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ほむら「巴マミがいない世界」
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315 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/19(月) 00:32:36.25 ID:tmk4vxvW0
>>314
この場合論点はまどかが引き下がるか下がらないかじゃなく『魔女から人を守る』を目的としているさやかが一般人を魔女退治に同行させていることが問題ってとこだろう
ただでさえ実力不足だしマジカルバット装備させているわけでもないし使い魔や魔女の攻撃の流れ弾でまどかが死んだら十分な保護をしていなかったさやかの責任になるんだし
内心一人で戦うのが不安だったんだろうがマミさんの一件あった後だしもっと危機感もって強く同行拒否すべきだろう『正義の味方』ならね
316 :
◆c6GooQ9piw
[saga]:2016/10/05(水) 21:37:00.49 ID:9fosQfKcO
ほむら(正義の魔法少女、か……)
これで、今後のさやかの行動パターンはほぼ確定した。
使い魔を発見すれば、確実に撃破しようとするだろう。
また、どれほど強い魔女が相手でも、決して逃げることはないだろう。
自身のソウルジェムの濁りなど、何の躊躇いにもならないはずだ。
ほむら「……」
それはもはや、本来の魔法少女の生き方から大きく外れていると言っていい。
そもそも、大抵の魔法少女は自分が生き抜くことを最優先に行動している。
それでも、彼女たちが生き残る確率は、そう高くない。
それがキュゥべえにとっての、都合のいいバランスなのだろう。
しかしそれも、さやかのような生き方は考慮していないはずだ。
先は長くない。
魔女に敗れるのが先か、ソウルジェムが限界に達するのが先か──
いずれにせよこのままだと、そう遠くないうちにさやかは破滅を迎えるだろう。
317 :
◆c6GooQ9piw
[saga]:2016/10/05(水) 21:39:13.43 ID:9fosQfKcO
できれば避けたいところではあるが……
ほむら(……無理ね。恐らく、この結末は変えられない)
他ならぬ杏子がさやかの生き方を認めてしまったのだ。
もはや、さやかが揺らぐことはないだろう。
どう考えても、ほむらの言葉で説得できるとは思えない。
さやかの未来は確定したものとして、計算に入れるしかない。
ほむら(……となると、問題はひとつ)
考えるべきは、さやかの破滅のタイミング。
つまり、ワルプルギスの夜が到来するまで、さやかが保つかどうかだ。
──あと、約2週間。
巴マミがいない以上、ワルプルギスの夜を倒すためには杏子の力が必要不可欠だ。
少なくともそれまでは、さやかの魔女化は防がなければならない。
しかし──
318 :
◆c6GooQ9piw
[saga]:2016/10/05(水) 21:39:53.35 ID:9fosQfKcO
ほむら(……わからない)
これからの魔女の出現頻度。
その強さ。
それに対してさやかが使用する魔法。
その使用に伴い蓄積される穢れ。
いくらほむらにこれまでの経験があるとはいえ、さすがに不確定要素が多すぎる。
容易に計算できるものではない。
それでも、経験から感覚的に判断するとすれば……
ほむら「……」
……ギリギリ、だろうか。
予想外の事態が起こらない限りは、ワルプルギスの夜が到来するまでは耐えられるように思える。
勝算は、これからのさやかが、精神的な理由から穢れを溜めることはほとんどないと予想できるからだ。
悩みを吹っ切って前向きに戦闘に取り組める現状なら、さやかも後ろ向きな思考に陥ることはそうないはずだ。
もちろん、ワルプルギスの夜との戦闘は間違いなく不可能だろう。
どれだけいい状況が続いても、さやかのソウルジェムはそこで限界に達するはずだ。
しかし、その日を無事に迎えることさえできれば、いくらでも手の打ちようはある。
さやかを言いくるめるか、あるいはワルプルギスの夜を倒すまで杏子をごまかすか……
とにかく、ワルプルギスの夜を倒すことだ。
そこさえクリアできれば、あとは誰がどうなっても構わない。
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/05(水) 21:42:52.47 ID:x1/JhlBkP
こんなこと考える女子中学生なんておるんかね・・・
素直に「最強クラスの魔女がもうすぐ見滝原に来るから、それまで死なないでくれ」と言えばいいような気がするけど
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/06(木) 00:51:36.69 ID:gPl7t2cyo
ほむほむはもうただの女子中学生じゃないからな……
親友が死んだり、心を通わせられなくなったりって場面をループする度に何回も繰り返してる
まどか以外の死に対する感受性がすり減ってしまっていてもおかしくない
アニメ本編でもさやかの遺体は荷物扱いだし、杏子にお前も人間じゃねえよって煽り入れてるし
321 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/06(木) 23:24:09.90 ID:KAV+ru8Io
ほむらのループがたった1ヶ月とはいえ、何十周、下手すりゃ何百周もしてる。
少なめに見積もって百数十周としても、もう20代後半よ?
しかも常に最前線にいる20代とか、その思考パターンは想像もできんわ。
ケリィとかエクストラの赤チャに近い生き方してるし、ワルプル倒してまどかの魔女化を防ぐ目的以外、
全部摩耗しきってるだろ。
322 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/07(金) 04:02:55.48 ID:+JfRBsDdo
煽りに関しては、ほむらに限らず……というかまどマギに限らず
虚淵の作品の大半で登場人物が煽り合って対立するからな
お前そこもうちょっと対話できるだろ、の積み重なりで全員不幸になるの繰り返し
323 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/07(金) 16:59:01.74 ID:TOGvE5RYo
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ Q. 巴マミ(ともえ まみ)とは―― ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
__〃^ミ、__,,,,....,,,,_
/⌒{{=ミィ幺圭圭圭圭ミ≧z..、
⌒>《_≧{≫'''" ̄ ~`'''寺圭ミ└
/ ((>''" / ``寸圭心、
/ィ .// / ノ `寸ミ沁
∨ / ,:' / / ヽ `:, ゙寸l私
/ / 斗‐‐// / ⌒ト、i ! Y仞 ←チラガー:もっちりした食感
/ / ,' ∠ {/ 二,,, i i } } }少゙
{ { { { ,ィi然 テ斧≧jノ} j! j! } ←ミミガー:コリコリした食感と焼けた良い匂い
弋 人i {!i.)ll} わ戔心 ; / ノ
\ rハ弋ソ 弋;;;;;;タノ /^)ノ ←ハナブク:癖もなく脂身がのって濃厚な味わい
f⌒「{{_{゙i⊃ ⊂ニ/彡,斗‐'"⌒}
辷弋::::::ト.、_ `ー '' _,.ィ/ -―__〉 ←タン:脂肪があるため柔らかくタウリンが豊富
}⌒ヽrミニ彡}<∀/>ニ、/ ,.ィ<孑''"~} ←トントロ:脂がのってるが、さっぱりとしっかりとした歯ごたえ
ニ二>j /仁ニ(7ー-┐ \ミァ"_,.ャ≦ } ←クビジリ:脂肪が細かく入りしっかりした歯ごたえ
/ __〈 { f彡イf゙{ {\/ _/ ( (__`'''" ̄`ヽ
{ 〃 ̄ } ゝ_,,.::jj \>`ヒ o],,.._`ー‐''"⌒ヽ } ←バラ:濃厚な脂身が特徴
`( `ー//:::〃`iトミ/〈 '⌒{-┴-...,,_ ノノノ
/ ̄ヾ::〃;;斗=〈≦i `<〜、,,} ''"´ ←スペアリブ:骨の周りの脂肪と赤みのバランスが良いところ
∠.:.:.:.:.:./.:`'"/.:.:.:.:i.:.:.j _{_
(ヾ/`ミメ.:.:.:./孑三ミ}.:.:.\〃ilaミ} ←ロース:肉質がきめ細かく柔らかくって一番美味しいところ
`^{::::::`ミ三ヾノl レ辷ニ彡(/⌒"
`"`ー<l、_ノiΠl辷}}==ヨ} } ←ヒレ:脂肪が少なく柔らかい
l:;l:;l:;代辷彡>"⌒''"
{ヽ/{_}ト ̄ ←もも:さっぱりとした味わい
l::::::::ll::{
}f^Lll::l ←豚足:プルプルコラーゲン
j__ノ^゙}
ゝ_ノ ←チグマ:骨と皮だけだがコラーゲン豊富
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ A. 豚 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
