にこ「きっと青春が聞こえる」

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123 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/15(金) 21:40:12.63 ID:7r/zU2x2o

 夕暮れ色の遊歩道を、一人で歩く。

 かよちんはアイドル研究部に顔を出すって言ってた。

 私も陸上部に行こうかと思ったんだけど、ちょっとそういう気分じゃないから先輩にごめんなさいして今日はお休み。

 そんなこんなで、ひとりぼっちの帰り道です。
124 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/15(金) 21:40:41.83 ID:7r/zU2x2o

125 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/15(金) 21:48:02.58 ID:7r/zU2x2o

>>124はミスです、申し訳ない

* * * * *

凛「はぁ……」

 ため息は、疲れたから。

 昨日今日となんだかよくわからない先輩にからまれて、精神的にぐったり。

 なーんであんなにしつこいんだろ。

凛「凛なんて、アイドルやってもかわいくないのに……」
 
 ぽつん、とひとりごと。

 それは、ずっとずーっと昔から私にかかってる、のろい。

 スカートなんて似合わない。

 女の子らしさなんてない。

 かわいらしさなんて、ない。

凛「――――」


 そうやって、自分に言い聞かせてる、のろい。
126 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/15(金) 21:57:19.68 ID:7r/zU2x2o

凛「あ……」

 かさかさ、と生垣が揺れたかと思うと、中から小さな黒猫が顔を出した。

 ――みゃう。

 小さく鳴きながら、黄色いおめめが私を見上げる。

凛「わぁ……」

 かわいいなー。

 こっち来ないかな?

凛「にゃーにゃー、こっちに来るにゃー」

 しゃがんで手招き。これがほんとの招き猫?
 
 って、これじゃ猫招きか。

 なんて、つまらないことを考えてたら。

凛「わっ、わっ、」

 びっくり。ほんとに近づいてきた。

 飼われてない猫ちゃんて警戒心が強いから、どうせ無理かな、なんて思ってたのに。
127 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/15(金) 22:02:19.70 ID:7r/zU2x2o

 みゃう。

 ちっちゃな体は、もう私の目の前まで来ていた。

 手を伸ばせば、触れられる。

 ふわふわの体を撫でられる。

 大好きな猫に、触れる。

 もうちょっと、もうちょっとで――

凛「……っくちゅん。――あ、」

 すぅ、って。

 気持ちが一気に、冷たくなった。

凛「ごめんね」

 言いながら立ち上がる。

 びっくりしたのか、黒猫はすぐにまわれ右してどこかへ行ってしまった。

凛「えへへ、ティッシュ、持ってたかな」

 ひとりごとを呟きながら鞄をあさる。

 お目当てはなかなか見当たらない。 

 
128 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/15(金) 22:05:15.80 ID:7r/zU2x2o

 そうだよね。ダメだよね。

 許されないことだもんね。

 私がかわいいカッコするのも。

 私が猫を触るのも。

 許してもらえないもんね。

 ねぇ、矢澤先輩。

 あなたには、きっとわかりません。

 「やりたい」が、できない気持ち。

 「やりたい」を、否定される気持ち。

 「やりたい」を、許されない気持ち。
129 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/15(金) 22:11:52.55 ID:7r/zU2x2o

 それは例えば、「かわいくなりたい」をクラスの男の子に否定された女の子。

 それは例えば、「猫を撫でたい」をアレルギーに否定された少女。


 それは例えば――「生きたい」を冷たさに否定された、小さな二つの命。

 
 世の中には、許されないことなんてたくさんあるんです。

 自分の「やりたい」を否定されることなんて、やまほどあるんです。

 ねぇ、矢澤先輩。

 あなたには、わかりませんよね?

 こんな、みじめな気持ち。


凛「……あれぇ? おっかしいなぁ。見つからないなぁ」

 鞄の中をいくら探っても、入れたはずのポケットティッシュは見当たらない。

 もう鼻はぐずぐずだよ。

 それに、ほら。


 涙まで、出てきちゃった。
130 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/15(金) 22:20:16.61 ID:7r/zU2x2o

 次の日。いろんな気持ちがぐるぐるして寝付けなかったせいで、遅刻ギリギリの時間に登校することになってしまった。

 かよちんには先に行くようにメールしておいたので、今日はひとりで登校。

凛「おはよー……」

 ねむたい目をこすりつつ、教室のドアを開ける。

花陽「あ、凛ちゃん……」

凛「おはよーかよちん……ふあぁ」

花陽「眠そうなところ悪いんだけど、ちょっと聞いてもらいたくて」

凛「え?」

 ちょっとまじめな顔のかよちん。

 なにかあったのかな?

花陽「昨日のお昼……ほら、いろいろあったでしょ?」

凛「あ、……うん」

 思い出すと、とっても恥ずかしい一日前の思い出。

 うー、もう思い出したくない。

 
131 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/15(金) 22:25:24.86 ID:7r/zU2x2o

花陽「あれを見てたクラスの子がね、矢澤先輩のこと見覚えあって、それであんまり関わらない方がいいんじゃないか、って」

凛「見覚え?」

花陽「あ、見覚えっていうか、正確には部活の先輩から聞いたらしいんだけど」

花陽「矢澤先輩って、一年生の時にちょっといろいろあったらしくて、その……」

花陽「友達が、いなくなっちゃったらしいの」

凛「……ふーん」

 なんていうか、あんまり意外って感じはない。

 むしろ、あーやっぱりなー、って気持ち。

花陽「それでね、その時の事件が……」

凛「それ、聞かなきゃダメかにゃ?」

 正直、かよちんには申し訳ないけど、あんまり興味がない。

 もともと気が合いそうにない人だったし、そんな人の昔話聞いても――

花陽「うん、だめ」

凛「…………」

 久しぶり、だった。

 かよちんがこんなに、強引なの。

花陽「聞いてほしい。凛ちゃんには」

凛「え、っと……」

 答えられずもごもごしてる私を置いてけぼりにして、かよちんは話し始めた。


花陽「三年生の間では『アイドル研究部事件』って言われてるらしいんだけどね――」
132 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/15(金) 22:39:18.26 ID:7r/zU2x2o
ここまで
シフトとエンター同時押しで即書き込みとは知らなんだ
今回SID知らないとちょっとついてこれないかも、すまん
自分もにこにー関連と円盤について来たの以外は漫画版しか知らないけど
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/16(土) 13:50:10.54 ID:P5oMlzmH0
乙です
楽しみ
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/16(土) 15:14:34.48 ID:6g0Qd22Vo
乙です
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/16(土) 16:59:33.22 ID:aTBXgbTRO
乙!
今後の展開が凄い楽しみ
136 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/27(水) 20:08:20.92 ID:NPhJ0Vn2o

