姫王子「黒翼のハルピュイア娘……」青花エルフ「王子、姫になる」

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218 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/10/14(金) 22:38:47.54 ID:Y/18L0UBo


姫王子 (気まぐれ……?)

姫王子 (それとも、きっかけがあったのか)

姫王子 (……としたら、さっきの魔ンボウかな?)

姫王子 「何が、あなたの気分を良くしたのだろうか」


鏡の魔女K 「小賢しいぞ、小娘」


姫王子 「さっきの光る魚類はすごかったな」


鏡の魔女K 「…………」


馬車幽霊 「ええ」

馬車幽霊 「今日使われた魔法の中でも」

馬車幽霊 「一番素晴らしいのはあの魔法でした」


鏡の魔女K 「…………」


姫王子 (少し、表情が険しくなった)


鏡の魔女K 「一番良い部屋を用意せよ」

鏡の魔女K 「わらわを誠実にもてなすならば、これ以上」

鏡の魔女K 「お前たちをいじめるようなことは、せずにいてやろう」


219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/17(月) 12:28:21.63 ID:u49N4HUEO
葉巻ー早く復活するんだー
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/15(火) 13:07:19.35 ID:cngJYECL0
おっと危ない
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/29(火) 18:45:29.78 ID:RcpwDGX8O
更新待ち
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/09(金) 08:28:18.38 ID:o+J9IDqtO
まだかにゃあ
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/09(金) 12:24:40.80 ID:G406JRYJO
はっきり言って葉巻のヒロイン力がヤバイ
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/14(水) 00:39:19.10 ID:3tfDv6r1o
あっあっあっ
225 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/14(水) 04:27:29.32 ID:2VUr+6dUo


姫王子 「一番良い部屋ね」

姫王子 「どうだろうな。あなたがお暴れになるまでは、簡単に用意できたかもしれないが」


ハーピィ 「…………」


鏡の魔女K 「揃いも揃って、行儀の悪い子どもよ」

鏡の魔女K 「その舌を凍らせられなければ、ふざけた物言いはなおらぬか?」


姫王子 「子どもね……」


馬車幽霊 「船長がこの場にいません」

馬車幽霊 「帰ってくるまで待っていただくわけにはいきませんか」


鏡の魔女K 「関係ない。わらわが答えを求めている」


姫王子 「それはそれは……」

姫王子 (難物だ。先生が特殊なだけで、力ある魔法使いとはみんなこうなのか)

姫王子 (花の長老たちも、くせが強いようだったし)


226 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/14(水) 05:28:02.68 ID:2VUr+6dUo


クル魔エビ娘 「魔ーレラ婆……」


魔ーレラ 「ふむ……」


鏡の魔女たち 「どうした。答えぬのか?」

鏡の魔女たち 「ならばあとが面倒だが、お前たちを皆殺しにしてこの船をいただこうか?」


エビたち 「…………!」


傭兵たち 「…………ッ」


姫王子 (……攻撃をしかけようとする者は出ないな)

姫王子 (消耗している上に、あとどれくらい戦わなければならないか見当もつかない相手だ)


貝殻の勇者 「…………っ」


姫王子 (敵と見なした相手に迷わず攻撃をしかける勇者どのも、決めきれないようだ)

姫王子 (……葉巻がこの場にいないのは幸いだったんろうか)

姫王子 (ここまできたら、あいつは考える間もなく徹底的に戦うことを選ぶだろう)


ハーピィ 「…………」


ザザア ザプン ザザア


鏡の魔女K 「……ほほ」

鏡の魔女K 「なさけない者たちよ」


227 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/14(水) 05:40:18.49 ID:2VUr+6dUo


鏡の魔女たち 「では、お前たちを殺して」

鏡の魔女たち 「この船を使うことにしよう」


キイイイ


王子 「……!」

王子 (鏡の魔女たちが魔法を練りはじめた)

王子 「全部本物みたいだ。どうなっているんだ、魔女ってやつは」


馬車幽霊 「弱体化はしているようですね」

馬車幽霊 「組み立てるのに時間がかかっている」

馬車幽霊 「おそらく、一つの存在を複数に分けているのでしょうが……」


キイイイ


槍傭兵 「く、くそ……!」


剣傭兵 「ええい、黙ってやられてたまるか! 武器を構えろ!」


チャキ


ク魔エビ娘 「やれやれ」

ク魔エビ娘 「聞く耳なんて持ってやるべきじゃなかったんだ」


鏡の魔女たち 「ほほほ……」


キイイイイ





228 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/14(水) 05:52:03.08 ID:2VUr+6dUo


ワアアア


大槌傭兵 「でやあ!」


ブオン ガシャン


首なし鏡の魔女E 「…………」


弓傭兵 「おお、一撃で頭を粉々に砕いたぞ!」


大槌傭兵 「がははは、見かけ倒しめ! こやつ、ガラス細工のように脆いわ!」


悪魔紳士 「いやいや、どうでしょうな」

悪魔紳士 「頭を無くしても、元気に魔法を組み立てていらっしゃる」


カチャ カチャ カチャ


砕けた鏡の魔女E 「…………」

鏡の魔女E 「……ほほ」


キイイイ


狩人 「……そんな。元通りに……」


淫魔幼女 「…………」


斧傭兵 「ええい、攻撃を続けろ。何としても止めるんだ!」


229 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/14(水) 12:44:50.62 ID:2VUr+6dUo


ガシャン バリン

カチャ カチャ カチャ


鏡の魔女K 「ほほほ……どうした、はやくせねばわらわの炎に焼き尽くされるぞ?」


貝殻の勇者 「……いけません。まるでこたえた様子がありません」


姫王子 「本当に遊ばれているだけの気になってくるな」

姫王子 「何か手は無いものか」


馬車幽霊 「核となる存在を倒すか、すべてを同時に撃破すれば良い」

馬車幽霊 「という場合が多いのですが……」


姫王子 「難しそう話だな。砕いたところで手ごたえを感じないし」

姫王子 「……勇者どのに全部押し流してもらうというのはどうかな」

姫王子 「こちらは甲板室に避難して」


馬車幽霊 「敵もさすがに、そこまでの時間はくれないでしょう」


貝殻の勇者 「勇者の力は強大です。甲板を平らげてしまわないとも限りません」

貝殻の勇者 「私も、まったく使いこなせているというわけではありませんから」


姫王子 「ううむ」


ハーピィ 「…………」


230 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/16(金) 04:25:01.22 ID:fbuEVU5Fo


姫王子 (しかし……)


ガシャン バリン グシャ グシャ

キイイイ


鏡の魔女K 「ほほ……何度やっても無駄なこと」


姫王子 (何度でも元通りになるというのは良いな)

姫王子 (感触はまったく違うけれど、訓練の足しになりそうだ)

姫王子 (この身体といつまで付き合わなければならないか分からないが、早く慣れておかなくては)

姫王子 (……骨と肉のある、何度斬っても元通りになる魔法の人形なんて作れないかな)


ガシャン バリリ


姫王子 (おっ……今のは良い感じに身体が動いたぞ)

姫王子 (女性の身体になって動きが柔らかくなったみたいだ)

姫王子 (腕力が落ちているが、剣の重さをうまく利用できたら良いかな)

姫王子 (重い剣も持ってみるか……)


ガシャン バリン


貝殻の勇者 「こんなときに、何をしているのです王子どの!」





231 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/16(金) 04:59:34.21 ID:fbuEVU5Fo


姫王子 「いや、何としても止めないとと……」


貝殻の勇者 「ごまかさないでください」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


貝殻の勇者 「武器をまじえたこともあるので分かります」

貝殻の勇者 「動きから何まで、まるで訓練そのものという様子ではありませんか」


馬車幽霊 「分かりませんでしたが……」


姫王子 「いやいや……ああ、そんな気分になっていた」

姫王子 「はやく身体に慣れたくてね」

姫王子 「今後のためにも」


貝殻の勇者 「今後のためって、何をのん気な……」


姫王子 「ははは……杖を持った腕を壊しても無駄のようだ」

姫王子 「やはり偽者なのではないのかな」


馬車幽霊 「今まさに放たれようとしている魔法そのものは本物のようです」

馬車幽霊 「エルフの交感術を習得した王子どのにも分かるはずです」

馬車幽霊 「魔女に集まる魔力の流れが」


姫王子 (交感……自然の声か)

姫王子 「ふむ……」


馬車幽霊 「それをも欺く術を持たれていたら厄介ですが……お気をつけを」

馬車幽霊 「魔女は本当にとどめをさしてくるつもりの様子」

馬車幽霊 「これまでの魔法とは精度も密度を違います」

馬車幽霊 「魔法の壁は重ねていますが、耐えられるかどうか」


姫王子 (本当に化物か。まあ、ドラゴンを操るくらいだしな)

姫王子 「気をつけろと言われてもな……」



232 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/16(金) 05:36:25.33 ID:fbuEVU5Fo


