストワール「何にせよ、こんな頭のおかしい人間のところへ子供を連れてくるわけにいかない」

130「俺がもっとおかしくなる前に、頼むよ」

130「お前もそこはわかるだろ?俺はじきに廃人になる」

130「その前に、何としてでもあの子に伝えなきゃならないことがあるんだ」

イストワール「・・・」

イストワール「わかった。彼が行くと言えばここに案内する」

130「ありがとう」

イストワール「だが、私にも言うべきことがあるだろう?」

イストワール「なぜ君は、WWとCOLDを生徒たちに投与した?」

130「上からの指示だ。俺から相談を持ちかけて許可をもらうという形で」

イストワール「どんな効果を期待したんだ?」

130「彼らの現状そのままを」

イストワール氏はため息をつく。

イストワール「・・・具体的に」
548 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:10:58.61 ID:AZeSaSLX0

130「まず、病院が大地立から地球立に変わった意味を説明しなきゃな。なぜだかわかるか?」

イストワール「さぁ・・・グレートブリテン卿とフランス卿の発案だと聞いたが」

130「その通り、彼らは当院の出身者だ。他の出身者と協力して、彼らがそう判断した」

130「初め、患者たちは『大地を駆け巡り、自己を顕示したい』と願っていた」

130「ここでの自己顕示というのは、基本的に他者への犠牲を強いるものだ」

130「それが次第に海の覆う限り、空の届く限りに範囲が広がっていった」

130「お前も気づいていると思うが・・・この病院はただ重篤な精神病患者を集めているわけじゃない」

130「皆が皆、ある種の天才。大いなる犠牲の上に王になる素質を持っている」

イストワール「・・・ああ」

イストワール「出身者の多くは、それぞれの道で一流とされる人間になっているな」

130「本当はもっとすごい存在になれたのさ、彼らは」

130「その才能を、最大多数の最大幸福のために毟り取るのが俺たちの仕事だ」

130「この世界の彼ら以外の住民と、彼らのうちで傷つく敗者を守るために、王を殺す」

130「彼らの野望を引き裂いて、彼らの人生を大きく狂わせる酷い仕事さ」

130「似たような者たちを、子供のうちに共住させて潰し合わせるんだ」

130「これまでは・・・特に大地立の頃は、それだけで十分だったんだ」

130「少年時代のグレートブリテン卿は、当時の『王』最有力候補として見なされていた」

130「そこで病院は、彼に対する反逆者としてアメリカ(13植民地)少年を投入した」

130「アメリカ少年は元々ただの非行少年だと見なされていたが―――違った」

130「彼は院内で頭角を現して、病院の予想を超えた反逆者として成長した」

130「グレートブリテン少年とアメリカ少年の闘争は、大勢の患者を巻き込んだ」

130「その経験を踏まえて、元患者たちは『病院側の意識の低さ』を訴えたんだ」

130「時代を経るごとに患者・王候補たちの凶暴さや残虐さは増してゆく」

130「大地を駆けるどころではない、地球を滅ぼしてしまうほどに、患者たちは進化しているのだと」

イストワール「じゃあ、地球を守るという意味で『地球立』に変えたと?」

イストワール「だとするとおかしいじゃないか、元患者は病院を恨むはずだ」

イストワール「どうしてそんな、さらに患者を束縛するようなことを提案するんだ?」
549 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:12:00.85 ID:AZeSaSLX0

130「自覚のないままに、爪をもがれた彼らは地球の一員だと認識してしまうのさ」

130「もはや王たりえなくなったグレートブリテン卿は、後輩たちを獣のように感じたんだろうな」

130「善良な地球市民である自分たちの脅威を排除しようと考えたわけだ」

130「・・・ここからは愚痴になっちまうけど、いいかな?」

イストワール「この際とことん言えばいい」

130「俺の受け持った生徒たちは、歴代で最も才能豊かで恐ろしい少年たちだったんだよ」

130「抜群の頭脳、身体能力、カリスマ性を持っていた」

130「そのまま彼らを世に放てば、世界は滅ぶところだった」

130「彼らは絶望、恥辱、憂鬱、恐怖、惰気、飢餓感、子宮回帰願望といったものを知らなかった」

130「彼らを大人しくさせるには、それらを刻みつける必要があったんだ」

130「そこで俺は・・・あの薬の投与を上に持ちかけた」

130「上はすぐに許可を出した。極秘のうちに」

130「お前らは、情報管理課の人間は、正義感が強いからな」

イストワール「信じられないな、そんな話」

130「そして、上への忠誠心も強い。忠実でまっとうな人間だよ、お前は」

130「被害妄想の作り話だと思いつつも、ちゃんと俺の話を聞いてくれる優しい奴だ」

130「見ておけ、彼らは人を殺そうとするたびに、恐怖が常によぎるから」

130「彼らはもはや、普通の人間と同じように、金や権力に従って生きることしかできない」

イストワール「・・・」

130「勘違いしないで欲しい」

130「俺は親の次くらいに、彼らを愛しているんだぜ」

130「たまらないほど愛しているんだ、だからこそ、WWを二度、COLDを一度投与したんだ」
550 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:13:56.68 ID:AZeSaSLX0

130「最後に一人の王が君臨するより、愚かな民として暮らした方が幸せだと俺は思ったから」

130「彼らはきっと、俺の行動をわかってくれるはず」

130「自分の子や親戚を、この学校に入れるだろう」

その時、130番はよろめいた。

イストワール「!おいっ・・・」

130「だ、駄目だ・・・思ったより時間がなかった・・・」

130「俺はもう駄目だ・・・じきに、人間らしい思考ができなくなる」

130番はイストワール氏の両肩を掴む。

それを見て看守は銃を構えた。

イストワール「待って!撃つのは待って!」

130「ゴドーに、マクガフィンに、Qちゃんが言ってたって伝えてくれ・・・」

130「本当にごめんって、俺と出会ったせいで、ゴドーの人生がめちゃくちゃになること」

130「それでも、過去と、現在と、未来の患者を救えるのは、ゴドーしかいないこと」

130「生徒から逃げずに、向き合って欲しいこと」

130「俺よりも上手くやって、まともに生きて欲しいこと」

130「これだけは、あの子に伝えなきゃいけないんだ!」

イストワール「わかった」

130「あと、お前に言うぶんだ」

130「イザングラン、お前には苦労をかけたな」

130「業務に関してお前とわかり合えたことはなかったが、お前が相棒で良かった」

130「もっと違う出会い方をしていれば、喧嘩も少なく済んだだろうにな」

130「それから」

130「今から俺の勝手で、お前に一生消えない傷を付けることを謝る」

130「これ以上の屈辱に、耐えられないんだ」
551 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:15:02.64 ID:AZeSaSLX0

130「Qちゃんは待ってるぞ、ゴドー!」

それだけ言うと、130番はイストワール氏から拳銃を奪い取り、

自らの眉間を撃った。

ダァン!

130番の体は、ずるりと床に崩れた。

彼は廃人になる寸前で、自殺したのだった。

イストワール「嘘だ」

イストワール「なぜだ、なぜなんだ、烏有!」

イストワール「最後まで君は、私が納得する答えを教えてくれなかった!」

始終を見ていた看守はトランシーバーで仲間に連絡し、130番の遺体に近づいた。

看守「いいですか、あなたがこいつを殺したんですよ」

看守「拳銃を奪って自殺しただなんて、大問題ですから。わかるでしょ?」

看守「こいつが暴れ出したからあなたが撃った、そういうことにしますよ」

看守「よござんすね?」

イストワール「・・・」

イストワール「・・・ああ、私が彼を殺したんだ」

イストワール「問題無い、そう報告するし、君の方も頼むよ」

イストワール「私が烏有を殺した」

イストワール(・・・だが)

イストワール(私が殺したのは狂人ではなかった)
  
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/22(日) 18:03:04.62 ID:CF+QvuZq0
何この話めっちゃ興奮する
553 : ◆pIxjj4GI1s [sage saga]:2017/01/24(火) 20:10:17.97 ID:3YItZhv00
考えた結果、19話と20話はやっぱりくっついていたほうがわかりやすいと思うので、
先に17話を投下します
17話は実質「番外編:ドカン!と一発ホームラン」 (>>389〜)の続きになります

17話の登場人物は基本アメリカなので、
ここで説明しておきます
セリフ「」の前に付ける名前で表記してます

アメリカ:「番外編:ドカン!と一発ホームラン」の主人公。二代目アメリカ合衆国。あだ名はコロンビア(以下)。

テキサス:コロンビアの夫。

USA:三代目アメリカ合衆国。呼び名はジュニア。コロンビアの息子のうち、兄のほう。

CSA:アメリカ連合国。あだ名はディキシー。コロンビアの息子のうち、弟のほう。

十三州:初代アメリカ合衆国。コロンビアの父親。ディキシーたちの祖父。
554 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:11:53.26 ID:3YItZhv00
  
第17話:アンクル・サムの小屋

かつて友人たちにコロンビアと呼ばれ慕われたアメリカ少女は、やがて大人になり、結婚し、子宝に恵まれた。

夫のテキサスは陽気で優しく、子どもは双子の男の子だったので一度に賑やかになった。

兄の方はアメリカ合衆国(USA)といい、ジュニアと呼ばれた。弟の方はアメリカ連合国(CSA)といい、ディキシーと呼ばれた。

さて、この双子のうちディキシーは大変な悪ガキで、アメリカはひどく手を焼いた。

彼は父親によく似ているらしく、「俺の子どもの頃にそっくりやー!」とテキサスは笑う。

アメリカ「ディキシー!ディキシー!遅刻しちゃうわよ!」

アメリカは2階の息子を呼んだ。

CSA「うーん・・・うっせぇな、わかってるよ、ムニャムニャ・・・」

アメリカ「もう!あの子ったらまた夜更かししたのね!」

テキサス「ははは、俺も遅刻常習犯やったからなぁ」

アメリカ「どうしてジュニアみたいにちゃんとできないのかしらー?」

USA「・・・」ズズッ

カチャン

USA「ごちそうさま、いってきます」

アメリカ「ランチボックス持ったわね、いってらっしゃい」

アメリカ「ジュニアは本当にいい子ねぇ」

兄のUSAは学年一の優等生で、スポーツ万能で物静かな少年だった。

彼に恋心を抱く女生徒は多く、学園の密かなアイドルであった。

そんな息子は、母親にとっても自慢であった。

CSA「ぅぁーーあ、今日も遅刻だなー」

アメリカ「ちょっとは焦りなさいな!また先生に呼び出されるでしょ!」

対する弟のCSAは、小学校一の問題児であった。

遅刻や喧嘩でしょっちゅうアメリカは学校に呼びだされた。

CSA「父ちゃーん、パンにピーナツバターとハチミツ塗ってー」

テキサス「どのみち遅刻なんやから、自分でゆっくり塗ったらええがな」

CSA「けちんぼー」

優等生と問題児、それでも母親にとってはどちらの子も等しく可愛かった。

が、躾のためにディキシーの方を怒りがちで、ジュニアを褒めてばかりいるのも事実。

ディキシーは内心面白いはずがなかった。
555 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:12:38.18 ID:3YItZhv00

元々レイシストの気質の強い彼は、自分より弱いものに八つ当たりしていた。

ドカッ

CSA「おい、ニガー!オレをよくも睨みやがったな!」

ドカッ

CSA「よくもだ、あいつと、ジュニアと見比べて、オレを嘲笑ったな!」

バキッ ゲホッゲホッ・・・ヤメテヨ・・・

CSA「ニガー野郎のくせに、オレを出来損ないだと笑いやがって!」

ガンッガンッ

CSA「二度と、二度とだ、絶対にすんなよ!」

ドカッ

CSA「オレはあいつが大ッ嫌いなんだからよ・・・」
   
   
   
アメリカ「ええっ!同級生をリンチ?!」

担任「はい、相手のお子さんは全身痣だらけで肋骨にヒビが入っています」

アメリカ「まぁ、まぁ、なんてこと!治療費はもちろんこちらで負担しますわ」

アメリカ「相手の御宅へすぐ謝りに行きます」

アメリカ「ディキシー!あなた、自分が何をしたかわかってるの!?」

CSA「オレ悪かねぇや!」

アメリカ「ディキシー!」

CSA(フン

担任「お母様が一生懸命なのは十分わかるんですが、彼自身の問題ですので・・・」

CSA「あのニガー、オレの言うこと聞かねぇんだもん。ちょっとばかし殴っただけだ!」

アメリカ「いい加減になさい!」パシンッ

アメリカはディキシーの頬を叩く。

CSA「・・・」

CSA「母ちゃんはジュニアばっかりだ・・・」ボソッ

アメリカ「必ず反省させて、相手の子に謝らせますから」

家に戻ると、さすがのテキサスもディキシーを叱った。

テキサス「ディキシー、お前、同級生に怪我させたそうやないか」

CSA「でもよ、父ちゃん。あのニガーはオレを侮辱したんだ」

テキサス「その子、何したんや?」

CSA「え・・・」

CSA「・・・明らかに、オレを馬鹿にしたような目で見てやがったんだ」

テキサス「何?それだけか!そんなようわからん理由で因縁つけて蹴ったり殴ったりしたんかお前は!」

バシィッ

テキサスはCSAを殴った。

CSA「・・・っ」
556 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:13:15.71 ID:3YItZhv00