凛「矢澤先輩!」

にこ「え?」

 凛にぼろくそ言われた次の日の放課後。

 なによりもきっつい一言をもらって、柄にもなくへこみながら部室で花陽を待っていると、意外な人物が私の名前を呼んだ。

にこ「星空さん? なんでここに、」

凛「教えてください!」

にこ「え?」

凛「教えてください!」

にこ「な……なにを?」

 鬼気迫る様子で同じ言葉を繰り返す凛。

 戸惑う私の質問に、少し考えるようなそぶりを見せた後、こう言った。


凛「なんで――なんで、アイドルになりたいんですか?」
137 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/27(水) 21:06:09.20 ID:NPhJ0Vn2o

にこ「なんでって……え?」

 この子、私に怒ってるんじゃなかったっけ?

 いや、今も険悪な顔つきではあるんだけど。

 突然の訪問。突然の質問。

 それでも、なんで急に、という言葉は。

凛「――――」

 彼女の真剣な視線の前では、口にできなかった。

 
138 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/27(水) 21:15:23.55 ID:NPhJ0Vn2o
 
 改めて問われると答えに詰まる質問だった。

 みんなを笑顔にさせたいから?

 仲間と一緒に頑張りたいから?

 達成感が欲しいから?

 どれも合ってて、どれもぴんとこない。

 答えはきっと、もっともっとシンプルで。

 でも、本質的。


にこ「――やりたいから、よ」
139 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/27(水) 21:26:42.01 ID:NPhJ0Vn2o

凛「――――」

 息をのむ凛。きゅっ、と唇を結んで、視線を床へ落とす。

凛「なんで……」

 それは、質問というよりは独り言のように聞こえた。

凛「なんで……あんなこと、あったのに……」

にこ「あんなこと? って――」

凛「好きなこと……やりたいこと、否定されたのに」

凛「なんで……そんなこと、言えるの……」

にこ「――――」

 ああ、知っちゃったんだ。

 私が三年前――この世界では、二年前か――どれだけ惨めだったか。
140 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/27(水) 21:33:26.88 ID:NPhJ0Vn2o

にこ「だって、さ」

凛「え?」

にこ「だって、それが自分じゃない」

にこ「誰に否定されようと」

にこ「誰に馬鹿にされようと」

にこ「それが私。矢澤にこだもの」

にこ「痛さだって本気なの。悪い? 本気なのよ」


にこ「それが――私だもん」


凛「――――」

凛は、押し黙ったままだった。
141 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/28(木) 02:27:58.31 ID:u7u6+g4Go
とりあえずここまで
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/28(木) 02:29:28.26 ID:B2W4Gs/vo
おつ
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/28(木) 09:04:46.37 ID:9A7P0hgDO

面白い
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/28(木) 09:21:21.97 ID:xIKBjOtXo
乙です
145 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/29(金) 04:08:55.80 ID:0QXlmUxeo

花陽「ね、凛ちゃん」

 凛の後ろから姿を現したのは、いつの間にかいた花陽であった。

 訳知り顔の様子を見ると最初から聞いていたのかもしれない。

花陽「凛ちゃんは、どうしたい?」

凛「凛は……」

花陽「――いいんだよ、言っても」

凛「かよ、ちん?」

花陽「ああしたい、こうしたいって。いいんだよ、言っても」

凛「でも凛は、」

花陽「許されないから?」

凛「…………」
146 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/29(金) 04:20:11.55 ID:0QXlmUxeo

花陽「――もっと、早く言えればよかったんだと思う」

花陽「だけど、私に勇気がなかったから」

花陽「ひょっとしてこれも、凛ちゃんからしたら『否定』になっちゃうかもしれないって」

花陽「凛ちゃんに嫌われちゃうんじゃないかって」

花陽「だから、言う勇気がなかった」

花陽「でも、矢澤先輩を見て、思ったの」

花陽「私も、やりたいことやっていいんだって」

花陽「言いたいこと、言っていいんだって」

凛「……かよちん? 何言って、」


花陽「凛ちゃんの――ばかっ!」
147 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/29(金) 04:29:09.67 ID:0QXlmUxeo

凛「えっ……」

花陽「許されるってなに!? 誰にそんな権利があるの!?」

花陽「ばかみたいっ! 凛ちゃんそんなこと言って、逃げてるだけだもん!」

花陽「あの雪の日から――」

凛「あ、やめ……」


花陽「猫ちゃんたちを助けられなかったあの日から、ずっと逃げてるだけ!」


凛「――――っ」
148 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/29(金) 04:41:37.70 ID:0QXlmUxeo

花陽「……ね、凛ちゃん」

花陽「花陽はね、ずっと凛ちゃんのまぶしさにあこがれてたの」

花陽「きらきらで、まっすぐで、元気いっぱいな凛ちゃんに、あこがれてたの」

花陽「だからね。いますごく悲しい」

花陽「否定されるのを怖がって曇ってる凛ちゃんを見るのが、すごく悲しい」

花陽「……えへへ。勝手、だよね。わかってる」

花陽「だから言えなかった」

花陽「これが、花陽の……ほんとの気持ち、です」

花陽「ばかって言って、ごめんね?」

凛「かよ、ちん……」
149 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/29(金) 04:47:51.42 ID:0QXlmUxeo

花陽「凛ちゃん?」

凛「……なぁに?」

花陽「怖いよね、否定されるのって」

凛「……うん」

花陽「怖いよね、許されないのって」

凛「……う、ん」

花陽「でもね、大丈夫」

凛「……う……」

花陽「たとえこれから先。十人が、百人が、千人が、凛ちゃんを許さなくっても」

凛「う……ぅぅうう……」
150 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/29(金) 04:48:17.70 ID:0QXlmUxeo






花陽「私が――凛ちゃんを許してあげるから」


凛「ううぅぅ……うあぁぁぁぁぁぁあああああん!」





151 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/29(金) 04:54:32.97 ID:0QXlmUxeo