キイイイイ バフ ジジジ


鏡の魔女たち 「ほほほ……」

鏡の魔女たち 「もはやわらわにとって世界など、ひととき倦怠を紛らわす、うつろな庭のようなもの」

鏡の魔女たち 「お前たちがどれほど力を尽くしたとて、所詮は夢まぼろしのひとひら」

鏡の魔女たち 「すべてはわらわの心のままに」

鏡の魔女たち 「わらわは鏡の魔女。竜の乗り手。白き西日の左」

鏡の魔女たち 「古の賢樹よりも永く、大いなるもの……」


キイイイイ


姫王子 「……魔女の杖から今にも炎がこぼれそうだ」


キイイイ

ガシャン バリン


子エビたち 「えいっ、やあっ……!」


ア魔エビ娘 「ク魔、かくなる上はオレたちも姿を……」


ク魔エビ娘 「それで乗り切ったとしても混乱が起きる」

ク魔エビ娘 「それに無駄だ」


ガシャ バリリ


傭兵たち 「くそっ、くそっ!」


ガシャ バリン

キイイイイイ


鏡の魔女たち 「さらば、滅びゆく世界の哀れな子どもたち」

鏡の魔女たち 「ほほほほほ」

鏡の魔女たち 「ほほほほほほ……」


キイイイイ


233 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/16(金) 05:54:03.73 ID:fbuEVU5Fo


キイイイ


貝殻の勇者 「………!」


姫王子 「ううっ……」

姫王子 (魔女が杖にたたえる炎が大きく、小さな太陽のように眩しくなった)


ハーピィ 「…………!」


スチャ


ハーピィ 「…………」


姫王子 (ハーピィが変な星型の眼鏡を差し出してきた!)

姫王子 (これをかけろということだろうか。たしかに、黒いし光は防げそうだ)

姫王子 (そんな場合じゃないが)


キイイイイ


…………


ドオン


鏡の魔女K 「…………うん?」


姫王子 (遠くで爆発するような音)

姫王子 (聞き覚えがあるような……)


ヒユルルルルル

ボウン ドゴオオオン


鏡の魔女K 「………!」


貝殻の勇者 「きゃあ!?」


姫王子 「うわ!?」

姫王子 (船のすぐ近くで、何かが爆発した!)


234 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/16(金) 06:07:23.16 ID:fbuEVU5Fo


オオオオ

パラ パラ パラ パラ


ブラウニー 「な、何ですか何ですか!?」


瓶詰め妖精 「あら、綺麗。色んな色の光の粒が雨みたいに」


野生の女 「あー、なんか、故郷の祭りを思い出すなあ」

野生の女 「コボルトの魔法使いが光の兎を出すんだよ」

野生の女 「兎がぴょんぴょん飛び跳ねて、最後は弾けてこんな感じに光の粒になるの」


ニワトコ娘 「じゃあ、これも魔法なのかしら」


野菜鍛冶娘 「いえ、これは……」


クン クン


野生の女 「どうしたの、鼻をひくひくさせて」


野菜鍛冶娘 「クンクン……やっぱり、火薬のにおい」

野菜鍛冶娘 「これ、花火です! 南西地方の!」


235 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/16(金) 06:14:56.05 ID:fbuEVU5Fo


ザワ ザワ


魔法使いA 「な、なんだ……」


クル魔エビ娘 「う、うう……くさい」


円魔法使い 「これは、魔女の魔法なのか……?」

 
魔法使いB 「だとしたら、どんな魔法なのか……」


魔法使いA 「このにおいも罠なのか……!?」


夜魔法使い 「まずいぞ、みんな鼻をとじろお!」


ザワ ザワ


魔ーレラ 「これ、落ち着かんか……」


昼魔法使い 「大魔法使いのろうそく職人どの、何か手はないだろうか!」


ろうそく職人 「!! 大魔法使い……」

ろうそく職人 「……むふー」



236 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/16(金) 06:29:33.08 ID:fbuEVU5Fo


ろうそく職人 「コホンッ……どんな魔法か、分からないのですね」


昼魔法使い 「ああ、分からなくては対策のたてようがない」


老魔法使い 「いや、これは花……」


ろうそく職人 「では、どんな魔法か明らかにしましょう」


夜魔法使い 「おお、できるのか!」


ろうそく職人 「簡単です」

ろうそく職人 「少し待ってください」


魔法使いたち 「おお……!」


ろうそく職人 「…………」


テク テク テク テク……


魔法使いたち 「?」


円魔法使い 「お、おい、どこへ行く……」





……テク テク テク


鏡の魔女 「……………」


ろうそく職人 「すみません、鏡の魔女さま」

ろうそく職人 「このやたら臭いだけの光の粒はあなたの魔法でしょうか」



魔法使いたち 「!?」



鏡の魔女 「違う」


ろうそく職人 「なるほど」

ろうそく職人 「では、失礼します」


テク テク テク テク……



……テク テク テク


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「どうやら、違うようです」


魔法使いたち 「……〜〜〜ッ!!」



237 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/12/16(金) 06:45:16.76 ID:fbuEVU5Fo


ザワ ザワ ドヨ ドヨ


貝殻の勇者 「花火……」


鏡の魔女 「…………?」


姫王子 (魔女にとっても意外だったようだ)


骨頭の竜 「…………」

骨頭の竜 「クロロロロ」


バサ バサ バサ


姫王子 「!」


貝殻の勇者 「竜が雄たけびを……」


姫王子 「雄たけびにしては物悲しいけど」


鏡の魔女 「…………ふん」

鏡の魔女 「どこからかぎつけてきたものか」


238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/16(金) 17:08:20.00 ID:itswstH20
待ってました!
クリスマス直前に花火…うっ頭が…
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/16(金) 19:43:00.53 ID:BaxtSTMAO
これで来年も安泰だ
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/07(土) 17:42:58.40 ID:T2+h8c+r0
待ち
241 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 15:15:22.88 ID:LkCRBUYYo



ザワ ザワ


馬車幽霊 「王子どの」


姫王子 「馬車幽霊どの」


馬車幽霊 「この花火は魔法仕掛けのようです」


姫王子 「そうなのか」


馬車幽霊 「出所を探していたら」

馬車幽霊 「海原、南の方に……」


姫王子 「うん?」



帆船



姫王子 「……船」

242 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 15:36:52.19 ID:LkCRBUYYo


姫王子 「まずいぞ、こちらを向いている」

姫王子 「こちらに来れば、まとめて魔女の餌食だ」


馬車幽霊 「この船が襲撃を受けているのを捉えて、駆けつけてくれたのでしょうか」


姫王子 「だったら不幸だな。まさかドラゴンとは、思ってもいないだろう」


ハーピィ 「…………」



帆船



ザワ ザワ


傭兵 「あそこ……船だ」


槍傭兵 「救援か? しかし一隻では……」


ザワ ザワ



姫王子 「……領旗は見えるかい」


馬車幽霊 「いえ」


姫王子 「オレもだ」

姫王子 「……まさか海賊の火事場泥棒じゃないだろうな」



243 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 15:47:11.32 ID:LkCRBUYYo


馬車幽霊 「だとしたら最悪ですが……」


貝殻の勇者 「あなたたち、少しは目の前の敵に注意を割いてください」


馬車幽霊 「……む」


王子 「何か見えたのかい? オレには分からないけれど」


馬車幽霊 「船から、何かが飛んできます」


王子 「砲弾か」


馬車幽霊 「いえ、鳥ほどの速さです」

馬車幽霊 「見たことのないものです」

馬車幽霊 「船のようですが……何だろう、あれは」


王子 (ちょっとウキウキしてないか)

王子 「空飛ぶ船? 白昼夢かな」


馬車幽霊 「まだ夜ですよ。寝ていないというだけで」

馬車幽霊 「領旗が見えます」

馬車幽霊 「赤に冠と、右下に星の」


王子 「おぼえがある」

王子 「帝国南東地方の旗だ」


244 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 16:12:37.69 ID:LkCRBUYYo


オ オ オ

ヒュオオオ


骨頭の竜 「…………」


鏡の魔女 「良い」

鏡の魔女 「ホホホ……黒き煙の空をゆくか、気に入らぬことよ」



ヒュオオオ



姫王子 (鏡の魔女に動きは無しか。かっこうの的だろうに)

姫王子 (さて……?)


貝殻の勇者 「帝国……! 憲兵隊でしょうか?」


姫王子 「星のある旗は地方領のものだけど」

姫王子 「乗っていないとは言えないだろう」

姫王子 (憲兵隊の何かだとしたら、勇者どのを隠した方が良いか)

姫王子 (しかし、ここで何かすると魔女がどう動くか)


馬車幽霊 「人が乗っています。一人」

馬車幽霊 「憲兵のようには見えませんが……」



ヒュオオオオ

オオオオ


姫王子 「貝殻さん、なるべく見た目通りの可憐な娘のふりをしてくれ」


貝殻の勇者 「いきなり何を……」

貝殻の勇者 「……ああ、そういうことですか」


ハーピィ 「…………」


ヒュオオオオ


空飛ぶ船?