324 :
◆c6GooQ9piw
[saga]:2016/11/03(木) 11:42:02.10 ID:54+uGDlMO
さやかにとっても、絶望して魔女になるよりは、最後まで彼女のままでいられる方がいいはずだ。
さやか自身が納得しているのなら、これ以上ほむらが口を出すべきではないだろう。
ほむら「……悪くないアドバイスかもしれないわね。少なくとも、美樹さやかのような人間が魔法少女になってしまった時点で、希望なんてほとんどないのだから」
半ば本心から、ほむらは杏子に同意した。
だが、ほむらの言葉に杏子の様子が一変する。
杏子「……てめえ、わかってやがったのか?」
ほむら「……何が?」
ほむらがキョトンとして聞き返すと、杏子はほむらに怒鳴りつけた。
杏子「とぼけんな! あいつが……さやかが、とても魔法少女としては生きていけないような奴だって……わかってやがったんだな!?」
……あぁ、そういうことか。
ほむら「まぁ、そうね」
杏子「だったら、だったらなぜ……!」
ほむら「……」
325 :
◆c6GooQ9piw
[saga]:2016/11/03(木) 11:43:46.38 ID:54+uGDlMO
『なぜ、契約を止めなかったのか』
そう言いたかったのだろうが、その先の言葉は出てこなかった。
当然だ、杏子もわかっているのだろう。
しかし、ほむらはあえて指摘した。
ほむら「言っておくけれど、彼女が契約した要因の大部分は、あなたが占めているわよ」
杏子「……っ!」
だから、言えない。
最も責めるべきは、杏子自身なのだから。
杏子「わかってるよ……くそっ!」
そう言い捨て、うなだれる杏子。
後悔しているのだろうか。
だが、ほむらはそんな杏子を見ても、もはや何も思わなかった。
──どうせ、次の時間軸では忘れている。
326 :
◆c6GooQ9piw
[saga]:2016/11/03(木) 11:44:52.16 ID:54+uGDlMO
ほむら「……!」
無意識にそんなことを思っていたことに気付き、ほむらは軽く首を振った。
この思考はダメだ。
やり直すことが当たり前になってはいけない。
まだこの時間軸でも希望はある。
諦めて次に託すのは、本当に打つ手がなくなり、どうしようもなくなったときだけだ。
それまでは、どんなにわずかな光であろうと、手を伸ばし続けなければならない。
ほむら「……」
杏子の後ろ向きの思考に当てられたか。
そうでなくても、いつまでも杏子に悩まれていてはほむらの計画の支障になる。
とりあえず、フォローのひとつくらいはしておいてやるべきだろう。
ほむら「あまり気にしないことね。あなたの存在がさやかの契約の原因のひとつになったことは確かだけど、それだけじゃない。彼女も叶えたい願いがあったからこそ、契約したのよ」
杏子「……」
返事はなかった。
ほむら自身、フォローになっていたかどうか怪しく思ったくらいなので、仕方がない。
まぁ杏子なら、さやかと違って精神的に激しく落ち込むことはないだろう。
そのうち切り替えられるはずだ。
しかし──
ほむら(……良くない兆候ね)
杏子の中で、さやかの占める割合がかなり大きくなっている。
もしさやかが魔女化すれば、今の杏子なら間違いなく何らかの行動を起こすだろう。
その結果、ほむらの不利益に繋がるであろうことは、想像に難くない。
やはり、さやかの魔女化は絶対に避けなければならないのだ。
327 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/03(木) 16:05:51.35 ID:bdjZ41IYo
乙
相変わらず面白いわ
328 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2016/12/02(金) 18:46:44.71 ID:Tka7Q06TO
***
それから一週間。
さやかのソウルジェムは、ほむらの予測に近い経過で穢れを溜めつつあった。
しかし、さやかは学校では、極力そのような気配を見せなかった。
ほむらも、さやかと接触することはなく、静観を貫いていた。
表面上は、何事も起こっていないかのように、日々は過ぎていった───
329 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2016/12/02(金) 18:48:03.69 ID:Tka7Q06TO
***
QB「まどか、願いは決まったかい?」
まどか「……」
さやかが魔法少女の活動で忙しくなり、最近はまどかとキュゥべえが行動を共にすることも多くなっていた。
キュゥべえとしては好都合であり、それとなくまどかに契約を催促していたのだが……
まどか「ごめんね、今は特に叶えたい願いはないかな」
QB「そうかい」
未だにいい反応は得られずにいた。
QB(……手強いな。この年頃の少女なら、魔法少女というだけで喜んで契約することも珍しくないんだけど)
警戒されている、というほどではないが、安易には契約しないであろう意志が伺える。
ほむらやさやかに何か吹き込まれたのだろうか。
その可能性は高い。
特にほむらは、明確にまどかを契約させない目的で動いている。
その理由は不明だが、キュゥべえに対する強い敵意すら感じた。
まどかに何を話していてもおかしくはない。
330 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2016/12/02(金) 18:50:11.40 ID:Tka7Q06TO
QB「焦って決める必要はないよ。一度きりの願いなんだから、後悔しないようにじっくり考えるといい」
まどか「うん、ありがとう」
QB「ただし、手遅れにはならないようにね。まどかがどんな願いを叶えるかはわからないけど、考えすぎてタイミングを逸してしまっては仕方がない」
まどか「……そうだね」
QB「……」
まどかの魔法少女としての素質は、本当に凄まじい。
これまでに契約した中で最も素質のあった少女ですら、比較にならないくらいだ。
これをみすみす逃す手はない。
簡単な話だ。
まどかにこれといった願いがないのなら、願いを必要とする状況を作ってやればいい。
ワルプルギスの夜がこの町に訪れたときが、絶好の機会となるだろう。
自分の町が破壊されているのを見れば、まどかも契約する気になるはずだ。
QB(……しかし、あまりいい状況とは言えないな)
そのためには、ほむらたちにワルプルギスの夜を倒されるわけにはいかないのだが……
正直今のままでは、その可能性もなくはない。
331 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2016/12/02(金) 18:51:33.97 ID:Tka7Q06TO
QB「……」
一番の想定外は、未だにさやかが魔法少女として生き残っていることだ。
もし3人の魔法少女が協力するようなら、ワルプルギスの夜ともそれなりに戦えはするだろう。
まさか、倒せまでするとは思えないが……
QB(……いや、万全を期すべきだ。万が一すらあってはならない。まどかの素質には、そこまでする価値がある)
常識では考えられないほどの素質。
どういう経緯でまどかにそれほどの素質が備わったのかは不明だが、研究次第では再現も可能かもしれない。
しかし、まどかを魔法少女にできなければ、全ての可能性は霧散してしまう。
多少強引でも、ここは確実性を重視するべきだ。
QB(仕方がない。本来なら、あまりこういう小細工は好ましくないんだが……)
基本的に、キュゥべえが自ら状況に手を加えることは少ない。
魔法少女を絶望させるためには、自分自身が原因で破滅したのだと思わせることが大きな要因のひとつになるからだ。
あのとき状況が変わっていなければ……などと、言い訳させる余地を作らせてはならない。
しかし、どうしても放置しておくことができない場合は、容赦はしない。
特に今回は鹿目まどかだ。
間違っても、失敗は許されない。
QB(──少し、手を打っておくかな)
332 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2016/12/02(金) 18:53:10.37 ID:Tka7Q06TO
***
──実際、ほむらの予想は当たっていた。
このまま何も起こらなければ、さやかが、ワルプルギスの夜が到来する日まで生き残る可能性は高かった。
だが、仮定の話をしても仕方がない。
何もないはずがなかったのだ。
あの悪魔を相手に、待ちの姿勢で構えたことがそもそもの間違いだったのか。
いずれにせよ、結果的にはほむらの考えは甘かったとしか、言いようがなかった──
333 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/14(水) 06:45:47.87 ID:nKe8EGvA0
乙
334 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/19(月) 23:04:01.04 ID:J7SNv4baP
乙
べえさんがやるとしたら、さやかを誘導してまどかの同情を引くとかかな?
それはともかく次話マダー?
