ほむら「巴マミがいない世界」

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1 : ◆c6GooQ9piw :2016/02/20(土) 11:09:49.59 ID:8m/ElpKNO
まどマギSS
叛逆の内容は含みません

シリアス系
地の文ありです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1455934189
2 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:11:28.17 ID:8m/ElpKNO
それは、ひとつの可能性

ほんのひとつの歯車がずれただけで、未来は大きく変わっていく

だからこそ、私は何度でも繰り返す

ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

──今度こそ、あなたを救ってみせる

これは、どこかにあったかもしれない、ひとつの世界の物語
3 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:14:00.08 ID:8m/ElpKNO
出だしはいつも通りだった。

何度目かもわからない自己紹介を済ませ、伝わらないとわかっていながらまどかに忠告も済ませ、ほむらは拳銃を片手にキュゥべえを追っていた。

ほむら「このっ……待ちなさい!」

QB「」スタタタ

既に何発か命中しているはずなのだが、全く気にしている様子はない。
感情を持たない相手を痛覚で怯ませることは不可能だが、かと言って拳銃で物理的に止めることも難しい。

ほむら「くっ……」

そうこうしているうちに、いつもの場所が近づいてきた。

軽快に走っていたキュゥべえが、急にスピードを落とし、よたよたと歩きだす。
ほむらには追いつかれず、まどかにはそれがバレない最適な位置だ。
そのことが、ほむらを更にイラつかせる。
4 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:18:28.80 ID:8m/ElpKNO
QB「」ヨタヨタ

まどか「誰? 誰なの?」

まどか「……!」

まどか「あなたがわたしを呼んでいたの? ひどい、怪我しちゃってる……」

まどかとキュゥべえが接触する。
全てキュゥべえの思惑通りだ。

まどかがほむらの存在に気づく。

まどか「え……ほむらちゃん? どうしてここに……」

ほむら「……」

接触されてしまった以上、キュゥべえを狙っても意味はない。
ほむらは、自分の心象を悪くすべきでないことも考え一瞬ためらったが、やはり放ってはおけないと口を開く。

ほむら「そいつから離れなさい、鹿目まどか」

少しきつい言い方になってしまったが、あいつの危険性を伝えないわけにもいかない。
5 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:19:51.39 ID:8m/ElpKNO
まどか「どうしたの? ほむらちゃん……ダメだよ、こんなことしちゃ……」

ほむら「そいつは……」

しかし、ほむらの言葉がそれ以上続くことはなかった。

突然、ほむらの視界が白く染まる。

ほむらは、消火器を構えるさやかの姿を目の端に捉えた。

さやか「まどか、こっち!」

まどか「さやかちゃん!?」

さやか「早く!」

ほむら「……」

状況がわかっていても、この視界ではどうしようもない。
ほむらは、一旦追跡を諦めた。
6 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:22:24.57 ID:8m/ElpKNO
ふたりが逃げた先は、いつものように魔女の結界内だった。

これまでの傾向からすれば、ほぼ100%、巴マミが内部の魔女を倒すのでそれほど心配する必要はない。

が、やはり万が一ということもあるので、ほむらは様子を見にいった。



魔女の反応が消えた。
やはり、巴マミが魔女を倒したのだろう。

ここで巴マミに会うのは気が進まないが、まどかに一言でも言っておきたい。

ほむらは、とりあえず様子をうかがった。
7 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:23:28.86 ID:8m/ElpKNO
さやか「本当に、ありがとうございました!」

まどか「あ、ありがとうございました!」



杏子「いいって、怪我はなかったか?」



ほむら「あれ!?」

そこにいたのは、巴マミではなかった。
8 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:25:22.94 ID:8m/ElpKNO
さやか「あ! そいつがさっき話した、キュゥべえを狙ってた奴です!」

ほむらの声が聞こえたらしい。
思わず声を上げてしまったことを悔やむ。

まどか「ちょっと、さやかちゃん……」

杏子「あいつが……?」

杏子が、怪訝な目でほむらを見つめる。

杏子「おい、あんたらもう帰りな。あたしはあいつと話がある」

まどか「え、でも……その子、うちのクラスメイトで……」

まどかは、言外に自分も無関係ではないと伝えたかったのだろう。
だが、杏子はまどかに振り返り、一言だけ答えた。

杏子「……だから?」

まどか「っ」ビクッ

杏子にしては軽い威圧を込めただけのつもりだろうが、普通の女子中学生には少々刺激が強過ぎる。

言葉を詰まらせたまどかに、さやかが助け船を出した。

さやか「あ、あーわかりました! じゃああたしたちはこれで…」

まどか「え、でも…」

さやか「いいから行くよ!」

まどか「あ、待って…」

さやかが、まどかの手を引いて走り出す。

去っていくふたり。
残されたのはふたりの魔法少女。

キュゥべえは、いつの間にかその姿を消していた。
9 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:27:16.87 ID:8m/ElpKNO
杏子「さてと…」

