セーラ「うんコマ劇場Cやで!」爽「マジで」

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38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 22:09:11.62 ID:RvNmzoEO0

爽「…み、水を、くだ、さい…!」

ミホコ「あぁ、お水ですか? えーっと…」ゴソゴソ


少女は、持っていた革袋から、何やら四角い物を取り出した。


ミホコ「ごめんなさいね、今、お水は持ってないわ。 私の手作りのお弁当ならあるんだけど… これじゃダメかしら?」

爽「そ、それなら…」ググッ


メロスは上半身だけ体を起こし、真剣な目で少女を見つめた。


爽「・・・あなたのオシッコを、私に、飲ませて下さい」

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 22:24:51.73 ID:RvNmzoEO0

ミホコ「えっ? オ、オシッコですか…??///」カァーッ・・・

爽「そ、そうです! 私、もう、ノドがかわいて死にそうなんです。 水がないのなら… あなたのオシッコを飲ませて下さいっ!」クワッ

ミホコ「そ、そんな、オシッコだなんて…/// ちょ、ちょっと待っていて下さい。 近くの村でお水をもらってきますから…///」モジモジ

爽「ダメですっ! 今すぐ何か飲まないと私は死んでしまいますっ! いや、むしろ、あなたのオシッコが飲めないなら自殺してやるっっ!!」=3=3


メロスは必死だった。 まさに、命の最後の灯を燃やしての、人生の全てをかけた訴えだった。


ミホコ「… そこまで言うのでしたら… 仕方ありませんね…」スッ

爽「!!」

ミホコ「でも… 恥ずかしいので、目をつぶっていて下さいよ?」

爽「は、は、はいはいはいはいはいはいはいはいっっ!!!」


メロスは、目をつぶり、少女に向かってあんぐりと口を開けた。


ミホコ「ん・・・///」スス…


少女はスカートをたくしあげてショーツをおろし、メロスの顔にまたがるような体勢をとった。

メロスは、当然・・・ 目をつぶったフリをしながら、薄目を開けて少女の股間を凝視していた。


爽(うおほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほおおおおおおおおおぉぉぉっっっ!!!wwwww)=3=3


その、薄い恥毛に包まれた美しいスリットを見ただけでメロスは頭が沸騰しそうになったが、なんとかこらえ、飲尿姿勢を維持していた。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 22:34:58.23 ID:RvNmzoEO0

そして・・・


ミホコ「…あっ、はぁ…///」プシィッ!  ショッワアアアアアアアアアァァァ・・・・・

爽「!!」


スリットのすき間から、ついに黄金色に輝く聖水がほとばしり出て、メロスのノドへと飛び込んできた。


爽(あ、あ、あ、ああああぁぁ・・・・・!!)ゴキュゴキュゴキュ・・・


聖なる黄金水はパシャパシャとメロスの舌をやさしく打ち、少しだけしょっぱい味と共に、なんとも言えない豊穣な芳香が鼻をついた。

そして、深い背徳的で官能的な味わいを脳裏に刻み、しっとりとしたなめらかな感触を残してメロスのノドを通り過ぎていった。



爽「あ、あ、あ、あ、あああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ・・・・・・・・・・!!!!!」ビキビキビキビキビキビキビキビキビキイィ・・・・!!
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 22:51:45.00 ID:RvNmzoEO0

 ショロロロロォ・・・  ピ、ピチョンッ! …


最後の一滴をメロスの口に落とすと、少女はあわただしくショーツをはき、頬を赤らめて、言った。


ミホコ「こ、これで、全部です… あの、だ、大丈夫ですか?」


爽「………」ゴクゴクゴク・・・

爽「うむあああああああああああああああああぁぁぁ・・・・・!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴオオォ・・・・・


爽「いいいやあああああぁぁぁっっっっっっFOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO――――――――――――――――――ッッッッッッッ!!!!!!!」バッ


雄叫びをあげると共に、一気に3mほども跳躍したメロスの体からは、とんでもない量のオーラが噴出し、バリバリと電流のような光がその全身を駆け巡っていた。


爽「うおおおおおおおぉぉっ!! ありがとうございましたあぁっっ!!!」

ミホコ「えっ、は、はい…///」


少女に一言お礼を言うと、メロスはしゃがみ込んでクラウチング・スタートの姿勢をとった。

そして・・・




 ド ゥ ッ パ ア ア アァァ ―――――――― ン ッッッ !!!!!



ミホコ「ヒッ?!」


まるで爆弾が炸裂したかのような凄まじいスタートダッシュで走り出し、地面をえぐりながらロケットのような勢いでフッ飛んでいた。

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 22:57:14.22 ID:RvNmzoEO0


爽「うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!!」ズダダダダダダダダダダダダ・・・・ッッ!!


風を切り、クソを飛ばし、音速を超えて駆けるメロスには、生気が漲っていた。

もう、この世になんの未練もなく、何も怖くなかった。

そして、もう、砂粒ほどの小さな迷いもなかった。

“友を助ける…!” ただ、その一心しか、メロスにはなかった。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 23:01:51.95 ID:RvNmzoEO0

爽「…………!」ズダダダダダダダダ・・・!


メロスは走りながら空を見上げ、太陽の位置を確かめた。

もう大分西に傾いている。

斜陽が、樹々の葉も枝も燃えるばかりに紅く染め上げていた。

もう夕方である。

おそらく2・3時間ほど眠ってしまっていたのだろう。

しかし、日没までには、まだ間がある。

この勢いで走れば、間に合うはずだ・・・!
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 23:04:12.29 ID:RvNmzoEO0

メロスは走った。

唯一身に着けていたパンツすらも引きちぎれ、完全に全裸だった。

そして、その尻からは、まだボタボタとクソが垂れ落ちていた。

しかしもうそんなことはどうでもよかった。

走る。 全力で走る。 ただそれだけだった。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 23:10:03.12 ID:RvNmzoEO0


爽「う・・・っ!」


メロスは突然、苦痛で顔を歪ませた。

裸足で走っていた足の裏の皮がズルむけて、地面に点々と血の跡をつけていた。


爽「がっ! ふぅ…!?」ビキッ  ビチビチビチィ…!


さらに、四肢から、何かが引きちぎれるような音がした。 筋肉の筋が何本か切れたようであった。

人間の体力の限界を大きく越えて走っていたため、体が悲鳴をあげ始めたのである。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 23:16:29.62 ID:RvNmzoEO0

爽「あ、ガッ! ゲッフゥッ!!」ブッ


メロスの口から鮮血が噴き出した。 肺の中の血管が破れたのだ。


爽「うぅ、ぐおっおぉ…!!」ズダダダダダダ・・・!


さらに目や鼻や指先からも血が噴き出してきた。 そして、あいかわらず尻からはクソがひり出ていた。


それでも、メロスは走った。

黒い風のように走った。

もう、頭の中はカラッポであった。

何か得体の知れない大きな存在に引っ張られるかのように、メロスは走った。

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 23:22:54.28 ID:RvNmzoEO0

ついに、都サッポロの街の中へとメロスは走り込んだ。

全裸で、体中から血を噴き出し、クソをたれて走るメロスを、人々は物の怪を見るかのような目で見た。


メロスは、口から五臓六腑を吐き出してしまいそうなほどに苦しかった。

太陽が、もう地平線にかかりかけていた。

たのむ、止まってくれ。

そんな願いを嘲笑うかのように、ゆらゆらとゆらめきながら日が沈んでいく。

ロケットのように走り出した時の生気漲る姿はもうなく、地獄から現世に迷い込んでしまった亡者が、ヨロヨロとよろめいているようだった。

それでもメロスは走った。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 23:38:15.99 ID:RvNmzoEO0

しかし、そんなメロスの耳に、けたたましい悲鳴が聞こえた。



 「キャ――――ッ!  幼女ちゃ―――――んっ!!」



目だけをその悲鳴の方に向けると、そこには恐ろしい光景があった。

道の真ん中で転んでしまった幼女と・・・ そこに猛烈な勢いで突っ込んでいく馬車の姿があったのだ。


爽「!!」


メロスには一瞬の迷いもなかった。

即座に方向を変え、幼女に向かって突進した。

そして・・・


母「アッ?!」


さきほどの金切り声をあげた母の前でメロスは跳躍し、幼女を抱きかかえ、ゴロゴロと地面を転がった。

しかし、


 ドッゴオォォンッ!


爽「 がっ!! 」


馬の前脚がメロスの脇腹を蹴り上げ、数mフッ飛ばされたあげくにしたたかに背中を打ちつけた。


幼女「う、うぅ・・・ ウワアァァ―――ン!!」


メロスの腕の中で泣き叫ぶ幼女…


爽「…だ、大丈夫かい? 幼女ちゃ…」

幼女「?! ひっ! ホワッチャアアアアアアァァ―――――ッッ!!!」ドゴムッ!

爽「ぶぉはぁっ?!」=3


ケガがないか確かめようとしてくれたメロスの顔面を、幼女は凄まじい正拳突きでブッ叩いた。

メロスが、血とクソにまみれたあまりにもおぞましい姿をしていたからである。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 23:47:01.62 ID:RvNmzoEO0

母「ちょ、ちょっと幼女ちゃん、助けてくれた人を叩いたりしちゃいけま… ゲッ?!」ギョッ

爽「あ、いや、ケガがなかったみたいで、良かったっすね…」ヌボアァーッ…

母「! いやあぁっ! アチョワアアアアアアアアァァァ―――――――ッッッ!!!!」ボッゴオォッ!!

爽「うぁじゃぱぁっ?!」=3=3


母の稲妻の如きハイキックはメロスの顔面に炸裂。

メロスはバク転をするかのように後ろにフッ飛び、一回転して地面に叩きつけられた。


この母と娘を責めてはならない。
これは人の反射というものなのである。

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/01(日) 23:51:15.57 ID:RvNmzoEO0

母「さ、さあ、帰るわよ、幼女ちゃん…」ソソクサ

幼女「う、うん…」


メロスを尻目にソソクサと立ち去る親子…


爽「う… むぅ…!」ググッ!


なんとか立ち上がったメロスは、チラリと親子の背中を見た。

その、 目 は・・・・・



聖母マリアのように澄んでいた。

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/02(月) 00:04:23.06 ID:RfQCsLIG0

爽(幼女ちゃん・・・ どうか、私の分まで、生きてくれよ・・・!)ダッ


メロスは再び走り出した。

馬に蹴られた脇腹がズキズキとひどく痛む。 肋骨が折れたのかもしれない。

いやむしろ体中が痛く、痛くないところなど無いくらいだった。

しかし時間がないのだ。

陽は、まさに最後の一片の残光すらも消えようとしていた。

そのわずかな日の光が、メロスの顔を優しく照らした。


爽(・・・ あぁ・・・!)


間に合うか、間に合わないか、その瀬戸際に立たされていながらも、メロスは、不思議な気分に包まれていた。

意外にも、非常に落ち着いた、穏やかな気持ちだったのである。


爽(あぁ、私・・・  生まれてきて、良かった・・・!)

爽(苦しい… 本当に苦しいけど… 私は、今まで、こんなに激しく、命の火を燃やしたことはなかった…)

爽(そうだ… 私は、きっと、この瞬間のために、生まれてきたんだ……!)サアアアァァ――ッ


急に、心も、体も軽くなったメロスは、爽やかな春風のようになり、ついに刑場へと走り込んだ。

日はまだ沈んでいない。


間に合ったのだっ!

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/02(月) 00:11:46.46 ID:RfQCsLIG0

爽「待て! その人を殺してはならぬ! 私だ! 約束通り、メロスが帰ってきたのだっ!!」


と、潰れたのどから必死に大きな声を張り上げて、刑場の群衆に・・・




あれ?


ぐんしゅ・・・


え?


ぐん・・・


は?