335 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/01/01(日) 11:06:30.01 ID:VvqbIC3bO
***
ほむら「……」
そのとき、ほむらはパトロール中であった。
魔力の反応を探りながら、街を塗りつぶすように効率よく歩いていく。
もちろんグリーフシードのためでもあるが、ほむらが魔女を倒すことで、間接的にさやかの負担を減らすという目的が大きい。
ほむら(今のところ、さやかの様子は概ね予想通り。このままのペースなら、なんとか……)
このまま現状を維持できれば、杏子とふたりでワルプルギスの夜に挑むことができる。
結局、この時間軸ではそれがベストであり、逆に言えば、それ以上の状況を作り上げることは不可能だった。
もし、ほむらと杏子のふたりでワルプルギスの夜と戦ってみて、それでとても勝ち目がないようなら、この時間軸は始めから詰んでいたということになる。
しかしそうなったときは、ほむらが満たさなければならない条件を知ることができたという意味で、前進と言えるだろう。
いずれにせよ、試してみるしかないのだ。
336 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/01/01(日) 11:07:43.69 ID:VvqbIC3bO
ほむら(これだけ繰り返しても、まだ手探りの段階……一体私は、何度繰り返すことになるのでしょうね)
別に途方に暮れているわけではない。
まどかを救うまでは、何度でも時間を巻き戻し続ける。
既にその覚悟はできている。
ほむらも、自分がうまく立ち回れているとは思っていない。
行動にかなり無駄もあるのもわかっている。
それでも、数えるのを諦めるくらいには繰り返してきて、その成果は間違いなくほむらの中に蓄積している。
始めの頃に比べれば、感情に振り回されることもほとんどなくなり、かなり冷静に動けるようになったと自分でも思う。
しかしそんなほむらを嘲笑うかのように、どの時間軸でも、ほむらが予想もしないことが起こり続けるのだ。
それだけ世界に無数の可能性が存在する……ということなのだろうか。
先は長い。
まだまだ終わりは見えない。
だが、そんな途方もない可能性は、逆にほむらの希望でもある。
それほど可能性が無数に存在するのなら、ワルプルギスの夜を倒せる可能性も、きっとどこかに存在するからだ。
いつか、ほむらが全ての可能性を埋め尽くし、その全てを把握することができれば──
そのときこそ、まどかを救うことができるだろう。
337 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/01/01(日) 11:10:42.70 ID:VvqbIC3bO
ほむら「!」
不意に、ソウルジェムが反応した。
魔力の反応だ。
ほむら(さっさと片付けてしまいましょう)
そんなことを思いながら、ほむらは足早に反応があった方向へと向かっていく。
ほむら「……ここね」
結界を見つける。
できれば、さやかや杏子が来る前に終わらせたい。
迷わず中に入ろうとして──足が止まった。
ほむら「……」
違和感を覚える。
しかし、その正体がわからない。
ほむら(何かが、引っ掛かる……?)
単なる直感ではない。
基本的にほむらは、直感、第六感といった、曖昧なものは信用していない。
理由があるはずだ。
恐らく、これまでの時間軸での経験が警鐘を鳴らしているのだろうが、それが何なのか、わからない。
危険な魔女?
思い出せない──いや……
ほむら「まさか……」
思わず、魔女がいるであろう方向を睨み付ける。
一応見当は付いたが、魔女の姿を見てみないことには確信が持てない。
ほむらは警戒しつつ、結界の中心部へと歩を進めていった。
338 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/14(土) 22:10:51.95 ID:ehy+aXmdO
乙
339 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/01/31(火) 06:55:18.05 ID:FuB4lQQQO
使い魔に同様の違和感を覚えつつも、危なげなく凪ぎ払い、ほむらは魔女の下に辿り着いた。
ほむら「……やっぱり」
その姿を見て、疑惑が確信に変わる。
ほむら(やはりそうだ……私はこの魔女を、『知らない』)
それは、これまでの時間軸を通して、ほむらが初めて目にする魔女であった。
基本的に、どの時間軸でも同じ魔女が出現するというわけではない。
ほぼ毎回出現する魔女もいれば、ほとんど出現しない魔女もいる。
あるいは、何らかの条件を満たさないと出現しない魔女もいるかもしれない。
だが、ほむらは何度も同じ時間を繰り返す中で、低確率で出現する魔女ですら、既に数えきれないほど目にしている。
最後に初めて見る魔女と戦ったのがいつだったのか、思い出せないくらいだ。
だからこそ、今のほむらが魔女と戦うときは、もはや意識せずとも的確に弱点を突き、効率よく作業のように倒すことができていた。
もっとも、つい最近お菓子の魔女に辛酸を舐めさせられたばかりではあるのだが……
まさか、ここにきて初めて見る魔女と遭遇しようとは、思ってもみなかったのだ。
ほむら「……」
単に、非常に低い確率をここで引き当てただけのことなのか。
あるいは──
ほむら(……警戒する必要があるわね)
340 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/01/31(火) 06:58:27.10 ID:FuB4lQQQO
ほむらも魔法少女である以上、綱渡りで生きているようなものだ。
そのことを忘れてはならない。
魔女との戦いに絶対はない。
何かひとつでも間違えれば、それであっけなく終わってしまう。
いつ死んでもおかしくはない。
あくまで、たまたま今日まで生き残っているだけなのだ。
その意識を持っていなければ、魔法少女としては致命的だ。
ただ漫然と生きることなど、魔法少女には許されていない。
そして、ほむらに失敗は許されない。
万が一すらあってはならない。
ほむらが死ねば、まどかの破滅が確定する。
だからこそ、ほむらは万全を尽くすのだ。
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/10(金) 19:54:00.89 ID:pjyP1w6A0
乙
炉路さんとは顔見知りなのかな?
342 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/02/28(火) 23:53:49.23 ID:dl+eeVL8O
***
さやかには、ひとつの予感があった。
さやか「……」
自身のソウルジェムを見つめる。
もはや、明確に色が変わってしまっていた。
毎日、着実に穢れが溜まっていく一方だ。
しかしだからこそ、ソウルジェムがどれほどまでの穢れを許容できるのか、さやかはまだ知らない。
そのはずだった。
本来なら、見えないゴールに怯えていたのだろう。
しかし、なぜだかさやかにはわかっていた。
さやか(……まだ、ほんの少しだけ、余裕がある)
限界は近い。
それでも、まだ、まだ戦える──
343 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/03/01(水) 06:26:16.91 ID:ZxgHE20ZO
***
激しい爆発が起こる。
直後に、グリーフシードが現れた。
ほむら「……」
決して弱かったわけではない。
ほむらも普段より多くの武器を使用し、確実に魔女の息の根を止めにいった。
だからこれは、当然の結果とも言えるかもしれない、が……
ほむら(杞憂だったのかしら。いや、しかし……)
どうしても、釈然としない部分は残る。
偶然ならいい。
可能性は低いが、あり得ない話ではない。
しかし、これが何らかの異変の前兆だとしたら──
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/03/31(金) 06:14:07.68 ID:XuQf1rjuo
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・)
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
345 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/03/31(金) 21:09:17.17 ID:+D7mP617O
ほむらがそこまで考えたときだった。
ほむら「……!」
またしても、ソウルジェムが反応した。
一瞬、倒しきれていなかった可能性を考えたが、即座に排除する。
明らかに、先程とは異なるパターンの反応だった。
ほむら(別の魔女の出現……これも偶然?)
複数の魔女が局地的に活動を行うことは少ない。
獲物や結界などの理由から、大抵はそれぞれの縄張りがあるからだ。
実際、ほむらが1体の魔女を倒したあと、すぐにこのように他の魔女の存在を感知したことは、あまり記憶にない。
ほむら「……」
不穏なものを感じながらも、ほむらに取れる選択肢は限られている。
武器を携え、ほむらは反応元へと向かい始めた。
346 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/03/31(金) 21:13:21.57 ID:+D7mP617O
***
同時刻、杏子も異変を感じていた。
杏子(……何かが、おかしい)
街の空気が違う、とでも表現すべきなのだろうか。
理屈ではない。
ほむらとは違い、野性的な勘から正解にたどり着きつつあった。
杏子「……」
ズバアッ
眼前に迫る魔女を一撃で屠りながらも、杏子の表情は険しかった。
杏子(くそっ、嫌な予感がする)
脳裏にさやかの姿がよぎる。
道を違えたとはいえ、放ってはおけなかった。
杏子「……チッ」
グリーフシードを回収し、杏子は街中へと駆け出していった。
347 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/03/31(金) 21:20:46.53 ID:+D7mP617O
***
魔女の断末魔が響く中、ほむらはひとつの仮説に思い至っていた。
ほむら(まさか……)
ソウルジェムをかざし、限界まで索敵範囲を広げてみる。
距離が離れるほど精度は落ちるが、反応の有無くらいは判別できる。
ほむら「……そういうことね」
もはや間違いない。
明らかに、普段よりも多くの魔女が出現している。
ほむらの知らない魔女との邂逅は、魔女の出現数自体が増えたことによる必然だったのだ。
ほむら(これは、まずい……!)