 なんだか、置いてけぼりにされちゃったけど。

 まあ、いいわよね。

 だって、口なんてはさめるわけないじゃない。


凛「うぁぁぁぁああああん!」

花陽「うん……っく……大丈夫、だからね……ひっく」


 あんなきらきらした雫より、説得力のある言葉なんて、もってないもの。

 だから、そう。


 アイドル研究部の部員が三人になったのは、また別のお話、ってことで。
152 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/04/29(金) 04:55:51.45 ID:0QXlmUxeo
ここまで。凛ちゃん編終了
猫のくだりとかはとりあえず漫画版SIDでも読んでもらえれば補完できます
次はまた近々
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/29(金) 10:58:02.95 ID:WNYzSX7wo
乙です
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/30(土) 00:05:06.14 ID:y0F5KO2uo
りんぱな尊い
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/30(土) 00:57:01.07 ID:Im7HMyqto
最初に仲間になるならりんぱなだよなぁ
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/30(土) 12:29:56.34 ID:vKW5LK620
おつ
この世界のリーダーは何やってんだろ
157 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/03(火) 08:02:53.44 ID:lm87M5QRo

【Side:真姫】

 白鍵に乗せた指から、すぅ、と緊張感が全身に染み渡る。

 どんな音を鳴らそう。

 どんな曲を紡ごう。

 そう考えるだけで、胸がどきどきしてくる。

 だというのに。

真姫「はぁ……」

 今日は――ううん、ここ最近はずっと、ため息ばかりが口をつく。

 ぽーん ぽーん

 意味なくピアノを鳴らしても、沈む気持ちは浮かばない。

 せっかく先生にお願いして、放課後に音楽室を開放してもらってるのに。
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/03(火) 08:24:08.17 ID:lm87M5QRo

真姫「―――――」

 すっ、と意識を指先に集中させる。


 大好きだばんざーい!

 まけないゆうき 私たちは今を楽しもう

 大好きだばんざーい!
 
 頑張れるから――


 よどみなく動いていた指が、いつもここで止まってしまう。

 まあ、歌詞ができてないんだから当たり前なんだけど。

 それでもいつもならいい歌詞がすらっと浮かんで問題なく続けられるのに。

159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/03(火) 08:27:13.60 ID:lm87M5QRo

 不調、だから?

真姫「…………」

 そんなわけないし。

 それじゃまるで――友達ができないこと、私が気にしてるみたいじゃない。

 友達なんていらない。作らない。

 邪魔になるだけだもの。

 私はひとりがいいの。

 自分で選んでるの。

 友達なんて、友達なんて――

真姫「…………はぁ」


 私、誰に言い訳してるんだろ。
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/03(火) 09:25:18.29 ID:lm87M5QRo

真姫「あーもう、やめやめ!」

 今日の練習もうじうじするのも、おしまい!

 こんな調子じゃ日が暮れたって曲なんか作れやしないわ。

 ぱっと荷物をまとめ音楽室を出る。

 オレンジ色に染まった廊下は誰もいなくて、少し寂しげ。

 グラウンドから聞こえる部活の声だけが、遠く響く。

真姫「…………」

 私はひとりで歩き出した。
 
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/03(火) 09:51:24.50 ID:lm87M5QRo

 毎日ってこんなにつまらないものだったっけ。

 中学生のころから感じてた思い。。

 高校に入って増していく想い。

 同じ毎日が続いて。

 変わらない毎日が過ぎていく。

 
 今、私の視界を流れていく寂しげな廊下の風景は。

 きっと、私の人生の縮図。


真姫「――――」

 ひとりを、望んでいるはずなのに。

 泣きたくなるのは、なんでだろう。  
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/03(火) 10:06:00.77 ID:lm87M5QRo

「かよちーん! はやく行くにゃー!」

「ま、まってよ凛ちゃん……それじゃ矢澤先輩、お疲れさまでした」

 と。奥の教室から飛び出てくるふたつの人影。

 見覚えあるな、と思ったら、同じクラスの星空さんと小泉さんだった。

 あれ、あの二人って陸上部に入ったんじゃなかったっけ?

 たまに聞こえる会話では、そんなこと話してた気がするんだけど……

「はいはい、お疲れさまー。気を付けて帰んなさいよ」

 続いて出てくる小さな人影。

 あの人……ついこの間、うちのクラスで一悶着起こしてた人だ。

 矢澤にこ……だっけ?

 風のうわさでは二年前にやらかしてひとりぼっちって話だったけど……

 ふーん。そういうこと。

 あの二人、矢澤先輩の部活に入ったんだ。

 別に、私には関係ないけど。
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/03(火) 10:29:39.27 ID:lm87M5QRo

 二人が走り去ったあと、矢澤先輩はひとりで部室のカギを閉めているようだった。

 私には気づいてないようで、そのまま廊下の奥へと進んでいく。

 なんだか浮かれてるみたいで、足取りは軽い様子。

 ほら、後ろくらい確認しなさいよ。人が見てるわよ、人が。

 もう、スキップなんかしちゃってみっともない。

にこ「〜♪」

 あーあ、ごきげんに歌まで歌いだしちゃって、見てるこっちが恥ずかし――

 え?


にこ「愛してるーばんざーい! ここでーよかーあったー」

 
 え、なんで?

 私が作った、私だけの、私しか知らない曲を。

 なんで――あなたが歌えるの?
164 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/03(火) 10:31:01.50 ID:lm87M5QRo
ここまで
次はまた近いうち
165 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/03(火) 10:32:18.25 ID:lm87M5QRo
途中酉はずれてた、すまぬ
ID同じだから大丈夫やんな
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/03(火) 10:37:44.40 ID:ixsT92iSo
乙です
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/03(火) 16:26:24.61 ID:xOTzzCHAo
期待
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/03(火) 22:12:03.16 ID:nUR2XKsB0

二年組も気になるね
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/04(水) 11:50:22.32 ID:1MhTrX5c0
おつ
おもしろい展開に
170 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/08(日) 21:50:37.48 ID:DkMgFNURo