・・・ ?  ?   ?  ・・・・・






その刑場には、人っ子一人いなかった。

刑吏も、国王チカニスも、ユアーンティウスもいない。


爽「………???」


だだっ広い刑場の真ん中で、メロスはポツンと一人でたたずんでいた。

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/02(月) 00:14:42.75 ID:RfQCsLIG0

爽「・・・な、なんだこれ・・・ え? どゆこと??」

爽「ま、まさか、もう、刑が執行されてしまったんじゃあ・・・」ガタガタ


?「あれ? メロスじゃん、なんだお前、全裸で何やってんの?」モグモグ

爽「は?」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/02(月) 00:35:59.70 ID:RfQCsLIG0

メロスが振り返ると、そこには、焼き鳥をモグモグと頬張っているユアーンティウスが立っていた。


爽「・・・ ユ、ユアン・・・! お、お前… ブ、無事だったのか…? えっ? ハリツケの刑はどうなったの?」

ユアン「ん? あぁー… そうそう、そう言えばお前、今日戻ってくるとかなんとかって、そんな話してたんだっけな」ムグムグ

爽「……??」

ユアン「いや、あのあとさ、国王が本国から来た警吏隊に逮捕されて、なんか、島流しにされたんだってさ」モギュモギュ

ユアン「どうもあのチカニスって王、うんこ売買という目的は建て前で、実際には美少女集めてただ単に酒池肉林を楽しんでただけらしーぜ?」クチャクチャ

ユアン「いやーあんなおカタい顔して聖人君子ぶってたクセに、やっぱヤル事はヤッてたってワケだよなww」ハグハグ

ユアン「そんで国王が、トーキョーから来たテルニウスV世っていう人と替わってさ、ドーナツを献上すれば釈放してあげるよ、て言うから、すぐにワイロで出してもらっちゃったんよ」マグマグ

ユアン「いやー今度の国王はなかなか最高だぜ? 『“わが民はすべてわが妹のようなもの…! 妹たちのためなら、このテルニウス、身を粉にして働こう…!”ギュルルルルルーン!』って、右腕を回転させて穴掘り始めたと思ったら、ダイヤモンドの鉱脈掘り当てちゃってさww」ゴックン

ユアン「てわけで、このホッカイドーにも新しい資源ができたんだよ。 だからしばらくは安泰、私らもけっこう贅沢できそうだぜ? ・・・って、そういやお前、衣装の代金払ってなかったよな。 はよ金よこせよ」スッ


爽「・・・・・・・ ユアン ・・・」

ユアン「ん?」


爽「すまん、とりあえず殴らせてくれ」



その、ほかに誰もいない刑場で… メロスとユアーンティウスは、あさましく醜い殴り合いを、お互いがブッ倒れるまで続けたのだった・・・





55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/02(月) 00:47:46.81 ID:RfQCsLIG0






誓子『はい、皆様、第一演目「もらせメロス」でした。 如何でしたか?』


 ブンッ  ベッチャアァッ!!


誓子『ヒッ!?』


幕が閉まり、壇上に挨拶に上がった誓子の顔面に、ソフトクリームが飛んできた。


 ヒッコメー!  コノバカヤロォ――ッ!  カネカエセエェ――ッ!  ヘタクソォーッ!!


凄まじいシュプレヒコールと共に、さらにポップコーン、コーラ、ポテトチップス、納豆などが壇上に飛んできた。


誓子『わっ! ちょ、ちょっと、皆さん! も、物を投げないで下さいっ!』=3=3

爽「おうおうなんだよお前らっ! 私たちの劇にケチつけんじゃねーよ!」バッ

誓子『ちょ、爽! あんた出てくるとややこしくなるから出てこないでぇっ!』



・・・この「もらせメロス」があまりにも不評だったため、文化祭の演劇大会は中止となり… 麻雀部は、他の文化部からひどく恨まれることとなったのだった…




(あカン)

56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/01(水) 19:19:58.04 ID:OPjEn+aU0
やべえ、自己保守
「便座鉄道の夜」とか面白そうだな…
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 02:23:27.57 ID:zkSeOWuZ0

その41.〜「マッチ売りのマホ」の巻〜



それは、大変寒い日でした。

あたりはもう暗くなり始めており、雪が降っていました。
それはまた、一年の中で最も聖なる夜・・・ つまりクリスマス・イブの晩でした。

この寒い、そして暗いなかを、一人のみすぼらしい身なりの年のいかない少女が、帽子もかぶらず、おまけにはだしで、冷たい石畳の上を歩いていました。
その小さな頭には、ふらふらと、大きな赤いリボンが不安げに揺れていました。

彼女の名前は、夢乃マホ――― 幼いときに両親を亡くし、毎日わずかばかりのマッチを売って歩くことで、なんとかその命をつないでいる浮浪児でした。


マホ「あ、あのぅ… お兄さん、マッチを買ってくれませんか?」

純「あ? 俺は男じゃねー! マッチなんかいらねーよ、とっとと失せな」

マホ「あ、あの、そこのお姉さん・・・ どうかマホのマッチを買ってください…」

玄「おもちをおもちでない人のマッチなど買えません。 出直して来なさいですのだ」

マホ「す、すみません、そこの眼鏡のお兄さん・・・! お願いです、マッチを買ってくださいっ!」

内木「ん? マッチ? ああ、いくらでも買ってあげるよ! 僕と一緒にそこのホテルに付き合ってくれるならね…ww」ガシィッ!

マホ「?! な、何をするです? 放すのです! ええいチィエエェストォ――ッ!!」キンテキィーッ!!

内木「おぅふ!///」=3


このように… ときどきロリコンを撃退したりしながら、地道に声をかけ続けますが、どういうわけか今日は一本もマッチが売れません。

朝から何も食べずに歩き続けている彼女はもうフラフラ、小さいはだしの足と手はもう真っ赤、寒さに震えながら歩いている様子はいかにも痛々しく、本当に憐れでした。


マホ「… うぅ、寒いですぅ…」ハァー…


寒さでかじかむ両手に白い息を吹きかけるマホ。 ハラハラと舞い落ちる雪が、彼女の美しい紫色の髪や赤いリボンの上に降りつもります。


マホ「・・・あぁ・・ もう、マホ、歩けないです…」ストンッ


レンガ造りの家と家の間… 細い路地で、ついに腰をおろしてかがみこんでしまったマホ…

しかしそんな彼女の鼻の穴を、なんとも言えぬ美味しそうな芳しい香りがくすぐりました。


マホ「ん…? この匂いは…!」クンクン
 
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 02:44:54.06 ID:zkSeOWuZ0

家々の窓という窓から、明かりが外へさしてきて、ガチョウの焼き肉のいい匂いが往来までプンプンと漂っていました。
それもそのはず、今日はクリスマス・イブですもの! 豪華なご馳走の匂いと一緒に、楽しそうにはしゃぐ幼い子どもたちの声も聞こえてきます。


マホ「う… マホもクリスマスのご馳走、食べたいですぅ…」ジュルリ


マホはこみあげるヨダレをぬぐい、明かりのもれる窓の一つを覗いてみました。


 ドタバタドタバタッ  キャーッキャーッww  ドタンバタンコケコッコォ――ッ!


池田「コラーッ! お前たち! いつまで遊んでるんだ! ガチョウの丸焼きができたぞっ! 早く席につけ!」

緋菜「ガチョウ? そんなモノいらないし! ゴージャスセレブプリンが食べたいし!」

池田「ゴージャスセレブプリンは3時間くらい並ばないと買えないんだよっ! こんな寒い中そんなに待ってられるか!」

菜沙「ゼイタク言うなし! ゴージャスセレブプリンのないクリスマスなんてありえないし! 早く今から買ってくるし!」

城菜「お姉ちゃんは… 本当に、使えないコだし…」

池田「うるさぁ――いっ! ワガママばかり言ってる子どもにはサンタさんが来てくれないぞっ! ツベコベ言わずに私が作ったモノを食べるし!」=3


姉に急かされて、シブシブ食卓についた三つ子たち・・・ そのテーブルの上には、ガチョウの丸焼きのほか、ホクホクのフライドポテトや、トロリとしたチーズがたっぷりのったピザ、チョコでできたツリーの飾られたショートケーキなど、豪華なクリスマスのご馳走が所狭しと並んでいました。


マホ(…バカなこと言ってます。 サンタさんなんか、この世にはいないのに… マホは一度もクリスマスプレゼントなんかもらったことありません)スッ


ため息をついて、再び冷たい石畳に腰をおろしたマホ・・・
彼女の小さな手は、寒さのためにもうほとんど感覚がありませんでした。

ああ! 一本の小さなマッチでも、こんな時はどんなに役に立つかしれません。

マホは、かじかむ手でマッチのたばから一本引き抜き、壁にこすって火をつけました。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 02:48:21.37 ID:zkSeOWuZ0

 シュッ  ボオォ・・・!


マホ「あぁ・・・」


なんという火花でしょう。 なんとよく燃えること!

あたたかい明るい炎は、まるで小さいロウソクの火のようでした。

マホは、そのまわりに手をかざしました。

すると、その時・・・ 本当に不思議なことが起こったのです!
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 03:02:14.83 ID:zkSeOWuZ0

マホ「え? あれ? ふわああぁ・・・??」


目をまるくするマホの前で… マッチの火の光の中に、ポッカリと穴があき… その穴はどんどん大きくなって、中に輝くばかりに白い布をかけたテーブルが現れたのです。

そして、そのテーブルのかたわらには、エプロンをしたまるで女神のように美しい少女が、何やらホカホカと湯気をたてている料理を持って立っていました。


美穂子「あら、いらっしゃい夢乃さん。 ちょうどローストビーフが焼けたところよ♪」ニッコリ


その女神のような少女が持っている大皿の上では、大きなローストビーフのかたまりがジュージューと美味しそうな音をたてていました。


マホ「か、風越の・・・ キャプテンさん? ど、どうして、こんな所に…?」

美穂子「夢乃さんとクリスマスのお祝いをしたくて、料理を作って待っていたのよ」

マホ「え、ほ、本当ですか…? マ、マホのために…?」

美穂子「もちろんよ♪ さあ、そんな寒いところにいないで、早くあがってらっしゃい?」


こんなに素晴らしいことがあるでしょうか。

マホは、喜びのあまりヨダレをぬぐうのも忘れて、ローストビーフへと手を伸ばしました。

ところが・・・


 フッ  スウゥ――――ッ・・・・・


マホ「あれ?」


マッチに一粒の雪が落ちて、火が消えてしまい… それと同時に、美味しそうなローストビーフも、女神のような少女も、スーッと透明になり、陽炎のように消えてしまったのです。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/08(水) 03:07:55.37 ID:zkSeOWuZ0

 シュッ! ボオオォ・・・ッ!


マホはあわてて新しいマッチをすりました。 あの女神様にもう一度現れてもらうためです。

しかし、火の光の中に、現れたのは・・・


?「ん? あらあら、マーマー…」

マホ「へ?」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 03:18:19.02 ID:zkSeOWuZ0

今回現れたのは、どこぞの痛々しいアイドル(28)とどこか面影の似ている、なかなかのおもちをおもちの若い女の人でした。


美月「あら、道に迷ったの? ここはお菓子のお店よ?」


その女の人は、両手に大きなデコレーションケーキののった大皿を持っていました。


マホ「あ、あなたは・・・  だ、誰、ですか?」

美月「私はここのお店の店主、瑞原美月よ♪ おじょーさん、お腹がすいているのかな?」


マホは、お腹がすいているどころではありませんでした。 今にもお腹の皮と背中がくっついて目が回りそうなほどに空腹でした。


マホ「は、はい…///」グウゥ〜〜・・・

美月「しょーがないなぁ。 じゃあ、こっちにいらっしゃい? 試食用のチョコレート、チョコッと食べさせてあげるから♪」

マホ「え、ほ、本当ですか? ありがとうございますぅ! おばさん!!」


美月「・・・ お・ば・さ・ん??」ゴゴゴォ・・・
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 03:22:55.12 ID:zkSeOWuZ0

美月「しっつれーしちゃうね! みつつ、よく中学生に間違えられるのに、おばさんですって…?」

マホ「は?」

美月「躾のなってないコにあげるお菓子なんてないよ! とっとと帰りなさい!」バタンッ


その店主は、ワケの分からないことを言いながら奥へと引っ込んでしまい… それと同時にマッチの火は消え、あとはただ、厚い冷たいレンガの壁が見えるばかりでした。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 03:26:39.70 ID:zkSeOWuZ0

マホ「うぅ…! 風越のキャプテンさん… もう一度出てきてください!」シュッ!