本来なら、倒しきれないほどでない限り、魔女の増加は魔法少女にとって悪いことではない。
それだけグリーフシードを手に入れるチャンスが増えるということだからだ。
──だが、例外はある。
348 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/03/31(金) 21:24:59.37 ID:+D7mP617O
ほむらが倒した2体の魔女は、どちらも比較的手強い相手だった。
これは偶然ではないだろう。
恐らく、新たに出現している魔女は、どいつもそれなりの強さを有しているはずだ。
そう、ちょうど、さやかが魔力を大量に消費して、なんとか倒せるであろう程度の強さを──
ほむら「……っ」
どう考えても意図的なものだ。
仕掛けたのが誰かなど、考えるまでもない。
狙いはさやかだ。
そして悔しいことに、その効果はてきめんだ。
元々が、ぎりぎり持ちこたえられるかどうかという予想だったのだ。
もちろん1日に複数の魔女と戦うことなど想定していない。
──間に合わない。
それどころか、今日だけで限界を迎えてもおかしくない。
あるいは、既に──
ほむら「……」
さやかを探さなければならない。
349 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/03/31(金) 22:42:29.89 ID:+D7mP617O
ほむらは街中を駆け回っていた。
手がかりは魔女の魔力の反応だ。
この魔女の出現数なら、さやかが戦闘を行っている可能性は高い。
しらみ潰しに魔女を倒し続けていれば、そのうち見つかるはずだ。
魔女を倒さず、囮に使うことでさやかをおびき寄せるという案も考えたが、この魔女の出現率ではリスクが高い。
1体の魔女を見張っているうちに他の魔女との戦闘で魔女化していたなんてことになっては、目も当てられない。
それならばむしろ、さやかの負担を減らす意味でも、少しでも多く魔女を倒しておくべきだ。
ほむらは凄まじい勢いで魔女を倒し続けた。
魔力の反応があれば直行し、結界に入るなり能力を使用。
使い魔を無視し、そのまま魔女本体までたどり着き、即撃破。
当然ながら、そのような能力の使い方をしていれば魔力は減っていく一方だ。
だが今は、何よりも時間のロスが惜しかった。
ここでしくじれば、この時間軸での失敗がほぼ確定してしまう。
だからこそ、ほむらは必死だった。
早く、早くさやかを見つけなければ──
350 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/04/30(日) 19:05:31.71 ID:/ab89jyVO
──何体目のことだっただろうか。
魔女の結界内で、ようやくほむらはさやかを発見した。
それはちょうど、さやかが魔女を切り捨てる瞬間であった。
ほむら「……見つけたわ」
さやかがほむらに振り向く。
さやか「転校生か」
その姿はぼろぼろだった。
しかし、それよりも──
ほむら「……!」
さやかのソウルジェムを見て、ほむらは衝撃を受けた。
穢れが溜まり過ぎている。
予想以上に早いペースだ。
このままでは確実に、ワルプルギスの夜が到来する前に彼女は限界を迎えるだろう。
さやかが、たった今倒した魔女のグリーフシードでソウルジェムを浄化したが、もはや焼け石に水だった。
ほむら「……」
ほむらは、さやかにグリーフシードを差し出した。
ほむら「使いなさい」
351 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/04/30(日) 19:21:06.64 ID:/ab89jyVO
さやかに動揺はなかった。
ほむらの行動を、予想していたかのようでさえあった。
さやか「いらない」
ほむら「っ」
即答。
迷いは感じられなかった。
ほむら「……あなたの気持ちもわからないではないわ。でも、意地になっても仕方ないでしょう。ここは素直に受け取っておきなさい」
さやか「ありがとう。でも、別に意地を張っているわけじゃないから」
さやかはどこまでも平静を保っていた。
ほむらに対する反発すら感じられない。
その態度は、もはや彼女が意地などにこだわっていないということを物語っていた。
思い通りにいかないことに苛立ちを覚える。
先に冷静さを失ったのは、ほむらの方だった。
ほむら「わかっているの!? このままだとあなた、どうなるか……」
さやか「どうなるの?」
ほむら「それは……っ」
言えるはずがない。
ここで伝えたら、それがとどめになりかねない。
352 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/04/30(日) 20:07:13.03 ID:/ab89jyVO
さやか「……知ってるんだ。まぁそんなこと、どうだっていいけどね」
ほむら「え?」
取り乱したほむらを前にしても、さやかは落ち着いていた。
さやか「あたしは今の自分に満足している。最後まで、正義を貫いて生きていたいんだ」
さやか「ソウルジェムに穢れが限界まで溜まったとき、たとえあたしが死ぬんだとしても……あたしはそれでも構わない」
……予想外だった。
さやかが、自身の死すら覚悟しているとは思っていなかった。
こうなると、もう言葉での説得は無理かもしれない。
ほむら「あなたの生き方は否定しないし、好きにすればいい。でも、だからといって自分から死ぬことはないでしょう。このグリーフシードを使えば……」
さやか「前にも言ったでしょ。あんたは信用できない。あたしを助けようとしてるのだって、あたしを思いやってのことじゃないでしょ? わかるのよ」
ほむら「……」
当然、こうなる。
さやかにとってほむらは、自分勝手な魔法少女のひとりでしかない。
少なくとも、単純にさやかを心配するような性格でないことは見透かされている。
それはつまり、裏があるということだ。
そんな人間の施しを受け、更にそれがほむらに利用されるのだとすれば、さやかが拒みたくなるのもわかる。
たとえ天秤に乗っているのが自分の命だとわかっていても、今のさやかは正義を優先するのだろう。
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/30(日) 21:34:03.45 ID:81AeL9C4P
言葉だけじゃどうにもならないところまでくると、
ほむらに限らず大概の魔法少女は詰んじゃうよね・・・
乙
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/30(日) 22:29:45.60 ID:cEWzbO1jo
>さやか「ソウルジェムに穢れが限界まで溜まったとき、たとえあたしが死ぬんだとしても……あたしはそれでも構わない」
さやかが死ぬのは自業自得だけど、魔女化しちゃうんだよなぁ……。
「あなたは死なないわよ? 死ぬのは、魔女も魔法少女も知らない無関係な人たち。
あなたの正義は、無関係な人々を巻き込んだ死で終わるのよ」
とでも言えば、さやかも耳を貸しそうな気がするんだが。
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/30(日) 22:39:58.49 ID:81AeL9C4P
>>354
そんなこと言ったら、魔女化の真相に辿り着いてしまうだろう
それで「死にたい」と思ってくれればまだいいけど、「死にたくない」って思い始めたら最悪だよ
何をするか分かったもんじゃない
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/06(土) 19:03:44.02 ID:pYDgRGdr0
正義、正義ねぇ…まどマギ世界でこれほど無価値で虚しい言葉はないだろうな
357 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/07(日) 16:06:38.97 ID:jVxbQ0uVo
>>356
正義が無価値なのは魔法少女視点の話だよ
さやかは一般人視点から否定するだろう
358 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/05/31(水) 18:20:41.92 ID:L/ipiLtmO
ほむら(確かに、さやかが自分で納得しているのなら、それ以上は他人が口を出す話じゃない……)
──どう生きるか、あるいは、どう死ぬか。
それを決めるのは、常に当人であることが望ましいと、ほむらは考えている。
価値観などそれぞれで異なる上に、そもそも魔法少女に正しい価値観など存在しない。
当人が本心から納得できる生き方ができれば、それが一番なのだろう。
誰よりも、ほむら自身がそうしているのだから、そこを否定するわけがない。
359 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/05/31(水) 18:22:25.79 ID:L/ipiLtmO
ただし、それは──
ほむら(知ったことじゃないわね)
──ほむらの目的の妨げにならない場合に限る。
まどかを救える範囲内であれば、さやかの生き方を尊重することもやぶさかではない。
さやかを今日まで放置していたのは、それが理由のひとつでもある。
しかし、もうそんな余裕はない。
たとえさやかの生き方を歪めてでも、これ以上は放ってはおくわけにはいかない。
もう本当に猶予がないのだ。
この様子だと、明日にでもさやかは魔女になってしまうだろう。
やはり、何か手を打たなくてはならない、のだが……
360 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/05/31(水) 18:24:53.68 ID:L/ipiLtmO
ほむら(……どうする?)
さやかが魔女になれば、高確率で杏子が命を落とす。
そうなれば、ワルプルギスの夜を倒すことはほぼ不可能になる。
そうなれば、まどかは──
ほむら(……ダメだ。やはり放置しておくわけにはいかない。しかし……)
……さやかが魔女化しても、杏子が死なない方法を模索するべきか?
それがどれほど難しいかは、ほむらが一番よく知っている。
既に何度も試みたが、結局確実な方法は見つかっていない。
キュゥべえは甘くない。
さやかが魔女化したという事実は、杏子に無謀な賭けへと身を投じさせるには十分なのだろう。
やはり、さやかの魔女化を避けることが最も確実なのだ。
361 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/05/31(水) 18:34:28.72 ID:L/ipiLtmO
──この状況で?