にこ「愛してるーばんざーい! ここでーよかーあったー」

 つい歌なんか歌いながらの帰り道。

 十人が見たら十人が浮かれてると思うことだろう。

 それ、大正解。

にこ「とっきーどきーあーめーがーふーるけーど みっずっがーなーくーちゃたーいへーん」

 凛が仲間になってくれた。凛が認めてくれた。

 あんなに頑なだった凛が。

 私に、開いてくれた。

にこ「さー大好きだーばんざーい! まけなーいゆーうーきー」

 これが喜ばずにいられる? いーえ、いられないわ。
 
 歌だって歌いたくなるってもんよ。
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 22:10:51.10 ID:dHA3PY56o
はよ
172 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/08(日) 22:18:21.62 ID:DkMgFNURo

にこ「昨日ーに手ーをふーって ほらー 前向いてー」

 ごきげんになりながら一番を歌い終える。

 メロディの余韻は、誰もいない廊下にじんわりと染み込んでいった。

にこ「ふぅ……」

 喉の痛さも、少し弾んだ動悸も、なぜだか心地いい。

 やり遂げたというか、やりつくしたというか。

 まだ淡い達成感が、だけど、たしかに胸の中にあった。

にこ「あと六人」

 思わずこぼれたひとりごと。

 それは、遠いようで、でもきっと手が届かない場所じゃないと、思った。

 さ、今日はもう帰りましょう。

 気づけば止まっていた足を動かして、そして――


真姫「ちょっとあなた!」

にこ「ひゃうっ!?」


 歩みはすぐに止められた。
173 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/08(日) 22:26:37.78 ID:DkMgFNURo

真姫「なんで! なんであなたか知ってるの!? なんであなたが歌えるのよ!」

にこ「なっ、なっ、なぁ!?」

 懐かしい顔だ、なんて思う暇もなかった。

 急に飛んできた怒声に驚き振り向くと同時、私の両肩はがっしと掴まれた。

真姫「答えなさいよ! なんであなたがそれを歌えるの! なんで知ってるの!」

 言いながらがくがくと私を揺さぶる赤毛の女の子――真姫ちゃんは、必死の形相で繰り返す。

にこ「ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ!」

真姫「これが落ち着いていられるもんですか!」

真姫「あなたが今歌ってた曲――『愛してるばんざーい!』は、私が考えてる途中の曲なの!」

真姫「それを、なんであなたが歌えるわけ!?」

にこ「っ!」

 ――やっちゃった。

 後悔が私の心を蝕む。

 浮かれてるからって、こんな致命的なミスをするなんて……
174 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/09(月) 07:30:43.59 ID:w/pllu7no

真姫「答えて」

 揺さぶる手は、いつの間にか止まっていた。

 けれどその代わり。

真姫「――――」

 真剣な瞳が、まっすぐに私を射抜く。

にこ「あ、ぅ……」

 考えろ、考えろ。

 なにかそれっぽい、納得できるような理由――

にこ「あ、そ、そうよ!」

真姫「えっ?」

にこ「あ、いや、そうよじゃなくて。あれよあれ、あんたいつも音楽室で練習してたわよね?」

真姫「――ええ」

 これだ、これしかない。

にこ「それが偶然聞こえてたのよ! 廊下で! それでいい曲だなーって思ってつい口ずさんじゃったのよ!」

 
175 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/09(月) 07:31:16.11 ID:w/pllu7no
寝落ちってた
続きはまた後程
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/09(月) 12:20:07.43 ID:J6hSp6PDO
177 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/09(月) 21:51:04.67 ID:w/pllu7no

真姫「――私が歌ってるのを、聞いたから?」

にこ「そう!」

真姫「――音楽室で、私が歌ってるのを?」

にこ「そうそう!」

真姫「――最初から、最後まで?」

にこ「そうなのよ!」

真姫「――――」

 いけるかも、って思った。

 真姫ちゃんが乗ってくれたと思った。

 ごまかせるかも、って、思った。

 それが全部勘違いだと気づいたのは。

真姫「――――っ」

にこ「えっ?」


 真姫ちゃんの瞳から、ぽろりと涙がこぼれた瞬間だった。
178 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/09(月) 22:20:49.82 ID:w/pllu7no

真姫「う、うう……」

にこ「え……え!? ちょ、真姫ちゃんどうしたの!?」

真姫「なんで……なんで……!」

にこ「なんでって、こっちのセリフよ! なんで急に泣き出しちゃうわけ!?」

 私の言葉に、真姫ちゃんはキッと鋭い視線を返す。

真姫「なんでって? 悔しいのよ!」

にこ「く、悔しい?」

 なに? この子なんの話してるの?

 私の疑問を知ってか知らずか、真姫ちゃんはすぅっと息を吸う。


 大好きだばんざーい!

 まけないゆうき 私たちは今を楽しもう


 それは、ついさっき私が口ずさんでいた曲。

 唯一、違いがあるとするならば。


 大好きだばんざーい!
 
 頑張れるから――


にこ「…………?」

 それが、最後の最後で止まったこと。 
179 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/09(月) 22:28:08.20 ID:w/pllu7no

真姫「この曲はね、未完成なの!」

真姫「どうしても、最後のフレーズが浮かばなかった!」

真姫「この曲にぴったりの歌詞が見つからなかったの!」

にこ「……あ、」

 荒ぶった感情が、びりびりと伝わってくる。

 言葉の意味を飲み込んだ私は、自分が思っていたよりもっと深い沼に足を踏み入れていたことに気づいた。

真姫「そう! でもあなたは歌った!」

真姫「昨日に手を振って。ほら――前向いて、って!」

真姫「なによ……なによそれ!」

真姫「それ以上ぴったりな歌詞――見つけられるわけないじゃない!」

真姫「それを聞いた瞬間、もうそれしかないって思った!」

真姫「この曲には、その歌詞しか合わないんだって感じ取った!」

真姫「まるで……まるで、最初からそう決められていたみたいに……」

にこ「…………」

 そりゃ、そうよね。

 だってそれが、その歌詞が、この曲の「本来の形」なのだから。
180 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/09(月) 22:34:42.47 ID:w/pllu7no

真姫「それが……なんであなたから教えられなきゃいけないわけ!?」

真姫「なんにも知らないあなたに!」

真姫「廊下で聞いた、なんて下手な嘘でごまかそうとしてるあなたに!」

真姫「なんの関係もない、あなたに……!」

真姫「これが悔しくなくて……なんだって言うのよ……」

にこ「ぁ、う……」

 きっと、本当に悔しいんだと思う。

 人前で、しかも彼女にとって初対面の人間の前で。

 こんなに素直に涙をこぼすなんて――「あっち」の真姫ちゃんなら考えられない。

 だからこそ、不用意な言葉は返せなかった。

 この、ガラス細工みたいにもろい女の子に、どう触れたら壊さないで済むのか、見当もつかなかったから。

 
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/09(月) 22:46:16.44 ID:zV9YWdwEo
はよ
182 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/10(火) 06:26:01.53 ID:E4B5RweHo

真姫「……ちょっと待って」

 私がそうやってだんまりを決め込んでいたわけだから、言葉を続けたのは当然真姫ちゃんの方であった。

真姫「あなたさっき、私のこと……真姫ちゃん、って呼んだ?」

にこ「ぎくー!」

 し、しまった! 