テキサス「お前は自分勝手すぎる!ちょっとはジュニアを見習わんか!」

テキサス「ジュニアは皆と仲良うできてんのにお前ときたら・・・」

テキサス「ジュニア、お前からも何か言うたってくれ。友達をむやみやたらに殴るなて!」

USA「・・・」

CSA「・・・」

USA「・・・そうだな」

USA「誰にでも多少は腹が立つこともあるさ。でも、平和的に解決するよう心がけたほうがいいね」

USA「自分の納得いく方法で、なおかつ周囲にとって一番理想的な選択をするべきだと思うよ」

テキサス「お、おう・・・」

ジュニアはそれだけ言うと、庭にある自分専用の作業小屋に行った。
双子の部屋はディキシーの玩具で散らかっているので、
ジュニアはこの小屋で勉強をしたり、筋トレをしたり、趣味の工作をしたりする。

テキサス「あいつの言うてる意味ようわからんかったけど・・・まぁあれや」

テキサス「たぶん、喧嘩すんなって言いたかったんやろ!なぁ、ディキシー?」

CSA「知らねー、オレ頭悪いもん」

CSA「あいつの言ってることなんか、何にも理解できないね!父ちゃんとおんなじで!」

テキサス「こらっおま、お前なぁ!##」

ディキシーはプイッと自室(兄と相部屋だが)に戻った。

ディキシーは部屋で綿を弄びながら、考え事をした。

CSA(わかってんだ、オレが出来損ないなのはさ)

CSA(ジュニアはオレみたいにニガーを殴ったりしねぇし)

CSA(オレみたいにすぐキレたり騒いだりしねぇし)

CSA(頭がすごく良くて、みんなの頼りになる人気者だよ)

CSA(でもさ、そんな奴と比べられるオレって不幸じゃないか)

CSA(一人っ子だったなら、こんな思いはせずに済んだんだぜ)

CSA(まぁ・・・オレがいないでジュニアだけ生まれてればよかったんだろうけど)

CSA(きっと母ちゃんはそう思ってるだろうな)

CSA「・・・」

ディキシーは自分が泣いていることに気づく。

CSA(情けねぇな)

CSA(なんでオレってこんなのなんだろ?)
 
557 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:13:55.55 ID:3YItZhv00

CSA「・・・あ」

CSA(なんか綿をいじくってたらカメリアみたいになったぞ!)

CSA(母ちゃんにあげよっと##)

その頃、母親のアメリカは客人を待っていた。

リーンリーン

アメリカ「来たわ」

彼女は玄関へ迎えに行く。

ガチャッ アメリカ「お父さん!」

十三州「遅くなってすまない。事故で渋滞していてな」

彼女はディキシーについて、父親と相談するつもりだった。
具体的に言えば、ディキシーを更生施設に入れるか否かである。
彼女の父親は、大地立青少年精神医療センター西病棟の出身であるため、
そのような少年達に理解があったのだ。

アメリカ「あたし、はっきり言ってディキシーを育てる自信がないの」

テキサス「そんなん・・・言うたんなや、可愛い自分の子どもやないか」

アメリカ「でも、本当のことよ!」

アメリカ「あたし、あの子が一体何を考えてるのかわからないの・・・っ」

十三州「まぁ落ち着きなさい」

十三州「コロンビア、どんな親でも育児に悩むものだ」

十三州「お前のおてんばぶりに、私とお母さんも随分悩んだよ?」

アメリカ「でも!女の子と男の子は違うわ!」

十三州「そうだ、ディキシーは男の子だ」

十三州「女の子よりも暴力的で、時として親の手に負えない」

十三州「ま、そこはテキサス君に頑張ってもらわないと困るが」チラリ

テキサス「はい・・・」ショボン

十三州「私が見る限り、あの子は異常ではないよ」

十三州「ひどく暴力的で、レイシストが過ぎるがな。そこを教育するのが親の仕事だ」

十三州「あの子はお前たちを愛しているから、必ず声が届くさ」

アメリカ「そうかしら・・・」
 
558 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:14:35.04 ID:3YItZhv00

十三州はコーヒーをすすりながら、娘に尋ねた。

十三州「ところで、外に小屋があったがあれは?」

アメリカ「ああ、あれはジュニアのよ」

アメリカ「ジュニアは工作が好きだから。ノコギリとか使うのよ」

十三州「自室とは別に、あの小屋を作ったのか?」

アメリカ「部屋はディキシーと共同よ。そろそろ分けようと思ってるけど」

十三州「ディキシーに、あの小屋の代わりは何かよこしたのか?」

アメリカ「え?いいえ、だってディキシーには必要ないもの」

アメリカ「あの子は宿題もやらないし、外で遊んでばかりだし、共同なのにディキシーの物で散らかってるし」

十三州「・・・それは良くない。ディキシーにも同じようにしてあげなくては」

アメリカ「何で?部屋ではジュニアは寝起きと着替えくらいしかできないのよ」

十三州「もういい、お前は何もわかってないな」

そこへ、2階からディキシーが降りてきた。

CSA「母ちゃん・・・あれっ爺ちゃん来てたの?」

アメリカ「ディキシー!お爺ちゃんはあなたを怒るために来たのよ」

CSA「う・・・」

十三州「ディキシー」

十三州「お前はたいした理由もなく同級生を蹴って怪我をさせたそうだな」

CSA「だって・・・」

十三州「もう二度としないか」

CSA「・・・約束できねー」

十三州「だろうな」

十三州「よし、週末は私と買い物に出かけるぞ」

CSA「はぁ!?何で?」
 
559 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:15:13.36 ID:3YItZhv00

十三州「私はお前に投資しようと思ってな、アメフトのスパイクを選ぶためだ」

十三州「お前は絶対にアメフトの才能がある。天才には良い装備を与えなくてはな」

CSA「えっ・・・」

CSA「・・・ジュニアは?」

十三州「ジュニア?あいつは勉強で忙しいだろう」

十三州「それにあいつはあまりアメフトを好きじゃないようだ」

CSA「・・・うん、そうだな」

十三州「ただな、私はお前に期待しているが、しょっちゅう暴力騒ぎを起すようでは困るんだよ」

十三州「いくら実力があっても、そんな選手は出場停止になるからな」

十三州「どうだ、むやみに人を殴るのをやめるか」

CSA「うん、頑張る」

十三州「約束だぞ」

CSA「うん、約束」

十三州「よし、では次に会うのは週末だな!」

CSA「ヤッホゥ!」

ディキシーは跳んで喜びながら自室へ戻っていく。

アメリカ「・・・お父さん、アメフト好きだっけ?」

十三州「野球派だ」

十三州「だが、ディキシーはアメフト選手に憧れているからな」

アメリカ「そうだったんだ・・・」

アメリカ「あたし、そういえばディキシーの好きなもの、あまり知らないかも・・・」

十三州「これからはよく注意して観察することだな」

アメリカ「お父さん、すごいね」

十三州「あの病院にいたから、人間観察がすっかり癖になってしまったよ」

祖父は車に乗る前に、ジュニアのいる小屋に寄った。
ジュニアはボトルシップを組み立てていた。
 
560 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:16:31.98 ID:3YItZhv00

USA「・・・お爺ちゃん」

十三州「いやぁ、邪魔してすまんな。なかなかいい部屋じゃないか」

部屋の本棚には(小学生に理解可能なのか怪しい)本が多数、整頓されていた。

USA「まぁね、本や道具をそろえるのにはそれなりに苦労したよ」

十三州「お前はおねだりが上手いからなァ」

そういうと、祖父は帰っていった。

アメリカ(あたし、ひどい母親だわ)

アメリカ(よく考えたら、ディキシーを褒めたこと、一度もないかもしれない)

アメリカ(もっとちゃんと、あの子のこと見てあげなくちゃ・・・!)
  
  
母親がそう思っていた矢先の金曜日に、ディキシーは行方不明になったのだった。
祖父が彼にスパイクを買い与えようとしていた前日である。
ディキシーが家に帰らない理由が見つからなかった。

いくら素行の悪い少年とはいえ、小学生が夜まで帰ってこないのは異常事態である。
両親はもちろん、学校関係者や同級生の保護者、近隣の住民たちは懸命にディキシーを捜索した。
警察は誘拐の線も含めて捜査した。
それでもディキシーは一向に見つからなかった。

USA「母さん、気に病まないで。ディキシーのことだもの、どこかで遊んでるに違いないよ」

アメリカ「ええ、そうね、きっとそのはずよ」

アメリカ「でも、遊んでる途中で怪我でもしてたら?大変でしょ」

母親は息子に説明しながら、自身をなだめていた。
本当は、ディキシーがどこかで遊んでいるとは考えていなかった。
事故にあったか、悪い人間にかどわかされたか、ディキシーの意図しないことが起こっているのだと。
週末の買い物を楽しみにしていたディキシーが、その約束を放り出すとは考えられない。

アメリカ(ディキシー、どこにいるの?)

アメリカ(無事で帰ってきて!そしたらお母さん、あなたを抱き締めてあげるから!)
 
561 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:17:11.52 ID:3YItZhv00

彼女は一睡もせずに息子を捜しつづけた。
夫が体調を心配して、一度ベッドで仮眠を取ることを勧めた。
彼女の体力は限界にあったため、彼女はそれに従った。

布団に身を包みながらも、彼女はなかなか寝つけなかった。
目を瞑っても、常に家に戻らない次男のことを考えていた。

夢か現か、彼女自身には判断がつかなくなった頃、
よく知った声が聞こえた。

CSA「・・・アチャン・・・母ちゃん・・・オレだよ・・・」

アメリカ(ディキシー!)