マホは祈りをこめて三本目のマッチをすりました。 

すると、そこへ、現れたのは・・・


トシ「…ん?」ズルルルルルウゥ〜〜・・・


テレビを見ながらカップラーメンをすすっているおばあさんでした。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 03:37:03.50 ID:zkSeOWuZ0

トシ「ん、なんだいアンタ、汚い子だね。 どっから入ってきたんだい?」

マホ「え、えと、その、お腹がすいてて・・・ あ、あの、マホにも、そのカップラーメン・・・一つもらえませんか?」

トシ「そりゃあできない相談だねぇ。 カップラーメンは今これ1個しかないんだよ。 あ、でも…」ゴソゴソ

マホ「?」


そのおばあさんは、何やら茶色いオハギのようなものがドッサリとのったお盆を取り出しました。


トシ「ちょうどもらい物のマンジュウがあったよ。 ちょっと多すぎて困ってたところなんだ。 これならお前さんにあげてもいいよ」

マホ「・・・???」


マホはマジマジとその茶色い物体を観察しました。

どう見てもお饅頭ではありません。

確かに形はお饅頭のようですし、色もそれっぽいのですが、どうもおかしいのです。

ピンピンとワラのような繊維がいくつかはみ出しているのが見えます。

それに・・・ なんともいえない妖しげな香りを、ほんのりと漂わせていたのです。


マホ「・・・! こ、これ・・・!!」

トシ「ん?」


マホ「うんこ! うんこじゃないですかっ!!」

66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 03:46:29.85 ID:zkSeOWuZ0

マホ「おばあさん! これおマンジュウじゃないです! うんこですよおぉっっ!!」=3

トシ「え? おやまあ、ホントだね。 こりゃ馬糞だったね。 すまんね、色や形が似てるからマンジュウと間違えちまったよw」

マホ「・・・・ふざけるなこのモウロクババアアアアァァッ!!」ガシィッ!

トシ「ぶげっ!!」=3


マホはあまりの空腹と怒りで我を忘れ、両手でおばあさんの首をつかんで渾身の力で締め上げ始めました。


トシ「… ぁぐっ、ふぅ…! し、死ぬ…!」ジタバタ

マホ「死ぬです! 今すぐ死ぬですっ!! 死んで詫びるですうぅっっ!!!」ギリギリギリ


夜叉のように恐ろしい顔で首を絞めるマホ・・・

しかし… おばあさんがブクブクと泡を吹き始めたその時… その女は現れたのでした。


?「おい待てよあんた、うんこをナメちゃあいけないぜ?」ユラリ
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 03:53:54.29 ID:zkSeOWuZ0

そこに立っていたのは… なんともザンネンなおもちをおもちの、赤毛のうすらぺったんこな女でした。


マホ「ふぇ?!」ビクッ

爽「まあ許してやれよ。 馬糞と饅頭は本当にそっくりなんだ。 今でも日本中の土産物屋に『馬糞饅頭』の名前で売ってる馬糞を模した饅頭があるくらいだからな。 そのばあさんが間違えるのも無理はねーよ」

マホ「…? あ、あなたは… い、一体、誰ですか?」

爽「フフッ、まあ名乗るほどの女じゃございませんよw ただの通りすがりのトイレマスターさ」ニヤ

マホ「といれますたぁ・・・??」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 04:14:48.32 ID:zkSeOWuZ0

爽「いいかいお嬢さん。 馬糞は非常に利用価値の高いスバラな物なんだぜ? 古来から、肥料、燃料、時には医療や美容にも利用されてきたんだ」

マホ「? び、美容…? うんこをですか?」

爽「そうだ。 フンの中の酵素が垢や脂肪を溶かし、肌をいためずに美白効果を期待できる… ウグイスのフンなんかは今でも美容用に売られてて、メチャクチャ高価なんだぞ?」

マホ「… そ、そんなこといったって… マホは、あったかい物か食べ物が欲しいんです…」

爽「う〜ん… 確かに馬糞を食べることはできねーけど… 暖をとることはできるぞ? その馬糞の中に手を突っ込んでみなよ。 あったけーから」

マホ「へ?! そんな、マホ、うんこなんかさわりたくないです!」

爽「だいじょぶだって、牛や馬の糞はそんなに汚くねーから。 臭いもあまりしないだろ? 土と大して変わんないよ。 昔の貧しい農家の子どもはみんな家畜の糞に手を突っ込んで暖をとったんだぜ?」

爽「それに、馬糞療法っていう言葉があるくらい、馬糞は外傷治療薬として使われてきたんだ。 その手の甲のあかぎれにも効くからさ、だまされたと思って入れてみなって」

マホ「・・・じゃ、じゃあ・・ 少しだけ・・・」ソッ


恐る恐る、馬糞の中に手を入れてみると… ほんわりとした心地よいぬくもりが、マホの冷えきった両手をやさしく包みこみました。


マホ「… あ… あったかいですぅ…///」

爽「だろ?w」

マホ「まるで人肌みたいです…  ん、あれ?」

爽「? どうした?」

マホ「いえ、あの… うんこの中に、何か、カタい物が…」

爽「ナンダトォッ!? おい、見せてみろっ!」

マホ「? は、はい…」モゾモゾ


その赤毛の女に促されて、マホが馬糞から引っ張り出した物は・・・ リンゴほどの大きさの、灰色で表面がボコボコとしている軽石のようなものでした。


爽「お・・・ おい! お前すごいなっ! これは・・・」

マホ「??」


爽「“馬糞石”だぞっ!!」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/08(水) 04:25:36.47 ID:zkSeOWuZ0

マホ「バ、バフンセキ・・・??」

爽「そうだ! 馬の腸内で、極稀にできることがある結石・・・ 数千頭に一つ出るか出ないかっていうメチャクチャ貴重なモノなんだぞ!」

マホ「?? …こ、こんな石が… 一体、なんの役に立つんですか?」

爽「べらんめえっ! 馬糞石は昔から漢方の特効薬として重宝されてきた奇跡の石だっ! 『開運! なんでも鑑定団』にも出品されたことがあって、そん時は300万円もの鑑定額がついたんだぞ!!」

マホ「・・・さ、さ、さんびゃくまんえん・・・???」アワワワワ

爽「おうよ! ウハハハッ!w こいつがあれば私たちは大金持ちだぜっ!!ww」


・・・そのあと、二人は馬糞石を製薬会社に持ち込んで大金を手にし… それを元手に馬糞を販売する会社を興し、マッチ売りではなく馬糞売りとなったマホは、億万長者になって末永く幸せに暮らしたそうです。

めでたしめでたし



(カン)
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/07(木) 20:59:55.80 ID:tnKS2WOu0
自己保守
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/03(水) 21:57:05.31 ID:bqWcEYDZ0
いろいろ別のを書いててこっちが進まんですね…
姉妹SSのもこ編の続きがあるので、良かったらどうぞ↓

爽「『風の谷のナウンコ』…ですか?」咏「だねぃ」(第一ステージ)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470216547/
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/01(木) 18:29:49.98 ID:ydmth2Eu0
もこ編の続き、第二ステージも書き終わったので保守しがてら貼っておきます↓

爽「『風の谷のナウンコ』…ですか?」咏「だねぃ」(第二ステージ)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1472717177/
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/01(土) 16:32:41.52 ID:QdHuZfnz0
第三ステージ↓

爽「“風の谷のナウンコ”…ですか?」咏「だねぃ」(第三ステージ)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474795263/
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 12:33:33.34 ID:LNLwR5m70

その42.〜「しらつき姫と七人のうんコロボックルたち」(前編)の巻〜



寒い寒い冬のことでした。

平原一面に白い雪が降り積もり、さらに粉雪がひらひら、まるで羽のように空から舞い降りていました。

お城では、おきさき様が黒檀の枠のついた窓のそばに座って、縫い物をしながら、そんな外の様子を眺めていました。

そこで、お后様は思いました。


ナナ「雪のように白くて、この窓枠みたいに黒い子が、授かりますように…」


やがて、お后に女の子が生まれました。

雪のように白い肌、そして黒檀のように黒く美しい髪をした子どもでした。


ナナ「ふふ、あなたの名前はシノ・・・ ‟白築慕”よ♪」

慕「……」ニコニコニコ


その子どもは太陽のように明るい笑顔で、城の者たちみんなから愛され、いつしか「しらつき姫」と呼ばれるようになっていました。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 12:53:02.19 ID:LNLwR5m70

しらつき姫はスクスクと大きくなり、とてもかわいらしい少女へと成長していきました。

ところが、しらつき姫が9歳になった時、突然、お后様がどこかへ雲隠れしてしまったのです。


慕「ねえ叔父さん、おかーさんはいったい、どこへ行っちゃったの…?」ウルウル

耕介「…心配すんな、慕。 何か俺たちに言えない事情があるんだろうけど… きっとすぐ戻ってくるさ」


しかし、お后様は一年たっても二年たっても戻ってこず… 王様は、ついに新しいお后を迎えることにしました。

ところが・・・・


はやり(28)「こにゃにゃちわーっ!☆ えへへっ、はやりをお后として選ぶなんて、ここの王様はお目が高いゾ!☆」ハヤヤッ


新しいお后様はアラサーにもかかわらずそれはそれは壊滅的なブリブリブリッコで、お城にその姿が現れた時、そのあまりの痛々しさにその場にいた者たちはみな凍りついてしまったほどでした。

そして、このお后はとても不思議な鏡を持っていました。

お后は鏡の前に立つと、いつも鏡をのぞきこみながらこうたずねました。


はやり「むふふふw 鏡よ鏡よ鏡さん!☆ 咲-saki-界で一番カワイイ女のコは、だーれっカナ?」

鏡(爽)「あん? そんなの聞くまでもねーだろ。 咲-saki-で一番の美少女っつったら… もちろん風越女子の女神・福路美穂子サンだよ!」

はやり「……」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 12:59:55.90 ID:LNLwR5m70

はやり「もー! 鏡ちゃんったら冗談キッツイゾ!☆ 本当に一番カワイイコは誰かなぁー?」ゴゴゴォ・・・

鏡(爽)「だから美穂子サンだって言ってんだろ。 二番目はやっぱユキか鹿児島の神代… 清澄の原村も淫ピとか言われてるけど、やっぱかなりレベルたけーよな」


 パリィーンッ!!


鏡(爽)「はまじぃっ?!?」=3=3


お世辞を言うことを知らないその鏡は、かわいそうに、粉々に砕かれてしまいました。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 13:09:00.37 ID:LNLwR5m70

はやり「ダメだこの鏡。 新しいの買ってこよぉーっと☆」テコテコ


お后が新しく買ってきた鏡は、おべっかのうまい空気を読める鏡でした。


はやり「鏡よ鏡よ鏡さん!☆ 咲-saki-界で一番カワイイ女のコは、だーれっ?」

鏡(漫)「は、はい… それは、お后様、あなたです。 いや、むしろ 咲-saki- じゃなくて はやり-hayari- に改名した方がええんじゃないっすか、この漫画」ヨイショヨイショ

はやり「だよね!☆ はやりこそが宇宙一カワイイ永遠不滅の美少女クイーンだもんね!」ハヤヤ


お后様はこれでやっと満足し、自信満々でフリフリのアイドル衣装を着こんで舞踏会へと出かけていくのでした。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 13:20:27.16 ID:LNLwR5m70

ところが、ある日のこと・・・ それは、しらつき姫が12歳の誕生日を迎えた日のことでした。

いつものように、お后様が鏡に向かってあの質問をすると… 驚いたことに、鏡はこう答えたのです。


鏡(漫)「…お后様、アラサー女子の範囲内なら、確かにあなたが一番美しいかもしれません。 でも、咲-saki-キャラ全てで言うんなら、一番の美少女は間違いなくしらつき姫です」

はやり「は?やぁ?!」


驚いたお后様は、鏡を脅したりすかしたりしてみましたが、今度ばかりは鏡は頑として言うことを曲げません。


鏡(漫)「咲-saki-で一番の美少女はシノチヤー・・・! それはこの世の真理で、どんな権力も捻じ曲げることのできん事実なんや…! うちはもう、ウソを言い続けるのは嫌なんや!!」カッ

はやり「…!!」


それからというもの、お后は姫を見るたびにはらわたが煮えくり返るようでした。

プライドの高いそのお后は、自分よりカワイイキャラが咲-saki-の中にいる・・・ということがどうしてもガマンならなかったのです。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 13:40:16.96 ID:LNLwR5m70

そこでお后は、ある日、ガチレズの狩人を呼び寄せて言いました。


はやり「しらつき姫を森の中へつれてって、ピーしてピーしてピーしてきちゃってよ!☆ もうはやり、あのコの顔は二度と見たくない!」

恭子「・・・分かりました」


狩人は言いつけどおり、しらつき姫を森につれていきました。

そして、山を一つ越えたところで、おもむろにしらつき姫の前に膝をつき、こう言ったのです。


恭子「姫様。 実は私はお后様に、姫様をピーするように言われてきたのです」

慕「え?! ピー??」

恭子「あの新しく来たお后は、あなたの美しさに嫉妬しとるんや。 このまま城に戻っても、いつかは殺されてしまうでしょう…」

慕「そ、そんな…」


その狩人は、確かにガチレズでしたが、非常に高貴な精神の持ち主だったので、なんとかしらつき姫を助けたいと思っていました。


恭子「生き延びるには、別の国で暮らすしかありません。 あと山を二つ越えた所まで行けば、隣国の国境があります」

恭子「本当は国境を越えるところまでお送りしたいんやけど… あまり帰りが遅いと怪しまれてしまいます。 ここからは、どうか一人で行ってください」

慕「…分かりました。 ありがとう狩人さん。私、ガンバります!」フンス!