ほむら「……」
……いや、方法はある。
最も確実な手段が、たったひとつだけ存在する。
しかし、この手段は──
このとき、ほむらは確かに揺らいでいた。
決して、ほむらは冷酷な性格というわけではない。
ただ、ほむらはとっくに覚悟を決めていたのだ。
目的のためなら、何を犠牲にしてでも前に進むという、覚悟を──
362 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/05/31(水) 18:36:14.85 ID:L/ipiLtmO
ほむら(今の私に、手段を選んでいる余裕はなかったわね)
揺らぎが止まる。
その目は、しっかりと前を見据えていた。
ほむら(もう、迷いはない)
ほむらは、現状と為すべき条件、自身の行動原理を再確認する。
ほむら「……」
やるべきことは、決まっていた。
そしてほむらは、ひとつの決断をする。
363 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/05/31(水) 18:37:41.27 ID:L/ipiLtmO
──さやかを殺すしかない。
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/31(水) 19:03:57.02 ID:nOhO4C1Io
おつ
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/01(木) 13:16:03.07 ID:t6aXkz35o
おつ
ふと思ったんだが、時間停止中に「穢れを貯めたソウルジェムにグリーフシードを近づけて」も穢れは吸えないのかな?
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/01(木) 13:18:09.74 ID:oZdj8BWuo
乙です
あぁぁぁ…って感じだな
自分の中で可能な限りの手を打ってるのにどんどん崖っぷちに追い詰められている感じがたまらないわ(いい意味でなくww)
読んでて胃と心が痛くなってくる
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/01(木) 13:21:25.00 ID:oZdj8BWuo
>>365
停止中はムリなんじゃないかな?
描写的に、ほむらの時間停止って停止前に接触していないものは時間が進まないっぽいし
停止中にふん縛るかジェム取り上げて停止後にやれば、とか思ったけど、こっそりは出来ないし、知られたらそれで余計に濁るかもしれんね
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/01(木) 13:31:18.90 ID:IZ2nJatiO
>>367
叛逆の場合は触れることで後から動かすことも出来たみたいだけどアレは既に魔女化してるせいで能力拡張されてる可能性があるしな
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/01(木) 19:55:21.52 ID:fIwkXVIAP
乙
これではまどポのほむら魔女化ルートじゃないか・・・
「できる」と「やれる」は別物だもんねえ
魔法を使えば色々できるんだろうけど、魔法を使っているのが人間である以上、やれることには限りがある
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/01(木) 19:58:40.36 ID:fIwkXVIAP
間違えた
魔女化じゃなくて看取られエンドだった
大分昔の話だから記憶が曖昧になってる
371 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/06/30(金) 08:07:06.26 ID:FEmLPHcTO
ここでさやかが死ねば、杏子が死ぬことはない。
杏子はさやかの死を悲しみはするだろうが、それでほむらに協力しなくなるということもないだろう。
もちろん、さやかを殺したのがほむらであることを知られなければ、ではあるが。
さやかが連日魔女と戦っていることは、杏子も知っている。
さやかの死に疑問を抱くことはないはずだ。
ほむら「……」
ほむらはいつの間にか、冷静さを取り戻していた。
殺すのなら、できるだけ早い方がいい。
また、誰にも目撃されてはならないし、知られてはならない。
──つまり、今この時が絶好のチャンス。
372 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/06/30(金) 12:39:33.81 ID:FEmLPHcTO
さやか「話はおしまい? なら、あたしはこれで……」
さやかがほむらから目線を外す。
ここだ。
一瞬だが、このタイミングがベスト。
これ以上距離が離れては、警戒されてしまう恐れがある。
ほむらは素早く盾から拳銃を取り出し、さやかに向けて構えた。
さやか「……ッ!?」
狙いを定める。
狙うのはもちろん、さやかのソウルジェムだ。
完全な不意打ちだ。
さやかは全く反応できていない。
人を殺すということを意識しつつも、手がぶれることはなかった。
ソウルジェムを照準に収める。
この状態で、外すことはあり得ない。
自分はこんなに簡単に人を殺せる人間だったのかと、頭の片隅で思った。
思っただけだ。
そのことに対する驚きはなかった。
──銃声が響いた。
373 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/12(水) 15:52:06.60 ID:l+UoM5pH0
あ
374 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/07/13(木) 22:22:31.83 ID:3WgO0sCmO
ガキィィィン!!
ほむら「……!」
しかし、銃弾がさやかのソウルジェムを砕くことはなかった。
さやか「あ……」
ほむら「……」
ほむらが引き金を引く直前、ほむらとさやかの間に飛び込む影があった。
杏子「……何やってやがる」
乱入者は、佐倉杏子。
恐らく、ほむらの目線と拳銃の角度から銃弾の軌道を予測し、槍で防いだのだろう。
杏子の乱入。
これは、ほむらにとって最も望まない展開だった。
ほむら(ここで佐倉杏子か……最悪ね)
これでもう、このままさやかを殺すわけにはいかなくなった。
さやかを殺したのがほむらだと知っていれば、杏子がほむらに協力するわけがない。
375 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/07/13(木) 22:24:40.77 ID:3WgO0sCmO
杏子「おいさやか、ここは逃げとけ」
さやか「……うん」
ほむら「……?」
さやかが素直に従ったことに若干の違和感を覚えたが、もう、気にする必要もないのかもしれない。
……この時間軸は、もうダメだ。
もはや、ほむらは諦めかけていた。
手詰まりだ。
ここから、ワルプルギスの夜が来るまでさやかの魔女化を防ぎ、その上で杏子と共闘し、ワルプルギスの夜を倒す……不可能だ。
さやかが魔女化しても、杏子が死なないことに賭けるべきか──
376 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/07/13(木) 22:26:28.67 ID:3WgO0sCmO
杏子「ほむらてめえ……どういうつもりだ?」
ほむら「…………」
──いや、
まだ、終わってはいない。
運を天に任せる?
それでは、決まりきったレールから外れることはできない。
もう嫌になるほど経験した。
結局それでは、何も変わらない。
ほむら(そうだ、私の願いは──)
──自分のこの手で、まどかを救うこと。
他人任せではなく、自分自身の手で運命をねじ曲げ、変えてみせる。
それが、全ての始まりだったはずだ。
ほむらの根幹を支える願い、あるいは誓いとも言えた。
ほむら(……まだ、諦めるには早い)
だが、どうするか。
正攻法ではもう無理だ。
ここから、やれることがあるとすれば、それは……
377 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/17(月) 12:21:07.54 ID:SL16IcPg0
あ
378 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/20(木) 00:42:56.46 ID:eyv4Ea6V0
この場面で切れるカードがあるとすれば、魔女化のカミングアウトかね
「さやかが魔女化すればいずれ杏子がケジメをつけようとするだろうから、魔女になる前に殺してやるつもりだった」ってでも主張すれば何とかなるか・・・?