アメリカ「ディキシー!帰ってきたの!」ガバッ

母親は飛び起きて、次男を抱き締めようとした。
それを次男は制止した。

CSA「違うんだ、母ちゃん・・・オレは、最初からどこにも行ってないんだ」

アメリカ「?」

CSA「でも、これから行かなきゃいけないんだ。聖ペトロが門で待ってくれてるんだ」

アメリカ「ディキシー?何を言ってるの?どこにも行かせないわよ」

彼女は息子の姿の異変に気づいた。
彼の背中には、小さな翼が生えていた。

アメリカ「ディキシー?それはなぁに?どこでもらってきたの?」

CSA「神様がくれたよ。本当はオレ地獄行きだけど、ローマって人が口利きしてくれたみたい」

CSA「ちゃんと母ちゃんにお別れを言って、お仕事を手伝ったら天国に行けるんだって」

アメリカ「ディキシー、お母さんはそんなひどい冗談聞きたくないわ」

CSA「本当の話だよ、母ちゃん。お別れ言いに来たんだ」
 
562 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:18:11.86 ID:3YItZhv00

CSA「オレ、母ちゃんが大好きだよ。今まで言わなくてごめんね」

アメリカ「嫌よ・・・そんな冗談いらない!」

CSA「オレは悪い子だったから、母ちゃんを困らせてばっかりだった」

CSA「ごめんね、母ちゃん。でも、本当に困らせたかったわけじゃないんだ・・・!」

アメリカ「これからお母さん、あなたに優しくするから!そんなこと言わないで!」

CSA「あのね、母ちゃん。これ、綿で作ったカメリアだよ」

CSA「母ちゃんに渡しそびれちゃったから、今渡すんだ」

アメリカ「綺麗だわ、やわらかくて、お母さんこういうの好きなの」

CSA「そうだろうと思った」ニコ

アメリカ「でもお母さん、こんなのより何百倍もあなたが好きよ」

CSA「ありがとう、母ちゃん」

CSA「でもね、やっぱりオレは悪い子なんだよ」

CSA「これから一生、母ちゃんを苦しめてしまうんだ」

CSA「母ちゃんはジュニアを嫌いになってしまうかも。オレ迷うよ」

アメリカ「何を迷うことがあるの?」

CSA「あのね母ちゃん、オレはずっとこの家に居たんだ」

CSA「オレは今から聖ペトロのとこに行くけど、体はそこにあるままなんだ」

CSA「あのね・・・あのね、ごめんよ、母ちゃん」

CSA「オレの体ね、ジュニアの小屋の床下にあるんだ」

アメリカ「嫌!」
  
  
母親が我に返ると、次男の姿はなく、綿のカメリアが枕元に置いてあった。
 
563 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:19:17.31 ID:3YItZhv00

彼女はカメリアを手に取り、何かを思考することなくサンダルを履いて、外に出た。

外はまだ暗かった。

長男の小屋にはなぜか灯りがついていた。

彼女が小屋に近づくと、小屋の前で夫のテキサスがうなだれていた。

テキサスは彼女の姿に気づくと、必死に妻を中に入れまいとした。

彼女は夫を押し切って、小屋の中に入った。

小屋の中では、長男が椅子に座ってうつむいてた。

その長男を、彼女の父親は鷲のように鋭い眼光で睨んでいた。

父親の足元には、剥がされた床板が捨て置かれていた。

そしてその先に、

子どもの物らしい、頭部や手足がまとめて置かれていた。

アメリカ「いや・・・」

彼女が叫びそうになった時、父親は彼女の口を押さえつけた。

十三州「駄目だ、お前たち夫婦がもっと不幸になる!」

十三州「テキサス!」

テキサス「は、はい!」

アメリカ「うあああああああ・・・っ」ジタバタ

テキサスは小屋の扉を閉め、暴れる妻を抑えた。

十三州「コロンビア、すまない。私のせいだ」

十三州「お前に相談されたとき、いやそれ以前から、私はジュニアの方を危惧していた!」

十三州「私の甘さが招いたことだ・・・もっと早く、お前に言うべきだった」

USA「うるさいな、さっさと警察へでも通報すればいいじゃないか」
 
564 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:20:27.28 ID:3YItZhv00

USA「ディキシーが悪いんだよ、僕相手に自慢なんかするから」

USA「つまらない人間の自慢ほど、人を苛立たせるものってないよね?」

USA「頭の悪いディキシーが、靴を買ってもらう程度のことで、僕より上に立った気でいたのさ」

USA「そんな兄弟いらないから、捨てようと思ったんだよ」

USA「お母さんが騒がないように、ちゃんと僕はフォローしたんだよ?」

USA「お母さんを傷つけないように努力したのに、どうして僕が怒られるの?」

アメリカ「うそ・・・嘘よ、こんなの、あたしの産んだ子じゃない」

アメリカ「悪魔よ!あんたは悪魔!悪魔ーーーーー!!!!!!」

USA「母子手帳見返したら?僕はお母さんから生まれてきたよ」

十三州「お前を警察に引き渡したりしない・・・」

十三州「私は娘を愛している。娘を世間から差別される身分にさせてたまるものか」

十三州「お前は、刑務所よりももっと恐ろしい所へ連れて行く」

十三州「私が少年時代を過ごした場所だ。もっとも、私の場合 半ば雇われて入ったが」

十三州「お前によく似た少年たちがたくさんいる場所だ」

USA「それじゃ、そいつら全員 僕が殺すね」

十三州「殺されるのはお前かもしれんぞ」

USA「そんなわけないね」

十三州「強がりを言えるのは今のうちだな、入ればすぐに音をあげて、私に支援を求めるに違いない」

USA「ありえない」

十三州「私は喜んで支援するぞ。可愛い孫が殺されるために、弱い少年たちを排除せねばならん」

十三州「どうせ連中もお前と似たようなクズなんだからな、社会貢献の一環だ」
 
565 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:21:20.61 ID:3YItZhv00

USA「孫がどうなってもいいの?」

十三州「お前が病院で死ねば、世界の不穏分子は一つ消えたことになるじゃないか」

十三州「仮にお前が退院しても、その時は今のお前とは別人になっているだろう」

十三州「恐れを知って、社会にビクビク怯えながら、自分を騙し騙し生きて行くのさ」

USA「意味わかんないね」

十三州「モデルがここにいるぞ。あそこに入る前の私は、今の私よりも勇敢だった」

十三州「少年時代の私は、ディキシーのように乱暴者で、お前のように自分勝手だった」

十三州「今や私は、自分より娘が大事になってしまった。孫の死が哀しくて頭が狂いそうだ」

十三州「お前もいずれ、こんなふうに情けない姿を晒すんだ」

USA「そんなの脅しにすらならない」

USA「要するに、お爺ちゃんは甘いから、コネで警察をうまいこと操ってくれるんでしょ?」

USA「ディキシーは山中あたりで見つかったことにして、僕はそのショックで療養したことにするんだ」

USA「僕は犯罪者扱いされないまま、ディキシーより長く生き延びられるんでしょ?」

十三州「ああ、娘夫婦のためにな」

USA「お母さんのおかげで、僕は普通の犯罪者よりも高待遇にあずかるわけだ」

十三州「お前がそう思うならそれでいいよ」

十三州「私の一番嫌いな友人が、お前を病院まで送り届けてくれる」

十三州「私やお母さん、お父さんとはここでお別れだ。挨拶でもしていきなさい」

ジュニアは両親を一瞥する。

USA「・・・だってさ、バイバイ!僕には二度と会いたくないだろうけど」

両親は絶句した。
母親は様々な感情が入り乱れて、ただ泣くばかりであった。

その時、小屋の外からクラクションが聴こえた。

十三州「あいつ・・・今何時だと思ってるんだ?相変わらず勝手な奴め」

祖父は孫の手を引いて、外へ出た。
 
566 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:22:15.08 ID:3YItZhv00

外にはこのあたりではまず見ることのない、大きな高級車が一台停まっていた。
運転手が扉を開けて、主人が出てくるのを手伝う。

車の中から、モノクルをかけた老紳士が現れた。
顔立ちや身なり、佇まいは上品であったが、その笑みは下品かつ不気味であった。

グレートブリテン「やぁやぁ、旧友よ!出来損ないの孫というのはそれか?」

十三州「ああ、病院まで殺さないように気をつけろよ」

グレートブリテン「わかっているとも!子どもの体は大人より弱いからな」

グレートブリテン「やぁ君!君の名は?」

USA「アメリカ合衆国.ジュニア」

グレートブリテン「なるほど、偉そうな名前だな!なかなか似合ってるんじゃないか?」

そういうと、ブリテン卿は杖でジュニアの足の甲を刺した。

USA「うっ・・・」

その様子を彼の祖父は見逃さなかったが、敢えて追及しなかった。

グレートブリテン「私の名前はグレートブリテン、ブリテン卿でいいよ」

グレートブリテン「そうだ、アメリカ・ジュニア。君のサインをここに書いてくれないかな」

ブリテン卿はまず手帳をジュニアに渡す。

それから万年筆を渡すふりをして、

万年筆でジュニアの手の甲を貫いた。

USA「ああっ・・・・・・ッ・・・・・・」

グレートブリテン「おんやぁ?駄目じゃないか、ペンはちゃんと持たないと!」

グレートブリテン「今どきの小学校じゃ、ペンの持ち方も習わないのかい?嘆かわしいな」

十三州「・・・」
 
567 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:24:09.29 ID:3YItZhv00

USA「こいつ、さっきからわざと刺してる!」

十三州「そうだろうが、それを責める必要はない」

十三州「お前がコロンビアやディキシーだったなら、私はあいつの前歯を数本折ってるよ」

十三州「お前がこれから行くところはああいう輩がたくさんいる」

十三州「あいつは私の同期でな、昔は相手を選ぶことを知らなかった」

十三州「お前だけを攻撃するなんて、昔のあいつじゃ考えられないよ」

USA「・・・」

グレートブリテン「歓迎するよ、私の愛しい後輩よ」

グレートブリテン「私はね、随分と我慢してきたのだよ。退院して以来ずっと」

グレートブリテン「私はこうして、後輩になる子だけ意地悪しても良いと、許可されているんだ」

グレートブリテン「さ、車に乗ろう?道中が楽しみだね!」

グレートブリテン「飛行機はファーストクラス以上に特別な席を設けてあるんだ!君のために」

大はしゃぎのブリテン卿は、ジュニアの小さな手の指を残らず折って、

彼の右手と自分の左手を手錠で繋いだ。

ジュニアは激痛に耐えながら叫ぶ。

USA「僕はもっと早くに、お爺ちゃんを殺して逃げるべきだった!」

十三州「だな、でもお前はそうしなかったんだから、馬鹿を見たというわけだ」

ジュニアはブリテン卿のなすがまま、車に乗せられた。
 
グレートブリテン「私の息子もキチガイ学園出身でね、孫も既に入院中なんだよ」

グレートブリテン「親子三代キチガイとは、笑えるだろう?」

グレートブリテン「よかったら仲良くしてやってくれ、あの子は冒険家に憧れる明るい子だから!」グサッ

USA「うあああああ!!!!」ジタバタ

ブリテン卿は上機嫌だった。

主人の久方ぶりに見せる笑顔に、運転手も喜んだらしく、『ルール・ブリタニア』を鼻歌で歌っていた。
 
568 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:24:51.52 ID:3YItZhv00
 
-------[人物紹介]--------
 
 アメリカ合衆国(ジュニア、USA、後にシニア)
 :本編(現在)アメリカ少年の父。後にアラスカと結婚して一子をもうける。
  典型的なサイコパスで、双子の弟・アメリカ連合国を殺害し、キチガイ学園に送られる。
  プライドが非常に高く、ナルシストで、毎日の筋トレを欠かさない。
  自分よりファッションや言動がカッコいいドイツ(父)をライバル視している。
  自身の経験から、息子への支援(第10話、>>156参照)を惜しまない。イギリス(父)と友達。

 アメリカ連合国(ディキシー、CSA)
 :本編(現在)アメリカ少年の叔父にあたる人物。双子の兄・USAに殺害される。
  乱暴なレイシストで、黒人の同級生を殴る蹴るはしょっちゅう。
  成績も悪く周囲の評判もすこぶる悪いが、兄とは違って純朴な一面もある。
  どうやら地獄行きだったところをローマ帝国に救われ、彼の仕事を手伝っていると思われる。

 テキサス
 :コロンビア・アメリカ(>>389)の夫。訛りのある英語を喋る。
  本編(現在)アメリカ少年の祖父であり、(本編)メキシコとも血縁である。
  一見そうは思えないが、優秀な大学を卒業して稼ぎまくっているエリートである。
  美人の妻について、同僚にのろけることしばしば。

 アメリカ合衆国1世(十三州、13植民地)
 :本編(現在)アメリカの曽祖父。
  キチガイ学園出身。紅茶が大嫌い。亡き妻にルイジアナがいる。
  元々は情緒不安のある非行少年だったが、グレートブリテンに対する反逆者として病院に誘われた。
  グレートブリテンと死闘を繰り広げ、最終的に和解したという。
  アメリカ合衆国(父)の性格を見抜いていたが、アメリカ連合国の死を防ぐことはできなかった。

 グレートブリテン(イングランド)
 :本編(現在)イギリスの曽祖父。
  キチガイ。紅茶が大好き。妻にスコットランドがいる。
  生まれつき良心が欠如しているらしく、相手を選ばず傷つける(十三州曰く、改善されたらしい)。
  息子(>>303登場)が生まれたのをきっかけに、キチガイ学園を大地立から地球立に変更することを提案した。
  息子や孫すらからも「触れちゃ駄目なキチガイ」「絶対妻子に近寄らせたくない人」扱いされている。
  烏有先生曰く、当時の病院側から『王最有力候補』とみなされていたらしい。
   
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/24(火) 23:00:36.69 ID:xqxShljC0
ディキシー(;_;)
570 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2017/01/31(火) 16:19:42.64 ID:J4EmZeHQ0
ちょっと今週更新無理そうです・・・
571 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/02/10(金) 20:23:20.47 ID:ojAhruvA0
  
第19話:ハ敵我 軍官ハ我

日本家に代々受け継がれる家宝、三種の神器の守護神たちが
次の継承者について話し合った。

武蔵「さて、大和氏と出雲氏の怒りは私共(わたくしども)の手に負えない領域まで来たり」

こう話すは、八尺瓊勾玉の主である武蔵。
彼は最近、この役目を託された。
彼は実質、現在氏神たちをまとめる指揮官である。

尾張「山背様は自分の領域だけで手一杯だと仰いますし、深刻ですよ」

彼女は出雲から草薙剣簪を譲り受け、主の座についている。
つまり、出雲は完全に隠居したというわけである。

伊勢「両者の荒魂を鎮めることのできる者を降ろすべきでしょう」

こう話すは男装の麗人、八咫鏡の主である伊勢である。

武蔵「左様な者は居らぬぞよ」

伊勢「いいえ、居ますよ・・・本人の始末は本人にしてもらうのです」

武蔵「如何なる意味でござろうか?」

伊勢「大和の一部を降ろすのですよ」

武蔵「なるほど、分霊を使者にして送り込むわけか。心得た」
   
   (*中略)
   
武蔵は矢を掲げ、大きな声で氏神たちに宣言した。

武蔵「これより、この天羽々矢を降ろし、三種の神器の継承者と見なす!」

氏神たちによって天羽々矢が降ろされた時、江戸日本は初子を懐妊したのである。
572 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/02/10(金) 20:23:59.81 ID:ojAhruvA0

◎戊辰戦争

江戸日本「オエエエエエエエエエエエ!!!」オンボロロロ

琉球王国「つわりか!」

江戸幕府日本はビニール袋いっぱいに吐いた。
夫は妻の背中をさする。

江戸日本「そう・・・みたい、赤ちゃんが・・・」オンボロロロロ

琉球王国「そうか・・・」

夫は静かに微笑んだ。

江戸日本「ウヴォエエエエエエエエエエエエ!!!!」オンボロロロロロ

江戸日本「うううう出るゥ!でるでるでるでるでる」オンボロロロロ

琉球王国「何がだ」

江戸日本「内臓が!ヴォエエエエエエエエエエ!!!」オンボロロロロ

琉球王国「出ないよ」

江戸日本「出るコレェ!内臓ひっくり返って口から出る出る出る出る」オンボロロロロ

琉球王国「出ないよ」

江戸日本「死ぬッシヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」ヴォエエエエエエ

食べた以上に出たという。

こうして大日本帝国はこの世に生を受けた。

ちなみに彼の母たる江戸日本の場合は関ヶ原の戦いと呼ばれ、
その父親の安土桃山日本の場合は応仁の乱と呼ばれている。

また、彼の父たる琉球王国の場合は・・・とくに何も呼ばれていないが、
その父親(征伐前第二尚氏)と前述の安土桃山日本が、
罵り合い殴り合っている時に妊娠の知らせが入ったと伝えられている。
573 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/02/10(金) 20:24:35.32 ID:ojAhruvA0

◎西南戦争

出産の場面である。

夫である琉球は部屋の外にて待機しており、
代わりにうら若き女中である蝦夷が江戸日本に付き添っていた。

看護婦「お母さん、ヒーヒーフーですよ」

江戸日本「ひぃっっっひぃっぅふ・・・・っ」ゼェゼェ

江戸日本「はぁっはぁっ無理ィ!無理ィィィィィィ!」ゼーハー

女医「赤ちゃんも頑張ってるんですよ、お母さんも頑張って!」

江戸日本「いたぁぁい!無理ぃ、て、帝王切開にしてください」ヒーヒー

女医「赤ちゃんちょっと大きく成長してますけど、通常の範囲なんでね」

江戸日本「いたいよぉ、蝦夷ちゃん、手を握ってちょうだい・・・」ハーハー

蝦夷「は、はわわわ、はい!」

エキゾチックな雰囲気を持つ彼女は、そっと妊婦の手を握る。

それにより江戸日本は幾分安心したようだ。

江戸日本「ぁぅぅ・・・ひぃ、ひぃ、ふぅ・・・」ハァハァ

蝦夷(御料人さん、なんて色っぽい・・・これが人妻の色気というものなの?)