恭子「どうかご無事で…」


しらつき姫は健気にも一人で、岩を踏み越え、いばらをかきわけて森の中を進んでいきました。

しかし、三つ目の山を登っている最中に、とうとう日が暮れてしまったのです。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 13:49:48.59 ID:LNLwR5m70

しらつき姫は、真っ暗な中で途方にくれてしまいました。

小さな体はもうヘトヘト… 足も棒のようでした。


慕「どうしよう… こんな所で、朝になるのを待つなんて、無理だよ…」


遠くから、 ワオーン という狼が吠える声が響いてきました。


慕「う、うぅ… オオカミに食べられちゃうのは嫌だな… おかーさん、おじさん、助けてよぉ…」シクシク


しらつき姫は、木の根元にしゃがみこむと、かわいそうにハラハラと涙を流し始めました。

無理もありません。 まだしらつき姫は12歳になったばかりの子どもなんですから…

しかし、その時でした。


?「おい、そんな所で何してるし?」

慕「え?!」


顔を上げたしらつき姫は、驚きのあまり、口をポカンと開けて目を丸くしていました。

目の前で、右手にランプを持ってこちらをのぞきこんでいるのは… 頭になぜかネコ耳の生えたマキグソ型の小人だったのです。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 14:09:01.79 ID:LNLwR5m70

背の高さは30cmくらい・・・

そして美しくハリがあり、ほのかにうんこ臭い茶色いそのボディー・・・!

さらに、あのソフトクリームを連想させるピラミッド型のたいへん立派なフォルム・・・!!

どこからどう見ても、その小人は健康的なマキグソそのものでした。


イケダ(ウンコ)「迷子か? こんな所でしゃがみ込んでたら風邪をひくし」

慕「え? あの、あなたは… だ、誰、ですか?」

イケダ(ウンコ)「私はうんこの妖精、“うんコロボックル”のカナだし。 迷子なら、私たちの家に来ればいいし」

慕「……」


果たしてうんこについていっていいものか、しらつき姫は迷いましたが、ここに一人でいても無事でいられる保証はありません。

いぶかしがりながらもついていくと、そのうんコロボックルは小さなレンガ造りの家に入っていきました。


イケダ「おーい、ただ今帰ったし!」

スミレ(ウンコ)「ああ、おかえりカナ。 …ん? その娘さんは、誰だい?」

イケダ「道に迷ってたみたいだから、連れてきてあげたし」

トヨネ(ビッグウンコ)「わーっ! ちょーカワイイ女の子だよー!」

ハツミ(ウンコ)「ん? 何事ですかー?」

マイル(ウンコ)「カナが人間の女の子ばつれてきたと」

サトハ(ウンコ)「ちょうどいい、今から夕食を摂るところだ。 キミも一緒に食べていくといい」

ハル(ヤッパリウンコ)「………」ポリポリ


慕「・・・・ え、えぇ・・・??」

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 14:19:24.45 ID:LNLwR5m70

その家の中は、家具が小さめなこと以外は、普通の家と特に変わりはなかったのですが…

中でくつろいでいるのは、やはり人間ではなく6つの同じようなマキグソたちでした。


マイル「一体どうしてこがん山ん中ば一人で歩いとったと?」


なぜか体中に鎖を巻きつけているうんこが佐賀弁で尋ねてきました。

そこでしらつき姫は、そのうんこたちにこれまでのことをすっかり打ち明けました。


スミレ「なんと… 国の王女様だったのか」

イケダ「義理の母親に殺されそうになった、だって…?」

トヨネ「ちょーひどいお母さんだよー!」=3

ハツミ「そこを狩人さんが助けてくれたわけですかー」

ハル「……」ポリポリ


すっかり聞き終わると、リーダーらしいメガネをかけたうんこが言いました。


サトハ「それなら、私たちのために家の仕事をしてくれないか? 料理に洗濯、掃除に縫い物など… 家事をこなしてくれるなら、ずっとここにいてくれてもかまわないぞ」

慕「………」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 14:24:29.18 ID:LNLwR5m70

しらつき姫は小さい頃から、怠け者のお母様にかわって料理や洗濯をこなしていたので、家事には自信がありました。

ですが、うんこたちのお世話をするお姫様なんて、今まで聞いたこともありません。


トヨネ「・・・あ、別に、嫌ならやらなくてもいーよ? ただいてくれるだけでも…」

慕「あ、いえ… 別に嫌じゃありません。 家事なら一応できるので、やらせて下さい」


こうしてしらつき姫は、七人のうんコロボックルたちと一緒に暮らすことになったのです。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 14:37:33.84 ID:LNLwR5m70





イケダ「じゃあしらつき姫、行ってくるし!」

トヨネ「ちゃんとイイコで待ってるんだよー!」

スミレ「もしかすると、その悪いお后がここまで来るかもしれない。 誰か訪ねてきても、絶対に中に入れてはいけないよ」

慕「分かりました。 みなさん、行ってらっしゃい♪」


七人のうんコロボックルたちは、毎朝、山へ出かけていって、畑を耕して野菜作りに精を出します。

そしてしらつき姫は夕方彼らが戻ってくるまでに、掃除、洗濯、縫い物などの家事をこなし、お風呂と夕食の支度をして待っているのです。


サトハ「お、今日の夕食は生姜焼きにグラタンにおでんか」

トヨネ「統一感ない食卓だけどちょーおいしいよー!」モッグモッグ

イケダ「すごい… その年で私よりも料理がうまいなんて、大したもんだし」ムッグムッグ

慕「そんなことないですよ/// あ、そういえばイケダさん、靴下に穴があいてたのでつくろっておきましたよ♪」

イケダ「あ、ありがとう///」


 ワハハハハハハハ  ワイワイガヤガヤ  キャッキャッキャッ♪


しらつき姫はとてもよく働いたので、うんコロボックルたちは皆、大喜びでした。

しらつき姫も、初めはうんこと一緒に暮らすことに不安を感じていましたが、皆明るくて優しいうんこたちなので、見た目や多少のにほひなどは気にならなくなりました。

そして、しばらく過ごすうちに、ずっとこのうんこさんたちのお世話をして暮らすのも悪くないかな、とさえ思うようになっていたのです。

85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 14:48:29.75 ID:LNLwR5m70


一方、お城では・・・ あの腹黒くて痛々しいお后様はどうしていたでしょう。

お后は、狩人がしらつき姫を亡き者にしてくれたものとばかり、思い込んでいました。

ですから、これでもう自分より美しい女のコはいないと信じて、鏡の前に立ちました。


はやり「鏡よ鏡よ鏡さーん!☆ 咲-saki-界で一番カワイイ女のコは、だーれっカナ?」

お后が聞くと、その鏡は答えました。

鏡(漫)「お后様、アラサーの間でなら、あなたは確かに一番美しいかもしれません… けれど、山の向こうでうんこたちと一緒に暮らすしらつき姫は、あなたの千倍はカワイイです」

はやり「What?!☆」


お后はビックリ仰天、怒りのあまり、ワナワナと震え始めました。

あのにっくきしらつき姫は、まだ生きているのです。

一体どうしたら、姫を亡き者にできるのでしょう・・・?


はやり「うむむむむむmm・・・!☆」


お后はうんうん唸って考えました。

お后は、咲-saki-界の中で自分が一番美しくない限り、悔しくて一時も気が休まらなかったのです。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 14:55:43.86 ID:LNLwR5m70

はやり「・・・よぉーし、もうこうなったら・・・ 手段は選ばないっ!」カッ



お后は黒魔術の心得がありました。

誰も知らない城の地下の秘密の部屋にこもって、その禍々しい魔法で恐ろしい毒リンゴを作ったのです。


はやり「ムフフフ…☆ これを一口かじったら最後、絶対に助からないゾッ!」グフォフォフォ・・・


お后はリンゴができあがると、顔に色を塗ってボロを着込み、百姓のおばあさんに化けました。

そして、山を越えて七人のうんコロボックルたちの家へと急いだのです。



(続く)
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/08(土) 14:56:41.32 ID:LNLwR5m70
止まります。
後編はまた来週書きます。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 21:06:50.74 ID:xNTn8Seg0
カリオストロ的な趣味ない系の読者ですけど、作者ホントにうんこネタ大好きっすね。
最初は何だコレって思ったけど、爽のとかいくつか読んで作者の真摯なうんこ道と読み手への心遣いにちょっと胸熱。
そして流した後の排便のように仄かに香る作者の知性的な文章と、何だかんだで読んじゃう読ませる力は素直にすごいと思う。

「うわっ! くっせぇ!」 的なトコに、彼岸島的狂気と面白さを感じる今日この頃。
好きなキャラの排泄音はやっぱ抵抗あるけど、基本的に内容面白いから今後も地味に応援していきます。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 17:39:52.89 ID:z8Hs15Ri0
批評あざす。
読み手への心遣いという点を評価してもらえたのは、率直に嬉しいです。
読み手が楽しめるように、読み手がトイレに来てホッと一息つけるようなSSになるように、ということを常に意識しているので。

でも別に>>1はトイレ話に固執しとるわけじゃありまへんどすえ。
他のテーマの話もいろいろ書くしね。
ただ「少女×萌え×トイレ」というテーマは尋常じゃなく奥が深いようなので、書くのならきっちりその真髄を見極めるまで掘り下げて書いてみたいだけです。(※掘ったり掘られたりに興味があるわけではない)
爽たちがまだまだいろんな世界を見せてくれそうなので、それを見てみたい。

まったり書いていきます。
後編は、はやりVSうんコロボックル七人衆のバトルです。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 17:58:36.29 ID:BMPNUPv50

その43.〜「しらつき姫と七人のうんコロボックルたち」(後編)の巻〜


 トン、トントントン・・・

山を越えてうんコロボックルたちの家までやって来た、おばあさんに化けたお后様・・・

トントンと戸を叩くと、しらつき姫が窓から顔を出して言いました。


慕「はい、こんにちはおばあさん。何のご用ですか?」

はやり「こんちゃかわぁーッ☆ おじょーさん、はやりの作ったディリシャ〜スなリンゴはいかがかな?」キャピリンコ


そのおばあさんの差し出したリンゴは、実に気持ちの悪い紫がかったドドメ色をしていました。


慕「・・・いえ、リンゴは間に合ってますので… 今日はけっこうです」

はやり「そんなこと言わないで食べてみてYO! 毒なんか入ってないからさ!☆」ハヤヤ

慕「……」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 18:04:33.58 ID:BMPNUPv50

はやり「何? はやりのりんごが食べられないってゆーの?☆」

慕「…いえ、その、そういうわけでは…」


怪しさMAXのリンゴ売りのおばあさんですが、心優しいしらつき姫はなかなか断ることができません。

そこへ…


イケダ「ん? なんだアンタ、何してるんだし?」

はやり「はや?」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 18:09:01.80 ID:BMPNUPv50

現れたのは、トイレに戻ってきたネコ耳の生えたうんコロボックル、イケダでした。


はやり「・・・・にゃぱぱぱぱぱぱッ!www=3 アンタ畜生な上にうんこだなんて・・・はやりこんなみじめな生き物見たことないYO〜〜!☆」ケラケラ

イケダ「な、なんだと…?!」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 18:46:23.43 ID:XPlcRcx70

イケダ「う、うんこをバカにするなし! お前だってトイレに行ったらうんこくらいするだろう?」

はやり「ザーンネンでした☆ はやりみたいな天使すぎる女の子はうんこなんかしないんだよん♪ はやりのお尻から出てくるのは、お砂糖とスパイスの入った甘い甘〜いお菓子だよ?」ハヤヤン

イケダ「はぁ? 何言ってるんだし! ヨボヨボのBBAのくせに…」

はやり「ム? これは変装だよ! 本当のはやりは… このとーり、ピッチピッチの女のコなんだぞッ!☆」バッ

慕「え?!」


化粧を拭き取ってボロを脱ぎ、ついにその痛々しき正体を現したお后様・・・!