フイイイ



姫王子 (はっきり見えてきた。だいぶ小さい船のようだ)

姫王子 「……本当だ。人が乗っている」

姫王子 「黒い服」

姫王子 「黒か……」



フイイイ

イイイ

ヴヴン

245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/10(火) 22:19:14.10 ID:1s3+wZV50
あけましておめでとうございま乙
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/11(水) 20:13:58.79 ID:EQxyYW/8o
きてたのか
おっつ
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/03(金) 22:32:38.73 ID:QszuT8jIO
続きマダー
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/04(土) 03:58:50.18 ID:BN+CPYuk0
先生はまだゆるゆるとモチ食ってるよ…
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/24(金) 09:45:03.30 ID:dT6j0VOLO
はやはよ
250 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/03/08(水) 20:10:33.69 ID:PJJ8b0NYo


鏡の魔女 「…………」


空飛ぶ船?


姫王子 (木造りの小さな船が、甲板についた)

姫王子 (金属でできた筒状のものから、煙突みたいに黒い煙が上がっている……ひどいにおいだ)

姫王子 (乗っているのは……)


??? 「…………」

寡黙剣士 「…………」


姫王子 「ああ……」


馬車幽霊 「お知り合いですか、王子どの」


姫王子 「まあ、うん」

姫王子 「城にいたころのツテでね……」


カシャン ガラララ

バララ


剣傭兵 「……おお」


槍傭兵 「どうしたんだ、骨の魔物たちが糸が切れたように崩れ落ちた」


大槌傭兵 「我々の勝ち……なのか?」


クル魔エビ娘 「う、うう……」


ろうそく職人 「うむむ、なんでしょう。なんだか頭が痛くなってきましたよ」


魔ーレラ 「魔法使いはとくに、あの煙を、においすら体内に入れぬように気をつけよ」

魔ーレラ 「あれは魔法を殺す」


ろうそく職人 「殺す!」

ろうそく職人 「殺されてしまうのですか!?」


クル魔エビ娘 「ええっ!?」


ろうそく職人 「みなさん、呼吸を止めましょう!」

ろうそく職人 「生き残るすべはそれしかありません!」


魔ーレラ 「落ち着け。魔法を殺すだけじゃ」


魔法使いエビ 「魔ーレラ婆、あれはいったい」


魔ーレラ 「英雄の時代よりも古くに葬られた忌むべきものだ」

魔ーレラ 「まだ絶えてはいなかったか」


251 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/03/08(水) 20:36:24.79 ID:PJJ8b0NYo



ハーピィ 「…………」


姫王子 「……ん」


馬車幽霊 「船にもう一人乗っていたようですね」



ニョコ


??? 「……ふひい」

黒僧侶 「つ、着いたか……?」


寡黙剣士 「…………」


黒僧侶 「やれやれ……この乗り心地にはいまいち慣れない……!」

黒僧侶 「しかし、何ともうさんくさいにおいのする大きな船だ。まさか噂の黒い幽霊船ではないだろうな」

黒僧侶 「……むむ」


鏡の魔女 「…………」


黒僧侶 「……! おお、あれが悪名高き、西の竜山の魔女……」

黒僧侶 「ゴクリ……美しい」

黒僧侶 「い、いや、コホン……禍々しい……」


鏡の魔女 「…………」


寡黙剣士 「…………」

寡黙剣士 「……お迎えにあがりました」

寡黙剣士 「鏡の魔女どの」



252 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/08(水) 22:07:39.90 ID:PJJ8b0NYo


線魔法使い 「何だ、どうなっているんだ。あの不思議な帆の船はなんだ」


点魔法使い 「もう結界は解いても良いのか?」


貝殻の勇者 「迎え……魔女を?」


馬車幽霊 「王子どの?」


姫王子 「ふうむ……」


ハーピィ 「…………」


ザワ ザワ


鏡の魔女 「……ほほほ」

鏡の魔女 「おお、なんと悲しいことだ」


寡黙剣士 「…………」


鏡の魔女 「見ず知らずの人間の若者が、わらわの遊び場へ不愉快なものに乗ってあらわれ」

鏡の魔女 「名乗りもせずに、わらわに口をきいている」

鏡の魔女 「わらわは、この罪深き者どもにしかるべき罰をあたえねばならぬではないか」


黒僧侶 「な、なんと!」

黒僧侶 「なんという口のききかただ! この方はだな……」


寡黙剣士 「黒僧侶どの、良い」


黒僧侶 「しかし……!」


寡黙剣士 「失礼しました。お久しぶりです」

寡黙剣士 「……帝国南東地方領、南東領主の子、黒王子です」

黒王子 「我が父の命により、お迎えにあがりました」


鏡の魔女 「ほほ……はて、黒王子。そんな者もおったかな」


253 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/08(水) 22:52:46.34 ID:PJJ8b0NYo


鏡の魔女 「ふむ……おぼえておらぬ」


黒王子 「……こちらの船の方々とはうまくいっていない様子」

黒王子 「我々の船にお越しになられては」


鏡の魔女 「さて、ふうむ」

鏡の魔女 「ほほほ……嫌じゃ」


黒僧侶 「なっ!?」


鏡の魔女 「輝王子をつれて参れ」

鏡の魔女 「そうしたら、おとなしく乗ってやっても良い」

鏡の魔女 「わらわの可愛い竜たちとともに」


黒僧侶 「なっ、なんというわがまま!」

黒僧侶 「黒王子、我らの船に集めし盛栄と魔法の大砲を見せ付けてやりましょうぞ!」


黒王子 「…………」

黒王子 「兄……輝王子さまは今、本島海上都市にいます」

黒王子 「この季節の風では、ここまで来るには何日とかかるでしょう」


鏡の魔女 「だから、私の方から出向けと?」


黒王子 「我々の船ならば、魔女どのを輝王子さまのもとへ、多少は速く運ぶことができます」


鏡の魔女 「女がわざわざ、男のところへ出向けと」

鏡の魔女 「そう言いたいのか……!」


黒僧侶 「さっさと海賊のような真似をやめておとなしく船に乗れと言っているのだ、この魔女め!」


黒王子 「黒僧侶どの!」


254 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/08(水) 23:13:38.57 ID:PJJ8b0NYo






馬車幽霊 「何やら、もめているようですが……」


貝殻の勇者 「この骨たちは、もう襲ってこないのでしょうか」


竜の骨たち


貝殻の勇者 「……日ごろ思っているのですが」

貝殻の勇者 「獣などの骨は、はたして、魚の小骨などと違って食べられない、残すべきものなのでしょうか」

貝殻の勇者 「もしかすると、じつはとても美味しい食べ方があるのでは……」


姫王子 「勇者どの……」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「王子どの、魔女と話している男と知り合いとのことですが」


姫王子 「さて、どれほど知っているものか」

姫王子 「親同士の親交があるので、顔を合わせることもあったが」

姫王子 「最後に直接会ったのは葉巻と出会うかなり前だし」

姫王子 「あんな魔女の知り合いがいるなんて、聞いたこともなかった」

姫王子 「隣の青年も知らん」

姫王子 (服を見るに、あの宗教の関係者のようだが)


貝殻の勇者 「魔女を迎えに、領主の子が出向くとは」

貝殻の勇者 「領そのものが魔女と手を結んでいるということではないですか?」


姫王子 「裏で、なのか、彼だけが、なのかは分からないが」

姫王子 「敵同士には見えないな」


貝殻の勇者 「ううむ……」


馬車幽霊 「やはり魔女の方が上手のようですが」


姫王子 「あのやりとりの感じには、何故かおぼえがあるな」

姫王子 「領主の息子は厄介なものに振り回される宿命でもあるのかね」


ハーピィ 「…………」


255 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/03/08(水) 23:46:09.45 ID:PJJ8b0NYo


鏡の魔女 「ほほ、よく吠える子どもだ……」


キイイ


黒僧侶 「ふぐっ……!?」

黒僧侶 「〜〜〜! 〜〜〜〜〜!!!」


鏡の魔女 「そうやって汚い口を閉じているが良い」

鏡の魔女 「それとも、わらわ直々に引き裂いて竜の餌にしてやろうか」


黒王子 「契約を果たすまで、我々に危害をくわえないはずでは」


鏡の魔女 「ほほほ……さあて」


黒王子 「違えるつもりならば、こちらもそうしなくてはなりません」


鏡の魔女 「………そなた、わらわを脅すつもりか?」


黒王子 「少なくとも、あなたの欲するものは永遠に失われることとなる」


鏡の魔女 「ほほっ……!」

鏡の魔女 「わらわの欲するものを知っていると言う」

鏡の魔女 「人間が、魔女たるわらわの全てが分かるとでも言いたげな、傲慢な顔をして!」


黒王子 「少なくとも、何を欲しているのかは知っています」

黒王子 「だからこそ、契約は結ばれた」


鏡の魔女 「……ふん」

鏡の魔女 「世界の何も知らぬくせに、あわれで憎いことよ」


キイイ


黒僧侶 「〜〜〜ぷはっ!?」


黒王子 「大丈夫か、黒僧侶どの」


鏡の魔女 「傍におく者には気をつけることだ」

鏡の魔女 「もっとも、その自由がきくほどの力がそなたに与えられているのなら」


黒王子 「…………」


鏡の魔女 「ほほほ……」


256 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/03/09(木) 01:38:01.68 ID:mo3+d4zdo