蝦夷(こういうの・・・好きッッ!///)

▼ 呪 い 発 動 !

▼蝦夷は猛烈な尿意に襲われた!
▼大日本帝国は胎内にてダルマ回りで半回転した!
▼その反動で江戸日本は陣痛が1.5倍になった!
▼琉球王国はしゃっくりが止まらなくなった!

江戸日本「「んぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!」」

蝦夷「!##」(きゅ、急におしっこ漏れそうになっちゃったどうしよう)モゾモゾ

  ||琉球「ヒック!ヒック!ヒック!ヒック!ヒィック!」(水が欲しいが今ここを離れるわけには)

江戸日本「帝王切開にしてください!帝王切開にしてください!」ゼーゼー

女医「あっ片足出てきた、戻さないと」

江戸日本「なんでぇ・・・っ帝王切開ッ」ヒーヒー

女医「赤ちゃん逆子なんで、両足から出さなきゃいけないんですよー」

江戸日本「でも痛いのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ痛いよぉぉぉぉぉ」

看護婦「赤ちゃんもお母さんに会うために頑張ってますよ」

女医「あーまた片足」

江戸日本「帝王切開にしてくださぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

こうして大日本帝国は誕生した。

ちなみに彼の母たる江戸日本の誕生は大坂の陣と呼ばれ、
その父親の安土桃山日本の誕生は明応の政変と呼ばれている。
また、彼の父たる琉球王国の誕生は琉球征伐と呼ばれている。
574 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/02/10(金) 20:25:33.84 ID:ojAhruvA0

◎日清戦争

〜清の屋敷〜

清「おお、もう歩けるのかその子!まだ9ヶ月なのに」

江戸日本「夫に似たのかしらね。将来は格闘家かも、なんて」

大日本帝国「あーうー」トテトテ

清「フフ、おいで。おじさんが抱っこしてあげよう」

清氏が幼子を抱き上げようとしたところ、
幼子の足が猛烈な勢いで、清氏の顎へと飛び上がった。

ドカッ! ▼大日本帝国、清の顎へ強烈な蹴り!

清「ぐおおお」

江戸日本「キャーごめんなさい大丈夫!?」

大日本帝国「きゃっきゃっ」ニコニコニコ

後日、清氏の顎の骨にヒビが入っているのが判明する。

◎日露戦争

〜帝政ロシアの家〜

ロシア「やぁ、よく来たね!」

江戸日本「お久しぶりー」

江戸日本「ほら、ロシアさんよ。ご挨拶しなさい」

大日本帝国「とぅんちゅちたーっ」

ロシア「おやおや、小さいのになかなかハンサムじゃないか。将来楽しみだ!」

江戸日本「知的で上品なところはわたし似で、隠しきれない凛々しさは夫似なの〜##」エヘヘヘ

大日本帝国「とぅんちゅちたよーっ」

ガシャァン! ▼大日本帝国、卵状の高級時計を破壊!

ロシア「うああああああああああ」

江戸日本「キャーごめんなさい!何壊したの?!弁償するわ!」

大日本帝国「ぶぅぅぅぅぅぅん」

ロシア「い、いや?安物だから・・・気にしないで、そう安物」

ロシア(ちょっとばかし家宝が壊れただけだ、気にしちゃ駄目だよ僕)

大損害を被ったという。
575 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/02/10(金) 20:26:53.13 ID:ojAhruvA0

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このように、元気のありあまる奔放な幼子は、
名門私立・万邦学院初等部に入学した。

彼は皆に愛されて育ち、特に祖父の安土桃山日本は彼を可愛がった。
周囲の期待は大きく、彼は遊ぶ暇もないほどに様々な稽古をさせられた。

*****

琉球「男たるもの強くなくてはならない」

大日本帝国「はい、父上」

琉球「愛する人も守れないようでは、男が廃る」

大日本帝国「はい父上」

琉球「それでは初段、平安(ピンアン)!」

*****

江戸日本「家庭教師の先生いらっしゃったわよ〜!」

プロイセン「Guten Tag、日本君。今日は憲法の勉強をしよう」

大日本帝国「はい、プロイセン先生」

*****

〜射撃場〜

安土桃山「孫よー!男やったら銃くらい使えなな!」

大日本帝国「はい、お爺様」

安土桃山「お前が欲しいという銃は何でも買うたるからな!」ニコニコ

ダーンダーン!

*****

江戸日本「面!」バシィン

大日本帝国「ううっ」

江戸日本「駄目よ〜男の子なんだから、こんなことでへこたれちゃあ」

大日本帝国「はい、母上」

*****

江戸日本「家庭教師の先生いらっしゃったわよ〜」

イギリス「Hello、今日は海軍の勉強だなー」

大日本帝国「はい、イギリス先生」

*****
576 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/02/10(金) 20:28:23.03 ID:ojAhruvA0

琉球空手!家庭教師!銃剣術!剣道!家庭教師!柔道!家庭教師!琉球空手!家庭教師!銃剣術!剣道!家庭教師!柔道!家庭教師!琉球空手!家庭教師!銃剣術!剣道!家庭教師!柔道!家庭教師!琉球空手!家庭教師!銃剣術!剣道!家庭教師!柔道!家庭教師!琉球空手!家庭教師!銃剣術!剣道!家庭教師!柔道!家庭教師!琉球空手!家庭教師!銃剣術!剣道!家庭教師!柔道!家庭教師!琉球空手!家庭教師!銃剣術!剣道!家庭教師!柔道!家庭教師!琉球空手!家庭教師!銃剣術!剣道!家庭教師!柔道!家庭教師!月!月!火!水!木!金!金!

大日本帝国(頑張らなくちゃ。俺は頑張らなきゃいけないんだ)

日本少年は勉強も格闘技も好きだったが、日々の英才教育は少しずつ彼を疲弊させていった。

彼が12歳のとき、彼の世界に異変が起きた。

彼はいつものように、中学に行くために電車を待っていた。
しかし、周囲の視線がいやに気になった。

大日本帝国(何だ・・・?周りの人が、みな俺を睨んでいる気がする)

大日本帝国(俺は、何か変な格好をしているのか?)

彼は自分の服装を確認してみるが、どこもおかしいところはない。
体臭がくさいのかと思って嗅いでみたが、よくわからなかった。

電車が来た瞬間、彼は絶叫して身を伏せた。

電車の扉が開くと、銃撃戦が始まったからだ。

「こいつを殺せ・・・こいつを殺せ・・・」という声が聞こえたため、
少年はその場から駆け出した。

群集は彼を目掛けて追いかけてくる。
中に刃物や拳銃を持った者がいるのを見て、彼は絶望した。

駅員「どうされましたか!」

駅員が混乱する日本少年のもとに駆けつけたが、彼らもまた少年の敵であった。
駅員たちは、少年を捕らえて公安組織に突き出す考えであったからだ。

大日本帝国「黙れ!貴様らのいいようにされてたまるか!」

大日本帝国(どうしよう、いくら俺でもこんな大人数を相手にできない!)

大日本帝国(そうだ、線路から外へ出よう!)

少年は線路に飛び込み、電車がこないうちにフェンスを乗り越えて外へ出た。
逃げるのに必死であったために、鞄はホームに置いてきてしまった。

少年は家まで一直線に走った。

家に戻ると、驚いた様子の蝦夷が彼を迎えた。

蝦夷「坊ちゃん!大変ですよ、いま警察から電話が・・・」

大日本帝国「助けてください、追われているんです!」

蝦夷「とにかくこちらへ、もう怖くありませんよ」

部屋に入ると、深刻な顔をした両親が待っていた。
577 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/02/10(金) 20:29:12.47 ID:ojAhruvA0

江戸日本「大日本・・・」

大日本帝国「申し訳ございません、母上。私は何をしたのか追われる身になってしまいました」

江戸日本「いいのよ、いいの。お前は何も悪いことをしていないの」

江戸日本「まず座って、お茶を飲みなさい。そう、落ち着いて・・・」

大日本帝国「一体全体何がなんだか」

江戸日本「あのね、先に言うと・・・お前は幻覚を見ていたのよ」

大日本帝国「!?・・・何をおっしゃるんですか?」

江戸日本「誰もお前を追いかけたりしていないし、殺そうとなんかしてないのよ」

江戸日本「話によると、お前は突然叫び声をあげて逃げ惑ったそうよ」

江戸日本「傷害事件を起さなかったのが幸いね」

大日本帝国「母上までそんな嘘を!騙されているんですよ!」

江戸日本「信じられないでしょうね、仕方がないわ・・・」

江戸日本「お友達に怪我をさせる前に、お前を転校させます」

大日本帝国「そんな!」

江戸日本「ごめんなさい、私たちが厳しくしすぎたせいよ・・・」

母親はさめざめと涙を流す。

江戸日本「大丈夫よ、転校先は私とお爺様の母校だから」

江戸日本「まぁわたしはほとんど引篭もっていたけど、お父様とお爺様がよくご存知よ」

琉球「・・・お前の行く学校は精神病院だ」

琉球「曲者ぞろいの学校だが、行って損はないはずだ」

大日本帝国「父上まで、酷いじゃありませんか!」

大日本帝国「私を精神病扱いして、誰も信じてくれない・・・」

大日本帝国「・・・さては、あなたがたも既に洗脳されてるんだ」

琉球「何を言うんだ」
578 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/02/10(金) 20:29:55.33 ID:ojAhruvA0

大日本帝国「学校とおっしゃるが、その精神病院に一生私を閉じ込めるおつもりでしょう!」

頭に血が上った少年は、父親に殴りかかろうとした。
父親は妻を後ろに避難させ、さっと構える。

少年が飛びかかろうとしたまさにその時、勢いよく障子の戸が開かれた。

パシーーーーン! 安土桃山「大日本!大日本ーーーーーーーーーーーーッ!!」

大日本帝国「お爺様!」

安土桃山「ワシの母校に行くと聞いて、飛んで来たわ!」

ラグナグ「ちょっと、あなた・・・」

祖父は少年の両肩に手を置き、興奮した様子で話す。

安土桃山「お前はあのキチガイ学園で一番になるんやぞ!」

大日本帝国「は、はい?」

祖父は母親同様に、地球立メンタルヘルスケアスクールの出身であった。
彼は少年時代にキチガイ学園屈指の強者として名を馳せたが、
学園を支配するには遠く至らなかったという思い出を持つ。
彼は日々少年時代を懐かしく思うと共に、悔しくも思っていた。
彼は大変な野心家であり、孫に自分のリベンジをさせるつもりなのである。

安土桃山「あの学校のキチガイ共は、頭はおかしいが頭はよう回る!天才ぞろいや!」

安土桃山「あの学校を制する者は世界を制す!お前はあそこで一番にならなあかん!」

安土桃山「ワシはどんなことでも手を貸したるぞ!欲しい武器は何でもワシに言え!」

安土桃山「院長に賄賂渡してでも、欲しいもん送ったる!一番や!一番やぞ!」

安土桃山「ええか、やかましい奴が居たらな、薬でチョイチョイと黙らしたらしまいや」ニヤリ

安土桃山「キチガイ共を押さえつけて、お前はあの頂点に立つんやーーーーーー!!」

大日本帝国「は、はい!お爺様!」

江戸日本「お、お父様!なんてクサレオヤジ様なの!」

琉球(先が思いやられるなぁ)

ラグナグ「・・・」ハァ

妻のラグナグはあきれ果て、娘と娘婿は呆然とたたずむ中、
祖父は少年を励ました。

安土桃山「そうと決まればお祝いや!はよ、料理屋に予約を入れよ!」
579 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/02/10(金) 20:30:54.27 ID:ojAhruvA0

なんだか釈然としない大日本帝国であったが、
大喜びの祖父を見るうち、キチガイ学園に行くことへの抵抗が消えてしまったらしい。

大日本帝国(よくわからんが、俺は転入先の精神病院で一番にならなきゃいけないんだ・・・!)

少年は転校前に、万邦学院中等部の同級生に別れをつげた。

既に事情を知っていた同級生たちは、寄せ書きの色紙と花束を準備していた。

友人たちは「早く帰ってこいよ!」とか、「そんな何年も居ないんだろ?」などと励ました。

色紙にも「高等部でまた会おう!」と書いてあった。

友人達の心遣いに感動して、思わず涙を流しそうになった大日本帝国に、さらに思わぬ出来事があった。

なんと、同級生の桜島という少女に愛の告白をされたのである。

少年は彼女を「怒りっぽい女だなぁ」としか以前は認識していなかったが、急に愛おしく思えた。

精神病院に入るため、出てくるまで会えないことを告げると、
彼女と文通をする約束をした。

想像以上に今まで居た環境が恵まれていたことに気づいた少年は寂しく思ったが、
これから向かう精神病院で頂点に君臨せねばならないという使命感に、気分が高揚した。

大日本帝国「地球立メンタルヘルスケアスクールか・・・俺は絶対に一番になるぞ」

  
  
>>>>>>>【ボーナスステージ】!!!!!!!