379 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/08/20(日) 13:16:32.00 ID:go5q8SprO
ほむら「……佐倉杏子。あなたも魔法少女なら、腕ずくできたらどう? そうよ、私と勝負しなさい」
ほむらの突然の提案に、杏子は戸惑いを見せた。
杏子「はぁ? お前、突然何を……」
ほむら「あなたが勝てば、美樹さやかを狙うのはやめてあげる。どうかしら」
杏子「なんだと……」
これしかない。
決闘という形をとり、半ば強引にでもさやかを殺すことを認めさせる。
そしてさやかを殺した後で、魔法少女が魔女になるという真実を明かし、さやかを殺すしかなかったと納得させる。
ほむら(事前に話したところで、杏子がさやかを殺すことに同意するわけがない。でも、ことが済んだ後なら……)
さやかが死ねば、杏子は少なからずショックを受けるだろう。
そのショックを和らげるためにも、さやかの死が避けられないものだったという言葉は、よく響くはずだ。
380 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/08/20(日) 13:20:09.70 ID:go5q8SprO
もちろん確実ではない。
策というより、賭けに近いかもしれない。
しかし、たとえどれほど薄い可能性であっても、ほむらに諦めるという選択肢はなかった。
杏子「……」
わずかに思案する様子を見せてから、杏子が口を開いた。
杏子「……わかった。約束は守れよ?」
ほむら「えぇ、もちろんよ」
お互い、馬鹿正直な人間ではない。
そこにはそれぞれの思惑がある。
たとえほむらが勝っても、杏子は全力でほむらを阻もうとするだろう。
それはほむらもわかっている。
重要なのは、そういう約束があったという事実だ。
381 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/08/20(日) 13:23:58.28 ID:MAPqlOtvO
ほむら「始めましょうか。せっかくだし、決闘形式でいきましょう。このコインが地面に着いたら、スタートよ」
杏子「……いいぜ。やりな」
ほむら「……」
ピンッ
ほむらは、コインをはじいた。
ほむら(……これが、最後の足掻きね)
コインは回転しながら宙を舞い、最高点に到達し、やがて落下を始め──
キィン
──地面へと到達した。
382 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/18(月) 03:10:27.66 ID:94Q23K5mo
ほ
383 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/09/29(金) 17:13:19.87 ID:ZwAUqzOvO
ほむらは、即座に能力を発動させた。
『時間停止能力』
魔法少女の中でも、トップクラスに強力な能力だ。
この能力を用いて攻撃された場合、対処は極めて困難である。
ソウルジェムという弱点を持つ魔法少女が相手なら、ほぼ確実に相手を仕留めることができるだろう。
ほむら(……もっとも、今回はそういうわけにはいかない。杏子を殺してしまっては、この決闘の意味がなくなる)
この能力に弱点があるとすれば、発動する前に攻撃されること。
つまり、不意討ちだ。
しかし、今回ほむらは決闘の形式を用いることで、どのタイミングから戦闘が始まるのかを明確化した。
そして、戦闘開始直後に能力を発動することで、そのリスクを極力排除したのだ。
無事能力を発動できた時点で、ほむらは勝利を確信していた。
拳銃を構える。
384 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/09/29(金) 17:15:57.32 ID:ZwAUqzOvO
ほむら(この決闘で私に求められるのは、勝つことだけではなく、杏子の動きをしばらく封じること)
その理由は、さやかを殺すためだ。
たとえ決闘に負けても、杏子がさやかを殺すことを素直に了承するはずがない。
だから、この決闘が終わったらすぐにさやかを見つけ出し、始末する。
その際に妨害されないように、ここで杏子にはすぐには動けないほどの傷を負わせておかなければならない。
ほむら(……手足を撃ち抜いておきましょう。魔法少女とはいえ、動けるほどに回復するには、ある程度の時間はかかるはず)
ほむらは狙いを定めた。
罪悪感がないわけではない。
ほむらが自分の都合でひとりの少女を殺そうとしているのに対し、杏子はその少女を必死で守ろうとしている。
そんな杏子に、邪魔をさせないがためだけに、動けなくなるほどの傷を負わせようとしているのだ。
全てを承知の上で、しかしほむらの手に震えはなかった。
全てはまどかを守るためだ。
そのためなら──
ほむら(私は手段を選ばない)
引き金に掛けた指に、力を込める。
ほむら「……ごめんなさい」
385 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/10/31(火) 21:51:18.22 ID:5Xc7cQz4O
「おいおい、そいつはやり過ぎじゃねーの?」
386 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/10/31(火) 21:54:32.80 ID:5Xc7cQz4O
ほむら「……ッ!?」
ほむらが引き金を引く、その直前だった。
背後から、声が響いた。
ほむらが弾かれたように振り向くと、そこには当然のように、杏子の姿があった。
ほむら「……あなた、どうして……!」
杏子「すました顔して、しれっと人の手足を撃ち抜こうとしやがって。恐ろしいねぇ」
ほむら「っ……」
内容とは裏腹に、からかうような口調だ。
しかし、ほむらは自分ののどが干上がるのを感じていた。
横目で、先程まで杏子が『固まっていた』位置を確認したが、既にその姿は消えている。
387 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/10/31(火) 21:56:13.12 ID:5Xc7cQz4O
──あり得ない。
ほむらの能力は間違いなく発動している。
現に、ふたりの周囲からは物音ひとつしない。
しかし、明らかに杏子はその影響を受けていない。
ほむら「……」
ほむらの思考に空白が生じる。
あまりにも予想外の事態だった。
未だかつて、ほむらの能力が正面から破られたことはなかった。
これまで数多の時間軸を渡り歩いてきたほむらは、それこそ数え切れないほどに、この能力を使用してきた。
発動前に防がれてしまったことならある。
しかし、能力自体が効かないというのは、初めての経験であった。
388 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/11/27(月) 09:26:09.09 ID:wr82tVGwO
ほむら(……ダメだ、糸口が見えない。一体何が起こっているのか、見当もつかない……!)
そして、杏子がわざわざほむらの思考を待つはずもない。
杏子「さぁ、どうする? 頼みの綱の能力が破られて、次はどんな手を繰り出してくる?」
杏子の言葉に、ほむらの表情が歪む。
ほむら(次の手なんて、あるはずがない……かと言って、正面から戦って、私が杏子に勝てるとは到底思えない……!)
ほむらの強さは、決して能力一辺倒というわけではない。
能力を使わずとも、大抵の魔女は倒せる自信がある。
だが、今回ばかりは相手が悪い。
先程杏子は、銃弾を槍で防ぐという離れ業を見せた。
いくら魔法少女であろうと、簡単にできる芸当ではない。
しかし、杏子は事も無げにやってみせた。
つまり、正面戦闘における杏子の強さは、その域にまで達しているのだ。
389 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/12/31(日) 17:37:42.28 ID:c9uaaNApO
ほむら(……このまま戦えば、勝ち目がない。何か、何か策は……!)
なんでもいい。
この状況をひっくり返すことができるのなら、どんなものでも──
ほむら(……ここで杏子に勝てなければ、もうこの時間軸でまどかを救う手立てはない。絶対に、負けるわけにはいかない──)
周囲を見渡す。
焼け付くほどに、思考を加速させる。
ほむら(──諦めたく、ない──!)
しかし、考えれば考えるほど、結論は固まっていく一方だった。
やがて、悟る。
──ここからの逆転策など、あるはずがない。
390 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2017/12/31(日) 17:42:35.22 ID:c9uaaNApO
杏子「さあ、どうする!?」
ほむら「……………………」
ほむらの中で、張り詰めていたものが切れたような感覚があった。
ほむら(終わり、ね……)
ほむらは、能力を解除した。
ほむら「……私の、負けよ」
杏子「……」
ほむら「もう美樹さやかは狙わない。あなたの邪魔もしない。それで文句はないでしょう」
ほむらはそう言い捨てて、その場を去ろうとする。
しかし杏子としても、そのままほむらを逃がすはずがない。
杏子「待てよ、そんな言葉だけで……」
ほむら「……」
ほむらは時間を止めようとして、たった今その能力が通用しなかったことを思い出す。
杏子に振り返り、答える。
ほむら「……悪いけど、今はひとりにさせてくれないかしら。少し、疲れたわ」
杏子「……ッ!?」
ほむらの顔を見て、杏子が表情を強張らせた。
ほむら(……あぁ、私は今、どんな顔をしているのかしらね)
今や、全てがどうでもいい。
ほむら(少し、休みましょう……)
ほむらはフラフラと歩き出し、その場を後にした。
391 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/01/27(土) 17:28:56.66 ID:ozixwMScO
***
杏子「くそっ、なんだってんだよ……」
取り残された杏子は、困惑していた。
ほむらを問い詰めるつもりだったが、あんな顔を見せられては何も言えなかった。
杏子(全てを諦めたような表情をしやがって……さやかを殺せなかったのが、そこまでのことだったってのか?)
ほむらは明確な目的があって動いている。
それは間違いない。
さやかが生きていることが、その目的の妨げになるということだろうか。
杏子(……そんなことがあり得んのか? 逆ならわかる。ワルプルギスの夜に対する戦力の確保のために、さやかを死なせたくないってんなら理解できる)
しかし、さやかを殺そうとしていたとなると、話が変わってくる。
思い返してみれば、ほむらは始めからワルプルギスの夜とは、杏子とふたりだけで戦おうとしていた節があった。
392 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/01/27(土) 17:42:11.83 ID:ozixwMScO
杏子(今の状況を見越していた? 確かに、最近のさやかはいつ死んでもおかしくないような戦い方をしている。戦力として数えるには、あまりにも不確かかもしれない)
もちろんこれは、さやかを生かさなくていい理由であり、さやかを殺さなければならない理由にはなり得ない。
ほむらの目的がわからない以上は見当もつかないが、何らかの理由があってさやかを殺そうとしたのだろう。
杏子(……だとしても、やはりおかしい)
仮に、さやかが生きていることに不都合があったとしても、なぜ、ほむらがわざわざ手を下す必要がある?
放っておけば死ぬ可能性が高いのに、杏子に反感を買うリスクを負ってまで自ら殺そうとしたのはなぜだ?
どうせ魔女と戦い続けて力尽きるなら、その前にとどめを刺したところで大して結果は変わらない。
多少さやかの死が早まるだけだ。
杏子(……そこに違いがあるとでも?)