黒僧侶 「だ……だから反対なのだ、ぼくは……!」


黒王子 「鏡の魔女どの」

黒王子 「我々の船にお乗りいただきたい」


鏡の魔女 「わらわは誰の言いなりにもならぬ」

鏡の魔女 「わらわのすべては、わらわの気分しだい」


黒王子 「…………」


鏡の魔女 「ふふ……さて、どうしてくれようか……」

鏡の魔女 「のう?」


骨頭の竜 「…………」


黒僧侶 「うう、なんと恐ろしい」

黒僧侶 「血のようにべったりとした黒い皮膚に、骨の頭とは」


黒王子 「…………」


鏡の魔女 「……ほほ、そうだな」

鏡の魔女 「酷というものよ」

鏡の魔女 「何の力もない者に、あれこれと言いつけても」


黒王子 「…………」

257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 09:36:58.62 ID:CKP0rjK9O
更新キター
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 19:15:51.55 ID:aiyLDSzL0
はよ嫁エルフはよ
259 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/03/11(土) 02:46:58.03 ID:3Xu7lc8Co




鏡の魔女たち 「ほほほ……」



パリン ガシャン


ク魔エビ娘 「……! 魔女の分身たちが砕け散った……」


悪魔紳士 「さあて? お次は何でしょうな。また骨が立ち上がるのですかな」

悪魔紳士 「たとえばこの……役立たずの鳥の骨とか」


魔カロニペンギンの頭蓋骨


悪魔紳士 「悪趣味なショウを見ているようで、少し楽しみになってまいりましたよ」

悪魔紳士 「ねえ?」


カタ カタ カタ カタ


淫魔幼女 「…………」


悪魔紳士 「失礼、お嬢さんには悪い冗談でしたかな」


淫魔幼女 「おれはおと……」



パリン ガシャン

ガシャン パリン

サララ



鏡の魔女 「……良いだろう」

鏡の魔女 「そなたの船に乗ってやろう」

鏡の魔女 「空を行く竜の背に比べ、劣るであろうが」

鏡の魔女 「これ以上、無能な犬をいじめるようなことをしては、心が痛む」

鏡の魔女 「せいぜい、わらわを退屈させぬよう心がけよ」


黒僧侶 「何という態度。おお神よ、この高慢ちきの魔女に白姫の謙虚さの欠片でもお恵みくださいますよう……」


ボソ


黒王子 「魔女どのを退屈させぬなど「身に過ぎる大任ではありましょうが、尽力いたします」

黒王子 「大切にもてなすよう、領主からも言いつかっておりますので」


鏡の魔女 「ほほ……つまらぬ男よ」



260 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/11(土) 03:02:30.46 ID:3Xu7lc8Co



鏡の魔女 「では、そうだな……おお、そうであった」

鏡の魔女 「さっそく、そなたに頼みたいことがある」


黒王子 「私にできることであれば」


鏡の魔女 「今宵は、わらわの可愛い竜たちが大勢殺されてしまった」

鏡の魔女 「灰にして弔ってやりたいので、骨を集めてもらいたいのだが……」


黒僧侶 「なんと! 骨を拾う!」

黒僧侶 「この船に乗る、いかめしい方々の視線に刺されながら!」


黒王子 「分かりました。さっそくこの船の者に話を……」


鏡の魔女 「ほほ……そう急ぐでないよ、まだ話の途中だ」

鏡の魔女 「……一匹、どうしても見つからぬ」

鏡の魔女 「先ほど、海の中に入ったのだが……どこにいったのやら」

鏡の魔女 「のう? ほほほ……」


261 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/11(土) 03:19:54.07 ID:3Xu7lc8Co


黒王子 「……先に骨を集めましょう」

黒王子 「その間に出てくるかもしれません」


鏡の魔女 「だめだ」

鏡の魔女 「そうであってほしくはないが、死んでおるやもしれん」


黒王子 「…………」


ガサ ゴソ


黒僧侶 「何をされているのですか、黒王子!」


黒王子 「靴は邪魔になる」


黒僧侶 「海に飛び込むおつもりか!」

黒僧侶 「明けぬ海などという邪悪な時に飛び込むなど、愚かに過ぎますぞ!」

黒僧侶 「神もそのような者に慈悲をおかけくださらない!」


黒王子 「承知の上だ」

黒王子 「強い錆び止めの魔法を付与した武器を持ってくればよかったか……」


黒僧侶 「……!」


鏡の魔女 「ほほ……、ちゃんと連れ帰ってくるのだぞ。死体であっても」


黒僧侶 「ふざけるな!」

黒僧侶 「生きたドラゴンを、調教した馬のように連れて帰れと!?」

黒僧侶 「それに浮かんでこない死体を探せとはつまり、海の底で死ねということではないか!」


262 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/11(土) 03:33:44.79 ID:3Xu7lc8Co


鏡の魔女 「できぬと申すか?」

鏡の魔女 「であれば、わらわは退屈のあまりあの船を沈めることになろうな」


黒僧侶 「そんなこと……」


鏡の魔女 「試してみるか?」


黒僧侶 「ぐっ……」


ト ト ト


??? 「あまり、我々の船で好き勝手をしないでほしいね」

ク魔エビ娘 「このトカゲたちの骨を片付けてくれるっていうなら、仕事が減って大助かりだが」


黒王子 「……この船の方々か」


魔ーレラ 「船長は不在じゃがな」


黒王子 「申し訳ない。我々の事情に巻き込んでしまいました」


鏡の魔女 「ほほ……」


ク魔エビ娘 「どこぞの高貴なお方の、申し訳ないの一つで済むものかね」

ク魔エビ娘 「散らばったトカゲの骨を丸ごとお金にかえたって、埋められやしないところだよ」


黒僧侶 「おお、神よ! この海にはなんと、愚か者の多いことか!」

黒僧侶 「黒王子はわざわざ、襲われているお前たちのために……!」


黒王子 「黒僧侶どの」


魔ーレラ 「ク魔、少しお黙り」

魔ーレラ 「やっと嵐が過ぎようというんだ」



263 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/11(土) 04:10:46.50 ID:3Xu7lc8Co


魔ーレラ 「海の中を探すのは我々の方が得意じゃ」

魔ーレラ 「あの男も海の中じゃし、探すのは……」


鏡の魔女 「わらわは、この男に探せと言ったのだ」


ク魔エビ娘 「死ねの間違いじゃないかな」

ク魔エビ娘 「陸の生き物に海で探し物をしろってのは」


黒王子 「海に囲まれて育ちました。陸と同じことです」


ガサ ゴソ


ク魔エビ娘 「勇ましいことで……」



264 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/11(土) 04:25:25.34 ID:3Xu7lc8Co


姫王子 「おいおい……海に飛び込むつもりか」


馬車幽霊 「さすがは、王子どのの知り合いでらっしゃる」


姫王子 「どういう意味かな、馬車幽霊どの」


貝殻の勇者 「は、ハレンチです、男性とはいえ船の上で服を脱ぎ胸をさらすなど……!」


姫王子 「うーむ、あの鍛え方は」

姫王子 「剣だけを振っているわけではなさそうだぞ」


ヒタ


??? 「だが、飛び込んでもらうわけにはいかんな」

ロブスター 「おれの船に不吉がついてしまう」


姫王子 「マスター・ロブ!」

姫王子 (手に剣の欠片のようなものを持っている)


貝殻の勇者 「ご無事でしたか」


ロブスター 「海の男は女性の心配を無駄にすることなどしないのさ、美しいお嬢さんがた」


姫王子 「ドラゴンに一人で立ち向かうなんて無茶をその髭むしって焼いて良いか今なら塩味も効いて良い味を出すだろう」


ロブスター 「はっは、ぜひ風呂場で願いたいものだ」






265 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/11(土) 05:01:50.60 ID:3Xu7lc8Co


ガサ ゴソ


黒王子 「……では、ドラゴン探しに向かいます」

黒王子 「黒僧侶どの、甲板の方はお願いする」


黒僧侶 「ぼく一人で!? いえ、そうではなく、はやくそこから降りるのです、黒王子!」


??? 「そこの黒い坊さんの言う通りだ」

ロブスター 「ドラゴンを探しに海へ飛び込む必要なんざない」


姫王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


黒僧侶 「おお……! 話の分かりそうなのがきた! 神よ感謝します」


黒王子 「あなたがたは……」


ロブスター 「おれはこの船の船長をしている」

ロブスター 「人は、キャプテン・ロブスターと呼ぶ」

ロブスター 「オ、魔ール……」


魔ーレラ 「やっと戻ってきおったか。船をほっぽり出しよって」


ロブスター 「優秀な船員たちがいる」

ロブスター 「さて、南東の貴きご子息よ、そこから降りていただけないか」

ロブスター 「そこは手を乗せる場所であって、素足で踏む床ではない」


黒王子 「お許しいただきたい。海中に消えたドラゴンを探さねばならないのです」


ロブスター 「で、あれば、なおさらだ」

ロブスター 「そのドラゴンはここにいる」


姫王子 「…………」


黒王子 「……? そちらの女性が何か……」


姫王子 (殺すぞ)