◆(*中略)の内容


伊勢「大和の一部を降ろすのですよ」

武蔵「なるほど、分霊を使者にして送り込むわけか。心得た」

伊勢「既に捕獲隊を派遣しました」

武蔵「何と!左様に危なき任務、どなたにお任せなさったか!?」

武蔵「今や会話も受け付けぬ大和氏相手、所有するを持ち帰る事は至難の業ぞ!」

伊勢「馴染みのほうが心を開くかと考えまして、河内・和泉・紀らに向かわせましたよ」

武蔵「無茶な!」
580 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/02/10(金) 20:31:53.96 ID:ojAhruvA0

その時、「うあああああああ!」という叫び声と共に、
不運にもやたらと戦場に引っ張り出されることで定評のある浪速が入場した。

ひどく怯えた様子で、その顔は涙で歪み、全身に血を浴びて、背中には矢が刺さっていた。
両手には大きな桐箱を抱えている。

武蔵「汝、如何した!?」

浪速「あばばばば・・・俺は今やつのスタンドをほんのちょっぴりやけど体験した!い・・・いや・・・体験したというよりはまったく理解を超えてたんやけど・・・・・・」

伊勢「スタンド?一体何の話です。残りの隊員たちはどうしたのですか?」

浪速「あ…ありのまま さっき 起こった事を話すで!」

浪速「俺・・・いえ、わたしは恐ろして、この任務 即行ご辞退するつもりでいました」

浪速「そやけど、河内の兄さんに和泉の兄さん、阿波の兄さん、紀の姉さんも一緒やと聞きまして、ほんならと同行致しました」

浪速「わたしは商売人ですから、屈強なあの方々のお手伝いをするつもりやったんです」

浪速「わたし共は事前に相談して、大和さんの弱点を狙うことに決めていました」

浪速「大和さんが弱ってはる隙に、持ちもんを奪ってこちらへ運ぶという手はずでした」

浪速「戦力になりません わたしが運ぶ役目になったこともあり、わたしは半ば安心していました」

浪速「ところが現実はそない甘なかった―――大和さんを弱めるどころか、怒らせてしもたのです」

浪速「大和さんに対して優勢やと思てたら、いつのまにやら劣勢になってた」

浪速「な・・・何を言うてるのか わかれへんと思いますけど、わたし共も 何をされたんか わかりませんでした」

浪速「ボキボキと骨砕かれる音、勢いあまって飛び散る血しぶき、頭がどないかなりそうやった」

浪速「催眠術やとか超スピードやとかそんなチャチなもんでは断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わいました」

浪速「わたしは兄さん方の悲鳴を後に、死に物狂いで逃げ帰って参りました」

浪速「任務は達成しましたが、わたしはもう・・・恩も立たず、男も立たずで哀しい!」

浪速「わたしなんぞ、怪我一つせずのうのうと逃げ延びて・・・」

武蔵「なれど、汝が背中に・・・」

尾張「シッ!気づいてないから平気なのかもしれませんよ」

武蔵「むぅ、ご苦労ぢゃ。兎に角、夫れが大和氏の分霊か」

浪速「はっ!これがその・・・」

浪速「大和さんの金時計でございます!」パカッ

チーン

武蔵「」 尾張「///」 伊勢「・・・」
 
581 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/02/10(金) 20:32:46.37 ID:ojAhruvA0

武蔵「・・・是は如何なこと」

浪速「紀の姉さんがですね、金的攻撃を提案しはったので一同賛成しましたんや」

浪速「弱点を切り落としたら手間も省けるて、切り離してすぐ桐箱へ入れた次第」

武蔵「馬鹿者!どこにか敵の睾丸を持ち帰ると云う様な者が居るか!」

浪速「わずかの時間やけど、悶絶してはった様子でした!」

武蔵「それは痛いぞよ!当然の事ぢゃ!」

武蔵「かような物を持ち帰ったところで、使い物にならぬ!」

伊勢「使い物にならないなんて、大和が可哀相じゃありませんか」

尾張「手術でくっつきますかねぇ、これ・・・」

武蔵「かような汚物を降ろせようか!別の物を取てこい!」

浪速「そんな殺生な!二度と帰ってこれませんよ」

尾張「ちょっと待ってください」

尾張は浪速の背中に刺さっている矢をグイッと引き抜いた。

浪速「うえ!?!?」

尾張「この矢って使えませんか?」

武蔵「おお・・・これは確かに大和氏の持ち物ぢゃ」

浪速「ええ?俺・・・さ、刺さっ・・・」

伊勢「それ以上考えてはいけません」

武蔵は矢を掲げ、大きな声で氏神たちに宣言した。

武蔵「これより、この天羽々矢を降ろし、三種の神器の継承者と見なす!」

こうして大日本帝国は誕生した。
  
  
 
-------[人物紹介]--------
 
 大日本帝国
 :本編主人公(現在)日本少年の父。後に桜島と結婚して一子をもうける。
  妄想性パーソナリティ障害と診断されて、キチガイ学園に送られた。
  祖父・安土桃山日本の期待と支援に応えるべく、日々奮闘する。
  出自や境遇から霊的センスがあり、自縛霊の渤海と友達になるが、
  何らかの原因で渤海に恨まれてしまう。真面目な一方で大変な自信家。

 武蔵
 :日本の家を守る氏神の一人。
  江戸日本の誕生した頃から今日に至るまでの、日本家当主の守護神にして氏神たちのリーダー。
  大日本帝国の誕生決定時から、八尺瓊勾玉の主に任命されている。
  氏神たちの中では珍しく真面目な性格。山背に舐められないように侍言葉を使っている。

 伊勢
 :日本の家を守る氏神の一人。
  男装の麗人であり、なおかつ処女厨(一番のお気に入りは処女だった頃の江戸日本)。
  八咫鏡の主にして、強い権力を持つ。尾張とよく食事に出かける。
  実は大和や出雲と仲が悪く、彼らが一緒に居る時と居ない時でテンションに差がある。
 
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/13(月) 00:49:21.51 ID:2ygGgv840
583 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2017/02/20(月) 21:40:16.34 ID:yrStAtpF0
内容考え中なので、あと数日かかりそうです
だいたいの話の流れは決まってるんですが、結構重要な場面があるので・・・
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/03(金) 22:59:06.02 ID:sgmXOE+y0
保守
585 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2017/03/12(日) 00:27:44.60 ID:L/9SqtYq0
おまたせしました!
やっと更新です
586 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:30:05.40 ID:L/9SqtYq0
  
第20話:マクガフィンを狙うファシュヴーグォン氏

某日、道路はひどく渋滞していた。

というのは、一人のホームレスが道路際で焼身自殺を図ったからからである。

彼の名はウラジーミルだと仲間のホームレスたちは話していたが、
彼はかなりの秘密主義で寡黙だったらしく、
それ以上のことは周囲のものは誰も知らなかった。

今回、彼は突然精神に異常をきたして、仲間のライターを奪ったという。

彼は死の直前、「どうしてこうなった!」「俺は真面目に生きてきたのに!」などと叫んでいたらしい。
   
   
   
******
 
イザングラン・イストワールは、情報管理課の受付へ向かった。

彼は目に見えてイライラしていたし、客人に会うなり「今度は何だっ!」と怒鳴りつけた。

それは当然のことで、彼を受付カウンターで待つ客人は元間男なのである。

客人は過去にイストワール氏の妻を寝取った挙句に、
「イザングラン、君の奥さんって相当ブスじゃないか。だからセックスレスだったのかー」と職場で言い放った。
おかげでイストワール氏はバツイチである。

そんな男とイストワール氏が嫌でも会わねばならない訳はというと、

この男、ライネケ・ファシュヴーグォン(Reineke Verschwörung)が、

地球立メンタルヘルスケアスクールの理事長の秘書だからである。

ライネケ「そんなに怒るなよ、イザングランさぁんwww」

ライネケは自慢の金褐色の髪をくしゃくしゃしながらニヤリと笑う。

イザングラン「金の無心か?それとも他の嫌がらせか?」

ライネケ「いんや、今日はあんたじゃなくて烏有院長に用事がありましてね」

ライネケ「烏有先生、管理ルームにいらっしゃらなかったので」

ライネケはイザングランにアタッシュケースを見せる。

ライネケ「中身は秘密っすよ」

イザングラン「別に興味もないね、烏有ならたぶんあと2時間は帰ってこないよ」

ライネケ「ほほう、先生はどちらへ?」
587 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:30:50.29 ID:L/9SqtYq0

普段は烏有院長にうんざりしているイザングランであったが、

こう尋ねられると目を輝かせて答えた。

イザングラン「それがだね!あんな奴でもやはり、彼は医者なんだね!」

イザングラン「彼は毎週、アスペルガー症候群の少年のカウンセリングをしているんだ」

イザングラン「ゴドー君という、とても聡明な男の子だよ」

イザングラン「最初の出会いは障害とは別件だったらしいけど、彼は烏有にだけ懐いたようだ」

イザングラン「私はね、烏有がちゃんと仕事してることに毎週感激するのさ・・・!」

ライネケ「いやいや、仕事もちゃんとしてるでしょ、あの人」

イザングラン「私が見る時いつも遊んでるようだが?!」

イザングラン「私は医者になれなかったが、少しでも患者の治療の手伝いがしたくてこの職を志望し・・・」

ライネケ「あーもーいい、もーいいです」

ライネケ「わかりました。2時間ほど経ってから再度伺ってみましょう」

イザングラン「あいつの家に直接行った方がいいんじゃないか?」

イザングラン「あいつ、本当に管理ルームに足を運ばないんだよ!」
  
  
****約2時間後、管理ルーム****
 
ライネケ「おやっ!奇跡が起こったようだ」

烏有「ああ、月に精々15時間くらいしかここに居ない俺が、荷物取りに数分寄っただけのところに会えるなんて!」

ライネケ「・・・今度からは電話した方が良さそうですね」

烏有「だってさ?ここで一日中監視カメラチェックしてても事件は防げないのだし、生徒との接触は駄目だし、労力の無駄じゃん?」

ライネケ「給料ドロボーじゃないすか」

烏有「院長にさせる仕事じゃないんだよー」

烏有「前任のル・ダウさんなんてさ、真面目にやってたら可哀想に、危うく行かず後家になるとこだったんだよ?」

烏有「寿退社出来たから良いものの、あんな美人をずっとこんなとこに缶詰にするなんて間違ってるぜ!」

ライネケ「それで烏有さんには素敵な出会いがあるんですか?」

烏有「全然ないね!なんでだろ?」

ライネケ「希望を持ちましょう^^」
588 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:31:46.84 ID:L/9SqtYq0

ライネケ「さて、と。本題に入らせてもらいますねー」

ライネケ「理事会からのお荷物をお渡しします」

ライネケがアタッシュケースを開けると更に小ぶりのケースがあり、その鍵を開ける。

中にはアンプルが十数本入っている。

ライネケ「・・・例の試作品ですよ」

烏有「ご苦労」

烏有「綺麗な色だな。これをWW−Tと名づけよう!」

ライネケ「これ、患者たちにに打つんでしょ?」

烏有「そうだよ、既に誰にするかは決めてある」

ライネケ「良心の呵責とかはないんすか?」

烏有「俺は社会の良心だからねー」

ライネケ「社会のためなら多少の犠牲は仕方ないってことですか」

烏有「何を犠牲と捉えるのかによるよねー」

烏有「俺は患者たちがこの世界で生きていけるように出来るなら、何だってするから」

ライネケ「うっそ・・・烏有さん医者みたい!」

烏有「いやボク医者ァーーーっ」

ライネケ「医者と言えば・・・イザングランさんから聞きましたよ、毎週カウンセリングしてるんですって?」

烏有「うん、1人ね。小学校に入ったばかりだからいろいろと」

ライネケは烏有の耳元で囁く。

ライネケ「で?その子が次の院長殿ってわけですか?」

烏有「エ。これってオフレコ?」

ライネケ「元々盗聴なんてしてませんよ、俺」

烏有「いや、この部屋の話ね」

ライネケ「烏有さんが知らないのに俺が知るわけないじゃないすか」

烏有「だよなぁ、よし!他行こう!」
589 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:32:37.23 ID:L/9SqtYq0

**********

南極「それで何でここに来るんだ!」

ここはメンタルヘルスケアスクールのすぐ近く、

公安警察特殊部隊のビル内の専用ジムである。

烏有「あ、南極さん達はそのままトレーニング続けといて下さい」

南極「しかも何でジムなんだ!他の部屋に行けばいいのに!」

この若い隊員もまた、烏有Qの喧嘩相手の一人である。

※烏有の名はQueiだが、標準コードにない字であるため、彼は常にQという略称を用いる。

南極は苛立ちながら、スポーツドリンクを買いに行った。

ライネケ「何でこんなとこに?ここは公安なんですから、盗聴されてないとも限らないでしょ」

烏有「こんなむさ苦しい空間の音声なんて、理事長のババアは興味ないだろ」

烏有「あの子は綺麗な顔をしてるから、絶対あのババアに狙われる!」

ライネケ「何だ、子どもの安全のためだったんですね」

ライネケ(俺が目をつけられたのは、14だったなぁ・・・)