杏子はほむらに向き直り、警戒心をあらわにして問いかけた。

杏子「何者だ、なんて聞く必要もねーよな。あんたも魔法少女だろ?」

ほむら「えぇそうよ。じゃあ私もこれで…」

杏子「待てよ。逃がすわけねーだろ。なんでキュゥべえを狙ってた?」

ほむら「……」

正直、この予想外の展開に対して考える時間が欲しかった。
状況の把握すらろくにできていない。

杏子「おい、聞いてんのか?」

この時点で、佐倉杏子がこの町にいるということは……巴マミは一体どうしたのだろうか。

杏子「おーい」

……ほむらは、時間を止めて逃げることを少々真剣に考えた。
10 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:28:55.35 ID:8m/ElpKNO
業を煮やしたのか、杏子はため息をつき、わずかに語気を弱めて再度ほむらに問いかけた。

杏子「はぁ……あのさ、お前も魔法少女なんだろ? だったら、キュゥべえがいなくなったら困るだろうが?」

ほむら「……そうね」

杏子「あいつには、孵化寸前のグリーフシードを処理してもらう役目がある。お前がまだキュゥべえを狙うというのなら、ここで相手になるぜ」

ほむら「……」

佐倉杏子は魔法少女らしい魔法少女で、合理的な考え方を好む。
ならば、ここはこう言っておくべきか。

ほむら「安心しなさい。私がこれから先キュゥべえを狙うことはないわ」

その理由は先ほど失われた。
とはいえ、状況によってはそうでもないが。
11 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:32:23.23 ID:8m/ElpKNO
杏子は大して気にもせず、話を続ける。

杏子「ふぅん……ならこの件はいい。問題は次だ。お前、まさかこの町に住んでるわけじゃないよな?」

ほむら「……だったらどうなのかしら」

杏子はほむらの言葉を聞き、舌打ちをした。

杏子「マジかよ……キュゥべえの奴、テキトーなこと言いやがって。おい、この町はあたしの縄張りだからな。魔女を狩りたいんだったら、他の町に行きな」

ほむら「わかったわ」

その必要もない。
グリーフシードの予備は十分にある。

杏子「……自分で言っておいてなんだが、本当にいいのか? 明日には行方不明になりました〜じゃ、こっちだって寝覚めが悪いぜ」

ほむら「じゃあ、この町を譲ってくれるのかしら」

杏子「いや? ただ、狩り場ってのは魔法少女にとっては死活問題だろ? それを脅かしてんだから、あたしだってここでお前と殺し合う覚悟はあった。それなのに、やけにあっさり了承したなって思っただけさ」

やはり合理的な考え方をしている。
ただし彼女の場合、美樹さやかが絡むと必ずしもそうではない。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/20(土) 11:32:30.46 ID:1Hgpt+qEO
期待
13 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:33:54.02 ID:8m/ElpKNO
ほむら「私のことはいいわ。それより、聞きたいことがあるの」

杏子「なんだ?」

ほむら「あなた、巴マミという少女を知っているかしら」

杏子「……!」

杏子は顔を強張らせた。

質問が少し正確ではなかった。
佐倉杏子が巴マミを知っている、ということは知っている。
問題は、今、巴マミがどうしているか。

杏子「てめえ、マミの知り合いか?」

ほむら「いいえ……ただ、話に聞いたことがあるだけよ。この町に住んでいたはずなのだけど」

佐倉杏子と巴マミには少々複雑な事情がある。
わざわざ余計なトラブルを起こしたくはないので、ここは他人の振りをしておく。

杏子「……お前、知らないのか?」

ほむら「……?」
14 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:36:29.29 ID:8m/ElpKNO


杏子「マミは死んだ……らしいぜ。あたしも実際に見たわけじゃないし、キュゥべえから聞かされたんだけどよ。世間的には行方不明扱いだ」

15 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 11:37:51.85 ID:8m/ElpKNO
ほむらは絶句した。

初めてのケースだ。
今まで、こんなことは一度もなかった。

杏子「どんな魔女に殺されたのかも知らねーよ。興味もねーし」

ほむら「……そうね。あなたはそういう人間よね」

杏子「……初対面で、何を人のことわかったような口聞いてんだ?」

先ほどまどかに見せた眼光とは違い、本気で睨まれる。

今日のところはこれくらいにしておくべきか。
ほむらは盾を構えた。

ほむら「また会いましょう……佐倉杏子」

杏子「……!」

ほむらは能力を使い、その場を後にした。
16 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 12:15:23.15 ID:8m/ElpKNO
***