姫王子 「ああ、いや……」


ハーピィ 「…………」


黒僧侶 「まさか、その娘どもがドラゴンだと言うのか!」

黒僧侶 「ドラゴンが魔法で人の姿になって人を騙す話を読んだことがあるが……ううむ、たしかにこの二人、美しいがどこか野蛮な野生の気配がしますぞ」

黒僧侶 「そちらの黒い髪の娘など着ている服も破れていろいろはみ出……ゴクリ……コホン!」

黒僧侶 「むむう、その娘がドラゴンなのか!」

黒僧侶 「その娘が!」


姫王子 (殺すぞ)


266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/11(土) 09:12:53.15 ID:pZj0B7Epo
いろいろはみ出てる格好は平常運転だから
逆に露出の少ない可愛い絵きぼんぬ
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 03:14:46.06 ID:T40TQ0j60
待ち
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/30(日) 00:56:23.90 ID:OqQcl6Al0
まだかー
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/30(日) 05:29:50.89 ID:f+nBWxL0O
まとめて更新の方が嬉しいが
270 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/05/10(水) 23:51:12.22 ID:VtxZdKfEo


姫王子 (とは言え、おれもよく事情が分からない)

姫王子 (何となく想像はつくが、指示されたとおりにしてみよう)

姫王子 「これをご覧いただきたい」




何かの欠片


黒王子 「これは……武器の欠片のようですが」


黒僧侶 「いいや、おそらく鏡の欠片では」

黒僧侶 「触ってはなりませんぞ、黒王子どの」

黒僧侶 「触ると呪われる悪魔の道具かもしれない」


姫王子 「なんだと」


黒王子 「鏡……」


鏡の魔女 「…………」

271 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/05/11(木) 01:49:51.33 ID:/XiVbkcLo


ロブスター 「さて、鏡の欠片か割れた眼鏡かは分からないが」

ロブスター 「それが、おれが先ほどまで海中で戦っていた竜の成れの果てだ」

ロブスター 「思い切りきりつけたら、そんなものになっちまった」


黒王子 「この欠片が竜の……」


黒僧侶 「馬鹿な、鏡が竜になるなど」


ロブスター 「そう、馬鹿な話だ」

ロブスター 「この船丸ごと、魔女の鏡遊びに付き合わされていたということだ」

ロブスター 「やれやれ、竜退治の自慢話ができると思ったら、とんだ笑い話だったわけだ」


鏡の魔女 「…………」


黒僧侶 「ううむ……悪名高き鏡の魔女の魔法か」


黒王子 「…………」


姫王子 (この男と話したのはいつ以来か。親父についていったときだから……)

姫王子 (ふむ、もとより暗い男だったが、しばらく見ないうちに一層深刻な顔になっているな)

姫王子 「どうぞ」


黒王子 「いただけるのですか……」


姫王子 (おれだと気づいてないようだ。そりゃそうか。今のおれは髪の伸び散らかった女だ)

姫王子 「海にもぐったきり出てこないドラゴンを探しているのだろ」


黒王子 「…………」


姫王子 (はて、この男はこんなに背が高かったか)

姫王子 (ああ、おれが縮んでいるのか。そういえば、たしかに視界がいつもと違っている)

姫王子 (だとしても、かなり伸びているぞ。肩もがっしりとしている)

姫王子 (おれと変わらないくらいだと思っていたのに……これでは正面きって戦うことはできないな)


黒王子 「…………」


姫王子 「別に呪いのアイテムというわけじゃない」

姫王子 「おれ自身は呪われているようなもんだが。あっはっは……」


黒王子 「…………」


姫王子 (愛想笑いもなしか)


ハーピィ 「…………」


272 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/05/11(木) 01:58:48.62 ID:/XiVbkcLo



黒王子 「…………」


黒僧侶 「受け取ってはなりませんぞ、黒王子」


姫王子 「じゃあ、素っ裸になって海に飛び込んで探すってのかな。おすすめはしないが」


黒僧侶 「くうう、さっきから、乙女とは思えん言葉づかいだ」


姫王子 (そりゃそうだ。女の見た目になったからと言って、おれは葉巻のようにころころと話しかたをかえたりしない)


黒王子 「……失礼ですが」


姫王子 「うん?」


黒王子 「どこかで、お会いしたことはありませんか」


姫王子 (ふむ……)

273 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/05/11(木) 03:13:54.83 ID:/XiVbkcLo


ハーピィ 「…………」


姫王子 「そうやって日ごろ、異性を口説いてらっしゃるのかな」

姫王子 「堅物に見えて、案外……」


黒僧侶 「口をわきまえろ!」

黒僧侶 「黒王子どのが、お前のようなふしだらで汚らわしい格好の女とそのようなことを……」


黒王子 「黒僧侶どの!」


姫王子 (僧侶のくせにひどい言い草だ)


黒王子 「失礼」

黒王子 「私の知る……人物に、あまりに似ていたもので」


姫王子 「どこぞの王子さまにそう言ってもらえるとは光栄だね」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


姫王子 「そうだ。光栄なものか」

姫王子 「さあ、この欠片を受け取って、あなたと親しげなその魔女どのに渡してやっていただけないかな」

姫王子 「あなたからしか受け取りたくないようなので」



274 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/05/11(木) 10:27:46.52 ID:/XiVbkcLo


黒王子 「…………」


姫王子 (怪しまれたかな。まさかおれだと気づかれたか)

姫王子 (高貴な人々の前ではこのように振舞っていたおぼえはないが)


黒僧侶 「あんなものをドラゴンなどと言って、騙そうとしているのかも」


黒王子 「このようなときに、そうする理由があるとは思えない」


黒僧侶 「正義を信仰しないものは、理由なく悪を働くものなのです」

黒僧侶 「そもそも……」


黒王子 「……ありがたく、いただきましょう。黒い首巻きのかた」


黒僧侶 「黒王子どの!」


姫王子 「どうぞ」


275 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/05/11(木) 10:41:08.37 ID:/XiVbkcLo


姫王子 「気をつけてくれよ」

姫王子 「槍の穂先で無いにせよ、指を切るにはじゅうぶんな物だ」

姫王子 「あなたは手袋をしていないし、万が一何かあったら、そこのお友だちに何をされるか分かったものじゃない」


黒僧侶 「ぼ、私をそのような不埒な輩と一緒にするな!」


黒王子 「お気遣い、感謝します」


姫王子 (相変わらず、疲れる性格をしているようだ)


鏡の魔女 「…………」


姫王子 「ん?」


キイイイ


黒王子 「欠片が」


姫王子 (光りだした……)


黒僧侶 「離れなさい、黒王子どの」

黒僧侶 「やはり罠だったのです!」


姫王子 「いや、違う……」


黒僧侶 「何と言うことだ。どこからか帝国に情報が……」


黒王子 「黒僧侶どの!!!」


黒僧侶 「……っ」

黒僧侶 「と、とにかく、その娼婦のような女から離れるのです!」


姫王子 「ぶん殴るぞエロ坊主」

姫王子 (今度から、この手の話で葉巻をからかうのはやめよう……)


276 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/05/11(木) 10:52:07.57 ID:/XiVbkcLo


キイイイイ


姫王子 (魔女のしわざか?)


鏡の魔女 「…………」


キイイイイ



ゴト ガタガタ カタカタ


魔法使い 「甲板に散らばる竜の骨が、いっせいに音をたてて震えだした」


双剣傭兵 「まだ何かあるっていうのか……?」


円魔法使い 「そうだ、ろうそく職人どの!」


線魔法使い 「おお、そうだ! 彼女ならこの奇怪な現象について何か知っているに違いない!」


ろうそく職人 「え?」


戦士たち 「大魔法使いろうそく職人どの」

戦士たち 「これはいったいどういうことなのでしょうか!」


ろうそく職人 「え……ええと……」

ろうそく職人 「コホンッ……」

ろうそく職人 「みなさま、うろたえてはなりません」

ろうそく職人 「まずは何が起きているのか、よおく観察するのです」

ろうそく職人 「さすれば、道はひらけるでしょう」


戦士たち 「おお……!」



277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/11(木) 13:58:13.74 ID:l8wM7JaOO
ろうそく職人の癖に未知のものに対するまともな対応しやがって乙
278 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/05/11(木) 16:37:03.94 ID:/XiVbkcLo


カタ カタタタタ

キイイイイ


姫王子 (甲板に散らばる骨が、おれの手の上の欠片と同じように輝きだした)


フヨ バシュン


姫王子 「…………!」


鏡の魔女 「…………」


姫王子 (ふわりと浮いたと思ったら、矢のように魔女のもとへ集まっていく)


キイイイ

カチャカチャカチャ


鏡の魔女 「…………」


黒僧侶 「姿見……」


姫王子 (一枚の鏡が、おびただしい数のドラゴンに化けていたのか)

姫王子 (すべて、魔女の手のひらの上か)

姫王子 (これはひょっとすると、先生や葉巻でも太刀打ちできないレベルじゃないのか)


骨頭の竜 「…………」


姫王子 (すべて鏡だったというわけでもないのか)



ザワ ザワ


淫魔幼女 「…………」


悪魔紳士 「なるほど、まさか鏡の欠片相手に剣をふるっていたとは」

悪魔紳士 「なかなか格好つかない話です」


ペンギンの骨


悪魔紳士 「しかしどうやら、これは本物の骨のようで」

悪魔紳士 「ドラゴンと比べたら落ちますが、貰っておくとしましょうか」


淫魔幼女 「…………」


悪魔紳士 「はっはっは……」


279 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/05/11(木) 16:49:22.86 ID:/XiVbkcLo


姫王子 (……では、葉巻にとらわれ血肉とされていたドラゴンたちは)

姫王子 (いったい何だったのだろうか)


カチャ カチャ

キイイ


鏡の魔女 「つまらぬ」


黒王子 「…………」


鏡の魔女 「ふん……」


キイイ

ゴオオオ


姫王子 (鏡が一瞬炎に包まれて、炎もろとも消えてしまった)

姫王子 (魔法だとして、ではろうそく職人も、あんなことができるようになるのか?)