ライネケ「で?ぶっちゃけその子はどうなんです?」

烏有「断言はできないが、たぶん院長になるだろうな。現在の候補第一だ」

ライネケ「何人も候補がいるんで?」

烏有「今はもう1人だけ。でももっと増えるさ」

烏有「俺の時は10人だった。最後に発見されたのが俺で、即決だったそうだ」

ライネケ「へぇ、じゃあまだ全然わかんないんですね」

烏有「だが、俺はあいつで決まると思う」

ライネケ「根拠は?」

烏有「期待してるのは俺だけじゃないから」

ライネケ「誰なんです」

烏有「いろいろさ。おいおい君にもわかる」
590 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:33:42.65 ID:L/9SqtYq0

烏有「むやみやたらに他の人間に話すなよ」

烏有「彼の名はゴドー。6歳。アスペルガー症候群だから俺が相談に乗ってる」

烏有「彼と俺との出会いは2年前、PTSDの診断をした時だった」

烏有「彼の母親は躁鬱病で、浴室で自殺を図った」

烏有「血を流している母親を見て、彼が救急に通報したんだ」

烏有「母親は助かったが、それを目撃した彼が心配だと言うんで父親が俺の所に連れて来た」

ライネケ「やっぱり医者じゃないですか烏有さん」

烏有「診断した結果、ゴドーにはPTSDの心配はないが、発達障害があることが判明した」

烏有「ゴドーの父親もまたちょっと妙な人でね、良く言えば天才肌の画家ではあるが・・・」

烏有「実質一人で子育てするのは難しいように思えたし、本人もそう感じているらしい」

ライネケ「良かった。ゴドーくんはトラウマを持たずに済んだんですね」

烏有「ああ、だが代わりに恐ろしい物を持ってる」

烏有「救急隊員が来るまでの間、あの子は何をしていたと思う?」

ライネケ「何って・・・」

ライネケ「・・・子どもだし、どうにもできないですよ。何をやるべきなのかがわからないし、ただ泣いて母親を呼ぶだけ・・・」

烏有「普通の子はそうだろう?あの子はね、出血の様子と母親の顔をよく見て勉強してたんだ」

ライネケ「何ですって?」

烏有「あの子はテレビを見て、血を流した人がいたら救急に電話するということを覚えて、実行したに過ぎない」

烏有「彼が救急隊員に言った言葉はこうだ」

烏有「『救急です!女性が一名、血を流して倒れています!意識はありません』」

烏有「『女性の名前はレオーネ・マクガフィン。現場は24区7番地2の5の一軒家、1階の浴槽です』」

ライネケ「何ですそれ?」

烏有「母親の死に対する危機感や混乱はなかったんだ」

ライネケ「それじゃ、サイコパスなんですかその子は?」

烏有「いいや、彼はそんなのじゃない」

烏有「彼は死を理解するには幼過ぎただけで、優しさはちゃんと持っている」

烏有「今の彼は母親が精神を病んで自身を傷つけたのだと理解してるし、またそれをするのではないかと心配している」
591 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:34:45.80 ID:L/9SqtYq0

烏有「彼の友達はテレビだけで、彼の夢は俳優なんだよ」

烏有「夢を追う中で、彼は自分の感覚が人と大きくズレていることに気づいた」

烏有「演技は人々の共感を得てこそのものだと彼は知っていたから、そのズレを修復しようと努力しているんだ」

烏有「だから母親がぐったりしているのを見て、混乱よりも興味の方が勝ってしまった」

ライネケ「信じられませんね・・・」

烏有「それでだ、彼は障害のために普通の小学校ではやっていけないと俺は判断した」

烏有「俺はゴドーの父親に、管理化された学校、地球立ユートピア小中高一貫校を勧めた」

ライネケ「それって普通の学校とどう違うんです?」

烏有「普通の小学校だと私服だし、児童も先生も床に座って遊んだり意見を交わしたりするだろ?」

ライネケ「すみませんね、俺は学校に行ったことないんで」

烏有「あ、忘れてたよ。嫌味とかそんなつもりは一切ないんだ」

烏有「ユートピア小は制服があって、皆決まった席に着いて教科書どおりの授業を受けるんだ」

烏有「一昔前の授業体制に近い、自由の少ない厳しい学校なんだ」

ライネケ「息が詰まりそう」

烏有「ゴドーのような子は、自由が少ない環境の方が学びやすいんだよ」

ライネケ「でも、地球立の学校と言えばみんな入試が難しいと聞きましたが」

烏有「ゴドーは頭良いからな。だけど、元々合格は決まっていたよ」

ライネケ「裏口ってことですか?」

烏有「彼はちゃんと表から入ったけど、裏口も用意はされてたってことさ」

烏有「実はユートピア校は、メンタルヘルスケアスクールの姉妹校とも言うべき存在なんだ」

ライネケ「・・・では、院長候補は皆そこに入学すると?」

烏有「それだけじゃない。メンタルヘルスケアスクールの患者を管理すべき人間は無条件に合格するんだ」

ライネケ「管理すべき人間・・・」

烏有「それとなく聞いてみな。総務課や人事課の職員の半分くらいユートピア出身だ」

烏有「もちろん、俺やイザングランのように他校出身者もたくさんいるけど」

ライネケ「大学名しか聞いたことなかったから、知らなかったなぁ」

烏有「今年入学して、ゴドーは早くも同級生の注目の的なんだ」

ライネケ「変人だから?」

烏有「そ。空気が読めないし友達を作らないし、自分の平穏が乱されるとひどく癇癪を起こす」

烏有「そう言うところに女の子は母性本能をくすぐられて、男の子は孤高の哲学者っぽいところに一目置いているらしい」
592 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:35:58.78 ID:L/9SqtYq0

烏有「世話係の女の子がたくさんいるし、男の子はゴドーの行動に大注目だ」

ライネケ「マジか、俺だったらいじめてますよ、そんな奴」

烏有「さっきも言ったように、ゴドーは小さな名俳優だからね。モテモテだよ」

烏有「おマセな上級生の女の子にデートに誘われたりしてる」

ライネケ「そんなにモテるんですか、腹立つなー」

烏有「でも困ったもんでね。上級生相手にゴドーはひどく手を焼くんだ」

烏有「上辺は大人っぽく見えても、彼は女の子をどうにかするテクニックなんか持ってないから」

烏有「年上の女の子に告白されると、ゴドーはいくつか台詞を用意する」

烏有「まずはこう、『君みたいな美人、僕には勿体無い。もっといい男がたくさんいるよ』」

烏有「それから、『僕なんかと付き合っても、君に迷惑がかかるだけさ』」

烏有「『僕はあまりにも子どもで、君とつり合いが取れる男じゃないんだ』」

烏有「こう言って、残念そうに笑う」

ライネケ「それ、意味わかって言ってるんですかね」

烏有「いや、たぶん女を黙らせるための台詞程度にしか思ってない」

烏有「ここで相手が引き下がればいいんだが、相手がしつこく迫った場合は次だ」

烏有「『君を困らせたくない。きっと君は僕に失望するに違いないんだ』」

烏有「『僕はだらしがないし、君を幸せになんて土台できないんだ』」

烏有「『お互い、この距離感が一番幸せでいられるんだよ』」

ライネケ「確かにどこかで聞いたような台詞ですねぇ」

ライネケ「しかも、普通の男なら恥ずかしくて言えないような台詞」

烏有「ゴドーの用意した台詞はここまで。それでも相手が引き下がらなかった場合」

烏有「彼は混乱状態に陥り、相手を憎悪し、反発する」

烏有「ゴドーは癇癪を起こして、泣きながら暴れまわる」

烏有「俺はゴドーが癇癪を起こしたり顰蹙を買ったりしないように、毎週指導してるわけだ」

ライネケ「でもわかりませんね、なぜその子が院長候補なんです?」

ライネケ「そんな障害持ちの人間に、精神病院の院長が務まるとは思えない」

ライネケ「もう一人候補がいるんでしょう?だったらそちらに決まるのでは?」

烏有「・・・そうだな、今からその子について話すつもりだったんだ」

烏有「所詮は6歳児だから、同級生はテレビドラマみたいな賢い台詞を言えるゴドーのおかしさに気づいてないんだな」

烏有「ただし一人だけ、自分勝手なゴドーを快く思わない児童がいるんだ」

烏有「公 世継(おおやけのよつぐ)という少年でね、真面目だけど気難しい子だ」

ライネケ「その子がもう一人の院長候補なんですね」

烏有「何か気付かないか?」

ライネケ「何がです?」
593 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:37:15.46 ID:L/9SqtYq0

烏有「彼は普通のオオヤケさんじゃないよ。"ノ"がある。苗字じゃなくて氏を名乗る家系だ」

ライネケ「もしや・・・あの、公 無是(おおやけのいなよし)と関係が?」

烏有「ああ、元・大地立青少年精神医療センターの院長にして、現・大宰相の公無是の孫だよ」

烏有「詮索好きの君だ、あの男の噂は知ってるだろう?あれは底なしの極悪人だよ」

烏有「あの男は教え子たちを利用して、大宰相の地位に上りつめた」

烏有「実質、地球立メンタルヘルスケアスクールはあの男が創ったようなものだ」

ライネケ(この世界の癌の核だな・・・)

烏有「あの男は上手く教え子たちを動かして、患者たちをさらに苦しめる地獄を作ろうとしたんだ」

ライネケ「で、あなたはその後任者なわけですか」

烏有「そうさ、だが俺は地獄になんかさせない」

ライネケ「そんな人がこの毒物をどうするおつもりで?」

ライネケは自分が運んできたアタッシュケースをちらりと見る。

烏有「毒も薬だ。俺は彼らを救うために使う」

烏有「そもそもこの薬は、あの男からもたらされたものだろう」

ライネケ「だったら、結局地獄行きなのでは?公氏の思惑通りの」

烏有「俺は過程に過ぎない」

烏有「俺はゴドーに賭けてるんだ」

ライネケ「どうせ、それもまた公氏の意向と同じでしょ」

烏有「ああ、そうだよ」

烏有「公さんは、ご自身の孫をすっかり見切ってゴドーに期待している」

ライネケ「え?」

烏有「世継君は候補者だが、誰も彼に期待してない」

烏有「あの人は孫をこんな風に言ってたさ」

烏有「『あいつは駄目だ、あまりにも臆病過ぎる。あいつは情報管理課なんかがお似合いだ』とね」

烏有「可哀想だろう?たったの6歳で、価値のない人間だと切り捨てられるなんてな」

ライネケ「意味がわかりません・・・じゃあ、院長候補というのは何の基準で選ばれるんです?!」

烏有「全ての患者を認識できることだ」

ライネケ「?」

烏有「これに尽きる。説明しても理解されないだろうから、これで勘弁してくれ」

ライネケ「わからないけど、わかりました」
594 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:38:25.19 ID:L/9SqtYq0

烏有「候補になった者は悲惨だ。候補になっただけで、自由に生きることは不可能になる」

ライネケ「なぜです?」

烏有「院長に選ばれた者は院長になるしかなくなるし、それ以外は予備としてキープされる」

烏有「俺以外の9人は、俺の予備として生きるためだけにあらゆる選択が制限されてるんだ」

烏有「俺も、ニートになるという人生設計がめちゃくちゃにされた」

ライネケ(それはむしろ良かったのでは)

烏有「これは許されないことだよ、本当に」

烏有「ライネケ、お前はアトランティス院長の話を知ってるか?」

ライネケ「ああ、なんか歴代最悪の院長とか呼ばれてる人ですよね」

烏有「実は彼は予備だったんだよ。候補第二位だ」

烏有「彼はおそらく世界記録を更新できるような泳者だったんだが、何故かプロになれなかった」

烏有「彼はただの水泳講師としてその才能を腐らせていた」

烏有「ある時、彼は精神医療センターで水泳講師の仕事をしないかと誘われた」

烏有「彼が医師免許を持っていないから水泳講師として雇われる形になっただけで、実際は院長の仕事を任されたんだ」

ライネケ「えっ、それって違法でしょ?」

烏有「当時は表向き、別の人間を院長だと公表していたらしい」

烏有「実質院長になった彼は、他の候補者たちの存在を知ることになった」

烏有「そして、前任のプレスター氏が不慮の事故で亡くなった代わりに自分が呼ばれたことと、

 自分はプレスター氏の予備になるためにプロの道を阻まれていたことが判明した」

烏有「怒り狂った彼は、患者を憎み、社会を恨んで、院長の仕事を一切放棄した」

ライネケ「そんな裏があったんですね」

烏有「そんな彼を病院組織はしばらく様子を見たけど・・・」

烏有「やがて彼は殺されたよ」

ライネケ「!!」
595 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:39:27.31 ID:L/9SqtYq0