 あまりの急展開に呼び方を変えるの忘れてた!

にこ「き、ききき、気のせいじゃない? なんで私が初対面の西木野さんのこと名前で呼ばなきゃ……」

真姫「いや、そうじゃなくって」

にこ「へ?」


真姫「初対面のあなたが、苗字にしろ名前にしろ、何で知ってるの? ってことよ」

にこ「…………」

 あ、ほんとだ。

 え、だって凛と花陽はそんなこと一言も――って、あの子らだもんなぁ……

にこ「あ、あはは……」

真姫「――――ねえ」

にこ「……はい」

真姫「あなた……何者なの?」

にこ「えー、と……」

 ああ、これが年貢の納め時ってやつなのかしら。

 ま、いっか。話しても。

 どうせ信じてもらえないだろうしね。
183 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/10(火) 06:26:41.03 ID:E4B5RweHo
また寝落ちってた
続きはのちほど
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/10(火) 07:00:24.60 ID:uR7jB4T/o
おつ
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/10(火) 18:40:45.71 ID:4ZjEcUhIo
期待
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/10(火) 23:34:15.32 ID:buJEwAbfo
はよはよ
187 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/11(水) 00:00:19.76 ID:8FHhUPvNo

真姫「ふぅん? つまり私の知ってる言葉で表すなら、あなたは未来人ってことになるのかしら」

にこ「あはは……まぁ、そういうことになるのかしらね」

真姫「…………」

 場所を移して、音楽室。

 腰を落ち着けて私の話を最後まで聞いた真姫ちゃんの反応は、正直予想外だった。

 ぶっちゃけ「頭のネジ、足りてないんじゃない?」とか鼻で笑われると思ってたのに。

 今目の前にいる真姫ちゃんは。

 私の言葉を、真剣に考えてくれていた。

 あの三人娘と友達になれた時も嬉しかったけど、それとは話が違う。

 「今の私」の真実を受け入れてくれる、仲間。

 すごく、すごく――救われた気がした。

にこ「――ありがと」

真姫「な、何よ急に」 

にこ「いえ、ごめんなさい。こんな話、まさか信じてもらえるなんて思ってなかったから」
 
 ちょっと涙目になった私の言葉を聞いて。

真姫「ばかね、あなた」

 真姫ちゃんは、からかうように笑った。



真姫「そんな話信じるわけないじゃない」



にこ「ちょっとおおおぉぉぉぉぉおおおおお!?」
188 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/11(水) 00:06:06.77 ID:8FHhUPvNo

真姫「目が覚めたら過去にいました? そんなのありえるわけないじゃない」

にこ「はぁ!? さっきまでのいい雰囲気なんだったわけ!?」

真姫「頭のネジ足りてないんじゃない? あなた」

にこ「予想通りの反応ありがとうございますぅ!」

真姫「あーもう、やかましいわね」

 いらだちを隠そうともしない真姫ちゃん。

 え、なんで私が怒られてるの?

真姫「常識で考えなさいよ、常識で。あなたそもそもそんな話信じてもらえると思ったわけ?」

にこ「ぐ、ぐぬぬ……」

 はい、絶対信じてもらえないと思ってました。

真姫「ほら見なさいよ。自分でもわかってる答えが返ってきたのに騒がないでもらえる?」

にこ「で、でも! じゃああんたはご丁寧になにを考え込んでたわけ!?」

 そもそも勘違いの原因はそこだ。

 紛らわしいことしてる真姫ちゃんにだって責任はあるはずだ、うん。
189 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/11(水) 00:15:46.48 ID:8FHhUPvNo

真姫「……信じては、ないの」

 だけどね、と。

 迷うような表情を見せた後、真姫ちゃんはグランドピアノへと向かう。

 ぴぃん、と空気が張り詰めたような錯覚。

 そんな緊張感を振り払うように、真姫ちゃんの指は鍵盤の上を滑り始めた。

 果たして、流れ出したメロディは。

にこ「――――!」

真姫「――――」

 それを察した私と、私が察したことを察した真姫ちゃん。

 一瞬のうちに視線が交わり、互いの意図を読み合う――なんてことはできなかったけど。

 私の体は、自然と反応していた。
190 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/11(水) 00:21:13.55 ID:8FHhUPvNo

 
 I say...

 Hey,hey,hey,START:DASH!!

 Hey,hey,hey,START:DASH!!


 歌えないはずがなかった。

 それは、私たち九人が初めて講堂を一杯にした曲。

 μ'sのはじまりの歌。


にこ「――ふぅ」

 ピアノの伴奏は、私が一番のサビを歌い終えたところで止まる。

 額にじんわり浮かんだ汗をぬぐうと、真っすぐにこちらを見つめる真姫ちゃんと視線がぶつかる。

真姫「信じては、ないの。だけどね、そんなの関係ないってわかった」

真姫「今の曲は、歌詞なんてワンフレーズもついてないメロディだけの曲」

真姫「でもあなたは、それを当然のように歌った」

真姫「その歌詞は、そうであるのが当然のようにぴったりだった」

真姫「あなたが未来人であることを、私がどれだけ信じようとしなくても、関係ない」

真姫「この事実は――捻じ曲げられないもの」
191 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/11(水) 00:40:07.91 ID:8FHhUPvNo