姫王子 (だとしたら、おれも魔法を学んでみたいものだが)



ロブスター 「自分で散らかしたものを自分で片付けるとは」

ロブスター 「なかなか行儀の良いことだ」


ク魔エビ娘 「甲板を掃除する手間は省けたけれど」

ク魔エビ娘 「あとに残る、悪い夢を見せられていたような嫌な気分が際立ってしまうね」



280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/14(日) 20:03:43.01 ID:h++TFUNLO
王子はこのままか
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/28(日) 01:30:00.55 ID:66M7+b480
いいぞいいぞ
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/23(金) 03:20:05.72 ID:rFZs/4u10
待ち
283 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/07/11(火) 10:41:23.20 ID:hQpPvQ77o


ザワ ザワ


魔法使い 「鏡……あの恐ろしいドラゴンどもが鏡だったと言うのか……」


双剣傭兵 「まるで夢を見せられていたようだ」


円魔法使い 「ああ、悪い夢だ」

円魔法使い 「学院中の魔導書の内容はほとんど頭に入れてきたのに」

円魔法使い 「分からないことだらけだ……」


斧傭兵 「夢なものか!」

斧傭兵 「見ろ、この兜のへこみを! 竜の尾を受け止めたときについたものだ」

斧傭兵 「はっきりと残っている!」


狩人 「あんたの兜なんて元々、ばあちゃんちの鍋みたいにベコベコだったろ……」


大槌の傭兵 「受けた傷も残っている。大怪我を負って船内に運び込まれたのも大勢いる」

大槌の傭兵 「その戦いの結末が、こんなもので良いのか」

大槌の傭兵 「いや、良くはない! あの魔女めの頭蓋を叩き潰し船首に掲げるべきだ!」


284 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/07/11(火) 18:20:46.10 ID:hQpPvQ77o


荒くれ傭兵たち 「魔女を捕えろ! ひん剥け! 引きずりまわして殺せ!」


魔法使いたち 「長引く戦いでもはや魔力は尽き、外の魔力も薄く、結界もガタガタだ」

魔法使いたち 「そして黒い煙。これ以上やれば、被害は計り知れないものとなる」

魔法使いたち 「戦いは終わりにするべきだ」


槍傭兵 「よく考えてみれば、不自由なのは向こうも一緒なんじゃないか? 魔女一人と骨頭の羽つきトカゲ一匹」

槍傭兵 「皆でかかれば、討ち取れたりするかもしれないぞ?」


点魔法使い 「そんな馬鹿な。魔女があれ以上の術を繰り出してこないと?」

点魔法使い 「魔力が弱まったこの場において、こともなげに杖をふるう化物だぞ」


荒くれ傭兵たち 「ええい、臆病者のヒョロもぐらめ!」

荒くれ傭兵たち 「後ろに隠れてブツブツ念じるだけの者どもめ!」

荒くれ傭兵たち 「我らがお前たちの盾となり、どれほどの許しがたい痛みを負ったと思うのだ!」


術士ドワーフ 「鏡の魔女を我々と同じ物のように考えてはいかん」

術士ドワーフ 「あれは白き西日の左。忘れ去られるはずだった影。万年を経て残る英雄の時代のゆらめき」

術士ドワーフ 「もはや自然そのもの。気まぐれに山村を焼き、船を飲み込み、田畑を押し流す」

術士ドワーフ 「あれのもたらした痛みに、今は怒るな。痛みに耐え抜き命があることを、何よりの勝利とするべきだ」


ろうそく職人 「たぬき」


荒くれ傭兵たち 「今さら英雄の時代か!」

荒くれ傭兵たち 「そんなもの、おとぎ話だ」

荒くれ傭兵たち 「老いぼれの臆病者のチビめ、説教なら土の下でやりやがれ!」


半熟魔法使い 「あ、あんたたちだって、さっきまで疲れ果てて尻込みしていたじゃないですか」

半熟魔法使い 「もう忘れたっていうんですか!」


荒くれ傭兵たち 「何をー!」











285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/11(火) 23:51:28.90 ID:2yCKkpsvO
おわり?
286 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/07/12(水) 07:39:39.28 ID:dGjxhhC0o


ギャアギャア

ワア ワア



黒王子 「…………」


黒僧侶 「おお、嘆かわしい」

黒僧侶 「黒王子どの、この船には野蛮人しかおりません」

黒僧侶 「さっさと我らが船へ戻りましょう。合図の狼煙を上げますぞ」



狼煙筒(緑)


シュポ ジジジジジ

パチ パチ パチ



貝殻の勇者 「これが、帝国大陸で一番華やかと言われる、南東の狼煙筒ですか」


鏡の魔女 「…………」


黒僧侶 「だからぼくは反対したのだ」

黒僧侶 「よりによって魔女を……なぜに教会はあんな決定を……」


ブツ ブツ グチ グチ

ジジジジジ


黒王子 「黒僧侶どの……!」


黒僧侶 「ブツブツ……え?」


バシュ ジジジ

シュバシュバシュバ


黒僧侶 「うわあああ!? 狼煙筒が……!」


287 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/07/12(水) 08:01:51.69 ID:dGjxhhC0o


甲板 船首側



ギャア ギャア



姫王子 「なんだろう、また騒がしくなったな」


馬車幽霊 「やはり魔女を討つかどうか、で、もめているようですね」


姫王子 「まだそんな気力があるのか」

姫王子 「ドラゴンや魔女を相手に戦い抜いた自信が、そうさせるのだろうか」

姫王子 「さすがは、ここまで甲板に残った猛者たちか……」


ハーピィ 「…………」


姫王子 「む」



黒い髪飾りの白骨



姫王子 「あったぞ、葉巻の白骨死体だ」

姫王子 「綺麗に残っている」


馬車幽霊 「これで、船中の目をお嬢様の本体からそらすことができるでしょう」


姫王子 「ふうむ、本物の骨のようだ」

姫王子 「……けっこう小柄だな」

姫王子 (仕組みは分からんが、葉巻本来の姿と関係があったりするのかな……)



バシュンッ

ドオン



姫王子 「!?」

姫王子 「何の音だ」


288 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/07/12(水) 10:51:22.06 ID:dGjxhhC0o


シュゴオオオ


馬車幽霊 「船長どのや小者くさい僧侶どののいるあたりからですね」


王子 「あれは……火花が空へふいているのか? くそっ、また魔女が何か始めたのか」


馬車幽霊 「ふむ……」


シュババババ

バチ バチ

ユラ ユラ


王子 「おい、火花が何か空に模様が現れたぞ」

王子 「まずいんじゃないのか、これは……」


ゴ ゴ ゴ ゴ

ユラ ユラ


光のカーテン


ユラ ユラ


王子 (妖しい光が、薄いカーテンのように船の空を覆って揺れている)


ハーピィ 「…………」


王子 (ハーピィが光に見とれている)

王子 「馬車幽霊どの、これは魔女の魔法なのか」


馬車幽霊 「おそらく」

馬車幽霊 「どうやら破壊的なものではありません」

馬車幽霊 「威嚇のようなものなのかも」


王子 「まだ戦う力は残っているぞ、ということか……」

289 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/07/12(水) 11:19:39.96 ID:dGjxhhC0o


馬車幽霊 「もしくは、実は我々が思うほどの余裕がないのかも」


王子 「そうか。うーん……」

王子 「夜明けの空に揺れる光。おぞましくも、幻想的ではあるな……」



ユラ ユラ ユラ



ハーピィ 「…………」


王子 (ハーピィ、すっかり元通りのようだな)

王子 (良かった、良かった)

王子 「さてと、さっさと骨を回収しておくか……」


クラ


王子 「ううっ?」


グラリ


王子 (世界と頭がグルリと回る。気持ちが悪い)

王子 「ハーピィ、馬車幽霊、まずいぞ、やはり魔女の……」


ハーピィ 「!」


馬車幽霊 「王子どの?」


王子 「魔法……」


ドサッ


王子 (…………)

王子 (…………)

王子 (……)


290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/12(水) 18:12:46.10 ID:Jmsl2ywXO
大変でごじゃる!エビ茹で姫が倒れたでごじゃる!
291 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/07/12(水) 21:02:55.17 ID:dGjxhhC0o


…………


???



