にこ「きっと青春が聞こえる」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

678 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2017/07/22(土) 10:36:02.62 ID:rN0RYkWfO

 放課後音楽室に引きこもる日課は、私のスケジュール帳から消え去った。

 ううん、違うわね。

 自分で、消した。

 私が楽曲提供してるアイドル研究部の扉を、自分のこの手で叩いたから。

 正直なんでそんな暴挙に出たのか自分でもよくわからない。

 そもそも――私はなんで彼女たちに楽曲を提供していたの?

 それすらもなぜか曖昧。

 だけど、ただ。

 ひとりぼっちで諦めているだけの3年間には、したくないって思えたから。

 卒業するときに振り返ってみて、宝石みたいに輝く時間を作りたかったから。

 ――って、なに恥ずかしいこと考えてるのかしら。ばかばかしい。
679 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2017/07/22(土) 10:36:29.95 ID:rN0RYkWfO

花陽「だけど真姫ちゃん、本当にその曲好きだよね?」

凛「そうそう、しかも同じフレーズばーっかり繰り返してるにゃ」

花陽「それに自分で作った曲なんでしょ? すごいなぁ……」

真姫「……違うわ」

花陽「え?」

真姫「たしかに曲自体は自分で作ったものだけど、このフレーズは――」

真姫「このフレーズだけは、誰かからプレゼントしてもらったような……そんな気がするの」

真姫「名前も覚えていない、誰かに……」

 そこまで言って、ぽかーんとしてる二人の表情に気づく。

 いけない。つい変なこと口走っちゃった。
680 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2017/07/22(土) 10:37:25.39 ID:rN0RYkWfO

真姫「ご、ごめん、気にしないで。たぶんただの気のせい――」

凛「ううん、そんなことないよ!」

真姫「え?」

凛「凛とかよちんもね、話してたんだ」

凛「凛たちがアイドル研究部に入ったのって、なんでだろう、って」

真姫「入った、って――あなたたちが作ったんじゃないの?」

花陽「それが……よくわからないの」

花陽「たしかに今いるメンバーの最古参は私と凛ちゃんなんだけど、だけど私たちが作ったわけでもないの」

凛「じゃあ凛たちどうやって入ったんだっけ? てお話してるんだけど、全然思い出せないんだにゃ……」

真姫「…………」

 まさか、こんなに身近に私と同じような違和感を覚えてる子がいるだなんて。

 正直、驚きを隠せなかった。
681 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2017/07/22(土) 10:38:16.01 ID:rN0RYkWfO

花陽「それにね、希ちゃんが言ってたの」

花陽「私たち8人でユニット組んだでしょ? あの――」

真姫「――μ's、よね?」

花陽「うん、そう。だけどね、それって神話に出てくる女神さまの名前らしいんだけど」

花陽「その女神さまって、本当は9人いるはずなんだって」

花陽「1人足りないねって話してたら、気づいたの」

花陽「そもそもこの名前をつけたのって――誰? って」

真姫「……なによ、段々ホラーじみてきたんだけど?」

花陽「あ、そういうわけじゃ……」

真姫「考えてもしかたないんじゃない? というか、私は考えないことにしたわ」

真姫「だって思い出せないんだもの。考えたってしょうがないわ」

花陽「うーん……それはそうなんだけど……」
682 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2017/07/22(土) 10:39:13.31 ID:rN0RYkWfO

凛「――っていっけない! もう練習始まってる時間にゃ!」

花陽「え? ――あああああああ!」

凛「急がないと海未ちゃんカンカンだにゃ!」

花陽「そ、そうだね……真姫ちゃんもはやく!」

真姫「あ、ちょっと待ちなさいよ――」

 慌てて教室を飛び出ていく二人の背中を追いかけようとした、その時。

 ビュウゥゥゥ!

真姫「きゃっ!」

 窓の外から吹き込んだひときわ強い風が背中を押す。

 夏の色を感じさせるその風に、思わず振り向いて。

真姫「――――」

 なぜかしら。

 そこに、誰かの気配を感じた。
683 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2017/07/22(土) 10:39:40.31 ID:rN0RYkWfO

 だから、ってわけじゃないけど。


 誰もいないそこに向けて。


真姫「――――♪」


 私はもう一度だけ、大切な誰かからもらったそのフレーズを、口ずさんだ。
684 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2017/07/22(土) 10:40:18.02 ID:rN0RYkWfO







      昨日に手を振って ほら――前向いて






685 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2017/07/22(土) 10:41:30.22 ID:rN0RYkWfO
以上で終了です、長い間お付き合いいただきありがとうございました。
ぐだぐだした挙句ミスも多く申し訳ないです。
次はまたどこか別のスレで
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 11:46:02.28 ID:lh35cy4SO
ファンタジー色が強い
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 11:47:59.43 ID:51pCRKjpO
乙乙!
真姫ちゃんsideのμ'sにはいずれあのにこちゃんが加入してくれるって信じてる
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 14:30:57.55 ID:gohz3Y7lo
乙です
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 00:52:31.34 ID:jGrRIDbao
乙乙
最初に想像したのとは全然違ったけど面白かったよ
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 20:19:03.64 ID:DY9IRR4dO
完結してたのね、乙
やっぱきっと青春が聞こえると愛してるばんざーいは名曲だわ
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/26(水) 01:35:53.97 ID:r3mJNx5I0
351.14 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)