にこ「真姫ちゃん……」

真姫「μ's、だっけ? さっきのあなたの話に出てきた、私も所属してたアイドルグループって」

にこ「え? ええ、そうだけど……ひょっとして!」

真姫「勘違いしないで」

 ぱぁっと輝いた私の言葉を、真姫ちゃんがぴしゃりと遮る。

真姫「別に信じたわけじゃないんだから、そんなグループに私が入る義理はないわ」

にこ「いや、義理とかじゃなくて」

真姫「……ごめんなさい。変なごまかし方しちゃったわね」

真姫「私は、友達も作らないし、部活もやらない」

真姫「そう、決めてるの」

真姫「だから……μ'sには、入れない」

にこ「なに、それ……」

 真姫ちゃんの告げる言葉は、どれも絶望的だった。

 真姫ちゃんがそんな信念を持っていたなんて話、聞いたことがない。

 また――変わってしまった。
192 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/11(水) 01:01:40.40 ID:8FHhUPvNo

真姫「ちょっと、そんなに落ち込まないでよ」

にこ「別に、落ち込んでなんか……」

真姫「いや、強がってるのばればれだし……」

にこ「…………」

真姫「――あぁもう! あなたがそんなじゃ本題に入れないじゃない!」

にこ「……本題?」

 情け無用の死刑宣告をした上で、この子はどんな本題に入ろうってつもりなの?

真姫「その、μ'sでは私が作曲してたんでしょ?」

にこ「そう、だけど……」

真姫「作詞してた海未って人がどんな人なのか知らないけど……少なくともあなたはどんな歌詞になるのか知ってる」

真姫「つまり、あなたが作詞できるってことよね?」

にこ「…………?」

 えっと。

 この子、何が言いたいの?

真姫「……もう、察し悪いわね!」

 しびれを切らしたのか、腰を持ち上げ私に歩み寄る真姫ちゃん。

真姫「μ'sに入るのは、その、難しいかもしれないけど……楽曲提供くらいはしてあげるって言ってるの!」
193 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/11(水) 01:06:18.94 ID:8FHhUPvNo

にこ「…………」

 ガッキョクテイキョウ。

 がっきょくていきょう。

 ――楽曲提供?

にこ「それって!」

 再び差した光明にすがりつく私を、今度は誰も否定しない。

 それはつまり。

 真姫ちゃんがμ'sとのつながりを残すということ。

 今はまだ入るつもりがなくとも。

 可能性は――残る。

にこ「だ、だけど、なんで?」

 妙なところで冷静になる私。

 だけど気になったのだからしょうがない。

 友達も作らない、部活にも入らない。

 他人を拒もうとする真姫ちゃんが、それでもこの提案をするメリットが、見当たらない。
194 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/11(水) 01:38:00.24 ID:8FHhUPvNo

真姫「……さっきも言った通り。悔しかったのよ」

にこ「へ?」

真姫「私がいくら考えても思いつかなかったフレーズを、あなたがぽんと放ってきたことが、悔しかった」

真姫「そう。悔しくなるくらい――『曲が完成した』って思えた」

真姫「その感覚を、もっともっと味わいたいって思った」

真姫「私のメロディに、もっともっとあなたの歌詞を乗せてもらいたい――それじゃ、だめかしら」

 まあ、あなたが考えた歌詞じゃないみたいだけど。

 そっぽを向いた真姫ちゃんの頬は、ほんのり朱に染まっていて。

 それが照れ隠しだなんてことくらい、私にだってわかる。

にこ「だめなわけないでしょ。ていうか、むしろこっちがお願いしたいくらいだし」

真姫「矢澤先輩……」

にこ「にこでいいわ」

真姫「え?」

にこ「今さら真姫ちゃんに先輩扱いされてもくすぐったいのよね」

にこ「だから、にこでいいわ」

真姫「え、えっと……にこ、ちゃん?」

にこ「んふふー」

真姫「ちょっと、なに笑ってるのよ!」

にこ「別にー?」

真姫「もう、意味わかんない!」



 ぷんぷんしてる真姫ちゃんを見て。

 ぷいってしてる真姫ちゃんをみて

 私のよく知ってる、真姫ちゃんの横顔を見て。

にこ「――――」

 いつか九人は揃うんだろうなって、思えた。
195 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/11(水) 01:38:30.36 ID:8FHhUPvNo
ここまで
次はまたそのうち
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/11(水) 03:36:37.14 ID:bl3hHFdwO
乙だよ
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/11(水) 07:07:32.27 ID:omttm2azo
乙です
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/11(水) 12:36:58.71 ID:6NWFW/Vuo

スタダは卑怯
199 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 20:12:54.12 ID:hkr0uN9Wo

にこ・凛「ライブ?」

花陽「はい、ライブです」

凛「っていうかなんでにこ先輩が普通にいるにゃ? ここ一年生の教室なのに」

にこ「いーじゃないのよ別に、部の一年生と一緒にお昼食べるくらい」

凛「凛たちは別にいいけど……」

にこ「……なによ、憐れんだ目で私を見るのはやめなさい」

凛「ほら、私のからあげあげるから元気出すにゃ」

にこ「同情すなー!」

花陽「あの、話進めてもいいですか……」
200 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 20:17:26.89 ID:hkr0uN9Wo

花陽「アイドル研究部も私と凛ちゃんが加わり三人となりました」

花陽「これは言わずと知れたかの有名スクールアイドルA-RISEと同じ人数です」

花陽「つまり! これだけ揃えばA-RISEと同じパフォーマンスだって可能ということです!」

にこ「いや、それは盛りすぎだと思うけど……だけど」

 揃えば、ねぇ。

 私の感覚としては「まだ三人」といったところ。

 目標の三分の一、真姫ちゃんを入れても半分にも満たない。

 本来真っ先に考えるべきである「アイドル活動」について全く考えてなかったのもそれが理由である。

 だけど……九人揃うまでなにもしません、ってわけにはいかないもんねぇ……
201 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 20:25:22.82 ID:hkr0uN9Wo

凛「じゃあ凛たちライブするの!?」

花陽「うーんと……正確には、『ライブするための準備をする』、って感じかな……」

 急に自信なさげになる花陽。

凛「準備?」

花陽「うん。ねえ凛ちゃん、アイドルが実際にライブをするには何が必要だと思う?」

凛「え?」

 やっぱり、花陽はしっかり考えてるみたいね。

 ちゃんとその問題に気づいてる。

凛「えっと、えっと……衣装、とか?」

花陽「うん、それももちろん必要だね」

 ほっこりしながら花陽が言うのは、凛が少しだけ素直な気持ちを覗かせたからだろう。

 可愛い衣装。着たいのね、凛。

花陽「だけどそれについてはまだ保留になっちゃうかな」

花陽「突き詰めちゃえば、この制服で踊るのだって立派な『音ノ木坂のスクールアイドル』っていうアピールになるし」

凛「そっか……」

 しゅん、と凛が落ち込む。

花陽「も、もちろんいつまでもそういうわけにもいかないよ?」

花陽「やっぱり可愛い衣装を着て踊った方が映えるし、それに……」

凛「それに?」

花陽「私たちも着たいし、ね?」

凛「……えへへー」
202 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 20:33:00.58 ID:hkr0uN9Wo