慕「あ、あなたは… お義母さん?」

はやり「ありゃ、バレちゃったか☆」テヘッ

イケダ「お、お前… しらつき姫を殺そうとした女王だな? とっとと城に戻れし! しらつき姫にはこの私が指一本ふれさへぶしっ!!?」=3=3


うんコロボックルのイケダは、セリフを言い終える前にお后の投げつけた毒リンゴに叩き潰されていました。


慕「イ、イケダさん…!」

はやり「ウプププププ…www☆ さぁ、次はあなたの番だよ?しらつき姫ちゃん・・・w」ユラリ

慕「っく…!」バッ!


あわてて窓を閉め、部屋の奥へと逃げ込んだしらつき姫・・・

しかし、


 ドッゴオォォ―――ンッ!!=3=3


慕「ひっ?!」


ドアを一発で蹴り飛ばし、中に入ってきたそのお后は、まるでアイドル衣装を身にまとったターミネーターのようでした。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 19:07:32.61 ID:XPlcRcx70

はやり「プシシシシ…w☆ もう逃げられないゾ!しらつき姫ちゃん…w 黙ってはやりの毒リンゴを食べなさい!!」クワッ

慕「う、うぅ…!」


悪魔と化したアラサ―アイド・・・、否、お后様がジリジリと迫り、しらつき姫を壁際まで追い詰めました。

絶体絶命です・・・!

しかし、賢いしらつき姫はここで一計を案じ、お后様にこう言ったのです。


慕「・・・お、お義母様、分かりました。 言われた通りそのリンゴを食べるので… お願いです、最後に神様へのお祈りだけさせてください」

はやり「お祈り?☆ …ふぅ〜ん…… 別にいいケド? じゃあサッサと済ませちゃってよ」

慕「あの、この家は、神棚がトイレにあるので… 一度トイレに行かせてください」

はやり「トイレ? そんなこと言って、窓から逃げる気なんじゃないのー?」

慕「そ、そんなこと、しませんよぉ…」フルフル

はやり「……」


お后は少し迷いましたが、しらつき姫を縛りつけ、逃げられないようにその縄の先を持ってトイレへと行かせてあげました。
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 19:17:12.86 ID:XPlcRcx70

<「トイレにまします父なる神様… 願わくば御名を…」

はやり「……」


トイレの中から、しらつき姫のお祈りの声が聞こえてきます。


<「…南無阿弥陀仏ナムミョウホーレンソウですよー」

はやり「………」

<「アーメン・ザーメン・ザーサイメンいっちょうですよー!」

はやり「……?」

<「ブリブリブリブリブリブリッ! ブリュリュリュリュリュリュッチョス!ドゥッパァッシィッ!! ですよーっ!!」

はやり「・・・・は?」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 19:28:20.98 ID:HK4gwI9E0

 ガラァッ!


はやり「ちょっと! アンタ真面目にお祈りしてんの? フザケるなら早く出・・・ ふぁっ?!」ギョッ

ハツミ「おや? ノックしないでトイレに入ってくるのはマナー違反ですよー?」


そう… そこにいたのはしらつき姫ではなく、巫女服をアバンギャルドに着こなしたうんこだったのです。

トイレに潜んでいたハツミが、しらつき姫の縄をほどいて窓から逃がしてあげていたのでした。


ハツミ「ザンネンでしたねーw 私たちうんコロボックルがいる限り、しらつき姫には指一本ふれあばじゃあぁっ?!」ジャアァーッ・・・


お后様は無言でそのうんこを便器の中に叩き落とすと、排水レバーをひねって流してしまいました。
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 19:48:21.79 ID:RUQNOTPG0

はやり「しらつき姫ェ! このHAYARI様から逃げられると思ったら・・・大間違いだゾ!!」バッ

はやり「さあぁ魅せろはやりのTSUBURAな瞳よ・・・! 必殺!“アラサ―・テレスコオオォ―――プ”!!☆」ババッ


家から飛び出したお后様は、その能力の一つである千里眼を発動… 森の木々を透視し、アッという間に走って逃げるしらつき姫を見つけてしまいました。


はやり「むふぉふぉふぉふぉ…!ww そこだッ! うなれはやりの大根足・・・じゃなくてセクシー・レッグ…! “アラサ―・ミラクルラアアァ――――ッシュ”!!☆」ドゥッパァ――ンッ!!


爆発的なスタートダッシュで駆け出したお后様は、一瞬にして時速200kmに到達・・・ みるみるうちにしらつき姫に迫っていきます・・・!


慕「えっ! お義母さん?!」ギョッ

はやり「うひゃひゃひゃカクゴしろしらつき姫ェ!!☆」バッ


お后様の振り上げた右手から、まるで山んばのように爪が伸び始め… しらつき姫の華奢な体を引き裂こうとした、その、刹那・・・!


 ギャリイィ――ンッ!!


はやり「えっ?!」


突然、どこからともなく飛んできたネビュラチェーンが、お后のその邪悪な右手にガッチリとからみついていたのです。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 20:05:11.79 ID:jghX9Ju80

マイル「なんばしとる?! こんあやしか女め…!」ギリギリギリ・・・

トヨネ「こらっ!そこの変なオバサン! しらつき姫ちゃんに近づくんじゃないよぉ!!」バッ

ハル「……」ポリポリ


はやり「… はぁ……??」


現れたのは、長い鎖を聖闘士のようにかまえたうんこ、ひときわ長身のヴァンパイアのような目をしたうんこ、そしてのんきに黒糖をポリポリとかじっているうんこでした。


慕「み、皆さん…!」パアァ・・・

マイル「しらつき姫、間に合って良かったと… さぁ、少し離れてなさい」ザッ

トヨネ「あなたが姫が言ってた悪いおかーさんだねー? もぉー許さないよっ!」カッ

ハル「………  潰す」ポリポリ


・・・ああ、なんとたのもしいうんこたちでしょう…!

三人のうんコロボックルたちは、ヘタリこんでいたしらつき姫の前に立つと、キッとお后をにらみつけました。

しかし・・・


はやり「… なぁーに?☆ まさかマキグソさんたちがはやりの相手をしてくれるの? ちゃんちゃらちゃらちゃらおかしいYO〜〜ww」ヘラヘラ

トヨネ「うんこだからってナメるんじゃないよぉ! そしてちゃらが一つ多いよっ!!」

ハル「いや、二つ多い…」

マイル「そがんことはどうでもよか! さあイクぞ!!」

トヨネ・ハル「「おう!!」」ババッ!!
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 20:25:21.43 ID:ydVZF00+0

トヨネ「えぇいコレでもクラエエェッッ!!」ブンブンブン!!

マイル「リザベーション・・・セエェブゥ――ンッ!!」バババッ!

ハル「ポン、チー、ポン、そしてポォン!!」ブンブン

はやり「ん?!☆」


トヨネが自分のうんこボディをちぎって投げ、マイルがさらに鎖を放ち、ハルが自慢の喜界島原産の黒糖を投げつける…!


うんこ「 ミチミチミチミチイィッ!! 」
鎖「 ビュゴオオォォ――ッ!! 」
黒糖「 ヒョワアアアァァ――ッ!! 」


はやり「む…!☆」


うんこ「 ビチビチビチビチイイィッ!! 」
鎖「 ギュイイイィィ―――ンッ!! 」
黒糖「 ヒュンヒュンヒュンヒュウゥ――ンッ!! 」


はやり「これは・・・!!☆」


一斉にお后様を襲ううんこ、鎖、そして黒糖・・・!

お后は右手をマイルのネビュラチェーンに縛られたままであり、動くことができません。

化物のようなお后様も、さすがにこれは打つ手なし… もはやこれまでか? と思われた、次の瞬間でした。


はやり「ナメるなッ!☆ 今こそ萌えろはやりのコスモよ・・・! 超絶必殺ぅ! “アラサ―・ハイパーディメンショオオオォォ―――ン”!!!」ブワアアアァーッ!!


マイル「っげえ えぇ っっ !?!」=3
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 20:51:08.85 ID:ydVZF00+0

 スポポポポポポポポオォ―――ン…!


トヨネ「えぇっ?!」

ハル「…は?」


驚愕の表情を浮かべるうんコロボックルたち…

なんと、お后様が一声吼えると同時に、突然空間に真っ黒い“穴”があき…

うんこ、鎖、黒糖、その全てが穴の中へと吸い込まれてしまったのです。


マイル「な・・・何をしたんや! きさん!!」

はやり「うぴぴぴぴぴぴぴ…ww☆ これは“萌え”をとことん極めし者だけが使うことを許される萌えキャラ限定の究極奥義・・・!!」ゴゴゴォ・・・

はやり「どんなモノも異次元へフッ飛ばしてしまう“アラサ―・ディメンション”・・・! うんこごときが束になってかかったって、はやりに勝てるわけないんだYO!☆」ハヤッ!

トヨネ「そ、そんな、バカな…? 萌え度なら、アンタみたいなBBAよりもエイスリンさんの方がはるかに上のはずだよぉ?!」ワナワナ

はやり「そんなこわっぱが“萌え”を極められるワケないでしょー?☆ はやりは小二の時から本気で萌えを追及してきたんだよ… 全然年季が違うんだYO!!」カッ

はやり「さあぁカクゴしろうんこドモォ! くらえっ! “アラサ―・ディメンション・マァッ―――クスゥッ”!!☆」ブワアァァッ!

ハル「うっぐうぅっ?!」=3


 ドヒュオオオオオォォ――――ンッ!!