姫王子 「…………」

姫王子 (……声が聞こえる)




ロブスターの声 「……確かに、君が我々に貸し与えてくれた札が結界を強め」

ロブスターの声 「船に乗り合わせた多くの者の命を救う助けとなったことは認めよう」


淫魔幼女の声 「失礼ながら、船長」

淫魔幼女の声 「今回の魔女襲撃において、あの腐敗の魔法こそが最たる脅威であったのです」

淫魔幼女の声 「あれを防げていなければ、甲板でドラゴンや魔女と戦うことすら出来なかったでしょう」
 



姫王子 (ロブスター船長と……あの不吉な商人か)




悪魔紳士の声 「どうでしょうな。たしかに、小さな商人どののおかげで船は守れたかもしれませんが」

悪魔紳士の声 「しかし、その船が内側から敵の手に落ちていたとしたらどうでしょう」

悪魔紳士の声 「城下を駆けずり回って黒き魔物どもを駆逐した私の働きも、もう少し見直されるべきでは?」


ロブスターの声 「よくも抜け抜けと言えたものだ」

ロブスターの声 「ヤマネコが、自ら放ったネズミを自ら狩るか」


悪魔紳士の声 「はて、次は小エビも良いでしょうな」


魔ーレラの声 「体を壊すぞ」




姫王子 (……ここは、どこなんだ)



292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/20(木) 17:17:40.53 ID:lAR47DGCO
葉巻早く戻ってきて
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 18:20:31.60 ID:Sc2+J5obO
はよはよ
294 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/07/26(水) 18:44:44.20 ID:hpnOI0Eao



淫魔幼女の声 「…………」


ロブスターの声 「なぜそれほどまでにあの杖を欲するのかな。抜け目のないお嬢さん」


淫魔幼女の声 「……失礼ながら船長、私はお嬢さんではありません」

淫魔幼女の声 「私は旅商人。仕入れのため、秘境や魔境など、危険に飛び込まねばならぬ仕事なのです」

淫魔幼女の声 「そんな場所に、得体の知れない魔法や呪いのたぐいは欠かせぬもの」

淫魔幼女の声 「また、品物が希少なものの場合、他者と争わなければならないこともあります」

淫魔幼女の声 「魔法使いを相手取らねばならないことも少なくはない」

淫魔幼女の声 「あの魔法殺しの杖があれば、どんなに助かることでしょう」


ロブスターの声 「魔法殺しか……」

ロブスターの声 「しかし私としては、うちの小さな乗組員と同じくらい幼なそうな君が危険に飛び込む手助けを」

ロブスターの声 「したくはないというのが本音だがね」


淫魔幼女の声 「……お譲りいただけないということでしょうか」


ロブスターの声 「そこまで手元に置いておきたいものでは無いのだがね」

ロブスターの声 「むしろ無い方がありがたい」

295 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/07/26(水) 18:58:42.96 ID:hpnOI0Eao


ロブスターの声 「なるほどたしかに、あの杖は魔法殺しと言って良い」

ロブスターの声 「敵が強力な魔法使いであるほど、その力を発揮するだろう」

ロブスターの声 「そしてあの杖を作ることのできる者は、この世に誰もいないだろう」

ロブスターの声 「だからこそ、あまり世に放ちたくないのだ」

ロブスターの声 「噂とは手ですくう水のようなもの。君が持ち歩けば、きっとその身にいらぬ危険が降りかかることになるだろう」


淫魔幼女の声 「…………」


ロブスターの声 「あの鏡の魔女のような悪しき魔法使いや、よからぬ企みを持つ者の手に渡れば」

ロブスターの声 「大きな悲劇を巻き起こすかもしれない」

ロブスターの声 「一つの宝石が、国ひとつを傾けたという話もある」



姫王子 (杖……)


296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/04(金) 17:45:33.52 ID:Uo5oeg3XO
はよはよ
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/30(水) 22:03:22.20 ID:tHh3oI5PO
ワッフルワッフル
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/31(木) 01:46:04.88 ID:6Zje/6w8o
間が開きすぎると話を忘れる
話は面白いんだけど…
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 14:58:56.63 ID:aK55TU8gO
あなたは続きを書きました
300 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/24(日) 23:11:32.84 ID:R8OwrII4o


姫王子 (杖とは、おれが初めて船長室を訪れたときにク魔エビ娘が使っていた、あの杖だろうか)

姫王子 (思えば、葉巻やほかの魔法使いの持っていた杖とどこか雰囲気が違っていたような)

姫王子 (いなかったような……)


悪魔紳士の声 「頑なですなあ、相変わらず」


ロブスターの声 「お互い様だ」


淫魔幼女の声 「…………」


姫王子 (戦いの報酬でもめているらしいが)

姫王子 (おれはどうするべきなのだろうな)

姫王子 (……まあ、このまま寝ている方が良いのだろうな)

姫王子 (もめている三人ともに、大なり小なり借りがある)


301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/25(月) 02:15:04.50 ID:1+0jB60N0
MOTTO!MOTTO!
302 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/25(月) 07:26:36.75 ID:BVJI1tB2o


姫王子 (強力な魔法のアイテムの厄介さは身をもって味わった)

姫王子 (ロブスター船長のもとで眠らせておくのが良いとは思うが)

姫王子 (胡散臭い紳士どのはともかく、小さな黒い商人には大きな借りがあるし、相談も受けてしまったし、話がこじれそうだ)

姫王子 (うん、やはりここは眠っておこう)

姫王子 (寝起きでハーピィを伴って渡り合うには厳しい相手だろうし…………)

姫王子 (ハーピィはどこだ?)


ムニ


姫王子 (……なんだか、少し苦しいぞ)

姫王子 (重たい毛布だと思っていたが、もしや)


ムニ


姫王子 (乗っている。これはきっと、乗っているな)


303 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/25(月) 13:55:15.95 ID:BVJI1tB2o


姫王子 「う……」


ハーピィ 「…………」


ムニ


姫王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


姫王子 (ハーピィがおれの胸に頭を置いて寝ている)


魔ーレラ 「ほれ、お前たちがもめているから病人が起きてしもうた」


姫王子 (若きマーレラ婆……)

姫王子 (船長室の天井……)

姫王子 (ここはベッドの上か)


ハーピィ 「…………」


ムニ ムニ


姫王子 (ハーピィは何をしているんだろう)

姫王子 (おれの胸の上で頭を転がして)


304 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/25(月) 14:01:40.56 ID:BVJI1tB2o


ハーピィ 「…………」


ムニ ムニ


姫王子 (納得いかないといった様子だ)


魔ーレラ 「お前の名前は何じゃ」


姫王子 「………名前」

姫王子 「王子だ」


魔ーレラ 「名前を鏡に奪われはしなかったようじゃな」

魔ーレラ 「生まれは?」


姫王子 「帝国の……どこかだよ」


魔ーレラ 「むう、生まれた場所は忘れてしまったか」


姫王子 「あ、いや、そうじゃなくてね……」


魔ーレラ 「お前の真実の一部を鏡に奪われるまでのことは憶えておるか?」


姫王子 「ああ。奪われたあとのことも」


魔ーレラ 「ふむ」

305 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/25(月) 14:11:28.12 ID:BVJI1tB2o


ハーピィ 「…………」


ペタ ペタ


姫王子 (ハーピィが心配そうに、黒い羽で頬を撫でてくる)

姫王子 「ありがとうハーピィ。大丈夫、大丈夫だよ」


ハーピィ 「…………」


ロブスター 「まだ安心するのは早い」

ロブスター 「どんなに大事な記憶も、なくしてしまえば、その記憶が大事であったことさえ忘れてしまう」


姫王子 (その場合、ハーピィはどう反応するのだろう)

姫王子 (おれがそう思い込んでいて、じつは記憶違いだったことに対して、見抜いてくれるんだろうか)

姫王子 「大事な記憶か……」

姫王子 「おれが男の中の男であることとか?」


ロブスター 「はっはっ、言いやがるな、我が弟子め」


306 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/25(月) 14:25:00.98 ID:BVJI1tB2o


魔ーレラ 「冗談を言う元気はあるようじゃな」


姫王子 「冗談じゃなくてね……」

姫王子 「ああ、記憶といえば」

姫王子 「おれは、どうしてここにいるんだろうか」

姫王子 「甲板の上で魔女と戦い抜いたことは憶えているんだけど」

姫王子 「そこから今までが判然としない」


ロブスター 「結んだ荷がほどけ崩れるように倒れたのさ」

ロブスター 「溜まっていた疲れにやられたのだろうとは思ったが」

ロブスター 「名高くも謎多き真実の鏡の魔力を受けていたというから、そのせいかと慌てたものだ」


姫王子 (真実の鏡……)