393 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/02/28(水) 21:03:23.91 ID:2jxc5yBsO
ほむらは感情で行動するタイプではない。
自分が引導を渡してやろうなどと考えるとは思えない。
必ず、さやかを殺さなければならない明確な理由があったはずだ。
杏子「……」
これ以上は考えても仕方がない。
ほむらはまだ情報を隠しているはずだ。
前提が揃ってないうちにあれこれ考えを巡らせたところで、想像の域を出ることはない。
杏子「……どうすっかな」
ほむらを問い詰める必要があるのは確かだが、先程の様子だとまともに答えるかどうか。
それに、さやかの様子も気になる。
状況が状況だけに構っていられなかったが、さやかは本来、逃げろと言われて素直に逃げるような性格ではない。
──さやかを探そう。
ほむらも、さやかに手出しをしないという約束は守るはずだ。
今のほむらに、行動を起こそうという気概はないだろう。
杏子「……間に合ってくれよ」
なぜか、嫌な予感が頭から離れなかった。
394 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/03/31(土) 22:15:42.35 ID:NRMu+G8YO
***
さやか「……」
さやかは、あてもなく走り続けていた。
ほむらが追ってくる様子はなかったが、立ち止まると、嫌な考えが頭を埋め尽くしてしまう予感があった。
気付いてはいけないことに、気付いてしまう。
知ってはならないことを、知ってしまう気がした。
さやか(……考えるな)
しかし、それでもさやかの中の冷静な部分は、結論を導き出しつつあった。
先程のほむらの殺気は本物だった。
間違いなく、さやかを殺そうとしていたはずだ。
そのことで怯えているわけではない。
決していいことだとは思わないが、魔法少女として魔女と戦っていたことから、命のやり取りにはある程度慣れてしまっている。
さやかが気にしていたのは、そこではなかった。
さやか(あのとき、ほむらが拳銃で狙っていたのは……)
395 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/04/01(日) 18:39:02.29 ID:R5ntGRlkO
ほむらの目的がさやかを殺すことだったとしたら、狙うのは普通、頭か胸ではないだろうか。
しかし、あのときほむらは、確かにさやかのソウルジェムを狙っていた。
さやか(それは、つまり──)
ソウルジェムを破壊されると、魔法少女は死ぬ?
──いや、そんな単純な話ではない。
さやか「……」
点と点が線で繋がっていく。
自分が痛覚を遮断していたことの、本当の意味を察していく。
気付いて、しまう。
さやか「あぁ……これが……」
ソウルジェムを見つめ、呟く。
さやか「『これ』が、あたしなんだ……」
恐らく、ほむらに言われても信じなかったであろう真実。
しかし今のさやかには、なぜか自然に受け入れられた。
始めは綺麗だったはずのそれは、今やほとんど濁りきり、見る影もない。
さやか「ここにきてやっと気付くなんて……あたしって、ほんと……」
そして、わずかに残った透き通るような青い部分も──穢れに犯されつつあった。
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/29(日) 22:10:02.57 ID:k4w0Ch2O0
さやさや・・・
397 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/05/31(木) 19:32:05.08 ID:iOV+WDJnO
杏子「──さやかっ!」
さやか「!」
もはや、ほとんど意識すら手放そうとしていたさやかだが、杏子の声に我を取り戻す。
振り向くと、そこには息を切らせた杏子が立っていた。
さやか「あんたか……どうしたのよ」
いつもの調子なさやかの言葉に、杏子はほっとした表情を見せた。
杏子「どうしたのよじゃねーよ……心配させやがって」
ため息をつきながら、さやかの隣に座る。
杏子「あいつには、もうお前を襲わないように約束させた。安心しな」
さやか「……そう」
杏子「つれねーな。まぁお前らしいけどよ」
そう言いつつどこか嬉しげな杏子の様子に、さやかの胸が痛む。
どう考えても、隠しきれるとは思えない。
それなら、これ以上だまし続ける方がよほど残酷だ。
398 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/07/06(金) 23:26:26.43 ID:4HQQUpz3O
さやか「……杏子、見て」
杏子「?」
ソウルジェムを手に掲げる。
それを見た杏子の様子が一変した。
杏子「お前……っ!」
さやか「もう限界みたい。最後にあんたに会えてよかったよ」
杏子「待ってろ、今グリーフシードで回復を……」
さやか「いいよ」
震える手で、あわてる杏子を制止する。
さやか「たぶん、無駄だよ。自分のことは、自分が一番よくわかる」
杏子「……ッ」
杏子の顔が歪む。
歯を食い縛り、悲痛な面持ちを見せた。
399 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/07/31(火) 19:20:06.06 ID:/hiK/WChO
さやかは杏子から目を逸らし、ひとりごとのように呟いた。
さやか「もう今さらどんな事実を突きつけられても気にならないと思ってたんだけどね……やっぱり、少しはショックがあったみたい。とどめになっちゃったのかな」
杏子が眉をひそめる。
杏子「……何を言ってんだかわからねえよ」
さやか「……」
ここで、さやかが気付いたことを杏子に伝えておくべきなのだろうか。
杏子なら、精神的にもソウルジェムの状態からしても、問題はないかもしれない。
さやか(……違うな。今あたしが杏子に伝えたいことは、そんなことじゃない)
時間はあまり残されていない。
杏子「……」
杏子はうつむき、落ち込んでいるように見えた。
あのときの、さやかへの言葉を後悔しているのだろうか。
さやか「杏子」
杏子「……なんだよ」
だからこそ、終わってしまう前に、何も伝えられなくなってしまう前に、ここで言っておかなければならない。
400 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/08/28(火) 02:06:33.42 ID:+QeVpCD0O
さやか「ありがとう。あたしが最後まであたしでいられたのは、あんたのおかげだよ」
杏子「……!」
未練がないわけではない。
こんな結末になってしまったことが、悔しくないわけではない。
しかし、杏子にそれを悟られたくはなかった。
杏子「……本心か?」
さやか「うん」
嘘ではない。
仮に、さやかがあのまま自分を見失っていたら、こんな気持ちで終わりを迎えることはできなかっただろう。
杏子がいたからこそ、さやかは──
401 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/08/28(火) 02:11:13.28 ID:+QeVpCD0O
さやか「だから、あんたが気にすることは……何も……ッ!?」
不意に、声が途切れた。
息が苦しい。
体が震える。
全身の力が抜け、倒れ込む。
感触から、杏子に支えられたのだと悟った。
杏子「さやか!??おい、さやか──」
杏子の声が遠くなる。
すでに限界だったのだろう。
いや、杏子がいなければ、もっと早かったのかもしれない。
402 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/08/28(火) 02:13:39.70 ID:+QeVpCD0O
さやか(……大丈夫だよ)
もう、声も出ない。
杏子は、必死にさやかに呼び掛けていた。
杏子「────」
あぁ、なんて顔をしているの。
そんな顔をさせたくない。
あなたに伝えたい気持ちは──
杏子「……!」
思いっきり、笑顔を見せつけてやる。
ここ数ヵ月はできなかった、満面の笑みだ。
さやか(……ありがとう)
杏子「────」
あぁ、なのになぜ、あなたはそんなに悲しい顔をしているのだろう──
そして、さやかは静かに、意識を手放した。
403 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2018/11/14(水) 18:10:32.98 ID:qYAZn7wJO
***
ほむら「……」
ほむらは、家でひとりうなだれていた。
終わった。
これで、ワルプルギスの夜を倒す道は完全に潰えたとみていい。
ここから杏子がとる行動は決まっている。
キュゥべえに誘導され、ありもしない希望にすがり、その命を落とすことになるだろう。
ほむらにそれを阻止する手立てはない。
特にこの時間軸では、杏子はほむらよりキュゥべえを信用する可能性が高い。
あの悪魔は容赦をしない。
確実に杏子を死に導くはずだ。
ほむら「……ッ」
すでに何度も見た結末だ。
詰みだとわかっているのに、わかっていたのに、どうあがいても抜け出すことができない。
だが、切り替えるしかない。
もうこの時間軸は諦めるしかないのだから。
次こそは──
404 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2019/01/04(金) 04:43:53.86 ID:Si5e7ne+O
ほむら「……」
そう呟いて自分を誤魔化すのも、何度目だろう。
何度でもやり直せるから、失敗を糧にできるから、だから、いつかは必ず──
本当にそうだろうか。
同じ結末を回避できないのなら、繰り返したところで意味はない。
偶然などない。
そんな曖昧なものに頼っていては、ほむらに勝ち目はない。
そもそも、ほむらが繰り返してきた回数は、偶然などに希望を見出だせなくなるには十分だ。
キュゥべえは違う。
あの悪魔は、常に全てを計算して動いている。
何があろうと自分の目的を果たせるように、確実な手を打ってくる。
キュゥべえに『次がある』などという甘えはない。
だからこそ、決して手を抜くようなことはない。
同じ土俵に立てていないのだ。
ほむらが毎回出し抜かれるのも、当然だろう。
405 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2019/01/04(金) 04:47:57.77 ID:Si5e7ne+O
ほむら(でも、だからといって……)
それでも、何度もやり直すことができるのはほむらの唯一の強みだ。
あのときの願いが間違っていたとは思わない。
時間を巻き戻せなければ、それこそ確実に終わっていた。
しかし、それがときに足枷になっているのもまた事実だった。
行動を選択するとき、そこに命を落とす危険性があれば、ほむらは容易には踏み込めない。
たとえまどかを救えなくても、ほむらが生きてさえいれば巻き戻しは可能だ。
だが、ほむらが死んでしまえばそれまでだ。
長い目で見れば間違った選択ではない。
全てはまどかを救うためだ。
しかし──
それはまどかを犠牲にして、自分が無駄に生き長らえていることに他ならないのでは?