お后の放った究極の萌え技は猛烈な竜巻を発生させ… バキュームカーのように三人のうんコロボックルたちを一気に吸い込んでしまいました。
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 20:58:22.46 ID:11n6hR1i0

はやり「うぽぽぽぽぽww☆ これでカンネンしたかな? しらつき姫ちゃ・・・ん?」

(慕)「」ドロン


うんこたちの背後に隠れていたはずのしらつき姫の姿は、すでにそこにはありませんでした。

形勢が不利と見るや、一目散に逃げ出していたのです。


はやり「・・・ふぅん。 まぁいいや☆ あわてなくても、あんなヒヨワなウサギちゃんがはやりから逃げられるワケないんだから・・・w」ニタアァ・・・
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 21:07:12.13 ID:11n6hR1i0





慕「はぁ、はぁ、はぁはぁはぁはぁ・・・!」ヨロヨロ


森の中へ逃げ込んだしらつき姫は、落ち葉やつたに足を取られながらも、必死になって少しでも遠くへ離れようと頑張っていました。

そして、気がつくと、見晴らしの良い山のてっぺんまで来ていました。


慕「う…、こ、ここまで来れば、もう、大丈夫、かな…?」ハアハアハア・・・


疲れ切ってしまったしらつき姫は、大きな岩の陰に腰をおろしました。

と、その時、


 ガサッ


慕「?!」ビクッ
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 21:25:04.17 ID:hjz9YlS+0

慕「な、何? さっきの音… ま、まさか、お義母さん…?」キョロキョロ


・・・ シィーン・・・・


慕「…こ、小鳥か、何かだよね…? こんな遠くまで来たんだから、もう、いるわけ…」


・・・ トキニハハヤリニナガサレテェー♪  リボンデオメカシシチャウノヨォー♪☆・・・


慕「…」ガタガタガタ


突然響き渡った痛々しいファンシーソング…

恐る恐る後ろを振り返ると、そこには…


はやり「ヤッホー♪ もぉー遅いゾ! はやりヒマ過ぎて一人コンサート開いちゃうとこだったじゃん!☆」ハヤヤ


岩の反対側から現れたのは、まぎれもなくあのアイドルの皮をかぶった悪魔、地の底までも追ってくる鬼神の如きお后様でした。


慕「あ、あぁ・・・」ガタガタ


かわいそうにしらつき姫はもう蛇ににらまれたカエルのように・・・ カタカタと震えるだけで、動くこともできません・・・


はやり「ふふw☆ 恨むんならはやりじゃなくて、カワイクなりすぎた自分自身を恨むんだねッ!!」バッ


まるでアームズのようにメキメキと巨大化した右手が振り上げられ… しらつき姫は、思わず目をカタくつぶっていました。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 21:36:39.17 ID:hjz9YlS+0

しかし、まさにその時でした。


 ビシィッ!! ビイイィ――ン・・・ッ!


はやり「はやっ?!」

慕「えっ?!」


目を見張る二人…

お后の背後から飛んできた一本の矢が、その頬をかすめ…

岩に突き刺さり、ビリビリとその矢羽を震わせていたのです。

そして…


スミレ「今のはわざと外した。 次は心臓を刺し貫くぞ」ザッ

サトハ「そこまでだ。 もうお前に逃げ場はないぞ!」スチャッ

はやり「…何ィ?」

慕「ス、スミレさん! サトハさん!!」


窮地に現れたのは、方やアーチェリーの弓を背負ったうんこ… そして方や長ドスをかまえたうんこ…!

そう… ついに、七人のうんコロボックルの中でも最強の二人… 超武闘派のうんこがその姿を現したのです!
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 22:05:23.98 ID:6HMIwb2M0

スミレ「すぐに城へ戻れ。 そしてしらつき姫にはもう二度と近づくな…!」スチャ・・・

サトハ「今撤退すれば、命だけは助けてやるぞ…」ジリッ・・・

はやり「………」


一触即発のお后とうんこたち・・・!

しかし、


はやり「・・・・ ぶぉふぁふぁふぁふぁふぁふぁっっ!!wwww☆」=3=3

スミレ・サトハ「「!?」」ビクッ

はやり「ううぅおナカ痛いよぉ〜…!☆w アンタたち、はやりの腹筋を崩壊させるつもり?ww」=3

はやり「うんこ如きが! はやりの相手に!! なるワケないでしょオオォッ!!!」カッ!


 バババァッ!!!


スミレ「なっ?!」
サトハ「うっ!?」
慕「えっ!?」


一瞬、稲光が閃いた・・・ と、思った次の瞬間には、スミレとサトハのかまえていた弓と長ドスは消えていました。


はやり「まったくもぉ… そんなノロマさんのくせに、よくもはやりに挑戦する気になったねぇ〜?」カチャカチャ

スミレ「なぁ…? あ、あの一瞬で、私とサトハのエモノを奪い取った、だと…??」

サトハ「…!」


いえ、驚いてはいけません…! 「瑞原はやり」の一番のストロングポイントといえば、なんと言っても“和了速度”…! その神速と言われるスピードはまさに日本SAISOKU…! ことスピードにおいて、彼女に勝るモノなど存在しなかったのです。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 22:30:12.75 ID:AClFkygI0

はやり「さあさあどーするの? 5秒以内にはやりの視界から消えれば、見逃してあげなくもないケドォ〜?☆」ニタニタ

スミレ「っく…!」

サトハ「……」


もはや打つ手なし… やはりたかがうんこが群れたところで、悪魔の力を得たアラサ―にはかなわないのでしょうか…?


慕「ス、スミレさん、サトハさん…!」カタカタ

サトハ「… 何、怖がることはないさ、しらつき姫… うんこは、得物を取られたくらいで負けるようなヤワな存在ではない」

はやり「はぁ?!☆ あのねぇ・・・臭くて穢らわしい汚物風情が、ミエをはるのもいい加減にしろってんだよっ!!」カッ!


ザワザワと髪を逆立て、真っ赤なオーラを身にまとい、ついにその本当の姿を現し始めたお后・・・

しかし、その恐ろしい姿にも少しも動じることなく、うんコロボックルのリーダー・サトハはこう言ったのです。


サトハ「ふん… どうやらお前は“うんこのなんたるか”を全く分かっていないみたいだな…」ズモモモモォ・・・

サトハ「いい機会だ。 教えてやろうじゃないか… “うんこの真の力”というものをな!!」カッ
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 22:51:55.93 ID:nfKd1jP+0

はやり「うんこの、真の力ぁ…? いったい、何を言って・・・・んっ?!」ギョッ


 ブウウウウウウゥゥ――ン・・・  ザワザワザワザザザザザザアアァ―――・・・・!  モゾモゾ、モゾゾゾゾゾゾゾオオオォ〜〜・・・・!!


はやり「え、コレは・・・??」


 ドドドドドドドドドドオオオォ―――・・・!!  ブーブーブゥー!  ワン、ワンワンワン!  キーキーキィー!  ドッドドドドドオォ――・・・・!!


最初にやって来たのは、ハエやアリ、スカラベといった昆虫たちでした。

しかし、その昆虫たちに続いて… イノシシ、野犬、サル、カメ、ウサギ、ネズミ、パンダ、ミミズ等々・・・

森の中のあらゆる生き物たちの大群がやって来て、お后の前に立ち塞がったのです!


はやり「な、何? なんなのこのコたち…??」

サトハ「ふふ… こいつらはみんな、普段うんこをゴチソウとして食べている生き物たちだ。 私たちが発する匂いにつられてやって来たんだよ…」

はやり「はぁ?! もぉキモチワルイなぁ…!☆ うんこを食べるなんてサイテーだYO!」=3

サトハ「気持ち悪い…? 勘違いしてもらっては困るな。 人間だって、調味料や添加物、漢方の生薬などとして、哺乳類や鳥類のうんこから抽出された成分を食べているんだぞ?」

はやり「え、えぇ・・・??」

サトハ「それに、お前はうんこの匂いを臭いと言うが… うんこの匂いというものは極めて神秘的で高貴なモノなのだ。 その証拠に…」

サトハ「お前が体中に振りまいている香水… その香水にも、うんこの匂いが使われているんだぞ?」

はやり「はぁ?! まさかぁ!?」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:12:25.49 ID:/up1F+PF0

サトハ「そんなに驚くこともないだろう… うんこの匂いは、主に腸内でタンパク質を分解することで作られたインドールやスカトールといった成分が元になっている」

サトハ「この成分は量が多いと人にとって不快な臭いになることもあるが、濃度が低ければ、オレンジやジャスミンの花などと似た非常に芳しい匂いを発するモノなのだ」

はやり「う、うんこが、花の香り…?? ウソでしょ…?」

サトハ「うんこはウソなどつかん! 事実、多くの香水やタバコの香料などに、哺乳類のうんこから抽出したインドールやスカトールが使われているんだからな。
それだけ、うんこというものは人に親近感や安心感を与える匂いをもっているモノなのだ」

はやり「……」


 ワンワンワン、ブーブーキーキー…  ワラワラワラモゾモゾモゾ・・・


集まった動物や昆虫たちが、まるでサトハを守るかのように寄り集まってきた…


サトハ「自然界におけるうんこは、こういった生き物たちに食べられたり、キノコなどの菌類やバクテリアに分解されることで、やがて大地に還っていく…」

サトハ「そしてその分解されたうんこが糧となり、森の中のあらゆる植物たちを育てていく…」

サトハ「いいか? “うんこや生物の遺骸がなければ、この世に新しい命は一切生まれてこない”・・・ これは科学的にも証明されている自然界の摂理… 神の真理というものなのだっ!」

サトハ「つまり、“万物の生命の源”・・・ それこそが“うんこの真の姿”なんだ」

サトハ「ふふ… つまり、うんこを敵にするということは、自然界における生き物全てを敵に回すということなんだぞ…? たかが人間一人が、勝てると思っているのか?」

はやり「………」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:28:10.24 ID:bwJBJCcH0

ザザザザザアァ・・・!  ワンワンワン!  ブーブー  キーキィー  ゾロゾロモゾモゾ・・・

 ブウウウウゥゥゥ―――ン・・・・!  ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオォォ――――・・・・・!!


はやり「・・・!」


もはや、動物や昆虫たちだけでなく、木々や草花や風など、森の中のあらゆるものがお后様に立ち向かっているかのようでした。

いくら悪魔のような力をもっているお后といえど、周りの全てが敵では、もう手の打ちようがありません…

ところが、


はやり「… ふぅ〜ん…? ああそう。 じゃあはやりも、一つ教えてあげよーかぁ?」ハヤヤ

サトハ「何?」

はやり「グダグダグダグダ下らないことくっちゃべってんじゃあねぇーよ…☆ そういうのをねぇ・・・」ゴゴゴォ・・・

はやり「屁理屈って言うんだYO!!」バッ!

スミレ「なっ?!」

慕「えっ!?」


それは本当に一瞬のことでした。

神速で間合いを一気につめたお后様が… 自分のおもちの谷間からあのドドメ色の毒リンゴの切り身を取り出して、しらつき姫の口の中に押し込んだのです!


サトハ「!? しまった!!」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:36:30.26 ID:bwJBJCcH0

はやり「にゃ――っぱぱぱぱぱぱぱぱぱっっ!!www はやりはうんこなんか相手にしてるヒマないからねっ! ほにゃさいならー♪」ドヒューン・・・


お后が風のように立ち去ってしまったあとには、気を失って死んだように倒れているしらつき姫がいました。


サトハ「く… まずい! 息をしてないぞ!!」バッ

スミレ「脈もないな…」

ハツミ「どうしたんですかー?」


しらつき姫の元に、ワラワラと他のうんコロボックルたちも集まってきました。

うんこは基本不死身ですので、つぶされたり流されたり異次元に飛ばされるくらいのことはなんでもないのです。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:44:47.84 ID:bwJBJCcH0

うんコロボックルたちはしらつき姫を抱き起こして声をかけたり揺さぶったりしてみましたが、姫はカタく目を閉じたままピクリともしません…


トヨネ「ど、どうしよー? しらつき姫ちゃんが死んじゃうよー!」

ハル「…人工呼吸してみれば?」

マイル「いや、ばってん、うんこが人工呼吸ばするワケには…」

ハツミ「こういう時は、王子様のキッスで目を覚ますって、何かで読んだことがありますよー」

イケダ「それなら… どっかから王子様をつれてくるしかないし!」


その時でした。


耕介「・・・ん?」パッカパッカパッカパッカ・・・


そこへちょうど、白馬に乗った王家の人間らしきイケメンが現れたのです。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:54:23.30 ID:bwJBJCcH0

耕介「な、なんだ? うんこたちが集まって・・・ ん? し、慕か?!」

ハツミ「あ、いい所に王子様が来てくれましたよー!」

イケダ「おいお前! ちょっと待つし! しらつき姫をキスで目覚めさせてくれないか?」

耕介「はぁ??」


近くまで寄ってみると、そこに寝ているのは、まぎれもなく行方不明になっていた姪のしらつき姫でした。


耕介(慕…! こ、これは…? 眠ってるんじゃなくて… 仮死状態?)

耕介(うまく状況がのみこめないけど… これって…)チラリ

慕「…」グッタリ


耕介の腕の中でピクリともしないしらつき姫… そして、12歳の姪の、うっすらと濡れた唇が、目に飛び込んできたのです…!


耕介「…!」ゴクリ
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:05:12.04 ID:X8tJnKU30

 キーッス!  キーッス!  キーッス!  キーッス!  キーッス!