凛「それで、他にはなにが必要にゃ?」

花陽「あとは、もちろん場所も必要だよね。この学院は……」

 ちら、と飛んできた花陽の視線から、意図を汲み取る。

にこ「ええ、申請が通れば講堂でライブをすることも可能よ」

花陽「っていうことみたい」

凛「講堂って、あのおっきな? あんなに人が集まるのかにゃ……?」

にこ「…………」

 それについては心配ご無用。

 私たち九人が揃えば、あの講堂がちっぽけに見えるようなステージだって、お客さんで一杯にできるんだから。

花陽「それと、曲や振り付けも必要になるかな。これも他のスクールアイドル……それこそA-RISEのコピーだって大丈夫だけど……」

凛「やるなら自分たちの曲でやりたいねー」

花陽「うん。それに今例に挙げておいてなんだけど、あんまりレベルの高いアイドルをコピーしても難易度が上がっちゃうし」

凛「あ、そうだよね……」

 暗い話題ばかりが続き、凛と花陽のテンションがみるみる下がっていく。

 うーむ、幸先よくないわね、この子ら……
203 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 20:39:59.71 ID:hkr0uN9Wo

にこ「あ、そうだ」

 すっかり伝え忘れていた、明るいニュース。

にこ「曲については心配ないわ。私のつてで作曲してくれる人が見つかったの」

花陽「え、ほんとですか!?」

凛「だれだれ!?」

にこ「えーと、それはね……」

 さて、どう説明したものかしら。

 真姫ちゃんには、あの放課後の出来事はもちろん、楽曲を提供してくれるのが真姫ちゃんであることも黙っておいてほしいと言われた。

 まあ、それを話したら二人に質問攻めくらうことうけあいだものね。

 でもさ。全部嘘つく必要はないわよね?

 あんまり適当なこと言うとぼろがでちゃうかもだし。

 それに。

真姫「…………」

 この話題になった途端、私の視界のすみっこで面白いくらいびくって跳ねた赤毛ちゃんのリアクションも、楽しみたいしね。
204 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 20:48:21.92 ID:hkr0uN9Wo

にこ「えーっとねぇ、この学院の子なんだけどぉ」

真姫「…………!」

 あ、焦ってる焦ってる。

にこ「私より年下でぇ」

真姫「…………」プルプル

 おっと、震えだしちゃった。

にこ「ちょーっと素直じゃないんだけど、そこが可愛くてぇ」

真姫「っ、げほっ、げほっ!」

 あっはっは、ご飯詰まらせてむせちゃってる。
 
 ま、あんまりからかうのもかわいそうだし、この辺にしときましょうか。

 最後に、ひとつだけ加えて。

にこ「私の、大切な人の一人よ」

真姫「――――!」

 がたんっ

 耐えられなくなったのか、椅子から立ち上がる赤毛ちゃん。

 そのままつかつかと教室を出ていく、その横顔は。

 ――あらら、あれじゃ赤毛ちゃんじゃなくて赤面ちゃんね。
205 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 20:51:31.69 ID:hkr0uN9Wo

にこ「ま、詳しいことは言えないけど、曲に関しては問題ないわ」

花陽「そう、ですか?」

 いまいち納得しきれていない様子。

 まあ、今の説明にもなんにもなってないしね。

花陽「じゃあ、他に足りないものは……」

凛「えぇ、まだあるの? 凛、もう覚えきれないにゃー」

花陽「ううん凛ちゃん、これが一番大事なんだよ?」

にこ「?」

 他に必要なものなんてあったかしら?

花陽「アイドルがライブをやるのに必要なもの。それは――」

にこ・凛「それは――?」


――――――――

――――――

――――
206 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 20:59:43.92 ID:hkr0uN9Wo

――――

――――――

――――――――

花陽「ず、ずばり……はぁ、はぁ……これです!」

にこ・凛「…………」

 時は放課後、場所はアキバのゲーセン。

 汗だく息切れへろへろな花陽がずびしと指さす先には――GAME OVERの八文字。

 某ダンスゲーのリザルト画面である。

花陽「わた、私たちに、足りない、のは……ぜぇ、はぁ……体力と技術、です!」

にこ・凛「あー……」

 なんというか、ぐうの音も出ない説得力。

 難易度イージーの曲だったのに、ここまでいろんな意味でぼろぼろになれるのは、さすが花陽といったところ。

 いや、全然笑い話にもならないんだけど。

花陽「ほん、本番、は、踊るだけじゃ、ありません! これで、歌も、うたいながら……けほっ、けほっ」

にこ「ちょ、大丈夫? ほら自販機で買ったスポドリ」

花陽「あ、ありがとうございます……」

 こくん、こくん、と花陽の白い喉が揺れる。

 まあ、この子はどう見ても運動してきましたって感じじゃないものね……
207 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 21:10:43.20 ID:hkr0uN9Wo

花陽「ぷはー」

凛「落ち着いた? かよちん」

花陽「うん……大丈夫だよ、凛ちゃん。にこ先輩もありがとうございました」

にこ「いーえ、どういたしまして」

花陽「では、話を戻しまして……こほん」

花陽「とにかく、私たちには体力も技術もありません。素人ですから」

花陽「激しく動きながら歌もうたいつつ、しかも笑顔も絶やさない……」

花陽「そう! たとえるなら笑顔のまま腕立て伏せをするかのような忍耐力が、私たちには足りないんです!」

にこ「…………」

 そのたとえ、必要だった?