まどか「待ってよ、さやかちゃん」

まどかは、未ださやかに手を引かれていた。
いつものじゃれあいとは違い、なかなか足を止めてくれない。

いつもの通学路に出てから、ようやくさやかが立ち止まる。
まどかは、息を整えてから彼女に話しかけた。

まどか「……どうしたの、急に」

さやか「まどかー、あれはヤバいって。ああいうのには関わらない方がいいよ」

彼女なりに、何かを察したのだろうか。

まどか「でも、ほむらちゃんが……」

さやか「あの転校生? 夢の中で会ったとか言ってたけど、それだけじゃないの?」

……それだけだ。
自分でも、なぜこれほど関心を持つのかわからない。

まどか「……うん、それだけのはずなんだけど、なんか気になるっていうか……」
17 : ◆c6GooQ9piw [saga ]:2016/02/20(土) 12:17:17.73 ID:8m/ElpKNO
さやか「……」

さやかが黙り込む。
一瞬、呆れられてしまったかと思ったが、どうやら状況の整理をしていたらしい。

さやか「あの人、魔法少女……って言ってたよね。詳しくは教えてくれなかったけど、あの転校生もそうなんじゃない?」

まどか「魔法少女、か……」

キュゥべえによれば、あのような化け物……魔女と戦う存在を、そう呼ぶらしい。
それ以上の説明もしようとしていたが、あっという間に魔女を倒した赤髪の魔法少女に、止められていた。

さやか「……あのふたりが何の話をするかは知らないけど、魔法少女じゃないあたしたちが、口出しできることじゃないと思うよ」

……正論だ。

そもそも、まどかとほむらの関係も、クラスメイトという響きが示すほど近いものではない。
何せ、ふたりは今日が初対面だったのだから。

まどか「うん、そうだよね……」

さやか「元気出しなって! どうしても気になるんなら、明日学校で聞いてみたら? あいつが素直に教えてくれるかはわからないけどさ」

気を使ってくれている。
彼女の明るさには、いつも助けられる。

まどか「……ありがとう、さやかちゃん」

さやか「いえいえ!」
18 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 12:20:32.70 ID:8m/ElpKNO
***

自分の狩り場に現れた、得体の知れない魔法少女。

考えてわかるものでもないので、杏子はキュゥべえを待っていた。

QB「やぁ、杏子」

杏子「来やがったか……おい、聞きたいことがある」

QB「なんだい?」

杏子「決まってんだろ? あの魔法少女のことだ。お前、この町にはもう魔法少女はいなくなったって言ってたよな?」

責めるような口調で問いかけたが、キュゥべえはまるで気にしていない。

QB「僕にもわからないんだ。あの魔法少女は、あらゆる意味でイレギュラーだ」

答えになっていない。
杏子は苛立ちを押さえつつ、質問を続ける。

杏子「あいつがお前と契約したのはいつなんだ? ひよっこには見えなかったぜ」

珍しく、キュゥべえは答えに迷う様子を見せた。

QB「……信じてもらえるとも思えないけど、僕にはあの子と契約した覚えがない。君と同じく、今日が初対面だったんだ」

杏子「はぁ? そんなことがあり得んのかよ?」

QB「普通ならあり得ない。だからこそイレギュラーなんだ。たとえば、契約後にその記憶を魔法で消されたとか……予想はいくつかできるけど、今の段階ではなんとも言えないね」

キュゥべえは基本的に嘘は吐かない。
それが本当なら、確かにイレギュラーと言える。
19 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 12:22:45.28 ID:8m/ElpKNO
杏子「まぁ、あたしの邪魔をしないってんならそれでいいんだが……どうにも不気味だな」

QB「不気味どころか、僕は初対面で突然発砲されたんだけど」

杏子「もうしませんごめんなさいって言ってたぜ。気にすんなよ」

QB「気にしないわけにはいかないし、そんな言い方はしていなかったよね」

台詞とは裏腹に平坦な口調だ。
というか……

杏子「てめえ、やっぱ隠れて聞いてやがったな?」

QB「おっと」

杏子「まぁ隠れる気持ちもわかるけどな」

襲われた直後なのだから、のこのこと姿を見せるわけにもいかなかったのだろう。
20 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/02/20(土) 12:24:20.49 ID:8m/ElpKNO
今度は、キュゥべえが杏子に問いかけた。

QB「彼女、マミを知っているらしいね。心当たりはないのかい?」

杏子「……」

杏子もわかってはいたが、キュゥべえにはデリカシーというものがない。

杏子「ねーよ。あれ以来、マミとは一切関わってねえ。お前も知ってんだろうが」

QB「そうだったね。僕はそれからもマミと会っていたけど、あの少女の話なんて聞いたことがない。案外、本当にただ話に聞いただけなのかもしれないね」

杏子「……どうでもいいさ」

本心からの言葉だった。

もうマミは死んだんだ。
気にしていても仕方がない。
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