周りを取り囲んで、まるで小学生のようにはやしたてるうんコロボックルたち…


耕介(… い、いや、これは、キスじゃなくて… じ、人工呼吸だ!)

耕介(そう、不可抗力ってヤツなんだ… このまま処置をしないでいたら、慕の命が危ないんだから、仕方ないんだ!)

耕介(け、決して、俺は姪の唇に興味があったりとか、そんなヨコシマな気持ちがあるわけでは、ない…!)ハアハアハア

耕介(…え、えーっと、確か、、まずこうやって、アゴを持ち上げて・・・///)クイッ  ハアハアハアハア・・・!


耕介が、しらつき姫のアゴ先を持ち上げ、唇を合わせようと、顔を近づけ…


 「ちょっと、何やってんのあんた」

耕介「ヴォふぁっ?!?」=3=3
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:28:51.54 ID:Ki+bwBV10

突然そこへ現れたのは・・・ なんと、3年前に行方不明になっていた前のお后様… つまり、しらつき姫の本当のお母様でした。

魔女ニーマンコに捕われていた彼女でしたが、自力で魔法を解いて脱出し、城へ戻る途中だったのです。


ナナ「? 耕介? あんた慕にナニを…」ゴゴゴォ・・・

耕介「あ、姉貴…? いや、これは、えと、その… いや! オレは何もやましい気持ちは…!」カタカタ

ナナ「・・・ちょっとどきなさいよアンタ」グイッ

耕介「え?」


耕介を押しのけたお后様は、しらつき姫を抱き起こして前かがみにさせると、その背中をポォーンと勢いよく叩きました。

すると…


慕「あ゛ぅっ?!」=3=3


しらつき姫の口から、あの毒リンゴが飛び出してきたのです。


慕「・・・あれ、え、ここは・・・ え? おかーさん?!」

ナナ「ふふ、慕、久しぶりね… ずいぶん大きくなったわね♪」

トヨネ「わあぁやったーっ! しらつき姫が生き返ったよー!!」

スミレ「のどにリンゴがつっかえてただけだったんだな」ホッ

ハツミ「キッスの必要なんかなかったですねー!」


 ヨカッタヨカッタ  イッケンラクチャクダナ!  ワイワイ、ガヤガヤガヤ・・・


こうして・・・ 一緒にお城に戻ったしらつき姫とお后様は、玉の輿に乗っていたあの悪いお后様を追い出し、無事、平和な生活を取り戻したのでした。

そして… 七人のうんコロボックルたちは皆、しらつき姫の命を救ったその功績を認められ、お城直属の家来に重用されることになりました。

このうんコロボックルたちは、幸ウンを呼ぶ聖なる妖精として人々からたいへん尊敬され… いつまでもいつまでも大切にされ、後世まで末永く語り継がれたそうです。



(カン)
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 10:20:10.40 ID:8hgttMqB0
爽「テスト」

>>113
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 10:48:20.94 ID:SIoQC7te0
爽「もいっかいテスト」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 10:50:02.11 ID:SIoQC7te0
爽「テスト」>>113
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 16:32:38.73 ID:4SX7tuwno
朝鮮に行くと、うんこから作る
酒があるというが……サトハの
説明聞いたら飲みたくなったぞ(^^)
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 20:17:47.91 ID:fkpFqdL+0
>>1です。 韓国のトンスルですね。 あれは子どもの便を使うようですが…
そういえば、本編の(臨海女子〜阿知賀編)のその14で、智葉が新幹線の中でトンスルについて解説する場面がありましたね。
思わず読み返してしまった。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:04:03.73 ID:Z+7xsjyT0

その44.〜アンデルセン童話「うんこ姫の恋」(前編)の巻〜  ※シリアス



“「うんこ姫の恋」・・・”

“それは、美しくもそこはかとなくうんこ臭い、一つの愛の物語・・・・・”




海のはるか沖、水がまるで紺碧の絵の具で塗りつぶしたように青く、透き通ったサファイヤより澄んでいる南の海・・・

そんな天国のように美しい所に、うんコロボックルたちの住む島、“永遠のうんこ島”(エターナル・エクスクレメント・アイランド)はありました。

そこには、この世で一番不思議で美しい木や草花が生えています。

花と花の間を、極彩色の蝶たちがひらひらと妖精のように舞い、カワセミよりも綺麗な小鳥たちが歌を歌い、おだやかで心地良い南風が優しく吹き抜ける・・・

そんな楽園のように美しい島の中央に、うんコロボックルの王様・うんこ王の宮殿がありました。

その王城の壁はサンゴでできていて、窓は琥珀、屋根はホタテ貝でふいてあり、風によってカタカタと貝が揺れて心地よい音楽を奏でていました。


ただし、その素敵な宮殿に住んでいるのは、すべてマキグソ型のうんこの妖精、うんコロボックルたちでした。



モモ「はあ… 今日もこの島は平和っすね…」ボーッ・・・


宮殿の窓から、うんコロボックルのお姫様が顔を出して、道行くうんこの民たちを眺めていました。


カオリ「モモちゃん? 何をたそがれているの?」スッ


http://lohas.nicoseiga.jp/thumb/1430567i?

121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:05:46.31 ID:Z+7xsjyT0

モモ「あ、かおりんお姉さま」


現れたメガネをかけたうんこ・・・ 彼女は、うんコロボックル四姉妹の三女、カオリでした。

名前の通り、彼女は実に芳しくほんわかとした素敵な香りのうんこのお姫様でした。


カオリ「今日は下で舞踏会を開いているのに… モモちゃんの姿が見えないから、探しに来たんだよ」

モモ「・・・よく存在感の無い私を見つけられたっすね…」

カオリ「だって、私、モモちゃんのおねーちゃんだもの。 ほら、素敵なうんこさんたちがたくさん集まってるよ? モモちゃんも参加しようよ?」スッ

モモ「私は遠慮しとくっす。 大広間にあんなにうんこばっかり集まって踊り狂ってるのを見ると、気分が悪くなってくるんっす」

カオリ「え、そんな…」

サトミ「やれやれ、困ったもんだなー、モモは」ワハハ
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:07:12.80 ID:Z+7xsjyT0

モモ「蒲原お姉さま…」


次に現れたのは、口がカマボコのような形をしたマキグソ、うんコロボックル四姉妹の長女サトミでした。

彼女はボディーが茶色一色ではなく、ところどころオレンジ色だったり、緑だったり、青かったりしていて、さらにエノキやトウモロコシがはみ出しているのが見えました。

俗に言うグラディエーションうんこです。


サトミ「お前はただでさえ影が薄いんだから、もっとこう、なんて言うんだ… 社交的にならないとダメだぞ?」

モモ「ほっといて下さいっす。 私はうんこなんか嫌いなんっす。 うんこなんか下劣で汚らわしい下等な生き物っす」


うんコロボックル四姉妹の末っ子モモは、うんこでありながらうんこを嫌っていました。

そう、人間にも人間嫌いな人がいるように、やはりうんこにはうんこ嫌いのうんこもいるのです。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:08:36.81 ID:Z+7xsjyT0

サトミ「そんなことはないぞモモ? うんこは見た目はちょっとアレかもしれないが、この世で最も気高い生き物なんだぞ」ワハハ

サトミ「何しろうんこはこの世界の全ての生き物の母のような存在なんだからな… うんこが無くてはこの世は成り立たないんだぞ?」

ムツキ「うむ」


いつの間にか現れたもう一人のうんこがサトミの言葉に相槌を打ちました。

彼女はうんコロボックル四姉妹の三女で、そのボディーはまるで墨汁を流したように真っ黒でした。

医学用語でいうタール便… 恐らく彼女の生産者の胃か食道に潰瘍があったのでしょう。


モモ「そんな屁理屈はどうでもいいっす。 私は醜い生き物は嫌いなんっす」

カオリ「そんな… 私悲しいな… モモちゃんがうんこの美しさやかわいらしさを分からないなんて…」


三人の姉たちは、いかにうんこが誇り高き聖なる存在であるかを説いて聞かせましたが、モモはもう耳を貸しませんでした。


モモ(・・・私のお姉さまたちは、自分がうんこであることを恥ずかしくないんっすかね…? 私には考えられないっす)

モモ(どうして、私はうんこなんかに生まれてきちゃったんっすかね… どうせ生まれてくるなら、小鳥とかイルカとか猫とか人間とか、もっと見た目がいい生き物に生まれたかったっす…)


自分自身に自信を持てないうんこ姫モモは、時々こうして自分の運命を呪いながら、ため息をつくのでした。

124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:10:07.98 ID:Z+7xsjyT0





そんなある日、島に嵐がやってきて、海は一晩中強者の集う雀卓のように荒れ狂っていました。

うんコロボックルたちは強い風や水が苦手ですので、皆お城の中で震えていました。

そして、あくる日… 浜辺には、沢山の流木やら海藻やら空き缶やらレジ袋やらが流れ着いていました。


モモ「随分いろんな物が落ちてるっすね…」テクテク


好奇心旺盛で冒険心のあるモモは、早朝、誰よりも早く起きて、そんな浜辺を散歩していました。

そして、一隻の大きな船が座礁しているのを発見したのです。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:11:35.46 ID:Z+7xsjyT0

モモ「まるで物語に出てくる海賊船みたいな立派な船っす。 中にお宝があるかもしれないっす!」


モモは、その船に乗り込んでみました。 ところが、中はボロボロに壊れており、乗組員の遺骸があちこちに転がっていて、まるで地獄のような有様でした。


モモ「うわぁ〜… お気の毒っす…」ナンマンダブナンマンダブ


と、その時、


 ウ、ウウゥ・・・


モモ「!?」


うめき声が聞こえ、振り返ると… そこには、身分の高い高貴な衣服に身を包んだ人間の少女が、ぐったりと甲板の壁にもたれかかっていたのです。


ゆみ「ぐ、うぅ・・・」


モモ「! こ、この人… まだ生きてるっす!」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:13:13.55 ID:Z+7xsjyT0

モモは急いで城に助けを呼びに戻り、三人の姉を連れてきました。


サトミ「ひえぇ… こりゃ本当にヒドいな…」ワハハ

カオリ「昨日の嵐で遭難したんだね…」

ムツキ「うむ」


モモ「お姉さま! こっちっす!!」タタタ・・・


ゆみの元へ三人を案内したモモ…


ゆみ「……」グッタリ

サトミ「あー… こりゃもう助からないな」

カオリ「ひどく衰弱して… ケガもしてるね」

ムツキ「うむ」

モモ「そ、そんな… そんなこと言わないでなんとかして助けてあげて下さいっす!」

サトミ「・・・何を言ってるんだ? モモ?」

モモ「え?」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:14:29.38 ID:Z+7xsjyT0

サトミ「人間はこの世で最も邪悪な生き物なんだぞ? そんな奴を助けてどうするんだ?」

モモ「え、だって、か、かわいそうっす…」

カオリ「モモちゃん… 人間はね、海や空気を汚し、自分たちのことしか考えずに他の生き物たちを殺したり弄んだりしてる、すごく悪い人たちなんだよ?」

サトミ「それに人間たちは私たちをいつもコケにし、バカにする… つまり私たちの敵なんだ」

サトミ「どうして敵をわざわざ助けなくちゃいけないんだ?」

ムツキ「うむ」

モモ「……」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:15:41.28 ID:Z+7xsjyT0