烏有「彼は、大きな大会に出場したかっただけなのにな」

烏有「ついでに言うと、予備が院長になったのはアトランティス氏だけで、

 他の予備は理由を知ることなくつまらない人生を送ってることになるな」

ライネケ「何て酷い話だ」

烏有「そんな中、制限を物ともせずに夢を叶えたのが公無是さ」

烏有「自分の立場を高くするために、病院を改革した」

烏有「あの人は今や世界最高の権力を持つ支配者だ」

ライネケ「あなたもああなりたいんですか?」

烏有「さっきも言ったじゃないか。俺は働くのが嫌いでね、退職金で悠悠自適に暮らしたいんだ」

烏有「でも無理かもなw俺も殺されちゃったりして」

ライネケ「烏有さん、あんた、ゴドー君をどうするんです?」

ライネケ「あんたは院長にするために、ゴドー君をそう育てようって言うんですか?」

烏有「ズバリその通りだよ!」

ライネケ「それじゃ、あんたはゴドー君の敵なんですか」

烏有「ゴドーがどう思うかは別として、俺はそのつもりだ」

ライネケ「・・・あんたは、彼に悪いと思わないんですか?」

烏有「思ってるとも」

ライネケ「じゃあ、あんたも結局 公たちと同じ種類の人間なんだな!」

烏有「違う!」

烏有はライネケの頬を殴った。

ライネケは烏有に殴り返した。

烏有「あんな奴らとだけは一緒にするな・・・」

烏有「なんだその目は?お前が汚れ仕事ばかりやらされてるのは俺のせいじゃないぞ!」

ライネケ「ゴドー君に酷いことをする悪い人間だ」

ライネケ「子どもの気持ちを踏み躙る悪い人間だ」

烏有は言葉を詰まらせる。

烏有「・・・」

烏有「お前に言われると堪えるなぁ・・・」

烏有「俺はお前ほど苦労を知らないから、そこを突かれるときつい」

烏有「だったら聞きたいよ、俺はあんな奴らと同じなのか?」
596 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:40:48.86 ID:L/9SqtYq0

烏有「全ての生徒を愛していて、ゴドーの幸せを願っているのに、同じなのか?」

烏有「そりゃ、あの人なりの正義はあるだろうが、あの人が教え子たちを駒として使ってるのは事実だ!」

烏有「俺は絶対、あいつらを駒なんかに使わない!」

烏有「一個の人間として、外の世界で争うことなく平和に生きるのがあいつらの幸せなはずだ・・・」

烏有「あいつらには、俺の影のないところで、自分の意志で物事を決めてほしい」

烏有「誰かを崇拝して生きるなんて、あるべき姿じゃない」

ライネケ「ならゴドー君は?彼は好きに生きられるんですか?」

烏有「ッ」

烏有「・・・ゴドーは俳優になれない」

烏有「ゴドーが大スターに本来なれたとしても、もう現実ではなれない」

烏有「彼がチョイ役で出演できて、ネットで話題になったとしても、それ以上の仕事はよこしてもらえない」

烏有「彼の望む世界には、権力を持った元センターの患者や、組織の人間がたくさんいるからだ」

烏有「だが、ゴドーの素質は俳優だけじゃない」

烏有「俺の後任者としても、最善の人選だと思っている」

烏有「もしもゴドーが俺に憧れてくれたなら、お互いに少しは救いになるだろう」

烏有「お前、考えてみろ。俺に一体何ができるって言うんだ?」

烏有「俺が組織のデータを書き換えて、全ての構成員の記憶を操れるとでも思ってるのか?」

烏有「できることなら俺だってそうしてやりたいよ!でも無理なんだから仕方ないだろ」

烏有「俺が居ても居なくても、奴らはゴドーを院長にする」

烏有「俺に出会わなくてもあいつは見つかってただろうし、俺が隠蔽しても無駄だったさ」

烏有「あいつは目立つんだ。あいつの望む姿が目立つものである限り、幸せにはなれない」

烏有「だったらせめて、『精神科医でもいいじゃないか』って思わせてやりたい」

烏有「自分は不幸だと嘆くのでなくて、妥協の中で誇りを持って生きて欲しい」

ライネケ「・・・」

烏有「お前、馬鹿なことはよせ。弟さんを悲しませることになるぞ」

ライネケ「何の話です?」

烏有「いや、俺の思い過ごしならいいんだ。お前は変に思いつめるところがあるから」

ライネケ「あんたに心配される筋合いはありませんよ」
597 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/03/12(日) 00:43:07.97 ID:L/9SqtYq0

烏有「お前は特に悪い時代に生まれたよ」

烏有「公とその信者がいるかぎり、お前の望みは叶わない」

ライネケ「じゃあ、いつになったら叶うんです?」

烏有「お前の生きてる間に出番はない。俺と一緒に、ゴドーに期待しよう」

ライネケ「そんなに待ってられませんよ・・・」

ライネケ「それまでに、俺たちはもっと惨めになってる」

ライネケは腕時計を見て、ベンチを立つ。

ライネケ「今日のところはここまでで。婆さんに怒られちゃうんで」

ライネケ「・・・あなたがどういうつもりかはよくわかりました」

烏有「人生は大切にしなくちゃ駄目だ。捨て鉢になるなよ」

ライネケ「ご忠告ありがとうございます」

学歴も後ろ盾もないライネケの武器は、若さとその弁だけであった。
烏有Qは初めから彼を見くびっている。
彼が自分の敵にはなりえないことをよく理解していた。

烏有(哀れだな、まともな家庭に生まれていればもっと道が開けただろうに)

烏有(俺と彼の生まれが逆だったなら、世界はもっと良くなったかも知れない)

烏有(院長だって、俺じゃないほうが良かったのかもしれない)

烏有はWW−Tのアンプルの入ったケースを一瞥する。

烏有(俺の代わりに別の院長が立ってたら、こんな酷いことは拒絶していたかもしれない)

烏有(ゴドーも、ライネケが守り抜いてくれたのかもしれない・・・)

烏有はずっと考え事をしながら、管理ルームへは戻らずに自宅へ帰った。
  
  
その翌日、烏有は朝刊の小さな記事を見つけた。

その記事は、昨日のホームレス焼身事件に関するものであった。

ウラジーミルと呼ばれる身元不明のホームレスが、
搬送先の病院で死亡が確認されたのだと書かれていた。

烏有「二位が死んだ」

烏有「哀れだが、これじゃぁとても生徒は任せられなかったな」

烏有「公の管理の下に、安全な空間で生きていたのに心を病むとは」

烏有「人を傷つけることも知らないのに、無様に死にやがって」

烏有「・・・いや、何を言ってんだろう俺は?俺は無神経過ぎるだけじゃないか」

烏有「何様のつもりだ?俺は。院長様様か?ニート志望がそんなに偉いのか?」

烏有「公のジジイも、ル・ダウさんも、ゴドーも・・・図太すぎるだけさ」

烏有「やっぱり、俺の次はゴドーしかいないんだ」

烏有「今晩だ。今晩、WW−Tを投与しなくては」

烏有「俺がやらなきゃ駄目なんだ」
 
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 17:27:04.86 ID:abP63ETJO
おお、更新来てた
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 03:27:46.72 ID:GieyYOp10
保守
600 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2017/04/02(日) 18:17:29.35 ID:0zXKsf8S0
ちょっと用事でパソコンが使えない環境に行くので、今月の20日頃まで本編の更新は無理そうです
(もっと早くに更新するつもりでしたが、間に合わず)
スマホからちょろっと小ネタを更新するかもしれません
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/21(金) 20:43:24.82 ID:XeziqRA+0
保守
602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/26(水) 15:47:53.13 ID:rlPwSZGn0
保守
603 :祝☆遅筆一周年 ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/05/03(水) 21:42:39.56 ID:PgbEgMO/0

飛鳥「ドキッ!日本だらけのクイズ大会〜!」ドンドンパフパフ

飛鳥「本編が全然進まないのに1年が経ってしまったことを記念した企画です!」

飛鳥「司会は私、飛鳥日本です。本編主人公じゃないのにちょくちょく登場してますね」

飛鳥「解答者は私以降の歴代日本たち、出番ナシだと>>466で書かれていた南北朝姉弟もいますよ」

南朝「はじめまして、一生独身が決定された姉の南朝です」

室町「死闘の末に子孫繁栄権を獲得した室町です」

飛鳥「こんなしょうもない企画で顔を出すなんて、そんなに出番が欲しかったんですか」

南朝「そりゃあ欲しいですよ。大人の事情で私の時代は特に陰薄いですからね」

南朝「太平記関連の出番を期待していたのに、>>515でさらりとあらましを書かれて終わりという始末」

南朝「どこまで私を愚弄すれば気が済むんでしょうね」

飛鳥「まぁまぁ、こんなクソSSに期待しなくても。いつか現実で日の目を見ますよ」

飛鳥「まぁ、私は出番多いんですけどね。このSSでも現実でも」ニッコリ

室町「俺も現実では出番多いなぁ。一休さんとか、戦国時代噛んでるし大人気?」フフン

南朝(何でよ・・・何で私だけ・・・)

大日本「マニアには大人気ですよ、俺みたいにね」

大日本「ところで、本編を何ヶ月も放っておいて作者は何を考えているんだ?」

飛鳥「そんなこと私に聞かれても知らん」

大日本「まさかとは思うが、SSに全然関係ない唐や渤海の旗を調べるのに時間を費やしているのではあるまいな?」

大日本「風呂敷を広げるだけ広げておいて畳まないなんて許されないぞ」

大日本「戦争関係のネタが難しいからって、こんな企画で間を持たせようという魂胆か」

飛鳥「いいんだよ。こんなセリフも登場人物も多いSS、誰も読んでないんだから」

飛鳥「さて、それではクイズに入りましょう」
604 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/05/03(水) 21:43:56.92 ID:PgbEgMO/0

飛鳥「問題は一問だけです。日本人なら誰もが答えられるべき問題、いきますよ!」

飛鳥「【Q.日本史上、外国史書に初めて名が記述された日本の王は?】」デデン

飛鳥「制限時間は30秒、日本人なら楽勝でしょう」

チッチッチッチッチッチ(30秒)

飛鳥「そこまで!さてさて皆様の解答はいかに?」

飛鳥「・・・あらららら、皆さん解答がだいぶバラけてますねぇ」

飛鳥「これは恥ずかしい、不正解者は日本人失格と言われても反論できませんよ」

飛鳥「それでは、それぞれの答えを見てみましょう」

【A.神武天皇と解答した者】

飛鳥「『外国史書』というヒントまで出ていたのに、こういう解答が来るとは思わなかったなぁ」

江戸「えっあ、本当だわ!じゃあ私たち不正解なの?」

大日本「クソっ!ひっかけ問題だったか!」

飛鳥「いやいや、ひっかけとかそういうレベルの話でもありませんよ」

【A.聖徳太子と解答した者】

鎌倉「え?外国の歴史書に載ってないの?」

飛鳥「いろいろツッコミどころはありますが、そもそも聖徳太子は王じゃありませんよ」

鎌倉「そうなの!?日出処の天子〜とか隋の皇帝に書いてたのに?」
605 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/05/03(水) 21:44:41.97 ID:PgbEgMO/0

【A.懐良親王と解答した者】

飛鳥「うーん、惜しいっちゃ惜しいんですけどね」

飛鳥「時代が新しすぎますよね」

南朝「えっでも、日本国王の称号もらった最初の人じゃないの?!」

飛鳥「別に日本国王縛りじゃないんで」

【A.足利義満と解答した者】

室町「日本国王だぞ!」

飛鳥「あのね、懐良親王よりも遅い時点でね」

【A.豊臣秀吉と解答した者】

安土桃山「太閤さんめっちゃすごいやろ!」

飛鳥「だからね、日本国王は・・・」

安土桃山「太閤さんはそれ蹴ってんで!もっとすごいんや!」

飛鳥「もういいです」

【A.父様と解答した者】

奈良(やまとちゃん)「合ってる?」

飛鳥「うーん、残念だけどパパは王様じゃないよ!##」

大日本「おい、娘にはやたら甘いなコイツ」

【A.卑弥呼と解答した者】

日本「えー皆間違え過ぎでしょ。こんなの一般常識じゃないですか」

日本「邪馬台国ですよ!日本史のロマンですよ!」

飛鳥「お、自信満々だね」

日本「そりゃあ、こんなの小学生でも答えられますよ!」

日本「漢委奴國王とも迷いましたけど、こちらは名前じゃないですもんね」

飛鳥「君って浅知恵しかないくせに偉そうでつまらない人間だよなぁハハハハハ」

日本「え・・・えぇーーっ」
606 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/05/03(水) 21:45:31.51 ID:PgbEgMO/0

---------------

飛鳥「さぁーて、それでは正解発表です」

飛鳥「正解は【A.帥升(すいしょう)】です!」

飛鳥「後漢書東夷伝巻85に記述のある、倭国の有力な王ですね」

大日本「知らんな」

江戸「知らなかった」

飛鳥「『小学生でも答えられますよ!』と豪語していた日本国君、どんな気持ち?」

日本「うう・・・」

飛鳥「正解者はたったの一人、平安日本です!」

平安「こんなんで正解してもあんま嬉しないけどな」

奈良「すごーい!」

飛鳥「それでは特別企画はここまで。次回21話にご期待ください」ペコリ
 
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/18(木) 13:10:15.03 ID:foqWHk1A0
マッテルヨ|д゚)
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/18(木) 13:11:00.05 ID:foqWHk1A0
すまんsage忘れてた
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/27(土) 20:02:50.76 ID:lRiEE6LA0
保守
610 : ◆pIxjj4GI1s [sage saga]:2017/06/04(日) 02:45:17.60 ID:GQTnh0t40
決めなかったらいつまでも更新しなさそうなので、
6月20日までに次の話を投下したいと思います
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/04(日) 12:12:05.79 ID:HQCFMOUH0
6r6rjythるp9う9う0767f56うt6rじぇ5545465えrdh
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 19:03:33.95 ID:jGbjPnU10
待ってます
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/17(土) 00:10:01.61 ID:ujbSSzE20
保守
614 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2017/06/20(火) 15:42:26.03 ID:DDi8fULB0
ちょっと遅れます