406 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2019/03/26(火) 09:10:32.52 ID:piYOyBD9O
ほむら「……っ」
ほむらの胸が痛む。
どのような理由があろうと、まどかを苦しませるのはほむらの本意ではない。
本当にこの方法しかなかったのだろうか。
矛盾した行動をとらざるを得ない現状に、疑問を抱かないわけではない。
だが、この類いの問答は数えきれないほど繰り返してきた。
結論はいつも同じだった。
ほむら(ここまできて別の方法を試すなど、できるはずがない)
それはもはや、まどかを見捨てることと同義だ。
たとえ間違っていようが、ほむらは走り続けるしかないのだ。
407 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2019/03/26(火) 09:11:58.29 ID:piYOyBD9O
ほむら「……」
ただ、それは必ずしも前向きな感情からくる結論ではない。
もしかしたらほむらは、他に道はないからと、半ば逃げるような気持ちで繰り返してはいないだろうか。
もはや今のほむらには、その問いを自信を持って否定することができなくなっている。
もしそのように流されるように繰り返していても、決して成功するはずはないし、いつかほむら自身が擦りきれてしまう。
結局、シンプルな話ではある。
こうして繰り返していることで、少しずつ成功に近付いているという実感があれば、ほむらも希望を持って次に挑めるだろう。
しかし現状、ほむらが繰り返せば繰り返すほど、まどかを助けることなどできないのではないかと思わされてしまう。
それなのに、もはや目の前に他の手は残されていない。
どうにかしなければならないのに、これ以外の手段ではまどかを助けられないという確信だけがほむらの中にある。
──どうすればいいのか、わからない。
そんな後ろ向きな感情が、じわじわとほむらの心を蝕んでいく。
ソウルジェムの穢れが、ほむらの心情を明確に示していた。
408 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2019/07/28(日) 19:35:48.13 ID:VkMOFHkb0
ほむら「……!」
突然の人の気配に、ほむらは素早く振り向いた。
杏子「よう」
ほむら「あなた……」
侵入者は、佐倉杏子。
その背には、美樹さやかの姿があった。
いや、正確に言えば──『それ』はもはや、美樹さやかそのものではないはずだ。
ほむら「……」
予想はしていたことだ。
ほむらに落胆はなく、やはりそうかと府に落ちる思いすらあった。
すでに幾度となく見た光景だ。
杏子の心情を思えば胸にくるものはあるが、ほむら自身に動揺はなかった。
ただ、ここで考えるべきは──
ほむら(……杏子は、どこまで事態を正確に把握しているのかしら)
409 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2019/07/28(日) 19:42:53.09 ID:VkMOFHkb0
ほむらも、この状況から杏子を騙して協力させようとは、もう思っていない。
杏子は情に熱い一面はあるが、それで目を曇らせるほど愚かではない。
ある程度は──おそらく、さやかが魔女となってしまったことまでは、察しているはずだ。
そこをごまかすのはさすがに無理だろう。
そして、真実を知った杏子の行動は、もう決まっている。
ほむら「……」
この時間軸で失敗が確定した以上、この後のほむらの行動は特に考える必要はない。
杏子を追い出して、家でひとりワルプルギスの夜の襲来を待つのも悪くない。
ほむら(……だからといって、完全に放置するわけにもいかないでしょうね)
万が一、杏子がこの場でほむらに逆上して襲いかかる可能性も、なくはない。
杏子は本質的には理性的な魔法少女だが、さすがにこの状況で、ほむらに全く敵意を抱いてないということはないはずだ。
そういう意味でもやはり、今の杏子を放っておくわけにはいかないだろう。
410 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2019/11/22(金) 23:12:23.37 ID:MAd8f5eGO
ほむら「何の用かしら?」
杏子「聞きたいことがある」
ほむら(……でしょうね)
キュゥべえの誘いに乗らないように一応忠告はするつもりだが、それで引き留められないことはもうわかっている。
ほむら「……」
ほむらの目的に繋がらない以上、ここで適当なことを言って煙に巻くのは簡単だ。
だが、もはやほむらに嘘をつく気はなかった。
贖罪というわけではないが、杏子の疑問に正直に答えるくらいのことはするつもりだった。
杏子「さやかに、何が起こったんだ?」
ほむら「予想はついているんでしょう?」
杏子「……」
険しい表情だ。
状況が状況だけに仕方ないのかもしれないが、元凶はあの悪魔だとわかっているのだろうか。
万が一にもほむらに一因があると思われているのなら、その誤解だけは解いておきたい。
411 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/11/23(土) 23:40:30.71 ID:nYl+Wymho
おお、続いてたのだな 読んでるよ
412 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2019/11/24(日) 21:38:02.23 ID:iKvy3stU0
杏子「さやかが倒れた……いや、死んだ。そして、魔女が現れた」
ほむら「……それで?」
杏子「お前は知っているはずだ。さやかに、何が起こった?」
ほむら「……」
否定してもらいたいのだろうか。
いや、杏子はそれほど弱い人間ではない。
すでに、現実を受け入れる覚悟ができているのだ。
その上で、解決の手段を模索するために、まずは状況を正確に把握する必要があると考えているのだろう。
目の前の絶望から目を反らすほど、杏子は愚かではない。
──だからこそ、キュゥべえはそこにつけこんでくる。
ほむら「……あなたの想像の通りよ。さやかは、魔女と化してしまった。これからは、絶望を振り撒いて生きていくことになるわ」
杏子「……!」
ほむら「元に戻すことは不可能よ。バカなことは考えないことね」
忠告だけはしておく。
これで万が一にも杏子が生き残るならありがたいが、まずあり得ない。
413 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2019/11/24(日) 22:23:07.85 ID:iKvy3stU0
杏子「……次の質問だ」
ほむら「何かしら?」
杏子「魔法少女のソウルジェム……あれの正体は何だ」
ほむら「──」
ほむらはわずかに思考を走らせた。
杏子がそこに疑問を持つ場面は、この時間軸ではあっただろうか。
ほむら「……どういう意味かしら」
杏子「たぶんあれは、ただの道具なんかじゃない。あたしたちにとって大事な、いや、まさか……」
ほむら「……」
杏子「魔法少女、そのもの、か……?」
いったい、どこでそこまでの確信を得たのか。
何にせよ、ほむらに嘘をつく理由はない。
ほむら「その通りよ。ソウルジェムは、魔法少女の魂そのもの。私たちは、契約の際に身体から魂を抜き取られている」
ほむらの答えに、杏子は顔をしかめた。
杏子「くそっ、キュゥべえの奴……」
杏子が悔しがる素振りを見せるが、ほむらには疑問が残る。
414 :
◆c6GooQ9piw
[sage saga]:2019/11/24(日) 22:25:27.99 ID:iKvy3stU0
ほむら「あなた、そのことにはいつ気付いたの?」
杏子「……」
ほむらを見る杏子の目に、敵意は感じられなかった。
どうやら黒幕を誤解されてはいないらしい。
杏子「お前がさやかを撃とうとしたときだ。あたしが防いだが……あのとき狙っていたのは、さやかのソウルジェムだっただろ?」
ほむら「……そうね」
杏子「あのときの殺気は本物だった。本気でさやかを殺そうとしていたはずだ」
ほむら「……」
杏子「それで狙うのが、ソウルジェム、か?」
横から防いだ杏子が気付いたのなら、狙われたさやかも間違いなく気付いただろう。
もしかしたら、それが後押しとなって──
ほむら「……彼女には、悪いことをしてしまったかもしれないわね」
杏子が何を今さら、と苦笑する。
杏子「殺そうとした奴の台詞じゃねーよ……あとはまあ、さやかが魔女になったところを見たからな」
杏子は、さやかのソウルジェムから魔女が生まれる瞬間を見たのだろう。
同時に、さやかの身体はぬくもりを失い始めたはずだ。
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