姫王子 「ふむ……」


淫魔幼女 「…………」


悪魔紳士 「健やかなお目覚め、めでたいことですな」


姫王子 「……大事な話の途中だったようだ」

姫王子 「もう少し、寝ていた方が良かっただろうか」


悪魔紳士 「いえいえ」

悪魔紳士 「美女の目覚めなど、私のようなつまらない男では、そうそうお目にかかれるものではございませんのでね」


姫王子 「はっは……」

307 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/25(月) 14:37:43.09 ID:BVJI1tB2o


姫王子 「黒王子が空飛ぶ船でやってきたのは、夢ということかな」


ロブスター 「いや…


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


姫王子 「ありがとうハーピィ」

姫王子 「夢ではないようだね」

姫王子 (鏡の魔女と、少なくとも敵対していない様子だったことも)

姫王子 (……南東地方か)

姫王子 「うっ……!?」


グラリ


ロブスター 「どうした。頭が痛むか」


姫王子 「あ、ああ……いや……これは……」

姫王子 「記憶……?」


ロブスター 「なに」


魔ーレラ 「何かの弾みで、忘れていた記憶が甦りかけているのかもしれん」

魔ーレラ 「ある魔法をかけたときに、それとまったく反対の現象がおきてしまうことがある」

魔ーレラ 「特殊な条件が重なった上で稀に起こるというが」


姫王子 「……館、古い……大きな、館……」


ロブスター 「館? 館がどうした」


魔ーレラ 「あまり外から刺激するな」


姫王子 「……寝室……ひまわりの種……大きなベッド……」

姫王子 「の下に………大量の……」

姫王子 「似顔絵……」

姫王子 「ううぅ……!!」






308 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/25(月) 17:06:47.69 ID:BVJI1tB2o


姫王子 「はぁ、はぁ……」


魔ーレラ 「そこまでにしておけ」

魔ーレラ 「なくした記憶を無理に呼び起こそうとすると心身への負担が大きい」

魔ーレラ 「あまり無理はせんことじゃ」


姫王子 「あ、ああ……」


ハーピィ 「………!」


ビクッ


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「大丈夫ですか。変わり果てた姿になられて」


姫王子 「……やあ、商人どの」

姫王子 (ぶどうを煮詰めたような色の液体が入った瓶を持っている)

姫王子 (ハーピィがおびえている……)


淫魔幼女 「忘れ薬です」

淫魔幼女 「あまり長くはもちませんが、魔法使いに呪文を忘れさせる程度のことはできます」

淫魔幼女 「記憶の混乱による頭痛も和らげることができるでしょう」


309 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/25(月) 17:20:56.29 ID:BVJI1tB2o



淫魔幼女 「あなたのいた地方で流行っていた薬に似ていますが」

淫魔幼女 「副作用はありません」


キュポンッ


淫魔幼女 「どうぞ。香りをかぐだけで効果があります」


姫王子 (葉巻の売りさばいていた薬か)

姫王子 (あれは確か粉状だったな)

姫王子 「どうも。どれどれ……」


クンカ クンカ


姫王子 「………おお」

姫王子 「澄んだ風が一筋通ったようだ。何だか、頭がすっきりした」


淫魔幼女 「それは良かった」

淫魔幼女 「二十年に一度しか摘めない花からつくられた、特製の薬ですから」

淫魔幼女 「効いてもらわねば困りますが」


姫王子 「……いくら?」


淫魔幼女 「とんでもない」

淫魔幼女 「最も脅威であったあの化物をしずめたあなたです」

淫魔幼女 「このくらいは当然のこと」

淫魔幼女 「もっと珍しいアイテムでも、ためらわず使わせていただきます」


姫王子 (……そういうことか)


310 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/25(月) 17:29:39.62 ID:BVJI1tB2o


淫魔幼女 「……それとは、うまくやっているようですな」


ハーピィ 「…………」


姫王子 (うかつな。まあ良いか)

姫王子 「ああ」


悪魔紳士 「ふむ。小さな商人どのと麗しき女剣士どのは、古いお知り合いなのですか」


姫王子 (女剣士……いちいち否定しても仕方ないか)

姫王子 「……まあ、日は浅いけれど、何かとお世話になっているね」

姫王子 (一度、自分の姿をよく鏡で見ておかなくてはな)

姫王子 (全身、隅々まで……)


悪魔紳士 「もしや、首輪をつけたそのお嬢さんは商人どのから?」


姫王子 (そら来た)

姫王子 「まあ、ね」


311 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/25(月) 17:41:36.10 ID:BVJI1tB2o


悪魔紳士 「いやあ、手広いですなあ」

悪魔紳士 「人身売買までやっておられるとは」


ロブスター 「ふむ」


淫魔幼女 「なりふり構っていられないのです」

淫魔幼女 「本当は私も、アイテムだけを扱いたい」

淫魔幼女 「頼もしい装備があれば、後ろめたい商売から足を洗って大冒険だけをしていられるのですが」


悪魔紳士 「おやおや……」


ロブスター 「大冒険か」


魔ーレラ 「何も、大冒険せんでも良いじゃろうに」


淫魔幼女 「何度も言いますが、私はお嬢さんではない」

淫魔幼女 「わけあって」この姿ですが、心は立派な男なのです」

淫魔幼女 「宝を求めて危険に飛び込む生き方しかできないのです」


ロブスター 「不器用なお嬢さんだ」


淫魔幼女 「…………」


312 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/25(月) 17:46:38.71 ID:BVJI1tB2o


姫王子 (やれやれ、話はもつれそうだな)

姫王子 (なあ、ハーピィ)


ナデ ナデ


ハーピィ 「…………」


スリ スリ

ムニ


姫王子 (おれのために怒ってくれたのだなあ。ありがたいことだ)

姫王子 (もう二度とないように心がけなくては)


ナデ ナデ


ハーピィ 「…………」


姫王子 (………葉巻はどうしているんだろうか)



313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 08:09:06.18 ID:dwGmG97Zo

更新きて嬉しい
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 03:29:03.89 ID:pKkH0hVO0
たまーに見ると更新来てていいな
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/01(水) 03:34:52.30 ID:BGJiyuHb0
待ち
316 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/11/29(水) 01:05:52.22 ID:zwoZ1RE9o




姫王子 (ちゃんと、甲板に残した骨があいつの死体だということになっているんだろうか)

姫王子 (他の乗客に生きていると知られたら、厄介なことになるぞ)

姫王子 (最悪、葉巻を殺そうとする者も現れるかもしれない)

姫王子 (……ここにいる者たちはどうなんだろうか)


淫魔幼女 「じゃあ……私は故郷に、役立たずで飲み食いばかり六人前の、養わねばならない幼い家族がいるのです」


姫王子 (淫魔幼女か……どこまで知っているのやら)

姫王子 (大恩あるし、できれば敵に回したくないが、油断ならない相手だ)


魔ーレラ 「何じゃ、泣き落としか」


姫王子 (若きマーレラ婆。ロブスター船長がよく意見を求める相手だ)

姫王子 (魔法の心得があるから、葉巻の秘密に何か気づいているかもしれない)

姫王子 (彼女も油断ならないな)


悪魔紳士 「唐突ですなあ」


姫王子 (紳士どの)

姫王子 (船内の魔物たちを相手に一人で立ちまわり、甲板でも傷一つなく戦い抜いた)

姫王子 (帝国で活躍する勇者たちの噂には好意的なようだが)

姫王子 (ハの字の口ひげが油断なら無いな)


ロブスター 「幼い家族か……」


姫王子 (ロブスター。マスター・ロブ。おれの剣の師匠の一人だ)

姫王子 (器の大きな海の男だ)

姫王子 (しかしおれがこの身体になってからわずかの間に、もう何度か肩を抱かれた)

姫王子 (不覚にも、大きく厚く、そして荒々しいようで暖かい手にちょっと安心感をおぼえてしまった)

姫王子 (油断ならない相手だ)


317 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/11/29(水) 01:53:59.26 ID:zwoZ1RE9o



姫王子 (立場の違いは視点の違い。そんな者たちが集まった場所でうかつなことは喋れないぞ)

姫王子 (おれと葉巻の関係を知っているのは……全員だな。おれとあいつが一緒にいるところを一度は見られている)

姫王子 (おれの姿が変わっているとはいえ、唯一無二の愛らしさと美しさを兼ね備えたハーピィが傍にいるし)

姫王子 (何しろおれの男としての存在感は隠し通せるものではない)

姫王子 (おれが王子であるということは容易に想像できるはずだ)


ハーピィ 「…………」


姫王子 (杖を巡る三つ巴に乗じて、それとなく葉巻のことを探ってみるか?)


淫魔幼女 「…………」


姫王子 (……しかし、そうなると、おれも意見を求められるだろうな)

姫王子 (おれの一言に力は無いのだろうが、おれが誰の味方につくか明らかになってしまう)

姫王子 (もしうまくはぐらかせても、それぞれから不信を買うことになるだろう)

姫王子 (…………)


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