今晩〜明日に投下します
615 : ◆pIxjj4GI1s [sage PB]:2017/06/20(火) 22:35:21.94 ID:DDi8fULB0
ちょっと一レス使います
616 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2017/06/23(金) 00:06:20.79 ID:Np92wVOG0
予告よりだいぶ遅れてしまいましたが、今から21話を投下します

おまたせしました
617 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/06/23(金) 00:07:32.57 ID:Np92wVOG0
 
第21話:求要ノ条ヶ一十二

大日本帝国少年が地球立メンタルヘルスケアスクールに編入して二年が経った。

少年は毎朝、氏神への祈りを欠かさない。

日本「かしこみかしこみもうす・・・」

伊勢「毎朝ご苦労ですね」

大日本帝国少年は霊的センスに恵まれており、自分の意思で伊勢大神に会うことができたのだ。

伊勢「こうして私を呼んでくれるのは、歴代でもあなただけですよ」

伊勢「ううっ」

伊勢「うほああああああああああ!!!!!!」ウワーン

伊勢は突然泣き出した。

日本「どうしました」

伊勢「嫌だ嫌だ嫌だ!江戸日本じゃなきゃヤダ!こんなガタイいいのヤダァァァ」ジタバタ

伊勢「私はね、美処女が大好きなのですよ!だからお前の母親が独身の時に会いたかった!」

日本「はぁ」

伊勢「こんな不動明(デビルマン)みたいな奴とは違うんですよーーーー!」シクシク

日本「そう言われましても・・・」

伊勢「うう・・・まぁいいでしょう。お前の娘に期待します」

(→男の子でした>>2

伊勢「お前は選ばれた人間です。お前は戦うべくして生まれた」

日本「はっ」

伊勢「お前は大和氏の荒魂の分身として働かねばならない」

伊勢「お前は三種の神器の継承者として、その加護を受けるでしょう」

伊勢「しかしお前は万能ではないのだということを覚えておきなさい」

伊勢「お前が使命を果たしたとき、荒ぶる心が失われたとき、加護はない」

伊勢「それでもお前が加護にすがった時、お前は裁きを受けるでしょう」

日本「はっ!承知しました・・・」

朝の祈りが終わると、日本少年の部屋のインターホンが鳴った。

ピンポーン
618 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/06/23(金) 00:08:37.24 ID:Np92wVOG0

日本「やぁ、イギリス君。こんな朝早くにどうしたのだい」

イギリス「あああああ・・・いや、悪い。俺にもよくわからないけど」

今朝のイギリス少年は、やたらそわそわし、落ち着きのない様子であった。

彼は髪をくしゃくしゃと手でかき回しながら説明する。

イギリス「これからドイツを殴りに行こうぜ!」

イギリス「なんかさ、突然オーストリアとセルビアが殴り合いを始めたんだよ!」

イギリス「その喧嘩にドイツやフランスが加わって、ついでに知らないおっさんまで口出ししてきたんだ!」

イギリス「なんか今朝から皆、ムカついてんだよ。俺も!」

イギリス「それでさ、ドイツがベルギーをレイプし始めた頃から俺もさ、殺る気になったわけ!」

イギリス「友達だろ?一緒に殴りに行こうぜ!」

日本「それはいいんだが、なぜ皆そんなに興奮してるんだ?発情期か何かか?」

イギリス「さぁな!今ならレイプし放題なのも確かだ!」

日本(何かがおかしい・・・普段のみんなはここまで狂気に満ちてはいない)

日本(まぁいい。これはチャンスだ)

日本たちが向かった先には、中年男性が一人オロオロしていた。

ロシア「はわわわわ・・・む、息子の編入手続きに来ただけなのに」

ロシア「き、君たち落ち着きなさい!親父狩りなんかしても楽しくないだろ!(泣」

日本「あれ?ロシアのおじさんじゃありませんか!」

ロシア「あ、あれ?!大日本帝国くんか?」

ロシア「いやぁ〜しばらく見ないうちに大きくなったね!」

日本「おじさんはなぜここに?」

日本「ボロボロじゃないですか」

ロシア「恥ずかしながらね、息子が手におえなくなって・・・」

ロシア「ここに編入させようと思ってね、こっそり来たんだよ」

ロシア「そしたら、ゴドーくんとかいう小さい子にここに案内されたんだ」

ロシア「どうやら騙されたようだ・・・参ったよ」

日本「そうだったんですか、お気の毒に」

ロシア「息子はソビエトというんだ。気難しい子だが、仲良くしてやってね」

日本「わかりました。それでは先を急ぎますので」

ロシア(たくましくなったなぁ。お父さん似かな?)

日本とイギリスはロシアに軽く会釈して去った。
619 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/06/23(金) 00:10:57.69 ID:Np92wVOG0

ドイツのいる場所にたどり着くと、

ドイツは依然としてベルギーをレイプしており、フランスは謎の高笑いをしていた。

ドイツ「オラァ!次はお前の番だぞ、フランス!」パンパン

ベルギー「あっあっ」クチュクチュ

フランス「ホホホホホホ!そんなのが脅しになると思ってるの!?」

フランス「バゲットで毎日致してるあたしにとっちゃ、あんたのソーセージなんてへでもないわ!」

ドイツ「まじかよ、ビッチ!」パンパン

イギリス「フランス!あっくそ、まだレイプされてなかったか・・・」

フランス「ふざけんじゃないわよローストビーフ!」

イギリス「お前をぶっ殺しに来たぞ、ドイツ!」

ドイツ「蹴散らしてくれるわ」パンパン

イギリス「人質のほうはお前に任せる!」

日本「承知した」

イギリスたちを後にして、日本はドイツの人質救出へと向かう。

ドイツは化学準備室に小学生二名を閉じ込めていた。

中華民国と満洲である。

<化学準備室>

中華民国「くっそー!卑劣な年上共め、こんなとこに閉じ込めやがって」

中華民国「もっと修行して、いつか方術でボコボコにしてやるんだ!」

満洲「・・・」

中華民国「おい満洲、ぼくの肩もめよ」

満洲「はい」

満洲は中華民国の子分であり、彼のいいなりである。

満洲(オレは何か重要な使命があったはずなんだけどなぁ)モミモミ
620 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/06/23(金) 00:12:53.92 ID:Np92wVOG0

実は満洲少年、あの清の息子であり、彼は打倒中華民国のためにこの学校に送られてきたのだ。

清の家は中華民国の家に乗っ取られて財産のほとんどを没収されてしまい、ひどく落ちぶれていた。

  清「よいか、必ずあの小僧めを殺すのだ」

  清「そして、あの屋敷を取り返すのだ」

  清「父の屈辱を晴らしてくれ、息子よ」

このような願いを託されて編入した満洲少年であったが、

彼は重度の健忘症であった。

満洲(何だったっけなぁ)モミモミ

中華民国「もっと強く揉めないのか!?」イライラ

ドォォォォォォォン!バリバリバリ・・・

そのとき、誰かが扉を蹴破った。

日本である。

日本「君たち!この大日本帝国が救出に来たぞ!」

中華民国「救出だと?嘘だね!お前らの言うことなんか信じるもんか」

日本「黙るんだな。俺はなるべく穏便に済ませたいんだ」

日本「君たちのやるべきことはただ一つ、俺と一緒にこの部屋を出ることだ」

中華民国「断る!」

日本「ならいいよ。君たちがドイツ君の実験体になるだけだ」

中華民国「な、なんだって?」

日本「どうしてドイツ君がわざわざこの部屋を選んだかわからないのか?都合がいいからさ」

日本「ドイツ君は毒ガスの研究をしているからね。君たちはさしずめモルモット代わりだ」

中華民国「う・・・う・・・」

日本「ドイツ君はサディストだから、幼い子供だからって容赦しないよ」

日本「何本も注射を打って、頭がくるくるぱーになったら放置だろうね」

日本「だが俺は子どもには優しいぞ。紙芝居だって読んでやるし、電車の玩具もあげる」
621 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/06/23(金) 00:14:24.78 ID:Np92wVOG0

日本「そう悪い話じゃないと思うんだがなー」

中華民国「でも、でも・・・」

満洲「本当?」

日本「ああ、本当だとも。誠実でまっすぐな目をしているだろ?」ニコリ

中華民国「どうだか」

満洲「オレついてく」

日本「よーし、良い子たちだ。さ、ドイツ君たちに見つかる前にここを去ろう」

日本少年は、小学生2人を保健室に避難させた。

日本「よし、何とか遭遇せずに済んだな。ここにしばらく居よう」

中華民国「本当に大丈夫なんだろうな」

満洲「おもちゃ!おもちゃ!」

日本「まぁ落ち着け。君たち疲れただろう」

日本「ベッドは空いてるし、寝転がったらどうだ?」

中華民国「そうだな」

中華民国と満洲はそれぞれベッドに横たわった。

日本「すぐに寝つけるように子守唄でも歌ってやるか」

中華民国「ガキ扱いするなよ!でもお願い」

日本「まず目を瞑って・・・全身の力を抜いて」

小学生二人は中学生の言うとおりにした。

日本「君はだんだん眠くなる。眠くてたまらない」

日本「君は腕を上げようとしても動かない。足も、何もかも動かない」

中華民国(ん?これ、子守唄か?)

日本「君は俺の許可がなければ体を動かせない」

日本「君は大日本帝国の言うことに従う。決して逆らうことはない」

中華民国「ちょっと待てぃ!」ガバッ

中華民国「お前これ・・・子守唄じゃなくて催眠術だろ!」

日本「チッ、術にかからなかったか」

日本「ああそうさ、保健室を選んだのは都合が良かったからだ」

日本「今からお前に、俺の都合の良いこと計21か条の要求を植えつけるつもりだったのだ!」ババーン

中華民国「なんだってー!このゲス野郎!」
622 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/06/23(金) 00:15:22.42 ID:Np92wVOG0

中華民国「おい、逃げるぞ満洲って・・・ああっ」

満洲は目を瞑ったままである。

中華民国「嘘だろ、催眠術にかかってやがる」

日本「よっしゃ」グッ

中華民国「ぼ、ぼくは逃げるぞ!悪く思うなよ満洲!」

中華民国は保健室から駆け逃げた。

日本「あーあ、中華民国に逃げられた」

日本「まぁいい、満洲さえ好きに出来ればこちらのものだ」

日本はそのまま満洲に催眠をかけ続けた。

日本(よし、このまま千里眼の実験をやろうか)

催眠状態の相手を利用して、千里眼の如く遠くのものが見えるのだと暗示する実験である。

この実験の効果は今のところ明らかにはされていない。

日本「満洲、君には何でも見える。神のように何でも見える」

日本「満洲、今イギリスとドイツは何をやっている?教えろ」

催眠状態の満洲はゆっくりと口を開く。

満洲「イギリスとドイツ・・・サッカーしてる」

日本「なんでやねん」

満洲「『メリークリスマス!』とかなんとか言ってる・・・」

日本(あいつらの考えてること、わからないな)

日本「じゃあ、アメリカは何をやっている?」

満洲「筋トレしてる・・・鏡見ながら、ニヤニヤしてる」

日本「ナルシストめ」
623 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/06/23(金) 00:17:06.28 ID:Np92wVOG0

日本「もういい、校内に異常は見当たらないか」

満洲「知らない男の子が給湯室にいる・・・」

日本「知らない男の子だと?編入生か?」(さっき言ってたソビエトか?)

満洲「うずくまって、震えてる・・・泣いてるみたい」

日本「なんだって、精神支配するのに絶好のチャンスじゃないか!」

日本「たぶん周囲のあまりのキチガイぶりに怖くなったんだな・・・しめしめ」

日本「俺はいい奴なんだと思い込ませて、利用してやるぞ!」

日本は満洲を保健室に残したまま、一人給湯室へ向かった。

日本(そういえば、ここの給湯室使ったことないんだよな)

日本(どんな奴だろう?俺の役に立ってくれる人間だといいが・・・)

日本「おーい、そこにいるのは誰だー?」

日本が給湯室を覗き込むと、確かに見たことのない少年が隅で三角座りしていた。

渤海「やまとちゃん・・・どこにいるの・・・?」

日本「やぁ、編入生だね?名は何と言うんだ?」

渤海「ここを動けない・・・動けないんだ・・・」

日本「外は狂気に満ちてるけど、俺が来たから安心したまえ」

日本「こんなことは普段でもあまりないんだけどね、編入早々災難だったね」

渤海「助けてよ・・・誰か、助けて・・・」

日本「おい、怖いのはわかるが、俺の話聞いてるか?」

渤海「やまとちゃん・・・今どこにいるの・・・」

日本「!・・・いい加減にしないと怒るぞ?」

渤海「僕は何もできない・・・何も・・・」

日本「うるさい!俺が話しかけてやってるのがわからないのか!」グイッ

日本は少年の胸倉を掴んで、勢い良くひっぱり上げた。

渤海「!」

渤海「・・・え・・・?だ、誰・・・」

日本「ようやく俺の目を見たか。お前の名は?」

渤海「う、うわぁ!え?え?わあああああああああああああ!!!!!!」ジタバタ
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