モモ「そんなこと今は関係ないっす! 目の前に死にそうな人がいるのに、それを助けないなんて・・・おかしいっす!!」=3

サトミ「な、なんだ、モモ? どうしてそんなにこの人間にこだわるんだ?」

モモ「そ、それは・・・///」


モモは、少しキマリ悪そうに顔を赤らめて、うつむきました。

というのも、モモは、その人間の見た目・・・ 眉目麗しく美しいその姿に魅かれていたのです。


サトミ「とにかく私たちは協力しないからな」

カオリ「モモちゃんもあきらめて、早く戻っておいでよ?」

ムツキ「うむ…」


三人の姉たちは、モモを置いてお城へと帰ってしまいました。


モモ「・・・も、もう、お姉さまたちなんかいなくても、私だけで助けてみせるっす! せーっの、うんこらしょっと・・・!!」ウンショ…


モモは、必死で、自分のボディーの何倍もあるその人間の体を背負い、島で唯一の病院へと運んでいきました。

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:16:59.21 ID:Z+7xsjyT0





〜荒川病院〜


ケイ「え? 困りますねぇ〜、うちは人間の治療なんかやってませんよーぅ?」


そのナースキャップをかぶったうんコロボックルは冷たく言い放ちました。


モモ「そ、そこを、なんとか・・・」ゼーゼー・・・

ケイ「そうは言っても… 仮に治療して治ったとしても、人間はうんこを嫌っとるからねぇ… 多分ビックリしてお金も払わずに逃げてくで」

モモ「お、お金なら私が払うっすから! お願いです! この人を助けてあげて下さいっす!!」


モモの必死の嘆願により、やっと、一番粗末な病室を使っても良いことになりました。

しかし、これといった治療をしてもらえるわけではなく、与えられたのは点滴のセット一つだけでした。


モモ「…みんな冷たすぎるっす… でも、私はあきらめないっす! 絶対この人の命を救ってみせるっす!!」


モモは、その病室に泊まり込んで、つきっきりでゆみの看病をするようになりました。

毎日点滴の交換をし、傷の包帯を替え、体を拭いてやり、下の世話までかいがいしくしてあげました。

三人の姉たちはそんな妹をあきれ顔で見ていました。

彼女たちは、きっと、モモはまだ子どもだから、ママゴトをする人形を手に入れたような気分なんだろう、と考えていたのです。


しかし、モモはそんな遊び気分でゆみの世話をしているわけではありませんでした。

そう・・・ 彼女は、人間の少女に恋をしてしまっていたのです。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:18:12.29 ID:Z+7xsjyT0

ゆみは初めこそ生死の境を彷徨うほどの重症でしたが、モモの必死の看病のかいあって、徐々に体は回復していきました。

しかし、それでもなかなか目を覚ましませんでした。

スース―と、毎日ただ静かに眠り続けていました。

モモは、そんな風に眠っているゆみの顔を、うっとりとして見つめました。


モモ「綺麗な人っす… 長いまつ毛… 白いきめ細かな肌… しなやかな髪… つんと伸びた鼻筋…」

モモ「そして、真珠みたいになめらかな、朱い唇・・・///」ゴクリ


モモは、思わずその美しいゆみの唇に自分の口を合わせようとしましたが、ハッと思いとどまり、病室の鏡の前に立ちました。

その鏡の中では、もっさりとした茶色いうんこボディーが憎々しげにモモの方を見ていました。


モモ「・・・ああ… 私も人間の体だったら、良かったのになぁ…」ハア


モモは小さくため息をつきましたが、無言でゆみの点滴の空袋を外し、また新しいものと替えてやるのでした。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:19:51.32 ID:Z+7xsjyT0

そして、ついにゆみが目を覚ます時がやってきました。

その時、モモはいつものようにゆみの傷の包帯を替えてやっていたのですが、ゆみが一瞬痛そうに顔をしかめ、次の瞬間に、パッと目を開いたのです。


ゆみ「・・・ん? ここは・・・」

モモ「!?」バッ!

ゆみ「え?」


モモは、咄嗟にそこにあったサロンパスでゆみの目を塞ぎました。

自分のうんこボディーをこの愛しい人間に見られたくなかったからです。


ゆみ「な、なんだ? ここは、一体…」

モモ「シッ! 静かにして下さいっす。 ここは病院です」

ゆみ「・・・ああ、そうか、船が難破して… 私は死んだものと思っていたが、助かったのか。 他の仲間たちは…?」

モモ「お仲間さんたちは皆お亡くなりになったっす。 助かったのはあなた一人っす」

ゆみ「そうか… 君が私を助けてくれたんだな? どうして目を塞ぐんだ?」

モモ「・・・それは聞かないで欲しいっす。 あなたに見られたくないモノがあるんっす…」

ゆみ「… 分かった。 私はツルガ国王妃、加治木ゆみだ。 せめて… 君の名前を教えてくれないか?」

モモ「・・・ モモっす。 それ以外のことは教えられないっす…」

ゆみ「モモ… そうか、美しい名前だな。 助けてくれてありがとう」ニコッ

モモ「…!///」


ゆみの口角がゆっくりと上がりました。

モモは、愛しの君が自分を褒めてくれたと思うだけで、まるで天にも昇るような気分でした。
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:21:01.79 ID:Z+7xsjyT0

それから、ゆみは目隠しをされたままですが、モモに色んな話をしてくれました。

彼女は一国の王妃でありながら、船で世界中のいろんな所を回っている冒険家なのでした。

北の海に浮かぶ野球場のように大きい氷の山のこと、ここよりもっと南の国の密林に潜む恐ろしい猛獣のこと、雲より高くそびえる山の頂上で咲く花のこと、そしてニホンという国に潜む悪鬼羅刹のような雀鬼たちの火花散る闘いのこと・・・・

モモは、ゆみのそういった未知の世界の話を、瞳を輝かせて熱心に聞きました。 

どこへ行っても鼻つまみものにされるうんコロボックルであるモモは、自分の島以外の世界にはほとんど行ったことがなかったのです。


モモ「すごいっす。 私もそのニホンに行って… 大魔王のコークスクリューや迫りくる怒涛の魔乳っていうのを見てみたいっす!」

ゆみ「ハハ… 君は本当に世間知らずなんだな。 どこかの辺境の国の箱入り娘なのかな?」

モモ「…そんなところっす」

ゆみ「それにしても君は、本当に美しい声をしているな。 世界中を回ってきた私でも、君のように美しい声で話す人を私は知らない」

モモ「・・・そ、そんなこと、ないっす///」

ゆみ「きっと君は、私が見たこともないような美しい姿をしているんだろうな…」

モモ「…//////」

ゆみ「ひと目でいい。 この目のサロンパスをはずして、君の姿を見せてくれないか?」

モモ「・・・・それは、できないっす・・・」

ゆみ「… そうか。 分かった、無理にとは言わないよ」
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:22:18.97 ID:Z+7xsjyT0

モモも、本当は目隠しをはずしてあげたいのです。

この美しい人間の瞳を見ながら、あ互いに微笑み合うことができたら、どんなに良いでしょう。

しかし、もしゆみが、モモがうんこであることを知ったら、どうするでしょうか。

もう、口などきいてくれるはずはありません。

それどころか、怒り狂って病室を飛び出して行ってしまうかもしれません。


モモ「はあ… どうして私は人間に生まれてこなかったんっすかね…」


それを思うと、モモはまたうんことして生まれてきた自分の運命を呪い、ため息をつくのでした。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:23:42.07 ID:Z+7xsjyT0

目を覚ましてからのゆみは、ぐんぐんと元気になり、自力で歩けるまでに回復しました。

そして… やはり、自分の国に帰りたいということを口にするようになりました。


ゆみ「命を助けてもらったうえに、これ以上頼みごとをするのは気が引けるのだが…」

ゆみ「私を開放してもらえないだろうか。 国にいる部下や仲間たちが私のことを心配していると思う」

モモ「……」


モモは、ゆみが一人で動いたり目隠しをはずしたりできないように、彼女の手足を拘束していました。


モモ(開放して国に帰してしまったら、もう二度と私はこの人と話をすることはできないっすよね…)

モモ(何しろ私はうんこなんですから、会いに行っても追い返されるに決まってるっす)

モモ(こうなったら… この人の脚でも折ってしまおうっすかね…?)


モモ(そうして不具にしてしまえば、私は、一生この人のそばにいることができるっす…)スッ


目隠しをしてベッドに拘束されているゆみの前で、無言で立ち上がったモモは、そこにあったバールのような物を手にしました。


モモ(・・・これで、ひとおもいに、この人の脚を・・・)ギラッ


横たわるゆみの前で、バールを振り上げたモモ・・・・


ゆみ「… どうしたんだ、モモ? なぜ黙っている?」

モモ「…!」ハッ


ゆみの声で目が覚めたモモは、静かにバールをおろし、ハーハーと肩で息をしました。


モモ(な、何をしてるんっすか、私は… この人を傷つけようとするなんて…!)

モモ(・・・やっぱり、あきらめるしかないっす… 私は、この人を不幸にはしたくないっす…)


モモは、ゆみに気づかれないように一人涙を流しながら、ゆみを国に帰す決心をしました。

135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:25:14.11 ID:Z+7xsjyT0





それから3日後の満月の晩、モモはゆみを小舟に乗せ、オールを漕いで静かな海を進んでいました。


モモ「ツルガ国までお送りすることはできないっすけど…」キーコキーコ

モモ「他に人のいる島まで送ってあげるっす。 そこからは、自力でツルガまで戻って下さい」キーコキーコ…

ゆみ「ああ、それで十分だよ。 恩に着る」


小舟は、静かに島の浜にへさきを着けました。

この島は、うんこではなく人間が住んでいる島です。


モモ「・・・着いたっす。 私は引き上げるっすから、水音がしなくなったら、その目隠しをはずしてもいいっすよ…」

ゆみ「ありがとう… これだけ世話になった人に、なんのお礼もすることができないのは心残りだが…」

ゆみ「私は一生、君のことを忘れないよ。 君のその美しい声… いつかまた、聞かせてくれないか?」

モモ「・・・・・」キーコキーコ・・・


ゆみの言葉に応えず、無言でオールを漕ぎ始めたモモ…

そして静かに岩の裏に回ると、漕ぐのをやめ、そっとゆみの方に向き直りました。

ゆみは砂の上に腰をおろしてしばらくジッとしていましたが、おもむろに顔に手をやると、ペリペリと目隠しのサロンパスをはずし、まぶしそうに満月を見上げました。

その姿を見て、モモはハッと息を呑みました。 

初めて見るゆみの瞳が、まるでエメラルドのように澄んだ、凛々しく美しい光彩を放っていたからです。


モモ(あ、あぁ… キレイっす…/// あんな瞳で見つめられたら、私もう、死んでも悔いはないっす…!///)


ゆみは少しだけきょろきょろと辺りを見回していましたが、スッと立ち上がると、浜辺の上の方へと歩いていきました。
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:26:40.69 ID:Z+7xsjyT0

そこには、大きな白い教会が建っていました。

ゆみがトントンと入り口をノックすると、中から、小柄ですがとてつもなくボリューミーなおもちをおもちの美少女が現れました。


ユキ「…どうされました?」

ゆみ「夜分にすまない。 実は道に迷ってしまったのだが…」

ユキ「まあ、それはお困りでしょう。 どうぞ中に入って休んで下さい」スッ

ゆみ「ああ、ありがとう」ニコッ


ゆみはそのシスターの少女に微笑みかけると、中に入っていきました。

モモは、その様子を、歯ぎしりしながら眺めていました。

あの優しい微笑みは、本当は自分に向けられるべきだと思ったからです。


モモは、ズキズキと痛む心を抱えながら、また小舟を漕ぎ、自分の島へと帰っていきました。

137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/15(火) 21:27:57.91 ID:Z+7xsjyT0





モモはもともと、うんこ嫌いで周りとコミュニケーションをとることを避けながら生きてきました。

しかし、あの麗しい王妃様と別れてからというもの、モモはいっそう、自分の殻に閉じこもるようになりました。

四六時中、お城の窓際に座って、ボーッと外を眺めているようになりました。

彼女の三人の姉たちはそんな妹を心配し、漫画やら美味しいケーキやらプロ麻雀せんべいカードやらを持ってきて気を引こうとしましたが、モモはもう、そんな姉たちに目もくれませんでした。


モモ(…今頃あの人は、何をしてるんっすかね…)ボー…

モモ(あの綺麗で優しい微笑みを、他の女たちに振りまいてるんっすかね…)

モモ(・・・一度でもいい。 あの人と目を見つめ合いながら、微笑みをかわしながら、おしゃべりをしてみたいっす…)


モモは、ゆみを帰してあげる時は、もうゆみのことを忘れるつもりでいました。

しかし、そう思えば思うほど、モモの頭の中には、ゆみの優しい声とあの素敵な笑顔が浮かんでくるのでした。
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