花陽「なので私たちは、まずこんなゲーム程度笑顔でクリアできるような体力と技術が……」

凛「――っとぉ、クリアしたにゃー!」

花陽「え?」

 熱弁する花陽のその後ろでは。

 その親友が無残にもハードモードでパーフェクトを叩きだしているところだった。
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 21:12:10.59 ID:8RqpI8tJo
かよちん……
209 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 21:14:13.87 ID:hkr0uN9Wo

花陽「…………」パクパク

 ああ、花陽が餌を求める鯉みたいになってる……

凛「結構簡単だね、このゲーム」

花陽「はうぅ!?」

 とどめを刺されたのか、花陽が膝から崩れ落ちる。

 天然って容赦ないわね……

凛「じゃあ、次はにこ先輩の番にゃ?」

にこ「へ?」

 突然回ってきたお鉢に面食らう。

 曲をクリアしたためか、筐体は楽曲選択画面に戻っている。

 にも関わらず、凛は画面からすっと離れた。

 ……ふむ。

 ここはいっちょ、最高難易度で先輩の威厳を見せてあげますか。 
210 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 21:20:51.84 ID:hkr0uN9Wo

 結果を言えば。

凛「おおぉ! にこ先輩ベリーハードでパーフェクトにゃ!」

花陽「……私……アイドル向いてないのかな……」

 という感じではある。

 だけど。

 凛の言葉にどや顔をすることも。

 花陽の言葉に慰めをすることも。

にこ「はぁっ、はぁっ、はぁ……」

 余裕がなかった。

凛「とはいっても、さすがのにこ先輩も一曲が限界かにゃ?」

花陽「すごいはすごいですけど……でも、アイドルとしては体力不足なのは否めないですね……」

にこ「はぁ、はぁ、はぁ……くっ」

 ぎり、と奥歯を噛みしめるのは。

 二人の言葉が的外れな指摘だったからではなく。

 まさしく的のど真ん中を射抜いていたから。
211 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 21:28:34.82 ID:hkr0uN9Wo

 たしかにここ一か月以上はダンスはおろか基礎トレーニングもほとんど怠っていた。

 それにしても、一曲でこのザマ? ありえない。

 体力の低下、というよりは……

にこ(これも戻ってる、のね)

 当たり前と言えば当たり前。だけど盲点だった。

 記憶が受け継がれているのならば、「私自身」が一年前に戻ってきた。

 そう、疑ってすらいなかった。

 でも、現実は違った。

 体力や筋肉、あるいは神経の繋がりというかセンスというか、そういったものは全て一年前のスペックに逆戻り。

 今の私は、そう――素人、だ。

にこ「――――よ」

凛・花陽「え?」

にこ「――トレーニングよ!」

花陽「あっ!」

凛「にこ先輩!」

 言いながら、二人がついてくるのも確認せず店を飛び出す。

 言いようのない不安が、足首をぎゅっとつかんでいるような気がした。 


 ――私は、もっと焦らないといけないのかもしれない。
212 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/19(木) 21:29:49.38 ID:hkr0uN9Wo
ここまで
次はまたそのうちに
213 :横須賀鎮守府 :2016/05/19(木) 21:38:28.31 ID:N+DXYCtG0
名前: 白糸台一軍最強【100年分】で三連覇約束亦菫様イエィ
E-mail:
内容:
「ダンジョンズ&プリンセス」は、2015年12月28日(月) 15:00をもちまして、全てのサービスを終了させていただきました。

ご利用いただいていた皆様には、これまでのご愛顧に厚く御礼申し上げます。
今後ともDMMオンラインゲームをよろしくお願いいたします。

「ひつじ×クロニクル」は、2016年3月31日(木) 14:00をもちまして、全てのサービスを終了させていただきました。

ご利用いただいていた皆様には、これまでのご愛顧に厚く御礼申し上げます。
今後ともDMMオンラインゲームをよろしくお願いいたします。

「ラビリンスバインド」は、2016年3月31日(木) 17:00をもちまして、全てのサービスを終了させていただきました。

ご利用いただいていた皆様には、これまでのご愛顧に厚く御礼申し上げます。
今後ともDMMオンラインゲームをよろしくお願いいたします。

「ハーレムカンパニー」は、2015年10月30日(金) 12:00をもちまして、全てのサービスを終了させていただきました。

ご利用いただいていた皆様には、これまでのご愛顧に厚く御礼申し上げます。
今後ともDMMオンラインゲームをよろしくお願いいたします。

運営終了は犯罪ナノデスよライダーをユルスナ

京様不在編
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 22:00:55.25 ID:0bhMtAAio
乙です
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 13:00:18.03 ID:Q/24LzP3o
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 18:54:52.34 ID:OGJNdfh/o
期待してます
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 23:13:57.62 ID:L4IeBUvq0
個人的にタイムリープ?系で1番面白い
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 11:05:41.15 ID:EhHozjNX0
乙だよ
かわいい
219 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/29(日) 13:32:34.83 ID:tL2n0Gexo





『別に、友達ってわけでもないのだから』




220 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/29(日) 13:48:54.74 ID:tL2n0Gexo

にこ「――――」

 思い出すたびに、胃がよじれるような錯覚を引き起こす。

 一際強い痛みを噛みしめながら、私は生徒会室の前に立っていた。

 目的はただひとつ。絵里と希の勧誘。


 あのゲームセンターの屈辱以降、私たち三人は基礎トレーニングから始めることにした。

 筋力や体力、リズムやステップ。

 三日ほど続けて分かったのは――圧倒的な力不足だった。

 息はすぐ切れるし、足はもつれるし。こんなのでなんでスクールアイドルの頂点に立てたの? って感じ。
 
 いや、なんでなんてわかってる。

 絵里の指導があったからだ。
221 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/05/29(日) 15:33:58.49 ID:tL2n0Gexo

にこ(絵里の加入は一刻を争うわ……)

 μ'sを集めるという意味ではもちろん。

 「ラブライブ優勝グループμ's」に戻るためにも、絵里の力は必須だった。

 だけど。

にこ(どう考えても、素直に入ってはくれないわよねぇ……)

 なにせあっちの世界では最後まで渋った彼女である。

 こっちの世界でだってきっと――

にこ(……いや)

 違う、のかな。

 そもそもあっちの世界で絵里が頑なだったのは、『音ノ木坂を廃校から救うため生徒会として動かなければならなかったから』だ。

 だったら、廃校の話がないこっちの世界でなら、絵里はもっと素直にアイドルをやりたいって言えるんじゃ――
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/29(日) 16:11:37.79 ID:+iKawlzDO
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